(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】分光システムおよび分光を実施する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20241213BHJP
【FI】
G01N21/3504
(21)【出願番号】P 2021560417
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 CA2020050248
(87)【国際公開番号】W WO2020198841
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-22
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521441618
【氏名又は名称】ブリーズ・バイオメディカル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・クエンティン・パーヴス
(72)【発明者】
【氏名】デニス・デュフール
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0151248(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0214050(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0062255(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0017618(US,A1)
【文献】特開2017-156225(JP,A)
【文献】特表2012-510048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - G01N 37/00
A61B 5/06 - A61B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振キャビティと、
第1の端においてガス源に連結し、第2の端において、分析のための試料を含む回収媒体の第1の端に連結するように構成される
気体供給導管と、
第1の端において前記回収媒体の第2の端に連結し、第2の端において前記共振キャビティに連結するように構成される
試料供給導管と、
前記
気体供給導管から
前記試料供給導管まで延在している
迂回導管と、
前記
迂回導管と前記回収媒体との間の前記
気体供給導管から
放出口まで延在している
管排気導管と、
前記
迂回導管と前記
管排気導管との間に前記
気体供給導管に沿って位置付けられ、前記
気体供給導管に沿って前記ガス源から前記回収媒体へのガスの流れを許容または阻止するように条件付け可能な
経路弁と、
前記
迂回導管と前記共振キャビティとの間に前記
試料供給導管に沿って位置付けられ、かつ、前記共振キャビティへのガスの流れを許容または阻止するよう条件付け可能な
キャビティ入口弁と、
前記
迂回導管に沿って位置付けられ、かつ、前記
迂回導管を通って前記
試料供給導管に向かうガスの流れを許容または阻止するように調整可能な
迂回導管弁と、
前記
管排気導管に沿って位置付けられた試料排気弁であって、
前記試料排気弁より遠位に設けられた前記
放出口に向かうガスの流れを許容または阻止するように調整可能な試料排気弁と、
前記ガス源から前記
迂回導管を通って前記回収媒体を通り、前記
管排気導管を通って前記
放出口に向かってガスが流れるように、回収媒体フラッシングモードにおいて前記
経路弁及び前記
キャビティ入口弁を閉じ、前記
迂回導管弁及び前記
試料排気弁を開くように構成された制御システムであって、
また、前記ガス源から前記回収媒体及び前記
試料供給導管を通って前記共振キャビティ内にガスが流れるように、試料充填モードにおい
て前記
経路弁及び前記
キャビティ入口弁を開き、前記
迂回導管弁及び前記
試料排気弁を閉じるように構成された制御システムと、
を備える分光システム。
【請求項2】
前記回収媒体は吸着管である、請求項1に記載の分光システム。
【請求項3】
前記吸着管が前記
気体供給導管および前記
試料供給導管に連結されるとき、前記吸着管を加熱するように位置付けられる加熱器をさらに備える、請求項2に記載の分光システム。
【請求項4】
前記吸着管の前記第1の端は排気端であり、前記吸着管の前記第2の端は試料受入端である、請求項2に記載の分光システム。
【請求項5】
前記ガス源は、前記試料の分析のための前記共振キャビティの中の目標試料圧力を上回るソースガス圧力において前記ガスを提供する、請求項4に記載の分光システム。
【請求項6】
ガスが前記吸着管から前記共振キャビティへと流れるとき、前記吸着管の上流に位置付けられる圧力センサをさらに備える、請求項5に記載の分光システム。
【請求項7】
前記制御システムは、
前記ガス源と前記試料供給導管との間において前記気体供給導管に沿って位置付けられるガス吸入弁を備え、測定圧力を前記圧力センサから受信するように前記圧力センサに連結され、前記試料充填モードにおいて、前記
ガス吸入弁は、前記測定圧力が前記目標試料圧力になるまで、前記ガス源からより多くの前記ガスを導入するために繰り返し開閉される、請求項6に記載の分光システム。
【請求項8】
前記測定圧力は、前記
ガス吸入弁が閉じられるとき、前記目標試料圧力と比較される、請求項7に記載の分光システム。
【請求項9】
前記圧力センサは、前記
気体供給導管と前記
迂回導管弁との間で前記
迂回導管に沿って位置付けられる、請求項8に記載の分光システム。
【請求項10】
前記
迂回導管と前記吸着管との間で前記
試料供給導管に沿って位置付けられる
後方管隔離弁をさらに備える、請求項9に記載の分光システム。
【請求項11】
前記分光システムは、前記吸着管と前記
管排気導管との間で前記
気体供給導管に沿って位置付けられる
前方管隔離弁をさらに備える、請求項10に記載の分光システム。
【請求項12】
前記制御システムは、共振キャビティフラッシングモードにおいて、前記
経路弁及び前記
後方管隔離弁を閉じ、前記
キャビティ入口弁及び前記
迂回導管弁を開いて、前記ガスを、前記
迂回導管を通して前記共振キャビティに流すように構成される、請求項10に記載の分光システム。
【請求項13】
分光を実施する方法であって、
ガス源を、分析のための試料を含む回収媒体の第1の端に
気体供給導管を介して連結するステップと、
前記回収媒体の第2の端を共振キャビティに
試料供給導管を介して連結するステップであって、前記
試料供給導管は
迂回導管によって
気体供給導管に連結され、前記
気体供給導管は前記
迂回導管と回収媒体との間の前記
気体供給導管から延在する
管排気導管を介して
放出口に連結され、
経路弁は前記
迂回導管と前記
管排気導管との間の前記
気体供給導管に沿って位置付けられ、前記
経路弁は前記
気体供給導管に沿って前記ガス源から前記回収媒体へのガスの流れを許容または阻止するように条件付け可能であり、
キャビティ入口弁は前記
迂回導管と前記共振キャビティとの間の前記
試料供給導管に沿って位置付けられ、前記キャビティ入口弁は前記共振キャビティへのガスの流れを許容または阻止するように条件付け可能であり、
迂回導管弁は前記
迂回導管に沿って位置付けられ、前記
迂回導管を通って前記
試料供給導管に向かうガスの流れを許容または阻止するように条件付け可能であり、
試料排気弁は前記
管排気導管に沿って位置付けられ、
前記試料排気弁より遠位に設けられた前記
放出口に向かうガスの流れを許容または阻止するように条件付け可能である、ステップと、
ガスを前記ガス源から前記回収媒体を通じて前記
放出口に向かって流すために、回収媒体フラッシングモードにおいて前記
経路弁及び前記
キャビティ入口弁を閉じ、前記
迂回導管弁及び
前記試料排気弁を開けるステップと、
前記回収媒体を通じて前記ガス源から前記共振キャビティへと前記ガスを流すために、試料充填モードにおいて前記
経路弁及び前記
キャビティ入口弁を開け、前記
迂回導管弁及び
前記試料排気弁を閉じるステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記回収媒体は吸着管である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記吸着管を目標温度に加熱するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記吸着管の前記第1の端は排気端であり、前記吸着管の前記第2の端は試料受入端である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ガスが前記吸着管から前記共振キャビティへと流れるとき、前記吸着管の上流に位置付けられる圧力センサを介して前記共振キャビティにおける圧力を測定するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
測定圧力が目標試料圧力レベルと一致するまで、
前記ガス源と前記試料供給導管との間において前記気体供給導管に沿って位置付けられるガス吸入弁を開閉して前記ガス源と前記吸着管との間の流体連通
を繰り返し許容または阻止するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記測定圧力は、前記
ガス吸入弁が閉じられるとき、前記目標試料圧力レベルと比較される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記流れるガスが前記共振キャビティに入る前に前記流れるガスを濾過するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月3日に出願された米国仮特許出願第62/828,750号の利益を主張し、その内容は本明細書において参照により全体において組み込まれている。
【0002】
本明細書は、概して、気体試料分析に関し、詳細には、分光システムおよび分光を実施する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
分光システムは、物質について学ぶために物質と放射との間の相互作用を分析する。概して、この分析は、知られている分子についての以前の基準の観察に従って、物質または構成物質を分類するために使用される。分光の1つのこのような形態は、吸収スペクトルを用いて試料における単一の被検物質を特定および定量化するために概して使用されるキャビティリングダウン分光(「CRDS: Cavity Ring-Down Spectroscopy」)である。典型的なCRDSシステムは、2つの高反射性鏡を有する室のキャビティへと向けられるビームを発生させるレーザーを用いる。ビームは、通常は、可視光スペクトルまたは近赤外線(「IR」)スペクトルの中にあり、単一の分子の存在を特定するために単一波長へと調整される。そして、ビームは鏡同士の間で繰り返し反射され、これは、光の一部分をリングダウンキャビティから逃がすことができる。レーザーがキャビティモードと共振しているとき、強め合う干渉のため、強度がキャビティにおいて増加する。キャビティに入る光が消滅させられるとき、リングダウンキャビティにおける光の強度は、所定の率で減衰する。僅かな一部分の光が鏡によって反射されず、リングダウンキャビティから逃げてしまう。逃げる光の強度は、減衰率を決定するためのセンサ構成部品によって測定される。
【0004】
気体試料がリングダウンキャビティに配置されるとき、気体試料に存在する被検物質が光の一部を吸収し、それによってリングダウンキャビティにおける光の強度の減衰を加速させる。吸収スペクトルは、複数の特定の波長における気体試料のないときの光の減衰時間に対して、これらの波長における気体試料の存在するときの光の減衰時間を測定することで、生成される。様々な被検物質の知られている吸収スペクトルによる、気体試料についての測定された吸収スペクトルの線形回帰、または他の適切な方法は、気体試料における個々の被検物質の特定および定量化を可能にする。
【0005】
試料の充填が問題になることがある。試料を充填するための従来の手法は、CRDSシステムに含まれる気体試料の分析のために、プラスチックまたは他の材料から作られたバッグをCRDSシステムに連結することを含む。試料が人の呼気のものである場合、試料は、呼気の試料に含まれる他の物質の分子の吸収特性のため、その他の物質の分光と干渉し得るCO2および水を含み得る。これは、水がこの波長範囲における光を吸収するため、赤外線スペクトルにおける波長を有するレーザーが用いられるときに特に当てはまる。さらに、CO2は、CO2レーザーによって発せられる波長において光を吸収する。
【0006】
別の問題は、構成物質の一部が分光システムの内側の表面に付着する可能性があり、続いての試料の充填の間に剥がれ、それらの試料を汚染する可能性があることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、共振キャビティと、第1の端においてガス源に連結し、第2の端において、分析のための試料を含む回収媒体の第1の端に連結するように構成される第1の導管と、第1の端において回収媒体の第2の端に連結し、第2の端において共振キャビティに連結するように構成される第2の導管とを備える分光システムが、提供される。共振キャビティはリングダウンキャビティであり得る。
【0008】
回収媒体は吸着管であり得る。吸着管が第1の導管および第2の導管に連結されるとき、吸着管を加熱するように加熱器が位置付けられ得る。
【0009】
吸着管の第1の端は排気端とでき、吸着管の第2の端は試料受入端とできる。
【0010】
ガス源は、試料の分析のための共振キャビティの中の目標試料圧力を上回るソースガス圧力においてガスを提供することができる。
【0011】
分光システムは、ガスが吸着管から共振キャビティへと流れるとき、吸着管の上流に位置付けられる圧力センサをさらに備え得る。
【0012】
分光システムは、測定圧力を圧力センサから受信するように圧力センサに連結され、ガス源と、吸着管および圧力センサとの間の流体連通を制御する弁に連結される制御システムをさらに備えてもよく、制御システムは、測定圧力が目標試料圧力になるまで、ガス源からより多くのガスを導入するために弁が繰り返し開閉される試料充填モードに条件付け可能である。
【0013】
測定圧力は、弁が閉じられるとき、目標試料圧力と比較され得る。
【0014】
弁は第1の弁とでき、分光システムは、第2の導管に沿って位置付けられる第2の弁と、第1の導管と流体連通しており、第2の弁と吸着管との間の位置において第2の導管と流体連通している第3の導管と、第3の導管を通る流体連通を制御する第3の弁と、第1の弁と吸着管との間で第1の導管と流体連通している第4の導管と、第3の導管と第4の導管との間で第1の導管に沿って位置付けられる第4の弁とをさらに備え得る。
【0015】
圧力センサは、第1の導管と第3の弁との間で第3の導管に沿って位置付けられ得る。
【0016】
分光システムは、第3の導管と吸着管との間で第2の導管に沿って位置付けられる第5の弁をさらに備え得る。
【0017】
分光システムは、吸着管と第4の導管との間で第1の導管に沿って位置付けられる第6の弁をさらに備え得る。
【0018】
制御システムは、吸着管および第4の導管を通じてガスを流すために、制御システムが、第1の弁、第3の弁、および第5の弁を開け、第2の弁および第4の弁を閉じる第1のモードと、吸着管を通じて共振キャビティへとガスを流すために、制御システムが、第1の弁、第4の弁、第2の弁、および第5の弁を開け、第3の弁を閉じる第2のモードとで動作するように構成され得る。
【0019】
分光システムは、第2の導管に沿って位置付けられるフィルタをさらに備え得る。
【0020】
他の態様において、分光を実施する方法であって、ガス源を、分析のための試料を含む回収媒体の第1の端に連結するステップと、回収媒体の第2の端を共振キャビティに連結するステップと、ガスをガス源から回収媒体を通じて共振キャビティへと流すステップとを含む方法が提供される。共振キャビティはリングダウンキャビティであり得る。
【0021】
回収媒体は吸着管であり得る。方法は、吸着管を目標温度に加熱するステップを含み得る。
【0022】
吸着管の第1の端は排気端とでき、吸着管の第2の端は試料受入端とできる。
【0023】
方法は、ガスが吸着管から共振キャビティへと流れるとき、吸着管の上流に位置付けられる圧力センサを介して共振キャビティにおける圧力を測定するステップをさらに含み得る。
【0024】
方法は、測定圧力が目標試料圧力レベルと一致するまで、ガス源と吸着管との間の流体連通を制御する弁を繰り返し開閉するステップをさらに含み得る。
【0025】
測定圧力は、弁が閉じられるとき、目標試料圧力レベルと比較され得る。
【0026】
流れるガスは、吸着管の第1の端から吸着管の第2の試料受入端へと吸着管を通る流れるガスを含むことができ、方法は、吸着管を通じて試料受入端から排気端へとガスを流すステップをさらに含み得る。
【0027】
方法は、流れるガスが共振キャビティに入る前に流れるガスを濾過するステップを含み得る。
【0028】
さらなる態様では、少なくとも1つの内部表面によって定められ、それ自体の第1の端に向けて位置付けられる第1の鏡と、それ自体の第2の端に向けて位置付けられる第2の鏡とを有する共振キャビティを備える分光システムであって、少なくとも1つの内部表面は不活性である、分光システムが提供される。共振キャビティはリングダウンキャビティであり得る。
【0029】
分光システムは、共振キャビティに連結され、試料供給源と共振キャビティとの間で延びる少なくとも1つの導管を有する試料充填システムをさらに備えることができ、導管はその内部表面に不活性被覆を有する。
【0030】
分光システムは、共振キャビティに連結され、共振キャビティと排気出口との間で延びる少なくとも1つの導管を有する試料充填システムをさらに備えることができ、少なくとも1つの導管は、それ自体に沿って位置付けられる弁を有し、共振キャビティと弁との間で延びる少なくとも1つの導管の一部分が、その内部表面に不活性被覆を有する。
【0031】
分光システムは、ガスが共振キャビティに入る前にガスを濾過するように位置付けられるフィルタをさらに備え得る。
【0032】
他の技術的利点は、以下の図および記載の検討の後、当業者には容易に明らかになり得る。
【0033】
本明細書に記載された実施形態のより良い理解のために、および、実施形態がどのように実行に移され得るかをよりはっきりと示すために、ここで、例だけを用いて添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】一実施形態によるキャビティリングダウン分光システムの様々な光学構成部品および空気圧構成部品の概略図である。
【
図2】
図1のシステムを用いて分光を実施する大まかな方法の流れ図である。
【
図3A】リングダウンキャビティの充填/排出の間の窒素ガスの流れが指示されている、
図1に示された空気圧構成部品の一部の概略図である。
【
図3B】水および/または二酸化炭素の放出の間の窒素ガスの流れが指示されている、
図1に示された空気圧構成部品の一部の概略図である。
【
図3C】吸着管からの試料の充填の間の窒素ガスの流れが指示されている、
図1に示された空気圧構成部品の一部の概略図である。
【
図4A】
図1のキャビティリングダウン分光システムの空気圧構成部品の領域F4Aの断面図である。
【
図4B】
図1のキャビティリングダウン分光システムの空気圧構成部品のリングダウンキャビティとキャビティ出口弁との間の排出導管の断面図である。
【
図4C】不活性被覆が、リングダウンキャビティを定めるリングダウン室の内部表面に配置されている、
図1のCRDSシステムのリングダウン室の一部分の断面図である。
【
図5】
図1に示されたキャビティリングダウン分光システムの様々な光学構成部品および空気圧構成部品を制御するための電気制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
他に明確に記されていない場合、図面において描写されている物品は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。
【0036】
図示の簡潔性および明確性のために、適切であると考えられる場合、参照符号は、対応する要素または類似の要素を指示するために図の間で繰り返される可能性がある。また、数多くの特定の詳細が、本明細書に記載されている実施形態の完全な理解を提供するために述べられている。しかしながら、本明細書に記載されている実施形態がこれらの特定の詳細なしで実施できることは、当業者によって理解されるものである。他の例では、よく知られている方法、手順、および構成要素は、本明細書に記載されている実施形態を不明瞭にしないように、詳細に記載されていない。例示の実施形態が図において示されて以下に記載されているが、本開示の原理が、現在知られていようがなかろうが、いくつもの技術を用いて実施されてもよいことは、初めに理解されるべきである。本開示は、図面において示されて以下に記載されている例示の実施および技術にいかなる形でも限定されるべきではない。
【0037】
本記載を通じて使用されている様々な用語は、文脈が他に指示していない場合、以下のように読まれて理解され得る。全体を通じて使用されているような「または」は、「および/または」と書かれているかのように、包括的であり、全体を通じて使用されているような単一の品物および代名詞はそれらの複数の形態を含み、逆もまた然りであり、同様に、性別上の代名詞はそれらの反対の代名詞を含み、そのため代名詞は、本明細書において記載されたことを、片方の性別による使用、実行、実施に限定するとして理解されるべきではなく、「例示」は、「図示」または「例を用いる」として理解されるべきであり、他の実施形態に対して必ずしも「好ましい」として理解されるべきではない。用語についてのさらなる定義が本明細書において述べられる可能性があり、これらは、本記載を読むことから理解されるように、それらの用語の先の例および後の例に当てはまる可能性がある。
【0038】
変更、追加、または省略が、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されたシステム、装置、および方法に行われてもよい。例えば、システムおよび装置の構成部品は、一体化または分離されてもよい。さらに、本明細書に開示されているシステムおよび装置の動作は、より多くの構成部品、より少ない構成部品、または他の構成部品によって実施されてもよく、記載されている方法は、より多くのステップ、より少ないステップ、または他のステップを含んでもよい。また、ステップは任意の適切な順番で実施されてもよい。本明細書で使用されているように、「各々」は、セットの各々の部材、または、セットの部分セットの各々の部材を言っている。
【0039】
命令を実行する本明細書で例示されている任意のモジュール、ユニット、コンポーネント、サーバー、コンピュータ、ターミナル、エンジン、またはデバイスは、例えば磁気ディスク、光学ディスク、またはテープなど、保存媒体、コンピュータ保存媒体、またはデータ保存デバイス(取り外し可能および/または取り外し不可能)などのコンピュータ読取可能媒体を含み得る、またはそれらへのアクセスを有し得る。コンピュータ保存媒体は、コンピュータ読取可能命令、データ構造、プログルラムモジュール、または他のデータなど、情報の保存のための任意の方法または技術で実施される揮発性、不揮発性、取り外し可能、および取り外し不可能な媒体を含み得る。コンピュータ保存媒体の例には、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、他の光学保存装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク保存装置、他の磁気保存装置、または、所望の情報を保存するために使用でき、アプリケーション、モジュール、もしくはそれら両方によってアクセスされ得る任意の他の媒体がある。任意のこのようなコンピュータ保存媒体は、装置の一部であり得る、または、装置にアクセス可能もしくは接続可能であり得る。さらに、文脈が他に明確に指示していない場合、本明細書に述べられている任意の処理装置または制御装置が、単一の処理装置として、または複数の処理装置として実施され得る。複数の処理装置は配列または分配されてもよく、本明細書で言及される任意の処理機能は、単一の処理装置が例示され得るとしても、1つまたは複数の処理装置によって実行されてもよい。本明細書に記載されている任意の方法、アプリケーション、またはモジュールは、このようなコンピュータ読取可能媒体によって保存またはそうでなければ保持され、1つまたは複数の処理装置によって実行され得るコンピュータ読取可能/実行可能な命令を用いて実施され得る。
【0040】
特定の実施形態による分光システムの様々な構成部品が
図1に示されている。この実施形態では、分光システムは、キャビティリングダウン分光(「CRDS」)システム20であるが、電子分光システム、原子分光システムなど、任意の他の適切な分光システムであり得る。CO
2レーザー24および炭素-13 O
2レーザー28が提供される。CO
2レーザー24および炭素-13 O
2レーザー28は、調節可能な回折格子装置を用いて素早く選択され得る疑似的に均等に離間されたよく知られている一連の周波数で発するガス入り管レーザーである。ガス入り管レーザー技術は長い歴史を有し、正確に知られている周波数で赤外線放射を発生させる安定した堅牢な方法である。CO
2レーザー24と炭素-13 O
2レーザー28との両方が中赤外スペクトルでの光を発する。
【0041】
CO2レーザー24と炭素-13 O2レーザー28との各々は、レーザーキャビティの長さの調節を可能にするために出力カプラを移動させる1つまたは複数の圧電体と、キャビティの後における格子の角度を変化させることで、格子がどの波長を反射するかを調節するために格子のピッチを変化させるためのアクチュエータとを有する。レーザーキャビティの長さを調節することと、格子の角度を変化させることとの両方によって、レーザーは、特定の波長および所望のモード品質に非常に正確に調整させることができる。
【0042】
CO2レーザー24は第1のレーザービーム32を生成し、炭素-13 O2レーザー28は第2のレーザービーム36を生成する。望まれている光周波数に依存して、CO2レーザー24が調整されて第1のレーザービーム32を発生させる一方で、炭素-13 O2レーザー28が離調させられるか、炭素-13 O2レーザー28が調整されて第2のレーザービーム36を発生させる一方で、CO2レーザー24が離調させられるかのいずれかである。この手法では、最大でCO2レーザー24および炭素-13 O2レーザー28の一方だけが任意の特定の時間にビームを出力し、そのため第1のビーム32と第2のビーム36とは同時に組み合わせられない。中赤外線、明確には、長い波長の赤外線が、最も揮発性の有機化合物がこの範囲における光を吸収するため、光の種類として選択された。結果として、複数の揮発性有機化合物が1つのシステムによって測定できる。CO2レーザーが、この範囲において動作し、リングダウン分光のための十分なパワーおよび線幅細さを有する。2つのレーザーを使用することは、CRDSシステム20が気体試料を分析するために使用できる利用可能な波長の範囲および数を増加させる。
【0043】
第1のレーザービーム32は、光学搭載部における鏡40を介してビームスプリッタ44に向けて方向転換される。ビームスプリッタ44は、ある程度は反射性で、ある程度は透過性であり、第1のレーザービーム32および第2のレーザービーム36の各々を、サンプリングビーム48と、サンプリングビーム48と同じ特性を有し、サンプリングビーム48と同様の強度のものであり得る作動ビーム52との2つのビームへと分割する。
【0044】
サンプリングビーム48は高速赤外線検出器56によって受け入れられる。高速赤外線検出器56は、オシロスコープを用いてサンプリングビーム48の振幅およびうなり周波数を測定する。うなり周波数は、CO2レーザー24または炭素-13 O2レーザー28の最適未満の調整から生じるより高い次元のモードの存在を指し示す可能性がある。望ましくないうなり周波数の検出に応答して、対応するレーザー24または28は、強度を最大化しつつ、うなり周波数の振幅が最小化または排除されるまで調整される。うなり周波数の振幅が許容可能なレベル未満へと低減できない場合、レーザーは異なる波長へと調整され得る。
【0045】
作動ビーム52は第1の光変調器60へと続き、第1の光変調器60は作動ビーム52を光学搭載部における鏡64へと偏向する。鏡64は光を第2の光変調器68に向けて方向転換し、光変調器68はさらに作動ビーム52を焦点レンズ72へと偏向する。光変調器は、レーザーによって発生させられる光ビームの強度を制御するために使用される。ここでの実施形態では、第1の光変調器60および第2の光変調器68は、ブラッグセルとも称される音響光学変調器(「AOM: Acousto-Optic Modulator」)である。AOMは、ゲルマニウムまたはガラスなどの材料に連結された圧電変換器を使用するある種類の光変調器である。記載されている実施形態では、材料はゲルマニウムである。振動する電気信号が圧電変換器に適用されるとき、圧電変換器は振動し、材料に音波を作り出す。これらの音波は材料を膨張および圧縮し、それによって屈折率に周期的な振動を作り出し、ブラッグ回折を可能にする。音波の伝搬の軸に対して垂直な平面に対する一次ブラッグ角においてAOMに入る光は、最大効率におけるブラッグ角の2倍に等しい大きさで偏向されることになる。電気信号を消滅させると、材料のブラッグ回折特性を除去し、光を偏向させずに通過させ、偏向された光路に沿って光を効果的に減衰させる。AOMの副産物は、偏向された光の周波数が偏移させられることである。
【0046】
他の実施形態では、光変調器は、代替で電気光学変調器であってもよい。電気光学変調器は、材料の分子の位置、配向、および/または形を歪めるためにDCまたは低周波の電界を材料に適用する別の種類の光変調器である。結果として、屈折率が変えられ、出て行くビームの位相を、適用された界の関数として変化させる。ビームを偏光子に通すように送ることで、位相変調が強度変調へと変換される。他の方法では、位相変調器が、干渉計の分岐に配置されるとき、強度変調器として作用することができる。
【0047】
さらに、CRDSシステム20が2つの光変調器を有するとして記載されているが、他の実施形態では、CRDSシステムは、より少ない数またはより多くの数の光変調器を有してもよい。
【0048】
第1の光変調器60および第2の光変調器68は、作動ビーム52の強度を調節し、リングダウン事象の開始においてビームを消滅させるために減衰器として作用する。リングダウン事象は、リングダウンキャビティを照らす作動ビーム52の消滅、または、リングダウン室のためのレーザーの離調と、リングダウン室からの光強度データの回収とを含む。第1の光変調器60および第2の光変調器68はAOMであるため、音波(通常は高周波における音波)を使用して光を回析するために音響光学効果を用いる。第1および第2の光変調器の各々において、圧電変換器が、ゲルマニウムまたはガラスなどの材料に連結され、振動する電気信号が圧電変換器を振動させるために使用される。振動する圧電変換器は、材料を膨張および圧縮し、それによって屈折率に周期的な振動を作り出し、ブラッグ回折を可能にする音波を材料に作り出す。音波の伝搬の軸に対して垂直な平面に対するブラッグ角においてAOMに入る光は、最大効率におけるブラッグ角の2倍に等しい大きさで偏向されることになる。電気信号を消滅させると、材料のブラッグ回折特性を除去し、光を偏向させずに通過させ、偏向された光路に沿って光を効果的に消滅させる。したがって、音の強度が、偏向されたビームにおける光の強度を変調させるために使用され得る。
【0049】
第1の光変調器60および第2の光変調器68の各々によって偏向された光の強度は、光変調器60、68の最大偏向効率を表す約85%と、入力光強度の約0.1%以下の第1の光変調器60および第2の光変調器68の各々の減衰限度との間になり得る。ゲルマニウムに適用される音波が消されるとき、偏向されたビームは先の強度の約30dBまたは99.9%以上を失う。減衰限度は、入力された光強度が光変調器によってどれくらい低減され得るかの上限を意味する。
【0050】
光変調器は、副作用として、入力された光が第1の端で受け入れられるとき、第1のモードで光の周波数をドップラー偏移させ、入力された光が第2の端で受け入れられ、減衰パワーが同じであるとき、第1のモードと反対の第2のモードで光の周波数をドップラー偏移させる点において非対称である。しかしながら、光の周波数のドップラー偏移は、光が第1の端において入るか第2の端において入るかに拘わらず、同じ方向にある。
【0051】
従来のCRDSシステムは単一の光変調器を使用し、結果として、周波数が偏移させられた作動ビームを有する。これらの周波数偏移が光の周波数に対して概して小さく、光がキャビティにおける物質によって吸収される手法を変え得るが、この周波数偏移は分析の間に補正されることができる。回析がAOMの音波源に向かう場合、周波数偏移は下向きであり、回析が音波源から離れる場合、周波数偏移は上向きである。先に検討されているように、影響は最小である。
【0052】
第2の光変調器68によって偏向させられた作動ビーム52は、焦点レンズ72を介して焦点が合わせられる。レーザービーム、延いては作動ビーム52は、CO2レーザー24または炭素-13 O2レーザー28から進むにつれて、分岐し続ける。焦点レンズ72は作動ビーム52を元の焦点に戻すように合わせる。
【0053】
その後、光学搭載部の鏡76は作動ビーム52をリングダウン室80に向けて方向転換する。2つの鏡64、76は作動ビーム52の経路の長さで延びる。
【0054】
リングダウン室80は、リングダウンキャビティ84と称される共振キャビティを定める細長い管である。前キャビティ鏡88aおよび後キャビティ鏡88b(代替で、本明細書ではキャビティ鏡88と称される)が、リングダウンキャビティ84の長手方向の端に位置決めされている。キャビティ鏡88は、リングダウンキャビティ84の外側からキャビティ鏡88へと向けられる光と、リングダウンキャビティ84の中でキャビティ鏡88へと向けられる光との両方に対して高反射性である。結果として、作動ビーム52の一部分が前キャビティ鏡88aへと向けられ、約0.1%が前キャビティ鏡88aを通過し、リングダウンキャビティ84へ入り、約99.9%の作動ビーム52の大部分が鏡76に向けて戻るように反射させられる。
【0055】
キャビティ鏡88は、キャビティ鏡88の位置決めおよび配向を調節するために作動可能である鏡搭載部92に搭載される。具体的には、リングダウンキャビティ84の前に向かう前キャビティ鏡88aは、3つの機械化されたマイクロメータ96aを介して作動可能である鏡搭載部92に搭載される。リングダウンキャビティ84の後に向かう後キャビティ鏡88bは、光学的な位置合わせのために手作業で調節できる3つの圧電マイクロメータ96bを介して作動可能である鏡搭載部92、または、圧電駆動体でさらに調節させることができる圧電体で作動可能である鏡搭載部92に搭載される。代替の実施形態では、前キャビティ鏡88aおよび後キャビティ鏡88bは、圧電マイクロメータ、機械的マイクロメータなどを介してなど、任意の適切な手段によって作動させられ得る。
【0056】
キャビティ鏡88の各々の角度は、光ビームがリングダウンキャビティ84に入るときに光ビームが逸脱しないように十分に位置合わせされるために、変化させることができる。キャビティ鏡88のうちの1つが斜めである場合、光の一部はリングダウンキャビティ84の側面に反射させられ、光の強度が失われ、特には高次のモードが生じる。マイクロメータ96は、角度位置合わせに影響を与えることなくリングダウンキャビティ84の長さを変化させるように同時に調整され得る。これは、リングダウンキャビティ84に入る光の周波数においてリングダウンキャビティ84が共振するように、リングダウンキャビティ84の調整を可能にする。
【0057】
焦点レンズ72は、レーザー光の焦点をリングダウンキャビティ84の光学モードに合わせ、それによって、ビームの最小のウエストがリングダウンキャビティ84の最小のビームのウエストと同じ場所またはそのすぐ近くに位置決めされる。焦点レンズ72の位置は、レーザー波長の範囲の光学モードに合致するように調節され得る。
【0058】
液体窒素で冷却される検出器100の形態での光センサが、後キャビティ鏡88bを通って逃げる光を受け入れるために後キャビティ鏡88bの後に位置決めされている。液体窒素冷却検出器100は、リングダウンキャビティ84から逃げる光の強度を測定する。逃げる光の強度を測定するための他の種類のセンサが、液体窒素冷却検出器100の代わりに使用されてもよい。
【0059】
試料が吸着管からリングダウンキャビティ84へと充填される。吸着管は、サンプリングするガスおよび蒸気のための回収媒体である。吸着管は、典型的にはガラスまたはステンレス鋼から作られ、様々な種類の固体吸着材料(「吸着剤」)を収容することができる。典型的な吸着剤は、活性化された炭、シリカゲル、および有機多孔性ポリマを含み得る。吸着管における吸着剤は、興味のある化合物を捕らえるその能力に基づいて選択でき、興味ある化合物と反応せず、それによって、捕らえられた化合物を分析のために脱離させることができる。この実施形態では、吸着管は、試験のために気体試料を回収するために使用される熱脱離管104である。熱脱離管は、概してステンレス鋼から作られ、様々な種類の固体吸着材料を収容する。熱が、捕らえられた興味ある化合物を、熱脱離管における吸着剤から自由にするために使用できる。吸着管は、一方の方向において回収し、反対の方向において脱離することで使用されるように意図されている。吸着材料は、典型的には、吸着管の試料受入端に向けてより濃縮される。また、いくつかの吸着管は2つ以上の吸着剤を有し、その場合、異なる吸着剤を特定の順番で有し、吸着管を特定の方向で吸着および脱離することが望ましい可能性がある。
【0060】
吸着管の利点は、吸着管が試料を濃縮させることができることである。例えば、試料が呼気の試料である場合、吸着管は、より小さい他の分子に対して、興味のあるより大きい特定の分子のより高い濃度を試料が含むように設計され得る。より大きい分子を捕まえるために具体的に設計されることで、より小さい分子に対するより大きい分子の濃度は増加させることができ、それによって呼気の試料の分析を向上させることができる。CRDSシステム20の濃度の特徴は、具体的には、2つ以上の被検物質、具体的には、1つの知られている被検物質が試料において分析される場合に特に有利である。試料の分析が、具体的な被検物質についてのスペクトルの一部分だけを分析するのではなく、スペクトルを全体として分析するように実施される場合、測定されたスペクトルを支配または圧倒し得る他の構成物質を濾過し、結果の正確性を低下させることが望ましい。
【0061】
他の実施形態では、他の種類の吸着管および他の回収媒体が用いられてもよい。
【0062】
具体的な例では、試料は、患者から回収された人の呼気の試料である。試料回収の間、試験のための呼気に由来する分子を捕まえるために、人が熱脱離管104の試料受入端108へと呼吸し、人の呼気の一部が熱脱離管の排気端110を介して追い出される。人の呼気は、二酸化炭素、酸素、および水の分子、ならびに他のより大きい分子を含め、様々な構成物質を含む。これらのより大きい分子は、試料受入端108のより近くで概して捕まえられる興味のある特定の化合物を含み、二酸化炭素、酸素、および水などのより小さい分子は、より均一に分配されるか、排気端に向けてより濃縮させられるか、または吸着管を真っ直ぐ通過するかのいずれかである。結果として、興味のある化合物は、熱脱離管104の試料受入端108に向けてより濃縮される。他の適用では、試料は、熱脱離管104の一方または両方の端108、110を介して回収できる。
【0063】
空気圧試料充填システム112が、試料を熱脱離管104からリングダウンキャビティ84へと充填し、リングダウンキャビティ84を含めて試料充填システム112を排出するために使用される。試料の充填の間、試料充填システム112は、回収された試料でリングダウンキャビティ84を満たし(つまり、熱脱離管104から気体試料を脱離し、汚染物を導入することなく気体試料をリングダウンキャビティ84へと入れるために)、リングダウンキャビティにおける圧力を1気圧の目標試料圧力にし、温度を摂氏50℃にし、リングダウンキャビティ84を封止する。この実施形態では、測定された吸収スペクトルが比較される試料のセットについての吸収スペクトルは、結果に影響を与え得るこれらのパラメータの間の一貫性を確保するために、この圧力および温度において決定される。しかしながら、他の実施形態では、目標試料圧力および温度は、知られている吸収スペクトルおよび測定された吸収スペクトルについて、他の高さで固定されてもよい。試料の排出の間、試料充填システム112は、先に提供された試料を、リングダウンキャビティ84と、熱脱離管104からリングダウンキャビティ84へと試料を案内するための様々な導管とから一掃する。
【0064】
試料充填システム112は、窒素ガス源116を含む吸入部分を有する。この実施形態では、ガス源は窒素ガス源であるが、他の実施形態では、ガス源は適切なガスの任意の他の供給源であり得る。窒素ガス源116は、加圧される、または、1気圧の圧力を少なくとも上回る窒素ガスを加圧することができる非常に清浄な窒素ガスの形態でのガスの供給部である。本実施形態では、窒素ガス源116は、周囲圧力を5psi上回るソースガス圧力を有するが、リングダウンキャビティ84を、1気圧の目標試料圧力、または、分析が行われるいくらかの他の選択された大気圧まで加圧するのに圧縮が十分である限り、変化させられてもよい。図示されている実施形態では、窒素ガス源116は、液体窒素容器から蒸発する窒素ガスである。窒素ガス源116はガス供給導管120と流体連通しており、ガス供給導管120はさらに熱脱離管104と流体連通している。ガス吸入弁124aはガス供給導管120のガス吸入配管120aに沿って位置付けられている。補助ガス吸入弁124bが、他のガスの接続を可能にしているが、通常は用いられない。ガス吸入弁124aおよび補助ガス吸入弁124bはガス吸入配管120aと連通しており、ガス吸入配管120aはさらにガス供給導管120の経路配管120bに連結されている。
【0065】
熱脱離管104は、熱脱離管104の吸着剤から試料を自由にするために、熱脱離管104を加熱することができる加熱器132の中に位置付けられている。加熱器132は、熱脱離管全体を加熱するように位置付けられ得る、または代替で、吸着材料が位置させられている熱脱離管の部分だけを加熱するように位置付けられ得る。熱脱離管104の試料受入端108および排気端110が
図1において加熱器132から延び出して示されているが、他の実施形態では、加熱器132は、熱脱離管104の大体または全部を覆ってもよい。
【0066】
経路弁124eが経路配管120bに沿って位置付けられており、経路配管120bはガス供給導管120の管排気配管120cと流体連通している。経路弁124eは、管排気配管120cへの直接的なアクセスを可能または不可能にする。管排気配管120cは熱脱離管104の排気端110と流体連通している。管排気配管120cは前方管隔離弁124fを備える。したがって、ガス供給導管120はガス供給部116と熱脱離管104との間で延びている。
【0067】
試料供給導管121が熱脱離管104の試料受入端108およびリングダウンキャビティ84と流体連通している。後方管隔離弁124gは試料供給導管121の初期部分121aに沿って位置付けられている。キャビティ入口弁124dは試料供給導管121の二次部分121bに沿って位置付けられている。フィルタ130aは、キャビティ入口弁124dの前における試料供給導管121の二次部分121bに沿って位置付けられる。したがって、試料供給導管121は熱脱離管104とリングダウンキャビティ84との間で延びている。フィルタ130aは、汚染物がキャビティ鏡88に堆積し、反射と干渉する可能性があり、エアロゾル粒子によって散乱するなど、リングダウンキャビティにおける光強度を低下させる可能性があるリングダウンキャビティ84へのエアロゾルなどの汚染物の侵入を抑制する。
【0068】
迂回導管122がガス供給導管120および試料供給導管121と流体連通している。圧力センサ128が迂回導管122に沿って位置付けられている。迂回導管弁124cが圧力センサ128と試料供給導管121との間で迂回導管122に沿って位置付けられている。
【0069】
管排気導管123が経路弁124eと前方管隔離弁124fとの間でガス供給導管120の管排気配管120cと流体連通している。管排気導管123は試料排気弁124hと質量流制御装置136とを備える。
【0070】
試料充填システム112は、試料およびガスをリングダウンキャビティ84から排出するための排出サブシステムも有する。排出サブシステムは、リングダウンキャビティ84と流体連通している排出導管140を備える。キャビティ出口弁124iは排出導管140に沿って位置付けられている。圧力センサ144がキャビティ出口弁124iと真空遮断弁124jとの間で排出導管140に沿って位置付けられている。真空ポンプ148が排出導管140に沿って位置付けられており、真空遮断弁124jによって圧力センサ144から離間されている。真空ポンプ148は試料充填システム112のための排気出口を提供する。真空吸入弁124kが、真空遮断弁124jと真空ポンプ148との間で排出導管140と流体連通しているポンプ吸入配管150に沿って位置付けられている。真空吸入弁124kの向こう側のポンプ吸入配管150の反対の端は、周囲空気と流体連通している。フィルタ130bが、真空ポンプ148の作動と干渉する可能性があるポンプ吸入配管150における汚染物の侵入を抑制するために、真空吸入弁124kとポンプ吸入配管150の反対の端との間でポンプ吸入配管150に位置付けられている。
【0071】
弁124a~124kは、本明細書では代わりに弁124と称されることもある。
【0072】
試料供給導管121、キャビティ入口弁124d、排出導管140、およびキャビティ出口弁124iは、利便性のために、特定の場所においてリングダウンキャビティ84に連結されて示されているが、導管121、140および弁124d、124iがリングダウンキャビティ84に連結される場所が変わってもよいことは理解されるものである。好ましい構成では、試料供給導管121は、前キャビティ鏡88aに隣接のリングダウンキャビティ84の端に向けてリングダウンキャビティ84と連通しており、排出導管140は、後キャビティ鏡88bに隣接のリングダウンキャビティ84の端に向けてリングダウンキャビティ84と連通している。
【0073】
図2は、概して符号300での
図1の分光システムで分光を実施する方法を示している。
図1および
図2を参照すると、新たな試料がリングダウンキャビティ84に充填されるとき、新たな試料を含む熱脱離管104が試料充填システム112に連結される。具体的には、吸着管がガス源に連結され(310)、共振キャビティに連結される(320)。記載されている実施形態における吸着管は熱脱離管104であり、共振キャビティはリングダウンキャビティ84である。熱脱離管104は、充填される異なる試料を含む異なる熱脱離管を可能にするように取り外し可能および再連結可能である。
【0074】
排出過程の間、ガスは共振キャビティを通じて流される(330)。真空吸入弁124kは開けられ、真空ポンプ148は始動させられる。次に、真空吸入弁124kは閉じられ、真空遮断弁124j、キャビティ出口弁124i、キャビティ入口弁124d、迂回導管弁124c、および経路弁124eが連続して開けられる。この経路およびリングダウンキャビティ84に沿う配管の内容物は、真空ポンプ148によってCRDSシステム20から排出される。圧力センサ144は、システムが十分に排出されたときの決定、特には、圧力センサ128が真空ポンプ148から遮断されるときの決定を可能にする。試料充填システム112およびリングダウンキャビティ84が十分に排出されたことが決定されるとき、これらの同じ開いた弁124j、124i、124d、124c、および124eは逆の順番で閉じられる。その後、窒素充填の局面の間、弁124a、124c、124d、124i、および124jは、
図3Aに示されているように、窒素ガス源116からの窒素ガスを配管120a、122、および121に充填させるために開けられる。理解されるように、
図1に示された排出導管140は窒素ガスでも満たされる。同時に、経路弁124eおよび後方管隔離弁124gは閉状態にある。次に、窒素ガスは他の排出局面を用いてパージされる。窒素充填局面および排出局面は、配管を一掃するために望まれるときに繰り返され得る。したがって、CRDSシステム20から、先に試験された試料が排出される。
【0075】
次に、ガスが吸着管を通じて共振キャビティから追い払うように流される(340)。新たな試料の充填の間、熱脱離管104は、リングダウンキャビティ84へと充填される二酸化炭素および水の量が最小とされるように、二酸化炭素および水を熱脱離管104から除去するためにフラッシングされる。熱脱離管104をフラッシングするために、ガス吸入弁124a、迂回導管弁124c、後方管隔離弁124g、前方管隔離弁124f、および試料排気弁124hは、熱脱離管104を順行でフラッシングするように窒素ガスへの経路を与えるために、開けられる。同時に、経路弁124eおよびキャビティ入口弁124dは、
図3Bに示されているように窒素の流れを方向付けるために閉状態にある。熱脱離管104は、気体試料を伴う二酸化炭素および水の回収を抑制するために選択されるが、一般的に、熱脱離管104にはなおもいくらかの二酸化炭素および水がある。
【0076】
500mlの窒素ガスが、熱脱離管104に残っている二酸化炭素および水を元の試料から追い出すために、熱脱離管104に通される。質量流制御装置136は、窒素ガスと、含有された二酸化炭素および水とを、特定の流量で放出させることができる。ここでの構成では、この流量は500ml/分である。次に、すべての弁124が閉じられる。
【0077】
二酸化炭素および水が熱脱離管104から除去されると、試料充填システム112は、試料充填システム112配管において導入された窒素ガスを除去するために、先に検討されたのと同じ処理を用いて再び排出される。
【0078】
したがって、試料充填システム112は、試料がリングダウンキャビティ84へと充填される前に、できるだけ多くの二酸化炭素および水を熱脱離管104における試料から除去することができる。これは、水および二酸化炭素が、レーザー24、28によって発生させられ得るような中赤外線および長波長赤外線の波長を吸収するため、特に興味のあることである。
【0079】
次に、熱脱離管104を包囲する加熱器132が、熱脱離管104の中の試料を熱的に脱離させるために、熱脱離管104を目標温度へと加熱する(350)。
【0080】
ガスが吸着管を通じて共振キャビティへと流される(360)。熱脱離管104が十分に温まると、CRDSシステム20は試料充填モードへと切り替わる。そのため、ガス入口弁124a、経路弁124e、前方管隔離弁124f、後方管隔離弁124g、およびキャビティ入口弁124dが、窒素ガス源116から、興味のある脱離された化合物を有する熱脱離管104を通じ、リングダウンキャビティ84へと、窒素ガスに直接的な経路を提供するために開けられる。同時に、迂回導管弁124c、試料排気弁124h、およびキャビティ出口弁124iは、
図3Cに示されているような経路に沿って窒素ガスを押し進めるために閉じられる。
【0081】
次に、圧力が圧力センサを介して測定される(370)。リングダウンキャビティ84の中に1気圧の目標試料圧力を達成することは、回収および分析された参照データのすべてがこの圧力の高さにあるため望ましく、それによって結果が再現可能であることを確保する。
【0082】
図示および記載されている実施形態では、ガス吸入弁124aはシステムによってトグルで開閉される。システムは、リングダウンキャビティ84と、リングダウンキャビティ84と流体連通しており、圧力センサ128が沿って位置させられている導管とにおいて、圧力が一様になるのを待つ。圧力センサ128は、弁124a、124e、124f、124g、および124dが開けられ、弁124cおよび124hが閉じられ、それによって試料による汚染を防止するとき、熱脱離管104の上流に位置させられる。結果として、特に吸着管がガスを限られた速さでそれ自体を通過させ、それによって一様になる過程を遅くさせるため、圧力がリングダウンキャビティ84と圧力センサ128との間で一様になることは短い時間の期間を取る可能性がある。他の実施形態では、絞り弁など、他の種類の弁が用いられてもよい。
【0083】
次に、圧力が試料目標圧力にあるかどうかが決定される(380)。圧力センサ128が安定すると、圧力の読取りが1気圧の目標試料圧力未満である場合、ガス吸入弁124aが再びトグルで開閉されて、一様化の後、圧力センサ128の圧力の読取りが1気圧の目標試料圧力になるまで、またはそれに十分に近くなるまで、過程を繰り返す。リングダウンキャビティ84における圧力レベルが目標試料圧力またはその十分に近くにあることを圧力センサ128が示すとき、具体的には少なくとも弁124aおよび124dといった弁が閉じられる。
【0084】
目標試料圧力を達成または実質的に達成すると、後で記載されているように、分光分析が試料に実施される(390)。
【0085】
複数の温度において脱離することが望まれる場合、真空吸入弁124kが開けられ、真空ポンプ148が始動させられ、真空吸入弁124kが再び閉じられ、真空遮断弁124jおよびキャビティ出口弁124iは、リングダウンキャビティ84の中身を排出するために連続して開けられる。次に、脱離過程が繰り返される前にキャビティ出口弁124iが閉じられる。
【0086】
完全な排出は、そうでない場合に失われることになるいくらかの気体試料が後方管隔離弁124gとキャビティ入口弁124dとの間で試料供給導管121に沿ってまだあるため、複数の脱離の間には概して実施されない。
【0087】
気体試料を含む固定された容積のリングダウンキャビティをこの手法で所望の圧力の高さまで加圧することで、化合物が付着するリングダウンキャビティの中の表面積は、キャビティの中の圧力を所望の高さへと上昇させるために使用され得る可変容積リングダウンキャビティと比較して、小さくさせることができる。
【0088】
導管120、121、122、および123と、弁124と、リングダウンキャビティ84とは、不活性である内部表面を有する。再び
図1を参照すると、不活性被覆86がリングダウンキャビティ84の内部表面に適用されて示されている。不活性被覆86は、シリカに基づく材料または石英材料など、任意の適切な不活性物質から作ることができる。
【0089】
図4Aは、試料供給導管121が迂回導管122と交わる試料充填システム112の一部分を示している。導管121、122は、その内側または内部表面に不活性被覆152を有する。例えば、不活性被覆は、シリカに基づく材料から作られ得る。さらに、弁124の各々の内部表面は不活性である。例えば、弁124は、封止のために、VitonなどのFKMを用いてもよい。代替の実施では、弁は銅圧縮リングなどを使用してもよい。
【0090】
図4Bは、リングダウンキャビティ84とキャビティ出口弁124iとの間の排出導管140の一部分を示している。排出導管140の内部表面およびキャビティ出口弁124iは、シリカに基づく材料など、不活性被覆152で被覆されている。キャビティ出口弁124iは、封止のために、VitonなどのFKMを用いてもよい。代替の実施では、弁は銅圧縮リングなどを使用してもよい。排出導管およびキャビティ出口弁124iに存在する任意の分子が、可及的にはリングダウンキャビティ84へと戻るように進む可能性があるため、これらの要素の内部表面に付着するこのような分子の可能性を低減することが望ましい。
【0091】
図4Cは、リングダウンキャビティ84を定める内部表面87を有するリングダウン室80の一部分を示している。不活性被覆86はリングダウン室80の内部表面87を提供している。
【0092】
試料充填システム112およびリングダウンキャビティ84の内部表面における不活性材料の使用は、リングダウンキャビティ84、導管120、121、122、弁124などに残る試料の量を少なくする。結果として、先に分析された試料は、試料充填システム112およびリングダウンキャビティ84の中の表面により付着しにくくなり、したがって、剥がれやすくなり、後続の試料で分析されることで、後続の試料の結果をより汚染しにくくなる。
【0093】
図5は、同じく図示されているCRDSシステム20の様々な構成部品のための電子制御サブシステム200の概略図である。すべての線は電気信号または電子信号を表しており、矢印は一方向の通信、電圧の設定などを表しており、矢印でない線は双方向通信を表している。
【0094】
1つまたは複数の処理装置を含むコンピュータ204が、
図1および
図3A~
図3Cに示されている様々な構成部品の機能を制御する制御モジュールとして作用する。コンピュータ204は、1つまたは複数の処理装置205と、本明細書に記載されているように、処理装置205によって実行されるとき、処理装置205にCRDSシステム20の他の構成部品を指図させるコンピュータ実行可能命令を保存する保存装置206とを有する。
【0095】
RF駆動部208の対が、CO2レーザー24および炭素-13 O2レーザー28に電力供給するためにおおよそ40MHzの信号を送る。レーザー24、28の各々は、出力カプラおよび回析格子を使用して調整される。格子アクチュエータ212が回析格子を作動(回転)させる。他のアクチュエータが出力カプラを作動(並進)させる。各々の出力カプラは1000Vの出力カプラ圧電体216によって駆動される。出力カプラ圧電体216に電力供給する2チャンネル高電圧増幅器220は0Vと1000Vとの間で調節可能である。高電圧増幅器220は、コンピュータ204におけるデータ取得(「DAQ: Data Acquisition」)カード224からのアナログ出力信号で設定される。DAQは、0Vから10Vの間の出力を生成し、高電圧増幅器220は信号を100倍に増幅して0Vから1000Vの信号を生成し、出力カプラ圧電体216に電力供給する。格子について角度を変える各々の格子アクチュエータ212は、RS-232を介してコンピュータ204によって命令が与えられるアクチュエータ駆動部228によって駆動される。各々の格子アクチュエータ212は何ミリメートルも移動させられ、この移動はレーザー24、28のピッチ角へと変換される。
【0096】
試料充填システム112の圧力センサ128、144からのデータ信号はRS-232を通じて受信される。
【0097】
高速赤外線検出器56は、レーザー24、28を調整するために使用されるビート信号の振幅および周波数を読み取るために使用できる小さい増幅器232およびオシロスコープ236に接続される。
【0098】
熱脱離管の加熱器132のための温度制御装置240は、RS-232を介してコンピュータ204によって制御される。管加熱器132は、温度センサと、温度センサの周りに巻き付けられた加熱テープを有するアルミニウム片とを備える。加熱テープと温度センサとは、PID(比例・積分・微分)制御装置である温度制御装置240に両方とも接続されている。制御装置は、RS-232を介して主コンピュータ204に温度を設定して復唱する。
【0099】
中継基板244がコンピュータ204に接続され、ソレノイド弁124および真空ポンプ148の各々をオンおよびオフするために使用される。
【0100】
3チャンネル圧電駆動体248が、リングダウンキャビティ84の長さを調節するためにマイクロメータ96bを作動させる圧電アクチュエータ252を駆動する。各々の通路は、RS-232を通じた圧電駆動体への通信部と、DAQカード224からのアナログ入力部との2つの構成部品を有する。他の実施形態では、2つ以上の圧電駆動体が用いられてもよい。
【0101】
各々の光変調器60、68は、おおよそ40MHzの信号を送るRF駆動部256で駆動される。RF駆動部256の周波数を変化させることで、所与の光学波長についてのブラッグ角を変化させる、または、所与または固定のブラッグ角が調和される光学波長を変化させる。RF駆動部256が特定の周波数に調整され、フルパワーに設定される場合、作動ビーム52のほとんど(約85%)は通過する。80%、70%に調節される場合、光変調器60、68は減衰することになる。RF駆動部256がゼロに設定される場合、光変調器60、68は完全に止まる。RF駆動部の周波数は、RS232を介して構成部品を通じて設定される。アナログおよびデジタルの構成部品は、RF駆動部256の振幅およびオン/オフ状態を設定することができる。具体的には、DAQカード224は信号をタイミング回路260に送り、タイミング回路260はさらに、RF駆動部の振幅を可能および設定するために必要とされる4つの必要信号を生成する。タイミング回路260は、定常状態条件で、または、タイミング回路260が4つの電圧をゼロに設定し、所定の時間の長さの後に以前の電圧レベルに戻るリングダウンを引き起こす条件とで動作することができる。
【0102】
デジタイザ264を介してタイミング回路260を制御するDAQカード224からのデジタル出力(「DO」)がある。
【0103】
コンピュータ204は、測定圧力を圧力センサ128から受信するために圧力センサ128と、ガス源116と熱脱離管104との間の流体連通を制御するガス吸入弁124aとに連結される制御システムである。コンピュータ204は試料充填モードに条件付けされ、試料充填モードでは、コンピュータ204は、圧力センサ128によって測定された圧力が目標試料圧力になるまで、ガス源116からより多くのガスを導入するために、ガス吸入弁124aを繰り返し開閉するように制御する。
【0104】
再び
図1を参照すると、気体試料がリングダウンキャビティ84に充填されると、1つのレーザー24または28が特定の波長に調整され、その光が第1の光変調器60を通るように向けられ、鏡64によって反射され、第2の光変調器68に通され、焦点レンズ72によって焦点が合わせられ、鏡76によってリングダウン室80へと反射される。光変調器60、68は、作動ビーム52の強度を変調させるために作動ビーム52をいくらか減衰させる。
【0105】
作動ビーム52が前キャビティ鏡88aに到達するとき、約0.1%の一部分が前キャビティ鏡88aを突き抜けてリングダウンキャビティ84に入る。約99.9%の作動ビームの大部分は、最初に、作動レーザー24または28への同じ経路に沿って戻るように反射される。
【0106】
最初に、リングダウンキャビティ84は照らされていない。光がリングダウンキャビティ84に入り、リングダウンキャビティ84における光の大部分は2つのキャビティ鏡88の間で反射させられるため、リングダウンキャビティ84における光の量またはパワーは、さらなる光が作動ビーム52を介して外部から導入されるにつれて増加し始める。光の特定の一部分はキャビティ鏡88を過ぎて漏れる。リングダウンキャビティ84を光で「満たす」のは時間の期間が掛かり、これは、キャビティ長さが、調整されたレーザーについてのリングダウンキャビティ84の隣接の共振長さに等しいときに起こり得る。この時点において、入ってくる光と漏れとの間には平衡がある。この平衡が達成されると、レーザー24、28は、消滅させられる、または、光変調器60、68を介してリングダウンキャビティ84に入ることから停止させられる。他の実施形態では、レーザーは、構成されたキャビティ長さについて共振しないように離調させられ得る。
【0107】
タイミング回路260は、光ビームの強度を第1の光変調器60から低減するために光変調器60、68の減衰限度またはその近くに光ビームを減衰するように、第1の光変調器60および第2の光変調器68に同時に指図する。CRDSシステム20では、両方の光変調器60、68を同時に止めるように指図することで、短い時間の長さの間に第1の光変調器60によって偏向される光の量は、第2の光変調器68が止められるため、第2の光変調器68によって著しく低減される。
【0108】
リングダウンキャビティ84に提供されるレーザー光の消滅はリングダウン事象を開始させることができる。リングダウンキャビティ84に提供される共振レーザー光は、例えばレーザーを離調させることで、代替の実施形態において他の手法で消滅されてもよい。
【0109】
リングダウン事象の間、コンピュータ204は、リングダウンキャビティ84の後端から出る液体窒素冷却検出器100によって報告される光強度データを登録する。リングダウン事象は、ここでの構成では約10マイクロ秒にわたって続くが、他の実施形態ではより長い時間またはより短い時間にわたって続いてもよい。光減衰時間は約2マイクロ秒である。
【0110】
リングダウン事象が引き起こされたときから約100マイクロ秒後に、タイミング回路260は、リングダウンキャビティ84へと作動ビーム52を通過させることを再び開始するために光変調器60、68を指図する。次に、十分なリングダウンデータが回収されたかどうかが決定される。CRDSシステム20は、この実施形態では、500回のリングダウン事象からデータを回収するように構成されている。500回のリングダウン事象からのデータが捕らえられた場合、コンピュータ204は、圧電駆動体248の動作を停止し、次にリングダウン事象データから減衰率を決定する。代わりに、さらなるリングダウンデータが回収されることが決定される場合、コンピュータ204は、後キャビティ鏡88bを作動させるように圧電駆動体248に指図し続ける。
【0111】
試料についての吸収スペクトルを発生させるために、複数の周波数の光について処理が繰り返される。例えば、CO2レーザー24によって発生させられる光は、ある範囲の周波数についての吸収係数を提供する。同様に、吸収係数が、炭素-13 O2レーザー28からの光についてのある範囲の周波数について発生させられ得る。この手法では、吸収スペクトルが試料について発展させられ得る。
【0112】
先に記載されている実施形態では、光源が、中赤外線範囲での光を生成する2つのレーザーであるが、他の光源が用いられ得ることは理解されるものである。例えば、可視スペクトルでの光を生成するレーザー、または近赤外線のレーザーが用いられてもよい。さらに、いくつかの状況では、CRDSシステムは、作動ビームを発生させるために、1つだけのレーザー、または3つ以上のレーザーを備え得る。
【0113】
先に記載されている実施形態では、回収媒体は吸着管であり、具体的には熱脱離管であるが、他の種類の回収媒体が用いられてもよい。例えば、固相微量抽出(「SPME」)装置がシステムと共に用いられてもよい。
【0114】
電気光学変調器が音響光学変調器の代わりに使用されてもよい。
【0115】
音響光学変調器は、作動ビームの周波数が上または下に偏移されるように構成され得る。音響光学変調器によってもたらされる正味の周波数の偏移が、反射した光が発生させられるレーザー光の帯域幅から外れるように、レーザーによって発生させられる作動ビームの周波数から相当に離れるように作動ビームの周波数を偏移させる限り、反射した光と発生させられた作動ビームとの間の干渉の大きさは最小限とされ得る。
【0116】
他の実施形態では、3つ以上の光変調器が、さらなる消滅能力を提供して、リングダウン事象の開始において作動ビームをより素早く消滅させるために、CRDSシステムに用いられてもよい。さらに、さらなる実施形態では、1つだけの光変調器が用いられてもよい。
【0117】
1つまたは複数の焦点レンズが他の実施形態では用いられてもよく、レーザーの各々の波長のモード一致を可能にするようにレンズの再位置決めを可能にするために並進させられ得る。
【0118】
同じ手法が、他の種類の共振キャビティのために、特には、光学共振キャビティのために採用されてもよい。
【0119】
他の種類の事象は、キャビティ長さが具体的に選択された波長についてのキャビティの共振長さに近接するときに引き起こされ得る。
【0120】
気体試料の分析は、他の実施形態では1気圧以外の圧力の高さで実施され得る。したがって、吸収スペクトルの幅が変化してもよい。
【0121】
特定の利点が先に列挙されたが、様々な実施形態は、列挙された利点のうちのいくつか、もしくは全部を含んでもよく、またはいずれも含まなくてもよい。
【0122】
先に記載されている実施形態では、共振キャビティがリングダウンキャビティであるが、他の実施形態では、他の種類の共振キャビティが採用されてもよい。
【0123】
当業者は、なおもより多くの代替の実施および変形が可能であることと、上記の例は1つまたは複数の実施の単なる例示であることとを理解するものである。そのため、範囲は、本明細書に添付される特許請求の範囲によって限定されるだけである。
【符号の説明】
【0124】
20 CRDSシステム
24 CO2レーザー
28 炭素-13 O2レーザー
32 第1のレーザービーム
36 第2のレーザービーム
40 鏡
44 ビームスプリッタ
48 サンプリングビーム
52 出力ビーム
56 高速赤外線検出器
60 第1の光変調器
64 鏡
68 第2の光変調器
72 焦点レンズ
76 鏡
80 リングダウン室
84 リングダウンキャビティ
86 不活性被覆
87 内部表面
88 キャビティ鏡
88a 前キャビティ鏡
88b 後キャビティ鏡
92 鏡搭載部
96 マイクロメータ
96a 機械化されたマイクロメータ
96b 圧電マイクロメータ
100 液体窒素冷却検出器
104 熱脱離管
108 試料受入端
110 排気端
112 試料充填システム
116 窒素ガス源
120 気体供給導管
120a ガス吸入配管
120b 経路配管
120c 管排気配管
121 試料供給導管
121a 初期部分
121b 二次部分
122 迂回導管
123 管排気導管
124 弁
124a ガス吸入弁
124b 補助ガス吸入弁
124c 迂回導管弁
124d キャビティ入口弁
124e 経路弁
124f 前方管隔離弁
124g 後方管隔離弁
124h 試料排気弁
124i キャビティ出口弁
124j 真空遮断弁
124k 真空吸入弁
128 圧力センサ
130a、130b フィルタ
132 加熱器
136 質量流制御装置
140 排出導管
144 圧力センサ
148 真空ポンプ
150 ポンプ吸入配管
152 不活性被覆
200 電子制御サブシステム
204 コンピュータ
205 処理装置
206 保存装置
208 RF駆動部
212 格子アクチュエータ
216 出力カプラ圧電体
220 高電圧増幅器
224 DAQカード
228 アクチュエータ駆動部
232 増幅器
236 オシロスコープ
240 温度制御装置
244 中継基板
248 3チャンネル圧電駆動体
252 圧電アクチュエータ
256 RF駆動部
260 タイミング回路
264 デジタイザ
300 分光を実施する方法
310 ガス源を吸着管に連結する
320 吸着管を共振キャビティに連結する
330 共振キャビティを通じてガスを流す
340 吸着管を通じて共振キャビティから追い払うようにガスを流す
350 吸着管を目標温度へと加熱する
360 吸着管を通じて共振キャビティへとガスを流す
370 圧力センサを介して圧力を測定する
380 圧力が目標試料圧力にあるか?
390 分光分析を充填された試料に実施する