(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】排ガス処理設備に使用される石灰系吸着剤および前記石灰系吸着剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/04 20060101AFI20241213BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20241213BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20241213BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20241213BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B01J20/04 A ZAB
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01J20/04 B
B01D53/50 100
B01D53/68 100
B01D53/68 220
(21)【出願番号】P 2022517859
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2020076442
(87)【国際公開番号】W WO2021058487
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-05-25
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518234243
【氏名又は名称】ロイスト ルシェルシュ エ デヴロップマン エス.ア.
【氏名又は名称原語表記】Lhoist Recherche et Developpement S.A.
【住所又は居所原語表記】Rue Charles Dubois 28,1342 Ottignies-Louvain-la-Neuve,Royaume de Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ショパン・ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ローゴルークス・マリオン
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第03029195(FR,A1)
【文献】特開平09-192449(JP,A)
【文献】特開平09-313932(JP,A)
【文献】国際公開第2018/185328(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28, 20/30-20/34
B01D 53/34-53/73;53/74-53/85;53/92-53/92,370;53/96
C01F 1/00-17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環式乾式スクラバープロセス用であり、排ガス処理プロセスで使用するのに適した粉末状の石灰系吸着剤であって、
- 150℃で定重量まで乾燥させた後の乾燥形態下の前記石灰系吸着剤の総重量に対して、少なくとも70重量%のCa(OH)
2であって、少なくとも3m
2/gのBET比表面積と、少なくとも0.01
cm
3
/gの総BJH細孔容積を有し、
ここで、前記BET比表面積は、190℃で少なくとも2時間真空中で脱気した後の窒素の吸着を伴うマノメトリによって測定され、ISO 9277/2010E規格に記載の多点BET法に従って計算されたものであり、
前記総BJH細孔容積は、190℃で少なくとも2時間真空中で脱気した後の窒素の吸着を伴うマノメトリによって測定され、ISO9277/2010E規格記載の多点BJH法に従って計算されたものである、Ca(OH)
2、および
- 150℃で定重量まで乾燥させた後の乾燥形態下の前記石灰系吸着剤の総重量に対して、少なくとも0.2重量%~最大10重量%の第1の添加剤であって
、天然もしくは合成由来のハイドロゲル形成材料
、セルロースエーテルのグループ
およびそれらの組み合わせの中から選択される第1の添加剤を含む、石灰系吸着剤。
【請求項2】
請求項1に記載の石灰系吸着剤において、
前記第1の添加剤は、高吸水性ポリマー(SAP)から選択される、石灰系吸着剤。
【請求項3】
請求項
1に記載の石灰系吸着剤において、
前記第1の添加剤は、以下の中から選択される、
- ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリレートおよびポリアクリル酸の架橋物、またはアクリルアミドおよびアクリル酸コポリマーの架橋
物を含む合成由来のハイドロゲル形成材料のグループ;または
- グアーガム、アルギン酸塩、デキストランもしくはキサンタンガムまたはそれらの組み合わせを含む天然由来のハイドロゲル形成材料のグループ;および/または
- ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルセルロースエーテ
ルを含むセルロースエーテルのグループ;
石灰系吸着剤。
【請求項4】
請求項2に記載の石灰系吸着剤において、
前記高吸水性ポリマーが、アクリル酸またはメタクリル酸の架橋ポリマー、多糖類/アクリル酸またはメタクリル酸の架橋グラフトコポリマー、アクリル酸またはメタクリル酸/アクリルアミド/スルホン化アクリルアミドの架橋ターポリマーおよびこれらのアルカリ土類またはアルカリ金属塩から選ばれる、石灰系吸着剤。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の石灰系吸着剤において、
ナトリウムをさらに含み、
XRFによって測定された前記石灰系吸着剤中のその等価Na
2O酸化物形態として表されるナトリウムの量が、乾燥形態下の前記石灰系吸着剤の総重量に対して、少なくとも0.1重量%のナトリウムである、石灰系吸着剤。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の石灰系吸着剤において、
少なくとも10m
2/gのBET比表面積を有し、
ここで、当該BET比表面積は、190℃で少なくとも2時間真空中で脱気した後の窒素の吸着を伴うマノメトリによって測定され、ISO 9277/2010E規格に記載の多点BET法に従って計算されたものである、石灰系吸着剤。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の石灰系吸着剤において、
少なくとも0.05
cm
3
/gの総BJH細孔容積を有し、
ここで、当該総BJH細孔容積は、190℃で少なくとも2時間真空中で脱気した後の窒素の吸着を伴うマノメトリによって測定され、ISO9277/2010E規格記載の多点BJH法に従って計算されたものである、石灰系吸着剤。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の石灰系吸着剤の製造工程で使用するためのプレミックスであって、
- 150℃で定重量まで乾燥させた後の乾燥形態下の前記プレミックスの総重量に対して、少なくとも70重量%の生石灰、および
- 150℃で定重量まで乾燥させた後の乾燥形態下の前記プレミックスの総重量に対して、少なくとも0.2重量%~最大10重量%の第1の添加剤を含み、
前記第1の添加剤は、天然または合成由来のハイドロゲル形成材料
、セルロースエーテルのグループ
およびそれらの組み合わせの中から選択される、プレミックス。
【請求項9】
循環式乾式スクラバープロセス用であり、排ガス処理プロセスでの使用に適した請求項1ないし請求項7のいずれか
1項に記載の石灰系吸着剤を製造する方法であって、以下のステップを含む、
- 非湿式ルートを介してハイドレータで生石灰を水でスレーキングすること;
- 前記ハイドレータの出口で消石灰を回収すること;
ここで、前記方法は、少なくとも第1の添加剤を添加するステップをさらに含み、
前記第1の添加剤は、天然または合成由来のハイドロゲル形成材料
、セルロースエーテルのグループ
およびそれらの組み合わせの中から選択され、
前記第1の添加剤は、スレーキングのステップの前、間または後に添加され、前記消石灰の重量に対する重量比は0.2~10重量%であり、ここで、前記消石灰の量は当量CaOで表し、前記第1の添加剤の量は150℃で一定重量まで乾燥した後の乾燥当量で表される、製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法であって、前記第1の添加剤が、以下の中から選択される、
- ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリレートおよびポリアクリル酸の架橋物、またはアクリルアミドおよびアクリル酸コポリマーの架橋
物を含む合成由来のハイドロゲル形成材料のグループ;または
- グアーガム、アルギン酸塩、デキストランもしくはキサンタンガムまたはそれらの組み合わせを含む天然由来のハイドロゲル形成材料のグループ;および/または
- ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルセルロースエーテ
ルを含むセルロースエーテルのグループ;
製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の製造方法において、
- 前記第1の添加剤は、少なくとも部分的に溶液または懸濁液で提供され、前記水および/または前記消石灰に添加され、および/または
- 前記第1の添加剤は、少なくとも部分的に固体状で提供され、前記生石灰および/または前記消石灰に添加される、
製造方法。
【請求項12】
請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記スレーキングするステップの前および/または途中および/または後に、アルカリ金属の塩または水酸化物である第2の添加剤を添加するステップをさらに含み、
アルカリ金属の塩または水酸化物の量は、前記消石灰を得るのに十分な量であり、
このアルカリ金属の酸化物換算で表したアルカリ金属の含有量が前記消石灰の総重量を基準として0.2重量%以上3.5重量%以下である、製造方法。
【請求項13】
請求項9ないし請求項12のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記ハイドレータの内部で前記生石灰がスレーキングされる滞留時間が5~45分の間で構成される、製造方法。
【請求項14】
請求項9ないし請求項13のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記スレーキングするステップの前または途中で前記第1の添加剤を添加し、
石灰系吸着剤を乾燥するステップ、および/または
前記石灰系吸着剤を粒状に切断するステップおよび/または
前記石灰系吸着剤をグラインドまたは粉砕するステップをさらに有する、製造方法。
【請求項15】
請求項9ないし請求項14のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記スレーキングするステップの後に前記第1の添加剤を前記消石灰に添加し、
さらに、
- 第1の値の範囲外の粒子のフラクションを除去するように、回収された前記消石灰を粒状に切断するステップと、
- 類似の粒度分布を有する水和石灰の粒子および添加剤の粒子を提供するために、第1の値の範囲と重なるかまたは等しい第2の値の範囲外の粒子のフラクションを除去するように、粉末状の前記第1の添加剤を粒状に切断するステップと、
- 前記消石灰と前記第1の添加剤とを均質化装置で混合すること、を含む、
製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の石灰系吸着剤または請求項9ないし請求項15のいずれか1項に記載の製造方法から得られる吸着剤の使用であって、
循環式乾式スクラバープロセスを含む排ガス処理プロセスにおける、使用。
【請求項17】
汚染物質を含むガスを予めダクトに循環させてから微粒子制御装置に到達させる排ガス処理プロセスであって、
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の石灰系吸着剤を注入するステップを含む、排ガス処理プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の側面では、本発明は、排ガス処理設備での使用に適した吸着剤に関するものである。第2の側面では、本発明は、前記吸着剤の製造工程で使用するためのプレミックスに関するものである。第3の側面では、本発明は、排ガス処理設備での使用に適した吸着剤の製造方法に関するものである。第4の側面では、本発明は、排ガス処理プロセスにおける前記吸着剤の使用に関する。第5の側面では、本発明は、前記吸着剤を用いた排ガス処理プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼排ガスには環境に有害とされる物質が含まれており、その有害物質や汚染物質を除去・中和するために排ガス処理が行われることが多くなっている。排ガス処理には、スクラビング技術をはじめ、さまざまなプロセスが用いられている。このような技術の第一のタイプは、湿式スクラバーユニットを使用する湿式スクラバー技術であり、一般に、標的化合物または粒子状物質とスクラビング液体(埃に対しては水、特定の化合物を標的とするためには試薬の溶液または懸濁液)との接触によって機能する。第二のスクラビング技術には、乾式スクラビングシステムとセミドライ式スクラビングシステム(セミウエット式スクラビングシステムとも呼ばれる)がある。これらのシステムは、湿式スクラバーユニットと比較して、処理された排ガスを水分で飽和させない。水分は添加しない場合もあれば、排ガス中で凝縮せずに蒸発できる量の水分のみを添加する場合もある。乾式またはセミドライスクラビング装置の主な用途は、主に燃焼源から硫黄酸化物や塩酸などの酸性ガスを捕捉・除去することに関連するものである。本開示において、「循環式乾式スクラバー装置(circulating dry scrubber device)」または「循環式乾式スクラバー設備(circulating dry scrubber installation)」または「循環式乾式スクラバーシステム(circulating dry scrubber systems)」または「循環式乾式スクラバーユニットまたは循環式乾式スクラバー設備(circulating dry scrubber unit or circulating dry scrubber facility)」という表現における「循環式乾式(circulating dry)」という用語は、「循環式乾式スクラバー(circulating dry scrubber)」または「循環式セミドライスクラバー(circulating semi-dry scrubber)」のいずれかを指す。
【0003】
循環式乾式スクラバー(CDS)技術は、石炭火力発電所におけるSO2 除去のために最初に開発された。現在では、バイオマスや産業廃棄物、都市ゴミを燃料とする工業炉やボイラーの排ガス処理にも利用されている。CDS技術は、一般的にCDSプロセスを実施し、CDSユニットを含む。CDSユニットは、よりグローバルなCDS設備に統合することができる。CDSプロセスは、微粒子制御装置から回収された残渣の再循環に基づいており、未反応の吸着剤、反応生成物、およびオプションとしてフライアッシュから構成されている。
【0004】
CDSユニットは一般的に、排ガスを受け入れる反応器と、一般的にカルシウム系吸着剤である吸着剤を備える。反応器には、固体(残渣とも呼ばれ、未反応の吸着剤、反応生成物、およびオプションでフライアッシュを含む)を放出ガスからろ過する微粒子制御装置が付属している。これらの固形物は、リサイクルループを通して、その後、部分的に反応器にリサイクルされる。反応器の前または後に、定期的または連続的にフレッシュな吸着剤を添加することができる。ほとんどの場合、温度制御、汚染物質除去性能の向上、残留物の再活性化のために、反応器内または固形物上に水が注入される。一部のCDS設備はCDSユニットを持ち、ハイドレータ(スレーキングユニットとも呼ばれる)を備えている場合がある。これらの施設では、CDS工程でCDSユニットに入る前に水和された生石灰CaOが使用される。他のいくつかのCDS施設は、ハイドレータを有さず、注入される新鮮な吸着剤は水和石灰である。
【0005】
CDSプロセスを扱う第一の方法では、残渣は反応器への再注入の前に湿潤化される。CDSプロセスを扱う第二の方法は、水を直接反応器内に注入する。
【0006】
残念ながら、CDS技術が汚染物質の除去に有効であっても、添加できる水の量には限界があり、これらの汚染物質の除去には水の添加が重要なファクターであることに変わりはない。実際、酸性ガスは排ガス中の水分を増やすことで高い捕集率が得られることが知られているが、露点を下回ると特に反応器内で腐食の問題が生じる可能性があることに留意する必要がある。
【0007】
反応器への再注入前に残渣を湿潤化させる場合、商業規模で観察される乾燥再循環残渣の質量に対する最大含水率は10重量%、より頻繁には2~7重量%である。含水率が10%を超えると、リサイクルループと反応器の両方でダクト壁に粘着性の挙動と目詰まり現象が発生し、排ガス洗浄装置の完全停止に至るまで運転が不安定になる。
【0008】
反応器に水を直接注入する場合、リサイクル材が水を運ばないにもかかわらず、反応器内に目詰まり現象が発生し、排ガス処理に悪影響を与える。
【0009】
循環式乾式スクラビングプロセスに悪影響を与えることなく、水分含有量を増加させることができるCDSプロセスの操作を可能にする吸着剤および排ガス処理プロセスを提供する必要性がある。特に、ダクト壁、リサイクルループ、および反応器におけるリサイクル材料の粘着性挙動および目詰まり現象を少なくとも低減することが望ましい。
【0010】
本出願人の文献WO2018185328には、循環式乾式スクラバーで使用するための吸着剤が開示されており、これは、少なくとも50重量%のCa(OH)2と、0.5重量%~8重量%のケイ素もしくはアルミニウムまたはこれらの組み合わせを含む。ここでこのケイ素もしくはアルミニウムまたはこれらの組み合わせの量はそれらの元素形態で表されるものであり、乾燥状態の前記吸着剤の総重量に対するものである。また、結合水をさらに乾燥状態の前記吸着剤の総重量に対して1~12wt%含み、カルシウムの1~40mol%は、Ca(OH)2、CaCO3またはCaOの形態ではないことを特徴とする。このような吸着剤は、以下のステップを含むプロセスによって得られる。
- 生石灰と水をハイドレータに提供すること;
- 非湿式ルートを介してハイドレータで前記生石灰を水でスレーキングすること;
- ハイドレータの出口で石灰系吸着剤を回収すること;
ここで、前記工程は、少なくとも以下の第1の添加剤を添加するステップをさらに含むことを特徴とする。
- ケイ素を含む化合物であって、好ましくは、ケイ酸塩、ナトリウムのケイ酸塩、メタケイ酸塩、ナトリウムのメタケイ酸塩、珪藻土(kieselguhr、diatomite、diatomaceous earth)、沈降シリカ、もみ殻灰、シリカフューム、パーライト、ケイ酸、非晶質シリカ、ケイ酸カルシウムまたはそれらの組み合わせからなる群より選択される化合物、および/または
- アルミニウムを含む化合物であって、好ましくは、アルミネート、ナトリウムのアルミネート、三水酸化アルミニウム、ベーマイト、カルシウムアルミネートまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物、および/または
- ケイ素とアルミニウムを含む化合物であって、アルミノケイ酸塩、ナトリウムアルミノケイ酸塩、フライアッシュ、高炉スラグ、バーミキュライト紙灰、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される化合物。
ここで、スレーキングステップの前または間に、ケイ素またはアルミニウムまたはそれらの組み合わせと、ハイドレータに供給されるカルシウムとの間のモル比が、0.2以下、0.02以上になるようにする。
【0011】
このような吸着剤は、汚染物質の捕獲やCDS施設での流動性の面で良好な性能を示すにもかかわらず、異なる原料から得られる、性能を向上させた他の吸着剤組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
第1の側面によれば、本発明は、以下を含む排ガス処理プロセスで使用するのに適した石灰系吸着剤に関するものである。
- 150℃で定重量まで乾燥させた後の乾燥形態下の前記石灰系吸着剤の総重量に対して、少なくとも70重量%のCa(OH)2、好ましくは少なくとも80重量%のCa(OH)2、より好ましくは少なくとも90重量%のCa(OH)2、より好ましくは少なくとも95重量%のCa(OH)2、および
- 150℃で定重量まで乾燥させた後の乾燥形態下の前記石灰系吸着剤の総重量に対して、少なくとも0.2重量%~最大10重量%、好ましくは少なくとも1重量%~最大5重量%、より好ましくは少なくとも1.2重量%~最大2.5重量%である第1の添加剤。ここで、この第1の添加剤は、天然または合成由来の材料、特に高吸水性ポリマー(SAP)のグループ、またはセルロースエーテルのグループまたはそれらの組み合わせの中から選択される。
【0013】
前記吸着剤中に存在するCa(OH)2は、当業者に知られている通常の技術によって定性的におよび定量的に測定することができる。カルシウムの量はXRFで測定し、化合物の結晶構造はXRDで分析し、炭酸カルシウム及び/又は酸化カルシウムが存在する場合にはその割合、水酸化カルシウムは150℃で一定重量になるまで乾燥した試料を熱重量測定で決定する。
【0014】
前記吸着剤中に存在する添加剤は、NMRにより定性的および定量的に測定することができる。前記吸着剤中の添加剤は、150℃で定重量まで乾燥させた試料を調製し、重水素化溶媒、または重水素化溶媒の混合物、好ましくはD2OとCD3CNの混合物中で混合後、半液体状態での分析のためにプローブHR-MAS(high resolution magic angle spinning)により1H NMRまたは13C NMRまたはその組み合わせにより検出でき、150℃で定重まで乾燥した固体試料を固体1H NMRにより測定できる。NMRによる定量的な測定は、添加剤を様々な濃度で含む吸着剤の試料を調製して得られた検量線と比較することにより行うことができる。
【0015】
本発明による「ハイドロゲル形成材料」という用語は、脱水したハイドロゲル(すなわち、粉末状として)または捕捉した水を有するハイドロゲルのいずれをも包含するものである。また、この文言の範囲内には、例えば、5%の水または10%の水を含む、周囲湿度を捕捉しながらも粉末状であるハイドロゲル形成材料などの任意の中間形態も包含される。
【0016】
好ましくは、前記第1の添加剤は、以下の中から選択される。
- ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリレートおよびポリアクリル酸の架橋物、またはアクリルアミドおよびアクリル酸コポリマーの架橋物、特にナトリウムおよび/またはカリウムでこれらを部分的に中和したものを含む合成由来のハイドロゲル形成材料のグループ;または
- グアーガム、アルギン酸塩、デキストランもしくはキサンタンガムまたはそれらの組み合わせを含む天然由来のハイドロゲル形成材料のグループ;および/または
- ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルセルロースエーテル、特にカルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)を含むセルロースエーテルのグループ。
【0017】
好ましくは、高吸水性ポリマーは、アクリル酸またはメタクリル酸の架橋ポリマー、多糖類/アクリル酸またはメタクリル酸の架橋グラフトコポリマー、アクリル酸またはメタクリル酸/アクリルアミド/スルホン化アクリルアミドの架橋ターポリマーおよびこれらのアルカリ土類またはアルカリ金属塩から選ばれる合成由来の高吸水性ポリマーから1または2以上が選ばれる。
【0018】
好ましくは、高吸収性ポリマーの調製のために選択されるモノマーは、アクリルアミド、アクリル酸、ATBS(アクリルアミドターチオブチルスルホネート)、NVP(Nビニルピロリドン)、アクリロイルモルフォリン、および/またはイタコン酸から選ばれ、それらのモノマーのそれぞれは部分的にまたは完全に塩基化されている。
【0019】
好ましくは、高吸水性ポリマーは、アクリル酸の一部または全部が塩基化されたホモポリマーまたは架橋共重合体である。高吸水性ポリマーは、ジアリルジアルキルアンモニウム、ジアリルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、およびそれらの4級アンモニウム塩またはそれらの酸を含むカチオンポリマーなどの親水性モノマーによって得られてもよい。より詳細には、ジメチルアミノエチルのアクリレート(ADAME)、ジメチルアミノエチルのメタクリレート(MADAME)、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム(APTAC)および/または塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム(MAPTAC)である。
【0020】
合成高吸水性ポリマーは、一般に、N,N-メチレンビスアクリルアミド(MBA)、エチレングリコールジメタクリレート、1,1,1-トリメチロールプロパントリアクリレート、テトレアリルオキシエタン、テトラアリルアンモニウムクロリド、ジビニルベンゼン、金属塩または当業者に知られている任意の架橋剤の中から選択される架橋剤により架橋される。
【0021】
高吸水性ポリマーは、市販されている高分子としてよく知られている。
【0022】
本発明によれば、ハイドロゲル形成材料は、ポリマーの重量に対する脱イオン水の重量で表される水吸着容量が400g/g未満、好ましくは350g/g以下、より好ましくは300g/g以下、特に250g/g以下、より特に200g/g以下である。
【0023】
より詳細には、本発明によれば、ハイドロゲル形成材料は、ポリマーの重量に対する脱イオン水の重量として表される水吸着容量が、80g/g以上、好ましくは100g/g以上である。
【0024】
有利には、ハイドロゲル形成材料は、ポリマーの重量に対する脱イオン水の重量として表される水吸着容量が、100g/g~200g/g、より好ましくは120g/g~180g/g、例えば約150g/gである。
【0025】
ハイドロゲル形成材料の中から選択された本発明における第1の添加剤は、そのコンディショニングのために常温のような比較的低い温度で水を捕捉することができるが、CDSユニットまたは乾式スクラバインジェクション(DSIユニット)で、50℃~350℃、好ましくは約150℃~180℃からなる運転温度、Ca(OH)2存在下でも、蒸気の形態で水を放出することができる。さらに、ハイドロゲル形成材料とCa(OH)2とを組み合わせた石灰系吸着剤は、好ましくは、排ガス処理中に注入される粉末の形態で残る。
【0026】
本発明による石灰系吸着剤は、排ガス処理においてCDS設備を通過する多数の通過サイクルを維持し、その間、水捕捉ステップ(例えば、調整ドラム内)と水放出ステップ(CDSユニット内)とを交互に通過する。
【0027】
一実施形態において、本発明による石灰系吸着剤は、ナトリウムをさらに含み、XRFによって測定された前記石灰系吸着剤中のその等価Na2O酸化物形態として表されるナトリウムの量が、乾燥形態下の前記吸着剤の総重量に対して少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.3重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.7重量%、好ましくは多くとも15重量%、好ましくは多くとも7重量%、好ましくは多くとも5重量%、好ましくは多くとも2.5重量%である。
【0028】
好ましくは、本発明による石灰系吸着剤は、少なくとも3m2/g、好ましくは少なくとも10m2/g、より好ましくは少なくとも20m2/g、好ましくは少なくとも40m2/gのBET比表面積を有する。ここでこのBET比表面積は、190℃で少なくとも2時間真空中で脱気した後の窒素吸着を伴うマノメトリにより測定され、ISO 9277/2010E規格に記載の多点BET法に従って計算されたものである。本発明の一実施形態において、吸着剤は、3~20m2/gの間で構成されるBET比表面積を有する。
【0029】
有利には、本発明による石灰系吸着剤は、少なくとも0.01cm
3
/g、好ましくは少なくとも0.05cm
3
/g、より好ましくは少なくとも0.1cm
3
/g、より好ましくは少なくとも0.15cm
3
/g、より好ましくは少なくとも0.2cm
3
/gの総BJH細孔容積を有する。ここで、当該総BJH細孔容積は、190℃で少なくとも2時間真空中で脱気した後の窒素の吸着を伴うマノメトリによって測定され、ISO9277/2010E規格記載の多点BJH法に従って計算されたものである。本発明の一実施形態では、吸着剤は、0.01~0.15cm
3
/gの間で構成されるBJH細孔容積を有する。
【0030】
石灰系吸着剤、水和石灰および添加剤の粒径は、試料の性質に応じて2つの方法で測定することができる。第一の方法は、ふるい分析であり、乾燥した試料を、徐々に小さくなるメッシュサイズを有する一連のふるいに通し、各メッシュ上の保持画分を重み付けする方法である。粉体の保持率が粉体の重量の2%より劣るメッシュサイズを第1の値dmax、粉体の保持率が粉体の重量の90%より優れるメッシュサイズを第2の値dminと定義する。この方法は、ふるいのメッシュサイズに制限があるため、30μmより大きいdminを有する試料に使用される。また、100μm以下のふるいには、窪みを設けて強制的に通過させることも可能ある。
【0031】
石灰系吸着剤、水和石灰および添加剤の粒度分布を測定するための第二の方法は、例えばメタノールなどの溶媒中で超音波処理を行った後でのレーザー粒度分布測定である。ここで、サンプルは溶解しないかまたはジェル化しないものである。第一の値はdmaxとして定義され、d98に対応し、第二の値はdminとして定義され、d10に対応する。表記dxは、粒子のサンプルの粒度分布を意味し、粒子のx%がμmで表されるある値以下の大きさを持つことを意味する。
【0032】
好ましくは、本発明における石灰系吸着剤は、1mm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下のdmaxを有する。dminは、好ましくは1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。
【0033】
本発明による石灰系吸着剤の好ましい実施形態において、前記Ca(OH)2、前記第1の添加剤は、以下を含む粉末のブレンドの形態下にある。
- 値dmaxおよびdminの第1の範囲に構成される粒度分布を有する消石灰の粉体粒子;および
- 前記第1の範囲と重なるか又は等しいdmax及びdminの値の第2の範囲に構成される粒度分布を有する、第1の添加剤の粉末粒子。
【0034】
水和石灰の粉末粒子と添加剤の粉末粒子の粒度分布が近いことが、水和石灰の粒子と添加剤の粒子の偏析を防ぐために非常に重要である。
【0035】
第2の側面によれば、本発明は、石灰系吸着剤の製造プロセスにおいて使用するためのプレミックスに関するものであり、該プレミックスは、以下を含む。
- 150℃で定重量まで乾燥させた後の乾燥状態の前記プレミックスの総重量に対して、少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも重量%の生石灰;および
- 150℃で定重量まで乾燥させた後の乾燥形態下の前記プレミックスの総重量に対して、少なくとも0.2重量%~最大10重量%、好ましくは少なくとも1重量%~最大5重量%、より好ましくは少なくとも1.2重量%~最大2.5重量%の第1の添加剤。
ここで、この第1の添加剤は、天然または合成由来のハイドロゲル形成材料、特に高吸水性ポリマー(SAP)のグループ、またはセルロースエーテルのグループまたはそれらの組み合わせの中から選択される。
【0036】
このようなプレミックスを提供することは、ハイドレータを保有する排ガス処理プラントにとって、物流やコストの面でより有利になる可能性がある。
【0037】
好ましくは、本発明によるプレミックスにおいて、前記粉末状生石灰と前記粉末状第1の添加剤とは、以下のものを含む粉末のブレンドの形態である。
- 第3の範囲の値dmaxおよびdminで構成される粒度分布を有する生石灰の粉体粒子;および
- 前記第3の範囲と重なるか又は等しいdmax及びdminの値の第4の範囲に構成される粒度分布を有する、第1の添加剤の粉末粒子。
【0038】
生石灰の粒子と第1の添加剤の粒子の粒度分布が互いに近いことが、プレミックス中の粒子の偏析を防止するために重要である。
【0039】
第3の側面によれば、本発明は、排ガス処理プロセスにおける使用に適した石灰系吸着剤の製造方法に関し、該製造方法は、以下のステップを包含する。
- 非湿式ルートを介してハイドレータで生石灰を水でスレーキングすること;
- 前記ハイドレータの出口で消石灰を回収すること;
ここで、該製造方法は、少なくとも第1の添加剤を添加するステップをさらに含み、
前記第1の添加剤は、天然または合成由来のハイドロゲル形成材料、特に高吸水性ポリマー(SAP)のグループ、またはセルロースエーテルのグループまたはそれらの組み合わせの中から選択され、
前記第1の添加剤は、スレーキングのステップの前、間または後に添加され、前記消石灰の重量に対する重量比は0.2~10重量%であり、好ましくは多くても5重量%であり、より好ましくは多くても2.5重量%であり、ここで、前記消石灰の量は当量CaOで表し、前記第1の添加剤の量は150℃で一定重量まで乾燥した後の乾燥当量で表される。
【0040】
好ましくは、本発明に係る製造方法において、前記第1の添加剤は、以下の中から選択される。
- ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリレートおよびポリアクリル酸の架橋物、またはアクリルアミドおよびアクリル酸コポリマーの架橋物、特にナトリウムおよび/またはカリウムで部分的に中和したものを含む合成由来のハイドロゲル形成材料のグループ;
- グアーガム、アルギン酸塩、デキストランもしくはキサンタンガムまたはそれらの組み合わせを含む天然由来のハイドロゲル形成材料のグループ;または
- ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルセルロースエーテル、特にカルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)を含むセルロースエーテルのグループ。
【0041】
本発明の意味での「ハイドレータ」という用語は、従来の単段または多段のハイドレータ、あるいは混合器を意味する。
【0042】
本発明によれば、「非湿潤ルートを介したスレーキング」という用語は、生石灰に対する以下のスレーキングを指す。
【0043】
本発明に係る製造方法において、スレーキングするステップは、乾式ルート経由、準乾式ルート経由、またはセミドライルート経由のスレーキングモードを指定する「非湿式ルート」経由のスレーキングモードである。非湿潤ルートでは、生石灰の量に対する水の量が0.6~1.2の間で構成される。「非湿式ルート」という表現は、湿式ルートを経由するスレーキングモードとパテルートを経由するスレーキングモードを除いたものである。これらのスレーキングルートの各々は、本明細書において後に定義される。
【0044】
生石灰の乾式水和、すなわち「乾式による」スレーキングモードでは、乾式による生石灰のスレーキングに用いる水と生石灰の質量比は、0.6~0.7で構成される。
【0045】
生石灰の準乾式水和では、他のスレーキングモードであるため、より過剰の水で水和を達成することができ、生石灰の準乾式水和に用いられる水と生石灰の質量比は、0.85~1.2で構成される。
【0046】
生石灰のセミドライ水和では、生石灰のスレーキングに用いる水と生石灰の質量比が0.7~0.85で構成される。
【0047】
「湿式による」スレーキングモードでは、スレーキング反応に厳密に必要な量に比べて、添加する水の量が非常に多くなり、生石灰のスレーキングに使用する水と生石灰の質量比は通常1.5以上となる。このようにして、石灰乳、すなわち消石灰粒子の水性懸濁液が得られる。
【0048】
「パテルートによる」スレーキングモードでは、スレーキング反応に使用する水の量は「湿式ルートによる」スレーキングに使用する水の量よりやや少なく、生石灰のスレーキングに使用する水と生石灰の質量比は通常1.2以上、1.5以下で、得られる製品はパティ(ライムパテ)状である。
【0049】
本発明に係る製造方法において、前記第1の添加剤は、少なくとも部分的に溶液または懸濁液で提供され、前記水および/または前記消石灰に添加され、および/または前記第1の添加剤は、少なくとも部分的に固形状で提供され、前記生石灰および/または前記消石灰に添加される。
【0050】
好ましくは、本発明に係る製造方法は、粉末状の消石灰と前記第1添加剤とを粉末の形態で混合する工程を備える。
【0051】
本発明に係る石灰系吸着剤の製造方法の一実施形態では、製造方法は、以下の工程を含む。
- 非湿式ルートを介してハイドレータで生石灰を水でスレーキングすること;
- 前記ハイドレータの出口で消石灰を回収すること;
- 任意に、前記消石灰を乾燥させること;
- 任意に、前記消石灰をグラインドすること;
- 任意に、前記消石灰を気流分級および/または篩い分けして、dmaxとdminで定義される第1の粒度範囲にある粒度分布を有する消石灰を得ること;
- 前記第1の範囲の粒径と重なるかまたはその範囲に含まれるdmaxとdminによって定義される第2の範囲の粒径にある粒径分布を有する前記第1の添加剤を提供し、dmaxとdminによって定義される第1の範囲の粒径で構成される粒径分布を有する前記消石灰と前記第1の添加剤を混合すること。
【0052】
好ましくは、前記第1の添加剤は、400μm以下のdmax、かつ、少なくとも1μmのdminを有する粒度分布を備え、前記粉末消石灰は、1μm~200μm、もしくは1~20μm、もしくは5~20μm、もしくは20~35μm、もしくは20~50μm、もしくは50~100μm、もしくは50~150μm、もしくは100~200μmの範囲内からなる粒度分布を有するように空気分級または篩にかけられている。
【0053】
本発明の一実施形態では、製造方法は、水和石灰の粒子と添加剤の粒子との偏析を防ぐために、類似の粒度分布を有する水和石灰の粒子及び添加剤の粒子を提供するように、所定値より劣る粒子及び所定値より勝る粒子の画分を除去するための水和石灰の粒子の粒度切断と添加剤の粒子の分離粒度切断の予備段階を含んでいる。粒度切断のステップは、水和石灰および/または添加剤の粒子を所定のメッシュサイズの一連の篩に通すことによって、もしくは水和石灰および/または添加剤の粒子を空気分級機に通すことによって行うことができる。
【0054】
一実施形態では、添加剤および/または水和石灰は、粒状体切断のステップの前またはその逆にグラインドされる。
【0055】
本発明に係る製造方法の別の実施形態では、工程は、以下のステップを含む。
- dmaxおよびdminによって定義される第3の粒度範囲にある所定の粒度分布を有する生石灰を提供すること;
- 前記第3の範囲の粒径と重なるかまたはその範囲に含まれるdmaxとdminによって定義される第4の範囲の粒径にある粒径分布を有する前記第1の添加剤を提供し、前記第1の添加剤を、dmaxとdminによって定義される第3の範囲の粒径で構成される粒径分布を有する前記生石灰と混合してプレミックスを形成させること;
- 前記プレミックスをハイドレータで非湿式にスレーキングして、前記第1の添加剤を含む消石灰を得ること;
- 前記ハイドレータの出口で消石灰を回収すること;
- 任意に、前記消石灰を乾燥させること;
- 任意に、前記消石灰をグラインドすること;
- 任意に、前記消石灰を篩い分けまたは気流分級すること。
【0056】
本発明による製造方法の一実施形態において、この製造方法は、前記スレーキングするステップの前および/または途中および/または後に、アルカリ金属の塩または水酸化物である第2の添加剤を添加するステップをさらに含み、アルカリ金属の塩または水酸化物の量は、前記消石灰を得るのに十分な量であり、このアルカリ金属の酸化物換算で表したアルカリ金属の含有量が前記消石灰の総重量を基準として0.2重量%以上3.5重量%以下である。
【0057】
好ましくは、前記アルカリ金属の前塩または水酸化物は、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム又は酢酸ナトリウムのような水に可溶なものである。好ましくは、アルカリ化合物は、20℃における水への溶解度が50g/dm
3
以上、好ましくは100g/dm
3
以上、好ましくは200g/dm
3
以上、好ましくは300g/dm
3
以上、より好ましくは500g/dm
3
以上である。
【0058】
本発明に係る製造方法の一実施形態では、前記アルカリ金属の塩または水酸化物は、固体下又は溶液で提供され、前記水および/または前記生石灰および/または前記消石灰に添加される。前記アルカリ金属の塩または水酸化物は、工程中において、スレーキングするステップの前および/または間および/または後に添加されてもよい。
【0059】
本発明に係る製造方法の一実施形態では、前記石灰系吸着剤を乾燥させる工程、および/または前記石灰系吸着剤を粒状に切断する工程、および/または前記石灰系吸着剤をグラインド又は粉砕するステップが実施される。
【0060】
有利には、本発明によるプロセスにおいて、ハイドレータの内部で生石灰がスレーキングされる滞留時間が5~45分の間、好ましくは20~40分の間、より好ましくは25~35分の間で構成される。
【0061】
本発明によるプロセスの別の実施形態では、前記生石灰は、第3の数値範囲の間で構成される粒子を有するように粒度切断に供され、前記第1の添加剤は、第4の数値範囲の間で構成される粒子を有するように粒度切断に供され、前記第3の数値範囲と前記第4の数値範囲は重なりを有する。そして、前記スレーキングするステップの前に、前記生石灰と前記第1の添加剤とをブレンドするステップを備える。
【0062】
第4の側面によれば、本発明は、本明細書に開示されるようなおよび/または本明細書に示されるような製造プロセスから得られる石灰系吸着剤の、排ガス処理プロセスにおける使用に関連するものである。
【0063】
第5の側面によれば、本発明は、汚染物質を含むガスを予めダクトに循環させてから微粒子制御装置に到達させる排ガス処理プロセスに関し、本明細書で提示される石灰系吸着剤を注入するステップを含むことを特徴とする。
【0064】
排ガス処理は、循環式乾式スクラバープロセスまたはドライソルベントインジェクション(DSI)プロセスとすることができる。
【0065】
循環式乾式スクラバープロセスにおける本発明による吸着剤の使用は、CDSプロセスにおけるかかる残留物の良好な流動性を維持しながら、先行技術の残留物よりも多くの水を運ぶことができる残留物を提供し、それによって循環式乾式スクラバーユニットまたは設備のパイプ、ダクトまたは他の部分における固着が防止されることを可能にする。
【0066】
本発明による吸着剤は、循環式乾式スクラバーユニットまたは設備内を循環する残渣に10重量%以上のような高い湿潤度があっても、良好な流動性特性を呈するCDSプロセスにおける残渣を提供するものである。
【0067】
吸着剤担持水の含水率が高くなると、以下の理由により排ガス処理装置の性能が大幅に向上すると考えられる。
- 水を加えることで、ガスのコンディショニング、特に反応温度の低下と、相対湿度の上昇に役立つと考えられる;
- 添加された水は、残存するCa(OH)2が再び反応に利用できるようになると考えられる;
- 添加された水は、吸着剤、反応生成物、さらにはフライアッシュの活性を高めるために、反応器内の固体周辺に局所的に好条件を作り出すと考えられる(添加された水は、炭酸化したCaを、酸性ガス除去(SOx、HCl、HF等の除去)を目的とした反応種に変換することを助けると考えられる)。
【0068】
もし、より少ない量のリサイクル材料で同じ量の水をリアクターに供給することができれば、コンディショニングミキサーとすべての関連機器、特に搬送装置(スクリュー、エアスライドなど)を小型化することができ、投資コストだけでなくCDSプロセスを運転するための光熱費やメンテナンスコストも削減することが可能となる。
【0069】
循環式乾式スクラバーユニットや設備を用いた排ガス処理の過程で、吸着剤粒子は排ガスと接触して入り、反応した吸着剤粒子、未反応の吸着剤粒子、最終的にはその他の副産物の懸濁液を形成することになる。この懸濁液は微粒子制御装置によって濾過される。汚染物質が除去された排ガスは煙突に導かれ、反応した吸着剤粒子、未反応の吸着剤粒子、およびその他の副産物が形成する残留物は、CDSユニットで別のサイクルに再利用される。この残渣は、数回に分けて再循環させることができる。また、フレッシュな吸着剤をいつでもCDS装置に導入することができる。反応した吸着剤を再活性化するために水が加えられる。
【0070】
本発明による吸着剤では、残留物の乾燥質量に対して少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも7重量%、好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、好ましくは少なくとも15重量%の水分含有量を有するように、循環式乾式スクラバー(CDS)ユニットまたは設備内で循環する前記残留物に水を加えることが予見される。
【0071】
循環式乾式スクラバーユニットまたは設備で処理される排ガス中の硫黄酸化物と塩酸の比率の関数で、循環式乾式スクラバーユニットまたは設備で循環する残留物上に加えられる水の量は適合させることができる。
【0072】
HClに対する酸化硫黄の比率が20より大きい場合、HClの量は一般的に少なく、循環式乾式スクラバーユニットまたは設備内の残留物の目詰まりの危険性なしに、乾燥質量に対する水分含有量が最大20重量%までとなるように、循環式乾式スクラバーユニットまたは設備を循環する残留物に水を追加することが可能である。
【0073】
二酸化硫黄のHClに対する比が20以下の場合、一般にHClの量が多いと考えられ、循環式乾式スクラバーユニットまたは設備内の残渣の目詰まりの問題が多くなる可能性がある。したがって、HClに対する二酸化硫黄の比が20より小さい場合、循環式乾式スクラバーユニットまたは設備内を循環する残留物上の水は、残留物の乾燥質量に対する水分含有量が少なくとも2重量%のみであるようなものとすることが可能である。
【0074】
実施形態において、本発明による排ガス処理プロセスは、本発明による吸着剤、または本明細書に開示されるような製造プロセスから得られた吸着剤を、前記循環式乾式スクラバーユニットまたは設備に導入するステップを含む。
【0075】
本発明による石灰系吸着剤を乾式吸着剤注入工程で使用する利点の1つは、添加剤が水分を捕捉し、それによって吸着剤の貯蔵サイロまたはフローガスダクトに接続された注入管への付着を最小限に抑えることができることである。
【0076】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な以下の説明から、および図面および実施例を参照することによって導かれるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】
図1は、本発明による排ガス処理のプロセスに用いられる循環式乾式スクラバー設備の概略の実施形態を示す図である。
【0078】
【
図2】
図2は、Aprotek社からApromud
TMP150XLの名称で市販されているポリアクリル酸ナトリウムの試料を、D
2OとCD
3CNの混合液中で半固体状態にしてプローブHR-MASで得た
1H NMRスペクトルを示し、吸着剤の重量に対して2.5%のApromud
TMP150XLを含む本発明による吸着剤のサンプルと、吸着剤の重量に対して10%のApromud
TMP150XLを含む本発明による吸着剤のサンプルとを、同じ条件で測定し、比較した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明によれば、排ガス処理プロセスにおける使用に適した石灰系吸着剤が提供される。前記石灰系吸着剤は、以下を含む。
- 150℃で定重量まで乾燥した後の乾燥形態下の前記石灰系吸着剤の総重量に対して、少なくとも70重量%のCa(OH)2、好ましくは少なくとも80重量%のCa(OH)2、より好ましくは少なくとも90重量%のCa(OH)2、より好ましくは少なくとも95重量%のCa(OH)2、および
- 150℃で定重量まで乾燥した後の乾燥形態下の前記石灰系吸着剤の総重量に対して、少なくとも0.2重量%~最大10重量%、好ましくは少なくとも1重量%~最大5重量%、より好ましくは少なくとも1.2重量%~最大2.5重量%である第1の添加剤。
ここで、第1の添加剤は、天然または合成由来のハイドロゲル形成材料、特に高吸水性ポリマー(SAP)のグループ、またはセルロースエーテルのグループまたはそれらの組み合わせの中から選択される。
【0080】
前記吸着剤中に存在するCa(OH)2は、当業者に知られている通常の技術によって定性的におよび定量的に測定することができる。カルシウムの量はXRFで測定し、化合物の結晶構造はXRDで分析し、炭酸カルシウム及び/又は酸化カルシウムが存在する場合にはその割合、水酸化カルシウムは150℃で一定重量になるまで乾燥した試料を熱重量測定で決定する。
【0081】
前記吸着剤中に存在する添加剤は、NMRにより定性および定量的に測定することができる。前記吸着剤中の添加剤は、150℃で定重量まで乾燥させた試料を調製し、重水素化溶媒、または重水素化溶媒の混合物、好ましくはD2OとCD3CNの混合物中で混合後、半液体状態での分析のためにプローブHR-MAS(high resolution magic angle spinning)により1H NMRまたは13C NMRまたはそれらの組み合わせにより検出でき、また固形状態で1H NMRまたは固体状態で13C NMRにより150℃で定重まで乾燥した固体試料で測定することも可能である。NMRによる定量的な測定は、添加物を様々な濃度で含む吸着剤の試料を調製して得られる検量線と比較することにより行うことができる。また、石灰系吸着剤は、大気中や製造工程で発生する水分を含むことがあるため、分析前に試料を一定重量まで乾燥させる必要がある。
【0082】
前記第1の添加剤は、以下の中から選択される。
- ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリレートおよびポリアクリル酸の架橋物、またはアクリルアミドおよびアクリル酸コポリマーの架橋物、特にナトリウムおよび/またはカリウムで部分的に中和したものを含む合成由来のハイドロゲル形成材料のグループ;または
- グアーガム、アルギン酸塩、デキストランもしくはキサンタンガムまたはそれらの組み合わせを含む天然由来のハイドロゲル形成材料のグループ;および/または
- ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルセルロースエーテル、特にカルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)を含むセルロースエーテルのグループ。
【0083】
前記高吸水性ポリマーは、アクリル酸またはメタクリル酸の架橋ポリマー、多糖類/アクリル酸またはメタクリル酸の架橋グラフトコポリマー、アクリル酸またはメタクリル酸/アクリルアミド/スルホン化アクリルアミドの架橋ターポリマーおよびこれらのアルカリ土類またはアルカリ金属塩から選ばれる。
【0084】
一実施形態では、本発明による石灰系吸着剤は、ナトリウムをさらに含み、XRFによって測定された前記石灰系吸着剤中のその等価Na2O酸化物形態として表されるナトリウムの量が、乾燥形態下の前記吸着剤の総重量に対して、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.3重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.7重量%、好ましくは多くとも15重量%、好ましくは多くとも7重量%、好ましくは多くとも5重量%、好ましくは多くとも2.5重量%である。
【0085】
好ましくは、石灰系吸着剤は、少なくとも3m2/g、好ましくは少なくとも10m2/g、より好ましくは少なくとも20m2/g、好ましくは少なくとも40m2/gのBET比表面積を有し、ここで、当該BET比表面積は、190℃で少なくとも2時間真空中で脱気した後の窒素の吸着を伴うマノメトリによって測定され、ISO 9277/2010E規格に記載の多点BET法に従って計算されたものである。
【0086】
好ましくは、石灰系吸着剤は、少なくとも0.01cm
3
/g、好ましくは少なくとも0.05cm
3
/g、より好ましくは少なくとも0.1cm
3
/g、さらに好ましくは少なくとも0.2cm
3
/gの総BJH細孔容積を有し、ここで、当該総BJH細孔容積は、190℃で少なくとも2時間真空中で脱気した後の窒素の吸着を伴うマノメトリによって測定され、ISO9277/2010E規格記載の多点BJH法に従って計算されたものである。
【0087】
一実施形態では、石灰系吸着剤は、以下のブレンドである。
- 第1の数値範囲に含まれる粒度分布を有する消石灰の粉体粒子、及び
- 第1の範囲と重なるか又は等しい第2の範囲に含まれる粒度分布を有する、第1の添加剤の粉体粒子。
【0088】
本発明に係る石灰系吸着剤は、以下の工程を含む製造方法によって得られる。
- 非湿式ルートを介してハイドレータで生石灰を水でスレーキングすること;
- 前記ハイドレータの出口で消石灰を回収すること;
ここで、前記方法は、少なくとも第1の添加剤を添加するステップをさらに含み、
前記第1の添加剤は、天然または合成由来のハイドロゲル形成材料、特に高吸水性ポリマー(SAP)のグループ、またはセルロースエーテルのグループまたはそれらの組み合わせの中から選択され、
前記第1の添加剤は、スレーキングのステップの前、間または後に添加され、前記消石灰の重量に対する重量比は0.2~10重量%であり、好ましくは多くても5重量%であり、より好ましくは多くても2.5重量%であり、ここで、前記消石灰の量は当量CaOで表し、前記第1の添加剤の量は150℃で一定重量まで乾燥した後の乾燥当量で表される。
【0089】
好ましくは、前記第1の添加剤は、以下の中から選択される。
- ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリレートおよびポリアクリル酸の架橋物、またはアクリルアミドおよびアクリル酸コポリマーの架橋物、特にナトリウムおよび/またはカリウムで部分的に中和したものを含む合成由来のハイドロゲル形成材料のグループ;または
- グアーガム、アルギン酸塩、デキストランもしくはキサンタンガムまたはそれらの組み合わせを含む天然由来のハイドロゲル形成材料のグループ;および/または
- ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルセルロースエーテル、特にカルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)を含むセルロースエーテルのグループ。
【0090】
製造方法の一実施形態において、前記第1の添加剤は、スレーキングする前記ステップの前または途中に添加され、少なくとも部分的または全体的に溶液または懸濁液で提供され、スレーキングステップに使用される水に添加される。
【0091】
製造方法の別の実施形態では、前記第1の添加剤は、前記スレーキングステップの後に添加され、少なくとも部分的または全体的に溶液または懸濁液で提供され、例えば、回収された消石灰に添加剤を散布することによって、消石灰に添加される。
【0092】
製造方法の別の実施形態では、前記第1の添加剤は、生石灰に粉末として、スレーキングを行うステップの前に添加される。
【0093】
製造方法の別の実施形態では、前記第1の添加剤は、回収された消石灰に対して、前記スレーキングを行うステップの後に添加される。好ましくは、前記スレーキングするステップの後に添加される前記第1の添加剤は、粉末の形態である。
【0094】
本発明に係る石灰系吸着剤の製造方法の別の実施形態では、前記製造方法は、前記スレーキングするステップの前および/または途中および/または後に、アルカリ金属の塩または水酸化物である第2の添加剤を添加するステップをさらに含み、アルカリ金属の塩または水酸化物の量は、前記消石灰を得るのに十分な量であり、このアルカリ金属の酸化物換算で表したアルカリ金属の含有量が前記消石灰の総重量を基準として0.2重量%以上3.5重量%以下である。
【0095】
好ましくは、前記アルカリ金属の塩又は水酸化物は水溶性であり、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム又は酢酸ナトリウムの中から選択することができる。好ましくは、アルカリ金属の塩または水酸化物は、水中での20℃での溶解度が50g/dm
3
より優れているかまたは等しく、好ましくは100g/dm
3
より優れているかまたは等しく、好ましくは200g/dm
3
より優れているかまたは等しく、好ましくは300g/dm
3
より優れているかまたは等しく、好ましくは500g/dm
3
より優れた溶解度である。
【0096】
製造方法の一実施形態において、第2の添加剤は、スレーキングを行うステップの前、途中、又は後に添加され、第1の添加剤は、スレーキングを行う当該ステップの後に、好ましくは粉末の形態で添加される。第2の添加剤は、粉末の形態下で添加されてもよいし、溶液の形態で添加されてもよい。
【0097】
本発明に係る石灰系吸着剤の製造方法において、ハイドレータの内部で生石灰がスレーキングされる滞留時間は、好ましくは5~45分、好ましくは20~40分、より好ましくは25~35分の間で構成される。
【0098】
前記スレーキングするステップの前または途中に第1の添加剤を添加する石灰系吸着剤の製造方法の実施形態では、前記石灰系吸着剤を乾燥するステップおよび/または前記石灰系吸着剤を粒状に切断するステップおよび/または前記石灰系吸着剤をグラインドまたは粉砕するステップをさらに有する。
【0099】
前記第1の添加剤が、前記スレーキングするステップの後に前記消石灰に添加される、石灰系吸着剤の製造方法の別の実施形態において、該プロセスは、さらに、以下を含む。
- 第1の値の範囲外の粒子のフラクションを除去するように、回収された前記消石灰を粒状に切断するステップと、
- 類似の粒度分布を有する水和石灰の粒子および添加剤の粒子を提供するために、第1の値の範囲と重なるかまたは等しい第2の値の範囲外の粒子のフラクションを除去するように、粉末状の前記第1の添加剤を粒状に切断するステップと、
- 前記消石灰と前記第1の添加剤とを均質化装置で混合すること。
【0100】
本発明に係る製造方法の別の実施形態では、工程は、以下のステップを含む。
- dmaxおよびdminによって定義される第3の粒度範囲に含まれる所定の粒度分布を有する生石灰を提供する;
- 前記第3の粒度範囲の範囲に重なるかまたは包含され、dmaxとdminによって定義される第4の粒度範囲に含まれる粒度分布を有する前記第1の添加剤を提供し、dmaxとdminによって定義される第3の粒度範囲の中に含まれる粒度分布を有する前記生石灰と混合してプレミックスを形成させる;
- 前記プレミックスをハイドレータで非湿式にスレーキングして、前記第1の添加剤を含む消石灰を得る;
- 前記ハイドレータの出口で消石灰を回収すること;
- 任意に、前記消石灰を乾燥させること;
- 任意に、前記消石灰をグラインドすること;
- 任意に、前記消石灰をふるい分けまたは風力分級すること。
【0101】
例えば、前記第1の添加剤は、dminが1μm以上、dmaxが200μm以下の粒度分布を有するように分類することができる。また、前記粉末消石灰は、dminが1μm以上、dmaxが200μm以下、代替的にdminが1μm以上、dmaxが20μm未満、代替的にdminが5μm以上、dmaxが20μm未満、代替的にdminが20μm以上、dmaxが35μm未満、代替的にdminが20μm以上、dmaxが50μm未満、代替的にdminが50μm以上、dmaxが100μmに未満、代替的にdminが50μm以上、dmaxが150μm未満、代替的にdminが100μm、dmaxが200μm未満の粒度分布を有するように分類することができる。
【0102】
本発明に係る製造方法の一実施形態では、前記第1の添加剤は、前記スレーキングのステップの前に、前記スレーキングのステップのために前記ハイドレータに供給されるプレミックスを形成するように、前記生石灰に添加される。生石灰と少なくとも前記第1の添加剤とを含むプレミックスを提供することは、排ガス処理設備とハイドレータとを有するプラントにとって、物流およびコストの点で有利となり得る。
【0103】
本発明に係るプレミックスは、以下のように構成される。
- 150℃で定重量まで乾燥させた後の乾燥形態下の前記プレミックスの総重量に対して、少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも85重量%の生石灰、および
- 150℃で定重量まで乾燥させた後の乾燥形態下の前記プレミックスの総重量に対して、少なくとも0.2重量%~最大10重量%、好ましくは少なくとも1重量%~最大5重量%、より好ましくは少なくとも1.2重量%~最大2.5重量%の第1の添加剤。ここで、前記第1の添加剤は、天然または合成由来のハイドロゲル形成材料、特に高吸水性ポリマー(SAP)のグループ、またはセルロースエーテルのグループまたはそれらの組み合わせの中から選択される。
【0104】
好ましくは、プレミックスにおいて、前記粉末状の生石灰と前記粉末状の第1の添加剤とは、以下を含む粉末のブレンドの形態である。
- dmaxとdminとの値の第3の範囲に含まれる粒度分布を有する生石灰の粉体粒子、および
- 前記第3の範囲と重なるか又は等しい、dmaxとdminとの値の第4の範囲に含まれる粒度分布を有する、前記第1の添加剤の粉末粒子。
【0105】
プレミックスの一実施形態において、生石灰は、好ましくはグラインドのステップの後に、任意にグラニュロメトリック切断のステップの後に、dmin及びdmaxの値の第1のセットにより定義される粒度分布を有するように提供され、前記第1の添加剤は、例えばグラニュロメトリック切断のステップの後に、dmin及びdmaxの値の第2のセットにより定義される粒度分布を有するよう選択する。有利には、生石灰又は前記第1の添加剤のうち、一方のd50の値は他方の値dminとdmaxの間に構成される。好ましくは、生石灰と第1の添加剤のd50のそれぞれの値は、互いの値dminとdmaxの間に構成される。生石灰と前記第1の添加剤の粒度分布が類似していると、両化合物の偏析を有利に防止することができる。
【0106】
別の実施形態では、前記プレミックスは、前記第2の添加剤を含むこともできる。
【0107】
本明細書に記載のプロセスから得られる本発明による石灰系吸着剤は、有利には、循環式乾式スクラバープロセスまたは乾式吸着剤注入プロセスを含む排ガス処理プロセスにおいて使用される。
【0108】
本発明はまた、汚染物質を含むガスを予めダクトに循環させてから微粒子制御装置に到達させる排ガス処理プロセスにおいて、ここに開示されるような石灰系吸着剤を注入するステップを含むことを特徴とするものである。
【0109】
一実施形態では、排ガス処理プロセスは、循環式乾式スクラバープロセスである。循環式乾式スクラバー(CDS)ユニットまたは設備は、当技術分野でよく知られており、排ガスから汚染物質を除去するために運用される。CDS技術は、最初に石炭火力発電所におけるSO2除去のために開発された。今日では、バイオマス、産業廃棄物、都市廃棄物を燃料とする工業炉やボイラーの排ガス処理にも使用されている。CDSプロセスは、酸性ガス成分と微量汚染物質の両方を除去することができる。このプロセスは、吸着剤の反応生成物とフィルタからのフライアッシュからなるフィルタ残留物の再循環をベースとしている。CDSユニットは、カルシウムベースの吸着剤を使用している。
【0110】
CDSの非限定的な一例を
図1に表す。CDS設備100は、反応器102の底部に第1のダクト101によって接続されているガスバーナー200の下流に配置されている。フレッシュな吸着剤を含むリザーバ107は、第2のダクト108によって反応器102の底部に接続され、計量装置109が、必要なときにフレッシュな吸着剤を注入するために第2のダクトと反応器の底部の間に配設されている。汚染物質を含むガス300は、バーナー200から第1のダクト101を通って流れ、次に反応器102を通って汚染物質がフレッシュな吸着剤と反応し、次にガスと部分的に反応した吸着剤は、反応器102の下流でスタック110の上流に配置された微粒子フィルタ装置103を通ってフィルタリングされる。微粒子フィルタ装置103は、複数のバグハウスフィルタ104から構成される。反応した吸着剤、未反応の吸着剤、及び任意にバグハウスフィルタ104に集められたフライアッシュは、残渣を形成する。回収された残渣は、バグハウスフィルタ104から取り除かれ、汚染物質が枯渇した排ガスがスタック110を通って排気される間、粒子フィルタ装置103の底部のホッパ105に落下する。残渣は、ミキサーシャフト111からなる調整ミキサー106に導かれ、反応器102にリサイクルされる前に残渣を再活性化するために水が添加される。
【0111】
本発明による循環式乾式スクラバーユニットまたは設備を用いた排ガス処理のプロセスにおいて、本明細書に開示されるようなフレッシュな石灰系吸着剤がCDS設備に導入される。本発明による吸着剤は、CDSプロセスにおいて良好な流動性を有する残留物を提供することができ、それによって、循環式乾式スクラバーユニットまたは設備の配管、ダクトまたは他の部分における固着を防止することができる。本発明による吸着剤は、低温で、典型的には50℃~350℃の循環式乾式スクラバーユニットまたは設備の温度で、その水を放出することができる。本発明による石灰系吸着剤は、乾燥形態下の前記吸着剤の総重量に関して、循環式乾式スクラバーユニット内を循環する残留物中の10重量%以上といった、担水とも呼ばれる高湿度でも、良好な流動性特性を呈するCDSプロセスにおける残留物を提供するものである。
【0112】
一実施形態では、排ガス処理工程は、乾式吸着剤注入(DSI)工程である。このようなプロセスは、循環式乾式スクラバープロセスよりも簡単であり、フィルタリングユニット、通常はバグフィルタ、又は電気集塵機の前の排ガスに、本明細書に記載の石灰系吸着剤を乾燥注入するステップを含む。石灰系吸着剤は、1回の通過で汚染物質と反応する。
【0113】
気相の汚染物質と吸着剤との反応は反応器または排ガスダクトで起こり、フィルタ、特にバグフィルタで継続する。反応生成物とプロセスからの飛灰は、下流のフィルタ装置で捕捉される。
【0114】
本発明による石灰系吸着剤を乾式吸着剤注入工程で使用する利点の1つは、第1の添加剤が水分を捕捉し、それによって吸着剤の貯蔵サイロまたはフローガスダクトに接続された注入パイプへの付着を最小限に抑えることができることである。
【実施例】
【0115】
(パイロットプラントの説明)
実験は、反応器、フィルタ手段、ミキシングゾーンの3つの主要ユニットが連結されたCDSパイロットユニットで行われた。反応器はベンチュリーリアクターで、垂直の断熱チューブ(長さ7m、直径4cm)から構成されている。
【0116】
反応器の底部には、酸性ガス(N2,O2,H2O,CO2,SO2)を含む合成ガス流を注入するための注入口がある。合成ガスは反応器を通って流れ、次に反応器の上部に配置されたバグハウスフィルタを通過する。バグハウスフィルタは6つのスリーブからなり、それぞれのスリーブは0.1m2の面積を有している。
【0117】
合成ガスフローの温度はバグハウスフィルタで測定され、バグハウスフィルタで100℃になるように反応器の下部で加熱抵抗により制御された。
【0118】
反応器の底部は、フレッシュな吸着剤の注入口と、反応器内を少なくとも1回循環したフレッシュ吸着剤を反応させたリサイクル材料の注入口を有する。フレッシュな吸着剤は空気輸送によって反応器の底部に導入され、一方、リサイクル材料はドージングスクリューを介して反応器の底部に導入される。注入速度の範囲は、フレッシュな吸着剤についてはそれぞれ0~300g/h、リサイクル材料については0~6000g/hである。
【0119】
フレッシュな吸着剤および/またはリサイクル材料の固形粒子は、反応器を通るガスフローによってバグフィルタに巻き込まれる。バグフィルタ(フィルタ手段)は、少なくとも部分的に反応したフレッシュな吸着剤とリサイクル材料(残留物)からなる固体粒子からガスを分離する。
【0120】
次に、固形残留物は、バタフライバルブを備えた3つのホッパによって保管および運搬される。これらのホッパは、バッファーホッパ、フレッシュな吸着剤を注入する際にシステムの質量バランスを保つために一定量の製品が取り出される抽出ホッパおよび計量ホッパである。残渣はその後、搬送スクリューによりコンディショニングミキサー(混合ゾーン)に投入される。
【0121】
コンディショニングミキサーでは、所定の量の水がリサイクル材料と十分に混合される。リサイクル材料に加えられる水の量は、ミキサーに供給される吸着剤の総重量に対して、0.1重量%から最大30重量%までの範囲で変化させることができる。水は、ステンレス製の中空コーンノズルを使ってミキサーに注入される。
【0122】
コンディショニングミキサーは、第1の端部から第2の端部まで延びる2本のシャフトを有する細長い受器を備える。コンディショニングミキサーの受器は、約7dm
3
の容量を有している。受器内の残留物を導入するための第1の入口が受器の第1の端部に近接して配置され、前記受器内に水を導入して前記残留物を加湿するための水注入ノズルが第1の入口の下流及びその近傍に配置される。加湿された残渣を受器の外に排出するための排出口が、受器の第2の端部近くの底部に配置される。2つのシャフトは、互いに平行に受器内に配置され、相互貫入回転(中心流が上向き)を有する指向性平板パドルを備えている。シャフトは第1の直径D1の円筒に嵌め込まれ、パドルの最外縁は第2の直径D2の円筒に嵌め込まれている。両シャフトの中心軸は、厳密に第1の直径D1より長く、第2の直径D2より劣る距離で互いに離間している。受器の底面は、パドルによって形成される回転円筒と一致する二重丸底としてプロファイルされ、パドルが受器の二重丸底に接触しないようにする。一方のシャフトの各パドルは、シャフトの回転を可能にするように、他方のシャフトのパドルからオフセットされている。同じシャフトの各パドルは、隣接するパドルに対して120°の角度で半径方向にオフセットされている。受器の第1の端部の近傍で、両方のシャフトは、水噴射ノズルの下で残留物を搬送するように、シャフトの長手方向軸に対して20°で配向された2つの第1のパドルを有している。両シャフトはさらに、2つの第1のパドルの下流に、集中的な逆混合を生じさせ、したがって混合ゾーンに残留物の蓄積を生じさせるために、シャフトの長手方向軸に対して50°の角度で方向付けられた5つのパドルを含む。両シャフトは、前記5つのパドルの下流に配置され、加湿された残留物をミキサーから徐々に押し出すようにシャフトの長手方向軸に対して20°の角度で配向された4つの最後のパドルをさらに含む。このような種類のコンディショニングミキサーは、CDS設備で一般的に使用されている。
【0123】
ミキサーの後、加湿された残渣はブリッジブレーカーと搬送スクリューを備えた縦型ホッパに落ち、反応器内に再び加湿された残渣が導入される。
【0124】
本発明による吸着剤の挙動と比較吸着剤の挙動は、CDSパイロットユニットで試験された。
【0125】
調整用ミキサーに循環する転換固体材料(遊離石灰10%以下)に加える水の量を増やして、製品の粘着性とCDSプロセス全体の操作性の観点から反応を評価する試験プロトコルを実現した。
【0126】
試験プロトコルの第一段階では、まず、残留物に変換された吸着剤を得るために、未反応でフレッシュと考えられる吸着剤をSO2とCO2の存在下に置いた。残留物中の利用可能な石灰Ca(OH)2が10重量%未満になると、吸着剤の残留物への転換が達成されたとみなされる。吸着剤の転化を促進するために、試験開始時に未反応のフレッシュな吸着剤を一度に添加し、後の段階ではそれ以上のフレッシュな吸着剤を添加しない。
【0127】
試験プロトコルの第二段階では、残渣をCDSパイロットユニットに再循環させながら、圧力低下、目詰まり、糊状残渣などCDSパイロットユニットに問題が発生するまで調整ミキサーに加える水の量を徐々に増加させる。名目上の運転が可能な最も高い水量(% w/w)を試験結果とする。CDSパイロットユニットでは、比較的高い水分値で流動可能な残渣が望まれる。CDSパイロットユニットにそのような残留物を提供する吸着剤は、したがってSO2の取り込みの点でより効率的であり、より多くの回数を再生してより長い時間再循環させることができ、その結果、吸着剤の消費量を減少させることができる。
【0128】
[比較例]
比較例では、使用されるフレッシュな吸着剤は、いかなる添加物も構成しない消石灰のサンプルである。この消石灰は、本出願人の水和工場の一つで工業的に製造されたものである。このプラントでは、3段式ハイドレータ(Pfeiffer社製)に、0~3mmの生石灰を4t/hで供給し、水を供給している。水の量は、ハイドレータから出る製品の含水率が1%未満となるように調整される。この含水率は、150℃での乾燥による損失で測定される。ハイドレータ内部の温度もプロセス制御パラメータとして使用され、特に第2ステージで測定される温度は、通常100~105℃の範囲とされる。ハイドレータの出口から、製品は、搬送スクリューとバケットエレベータを経由して空気分級機に運ばれる。この分級機で、製品は粗いフラクション(通常65μm以上)と細かいフラクション(通常65μm未満)に分けられ、後者は貯蔵サイロに直接送られる。比較例の消石灰は、以下の物理的特性を示す。
- 150℃の乾燥減量で測定した水分量が1重量%である。
- BET比表面積が14m
2
/gである。ここで、このBET比表面積は、190℃、2時間以上真空中で脱気した後、窒素の吸着を伴うマノメトリにより測定され、ISO 9277/2010E規格に記載の多点BET法に従って計算されたものである。
- 細孔容積が0.063cm
3
/gである。ここで、この細孔容積は、190℃、2時間以上の真空中での脱気した後、窒素の吸着を伴うマノメトリによって求められ、ISO 9277/2010E規格に記載のBJH法に従って計算されたものである。および
- 100Wで2分間超音波処理した後、メタノール中でのレーザー粒度分析により測定したd98が70μm未満である。
【0129】
比較例の消石灰は、上述の試験プロトコルに従って、CDSパイロットユニットで試験される。試験プロトコルの第一段階では、4.2kgの量のフレッシュな吸着剤がCDSパイロットユニットに装填される。フレッシュな吸着剤は、再注入スクリューによって反応器の底に直接注入される。合成ガスの流量は25Nm
3
/hに設定され、その組成は表1に示す混合ガスである。
【0130】
【0131】
残渣はバグハウスフィルタによってガスから分離され、フィルタ上の差圧が6mbarに達すると自動的にエアパルスで洗浄される。残渣はホッパのカスケードを通って調整ミキサーに到達し、ここで残渣は2500g/hの流量で加えられ、250mL/hの水と混合されて10%の湿潤度が得られる。この加湿された残渣は、その後、反応器の底部に再投入され、再リサイクルされる。残渣が流動性の点で良好な挙動を示すとき、例えば200gの残渣を120秒未満で反応器内に投入できるとき、一般に7時間後に、再循環流を4000g/hとし、10%の保湿を保つために400mL/hの水と混合されるようにする。
【0132】
1日に2回、少なくとも3時間の間隔を置いた時間帯に、残留物の第1の試料を混合ゾーンの後に採取し、残留物の第2の試料を計量ホッパ(反応器出口にも相当)に採取して、炭酸塩、硫黄種(硫酸塩または亜硫酸塩)および未反応Ca(OH)2(有効石灰)中の含有量を分析する。残渣中の利用可能な石灰Ca(OH)2が10重量%未満であれば、吸着剤の残渣への転換は達成されたとみなすことができる。
【0133】
プロトコルの第二段階では、ガス流量は25m
3
/hに維持され、SO2とCO2の注入は停止される。残渣の再循環流量は4kg/hに維持され、ミキサー内の湿度は、目詰まりや圧力低下の問題が発生するまで少なくとも3時間の時間をかけて、12%から2%ずつ上昇させる。
【0134】
湿度を上げるステップごとに、150℃での減量乾燥により各残渣の水分量を測定するために、少なくとも1つのサンプルがフィルタより、ミキサーから回収される。
【0135】
比較例のサンプルで、装置が適切に処理できるミキサーの最高添加水量は18%であった。この限界を超えると、残留物の高い粘着性によって引き起こされる多くのプロセス問題(ひどい目詰まり、高い圧力損失)の懸念があった。
【0136】
[実施例1]
この実施例では、比較例の消石灰を原料として用い、Aprotek社からApromudTMP150XLの名称で市販されている粒度分布dmaxが400μm以下の網状ポリアクリル酸ナトリウムである高吸水性ポリマーと混合した(例えばFR 3 029 195を参照)。高吸水性ポリマーは、受け取ったまま使用され、すでに5%の水分(150℃での乾燥による損失で測定)を含み、これは取り扱いおよび保管(0~35℃での保管)中に取り込まれた空気から来る可能性がある。5kgのブレンドを製造するために、487.5gの上記の消石灰と12.5gのApromudTMP150XLを含む10バッチをTurbula(登録商標)シェーカーミキサーで10分間個別に混合する。次に、この10バッチを容量20Lのプラネタリーミキサー(Hobart社製)に入れ、5kgの単一バッチを作るために混合する。このバッチにはApromudTMP150XLが2.5重量%含まれている。別のサンプルも同様に調製して、ApromudTMP150XLを10%含むバッチを得る。
【0137】
ApromudTMP150XLを2.5%含むブレンドは、CDSパイロットユニットで試験する前に分析され、その主な特性は以下の通りである。
- 150℃の乾燥減量で測定した水分量が1.1重量%である。
- BET比表面積が14.2m
2
/gである。ここで、このBET比表面積は、190℃、2時間以上真空中で脱気した後、窒素の吸着を伴うマノメトリにより測定され、ISO 9277/2010E規格に記載の多点BET法に従って計算されたものである。
- 細孔容積が0.065cm
3
/gである。ここで、この細孔容積は、190℃、2時間以上の真空中での脱気した後、窒素の吸着を伴うマノメトリによって求められ、ISO 9277/2010E規格に記載のBJH法に従って計算されたものである。および
- 100Wで2分間超音波処理した後、メタノール中でのレーザー粒度分析により測定したd98が80μm未満である。
【0138】
ApromudTMP150XLを2.5%と10%含んだブレンドは、さらに1H NMRで特性評価を行っている。
【0139】
添加剤は、水とアセトニトリルの混合溶媒に一部溶解させ、トラブル溶液とした。粉末状のApromud
TMP150XL 15mgをバイアルに入れ、D
2O 15μlおよびCD
3CN 35μlと混合し、数秒間激しく攪拌して試料溶液を得る。トラブル溶液は、半固形混合物専用のプローブHR-MAS(high resolution magic angle spinning)により
1H NMRで分析する。
1H NMRスペクトルは、水のピークをプリサチュレーションし、5000Hzの回転で、常温、64スキャンで測定されている。Apromud
TMP150XLは水の存在下でジェル化するため、ほとんどのシグナルが大きくなっている。Apromud
TMP150XLのスペクトルを
図2の参照番号1で示す。
【0140】
Apromud
TMP150XLを10%含む粉末状のブレンド15μgをバイアル中でCD
3CN 20μlおよびD
2O 40μlと混合し、スラリーを形成する。スラリーは、半固形混合物専用のプローブHR-MAS(high resolution magic angle spinning) で
1H NMRにより分析する。
1H NMRスペクトルは,水のピークをプリサチュレーションし,5000Hzの回転で、常温、64回スキャンして測定されている。Apromud
TMP150XLを10%含むブレンドのスペクトルを
図2の参照番号2で示す。
【0141】
Apromud
TMP150XLを2.5%含む粉末状のブレンド15μlをCD
3CN 20μlおよびD
2O 40μlと混合し、スラリーを形成し、半固形混合物専用のプローブHR-MAS(high resolution magic angle spinning)で
1H NMRにより分析する。
1H NMRスペクトルは、水のピークをプリサチュレーションし、5000Hzの回転で、常温、64スキャンで測定されている。Apromud
TMP150XLを2.5%含むブレンドのスペクトルは、
図2の参照番号3で示されている。
【0142】
両者のスペクトルは類似しており、Apromud
TMP150XLを10%含むブレンドではより強いシグナルが、またApromud
TMP150XL単独と最も濃縮したサンプルでは5ppm前後の補助シグナルが観測された。Apromud
TMP150XL単独とブレンドのスペクトルを比較すると、Apromud
TMP150XL単独のスペクトルにいくつかの化学シフトとさらに大きなシグナルが存在するとしても、
図2に囲まれた同様のシグナルが存在することが示された。これらのシフトと追加のシグナルは、Apromud
TMP150XLの水中での挙動の違いによって説明することができ、Apromud
TMP150XLは水の吸収によって完全にゼリー化するのに対し、石灰の存在下では乳白色の溶液を得ることができる。したがって、プローブHR-MASを使用した
1H NMRにより、吸着剤重量に対して2.5%といった比較的低い濃度の本発明による吸着剤サンプルでApromud
TMP150XL添加物を検出することが可能である。
【0143】
上記で得られた消石灰-網状ポリアクリル酸ナトリウムのブレンドは、上述の試験プロトコルに従ってCDSパイロットユニットで試験される。試験プロトコルの第一段階では、4.2kgの量のフレッシュな吸着剤(すなわち、消石灰-網状ポリアクリル酸ナトリウムのブレンド)がCDSパイロットユニットに装填される。フレッシュな吸着剤は、再注入スクリューによって反応器の底に直接注入される。このプロセスで設定された合成ガス流量は25Nm
3
/hであり、その組成は表1に比較例について示したものと同じである。
【0144】
残渣はバグハウスフィルタで分離され、フィルタ上の差圧が6mbarに達すると自動的にエアパルスで洗浄される。ここで残渣は2500g/hの流量で導入され、250mL/hの水と混合され、10%の湿潤度が得られる。この加湿された残渣は、次に反応器の底に再投入され、再リサイクルされる。残渣が流動性の点で良好な挙動を示す場合、例えば200gの残渣を120秒未満で反応器内にドージングできる場合、一般に7時間後、再循環流を4000g/hに設定し、400mL/hの水と混合して10%の保湿を維持する。
【0145】
1日に2回、少なくとも3時間の間隔を置いた時間帯に、残留物の第1の試料を混合ゾーンの後に採取し、残留物の第2の試料を計量ホッパー(反応器出口にも相当)に採取して、炭酸塩、硫黄種(硫酸塩または亜硫酸塩)および未反応Ca(OH)2(有効石灰)中の含有量を分析する。残渣中の利用可能な石灰Ca(OH)2が10重量%未満であれば、吸着剤の残渣への転換は達成されたとみなすことができる。
【0146】
プロトコルの第二段階では、ガス流量は25m
3
/hに維持され、SO2とCO2の注入は停止される。残渣の再循環流量は4kg/hに維持され、ミキサー内の湿度は、目詰まりや圧力低下の問題が発生するまで少なくとも3時間の時間をかけて、12%から2%ごとに上昇させる。
【0147】
湿度を上げるステップごとに、150℃での減量乾燥により各残渣の水分量を測定するために、少なくとも1つのサンプルがフィルタで、ミキサーから回収される。
【0148】
実施例のサンプルで、設備が適切に処理できるミキサーの最高添加水量は28%であった。この限界を超えると、残渣が糊状になりすぎて、プロセスを実行することができなくなる。
【0149】
したがって、本発明による消石灰-網状ポリアクリル酸ナトリウムのブレンドは、同様の物理的特性を有するが無添加の消石灰と比較して、より高い含水率でCDSパイロットユニットにおいてより長く運転することが可能である。