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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】支持構造
(51)【国際特許分類】
   F16M 13/02 20060101AFI20241213BHJP
   B60R 5/04 20060101ALI20241213BHJP
   B60R 7/08 20060101ALI20241213BHJP
   F16B 21/04 20060101ALI20241213BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20241213BHJP
   F16B 45/00 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
F16M13/02 D
B60R5/04 T
B60R7/08 Z
F16B21/04 B
F16B19/00 F
F16B45/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021207002
(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公開番号】P2023092036
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴裕
【審査官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-044039(JP,A)
【文献】実開昭63-008353(JP,U)
【文献】実開昭61-052051(JP,U)
【文献】特開2005-132198(JP,A)
【文献】特開昭56-003773(JP,A)
【文献】実開平06-001649(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 13/00
B60R 3/00-7/14
F16B 21/04
F16B 19/00
F16B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の向かい合った壁部にそれぞれ備えられる支持装置よりなる支持構造であって、
前記支持装置は、基準位置において前記壁部の意匠面の一部を構成する可動体を、前記壁部に引っかけなどの用途で利用可能な凸所を形成させる前進位置及び後退位置へ移動可能に備えさせると共に、
前記可動体を移動可能に支持すると共に前記壁部に取り付けられるケース体と、
前記可動体を前記前進位置に向けて付勢する付勢体と、
前記可動体の制御機構とを備えており、
前記制御機構により、前記可動体の前記基準位置での仮保持と、前記基準位置にある前記可動体の前記付勢に抗した前記後退位置への第一押し込みと、前記第一押し込み終了後の前記可動体の前記付勢による前記前進位置への移動と、前記前進位置にある前記可動体の前記付勢に抗した第二押し込みと、前記第二押し込み終了後の前記可動体の前記付勢による前記基準位置への移動とを1サイクルとした前記可動体の制御をなすようにしてなり、
しかも、前記ケース体は、前記可動体が前記後退位置にある状態において、棒状体の端部を内部に受け入れ可能としてなる、支持構造。
【請求項2】
前記制御機構は、ハートカム及びこれをトレースするピンとを備え、これらのいずれか一方を前記可動体に、他方を前記ケース体に備えさせてなる、請求項1に記載の支持構造。
【請求項3】
前記付勢体を、前記可動体と前記ケース体との間に介装された圧縮コイルバネとしてなる、請求項1又は請求項2に記載の支持構造。
【請求項4】
前記ケース体は前記可動体に形成された係合部に係合される被係合部を備えており、前記係合部及び前記被係合部の一方を前記可動体の移動方向に沿ったガイド長孔とし、これらの他方を前記ケース体への前記可動体の差し入れを弾性変形により許容し且つ所定の差し入れ位置での弾性復帰により前記ガイド長孔に入り込む弾性片としてなる、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の支持構造。
【請求項5】
前記ケース体は、前記可動体の突出開口を備えると共に、前記壁部に形成された貫通穴に前記壁部の内部の非意匠面側において前記突出開口を連通させるように前記壁部に組み合わされ固着されるようにしてなる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の支持構造
【請求項6】
前記ケース体は、前記可動体の突出開口を備えると共に、前記突出開口側に外鍔部とこれより後方において外側に突き出す突片部とを有しており、前記壁部に設けた貫通穴とこの貫通穴に連続した前記突片部の通過用の切り欠き部とを利用して前記ケース体における前記突片部を含んだ前記外鍔部より後方となる箇所を前記壁部内に導入した後の捻回により前記外鍔部と前記突片部とで内外から前記壁部を挟み付けて前記壁部に固定されるようにしてなる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、その取付対象に引っかけなどの用途で利用可能な凸所、および、はめ込みなどの用途で利用可能な凹所を、必要に応じて形成させる機能を備えた多用途支持装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内に備えられるアシストグリップの取付部材に、収容ハウジングを形成させ、この収容ハウジングにフック部材をスライド可能に収容し、収容状態ではフック部材の端面が取付部材の外面と面一となるようにし、使用状態ではフック部材が取付部材の外面から突出するようにして、かかる使用状態においてフック部材を自動車の車室内で引っかけなどの用途で利用可能な支持装置としたものとして、特許文献1に示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3733034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の支持装置の利便性を合理的により向上させる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、支持構造を、 車室内の向かい合った壁部にそれぞれ備えられる支持装置よりなる支持構造であって、
前記支持装置は、基準位置において前記壁部の意匠面の一部を構成する可動体を、前記壁部に引っかけなどの用途で利用可能な凸所を形成させる前進位置及び後退位置へ移動可能に備えさせると共に、
前記可動体を移動可能に支持すると共に前記壁部に取り付けられるケース体と、
前記可動体を前記前進位置に向けて付勢する付勢体と、
前記可動体の制御機構とを備えており、
前記制御機構により、前記可動体の前記基準位置での仮保持と、前記基準位置にある前記可動体の前記付勢に抗した前記後退位置への第一押し込みと、前記第一押し込み終了後の前記可動体の前記付勢による前記前進位置への移動と、前記前進位置にある前記可動体の前記付勢に抗した第二押し込みと、前記第二押し込み終了後の前記可動体の前記付勢による前記基準位置への移動とを1サイクルとした前記可動体の制御をなすようにしてなり、
しかも、前記ケース体は、前記可動体が前記後退位置にある状態において、棒状体の端部を内部に受け入れ可能としてなる、ものとした。
【0006】
支持装置を利用しないときは、基準位置に仮保持させた可動体によって取付対象としての壁部の意匠面の一部を構成させることができる。これにより、支持装置を利用しないときは取付対象の意匠性を支持装置が損なわないようにすることができる。
また、前記第一押し込みにより、前記仮保持を解いて、可動体を後退位置に移動させることができる。これにより、取付対象に対しはめ込みなどの用途で利用可能な凹所を形成させることができる。
また、前記第一押し込みを止めることで、可動体を前進位置に移動させることができる。これにより、取付対象に対し引っかけなどの用途で利用可能な凸所を形成させることができる。
また、前記第二押し込みにより、前進位置にある可動体を後退位置に移動させることができる。これにより、取付対象に対しはめ込みなどの用途で利用可能な凹所を再び形成させることができる。
また、前記第二押し込みを止めることで、可動体を基準位置に移動させることができる。これにより、可動体によって取付対象の意匠面の一部を構成させた状態に復帰させることができる。
【0007】
前記制御機構を、ハートカム及びこれをトレースするピンとを備え、これらのいずれか一方を前記可動体に、他方を前記ケース体に備えさせてなる、ものとすることがこの発明の態様の一つとされる。
【0008】
また、前記付勢体を、前記可動体と前記ケース体との間に介装された圧縮コイルバネとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0010】
また、前記ケース体を前記可動体に形成された係合部に係合される被係合部を備えたものとし、前記係合部及び前記被係合部の一方を前記可動体の移動方向に沿ったガイド長孔とし、これらの他方を前記ケース体への前記可動体の差し入れを弾性変形により許容し且つ所定の差し入れ位置での弾性復帰により前記ガイド長孔に入り込む弾性片とすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0011】
また、前記ケース体を、前記可動体の突出開口を備えると共に、前記壁部に形成された貫通穴に前記壁部の内部の非意匠面側において前記突出開口を連通させるように前記壁部に組み合わされ固着されるものとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0012】
また、前記ケース体を、前記可動体の突出開口を備えると共に、前記突出開口側に外鍔部とこれより後方において外側に突き出す突片部とを有したものとし、前記壁部に設けた貫通穴とこの貫通穴に連続した前記突片部の通過用の切り欠き部とを利用して前記ケース体における前記突片部を含んだ前記外鍔部より後方となる箇所を前記壁部内に導入した後の捻回により前記外鍔部と前記突片部とで内外から前記壁部を挟み付けて前記壁部に固定されるものとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、基準位置において取付対象の意匠面の一部を構成する可動体によって取付対象に凸所及び凹所を形成させることができ、様々な態様で各種物品の支持が可能な利便性の高い支持装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかる支持装置(第一例)の使用状態を示した斜視図であり、可動体は基準位置にある。
図2図2は、前記第一例の使用状態を取付対象の内部側から見て示した斜視図であり、可動体は基準位置にある。
図3図3は、前記第一例の使用状態を示した斜視図であり、可動体は前進位置にある。
図4図4は、前記第一例の使用状態を取付対象の内部側から見て示した斜視図であり、可動体は前進位置にある。
図5図5は、前記第一例の使用状態を示した斜視図であり、可動体は後退位置にある。
図6図6は、前記第一例の使用状態を取付対象の内部側から見て示した斜視図であり、可動体は後退位置にある。
図7図7は、前記第一例を構成する各部材の分離斜視図である。
図8図8は、前記第一例を構成する各部材の分離斜視図であり、図7と異なる向きからこれらを見て示している。
図9図9は、前記第一例を構成する各部材の分離斜視図であり、図7及び図8と異なる向きからこれらを見て示している。
図10図10は、前記第一例の使用状態を示した正面図であり、可動体は基準位置にある。
図11図11は、図10におけるA-A線位置での切断端面図である。
図12図12は、図10におけるB-B線位置での切断端面図である。
図13図13は、前記A-A線相当位置での切断端面図であり、可動体は前進位置にある。
図14図14は、前記A-A線相当位置での切断端面図であり、可動体は後退位置にある。
図15図15は、前記第一例にかかるケース体の平面図である。
図16図16は、可動体の平面図(a図)、および、その要部拡大図(b図)であり、要部拡大図においては便宜的に可動体が基準位置にあるときのピンを実線で、その他の位置にあるときのピンを破線で表している。
図17図17は、この発明の一実施の形態にかかる支持装置(第二例)を構成するケース体を後方から見て示した斜視図である。
図18図18は、前記第二例が取り付けられる取付対象の要部をその内部側から見て示した背面図である。
図19図19は、図18に示される取付対象の要部の斜視図である。
図20図20は、前記第二例を前記取付対象に取り付けた使用状態を示した斜視図である。
図21図21は、前記第二例の使用状態を示した切断端面図であり、可動体は基準位置にある。
図22図22は、前記第一例及び第二例の利用状態の一例を示した車両の平面構成図である。
図23図23は、図22の利用状態において支持される物品の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図23に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる支持構造を構成する支持装置1は、その取付対象100に引っかけなどの用途で利用可能な凸所101、および、はめ込みなどの用途で利用可能な凹所102を、必要に応じて形成させる機能を備えたものである。加えてかかる支持装置1は、こうした凸所101及び凹所102の利用を要しないときは、取付対象100の意匠面103の一部を構成する機能を備えている。
【0016】
典型的には、かかる支持装置1は、車両Mの車室Ma内に必要に応じて備えられて、この車室Ma内において各種の物品を支持するために用いられる。この場合には、かかる支持装置1は、車室Maの壁部を構成する取付対象100としてのトリムに形成された貫通穴104を利用して、かかるトリムに組み合わされる。
【0017】
かかる支持装置1は、基準位置において取付対象100の意匠面103の一部を構成するようにした可動体2を備えている。そして、かかる支持装置1は前記のように取付対象100に組み合わされ固定されることで、取付対象100に可動体2を、前記取付対象100に対し引っかけなどの用途で利用可能な凸所101を形成させる前進位置及び前記取付対象100に対しはめ込みなどの用途で利用可能な凹所102を形成させる後退位置への移動可能に備えさせるものとなっている。
【0018】
かかる支持装置1は、前記可動体2を移動可能に支持すると共に前記取付対象100に取り付けられるケース体3と、前記可動体2を前記前進位置に向けて常時付勢する付勢体4と、前記可動体2の制御機構5とを備えている。
【0019】
可動体2の前端部6は、可動体2の基準位置において、前記貫通穴104を実質的に塞ぎ、かつ、貫通穴104を巡る前記意匠面103に連続して前記意匠面103の一部を構成するようになっている。図示の例では、可動体2の基準位置において、可動体2の前端部6は前記意匠面103と実質的に面一となるようになっている(図1)。
【0020】
一方、可動体2の前端部6は、可動体2の前進位置において、貫通穴104を巡る前記意匠面103よりも外方に位置され、これにより取付対象100に凸所101が形成される(図3)。
【0021】
また、可動体2の前端部6は、可動体2の後退位置において、貫通穴104を巡る意匠面103よりも内方に位置され、これにより取付対象100に凹所102が形成される(図5)。
【0022】
支持装置1における可動体2の前端部6側以外の箇所は、実質的に取付対象100の非意匠面103側、すなわち、取付対象100の内部105に位置される。
【0023】
車両Mの車室Maに支持装置1を備えさせた場合は、かかる支持装置1により形成された凸所101を利用して、買い物袋などを車室Ma内の壁部に直接的に吊り下げることができる。また、ハンガーやS字フックを介して間接的に、各種物品を前記壁部に吊り下げることができる。
【0024】
また、図22に示されるように、車室Ma内の左右の壁部にそれぞれ、支持装置1を備えさせるようにしておけば、左右の壁部に備えられた支持装置1により形成された凸所101を利用して、棚板状体を車室Ma内に支持することができる。
【0025】
また、かかる支持装置1により形成された凹所102を利用して、この凹所102にはめ込んだり、差し込んだりして、壁部に対し各種物品の一部を組み合わせることができる。
【0026】
図22に示されるように、車室Ma内の左右の壁部にそれぞれ、支持装置1を備えさせるようにしておけば、左右の壁部に備えられた支持装置1により形成された凹所102を利用して、棒状体Caを車室Ma内に架け渡し状に支持することができる。
【0027】
特に、図22に示されるように、車室Ma内の左右の壁部のそれぞれに、前後方向に間隔を開けて複数の支持装置1を備えさせ、車両Mの前後方向において実質的に同位置にある支持装置1により形成された凹所102にそれぞれ棒状体Caの端部を受け入れるようにすれば、車両Mの前後方向において間隔を開けて例えば二本の棒状体Caを架け渡し状に支持することができる。図23に示されるように、前記のような二本の棒状体Caの一方に幕状カバーCbの一端を止着し、かつ、二本の棒状体Caの他方にかかる幕状カバーCbの他端を止着させてなるトノカバーCに対しては、前記のように車室Ma内の左右の壁部のそれぞれに、前後方向に間隔を開けて複数の支持装置1を備えさせておくことにより、車室Ma内のラゲッジスペースのフロア上に幕状カバーCbが展張されるようにして二本の棒状体Caを架け渡し状に支持することができ、かかる幕状カバーCbによって前記フロア上を都合良く覆うことが可能となる。
【0028】
可動体2は、板状の前端部6と、筒状の胴部7と、前端部6と胴部7との間に形成された頸部8とを備えている。
【0029】
前端部6は、可動体2の移動方向に沿った中心軸x(図11参照)に直交する向きに板面を配した板状を呈している。図示の例では、前端部6は、前記中心軸xに直交する仮想の直線に沿った左右の直線状縁部6aと、前記中心軸xを円心とした仮想の円の円弧に倣った上下の円弧状縁部6bとを備えた形態となっている。そして、この前端部6の輪郭に整合した取付対象100の貫通穴104を前記基準位置において実質的に閉塞すると共に、貫通穴104を巡る意匠面103に前記頸部8側と反対の面を面一とさせるようになっている(図1)。
【0030】
頸部8と胴部7とは一緒に中空の筒状体を形成している。かかる筒状体の前端が前記前端部6で閉塞され、後端は開放されている。胴部7の外径は前端部6の円弧状縁部6bが倣った前記仮想の円の外径に実質的に等しくなっている。頸部8の外径は胴部7の外径より小さい。図示の例では、前記前進位置では、可動体2の頸部8から前方が意匠面103よりも外方に突き出し前記凸所101を形成するようになっている。このように形成される凸所101に対し、買い物袋の把手部分などを前端部6より後方の頸部8に前端部6により脱落を防いだ態様で吊り下げ状に引っかけることができる。
【0031】
図示の例ではまた、頸部8の上部と下部とにそれぞれ、矩形状の窓穴8aが形成されている。この窓穴8aを利用して、前記凸所101に紐などを通すことが可能となっている。
【0032】
胴部7の後端側には、胴部7の左右にそれぞれ、後述の係合部9となる弾性片9aが形成されている。弾性片9aは前記中心軸xに沿うように形成される上側及び下側の溝の前端側を縦向きの溝で繋いでなる割溝9bによって区分された胴部7の一部から構成されている。弾性片9aの外面側には爪部9cが形成されている。
【0033】
胴部7の上側には、後述の制御機構5を構成するハートカム20が形成されている。ハートカム20は、胴部7の外面に周回状をなすガイド溝21を刻設状に形成させることで島状に残された胴部7の一部から構成されている。ハートカム20は、後方に尖った部分20aを位置させ、前方に凹んだ部分20bを位置させている(図16)。
【0034】
ガイド溝21は、胴部7の前端近傍から後端近傍に至る範囲で形成されている。ガイド溝21は、ハートカム20を周回する周回部分21aと、ハートカム20の凹んだ部分20bを挟んだ一方側(凹んだ部分20bを通る可動体2の移動方向に沿った仮想の直線yを挟んだ一方側/図16においては上方)において周回部分21aから前方に延びる第一レーン21bと、ハートカム20の凹んだ部分20bを挟んだ他方側(前記直線yを挟んだ他方側/図16においては下方)において周回部分21aから前方に延びる第二レーン21cと、ハートカム20の尖った部分20aの後方において前記直線yに沿うように周回部分21aから後方に延びる第三レーン21dとを備えている。
【0035】
周回部分21aのうちハートカム20の凹んだ部分20bの前方に位置される溝壁は、ハートカム20の凹んだ部分20bに後述の付勢体4の付勢力によってピン22が係合した状態(図16のaの位置)から可動体2を後述の第一押し込みしたときに、ピン22を第二レーン21cに案内する第一ガイド壁21eとなっている。
ハートカム20の尖った部分20aと凹んだ部分20bとの間にある図16において上方に向けられた箇所は、ピン22が第三レーン21dの後端にある状態(図16のcの位置)から可動体2を後述の第二押し込みしたときに、ピン22をハートカム20の図16における上側(前記直線yを挟んだ一方側)に案内する第二ガイド壁21fとなっている。
周回部分21aのうち前記第一ガイド壁21eよりも図16における上方(前記直線yを挟んだ一方側)に位置される溝壁は、前記第二押し込みによりハートカム20の図16における上側に案内されたピン22を第一レーン21bに案内する第三ガイド壁21gとなっている。
ハートカム20の凹んだ部分20bよりも図16における上側(前記直線yを挟んだ一方側)に位置して第一レーン21bの入り口に向き合った部分は、第二押し込み終了後に付勢体4の付勢力によって可動体2が基準位置に向けて移動したときにピン22をハートカム20の凹んだ部分20bに案内する第四ガイド壁21hとなっている。
図示の例では、第一レーン21b及び第二レーン21cの前端とハートカム20の凹んだ部分20bとの距離L1よりも、第三レーン21dの後端とハートカム20の凹んだ部分20bとの距離L2が、やや大きくなっている(図16)。これにより、この実施の形態にあっては、可動体2が基準位置から前進位置に移動する距離が、基準位置から後退位置に移動する距離よりもやや大きくなっている。
また、図示の例では、胴部7の前端側の内部に、後方に向いた周回段差面7aが形成されている(図11)。図示の例では、付勢体4を構成する後述の圧縮コイルバネ19の前端がこの周回段差面7aに当接するようになっている。
【0036】
ケース体3は、前記可動体2の前端部6及び胴部7の外径と実質的に等しい内径を備えると共に、筒前端を前記可動体2の突出開口10として開放させ、且つ、筒後端を閉塞させた円筒状を呈している。
【0037】
ケース体3は前記可動体2に形成された係合部9に係合される被係合部12を備えている。図示の例では、かかる被係合部12は前記可動体2の移動方向に沿ったガイド長孔12aとなっている。ガイド長孔12aは、可動体2の係合部9となる左右の弾性片9aに対応してケース体3の左右にそれぞれ形成されている。図示の例では、かかるガイド長孔12aはケース体3の側部を割り欠くスロット状を呈している。
【0038】
前記可動体2の係合部9となる左右の弾性片9aの爪部9c間の先端間の距離は、ケース体3の内径よりもやや大きくなっている。これにより、可動体2を後端側から突出開口10を通じてケース体3内に差し込むと、ケース体3の突出開口10の縁部に弾性片9aの爪部9cが接して弾性片9aが前記中心軸x方向に弾性変形すると共に、この弾性変形によりケース体3への前記可動体2の差し入れが許容されるようになっている。そして、可動体2が所定の差し入れ位置まで差し入れられると、図示の例では、弾性片9aの爪部9cがガイド長孔12aの前端側に至る位置までケース体3内に差し入れられると、弾性片9aの弾性復帰によって爪部9cがガイド長孔12aに入り込むようになっている。これにより、前進位置から先に突き出すことなく可動体2とケース体3とは組み合わされ、また、可動体2の移動はガイド長孔12aによって安定的に支持されるようになっている。
【0039】
図示は省略するが、可動体2側に前記のようなガイド長孔12aを設け、ケース体3側に前記のような弾性片9a(この場合、爪部9cは前記中心軸x側に突き出す。)を設けるようにしても、前記と同じように可動体2とケース体3とを組み合わせることができる。
【0040】
ケース体3の上部には、後述の制御機構5を構成するピン22の支持部14が形成されている。図示の例では、ピン22は、両端を同じ向きに屈曲させてなる金属線材22aの一端部によって構成されている。ケース体3の後端側には前記金属線材22aの他端部22bをケース体3の外側から差し込み可能な軸孔15が形成されている。また、ケース体3の前端側には金属線材22aの他端部を前記軸孔15に差し込んだ状態においてピン22をケース体3の外側からケース体3内に受け入れる割溝16が形成されている。割溝16は軸孔15を中心とした仮想の円の円弧に沿うように形成されている。これにより、ピン22は、割溝の範囲内において軸孔15を中心として左右方向に移動可能にケース体3に組み合わされるようになっている。
【0041】
図中、符号17は、前記のようにケース体3に組み合わされた金属線材22aの脱落を防ぐように前記支持部14に組み合わされるカバーである。カバー17は支持部14の左右に形成された横方向に突き出し前後方向に続く突条14aに整合する溝17aを左右にそれぞれ備えており、この突条14aを溝17aに受け入れさせるようにしてケース体3に組み合わされるようになっている。カバー17の前記溝17aの形成部分は前後に分断されており、ケース体3の後端側から突条14aを溝17aに受け入れさせるようにカバー17をスライド移動させてゆくと、分断箇所17b内に支持部14側に形成された小突起14bが嵌まり込み、カバー17の取付位置が定められるようになっている(図2)。
【0042】
付勢体4は、可動体2を前進位置に向けて常時付勢する構成のものであれば足り、その具体的な構成は必要に応じて適宜選択して構わない。図示の例では、付勢体4を可動体2とケース体3との間に介装された圧縮コイルバネ19としている。かかる圧縮コイルバネ19の後端はケース体3の閉塞された後端部11に当接している。図中、符号11aはこの後端部11から前方に突き出すように形成されて圧縮コイルバネ19内に入り込む筒状の圧縮コイルバネ19に対する位置決め部である。
【0043】
この実施の形態にかかる支持装置1は、ケース体3と可動体2との間に圧縮コイルバネ19が介在されるようにして、可動体2を胴部7側からケース体3の突出開口10を通じてケース体3内に前記被係合部12に係合部9が係合される位置まで差し込むと共に、可動体2の胴部7に形成された制御機構5を構成するガイド溝21に制御機構5を構成するピン22を導入することで、組み立てられる。
【0044】
かかる制御機構5により、前記可動体2の前記基準位置での仮保持と、前記基準位置にある前記可動体2の前記付勢に抗した前記後退位置への第一押し込みと、前記第一押し込み終了後の前記可動体2の前記付勢による前記前進位置への移動と、前記前進位置にある前記可動体2の前記付勢に抗した第二押し込みと、前記第二押し込み終了後の前記可動体2の前記付勢による前記基準位置への移動とを1サイクルとした前記可動体2の制御がなされるようになっている。
【0045】
支持装置1を利用しないときは、基準位置に仮保持させた可動体2によって取付対象100の意匠面103の一部を構成させることができる(図1)。これにより、支持装置1を利用しないときは取付対象100の意匠性を支持装置1が損なわないようにすることができる。
また、前記第一押し込みにより、前記仮保持を解いて、可動体2を後退位置に移動させることができる(図5)。これにより、取付対象100に対しはめ込みなどの用途で利用可能な凹所102を形成させることができる。
また、前記第一押し込みを止めることで、可動体2を前進位置に移動させることができる(図3)。これにより、取付対象100に対し引っかけなどの用途で利用可能な凸所101を形成させることができる。
また、前記第二押し込みにより、前進位置にある可動体2を後退位置に移動させることができる。これにより、取付対象100に対しはめ込みなどの用途で利用可能な凹所102を再び形成させることができる。
また、前記第二押し込みを止めることで、可動体2を基準位置に移動させることができる。これにより、可動体2によって取付対象100の意匠面103の一部を構成させた状態に復帰させることができる。
【0046】
図示の例では、可動体2の基準位置において圧縮コイルバネ19の付勢によりハートカム20の凹んだ部分20bにピン22が入り込み、可動体2が基準位置に仮保持されるようになっている(図14におけるaの位置にピン22がある状態)。
基準位置にある可動体2を第一押し込みすると、ガイド溝21の周回部分21aの第一ガイド壁21eにピン22が突き当たり、ピン22は第二レーン21cに案内される。ピン22が第二レーン21cに案内されると、第二レーン21cの前端までのピン22の相対的な移動が許容され、この結果、可動体2は後退位置まで移動される(図14におけるbの位置にピン22がある状態)。
可動体2の第一押し込みを止めると、圧縮コイルバネ19の付勢による可動体2の前方への移動が開始され、ピン22はハートカム20の下側を通じて第三レーン21dに案内される。ピン22が第三レーン21dに案内されると、第三レーン21dの後端までのピン22の相対的な移動が許容され、この結果、可動体2は前進位置まで移動される(図14におけるcの位置にピン22がある状態)。
前進位置にある可動体2を第二押し込みすると、ピン22は第二ガイド壁21fに突き当たり、周回部分21aにおけるハートカム20の上側に案内され、さらにピン22は第三ガイド壁21gによって第一レーン21bに案内される。ピン22が第一レーン21bに案内されると、第一レーン21bの前端までのピン22の相対的な移動が許容され、この結果、可動体2は再び後退位置まで移動される(図14におけるdの位置にピン22がある状態)。
可動体2の第二押し込みを止めると、圧縮コイルバネ19の付勢による可動体2の前方への移動が開始され、ピン22は第四ガイド壁21hに突き当たり、ハートカム20の凹んだ部分20bに案内される。この結果、可動体2が基準位置に再び仮保持される(図14におけるaの位置にピン22がある状態)。
【0047】
図示は省略するが、可動体2側に前記のようなピン22を設け、ケース体3側に前記のようなハートカム20を設けるようにしても、前記と同じように可動体2の動作を制御することができる。
【0048】
図1図16に示される第一例では、前記ケース体3は、前記取付対象100に形成された貫通穴104に前記取付対象100の内部105の非意匠面側において前記突出開口10を連通させるように前記取付対象100に組み合わされ固着されるようになっている。
【0049】
この第一例では、ケース体3の前端側の上部と下部とにそれぞれ、ケース体3の側部13に直交する向きに突き出す耳部18が形成されている。
【0050】
そしてこの第一例では、取付対象100の非意匠面側において、貫通穴104を縁取る内側周回壁部106と、この内側周回壁部106との間にケース体3の前端側を納める周回隙間を空けて形成された外側周回壁部107とが形成されていると共に、外側周回壁部107の上部と下部とにそれぞれ、前記耳部18を前後方向に貫通する孔18aに前方から入り込むボス部108が形成されている。そして、この第一例では、耳部18の孔にボス部108を入れ込んだ状態から、ボス部108に後方からネジを止め付けることで、取付対象100にケース体3を介して支持装置1を取り付けさせている。この例では、可動体2の前端側は前記内側周回壁部106内に位置し、基準位置で取付対象100の貫通穴104を隙間なく塞ぐようになっている(図11)。
【0051】
図17図21に示される第二例では、前記ケース体3は、前記突出開口10側に外鍔部23を有すると共に、これより後方に外側に突き出す突片部24を有している。外鍔部23は、突出開口10を巡るように形成され、外鍔部23は取付対象100の貫通穴104を通過しない大きさを備えている。突片部24は、外鍔部23との間に取付対象100の厚さ分の間隔を開けて、ケース体3の側部13から外方に突き出している。図示の例では、突片部24は、ケース体3の突出開口10を巡る向きにおいて、間隔を開けて三箇所に設けられている。
【0052】
この第二例では、前記取付対象100に設けた貫通穴104に連続するように、前記取付対象100に前記突片部24の通過用の切り欠き部110が形成されている。この第二例では、取付対象100の意匠面103側には、貫通穴104を巡る周回凹部111が形成されている。それと共に、この周回凹部111に、貫通穴104の中心から放射方向に向けて周回凹部111を割り欠いて三箇所の前記突片部24のそれぞれに対応してこれらを導入可能とする切り欠き部110が、貫通穴104の中心を巡る向きにおいて間隔を開けて三箇所に設けられている(図18)。
【0053】
そして、この第二例では、前記貫通穴104と前記切り欠き部110とを利用して前記ケース体3における前記突片部24を含んだ前記外鍔部23より後方となる箇所を前記取付対象100内に導入した後の捻回により前記外鍔部23と前記突片部24とで内外から前記取付対象100を挟み付けて前記取付対象100にケース体3を介して支持装置1を固定させている。
【0054】
この第二例では、前記固定状態において、ケース体3の外鍔部23は取付対象100の周回凹部111に納まって取付対象100の意匠面103と面一をなし、基準位置にある可動体2の前端部6と一緒に取付対象100の意匠面103を構成するようになっている(図21)。
【0055】
また、取付対象100の内部105側には、貫通穴104に筒前端を連通させた筒部112が形成されており、この筒部112内にケース体3が納まるようになっている。筒部112の前端側には、前記切り欠き部110に一端側を連通させてこの切り欠き部110から周回方向に離れる向きに延びる割り溝113が形成されており、前記捻回は前記突片部24がこの割り溝113の終端114に突き当たる位置まで行えるようになっている(図20)。
【0056】
この第二例のようにした場合、特別な工具などを用いなくても取付対象100に支持装置1を取り付けることができ、また、その取り外しも可動体2を前進位置に位置づけた状態でこの可動体2の前端部6側を掴んで捻ることで取付対象100の意匠面103側から簡単に行なうことが可能となる。
【0057】
以上に説明した支持装置1における弾性変形特性を備えるべき部分へのこの特性の付与は、かかる支持装置1の全部又は一部をプラスチックの射出成形品とすることで、容易に確保することができる。
【0058】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0059】
100 取付対象
101 凸所
102 凹所
103 意匠面
1 支持装置
2 可動体
3 ケース体
4 付勢体
5 制御機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23