(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】顆粒球マクロファージコロニー刺激因子に対する抗体及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/24 20060101AFI20241213BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241213BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241213BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241213BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241213BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241213BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241213BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241213BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241213BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241213BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241213BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241213BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
A61K39/395 U
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P29/00
A61P37/06
A61P35/00
A61P29/00 101
A61P35/02
G01N33/53 V
(21)【出願番号】P 2021512275
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 CN2019110570
(87)【国際公開番号】W WO2020078270
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-07
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521083094
【氏名又は名称】エリクシロン・イミュノセラピューティクス・(ホンコン)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チェン-ルン・ク
(72)【発明者】
【氏名】ユ-ファン・ロ
(72)【発明者】
【氏名】ハン-ポ・シー
(72)【発明者】
【氏名】ジン-ヤ・ディン
(72)【発明者】
【氏名】ペイ-ハン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】イン-ピン・ワン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/050111(WO,A1)
【文献】特表2008-536505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00 - 16/46
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に結合する、単離された抗体であって、
配列番号5のHC CDR1;
配列番号6のHC CDR2;
配列番号7のHC CDR3;
配列番号8のLC CDR1;
配列番号9のLC CDR2;及び
配列番号10のLC CDR3
を含み、配列番号1、3又は4のアミノ酸配列を含むV
H及び配列番号2のアミノ酸配列を含むV
Lを含む、単離された抗体。
【請求項2】
ヒトGM-CSFに特異的に結合する、請求項1に記載の単離された抗体。
【請求項3】
ヒトGM-CSF及び非ヒトGM-CSFと交差反応する、請求項1に記載の単離された抗体。
【請求項4】
非ヒトGM-CSFが、アカゲザル(Rhesus macaque)のGM-CSFである、請求項3に記載の単離された抗体。
【請求項5】
ヒト化抗体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項6】
全長抗体又はこれらの抗原結合断片である、請求項1から5のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項7】
IgG分子である全長抗体である、請求項6に記載の単離された抗体。
【請求項8】
検出可能な標識とコンジュゲートされている、請求項1から7のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の単離された抗体、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項10】
薬学的に許容される担体が、緩衝剤、界面活性剤、塩、アミノ酸、抗酸化剤、糖誘導体、又はこれらの組合せを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
糖誘導体が、非還元糖、糖アルコール、ポリオール、二糖、又は多糖である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項に記載の単離された抗体を合わせてコードする核酸又は核酸セット。
【請求項13】
ベクター又はベクターセットである、請求項12に記載の核酸又は核酸セット。
【請求項14】
ベクター又はベクターセットが、発現ベクター又は発現ベクターセットである、請求項13に記載の核酸又は核酸セット。
【請求項15】
請求項13又は14に規定のベクター又はベクターセットを含む宿主細胞。
【請求項16】
細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、及び哺乳動物細胞からなる群から選択される、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
ヒトGM-CSFに結合する抗体を産生する方法であって、
(i)ヒトGM-CSFに結合する抗体の発現を可能にする条件下で請求項15又は請求項16に記載の宿主細胞を培養する工程、
(ii)ヒトGM-CSFに結合する抗体の収集のために培養した宿主細胞又は培養培地を回収する工程
を含む方法。
【請求項18】
ヒトGM-CSFに結合する抗体を精製する工程を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対象においてGM-CSFによって媒介される免疫応答を調節するための、請求項9から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
対象が、GM-CSFと関連する疾患を有する、有することが疑われる、又はそのリスクのあるヒト患者である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
GM-CSFと関連する疾患が、炎症性疾患、自己免疫疾患、又はがんである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、脊椎関節症、強直性脊椎炎、多発性硬化症、乾癬、尋常性乾癬、急性痛風関節炎、又は骨関節炎を含む自己免疫疾患である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
疾患が、川崎病、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)誘導性サイトカイン放出症候群、CAR-T誘導性関連脳症、びまん性間質性肺疾患(DPLD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、大動脈瘤、神経傷害性疼痛、又は移植片対宿主病(GVHD)を含む炎症性疾患である、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
疾患が、白血病、胃癌、腺癌、中皮腫、乳がん、膵管腺癌、結腸直腸がん(CAC)、又は好酸球増加症候群(HES)を含むがんである、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
白血病が、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、又は慢性好酸球性白血病を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
対象が、疾患のさらなる処置を受けた又は受けている、請求項19から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
GM-CSFの存在を検出する方法であって、
(i) GM-CSFを含有することが疑われる生物試料を請求項1から8のいずれか一項に記載の単離された抗体とインビトロで接触させる工程、及び
(ii)試料中のGM-CSFへの抗体の結合を測定する工程
を含む方法。
【請求項28】
生物試料が、GM-CSFと関連する疾患を有することが疑われる又はそのリスクがあるヒト対象から得られる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
接触させる工程が、有効量の抗GM-CSF抗体を対象に投与する工程によって実施される、請求項27又は請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月15日に出願した米国仮出願第62/745,602号及び2019年4月8日に出願した米国仮出願第62/830,754号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、コロニー刺激因子2(CSF2)としても公知であり、マクロファージ、T細胞、マスト細胞、ナチュラルキラー細胞、内皮細胞、及び線維芽細胞によって分泌される単量体糖タンパク質であり、サイトカインとして機能する。GM-CSFは、造血幹細胞を刺激して骨髄系列細胞へと分化させ、顆粒球及び単球を産生させる。
【0003】
その造血活性に加えて、GM-CSFは、その後の1型ヘルパーT細胞及び細胞傷害性Tリンパ球の活性化に必要なマクロファージ及び樹状細胞の分化、増殖及び活性化を誘導する。GM-CSFの造血及び非造血機能は、炎症促進性及び免疫制御能を有する。
【0004】
GM-CSFシグナルは、シグナル伝達因子及び転写活性化因子、STAT5を介し、STAT5標的遺伝子の発現を刺激する。GM-CSF/STAT5シグナル伝達は、免疫恒常性の維持だけでなく、炎症応答の悪化にも中心的な役割を果たす。
【0005】
従って、GM-CSFシグナル伝達と関連する疾患の処置での使用のための新しいGM-CSFアンタゴニストの開発に対する関心は非常に高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO 99/58572
【文献】米国特許第5,565,332号
【文献】米国特許第5,580,717号
【文献】米国特許第5,733,743号
【文献】米国特許第6,265,150号
【文献】WO 87/04462
【文献】米国特許第4,946,778号
【文献】米国特許第4,704,692号
【文献】米国特許第4,485,045号
【文献】米国特許第4,544,545号
【文献】米国特許第5,013,556号
【文献】米国特許第3,773,919号
【文献】WO 00/53211
【文献】米国特許第5,981,568号
【文献】WO 90/07936
【文献】WO 94/03622
【文献】WO 93/25698
【文献】WO 93/25234
【文献】WO 93/11230
【文献】WO 93/10218
【文献】WO 91/02805
【文献】米国特許第5,219,740号
【文献】米国特許第4,777,127号
【文献】英国特許第2,200,651号
【文献】欧州特許第0 345 242号
【文献】WO 94/12649
【文献】WO 93/03769
【文献】WO 93/19191
【文献】WO 94/28938
【文献】WO 95/11984
【文献】WO 95/00655
【文献】米国特許第5,814,482号
【文献】WO 95/07994
【文献】WO 96/17072
【文献】WO 95/30763
【文献】WO 97/42338
【文献】WO 90/11092
【文献】米国特許第5,580,859号
【文献】米国特許第5,422,120号
【文献】WO 95/13796
【文献】WO 94/23697
【文献】WO 91/14445
【文献】欧州特許第0524968号
【文献】米国特許第8,017,748号
【文献】米国特許第7,867,495号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Kabat, E.A.ら(1991年) Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No. 91-3242
【文献】IMGT(登録商標)、the international ImMunoGeneTics information system(登録商標) http://www.imgt.org
【文献】Lefranc, M.-P.ら、Nucleic Acids Res.、27:209~212頁(1999年)
【文献】Ruiz, M.ら、Nucleic Acids Res.、28:219~221頁(2000年)
【文献】Lefranc, M.-P.、Nucleic Acids Res.、29:207~209頁(2001年)
【文献】Lefranc, M.-P.、Nucleic Acids Res.、31:307~310頁(2003年)
【文献】Lefranc, M.-P.ら、In Silico Biol.、5、0006 (2004年) [Epub]、5:45~60頁(2005年)
【文献】Lefranc, M.-P.ら、Nucleic Acids Res.、33:D593~597頁(2005年)
【文献】Lefranc, M.-P.ら、Nucleic Acids Res.、37:D1006~1012頁(2009年)
【文献】Lefranc, M.-P.ら、Nucleic Acids Res.、43:D413~422頁(2015年)
【文献】Chothiaら、(1989年) Nature 342:877頁
【文献】Chothia, C.ら(1987年) J. Mol. Biol. 196:901~917頁
【文献】Al-lazikaniら(1997年) J. Molec. Biol. 273:927~948頁
【文献】Almagro, J. Mol. Recognit. 17:132~143頁(2004年)
【文献】Chothiaら、J. Mol. Biol. 227:799~817頁 (1987年)
【文献】Liら、Mabs、2014年 Mar-Apr;6(2):437~45頁
【文献】Karlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264~68頁、1990年
【文献】Karlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873~77頁、1993年
【文献】Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403~10頁、1990年
【文献】Altschulら、Nucleic Acids Res. 25(17):3389~3402頁、1997年
【文献】Molecular Cloning: A Laboratory Manual、J. Sambrookらeds.、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1989年
【文献】Current Protocols in Molecular Biology、F.M. Ausubelらeds.、John Wiley & Sons, Inc.、New York
【文献】Harlow and Lane、(1998年) Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York
【文献】Winterら、(1994年) Annu. Rev. Immunol. 12:433~455頁
【文献】McCaffertyら、(1990年) Nature 348:552~553頁
【文献】Morrisonら、(1984年) Proc. Nat. Acad. Sci. 81:6851頁
【文献】Harlow and Lane、Using Antibodies, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1999年
【文献】Brown, Mら、Cell, 49:603~612頁(1987年)
【文献】Gossen, M., and Bujard, H.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547~555115頁(1992年)
【文献】Yao, F.ら、Human Gene Therapy、9:1939~1950頁(1998年)
【文献】Shockelt, P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、92:6522~6526頁(1995年)
【文献】M. Gossenら、Natl. Acad. Sci. USA、89:5547~5551頁(1992年)
【文献】Shockettら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、92:6522~6526頁(1995年)
【文献】Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (2000年) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K. E. Hoover
【文献】Skoog, D.A; West, D.M.; Holler, J.F.; Crouch, S.R. (2004年). "chapters 14~16". Fundamentals of Analytical Chemistry (8th ed.)
【文献】Douglas W. Haywick、(2007~2008年). "Elemental Chemistry"
【文献】Epsteinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688頁(1985年)
【文献】Hwangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030頁(1980年)
【文献】Findeisら、Trends Biotechnol. (1993年) 11:202
【文献】Chiouら、Gene Therapeutics: Methods and Applications of Direct Gene Transfer (J. A. Wolff, ed.) (1994年)
【文献】Wuら、J. Biol. Chem. (1988年) 263:621
【文献】Wuら、J. Biol. Chem. (1994年) 269:542
【文献】Zenkeら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990年) 87:3655
【文献】Wuら、J. Biol. Chem. (1991年) 266:338
【文献】Jolly、Cancer Gene Therapy (1994年) 1:51
【文献】Kimura、Human Gene Therapy (1994年) 5:845
【文献】Connelly、Human Gene Therapy (1995年) 1:185
【文献】Kaplitt、Nature Genetics (1994年) 6:148
【文献】Curiel, Hum. Gene Ther. (1992年) 3:147
【文献】Wu、J. Biol. Chem. (1989年) 264:16985
【文献】Philip、Mol. Cell. Biol. (1994年) 14:2411
【文献】Woffendin、Proc. Natl. Acad. Sci. (1994年) 91:1581
【文献】Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed.、1990年
【文献】Physician's Desk Reference、59.sup.th edition、(2005年)、Thomson P D R, Montvale N.J.
【文献】Gennaroら Eds. Remington's The Science and Practice of Pharmacy 20th edition、(2000年)、Lippincott Williams and Wilkins, Baltimore Md.
【文献】Braunwaldら、Eds. Harrison's Principles of Internal Medicine、15.sup.th edition、(2001年)、McGraw Hill, NY
【文献】Berkowら、Eds. The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、(1992年)、Merck Research Laboratories、Rahway N.J.
【文献】Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed.、1984年)
【文献】Methods in Molecular Biology、Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, ed.、1998年) Academic Press
【文献】Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed.、1987年)
【文献】Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts、1998年) Plenum Press; Cell and Tissue Culture
【文献】Laboratory Procedures (A. Doyle、J. B. Griffiths、and D. G. Newell, eds., 1993~8年) J. Wiley and Sons
【文献】Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.)
【文献】Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Calos, eds.、1987年)
【文献】Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubelら eds.、1987年)
【文献】PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullisら eds., 1994年)
【文献】Current Protocols in Immunology (J. E. Coliganら eds., 1991年)
【文献】Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons、1999年)
【文献】Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers、1997年)
【文献】Antibodies (P. Finch、1997年)
【文献】Antibodies: a practical approach (D. Catty., ed.、IRL Press、1988~1989年)
【文献】Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd and C. Dean, eds.、Oxford University Press、2000年)
【文献】Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999年)
【文献】The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds.、Harwood Academic Publishers、1995年)
【文献】Wu, T. T. and Kabat, E. A.、1970年 J. Exp. Med. 132: 211~250頁
【文献】Hutchinsonら、J Med Virol 2001年、65:561~565頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、少なくとも一部は、抗GM-CSF抗体、例えば1D2及びそのバリアントの開発に基づき、それは、ヒトGM-CSFに対して高い結合親和性及び特異性、並びにGM-CSF誘導細胞増殖及びサイトカイン産生(例えば、IL8及びCCL17)を阻害する強い活性を示した。
【0009】
従って、本開示の一態様は、ヒトGM-CSFに結合する単離された抗GM-CSF抗体(抗GM-CSF抗体)に関する。本明細書に開示の抗GM-CSF抗体は、
(i) GYTFTX1X2Yとして記載され、ここでX1がD、E、S、P、G、A、V、N、Q、C、W、R、T、又はLであってよく;X2がK、V、L、E、P、S、T、C、D、R、H、A、F、Q、又はNであってよい、重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、
(ii) INPX3SGGTとして記載され、ここでX3がK、L、M、E、H、S、V、N、C、F、P、W、G、A、I、R、T、又はQあってよい重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、及び
(iii) ARGX4DX5X6DX7GAADLとして記載され、ここでX4がR、V、S、A、C、L、P、I、T、G、M、E、又はQであってよく; X5がY、I、L、W、F、T、V、A、G、N、Y、又はSであってよく; X6がY、N、P、S、K、R、G、W、D、Q、L、H、F、A、T、V、又はMであってよく; X7 がQ、S、T、M、N、G、V、L、E、又はWであってよい重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)
を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含み得る。
【0010】
本明細書に開示の抗GM-CSF抗体は、
(i) QGINSX8として記載され、ここでX8がV、L、G、E、R、F、P、H、又はYであってよい軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、
(ii) AASとして記載される軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、及び
(iii) QQYYSX9X10RTとして記載され、ここでX9がP、R、N、又はCであってよく、X10がV、C、D、L、E、P、又はRであってよい軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)
を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、単離された抗体は、参照の抗GM-CSF抗体、例えば1D2と同じHC CDR及びLC CDRを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される単離された抗体は、配列番号1、3又は4のアミノ酸配列を含むVH及び/又は配列番号2のアミノ酸配列を含むVLを含み得る。
【0012】
任意の本明細書に開示の抗体は、ヒトGM-CSFに特異的に結合し得る。或いは、抗体は、非ヒトGM-CSF、例えば非ヒト霊長類(例えば、アカゲザル(Rhesus macaque))のGM-CSFと交差反応し得る。
【0013】
更に、本開示は、抗体1D2と同じエピトープに結合する、又はヒトGM-CSFへの結合をめぐって抗体1D2と競合する、単離された抗体を提供する。いくつかの例では、本明細書に開示の単離された抗体は、抗体1D2のHC CDR1、HC CDR2、及びHC CDR3と比較して、合わせて10以下のアミノ酸変化、好ましくは8以下のアミノ酸変化、及びより好ましくは5、4、3、2又は1以下のアミノ酸変化を含有するHC CDR1、HC CDR2、及びHC CDR3を含み得る。本明細書に開示のGM-CSF抗体は、抗体1D2のLC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3と比較して、合わせて10以下のアミノ酸変化、好ましくは8以下のアミノ酸変化、及びより好ましくは5、4、3、2又は1以下のアミノ酸変化を含有するLC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3を更に含み得る。
【0014】
或いは又は更に、本明細書に開示の単離された抗体は、抗体1D2の重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一である重鎖可変ドメイン(VH)、及び抗体1D2の軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一である軽鎖可変ドメイン(VL)を含み得る。
【0015】
本明細書に開示の任意の単離された抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体であり得る。いくつかの例では、本明細書に記載の任意の抗GM-CSF抗体は、全長抗体(例えば、IgG分子)であり得る。或いは、抗GM-CSF抗体は、これらの抗原結合断片であり得る。
【0016】
本明細書に開示の任意の抗GM-CSF抗体は、検出可能な標識とコンジュゲートされ得る。
【0017】
別の態様では、本明細書では、本明細書に記載の任意のGM-CSF抗体に結合する抗体を合わせてコードする核酸又は核酸セットを提供する。核酸セットは、一方が本明細書に開示の多重鎖GM-CSF抗体の重鎖をコードし、他方が軽鎖をコードする2つの核酸分子を指す。いくつかの例では、核酸又は核酸セットはベクター又はベクターセット、例えば、発現ベクター又は発現ベクターセットであってよい。本明細書では、本明細書に開示のベクター又はベクターセットを含む宿主細胞も提供する。そのような宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、又は哺乳動物細胞であってよい。
【0018】
更に、本開示は、(a)本明細書に開示のようにGM-CSFに結合するモノクローナル抗体又は抗原結合断片、又はコードする核酸、及び(b)薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物に注目する。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、緩衝剤、界面活性剤、塩、アミノ酸、抗酸化剤、糖誘導体(例えば、非還元糖、糖アルコール、ポリオール、二糖、又は多糖)を含み得る。そのような医薬組成物は、同じく本明細書に開示の任意の標的疾患を処置するために使用され得る。更に、本開示は、標的疾患の処置での使用のための医薬の製造のため、抗体、コードする核酸、又は本明細書に開示の抗体に関するその他の態様の使用を提供する。
【0019】
更に、本開示は、対象においてGM-CSFによって媒介される免疫応答を調節するための方法に注目し、該方法は、有効量の抗GM-CSF抗体又はそれらを含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。いくつかの例では、対象は、炎症性疾患、自己免疫疾患又はがんである疾患を有する、有することが疑われる、又はそのリスクのあるヒト患者である。
【0020】
代表的な自己免疫疾患としては、限定はされないが、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、脊椎関節症、強直性脊椎炎、多発性硬化症、乾癬、尋常性乾癬、急性痛風関節炎、又は骨関節炎が挙げられる。
【0021】
代表的な炎症性疾患としては、限定はされないが、川崎病、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)誘導性サイトカイン放出症候群、CAR-T誘導性関連脳症、びまん性間質性肺疾患(DPLD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、大動脈瘤、神経傷害性疼痛、又は移植片対宿主病(GVHD)が挙げられる。
【0022】
代表的ながんとしては、限定はされないが、白血病、胃癌、腺癌、中皮腫、乳がん、膵管腺癌、結腸直腸がん(CAC、例えば、結腸炎関連)、又は好酸球増加症候群(HES)が挙げられる。いくつかの例では、白血病は、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、又は慢性好酸球性白血病であってよい。
【0023】
本明細書に開示の任意の方法では、対象は疾患の更なる処置を受けた又は受けている。
【0024】
更に、本開示は、ヒトGM-CSFに結合する抗体を産生する方法を提供し、該方法は、(i)ヒトGM-CSFに結合する抗体の発現を可能にする条件下で、本明細書に開示の抗GM-CSF抗体を発現する宿主細胞を培養する工程;及び(ii)ヒトGM-CSFに結合する抗体の収集のため、培養した宿主細胞又は培養培地を回収する工程を含む。該方法は、(iii)ヒトGM-CSFに結合する抗体を精製する工程を更に含み得る。
【0025】
更に、本開示は、GM-CSFの存在を検出する方法も提供し、該方法は、(i) GM-CSFを含有することが疑われる生物試料を本明細書に開示の抗体と接触させる工程、及び(ii)試料中のGM-CSFへの抗体の結合を測定する工程を含む。生物試料は、GM-CSFと関連する疾患を有することが疑われる又はそのリスクがあるヒト対象から得ることができる。接触工程は、有効量の抗GM-CSF抗体を対象に投与する工程によって実施され得る。
【0026】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の詳細な説明に記載する。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明から、並びに添付の特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】
図1Aは、Biacore 3000装置(GE Healthcare社)を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)による、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)への抗体1D2の結合曲線を示すチャートである。
図1Aは、GM-CSFへの1D2の結合曲線を示すチャートである。
【
図1B】
図1Bは、Biacore 3000装置(GE Healthcare社)を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)による、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)への抗体1D2の結合曲線を示すチャートである。
図1Bは、GM-CSFへの抗体AMG203(ナミルマブ)の結合曲線を示すチャートである。
【
図1C】
図1Cは、Biacore 3000装置(GE Healthcare社)を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)による、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)への抗体1D2の結合曲線を示すチャートである。
図1Cは、GM-CSFへのMOR103(オチリマブ)の結合曲線を示すチャートである。
【
図2A】
図2Aは、抗体1D2が、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)においてSTAT5のGM-CSF誘導性リン酸化を阻害するが、IL-3誘導性STAT5リン酸化は阻害しないことを示すダイアグラムを含む図である。
図2Aは、抗体1D2が、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)においてSTAT5のGM-CSF誘導性リン酸化を阻害することを示すフローサイトメトリーチャートを含む図である。
【
図2B】
図2Bは、抗体1D2が、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)においてSTAT5のGM-CSF誘導性リン酸化を阻害するが、IL-3誘導性STAT5リン酸化は阻害しないことを示すダイアグラムを含む図である。
図2Bは、
図2Aのフローサイトメトリーチャートの平均蛍光強度を示すチャートである。
【
図3】
図3は、代表的な抗体1D2が、用量依存的な様式でGM-CSF誘導性TF-1細胞増殖を阻害することを示すチャートである。
【
図4】
図4は、代表的な抗体1D2が、用量依存的な様式でPBMCからのGM-CSF誘導性CCL17分泌を阻害することを示すチャートである。
【
図5A】
図5Aは、1D2のSDR変異抗体が、GM-CSF TF-1細胞増殖を阻害することができるが、その効果は野生型1D2抗体よりも弱いことを示すチャートである。
図5Aは、1D2-WT及びSDR変異体(103N、103N/32R及び103R/32R)によるGM-CSF誘導性TF-1細胞増殖の阻害を示すチャートである。
【
図5B】
図5Bは、1D2のSDR変異抗体が、GM-CSF TF-1細胞増殖を阻害することができるが、その効果は野生型1D2抗体よりも弱いことを示すチャートである。
図5Bは、1D2-WT及びSDR変異体(32R、54G、94N、100G、103N、103R、105N、54G/32R、103N/32R、103R/32R)によるGM-CSF誘導性TF-1細胞増殖の阻害を示すチャートである。
【
図6A】
図6Aは、1D2と比較したD89E及びD90E変異体の特徴を示すチャートである。
図6Aは、1D2のD89E(ED)変異抗体及びD90E(DE)変異抗体を示す概略図である。
【
図6B】
図6Bは、1D2と比較したD89E及びD90E変異体の特徴を示すチャートである。
図6Bは、Biacore 3000装置を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)による、GM-CSFへの野生型抗体1D2の結合曲線である。
【
図6C】
図6Cは、1D2と比較したD89E及びD90E変異体の特徴を示すチャートである。
図6Cは、Biacore 3000装置を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)による、GM-CSFへのED変異抗体の結合曲線である。
【
図6D】
図6Dは、1D2と比較したD89E及びD90E変異体の特徴を示すチャートである。
図6Dは、Biacore 3000装置を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)による、GM-CSFへのDE変異抗体の結合曲線である。
【
図6E】
図6Eは、1D2と比較したD89E及びD90E変異体の特徴を示すチャートである。
図6Eは、ED及びDE変異抗体が、野生型1D2抗体に匹敵するレベルで、GM-CSF誘導性TF-1細胞増殖を阻害することを示すチャートである。
【
図6F】
図6Fは、1D2と比較したD89E及びD90E変異体の特徴を示すチャートである。
図6Fは、ED及びDE変異抗体が、野生型1D2抗体に匹敵するレベルで、U937細胞によるGM-CSF誘導性IL-8分泌を阻害することを示すチャートである。
【
図6G】
図6Gは、1D2と比較したD89E及びD90E変異体の特徴を示すチャートである。
図6Gは、ED及びDE変異抗体が、野生型1D2抗体に匹敵するレベルで、PBMCによるGM-CSF誘導性CCL17分泌を阻害することを示すチャートである。
【
図6H】
図6Hは、1D2と比較したD89E及びD90E変異体の特徴を示すチャートである。
図6Hは、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)による、1D2、ED及びDE変異抗体の疎水性プロファイルを示すダイアグラムである。
【
図6I】
図6Iは、1D2と比較したD89E及びD90E変異体の特徴を示すチャートである。
図6Iは、動的光散乱(DLS)解析による1D2、ED及びDE変異抗体の凝集状態を示すダイアグラムである。
【
図7A】
図7Aは、異なる種由来のGM-CSF抗原への抗GM-CSF抗体の交差反応性を示すチャートである。
図7Aは、ヒトGM-CSF、マウスGM-CSF、アカゲザルGM-CSFへのAMG203、及び1D2の結合を示すチャートである。
【
図7B】
図7Bは、異なる種由来のGM-CSF抗原への抗GM-CSF抗体の交差反応性を示すチャートである。
図7Bは、ヒトGM-CSFへの1D2、ED及びDE変異体の結合を示すチャートである。
【
図7C】
図7Cは、異なる種由来のGM-CSF抗原への抗GM-CSF抗体の交差反応性を示すチャートである。
図7Cは、アカゲザルGM-CSFへの1D2、ED及びDE変異体の結合を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、少なくとも一部は、抗GM-CSF抗体、例えば、1D2及びそのバリアントの開発に基づき、それは、公知の治療用抗GM-CSF抗体、例えばAMG203及びMOR103と比較して予期しない優れた特徴を持った。例えば、抗体1D2は、表面プラズモン共鳴(SPR)により決定されたようにAMG203及びMOR103と比較してヒトGM-CSFに高い結合親和性(例えば、約5~9倍増加);GM-CSFシグナル伝達に対する強力な遮断活性(例えば、STAT5リン酸化の阻害);免疫細胞(例えば、単球)からのGM-CSF誘導性サイトカイン産生(例えばIL-8及びCCL17)の強力な阻害効果を示した。抗体1D2には優れた性質があるので、この抗体及びその機能性バリアントは、GM-CSFシグナル伝達の遮断に有利な性質を有し、従って本明細書に記載のもののようにGM-CSFと関連する疾患の処置に有益であると考えられた。
【0029】
従って、本明細書では、ヒトGM-CSFに結合することができる抗体、並びにそのような抗体をコードする核酸、並びに治療と診断目的のためのこれらの使用を提供する。また、本明細書では、抗体の治療及び/又は診断使用のためのキット、並びに抗GM-CSF抗体を産生するための方法も提供する。
【0030】
I.抗GM-CSF抗体
本開示は、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、例えば分泌されたGM-CSFに結合する単離された抗体を提供する。
【0031】
抗体(複数形で交換可能に使用される)は、免疫グロブリン分子の可変領域に局在する、少なくとも1つの抗原認識部位により、標的抗原(例えば、本開示のGM-CSF)に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、無傷な(すなわち、全長)ポリクローナル又はモノクローナル抗体だけでなく、それらの抗原結合断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv)、一本鎖(scFV)、これらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、二特異性抗体、ナノボディ、線状抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、並びに抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、及び共有結合的に改変された抗体を含む、必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変コンジュゲートも包含する。抗体は、任意のクラス、例えばIgD、IgE、IgG、IgA、又はIgM(又はこれらのサブクラス)の抗体、及び任意の特定のクラスである必要がない抗体を含む。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列により、免疫グロブリンは異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に更に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに相当する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元形状が周知である。本明細書で使用する、用語「単離された抗体」は、自然に会合した分子、すなわち抗体を含有する調製物の最大20乾燥質量%を構成する自然に会合した分子を実質的に含まない抗体を指す。純度は、任意の適切な方法、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、及びHPLCにより測定することができる。
【0032】
典型的な抗体分子は、通常抗原結合に関与する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。VH及びVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)として公知の、より保存されている領域が間に挟まっている「相補性決定領域」(「CDR」)としても公知の、超可変性の領域へと更に細分され得る。各VH及びVLは、典型的には3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順で配置される: FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、例えば、Kabat定義、IMGT定義、Chothia定義、AbM定義、及び/又は接触定義により、当技術分野で公知の方法論を使用して正確に同定することができ、それらは全て当技術分野で周知である。例えば、Kabat, E.A.ら(1991年) Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No. 91-3242; IMGT(登録商標)、the international ImMunoGeneTics information system(登録商標) http://www.imgt.org、Lefranc, M.-P.ら、Nucleic Acids Res.、27:209~212頁(1999年); Ruiz, M.ら、Nucleic Acids Res.、28:219~221頁(2000年); Lefranc, M.-P.、Nucleic Acids Res.、29:207~209頁(2001年); Lefranc, M.-P.、Nucleic Acids Res.、31:307~310頁(2003年); Lefranc, M.-P.ら、In Silico Biol.、5、0006 (2004年) [Epub]、5:45~60頁(2005年); Lefranc, M.-P.ら、Nucleic Acids Res.、33:D593~597頁(2005年); Lefranc, M.-P.ら、Nucleic Acids Res.、37:D1006~1012頁(2009年); Lefranc, M.-P.ら、Nucleic Acids Res.、43:D413~422頁(2015年); Chothiaら、(1989年) Nature 342:877頁; Chothia, C.ら(1987年) J. Mol. Biol. 196:901~917頁、Al-lazikaniら(1997年) J. Molec. Biol. 273:927~948頁;及びAlmagro, J. Mol. Recognit. 17:132~143頁(2004年)を参照されたい。hgmp.mrc.ac.uk及びbioinf.org.uk/absも参照されたい。本明細書で使用する場合、CDRは当技術分野で公知の任意の方法によって規定されたCDRを指し得る。同じCDRを有する2つの抗体は、2つの抗体が、同じ方法、例えばIMGT定義によって決定されたようにそのCDRの同じアミノ酸配列を有することを意味する。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のように単離された抗GM-CSF抗体は、GM-CSFに結合し、その活性を少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上)阻害することができる。阻害能の測定値を提供する、見かけの阻害定数(Kiapp又はKi,app)は、酵素活性を低減するのに必要な阻害剤の濃度に関係し、酵素濃度に依存しない。本明細書に記載の抗GM-CSF抗体の阻害活性は、当技術分野で公知の日常的な方法によって決定することができる。
【0034】
本明細書に記載する任意の抗体は、モノクローナル又はポリクローナルのいずれかであってよい。「モノクローナル抗体」は、同種抗体集団を指し、「ポリクローナル抗体」は、異種抗体集団を指す。これら2つの用語は、抗体の起源又はそれが作成される様式を限定しない。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗GM-CSF抗体は、本明細書に開示の参照抗体(例えば、1D2)とGM-CSF抗原の同じエピトープに結合する、又はGM-CSF抗原への結合をめぐって参照抗体と競合する。「エピトープ」は、抗体、例えばFab又は全長抗体が結合する標的化合物の部位を指す。エピトープは、線状であってよく、典型的には6~15アミノ酸長である。或いは、エピトープは、立体構造であってよい。本明細書に記載の参照抗体と同じエピトープに結合する抗体は、参照抗体と厳密に同じエピトープ又は実質的にオーバーラップするエピトープ(例えば、オーバーラップしないアミノ酸残基が3個より少ない、オーバーラップしないアミノ酸残基が2個より少ない、又はオーバーラップしないアミノ酸残基が1個だけである)に結合することができる。2つの抗体が、同種の抗原への結合をめぐって互いに競合するかどうかは、当技術分野で周知の競合アッセイによって決定することができる。そのような抗体は、当業者に公知のように同定することができ、例えば、実質的に類似の構造特性(例えば、相補性決定領域)を有するもの、及び/又は当技術分野で公知のアッセイによって同定されたものである。例えば、競合アッセイは、参照抗体の1つを使用して実施し、候補抗体が参照抗体と同じエピトープに結合するか、又はGM-CSF抗原へのその結合をめぐって競合するかどうか決定することができる。
【0036】
一つの例では、本明細書に記載の方法で使用する抗体は、ヒト化抗体であってよい。ヒト化抗体は、特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は非ヒト免疫グロブリン由来の最小の配列を含有するそれらの抗原結合断片である、非ヒト(例えばマウス)抗体の形態を指す。大部分は、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えばマウス、ラット、若しくはウサギのCDRからの残基によって置き換えられる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、相当する非ヒト残基によって置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体でもインポートしたCDR若しくはフレームワーク配列でも見出されないが、抗体性能を更に精密及び最適化するために含めた残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、全ての又は実質的に全てのCDR領域は非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、全ての又は実質的に全てのFR領域はヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含むであろう。抗体は、WO 99/58572に記載のように改変されたFc領域を有し得る。ヒト化抗体の他の形態は、オリジナルの抗体について変更されており、オリジナル抗体からの1つ以上のCDR「由来の」1つ以上のCDRとも呼ばれる、1つ以上のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ)を有する。ヒト化抗体は、親和性成熟も含み得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗GM-CSF抗体は、相当する標的抗原又はそれらのエピトープに特異的に結合する。抗原又はエピトープに「特異的に結合する」抗体は、当技術分野でよく理解される用語である。分子は、代替の標的と反応するよりも、より頻繁に、より早く、優れた存続及び/又は優れた親和性で特定の標的抗原と反応する場合、「特異的結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質に結合するよりも、優れた親和性、結合活性で、より容易に、及び/又は優れた存続で結合する場合、標的抗原又はエピトープに「特異的に結合する」。例えば、抗原(例えば、ヒトGM-CSF)又はその内部の抗原性エピトープに特異的に(又は優先的に)結合する抗体は、他の抗原又は同じ抗原内の他のエピトープに結合するよりも、優れた親和性、結合活性で、より容易に、及び/又は優れた存続でこの標的抗原に結合する抗体である。この定義により、例えば、第1の標的抗原に特異的に結合する抗体は第2の標的抗原に特異的に又は優先的に結合することができる又はできないことも理解される。このように、「特異的に結合する」又は「優先的に結合する」は、排他的な結合を(含み得るが)必ずしも必要としない。いくつかの例では、標的抗原又はこれらのエピトープに「特異的に結合する」抗体は、他の抗原又は同じ抗原内の他のエピトープに結合することができない(例えば、結合は従来のアッセイでは検出できない)。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、他の種からのGM-CSFと比較して、特定の種のGM-CSF(例えば、ヒトGM-CSF)に特異的に結合する。例えば、本明細書に記載の抗体は、マウスGM-CSFと比較してヒトGM-CSFに特異的に結合し得る。他の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトGM-CSF及び非ヒト種(例えば、アカゲザル等の非ヒト霊長類)からの1つ以上のGM-CSFと交差反応し得る。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト及びアカゲザルと似たような結合親和性で交差反応するが、マウスGM-CSFには著しく低い結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗GM-CSF抗体は、標的抗原(例えば、ヒトGM-CSF)又はそれらの抗原性エピトープに好適な結合親和性を有する。
【0039】
本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、会合定数と解離定数、それぞれK-onとK-offの比である見かけの会合定数又はKAを指す。KAは、解離定数(KD)の逆数である。本明細書に記載の抗GM-CSF抗体は、標的抗原又は抗原性エピトープに少なくとも10-8、10-9、10-10M、10-11M又はそれ以下の結合親和性(KD)を有し得る。例えば、抗GM-CSF抗体は、GM-CSFに対して10-9M、10-10M又はそれ以下の結合親和性を有し得る。結合親和性の増加は、KDの値の低下に相当する。第2の抗原と比較して第1の抗原への抗体のより高い親和性結合は、第2の抗原を結合するKA(又はKD値)よりも第1の抗原を結合するKAがより高いこと(又はより小さいKD値)によって示すことができる。そのような場合、抗体は、第2の抗原(例えば、第2の構造の同じ第1のタンパク質若しくはこれらの模倣物;又は第2のタンパク質)と比較して第1の抗原(例えば、第1の構造の第1のタンパク質又はこれらの模倣物)に特異性を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗GM-CSF抗体は、別のサイトカイン又はケモカイン(例えば、IL-6、IL1β、又はTNFα)に対する結合親和性と比較して、GM-CSFに対して高い結合親和性(高いKA又は低いKD)を有する。いくつかの実施形態では、抗GM-CSF抗体は、異なる種(例えば、マウス)からのGM-CSFに対するよりも特定の種のGM-CSF(例えば、ヒトGM-CSF)に対して高い結合親和性を有し得る。結合親和性の差(例えば特異性又は他の比較)は、少なくとも1.5、2、2.5、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1,000、5,000、10,000又は105倍であり得る。いくつかの実施形態では、任意の抗GM-CSF抗体は、更に親和性成熟し、標的抗原又はそれらの抗原性エピトープに対する抗体の結合親和性を増加させることができる。
【0040】
結合親和性(又は結合特異性)は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR)、蛍光活性化セルソーティング(FACS)又は分光学(例えば蛍光アッセイを使用する)を含む、様々な方法によって決定することができる。結合親和性を評価するための代表的な条件は、HBS-P緩衝液(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、0.005% (v/v)界面活性剤P20)及びPBS緩衝液(10mM PO4
-3、137mM NaCl、及び2.7mM KCl)中である。これらの技術は、標的タンパク質濃度の関数として、結合タンパク質の濃度を測定するために使用することができる。結合タンパク質の濃度([Bound])は、一般に、以下の式により遊離標的タンパク質([Free])の濃度に関係する。
[Bound]=[Free]/(Kd+[Free])
【0041】
KAの正確な決定を行うことは必ずしも必要ではないが、しかし、例えば、ELISA又はFACS解析等の方法を使用して決定された、親和性の定性的な測定値を得ることで十分であるので、KAに比例しており、従って、比較、例えば高い親和性が、例えば2倍高いかどうか決定するために使用して、親和性の定量的な測定値を得る、又は、例えば、機能性アッセイ、例えばin vitro若しくはin vivoアッセイでの活性により、親和性の推定値を得ることができる。
【0042】
以下に、その重鎖及び軽鎖CDR配列(IMGT定義による)並びに重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列を含む、代表的な抗GM-CSF抗体1D2を提供する。
【0043】
【0044】
1D2の重鎖可変ドメイン配列(CDRは太字体):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCEASGYTFTDKYLHWVRQAPGQGLEWMAWINPKSGGTFYAQNFKGRVTVTRDTSINTAYLELTSLRLDDTSTYYCARGRDYYDQGAADLWGQGTMVTVSS (配列番号1)
【0045】
1D2の軽鎖可変ドメイン:
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGINSVLAWYQQKPGKAPKLLLYAASKLESGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFGTYYCQQYYSPVRTFGQGTKVEIKR (配列番号2)
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の単離された抗GM-CSF抗体は、参照抗体(例えば、1D2)と同じ抗原結合を担う領域/残基、例えばCDRの同じ特異性決定残基(SDR)又はCDR全体を含み得る。抗原結合を担う領域/残基は、当技術分野で公知の方法によって、参照抗体の重鎖/軽鎖配列のアミノ酸配列から同定することができる。例えば、www.bioinf.org.uk/abs; Almagro, J. Mol. Recognit. 17:132~143頁 (2004年); Chothiaら、J. Mol. Biol. 227:799~817頁 (1987年)、並びに当技術分野で公知の又は本明細書に開示のその他を参照されたい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の抗GM-CSF抗体は、参照抗体、例えば1D2と同じVH及び/又はVLを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の抗GM-CSF抗体は、参照抗体、例えば1D2と同じ重鎖CDR及び/又は軽鎖CDRを有する。
【0047】
更に、抗体は、参照抗体(例えば、1D2)のCDR配列には見出されないが、参照抗体と等価な機能を有する抗体を開発するため、又は抗体性能を更に精密及び最適にするために含めた特異性決定残基を含み得る。本明細書で使用する場合、そのような抗体は、SDR変異抗体と呼ばれる。一般に、抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、その中に全て又は実質的に全てのCDR領域、及び全て又は実質的に全てのFR領域コンセンサス配列が含まれる。抗体は、オリジナル抗体と変更された1つ以上のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)を有し得る。そのような残基は、参照抗体(例えば、1D2)のin vitroでの親和性成熟によって同定することができる。参照抗体のin vitroでの親和性成熟を実施する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Liら、Mabs、2014年 Mar-Apr;6(2):437~45頁を参照されたい。
【0048】
いくつかの実施形態では、SDR変異抗体は、参照抗体、例えば1D2と比較して、GM-CSFに対する少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、105%又はそれ以上の結合親和性を有する。
【0049】
いくつかの実施形態では、単離された抗GM-CSF抗体は、重鎖CDR1(HC CDR1)、重鎖CDR2(HC CDR2)、及び重鎖CDR3(HC CDR3)を含む重鎖可変領域を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、IMGT定義に従って、HC CDR1は、GYTFTX1X2Yのアミノ酸配列を含み得る。X1は、D、E、S、P、G、A、V、N、Q、C、W、R、T、又はLであってよい。例えば、X1は、D、V、N、Q、C、W、又はRであってよい。1つの例では、X1はDであってよい。或いは又は更に、X2は、K、V、L、E、P、S、T、C、D、R、H、A、F、Q、又はNであってよい。いくつかの実施形態では、X2は、K、V、E、P、S、T、C、D、R、H、Q、又はNであってよい。1つの例では、X2はKであってよい。或いは又は更に、HC CDR2はINPX3SGGTのアミノ酸配列を含んでよく、ここでX3は、K、L、M、E、H、S、V、N、C、F、P、W、G、A、I、R、T、又はQであってよい。いくつかの例では、X3は、K、L、M、E、H、S、V、N、C、P、W、G、A、I、R、T、又はQであってよい。1つの例では、X3はKであってよい。或いは又は更に、HC CDR3はARGX4DX5X6DX7GAADLのアミノ酸配列を含んでよく、ここでX4は、R、V、S、A、C、L、P、I、T、G、M、E、又はQであってよい。いくつかの例では、X4は、R、V、S、A、C、P、I、T、G、M、又はEであってよい。1つの例では、X4はRであってよい。或いは又は更に、X5は、Y、I、L、W、F、T、V、A、G、N、Y、又はSであってよい。いくつかの例では、X5は、Y、L、W、F、V、G、N、Y、又はSであってよい。1つの例では、X5はYであってよい。或いは又は更に、X6は、Y、N、P、S、K、R、G、W、D、Q、L、H、F、A、T、V、又はMであってよい。いくつかの例では、X6は、Y、N、P、S、K、R、G、W、D、Q、H、F、A、T、V、又はMであってよい。1つの例では、X6はYであってよい。或いは又は更に、X7は、Q、S、T、M、N、G、V、L、E、又はWであってよい。いくつかの例では、X7は、Q、S、T、M、N、G、V、又はEであってよい。1つの例では、X7はQであってよい。
【0051】
抗GM-CSF抗体は、軽鎖CDR1(LC CDR1)、軽鎖CDR2(LC CDR2)、及び軽鎖CDR3(LC CDR3)を含む軽鎖可変領域を含み得る。いくつかの実施形態では、IMGT定義に従って、LC CDR1は、QGINSX8のアミノ酸配列を含んでよく、ここでX8は、V、L、G、E、R、F、P、H、又はYであってよい。1つの例では、X8はVであってよい。或いは又は更に、LC CDR2は、AASのアミノ酸配列を含んでよい。或いは又は更に、LC CDR3は、QQYYSX9X10RTのアミノ酸配列を含んでよく、ここでX9は、P、R、N、又はCであってよい。いくつかの例では、X9は、P、R、又はCであってよい。1つの例では、X9はPであってよい。或いは又は更に、X10は、V、C、D、L、E、P、又はRであってよい。1つの例では、X10はVであってよい。
【0052】
また、本明細書に開示の任意の代表的な抗GM-CSF抗体の機能性バリアントも本開示の範囲内である。機能性バリアントは、VH及び/又はVLに、又は1つ以上のHC CDR及び/若しくは1つ以上のLC CDRに、参照抗体と比較して1つ以上のアミノ酸残基の変化を含有し得るが、参照抗体と実質的に類似の結合及び生物活性(例えば、実質的に類似の結合親和性、結合特異性、阻害活性、抗炎症活性、又はこれらの組合せ)を維持している。
【0053】
代表的なWT(例えば、第2カラムの1D2)及び上記の残基X1~X10に相当するアミノ酸を含むSDR変異体をTable2(表2)に記載する。各残基を含むSDR変異抗体の結合親和性は、残基の下に列挙する。例えば、SDR変異体は、HC CDR1のX1残基に単一の変異を含み、それは参照抗体(例えば、1D2)と比較して63%のGM-CSFに対する結合親和性を有するEである。
【0054】
【0055】
いくつかの例では、本明細書に開示の単離された抗GM-CSF抗体は、HC CDR1、HC CDR2、及びHC CDR3を含み、参照抗体、例えば1D2のHC CDR1、HC CDR2、及びHC CDR3と比較して、合わせて10以下のアミノ酸変化(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1以下のアミノ酸変化)を含有し得る。「合わせて」は、3つのHC CDR全てにおけるアミノ酸変化の総数が、定義した範囲内であることを意味する。いくつかの例では、本明細書に開示の抗GM-CSF抗体は、HC CDR1、HC CDR2、及びHC CDR3を含んでよく、その少なくとも1つが、参照抗体、例えば1D2の対応するHC CDRとの5以下のアミノ酸変化(例えば、4、3、2、又は1以下のアミノ酸変化)を含有する。特定の例では、抗体は、HC CDR3を含み、参照抗体、例えば1D2のHC CDR3との5以下のアミノ酸変化(例えば、4、3、2、又は1以下のアミノ酸変化)を含有する。
【0056】
或いは又は更に、単離された抗GM-CSF抗体は、LC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3を含んでよく、参照抗体のLC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3と比較して、合わせて10以下のアミノ酸変化(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1以下のアミノ酸変化)を含有する。いくつかの例では、抗GM-CSF抗体は、LC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3を含んでよく、その少なくとも1つが、参照抗体の対応するLC CDRとの5以下のアミノ酸変化(例えば、4、3、2、又は1以下のアミノ酸変化)を含有する。特定の例では、抗体は、LC CDR3を含み、参照抗体のLC CDR3との5以下のアミノ酸変化(例えば、4、3、2、又は1以下のアミノ酸変化)を含有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の単離された抗GM-CSF抗体は、参照抗体、例えば1D2の重鎖CDRと、合わせて少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、又は98%)同一である重鎖CDRを含み得る。或いは又は更に、抗体は、参照抗体の軽鎖CDRと、合わせて少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、又は98%)同一である軽鎖CDRを含み得る。いくつかの実施形態では、抗GM-CSF抗体は、参照抗体、例えば1D2の重鎖可変領域と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、又は98%)同一である重鎖可変領域、及び/又は参照抗体の軽鎖可変領域と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、又は98%)同一である軽鎖可変領域を含み得る。
【0058】
2つのアミノ酸配列の「パーセント同一性」は、Karlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873~77頁、1993年のように改変されたKarlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264~68頁、1990年のアルゴリズムを使用して決定する。そのようなアルゴリズムは、Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403~10頁、1990年のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、語長=3によって実行され、目的のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、Altschulら、Nucleic Acids Res. 25(17):3389~3402頁、1997年に記載のようにGapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメーターが使用できる。
【0059】
いくつかの実施形態では、抗GM-CSF抗体は、抗体の特性、例えば安定性、酸化、異性化及び脱アミド化を改善する改変を含み得る。いくつかの例では、抗体は、参照抗体(例えば、1D2)のフレームワーク(FR領域)配列には見出されない残基を含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、参照抗体(例えば、1D2)の重鎖可変領域のFR領域は、アスパラギン酸-アスパラギン酸(DD)モチーフを含む。本明細書で使用する場合、DDモチーフは、抗体のアミノ酸配列内の2つの連続するアスパラギン酸残基を指す。製造、保存中、及びin vivoにおいて、治療抗体は多くの経路による分解のリスクがある(例えば、化学分解)。例えば、D残基の異性化及びアスパラギン(N)残基の脱アミノ化は、抗体分解の共通の経路である。D及びN分解配列モチーフの非限定的な例は、DD、NG、NN、NS、NT、DG、DS、DT、DHである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、重鎖可変ドメインの89位及び90位にDDモチーフを含む。
【0061】
いくつかの例では、アミノ酸残基変化は、保存的なアミノ酸残基置換であり得る。本明細書で使用する場合、「保存的なアミノ酸置換」は、アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対的な電荷又はサイズ特徴を変更しないアミノ酸置換を指す。バリアントは、当業者に公知の、ポリペプチド配列を変更するための方法に従って調製することができ、例えばそのような方法を編集した参考文献、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual、J. Sambrookらeds.、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1989年、又はCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M. Ausubelらeds.、John Wiley & Sons, Inc.、New Yorkに見出される。いくつかの例では、アミノ酸の保存的置換は、以下の群内のアミノ酸の間で行われる置換を含み得る: (a) E、D; (b) M、I、L、V; (c) F、Y、W; (d) K、R、H; (e) A、G; (f) S、T;及び(g) Q、N。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、重鎖可変ドメインの89位及び90位のDDモチーフの変異を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、重鎖可変ドメインのD89E(ED)又はD90E(DE)変異を含む。
【0063】
D89E(ED)又はD90E(DE)変異を含む、代表的な重鎖可変ドメイン配列は:
D89E(ED)変異を有する重鎖可変ドメイン配列(変異は太字体):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCEASGYTFTDKYLHWVRQAPGQGLEWMAWINPKSGGTFYAQNFKGRVTVTRDTSINTAYLELTSLRLEDTSTYYCARGRDYYDQGAADLWGQGTMVTVSS (配列番号3)
D90E(DE)変異を有する重鎖可変ドメイン配列:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCEASGYTFTDKYLHWVRQAPGQGLEWMAWINPKSGGTFYAQNFKGRVTVTRDTSINTAYLELTSLRLDETSTYYCARGRDYYDQGAADLWGQGTMVTVSS (配列番号4)
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、配列番号1、3又は4のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号2のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の抗GM-CSF抗体の重鎖は、重鎖定常領域(5 CH)又はその部分(例えば、CH1、CH2、CH3、又はこれらの組合せ)を更に含み得る。重鎖定常領域は、任意の好適なオリジン、例えばヒト、マウス、ラット、又はウサギのものであってよい。1つの特定の例では、重鎖定常領域は、ヒトIgG(ガンマ重鎖)、例えばIgG1、IgG2、又はIgG4由来である。1つの例では、重鎖定常領域は、サブクラスIgG1のものである。
【0066】
本明細書に記載の任意の抗GM-CSF抗体の軽鎖は、軽鎖定常領域(CL)を更に含んでよく、それは当技術分野で公知の任意のCLであってよい。いくつかの例では、CLはカッパ軽鎖である。他の例では、CLはラムダ軽鎖である。抗体重鎖及び軽鎖定常領域は、当技術分野で周知であり、例えばその両方とも参照により本明細書に組み込まれる、IMGTデータベース(www.imgt.org)又はwww.vbase2.org/vbstat.php.に提供されるものである。
【0067】
1つの特定の例では、本明細書に開示の抗GM-CSF抗体は、IgG1/カッパ全長抗体である。
【0068】
本明細書に記載のように、抗GM-CSF抗体は、限定はされないが、無傷の(すなわち、全長)抗体、それらの抗原結合断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv)、単鎖抗体、二重特異性抗体、又はナノボディを含む、任意の抗体形態であってよい。
【0069】
II.抗GM-CSF抗体の調製
本明細書に記載のように、GM-CSFに結合することができる抗体は、当技術分野で公知の任意の方法によって作成することができる。例えば、Harlow and Lane、(1998年) Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New Yorkを参照されたい。
【0070】
いくつかの実施形態では、標的抗原(例えば、GM-CSF)に特異的な抗体は、従来のハイブリドーマ技術によって作成することができる。全長標的抗原又はそれらの断片は、場合により、担体タンパク質、例えばKLHと結合され、その抗原に結合する抗体を生成する宿主動物を免疫するために使用することができる。宿主動物の免疫の経路及びスケジュールは、一般に、本明細書に更に記載するように抗体刺激及び産生の確立された及び従来の技術を踏まえている。マウス、ヒト化、及びヒト抗体の産生のための一般的な技術は、当技術分野で公知であり、本明細書に記載される。ヒトを含む任意の哺乳動物対象又はそれら由来の抗体産生細胞は操作され、ヒトを含む哺乳動物ハイブリドーマ細胞系の産生のための基礎として寄与することが検討されている。典型的には、宿主動物は、本明細書に記載の量を含む免疫原により、腹腔内、筋肉内、経口内、皮下、足底内、及び/又は皮内接種される。
【0071】
所望であれば、(例えばハイブリドーマによって産生される)目的の抗体(モノクローナル又はポリクローナル)は、シークエンスすることができ、次いでポリヌクレオチド配列は発現若しくは増殖のためのベクターへとクローニングすることができる。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞内でベクターに維持することができ、次いで宿主細胞を増殖させ、将来の使用のために凍結することができる。或いは、ポリヌクレオチド配列は、抗体を「ヒト化」する、又は抗体の親和性(親和性成熟)、若しくは他の特徴を改善する遺伝子操作に使用することができる。例えば、定常領域は、抗体が臨床試験及びヒトの処置に使用される場合、ヒト定常領域により似るように操作して免疫応答を避けることができる。抗体配列を遺伝子操作して、標的抗原に対する優れた親和性及びGM-CSFの活性を阻害する優れた有効性を得ることが望ましい。1つ以上のポリヌクレオチド変化を抗体に作成し、標的抗原へのその結合特異性を依然として維持できることは、当業者には明らかである。
【0072】
他の実施形態では、完全なヒト抗体は、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された市販のマウスを使用して得ることができる。より望ましい(例えば、完全ヒト抗体)又はより強い免疫応答を産生するように設計されるトランスジェニック動物は、ヒト化又はヒト抗体の生成にも使用することができる。そのような技術の例は、Amgen, Inc.社(Fremont、CA)からのXenomouseR(商標)及びMedarex, Inc.社(Princeton、NJ)からのHuMAb-MouseR(商標)及びTC Mouse(商標)、又はHarbour Antibodies BV社(Holland)からのH2L2マウスである。別の代替では、抗体は、ファージディスプレイ又は酵母技術による組換えにより作成することができる。例えば、米国特許第5,565,332号;米国特許第5,580,717号;米国特許第5,733,743号;及び米国特許第6,265,150号;並びにWinterら、(1994年) Annu. Rev. Immunol. 12:433~455頁を参照されたい。或いは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら、(1990年) Nature 348:552~553頁)を使用して、非免疫ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、in vitroでヒト抗体及び抗体断片を産生することができる。
【0073】
無傷な抗体(全長抗体)の抗原結合断片は、日常的な方法によって調製することができる。例えば、F(ab')2断片は、抗体分子のペプシン消化によって産生することができ、Fab断片は、F(ab')2断片のジスルフィド結合を還元することによって生成することができる。遺伝子操作した抗体、例えばヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、及び二重特異性抗体は、例えば、従来の組換え技術により産生することができる。1つの例では、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に単離することができ、従来の手順を使用してシークエンスすることができる(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として寄与する。いったん単離されると、DNAは1つ以上の発現ベクター内に置かれ、次いでそうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵母(CHO)細胞、ヒトHEK293細胞、又はミエローマ細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞でモノクローナル抗体の合成を得ることができる。例えば、PCT出願のWO 87/04462を参照されたい。次いで、DNAは、例えば、相同なマウス配列の代わりに、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列で置換することによって、Morrisonら、(1984年) Proc. Nat. Acad. Sci. 81:6851頁、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て又は一部を共有結合することによって改変することができる。この方法で、遺伝子操作した抗体、例えば「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体を調製することができ、標的抗原の結合特異性を有する。
【0074】
一本鎖抗体は、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列と軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を連結することによって、組換え技術により調製することができる。好ましくは、可動性リンカーは、2つの可変領域の間に組み込まれる。
【0075】
或いは、一本鎖抗体の産生について記載した技術(米国特許第4,946,778号及び米国特許第4,704,692号)は、ファージ又は酵母scFvライブラリーの産生に適用することができ、GM-CSFに特異的なscFvクローンは日常的な手順に従ってライブラリーから同定することができる。陽性クローンは、更なるスクリーニングにかけGM-CSF活性を阻害するものを同定することができる。
【0076】
当技術分野で公知の方法及び本明細書に記載の方法に従って得られた抗体は、当技術分野で周知の方法を使用して特徴づけることができる。例えば、1つの方法は、抗原が結合するエピトープの同定、又は「エピトープマッピング」である。例えばHarlow and Lane、Using Antibodies, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1999年の第11章に記載のように、抗体-抗原複合体の結晶構造の解析、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、及び合成ペプチドベースアッセイを含む、タンパク質のエピトープの位置をマッピング及び特徴づける当技術分野で公知の多くの方法がある。1つの例では、エピトープマッピングは、タンパク質分解及び質量分析と組み合わせてH/D-Ex(水素重水素交換)を使用して達成することができる。更なる例では、エピトープマッピングは、抗体が結合する配列を決定するために使用することができる。エピトープは、一本鎖のアミノ酸に含有される線状エピトープであってよく、又は一本鎖(一次構造の線状配列)に必ずしも含有されなくてもよいアミノ酸の三次元相互作用によって形成された構造エピトープであってよい。様々な長さのペプチド(例えば、少なくとも4~6アミノ酸長)を単離又は合成(例えば、組換えにより)し、抗体との結合アッセイに使用することができる。別の例では、抗体が結合するエピトープは、標的抗原配列由来の重複するペプチドの使用及び抗体による結合の決定により、系統的スクリーニングで決定することができる。遺伝子断片発現アッセイにより、標的抗原をコードするオープンリーディングフレームは、無作為又は特定の遺伝子構築物によるかのいずれかで断片化され、抗原の発現された断片の試験する抗体との反応性が決定される。例えば、遺伝子断片は、PCRによって産生することができ、次いで放射性アミノ酸の存在下で、in vitroでタンパク質へと転写及び翻訳することができる。次いで、放射線標識した抗原断片への抗体の結合は、免疫沈降及びゲル電気泳動によって決定する。特定のエピトープは、ファージ粒子の表面にディスプレイした無作為なペプチド配列の大きなライブラリーを使用することによっても同定することができる(ファージライブラリー)。或いは、重複するペプチド断片の規定されたライブラリーは、簡単な結合アッセイで試験抗体への結合を試験することができる。更なる例では、抗原結合ドメインの変異導入、ドメインスワッピング実験、及びアラニンスキャン変異導入を実施して、エピトープ結合に必要とされる、十分な、及び/又は必要な残基を同定することができる。例えば、ドメインスワッピング実験は、GM-CSFポリペプチドの様々な断片が、近縁であるが抗原性の異なるタンパク質(例えば、CD28タンパク質)由来の配列と置き換えられた(スワップされた)、標的抗原の変異体を使用して実施することができる。変異体GM-CSFへの抗体の結合を評価することにより、抗体結合への特定の抗原断片の重要性を評価することができる。或いは、競合アッセイは、同じ抗原に結合することが公知の他の抗体を使用して実施し、抗体が他の抗体と同じエピトープへと結合するかどうか決定することができる。競合アッセイは、当業者には周知である。
【0077】
いくつかの例では、抗GM-CSF抗体は、以下に例示するように組換え技術によって調製する。本明細書に記載の抗GM-CSF抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸は、1つの発現ベクターにクローニングすることができ、各ヌクレオチド配列は好適なプロモーターとの機能し得るような連結内にある。1つの例では、重鎖及び軽鎖をコードするそれぞれのヌクレオチド配列は、異なるプロモーターとの機能し得るような連結内にある。或いは、重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、単一のプロモーターとの機能し得るような連結内にあってよく、重鎖と軽鎖の両方が同じプロモーターから発現される。必要な場合、配列内リボソーム侵入部位(IRES)を、重鎖及び軽鎖コード配列の間に挿入することができる。
【0078】
いくつかの例では、抗体の2つの鎖をコードするヌクレオチド配列は、2つのベクターへとクローニングすることができ、それらは、同じ又は異なる細胞へと導入することができる。2つの鎖が異なる細胞で発現される場合、それらの各々は、発現する宿主細胞から単離することができ、単離された重鎖及び軽鎖は、混合し、抗体の形成を可能にする好適な条件下でインキュベートすることができる。
【0079】
一般に、抗体の1つ又は全ての鎖をコードする核酸配列は、当技術分野で公知の方法を使用して、好適なプロモーターとの機能し得るような連結内で好適な発現ベクターへとクローニングすることができる。例えば、ヌクレオチド配列及びベクターは、好適な条件下で、制限酵素と接触させ、各分子に相補的な末端を作成することができ、それらは互いに対となり、リガーゼによって一緒に結合することができる。或いは、合成核酸リンカーを、遺伝子の末端にライゲートすることができる。これらの合成リンカーは、ベクター内の特定の制限部位に相当する核酸配列を含有する。発現ベクター/プロモーターの選択は、抗体の産生に使用する宿主細胞の型に依存するであろう。
【0080】
様々なプロモーターを本明細書に記載の抗体の発現に使用することができ、限定はされないが、サイトメガロウイルス(CMV)中間-初期プロモーター(intermediate early promoter)、ウイルスLTR、例えばラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1 LTR、サルウイルス40 (SV40)初期プロモーター、大腸菌lac UVプロモーター、及びヘルペス単純tkウイルスプロモーターが挙げられる。
【0081】
制御可能なプロモーターも使用することができる。そのような制御可能なプロモーターとしては、lacオペレーターを保持する哺乳動物細胞プロモーターからの転写を制御する転写制御因子として大腸菌由来のlacリプレッサーを使用するもの[Brown, Mら、Cell, 49:603~612頁(1987年)]、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を使用するもの[Gossen, M., and Bujard, H.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547~555115頁(1992年); Yao, F.ら、Human Gene Therapy、9:1939~1950頁(1998年); Shockelt, P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、92:6522~6526頁(1995年)]が挙げられる。他のシステムは、FK506二量体、エストラジオール(astradiol)を使用するVP16若しくはp65、RU486、ジフェノールムリスレロン(diphenol murislerone)、又はラパマイシンが挙げられる。誘導性のシステムは、特にInvitrogen社、Clontech社、及びAriad社から入手可能である。
【0082】
オペロンと共にリプレッサーを含む制御可能なプロモーターを使用することができる。一実施形態では、lacオペレーターを保持する哺乳動物細胞プロモーターからの転写を制御するために転写制御因子として大腸菌由来のlacリプレッサーを機能させることができ[M. Brownら、Cell, 49:603~612頁(1987年)]; Gossen及びBujard (1992年); [M. Gossenら、Natl. Acad. Sci. USA、89:5547~5551頁(1992年)]は、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を転写活性化因子(VP 16)と組み合わせて、tetR哺乳動物細胞転写活性化因子融合タンパク質、tTa(tetR-VP 16)を作製し、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモーター由来のtetOを保持する最小プロモーターと組み合わせて哺乳動物細胞において遺伝子発現を制御するためのtetR-tetオペレーターシステムを作製した。一実施形態では、テトラサイクリン誘導性スイッチが使用される。テトラサイクリンオペレーターがCMVIEプロモーターのTATAエレメントの下流に適切に配置されると、tetR哺乳動物細胞転写因子融合誘導体よりもむしろテトラサイクリンリプレッサー単独(tetR)が、哺乳動物細胞において強力なトランスモジュレーターとして機能して、遺伝子発現を制御することができる(Yaoら、Human Gene Therapy)。このテトラサイクリン誘導性スイッチの1つの特別な利点は、その制御可能な効果を達成するために、場合によっては細胞に有害になり得るテトラサイクリンリプレッサー-哺乳動物細胞トランス活性化因子又はリプレッサー融合タンパク質の使用を必要としないことである(Gossenら、Natl. Acad. Sci. USA、89:5547~5551頁(1992年); Shockett ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、92:6522~6526頁(1995年))。
【0083】
更に、ベクターは、例えば、以下の一部又は全てを含有することができる:選択可能マーカー遺伝子、例えば、哺乳動物細胞において、安定な又は一過性のトランスフェクタントを選択するためのネオマイシン遺伝子;高レベル転写のための、ヒトCMVの最初期遺伝子由来のエンハンサー/プロモーター配列;mRNAの安定性のための、SV40由来の転写終結シグナル及びRNAプロセシングシグナル;SV40ポリオーマの複製起点及び適切なエピソーム複製のためのColE1;配列内リボソーム結合部位(IRES);多用途の多重クローニング部位;並びにセンス及びアンチセンスRNAのin vitro転写のためのT7及びSP6のRNAプロモーター。導入遺伝子を含有するベクターの産生に好適なベクター及び方法は、当技術分野で周知であり、入手可能である。本明細書に記載の方法を実行するために有用なポリアデニル化シグナルの例としては、限定はされないが、ヒトコラーゲンIポリアデニル化シグナル、ヒトコラーゲンIIポリアデニル化シグナル、及びSV40ポリアデニル化シグナルが挙げられる。
【0084】
任意の抗体をコードする核酸を含む、1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)は、抗体を産生するための好適な宿主細胞へと導入することができる。宿主細胞は、抗体又はそれらの任意のポリペプチド鎖の発現に好適な条件下で培養することができる。そのような抗体又はそれらのポリペプチド鎖は、従来の方法、例えば親和性精製によって培養細胞により(例えば、細胞又は培養上清から)回収することができる。必要であれば、抗体のポリペプチド鎖は、抗体の産生を可能にする好適な期間、好適な条件下でインキュベートすることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体を調製する方法は、同じく本明細書に記載の抗GM-CSF抗体の重鎖と軽鎖両方をコードする組換え発現ベクターを含む。組換え発現ベクターは、従来の方法、例えばリン酸カルシウム媒介トランスフェクションによって好適な宿主細胞(例えば、dhfr-CHO細胞)へと導入することができる。陽性トランスフォーマント宿主細胞は、細胞から又は培養培地から回収することができる、抗体を形成する2つのポリペプチド鎖の発現を可能にする好適な条件下で選択及び培養することができる。必要であれば、宿主細胞から回収した2つの鎖は、抗体の形成を可能にする好適な条件下でインキュベートすることができる。
【0086】
1つの例では、2つの組換え発現ベクターを提供し、一方は抗GM-CSF抗体の重鎖をコードし、他方は抗GM-CSF抗体の軽鎖をコードする。2つの組換え発現ベクターの両方とも、従来の方法、例えばリン酸カルシウム媒介トランスフェクションによって好適な宿主細胞(例えば、dhfr-CHO細胞)へと導入することができる。
【0087】
或いは、それぞれの発現ベクターは、好適な宿主細胞へと導入することができる。陽性トランスフォーマントは、抗体のポリペプチド鎖の発現を可能にする好適な条件下で選択及び培養することができる。2つの発現ベクターを、同じ宿主細胞へと導入する場合、そこから産生される抗体は、宿主細胞から又は培養培地から回収することができる。必要であれば、ポリペプチド鎖を、宿主細胞から又は培養培地から回収し、次いで、抗体の形成を可能にする好適な条件下でインキュベートすることができる。2つの発現ベクターを異なる宿主細胞へと導入する場合、それらはそれぞれ、相当する宿主細胞から又は相当する培養培地から回収することができる。2つのポリペプチド鎖は、次いで、抗体の形成に好適な条件下でインキュベートすることができる。
【0088】
標準的な分子生物学技術を使用して、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞にトランスフェクトし、トランスフォーマントを選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収する。例えば、いくつかの抗体は、プロテインA又はプロテインG結合マトリックスによる親和性クロマトグラフィーによって単離することができる。
【0089】
本明細書に記載の抗GM-CSF抗体の重鎖、軽鎖、又は両方をコードする任意の核酸、それらを含有するベクター(例えば、発現ベクター)、及びベクターを含む宿主細胞は本開示の範囲内である。
【0090】
III.医薬組成物
本明細書に記載の抗体、並びにコードする核酸又は核酸セット、それらを含むベクター、又はベクターを含む宿主細胞は、薬学的に許容される担体(賦形剤)と混合し、標的疾患の処置での使用のための医薬組成物を形成することができる。「許容される」は、担体が組成物の活性成分と適合性でなければならず(及び、好ましくは活性成分を安定化することができる)、処置される対象に有害でないことを意味する。緩衝液を含む薬学的に許容される賦形剤(担体)は、当技術分野で周知である。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (2000年) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K. E. Hoover参照。
【0091】
本明細書に開示の医薬組成物を含有する抗GM-CSF抗体は、好適な緩衝剤を更に含んでよい。緩衝剤は、溶液のpHを、別の酸又は塩基の追加後に選んだ値付近に維持するために使用する弱酸又は塩基である。いくつかの例では、本明細書に開示の緩衝剤は、(細胞の呼吸によって産生される)二酸化炭素濃度の変化にもかかわらず生理学的なpHを維持することができる緩衝剤であり得る。代表的な緩衝剤としては、限定はされないが、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)緩衝液、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩(DPBS)緩衝液、又はリン酸緩衝生理食塩(PBS)緩衝液が挙げられる。そのような緩衝液は、リン酸水素二ナトリウム及び塩化ナトリウム、又はリン酸二水素カリウム及び塩化カリウムを含んでよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物中の緩衝剤は、pH値を約5~8に維持することができる。例えば、医薬組成物のpHは、約7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、又は8.0であり得る。他の例では、医薬組成物は、7より低いpH値、例えば、約7、6.8、6.5、6.3、6、5.8、5.5、5.3、又は5を有してもよい。
【0093】
本明細書に記載の医薬組成物は、1つ以上の好適な塩を含む。塩は、酸と塩基の中和反応によって形成することができるイオン化合物である。(Skoog, D.A; West, D.M.; Holler, J.F.; Crouch, S.R. (2004年). "chapters 14~16". Fundamentals of Analytical Chemistry (8th ed.))。塩は、関連づけられた数のカチオン(陽電荷のイオン)及びアニオン(陰イオン)から構成され、産物は電気的に中性である(実効電荷がない)。本明細書に記載のイオンは、1つ以上の価電子を得、若しくは失って、イオンに実効陽電荷若しくは陰電荷が付与された原子又は分子である。化学種が電子よりも陽子を有する場合、実効陽電荷を持つ。陽子よりも電子がある場合、種は陰電荷を持つ。
【0094】
本明細書に記載のカチオン(+)は、陽子よりも少ない電子を有するイオンであり、陽電荷を与える。(Douglas W. Haywick、(2007~2008年). "Elemental Chemistry")。1つの陽電荷を持つカチオンは、1価カチオンと呼ぶことができ;1つを超える陽電荷を持つカチオンは、多価(polyvalent)カチオン又は多価(multivalent)カチオンと呼ぶことができる。1価カチオンの非限定的な例は、水素(H+)、ナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、アンモニウム(NH4+)、リチウム(Li+)、一価銅(Cu+)、銀(Ag+)等である。多価カチオンの非限定的な例は、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)、バリウム(Ba2+)、ベリリウム(Be2+)、銅(Cu2+)、第1鉄(Fe2+)、第2鉄(Fe3+)、鉛(II)(Pb2+)、鉛(IV)(Pb4+)、マンガン(II)(Mn2+)、ストロンチウム(Sr2+)、スズ(IV)(Sn4+)、亜鉛(Zn2+)等である。
【0095】
本明細書に記載のアニオンは、陽子よりも電子を多く有するイオンであり、実効陰電荷を与える。アニオンの非限定的な例は、アジド(N3-)、臭化物(Br-)、塩化物(Cl-)、フッ化物(F-)、水素化物(H-)、ヨウ化物(I-)、窒化物(N-)、酸化物(O2-)、硫化物(S2-)、炭酸(CO3
2-)、炭酸水素(HCO3
-)、硫酸水素(HSO4
-)、水酸化物(OH-)、リン酸二水素(H2PO4
-)、硫酸(SO4
2-)、亜硫酸(SO3
2-)、ケイ酸(SiO3
2-)等である。
【0096】
本明細書に記載の医薬組成物での使用のための好適な塩は、1価カチオン及び1価又は多価アニオンを含有してもよい。或いは、本明細書に記載の医薬組成物での使用のための塩は、1価又は多価カチオン及び1価アニオンを含有してもよい。代表的な塩としては、限定はされないが、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、炭酸カルシウム(Ca2CO3)、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0097】
本明細書に記載の医薬組成物は、1つ以上の好適な表面活性剤、例えば界面活性剤を含む。界面活性剤は、2つの液体間、気体と液体間、又は液体と固体間の表面張力(又は界面張力)を下げる化合物である。界面活性剤は、洗浄剤、湿潤剤、乳剤、発泡剤、及び分散剤として作用し得る。好適な界面活性剤としては、特に、非イオン性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、Tween(商標)20、40、60、80又は85)及び他のソルビタン(例えば、Span(商標)20、40、60、80又は85)が挙げられる。表面活性剤を有する組成物は、都合よく0.05%と5%の間の表面活性剤を含み、0.1%と2.5%の間であってもよい。必要であれば、他の成分、例えば、マンニトール又は他の薬学的に許容されるビヒクルを添加することができることは当然である。
【0098】
本明細書に記載の抗GM-CSFを含む医薬組成物は、1つ以上のアミノ酸を含み得る。代表的なアミノ酸としては、限定はされないが、グリシン、ヒスチジン、又はアルギニンが挙げられる。
【0099】
医薬組成物は、1つ以上の抗酸化剤も含んでもよい。本明細書で使用する抗酸化剤は、組成物に含有される活性成分の酸化的分解を防ぐ又は遅らせる薬剤である。本明細書で使用する抗酸化剤は、フェノール系抗酸化剤(真の抗酸化剤と呼ばれることもある)、還元剤、又はキレート剤であってよい。フェノール系抗酸化剤は、遊離のラジカルと反応して、連鎖反応を遮断する立体傷害性フェノールである。還元剤は、低い酸化還元電位を有し、従って保護しようとする薬物よりも容易に酸化される化合物である。還元剤は、培地から酸素を除去し、従って、薬物の酸化を遅らせる又は防ぐ。キレート剤は、酸化協力者と呼ばれることがある。金属イオン、例えばCo2+、Cu2+、Fe3+、Fe2+、及びMn2+は、誘導期間を短くし、酸化速度を増加させる。これらの微量の金属イオンは、製造中に薬物産物へと頻繁に導入される。キレート剤は、そのような抗酸化活性を持たないが、触媒金属イオンと反応し、それらを不活性にすることによりフェノール系抗酸化剤の作用を増強する。
【0100】
本明細書に記載の医薬組成物は、糖誘導体を含んでもよい。本明細書で使用する場合、糖誘導体は、糖及び糖由来の有機化合物を包含する。いくつかの例では、糖誘導体は、非還元糖、糖アルコール、ポリオール、二糖又は多糖であってよい。
【0101】
本方法で使用する医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤を、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で含み得る。(Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (2000年) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K. E. Hoover)。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される用量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース又はデキストランを含む他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース及びソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成カウンターイオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤、を含み得る。
【0102】
いくつかの例では、本明細書に記載の医薬組成物は、当技術分野で公知の、例えばEpsteinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688頁(1985年); Hwangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030頁(1980年);並びに米国特許第4,485,045号及び米国特許第4,544,545号に記載の方法によって調製することができる抗体(又はコードする核酸)を含有するリポソームを含む。循環時間を増強したリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示される。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む液体組成物での逆相蒸発法により生成することができる。リポソームは、指定した孔サイズのフィルターを通して除外し、所望の直径のリポソームを得る。
【0103】
抗体、又はコードする核酸は、例えば、コアセルベーション技術によって、又は界面重合によって調製したマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリメタクリル酸メチルマイクロカプセルに、コロイド薬送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微粒子、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)に、又はマイクロエマルションに、封入することもできる。そのような技術は、当技術分野で公知であり、例えば、Remington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing (2000年)を参照されたい。
【0104】
他の例では、本明細書に記載の医薬組成物は、徐放性フォーマットで製剤化することができる。徐放性製剤の好適な例は、マトリックスが、成形品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形態である、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含む。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール)(poly(vnylalcohol))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸と7-エチル-L20グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸リュープロリドからなる注射用微粒子)等の分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、イソ酪酸酢酸スクロース、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0105】
他の例では、本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、腫瘍微小環境での1つ又は複数のプロテアーゼによる選択的プロテアーゼ切断能を可能にする抗体の抗原結合部位のペプチドによるマスキングによって、特定のプロテアーゼ生物技術を実行することによって、組織又は腫瘍への結合選択性に影響する、徐放性フォーマット、例えば、Probody(商標)又はConditionally Active Biologics(商標)で製剤化することができる。活性化は、正常な微小環境で可逆的に製剤化することができる。
【0106】
in vivo投与のために使用される医薬組成物は滅菌されていなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって、容易に達成される。治療用抗体組成物は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器内、例えば、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する静脈注射溶液バッグ又はバイアルに入れられる。
【0107】
本明細書に記載の医薬組成物は、単位剤形、例えば、経口、非経口若しくは直腸投与、又は吸入若しくは吹送による投与のための錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤若しくは懸濁剤、又は座薬であってよい。
【0108】
錠剤等の固体組成物を調製するため、主要な有効成分は、医薬担体、例えば従来の錠剤成分、例えばコーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム又はガム、及び他の医薬希釈剤、例えば水と混合し、本発明の化合物の均質な混合物、又は非毒性の薬学的に許容されるその塩を含有する固体予備製剤組成物を形成することができる。これらの予備製剤組成物を均質と称する場合、有効成分が組成物全体に均一に分散され、組成物が、同じくらい有効な単位剤形、例えば錠剤、丸剤及びカプセル剤に容易に細分され得ることを意味する。次いで、この固体予備製剤組成物は、0.1~約500mgの本発明の有効成分を含有する上記タイプの単位投与剤型へと細分される。新規の組成物の錠剤又は丸剤は、長期作用の利点を与える剤形を提供するために、コーティング又は他の方法で調合することができる。例えば、錠剤又は丸剤は、内部投与成分及び外部投与成分を含むことができ、後者は前者の外被の形態である。2つの成分は、胃内の分解に抵抗する働きをする腸溶層によって分離され、内部成分が十二指腸を無傷で通過するか、又は放出を遅らせることを可能にする。様々な材料を、そのような腸溶層又はコーティングのために使用することができ、その材料は、複数のポリマー酸及びシェラック、セチルアルコール、及びアセチルセルロース等の材料とポリマー酸の混合物を含む。
【0109】
好適な乳剤は、市販の脂肪乳剤、例えば、イントラリピッド(Intralipid) (商標)、リポシン(Liposyn) (商標)、インフォヌトロール(Infonutrol) (商標)、リポフンディン(Lipofundin) (商標)及びリピフィサン(Lipiphysan) (商標)を使用して調製することができる。有効性分は、予め混合された乳剤組成物に溶解することができるか、或いは10の油(例えば、大豆油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、コーン油又はアーモンド油)に溶解することができ、リン脂質(例えば、卵黄リン脂質、大豆リン脂質又は大豆レシチン)と水との混合時に形成される乳剤であってよい。乳剤の浸透圧を調整するため、他の成分、例えばグリセロール又はグルコースが添加され得ることが理解される。好適な乳剤は、典型的には、20%までの油、例えば5~20%の間の油を含有する。脂肪乳剤は、0.1~1.0.imの間、特に0.1~0.5.imの間の脂肪滴を含み、5.5~8.0の範囲のpHを有することができる。乳剤組成物は、抗体をイントラリピッド(Intralipid) (商標)と混合することによって調製されたもの、又はそれらの成分(大豆油、卵黄リン脂質、グリセロール及び水)であってよい。
【0110】
吸入又は吹送のための医薬組成物は、薬学的に許容される水性若しくは有機溶媒、又はそれらの組合せ、及び散剤における溶液及び懸濁液を含む。液体又は固体組成物は、上記のような好適な薬学的に許容される賦形剤を含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、局所的又は全身効果のために、経口又は経鼻の呼吸経路によって投与される。好ましくは、無菌の薬学的に許容される溶媒中の組成物は、ガスを使用することによって噴霧され得る。噴霧された溶液は、噴霧装置から直接吸入されてもよく、又は噴霧装置は、フェイスマスク、テント又は間欠的陽圧呼吸機に取り付けられてもよい。溶液、懸濁液又は散剤組成物は、適切な様式で製剤を送達する装置から好ましくは経口又は経鼻で投与され得る。
【0111】
IV.治療適用
本明細書に記載の、任意の抗体、並びにコードする核酸又は核酸セット、それらを含むベクター、又はベクターを含む宿主細胞は、GM-CSF媒介障害の処置に有用である。本明細書で使用する場合、GM-CSF媒介疾患は、GM-CSFのレベルの増加又はGM-CSFへの感受性の増加と関連する任意の医学的状態を指す。GM-CSF媒介疾患の非限定的な例は、GM-CSFと関連する免疫応答の調節を必要とする炎症性疾患、自己免疫疾患、がん、感染性疾患又は他の障害である。
【0112】
本明細書に開示の方法を実行するため、本明細書に記載の有効量の医薬組成物は、静脈内投与等好適な経路を介して、例えば、ボーラスとして、又はある期間にわたる連続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、髄腔内、経口、吸入又は局所経路によって、処置を必要とする対象(例えばヒト)に投与することができる。ジェット噴霧器及び超音波噴霧器を含む、液体製剤のための市販の噴霧器は、投与に有用である。液体製剤は直接噴霧することができ、凍結乾燥粉末は復元後に噴霧することができる。或いは、本明細書に記載の抗体は、フルオロカーボン製剤及び定量噴霧式吸入器を使用してエアロゾル化することができ、凍結乾燥粉末及び破砕粉末として吸入することができる。
【0113】
本明細書に記載の方法によって処置される対象は、哺乳動物、より好ましくはヒトであってよい。哺乳動物としては、限定はされないが、家畜動物、スポーツ動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス及びラットが挙げられる。処置を必要とするヒト対象は、炎症性疾患、自己免疫疾患、がん、感染性疾患、又は免疫応答の調節を必要とする他の障害を有する、そのリスクがある、又は有することが疑われるヒト患者であり得る。標的疾患又は障害を有する対象は、日常的な医学的検査、例えば、研究室検査、臓器機能検査、CTスキャン、又は超音波によって同定することができる。任意のそのような標的疾患/障害を有することが疑われる対象は、1つ以上の疾患/障害の症状を示すであろう。疾患/障害のリスクのある対象は、そのような疾患/障害の1つ以上のリスク因子を有する対象であってよい。
【0114】
本明細書に記載の方法及び組成物は、炎症性疾患の処置に使用することができる。炎症性疾患の非限定的な例は、川崎病、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)誘導性サイトカイン放出症候群、CAR-T誘導性関連脳症、びまん性間質性肺疾患(DPLD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、大動脈瘤、神経傷害性疼痛、移植片対宿主病(GVHD)、糸球体腎炎、精巣上体炎、アテローム性動脈硬化症、エリスロポエチン耐性、移植片対宿主病、移植片拒絶、胆汁性肝硬変、及びアルコール性肝硬変を含むアルコール誘発性肝臓損傷である。
【0115】
本明細書で使用する場合、川崎病は、皮膚、口、及びリンパ節を含む病気であり、ほとんどの場合、5歳以下の子供に発症する。原因は未知であるが、症状が初期に発見されると、川崎病を患う子供は数日で完全に回復する。未処置の場合、心臓に影響し得る深刻な合併症をもたらし得る。
【0116】
本明細書に記載の方法及び組成物は、自己免疫疾患の処置に使用することができる。自己免疫疾患の例は、若年性関節リウマチを含む関節リウマチ、川崎病、強直性脊椎炎を含む脊椎関節症、潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む炎症性腸疾患、多発性硬化症、アディソン病、糖尿病(I型)、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、重症筋無力症、天疱瘡、乾癬、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、自己免疫肝炎誘発性肝臓損傷、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、及びシェーグレン症候群である。
【0117】
本明細書で使用する場合、「関節リウマチ」は、身体中の滑膜関節炎症によって特徴づけられる自己免疫疾患の型を指す。疾患の初期症状は、関節痛であり、関節変形、又は体の臓器、例えば血管、心臓、肺、皮膚、及び筋肉における損傷へと進行する。
【0118】
本明細書に記載の方法及び組成物は、がんの処置に使用することができる。自己免疫疾患の例は、白血病、胃癌、腺癌、中皮腫、乳がん、膵管腺癌、大腸炎関連結腸直腸がん(CAC)、又は好酸球増加症候群(HES)である。いくつかの例では、白血病は、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、又は慢性好酸球性白血病であってよい。
【0119】
本明細書に記載の方法及び組成物は、がんの処置に使用することができる。本明細書に記載の方法及び組成物によって処置することができるがんの例としては、限定はされないが、白血病、多発性骨髄腫、胃癌、皮膚がん、肺がん、メラノーマ、腎臓がん、肝臓がん、骨髄腫、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、胃がん、膵臓がん、甲状腺がん、血液がん、リンパ腫、白血病、皮膚がん、卵巣がん、膀胱がん、尿路上皮癌、頭頚部がん、がんの転移巣、及び高い変異負荷について診断される全ての型のがんが挙げられる。特定の実施形態では、がんは、高い変異負荷を有する。様々ながんを有する又はがんになるリスクのある対象は、日常的な医学的手順によって同定することができる。
【0120】
本明細書で使用する場合、「有効量」は、単独又は1つ以上の他の活性剤との組合せのいずれかを、対象に治療効果を与えるために必要とされる各活性剤の量を指す。いくつかの実施形態では、治療効果は、GM-CSF活性を低下させること、活性化エフェクターT細胞の数を増加させること、及び/又は調節性T細胞の数若しくは活性を低下させることである。
【0121】
ある量の抗体が治療効果を達成したかどうかの決定は、当業者には明らかである。当業者によって認識されるように、有効量は、処置される特定の状態、状態の重症度、年齢、健康状態、サイズ、性別及び体重を含む個々の患者のパラメーター、処置の期間、同時療法の性質(もしあれば)、特定の投与経路、及び医療関係者の知識及び経験内の要因によって変わる。これらの要因は、当業者に周知であり、日常的な実験のみで対処され得る。
【0122】
個々の成分又はそれらの組合せの最大量が使用されること、すなわち、健全な医学的判断による最良の安全用量が、一般に好ましい。
【0123】
実験に基づいた考慮事項、例えば半減期は、一般に、投与量の決定に寄与する。例えば、ヒト免疫系と適合する抗体、例えばヒト化抗体又は完全ヒト抗体は、抗体の半減期を延長するため及び宿主の免疫系によって抗体が攻撃されるのを防ぐために使用され得る。投与の頻度は、治療過程にわたり決定及び調節することができ、一般に、必ずしも必要ではないが、標的疾患/障害の処置及び/又は抑制及び/又は緩和及び/又は遅延に基づく。或いは、抗体の徐放性持続放出製剤が適切であり得る。徐放性を達成するための様々な製剤及び装置が、当技術分野で周知である。
【0124】
1つの例では、本明細書に記載の抗体の投与量は、抗体を1回以上投与した個体における実験に基づいて決定され得る。個体は、漸増投与量のアンタゴニストを与えられる。アンタゴニストの有効性を評価するため、疾患/障害の指標は以下であってよい。
【0125】
一般に、本明細書に記載の任意の抗体の投与のために、最初の候補投与量は、約2mg/kgであり得る。本開示の目的のため、典型的な1日、1週間、2週間ごと、又は3週間ごとの投与量は、上記の要因に依存して、約0.1μg/kg~3μg/kg~30μg/kg~100μg/kg~300μg/kg~0.6mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、~10mg/kg、~30mg/kg、~100mg/kg又はそれ以上のいずれかの範囲であり得る。条件に依存して、数日、数週間、数か月又はそれ以上にわたる反復投与のため、処置は、所望の症状の抑制が起こるまで、又は標的疾患若しくは障害、又はその症状を緩和するために十分な治療レベルが達成されるまで持続される。代表的な投与レジメンは、3週間ごとに約3mg/kgの初期用量、続いて6週間に1回抗体約1mg/kgの維持用量、又は続いて3週間ごとに約1mg/kgの維持用量を投与することを含む。しかしながら、医療関係者が達成することを望む薬物動態の崩壊パターンに依存して、他の投与レジメンが有用であり得る。例えば、少なくとも1つの追加の免疫治療剤との併用処置において3週間ごとに1回1mg/kgの投与が考えられる。いくつかの実施形態では、約3μg/mg~3mg/kgの範囲(例えば、約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kg、及び約3mg/kg)の投与が使用され得る。いくつかの実施形態では、投与頻度は、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間ごとに1回、7週間ごとに1回、8週間ごとに1回、9週間ごとに1回、又は10週間ごとに1回、又は1か月ごとに1回、2か月ごとに1回、3か月ごとに1回又はそれ以上である。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニターされる。投与レジメン(使用する抗体を含む)は、時間と共に変化し得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、正常体重の成人患者に関して、約0.1~5.0mg/kgの範囲の用量が投与され得る。いくつかの例では、本明細書に記載の抗GM-CSF抗体の投与量は、10mg/kgであってよい。特定の投与レジメン、すなわち用量、タイミング及び反復は、特定の個人及びその個人の病歴、並びに個々の薬剤の特性(例えば、薬剤の半減期、及び当技術分野で周知の他の考慮事項)に依存する。
【0127】
本開示の目的のため、本明細書に記載の抗体の適切な投与量は、抗体が、予防又は治療目的、以前の治療、臨床履歴及びアンタゴニストに対する患者の反応、及び主治医の裁量ために投与されるか否かに関わらず、特定の抗体、複数の抗体、及び/又は用いられる非抗体ペプチド(又はこれらの組成物)、疾患/障害の型及び重症度に依存する。典型的には、臨床医は、所望の結果を達成する投与量に達するまで、抗体を投与する。いくつかの実施形態では、所望の結果は、腫瘍のサイズの減少、無進行生存期間及び/又は全体的な生存の増加である。投与量が所望の結果をもたらすかどうかを決定する方法は、当業者には明らかである。1つ以上の抗体の投与は、投与の目的が治療又は予防であるかどうか、及び医療関係者に公知の他の要因に関わらず、例えば、レシピエントの健康状態に依存して連続的又は断続的であってよい。抗体の投与は、予め選択した期間にわたり基本的に連続であってよく、又は一連の間隔投与、例えば標的疾患又は障害の発症前、発症中、又は発症後のいずれかであってよい。
【0128】
本明細書で使用する場合、用語「処置する」は、治療する、治す、緩和する、軽くする、変える、治療する、改良する、改善するための目的、又は障害、疾患の症状、又は疾患若しくは障害に対する傾向に影響を及ぼすことを目的とする、標的疾患又は障害、疾患/障害の症状、又は疾患/障害に対する傾向を有する対象への1つ以上の活性剤を含む組成物の適用又は投与を指す。標的疾患/障害を緩和することは、疾患の発症若しくは進行を遅延させること、又は疾患の重症度を低下させることを含む。
【0129】
疾患を緩和することは、必ずしも治癒的結果を必要としない。本明細書で使用する場合、標的疾患又は障害の発症を「遅延させる」とは、疾患の進行を遅延させ、妨害し、遅くさせ、遅らせ、安定化させ、及び/又は延期させることを意味する。この遅延は、疾患の履歴及び/又は処置される個人に依存して、様々な時間の長さであり得る。疾患の発症を「遅らせる」若しくは緩和する、又は疾患の発症を遅延させる方法は、その方法を使用しない場合と比較して、所与の時間枠において疾患の1つ以上の症状を発症させる可能性を低減し、及び/又は所与の時間枠において症状の程度を低減させる方法である。そのような比較は、典型的には、統計的に有意な結果をもたらすのに十分な数の対象を使用する臨床試験に基づくものである。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、in vivoで少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上)標的抗原の活性を阻害するのに十分な量で、処置を必要とする対象に投与される。他の実施形態では、抗体は、標的抗原の活性レベルを少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上)低減するのに有効な量で投与される。
【0131】
医薬分野の当業者に公知の従来の方法を使用して、処置される疾患の型又は疾患の部位に依存して対象に医薬組成物を投与することができる。この組成物は、他の従来の経路を介して投与することもでき、例えば、非経口、局所、経口、吸入スプレーによって、直腸、経鼻、口腔、経腟、又はインプラントリザーバーを介して投与する。本明細書で使用する場合、用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、腹腔内、腫瘍内、筋肉内、関節内、動脈内、関節滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内、及び脳内注射又は注入技術を含む。更に、1か月、3か月、又は6か月の蓄積注射可能又は生分解性の材料及び方法を使用する等の注射可能な蓄積投与経路を介して対象に投与することができる。いくつかの例では、医薬組成物は、眼内又は硝子体内に投与される。
【0132】
注射可能組成物は、様々な担体、例えば、植物油、ジメチルアセトアミド(dimethylactamide)、ジメチルホルムアミド(dimethyformamide)、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、及びポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)を含有し得る。静脈内注射のため、水溶性抗体を、ドリップ法によって投与することができ、それによって、抗体及び生理学的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物が注入される。生理学的に許容される賦形剤は、例えば、5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンガー溶液、又は他の好適な賦形剤を含み得る。筋肉内製剤、例えば、抗体の好適な可溶性塩形態の滅菌製剤は、医薬賦形剤、例えば注射用水、0.9%生理食塩水、又は5%グルコース溶液中に溶解され、投与することができる。
【0133】
一実施形態では、抗体は、部位特異的又は標的局所送達技術を介して投与される。部位特異的又は標的局所送達技術の例は、抗体の様々な移植可能な蓄積ソース又は局所送達カテーテル、例えば、注入カテーテル、留置カテーテル、又は針カテーテル、人工血管移植、外膜ラップ、シャント及びステント、若しくは他の移植可能な装置、部位特異的キャリア、直接注入、又は直接投与を含む。例えば、PCT出願のWO 00/53211及び米国特許第5,981,568号を参照されたい。
【0134】
アンチセンスポリヌクレオチド、発現ベクター、又はサブゲノムポリヌクレオチドを含有する治療用組成物の標的化送達も使用することができる。受容体媒介DNA送達技術は、例えば、Findeisら、Trends Biotechnol. (1993年) 11:202; Chiouら、Gene Therapeutics: Methods and Applications of Direct Gene Transfer (J. A. Wolff, ed.) (1994年); Wuら、J. Biol. Chem. (1988年) 263:621; Wuら、J. Biol. Chem. (1994年) 269:542; Zenkeら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990年) 87:3655; Wuら、J. Biol. Chem. (1991年) 266:338に記載される。
【0135】
ポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載の抗体をコードするもの)を含有する治療用組成物は、遺伝子治療プロトコールにおいて、局所投与のため、約100ng~約200mgの範囲のDNAで投与される。いくつかの実施形態では、約500ng~約50mg、約1μg~約2mg、約5μg~約500μg、及び約20μg~約100μgの濃度範囲のDNA又はそれ以上を、遺伝子治療プロトコール中に使用することもできる。
【0136】
本明細書に記載の治療用ポリヌクレオチド及びポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクルを使用して送達することができる。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス又は非ウイルス起源であってよい(一般に、Jolly、Cancer Gene Therapy (1994年) 1:51; Kimura、Human Gene Therapy (1994年) 5:845; Connelly、Human Gene Therapy (1995年) 1:185;及びKaplitt、Nature Genetics (1994年) 6:148を参照)。そのようなコード配列の発現は、内在性哺乳動物又は異種プロモーター及び/又はエンハンサーを使用して誘導することができる。コード配列の発現は、構成的又は制御性のいずれかであってよい。
【0137】
所望のポリヌクレオチドの送達のためのウイルスベースのベクター及び所望の細胞での発現は、当技術分野で周知である。代表的なウイルスベースのビヒクルとしては、限定はされないが、組換えレトロウイルス(例えば、PCT出願のWO 90/07936; WO 94/03622; WO 93/25698; WO 93/25234; WO 93/11230; WO 93/10218; WO 91/02805;米国特許第5,219,740号及び米国特許第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;並びに欧州特許第0 345 242号を参照)、アルファウイルスベースベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR-67; ATCC VR-1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR-373; ATCC VR-1246)及びベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR-923; ATCC VR-1250; ATCC VR-1249; ATCC VR-532))、並びにアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、PCT出願のWO 94/12649、WO 93/03769; WO 93/19191; WO 94/28938; WO 95/11984及びWO 95/00655号を参照)が挙げられる。Curiel, Hum. Gene Ther. (1992年) 3:147に記載のように、死滅アデノウイルスに連結したDNAの投与も用いることができる。
【0138】
限定はされないが、死滅アデノウイルス単独に連結する又は連結しないポリカチオン濃縮DNA(例えば、Curiel、Hum. Gene Ther. (1992年) 3:147参照);リガンド連結DNA(例えば、Wu、J. Biol. Chem. (1989年) 264:16985参照);真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば、米国特許第5,814,482号; PCT出願のWO 95/07994; WO 96/17072; WO 95/30763;及びWO 97/42338参照)及び核電荷中和又は細胞膜との融合を含め、非ウイルス送達ビヒクル及び方法を用いることもできる。裸のDNAも用いることができる。代表的な裸のDNA導入方法は、PCT出願のWO 90/11092及び米国特許第5,580,859号に記載される。遺伝子送達ビヒクルとして働くことができるリポソームは、米国特許第5,422,120号; PCT出願のWO 95/13796; WO 94/23697; WO 91/14445;及び欧州特許第0524968号に記載される。更なるアプローチが、Philip、Mol. Cell. Biol. (1994年) 14:2411、及びWoffendin、Proc. Natl. Acad. Sci. (1994年) 91:1581に記載される。
【0139】
本明細書に記載の方法で使用される特定の投与レジメン、すなわち用量、タイミング及び反復は、特定の対象及びその対象の病歴に依存する。いくつかの実施形態では、1つより多くの抗体、又は抗体と別の好適な治療剤の組合せが、処置を必要とする対象に投与され得る。抗体は、他の薬剤と組み合わせて使用することもでき、薬剤の有効性の増強及び/又は補足に寄与する。標的疾患/障害のための処置の有効性は、当技術分野で周知の方法によって評価することができる。
【0140】
本開示に記載のもの等を含む、抗GM-CSF抗体及び処置方法は、本明細書に開示の標的疾患又は障害のための他の型の治療と組み合わせて利用することができる。この文脈では、用語「組み合わせて」は、抗体組成物と治療剤が同時又は逐次的のいずれかで与えられることを意味する。例としては、化学療法、免疫療法(例えば、抗炎症薬、免疫抑制剤、治療用抗体、抗体、CAR T細胞、又はがんワクチンを含む治療)、外科的処置、放射線、遺伝子治療等、又は抗感染治療が挙げられる。そのような治療は、同時に又は逐次的に(任意の順序で)本開示に記載の処置によって投与することができる。
【0141】
例えば、併用治療は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時に製剤化される及び/又は同時に投与される本明細書に記載の抗GM-CSF抗体及び医薬組成物を含み得る。一実施形態では、追加の薬剤は、がん化学療法剤、例えば、オキサリプラチン、ゲムシタビン、ドセタキセルである。別の実施形態では、追加の薬剤は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、例えばRA処置のための、メトトレキサート、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリンA、スルファサラジンであり得る。そのような併用治療は、より少ない投与量で投与される治療剤を有利に利用し、従って、様々な単剤治療と関連する、起こり得る毒性又は合併症を予防することができる。更に、本明細書に開示の追加の治療剤は、GM-CSF/STAT 5経路に加えて又はGM-CSF/STAT 5経路とは異なる経路で作用することができ、従って、抗GM-CSF抗体の効果を増強する及び/又は協同すると考えられる。
【0142】
本明細書に記載の抗体組成物が第2の治療剤と同時使用される場合、組成物又は第2の薬剤のいずれかの治療量以下の投与量、又は両方の治療量以下の投与量を、GM-CSFによって媒介される細胞シグナル伝達と関連する疾患又は障害を有する又は発症するリスクのある対象の処置に使用することができる。本明細書で使用する場合、「治療量以下の用量」は、他の1つ又は複数の薬剤の非存在下で投与される場合、対象に治療結果をもたらすであろう投与量よりも少ない投与量を指す。従って、治療量以下の用量の薬剤は、本明細書に記載の抗GM-CSF抗体の投与の非存在下で、対象に所望の治療結果をもたらさないであろうものである。臨床用途の多くの薬剤の治療用量は、医薬の分野で周知であり、追加の治療用量は過度の実験をせずに当業者によって決定することができる。治療投与量は、文献、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed.、1990年;並びに疾患及び傷害の処置のためのガイダンスとして医師から頼りにされる多くの他の医療文献に広範に記載されている。追加の有用な薬剤は、Physician's Desk Reference、59.sup.th edition、(2005年)、Thomson P D R, Montvale N.J.; Gennaroら Eds. Remington's The Science and Practice of Pharmacy 20th edition、(2000年)、Lippincott Williams and Wilkins, Baltimore Md.; Braunwaldら、Eds. Harrison's Principles of Internal Medicine、15.sup.th edition、(2001年)、McGraw Hill, NY; Berkowら、Eds. The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、(1992年)、Merck Research Laboratories、Rahway N.J.も参照されたい。
【0143】
V.診断適用
本明細書に開示の任意の抗GM-CSF抗体は、in vitro又はin vivoでのGM-CSF(例えば、分泌GM-CSF)の存在の検出のために使用することもできる。そのような検出方法から得られた結果は、診断目的のため(例えば、分泌GM-CSFと関連する疾患の診断)又は科学的研究目的のため(例えば、GM-CSFを分泌する新しい細胞型の同定、分泌GM-CSFの生物活性及び/又は制御の研究)に使用することができる。アッセイでの使用、例えば診断での使用のため、本明細書に記載の抗GM-CSF抗体は、in vivo又はin vitroのいずれかで、GM-CSF(例えば、分泌GM-CSF)の存在を検出するため、検出可能な標識(例えば、造影剤等のイメージング剤)とコンジュゲートさせることができる。本明細書で使用する場合、「コンジュゲートした」又は「結合した」は、好ましくは2つの実体間の会合の治療/診断利点が顕在化される十分な親和性で、2つの実体が会合されることを意味する。2つの実体間の会合は、直接又はリンカー、例えばポリマーリンカーを介してのいずれかであってよい。
【0144】
コンジュゲート又は結合は、共有又は非共有結合、並びに会合の他の形態、例えば、他の上若しくは他の内への1つの実体の、又はミセル等の第3の実体上若しくは第3の実体内へのいずれか若しくは両方の実体の封入を含み得る。
【0145】
1つの例では、本明細書に記載の抗GM-CSF抗体は、in vitro又はin vivoでアプタマーが検出、測定、及び/又は定量できるように、直接的又は間接的のいずれかで、検出可能なシグナルを放出することができる化合物である検出可能な標識に結合させることができる。そのような「検出可能な標識」の例としては、限定はされないが、蛍光標識、化学発光標識、比色分析標識、酵素マーカー、放射性アイソトープ、及びビオチン等の親和性タグを含むことを意図する。そのような標識は、直接的又は間接的に、従来の方法によって、アプタマーへとコンジュゲートすることができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、in vitroでGM-CSF分泌細胞を検出するために好適な薬剤であり、放射性分子、放射性医薬品、又は酸化鉄粒子であってよい。in vivoイメージングに好適な放射性分子としては、限定はされないが、122I、123I、124I、125I、131I、18F、75Br、76Br、77Br、211At、225Ac、177Lu、153Sm、186Re、188Re、67Cu、213Bi、212Bi、212Pb、及び67Gaが挙げられる。in vivoイメージングに好適な代表的な放射性医薬品としては、111Inオキシキノリン、131Iヨウ化ナトリウム、99mTcメブロフェニン、及び99mTc赤血球、123Iヨウ化ナトリウム、99mTcエキサメタジム、99mTc大凝集アルブミン、99mTcメドロネート、99mTcメルチアチド、99mTcオキシドロネート、99mTcペンタテート、99mTc過テクネチウム酸塩、99mTcセスタミビ、99mTc硫黄コロイド、99mTcテトロフォスミン、タリウム-201、又はキセノン-133が挙げられる。
【0147】
報告する薬剤は、組織試料においてGM-CSF分泌細胞によって媒介される疾患の検出に有用な、色素、例えばフルオロフォアであってもよい。
【0148】
in vitroで診断アッセイを実施するため、抗GM-CSF抗体は、GM-CSFを含有することが疑われる試料、例えば、GM-CSF分泌細胞又は疾患微小環境における可溶性GM-CSFと接触させることができる。抗体及び試料は、GM-CSF抗原への抗体の結合を可能にする好適な期間、好適な条件下でインキュベートすることができる。そのような相互作用は、次いで、日常的な方法、例えばELISA、組織学的染色、又はFACSによって検出することができる。
【0149】
in vivoでの診断アッセイを実施するため、標識(例えば、イメージング剤又は造影剤)とコンジュゲートした好適な量の抗GM-CSF抗体を、検査を必要とする対象へと投与することができる。標識抗体の存在は、日常的な方法による標識から放出されるシグナルに基づいて検出することができる。
【0150】
科学的研究アッセイを実施するため、抗GM-CSF抗体を使用して、GM-CSFの生物活性を試験し、細胞内のGM-CSFの存在を検出し、及び/又は分泌GM-CSFの効果を制御することができる。例えば、好適な量の抗GM-CSFを、GM-CSFを産生することが疑われる試料(例えば、GM-CSF産生細胞として事前に同定されていない新しい細胞型)と接触させることができる。細胞は、抗GM-CSF抗体と接触させる前に透過処理される。抗体及び試料は、GM-CSF抗原への抗体の結合を可能にする好適な期間、好適な条件下でインキュベートすることができる。そのような相互作用は、次いで、日常的な方法、例えばELISA、組織学的染色、又はFACSによって検出することができる。
【0151】
VI.治療及び診断適用のためのキット
本開示は、本明細書に開示の治療又は診断適用のためのキットも提供する。そのようなキットは、抗GM-CSF抗体、例えば任意の本明細書に記載のものを含む1つ以上の容器を含み得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の任意の方法に従う使用のための説明書を含み得る。含まれる説明書は、本明細書に記載のもののように標的疾患を処置する、発症を遅延させる、又は緩和する抗GM-CSF抗体の投与の説明を含み得る。キットは、更に、個体が標的疾患を有するかどうかの同定に基づく処置に好適な個体を選択する工程の説明を含み得る。更に他の実施形態では、説明書は、標的疾患のリスクのある個体へと抗体を投与する工程の説明を含む。
【0153】
抗GM-CSF抗体の使用に関連する説明書は、一般に、意図される処置のための投与量、投与スケジュール、及び投与の経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量パッケージ)又はサブ単位用量であってよい。本発明のキットに添付される説明書は、典型的には、ラベル又は添付文書に書かれた説明書(例えば、キットに含まれる紙のシート)であるが、機械で読むことができる説明書(例えば、磁気又は光記憶ディスクに記録される説明書)も許容される。
【0154】
ラベル又は添付文書は、組成物が、自己免疫疾患等、免疫応答を調節することによって処置することができる疾患又は障害を処置する、発症を遅延させる、及び/又は緩和するために使用されることを示す。説明書は、本明細書に記載の任意の方法を実施するために提供され得る。
【0155】
この発明のキットは、好適なパッケージング内である。好適なパッケージングとしては、限定はされないが、バイアル、ボトル、ジャー、フレキシブルパッケージング(例えば、マイラー又はプラスチックバッグで封入される)等が挙げられる。
【0156】
また、例えば吸入器、経鼻投与装置(例えば、噴霧器)又はミニポンプ等の注入装置等の特定の装置と組み合わせて使用するためのパッケージも意図される。キットは、滅菌アクセスポート(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する静脈注射溶液バッグ又はバイアルであり得る)を有し得る。容器はまた、滅菌アクセスポート(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する静脈注射溶液バッグ又はバイアルであり得る)を有し得る。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書に記載のもののような抗GM-CSF抗体である。
【0157】
キットは、場合により、追加の要素、例えば緩衝液及び解釈上の情報を提供し得る。通常、キットは、容器及びラベル又は容器上若しくは容器に不随する添付文書を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、上記キットの内容物を含む製品を提供する。
【0158】
また、本明細書では、試料中の分泌GM-CSFの検出に使用するためのキットも提供する。そのようなキットは、本明細書に記載の任意の抗GM-CSF抗体を含み得る。いくつかの例では、抗GM-CSF抗体は、本明細書に記載のもののような検出可能な標識とコンジュゲートさせることができる。本明細書で使用する場合、「コンジュゲートした」又は「結合した」は、好ましくは2つの実体間の会合の治療/診断利点が顕在化される十分な親和性で、2つの実体が会合されることを意味する。2つの実体間の会合は、直接又はリンカー、例えばポリマーリンカーを介してのいずれかであってよい。コンジュゲート又は結合は、共有又は非共有結合、並びに会合の他の形態、例えば、他の上若しくは他の内への1つの実体の、又はミセル等の第3の実体上若しくは第3の実体内へのいずれか若しくは両方の実体の封入を含み得る。
【0159】
或いは又は更に、キットは、抗GM-CSF抗体に結合することができる第2の抗体を含み得る。キットは、分泌GM-CSFを検出するための抗GM-CSF抗体を使用するための説明書を更に含み得る。
【0160】
IV.一般的な技術
本発明の実施は、特に明記しない限り、当技術分野の範囲内である、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来の技術を用いる。Molecular Cloning: A Laboratory Manual、second edition (Sambrookら、1989年) Cold Spring Harbor Press; Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed.、1984年); Methods in Molecular Biology、Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, ed.、1998年) Academic Press; Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed.、1987年); Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts、1998年) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle、J. B. Griffiths、and D. G. Newell, eds., 1993~8年) J. Wiley and Sons; Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Calos, eds.、1987年); Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubelら eds.、1987年); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullisら eds., 1994年); Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan ら eds., 1991年); Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons、1999年); Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers、1997年); Antibodies (P. Finch、1997年); Antibodies: a practical approach (D. Catty., ed.、IRL Press、1988~1989年); Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd and C. Dean, eds.、Oxford University Press、2000年); Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999年); The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds.、Harwood Academic Publishers、1995年)。更なる詳述無く、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。従って、以下の特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるものであり、決して本開示の残りの部分を制限するものではない。本明細書に引用される全ての刊行物は、本明細書において参照される目的又は主題のために参照により組み込まれる。
【0161】
更なる詳述無く、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。従って、以下の特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるものであり、決して本開示の残りの部分を制限するものではない。本明細書に引用される全ての刊行物は、本明細書において参照される目的又は主題のために参照により組み込まれる。
【実施例】
【0162】
(実施例1)
組換え抗GM-CSF抗体の同定及び調製
(i)抗GM-CSF自己抗体を分泌するヒトB細胞の単離及び抗GM-CSF抗体の同定
CD3-/CD19+B細胞を、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によってヒト対象から単離した。CD3-/CD19+B細胞は、IgG産生B細胞を更にソートし、続いて顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)結合活性を試験した。GM-CSF結合活性を示すB細胞は、個々にソートし、ex vivoで増殖させた(B細胞クローン)。各B細胞クローンからmRNAを抽出し、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)をコードするcDNAを逆転写によって得た。
【0163】
(ii)抗GM-CSF抗体の発現のためのベクターセットの構築
1D2のVH及びVLをコードするDNA断片を、GeneArt(登録商標)Seamless Cloning and Assembly Enzyme Mix (Invitrogen社)によって、それぞれ、シグナルペプチド並びにヒトIgG1定常領域を含有するヒトIgG1κ発現ベクターにクローニングした。コンピテント大腸菌(Biotech社)を、それぞれ5μlの各組換えベクターによって形質転換した。形質転換した大腸菌のコロニーは、PCRによってスクリーニングした。予測されるサイズ(約1,800bp)のPCR産物を、確認のためシークエンスした。100μg/mLのアンピシリンを含有するLB培地(Luria-Bertani broth)中で37℃において18時間増殖させた形質転換した大腸菌の3mLの細菌培養から、QIAprep(登録商標)Spin columns (Qiagen社)を使用してプラスミドDNAを単離した。1D2を他の抗GM-CSF抗体と比較するため、現在フェーズ2臨床試験で試験されている抗GM-CSF抗体である、AMG203、及びMOR103のVH及びVLをコードするDNA断片を、上記の方法を使用してヒトIgG1κ発現ベクターへとクローニングした。
【0164】
本開示の抗体の可変重(VH)鎖及び可変軽(VL)鎖のアミノ酸配列をTable3(表3)に列挙する。相補性決定領域(CDR)は、Kabat(Wu, T. T. and Kabat, E. A.、1970年 J. Exp. Med. 132: 211~250頁)又はIMGTシステム(Lefranc M.-P.ら、1999年 Nucleic Acids Research、27、209~212頁)に基づいて同定した。Table1(表1)では、「K:」の後のCDRはKabatシステムに従って同定し、「I:」の後のCDRはIMGTシステムに従って同定した。本開示の抗体は、1D2と名付ける。
【0165】
【0166】
AMG203(ナミルマブ)及びMOR103(オチリマブ)は、当技術分野で公知のヒトGM-CSFに結合する治療用抗体である。例えば、米国特許第8,017,748号及び米国特許第7,867,495号を参照されたい。
【0167】
(iii)組換え抗体産生及び精製
ExpiCHO-S(商標)細胞(Thermo Scientific社、A29133)を125mLフラスコの30mLのExpiCHO-S(商標)発現培地(Thermo Scientific社、A29100-01)中に播種し、標準的な条件下で培養した。指数増殖期の間、6×106個のExpiCHO-S(商標)細胞に、ExpiFectamine(商標)CHO Transfection Kit (Thermo Scientific社、A29129)によって、1D2、AMG203又はMOR103をコードする20μgのベクターを、それぞれ一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの18~22時間後、ExpiFectamine(商標)CHO Enhancer及びExpiCHO(商標)Feedをフラスコに添加した。細胞は8日間培養した。各培養の上清を3000rpmで10分間遠心分離し、細胞デブリスを除去し、続いて0.45μmフィルターに通して濾過した。
【0168】
次いで、上清中の組換え抗体を、プロテインA Sepharose(登録商標)Fast Flow beads (GE Healthcare社、17-1279-03)と沈殿させた。30mLの上清を100μLのプロテインA Sepharose(登録商標)Fast Flow beadsと混合し、混合物を50mLチューブ中で回転させながら4℃にて2時間インキュベートした。混合物は、3000rpmで10分間遠心分離し、上清を除去した。残ったビーズを、20:1のPBS:ビーズ(v/v)比でPBSにより洗浄した。沈殿した抗体を、5:1のグリシン緩衝液:ビーズ(v/v)比で0.1Mグリシン(pH2.5)により溶出した。溶出液は、溶出容積の1/10の容積の1M Tris緩衝液(pH9.0)を含有するチューブに回収した。最終溶出液は、PBS緩衝液に対して透析した。各透析溶出液は、それぞれ精製された組換え抗体1D2、AMG203、及びMOR103を含有する。
【0169】
(実施例2)
組換え抗GM-CSF抗体の特徴付け
(i)ヒトGM-CSFに対する1D2の結合親和性
組換えヒトGM-CSF(rhGM-CSF)に対する抗GM-CSF抗体の動力学的結合解析は、Biacore 3000装置(GE Healthcare社)を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定した。ヤギ抗ヒトIgG(5μg/mL)(SouthernBiotech社)を10mM酢酸緩衝液、pH4.5中で安定化し、アミンカップリングキット(GE Healthcare社)により、EDC/NHS前活性化カルボキシメチルデキストラン5(CM5)センサーチップ(GE Healthcare社)上に固定した。HBS-EP緩衝液(HBS; 10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005% 界面活性剤Tween-20、pH 7.4) (GE Healthcare社)をランニング緩衝液として使用した。1D2、AMG203、及びMOR103は、それぞれ、ヤギ抗ヒトIgGによってCM5センサーチップ上に捕捉した。ヤギ抗ヒトIgGによってのみコーティングしたCM5センサーチップを、参照チップとして使用した。rhGM-CSF(Biolegend社)を、mAbコーティングしたCM5センサーチップ及び参照チップに異なる濃度で注入した。流速は30μl/分であった。3回のブランク注射及び2回の12.5nMのrhGM-CSF注射は、ドリフトがあった場合にそれに対応し、アッセイの再生産性を確認するために含めた。注入時間と解離時間は180秒と600秒であった。データは、Biacore 3000評価ソフトウェアを使用して1:1モデルに当てはめた。
図1A~
図1Cは、CM5センサーチップ上に固定した抗GM-CSF mAbに異なる濃度のrhGM-CSFタンパク質を通過させることによって得られた結合曲線を示す。1D2については、0、1.5625、3.125、6.25、12.5、25nMのrhGM-CSFをアッセイに使用した。AMG203及びMOR103については、0、6.25、12.5、25、50、100nMのrhGM-CSFをアッセイに使用した。抗体結合動力学速度定数(Ka及びKd)、並びに平衡解離定数(KD=Kd/Ka)をTable4(表4)に示す。1D2抗体は、AMG203及びMOR103よりも低いK
D値を有し、1D2抗体がAMG203及びMOR103と比較してrhGM-CSFに対して高い親和性を有することを示している。
【0170】
【0171】
(ii)1D2によるヒトPBMCにおけるGM-CSF誘導性STAT5リン酸化の阻害
GM-CSFは、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)においてSTAT5のリン酸化を誘導することができ、それはGM-CSF中和抗体によって阻害され得る。PBMCにおいてGM-CSF誘導性のSTAT5のリン酸化を阻害する1D2、AMG203、及びMOR103の能力を測定した。新しく単離したヒトPBMCを、示したように2μg/mLの抗GM-CSF抗体の存在下又は非存在下で、10ng/mLのrhIL-3又は10ng/mLのrhGM-CSFによって刺激した。刺激後、PBMCは、抗CD14-FITC抗体(BD Bioscience社)によって細胞表面CD14を染色した。次いで、細胞を固定緩衝液で固定し、permIII緩衝液(BD Bioscience社)で透過処理した。透過処理後、細胞内リン酸-STAT5を抗リン酸化Stat5(pY694)抗体で染色した。細胞は、リン酸化Stat5の定量のため、フローサイトメトリーによって解析した。
図2A~
図2Bは、抗GM-CSF抗体によるリン酸-STAT5シグナル伝達の阻害のフローサイトメトリー解析を示す。抗GM-CSF抗体の非存在下では、rhGM-CSFとrhIL3は両方とも、ヒトPBMCにおいて強いSTAT5リン酸化(pY694)を誘導した。抗体1D2は、ヒトPBMCにおけるrhGM-CSF誘導性STAT5リン酸化を完全に廃止した。AMG203及びMOR103も、PBMCにおけるrhGM-CSF誘導性STAT5リン酸化を遮断した。対照的に、1D2はIL-3の生物活性を中和せず、1D2がGM-CSFを特異的に阻害したことを示している。上記の結果は、ヒトPBMCにおいて1D2が強いGM-CSF中和活性を示すことを示した。Table11(表5)は、フローサイトメトリーチャートにおけるMFIの定量である。
【0172】
【0173】
(iii)1D2によるGM-CSF依存的TF-1細胞増殖の阻害
GM-CSFは、ヒト赤白血病細胞系であるTF-1の細胞増殖を誘導することができる。TF-1細胞に対するGM-CSFの増殖特性は、GM-CSF中和抗体によって阻害することができる。TF-1細胞におけるrhGM-CSFの増殖効果を遮断する1D2の能力を測定した。TF-1細胞(ATCC、CRL-2003)は、Bioresource Collection and Research Center (BCRC, Taiwan)から得た。増殖アッセイでは、TF-1細胞は、100μlのRPMI中、ウェル当たり1.5×10
4個の細胞で96ウェルに播種した。組換えヒトGM-CSF(rhGM-CSF、0.5ng/mL、Biolegend社)を100μlのRPMI中で25分間、様々な量の1D2と予めインキュベートした。次いで、混合物を播種したTF-1細胞に添加した。TF-1細胞増殖は、CellTiter-Gloアッセイ(Promega社)を使用して、刺激の72時間後に測定した。
図3に示すように、1D2は、用量依存的な様式で、rhGM-CSFによって誘導されるTF-1の増殖を阻害した。抗体1D2は、ナノモル濃度以下である、1.436×10
-10Mの最大半量濃度で、GM-CSF誘導性TF-1細胞増殖の強力な阻害を示した。上記の結果は、1D2がGM-CSFの生物活性を効果的に阻害し得ることを示した。
【0174】
(iv)1D2によるヒトPBMCにおけるGM-CSF誘導性CCL17分泌の阻害
GM-CSFの様々な生物活性の1つは、GM-CSF関連炎症性疾患の進行に重要なバイオマーカーである、ヒト単球/マクロファージにおけるCCL17ケモカインの産生を駆動することである。CCL17は、様々なGM-CSF関連炎症性疾患の主要な下流のエフェクターケモカインとして同定された。ヒトPBMCにおいてCCL17のGM-CSF誘導性分泌を阻害する1D2の効果を調べた。ヒトPBMCは、Ficoll-Paque法を使用して健常なボランティアから単離した。2×10
5個の単離されたヒトPBMCを、24時間、様々な量の抗体1D2と予めインキュベートした1ng/mLのrhGM-CSFで刺激した。PBMC培養の上清を回収し、PBMCによるCCL17分泌をELISAによって解析した。
図4に示すように、1D2は、用量依存的な様式で、rhGM-CSFによって刺激したPBMCにおけるCCL17分泌を強力に阻害した。1D2のIC50は、1.586×10
-10Mと決定され、それはTF-1細胞増殖の最大半量阻害に必要な濃度と類似していた。合わせると、これらのデータは、GM-CSF関連炎症性疾患、例えば川崎病に非常に関連する生物学的文脈で、1D2が効果的にGM-CSF活性を中和することを示す。
【0175】
(実施例3)
抗体1D2のSDR変異クローン
(i)ヒトGM-CSFに対する十分な結合親和性を有する抗体1D2のSDR変異クローンの同定
抗体の分子活性に重要である残基を決定することは、結合親和性及びエピトープ特異性について抗体の機能の微調整の助けとなる課題である。CDRのいくつかの残基は、エピトープ結合親和性及び/又は特異性に必須である。多くの計算方法が、一般に「特異性決定残基」(SDR)として公知の、これらの機能性残基を検出するために開発された。本開示では、抗体1D2の重鎖及び軽鎖配列を解析した。抗体1D2の3Dモデルを、計算的に組み立て、解析した。解析に基づき、VHの7アミノ酸残基及びVLの3アミノ酸残基をSDRとして選択した。残基は、参照を容易にするため、X1~X10と標識した。VHのSDRは:重鎖D31(HD31)(X1)、HK32(X2)、HK54(X3)、HR100 (X4)、HY102 (X5)、HY103 (X6)及びHQ105 (X7)である。VLのSDRは、軽鎖V32 (LV32)(X8)、LP94 (X9)及びLV95 (X10)である。続いて、SDRは、部位特異的変異誘発によって他のアミノ酸へと変異させ、変異VH又はVLクローンを作成した。HEK293細胞を、野生型VLをコードするベクターと対にした変異VHをコードするベクター、又は変異VLをコードするベクターと対にした野生型VHをコードするベクターをコトランスフェクトした。抗体クローンを培養培地から回収した。各抗体クローンのヒトGM-CSFへの結合親和性をELISAによって試験した。ELISAは、以下の手順に従って実施した。ELISAプレートを1μg/mLのrhGM-CSF、50μlでコートした。プレートを200μlのPBSTで3回洗浄し、続いて1% BSAで室温にて1時間ブロッキングした。試験される抗体クローンは、1:12000に希釈した。100μlの希釈した抗体を100μl/ウェルで細胞に添加した。プレートは、室温にて1時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、1:5000希釈の、HRPとコンジュゲートしたヤギ抗ヒト二次抗体と、室温にて1時間インキュベートした。ELISAアッセイは、ウェル当たりH2O2-Amplx Redを含有する100μlの現像緩衝液で、5分間暗所において現像し、蛍光強度をEx.530/Em.590nm、570nmでカットオフして読み取った。各試料のUnit Binding Activity (UBA)を、蛍光シグナル/抗体クローン希釈因子として算出した。GM-CSFへの変異抗体クローンの結合親和性の百分率を(各変異クローンのUBA/1D2のUBA)*100%によって算出した。
【0176】
1D2と比較してヒトGM-CSFに対する結合親和性の40%超を保持するSDR変異を有する抗体のセットを同定し、GM-CSFに結合することができる抗体1D2バリアントのライブラリーを形成した。Tabel5(表6)は、CDRにおけるSDR (SDRは太字体で示す)及びヒトGM-CSFに対する抗体の結合親和性を保持する変異を示す。様々な変異抗体クローンの結合親和性をTable2(表2)に示す。
【0177】
【0178】
いくつかの変異抗体クローンの結合親和性を、以下のTable6(表7)及びTable7(表8)に示すように、Biacoreによって試験した。
【0179】
【0180】
【0181】
(ii)抗体1D2のSDR変異抗体クローンによるGM-CSF依存性TF-1細胞増殖の阻害
いくつかの選択したSDR変異抗体クローンの、GM-CSF誘導性TF-1細胞増殖を阻害する能力を試験した。
図5A及び
図5Bは、SDR変異抗体がTF-1細胞増殖を阻害したが、高いIC
50値であったことを示す。
図5A及び
図5Bで試験した抗体のIC
50を、Table8(表9)に示す。
【0182】
【0183】
(実施例4)
抗体1D2重鎖フレームワーク領域からのDDモチーフ易障害性の除去
更なる開発のためのリード抗体として、抗体1D2は産生に安定である必要がある。1D2のアミノ酸配列は、抗体安定性を減少する易障害性について解析した。DDモチーフは、アミノ酸残基89と90の重鎖フレームワーク領域で同定された。DDモチーフのAsp残基の自然発生的な異性化は、産生、保存又は処置の間に起こり、抗体の機能又は能力の欠損をもたらし得る。DDモチーフによって引き起こされる易障害性を除去するため、アスパラギン酸を、機能的にアスパラギン酸と類似しているグルタミン酸へと変異させることができる。従って、
図6Aに示すように、抗体1D2の2つの異性化部位変異(D89E及びD90E変異)が構築された。D89E(ED変異)及びD90E(ED変異)変異のヒトGM-CSFへの結合親和性は、Biacoreによって測定した。
図6B~
図6Dは、WT(1D2)、ED変異及びDE変異の結合曲線を示す。Table9(表10)は、1D2、ED変異及びDE変異の抗体結合動力学速度定数(Ka及びKd)、並びに平衡解離定数(KD=Kd/Ka)を示す。
【0184】
【0185】
ED及びDE変異抗体の、TF-1細胞におけるrhGM-CSFの増殖効果を遮断する能力を測定し、野生型抗体1D2と比較した。増殖アッセイでは、TF-1細胞を、100μlのRPMI中、ウェル当たり1.5×10
4個の細胞で96ウェルに播種した。組換えヒトGM-CSF(rhGM-CSF、0.5ng/mL、Biolegend社)を、様々な量の抗体1D2、ED変異抗体、又はDE変異抗体と、100μlのRPMI中で25分間、予めインキュベートさせた。次いで、混合物をTF-1細胞に添加した。TF-1細胞増殖は、CelTiter-Gloアッセイ(Promega社)を使用して、刺激の72時間後に測定した。
図6Eに示すように、抗体D89E(ED)及びD90E(DE)は、それぞれ9.714×10
-11M、1.231×10
-10MのIC50で、GM-CSF誘導性TF-1細胞増殖の強力な阻害を示した。野生型抗体1D2は、6.312×10
-11MのIC50でTF-1細胞増殖を阻害した。データは、D89E及びD90E変異が、抗体の生物機能に影響しなかったことを示す。変異抗体は、野生型抗体1D2に匹敵するレベルでGM-CSF中和効果を発揮することができる。
【0186】
GM-CSFの別の機能は、U937細胞においてIL-8産生を誘導することである。U-937細胞は、10%熱不活化FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補ったRPMI-1640中で浮遊培養により、5% CO
2の加湿大気中37℃にて維持した。U-937細胞は、96ウェルに100μlのアッセイ培地中(2×10
5個の細胞/ウェル)に播種した。次に、rhGM-CSF(1ng/mL)を示した抗体と、100μlのRPMIアッセイ培地中で25分間、予めインキュベートさせ、次いで2×10
5個のU-937細胞を含む100μlのアッセイ培地に添加した。24時間インキュベーション後、培養上清を回収し、製造業者の指示に従ってELISA法を使用してIL-8濃度を測定した。データは、GraphPad Prism7を使用して非線形回帰曲線フィットにより、IL-8産生の最大半量阻害についてフィットさせた。
図6Fに示すように、U937細胞におけるIL-8分泌の阻害の、野生型抗体1D2、ED変異及びDE変異のIC50は、それぞれ5.94×10
-11M、5.10×10
-11M、及び5.40×10
-11Mであった。このデータは、変異抗体が、野生型抗体1D2に匹敵するレベルでGM-CSF中和効果を発揮することができることを示す。
【0187】
更に、ED及びDE変異抗体の、PBMCにおけるGM-CSF誘導性CCL17産生を阻害する能力を測定し、野生型抗体1D2と比較した。ヒトPBMCは、Ficoll-Paque法を使用して健常なボランティアから単離した。2×10
5個の単離されたヒトPBMCを、様々な量の抗体1D2、ED変異抗体又はDE変異抗体と予めインキュベートした1ng/mLのrhGM-CSFで刺激し、24時間インキュベートした。PBMC培養の上清を回収し、PBMCによるCCL17分泌をELISAによって解析した。
図6Gに示すように、ED及びDE変異抗体は、用量依存的な様式で、rhGM-CSFによって刺激したPBMCにおけるCCL17分泌を強力に阻害した。PBMCからのCCL17分泌の阻害における、野生型抗体1D2及びED変異のIC
50は、それぞれ7.14×10
-11M及び5.43×10
-11Mであった。このデータは、ED及びDE変異抗体が、野生型抗体1D2に匹敵するレベルでGM-CSF中和効果を発揮することができることを示す。
【0188】
次に、1D2、ED及びDE変異抗体の異種性を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって解析した。HICは、タンパク質とHIC樹脂の疎水性表面の間の可逆的な相互作用を利用することによって、それらの表面の疎水性の差に従ってタンパク質を分離する。高速液体クロマトグラフィー(UPLC)システムは、クオータナリーUPLCポンプ及びクオータナリーソルベントマネージャー(QSM)、50μlの試料ループを備えた自動試料注入装置(SM)及びフォトダイオードアレイ検出器(Waters社)を有するAcquity UPLC H-class bioシステムからなる。10μgの各試料を注入し、35℃にてTSKgel Butyl NPR (TOSOH社、4.6mm ID×3.5cm)を使用することによって分離を達成した。移動相は、2つの緩衝液からなる:緩衝液A(25mM リン酸ナトリウム中2M硫酸アンモニウム、pH7.0)及び緩衝液B(25mM リン酸ナトリウム、pH7.0)。流速は0.5mL/分であり、総ランニング時間は約25分であった。吸光度は、214及び280nmでモニターした。更に、UVスペクトルを、ダイオードアレイ検出器を使用して400~210nmから記録した。クロマトグラムを処理し、Empowerソフトウェア(v3.0、Waters社)によって算出した。
図6Hに示すように、1D2、ED及びDE変異抗体は、異なる抗体、ハーセプチンと比較して類似の保持時間でピークをもたらし、ED及びDE変異抗体が、野生型抗体1D2と類似の表面疎水性を有することを示している。更に、ED変異は、1D2及びDE変異と比較して減少したレベルのショルダー種を有し、ED変異抗体の純度がより高いことを示している。結果は、ED変異が、製造及び/又は保存のために改善された生物物理学的特性を有することを示す。
【0189】
更に、精製した1D2、ED及びDE変異抗体の凝集状態を、動的光散乱(DLS)によって解析した。DLS解析は、レーザー波長658nmでDynaPro NanoStar(Wyatt社)を使用して測定した。抗体は、PBSで2mg/mLに希釈し、測定の前に0.02μm孔サイズフィルター(アルミナベースメンブレン)によって濾過した。10μlの試料を使い捨てのキュベットに移し、25℃で解析した。DYNAMICSソフトウェアを使用して、捕捉時間5秒、及び各試料の測定につき10回の捕捉で、計画及び自動捕捉した。これらの器具は、リアルタイムで各測定のレーザーパワー(%)及び減衰レベル(%)を自動的に決定する積分アルゴリズムを備えている。散乱光データをフィットさせ(Dynamics software; Wyatt社)、散乱光をレイリー球と想定する。「半径」はタンパク質粒子の直径であり、「質量百分率」は百分率での各サイズ分画の量であり、「PD百分率」は抗体多分散性の指標である。PD百分率が高いと、試料はより多分散性である。Tabel 10(表11)及び
図6Iに示すように、ED変異は、1D2及びDE変異と比較して多分散性百分率が低下している。この結果は、ED変異が、野生型1D2及びDE変異よりも凝集しにくいことを示している。ED変異は、開発の間に生物物理学的特性を改善した可能性がある。
【0190】
【0191】
合わせると、ED及びDE変異抗体は、野生型1D2抗体と類似の生物機能を有するが、D89E及びD90E変異は、産生及び貯蔵寿命のための抗体の安定性を増加させる。
【0192】
(実施例5)
1D2、ED及びDE変異抗体の結合特異性
ヒト及びマウスGM-CSFは、約56%の相同性を有し、種特異的である。アカゲザルGM-CSFは、ヒトGM-CSFと96.5%の相同性を有する(Hutchinsonら、J Med Virol 2001年、65:561~565頁、Genbank登録番号AY007376)。マウス又はアカゲザル由来のGM-CSFに結合する1D2、ED及びDE変異抗体の能力は、ELISAによって測定した。ELISAは、以下のように実施した。簡潔に言うと、GM-CSFタンパク質をELISA吸着プレート上にコートさせ、次いでPBS中1%BSAによってブロックした。続いて、モノクローナル抗体1D2、1D2-D89E(ED)又は1D2-D90E(DE)をプレートに添加し、1時間室温にてインキュベートした。インキュベーション後、プレートをTBSTで3回洗浄し、HRPコンジュゲートした抗ヒトカッパ軽鎖二次抗体とインキュベートした。プレートを3回洗浄し、TMBペルオキシダーゼ基質を添加し、1Nのスルフリン酸の添加により反応を停止させた。最後に、ELISAリーダーを使用して450nMでの吸光度を測定し、GraphPad Prism7ソフトウェアを使用して、データポイントをフィットさせる非線形回帰曲線にプロットした。
【0193】
図7Aは、抗体1D2が、ヒトGM-CSF及びアカゲザルGM-CSFに高い親和性で結合することができるが、マウスGM-CSFには結合できないことを示す。更に、ED及びDE変異抗体のヒト及びアカゲザルGM-CSFへの結合能をELISAによって測定した。
図7B~
図7Cは、野生型抗体1D2と同様に、ED及びDE変異抗体がヒト及びアカゲザルGM-CSFに結合することができることを示す。
【0194】
他の実施形態
本明細書に開示の全ての特徴は、任意の組合せで組み合わせてもよい。本明細書に開示の各性質は、同じ、等価の、又は類似の目的に寄与する代替の性質によって置き換えてもよい。従って、他に記載しない限り、開示の各特性は、等価な又は類似の特性の一般的なシリーズの例のみである。
【0195】
上記の説明から、当業者は、本発明に必須の特徴を容易に確かめることができ、これらの精神と範囲から逸脱することなく、様々な利用及び条件に適合するように本発明の様々な変更及び改変を行うことができる。従って、他の実施形態も、特許請求の範囲の範囲内である。
【0196】
均等物
いくつかの本発明の実施形態が本明細書に記載及び例示されるが、当業者は、機能を実施する及び/又は結果及び/又は本明細書に記載の1つ以上の利点を得るために様々な他の手段及び/又は構造を容易に想起し、そのような変化及び/又は改変のそれぞれは、本明細書に記載の本発明の実施形態の範囲内であると考えられる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載の全てのパラメーター、次元、材料、及び形状が例示であることを意味し、実際のパラメーター、次元、材料、及び/又は形状が、本発明の教示が使用される特定の1つ又は複数の適用に依存することを容易に認識する。当業者は、日常的な実験だけを使用して、本明細書に記載の特定の本発明の実施形態の多くの均等物を認識及び確認することができる。従って、先の実施形態は例示の目的のみにより提示され、添付の特許請求範囲及びそれらの均等物の範囲内であり、本発明の実施形態は、他に特に記載及び請求せずに実施され得ることが理解される。本開示の本発明の実施形態は、本明細書に記載の個々の性質、システム、文献、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。更に、そのような性質、システム、文献、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、2つ又はそれ以上のそれらの性質、システム、文献、材料、キット、及び/又は方法の任意の組合せが、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0197】
本明細書で規定及び使用する場合、全ての定義は、辞書定義、参照により組み込まれる文献における定義、及び/又は定義した用語の通常の意味の上で制御すると理解されるべきである。
【0198】
本明細書に開示の全ての参照、特許及び特許明細書は、それぞれが引用される主題に関して参照により組み込まれ、いくつかの場合では文献の全体を包含し得る。
【0199】
不定冠詞「a」及び「an」は、明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用する場合、反対にはっきりと示さない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0200】
語句「及び/又は」は、明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用する場合、結合された要素の「いずれか又は両方」、すなわち、いくつかの場合では接続的に存在し、他の場合では離接的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」によって列挙された複数の要素は、同じ様式、すなわち、結合された「1つ以上の」要素で解釈されるべきである。他の要素は、場合により、「及び/又は」節によって特異的に同定される要素以外に、特異的に同定されたそれらの要素と関連するか又は関連しないかのいずれかで存在することができる。従って、非限定的な例としては、「A及び/又はB」という言及は、「含む(comprising)」等制限の無い言葉と合わせて使用する場合、一実施形態では、Aのみ(場合により、B以外の要素を含む);別の実施形態では、Bのみ(場合によりA以外の要素を含む);更に別の実施形態では、AとBの両方(場合により他の要素を含む);等を指すことができる。
【0201】
明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用する場合、「又は」は、上記で定義した「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分ける場合、「又は」若しくは「及び/又は」は、包括的である、すなわち、幾つかの又はリストの要素、並びに、場合により、追加の列挙していない項目の、2つ以上の場合を含めて少なくとも1つが含まれると解釈される。反対にはっきりと示す用語のみ、例えば「の1つだけ」又は「厳密に1つの」、又は特許請求の範囲で使用する場合、「からなる」は、幾つかの又はリストの要素の厳密に1つの要素の包括を指す。一般に、用語「又は」は、本明細書で使用する場合、排他性の用語、例えば「いずれか」、「の1つ」、「の1つだけ」、又は「厳密に1つの」によって先行される場合、排他的な代替物(すなわち、「1つ又はその他だが、両方ではない」)を示すと解釈されるだけである。「基本的に~からなる」は、特許請求の範囲で使用する場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有する。
【0202】
明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用する場合、1つ以上の要素のリストを参照して、語句「少なくとも1つ」は、リストの要素の任意の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素であるが、必ずしも要素のリスト内に特異的に列挙したそれぞれ及び全ての要素の少なくとも1つを含まず、要素のリストの要素の任意の組合せを除外しないことを意味すると理解されるべきである。この定義はまた、要素が、場合により、語句「少なくとも1つ」が指す要素のリスト内の特異的に同定された要素以外に、特異的に同定されたそれらの要素と関連するか又は関連しないかのいずれかで存在し得ることも可能にする。従って、非限定的な例としては、「AとBの少なくとも1つ」(又は、同等に「A又はBの少なくとも1つ」又は、同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、場合により2つ以上を含む、Bが存在しないA(場合により、B以外の要素を含む);別の実施形態では、少なくとも1つ、場合により2つ以上を含む、Aが存在しないB(場合により、A以外の要素を含む);更に別の実施形態では、少なくとも1つ、場合により2つ以上を含む、A、並びに少なくとも1つ、場合により2つ以上を含む、B (場合により、他の要素を含む);等を指すことができる。
【0203】
反対にはっきりと示さない限り、2つ以上の工程又は行為を含む本明細書で請求する任意の方法において、方法の工程又は行為の順序は、方法の工程又は行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【配列表】