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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/201 20110101AFI20241213BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20241213BHJP
【FI】
B60R21/201
B60R21/205
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022090310
(22)【出願日】2022-06-02
(65)【公開番号】P2023177572
(43)【公開日】2023-12-14
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】安部 和宏
(72)【発明者】
【氏名】藤原 一基
(72)【発明者】
【氏名】荒井 佑太
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-286339(JP,A)
【文献】特開平09-118187(JP,A)
【文献】特開2006-027374(JP,A)
【文献】特開2015-033987(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0265269(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0046220(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第102014116495(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれたエアバッグクッションと、
前記エアバッグクッションを膨張させる膨張ガスを噴射するインフレータと、
前記エアバッグクッションの膨張展開時の開放側を少なくとも覆うと共に、膨張展開中のエアバッグクッションにより押されると開裂する第1フラップと、
前記第1フラップの外側または内側に設けられると共に、膨張展開中のエアバッグクッションのフロントウィンドウスクリーンへの突出量を制限する第2フラップと、を備え、
前記第2フラップは、膨張展開中のエアバッグクッションにより押されると破断する破断部を有し、前記破断部は、前記第2フラップが前記破断部で破断する起点を与える部分となる初期破断部を備え
前記第2フラップは、帯状部と、帯状部の長手方向と交差する方向に幅が拡大している拡幅部とを有し、前記破断部は前記拡幅部に設けられている、エアバッグ装置。
【請求項2】
前記破断部は、開孔により形成されている、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記初期破断部は、開孔により形成されており、かつ、前記破断部の中央部を含む領域に設けられている、請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記初期破断部の前記開孔は、切り込み、ピンホール、又は、所要の幅を有するスリットにより形成されている、請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記初期破断部の前記開孔の形状は、円もしくは楕円、又は、多角形である、請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
多角形からなる前記初期破断部の開孔の角部分が前記破断部と連続している、請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記破断部は、膨張展開中のエアバッグクッションがフロントウィンドウスクリーンに接触するタイミング付近で破断するように構成されている、請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記拡幅部は、膨張展開中のエアバッグクッションとフロントウィンドウスクリーンが接触する接触部の外面部と重なる領域を含む、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
前記破断部は、前記初期破断部の両側に第2破断部と第3破断部を有し、前記第2破断部及び前記第3破断部は、前記拡幅部の延出方向両端もしくはその近傍を含む領域まで延びている、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項10】
前記初期破断部の開孔は、切り込み又は所要の幅を有するスリットであって、前記切り込み又は前記スリットの間隔は、前記第2破断部及び前記第3破断部における切り込みの間隔よりも長い、請求項9に記載のエアバッグ装置。
【請求項11】
前記第2フラップは、膨張展開中のエアバッグクッションとフロントウィンドウスクリーンが接触する接触部の外面部に重なる領域と、前記第2フラップを車両側に固定するための一対の接続部とを備えている、請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項12】
前記第1フラップは、膨張展開中のエアバッグクッションにより押されると開裂する脆弱部を有し、前記脆弱部の開裂後に、前記第2フラップの破断部が破断する、請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項13】
前記第1フラップは、収納状態のエアバッグクッションの周囲を包むように設けられている、請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項14】
収納状態のエアバッグクッションを収納し、インストルメントパネルの収納部に取り付けられる収納ケースを備え、前記第1フラップと前記第2フラップは、前記収納ケースに固定されている、請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項15】
前記第2フラップは織物で構成され、当該織物の経糸または緯糸が設けられる方向は、前記破断部の破断方向に実質的に平行である請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項16】
前記破断部は、開孔により形成されていると共に、
前記初期破断部は、開孔により形成されており、かつ、前記破断部の中央部を含む領域に設けられており、
前記第2フラップの前記初期破断部における隣り合う前記開孔の間の距離は、前記初期破断部以外の破断部における隣り合う前記開孔の間の距離よりも広いことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項17】
前記第2フラップの前記破断部は、当該破断部以外の領域の布の重ね合わせ枚数より少ない重ね合わせ枚数で構成される請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、助手席又は運転席に着座した乗員を前方から拘束するエアバッグ装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の普及が進んでいる。電気自動車では、車両前方に配置されるエンジンがなくなり、図11(a)及び(b)に示すように、インストルメントパネル7が小型化している傾向がある。接触部102は、エアバッグクッション101が膨張展開中にフロントウィンドウスクリーン8と最初に接触する部位を示している。インストルメントパネル7が小型化すると、インストルメントパネル7の上面から接触部102までの距離Dが短くなる。
【0003】
そのため、エアバッグ装置100では、エアバッグクッション101が膨張展開した直後にフロントウィンドウスクリーン8と接触し、エアバッグクッション101から加わる荷重による衝撃でフロントウィンドウスクリーン8を損傷する場合がある。
【0004】
従来、特許文献1には、上記課題への対応として、エアバッグクッション101の内部にテザーを張設する構成が開示されている。エアバッグクッション101内に張設されたテザーは、インフレータの取り付け開口部と接触部102の内面部との間を連結するものであり、その長さを段階的に延伸させる手段を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-133485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的にエアバッグ装置のエアバッグクッションは、内部に整流布が設けられることが多い。整流布は、インフレータから噴射されたガスの流れを整える部材であり、整流布を最適な位置に設けることで、エアバッグクッションの膨張展開時の挙動を安定させることができる。
【0007】
しかし、特許文献1のエアバッグ装置の構成では、エアバッグクッションの内部に設けたテザーが、整流布の設置位置に制約を与える可能性が高い。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、膨張展開したエアバッグクッションからフロントウィンドウスクリーンに加わる荷重を低減させると共に、整流布の設置位置について制約が生じることもないエアバッグ装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明のエアバッグ装置は、折り畳まれたエアバッグクッションと、エアバッグクッションを膨張させる膨張ガスを噴射するインフレータと、エアバッグクッションの膨張展開時の開放側を少なくとも覆うと共に、膨張展開中のエアバッグクッションにより押されると開裂する第1フラップと、第1フラップの外側または内側に設けられると共に、膨張展開中のエアバッグクッションのフロントウィンドウスクリーンへの突出量を制限する第2フラップと、を備え、第2フラップは、膨張展開中のエアバッグクッションにより押されると破断する破断部を有し、破断部は、第2フラップが破断部で破断する起点を与える部分となる初期破断部を備えている。
【0010】
本発明において、破断部は、開孔により形成されている構成を採用してもよい。
【0011】
本発明において、初期破断部は、破断部の中央部を含む領域に設けられている構成を採用してもよい。
【0012】
本発明において、初期破断部の開孔は、切り込み、ピンホール、又は、所要の幅を有するスリットにより形成されている構成を採用してもよい。
【0013】
本発明において、初期破断部の開孔の形状は、円もしくは楕円、又は、多角形である構成を採用してもよい。
【0014】
本発明において、初期破断部は、多角形からなる開孔の角部分が破断部と連続している構成を採用してもよい。
【0015】
本発明において、第2フラップの破断部は、膨張展開中のエアバッグクッションがフロントウィンドウスクリーンに接触するタイミング付近で破断する構成を採用してもよい。
【0016】
本発明において、第2フラップは、帯状部と、帯状部の長手方向と交差する方向に幅が拡大している拡幅部とを有し、破断部は拡幅部に設けられている構成を採用してもよい。
【0017】
本発明において、拡幅部は、膨張展開中のエアバッグクッションとフロントウィンドウスクリーンが接触する接触部の外面部と重なる領域を含む構成を採用してもよい。
【0018】
本発明において、破断部は、初期破断部の両側に第2破断部と第3破断部を有し、第2破断部及び第3破断部は、拡幅部の延出方向両端もしくはその近傍を含む領域まで延びている構成を採用してもよい。
【0019】
本発明において、初期破断部の開孔は、切り込み又は所要の幅を有するスリットであって、切り込み又はスリットの間隔は、第2破断部及び第3破断部における切り込みの間隔よりも長い構成を採用してもよい。
【0020】
本発明において、第2フラップは、膨張展開中のエアバッグクッションとフロントウィンドウスクリーンが接触する接触部の外面部に重なる領域と、第2フラップを車両側に固定するための一対の接続部とを備えている構成を採用してもよい。
【0021】
本発明において、第1フラップは、膨張展開中のエアバッグクッションにより押されると開裂する脆弱部を有し、脆弱部の開裂後に、第2フラップの破断部が破断する構成を採用してもよい。
【0022】
本発明において、第1フラップは、収納状態のエアバッグクッションの周囲を包むように設けられている構成を採用してもよい。
【0023】
本発明において、収納状態のエアバッグクッションを収納し、インストルメントパネルの収納部に取り付けられる収納ケースを備え、第1フラップと第2フラップは、収納ケースに固定されている構成を採用してもよい。
【0024】
本発明において、第2フラップは、織物で構成すると共に、当該織物の経糸または緯糸が設けられる方向は、破断部の破断方向に実質的に平行である構成を採用してもよい。
【0025】
本発明において、第2フラップの初期破断部における隣り合う開孔の間の距離は、初期破断部以外の破断部における隣り合う開孔の間の距離よりも広い構成を採用してもよい。
【0026】
本発明において、第2フラップの破断部は、当該破断部以外の領域の布の重ね合わせ枚数より少ない重ね合わせ枚数とする構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、収納状態においてはエアバッグクッションの膨張展開時の開放側を少なくとも覆うと共に、膨張展開中のエアバッグクッションにより押されると開裂する第1フラップと、第1フラップの外側または内側に設けられると共に、膨張展開中のエアバッグクッションのフロントウィンドウスクリーンへの突出量を制限する第2フラップとが設けられている。第2フラップは、膨張展開中のエアバッグクッションにより押されると破断する破断部を有し、破断部は、第2フラップが破断部で破断する起点を与える部分となる初期破断部を備えている。インフレータから膨張ガスが噴射されると、エアバッグクッションの膨張展開が開始され、最初に第1フラップが開裂する。その後、第2フラップが広がって破断部で破断するまでの間、第2フラップによりエアバッグクッションのフロントウィンドウスクリーンへの突出量が制限される。これにより、第2フラップを有しないエアバッグ装置に比べて、膨張展開したエアバッグクッションがフロントウィンドウスクリーンに与える衝撃が緩和される。
【0028】
本発明では、第1フラップと第2フラップは、何れもエアバッグクッションの外部に設けられる。第2フラップについては、例えば、膨張展開中のエアバッグクッションとフロントウィンドウスクリーンが接触する接触部の外面部に重なる領域と、第2フラップを車両側に固定するための一対の接続部とを備えた構成を採用できる。本発明の構成は、エアバッグクッションの内部に設ける整流布の設置位置に何ら制約を与えない。本発明によれば、整流布を最適な位置に配置すると共に、膨張展開したエアバッグクッションからフロントウィンドウスクリーンに加わる荷重を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A図1Aは、実施形態に係るエアバッグ装置が車両に取り付けられた状態を側方から見た概略構成図である。
図1B図1Bは、図1Aのエアバッグクッションが膨張展開してフロントウィンドウスクリーンと接触する直前の状態を示す図である。
図2図2(a)は、実施形態に係るエアバッグ装置について、折り畳まれたエアバッグクッションの外側に第1フラップを巻き付けた状態を斜めから見た斜視図であり、図2(b)は、第1フラップの外側に第2フラップを取り付けた状態を斜めから見た斜視図である。
図3A図3Aは、図2(a)の第1フラップを巻き付けたエアバッグクッションと、第1フラップが開裂したエアバッグクッションを斜めから見た斜視図である。
図3B図3Bは、図2(a)のエアバッグクッションの分解図および第1フラップの展開図である。
図3C図3C(a)~図3C(c)は、第1フラップをエアバッグクッションに巻き付ける過程を示す図である。
図4図4(a)は、図2(b)の第2フラップを平置きにして上方から見た図であり、図4(b)は、第2フラップの他の例を示す図である。
図5A図5A(a)は、実施形態に係るエアバッグ装置について、第2フラップの破断部の破断が進行する状況を示す図であり、図5A(b)は、破断部を拡大した図である。
図5B図5B(a)は、実施形態の変形例(初期破断部が幅のあるスリット)に係るエアバッグ装置について、第2フラップの破断が進行する状況を示す図であり、図5B(b)は、破断部を拡大した図である。
図5C図5Cは、実施形態の変形例(初期破断部がピンホール)に係るエアバッグ装置について、第2フラップの破断が進行する状況を示す図である。
図5D図5Dは、実施形態の変形例(初期破断部が四角形)に係るエアバッグ装置について、第2フラップの破断が進行する状況を示す図である。
図5E図5Eは、実施形態の変形例(初期破断部が三角形)に係るエアバッグ装置について、第2フラップの破断が進行する状況を示す図である。
図5F図5Fは、実施形態の変形例(初期破断部が円形)に係るエアバッグ装置について、第2フラップの破断が進行する状況を示す図である。
図5G図5Gは、実施形態の変形例(初期破断部が楕円形)に係るエアバッグ装置について、第2フラップの破断が進行する状況を示す図である。
図5H図5Hは、実施形態の変形例(初期破断部が第2破断部及び第3破断部と同様の切れ込み)に係るエアバッグ装置について、第2フラップの破断が進行する状況を示す図である。
図6図6(a)は、図1Aの収納部を拡大した図であり、図6(b)は、エアバッグクッションが膨張展開を開始した直後の状態を示す図である。
図7図7(a)は第2フラップによる初期規制段階を、図7(b)は第2フラップによる第1破断段階を、図7(c)は第2フラップによる第2破断段階を、図7(d)は第2フラップが完全に破断した分離段階を示す図である。
図8図8は、収納ケースの変形例を示す斜視図である。
図9図9は、図8の収納ケースをインストルメントパネルの収納部に取り付けた状態を側方から見た図である。
図10】第2フラップの破断部は1枚の布で構成し、帯状部は2枚の布を重ね合わせた構成とする変形例を示す図であり、図10(a)は平面図、図10(b)は、A-A線における断面図である。
図11図10(a)は、ガソリン車において従来のエアバッグ装置のエアバッグクッションの膨張展開が完了した状態を側方から見た図であり、図10(b)は、電気自動車において従来のエアバッグ装置のエアバッグクッションの膨張展開が完了した状態を側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0031】
本実施形態は、自動車などの車両の座席1に着座した乗員5を保護するためのエアバッグ装置10である。図1Aに示すエアバッグ装置10は、助手席に対して設けられたものである。エアバッグ装置10は、車両のインストルメントパネル7内に配置され、衝突時など車両に衝撃が加わった時にエアバッグクッション11が乗員5に向けて膨張展開して乗員5の頭部、胸部、腹部等を正面から拘束する。
【0032】
本発明において「乗員」とは、一例を示せば、前面衝突試験用のダミー(Hybrid III AM50/ NHTSA [National Highway Traffic Safety Administration:米国高速道路交通安全協会]の規格[49CFR Part572 Subpart E 及びO] にて決められた前面衝突試験用人体ダミー)に準拠した、米国における平均的な男性に相当する体格を有するものをいい、概略サイズは、身長175cm、座高88cm、体重78kgである。但し、本発明はその他の人体ダミーに対しても適用可能である。
【0033】
本明細書において、「上」、「上側」とは座席1の正規の位置に着座した乗員5の頭部方向を、「下」、「下側」とは乗員5の足元方向を意味する場合がある。ここで、「正規の位置」とは、座席1におけるシートクッション2の左右方向の中心位置で、背もたれ部3に乗員5の背中が上下に亘って接する位置をいう。また、「前」、「前側」とは座席1の正規の位置に着座した乗員5の正面方向を、「後」、「後ろ側」とは乗員5の背面方向を意味する場合がある。
【0034】
座席1は、図1Aに示すように、シートクッション2と背もたれ部3とを備えている。背もたれ部3の上端部には、棒状の支持部材6を介して、ヘッドレスト4が取り付けられている。座席1は、背もたれ部3とヘッドレスト4とが一体形成されたものであってもよい。
【0035】
エアバッグ装置10は、図1Aに示すように、インストルメントパネル7のうち、助手席パネルに設けられた収納部7aの内部に配置されている。助手席パネルは、助手席の前面に配置されるパネルである。エアバッグクッション11は、折畳みや巻回等によって小さく折り畳まれた収納状態となって収納部7aに収納されている。収納部7aには、エアバッグ装置10の収納ケース13が取り付けられている。
【0036】
エアバッグクッション11が膨張展開する前の非膨張状態では、収納部7aの開口はインストルメントパネル7に設けられた扉部7bによって塞がれている。収納部7aの開口面の法線方向の延長線上に、フロントウィンドウスクリーン8が位置している。フロントウィンドウスクリーン8は、車両の前窓に設けられた板材であり、インストルメントパネル7の上面に対して車室側に傾斜して設けられている。
【0037】
図1Bは、エアバッグ装置10のエアバッグクッション11が膨張展開してフロントウィンドウスクリーン8と接触する直前の状態を示している。接触部11aは、エアバッグクッション11が膨張展開中にフロントウィンドウスクリーン8と最初に接触する部位を示している。
【0038】
エアバッグ装置10は、乗員5の前方に収納され乗員5に向かって膨張展開するエアバッグクッション11と、エアバッグクッション11を膨張させる膨張ガスを噴射するインフレータ12と、エアバッグクッション11を収納し、収納部7aに取り付けられる収納ケース13と、収納状態のエアバッグクッション11の外側に巻き付けられた第1フラップ20と、第1フラップの外側の一部を被覆する第2フラップ30とを備えている。
【0039】
本実施形態では、収納状態のエアバッグクッション11に対し、第1フラップ20と第2フラップ30が2重に設けられている。第1フラップ20は、エアバッグクッション11の膨張展開時の開放側(収納ケース13の開口部14から露出している側)を少なくとも覆っている。第2フラップ30は、第1フラップ20と、インストルメントパネル7の収納部7a及び収納ケース13との間に設けられている。
【0040】
車両の衝突時など車両に衝撃が加わった時に、センサからの信号を受けたインフレータ12が膨張ガスを噴射することで、エアバッグクッション11の膨張展開が開始される。エアバッグクッション11は、その膨張圧で収納部7aの扉部7bに開口を形成し、車両後方に向かって膨張展開する。エアバッグクッション11は、助手席に着座している乗員5を前方から拘束する。
【0041】
エアバッグクッション11は、乗員5とインストルメントパネル7およびフロントウィンドウスクリーン8との間の空間を埋めるように膨張展開する。これにより乗員5のインストルメントパネル7への衝突を防ぐ。また、フロントウィンドウスクリーン8への乗員5の衝突を防ぎ、併せて乗員5の車外放出を防ぐ。
【0042】
収納状態のエアバッグクッション11の外側は、図2(a)に示すように、第1フラップ20によって包まれている。また、第1フラップの外面の一部は、図2(b)に示すように、第2フラップ30によって包まれている。以下、第1フラップ20と第2フラップ30の構成について説明する。
【0043】
[第1フラップの構成]
第1フラップ20は、収納状態のエアバッグクッション11の外側の周囲を包む布材である。第1フラップ20は、例えば非ストレッチ素材からなる。第1フラップ20は、収納状態のエアバッグクッション11の位置及び形状を保持する。第1フラップ20の幅は一定である。第1フラップ20の長さは、折畳みや巻回により小さくまとめた収納状態のエアバッグクッション11の外周を巻き付けるのに十分な長さである。
【0044】
第1フラップ20は、エアバッグクッション11により押されると開裂する脆弱部21を有する。本実施形態では、脆弱部21は破線状に設けられた破断可能なスリットにより構成されている。各スリットは、細長い貫通孔である。脆弱部21は、第1フラップ20の幅方向に一方の端21aから他方の端21bに亘って延びている。脆弱部21は、エアバッグクッション11の膨張展開に伴って開裂する部位である。第1フラップ20では、脆弱部21の強度が他の部分よりも弱く、膨張展開中のエアバッグクッション11により押されると、脆弱部21が開裂する。
【0045】
図3Aは、第1フラップ20を巻き付けたエアバッグクッション11と、第1フラップ20の脆弱部21が開裂した状態のエアバッグクッション11を示している。脆弱部21が開裂すると、第1フラップ20は分断される。エアバッグクッション11は、第1フラップ20の開裂した部分を通って車室空間へ膨張展開する。
【0046】
図3Bは、図3Aのエアバッグクッション11の分解図である。エアバッグクッション11の内部には、インフレータ12が備えられている。インフレータ12はガス発生装置であって、センサから信号を受けて稼動し、エアバッグクッション11に膨張ガスを供給する。本実施形態では、ディスク型のインフレータ12を使用している。エアバッグクッション11の図中下側の底面には孔部(不図示)が設けられていてインフレータ12は孔部から挿入される。インフレータ12の底部には四方にスタッドボルト16が取り付けられている。スタッドボルト16は、第1フラップ20を貫通して収納部7aの収納ケース13に締結される。
【0047】
第1フラップ20には、スタッドボルト16を貫通させる第1ボルト孔24と、その中央にインフレータ12の底面を露出させる中央孔23が設けられている。第1ボルト孔24は、第1フラップ20をエアバッグクッション11に接続する接続部としても利用できる。第1ボルト孔24にスタッドボルト16を通すことで、第1フラップ20がエアバッグクッション11に接続される。第1フラップ20において中央孔23及び第1ボルト孔24を有する領域は、収納部7aの底部に接地する接地面22となる。
【0048】
第1フラップ20は、図3C(a)に示すように矩形であって、接地面22が一端側に位置している。第1フラップ20の他端側の縁部には、幅方向に第2ボルト孔26が設けられており、スタッドボルト16を通すことで接地面22に重ねて固定される。
【0049】
第1フラップ20は、まず第1ボルト孔24にインフレータ12のスタッドボルト16を通し、接地面22をエアバッグクッション11に接続させる。次に、図3C(b)に例示するように、第1フラップ20を長手方向に、エアバッグクッション11の外面に巻きつける。そして、図3C(c)に示すように、縁部の第2ボルト孔26にスタッドボルト16を通して固定する。これにより第1フラップ20はエアバッグクッション11に巻き付いた状態となる。
【0050】
本実施形態では、エアバッグクッション11を第1フラップ20で包むことで、エアバッグクッション11の折畳みや巻回が維持できるため、エアバッグクッション11の運搬や設置作業が容易になる。また、本実施形態では、第1フラップ20が取り付けられていることで、膨張展開を開始した直後のエアバッグクッション11の展開挙動が安定し、エアバッグクッション11を乗員5が着座している方向に向かわせることができる。
【0051】
[第2フラップの構成]
図4(a)は、図2(b)の第2フラップ30を広げて平坦面に平置きにした状態を示している。第2フラップ30は、膨張展開中のエアバッグクッション11のフロントウィンドウスクリーン8への突出量を制限する布材である。第2フラップ30は、例えば、非ストレッチ素材である。第2フラップ30は、例えば、エアバッグクッション11を構成する基布と同じ材質で構成されている。本実施形態の第2フラップ30は、1枚の布材により構成されている。
【0052】
第2フラップ30は、所要の幅を有し、真っ直ぐな帯状に形成された部分である帯状部40と、帯状部40よりも幅が広い拡幅部36とを備えている。帯状部40の長手方向の両端は、第1端部41及び第2端部42からなる。第1端部41及び第2端部42は、第2フラップ30を車両側に固定される部位であり、それぞれ取付け孔41a,42aが設けられている。取付け孔41a,42aを有する第1端部41,第2端部42は、第2フラップ30を車両側に固定するための一対の接続部に相当する。
【0053】
具体的に、第2フラップ30は、取付け孔41a,42aに、インフレータ12のスタッドボルト16を通すことにより、第1端部41及び第2端部42が収納ケース13に固定される。あるいは、第2フラップ30は、取付け孔41a,42aを、収納ケース13の開口部14の周縁部に設けたフックに通すことにより、収納ケース13に固定するようにしてもよい。第2フラップ30は、両端を車両側に固定することで、第2フラップ30の中間部でエアバッグクッション11の接触部11aの外面部を押さえることが可能となる。第2フラップ30は、エアバッグクッション11の接触部11aの外面部を押さえることで、エアバッグクッション11のフロントウィンドウスクリーン7への突出量を制限する。
【0054】
帯状部40には、長さ方向に複数回折り返されて第2フラップ30同士が互いに重なり合う重複部を設けてもよい。重複部40には、折り返しの状態が保持されるように、互いに重なり合う第2フラップ30の布を一緒に縫い付ける縫製部を設けてもよい。重複部を設けることにより、帯状部40の長さの調整が容易になる。
【0055】
第2フラップ30は、帯状部40と、帯状部40の長手方向と交差する方向に幅が拡大している拡幅部36とを有する。拡幅部36は、第1端部41と第2端部42の間の任意の位置に形成されている。拡幅部36は、帯状部40の長手方向に対して交差する方向に延出された部位である。拡幅部36は左右対称の外形を呈している。拡幅部36は、第1端部41と第2端部42の中間の位置に設けられていてもよいし、中間以外の位置に設けられていてもよい。
【0056】
第2フラップ30は、エアバッグクッション11が膨張展開中にフロントウィンドウスクリーン8と最初に接触する接触部11aの外面部に重なる領域37を有する。拡幅部36を第1端部41と第2端部42の中間に設ける場合は、図4(a)に示すように、拡幅部36の中央部に接触部11aの外面部に重なる領域37を備える。拡幅部36を第1端部41と第2端部42の中間以外の位置に設ける場合は、図4(b)に示すように、帯状部40に接触部11aの外面部に重なる領域37を備える。
【0057】
第2フラップ30は、第1フラップ20の脆弱部21の開裂後に、エアバッグクッション11により押されると破断する破断部31を有する。破断部31は、拡幅部36の長手方向の中央部に形成されている。破断部31は、拡幅部36の延出方向に延びている。破断部31は、第1端部41と第2端部42の間に生じる張力の大きさに応じて破断する部位である。第2フラップ30では、破断部31の強度が他の部分よりも弱く、エアバッグクッション11の膨張圧により押されると、破断部31が破断する。
【0058】
第2フラップ30は、エアバッグクッション11を構成する基布と同じ材質の織物を用いてもよい。第2フラップ30を構成する織物は、経糸及び緯糸の平織りにより形成されている。本実施形態では、経糸又は緯糸のうち、一方が破断部31の形成方向に対して略直角に配置され、他方が破断部31の形成方向に対して実質的に平行となるように配置する。つまり、第2フラップ30を構成する織物の経糸または緯糸が設けられる方向は、破断部31の破断方向に実質的に平行とする。これにより、破断部31の破断の進行を安定させることができる。
【0059】
破断部31は、第2フラップ30に生じる張力に対して交差する方向に形成された複数の開孔33により構成されている。本実施形態では、破断部31の開孔33は、所要の間隔を空けて直線状に配列された切り込みである。
【0060】
破断部31は、図5Aに示すように、その中央部分に初期破断部32を備えている。初期破断部32は、破断部31の中央部31aを含む領域に設けられている。初期破断部32は、第2フラップ30が破断部31で破断する起点を与える部分である。本実施形態の初期破断部32の開孔33は、所要の長さのスリット幅W1及びスリット間隔S1を有する2本の切り込み33aにより構成されている。図5Aに示すように、初期破断部32の開孔33は、開孔34、開孔35のように、エアバッグクッション11が膨張展開する過程において左右均等にそのサイズが徐々に大きくなり、開孔35がさらに大きくなった後に完全に破断する。
【0061】
破断部31は、初期破断部32以外に第2破断部38と第3破断部39を備える。破断部31は、初期破断部32の両側に第2破断部38と第3破断部39を有し、第2破断部38及び第3破断部39は、拡幅部36の延出方向両端もしくはその近傍を含む領域まで延びている。具体的に、第2破断部38は拡幅部36の第1延出部36aを含む領域に、第3破断部39は拡幅部36の第2延出部36bを含む領域に設けられている。本実施形態では、初期破断部32のスリット間隔S1は、第2破断部38及び第3破断部39におけるスリット間隔S2よりも広くすることで、初期破断部32の強度を一定程度高く設定し、初期破断部32の破断が進行するタイミングを調整している。なお、初期破断部32の長さ、スリット幅W1、スリット間隔S1、スリットの数等は、エアバッグクッション11の容量、インフレータ12のガス圧等の条件によって適宜変更される。
【0062】
[第2フラップの作用]
次に、収納状態のエアバッグクッション11を配置するインストルメントパネル7の収納部7aの構造と、エアバッグクッション11が膨張展開する過程において、第2フラップ30の作用によりエアバッグクッション11のフロントウィンドウスクリーン8への突出量(図1Bの矢印Eで示す部分の長さ)を制限する方法について説明する。
【0063】
収納部7aは矩形の内部空間を有している。収納ケース13は、図6(a)に示すように、貫通孔7dに開口部14の取付け部15を通すことで取り付けられる。収納ケース13には、第1フラップ20及び第2フラップ30で包まれた収納状態のエアバッグクッション11が収納されている。
【0064】
収納ケース13の底面板には、スタッドボルト16により、エアバッグクッション11とインフレータ12が取り付けられている。エアバッグクッション11の内部にはインフレータ12から噴射されたガスの流れを整える整流布(不図示)が配置されている。
【0065】
扉部7bには、扉部7bの開裂を可能にする溝部7cが設けられており、膨張展開を開始したエアバッグクッション11の圧力によって開口が形成される。収納状態において、第1フラップ20の脆弱部21及び第2フラップ30の破断部31は、扉部7bに面している。
【0066】
図6(b)は、エアバッグクッション11が膨張展開を開始した直後の状態を示している。エアバッグクッション11が膨張を開始すると、その膨張圧で脆弱部21が開裂し、第1フラップ20の上面25が第1片25aと第2片25bとに分離する。エアバッグクッション11は、分離した第1片25a及び第2片25bの間、及び、開いた蓋部7bの間を通って、車室空間へ向かって膨張展開を開始する。
【0067】
図7は、第1フラップ20の脆弱部21が開裂した後に、エアバッグクッション11の膨張展開が進む過程を模式的に示した図である。エアバッグクッション11の膨張展開が進むと、図1Bに示すように、接触部11aがフロントウィンドウスクリーン8に正対するように膨出する。
【0068】
初期規制段階(図7(a)参照)は、第2フラップ30の破断部31が破断していない状態で、第2フラップ30により、エアバッグクッション11の接触部11aのフロントウィンドウスクリーン8への突出量が規制されている状態である。
【0069】
第1破断段階(図7(b)参照)は、初期破断部32の開孔33の破断が一定程度進行した状態である。エアバッグクッション11の膨張展開が進行すると、第2フラップ30に所定の張力が作用し、最初に初期破断部32の破断が進行する。第1破断段階では、エアバッグクッション11の接触部11aのフロントウィンドウスクリーン8への突出量は第2フラップ30によって、いまだ規制されている。
【0070】
第2破断段階(図7(c)参照)は、第2破断部38及び第3破断部39まで破断が進行した状態である。第2破断段階においても、エアバッグクッション11の接触部11aのフロントウィンドウスクリーン8への突出量は、第2フラップ30により、いまだ規制されている。
【0071】
分離段階(図7(d)参照)は、破断部31の破断が拡幅部36の延出方向の両端部まで到達し、第2フラップ30が完全に破断した状態である。分離段階では、エアバッグクッション11の接触部11aのフロントウィンドウスクリーン8への突出量は規制されていない。
【0072】
第2フラップ30は、その長さ、破断部31の開孔31の構成を適宜調整することで、エアバッグクッション11のフロントウィンドウスクリーン8への突出量を適切に抑制できる。第2フラップ30は、エアバッグクッション11のフロントウィンドウスクリーン8への突出量が抑制された後、さらにエアバッグクッション11の膨張展開が進んで引張力が増したときに破断するように構成する。具体的に、本実施形態では、破断部31は、膨張展開中のエアバッグクッション11がフロントウィンドウスクリーン8に接触するタイミング付近で破断するように構成されている。
【0073】
ここで、「接触するタイミング付近で」とは、エアバッグクッション11がフロントウィンドウスクリーン8に接触する瞬間の時間をTとしたとき、その時間Tの前後数十ミリ秒の間に破断部31が破断することを意味する。従って、「接触するタイミング付近で」には、膨張展開中のエアバッグクッション11がフロントウィンドウスクリーン8に接触し始めた直後に破断する場合が含まれるし、エアバッグクッション11がフロントウィンドウスクリーン8に接触する直前に破断する場合も含まれる。いずれも場合も、エアバッグクッション11がフロントウィンドウスクリーン8に向かって膨張する速度を抑制し、膨張したエアバッグクッション11がフロントウィンドウスクリーン8に接触したときにフロントウィンドウスクリーン8に与える荷重を低減することができる。
【0074】
第2フラップ30は、初期規制段階、第1破断段階、第2破断段階の間はエアバッグクッション11のフロントウィンドウスクリーン8への突出量を制限している。エアバッグクッション11の接触部11aとフロントウィンドウスクリーン8が少なくとも接触し始めると、破断部31が完全に破断して分離段階となる。
【0075】
第2フラップ30は、接触部11aがフロントウィンドウスクリーン8に接触し始めるまでは分離せず、連結状態を保持して第2フラップ30の張力によりエアバッグクッション11のフロントウィンドウスクリーン8への膨張を制御するようにしてもよい。これにより、接触部11aがフロントウィンドウスクリーン8に到達する前に第2フラップ30が切断されて、フロントウィンドウスクリーン8に加わる荷重を低減させる効果が減少することを防止できる。
【0076】
[本実施形態の効果]
例えば車両の衝突時など車両に衝撃が加わった時に、センサからの信号を受けたインフレータ12が膨張ガスを噴射することで、エアバッグクッション11の膨張展開が開始される。エアバッグ装置10では、まず第1フラップ20が、エアバッグクッション11の膨張圧により外側に押されて脆弱部21で破断する。さらに、収納部7aがエアバッグクッション11の膨張圧により外側に押されて扉部7bで開裂する。そして、エアバッグクッション11が収納部7aの開口から外側に膨出していく。その後、エアバッグクッション11の膨張圧により第2フラップ30が外側に押され、第2フラップ30が広がるが、第2フラップ30は破断部31で破断するまでの間、エアバッグクッション11のフロントウィンドウスクリーン8への突出量を制限する。これにより、第2フラップ30を有しないエアバッグ装置に比べて、膨張展開したエアバッグクッション11がフロントウィンドウスクリーン8に与える衝撃が緩和される。
【0077】
本実施形態では、第1フラップ20と第2フラップ30は、何れもエアバッグクッション11の外部に設けられる。第2フラップ30は、帯状部40の両端(第1端部41及び第2端部42)が車両側に固定されており、ループ状になった中間部に拡幅部36を有しており、拡幅部36はエアバッグクッション11とフロントウィンドウスクリーン8が接触する接触部11aの外面部と重なる領域37を備えている。そのため、従来のエアバッグ装置とは異なり、エアバッグクッション11の内部に設ける整流布の設置位置に何ら制約を与えない。本実施形態によれば、整流布を最適な位置に配置すると共に、膨張展開したエアバッグクッション11からフロントウィンドウスクリーン8に加わる荷重を低減できる。
【0078】
本実施形態では、第2フラップ30に加えて、第1フラップ20を設けている。エアバッグクッション11は、折り畳まれた圧縮状態で収納ケース13に収納されるため、仮に第1フラップ20がない場合、第2フラップ30は、エアバッグクッション11の圧縮反力により押された状態となる。他方、第2フラップ30の長さは第1フラップ20よりも長く、必要であれば折り返し部などの長さ調節部を設けて、比較的緩く張った又は弛ませた状態で取り付けられる。そのため、エアバッグクッション11の圧縮反力により押されると、第2フラップ30が緩み、破断予定位置又はその近傍で破断部31が破断しない虞がある。本実施形態では、第1フラップ20を設けることで、上述の圧縮反力により第2フラップ30が押されて緩むことを抑制できる。
【0079】
[実施形態の第1変形例]
本変形例は、第2フラップ30の初期破断部32の開孔33を様々な形状に変化させたものである。
【0080】
例えば、初期破断部32の開孔33は、単なる切り込み33aではなく、若干の幅を有するスリット33bで構成してもよい(図5B参照)。この場合においても、初期破断部32のスリット間隔S1は第2破断部38及び第3破断部39におけるスリット間隔S2よりも広くすることで、初期破断部32の破断が進行する速度を一定程度遅くすることができる。
【0081】
初期破断部32の開孔33は、ピンホール33cで構成してもよいし(図5C参照)、多角形の小孔とすることも可能である。
【0082】
具体的に、多角形の開孔33は、四角形33dあるいは三角形33eとしてもよい(図5D図5E参照)。この場合において、多角形の開孔33d,33eは、その角部分33da,33eaが破断部31に連続するようにする。角部分33da,33eaを破断部31と連続させることで、初期破断部32から第2破断部38へ、また初期破断部32から第3破断部39へ、破断をスムーズに進行させることができる。
【0083】
開孔33の形状は、円形33fもしくは楕円形33gとしてもよい(図5F図5G参照)。また、開孔33を切り込みで構成する場合、スリット間隔S1は第2破断部38及び第3破断部39におけるスリット間隔S2と同じでもよい(図5H参照)。
【0084】
いずれの変形例も、上述した本実施形態と同様の効果が得られるので、諸条件に応じて適宜最適な構成を採用すればよい。なお、図5Aの実施形態において、初期破断部32のスリット間隔S1を、第2破断部38及び第3破断部39におけるスリット間隔S2よりも広くすることを説明したが、開孔33が多角形や円形等である上述の変形例においても同様に、第2フラップ30の初期破断部31における隣り合う開孔33の間の距離は、初期破断部31以外の破断部38,39における隣り合う開孔30の間の距離よりも広くしてもよい。初期破断部32の強度を一定程度高く設定することで、初期破断部32の破断が進行する速度を調整できる。
【0085】
[実施形態の第2変形例]
本変形例では、収納部7aに、図8及び図9に示すような形状の収納ケース13が取り付けられている。収納ケース13は、膨張ガスにより膨張展開するエアバッグクッション11が飛び出す横長の開口部14が形成された箱体である。
【0086】
収納ケース13は、前面板13aと、前面板13aに対面する後面板13bと、前面板13aの下端部と後面板13bの下端部との間を延びる底面板13cと、左右方向において前面板13aの端部と後面板13bの端部との間を延びる一対の側面板13dとを備えた箱体である。
【0087】
収納ケース13では、前面板13aの外面及び後面板13bの外面にそれぞれ複数のフック17a,17bが設けられている。各フック17a,17aは、先端が底面板13c側を向くように形成され、開口部14の縁部の外側近傍に配置されている。底面板13cにはインフレータ12のスタットボルト16が締結される螺孔18が設けられている。
【0088】
収納ケース13は、前面板13aの複数のフック17aと後面板13bの複数のフック17bにより収納部7aに取り付けられる。収納部7aには、取り付け時に複数のフック17a,17bが挿通される複数の貫通孔7dが形成されている。
【0089】
本変形例では、フック17a,17bを収納ケース13の車体側への取り付けに利用しているが、フック17a,17bは第1フラップ20及び第2フラップ30の取り付けに兼用することもできる。これにより、エアバッグ装置10の構成を簡素化できる。また、本変形例では、フック17a,17bが3つ以上のフックにより構成されているため、エアバッグクッション11により第1フラップ20及び第2フラップ30が押された時に変形が生じにくく、破断予定位置又はその近傍で、脆弱部21、破断部31の破断を安定期に生じさせることができる。
【0090】
本変形例では、フック17a,17bの両方とも開口部14の縁部の近傍に配置しているが、フック17a及びフック17bの片方だけを開口部14の縁部の近傍に配置してもよい。
【0091】
[その他の変形例]
上述の実施形態において、エアバッグ装置10は、助手席用に限らず、運転席に対して設けてもよい。
【0092】
上述の実施形態において、第1フラップ20及び第2フラップ30を構成する素材は、エアバッグクッション11に使用される基布に限定されるものではなく、所定の張力に耐えることができて耐環境性を有するものであれば、他のエラストマーや樹脂材等であってもよい。
【0093】
上述の実施形態において、第2フラップ30は、第1フラップ20の内側に設けてもよい。折り畳まれたエアバッグクッション11の外側に第2フラップ30を取り付け、第2フラップ30の外側に第1フラップ20を巻き付けた構成である。この場合、第1フラップ20の脆弱部21が開裂すると、上面25が第1片25aと第2片25bとに分離し、第1片25a及び第2片25bの内側から第2フラップ30が延びてエアバッククッション11のフロントウィンドウスクリーン8への突出量を規制する。
【0094】
上述の実施形態において、第2フラップ30の破断部31は、当該破断部31以外の領域の布の重ね合わせ枚数より少ない重ね合わせ枚数で構成してもよい。具体的に、図10に示すように、帯状部40は2枚の布40a,40bを重ね合わせてその周囲を縫製40cにより縫合した構成とする一方、破断部31を含む拡幅部36は1枚の布で構成してもよい。あるいは、帯状部40の布の重ね合わせ枚数は3枚とし、破断部31の布の重ね合わせ枚数は2枚としてもよい。布の重ね合わせ枚数に差異を設けることで、破断部31の破断が完了するタイミングを調整することができる。
【0095】
上述の実施形態において、第2フラップ30は、1枚の布材である必要はなく、2枚の布を縫製部において縫合して一体化した構成でもよい。
【0096】
上記変形例では、破断部31は、開孔31を設けず、2枚の布を一体化する縫製部を破断部31としてもよい。この場合、縫製部の強度は、第2フラップ30によりエアバッグクッション11のフロントウィンドウスクリーン8への突出量が抑制された後、さらにエアバッグクッション11の膨張展開が進んで引張力が増したときに、エアバッグクッション11がフロントウィンドウスクリーン8と接触するのとほぼ同時に破断する程度の強度とする。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、乗員を前方から保護するエアバッグ装置等に適用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 座席
5 乗員
7 インストルメントパネル
7a 収納部
8 フロントウィンドウスクリーン
10 エアバッグ装置
11 エアバッグクッション
11a 接触部
12 インフレータ
13 収納ケース
20 第1フラップ
21 脆弱部
30 第2フラップ
31 破断部
32 初期破断部
33 開孔
36 拡幅部
37 接触部の外面部と重なる領域
38 第2破断部
39 第3破断部
40 帯状部
41 第1端部(一対の接続部)
42 第2端部(一対の接続部)
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6
図7
図8
図9
図10
図11