(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】生体情報推定装置及び生体情報推定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0245 20060101AFI20241213BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20241213BHJP
A61B 5/021 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
A61B5/0245 200
A61B5/02 310B
A61B5/02 E
A61B5/021
(21)【出願番号】P 2022087425
(22)【出願日】2022-05-30
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】富澤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】赤木 幸知
(72)【発明者】
【氏名】足立 佳久
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-190333(JP,A)
【文献】特開2017-212526(JP,A)
【文献】特開2016-097237(JP,A)
【文献】特開2020-185436(JP,A)
【文献】特開平06-154178(JP,A)
【文献】特開2002-143108(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141216(WO,A1)
【文献】特開2002-034941(JP,A)
【文献】特開平03-159634(JP,A)
【文献】特開2016-120065(JP,A)
【文献】特開2017-108905(JP,A)
【文献】特開昭64-15029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から脈波を検出する検出部と、
測定期間が開始された後に検出された前記脈波の周波数を検出し、検出した前記周波数に応じて前記測定期間の長さを決定する変更部と、
前記測定期間内に検出された脈波から生体情報を推定する推定部と、
を備え
、
前記変更部は、前記測定期間中に前記脈波の周波数に応じて前記測定期間を決定することを繰り返す
生体情報推定装置。
【請求項2】
前記変更部は、検出した前記周波数の逆数に係数を乗ずることにより、前記測定期間の長さを決定する
請求項1に記載の生体情報推定装置。
【請求項3】
前記生体情報は、血圧を含む
請求項1又は2に記載の生体情報推定装置。
【請求項4】
前記生体情報は、脈拍数を含む
請求項1又は2に記載の生体情報推定装置。
【請求項5】
a)生体から脈波を検出する工程と、
b)測定期間が開始された後に検出された前記脈波の周波数を検出し、検出した前記周波数に応じて前記測定期間の長さを決定する工程と、
c)前記測定期間内に検出された脈波から生体情報を推定する工程と、
を備え
、
前記測定期間中に前記b)工程が繰り返される
生体情報推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体情報推定装置及び生体情報推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、血圧計を開示する。当該血圧計においては、カフが使用者の動脈通過部位に巻き回される。また、カフを微速減圧する過程で圧力センサにより検出されたカフ内の圧力から、脈波信号が弁別される。また、脈波信号及び圧力値から血圧値が決定される。また、パーソナルモードでは、特定使用者の血圧値を測定する際の測定条件、並びに特定使用者の最高血圧値及び最低血圧値を決定するための血圧値決定条件が、特定使用者の過去の測定結果に基づいて設定される。これにより、測定時間を短縮することができる(要約)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される血圧計においては、測定時間を短縮することができるのは、測定条件及び血圧値決定条件を特定使用者の過去の測定結果に基づいて設定することができる場合に限られる。また、測定時間を短縮するためには、使用者を識別する必要がある。
【0005】
本開示は、この問題に鑑みてなされた。本開示の一態様は、例えば、生体を識別することなく、生体情報を推定するのに要する時間を短くすることができる生体情報推定装置及び生体情報推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の生体情報推定装置は、生体から脈波を検出する検出部と、前記生体の脈拍の速さに基づいて測定期間の長さを変更する変更部と、前記測定期間内に検出された脈波から生体情報を推定する推定部と、を備える。
【0007】
本開示の他の一態様の生体情報推定方法は、a)生体から脈波を検出する工程と、b)前記生体の脈拍の速さに基づいて測定期間の長さを変更する工程と、c)前記測定期間内に検出された脈波から生体情報を推定する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の生体情報推定装置のブロック図である。
【
図2】第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部により行われる処理の流れの第1の例を示すフローチャートである。
【
図3】生体の脈拍が遅い場合において第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部が測定期間を終了させるタイミングの例を示すグラフである。
【
図4】生体の脈拍が速い場合において第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部が測定期間を終了させるタイミングの例を示すグラフである。
【
図5】第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部により行われる極大点の選択の第1の例を示すグラフである。
【
図6】第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部により行われる極小点の選択の第1の例を示すグラフである。
【
図7】第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部により行われる極大点の選択の第2の例を示すグラフである。
【
図8】第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部により行われる極小点の選択の第2の例を示すグラフである。
【
図9】第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部により行われる処理の流れの第2の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
1 第1実施形態
1.1 生体情報推定装置
図1は、第1実施形態の生体情報推定装置のブロック図である。
【0011】
図1に図示される生体情報推定装置1は、生体11の生体情報12を推定する。生体情報12が推定される生体11は、ヒトである。生体11が、ヒト以外の動物であってもよい。推定される生体情報12は、生体11の状態を示す。生体情報12は、血圧21及び脈拍数22を含む。生体情報12が、血圧21及び脈拍数22以外の生体情報を含んでもよい。
【0012】
図1に図示されるように、生体情報推定装置1は、検出部31、変更部32、推定部33及び出力部34を備える。
【0013】
検出部31は、生体11から脈波41を検出する。
【0014】
変更部32は、生体11の脈拍の速さに基づいて測定期間の長さを変更する。これにより、測定時間の長さを生体11の脈拍の速さに適した長さにすることができる。変更部32は、脈波41の周期的な時間変化の速さが脈拍の速さを反映することを利用して、脈波41の周期的な時間変化の速さに基づいて測定期間の長さを変更する。変更部32は、脈拍の速さが速くなるほど、測定期間の長さを短くする。これにより、生体11を識別することなく、生体11の生体情報12を推定するのに要する時間を短くすることができる。例えば、当該時間を10秒以下にすることができる。
【0015】
推定部33は、測定期間内に検出された脈波41から生体情報12を推定する。
【0016】
出力部34は、推定された生体情報12を出力する。出力部34は、生体情報12を示す画面を表示するディスプレイ、生体情報12を示す音声を発するスピーカ、生体情報12を示す信号を送信する送信回路等により構成される。
【0017】
1.2 検出部
検出部31は、生体11に含まれる部位から脈波41を検出する。脈波41が検出される部位は、指尖、掌、足の裏、頬、額、鼻又は顎である。当該部位が、指尖、掌、足の裏、頬、額、鼻及び顎以外の部位であってもよい。検出部31は、ひとつの部位から脈波41を検出してもよいし、複数の部位から同時に脈波41を検出してもよい。複数の部位は、左手の指尖及び右手の指尖であってもよいし、顔に含まれる頬、額、鼻等から選択されるふたつ以上の部位であってもよいし、指尖及び顔であってもよい。検出部31は、望ましくは、リアルタイムに脈波41を検出する。
【0018】
本開示の第1の例においては、検出部31は、接触式センサを備える。
【0019】
接触式センサは、生体11の指尖に接触し、接触した指尖から脈波41を検出する。
【0020】
接触式センサは、発光部及び受光部を備える。
【0021】
発光部は、光を発する。発せられる光は、可視光及び不可視光のいずれであってもよい。可視光は、赤色光、緑色光等である。不可視光は、赤外光等である。発光部は、発光ダイオード(LED)等により構成される。
【0022】
受光部は、検出部31が接触する指尖が発光部により発せられた光を拡散反射することにより生成される光を受け、受けた光の光量に応じた信号を出力する。出力される信号の大きさの時間変化は、検出される脈波41である。当該光量は、当該指尖内の血管を流れる血液量を反映する。このため、検出される脈波41は、当該血液量の時間変化を反映する。受光部は、フォトダイオード等により構成される。
【0023】
検出部31が、検出した脈波41に対して信号処理を行って脈波41からノイズ成分を除去する信号処理部を備えてもよい。行われる信号処理は、長い周期を有する低周波のノイズ成分を除去する処理、短い周期を有する高周波のノイズ成分を除去する処理等である。前者の処理は、ハイパスフィルタ処理、トレンド除去処理等である。後者の処理は、ローパスフィルタ処理等である。行われる処理は、電子回路により行われるアナログ信号処理及びプロセッサにより行われるデジタル信号処理のいずれであってもよい。
【0024】
本開示の第2の例においては、検出部31は、撮像部及び画像処理部を備える。
【0025】
撮像部は、生体11を撮像して画像を得る。撮像部は、RGBカメラ等により構成される。
【0026】
画像処理部は、得られた画像に生体11が写っているか否かを判定し、当該画像に生体11が写っていると判定した場合は、生体11が写っている画素の画素値を出力する。出力される画素値の時間変化は、検出される脈波41である。画像処理部は、プログラムを実行する中央処理装置(CPU)等により構成される。画像処理部により行われる処理の全部又は一部が専用の電子回路により行われてもよい。
【0027】
検出部31は、左手の指尖及び右手の指尖から同時に脈波41を検出する場合は、左手の指尖用の接触式センサ及び右手の指尖用の接触式センサを備える。左手の指尖用の接触式センサは、左手の指尖に接触し、接触した左手の指尖から脈波41を検出する。右手の指尖用の接触式センサは、右手の指尖に接触し、接触した右手の指尖から脈波41を検出する。
【0028】
検出部31が顔に含まれるふたつ以上の部位から脈波41を同時に検出する場合は、撮像部が、生体11の顔を撮像して顔の画像を得る。また、画像処理部が、当該ふたつ以上の部位の各々が写っている画素の画素値から脈波41を算出する。
【0029】
検出部31が指尖及び顔から脈波41を同時に検出する場合は、接触式センサが、生体11の指尖に接触し、接触した指尖から脈波41を検出する。また、撮像部が、生体11の顔を撮像して顔の画像を得る。また、画像処理部が、当該顔が写っている画素の画素値から脈波41を算出する。
【0030】
1.3 変更部
変更部32は、測定期間が開始された後に検出された脈波41に含まれるパルスの数を検出し、検出したパルスの数が設定された数となった場合に測定期間を終了させる。変更部32は、プログラムを実行するCPU等により構成される。変更部32により行われる処理の全部又は一部が専用の電子回路により行われてもよい。
【0031】
検出される脈波41は、生体11から検出された検出量の時間変化を示す。脈波41の時間変化は、生体11の心臓の周期的な拍動に伴う周期的な時間変化を含む。脈波41に含まれるパルスは、脈波41から抽出される、生体11の心臓の1回の拍動に要する時間を有する期間における当該検出量の時間変化を示す。当該パルスの両端は、当該検出量が極小となる極小点及び当該検出量が極大となる極大点のいずれであってもよい。このため、当該パルスの両端は、脈波41の波形の谷及び山のいずれであってもよい。
【0032】
推定部33は、測定期間内に検出された脈波41に含まれるパルスの数がひとつであっても、ひとつのパルスから生体情報12を推定することができる。このため、設定される数は、1であってもよい。しかし、当該パルスの数が大きくなるほど、推定部33による生体情報12の推定の精度を高くすることができる。このため、設定される数は、望ましくは、2以上であり、さらに望ましくは、5以上である。
【0033】
1.4 変更部により行われる処理
図2は、第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部により行われる処理の流れの第1の例を示すフローチャートである。
【0034】
変更部32は、
図2に示されるステップS101からS103までを実行する。
【0035】
ステップS101においては、変更部32が、測定期間が開始された後に検出された脈波41に含まれるパルスの数を検出する。
【0036】
続くステップS102においては、変更部32が、検出したパルスの数が設定された数になったか否かを判定する。検出したパルスの数が設定された数になったと判定された場合は、ステップS103が実行される。検出したパルスの数が設定された数になっていないと判定された場合は、再びステップS101が実行される。
【0037】
ステップS103においては、変更部32が、測定期間を終了させる。
【0038】
ステップS101からS103までにより、変更部32は、測定期間が開始された後に検出された脈波41に含まれるパルスの数が設定された数となるまでは、測定期間を終了させずに継続し、当該パルスの数が当該設定された数となるのに連動して、測定期間を終了させる。
【0039】
1.5 脈拍の速さによる測定期間の長さの変化
図3は、生体の脈拍が遅い場合において第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部が測定期間を終了させるタイミングの例を説明するグラフである。
図4は、生体の脈拍が速い場合において第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部が測定期間を終了させるタイミングの例を説明するグラフである。
【0040】
図3及び
図4においては、時刻が横軸にとられている。また、生体11から検出された検出量が縦軸にとられている。
【0041】
図3及び
図4に示される例においては、変更部32は、時刻0に測定期間が開始された後に検出された脈波41に含まれるパルス51の数を検出し、検出したパルス51の数が5となった場合に測定期間を終了させる。このため、変更部32は、時刻0から脈波41の周期の5倍の時間が経過した場合に測定期間を終了させる。このため、変更部32は、
図3に示されるように、生体11の脈拍が遅く脈波41の周期が長い場合は、相対的に遅い時刻tsに測定期間を終了させる。一方、変更部32は、
図4に示されるように、生体11の脈拍が速く脈波41の周期が短い場合は、相対的に早い時刻tfに測定期間を終了させる。推定部33は、測定期間内に検出された5個のパルス51から生体情報12を推定する。
【0042】
変更部32は、脈波41に対して信号処理を行うことにより、脈波41に含まれるパルスの数を検出する。行われる信号処理は、ピーク検出、周波数解析等である。
【0043】
1.6 ピーク検出によるパルスの数の検出
変更部32は、脈波41に対してピーク検出を行うことによりパルス51の数を検出する場合は、脈波41から極大点を抽出し、脈波41の、隣接する極大点の間にある部分をひとつのパルス51とする。又は、変更部32は、脈波41から極小点を抽出し、脈波41の、隣接する極小点の間にある部分をひとつのパルス51とする。
【0044】
図5は、第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部により行われる極大点の選択の第1の例を示すグラフである。
図6は、第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部により行われる極小点の選択の第1の例を示すグラフである。
【0045】
図5及び
図6においては、時刻が横軸にとられている。また、生体11から検出された検出量が縦軸にとられている。
【0046】
第1の例においては、
図5に示されるように、変更部32が、隣接する極大点61の時間間隔T1が設定された範囲内となるように、測定期間が開始された後に検出された脈波41から高さが高い順に複数の極大点61を選択し、当該脈波41の、隣接する極大点61の間にある部分をひとつのパルス51とする。範囲は、一般的な脈拍数に基づいて設定される。一般的な脈拍数は、50~90回/分である。これにより、隣接するふたつのパルス51の区切りとして適した大局的な極大点61を選択することができる。また、当該区切りとして適さない局所的な極大点62を選択することを抑制することができる。又は、
図6に示されるように、変更部32が、隣接する極小点71の時間間隔T2が設定された範囲内となるように、測定期間が開始された後に検出された脈波41から深さが深い順に複数の極小点71を選択し、当該脈波41の、隣接する極小点71の間にある部分をひとつのパルス51とする。範囲は、一般的な脈拍数に基づいて設定される。一般的な脈拍数は、50~90回/分である。これにより、隣接するふたつのパルス51の区切りとして適した大局的な極小点71を選択することができる。また、当該区切りとして適さない局所的な極小点72を選択することを抑制することができる。
【0047】
図7は、第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部により行われる極大点の選択の第2の例を示すグラフである。
図8は、第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部により行われる極小点の選択の第2の例を示すグラフである。
【0048】
図7及び
図8においては、時刻が横軸にとられている。また、生体11から検出された検出量が縦軸にとられている。
【0049】
第2の例においては、
図7に図示されるように、変更部32が、測定期間が開始された後に検出された脈波41から設定された高さ91以上の高さを有する複数の極大点92を選択し、当該脈波41の、隣接する極大点92の間にある部分をひとつのパルス51とする。高さ91は、脈波41の振幅に基づいて設定される。これにより、隣接するふたつのパルス51の区切りとして適した大局的な極大点92を選択することができる。また、当該区切りとして適さない局所的な極大点93を選択することを抑制することができる。又は、
図8に図示されるように、変更部32が、測定期間が開始された後に検出された脈波41から設定された深さ101以上の深さを有する複数の極小点102を選択し、当該脈波41の、隣接する極小点102の間にある部分をひとつのパルス51とする。深さ101は、脈波41の振幅に基づいて設定される。これにより、隣接するふたつのパルス51の区切りとして適した大局的な極小点102を選択することができる。また、当該区切りとして適さない局所的な極小点103を選択することを抑制することができる。
【0050】
1.7 周波数解析によるパルスの数の検出
変更部32は、脈波41に対して周波数解析を行うことによりパルス51の数を検出する場合は、脈波41の周期を検出し、脈波41が検出された時間すなわち受信期間が開始されてから経過した時間を検出した周期で除することによりパルス51の数を検出する。パルス51の数が整数になるように、脈波41が検出された時間を検出された周期で除した結果に含まれる小数点以下の桁が切り捨てられてもよい。例えば、脈波41が検出された時間が3秒であり、検出された周期が0.9秒である場合は、脈波41が検出された時間を検出された周期で除した結果3÷0.9=3.333・・・に含まれる小数点以下の桁が切り捨てられ、パルス51の数が3とされてもよい。
【0051】
変更部32は、脈波41に対して高速フーリエ変換(FFT)、最大エントロピー法(MEM)による処理等を行うことにより、脈波41の周期を検出する。
【0052】
1.8 周波数による測定期間の長さの決定
変更部32が、測定期間が開始された後に検出された脈波41の周波数を検出し、検出した周波数が高くなるほど測定期間の長さを短くしてもよい。
【0053】
変更部32は、脈波41に対してFFT、MEMによる処理等を行うことにより、脈波41の周波数を検出する。
【0054】
図9は、第1実施形態の生体情報推定装置に備えられる変更部により行われる処理の流れの第2の例を示すフローチャートである。
【0055】
変更部32は、脈波41の周波数を検出し、検出した周波数が高くなるほど測定期間の長さを短くする場合は、
図9に示されるステップS111からS114までを実行する。
【0056】
ステップS111においては、変更部32が、測定期間が開始された後に検出された脈波41の周波数を検出する。
【0057】
続くステップS112においては、変更部32が、検出した周波数に応じて測定期間の長さを決定する。変更部32は、検出した周波数が高くなるほど測定期間の長さを短くする。例えば、変更部32は、検出した周波数の逆数に係数を乗ずることにより、測定時間の長さを決定する。乗ぜられる係数は、1以上であり、望ましくは、2以上であり、さらに望ましくは、5以上である。
【0058】
続くステップS113においては、変更部32が、測定期間が開始されてから決定した長さを有する時間が経過したか否かを判定する。当該時間が経過したと判定された場合は、ステップS114が実行される。当該時間が経過していないと判定された場合は、再びステップS111が実行される。
【0059】
ステップS114においては、変更部32が、測定期間を終了させる。
【0060】
ステップS111からS114までにより、変更部32は、測定期間が開始された後に経過した時間が十分な時間となるまでは、測定期間を終了させずに継続し、当該時間が十分な時間となるのに連動して、測定期間を終了させる。
【0061】
1.9 推定部
推定部33は、測定期間内に検出された脈波41の波形及び/又は周波数依存性から血圧21を推定する。検出部31がふたつ以上の部位から脈波41を同時に検出する場合は、推定部33が、ふたつ以上の部位から同時に検出された脈波41の相関関係から血圧21を推定してもよい。これらにより、生体情報推定装置1は、カフを用いることなく、生体情報12を推定することができる。
【0062】
また、推定部33は、測定期間内に検出された脈波41に含まれるパルス51の数から脈拍数22を推定する。例えば、推定部33は、当該パルス51の数を測定期間の長さで除することにより脈拍数22を推定する。
【0063】
推定部33は、プログラムを実行するCPU等である。変更部32により行われる処理の全部又は一部が専用の電子回路により行われてもよい。
【0064】
1.10 カフ式の電子血圧計との比較
カフ式の電子血圧計においては、カフ内の圧力が変化させられる。また、カフ自体がセンサとなってカフにより脈波が検出される。また、検出された脈波から血圧が推定される。オシロメトリック法による血圧の検出においては、腕に巻かれたカフ内の圧力が変化させられる。また、検出された脈波の振幅から血圧が推定される。血圧を推定するためには、カフ内の圧力を徐々に変化させながら、複数回の周期に渡って脈波が検出されなければならない。そして、血圧を推定するのに必要な回数の拍動を検出することができる最大の速度でカフ内の圧力を変化させることにより、測定時間を短くすることができる。しかし、当該最大の速度を計算することができるのは、使用者の血圧及び脈拍数が分かっている場合に限られる。このため、電子血圧計を初めて使用する使用者の血圧を推定する場合は、測定時間を短くすることができない。また、測定時間を短くするためには、使用者ごとに血圧及び脈拍数の過去の推定結果を保管する必要がある。また、使用者が電子血圧計を過去に使用したことがあるか否かを識別しなければならず、使用者が過去に電子血圧計を過去に使用した使用者のいずれであるかを判別する必要がある。
【0065】
これに対して、生体情報推定装置1においては、血圧21及び脈拍数22を推定するために用いられる情報及び測定期間の長さを決定するために用いられる情報が、測定期間が開始された後に検出された脈波41から得られる。このため、生体情報推定装置1においては、測定期間が開始される前にこれらの情報を取得する必要がない。このため、事前に生体11の情報を取得する手間及び時間をなくすことができる。
【0066】
本開示は、上記実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 生体情報推定装置、11 生体、12 生体情報、21 血圧、22 脈拍数、31 検出部、32 変更部、33 推定部、34 出力部、41 脈波、51 パルス、61 極大点、62 極大点、71 極小点、72 極小点、91 高さ、92 極大点、93 極大点、101 深さ、102 極小点、103 極小点。