(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】電気泳動を用いた核酸ライブラリの調製
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6806 20180101AFI20241213BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241213BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20241213BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20241213BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12M1/00 A ZNA
C12M1/42
C12Q1/6869 Z
(21)【出願番号】P 2021535050
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 GB2020051669
(87)【国際公開番号】W WO2021009494
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-04-13
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ゴームリー, ナイル アンソニー
【審査官】三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-533703(JP,A)
【文献】特表2018-533982(JP,A)
【文献】国際公開第2002/027312(WO,A1)
【文献】特表2019-506902(JP,A)
【文献】特表2015-533220(JP,A)
【文献】HENNIG,B.P. ET AL.,G3,2018年,8,P.79-89,ISSN:2160-1836
【文献】KAYA-OKUR,H.S. ET AL.,NATURE COMMUNICATIONS,2019年04月29日,10(1) 1930,P.1-10,ISSN:2041-1723
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動を用いて酵素反応を実施する方法であって、前記方法が、
(a)
第1の端部及び第2の端部、並びに前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつ酵素の第1の酵素補因子を含有する第1の部分であって、前記酵素がトランスポザーゼであり、前記第1の酵素補因子が金属イオンである、第1の部分と、
前記第2の端部に近接し、かつ前記第1の酵素補因子とは反対の電荷を有する、前記酵素の第2の酵素補因子を含有する第2の部分であって、前記第2の酵素補因子がポリヌクレオチドである、第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間の、前記酵素を含有する反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)前記反応部分に標的二本鎖核酸である基質を適用することと、
(c)前記電極の対の間に電場を印加して、前記第1の酵素補因子を前記第1の部分から前記反応部分に駆動し、前記第2の酵素補因子を前記第2の部分から前記反応部分に駆動して、前記酵素、前記第1の酵素補因子、及び前記第2の酵素補因子を含む活性化酵素複合体を形成することと、を含み、
前記電場を印加することが、前記反応部分において前記活性化酵素複合体を前記基質と反応させて反応生成物を形成することを含む、方法。
【請求項2】
前記電場の印加が、前記反応部分から未反応の第1及び第2の酵素補因子を泳動させて、前記反応部分における前記反応生成物から前記未反応の第1及び第2の酵素補因子を分離することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の電極が正極であり、前記第1の酵素補因子が正に帯電しており、前記第2の電極が負極であり、前記第2の酵素補因子が負に帯電している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記標的二本鎖核酸が、二本鎖DNA、二本鎖RNA、又はDNA/RNAハイブリッドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記トランスポザーゼがTn5トランスポザーゼであ
る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつ第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、前記第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
前記第1の端部から遠位の、かつトランスポザーゼ、並びに二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含むトランスポソーム複合体を含有する反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)標的二本鎖核酸を前記反応部分に適用することと、
(c)前記電極の対の間に第1の電場を印加して、前記第1のトランスポザーゼ補因子を前記第1の部分から前記反応部分に駆動して、前記トランスポザーゼ、前記ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタ、及び前記第1のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、
(d)前記標的二本鎖核酸を断片化し、そして、前記核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、前記標的二本鎖核酸を前記活性化トランスポソーム複合体と共に前記反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む、方法。
【請求項7】
前記トランスポソーム複合体が
、前記反応部分において固体支持体上に固定化される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記タグ付き核酸断片を作製した後に、前記トランスポソーム複合体を前記固体支持体から放出させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(d)後に前記第1の電場の大きさを変化させて、前記固体支持体から放出された前記トランスポソーム複合体に結合している前記タグ付き核酸断片を回収部分に駆動することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、前記第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
前記第2の端部に近接し、かつ前記トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、前記第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間の、前記トランスポザーゼを含有する反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)標的二本鎖核酸を前記反応部分に適用することと、
(c)前記電極の対の間に第1の電場を印加して、前記第1のトランスポザーゼ補因子を前記第1の部分から前記反応部分に駆動し、前記第2のトランスポザーゼ補因子を前記第2の部分から前記反応部分に駆動して、前記トランスポザーゼ、前記第1のトランスポザーゼ補因子、及び前記第2のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、
(d)前記標的二本鎖核酸を断片化し、そして、前記核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、前記標的二本鎖核酸を前記活性化トランスポソーム複合体と共に前記反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記一本鎖タグ領域が、プライマー配列、バーコード配列、固有分子識別子(UMI)配列、増幅タグ、エンリッチメントタグ、又は精製タグのうちの1つ以上を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記トランスポザーゼが、前記反応部分において固体支持体上に固定化され
る、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)で印加された前記第1の電場が、前記標的二本鎖核酸が前記電気泳動マトリックス内で電気泳動移動度を実質的に有さない値に設定される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記電気泳動システムが、前記長さに沿って前記第1の部分と前記反応部分との間に回収部分を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
工程(c)における前記第1の電場の印加が、前記タグ付き核酸断片を前記回収部分に駆動することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電気泳動ゲルマトリックス全体にわたって前記第1の電場の大きさ又は方向を変化させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記電気泳動システムが、各々がタグメンテーションのための異なる試薬を含有する、前記幅及び前記長さに沿った追加の部分と、前記第1の端部又は前記第2の端部のうちの一方に前記幅の両側における正極及び負極の第2の対とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
電極の前記第2の対の間に第2の電場を印加することを含み、前記第2の電場の方向が、工程(c)で印加した前記第1の電場の方向に対して垂直である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
トランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、前記第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
前記トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、前記第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
溶解試薬を含有する第3の部分と、
前記トランスポザーゼを含有する第4の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間の反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の第1の対と、
前記第1の端部又は前記第2の端部のうちの一方において、前記幅の両側に配置された正極及び負極の第2の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)標的二本鎖核酸を含有する細胞全体を前記反応部分に適用することと、
(c)第1の電場を印加して、溶解剤を前記反応部分に駆動して及び/又は前記反応部分を通過させて前記細胞を溶解させ、それにより、前記標的二本鎖核酸をサンプル部分に適用することと、
(d)第2の電場を印加して、前記第1のトランスポザーゼ補因子を前記第1の部分から前記反応部分に駆動し、前記第2のトランスポザーゼ補因子を前記第2の部分から前記反応部分に駆動し、及び/又は前記トランスポザーゼをトランスポザーゼ部分から前記反応部分に駆動して、前記トランスポザーゼ、前記第1のトランスポザーゼ補因子、及び前記第2のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、
(e)前記標的二本鎖核酸を断片化し、そして、前記核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、前記標的二本鎖核酸を前記活性化トランスポソーム複合体と共に前記反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記第1の電場及び前記第2の電場が異なり、工程(d)の前に工程(c)が実施される、又は、
前記第1の電場及び前記第2の電場が同じであり、工程(d)と同時に工程(c)が実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
電気泳動装置であって、
第1の端部、第2の端部、及び前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつ酵素の第1の酵素補因子を含有する第1の部分であって、前記酵素がトランスポザーゼであり、前記第1の酵素補因子が金属イオンである、第1の部分と、
前記第2の端部に近接し、かつ前記第1の酵素補因子とは反対の電荷を有する、前記酵素の第2の酵素補因子を含有する第2の部分であって、前記第2の酵素補因子がポリヌクレオチドである、第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間の、前記酵素を含有する反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動装置。
【請求項22】
電気泳動装置であって、
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつ第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、前記第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
前記第1の端部から遠位の、かつトランスポザーゼ、並びに二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含むトランスポソーム複合体を含有する反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動装置。
【請求項23】
電気泳動装置であって、
第1の端部、第2の端部、及び前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、前記第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
前記第2の端部に近接し、かつ前記トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、前記第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
前記第1の端部と前記第2の端部との間の、前記トランスポザーゼを含有する反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動装置。
【請求項24】
電気泳動装置であって、
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、前記第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
前記第2の端部に近接し、かつ前記トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、前記第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
溶解試薬を含有する第3の部分と、
前記トランスポザーゼを含有する第4の部分と、
前記第1の端部と前記第2の端部との間の反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の第1の対と、
前記第1の端部又は前記第2の端部のうちの一方において、前記幅の両側に配置された正極及び負極の第2の対と、
を含む、電気泳動装置。
【請求項25】
標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製するシステムであって、
請求項21~24のうちのいずれか一項に記載の装置と、
電源と、
第1及び第2の電場の方向及び/又は大きさを制御して、前記試薬及び/若しくはタグ付き核酸断片を前記反応部分、回収部分、及び/若しくは受容部分に駆動する、並びに/又は前記試薬及び/若しくはタグ付き核酸断片を、前記反応部分、回収部分、及び/若しくは受容部分を通過させるように構成されたコントローラと、
を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮出願第62/873,603号(2019年7月12日出願)の優先権の利益を主張するものであり、あらゆる目的のためにその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、電気泳動を使用して核酸分子を核酸ライブラリに加工するための方法及びシステムに関する。本出願はまた、電気泳動を使用してライブラリを調製するための方法、装置、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
二本鎖核酸標的分子(例えば、二本鎖DNA(dsDNA))から断片化及びタグ付けされた核酸(例えば、DNA)分子のライブラリを作製することが望ましい様々な方法及び用途が存在する。多くの場合、この目的は、シーケンシング(配列決定)反応においてテンプレートとして使用するために、より大きな標的核酸分子からより小さな核酸分子(例えば、核酸又はDNA断片)を作製することである。シーケンシング用のライブラリの調製は、大きな核酸分子を使用する場合困難を伴う:大きな分子は脆弱であり、細胞溶解、遠心分離、ピペッティング、サンプル移送、及びボルテックスなどの複数の異なる物理的プロセスを通じた過度の取り扱い及び操作により容易に損傷を受ける(例えば、脱塩基部位又はニックが生じる)。このような損傷は、標的核酸のシーケンシングにおける誤りにつながる。
【0004】
核酸への物理的損傷のリスクを低減するシーケンシング(例えば、タグメンテーション)用の核酸ライブラリを調製するために、電気泳動を使用して組み合わせ及び分離の複数の工程を実施する方法が本明細書に記載される。これらのアプローチはまた、サンプル調製、サンプル抽出、生化学的反応、生成物精製、及び核酸断片のサイズ選択などの他のプロセスを実施するために容易に適用することもできる。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、ゲル電気泳動を使用して、酵素反応のための基質、試薬、及び生成物を組み合わせ及び分離するための方法及び装置に関する。本出願はまた、ゲル電気泳動を使用し、トランスポソーム複合体を使用して、DNAなどの核酸を断片化及びタグ付けするための方法、システム、及び装置に関する。本明細書に記載される方法、システム、及び装置は、ゲル電気泳動を使用し、トランスポソーム複合体を使用して、DNAを断片化及びタグ付けするための方法及び組成物に関する。本明細書に提示される方法、システム、及び装置は、例えば、例えば次世代シーケンシング法などにおいて使用するためのタグ付き核酸(例えば、DNA)断片のライブラリを作製するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本出願は、ゲノム、サブゲノム、トランスクリプトーム、若しくはメタゲノム解析、又はRNA発現の解析のための、任意の供給源由来の対象となる任意の二本鎖DNA(RNAから調製された二本鎖cDNAを含む)を含む標的DNAからのDNA断片の調製に関する。
【0006】
本明細書の記載によれば、一実施形態では、電気泳動を使用して酵素反応を実施する方法は、
(a)
第1の端部及び第2の端部、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
当該第1の端部に近接し、かつ酵素の第1の酵素補因子を含有する第1の部分と、
当該第2の端部に近接し、かつ当該第1の酵素補因子とは反対の電荷を有する、当該酵素の第2の酵素補因子を含有する第2の部分と、
当該第1の部分と当該第2の部分との間の、当該酵素を含有する反応部分と、
それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)当該電極の対の間に電場を印加して、当該第1の酵素補因子を当該第1の部分から当該反応部分に駆動し、当該第2の酵素補因子を当該第2の部分から当該反応部分に駆動して、当該酵素、当該第1の酵素補因子、及び当該第2の酵素補因子を含む活性化酵素複合体を形成することと、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
当該第1の端部に近接し、かつ第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
当該第1の端部から遠位の、かつトランスポザーゼ、並びに二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含むトランスポソーム複合体を含有する反応部分と、
それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)標的二本鎖核酸を当該反応部分に適用することと、
(c)当該電極の対の間に第1の電場を印加して、当該第1のトランスポザーゼ補因子を当該第1の部分から当該反応部分に駆動して、当該トランスポザーゼ、当該ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタ、及び当該第1のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、
(d)複数の核酸断片ではなく、当該標的二本鎖核酸を断片化し、そして、当該核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、当該標的二本鎖核酸を当該活性化トランスポソーム複合体と共に当該反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む方法が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態では、標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
当該第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
当該第2の端部に近接し、かつ当該トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、当該第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
当該第1の部分と当該第2の部分との間の、当該トランスポザーゼを含有する反応部分と、
それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)標的二本鎖核酸を当該反応部分に適用することと、
(c)当該電極の対の間に第1の電場を印加して、当該第1のトランスポザーゼ補因子を当該第1の部分から当該反応部分に駆動し、当該第2のトランスポザーゼ補因子を当該第2の部分から当該反応部分に駆動して、当該トランスポザーゼ、当該第1のトランスポザーゼ補因子、及び当該第2のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、
(d)複数の核酸断片ではなく、当該標的二本鎖核酸を断片化し、そして、当該核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、当該標的二本鎖核酸を当該活性化トランスポソーム複合体と共に当該反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む方法が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
トランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
当該トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、当該第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
溶解試薬を含有する第3の部分と、
当該トランスポザーゼを含有する第4の部分と、
当該第1の部分と当該第2の部分との間の反応部分と、
それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の第1の対と、
当該第1の端部又は当該第2の端部のうちの一方において、当該幅の両側に配置された正極及び負極の第2の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)標的二本鎖核酸を含有する細胞全体を当該反応部分に適用することと、
(c)第1の電場を印加して、溶解剤を当該反応部分に駆動して及び/又は当該反応部分を通過させて当該細胞を溶解させ、それにより、当該標的二本鎖核酸をサンプル部分に適用することと、
(d)第2の電場を印加して、当該第1のトランスポザーゼ補因子を当該第1の部分から当該反応部分に駆動し、当該第2のトランスポザーゼ補因子を当該第2の部分から当該反応部分に駆動し、及び/又は当該トランスポザーゼをトランスポザーゼ部分から当該反応部分に駆動して、当該トランスポザーゼ、当該第1のトランスポザーゼ補因子、及び当該第2のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、
(e)複数の核酸断片ではなく、当該標的二本鎖核酸を断片化し、そして、当該核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、当該標的二本鎖核酸を当該活性化トランスポソーム複合体と共に当該反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む方法が提供される。
【0010】
いくつかの実施形態では、電気泳動装置は、第1の端部、第2の端部、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、当該第1の端部に近接し、かつ酵素の第1の酵素補因子を含有する第1の部分と、当該第2の端部に近接し、かつ当該第1の酵素補因子とは反対の電荷を有する、当該酵素の第2の酵素補因子を含有する第2の部分と、当該第1の部分と当該第2の部分との間の、当該酵素を含有する反応部分と、それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、電気泳動装置は、第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、当該第1の端部に近接し、かつ第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、当該第1末端から遠位の、かつトランスポザーゼ、並びに二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含むトランスポソーム複合体を含有する反応部分と、それぞれ当該第1の及び第2の端部に配置された、正極及び負極の対と、を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、電気泳動装置は、第1の端部、第2の端部、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、当該第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、当該第2の端部に近接し、かつ当該トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、当該第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、当該第1の端部と当該第2の端部との間の、当該トランスポザーゼを含有する反応部分と、それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、電気泳動装置は、第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、当該第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、当該第2の端部に近接し、かつ当該トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、当該第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、溶解試薬を含有する第3の部分と、当該トランスポザーゼを含有する第4の部分と、当該第1の端部と当該第2の端部との間の反応部分と、それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の第1の対と、当該第1の端部又は当該第2の端部のうちの一方において、当該幅の両側に配置された正極及び負極の第2の対と、を含む。
【0014】
追加の目的及び利点は、一部は以下の明細書に記載され、一部は明細書から明らかであるか、又は実践によって習得され得る。目的及び利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘される要素及び組み合わせによって実現及び達成されるであろう。
【0015】
前述の全般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも単に例示的で説明的なものであり、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0016】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、1つの(いくつかの)実施形態を図解し、明細書と共に本明細書に記載される原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】ゲル電気泳動を用いて化学反応を実施する全般的な概略図を示す。A、B:試薬;C:生成物。
【0018】
【
図1B】ゲル電気泳動を用いて酵素反応を実施する全般的な概略図を示す。E:酵素;S:基質;C1、C2:酵素補因子;P:生成物。
【0019】
【
図2A】ゲル電気泳動を用いてタグ付き核酸断片を調製するための方法の実施形態を示す。Tn5:トランスポザーゼ(例えば、Tn5トランスポザーゼ)及びポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含むトランスポザーゼ複合体。
【0020】
【
図2B】ゲル電気泳動を用いてタグ付き核酸断片を調製するための方法の別の実施形態を示す。Tn5:トランスポザーゼ(例えば、Tn5トランスポザーゼ);Ad:ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタ。
【0021】
【
図3A】ゲルマトリックス中に複数の反応部分を含み、複数の逐次工程(t0~t5)を実施する、ゲル電気泳動を使用してタグ付き核酸断片を調製するための方法の別の実施形態を示す。Tn5:トランスポザーゼ(例えば、Tn5トランスポザーゼ);Ad:ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタ;Lysis rgt:溶解試薬。
【
図3B】ゲルマトリックス中に複数の反応部分を含み、複数の逐次工程(t0~t5)を実施する、ゲル電気泳動を使用してタグ付き核酸断片を調製するための方法の別の実施形態を示す。Tn5:トランスポザーゼ(例えば、Tn5トランスポザーゼ);Ad:ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタ;Lysis rgt:溶解試薬。
【
図3C】ゲルマトリックス中に複数の反応部分を含み、複数の逐次工程(t0~t5)を実施する、ゲル電気泳動を使用してタグ付き核酸断片を調製するための方法の別の実施形態を示す。Tn5:トランスポザーゼ(例えば、Tn5トランスポザーゼ);Ad:ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタ;Lysis rgt:溶解試薬。
【0022】
【
図4】ゲルマトリックスの異なる部分に配置された異なる電気泳動移動度を有する複数の試薬において複数の生化学反応を実施する全般的な概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成目的のみのためであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0024】
本開示は、電気泳動を使用して化学及び/又は酵素プロセスを実施するための方法及びシステム、具体的には、核酸(例えば、DNA)シーケンシングのためのライブラリ調製に関する。
【0025】
ゲル電気泳動システムは、3Dマトリックス中の位置間の分子の移動を可能にする。交差する軌道上で3Dマトリックスを通して分子を移動させるために、電場が印加される。異なる分子は、電場を通して異なる電気泳動移動度で泳動する。本明細書に記載される方法は、連続的な時間及び位置の間隔で交差する軌道で移動するように、試薬の所定の位置決めを通して3Dマトリックス内の異なる位置における複数の反応を可能にし、それによって、多工程プロセス、例えば、核酸ライブラリ調製、サンプル抽出、生化学反応、生成物精製、及びサイズ選択を全てゲル内で達成することを可能にする。
【0026】
一実施形態では、既知の電気泳動移動度の2つの分子を、ゲルマトリックス内に位置決めし、そして、当該分子が異なる方向及び速度で泳動するが、ある点では交差するように、同じ電場に曝露してよい。
図1Aに示すように、2つの試薬A及びBは、時間t0で出発位置から逆方向であるが向かい合う方向に泳動し、最終的には、(t2で)電場においてある時間後に組み合わされ、そこで反応して生成物Cを形成する。その後の時間間隔(t3)では、A及びBの未反応分子は逆方向に泳動し続けるが、分子Cは、その移動度から、形成された場所に留まるか又はA及びBとは異なる移動度で移動するので、未反応分子から分離及び精製される。
【0027】
トランスポザーゼに媒介されるライブラリ調製
本明細書に提示される方法及び組成物は、シーケンシングのためのライブラリを調製するためのいくつかの利点を提供する。断片化核酸のライブラリは、多くの場合、次世代シーケンシング(NGS)用途で使用するためのゲノム核酸から生成される。本開示は、転位ライブラリを調製するための方法、装置、及びシステムを提供する。現在の核酸サンプルのシーケンシングのためのプロトコルでは、DNA又はRNAをテンプレートのライブラリに変換するサンプル調製プロセスがルーチン的に使用されている。標準的なライブラリ調製方法では、各テンプレートは、インサートのいずれかの末端にアダプタを含み、多くの場合、DNA又はRNAの修飾、及び修飾反応の所望の生成物の精製の両方を行うために多数の工程が必要とされる。クラスタ形成及びシーケンシングの準備が整った溶液中においてアダプタで修飾されたテンプレートにDNAを転換するために必要な工程の数は、トランスポザーゼに媒介される断片化及びタグ付けの使用によって最小限に抑えることができる。本明細書では「タグメンテーション」と称されるこのプロセスは、多くの場合、トランスポゾン末端配列を含むアダプタと複合体化したトランスポザーゼ酵素を含むトランスポソーム複合体によるDNAの修飾を伴う。タグメンテーションは、二重断片の両方の鎖の5’末端へのDNAの同時フラグメンテーション及びアダプタのライゲーションもたらす。タグ付き断片を増幅させ、対象のアンプリコンを任意選択で(例えば、ハイブリダイゼーションプローブを介して)捕捉し、タグ付き断片をシーケンシングする。
【0028】
タグメンテーションによるシーケンシングのためのライブラリの調製は、大きな核酸分子を使用するときには困難である場合がある:大きな分子は脆弱であり、細胞溶解、遠心分離、ピペッティング、サンプル移送、ボルテックス、及び他の物質操作などの複数の異なる物理的及び化学的プロセスによる過度の取り扱い及び操作により容易に損傷を受ける(例えば、脱塩基部位又はニックが生じる)。
【0029】
本出願は、3Dマトリックス内でゲル電気泳動を使用してライブラリ調製を実施する方法を提供する。交差する軌道上で3Dマトリックスを通して分子を移動させるために電場を印加し、それにより、組み合わせ工程及び分離工程を実施する。ゲルマトリックス中の試薬の電気泳動移動度に基づいてサンプル抽出及びライブラリ調製の操作を実施することにより、核酸への物理的損傷のリスクを低減することができる。また、ゲルマトリックス内に核酸を物理的に埋め込んで保護することによっても、損傷が低減される。更に、タグ付きDNA断片及び試薬の精製は、DNAの更なる操作後、異なる移動度に基づいて達成することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、電気泳動を使用して酵素反応を実施する方法であって、(a)第1の端部及び第2の端部、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、当該第1の端部に近接し、かつ酵素の第1の酵素補因子を含有する第1の部分と、当該第2の端部に近接し、かつ当該第1の酵素補因子とは反対の電荷を有する、当該酵素の第2の酵素補因子を含有する第2の部分と、当該第1の部分と当該第2の部分との間の、当該酵素を含有する反応部分と、それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、を含む電気泳動システムを提供することと、(b)当該電極の対の間に電場を印加して、当該第1の酵素補因子を当該第1の部分から当該反応部分に駆動し、当該第2の酵素補因子を当該第2の部分から当該反応部分に駆動して、当該酵素、当該第1の酵素補因子、及び当該第2の酵素補因子を含む活性化酵素複合体を形成することと、を含む方法が提供される。
【0031】
更なる実施形態では、第1の酵素補因子は金属イオンであり、当該第2の酵素補因子はポリヌクレオチドである。更なる実施形態では、方法は、工程(c)の前に、活性化酵素複合体の基質を反応部分に適用することを更に含み、電場の印加は、反応部分において活性化酵素複合体を基質と反応させて反応生成物を形成することを含む。更なる実施形態では、電場の印加は、反応部分から未反応の第1及び第2の酵素補因子を泳動させて、反応部分における反応生成物から未反応の第1及び第2の酵素補因子を分離することを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1の電極は正極であり、第1の酵素補因子は正に帯電しており、第2の電極は負極であり、第2の酵素補因子は負に帯電している。
【0033】
いくつかの実施形態では、基質は、標的二本鎖核酸である。更なる実施形態では、標的二本鎖核酸は、二本鎖DNA、二本鎖RNA、又はDNA/RNAハイブリッドである。
【0034】
いくつかの実施形態では、酵素は、トランスポザーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、Tn5トランスポザーゼである。更なる実施形態では、第1の酵素補因子は、Mg2+を含む。いくつかの実施形態では、Mg2+の濃度はミリモル濃度の範囲である。いくつかの実施形態では、Mg2+の濃度は0.5~10mMである。いくつかの実施形態では、Mg2+の濃度は1~10mMである。いくつかの実施形態では、Mg2+の濃度は1~5mMである。いくつかの実施形態では、Mg2+の濃度は2mMである。いくつかの実施形態では、Mg2+カチオンはMg(OAc)2として提供される。いくつかの実施形態では、Mg2+カチオンはMgCl2として提供される。
【0035】
更なる実施形態では、第2の酵素補因子は、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである。更なる実施形態では、第2の酵素補因子は、2つのポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタの混合物であり、各アダプタは、同じ二本鎖トランスポゾン末端配列及び異なる一本鎖タグ領域を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、電場の大きさ若しくは方向を交互にしたり、又は異なる電場を互いに対して90度で提供したりするなど、より複雑な電場を印加してもよい。このような実施形態では、個々の反応物質のより複雑な軌道が可能である。このような場合、電気泳動場を交互にし、そして、ゲルマトリックス上の位置間の選択された軌道で分子を移動させることによって、反応物質が組み合わされ得る及び/又は分離され得るように、反応物質の既知の又は予想される移動度に応じて反応物質をマトリックス内の所定の位置に配置してよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬(酵素など)を、3Dマトリックス中の固体支持体(反応部分内のビーズ)上に固定化してもよく、それによって、当該試薬の電場内での移動は阻止されるが、他の試薬は、電場内の移動度に従って自由に移動する。
【0037】
いくつかの実施形態では、方法は、電気泳動ゲルマトリックス全体にわたって電場の大きさ又は方向を変化させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、電気泳動ゲルマトリックス全体にわたって電場の大きさ又は方向を変化させることを含む。いくつかの実施形態では、電気泳動システムは、各々が異なる試薬を含有する、幅及び長さに沿った追加の部分を含む。いくつかの実施形態では、第1の端部又は第2の端部のうちの一方において幅の両側に正極及び負極の第2の対を提供して、追加の電場を印加してもよい。電極の第1及び第2の対によって生じる電場は、異なる方向であってもよい。電極の第1及び第2の対によって生じる電場は、互いに垂直であってもよい。
【0038】
図1Aは、いくつかの実施形態による、化学反応を実施するための本明細書に記載の電気泳動システムの例示的な構成を示す。電場を印加すると、2つの試薬A及びB(例えば、第1の酵素補因子及び第2の酵素補因子などであるが、これらに限定されない)は、時間t0で出発位置から逆方向であるが向かい合う方向に泳動し、最終的には、(t2で)電場においてある時間後に組み合わされ、そこで互いに又は第3の試薬と反応して生成物Cを形成する。その後の時間間隔(t3)では、未反応のA及びBは逆方向に泳動し続けるが、生成物分子Cは、その移動度から、留まるか又はA及びBとは異なる移動度で移動するので、未反応試薬から精製される。
【0039】
図1Bは、いくつかの実施形態による、酵素反応を実施するための本明細書に記載の電気泳動システムの例示的な構成を示す。第1の酵素補因子C1及び第2の酵素補因子C2は、それぞれ電気泳動ゲルマトリックスの両端に近接する第1及び第2の部分に提供される。酵素Eを含有する反応部分が、第1の部分と第2の部分との間にある。基質Sが、反応部分に更に提供される。電場を印加すると、第1の酵素補因子C1及び第2の酵素補因子C2は、時間t0で出発位置とは逆方向であるが向かい合う方向に泳動する。t2では、これらが互いに及び酵素と反応して、酵素、第1の酵素補因子、及び第2の酵素補因子を含む活性化酵素複合体(E+C1+C2)を形成し、これが基質Sの反応を触媒して生成物Pを形成する。その後のt3では、未反応のC1及びC2は逆方向に泳動し続けるが、生成物Pは、その移動度から、留まるか又はA及びBとは異なる移動度で移動するので、未反応試薬から精製される。
【0040】
いくつかの実施形態では、標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、(a)第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、当該第1の端部に近接し、かつ第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、当該第1末端から遠位の、かつトランスポザーゼ、並びに二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含むトランスポソーム複合体を含有する反応部分と、それぞれ当該第1の及び第2の端部に配置された、正極及び負極の対と、を含む電気泳動システムを提供することと、(b)標的二本鎖核酸を当該反応部分に適用することと、(c)当該電極の対の間に第1の電場を印加して、当該第1のトランスポザーゼ補因子を当該第1の部分から当該反応部分内に駆動して、当該トランスポザーゼ、当該ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタ、及び当該第1のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、(d)複数の核酸断片ではなく、当該標的二本鎖核酸を断片化し、そして、当該核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、当該標的二本鎖核酸を当該活性化トランスポソーム複合体と共に当該反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む。更なる実施形態では、トランスポソーム複合体は、反応部分において固体支持体上に固定化される。任意選択で、トランスポソーム複合体は、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用を介して固定化される。更なる実施形態では、方法は、タグ付き核酸断片を作製した後に、トランスポソーム複合体を固体支持体から放出させることを更に含む。更なる実施形態では、方法は、工程後に第1の電場の大きさを変化させて、固体支持体から放出されたトランスポソーム複合体に結合しているタグ付き核酸断片を回収部に駆動することを更に含む。
【0041】
図2Aは、2つのウェルを含む電気泳動装置を使用して実施される方法の一例を示す。開始時には、左の第1の部分はMg
2+などの金属イオンを含有し、中心の反応部分は、高分子量核酸(例えば、DNA)及びトランスポソーム複合体を含有する。電場を印加すると(t1)、Mg
2+は負極に向かって移動し、反応部分の内容物は、そのサイズから定位置に留まるので、ゲルマトリックス中での移動度を欠く。その後の時間間隔(t2)では、Mg
2+は、反応部分に到達して活性化トランスポソーム複合体を形成し、活性化複合体は、次いで、大きなDNA分子に結合し、断片化し、タグ付け(タグメンテーション)して小さなライブラリテンプレートにする。反応が完了すると(t3)、Mg
2+は負極に向かい続ける。タグメンテーションされた断片は、反応部分において回収又は更に加工され得る。あるいは、サイズが大幅に低減されることから、タグメンテーションされた断片は次に正極に向かって泳動し、それにより断片を分離し、そして、任意選択で精製することもでき、この断片は、回収部分(図示せず)から回収することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法が提供される。方法は、(a)第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、当該第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、当該第2の端部に近接し、かつ当該トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、当該第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、当該第1の部分と当該第2の部分との間の、当該トランスポザーゼを含有する反応部分と、それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、を含む電気泳動システムを提供することと、(b)標的二本鎖核酸を当該反応部分に適用することと、(c)当該電極の対の間に第1の電場を印加して、当該第1のトランスポザーゼ補因子を当該第1の部分から当該反応部分内に駆動し、当該第2のトランスポザーゼ補因子を当該第2の部分から当該反応部分内に駆動して、当該トランスポザーゼ、当該第1のトランスポザーゼ補因子、及び当該第2のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポザーゼ複合体を形成することと、(d)複数の核酸断片ではなく、当該標的二本鎖核酸を断片化し、そして、当該核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、当該標的二本鎖核酸を当該活性化トランスポソーム複合体と共に当該反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む。
【0043】
更なる実施形態では、金属イオンは、任意選択でMg(OAc)2又はMgCl2の形態であるMg2+である。いくつかの実施形態では、Mg2+の濃度はミリモル濃度の範囲である。いくつかの実施形態では、Mg2+の濃度は0.5~10mMである。いくつかの実施形態では、Mg2+の濃度は1~10mMである。いくつかの実施形態では、Mg2+の濃度は1~5mMである。いくつかの実施形態では、Mg2+の濃度は2mMである。いくつかの実施形態では、Mg2+カチオンはMg(OAc)2として提供される。いくつかの実施形態では、Mg2+カチオンはMgCl2として提供される。工程(b)において標的核酸を反応部分に適用すると、トランスポザーゼ又はトランスポソーム複合体は、Mg2+を伴わず、まず標的核酸に結合する。工程(c)において電場を印加すると、トランスポザーゼは、大きな標的核酸に結合しているので泳動しないが、Mg2+は反応部分に泳動する。
【0044】
いくつかの実施形態では、一本鎖タグ領域は、プライマー配列、バーコード配列、固有分子識別子(UMI)配列、増幅タグ、エンリッチメントタグ、又は精製タグのうちの1つ以上を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、Tn5、MuA、若しくはビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)トランスポザーゼ、又はこれらの活性変異である。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、Tn5トランスポザーゼである。いくつかの実施形態では、Tn5トランスポザーゼは、高活性Tn5トランスポザーゼである。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、反応部分において固体支持体上に固定化される。いくつかの実施形態では、反応部分はウェルを含み、固体支持体はウェル内のビーズ粒子であるか、又は固体支持体はウェルの表面である。
【0046】
いくつかの実施形態では、標的二本鎖核酸は、二本鎖DNA、二本鎖RNA、又はDNA/RNAハイブリッドである。
【0047】
いくつかの実施形態では、工程(c)で第1の電場を印加したとき、標的二本鎖核酸は、サイズが大きいことから反応部分内に留まるので、ゲルマトリックス中での移動度を欠く。いくつかの実施形態では、工程(c)で印加された第1の電場は、標的二本鎖核酸が電気泳動マトリックス内で電気泳動移動度を実質的に有さない値に設定される。
【0048】
いくつかの実施形態では、電気泳動システムは、長さに沿って第1の部分と反応部分との間に回収部分を含む。更なる実施形態では、工程(c)における第1の電場の印加は、タグ付き核酸断片を回収部分に駆動することを含む。更なる実施形態では、方法は、工程(d)後に第1の電場の大きさを増加させて、タグ付き核酸断片を回収部分に駆動することを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、方法は、電気泳動ゲルマトリックス全体にわたって第1の電場の大きさ又は方向を変化させることを含む。いくつかの実施形態では、電気泳動システムは、各々がタグメンテーションのための異なる試薬を含有する、幅及び長さに沿った追加の部分と、第1の端部又は第2の端部のうちの一方において幅の両側における正極及び負極の第2の対とを含む。いくつかの実施形態では、方法は、電極の第2の対の間に第2の電場を印加することを含み、第2の電場の方向は、工程(c)で印加した第1の電場とは異なる。いくつかの実施形態では、方法は、電極の第2の対の間に第2の電場を印加することを含み、第2の電場の方向は、工程(c)で印加した第1の電場の方向に対して垂直である。
【0050】
いくつかの実施形態では、電気泳動システムは、溶解試薬を含有する第3の部分を含み、反応部分は細胞全体を含有する。いくつかの実施形態では、方法は、第3の電場を印加して、溶解剤を反応部分に駆動して及び/又は反応部分を通過させて細胞を溶解させ、それにより、標的二本鎖核酸をサンプル部分に適用することを更に含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、標的二本鎖核酸の適用は、生体サンプルを反応部分に添加することを含む。生体サンプルは、核酸(例えば、DNA)を含み、タグメンテーションのために反応部分に堆積させることができる任意の種類であってよい。例えば、サンプルは、精製された核酸を含む様々な精製状態の核酸を含み得る。しかしながら、サンプルは完全に精製される必要はなく、例えば、タンパク質、他の核酸種、他の細胞成分、及び/又は任意の他の夾雑物が混入しているDNAを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、生体サンプルは、インビボで見られるものとほぼ同じ割合で存在するDNA、タンパク質、他の核酸種、他の細胞成分、及び/又は任意の他の夾雑物の混合物を含む。
【0052】
生体サンプルは、例えば、粗細胞溶解物又は全細胞を含み得る。例えば、本明細書に記載の方法において固体支持体に適用される粗細胞溶解物は、他の細胞構成要素から核酸を単離するために従来から使用している分離工程のうちの1つ以上が行われる必要はない。例示的な分離工程は、参照により本明細書に組み込まれるManiatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d Edition,1989及びShort Protocols in Molecular Biology,ed.Ausubel,et alに記載されている。
【0053】
したがって、いくつかの実施形態では、生体サンプルは、例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、粘液、痰、尿、精液、脳脊髄液、気管支吸引物、糞便、及びこれらの浸軟組織、若しくはこれらの溶解物、又はDNAを含む任意の他の生体標本を含み得る。
【0054】
図2Bは、4つのウェルa)、b)、c)、及びd)並びに電極の対を含む電気泳動システムを使用した、本明細書に記載の方法の一例を示す。プロセスの開始時に、ウェルa)はMg
2+を含有し、b)は空であり、c)は高分子量DNA及びトランスポザーゼ(例えば、Tn5トランスポザーゼ)を含有し、d)はポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタ(例えば、Nextera(商標)アダプタ、Illumina)を含有する。電場を印加すると(t1)、Mg
2+は負極に向かって移動するが、小さなアダプタは正極に向かって移動し、c)の内容物は、そのサイズから定位置に留まるので、ゲルマトリックス中での移動度を欠く。その後の時間間隔(t2)では、アダプタ及びMg
2+がウェルc)で交差し、トランスポザーゼ、Mg
2+、及びアダプタを含む活性化トランスポソーム複合体を形成する。次いで、活性化トランスポソーム複合体は、大きなDNA分子に結合し、断片化し、そして、タグ付け(タグメンテーション)して、小さなライブラリテンプレートにする。反応が完了すると(t3)、Mg
2+は負極に向かい続ける。タグメンテーションされた断片は、反応部分において回収又は更に加工され得る。あるいは、サイズが大幅に低減されることから、タグメンテーションされた断片は正極に向かって泳動し、それにより断片は分離され、そして、任意選択で精製され、この断片は、その後の時間間隔(t4)でウェルb)から回収することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、電場の大きさ若しくは方向を交互にしたり、又は異なる電場を互いに対して90度で提供したりするなど、より複雑な電場を印加してもよい。このような実施形態では、個々の反応物質のより複雑な軌道が可能である。このような場合、電気泳動場を交互にし、そして、ゲルマトリックス上の位置間の選択された軌道で分子を移動させることによって、反応物質が組み合わされ得る及び/又は分離され得るように、反応物質の既知の又は予想される移動度に応じて反応物質をマトリックス内の所定の位置に配置してよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、2つ以上の電場を用いて標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、(a)第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有し、第1の部分、第2の部分、第3の部分、及び第4の部分を含む電気泳動ゲルマトリックスと、それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の第1の対と、当該第1の端部又は当該第2の端部のうちの一方において、当該幅の両側に配置された正極及び負極の第2の対と、を含む電気泳動システムを提供することを含む。第1の部分は、トランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する。第1のトランスポザーゼ補因子は、金属イオンである。第2の部分は、トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する。第2のトランスポザーゼ補因子は、第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有する。第2のトランスポザーゼ補因子は、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである。第3の部分は、溶解試薬を含有する。第4の部分は、トランスポザーゼを含有する。システムは、第1の部分と第2の部分との間の反応部分を更に含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、方法は、(b)標的二本鎖核酸を含有する細胞全体を反応部分に適用することと、(c)第1の電場を印加して、溶解剤を反応部分に駆動して及び/又は当該反応部分を通過させて当該細胞を溶解させ、それにより、当該標的二本鎖核酸をサンプル部分に適用することと、(d)第2の電場を印加して、第1のトランスポザーゼ補因子を第1の部分から当該反応部分内に駆動し、第2のトランスポザーゼ補因子を当該第2の部分から当該反応部分内に駆動し、及び/又はトランスポザーゼをトランスポザーゼ部分から当該反応部分に駆動して、当該トランスポザーゼ、当該第1のトランスポザーゼ補因子、及び当該第2のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポザーゼ複合体を形成することと、(e)複数の核酸断片ではなく、当該標的二本鎖核酸を断片化し、そして、当該核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、当該標的二本鎖核酸を当該活性化トランスポソーム複合体と共に当該反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を更に含む。
【0058】
更なる実施形態では、第1の電場及び第2の電場は異なり、工程(d)の前に工程(c)が実施される。更なる実施形態では、第1の電場及び第2の電場は同じであり、工程(c)は工程(d)と同時に実施される。更なる実施形態では、方法は、タグ付き核酸断片のライブラリの作製後に、1つ以上の電場を印加して、溶解試薬、トランスポソーム複合体、トランスポザーゼ、トランスポザーゼアダプタ、金属イオン、及びタグ付き核酸断片のうちの1つ以上を反応部分から駆動することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、タグ付き核酸断片を回収部分に駆動することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、溶解試薬、トランスポソーム複合体、金属イオン、及びタグ付き核酸断片を、反応部分から別個の受容部分に駆動することを更に含む。
【0059】
図3A~3Cは、本明細書に記載される方法の実施形態を示す。最初にt0でMg
2+、トランスポザーゼ(例えば、Tn5トランスポザーゼ)、アダプタ、及び溶解試薬がウェル内に配置された電気泳動システムが提供される。サンプル(例えば、標的高分子量DNAを有する細胞)を反応部分にロードする。互いに対して90度の2つの交互電場が制御された方法で印加され、それによって、ゲルマトリックスを通じた試薬及び基質の移動が開始される。その後の時間間隔(t1)では、溶解試薬が反応部分に到達し、サンプルと組み合わさって細胞を溶解させる。同時に、他の試薬は、その移動度に従って反応部分に向かって泳動する。その後の時間間隔(t2)では、溶解試薬は、反応部分から離れて泳動し、精製された高分子量DNAが後に残る。その後の時間間隔(t3)では、タグメンテーション試薬(トランスポザーゼ(例えば、Tn5トランスポザーゼ)、Mg
2+、及びアダプタ)がサンプルウェルに入って活性化複合体を形成し、次いで、これが標的DNAに結合し、断片化し、タグ付け(タグメンテーション)する。その後の時間間隔(t4)では、タグメンテーション試薬は更に泳動して、精製され、タグメンテーションされたライブラリテンプレートが後に残る。タグメンテーションされた断片は、反応部分において回収又は更に加工され得る。あるいは、その後の時間間隔(t5)では、タグメンテーションされたライブラリテンプレートは、サンプル回収ウェルに更に泳動する。
【0060】
いくつかの実施形態では、トランスポソーム複合体は、標的核酸に結合し、いずれかの鎖において9塩基離れているニックを骨格に生じさせる。他の実施形態では、トランスポソームは、ニック間に7、8、9、10、11、又は12bpのギャップを生じさせる。いくつかの実施形態では、方法は、核酸断片におけるギャップを埋め、ニックをライゲーションすることを更に含む。ニック(並置されている5’リン酸及び3’OH)を封止することができる任意の既知のリガーゼを使用してよい。リガーゼは、第2の反応部分に提供されてよく、第2の反応部分は、タグメンテーションのための反応部分と同じであるか又は異なっている。
【0061】
いくつかの実施形態では、核酸断片におけるギャップを埋め、ニックをライゲーションすることは、タグ付き断片内のギャップを埋める条件下で、それに十分な時間、タグ付き断片を鎖置換ポリメラーゼと共にインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、核酸断片における一本鎖ギャップを埋め、ニックをライゲーションすることは、タグ付き断片内の一本鎖ギャップを埋める条件下で、それに十分な時間、タグ付き断片を非鎖置換ポリメラーゼと共にインキュベートしてギャップにわたって広げ、次いで、リガーゼと共にインキュベートすることを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、方法は、生成された核酸断片の増幅を更に含む。トランスポザーゼに媒介されるタグメンテーションによって生成される核酸断片は、当該技術分野において既知の任意の好適な増幅法に従って増幅させることができる。いくつかの実施形態では、増幅は、核酸増幅反応、鎖置換増幅、ローリングサークル増幅(RCA)、リガーゼ連鎖反応、転写媒介増幅、又はループ媒介増幅のうちの1つ以上の使用を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、標的核酸からのシーケンシング情報の近接性を保持するために、加工された核酸断片をバーコード化してもよい。本明細書で使用するとき、「近接性」という用語は、共有情報に基づく2つ以上のDNA断片間の空間的関係を指す。情報の共有態様は、隣接、コンパートメント及び距離の空間的関係に関するものであり得る。これらの関係に関する情報は、DNA断片に由来する配列リードの階層的アセンブリ又はマッピングを容易にする。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタの一本鎖タグ領域は、バーコード配列を更に含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、タグ付き断片を固体支持体に結合しているバーコード配列と接触させて、バーコード配列情報を標的核酸断片に転移させることを更に含む。いくつかの実施形態では、バーコード配列は、断片がトランスポザーゼに結合したままである間に付加される。標的核酸の近接性情報は、バーコード配列を同定することによって決定される。本出願の方法での使用に容易に適合させることができる標的核酸のバーコード化された断片の例示的な調製は、例えば、米国特許出願公開第2019/0040382号、国際公開第2014142850(A1)号、及び同第2014/108810号に記載されており、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0064】
細胞全体を反応サンプルに適用するとき、核酸の抽出及び加工は、追加の試薬の使用を必要とするタグメンテーション前に実施される。このような前加工のための試薬の非限定的な例としては、溶解剤;細菌、真菌、又は植物の細胞壁を消化するための酵素を含有する溶液;プロテアーゼ溶液;及びDNAプロセシング酵素を含有する溶液が挙げられる。いくつかの実施形態では、これらは、ゲルマトリックスの1つ以上の異なる位置にロードされ得る。いくつかの実施形態では、システムは、一連の試薬が逐次添加され、単一の場所から除去されるように構成されてもよい。試薬の添加及び除去は、標準的な液体取り扱い手段(例えば、Beckman、Agilent、Tecan、Hamiltonなどによって販売されているガントリ式液体取り扱いロボットなど)によって容器の上部から添加及び除去してもよい。他の実施形態では、試薬の添加及び除去は、容器内の流体チャネルを介して達成され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、トランスポソーム複合体のトランスポザーゼは、転位後に核酸断片から除去される。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、転位後及びその後のトランスポゾンのアダプタ配列の相補的捕捉配列へのハイブリダイゼーションの後に、核酸断片から除去される。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、SDS処理によって除去される。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、プロテイナーゼ処理によって除去される。
【0066】
いくつかの実施形態では、分析のために、又は例えば、いずれも全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,361,298号及び同第8,361,299号に記載されているプロセスなどの他のライブラリ調製プロセス、例えば、サイズ選択のために、加工された核酸断片を電気泳動ゲルマトリックスから転移させてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、トランスポソームに媒介されるタグメンテーションによって生成される加工された核酸断片を回収し、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ナノポアシーケンシングなどを含むダイレクトシーケンシングなどの任意の好適なシーケンシング法に従ってシーケンシングすることができる。いくつかの実施形態では、所望のサイズ又はサイズ範囲(例えば、25~500塩基対(bp)、又は50~500bp、又は50~350bp、又は100~300bp、又は約50、150、250、若しくは300bp)の断片を、回収部分に選択的に回収することができる。電場を印加すると、加工された核酸断片は、反応部分から更に泳動し得る。異なるサイズの断片は異なる移動度を有するので、所望のサイズ又はサイズ範囲の断片を選択的に分離し、回収部分から回収することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、複数の逐次化学及び/又は酵素プロセスを実施するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、電場の大きさ若しくは方向を交互にしたり、又は異なる電場を互いに対して90度で提供したりするなど、より複雑な電場を印加してもよい。このような実施形態では、個々の反応物質のより複雑な軌道が可能である。このような場合、電気泳動場を交互にし、そして、ゲルマトリックス上の位置間の選択された軌道で分子を移動させることによって、反応物質が組み合わされ得る及び/又は分離され得るように、反応物質の既知の又は予想される移動度に応じて反応物質をマトリックス内の所定の位置に配置してよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬(酵素など)を、3Dマトリックス中の固体支持体(反応部分内のビーズ)上に固定化してもよく、それによって、当該試薬の電場内での移動は阻止されるが、他の試薬は、電場内の移動度に従って自由に移動する。
【0069】
図4は、ゲル電気泳動を用いて複数の生化学反応を実施する方法の全般的な概略図を示す。電気泳動装置は、各々が異なる試薬を含有する、幅及び長さに沿った複数の部分を含む。互いに垂直な交互電場を印加するために、第1の端部又は第2の端部のうちの一方において幅の両側に2対の正極及び負極が提供される。試薬は、第1の反応部分に泳動して、第1の生化学的反応を実施する。電場の大きさ又は方向を変化させることにより、第1の生化学的反応からの生成物が第2の反応部分に泳動し、試薬と反応して第2の生化学的反応を実施する。追加の反応部分における後続の生化学的反応のために、これらの工程を繰り返してもよい。
装置/システム
【0070】
いくつかの実施形態では、酵素反応を実施するための電気泳動システムが提供される。いくつかの実施形態では、電気泳動システムは、第1の端部及び第2の端部、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、当該第1の端部に近接し、かつ酵素の第1の酵素補因子を含有する第1の部分と、当該第2の端部に近接し、かつ当該第1の酵素補因子とは反対の電荷を有する、当該酵素の第2の酵素補因子を含有する第2の部分と、当該第1の部分と当該第2の部分との間の、当該酵素を含有する反応部分と、それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、を含む。更なる実施形態では、酵素の基質は、反応部分に提供される。
【0071】
いくつかの実施形態では、電気泳動装置が提供され、当該装置は、第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、当該第1の端部に近接し、かつ第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、当該第1末端から遠位の、かつトランスポザーゼ、並びに二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含むトランスポソーム複合体を含有する反応部分と、それぞれ当該第1の及び第2の端部に配置された、正極及び負極の対と、を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、電気泳動装置が提供され、当該装置は、第1の端部、第2の端部、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、当該第1の端部に近接する第1の部分と、当該第2の端部に近接する第2の部分と、当該第1の端部と当該第2の端部との間の反応部分と、それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、を含む。第1の部分は、トランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する。いくつかの実施形態では、第1のトランスポザーゼ補因子は、金属イオンである。第2の部分は、トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有し、第2のトランスポザーゼ補因子は、第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有する。いくつかの実施形態では、第2のトランスポザーゼ補因子は、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである。反応部分は、トランスポザーゼを含有する。いくつかの実施形態では、標的核酸は、反応部分に提供される。
【0073】
いくつかの実施形態では、電気泳動装置が提供され、当該装置は、第1の端部、第2の端部、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、第1の部分と、第2の部分と、第3の部分と、第4の部分と、反応部分と、それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の第1の対と、当該第1の端部又は当該第2の端部のうちの一方において幅の両側に配置された正極及び負極の第2の対と、を含む。第1の部分は、トランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含み、第1のトランスポザーゼ補因子は、金属イオンである。第2の部分は、トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有し、第2のトランスポザーゼ補因子は、第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有する。第2のトランスポザーゼ補因子は、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである。第3の部分は、溶解試薬を含有する。いくつかの実施形態では、標的核酸を含有する細胞全体が、反応部分に提供される。いくつかの実施形態では、装置は、各々がタグメンテーションのための異なる試薬を含有する、幅及び長さに沿った追加の部分を含む。いくつかの実施形態では、装置は、タグ付き核酸断片を受容するための回収部分を含む。いくつかの実施形態では、装置は、未反応試薬を受容するための1つ以上の受容部分を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、第1の部分、第2の部分、第3の部分、第4の部分、反応部分、及び/又は追加の部分は、ウェルを含む。ウェルは、酵素、標的核酸分子、又は任意の他の基質若しくは試薬を含有していてよい。いくつかの実施形態では、反応部分はウェルを含み、固体支持体はウェル内のビーズ粒子であるか、又は固体支持体はウェルの表面である。
【0075】
いくつかの実施形態では、電気泳動装置は、電気泳動バッファを有し、電気泳動ゲルマトリックスをその中に保持するように構成された容器を含み得る。いくつかの実施形態では、電気泳動装置は、本明細書に記載の2つ以上の容器を含み得る。
【0076】
電気泳動ゲルマトリックスは、寒天、アガロース、又はポリアクリルアミドであってよい。いくつかの実施形態では、電気泳動ゲルマトリックスは、アガロースである。電気泳動バッファは、pH7~pH9のpHを有していてよく、キレート剤としてEDTAを含んでいてよい。標的核酸が数百~数千bp長の範囲のサイズに断片化されるとき、反応部分内のアガロースの濃度が高くなると、遊離試薬/アダプタを効率的に除去しながら、ライブラリ生成物の反応部分からの拡散を制限するのに役立つ。
【0077】
いくつかの実施形態では、電気泳動装置はまた、1対以上の正極及び負極を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、正極及び負極の対は、電気泳動ゲルマトリックスと直接接触している。いくつかの実施形態では、電極のうちの1つ以上が、ゲルマトリックス中に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、正極及び負極の対は、電気泳動ゲルマトリックスと直接接触していない。いくつかの実施形態では、電極のうちの1つ以上が、電気泳動ゲルマトリックスと流体接続されている電気泳動バッファが充填されたチャンバ内に埋め込まれている。
【0078】
いくつかの実施形態では、電気泳動装置はまた、バリア、又は核酸断片を保持するのに十分小さい孔径の限外濾過膜を含んでいてもよい。このような例示的な膜の1つは、10kDaの分子量カットオフを有するポリエーテルスルホン膜(EMD Millipore製のBiomax(登録商標)10kDa)である。
【0079】
いくつかの実施形態では、電気泳動システムが提供される。いくつかの実施形態では、標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製するための電気泳動システムが提供される。いくつかの実施形態では、電気泳動システムは、本明細書に記載される電気泳動装置と、電源と、1つ以上の電場の方向及び/又は大きさを制御して、試薬及び/若しくはタグ付き核酸断片を反応部分、回収部分、及び/若しくは受容部分に駆動する、並びに/又は試薬及び/若しくはタグ付き核酸断片に反応部分、回収部分、及び/若しくは受容部分を通過させるように構成されたコントローラと、を含む。
【0080】
電極全体に電圧が印加されると、試薬は、電気泳動ゲルマトリックスを通じて反応部分に駆動され、反応部分を通過し得る。電圧を反転させることにより、分子を逆方向に導くことができる。更に、電極の対のうちの一方及び/又は他方に電圧を印加したとき、試薬は、その電気泳動移動度に応じて、それぞれの反応部分又は回収部分のうちの一方及び/又は他方に駆動される。
【0081】
いくつかの実施形態では、電場を操作して、試薬及び特定のサイズ範囲の核酸断片を選択的に回収することができる。例えば、パルスフィールド法を使用して、50~500kb長の加工された核酸断片は溶出されるが、約2000kbを超えるサイズの核酸断片は残すことができる。より大きなサイズの断片が、より小さなサイズの断片を含まないことが望まれる場合、サイズ選択的パルスフィールド条件下で最初により小さな画分が溶出され得、その後、他のパルスフィールド条件下で又は連続フィールド件下でより大きな画分を回収することができる。更には、Jann Noolandi,and Chantal Turmel in In Methods in Molecular Biology Volume 12:Pulsed-field gel electrophoresis,Protocols,Methods,and Theories.Ed.Burmeister,Margit,and Ulanovsky,Levy.Humana.,pp.73-103 and 135-143を参照されたい、これらは全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
更に、ゲル濃度、電圧、及び/又は電気泳動時間は、試薬成分が効率的に移動するように及び/又は標的核酸が反応部分内に留まるように選択してよい。アガロースゲル中で非常にゆっくりと泳動する非常に高分子量の核酸は、このような条件を満たす。より短い標的核酸(例えば、約500bpの断片サイズ)を取り扱うとき、より高濃度のゲル、より低い電圧、及びより多くの最適化が使用され得る。
定義
【0083】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で参照される全ての特許、出願、公開出願、及び他の刊行物は、別途記載のない限り、その全体が参照により組み込まれる。本明細書において用語のための複数の定義が存在する場合、別途記載のない限り、このセクション内の定義が優先する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでない旨を明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。「又は」又は「及び」の使用は、別途記載のない限り、「及び/又は」を意味する。更に、用語「含む(including)」、並びに他の形態、例えば、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含まれる(included)」などの他の形態の使用は、限定的ではない。本明細書で使用されるとき、移行句又は請求項の本文において、用語「含む(comprise)(複数可)」及び「含む(comprising)」は、オープンエンドの意味を有するものとして解釈されるべきである。すなわち、これらの用語は、語句「少なくとも有する」又は「少なくとも含む」と同義であると解釈されるべきである。プロセスの文脈において使用される場合、用語「含む(comprising)」は、プロセスが少なくとも列挙された工程を含むが、追加の工程を含み得ることを意味する。化合物、組成物、又は装置の文脈で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、化合物、組成物、又は装置が少なくとも列挙された特徴又は構成要素を含むが、追加の特徴又は構成要素も含み得ることを意味する。
標的核酸
【0084】
本明細書で使用するとき、「標的核酸」は、例えば、タグ付き核酸断片(例えば、5’及び3’タグ付き若しくは2つのタグ付きの直鎖ssDNA若しくはdsDNA断片、又はタグ付き環状ssDNA断片)のライブラリを作製するために転位に供される、対象となる任意の二本鎖核酸を指す。「標的核酸」は、生死にかかわらず、1つ若しくは複数の細胞、組織、器官、若しくは生物、又は任意の生物学的又は環境供給源(例えば、水、空気、土壌)を含む、任意のインビボ又はインビトロの供給源に由来していてよい。例えば、いくつかの実施形態では、標的核酸は、ヒト、動物、植物、真菌(例えば、カビ又は酵母)、細菌、ウイルス、ウイロイド、マイコプラズマ、又は他の微生物を起源とするか又は由来する、真核生物及び/又は原核生物の二本鎖核酸を含むか又はからなる。いくつかの実施形態では、標的核酸は、ゲノムDNA、サブゲノムDNA、染色体DNA(例えば、単離された染色体又は染色体の一部から、例えば、染色体由来の1つ以上の遺伝子又は遺伝子座から)、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、プラスミド若しくは他のエピソーム由来のDNA(又はその中に含有されている組換えDNA)、又はRNA依存性DNAポリメラーゼ若しくは逆転写酵素を使用してRNAを逆転写して第1の鎖のcDNAを作製し、次いで、第1の鎖のcDNAにアニーリングしたプライマーを伸長させてdsDNAを作製することによって作製された二本鎖cDNAを含むか又はからなる。いくつかの実施形態では、標的核酸は、核酸分子中の又はそれから調製された複数のdsDNA分子(例えば、生物学的(例えば、細胞、組織、器官、生物)又は環境(例えば、水、空気、土壌、唾液、痰、尿、糞便)供給源中の又はそれに由来するゲノムDNA又はRNAから調製されたcDNA中の又はそれから調製された複数のdsDNA分子を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、インビトロ源由来である。例えば、いくつかの実施形態では、標的核酸は、一本鎖DNA(ssDNA)から又は一本鎖若しくは二本鎖RNAから(例えば、好適なDNA依存性及び/又はRNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)を使用するプライマー伸長などの、当該技術分野において周知の方法を使用して、インビトロで調製されるdsDNAを含むか又はからなる。いくつかの実施形態では、標的核酸は、以下のための方法を含む、当該技術分野において既知の任意の方法を用いて、1本以上の二本鎖又は一本鎖DNA又はRNA分子の全て又は一部から調製されるdsDNAを含むか又はからなる標的DNAである:DNA又はRNAの増幅(例えば、PCR又は逆転写酵素PCR(RT-PCR)、転写媒介増幅法、1つ以上の核酸分子の全て又は一部の増幅を伴う);その後に好適な宿主細胞内で複製されるプラスミド、フォスミド、BAC、又は他のベクター中の1つ以上の核酸分子の全て又は一部の分子クローニング;あるいは、例えば、アレイ又はマイクロアレイ上のDNAプローブへのハイブリダイゼーションなどのハイブリダイゼーションによる、1つ以上の核酸分子の捕捉(例えば、「配列捕捉」による;例えば、ROCHE NIMBLEGEN、AGILENT、又はFEBIT製のキット及び/又はアレイを使用)。
【0085】
いくつかの実施形態では、「標的核酸」又は「標的DNA」は、タグ付き核酸断片(例えば、5’及び3’タグ付き若しくは2つのタグ付きの直鎖ssDNA若しくはdsDNA断片、又はタグ付き環状ssDNA断片)のライブラリを作製するために使用される前に、(例えば、様々な生化学的又は分子生物学的技術を使用して)調製又は修飾される二本鎖核酸を意味する。
トランスポソーム複合体、ポリヌクレオチドトランスポーザアダプタ、タグ、及びトランスポザーゼ
【0086】
トランスポゾンベースの技術は、標的を同時に断片化及びタグ付け(タグメンテーション)するトランスポソーム複合体で、例えばゲノムDNAなどの標的核酸を処理し、それにより、断片の末端に固有のアダプタ配列でタグ付けされている断片化核酸分子の集団を作製する、NEXTERA(商標)XT及びFLEX DNAサンプル調製キット(Illumina,Inc.)のワークフローに例示されているように、核酸(例えば、DNA)を断片化するために利用することができる。
【0087】
転位反応は、1つ以上のトランスポゾンがランダムな部位又はほぼランダムな部位で標的核酸に挿入される反応である。転位反応における構成要素は、トランスポザーゼ(又は本明細書に記載されるように核酸を断片化及びタグ付けすることができる他の酵素、例えば、インテグラーゼ)、並びに酵素に結合する二本鎖トランスポゾン末端配列と2つのトランスポゾン末端配列のうちの一方又は両方に結合しているタグとを含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含む。二本鎖トランスポゾン末端配列の1本の鎖は、断片化部位で標的核酸の1本の鎖に転移し(転移鎖)、相補的なトランスポゾン末端配列鎖は、断片化された核酸(非転移鎖)には共有結合せず、転移鎖にハイブリダイズしたままである。ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタは、必要に応じて又は所望に応じて、1つ以上の機能的配列(例えば、プライマー配列)を有するタグを含み得る。
【0088】
「トランスポソーム複合体」は、少なくとも1つのトランスポザーゼ酵素及びトランスポゾン認識配列で構成される。いくつかのそのようなシステムでは、トランスポザーゼは、転移反応を触媒することができる機能的複合体を形成するために、トランスポゾン認識配列に結合する。いくつかの態様では、トランスポゾン認識配列は、二本鎖トランスポゾン末端配列である。トランスポザーゼ又はインテグラーゼは、標的核酸におけるトランスポザーゼ認識部位に結合し、トランスポザーゼ認識配列を標的核酸に挿入する。いくつかのこのような挿入事象では、トランスポザーゼ認識配列(又は末端配列)の1本の鎖が標的核酸に転移し、その結果、開裂事象も生じる。本開示のトランスポザーゼでの使用に容易に適合させることができる例示的な転位手順及びシステムは、例えば、国際公開第2010/048605号、米国特許出願公開第2012/0301925号、同第2012/13470087号、又は同第2013/0143774号に記載されており、これらはそれぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
本明細書で提供される特定の実施形態と共に使用することができる例示的なトランスポザーゼとしては、以下が挙げられる(又は以下によってコードされている):Tn5トランスポザーゼ(Reznikoff et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.2000,266,729-734を参照)、ビブリオ・ハーベイ(Agilentにより特徴付けられ、SureSelect QXT製品で使用されるトランスポザーゼ)、MuAトランスポザーゼ、並びにR1及びR2末端配列を含むMuトランスポザーゼ認識部位(Mizuuchi,K.,Cell,35:785,1983;Savilahti,H,et al.,EMBO J.,14:4893,1995)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Tn552(Colegio,O.et al.,J.Bacteriol.,183:2384-8,2001;Kirby,C.et al.,Mol.Microbiol.,43:173-86,2002)、Tyl(Devine & Boeke,Nucleic Acids Res.,22:3765-72,1994及び国際公開第95/23875号)、トランスポゾンTn7(Craig,N.L.,Science,271:1512,1996;Craig,N.L.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,204:27-48,1996)、Tn/O、及びIS10(Kleckner N.et al.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,204:49-82,1996)、Marinerトランスポザーゼ(Lampe,D.J.et al.,EMBO J.,15:5470-9,1996)、Tc1(Plasterk,R.H.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,204:125-43,1996)、P Element(Gloor,G.B.,Methods Mol.Biol.,260:97-114,2004)、Tn3(Ichikawa & Ohtsubo,J.Biol.Chem.,265:18829-32,1990)、細菌挿入配列(Ohtsubo & Sekine,Curr.Top.Microbiol.Immunol.204:1-26,1996)、レトロウイルス(Brown et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:2525-9,1989)、及び酵母のレトロトランスポゾン(Boeke & Corces,Ann.Rev.Microbiol.43:403-34、1989年)。更なる例としては、IS5、Tn10、Tn903、IS911、及びトランスポザーゼファミリー酵素の遺伝子操作バージョン(Zhang et al.,(2009)PLoS Genet.5:e1000689.Epub October 16;Wilson C.et al.(2007)J.Microbiol.Methods 71:332-5)。
【0090】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、Tn5、MuA、若しくはビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)トランスポザーゼ、又はこれらの活性変異である。他の実施形態では、トランスポザーゼは、Tn5トランスポザーゼ又はその活性変異である。いくつかの実施形態では、Tn5トランスポザーゼは、高活性Tn5トランスポザーゼ(例えば、Reznikoffら、国際公開第2001/009363号、米国特許第5,925,545号、同第5,965,443号、同第7,083,980号、及び同第7,608,434号、並びにGoryshin and Reznikoff,J.Biol.Chem.273:7367,1998)、又はその活性変異である。いくつかの態様では、Tn5トランスポザーゼは、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2015/160895号に記載されているTn5トランスポザーゼである。いくつかの実施形態では、Tn5トランスポザーゼは、融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、Tn5トランスポザーゼ融合タンパク質は、融合伸長因子Ts(Tsf)タグを含む。いくつかの実施形態では、Tn5トランスポザーゼは、野生型配列に対するアミノ酸54、56、及び372における変異を含む過剰活性Tn5トランスポザーゼである。いくつかの実施形態では、過剰活性Tn5トランスポザーゼは融合タンパク質であり、任意選択で、融合タンパク質は伸長因子Ts(Tsf)である。本明細書に記載される方法はまた、トランスポザーゼの組み合わせを含み、単一のトランスポザーゼのみを含むのではない。いくつかの実施形態では、認識部位は、Tn5型トランスポザーゼ認識部位である(Goryshin and Reznikoff,J.Biol.Chem.,273:7367,1998)。一実施形態では、高活性Tn5トランスポザーゼと複合体を形成するトランスポザーゼ認識部位が使用される(例えば、EZ-Tn5(商標)トランスポザーゼ、Epicentre Biotechnologies,Madison,Wis.)。
【0091】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼ酵素は、二量体(例えば、Tn5トランスポザーゼ二量体)である。いくつかのこのような実施形態では、トランスポソーム複合体は、トランスポザーゼの2つの分子の二量体を含む。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼ複合体は、第1及び第2の単量体を含むトランスポザーゼ(例えば、Tn5トランスポザーゼ)二量体を含む。各単量体は、第1のトランスポゾン及び第2のトランスポゾンを含み、当該第1のトランスポゾンは、その3’末端における第1のトランスポゾン末端配列及び第1のアダプタ配列(二量体の各単量体中のアダプタ配列は同じであるか又は異なる)を含み、当該第2のトランスポゾンは、第1のトランスポゾン末端配列と少なくとも部分的に相補的な第2のトランスポゾン末端配列を含む。いくつかの実施形態では、トランスポソーム複合体はホモ二量体であり、トランスポザーゼの2つの分子が各々、同じトランスポゾン末端配列及びタグを有するポリヌクレオチドアダプタ配列に結合している(例えば、各単量体が、同じポリヌクレオチドアダプタ配列の分子に結合し、「ホモ二量体」を形成する)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、2つの集団のトランスポソーム複合体を採用する。いくつかの実施形態では、各集団におけるトランスポザーゼは二量体であり、同じ酵素である。いくつかの実施形態では、各集団におけるトランスポソーム複合体はヘテロ二量体であり、第1の集団が、2つの単量体の各々に第1のポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを有し、第2の集団が、各単量体中に(第1のポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタとは異なる)第2のポリヌクレオチドアダプタを有する。いくつかの実施形態では、各ヘテロ二量体中のトランスポゾン末端配列は同じであるが、ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタは、異なるタグを含む。いくつかの実施形態では、各集団は、異なるタグ配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の集団は、A14プライマー配列を含むタグを有するアダプタを含み、第2の集団は、B15プライマー配列を含むタグを有するアダプタを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタは、各々が同じトランスポゾン末端配列及び異なるタグを含む、2つのポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタの混合物である。アダプタの混合物をTn5トランスポザーゼ二量体と組み合わせると、3つのトランスポソーム複合体の混合物が得られる:(a)トランスポザーゼと第1のポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタのうちの2つとを含む第1のトランスポザーゼ二量体複合体(第1のホモ二量体)、(b)トランスポザーゼと第2のポリヌクレオチドトランスポーザアダプタのうちの2つとを含む第2のトランスポソーム二量体複合体(第2のホモ二量体)、並びに(c)トランスポザーゼと第1のアダプタを有する1つの単量体と第2のアダプタを有する1つの単量体とを含む第3のトランスポソーム二量体複合体(ヘテロ二量体)。この3つの複合体の混合物でタグメンテーションを行うとき、生成された断片を、それに応じてタグ付けして、3つの断片集団が得られる(1つは、各5’末端において第1のアダプタでタグ付けされており、2番目は、各5’末端において第2のアダプタでタグ付けされており、3番目は、1つの5’末端において第1のアダプタで、そして、第2の5’末端において第2のアダプタでタグ付けされている)。
【0093】
トランスポザーゼアダプタは、(a)二本鎖トランスポゾン末端配列を含む3’部分と、(b)タグと、を含む。トランスポゾン末端配列は、トランスポザーゼによって認識される。トランスポザーゼがトランスポゾン末端配列に結合することによって、トランスポザーゼ複合体が作製される。タグメンテーション中、トランスポザーゼアダプタの転移した鎖は、二本鎖核酸断片の5’末端に転移する(アニーリングする)。相補的な非転移鎖は、得られる断片には共有結合しないが転移鎖にハイブリダイズするので、生成物断片に含まれる。
【0094】
用語「タグ」及び「タグ領域」は、本明細書で使用するとき、所望の意図する目的又は用途のための配列を示すポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタの一部を指す。本明細書に提示されるいくつかの実施形態は、二本鎖トランスポゾン末端配列を含む3’部分及びタグ領域を有するポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含むトランスポソーム複合体を含む。タグ領域は、任意の所望の目的のために提供される任意の配列を含み得る。いくつかの実施形態では、タグは、ユニバーサル配列、プライマー配列、インデックス配列、キャプチャ配列、バーコード配列(例えば、計数又はエラー補正のために使用される)、開裂配列、シーケンシング関連配列、エンリッチメントのための配列、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の機能配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、タグ領域は、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む。いくつかの実施形態では、タグは、プライマー配列を含む。他の実施形態では、タグは、プライマー配列とインデックス又はバーコード配列とを含む。プライマー配列はまた、ユニバーサル配列であってもよい。ユニバーサル配列は、2つ以上の核酸断片に共通のヌクレオチド配列の領域である。任意選択で、2つ以上の核酸断片はまた、配列差の領域を有する。複数の核酸断片の異なるメンバーにおいて存在し得るユニバーサル配列は、ユニバーサル配列に相補的である単一のユニバーサルプライマーを使用して、複数の異なる配列の複製又は増幅を可能にすることができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、タグ領域は、クラスタ増幅反応のためのプライマーとのハイブリダイゼーションに好適な1つ以上の領域を含む。いくつかの実施形態では、タグ領域は、シーケンシング反応のためのプライマーとのハイブリダイゼーションに好適な1つ以上の領域を含む。任意の他の好適な機構がタグ領域に組み込まれ得ることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、タグ領域は、5~200bpの長さを有する配列を含む。いくつかの実施形態では、タグ領域は、10~100bpの長さを有する配列を含む。いくつかの実施形態では、タグ領域は、20~50bpの長さを有する配列を含む。いくつかの実施形態では、タグ領域は、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150~200bpの長さを有する配列を含む。本開示は、使用することができるタグの種類に限定されず、当業者であれば、ライブラリ調製及び次世代シーケンシングに使用することができる追加の配列を認識するであろう。
固定化された試薬
【0096】
いくつかの実施形態では、酵素などの試薬を、ゲルマトリックス中の位置又はウェル内のビーズなどの表面上に固定化してもよく、それによって、当該試薬の電場内での移動は阻止されるが、他の試薬は、電場内での移動度に従って自由に移動する。
【0097】
分子の固体支持体への固定化に言及するとき、用語「固定化」及び「結合」は、本明細書では互換的に使用され、両用語は、明示的に又は文脈によって別段の指示がない限り、直接的又は間接的、共有結合又は非共有結合を包含することが意図される。特定の実施形態では、共有結合が好ましい場合がある。
【0098】
試薬の固定化は、当該技術分野において既知の他の方法によっても達成され得る。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼ又はトランスポソーム複合体は、共有結合又は非共有結合パートナー、例えば、親和性エレメント及び親和性結合パートナーを使用して、ビーズなどの基材上に固定化される。いくつかのこのような実施形態では、親和性エレメントはビオチンであり、固体支持体はストレプトアビジンを含む。例えば、トランスポソーム複合体は、トランスポソーム複合体に結合したビオチン化リンカーを介してストレプトアビジンでコーティングされたビーズ上に固定化される。いくつかの実施形態では、トランスポソーム複合体は、ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタ(又はトランスポザーゼが二量体であるとき、一方若しくは両方のポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタ)に共有結合しているビオチン又は他の親和性エレメントを通してビーズに固定化される。
【0099】
いくつかの実施形態では、トランスポザーゼ酵素及びポリヌクレオチドの両方が、固体支持体に固定化される。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼ酵素のみが固体支持体に固定され、一方、アダプタポリヌクレオチドは自由に泳動する。いくつかの実施形態では、トランスポソーム複合体は、反応部分において固体支持体に固定化される。いくつかの実施形態では、トランスポザーゼは、反応部分において固体支持体上に固定化される。いくつかの更なる実施形態では、固体支持体はビーズを含むか又はビーズである。一実施形態では、ビーズは、常磁性ビーズである。
【0100】
親和性エレメントは、本明細書で使用するとき、親和性結合パートナーに共有結合又は非共有結合するために使用することができる部分である。いくつかの態様では、親和性エレメントは、トランスポソーム複合体上にあり、親和性結合パートナーは、固体支持体上にある。本開示の方法での使用に容易に適合させることができる例示的な親和性エレメント/結合パートナーの組み合わせは、例えば、国際公開第2018/156519号又は米国特許出願公開第2018/0245069号に記載されており、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、親和性エレメント/結合パートナーの組み合わせは、FITC/抗FITC、ジゴキシゲニン/ジゴキシゲニン抗体、又はハプテン/抗体を含むか、又はこれらである。更なる好適な親和性対としては、ジチオビオチン-アビジン、イミノビオチン-アビジン、ビオチン-アビジン、ジチオビオチン-スクシニル化アビジン、イミノビオチン-スクシニル化アビジン、ビオチン-ストレプトアビジン、及びビオチン-スクシニル化アビジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
本明細書で使用するとき、開裂可能なリンカーは、開裂可能な結合を通して互いに接合している2つの機能ヘッドを有する分子である。2つの機能ヘッドは、リンカーを他の部分に結合させる機能を有し、この場合、開裂可能なリンカーは、第1のトランスポゾン配列の5’末端を親和性エレメントに接続する。本明細書で使用するとき、開裂可能なリンカーは、例えば、光分解、化学的開裂、熱開裂、又は酵素開裂などの化学的又は物理的手段によって開裂され得るリンカーである。いくつかの実施形態では、開裂は、生化学的、化学的、酵素的、求核性、還元感受性剤、又は他の手段によってもよい。開裂条件及び生物学的用途に応じて分類される開裂可能なリンカーの概要は、Wagner et al.,Bioorg.Med.Chem.20,571-582(2012)に列挙されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。また、例えば、米国特許出願公開第2012/0208705号及び同第2012/0208724号、並びに国際公開第2012/061832号も参照されたく、それぞれ参照により全体が組み込まれる。
【0102】
用語「固体表面」、「固体支持体」、及び他の文法的等価物は、トランスポソーム複合体の結合に適切であるか、又は適切であるように修飾され得る任意の材料を指す。当該技術分野において理解されるように、可能な基材の数は多数である。可能な基材としては、ガラス及び変性又は機能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、並びにスチレン及び他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)などを含む)、多糖類、ナイロン又はニトロセルロース、セラミックス、樹脂、シリカ、又はケイ素並びに修飾ケイ素を含むシリカ系材料、炭素、金属、無機ガラス、プラスチック、光ファイバ束、ビーズ、常磁性ビーズ、及び様々な他のポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
本明細書に提示される方法及び装置では、トランスポソーム複合体は、固体支持体に固定化される。一実施形態では、固体支持体は、ビーズである。好適なビーズ組成物としては、プラスチック、セラミックス、ガラス、ポリスチレン、メチルスチレン、アクリルポリマー、常磁性材料、トリアゾル(thoria sol)、炭素黒鉛、二酸化チタン、ラテックス、又はセファロースなどの架橋デキストラン、セルロース、ナイロン、架橋ミセル、及びテフロン(登録商標)、並びに固体支持体について本明細書に概説される任意の他の材料が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、微小球は、磁気微小球又はビーズ、例えば、常磁性粒子、球体、又はビーズである。ビーズは球状である必要はなく、不規則な粒子を使用してもよい。代替的に又は追加的に、ビーズは多孔質であってもよい。ビーズサイズは、ナノメートル、例えば、100nmから、ミリメートル、例えば、1mmまでの範囲であり、ビーズは約0.2ミクロン~約200ミクロンが好ましく、約0.5~約5マイクロメートルが特に好ましいが、いくつかの実施形態では、より小さい又はより大きいビーズが使用されてもよい。ビーズは、親和性結合パートナーでコーティングされていてもよく、例えば、ビーズは、ストレプトアビジンでコーティングされていてもよい。いくつかの実施形態では、ビーズは、ストレプトアビジンでコーティングされた常磁性ビーズ、例えば、Dynabeads MyOneストレプトアビジンC1ビーズ(Thermo Scientificカタログ番号65601)、Streptavidin MagneSphere Paramagnetic粒子(Promegaカタログ番号Z5481)、Streptavidin Magneticビーズ(NEBカタログ番号S1420S)、及びMaxBead Streptavidin(Abnovaカタログ番号U0087)である。固体支持体はまた、スライド、例えば、トランスポソーム複合体体が上に固定化され得るように修飾された、フローセル又は他のスライドであってもよい。
【0104】
本開示のいくつかの実施形態では、固体支持体は、例えば、ポリヌクレオチドなどの分子への共有結合を可能にする反応性基を含む中間材料の層又はコーティングの適用によって官能化されている不活性基材又はマトリックス(例えば、ガラススライド、ポリマービーズなど)で構成される。このような支持体の例としては、ガラスなどの不活性基材上に支持されるポリアクリルアミドヒドロゲル、特に国際公開第2005/065814号及び米国特許出願公開第2008/0280773号に記載されているポリアクリルアミドヒドロゲルが挙げられるが、これらに限定されず、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。タグメンテーションされたDNAライブラリの構築のための、固体表面上でDNAをタグメンテーション(断片化及びタグ付け)する方法については、国際公開第2016/189331号及び米国特許出願公開第2014/0093916(A1)号に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
増幅
【0105】
本明細書に記載されているか又は当該技術分野で概ね知られている増幅方法のいずれかを、ユニバーサル又は標的特異的プライマーと共に利用して、DNA断片を増幅できることが理解されるであろう。増幅に好適な方法としては、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,003,354号に記載されているように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、転写媒介増幅(TMA)、及び核酸配列ベースの増幅(NASBA)が挙げられるが、これらに限定されない。上記の増幅方法を使用して、対象となる1つ以上の核酸を増幅することができる。例えば、マルチプレックスPCR、SDA、TMA、NASBAなどを含むPCRを利用して、核酸断片を増幅することができる。いくつかの実施形態では、対象となる核酸に特異的に向けられるプライマーは、増幅反応に含まれる。
【0106】
核酸の増幅に好適な他の方法としては、オリゴヌクレオチドの伸長及びライゲーション、ローリングサークル増幅(RCA)(Lizardi et al.,Nat.Genet.19:225-232(1998)、参照により本明細書に組み込まれる)、及びオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)(全般的に米国特許第7,582,420号、同第5,185,243号、同第5,679,524号、及び同第5,573,907号、欧州特許第0 320 308 B1号、同第0 336 731(B1)号、同第0 439 182(B1)号、国際公開第90/01069号、同第89/12696号、及び同第89/09835号を参照されたく、全て参照により組み込まれる)技術を挙げることができる。これらの増幅方法は、核酸断片を増幅するように設計され得ることが理解されるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、増幅方法は、対象となる核酸に特異的に向けられるプライマーを含むライゲーションプローブ増幅又はオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)反応を含み得る。いくつかの実施形態では、増幅方法は、特異的に対象となる核酸に向けられるプライマーを含有するプライマー伸長ライゲーション反応を含み得る。対象となる核酸を増幅するように特異的に設計することができるプライマー伸長及びライゲーションプライマーの非限定的な例として、増幅は、それぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,582,420号及び同第7,611,869号に例示されているようなGoldenGateアッセイ(Illumina,Inc.,San Diego,CA)に使用されるプライマーを含み得る。
【0107】
本開示の方法で使用することができる例示的な等温増幅法としては、例えば、Dean et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:5261-66(2002)に例示されているような多置換増幅(MDA)、又は例えば米国特許第6,214,587号によって例示されているような等温鎖置換核酸増幅が挙げられるが、これらに限定されない(これらはそれぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる)。本開示で使用することができる他の非PCRベースの方法としては、例えば、Walker et al.,Molecular Methods for Virus Detection,Academic Press,Inc.,1995、米国特許第5,455,166号、及び同第5,130,238号、並びにWalkerら、Nucl.Acids Res.20:1691-96(1992)に記載されている鎖置換増幅(SDA)、又は例えばLage et al.,Genome Research 13:294-307(2003)に記載されている超分枝鎖置換増幅が挙げられ、これらはそれぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる。等温増幅法は、ゲノムDNAのランダムプライマー増幅のために、鎖置換Phi 29ポリメラーゼ又はBst DNAポリメラーゼの大型断片、5’→3’エキソ-で使用することができる。これらのポリメラーゼの使用は、それらの高い加工性及び鎖置換活性の利点を利用する。高い加工性により、ポリメラーゼは、10-20kbの長さの断片を生成できる。上記のように、クレノウポリメラーゼなどの低い加工性と鎖置換活性を有するポリメラーゼを使用して、等温条件下でより小さな断片を生成することができる。増幅の反応、条件、及び成分についての更なる説明は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,670,810号の開示に詳細に記載されている。
【0108】
本開示において有用な別の核酸増幅法は、例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれるGrothues et al.Nucleic Acids Res.21(5):1321-2(1993)に記載されているように、定常5’領域に続いてランダム3’領域を有する2ドメインプライマーの集団を使用するタグ付きPCRである。増幅の第1のラウンドは、ランダムに合成された3’領域からの個々のハイブリダイゼーションに基づいて、熱変性DNA上で多数の開始を可能にするために行われる。3’領域の性質により、開始部位はゲノム全体にランダムであると考えられる。その後、結合していないプライマーを除去してよく、定常5’領域に相補的なプライマーを使用して、更なる複製を行うことができる。
シーケンシング断片の調製-タグ付き断片の増幅
【0109】
いくつかの態様では、標的核酸からシーケンシング断片を調製するための方法であって、本明細書に記載されているように、本明細書に記載のトランスポソーム複合体を上に固定化して含む固体支持体を提供することと、当該標的核酸を断片化し、当該断片の5’末端に第1のトランスポゾンがライゲーションする条件下で当該固体支持体を当該標的核酸と接触させ、それによって、当該断片を当該固体支持体上に固定化することと、を含む方法が提供される。いくつかの態様では、方法は、断片化された核酸を増幅することを更に含む。いくつかの実施形態では、断片化条件は、トランスポソーム複合体を使用して標的核酸を断片化及びタグ付けすることによるタグメンテーションに好適な条件である。
【0110】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、断片化及びタグ付け後、この方法は、5’タグ付き標的断片からトランスポザーゼを除去して、複合体化されていない5’タグ付き標的断片を提供することを更に含む。トランスポザーゼの除去は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの変性剤による処理などの化学的条件下で達成され得る。このような方法は、5’タグ付き標的断片の完全に二重鎖化されたバージョンを作製することを更に含んでいてもよい。完全な二重鎖を作製することは、アニーリングした(ただしライゲーションしていない)第2のトランスポゾンを5’タグ付き標的断片から除去することと、5’タグ付き標的断片を伸長させて、完全に二重鎖化された5’タグ付き標的断片を作製することと、を含み得る。この作製は、例えば、複合体化されていない5’タグ付き標的断片を、第2のトランスポゾンを選択的に変性させるのに十分な温度まで加熱し、断片の残りの二重鎖領域を未変性のまま残すことによって達成され得る。伸長は、dNTP及び好適なポリメラーゼの存在下で達成され得る。あるいは、この作製は、単一のヌクレオチド(dNTP)及びポリメラーゼの存在下で複合体化されていない5’タグ付き標的断片をインキュベートすることによって、1つの反応で達成することもできる。いくつかの実施形態では、インキュベートは、アニーリングした第2のトランスポゾンを変性させ、残りの二重鎖を伸長させるのに十分な1つ以上の温度で加熱することを含む。他の実施形態では、ポリメラーゼは、第2のトランスポゾンを除去し、残りの二重鎖を伸長させて、完全に二重鎖化された5’タグ付き標的断片を作製するように機能する鎖置換ポリメラーゼである。好適なポリメラーゼとしては、KAPA HiFi、Pfu、及び同様の酵素が挙げられる。好適なポリメラーゼとしては、Bst、Bsu Vent、Klenow、及び同様の酵素などの鎖置換ポリメラーゼが挙げられる。
【0111】
いくつかの態様では、方法は、完全に二重鎖化された5’タグ付き標的断片を増幅することを更に含む。増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、又は多置換増幅(MDA)などの任意の好適な増幅法によって行うことができる。いくつかの実施形態では、増幅は、PCRにより行われる。いくつかの実施形態では、増幅及び伸長は、ポリメラーゼの存在下でdNTPと反応させることによって、1つの反応工程で行われる。
【0112】
いくつかの実施形態では、増幅は、1つ以上の二次アダプタ配列を完全に二重鎖化された5’タグ付き標的断片に付加して、シーケンシング断片を形成する機能を有する。増幅は、標的断片を増幅し、二次アダプタキャリア(又はその相補体)を組み込むのに十分な条件下で、各末端にプライマー配列を含む完全に二重鎖化された5’タグ付き標的断片を、二次アダプタキャリア、単一のヌクレオチド、及びポリメラーゼと共にインキュベートすることによって達成され、当該二次アダプタキャリアは、プライマー配列及び二次アダプタ配列に対する相補体を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、二次アダプタキャリアは、プライマー配列、インデックス配列、バーコード配列、精製タグ、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、二次アダプタキャリアは、プライマー配列を含む。いくつかの実施形態では、二次アダプタキャリアは、インデックス配列を含む。いくつかの実施形態では、二次アダプタキャリアは、インデックス配列及びプライマー配列を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、完全に二重鎖化された5’タグ付き標的断片は、各末端に異なるプライマー配列を含む。このような実施形態では、各二次アダプタキャリアは、2つのプライマー配列のうちの1つに対する相補体を含む。いくつかの実施形態では、2つのプライマー配列は、A14プライマー配列及びB15プライマー配列である。
【0115】
いくつかの実施形態では、複数の二次アダプタが増幅によって付加される。いくつかの実施形態では、二次アダプタキャリアは、各々2つのプライマー配列のうちの1つを含む。いくつかの実施形態では、二次アダプタキャリアは、各々複数のインデックス配列のうちの1つを含む。いくつかの実施形態では、二次アダプタキャリアは、P5プライマー配列を有する二次アダプタ、及びP7プライマー配列を有する二次アダプタを含む。
【0116】
いくつかの態様では、タグ付き断片は、ホモ及びヘテロタグ付き断片、例えば、両端に同一のタグを有するいくつかの断片(ホモタグ付き断片)、及び一方の末端に第1のタグを有し、他方の末末端に第2のタグを有するいくつかの断片(ヘテロタグ付き断片)を含む。いくつかの態様では、「抑制PCR」による混合物の増幅を使用して、ヘテロタグ付き断片を濃縮する。他の態様では、増幅は、第1のタグとは異なる別のタグを取り付けるために、「分岐」アダプタを使用して行われる。ヘテロタグ付き断片の集団が生成されると、更なる増幅及びシーケンシングを実施してよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、シーケンシング断片を、フローセルに付着させる。いくつかの実施形態では、シーケンシング断片を、フローセル又は表面にグラフトされた相補的プライマーにハイブリダイズさせる。いくつかの実施形態では、シーケンシング断片の配列は、アレイシーケンシング法又は合成しながらのシーケンシングなどの次世代シーケンシング法によって検出される。
【0118】
P5及びP7プライマーは、様々なIlluminaプラットフォーム上でシーケンシングするためにIllumina,Inc.が販売している市販のフローセルの表面に使用される。プライマー配列は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2011/0059865(A1)号に記載されている。5’末端でアルキン末端であり得るP5及びP7プライマーの例としては、以下が挙げられる:
P5:AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACAC(配列番号1)
P7:CAAGCAGAAGACGGCATACGAG*AT(配列番号2)
及びこれらの誘導体。いくつかの実施例では、P7配列は、G*位、例えば、8オキソ-グアニンにおける修飾グアニンを含む。他の実施例では、*は、G*と隣接する3’Aとの間の結合がホスホロチオエート結合であることを示す。いくつかの実施例では、P5及び/又はP7プライマーは、非天然リンカーを含む。任意選択で、P5及びP7プライマーの一方又は両方は、ポリTテールを含み得る。ポリTテールは、概して、上記の配列の5’末端に、例えば、5’塩基と末端アルキン単位との間に位置するが、場合によっては3’末端に位置し得る。ポリT配列は、任意の数、例えば、2~20個のTヌクレオチドを含み得る。P5及びP7プライマーを例示するが、本明細書に提示される例では、任意の好適な増幅プライマーを使用できることを理解されたい。
【0119】
いくつかの実施形態では、方法の増幅工程は、PCR又は等温増幅を含む。いくつかの実施形態では、方法の増幅工程は、PCRを含む。
シーケンシングの方法
【0120】
本明細書で提供される方法のいくつかは、核酸を分析する方法を含む。このような方法は、標的核酸のテンプレート核酸のライブラリを調製することと、当該テンプレート核酸のライブラリから配列データを得ることと、当該標的核酸の配列表現をアセンブリすることと、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、合成によるシーケンシング(SBS)を含むがこれらに限定されない次世代シーケンシングワークフローにおいて使用することができる。本開示の方法によって生成される核酸ライブラリでの使用に容易に適合させることができる例示的なSBS手順、流体システム、及び検出プラットフォームの例は、例えば、Bentley et al.,Nature 456:53-59(2008)、国際公開第04/018497号、米国特許第7,057,026号、国際公開第91/06678号、同第07/123744号、米国特許第7,329,492号、同第7,211,414号、同第7,315,019号、同第7,405,281号、及び米国特許出願公開第2008/0108082号に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
いくつかのSBS実施形態は、伸長産物へのヌクレオチドの組み込み時に放出されるプロトンの検出を含む。例えば、放出されたプロトンの検出に基づくシーケンシングは、Ion Torrent(Guilford,CT、Life Technologiesの子会社)から市販されている電気検出器及び関連技術、又は米国特許出願公開第2009/0026082(A1)号、同第2009/0127589(A1)号、同第2010/0137143(A1)号、又は同第2010/0282617(A1)号に記載されているシーケンシング法及びシステムを使用することができ、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
別の有用なシーケンシング技術は、ナノポアシーケンシングである(例えば、Deamer et al.Trends Biotechnol.18,147-151(2000);Deamer et al.Acc.Chem.Res.35:817-825(2002年)、Li et al.Nat.Mater.2:611-615(2003)を参照されたく、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。本明細書に記載される方法は、使用される任意の特定の種類のシーケンシング計装系に限定されない。
【0123】
以下の付番された項目は、本明細書における実施形態の追加の裏付け及び説明を提供する。
【0124】
項目1.電気泳動を用いて酵素反応を実施する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
当該第1の端部に近接し、かつ酵素の第1の酵素補因子を含有する第1の部分と、
当該第2の端部に近接し、かつ当該第1の酵素補因子とは反対の電荷を有する、当該酵素の第2の酵素補因子を含有する第2の部分と、
当該第1の部分と当該第2の部分との間の、当該酵素を含有する反応部分と、
それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)当該電極の対の間に電場を印加して、当該第1の酵素補因子を当該第1の部分から当該反応部分に駆動し、当該第2の酵素補因子を当該第2の部分から当該反応部分に駆動して、当該酵素、当該第1の酵素補因子、及び当該第2の酵素補因子を含む活性化酵素複合体を形成することと、を含む、方法。
【0125】
項目2.当該第1の酵素補因子が金属イオンであり、当該第2の酵素補因子がポリヌクレオチドである、項目1に記載の方法。
【0126】
項目3.工程(c)の前に、当該活性化酵素複合体の基質を当該反応部分に適用することを更に含み、当該電場の印加が、当該反応部分において当該活性化酵素複合体を当該基質と反応させて反応生成物を形成することを含む、項目1に記載の方法。
【0127】
項目4.当該電場の印加が、当該反応部分から未反応の第1及び第2の酵素補因子を泳動させて、当該反応部分における当該反応生成物から当該未反応の第1及び第2の酵素補因子を分離することを含む、項目1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
項目5.当該第1の電極が正極であり、当該第1の酵素補因子が正に帯電しており、当該第2の電極が負極であり、当該第2の酵素補因子が負に帯電している、項目1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
項目6.当該基質が、標的二本鎖核酸である、項目3~5のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
項目7.当該標的二本鎖核酸が、二本鎖DNA、二本鎖RNA、又はDNA/RNAハイブリッドである、項目6に記載の方法。
【0131】
項目8.当該酵素がトランスポザーゼであり、任意選択で、当該トランスポザーゼがTn5トランスポザーゼである、項目1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
項目9.当該第1の酵素補因子が、任意選択でMg(OAc)2又はMgCl2の形態のMg2+を含む、項目8に記載の方法。
【0133】
項目10.当該第2の酵素補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである、項目8又は項目9に記載の方法。
【0134】
項目11.当該第2の酵素補因子が、2つのポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタの混合物であり、各アダプタが、同じ二本鎖トランスポゾン末端配列及び異なる一本鎖タグ領域を含む、項目10に記載の方法。
【0135】
項目12.標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
当該第1の端部に近接し、かつ第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
当該第1の端部から遠位の、かつトランスポザーゼ、並びに二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含むトランスポソーム複合体を含有する反応部分と、
それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)標的二本鎖核酸を当該反応部分に適用することと、
(c)当該電極の対の間に第1の電場を印加して、当該第1のトランスポザーゼ補因子を当該第1の部分から当該反応部分に駆動して、当該トランスポザーゼ、当該ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタ、及び当該第1のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、
(d)複数の核酸断片ではなく、当該標的二本鎖核酸を断片化し、そして、当該核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、当該標的二本鎖核酸を当該活性化トランスポソーム複合体と共に当該反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む、方法。
【0136】
項目13.当該トランスポソーム複合体が、任意選択でストレプトアビジン-ビオチン相互作用を介して、当該反応部分において固体支持体上に固定化される、項目12に記載の方法。
【0137】
項目14.当該タグ付き核酸断片を作製した後に、当該トランスポソーム複合体を当該固体支持体から放出させることを含む、項目13に記載の方法。
【0138】
項目15.工程後に当該第1の電場の大きさを変化させて、当該固体支持体から放出された当該トランスポソーム複合体に結合している当該タグ付き核酸断片を回収部分に駆動することを更に含む、項目14に記載の方法。
【0139】
項目16.標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
当該第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
当該第2の端部に近接し、かつ当該トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、当該第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
当該第1の部分と当該第2の部分との間の、当該トランスポザーゼを含有する反応部分と、
それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)標的二本鎖核酸を当該反応部分に適用することと、
(c)当該電極の対の間に第1の電場を印加して、当該第1のトランスポザーゼ補因子を当該第1の部分から当該反応部分に駆動し、当該第2のトランスポザーゼ補因子を当該第2の部分から当該反応部分に駆動して、当該トランスポザーゼ、当該第1のトランスポザーゼ補因子、及び当該第2のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、
(d)複数の核酸断片ではなく、当該標的二本鎖核酸を断片化し、そして、当該核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、当該標的二本鎖核酸を当該活性化トランスポソーム複合体と共に当該反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む、方法。
【0140】
項目17.当該金属イオンが、任意選択でMg(OAc)2又はMgCl2の形態のMg2+を含む、項目12~16のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
項目18.当該一本鎖タグ領域が、プライマー配列、バーコード配列、固有分子識別子(UMI)配列、増幅タグ、エンリッチメントタグ、又は精製タグのうちの1つ以上を含む、項目12~17のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
項目19.当該トランスポザーゼがTn5トランスポザーゼである、項目12~18のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
項目20.当該トランスポザーゼが、当該反応部分において固体支持体上に固定化され、任意選択で、当該反応部分がウェルを含み、当該固体支持体がビーズ粒子又は当該ウェルの表面である、項目16~19のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
項目21.当該標的二本鎖核酸が、二本鎖DNA、二本鎖RNA、又はDNA/RNAハイブリッドである、項目12~20のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
項目22.工程(c)で印加された第1の電場が、当該標的二本鎖核酸が当該電気泳動マトリックス内で電気泳動移動度を実質的に有さない値に設定される、項目12~21のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
項目23.当該電気泳動システムが、長さに沿って当該第1の部分と当該反応部分との間に回収部分を含む、項目12~22のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
項目24.工程(c)における当該第1の電場の印加が、当該タグ付き核酸断片を当該回収部分に駆動することを含む、項目23に記載の方法。
【0148】
項目25.工程(d)後に当該第1の電場の大きさを増加させて、当該タグ付き核酸断片を回収部分に駆動することを含む、項目23に記載の方法。
【0149】
項目26.当該電気泳動ゲルマトリックス全体にわたって当該第1の電場の大きさ又は方向を変化させることを含む、項目12~25のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
項目27.当該電気泳動システムが、各々がタグメンテーションのための異なる試薬を含有する、当該幅及び当該長さに沿った追加の部分と、当該第1の端部又は当該第2の端部のうちの一方に当該幅の両側における正極及び負極の第2の対とを含む、項目12~26のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
項目28.電極の第2の対の間に第2の電場を印加することを含み、当該第2の電場の方向が、工程(c)で印加した第1の電場の方向に対して垂直である、項目27に記載の方法。
【0152】
項目29.標的二本鎖核酸の適用が、生体サンプルを当該反応部分に添加することを含む、項目12~28のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
項目30.当該生体サンプルが、細胞溶解物を含む、項目29に記載の方法。
【0154】
項目31.当該生体サンプルが、細胞全体を含む、項目29に記載の方法。
【0155】
項目32.当該電気泳動システムが、溶解試薬を含有する第3の部分を含み、当該反応部分が細胞全体を含み、当該方法が、第3の電場を印加して、溶解剤を当該反応部分に駆動して及び/又は当該反応部分を通過させて当該細胞を溶解させ、それにより、当該標的二本鎖核酸をサンプル部分に適用することを更に含む、項目12~31のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
項目33.標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
トランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
当該トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、当該第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
溶解試薬を含有する第3の部分と、
当該トランスポザーゼを含有する第4の部分と、
当該第1の部分と当該第2の部分との間の反応部分と、
それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の第1の対と、
当該第1の端部又は当該第2の端部のうちの一方において、当該幅の両側に配置された正極及び負極の第2の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)標的二本鎖核酸を含有する細胞全体を当該反応部分に適用することと、
(c)第1の電場を印加して、溶解剤を当該反応部分に駆動して及び/又は当該反応部分を通過させて当該細胞を溶解させ、それにより、当該標的二本鎖核酸をサンプル部分に適用することと、
(d)第2の電場を印加して、当該第1のトランスポザーゼ補因子を当該第1の部分から当該反応部分に駆動し、当該第2のトランスポザーゼ補因子を当該第2の部分から当該反応部分に駆動し、及び/又は当該トランスポザーゼをトランスポザーゼ部分から当該反応部分に駆動して、当該トランスポザーゼ、当該第1のトランスポザーゼ補因子、及び当該第2のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、
(e)複数の核酸断片ではなく、当該標的二本鎖核酸を断片化し、そして、当該核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、当該標的二本鎖核酸を当該活性化トランスポソーム複合体と共に当該反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む、方法。
【0157】
項目34.当該第1の電場及び当該第2の電場が異なり、工程(d)の前に工程(c)が実施される、項目33に記載の方法。
【0158】
項目35.当該第1の電場及び当該第2の電場が同じであり、工程(d)と同時に工程(c)が実施される、項目33に記載の方法。
【0159】
項目36.当該タグ付き核酸断片のライブラリの作製後に、1つ以上の電場を印加して、溶解試薬、トランスポソーム複合体、トランスポザーゼ、トランスポザーゼアダプタ、金属イオン、及びタグ付き核酸断片のうちの1つ以上を当該反応部分から駆動することを含む、項目33~35のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
項目37.当該タグ付き核酸断片を回収部分に駆動することを含む、項目36に記載の方法。
【0161】
項目38.溶解試薬、トランスポソーム複合体、金属イオン、及びタグ付き核酸断片を、当該反応部分から別個の受容部分に駆動することを含む、項目36に記載の方法。
【0162】
項目39.電気泳動装置であって、
第1の端部、第2の端部、及び当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
当該第1の端部に近接し、かつ酵素の第1の酵素補因子を含有する第1の部分と、
当該第2の端部に近接し、かつ当該第1の酵素補因子とは反対の電荷を有する、当該酵素の第2の酵素補因子を含有する第2の部分と、
当該第1の部分と当該第2の部分との間の、当該酵素を含有する反応部分と、
それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動装置。
【0163】
項目40.当該酵素の基質が当該反応部分に提供される、項目39に記載の装置。
【0164】
項目41.電気泳動装置であって、
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
当該第1の端部に近接し、かつ第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
当該第1の端部から遠位の、かつトランスポザーゼ、並びに二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含むトランスポソーム複合体を含有する反応部分と、
それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動装置。
【0165】
項目42.電気泳動装置であって、
第1の端部、第2の端部、及び当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
当該第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
当該第2の端部に近接し、かつ当該トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、当該第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
当該第1の端部と当該第2の端部との間の、当該トランスポザーゼを含有する反応部分と、
それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動装置。
【0166】
項目43.標的核酸が当該反応部分に提供される、項目41又は42に記載の装置。
【0167】
項目44.電気泳動装置であって、
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに当該第1の端部と当該第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
当該第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、当該第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
当該第2の端部に近接し、かつ当該トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、当該第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、当該第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
溶解試薬を含有する第3の部分と、
当該トランスポザーゼを含有する第4の部分と、
当該第1の端部と当該第2の端部との間の反応部分と、
それぞれ当該第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の第1の対と、
当該第1の端部又は当該第2の端部のうちの一方において、当該幅の両側に配置された正極及び負極の第2の対と、
を含む、電気泳動装置。
【0168】
項目45.標的核酸を含有する細胞全体が当該反応部分に提供される、項目44に記載の装置。
【0169】
項目46.各々がタグメンテーションのための異なる試薬を含有する、当該幅及び/又は当該長さに沿った追加の部分を含む、項目41~45のいずれか1つに記載の装置。
【0170】
項目47.当該タグ付き核酸断片を受容するための回収部分を含む、項目41~46のいずれか1つに記載の装置。
【0171】
項目48.未反応の試薬を受容するための1つ以上の受容部分を含む、項目41~47のいずれか1つに記載の装置。
【0172】
項目49.当該正極及び負極の対が、当該電気泳動ゲルマトリックスと直接接触し、任意選択で当該ゲルマトリックス中に埋め込まれている、項目41~48のいずれか1つに記載の装置。
【0173】
項目50.標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製するシステムであって、
項目41~49のうちのいずれか1つに記載の装置と、
電源と、
当該第1及び第2の電場の方向及び/又は大きさを制御して、当該試薬及び/若しくはタグ付き核酸断片を当該反応部分、回収部分、及び/若しくは受容部分に駆動する、並びに/又は当該試薬及び/若しくはタグ付き核酸断片を、当該反応部分、回収部分、及び/若しくは受容部分を通過させるように構成されたコントローラと、
を含む、システム。
【0174】
本出願全体を通して、様々な刊行物、特許、及び/又は特許出願が参照されている。これらの刊行物の開示全体が、本出願において参照により本明細書に組み込まれる。
【0175】
前述の明細書は、当業者が実施形態を実施することを可能にするのに十分であると考えられる。前述の記載及び実施例は、特定の実施形態を詳述し、本発明者らによって想到される最良の態様を説明する。しかしながら、上記が文書においてどの程度詳細に記載され得るかにかかわらず、実施形態は多くの方法で実施することができ、添付の特許請求の範囲及びその任意の等価物に従って解釈されるべきであることが理解されるであろう。
【0176】
本明細書で使用するとき、約という用語は、明示的に示されているか否かにかかわらず、例えば、整数、割合、及び百分率を含む数値を指す。明細書又は特許請求の範囲における各数字は、約という用語によって修飾されているとみなされ得る。約という用語は、概して、当業者が列挙された値(例えば、同じ機能又は結果を有する)と等価であるとみなす数値の範囲(例えば、列挙された範囲の±5~10%)を指す。数値又は範囲の一覧の前に少なくとも及び約などの用語が記載されているとき、これらの用語は、一覧に提供される値又は範囲の全てを修飾する。いくつかの例では、約という用語は、有効数字の単位に四捨五入された数値を含み得る。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
電気泳動を用いて酵素反応を実施する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、並びに前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつ酵素の第1の酵素補因子を含有する第1の部分と、
前記第2の端部に近接し、かつ前記第1の酵素補因子とは反対の電荷を有する、前記酵素の第2の酵素補因子を含有する第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間の、前記酵素を含有する反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)前記電極の対の間に電場を印加して、前記第1の酵素補因子を前記第1の部分から前記反応部分に駆動し、前記第2の酵素補因子を前記第2の部分から前記反応部分に駆動して、前記酵素、前記第1の酵素補因子、及び前記第2の酵素補因子を含む活性化酵素複合体を形成することと、を含む、方法。
(項目2)
前記第1の酵素補因子が金属イオンであり、前記第2の酵素補因子がポリヌクレオチドである、項目1に記載の方法。
(項目3)
工程(c)の前に、前記活性化酵素複合体の基質を前記反応部分に適用することを更に含み、前記電場の印加が、前記反応部分において前記活性化酵素複合体を前記基質と反応させて反応生成物を形成することを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記電場の印加が、前記反応部分から未反応の第1及び第2の酵素補因子を泳動させて、前記反応部分における前記反応生成物から前記未反応の第1及び第2の酵素補因子を分離することを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記第1の電極が正極であり、前記第1の酵素補因子が正に帯電しており、前記第2の電極が負極であり、前記第2の酵素補因子が負に帯電している、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記基質が、標的二本鎖核酸であり、任意選択で、前記標的二本鎖核酸が、二本鎖DNA、二本鎖RNA、又はDNA/RNAハイブリッドである、項目3に記載の方法。
(項目7)
前記酵素がトランスポザーゼであり、任意選択で、前記トランスポザーゼがTn5トランスポザーゼであり、任意選択で、前記第1の酵素補因子が、任意選択でMg(OAc)
2
又はMgCl
2
の形態のMg
2+
を含み、任意選択で、前記第2の酵素補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである、項目1に記載の方法。
(項目8)
標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつ第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、前記第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
前記第1の端部から遠位の、かつトランスポザーゼ、並びに二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含むトランスポソーム複合体を含有する反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)標的二本鎖核酸を前記反応部分に適用することと、
(c)前記電極の対の間に第1の電場を印加して、前記第1のトランスポザーゼ補因子を前記第1の部分から前記反応部分に駆動して、前記トランスポザーゼ、前記ポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタ、及び前記第1のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、
(d)複数の核酸断片ではなく、前記標的二本鎖核酸を断片化し、そして、前記核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、前記標的二本鎖核酸を前記活性化トランスポソーム複合体と共に前記反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む、方法。
(項目9)
前記トランスポソーム複合体が、任意選択でストレプトアビジン-ビオチン相互作用を介して、前記反応部分において固体支持体上に固定化される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記タグ付き核酸断片を作製した後に、前記トランスポソーム複合体を前記固体支持体から放出させることを含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
工程後に前記第1の電場の大きさを変化させて、前記固体支持体から放出された前記トランスポソーム複合体に結合している前記タグ付き核酸断片を回収部分に駆動することを更に含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、前記第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
前記第2の端部に近接し、かつ前記トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、前記第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間の、前記トランスポザーゼを含有する反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)標的二本鎖核酸を前記反応部分に適用することと、
(c)前記電極の対の間に第1の電場を印加して、前記第1のトランスポザーゼ補因子を前記第1の部分から前記反応部分に駆動し、前記第2のトランスポザーゼ補因子を前記第2の部分から前記反応部分に駆動して、前記トランスポザーゼ、前記第1のトランスポザーゼ補因子、及び前記第2のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、
(d)複数の核酸断片ではなく、前記標的二本鎖核酸を断片化し、そして、前記核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、前記標的二本鎖核酸を前記活性化トランスポソーム複合体と共に前記反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む、方法。
(項目13)
前記一本鎖タグ領域が、プライマー配列、バーコード配列、固有分子識別子(UMI)配列、増幅タグ、エンリッチメントタグ、又は精製タグのうちの1つ以上を含む、項目
12に記載の方法。
(項目14)
前記トランスポザーゼが、前記反応部分において固体支持体上に固定化され、任意選択で、前記反応部分がウェルを含み、前記固体支持体がビーズ粒子又は前記ウェルの表面である、項目12に記載の方法。
(項目15)
工程(c)で印加された前記第1の電場が、前記標的二本鎖核酸が前記電気泳動マトリックス内で電気泳動移動度を実質的に有さない値に設定される、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記電気泳動システムが、前記長さに沿って前記第1の部分と前記反応部分との間に回収部分を含む、項目12に記載の方法。
(項目17)
工程(c)における前記第1の電場の印加が、前記タグ付き核酸断片を前記回収部分に駆動することを含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記電気泳動ゲルマトリックス全体にわたって前記第1の電場の大きさ又は方向を変化させることを含む、項目12に記載の方法。
(項目19)
前記電気泳動システムが、各々がタグメンテーションのための異なる試薬を含有する、前記幅及び前記長さに沿った追加の部分と、前記第1の端部又は前記第2の端部のうちの一方に前記幅の両側における正極及び負極の第2の対とを含む、項目12に記載の方法。
(項目20)
電極の前記第2の対の間に第2の電場を印加することを含み、前記第2の電場の方向が、工程(c)で印加した前記第1の電場の方向に対して垂直である、項目19に記載の方法。
(項目21)
標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製する方法であって、
(a)
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
トランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、前記第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
前記トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、前記第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
溶解試薬を含有する第3の部分と、
前記トランスポザーゼを含有する第4の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間の反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の第1の対と、
前記第1の端部又は前記第2の端部のうちの一方において、前記幅の両側に配置された正極及び負極の第2の対と、
を含む、電気泳動システムを提供することと、
(b)標的二本鎖核酸を含有する細胞全体を前記反応部分に適用することと、
(c)第1の電場を印加して、溶解剤を前記反応部分に駆動して及び/又は前記反応部分を通過させて前記細胞を溶解させ、それにより、前記標的二本鎖核酸をサンプル部分に適用することと、
(d)第2の電場を印加して、前記第1のトランスポザーゼ補因子を前記第1の部分か
ら前記反応部分に駆動し、前記第2のトランスポザーゼ補因子を前記第2の部分から前記反応部分に駆動し、及び/又は前記トランスポザーゼをトランスポザーゼ部分から前記反応部分に駆動して、前記トランスポザーゼ、前記第1のトランスポザーゼ補因子、及び前記第2のトランスポザーゼ補因子を含む活性化トランスポソーム複合体を形成することと、
(e)複数の核酸断片ではなく、前記標的二本鎖核酸を断片化し、そして、前記核酸断片にタグ付けするのに十分な条件下で、前記標的二本鎖核酸を前記活性化トランスポソーム複合体と共に前記反応部分においてインキュベートし、それにより、タグ付き核酸断片のライブラリを作製することと、を含む、方法。
(項目22)
前記第1の電場及び前記第2の電場が異なり、工程(d)の前に工程(c)が実施される、又は、
前記第1の電場及び前記第2の電場が同じであり、工程(d)と同時に工程(c)が実施される、項目21に記載の方法。
(項目23)
電気泳動装置であって、
第1の端部、第2の端部、及び前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつ酵素の第1の酵素補因子を含有する第1の部分と、
前記第2の端部に近接し、かつ前記第1の酵素補因子とは反対の電荷を有する、前記酵素の第2の酵素補因子を含有する第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間の、前記酵素を含有する反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動装置。
(項目24)
電気泳動装置であって、
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつ第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、前記第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
前記第1の端部から遠位の、かつトランスポザーゼ、並びに二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタを含むトランスポソーム複合体を含有する反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動装置。
(項目25)
電気泳動装置であって、
第1の端部、第2の端部、及び前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、前記第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
前記第2の端部に近接し、かつ前記トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、前記第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
前記第1の端部と前記第2の端部との間の、前記トランスポザーゼを含有する反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の対と、
を含む、電気泳動装置。
(項目26)
電気泳動装置であって、
第1の端部及び第2の端部、幅、並びに前記第1の端部と前記第2の端部との間の長さを有する電気泳動ゲルマトリックスと、
前記第1の端部に近接し、かつトランスポザーゼの第1のトランスポザーゼ補因子を含有する第1の部分であって、前記第1のトランスポザーゼ補因子が金属イオンである第1の部分と、
前記第2の端部に近接し、かつ前記トランスポザーゼの第2のトランスポザーゼ補因子を含有する第2の部分であって、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、前記第1のトランスポザーゼ補因子とは反対の電荷を有し、前記第2のトランスポザーゼ補因子が、二本鎖トランスポゾン末端配列及び一本鎖タグ領域を含むポリヌクレオチドトランスポザーゼアダプタである第2の部分と、
溶解試薬を含有する第3の部分と、
前記トランスポザーゼを含有する第4の部分と、
前記第1の端部と前記第2の端部との間の反応部分と、
それぞれ前記第1及び第2の端部に配置された正極及び負極の第1の対と、
前記第1の端部又は前記第2の端部のうちの一方において、前記幅の両側に配置された正極及び負極の第2の対と、
を含む、電気泳動装置。
(項目27)
標的二本鎖核酸からタグ付き核酸断片のライブラリを調製するシステムであって、
項目23~26のうちのいずれか一項に記載の装置と、
電源と、
前記第1及び第2の電場の方向及び/又は大きさを制御して、前記試薬及び/若しくはタグ付き核酸断片を前記反応部分、回収部分、及び/若しくは受容部分に駆動する、並びに/又は前記試薬及び/若しくはタグ付き核酸断片を、前記反応部分、回収部分、及び/若しくは受容部分を通過させるように構成されたコントローラと、
を含む、システム。
【配列表】