(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】クロマチン立体配座捕捉(3C)ライブラリーの作製プロセス
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6806 20180101AFI20241213BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20241213BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20241213BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6869 Z
(21)【出願番号】P 2021545989
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(86)【国際出願番号】 GB2020050253
(87)【国際公開番号】W WO2020161485
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-02-03
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518000017
【氏名又は名称】オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】デイビーズ、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ、ジェームズ アール.
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】Zhongliang ZHAO et al.,“Nucleosome Positioning Assay”, BIO-PROTOCOL,2017年,Vol. 7, No. 10,DOI: 10.21769/BioProtoc.2285
【文献】Brian Spetman et al.,Chapter 19: Microarray Mapping of Nucleosome Position,"Epigenetics: A Reference Manual",Caister Academic Press,2011年,p.337-347,ISBN: 978-1-904455-88-2
【文献】James O J DAVIES et al.,“Multiplexed analysis of chromosome conformation at vastly improved sensitivity”,Nature Methods,2015年11月23日,Vol. 13, No. 1,p.74-80,DOI: 10.1038/nmeth.3664
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6806
C12Q 1/6844
C12Q 1/6869
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物細胞集団におけるクロマチンを処理するためのプロセスであり、
(i)哺乳動物細胞の集団において、前記細胞内でクロマチンを架橋させる工程、
(ii)前記哺乳動物細胞の外側細胞膜および核膜を透過処理する工程、および
(iii)前記透過処理した細胞内における前記架橋クロマチンを、小球菌ヌクレアーゼ(micrococcal nuclease)を用いて断片化し、ヌクレオソーム間リンカーが付加された180~200bpのモノヌクレオソームを生成する工程、を含む、プロセス。
【請求項2】
哺乳動物細胞集団における核酸を処理するためのプロセスであり、
(i)哺乳動物細胞の集団において、前記細胞内で核酸を固定化する工程、
(ii)前記哺乳動物細胞の細胞膜を透過処理または除去する工程、および
(iii)前記哺乳動物細胞内の前記固定化核酸を、小球菌ヌクレアーゼ(micrococcal nuclease)を用いて断片化し、核酸断片を生成する工程であって、前記核酸断片は、ヌクレオソーム間リンカーが付加された180~200bpのモノヌクレオソームである工程、を含む、プロセス。
【請求項3】
前記核酸が、ヌクレオソーム間リンカーによって連結されたヌクレオソームを含むクロマチンである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記工程(i)において、前記核酸が、当該核酸を架橋することによって固定化される、請求項2または請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記工程(ii)において、前記哺乳動物細胞の外側細胞膜および核膜が透過処理される、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記哺乳動物細胞集団における細胞数が、1~10,000個、10,000~100万個、または100万~1億個である、請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
真核細胞集団におけるクロマチンを処理するためのプロセスであり、
(i)真核細胞の集団において、前記細胞内でクロマチンを架橋させる工程、
(ii)前記真核細胞の細胞膜を透過処理する工程、および
(iii)前記架橋クロマチンを断片化し、核酸断片を生成する工程を含み、
前記核酸断片は、ヌクレオソーム間リンカーが付加された180~200bpのモノヌクレオソームである、プロセス。
【請求項8】
(a)請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプロセスにより核酸またはクロマチンを処理する工程、
(b)前記核酸断片をライゲーションし、ライゲーションされた核酸断片を生成する工程、および
(c)前記ライゲーションされた核酸断片の固定化を解除する工程を含む、3Cライブラリーを作製するためのプロセス。
【請求項9】
核酸サンプル内の互いに相互作用する核酸領域を特定する方法であり、
請求項8に記載のプロセスによって3Cライブラリーを作製する工程、
(d)前記3Cライブラリーを断片化し、核酸断片を生成する工程、
(e)必要に応じて、前記核酸断片の末端に配列決定アダプターを付加する、および/または、前記核酸断片を増幅する工程、
(f)前記核酸断片を、当該核酸断片のサブグループに結合するターゲティング核酸と接触させる工程であって、前記ターゲティング核酸が、結合対の第一パートナー(first half)で標識されている工程、
(g)前記結合対の第二パートナー(second half)を用いて、前記ターゲティング核酸が結合した前記核酸断片のサブグループを単離する工程、
(h)前記単離された核酸断片のサブグループを増幅する工程、
(j)必要に応じて、工程(f)、(g)、および(h)を、1回以上繰り返す工程、および
(k)必要に応じて、前記核酸サンプル内の互いに相互作用する核酸領域を特定するため、前記増幅された核酸断片の単離サブグループの配列決定を行う工程、を含む方法。
【請求項10】
前記ターゲティング核酸がDNAオリゴヌクレオチドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ターゲティング核酸の濃度が、5μM~1pMである、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ターゲティング核酸として、目的の遺伝子もしくは非コードRNAのプロモーターのヌクレオソーム枯渇領域内、または前記核酸中の調節エレメントのヌクレオソーム枯渇領域内に結合可能なものを選択する、
請求項9から請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ターゲティング核酸として、目的の遺伝子もしくは非コードRNAのプロモーターのヌクレオソーム枯渇領域の中央領域内、または前記核酸中の調節エレメントのヌクレオソーム枯渇領域の中央領域内に結合可能なものを選択する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(j)が、1回、2回、3回、4回、または5回繰り返される、請求項9から請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
核酸のSNP含有領域における対立遺伝子特異的相互作用プロファイルを特定する方法であり、SNP含有領域における対立遺伝子特異的相互作用プロファイルを特定するために、前記増幅された核酸断片の単離サブグループの配列決定を行うことを含む請求項9から請求項
14のいずれか一項に記載の方法を含む方法。
【請求項16】
特定の疾患状態または障害を示す1以上の相互作用核酸領域を特定する方法であり、a)特定の疾患状態または障害を有する対象から得た哺乳動物細胞の核酸サンプルに対し、請求項9から請求項
14のいずれか一項に記載の方法を実施すること、
b)第1核酸領域と第2核酸領域との間の相互作用の頻度を定量化すること、および
c)前記疾患状態または障害を有する対象から得た前記核酸サンプルにおける相互作用の頻度を、健康な対象から得た対照核酸サンプルにおける相互作用の頻度と比較し、前記核酸サンプル間での相互作用の頻度の差が特定の疾患状態または障害を示すものであることを、含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマチン立体配座捕捉(chromatin conformation capture: 3C)ライブラリーを作製するためのプロセスに関する。これは、核酸サンプル内の互いに相互作用する核酸領域を特定するために使用し得る。
【0002】
RNA-seq解析[非特許文献1]、ChIP-seq解析[非特許文献2~3]、DNase-seq解析[非特許文献4]、およびATAC-seq解析[非特許文献5]のような技術的進歩により、ゲノム中の調節エレメントをアノテーションし、それらの潜在的な機能を特定する我々の能力が向上しつつある。しかしながら、調節エレメントが特定の遺伝子プロモーターを離れた位置(10s~1000s kb)から制御するメカニズムを解明することは、未解決の課題となっている。
【0003】
従来の染色体立体配座捕捉(Chromosome Conformation Capture:3C)法を使用すれば、個々の遺伝子座におけるエンハンサー、サイレンサー、境界エレメント、プロモーター間の相互作用を、高分解能で詳細に解析することが可能である[非特許文献6~11]。
【0004】
2002年の最初の3C法の開発[非特許文献6]以来、Capture-C法、Hi-C法、Capture Hi-C法、in situ Hi-C法、環状化染色体立体配座捕捉(Circularized Chromosome Conformation Capture:4C)法、4C-seq法、ChIA-PET法、カーボンコピー染色体立体配座捕捉(Carbon Copy Chromosome Conformation Capture:5C)法、NG Capture-C法のような、3C法に基づくいくつかの新規技術が生まれた[非特許文献12、13](特許文献1)。これらの技術には、それぞれ、特有の強みと弱点がある。
【0005】
簡易に実行できるがハイスループットなデータ生成が可能な、感度および分解能が向上したより多くの染色体立体配座捕捉プロトコールが、依然として必要とされている。
【0006】
これらの方法の分解能は、哺乳類のゲノムを研究する場合には、依然として不十分である。ほとんどのアッセイでは、分解能は、データの蓄積およびシグナル強度の向上に使用されるビンサイズによって決まる。これは、配列決定の深度と、生物のゲノムのサイズの関数である(配列決定の要件は、ゲノムサイズまたは分解能の二乗に比例して増加する)。十分な配列深度を得ることが可能であれば、制限因子は制限酵素断片のサイズとなるが、これは、4種類のカッター制限酵素(現在、3Cライブラリーの調製に一般的に使用されている最も分解能が高い酵素)を用いた場合の理論限界値である256bpまでに相当する。デオキシリボヌクレアーゼIや小球菌ヌクレアーゼ等の配列非依存性ヌクレアーゼが、これまでに3Cライブラリーの生成に使用されているが、これら従来のプロトコールで用いられている濃縮工程では、より大きな哺乳類のゲノムにおいて、制限酵素よりも高い分解能のデータは得られていない[非特許文献14、15]。
【0007】
分解能の向上は、遺伝子を制御する調節配列をより詳細に浮き彫りにし、遺伝子を制御する新規な配列を特定する上で有用となる可能性がある。また、分解能の向上により、ゲノムワイド関連研究によって特定された一塩基多型を、これらが制御する遺伝子またはゲノム機能もしくはゲノム構造の他の側面に、より高信頼度で関連付けることを可能にすると考えられる。これは、テーラーメイド医療、診断、および創薬に有益である可能性がある。
【0008】
これまでになし得た最も高い分解能は、次世代Capture-C法によって得られたものであった[非特許文献12、13]。
【0009】
本発明者らは、本発明のプロセスを用いることで分解能を有意に向上し得ることを見出した。このプロセスを使用することで、一塩基対分解能が得られる可能性があり、この分解能は、従来の方法でなし得る分解能よりも一桁を上回る程大きいものである。
【0010】
本発明のプロセスは、3Cライブラリーの作製において、固定工程および消化工程の新規な組み合わせを含む。
【0011】
従来の方法(例えば、特許文献1)では、細胞を分解してクロマチンを放出させるために、当該細胞を(例えば、ホルムアルデヒドを使用して)固定し、その後、ホモジナイズさせていた。本発明のプロセスでは、細胞を固定するが、その後、(消化を可能にするために)当該細胞を透過処理する。このより穏やかな手法が、より高い分解能に寄与することが判明している。
【0012】
クロマチンの消化は、これまで、例えば、HindIII、EcoRI、NcoI、XbaI、BglIII、DpnII、およびNlaIII等の4塩基対および6塩基対切断用制限エンドヌクレアーゼや、小球菌ヌクレアーゼおよびデオキシリボヌクレアーゼIを含む細菌ヌクレアーゼ等、多数の異なる酵素を用いて行われてきた。
本発明者らは、小球菌ヌクレアーゼを、本発明のプロセスに用いた場合、得られる分解能の向上に寄与することを見出した。
【0013】
小球菌ヌクレアーゼは、これまでにも、酵母のヌクレオソーム分解能染色体折り畳み構造のマッピングに使用されてきた[非特許文献14、15]が、これまでに得られた分解能は、200bp~4kbであったと論述されている。さらに、酵母(S.セレビシエ(S. cereviseae))の細胞は真核細胞であるが、S.セレビシエのゲノムは約1200万塩基対であり、これは、ヒトゲノムの大きさの約1/250に過ぎない。
【0014】
したがって、本発明のプロセスは、特に哺乳類の遺伝子における調節エレメントの相互作用を、これまでに得られなかった分解能で研究することを可能にするものである。
【0015】
一実施形態において、本発明は、真核細胞集団における核酸処理のためのプロセスであり、
(i)真核(好ましくは、哺乳動物)細胞集団において、前記細胞内で核酸を固定化する工程、
(ii)前記真核(好ましくは、哺乳動物)細胞の細胞膜を透過処理または除去する工程、および
(iii)前記細胞内の前記固定化核酸を断片化し、核酸断片を生成する工程、を含むプロセスを提供する。
前記細胞は、哺乳動物細胞であることが好ましい。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明は、以下の工程を含む、真核(好ましくは、哺乳動物)細胞集団における核酸処理のためのプロセスを提供する。
(i)真核(好ましくは、哺乳動物)細胞集団において、前記細胞内で核酸を架橋させる工程、
(ii)前記真核生物(好ましくは、哺乳類)の細胞の細胞膜を透過処理または除去する工程、および
(iii)前記細胞内の前記架橋核酸を断片化し、核酸断片を生成する工程、を含むプロセスを提供する。
前記核酸は、クロマチンであることが好ましい。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、
(a)真核細胞集団における核酸処理のための本発明のプロセスにより、核酸を処理する工程、
(b)前記核酸断片をライゲーションし、ライゲーションされた核酸断片を生成する工程、および
(c)前記ライゲーションされた核酸断片の固定化を解除(例えば、解架橋)する工程、を含む、3Cライブラリーを作製するためのプロセスを提供する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、核酸サンプル内の互いに相互作用する核酸領域を特定する方法であり、
3Cライブラリーを作製するための本発明のプロセスによって3Cライブラリーを作製する工程、
(d)前記3Cライブラリーを断片化し、核酸断片を生成する工程、
(e)前記核酸断片の末端に配列決定アダプターを付加する、および/または、前記核酸断片を増幅する、任意の工程、
(f)前記核酸断片を、当該核酸断片のサブグループに結合するターゲティング核酸と接触させる工程であって、前記ターゲティング核酸が、結合対の第一パートナー(first half)で標識されている工程、
(g)前記結合対の第二パートナー(second half)を用いて、前記ターゲティング核酸が結合した前記核酸断片のサブグループを単離する工程、
(h)前記単離された核酸断片のサブグループを増幅する工程、
(j)工程(f)、(g)、および(h)を、1回以上繰り返す任意の工程、および
(k)前記増幅された核酸断片の単離サブグループの配列決定を行う任意の工程、を含む方法を提供する。
【0019】
前記ターゲティング核酸は、DNAオリゴヌクレオチドであることが好ましい。前記核酸サンプルは、真核細胞のサンプルであり、好ましくは、哺乳動物細胞のサンプルである。
【0020】
さらに別の実施形態では、核酸のSNP含有領域における対立遺伝子特異的相互作用プロファイルを特定する方法であり、SNP含有領域における対立遺伝子特異的相互作用プロファイルを特定するために、前記増幅された核酸断片の単離サブグループの配列決定を行うことを含む本発明の方法を含む方法が提供される。
【0021】
さらに別の実施形態では、本発明の方法を実施するための緩衝液および試薬を含む、核酸サンプル内の互いに相互作用する核酸領域を特定するためのキットが提供される。
【0022】
さらに別の実施形態では、特定の疾患状態または障害を示す1以上の相互作用核酸領域を特定する方法であり、
a)特定の疾患状態または障害を有する対象から得た真核(好ましくは、哺乳動物)細胞の核酸サンプルに対し、本明細書に記載の方法を実施すること、
b)第1核酸領域と第2核酸領域との間の相互作用の頻度を定量化すること、および
c)前記疾患状態または障害を有する対象から得た前記核酸サンプルにおける相互作用の頻度を、健康な対象から得た対照核酸サンプルにおける相互作用の頻度と比較し、前記核酸サンプル間での相互作用の頻度の差が特定の疾患状態または障害を示すものである、方法が提供される。
【0023】
本発明のプロセスは、真核細胞集団内での核酸の処理に関するものである。前記核酸は、生体内原位置(in situ)で、すなわち細胞内で処理される。前記核酸サンプルは、真核細胞集団を含んでもよい。
【0024】
真核細胞の例としては、動物、植物、および菌類の細胞が挙げられる。前記真核細胞は、高等真核細胞または多細胞生物の細胞であることが好ましい。
【0025】
前記植物は、単子葉植物または双子葉植物であってもよい。いくつかの実施形態では、前記真核細胞は、動物細胞であり、脊椎動物の細胞であることが好ましく、哺乳動物細胞であることがより好ましい。
【0026】
前記哺乳動物細胞は、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、ヤギ、イヌ、またはネコの細胞であることが好ましい。前記哺乳動物細胞は、ヒトの細胞であることが最も好ましい。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記細胞は、赤血球細胞または幹細胞(例えば、胚性幹細胞)である。前記核酸は、生きた細胞から採取することが好ましい。
【0028】
いくつかの好適な実施形態では、細胞集団は、104~109個の細胞からなり、106~108個の細胞からなることがより好ましい。別の好ましい実施形態では、前記細胞集団は、1~10,000個の細胞、10,000~100万個の細胞、または100万~1億個の細胞からなる。
【0029】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、クロマチン、DNA、およびRNAを包含する。前記核酸は、DNAまたはクロマチンであることが好ましく、クロマチンであることが最も好ましい。クロマチンは、ヌクレオソーム間リンカーによって結合されたヌクレオソームを含む。
【0030】
工程(i)は、真核(好ましくは、哺乳動物)細胞の集団において、前記細胞内で核酸を固定化(例えば、架橋)することを含む。前記固定化(例えば、架橋)は、個々の細胞ベースで行われる(すなわち、細胞内での固定化、例えば、架橋)。前記固定化(例えば、架橋)は、生体内原位置(in situ)で、すなわち、細胞核内で行われる。前記固定化(例えば、架橋)は、真核(好ましくは、哺乳動物)細胞集団における実質的に全て、もしくは全ての細胞内で行われることが好ましい。
【0031】
この工程では、前記核酸(例えば、クロマチン内のもの)が固定化(例えば、架橋)されることで、互いに相互作用していた当該核酸内の領域が近接して保持または固定される。
【0032】
互いに相互作用する核酸領域は、特に、関連する遺伝子の発現またはゲノム機能もしくはゲノム構造の他の側面に影響を及ぼすか、またはこれらを制御する、DNAエレメントである。例えば、前記DNAエレメントは、プロモーター、エンハンサー、インスレータ、および/またはサイレンサーであってもよい。
【0033】
前記核酸は、前記核酸を架橋することによって固定化してもよいし、あるいは、前記核酸を、特に固定化剤に埋め込むことによって固定化してもよい。
【0034】
互いに相互作用していた核酸の領域は、直接的に(すなわち、核酸同士を)架橋してもよいし、あるいは、間接的に(例えば、核酸を、当該核酸に結合している部位(例えば、タンパク質)に架橋させるか、または核酸に直接的または間接的に結合しているタンパク質同士を架橋することで)架橋してもよい。核酸は、架橋試薬を用いて架橋することが好ましい。前記架橋剤は、(透過処理していない)細胞内に入ることが可能なものでなければならない。前記架橋剤は、ホルムアルデヒドであることが好ましい。
【0035】
前記固定化剤は、(透過処理していない)細胞内に入ることが可能で、かつ、互いに相互作用していた核酸内の領域を近接して保持または固定するように、前記核酸を細胞内で固定化することが可能な物質である。いくつかの実施形態では、真核(好ましくは、哺乳動物)細胞は、前記固定化剤のプラグ内に固定化される。前記固定化剤の例としては、架橋されたポリマーから形成された、ゲル、好ましくはハイドロゲルが挙げられる。
【0036】
ハイドロゲルとは、親水性のポリマー鎖のネットワークであり、水を分散媒とするコロイド状のゲルである場合もある。ハイドロゲルの構造は、ハイドロゲル中のハイドロゲル形成ポリマーの濃度を変えることで変更し得る。ハイドロゲルポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、アクリレートポリマー(例えば、アクリル酸ナトリウム)、および親水性基が豊富なポリマーが挙げられる。その他のハイドロゲルポリマーとしては、アガロース、アルギン酸塩、メチルセルロース、ヒアルロナン、エラスチン様ポリペプチド、およびその他の天然由来のポリマーが挙げられる。前記固定化剤は、アガロースゲルであることが好ましい。
【0037】
工程(ii)は、真核(好ましくは、哺乳動物)細胞の細胞膜を透過処理または除去することを含む。この工程では、断片化酵素が核内の核酸に(例えば、クロマチンに)アクセスできるようにするために、前記細胞の外側細胞膜および核膜を少なくとも透過処理する。
【0038】
本明細書で使用される「透過処理する」という用語は、外側細胞膜および核膜を、断片化酵素を透過できるように処理するが、それ以外の点では、これらの膜はインタクトなままであることを意味する。
【0039】
いくつかの実施形態では、外側細胞膜および/または核膜は、溶解されない。
【0040】
いくつかの実施形態では、外側細胞膜および/または核膜は、部分的または完全に破壊されない。いくつかの実施形態では、外側細胞膜および/または核膜は、部分的または完全に除去されない。
【0041】
好ましい一実施形態では、真核(好ましくは、哺乳動物)細胞の外側細胞膜および核膜の透過処理を、当該外側細胞膜または核膜を除去することなく行う。他の実施形態では、細胞膜を除去し、かつ、核膜を透過処理する(ただし、除去しない)。その後、透過処理された核膜に封入されたクロマチンを単離してもよい。他の実施形態では、細胞膜を除去し、かつ、核膜を除去する。その後、クロマチンを単離してもよい。
【0042】
細胞の細胞膜を透過処理または除去する実施形態では、実質的に全て、もしくは全ての細胞において、細胞膜の透過処理または除去をそれぞれ行うことが好ましい。細胞の核膜を透過処理または除去する実施形態では、実質的に全て、もしくは全ての細胞において、核膜の透過処理または除去をそれぞれ行うことが好ましい。
【0043】
外側細胞膜および核膜は、膜透過処理剤を用いて透過処理される。膜透過剤の例としては、ジギトニン、サポニン、タージトール型NP40、トリトンX-100、ドデシル硫酸ナトリウム、およびTween20が挙げられる。前記透過処理剤は、ジギトニン(例えば、Sigma社製)であることが好ましい。
【0044】
一実施形態では、透過処理剤の使用量は、細胞の外側細胞膜および核膜を透過処理するのに十分な量であり、好ましくは当該細胞膜および/または核膜を部分的または完全に除去することなく、透過処理するのに十分な量とされる。より多量の透過処理剤を使用し、細胞の外側細胞膜および核膜を完全に除去してもよい。中間量の透過処理剤を使用し、外側細胞膜は完全に除去し、細胞核膜は透過処理してもよい。
【0045】
工程(iii)は、前記細胞内の前記固定化(例えば、架橋)核酸(例えば、クロマチン)を断片化し、核酸断片を生成することを含む。前記核酸断片は、クロマチンまたはDNA断片であることが好ましい。
【0046】
この工程では、前記固定化(例えば、架橋)核酸(例えば、クロマチン)の断片化は、これらがその後に、固定時に核内で物理的に近接していたクロマチン内の他の核酸配列にライゲーションできるようにするために行われる。この断片化工程では、ヌクレオソーム間リンカーが切断され、好ましくはその長さが短縮される。
【0047】
断片化に続き、クロマチン内の核酸の自由端を、ライゲーション反応を用いて互いに結合させる。これにより、核酸断片の順序が、直鎖状の核酸分子内の元の位置ではなく、固定化/固定(immobilization/fixation)時の三次元空間における近接状態を反映するように組み替えられた3Cライブラリーが得られる。
【0048】
断片化工程は、固定化(例えば、架橋)の完全性に影響を与えないか、あるいは固定化(例えば、架橋)の完全性に実質的に影響を与えないことが好ましい。
【0049】
断片化は、任意の適切な方法で実施すればよい。断片化プロセスの例としては、酵素、例えば、エンドヌクレアーゼの使用が挙げられる。いくつかの実施形態では、断片化は、制限エンドヌクレアーゼ用いて行われ、最も好ましくは、4塩基対を認識する制限エンドヌクレアーゼ(例えば、DpnIIまたはNlaIII)を用いて行われる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、断片化工程は、核酸断片の自由端を、結合対の第一パートナーで標識する工程を含まない。特に、本発明のいくつかの実施形態では、断片化工程は、核酸断片の自由端をビオチンで標識する工程を含まない。
【0051】
本発明の特に好ましい実施形態では、断片化は、エンド-エキソヌクレアーゼを用いて行われる。前記エンド-エキソヌクレアーゼは、小球菌ヌクレアーゼ(EC3.1.31.1)であることが好ましい。小球菌ヌクレアーゼは、一本鎖核酸を優先的に消化する。当該酵素は、二本鎖DNAおよび二本鎖RNAに対しても活性を示し、最終的には全ての配列が切断される。
【0052】
固定化(例えば、架橋)核酸(例えば、クロマチン)の断片化は、完了に至るまでは行われない。特に、ヌクレオソーム間リンカーは、断片化工程において、その全てが切断/消化されることはない。固定化(例えば、架橋)核酸(例えば、固定化または架橋クロマチン)の断片化は、ヌクレオソーム間リンカーの全て、もしくは実質的に全てがインタクトに保たれるように実施されることが好ましい。前記クロマチンは、生成されるモノヌクレオソームが70%を超える(好ましくは、80%を超えるか、または90%を超える)ように消化されることが好ましい。
【0053】
ヌクレオソーム間リンカーは、少なくとも部分的にインタクトに保たれる(すなわち、完全に消化されない)ことが好ましいが、切断してもよい。前記ヌクレオソーム間リンカーは、断片化(例えば、消化)後に、10~500、10~200、50~200、または10~100塩基対の長さであることが好ましい。
【0054】
前記核酸(例えば、クロマチン)は、モノヌクレオソーム(例えば、180~200bp)に断片化(例えば、消化)されていることが好ましく、また、ヌクレオソーム間リンカーが付加されていることがより好ましい。ヌクレオソームのヒストンコアに巻き付いている核酸は、断片化(消化)されないことが好ましい。
【0055】
断片化工程の継続時間および/または断片化酵素(使用する場合)の量/濃度は、これを達成するように選択される。
【0056】
比較的長いインキュベーション時間と、非常に少量の酵素とを組み合わせて使用することが好ましい。これにより、インキュベーション時間をより短くし、より多くの量の酵素を用いた場合と比べて、反応の制御性が向上する。
【0057】
クロマチン断片化の度合いおよびヌクレオソーム間リンカーの分解程度は、例えば、Agilent TapeStation(D1000試薬)等の自動化システムを使用することにより、ゲル電気泳動で容易に分析し得る。
【0058】
断片化工程(すなわち、工程(iii))の後に、固定化(例えば、架橋)ヌクレオソーム同士を、DNAアダプターを用いて連結してもよい(例えば、Ohno et al., Sub-nucleosomal Genome Structure Reveals Distinct Nucleosome Folding Motifs, Cell (2019), https://doi.org/10.1016/j.cell.2018.12.014に示される通り)。例えば、前記DNAアダプターは、ヌクレオソーム内のDNA分子のDNA入口端およびDNA出口端にライゲーションさせてもよい。前記アダプターは、標識されていてもよい(例えば、ビオチンコンジュゲートとしてもよい)。他の実施形態では、前記アダプターは標識されていない(例えば、ビオチンコンジュゲートされていない)。
【0059】
本発明の他の実施形態では、
(a)真核(好ましくは、哺乳動物)細胞集団における核酸処理のための本発明のプロセスにより、核酸を処理する工程、
(b)前記核酸断片をライゲーションし、ライゲーションされた核酸断片を生成する工程、および
(c)前記ライゲーションされた核酸断片の固定化を解除(例えば、解架橋)する工程、を含む、3Cライブラリーを作製するためのプロセスが提供される。
【0060】
本明細書で使用される「3Cライブラリー」という用語は、DNA断片のライブラリーであって、前記DNA断片が、隣接して結合されたDNAエレメントを含み、当該DNAエレメントが、(例えば、細胞内で)互いに相互作用が可能であるものを指す。
【0061】
工程(b)は、工程(a)で得られた核断片をライゲーションし、ライゲーションされた核酸断片を生成する工程を含む。前記ライゲーションされた核酸断片は、ライゲーションされたクロマチン断片またはライゲーションされたDNA断片であることが好ましい。
【0062】
この工程では、工程(iii)で生成された核酸断片の自由端同士をライゲーションし、ライゲーションされた核酸断片を生成する。
【0063】
ライゲーションは、前記核酸断片の自由端間でランダムに起こる。しかしながら、ライゲーションは、工程(i)の固定化(例えば、架橋)プロセスによって互いに近接して保持された、隣接する核酸自由端間で起こることが最も好ましい。このようにして、それまで互いに相互作用していた核酸サンプル内の核酸領域が、ここで、好ましくは互いに化学的に結合(ライゲーション)した状態となる。
【0064】
ライゲーションされた核酸断片の長さは、200bp以上であることが好ましい(すなわち、DNA断片長さのプロファイルにおいて断片サイズの増加があり、好ましくは、消化反応後の主なモノヌクレオソームピークにおいて、断片サイズのDNAはほとんど存在しない)(
図2参照)。
【0065】
ライゲーションに先立ち、核酸断片の末端を、例えば、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)とDNAポリメラーゼIであるLarge(Klenow)Fragmentを用いて、平滑末端化およびリン酸化することが好ましい。
【0066】
ライゲーションは、任意の適切なライゲーション剤、例えば、リガーゼを用いて行ってもよい。前記リガーゼは、DNAリガーゼであることが好ましい。適切なDNAリガーゼの例としては、T4 DNAリガーゼが挙げられる。
【0067】
工程(c)では、ライゲーションされた核酸断片の固定化を解除(例えば、脱架橋)する。前記細胞がまだ溶解されていない場合には、この時に溶解させてもよい。
【0068】
前記細胞膜がこれより前に除去されていない場合には、この時に細胞膜も除去し、例えば、溶解用緩衝液、プロテイナーゼK、および熱処理または適切な界面活性剤を用いて、前記細胞膜も除去する。あるいは、十分量の透過処理剤(例えば、本明細書に開示のもの)を使用してもよい。いくつかの好ましい実施形態では、この工程に至るまで、核膜および/または細胞膜の除去を行わない。
【0069】
この工程では、直鎖状の核酸断片(例えば、直鎖状のクロマチン断片)を生成するために、ライゲーションされた核酸断片(例えば、ライゲーションされたクロマチン断片)の固定化を解除(例えば、脱架橋)する。例えば、前記固定化剤の除去/溶解、または架橋部位の切断もしくは除去を行う。
【0070】
いくつかの実施形態では、ライゲーションされた核酸断片を、50℃、60℃、70℃、80℃、またはそれ以上の高温で加熱することによって架橋を除去する。解架橋は、プロテイナーゼKを用いて行うことが好ましい。また、非核酸物質(例えば、タンパク質、架橋剤等)の除去も、この時に任意で行う。また、好ましくはリボヌクレアーゼを用いて、この時点でサンプルからRNAを除去することも好ましい。例えば、ライゲーションされた核酸断片を、フェノール/クロロホルムまたは固相抽出法(Qiagen社製スピンカラム等)で抽出してもよい。
【0071】
さらに別の実施形態では、本発明は、核酸サンプル内の互いに相互作用する核酸領域を特定する方法を提供する。
【0072】
この方法の第一工程は、本発明のプロセスにより3Cライブラリーを作製すること、すなわち、上述の工程(a)、(b)、および(c)を含む。
【0073】
工程(d)では、3Cライブラリー内の核酸断片を断片化する。前記核酸断片は、DNA断片であることが好ましい。この工程では、3Cライブラリー内の核酸断片の長さが、ハイスループットな配列決定、捕捉、および/または増幅に適したサイズに短縮されることが好ましい。
【0074】
好ましくは、前記核酸断片の長さが、100~500塩基対に短縮されることであり、より好ましくは100~300または150~250塩基対、最も好ましくは約250塩基対に短縮されることである。
【0075】
断片化は、任意の適切なプロセスによって実施すればよい。適切な断片化プロセスの例としては、ヌクレアーゼ(例えば、制限エンドヌクレアーゼ)および超音波処理の使用が挙げられる。断片化は、超音波処理によって行うことが好ましい。
【0076】
工程(e)では、核酸断片の末端への配列決定アダプターの付加が任意に行われる。さらに、前記核酸断片を、この時に増幅してもよい。この任意の工程では、前記核酸断片の増幅およびその後に行われる配列決定を容易にするため、前記核酸断片の両端に、配列決定アダプターおよび/または増幅プライマー(例えば、短い二本鎖核酸)が付加される。
【0077】
各配列決定アダプターは、特有のインデックスバーコード、すなわち、その核酸断片に特有の識別子として機能する短い核酸モチーフを含んでいてもよい。前記配列決定アダプターは、次世代配列決定アダプターであることが好ましい。いくつかの実施形態では、前記配列決定アダプターは、フローセルへの結合およびブリッジ増幅を媒介するP5配列またはP7配列を含む。サンプルのインデックス化を可能にするために、配列決定プライマーおよびバーコードのための内部結合部位をさらに付加してもよい。前記配列決定アダプターは、ライゲーションを介したPCRによって核酸断片に付加してもよい。
【0078】
また、核酸断片を、この時に、増幅してもよい(例えば、PCRによって)。例えば、1~20ラウンドのPCRを行ってもよく、好ましくは3~10ラウンド、最も好ましくは約6ラウンドのPCRを行ってもよい。
【0079】
ここで、インデックス化したサンプルを、マルチプレックス配列解析のために任意にプールしてもよい。
【0080】
工程(f)において、核酸断片を、当該核酸断片のサブグループに結合するターゲティング核酸と接触させるが、ここで、ターゲティング核酸は、結合対の第一パートナーで標識されている。この工程では、所望の核酸断片(例えば、DNA断片)を、妨害物質となる核酸断片(contaminating nucleic acid fragments)のバックグラウンドから単離するための準備をする。
【0081】
ターゲット核酸としては、核酸サンプル内の核酸の所望領域のヌクレオチド配列と相補的または実質的に相補的なヌクレオチド配列を有するものが使用される。したがって、前記ターゲティング核酸は、適切な条件下において、前記核酸サンプル内の前記核酸の所望領域にハイブリダイズする。
【0082】
例えば、前記核酸の所望領域は、特定の遺伝子由来のプロモーターの領域であってもよいし(どのDNA領域が当該プロモーターと相互作用するかを決定することが望まれる)、エンハンサーエレメントの領域であってもよい(当該エレメントによってどの遺伝子が強化されるかを決定することが望まれる)。
【0083】
前記ターゲティング核酸は、一本鎖または二本鎖であってもよく、一本鎖であることが好ましい。前記ターゲティング核酸は、DNAまたはRNAであってもよく、DNA(例えば、DNAオリゴヌクレオチド)であることが好ましい。
【0084】
3Cライブラリーの作製に制限エンドヌクレアーゼを使用する場合、前記ターゲティング核酸は、前記所望領域を含む前記制限酵素断片の末端を含むこと、および制限エンドヌクレアーゼ部位を含むことが好ましい。このようにして、前記ターゲティング核酸は、情報を与えるライゲーション接合部に結合する。
【0085】
前記ターゲティング核酸(例えば、DNAオリゴヌクレオチド)の濃度は、5μM~1pMであることが好ましい。より好ましくは、前記ターゲティング核酸(例えば、DNAオリゴヌクレオチド)の濃度は、2.9μM~29pMである。さらに好ましくは、前記ターゲティング核酸(例えば、DNAオリゴヌクレオチド)の濃度は、1μM~30pM、または300nM~30pMである。さらに好ましくは、前記ターゲティング核酸(例えば、DNAオリゴヌクレオチド)の濃度は、30nM~0.3nMである。最も好ましくは、前記ターゲティング核酸(例えば、DNAオリゴヌクレオチド)の濃度は、約2.9nMである。これは、使用される各オリゴヌクレオチドについて当てはまる。
【0086】
工程(f)を繰り返す際には、同一のターゲティング核酸を使用することが好ましい。
【0087】
ターゲティング核酸(例えば、標識オリゴヌクレオチド)は、研究対象である生物のゲノム内の任意の配列に結合するよう設計することが可能である。前記ターゲティング核酸(例えば、標識オリゴヌクレオチド)は、目的の遺伝子もしくは非コードRNAのプロモーター、または調節エレメント(例えば、エンハンサー、リプレッサー、もしくはCTCF結合部位)のヌクレオソーム枯渇領域内に位置させる(すなわち、結合するように設計される)ことが好ましい。
【0088】
前記ターゲティング核酸(例えば、標識オリゴヌクレオチド)は、目的の遺伝子もしくは非コードRNAのプロモーター、または調節エレメント(例えば、エンハンサー、リプレッサー、もしくはCTCF結合部位)のヌクレオソーム枯渇領域の中央領域内に位置させる(すなわち、結合するように設計される)ことが最も好ましい。本明細書で使用される「中央」領域という用語は、ヌクレオソーム枯渇領域の配列の中央50%(好ましくは、中央30%、20%、または10%)を指す。また、「中央」領域という用語は、ヌクレオソーム枯渇領域の配列の中央の500塩基対、400塩基対、300塩基対、200塩基対、100塩基対、または50塩基対を指す場合もある。
【0089】
このようにして、遺伝子(またはRNA)の発現を制御する機能的な相互作用について、非常に強力かつ高分解能の画像を取得し得る。前記ヌクレオソーム枯渇領域は、デオキシリボヌクレアーゼI高感受性アッセイ(DNaseI hypersensitivity)、ATAC-seq法、およびクロマチン免疫沈降等のアッセイを用いて容易に定義することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、前記ターゲティング核酸は、目的の遺伝子または非コードRNAのプロモーターのデオキシリボヌクレアーゼI高感受性領域もしくはATAC配列、または核酸中の調節エレメントに結合(またはオーバーラップ)するように設計される。
【0091】
これに対し、前記ターゲティング核酸(例えば、標識オリゴヌクレオチド)を前記中央領域の左または右に1000bp移動させると、物理的な相互作用のプロファイルが減衰し、調節性の接触(regulatory contacts)を正確に定義することがより難しくなる(
図4a~
図4c参照)。
【0092】
遺伝子調節が既に明確に定義されている遺伝子座(αグロビン、βグロビン、HBA、およびHBB等)では、プロモーターのヌクレオソーム枯渇領域中央部から本発明の方法で得られるプロファイルは、既知の調節エレメントの全てを、ほぼ一塩基対分解能で定義している(
図4c参照)。このような分解能は、これまでには達成し得なかったものである。
【0093】
遠位の調節エレメントの転写因子結合部位は、プロモーターの中央部からのシグナルから定義することも可能である。これは、(プロモーターでの)捕捉リード(capture read)の一部と(エンハンサーでの)レポーターリード(reporter read)との間の接合部位を用いることによって達成することができる。前記転写因子結合部位の定義が可能となるのは、これらがDNAに結合している箇所では切断部位密度(cut-site density)の低下が起こるからである。よって、最も強いシグナルは、転写因子結合部位の間の保護されていない部位で発生する。これは、デオキシリボヌクレアーゼI高感受性フットプリントアッセイ(DNaseI hypersensitivity foot printing assays)と類似している。
【0094】
結合対の例としては、ビオチンとストレプトアビジンの対が挙げられる。結合対の第一パートナーがビオチンであることが好ましい。
【0095】
工程(g)では、結合対の第二パートナーを用いて、前記ターゲティング核酸が結合した核酸断片のサブグループを単離する。この工程では、結合対の第二パートナーが、結合対の第一パートナーに結合可能とされる。標的とする核酸断片の単離を助けるために、結合対の第二パートナーを物理的な支持体、例えば、カラムまたはビーズ(例えば、磁気ビーズ)に結合させてもよい。
【0096】
例えば、結合対の第一パートナーはビオチンであってもよく、第二パートナーはストレプトアビジンでコーティングされたビーズであってもよい。その後、前記標的とする核酸断片を、これら核酸断片がカラムまたは磁気ビーズに結合するという事実を利用してバックグラウンドから単離してもよく、前記バックグラウンドの核酸を、その後除去してもよい。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態では、前記方法は、マイクロアレイ上では行われない。
【0098】
工程(h)では、前記単離された核酸断片のサブグループが増幅される。この工程では、前記単離された核酸断片(例えば、DNA断片)は、所望の核酸断片を濃縮するために増幅される。前記増幅は、PCRにより行うことが好ましい。好ましくは、前記増幅は、10~40サイクルを含むことであり、より好ましくは12~14サイクルのPCR増幅を含むことである。
【0099】
前記配列決定アダプターがP5配列またはP7配列を含む本発明の実施形態では、後者の配列に結合するPCRプライマーを使用してもよい。
【0100】
本発明の方法の工程(d)~(h)は、工程(f)、(g)、および(h)を実施しない対応する方法と比較して、およそ5倍~20,000倍の濃縮を達成し得る。
【0101】
工程(j)において、工程(f)、(g)、および(h)を(この順序で)繰り返してもよい。これにより、工程(f)、(g)、および(h)を実施しない対応する方法と比較して、所望の核酸断片の濃縮程度が向上し、90%を超えるリードが、オリゴヌクレオチド捕捉の標的である配列を高頻度で含む。工程(f)、(g)、および(h)は、例えば、1回~5回、例えば、1回、2回、3回、4回、または5回、(この順序で)繰り返してもよい。
【0102】
前記方法の工程は、指定された順序で行うことが好ましい。
【0103】
前記方法は、工程(k)、すなわち、核酸断片の増幅されたサブグループの配列決定を行うことを、任意の工程としてさらに含む。当業者であれば、使用し得る多数のDNA配列決定方法を十分に承知していると思われる。前記配列決定は、Illumina社のプラットフォーム、例えば、Miseq、HiSeq、NextSeq、またはNovoSeqを使用し、150bpのペアエンド配列(すなわち、合計300bp)を用いて行われることが好ましい。
【0104】
本発明の方法は、インビトロまたはエクスビボで実施される。
【0105】
本明細書に記載された各文献の開示内容は、その全体が引用により本明細書に具体的に組み込まれる。特に、特許文献1の開示内容が、引用により本明細書に具体的に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】3Cライブラリーを作製するための本発明の方法の概要
【
図2】ヌクレオソーム断片化プロファイル。DNAの抽出後、自動化ゲル電気泳動(Agilent TapeStation、D1000試薬)を用いて、材料に対するアッセイを行った。最適レベルの消化は、クロマチンの大部分がモノヌクレオソーム(180~200bp)に消化され、ヌクレオソーム間リンカーが付加されている場合に得られた(
図2および
図3)。160bp未満となる過剰消化ではヌクレオソーム間リンカーが除去され、これは、近接した断片のライゲーションが不可能であったことを意味していた。
【
図3】最適な消化の理論的根拠を説明するモデル。消化前には、クロマチンは、ヌクレオソームの周りに巻きついている。各ヌクレオソームの周りに、20~80bp前後のリンカー配列とともに、およそ148bpが巻き付いている。サンプルを180~200塩基対のピーク断片サイズまで消化すると、ヌクレオソーム間のリンカーは切断されるが、消化はされない。これにより、異なるヌクレオソーム間でライゲーション反応を進行させることができる。ヌクレオソーム間のリンカーが完全に消化されると、ライゲーション反応を進行させることは不可能となる。
【
図4a】異なる3C法で生成したデータの比較。これらのパネルは、本発明の方法を用いて得られた分解能が、Hsiehら[非特許文献15]のデータと比べてより高いことを示している。
図4aは、アルファグロビン遺伝子座の100kbのセクションを示しており、捕捉に使用するオリゴヌクレオチドの位置の僅かな変化が、相互作用プロファイルを劇的に変化させることを示している。特に、遺伝子のプロモーターの高感受性部位にわたって直接配置されたオリゴヌクレオチドは、遺伝子発現を制御するエンハンサーの調節エレメントと、極めて個別的な相互作用を示している。これまでに利用可能な最良の方法との比較が可能なように、
図4aはNG Capture-C法および4C-seq法でのデータ[非特許文献10、12、13]も含む。
【
図4b】
図4bは、
図4aから抽出した20kbのセクションを示しており、また、S.セレビシエから生成された、Hsiehら[非特許文献15]から抽出した20kbデータも、比較のために含んでいる。
【
図4c】
図4cは、
図4bから抽出した1kbのセクションを示しており、本発明の方法により得られる分解能を強調したデータである。ライゲーション接合部をプロットすると、一塩基対分解能に近い分解能が得られ、エンハンサー領域内の転写因子の結合部位が強調される可能性がある。
【
図5】
図5は、インタクトな全細胞標品を用いて行ったMCCと、核標品を用いて行ったMCCの比較を示す。
【
図6】Micro-Cデータ。先行技術の方法を用いて得られたヌクレオチド配列分解能を示している(Hsiehら[非特許文献14]の
図5から引用)。
【実施例】
【0107】
以下の実施例により、本発明をさらに説明する。下記実施例において、特に言及がない限り、部およびパーセントは重量部および重量パーセントであり、温度は摂氏温度である。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものであり、あくまでも例示目的で示すものと解釈すべきである。上述の記載内容およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的な特徴を把握することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に対して種々の変更および修正を加え、種々の用途および条件に適合させることができる。よって、本明細書に示し説明したものに加えて、本発明の様々な修正が、前述の説明から当業者には明らかと考えられる。このような修正もまた、添付の請求項の範囲内に含まれることが意図されている。
【0108】
[実施例1:小球菌ヌクレアーゼクロマチン立体配座捕捉(micrococcal nuclease Chromatin Conformation Capture:MCC)ライブラリーの調製]
本方法の概要を、
図1に示す。
【0109】
(固定)
1~2×107個の細胞を、最終濃度2%のホルムアルデヒドを含む10mlの培地中で10分間、室温で10分間固定した。この反応液に、1M冷グリシン(最終濃度130mM)を加えてクエンチし、4℃で300gで5分間遠心分離した。上清を捨て、細胞ペレットをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁して遠心分離し(300g、4℃)、上清を捨てた。その後、前記細胞ペレットをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁し、ジギトニン(Sigma社)を、0.05%までの最終濃度(ジギトニンのバッチに応じて、細胞の透過処理に十分な濃度)で加えた。必要に応じて、この時点で細胞を急速凍結し、-80℃で保存することができる。
【0110】
(消化)
透過処理した細胞を300gで5分間遠心分離し、上清を捨て、前記細胞を、カルシウム含量を低減させた小球菌ヌクレアーゼ緩衝液(Tris HCL pH7.5 10mM; CaCl
2 1mM)に再懸濁した。異なる濃度の小球菌ヌクレアーゼ(NEB社またはWorthington社製)を滴定量使用し、クロマチンを消化した(2,000,000個の細胞を含む800μlの反応量に対して、通常、0.5~40 Kunitz Uの範囲)。この反応液を、Eppendorf Thermomixerを800rpmで用いて、37℃で1時間インキュベートした。ヌクレオソームの消化プロファイルを
図2に示している。
前記反応液を、最終濃度5mMのEGTA(エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(Sigma社)でクエンチした。消化効率を測定するために、コントロールとして200μlを除去した。前記反応液を遠心分離(300gで5分)し、前記消化緩衝液を捨てた。前記細胞をリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁し、再度遠心分離(300gで5分)し、上清を捨てた。
【0111】
(ライゲーション)
ライゲーションの前に、DNAの末端修復とリン酸化を行った。各種dNTP(dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP(Thermo Fischer社、R0191)、それぞれ最終濃度400uM)および5mMのEGTAを補ったDNAリガーゼ緩衝液(Thermo Scientific社;最終濃度40mM Tris HCl pH7.5、10mM MgCl2、10mM DTT、5mM ATP)に、細胞を再懸濁した。T4ポリヌクレオチドキナーゼPNK(NEB M0201L)およびDNAポリメラーゼI(Large(Klenow)Fragment NEB M0210L)を、それぞれ最終濃度が200U/mlおよび100U/mlとなるように添加し、反応液を37℃で1時間インキュベートした。T4 DNAリガーゼ(Thermo Scientific社、High Concentration Ligase(30U/μl)EL0013)を、最終濃度が300U/mlとなるように添加し、反応液を、Eppendorf Thermomixerを800rpmで用いて、16℃で一晩インキュベートした。
【0112】
(解架橋)
クロマチンの解架橋を、プロテイナーゼKを用いて65℃(2時間超)で行い、RNAse処理を施したフェノールクロロホルム(Roche社:1119915)またはQiagen社のDNeasy血液および組織処理用キット(DNeasy blood and tissue kit)のいずれかを用いてDNAを精製した。
消化およびライゲーションの効率は、ゲル電気泳動またはAgilent Tapestation(D1000試薬)のいずれかを用いて評価した。これにより、80%を超えるモノヌクレオソームと、3Cライゲーション生成物の断片サイズの大幅な増加が示されるはずである(
図2)。クロマチンを過剰消化すると、ヌクレオソーム間のリンカー配列が除去され、サンプルはライゲーションできない(
図2および
図3)。
【0113】
(超音波処理)
オリゴヌクレオチドの捕捉プロトコールは、従来のNext Generation Capture-C法における同プロトコールと同様に行った。簡潔には、Covaris S220 Focussed Ultrasonicatorを使用し、小球菌ヌクレアーゼ3Cライブラリーを、平均断片サイズが200塩基対となるまで超音波処理した。
【0114】
(配列決定アダプターの付加)
NEB Ultra IIキットを用いて配列決定アダプターを付加し、Herculase PCRキット(Agilent社)を用いてPCR増幅を行った。これらのライブラリーを、Roche社のSeqCap試薬を用い、120塩基対のビオチン化オリゴヌクレオチド(使用するオリゴヌクレオチドの数に応じ、13pm~130fmols/サンプルの濃度)との一般的なハイブリダイズを72時間行った。
【0115】
(ビーズによる捕捉)
前記サンプルを、ストレプトアビジンビーズ(Thermo Fischer M270)で捕捉し、洗浄し、前記Roche社のSeqCap試薬および標準プロトコールを用いて増幅した。オリゴヌクレオチド捕捉の第2ラウンドは、同一のオリゴヌクレオチドおよび試薬を用いて、24時間のハイブリダイゼーション反応のみ行った。
【0116】
(配列決定)
材料の配列決定は、Illumina社のプラットフォームを使用し、300塩基対のリード(150塩基対のペアエンド)で行った。
【0117】
(結果)
データを、
図4に示す通り分析した。
図4は、小球菌ヌクレアーゼCapture-C(Micrococcal nuclease Capture-C:MCC)実験のデータである。この実験では、35の遺伝子について、同時にデータを作成した。実験計画には、遺伝子のプロモーターにある高感受性部位の中央からの直接的な接触を捕捉するように設計された中央捕捉オリゴヌクレオチドと、2つの隣接オリゴヌクレオチド(一方は上流1kbまで(「左側」と表示)、もう一方は下流1kbまで(「右側」と表示))を含んでいた。このデータは、MCCの分解能が、哺乳類ゲノムにおいて高分解能の相互作用プロファイルを定義するためにこれまで利用可能な最良の方法(NG Capture-C法および4C-seq法)で達成できる分解能よりもはるかに高いことを示している。さらに、Micro-Cプロトコール[非特許文献14]を用いて生成された酵母の全対全コンタクトマップ(all v all contact maps)と比較しても、ゲノムサイズがはるかに大きいにもかかわらず、データは実質的に向上した分解能を示している。
【0118】
捕捉に用いるオリゴヌクレオチドの位置によって、相互作用プロファイルは劇的に変化する。オリゴヌクレオチドが遺伝子のプロモーターの高感受性部位にわたって直接配置された場合、MCCにより、遺伝子発現を制御することが知られているエンハンサーの調節エレメントとの極めて個別的な相互作用が明らかとなっている(
図4a、
図4b、
図4c)。しかしながら、ビオチン化オリゴヌクレオチドをデオキシリボヌクレアーゼ部位における中央オリゴ位置から約1kb上流または下流に配置すると、プロファイルが変化し、相互作用がより拡散したものになる。NG Capture-C法および4C-seq法のデータは、大きい哺乳類ゲノムについて1対全の相互作用プロファイル(one vs all interaction profiles)を定義するためのこれまでに利用可能な最良の方法との比較が可能なように、併せて示したものである。
図4bは、
図4aから抽出した20kbのセクションを示しており、また、S.セレビシエから生成された、Hsiehら[非特許文献15]から抽出した20kbデータを含む。
【0119】
図4cは、
図4bから抽出した1kbのセクションを示し、これは、本発明の方法により得られる分解能を強調している。ライゲーション接合部をプロットすると(他のトラックで示される全リードのパイルアップとは対照的に)、一塩基対分解能に近い分解能が得られる。デオキシリボヌクレアーゼI高感受性フットプリント法のデータと同様に、エンハンサー領域内の潜在的な転写因子結合部位を強調している。この実験では、別の35の遺伝子が分析されたが、これらのデータも、同様の分解能の向上を示している。
【0120】
[実施例2:ジギトニンが分解能に及ぼす効果]
図5は、インタクトな全細胞標品を用いて行ったMCCと、核標品を用いて行ったMCCとの比較を示す。全細胞標品では、核から生成したデータと比較して、エンハンサーエレメントのピークがはるかに明確に示されている。NG Capture-C法および4C-seq法のデータは、比較のために併せて示している(両データは、インタクトな細胞からではなく核から作製した3Cライブラリーより生成したものである)。
【0121】
[比較例3:Micro-C法で得られた分解能]
あくまでも比較目的で、先行技術のMicro-C法を参照する(Hsiehら、2015&2016[非特許文献14、15])。
図4は、酵母の第9染色体の20kb領域を示す、Hsiehら[非特許文献15](補足
図2)から抽出したデータを示し、本明細書の
図6(Hsiehら[非特許文献14]の
図5Cから再現)は、野生型およびssu72-2のMicro-Cデータを示す2種類の20kb×20kbマトリクスを示している。これらは、当該Micro-C法で得られた分解能がより低レベルであることを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0122】
【文献】国際公開第2017/068379号パンフレット
【非特許文献】
【0123】
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