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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】固体分散体およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5025 20060101AFI20241213BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241213BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241213BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20241213BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241213BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241213BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
A61K31/5025
A61K47/38
A61K47/18
A61K47/04
A61K9/14
A61K9/20
A61P35/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021570912
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2020093206
(87)【国際公開番号】W WO2020239065
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】201910468254.9
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】周 先強
(72)【発明者】
【氏名】杜 振興
(72)【発明者】
【氏名】王 捷
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505029(JP,A)
【文献】特表2012-522791(JP,A)
【文献】特表2017-522302(JP,A)
【文献】特表2019-500357(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105640890(CN,A)
【文献】国際公開第2019/007317(WO,A1)
【文献】Journal of Pharmaceutical Sciences,2013年,Vol.102, No.3,pp.967-981
【文献】European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics,2013年,Vol.85, No.3,pp.799-813
【文献】ファルマシア,2016年,Vol.52, No.5,pp.403-406
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体分散体の調製方法であって、担体材料であるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、および活性成分である(R)-4-アミノ-1-(1-(ブタ-2-インオイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オンまたはその薬学的に許容できる塩を良溶媒に溶解して溶液を得る工程、および得られた溶液を貧溶媒に添加する工程(ここで、貧溶媒のpHは2.0~3.0であり、良溶媒はN,N-ジメチルアセトアミドであり、貧溶媒は、水である)を含む方法。
【請求項2】
固体の析出のための温度が、0~40℃から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固体分散体の粒径D90が、50μm~2000μmであり;および/または、固体分散体の粒径D50が、20μm~500μmであり;および/または、固体分散体の粒径D10が、1μm~100μmである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医薬の調製の分野に属し、特に固体分散体、その調製方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
式Iで示される化合物(R)-4-アミノ-1-(1-(ブタ-2-インオイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オンは、標的特異性が良く、キナーゼに対する選択性が高いBTK阻害物質である。これは、BTKのリン酸化を阻害し、BCRシグナル伝達経路をダウンレギュレートすることにより、B細胞腫瘍の増殖および遊走を選択的に阻害することができる。最近の臨床試験では、この阻害物質は、優れた薬力学的活性があることが示されている:
【化1】
【0003】
式Iで示される化合物は溶解度の低い活性物質であり、その創薬可能性は薬学研究者により、深く研究され、解決される必要がある。WO2019007317には、式Iで示される化合物を含有する固体分散調製物が開示されており、それは、固体分散技術を応用して、化合物を医薬として製剤化した後に、溶解の問題を解決している。固体分散体の調製方法としては、溶融法、溶剤法、溶剤-溶融法、溶剤噴霧乾燥法、または粉砕法がある。抗溶媒法は、活性物質を高温に暴露しない最もマイルドな固体分散体の調製方法であり、各種の熱に不安定なまたは揮発性の薬物に適しており、実施も簡単である。
【0004】
しかしながら、固体分散体の調製中、特に抗溶媒法を使用する場合、乳化が起こることが多く、これは、固体分散体の調製に影響を及ぼすことで、バッチ間の活性成分含有量の不均一をもたらし、それによって有効性および安全性に影響を与える。
【0005】
一般的な解乳化(乳化破壊)法としては、静的方法、高電圧電界法、化学的解乳化法(塩分別法、凝集法、塩分別-凝集法など)、遠心分離法、超濾過法および真空分離法がある。各解乳化法にはそれぞれに長所があるが、短所も伴っている。塩分別法などの化学的解乳化法では、追加の化学試薬としての無機塩を乳化システムに導入する必要があるため、その後の処理コストが高くなる。同時に、解乳化法の選択には、製品そのものの特性も考慮する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、固体分散体の調製方法であって、担体材料および活性成分を良溶媒に溶解して溶液を得る工程、得られた溶液を貧溶媒に添加する工程、およびpHを1.0~6.0に調整する工程を含むか;あるいは、担体材料および活性成分を良溶媒に溶解して溶液を得る工程、および得られた溶液を貧溶媒に添加する工程(ここで、貧溶媒のpHは1.0~6.0である)を含む方法を提供する。
【0007】
代替の実施態様において、pH値は、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0またはいずれかの2つの値の間のいずれかの値であってもよく、好ましくは、pHは2.0~4.0である。
【0008】
貧溶媒または結晶化溶液のpHを6.0未満に制御することにより、抗溶媒法中の上記の乳化の問題を効果的に回避することができる。塩分別法および凝集法などの追加的な解乳化法を行う必要がないため、その後の濾過または洗浄プロセスが容易になり、バッチ間の活性成分含有量が均一な試料が得られる。
【0009】
また、本開示の方法は、濾過工程、洗浄工程または乾燥工程をさらに含む。
【0010】
いくつかの実施態様において、良溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトン、エタノール、テトラヒドロフランおよびメタノールからなる群から選択される少なくとも1つであり、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルアセトアミドであり;貧溶媒は、ジエチルエーテル、n-ヘキサン、石油エーテルおよび水からなる群から選択される少なくとも1つ、例えば水とエーテル、n-ヘキサンおよび石油エーテルの1つまたはそれ以上との混合溶液である。
【0011】
いくつかの実施態様において、担体材料および活性成分またはその薬学的に許容できる塩は良溶媒のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、ここで、貧溶媒の水のpHは1.0~6.0である。
【0012】
いくつかの実施態様において、担体材料および活性成分またはその薬学的に許容できる塩は良溶媒のN,N-ジメチルアセトアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、ここで、貧溶媒の水のpHは1.0~6.0である。
【0013】
いくつかの実施態様において、担体材料および活性成分またはその薬学的に許容できる塩は良溶媒のジメチルスルホキシドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、ここで、貧溶媒の水のpHは1.0~6.0である。
【0014】
さらに、pHの調整に使用される試薬は、塩酸、硫酸、酢酸およびリン酸からなる群から選択される少なくとも1つであり、好ましくは硫酸または塩酸である。
【0015】
別の態様において、滴下添加(すなわち、貧溶媒への良溶媒の添加)の速度も、結晶化の質、例えば析出された固体粒子の大きさおよび均一性にある程度影響する。
【0016】
いくつかの実施態様において、滴下添加(貧溶媒への良溶媒の添加)の速度は、1~2500g/min、例えば1~2250g/min、1~2000g/minであり得る。滴下添加の速度は、調製の必要に応じて調整され得る。
【0017】
他の実施態様において、本開示の貧溶媒への添加は撹拌操作を伴い、撹拌速度は、20~1000rpmから選択され、非限定的な例としては、100rpm、110rpm、120rpm、130rpm、140rpm、150rpm、160rpm、170rpm、180rpm、190rpm、200rpm、210rpm、220rpm、230rpm、240rpm、250rpm、260rpm、270rpm、280rpm、290rpm、300rpm、310rpm、320rpm、330rpm、340rpm、350rpm、360rpm、370rpm、380rpm、390rpm、400rpm、410rpm、420rpm、430rpm、440rpm、450rpm、460rpm、470rpm、480rpm、490rpm、500rpm、510rpm、520rpm、530rpm、540rpm、550rpm、560rpm、570rpm、580rpm、590rpm、600rpm、610rpm、620rpm、630rpm、640rpm、650rpm、660rpm、670rpm、680rpm、690rpm、700rpm、710rpm、720rpm、730rpm、740rpm、750rpm、760rpm、770rpm、780rpm、790rpm、800rpm、810rpm、820rpm、830rpm、840rpm、850rpm、860rpm、870rpm、880rpm、890rpm、900rpm、910rpm、920rpm、930rpm、940rpm、950rpm、960rpm、970rpm、980rpm、990rpm、1000rpmまたはいずれかの2つの値の間のいずれかの値を含み、好ましくは100~600rpmである。
【0018】
本開示の固体分散体の調製方法は、いずれかの不溶性固体に適用され得る。代替の実施態様において、活性成分は、(R)-4-アミノ-1-(1-(ブト--イノイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オンまたはその薬学的に許容できる塩である。
【0019】
さらに、担体材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0020】
いくつかの実施態様において、担体材料のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよび活性成分は、良溶媒のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、ここで、貧溶媒の水のpHは1.0~6.0である。
【0021】
いくつかの実施態様において、担体材料のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよび活性成分は、良溶媒のN,N-ジメチルアセトアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、ここで、貧溶媒の水のpHは1.0~6.0である。
【0022】
いくつかの実施態様において、担体材料のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよび活性成分は、良溶媒のジメチルスルホキシドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、ここで、貧溶媒の水のpHは1.0~6.0である。
【0023】
いくつかの実施態様において、担体材料のポリビニルピロリドンおよび活性成分は、良溶媒のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、ここで、貧溶媒の水のpHは1.0~6.0である。
【0024】
いくつかの実施態様において、担体材料のポリビニルピロリドンおよび活性成分は、良溶媒のN,N-ジメチルアセトアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、ここで、貧溶媒の水のpHは1.0~6.0である。
【0025】
いくつかの実施態様において、担体材料のポリビニルピロリドンおよび活性成分は、良溶媒のジメチルスルホキシドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、ここで、貧溶媒の水のpHは1.0~6.0である。
【0026】
いくつかの実施態様において、担体材料のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよび活性成分は、良溶媒のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、ここで、貧溶媒の水のpHは1.0~6.0である。
【0027】
いくつかの実施態様において、担体材料のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよび活性成分は、良溶媒のN,N-ジメチルアセトアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、ここで、貧溶媒の水のpHは1.0~6.0である。
【0028】
いくつかの実施態様において、担体材料のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよび活性成分は、良溶媒のジメチルスルホキシドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、ここで、貧溶媒の水のpHは1.0~6.0である。
【0029】
いくつかの実施態様において、担体材料のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよび活性成分は、良溶媒のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、pHは1.0~6.0に調整される。
【0030】
いくつかの実施態様において、担体材料のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよび活性成分は、良溶媒のN,N-ジメチルアセトアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、pHは1.0~6.0に調整される。
【0031】
いくつかの実施態様において、担体材料のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよび活性成分は、良溶媒のジメチルスルホキシドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、pHは1.0~6.0に調整される。
【0032】
いくつかの実施態様において、担体材料のポリビニルピロリドンおよび活性成分は、良溶媒のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、pHは1.0~6.0に調整される。
【0033】
いくつかの実施態様において、担体材料のポリビニルピロリドンおよび活性成分は、良溶媒のN,N-ジメチルアセトアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、pHは1.0~6.0に調整される。
【0034】
いくつかの実施態様において、担体材料のポリビニルピロリドンおよび活性成分は、良溶媒のジメチルスルホキシドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、pHは1.0~6.0に調整される。
【0035】
いくつかの実施態様において、担体材料のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよび活性成分は、良溶媒のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、pHは1.0~6.0に調整される。
【0036】
いくつかの実施態様において、担体材料のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよび活性成分は、良溶媒のN,N-ジメチルアセトアミドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、pHは1.0~6.0に調整される。
【0037】
いくつかの実施態様において、担体材料のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよび活性成分は、良溶媒のジメチルスルホキシドに溶解され、得られた溶液は貧溶媒の水に添加され、pHは1.0~6.0に調整される。
【0038】
いくつかの実施態様において、本開示の方法は以下の工程を含む:
a)担体材料および、活性成分である(R)-4-アミノ-1-(1-(ブタ-2-インオイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オンまたはその薬学的に許容できる塩を、良溶媒に溶解する工程(ここで、良溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトン、エタノール、テトラヒドロフランおよびメタノールからなる群から選択される少なくとも1つである)、
b)工程a)で得られた溶液を貧溶媒に添加し、pHを1.0~6.0に調整する工程(ここで、貧溶媒は、ジエチルエーテル、n-ヘキサン、石油エーテルおよび水からなる群から選択される少なくとも1つである)。
【0039】
他の実施態様において、本開示の方法は以下の工程を含む:
a)担体材料および、活性成分である(R)-4-アミノ-1-(1-(ブタ-2-インオイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オンまたはその薬学的に許容できる塩を、良溶媒に溶解する工程(ここで、良溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトン、エタノール、テトラヒドロフランおよびメタノールからなる群から選択される少なくとも1つである)、
b)工程a)で得られた溶液を貧溶媒に添加する工程(ここで、貧溶媒は、水ならびに水とエーテル、n-ヘキサンおよび石油エーテルの1つまたはそれ以上との混合溶液からなる群から選択され、貧溶媒のpHは1.0~6.0である)。
【0040】
さらに、本方法は、濾過工程、洗浄工程または乾燥工程をさらに含む。
【0041】
他の実施態様において、本開示の方法は、噴霧乾燥工程をさらに含む。
【0042】
他の実施態様において、固体分散体の粒径D90は50μm~2000μmである。
【0043】
いくつかの実施態様において提供される固体分散体の粒径D90は、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm、250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm、350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm、430μm、440μm、450μm、460μm、470μm、480μm、490μm、500μm、510μm、520μm、530μm、540μm、550μm、560μm、570μm、580μm、590μm、600μm、610μm、620μm、630μm、640μm、650μm、660μm、670μm、680μm、690μm、700μm、710μm、720μm、730μm、740μm、750μm、760μm、770μm、780μm、790μm、800μm、810μm、820μm、830μm、840μm、850μm、860μm、870μm、880μm、890μm、900μm、910μm、920μm、930μm、940μm、950μm、960μm、970μm、980μm、990μm、1000μm、1010μm、1020μm、1030μm、1040μm、1050μm、1060μm、1070μm、1080μm、1090μm、1100μm、1110μm、1120μm、1130μm、1140μm、1150μm、1160μm、1170μm、1180μm、1190μm、1200μm、1210μm、1220μm、1230μm、1240μm、1250μm、1260μm、1270μm、1280μm、1290μm、1300μm、1310μm、1320μm、1330μm、1340μm、1350μm、1360μm、1370μm、1380μm、1390μm、1400μm、1410μm、1420μm、1430μm、1440μm、1450μm、1460μm、1470μm、1480μm、1490μm、1500μm、1510μm、1520μm、1530μm、1540μm、1550μm、1560μm、1570μm、1580μm、1590μm、1600μm、1610μm、1620μm、1630μm、1640μm、1650μm、1660μm、1670μm、1680μm、1690μm、1700μm、1710μm、1720μm、1730μm、1740μm、1750μm、1760μm、1770μm、1780μm、1790μm、1800μm、1810μm、1820μm、1830μm、1840μm、1850μm、1860μm、1870μm、1880μm、1890μm、1900μm、1910μm、1920μm、1930μm、1940μm、1950μm、1960μm、1970μm、1980μm、1990μm、2000またはいずれかの2つの値の間のいずれかの値からなる群から選択されてもよく、好ましくは100μm~1500μmであり、より好ましくは100μm~1000μmである。
【0044】
さらに、いくつかの実施態様において提供される固体分散体の粒径D50は20μm~500μmである。非限定的な例としては、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm、250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm、350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm、430μm、440μm、450μm、460μm、470μm、480μm、490μm、500μmまたはいずれかの2つの値の間のいずれかの値を含み、好ましくは20μm~200μmである。
【0045】
さらに、いくつかの実施態様において提供される固体分散体の粒径D10は1μm~100μmである。非限定的な例としては、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μmまたはいずれかの2つの値の間のいずれかの値を含み、好ましくは5μm~50μmである。
【0046】
さらに、いくつかの実施態様において提供される固体分散体の粒径D[4,3]は100μm~800μmである。非限定的な例としては、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm、250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm、350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm、430μm、440μm、450μm、460μm、470μm、480μm、490μm、500μm、510μm、520μm、530μm、540μm、550μm、560μm、570μm、580μm、590μm、600μm、610μm、620μm、630μm、640μm、650μm、660μm、670μm、680μm、690μm、700μm、710μm、720μm、730μm、740μm、750μm、760μm、770μm、780μm、790μm、800μmまたはいずれかの2つの値の間のいずれかの値を含み、好ましくは150μm~600μmである。
【0047】
最も好ましい実施態様に提供される固体分散体の粒径D90は100μm~1000μmであり、粒径D50は20μm~200μmであり、粒径D10は1μm~100μmである。
【0048】
本開示の固体分散体の粒径とは、粒子が溶媒から析出された後に得られる懸濁液中の固体分散体の粒径、または溶媒を除去して乾燥させた後の固体分散体の粒径を意味する。いくつかの実施態様において、粒径とは、粒子が溶媒から析出された後に得られる懸濁液中の固体分散体の粒径を意味する。
【0049】
いくつかの実施態様において、活性成分は非結晶形である。
【0050】
別の態様において、固体分散体(SD)とは、固体担体中に薬物を高分散させることによって形成される固体形態の分散系を意味する。担体材料は活性成分のための分散系を提供する。担体物質の含有量が多いほど、活性成分が結晶から非晶質へと変化しやすくなり、対応する固体分散体のバイオアベイラビリティが高くなる。薬物負荷とバイオアベイラビリティとのバランスの観点から、本開示の担体材料と活性成分との重量比は、0.5:1~4:1であり得る。いくつかの実施態様において、重量比は、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.2:1、2.4:1、2.6:1、2.8:1、3:1、3.2:1、3.4:1、3.6:1、3.8:1、4:1またはいずれかの2つの値の間のいずれかの値であってもよく、好ましくは0.8:1~3:1である。
【0051】
いくつかの実施態様において提供される固体分散体において、担体材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0052】
いくつかの好ましい実施態様において提供される固体分散体は、ポリビニルピロリドンおよび、活性成分である(R)-4-アミノ-1-(1-(ブタ-2-インオイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オンまたはその薬学的に許容できる塩を含む。
【0053】
さらに、本開示の固体分散体は、活性成分である(R)-4-アミノ-1-(1-(ブタ-2-インオイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オンまたはその薬学的に許容できる塩および担体材料からなる。
【0054】
本開示はまた、上記の方法によって調製される固体分散体を提供する。
【0055】
本開示はまた、活性成分である(R)-4-アミノ-1-(1-(ブタ-2-インオイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オンまたはその薬学的に許容できる塩および担体材料を含む固体分散体であって、粒径D90は50μm~2000μmである固体分散体を提供する。
【0056】
いくつかの実施態様において提供される固体分散体の粒径D90は、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm、250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm、350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm、430μm、440μm、450μm、460μm、470μm、480μm、490μm、500μm、510μm、520μm、530μm、540μm、550μm、560μm、570μm、580μm、590μm、600μm、610μm、620μm、630μm、640μm、650μm、660μm、670μm、680μm、690μm、700μm、710μm、720μm、730μm、740μm、750μm、760μm、770μm、780μm、790μm、800μm、810μm、820μm、830μm、840μm、850μm、860μm、870μm、880μm、890μm、900μm、910μm、920μm、930μm、940μm、950μm、960μm、970μm、980μm、990μm、1000μm、1010μm、1020μm、1030μm、1040μm、1050μm、1060μm、1070μm、1080μm、1090μm、1100μm、1110μm、1120μm、1130μm、1140μm、1150μm、1160μm、1170μm、1180μm、1190μm、1200μm、1210μm、1220μm、1230μm、1240μm、1250μm、1260μm、1270μm、1280μm、1290μm、1300μm、1310μm、1320μm、1330μm、1340μm、1350μm、1360μm、1370μm、1380μm、1390μm、1400μm、1410μm、1420μm、1430μm、1440μm、1450μm、1460μm、1470μm、1480μm、1490μm、1500μm、1510μm、1520μm、1530μm、1540μm、1550μm、1560μm、1570μm、1580μm、1590μm、1600μm、1610μm、1620μm、1630μm、1640μm、1650μm、1660μm、1670μm、1680μm、1690μm、1700μm、1710μm、1720μm、1730μm、1740μm、1750μm、1760μm、1770μm、1780μm、1790μm、1800μm、1810μm、1820μm、1830μm、1840μm、1850μm、1860μm、1870μm、1880μm、1890μm、1900μm、1910μm、1920μm、1930μm、1940μm、1950μm、1960μm、1970μm、1980μm、1990μm、2000およびいずれかの2つの値の間のいずれかの値からなる群から選択されてもよく、好ましくは100μm~1500μmであり、より好ましくは100μm~1000μmである。
【0057】
さらに、いくつかの実施態様において提供される固体分散体の粒径D50は20μm~500μmである。非限定的な例としては、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm、250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm、350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm、430μm、440μm、450μm、460μm、470μm、480μm、490μm、500μmまたはいずれかの2つの値の間のいずれかの値を含み、好ましくは20μm~200μmである。
【0058】
さらに、いくつかの実施態様において提供される固体分散体の粒径D10は1μm~100μmである。非限定的な例としては、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μmまたはいずれかの2つの値の間のいずれかの値を含み、好ましくは5μm~50μmである。
【0059】
さらに、いくつかの実施態様において提供される固体分散体の粒径D[4,3]は100μm~800μmである。非限定的な例としては、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm、250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm、350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm、430μm、440μm、450μm、460μm、470μm、480μm、490μm、500μm、510μm、520μm、530μm、540μm、550μm、560μm、570μm、580μm、590μm、600μm、610μm、620μm、630μm、640μm、650μm、660μm、670μm、680μm、690μm、700μm、710μm、720μm、730μm、740μm、750μm、760μm、770μm、780μm、790μm、800μmまたはいずれかの2つの値の間のいずれかの値を含み、好ましくは150μm~600μmである。
【0060】
最も好ましい実施態様において提供される固体分散体の粒径D90は100μm~1000μmであり、粒径D50は20μm~200μmであり、粒径D10は1μm~100μmである。
【0061】
いくつかの実施態様において、活性成分は非結晶形である。
【0062】
薬物負荷とバイオアベイラビリティとのバランスの観点から、本開示の担体材料と活性成分との重量比は0.5:1~4:1であり得る。いくつかの実施態様において、重量比は、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.2:1、2.4:1、2.6:1、2.8:1、3:1、3.2:1、3.4:1、3.6:1、3.8:1、4:1またはいずれかの2つの値の間のいずれかの値であってもよく、好ましくは0.8:1~3:1である。
【0063】
いくつかの実施態様において提供される固体分散体において、担体材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0064】
いくつかの好ましい実施態様において提供される固体分散体は、ポリビニルピロリドンおよび、活性成分(R)-4-アミノ-1-(1-(ブタ-2-インオイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オンまたはその薬学的に許容できる塩を含む。
【0065】
さらに、本開示の固体分散体は、活性成分である(R)-4-アミノ-1-(1-(ブタ-2-インオイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オンまたはその薬学的に許容できる塩および担体材料からなる。
【0066】
別の態様において、本開示は、上記の固体分散体、または上記の方法により調製される固体分散体および場合により薬学的に許容される賦形剤を含む固体製剤であって、賦形剤は、崩壊剤、充填剤、結合剤および滑沢剤からなる群から選択される少なくとも1つである固体製剤を提供する。固体製剤は、錠剤、ピル、顆粒、カプセル、などであり得る。
【0067】
いくつかの実施態様において、活性成分含有量は、医薬組成物の重量に対して8重量%~40重量%である。活性生物含有量は、医薬組成物の重量に対して8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、35重量%、40重量%またはいずれかの2つの値の間のいずれかの値であってもよく、好ましくは15重量%~25重量%である。
【0068】
他の実施態様において、活性成分の量(重量または質量)は10mg~500mgである。活性成分の量(重量または質量)は、200mg、190mg、180mg、170mg、160mg、150mg、140mg、130mg、120mg、110mg、100mg、95mg、75mg、50mg、25mg、15mg、10mgまたはいずれかの2つの値の間のいずれかの値であってもよく、好ましくは200mg、100mgまたは25mgである。
【0069】
本開示の崩壊剤は、当業者に知られているか、当業者により特定でき、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、デンプン、アルファ化デンプンおよびアルギン酸から選択される少なくとも1つであるが、これらに限定されない。好ましくは、崩壊剤は、医薬組成物の重量に対して1重量%~20重量%の量で存在する。非限定的な例としては、医薬組成物の重量に対して1.0重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%、5.5重量%、6重量%、6.5重量%、7重量%、7.5重量%、8重量%、8.5重量%、9重量%、9.5重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%またはいずれかの2つの値の間のいずれかの値を含み、好ましくは5重量%~15重量%である。
【0070】
本開示の結合剤は、当業者に知られているか、当業者により特定でき、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびアルジネートの少なくとも1つ、好ましくは、ポリビニルピロリドン(商標名称K30)およびヒドロキシプロピルセルロースの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。より好ましくは、結合剤は、医薬組成物の重量に対して0.5重量%~10重量%の量で存在する。非限定的な例としては、医薬組成物の重量に対して0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%、5.5重量%、6重量%、6.5重量%、7重量%、7.5重量%、8重量%、8.5重量%、9重量%、9.5重量%、10重量%またはいずれかの2つの値の間のいずれかの値を含む。
【0071】
本開示の滑沢剤は、当業者に知られているか、当業者により特定でき、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク、カルナウバロウおよびフマル酸ステアリルナトリウムの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。好ましくは、滑沢剤は、医薬組成物の重量に対して0.1重量%~5重量%の量で存在する。非限定的な例としては、医薬組成物の重量に対して0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%またはいずれかの2つの値の間のいずれかの値を含み、好ましくは0.1重量%~2重量%である。
【0072】
いくつかの実施態様において、本開示の固体製剤は、
1)10mg~500mgの活性成分、
2)5重量%~15重量%の崩壊剤、
3)30重量%~90重量%の充填剤、
4)0.5重量%~10重量%の結合剤、
5)0.1重量%~5重量%の滑沢剤、を含む。
【0073】
さらに、溶出率は、中国薬局方2015年版第4巻の総則(general rule of volume IV of Chinese Pharmacopoeia 2015 Edition)に記載の溶出率試験の第2法(パドル法)によって、SDSの0.15%水溶液を溶出媒体として用い、37±0.5℃、パドル速度50rpmで測定される。本開示の固形製剤中の活性成分の45分間での溶出率(%)は85%またはそれ以上であり、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%または以上であってもよく、好ましくは90%またはそれ以上である。さらに、固体製剤中の活性成分の15分間での溶出率(%)は70%またはそれ以上であり、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%またはそれ以上であってもよい。該固形製剤は、速やかにかつ完全に溶解し、良好なバイオアベイラビリティを有する。該固形製剤の調製プロセスは簡単で、大量生産に適している。
【0074】
さらに、本開示はまた、上記の固体製剤の調製方法であって、固体分散体を粉砕する工程、医薬組成物の成形に必要な充填剤および/または崩壊剤とよく混合する工程、結合剤を添加する工程、湿式造粒または乾式造粒に付する工程、得られた顆粒を乾燥する工程、篩でスクリーニングする工程、ミリングする工程、滑沢剤とよく混合する工程、およびピルもしくは顆粒に調製または錠剤に圧縮またはカプセルに充填する工程を含み;または固体分散体を、適切な補助剤と共にカプセルに直接加えまたは錠剤に圧縮してもよい方法を提供する。得られた顆粒または生の錠剤またはカプセルは、必要に応じてさらにコーティングされ得る。
【0075】
本開示はまた、タンパク質チロシンキナーゼによって媒介される状態または疾患を処置するための医薬の調製における本開示の固体分散体または固体製剤の使用を提供する。いくつかの実施態様において、状態または疾患は、癌または自己免疫性疾患である。いくつかの実施態様において、癌は、慢性リンパ性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫(MM)、濾胞性リンパ腫(FL)、辺縁帯リンパ腫およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)からなる群から選択されるB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施態様において、自己免疫性疾患は、リウマチ性関節炎または全身性エリテマトーデスである。
【0076】
本開示の活性成分である(R)-4-アミノ-1-(1-(ブタ-2-インオイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オンは、酸と薬学的に許容できる塩を形成することができる。酸は、当業者に知られているか、当業者により特定でき、塩酸、メタンスルホン酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸およびリン酸を含むが、これらに限定されない。
【0077】
本開示の「医薬組成物の重量に対して」という表現は、活性成分または他の種類の医薬補助剤の量の範囲の計算が、コーティング剤を含まない錠剤の芯の重量に基づくことを意味する。
【0078】
本開示の「良溶媒」および「貧溶媒(弱溶媒)」は、活性成分の溶解度によって分類される。一般的には、貧溶媒および良溶媒は、20mg/mlの溶解度によって分類される。活性成分の溶解度が約20mg/ml未満の溶媒は貧溶媒である。一方、活性成分の溶解度が約20mg/mlを超える溶媒は良溶媒である。
【0079】
本開示の用語「D10」とは、試料の累積粒径分布百分率が10%に達したときの対応する粒径を意味する。用語「D50」とは、試料の累積粒径分布百分率が50%に達したときの対応する粒径を意味する。用語「D90」とは、試料の累積粒径分布百分率が90%に達したときの対応する粒径を意味する。D[4,3]は「第4瞬間/体積」平均径を示し、体積(または重量)平均径とも称される。当業者にとって、粒径の測定にはある程度の誤差があると理解される。一般的には、プラスマイナス10%程度が妥当な誤差の範囲である。D10、D50、D90、D[4,3]は、使用される状況によってある程度の誤差の変動があり、誤差の変動はプラスマイナス10%を超えない範囲である。
【0080】
本開示のHPLC検出条件:
オクタデシルシラン結合シリカが充填剤(Waters Symmetry C18 colume)として使用され、移動相および溶離剤としては0.01mol/Lのリン酸二水素カリウム緩衝液およびアセトニトリルが使用され、検出波長は210nmである。
【0081】
医薬補助剤および試薬、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートは市販されている。(R)-4-アミノ-1-(1-(ブタ-2-インオイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オン(化合物A)またはその薬学的に許容できる塩は、WO2016007185の実施例に記載されている方法によって調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
本開示の上記および他の目的および特徴は、それぞれを示す以下の図面を参照することにより明らかになる。
【0083】
図1】実施例3の試料のSECM画像
【0084】
図2】実施例4の試料のSECM画像
【0085】
(詳細な説明)
本開示は、以下の実施例および実験例を参照してさらに詳細に説明される。これらの例および実験例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではない
【実施例
【0086】
実施例1:
(R)-4-アミノ-1-(1-(ブタ-2-インオイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オン(化合物Aと略す)1gのおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC-AS)1gを、ジメチルアセトアミド15mlに添加し、攪拌して溶解した。得られた溶液を、4g/分または2g/分の速度で水100mlに滴下添加し、約1時間攪拌した。得られた懸濁液を濾過した。最初に凝集が観察され、濾過(または吸引濾過)は困難であり、吸引濾液は乳白色を示した。
【0087】
実施例2:
化合物A 1gおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC-AS)1gを、ジメチルアセトアミド15mlに添加し、攪拌して溶解した。得られた溶液を、4g/分の速度でpHの異なる水100ml(表1に示されている)に滴下添加し、約1時間攪拌した。得られた懸濁液を濾過して固体を得た。観測された現象は以下の通りである:
【表1】
【0088】
結論: リン酸または硫酸を用いて調製した固体分散体は、残留イオン量が少ない。例えば、リン酸を用いた場合、得られる固体分散体中のリン含有量は約20μg/gであり;硫酸を用いた場合、得られる固体分散体中の硫黄含有量は10μg/gである。
【0089】
実験例1、4および5で得られた試料をそれぞれ、93%、60℃、40℃/75%RH、25℃/60%RHの条件下に置き、物理的、化学的安定性を考察した。データを以下に示す:
【表2】
【0090】
実施例3:
化合物A 1gおよびHPMC-AS 1gを、N,N-ジメチルアセトアミド15mlに溶解した。得られた溶液を、4g/分の速度で水溶液100mlに滴下添加し(36.5%塩酸でpH=2に調整)、30分間攪拌した。得られた懸濁液を濾過し、濾過ケークを水で洗浄した。得られた固体を40℃で一晩乾燥させ、SEM測定を行った。
【0091】
SEMの結果は、得られた試料がマイクロスフェア様であり、均一に分布していることを示している。図1を参照のこと。
【0092】
実施例4:
化合物A 1gおよびHPMC-AS 1gを、15mlのN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。得られた溶液を、4g/分の速度で水100mlに滴下添加し、攪拌した。水を分散体媒体として用いて試料を得て、粒径測定に使用した。得られた懸濁液を濾過し、吸引濾液は乳白色を示し、濾過ケークを水で洗浄した。得られた固体を40℃で一晩乾燥させ、SEM測定を行った。
【0093】
水を分散媒として用いて得られた試料の粒径:D10=7.6μm、D50=27.2μm、D90=86μm、D[4,3]=39.4μm。
【0094】
SEMの結果は、得られた試料が粒状で、粒径が不均一であることを示している。図2を参照のこと。
【0095】
実施例5:
一定の量の化合物AおよびHPMC-AS-LFを秤量し、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)15mlに溶解した。得られた溶液を、4g/分の速度で水100mlに滴下添加し(36.5%塩酸でpH=2に調整)攪拌した。具体的なパラメータは下表の通りである:
【表3】
【0096】
水を分散媒として用いて得られた試料について、それぞれ粒径測定を行った。具体的なデータは以下の通りである:
【表4】
【0097】
実施例6:
試験例9の方法によって化合物Aおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートを含む固体分散体を調製した。以下のように規定された処方に従って、固体分散体、ラクトース、微結晶セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムの処方量を秤量した。混合物を造粒タンクに注ぎ、よく混合し、ポリビニルピロリドンを結合剤として添加して顆粒を調製した。湿潤軟化した材料を湿式ミリングし、乾燥させた後、乾燥顆粒(水分3%未満)を乾式ミリングした。粒状外添剤を添加し、顆粒とよく混合した。得られた全混合顆粒を圧縮して錠剤にした。具体的な処方比率を表2に示す。
【表5】
【0098】
溶出試験
実験例11および12の錠剤の溶出率は、中国薬局方2015年版第四巻総則に記載の溶出率試験の第二法(パドル法)に従って測定した。溶出試験は、溶出媒体としてSDSの0.15%水溶液1000mlを用い、37±0.5℃、パドル速度50rpmで実施した。
【表6】
図1
図2