(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】光学システム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20241213BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20241213BHJP
H04N 13/344 20180101ALI20241213BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
H04N13/344
(21)【出願番号】P 2022515993
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 IB2020058391
(87)【国際公開番号】W WO2021048767
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-09-06
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ル,ジョン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ティモシー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ネビット,ティモシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ジシェン
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108897136(CN,A)
【文献】特開平06-059217(JP,A)
【文献】国際公開第2018/013784(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
H04N 5/64
H04N 13/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画像及び第2の画像を観察者に表示するための光学システムであって、
異なる第1のディスプレイ及び第2のディスプレイと、
前記第2のディスプレイと前記観察者との間に配置され、前記第1のディスプレイに対して斜めに方向付けされている反射偏光子であって、実質的に明確に区別された、青色反射帯域、緑色反射帯域、及び赤色反射帯域を有する、反射偏光子と、
前記反射偏光子と前記第2のディスプレイとの間に配置されている、光学積層体であって、
前記反射偏光子と前記第2のディスプレイとの間に配置されている部分反射体と、
前記反射偏光子と前記部分反射体との間に配置されているリターダ層と、を
含む光学積層体とを備え、
実質的な垂直入射光に関して、か
つ400nm
~700nmにわたる所定の波長範囲における青色波長、緑色波長、及び赤色波長のそれぞれに関して、
前記反射偏光子が、第1の偏光状態を有する前記入射光の少なくとも70%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する前記入射光の少なくとも60%を透過し、
前記部分反射体が、前記第1の偏光状態及び前記第2の偏光状態のそれぞれに関して、前記入射光の少なくとも70%を反射
し、
前記リターダ層が、前記第1の偏光状態及び前記第2の偏光状態のうちの少なくとも一方に関する、前記青色波長、前記緑色波長、及び前記赤色波長のうちの少なくとも1つにおける実質的な4分の1波長リターダであり、
前記第1の偏光状態及び前記第2の偏光状態のそれぞれに関して、かつ前記青色波長と前記緑色波長との間の青色-緑色波長、及び前記緑色波長と前記赤色波長との間の緑色-赤色波長のそれぞれに関して、
前記反射偏光子が、前記入射光の少なくとも70%を透過し、
前記部分反射体が、前記入射光の少なくとも60%を透過
し、
前記第1のディスプレイと前記反射偏光子との間に配置されている、吸収偏光子を更に備え、それにより、実質的な垂直入射光に関して、かつ前記青色波長、前記緑色波長、及び前記赤色波長のそれぞれに関して、前記吸収偏光子が、前記第1の偏光状態を有する前記入射光の少なくとも70%を透過し、かつ前記第2の偏光状態を有する前記入射光の少なくとも70%を吸収する、
光学システム。
【請求項2】
前記青色波長が
、425nm
~475nmの範囲内であり、前記緑色波長が
、525nm
~575nmの範囲内であり、前記赤色波長が
、625nm
~700nmの範囲内である、請求項1に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して光学システムに関し、特に第1の画像及び第2の画像を観察者に表示するための光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
拡張現実(augmented reality;AR)技術は、現実の物理的世界内に仮想のコンピュータ生成画像を重ね合わせることによって、現実の物理的世界に対するユーザの認識及び現実の物理的世界との対話を大幅に増強する。ヘッドマウント式ディスプレイ(head-mounted display;HMD)は、AR技術に関して最も広く使用されている実施形態のうちの1つである。AR HMDは、頭部に、又はヘルメットの一部に装着されるデバイスであり、ユーザが仮想画像と現実世界の画像との双方を見ることを可能にする。光学シースルーシステムは、コンピュータ生成画像と共に現実の物理的世界の直接視を可能にするために、ハーフミラー又はビームスプリッタを採用している。それゆえ、解像度の低下を一切伴うことなく、より自然に現実世界を観察することができる。光学シースルータイプのHMDが、AR HMD製品において一般的に使用されている。
【発明の概要】
【0003】
本開示のいくつかの態様では、第1の画像及び第2の画像を観察者に表示するための光学システムが提供される。この光学システムは、異なる第1のディスプレイ及び第2のディスプレイを含む。反射偏光子が、第2のディスプレイと観察者との間に配置され、第1のディスプレイに対して斜めに方向付けされている。反射偏光子は、実質的に明確に区別された、青色反射帯域、緑色反射帯域、及び赤色反射帯域を有する。光学積層体が、反射偏光子と第2のディスプレイとの間に配置されている。光学積層体は、反射偏光子と第2のディスプレイとの間に配置されている部分反射体を含む。光学積層体はまた、反射偏光子と部分反射体との間に配置されているリターダ層も含む。実質的な垂直入射光に関して、かつ約400nm~約700nmにわたる所定の波長範囲における青色波長、緑色波長、及び赤色波長のそれぞれに関して、反射偏光子は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも70%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%を透過する。実質的な垂直入射光に関して、かつ約400nm~約700nmにわたる所定の波長範囲における青色波長、緑色波長、及び赤色波長のそれぞれに関して、部分反射体は、第1の偏光状態及び第2の偏光状態のそれぞれに関して、入射光の少なくとも70%を反射する。リターダ層は、第1の偏光状態及び第2の偏光状態のうちの少なくとも一方に関する、青色波長、緑色波長、及び赤色波長のうちの少なくとも1つにおける実質的な4分の1波長リターダである。第1の偏光状態及び第2の偏光状態のそれぞれに関して、かつ青色波長と緑色波長との間の青色-緑色波長、及び緑色波長と赤色波長との間の緑色-赤色波長のそれぞれに関して、反射偏光子は、入射光の少なくとも70%を透過する。第1の偏光状態及び第2の偏光状態のそれぞれに関して、かつ青色波長と緑色波長との間の青色-緑色波長、及び緑色波長と赤色波長との間の緑色-赤色波長のそれぞれに関して、部分反射体は、入射光の少なくとも60%を透過する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示の様々な態様が、添付図面を参照してより詳細に論じられる。
【
図1】本開示のいくつかの態様による光学システムを示す概略図である。
【
図2】本開示のいくつかの態様による光学システムを示す概略図である。
【
図3】いくつかの態様による光学システムへの垂直入射光を概略的に示す。
【
図4】本開示のいくつかの態様による赤色反射帯域、緑色反射帯域、及び青色反射帯域を示すグラフ図である。
【
図5】本開示のいくつかの態様による光学積層体を概略的に示す。
【0005】
これらの図は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。図中で使用されている同様の番号は、同様の構成要素を指す。しかしながら、所与の図において、或る構成要素を指すために或る番号を使用することは、別の図において同じ番号が付された構成要素を限定することを意図するものではない点が理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の説明では、本明細書の一部を構成すると共に様々な実施形態が実例として示されている添付図面が参照される。他の実施形態が想到され、本明細書の範囲又は趣旨から逸脱することなく実施されてもよい点を理解されたい。それゆえ、以下の「発明を実施するための形態」は、限定的な意味で解釈されるものではない。
【0007】
ヘッドマウント式ディスプレイデバイスなどの、ニアアイディスプレイ(Near-eye Display;NED)デバイスが、拡張現実体験及び仮想現実体験などの体験のために、観察者によって装着される場合がある。バードバス(birdbath)NEDデバイスは、画像生成デバイスからの画像の焦点を合わせるために、ビームスプリッタが軸上反射体と共に使用されるデバイスである。光学システムは、画像が現実の物理的世界の視界と統合される際に、増大した輝度を有する画像を観察者に表示するべきである。本明細書で説明される実施形態は、これらの課題及び他の課題に対処する。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、
図1及び
図2に示されるように、第1の画像(21)及び第2の画像(31)を観察者(10)に表示するための光学システム(300)が提供される。いくつかの実施形態では、光学システム(300)は、ウェアラブルディスプレイデバイス又はヘッドマウント式ディスプレイ(HMD)内に組み込まれてもよい。光学システムは、第1の画像(21)を生成する第1のディスプレイ(20)と、第2の画像(31)を生成する異なる第2のディスプレイ(30)とを含む。第1のディスプレイ(20)は、任意の好適なタイプの画像生成ディスプレイを含んでもよく、偏光ディスプレイデバイスであっても、又は非偏光ディスプレイデバイスであってもよい。例えば、第1のディスプレイは、例えば液晶ディスプレイ(liquid crystal display;LCD)及び有機発光ダイオード(organic light emitting diode;OLED)ディスプレイのうちの1つ以上などの、電子ディスプレイであってもよい。他の実例では、第1のディスプレイ(20)は、OLED(Organic Light Emitting Device;有機発光デバイス)ディスプレイなどの、発光型マイクロディスプレイ、及び/又は、LCoS(Liquid Crystal on Silicon;液晶オンシリコン)ディスプレイ若しくはデジタル光処理(digital light processing;DLP)デバイスなどの、反射型マイクロディスプレイを含み得る。第1のディスプレイ(20)は、他の光学構成要素に対して、任意の好適な位置を有し得る。例えば、いくつかの実施例では、第1のディスプレイ(20)は、観察者(10)の視点から、光学システムの上側に配置されてもよい。第2のディスプレイ(30)は、現実世界のシーン内の、現実世界の物体であってもよい。現実世界のシーンは、電子的に視覚が支援されることなく観察者が利用可能な光又は画像であってもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、反射偏光子(40)が、第2のディスプレイ(30)と観察者(10)との間に配置されてもよい。反射偏光子(40)は、第1のディスプレイ(20)に対して斜めに方向付けされてもよい。いくつかの実例では、反射偏光子は、第1のディスプレイ(20)と約30度~約60度の角度(θ)を成すか、又は第1のディスプレイ(20)に対して40度~約60度であってもよい。いくつかの態様では、反射偏光子は、第1のディスプレイ(20)と45度の角度(θ)を成してもよい。反射偏光子(40)は、
図4に示されるように、実質的に明確に区別された、青色反射帯域(40b)、緑色反射帯域(40g)、及び赤色反射帯域(40r)を有する。
【0010】
反射偏光子は一般に、第1の偏光の光を透過し、かつ第2の異なる偏光の光を反射する材料を含む。反射偏光子としては、限定するものではなく、例として、拡散反射偏光子、多層反射偏光子、及びコレステリック反射偏光子が挙げられる。反射偏光子(40)は、広帯域反射偏光子、又はノッチ反射偏光子であってもよい。他の実例では、反射偏光子(40)は、吸収直線偏光子、多層ポリマー反射偏光子、ワイヤグリッド反射偏光子、又は、反射偏光子の積層体のうちの1つ以上であってもよく、第1の偏光状態を有する光を実質的に透過し、直交する第2の偏光状態を有する光を実質的に反射することにより、ディスプレイ(20)によって放出された光を偏光させる。実質的に一軸配向された反射偏光子が、3M Companyより商品名Advanced Polarizing Film5又はAPFで入手可能である。他のタイプの多層光学フィルム反射偏光子(例えば、3M Companyより入手可能な、Dual Brightness Enhancement Film又はDBEF)もまた使用されてもよい。いくつかの実施形態では、他のタイプの反射偏光子(例えば、ワイヤグリッド偏光子)が使用される。
【0011】
光学システム(300)は、反射偏光子(40)と第2のディスプレイ(30)との間に配置されている光学積層体(50)を含む。光学積層体は、少なくとも部分反射体(60)及びリターダ層(70)を含む。いくつかの実施形態では、部分反射体(60)は、反射偏光子(40)と第2のディスプレイ(30)との間に配置されてもよく、リターダ層(70)は、反射偏光子(40)と部分反射体(60)との間に配置されてもよい。いくつかの態様では、光学積層体は、
図2に示されるような湾曲状の光学積層体(50a)であってもよい。場合によっては、部分反射体(60a)及びリターダ層(70a)のうちの少なくとも一方が、湾曲状であってもよい。
【0012】
特定の態様では、部分反射体(60、60a)は、ノッチ反射体であってもよい。例えば、部分反射体(60、60a)は、
図4で概略的に示されるような(例えば、第1の偏光状態及び第2の偏光状態のそれぞれに関する)反射帯域を有し得る。他の態様では、部分反射体(60、60a)は、例えばアルミニウム又は銀などの金属を、プラスチック又はガラスのプレート上にコーティングすることによって得られる、50/50ビームスプリッタであってもよい。いくつかの他の態様では、部分反射体(60)は、合計で約50を超える、100を超える、又は150を超える数の、複数のポリマー層を含み得る。これらのポリマー層は、複数の境界面で反射された光が、強め合う干渉又は弱め合う干渉を受けることにより、所望の反射特性又は透過特性を部分反射体に付与するような、十分に薄いものであってもよい。複数のポリマー層を含む反射フィルム(例えば、部分反射体又は反射偏光子)が、例えば、米国特許第5,882,774号(Jonzaら)、同第6,179,948号(Merrillら)、及び同第6,783,349号(Neavinら)で説明されており、それぞれが、本明細書に矛盾しない限りにおいて、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ポリマー層は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate;PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(glycol-modified polyethylene terephthalate;PETG)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate;PEN)、及びPEN/PETコポリマーのうちの1つ以上を含む。或る波長範囲にわたる、より少ない数の層ペアは、狭帯域幅の光源に関する、対応する入射角での、より低い波長における透過率を増大させ得る。本開示の一態様によれば、部分反射体(60、60a)は、第2のディスプレイ(30)によって生成された第2の画像(31)を透過する。
【0013】
特定の実施形態では、リターダ層(70)は、反射偏光子(40)上に積層されているフィルムであってもよく、又は、反射偏光子(40)に適用されているコーティングであってもよい。例えば、リターダ層(70)は、反射偏光子(40)に積層されている配向ポリマーフィルムであってもよく、又は、反射偏光子(40)上の液晶ポリマーコーティングであってもよい。いくつかの他の実施形態では、リターダ層(70)は、少なくとも1つの所望の波長のうちの少なくとも1つの波長における4分の1波長リターダ層であってもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの所望の波長は、複数の所望の波長であってもよく、リターダ層(70)は、それら複数の所望の波長のうちの少なくとも1つの波長における4分の1波長リターダであってもよい。いくつかの態様では、リターダ層(70)は、第1の偏光状態及び第2の偏光状態のうちの少なくとも一方に関する、青色波長、緑色波長、及び赤色波長のうちの少なくとも1つにおける4分の1波長リターダ層であってもよい。4分の1波長リターダを形成するための好適なコーティングとしては、他の箇所で説明されるような、線状光重合性ポリマー(linear photopolymerizable polymer;LPP)材料及び液晶ポリマー(liquid crystal polymer;LCP)材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
いくつかの態様では、部分反射体(60)とリターダ層(70)とを含む光学積層体(50)は、例えば、部分反射体フィルム上に4分の1波長リターダをコーティングすることによって、4分の1波長リターダフィルム上に部分反射体コーティングをコーティングすることによって、又は、部分反射体フィルムと4分の1波長リターダフィルムとを一体に積層することによって、調製されてもよい。いくつかの他の態様では、光学積層体(50)は、
図5で概略的に示されるように、リターダ層(70)に部分反射体(60)を接合するための接着剤層(120)を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、
図3に示されるような、実質的な垂直入射光(80)に関して、かつ所定の波長範囲における青色波長(90b)、緑色波長(90g)、及び赤色波長(90r)のそれぞれに関して(
図4)、反射偏光子(40)は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも70%が、偏光子(40)から反射される場合には、第1の偏光状態(x軸)を有する光を実質的に反射すると言うことができる。いくつかの実施形態では、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも80%、又は少なくとも90%が、偏光子(40)から反射される。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光に関して、かつ所定の波長範囲における青色波長(90b)、緑色波長(90g)、及び赤色波長(90r)のそれぞれに関して、反射偏光子(40)は、直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%が、反射偏光子(40)から透過される場合には、直交する第2の偏光状態(y軸)を有する光を実質的に透過すると言うことができる。いくつかの実施形態では、直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも70%、又は少なくとも80%が、偏光子(40)から透過される。所定の波長範囲は、いくつかの態様では、約400nm~約700nmにわたる可視波長範囲であってもよい。例えば、青色波長(90b)は、約425nm~約475nmの範囲内であってもよく、緑色波長(90g)は、約525nm~約575nmの範囲内であってもよく、赤色波長(90r)は、約625nm~約700nmの範囲内であってもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光(80)に関して、かつ所定の波長範囲における青色波長(90b)、緑色波長(90g)、及び赤色波長(90r)のそれぞれに関して、部分反射体(60)は、第1の偏光状態(x軸)及び第2の偏光状態(y軸)のそれぞれに関して、入射光の少なくとも70%を反射する。いくつかの態様では、実質的な垂直入射光に関して、かつ所定の波長範囲における青色波長(90b)、緑色波長(90g)、及び赤色波長(90r)のそれぞれに関して、部分反射体(60)は、第1の偏光状態及び第2の偏光状態のそれぞれに関して、入射光の少なくとも80%を反射する。所定の波長範囲は、いくつかの態様では、約400nm~約700nmにわたる可視波長範囲であってもよい。例えば、青色波長(90b)は、約425nm~約475nmの範囲内であってもよく、緑色波長(90g)は、約525nm~約575nmの範囲内であってもよく、赤色波長(90r)は、約625nm~約700nmの範囲内であってもよい。
【0017】
いくつかの態様では、実質的な垂直入射光に関して、第1の偏光状態及び第2の偏光状態のそれぞれに関して、かつ青色波長と緑色波長との間の青色-緑色波長(90bg)及び緑色波長と赤色波長との間の緑色-赤色波長(90gr)のそれぞれに関して(
図4)、反射偏光子(40)は、入射光の少なくとも70%、又は少なくとも80%を透過してもよい。いくつかの他の態様では、実質的な垂直入射光に関して、第1の偏光状態及び第2の偏光状態のそれぞれに関して、かつ青色波長と緑色波長との間の青色-緑色波長(90bg)及び緑色波長と赤色波長との間の緑色-赤色波長(90gr)のそれぞれに関して、部分反射体(60)は、入射光の少なくとも60%、又は少なくとも70%を透過する。場合によっては、青色波長と緑色波長との間の青色-緑色波長(90bg)は、550nm未満であってもよく、緑色波長と赤色波長との間の緑色-赤色波長(90gr)は、650nm未満であってもよい。
【0018】
いくつかの他の実施形態では、光学システム(300)は、吸収偏光子(110)を含む。吸収偏光子(110)は、第1のディスプレイ(20)と反射偏光子(40)との間に配置されてもよい。吸収偏光子(110)は、青色波長、緑色波長、及び赤色波長のそれぞれに関して、直交する第1の偏光状態及び第2の偏光状態のうちの一方(例えば、x軸に沿った電界を有する第1の偏光状態)を有する光を実質的に透過し、第1の偏光状態及び第2の偏光状態のうちの他方(例えば、y軸に沿った電界を有する第2の偏光状態)を有する光を実質的に吸収する。
【0019】
いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光(80)に関して、かつ青色波長、緑色波長、及び赤色波長のそれぞれに関して、吸収偏光子(110)は、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%、又は少なくとも70%が、吸収偏光子(110)によって透過される場合には、第1の偏光状態を有する光を実質的に透過すると言うことができる。いくつかの実施形態では、青色波長、緑色波長、及び赤色波長のそれぞれに関して、第1の偏光状態を有する入射光の少なくとも80%が、吸収偏光子(110)によって透過される。
【0020】
いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光(80)に関して、かつ青色波長、緑色波長、及び赤色波長のそれぞれに関して、吸収偏光子(110)は、第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも60%、又は少なくとも70%が、吸収偏光子(110)によって吸収される場合には、第2の偏光状態を有する光を実質的に吸収すると言うことができる。いくつかの実施形態では、青色波長、緑色波長、及び赤色波長のそれぞれに関して、第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも80%が、吸収偏光子(110)によって吸収される。
【0021】
例えば、青色波長(90b)は、約425nm~約475nmの範囲内であってもよく、緑色波長(90g)は、約525nm~約575nmの範囲内であってもよく、赤色波長(90r)は、約625nm~約700nmの範囲内であってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、吸収偏光子(110)は、ヨウ素をドープしたポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)偏光子であってもよい。そのような偏光子は、ヨウ素を含浸させた配向PVA層を含む。他の実施形態では、他のタイプの吸収偏光子(例えば、有機染料を含浸させた配向ポリマー偏光子)が使用される。
【0023】
本明細書で説明される実施形態のうちの1つ以上による光学システム(300)は、高い解像度及びコントラストを維持しながら、画像の輝度を増大させる。以下、例示的実施形態を示す。
[項目1]
第1の画像及び第2の画像を観察者に表示するための光学システムであって、
異なる第1のディスプレイ及び第2のディスプレイと、
前記第2のディスプレイと前記観察者との間に配置され、前記第1のディスプレイに対して斜めに方向付けされている反射偏光子であって、実質的に明確に区別された、青色反射帯域、緑色反射帯域、及び赤色反射帯域を有する、反射偏光子と、
前記反射偏光子と前記第2のディスプレイとの間に配置されている、光学積層体であって、
前記反射偏光子と前記第2のディスプレイとの間に配置されている部分反射体と、
前記反射偏光子と前記部分反射体との間に配置されているリターダ層と、を備え、それにより、実質的な垂直入射光に関して、かつ約400nm~約700nmにわたる所定の波長範囲における青色波長、緑色波長、及び赤色波長のそれぞれに関して、
前記反射偏光子が、第1の偏光状態を有する前記入射光の少なくとも70%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する前記入射光の少なくとも60%を透過し、
前記部分反射体が、前記第1の偏光状態及び前記第2の偏光状態のそれぞれに関して、前記入射光の少なくとも70%を反射する、光学積層体と、を備え、
前記リターダ層が、前記第1の偏光状態及び前記第2の偏光状態のうちの少なくとも一方に関する、前記青色波長、前記緑色波長、及び前記赤色波長のうちの少なくとも1つにおける実質的な4分の1波長リターダであり、
前記第1の偏光状態及び前記第2の偏光状態のそれぞれに関して、かつ前記青色波長と前記緑色波長との間の青色-緑色波長、及び前記緑色波長と前記赤色波長との間の緑色-赤色波長のそれぞれに関して、
前記反射偏光子が、前記入射光の少なくとも70%を透過し、
前記部分反射体が、前記入射光の少なくとも60%を透過する、
光学システム。
[項目2]
前記第1のディスプレイが、電子ディスプレイであり、前記第2のディスプレイが、現実世界のシーン内の、現実世界の物体である、項目1に記載の光学システム。
[項目3]
第1のディスプレイが、液晶ディスプレイ(LCD)及び有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイのうちの1つ以上を含む、項目2に記載の光学システム。
[項目4]
前記光学積層体が湾曲状である、項目1に記載の光学システム。
[項目5]
前記部分反射体及び前記リターダ層のうちの少なくとも一方が湾曲状である、項目1に記載の光学システム。
[項目6]
前記反射偏光子が、ワイヤグリッド反射偏光子及び多層ポリマー反射偏光子のうちの1つ以上を含む、項目1に記載の光学システム。
[項目7]
前記反射偏光子が、前記第1のディスプレイと約30度~約60度の角度を成す、項目1に記載の光学システム。
[項目8]
前記反射偏光子が、前記第1のディスプレイと約45度の角度を成す、項目1に記載の光学システム。
[項目9]
前記第1のディスプレイと前記反射偏光子との間に配置されている、吸収偏光子を更に備え、それにより、実質的な垂直入射光に関して、かつ前記青色波長、前記緑色波長、及び前記赤色波長のそれぞれに関して、前記吸収偏光子が、前記第1の偏光状態を有する前記入射光の少なくとも70%を透過し、かつ前記第2の偏光状態を有する前記入射光の少なくとも70%を吸収する、項目1に記載の光学システム。
[項目10]
前記光学積層体が、前記リターダ層に前記部分反射体を接合する接着剤層を更に備える、項目1に記載の光学システム。
[項目11]
実質的な垂直入射光に関して、かつ前記青色波長、前記緑色波長、及び前記赤色波長のそれぞれに関して、
前記反射偏光子が、前記第1の偏光状態を有する前記入射光の少なくとも80%を反射し、前記第2の偏光状態を有する前記入射光の少なくとも70%を透過し、
前記部分反射体が、前記第1の偏光状態及び前記第2の偏光状態のそれぞれに関して、前記入射光の少なくとも80%を反射する、
項目1に記載の光学システム。
[項目12]
実質的な垂直入射光に関して、かつ前記第1の偏光状態及び前記第2の偏光状態のそれぞれに関して、かつ前記青色-緑色波長及び前記緑色-赤色波長のそれぞれに関して、
前記反射偏光子が、前記入射光の少なくとも80%を透過し、
前記部分反射体が、前記入射光の少なくとも70%を透過する、
項目1に記載の光学システム。
[項目13]
前記青色波長が、約425nm~約475nmの範囲内であり、前記緑色波長が、約525nm~約575nmの範囲内であり、前記赤色波長が、約625nm~約700nmの範囲内である、項目1に記載の光学システム。
[項目14]
前記部分反射体が、合計で約50を超える数の、複数のポリマー層を含む、項目1に記載の光学システム。