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特許7603674フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌株培養培地組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌株培養培地組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
C12N1/20 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022520672
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 KR2022001867
(87)【国際公開番号】W WO2023090536
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0159492
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521022956
【氏名又は名称】エンテロバイオーム インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ENTEROBIOME INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・グ・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ド・キュン・イ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2222953(KR,B1)
【文献】国際公開第2021/016081(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性ペプトン(vegetable-peptone)、酵母抽出物(yeast extract)、リン酸塩化合物、炭酸塩化合物、シアノコバラミン(cyanocobalamin、B12)、L-システイン(L-cysteine)、酢酸アンモニウム(ammonium acetate)、および麦芽糖(maltose)
で構成されたフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)培養用培地組成物であって、
前記植物性ペプトンは、10~20g/Lの濃度であり、
前記酵母抽出物は、5~10g/Lの濃度であり、
前記炭酸塩化合物は、2~6g/Lの濃度であり、
前記酢酸アンモニウムは、2~16g/Lの濃度であり、および
前記麦芽糖は、7.5~37.5g/Lの濃度である、
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)培養用培地組成物。
【請求項2】
前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)フィログループII(Phylogroup II)である、
請求項1に記載のフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)培養用培地組成物。
【請求項3】
下記のステップを含む、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)の培養方法:
a)請求項1に記載の培地組成物に、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)を接種するステップと、
b)前記接種した菌株を、35~38℃、pH6.5~7、および気体流量0.1~0.3L/hの条件で培養するステップとを含む、
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)の培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌株培養培地組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)は、胃腸内で最も多く分布する酪酸(butyrate)生産バクテリアで、腸内フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの数を一定水準以上に維持することは非常に重要である。実際に、クローン病と潰瘍性大腸炎患者からフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの数が急激に減少することが観察され、これにより、粘液層内のO-glycanの形成にも関与して腸の生理機能に重要な影響を及ぼすことが報告された。したがって、このようなフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイを大量生産して摂取できれば、腸内の酪酸を確保できるはずである。
【0003】
最近、フィーカリバクテリウム属の多様性に注目した研究において、Lopez-Silesらは、16S rRNA遺伝子配列に基づいてフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ分離菌株の系統発生的な相関性を分析した結果、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ種から2つのフィログループ(phylogroup I and II)を究明し、同じ種(species)内でも炭素源(glucose、cellobiose、maltose、galacturonic acid、galactose、apple pectin、inulin、glucuronic acid、N-acetylgucosamineなど)の利用能力(utilization)がフィログループごとに異なるという報告がある(Lopez-Siles et al.Appl Environ Microbiol.,2012;78:420-428)。
【0004】
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌種はすべてベータ-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase)、アルファ-グルコシダーゼ(α-glucosidase)とホスファターゼ(phosphatase)活性は保有しているが、ウレアーゼ(urease)、アルギニンジヒドロラーゼ(arginine dihydrolase)、ベータ-グルコシダーゼ(β-glucosidase)とアルファ-フコシダーゼ(α-fucosidase)活性は保有しないことが報告され、YCFA培地に果糖(fructose)、フラクトオリゴ糖(fructo-oligosaccharides)とブドウ糖(glucose)が基質として添加された場合に増殖可能であり、アラビノース(arabinose)、メリビオース(melibiose)、ラフィノース(raffinose)、ラムノース(rhamnose)、リボース(ribose)とキシロース(xylose)では増殖できないことが明らかになった(Duncan et al.,2002)。乳糖をガラクトースとブドウ糖に変換する酵素であるベータ-ガラクトシダーゼと、麦芽糖をブドウ糖に変換する酵素であるアルファ-グルコシダーゼを保有しているため、乳糖と麦芽糖のような炭素源はすべて当該過程(glycolysis)を経て、高エネルギー分子であるATPを形成するのに使用できる。
【0005】
アミノ酸は、細胞培養培地中で培養された細胞の代謝機能を維持させるのに重要であり、高濃度培養時に良好な増殖を持続させるためには外部タンパク質供給源が必須である。アミノ酸供給源は、公知の任意のアミノ酸供給源であってもよいし、非制限的に動物由来、植物由来、または微生物由来のアミノ酸供給源を含み、理想的には完全に植物または微生物系であってもよい。また、アミノ酸供給源は、例えば、タンパク質加水分解産物、植物由来のタンパク質加水分解産物であってもよい。タンパク質加水分解産物は、加水分解を利用してタンパク質供給源から製造され、典型的には、ペプチド、アミノ酸、炭水化物および脂質の混合物、および漠然とした生物活性を有する多数の未確認成分で構成される。前記はたびたび多様な供給源、例えば、非制限的に植物供給源(大豆、小麦、エンドウ豆、ヒヨコ豆またはワタ)から与えられた原料物質の酵素的、アルカリまたは酸性分解によって生成される。前記アミノ酸供給源はさらに、個別的なアミノ酸または個別的なアミノ酸の組み合わせを含むアミノ酸組成物であってもよい。
【0006】
現在、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌種の培養技術は10CFU/mL水準にとどまっていて大量生産工程開発へのハードルになっており、1011CFU/mL水準の高濃度培養は産業化段階において非常に重要な技術になると見込まれる。
【0007】
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループIIに該当する菌株の場合、フィログループIに該当する菌株とは非常に異なる細胞形態(morphology)を示している。特に、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループIIに該当する菌株の場合、N-アセチルグルコサミン(N-acetyl-D-glucosamin、GlcNAc)のようなamino sugarが含まれた培地で培養する時、長い鎖形態の棒状細胞を示すことが確認され、これによって制限的空間で細胞数増大の限界があるので、1011CFU/mL水準の高濃度培養の困難がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Lopez-Siles et al.Appl Environ Microbiol.,2012;78:420-428
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一態様は、植物性ペプトン(vegetable-peptone)、酵母抽出物(yeast extract)、リン酸塩化合物、炭酸塩化合物、シアノコバラミン、L-システイン、酢酸アンモニウム、および麦芽糖で構成されたフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)培養用培地組成物を提供する。
【0010】
他の態様は、前記培地組成物に、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイを接種するステップと、前記接種した菌株を、35~38℃、pH6.5~7、および気体流量0.1~0.3L/hの条件で培養するステップとを含むフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの培養方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様は、植物性ペプトン(vegetable-peptone)、酵母抽出物(yeast extract)、リン酸塩化合物、炭酸塩化合物、シアノコバラミン、L-システイン、酢酸アンモニウム、および麦芽糖で構成されたフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)培養用培地組成物を提供する。
【0012】
一具体例によれば、前記炭酸塩化合物は、2~6g/Lの濃度であってもよい。
【0013】
一具体例によれば、前記麦芽糖は、2.5~30g/Lの濃度であってもよい。
【0014】
一具体例によれば、前記酢酸アンモニウムは、2~16g/Lの濃度であってもよい。
【0015】
一具体例によれば、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイは、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループII(Faecalibacterium prausnitzii Phylogroup II)であってもよい。
【0016】
他の態様は、a)請求項1に記載の培地組成物に、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイを接種するステップと、b)前記接種した菌株を、35~38℃、pH6.5~7、および気体流量0.1~0.3L/hの条件で培養するステップとを含むフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの培養方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明による培地組成物およびフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの培養方法を用いる場合、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループの菌株の高濃度培養および大量生産が可能である。また、動物性成分を排除しながら大量培養時、高濃度の窒素嫌気ガスでも高濃度に培養できるので、より経済的で産業化に適した培養方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を代替する成分を見出すために、ブドウ糖(GlU)とN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)または代替成分の組み合わせによりフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイを培養後、菌株を顕微鏡でみた写真である(GLU:ブドウ糖、GlcNAc:N-アセチルグルコサミン、NaCAS:カゼインナトリウム)。
図2】N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を代替する成分を見出すために、ブドウ糖(GlU)とN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)または代替成分の組み合わせによりフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイを培養後、菌株を顕微鏡でみた写真である(GLU:ブドウ糖、FOS:フラクトオリゴ糖、PEC:ペクチン、CEL:セルロース、CHI:キチン、TRE:トレハロース)。
図3】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイを培養するために、カゼインナトリウムと炭素源の組み合わせの培地でフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイを培養後、菌株を顕微鏡でみた写真である(NaCAS:カゼインナトリウム、FRU:果糖、GAL:ガラクトース、LAC:乳糖、CBS:セロビオース、MAL:麦芽糖、SPV:ピルビン酸ナトリウム)。
図4】文献An integrated transport mechanism of the maltose ABC importer(Machtel et al.,2019,Res.Microbiol.,190:321-337.)で麦芽糖の吸収(maltose uptake)調節過程を示す図で、Aは、PTS糖がある時の過程で、transporterを用いるPTS糖がPTS透過酵素(PTS permease)の活性により麦芽糖の吸収が制限されることを示す図であり、Bは、PTS糖がない時、PTS透過酵素が活性化されず麦芽糖の吸収が活性化される過程を示す図である。
図5】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌株の遺伝体分析を行った結果データで、フィログループI(ATCC27768、EB-FPDK9)と未分類グループ(EB-FPDK3)より、フィログループII(A2-165、EB-FPDK11、EB-FPYYK1)がABC輸送タンパク質(ABC transporter)関連遺伝子のコピー(copy)数がより多いことを確認したデータである。
図6】ANI(average nucleotide identity)ベースで菌株の遺伝体間の類似度を示したデータである。
図7】カゼインナトリウムとセロビオース(CBS)、麦芽糖(MAL)、マルトデキストリン(MDX)、またはプルラン(PUL)を添加した培地でフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイを培養した後、菌株を顕微鏡で確認したデータである。
図8】カゼインナトリウムとセロビオース(CBS)、麦芽糖(MAL)、マルトデキストリン(MDX)、およびプルラン(PUL)を配合した培地でフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイを培養した後、菌株を顕微鏡で確認したデータである。
図9】培地に酢酸ナトリウム(SoAc)または酢酸アンモニウム(AmAc)を添加した時に培養されたフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの様子を顕微鏡で比較して確認したデータである。
図10】麦芽糖(MAL)、酢酸アンモニウム(AmAc)、シアノコバラミン(CYA)、およびカゼインナトリウム(NaCAS)のうちの1つを除いた培地で培養したフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイを顕微鏡で確認したデータである。
図11】本発明の培地でフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイが高濃度に培養されることを確認したデータで、韓国特許第10-2245415号に開示されたYBHI w/CB、MT培地(Unoptimized)およびSPYE w/GSGC培地(soy-peptone、yeast extract、glucose、dipotassium phosphate、GlcNAc、sodium acetate、およびcyanocobalaminを含み、0.05%w/v L-cysteineを含む培地、以下、「SPYE w/GSGC培地」)で培養して生菌数を比較したデータである。
図12】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループIIの菌株(A2-165、EB-FPYYK1)、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループIの菌株(EB-FPDK9)およびフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ未分類グループの菌株(EB-FPDK3)をSPYE w/GSGCおよびSPYE w/MACN培地(soy-peptone、yeast extract、dipotassium phosphate、maltose、ammonium acetate、cyanocobalamin、sodium caseinateを含み、0.05%w/v L-cysteineを含む培地、以下、「SPYE w/MACN培地」)で培養後、顕微鏡で観察したデータである。
図13】本発明の培地組成物がフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイで代謝される過程を予想した図である。
図14】Aは、SPYE w/GSGCおよびSPYE w/MACN培地で培養時間によるOD値を示すデータであり、Bは、SPYE w/GSGCおよびSPYE w/MACN培地で培養時間によるpH値を示すデータである。
図15】SPYE w/GSGCおよびSPYE w/MACN培地組成物で大量培養した時に培養された菌株を顕微鏡で確認したデータである。
図16】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループIIの菌株(EB-FPDK11、EB-FPYYK1、A2-165)をリン酸塩および炭酸塩を含む条件で培養後、顕微鏡で観察したデータである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一態様は、植物性ペプトン(vegetable-peptone)、酵母抽出物(yeast extract)、リン酸塩化合物、炭酸塩化合物、シアノコバラミン(cyanocobalamin、B12)、L-システイン(L-cysteine)、酢酸アンモニウム(ammonium acetate)、および麦芽糖(maltose)で構成されたフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)培養用培地組成物を提供する。
【0020】
前記ソイペプトンと前記酵母抽出物は、植物または微生物由来成分で動物性成分を代替する成分である。動物由来成分は、ウイルスまたは細菌の汚染物質を含有するか、アレルゲンまたは抗原ペプチドなどを含むことがあり、バイオ医薬品および健康機能食品の用途を目的とする使用に不適な部分を前記植物または微生物由来成分に代替するものであってもよい。
【0021】
前記植物性ペプトンは、植物から抽出されたペプトンで、例えば、ソイペプトン(soy peptone)、小麦ペプトン(wheat peptone)、綿ペプトン(cotton peptone)、エンドウ豆ペプトン(pea peptone)、ソラマメペプトン(broadbean peptone)、ルピンペプトン(lupin peptone)、およびジャガイモペプトン(potato peptone)であってもよいが、これに制限されるものではない。前記植物ペプトンは、培地組成物に10g/L~20g/Lまたは15g/L~20g/Lの量で含むことができる。
【0022】
前記酵母抽出物は、非-動物性培地上でタンパク質供給源として嫌気性微生物の増殖をさらに増加させる役割を果たすことができる。前記酵母抽出物は、酵母自己溶解物(autolysate)、限外濾過した酵母抽出物または合成酵母抽出物であってもよい。前記酵母抽出物の濃度は、5g/L~10g/Lであってもよいし、例えば、10g/Lであってもよい。
【0023】
前記リン酸塩化合物は、ジソジウムホスフェート(NaHPO)、ジポタシウムホスフェート(KHPO)またはポタシウムホスフェート(KHPO)であってもよい。前記リン酸塩化合物は、等張性条件を維持させ、浸透圧不均衡を防ぐために細胞培養培地に添加する物質である。本発明の培地組成物は、pHを6.5~8.0、6.0~7.0、または5.8~7.8の範囲に維持させることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0024】
一具体例によれば、前記炭酸塩化合物は、2~6g/Lの濃度であってもよい。例えば、2~4g/L、2~5g/L、3~4g/L、3~5g/L、3~6g/L、4~5g/L、4~6g/Lであってもよい。
【0025】
前記炭酸塩化合物は、リン酸塩化合物とともに緩衝作用(buffer)をする成分であり、COを生産するので、大量培養時に経済性を高める成分である。
【0026】
一具体例によれば、前記麦芽糖は、2.5~30g/Lの濃度であってもよい。例えば、2.5~25g/L、2.5~20g/L、2.5~15g/L、および2.5~12.5g/Lであってもよい。
【0027】
一具体例によれば、前記酢酸アンモニウムは、2~16g/Lの濃度であってもよい。例えば、2~16g/L、2~12g/L、2~10g/L、4~16g/L、4~12g/L、および4~10g/Lであってもよい。
【0028】
微生物の培養条件は、通常の技術者によってよく知られているように、微生物の成長速度に影響を与えることができる。本発明において、培養ステップは、pH6.6~pH7.0、培養温度36℃~39℃、撹拌速度40rpm~50rpm、窒素飽和度80%~100%、水素飽和度0%~5%、二酸化炭素飽和度0%~20%で実施することができる。
【0029】
前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイは、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイのフィログループI、IIa、IIbをすべて含むもので、例えば、フィログループIのフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9、フィログループIIaのフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165とフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPYYK1、フィログループIIbのフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK11、および未分類グループのフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK3であってもよいが、これに限定しない。
【0030】
一具体例によれば、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイは、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループII(Faecalibacterium prausnitzii Phylogroup II)であってもよい。例えば、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK11であってもよい。
【0031】
他の態様は、a)請求項1に記載の培地組成物に、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイを接種するステップと、b)前記接種した菌株を、35~38℃、pH6.5~7、および気体流量0.1~0.3L/hの条件で培養するステップとを含むフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの培養方法を提供する。
【0032】
前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイに関する説明は、上記に記載されているものと同じである。
【実施例
【0033】
以下、一つ以上の具体例を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は一つ以上の具体例を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるのではない。
【0034】
実施例1.培地補充剤による細胞の形態変化の確認
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの培養に関連して既存の文献(Duncan et al.,2002;Lopez-Siles et al.,2012,Lopez-Siles et al.,2017)から知られた多様な基質が添加された培養培地でフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループII(phylogroup II)の菌株の細胞の形態変化を確認した。
【0035】
前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループII(phylogroup II)の菌株としては、韓国登録特許第10-2169794号で受託して受託番号KCCM12621Pが与えられたフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK11を使用した。
【0036】
韓国登録特許第10-2245415号の培地組成物は、ソイペプトン(soy-peptone)20g/L、酵母抽出物(yeast extract)10g/L、ブドウ糖(glucose)2.5g/L、ジポタシウムホスフェート(dipotassium phosphate)2.5g/L、N-アセチルグルコサミン(N-acetyl-D-glucosamin、GlcNAc)2.5g/L、酢酸ナトリウム(sodium acetate)2g/L、およびシアノコバラミン(cyanocobalamin、B12)0.1mg/Lを含み、0.05%w/v L-システインを含む培地(以下、「SPYE w/GSGC」)組成物の培養性と比較分析した。
【0037】
このために、それぞれの用意された培地に0.1%v/vの比率でフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK11分離菌株を接種した後、37℃、嫌気条件(90%N、5%CO、5%H)で24~48時間培養し、濁度(OD600nm)の変化を測定した。下記のSPYE培地は、ソイペプトン(soy-peptone)20g/L、酵母抽出物(yeast extract)10g/L、ジポタシウムホスフェート(dipotassium phosphate)2.5g/L、酢酸ナトリウム(sodium acetate)2g/L、シアノコバラミン(cyanocobalamin、B12)0.1mg/Lを含む培地であり、0.05%w/v L-システイン(L-cysteine)が前処理された培地である。下記表1に開示されているように、ブドウ糖(Glu)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc),カゼインナトリウム(NaCAS)、フラクトオリゴ糖(FOS)、ペクチン(PEC)、セルロース(CEL)、キチン(CHI)、トレハロース(TRE)の組み合わせにより培地を組成し、各培地の濁度および細胞の形状を確認した。
【0038】
【表1】
【0039】
前記表1と図1および図2から分かるように、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK11菌株は、GlcNAcが添加されていない培地で相対的に短くなり、真っ直ぐな細胞の形態を示すことを確認し、吸光度はやや低くなったが、細胞密度(細胞数)は大差を示さなかった。また、カゼインナトリウム(NaCAS)を添加した培地の結果値をみれば分かるように、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を添加しない場合、培養性が低下することをカゼインナトリウムがある程度補完できることを確認した。
【0040】
実施例2.最適な炭素源の組み合わせの探索
SPYE培地にN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を代替してカゼインナトリウム(NaCAS)を用いる時、最適な炭素源を確認するために、下記表2のように、ブドウ糖(GLU)、果糖(FRU)、ガラクトース(GAL)、乳糖(LAC)、セロビオース(CBS)、麦芽糖(MAL)、ピルビン酸ナトリウム(SPV)を組み合わせて培養性を確認した。
【0041】
【表2】
【0042】
前記表2および図3に示されるように、N-アセチルグルコサミンが含まれない培地でブドウ糖の代わりにセロビオースおよび麦芽糖を添加した場合、細胞の形態は非常に短くなった棒状に観察され、特に麦芽糖に代替した場合には、非常に小さい細胞の形態を示して制限的空間で細胞数が増大できる、高濃度培養の可能性を確認した。同じく、細胞の形態と大きさの減少によって吸光度は減少することが明らかになったが、細胞の密度(細胞数)は大差を示さなかった。
【0043】
麦芽糖の場合、ABC輸送タンパク質(ABC transporter)を用いるが、PTS輸送タンパク質(PTS transporter)を用いる糖類(PTS sugar:Glucose、Fructose、GlcNAcなど)が存在する場合、PTS透過酵素(PTS permease)の活性によって麦芽糖の吸収が制限されることを、An integrated transport mechanism of the maltose ABC importer(Machtel et al.,2019,Res.Microbiol.,190:321-337.)から抜粋した図4を通して分かる。
【0044】
また、図5および図6に示すように、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌株の遺伝体分析により、フィログループIIの菌株(A2-165、EB-FPDK11、EB-FPYYK1)がフィログループIの菌株(ATCC27768、EB-FPDK9)および未分類グループのEB-FPDK3よりABC輸送タンパク質(ABC transporter)関連遺伝子のcopy数が相対的に多いことが確認されて、麦芽糖のような基質が培養に有用であり得るという点を予想した。
【0045】
実施例3.培養濃度による培養性改善の可否の確認
前記実施例で高濃度培養の高い可能性を示した麦芽糖を含めて重合体であるマルトデキストリン(MDX)、プルラン(PUL)、およびセロビオース(CBS)をSPYE培地に濃度別に添加して培養性改善の可否を確認した。
【0046】
【表3】
【0047】
表3、図7および図8に示すように、N-アセチルグルコサミンが添加されていない培地でブドウ糖を代替して麦芽糖を添加した場合、細胞の形態は非常に短くなった棒状に観察され、濃度依存的に吸光度は大きく上昇して、麦芽糖の濃度12.5g/L~25g/Lで既存の培地(SPYE w/GSGC)と同等の水準を示し、特に顕微鏡観察の結果、細胞の密度(細胞数)は著しく増加したことが明らかになった。
【0048】
セロビオースまたはマルトデキストリンを添加した場合、麦芽糖のみ添加した時よりはやや長い細胞の形態を示し、プルランを添加した場合は、細胞の形態は麦芽糖を添加したのと同様に非常に短かったが、吸光度と細胞密度が非常に低くて、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの培養培地としては適合しないことを確認した。
【0049】
実施例4.酢酸アンモニウム(Ammonium acetate)の添加による培養性の改善
既存の培地に添加されている酢酸ナトリウム(Sodium acetate、SoAc)の酢酸塩(acetate)は、酪酸(butyrate)を生成するための基質として使用され、成長因子(growth factor)として知られている。また、N-アセチルグルコサミンは、細胞壁合成(peptidoglycan biosynthesis)およびエネルギー代謝に使用され、代謝過程でアンモニアを生成するが、アンモニアは、細胞質を中和するpH緩衝作用をし、窒素源を供給する機能をする。したがって、N-アセチルグルコサミンを除いた麦芽糖培地はpH変化に非常に敏感であることが明らかになり、培養後のpHは通常6.1~6.3と確認された。麦芽糖培地でpHが6以下に低下すると、細胞の形態が変化し、培養性が良くないことが観察された。したがって、pH緩衝作用とともに窒素源および酢酸塩を供給できる成長因子として酢酸アンモニウム(Ammonium acetate、AmAc)を酢酸ナトリウムの代わりに添加して培養性改善の可否を確認した。培養性改善の可否を確認するために、基本培地は、前記実施例の結果に基づいて、ソイペプトン(soy-peptone)20g/L、酵母抽出物(yeast extract)10g/L、ジポタシウムホスフェート(dipotassium phosphate)2.5g/L、麦芽糖(maltose)12.5g/L、カゼインナトリウム(sodium caseinate)2.5g/L、シアノコバラミン(cyanocobalamin、B12)0.1mg/Lを含む培地であり、0.05%w/v L-システイン(L-cysteine)が前処理された培地(以下、「SPYE w/MCN」)を使用した。
【0050】
【表4】
【0051】
表4と図9から分かるように、酢酸ナトリウムを代替して酢酸アンモニウムを添加した培地で、濃度依存的に培養性が増加することが明らかになり、特に6g/Lの濃度で吸光度は最大となり、細胞の形態は非常に短くなった棒状に観察され、細胞密度(細胞数)は大きく増加したことが確認された。酢酸アンモニウムを10g/L以上の濃度で添加した培地ではむしろ培養性阻害現象が現れ、20g/Lの濃度では増殖できないことが確認された。
【0052】
実施例5.培地補充剤の成分別重要度の確認
前記提示された基質の組み合わせ(麦芽糖、酢酸アンモニウム、シアノコバラミン、カゼインナトリウム)において各成分別の培養に及ぼす影響を評価した。
【0053】
【表5】
【0054】
前記表5と図10から分かるように、4成分のうち1つでも除かれた場合、培養性は著しく減少し、顕微鏡観察においても細胞の密度(細胞数)が著しく減少することを確認した。
【0055】
実施例6.フィログループIIの菌株の培養性改善の確認
前記実施例5により導出した最適化培地でフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループIIの互いに異なる菌株の培養性改善の可否を確認した。効果比較のために、フィログループIのEB-FPDK9菌株とフィログループIとIIに該当しないEB-FPDK3菌株を使用した。
【0056】
【表6】
【0057】
前記表6と図11に示すように、本発明では、SPYE w/MACN培地(20g/Lの濃度のソイペプトン、10g/Lの濃度の酵母抽出物、2.5g/Lの濃度のジポタシウムホスフェート、12.5g/Lの濃度の麦芽糖、6g/Lの濃度のアンモニウムアセテート、0.1mg/Lの濃度のシアノコバラミン2.5g/Lの濃度のカゼインナトリウムの組み合わせ)によりフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループIIの菌株を1010~1011CFUs/mLで高濃度培養が可能であることを確認した。
【0058】
また、図12に示すように、顕微鏡でみた結果、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループIIであるA2-165およびEB-FPYYK1は、SPYE/GSGC培地に比べて、SPYE w/MACN培地で菌株が短くなり、密度が高くなることを確認した。これに対し、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイフィログループIであるEB-FPDK9および未分類グループであるEB-FPDK3は、SPYE/GSGC培地に比べて培養性に大差を示さなかったり、むしろ菌株が長く成長して高い密度で培養できないことを確認した。
【0059】
本発明を通して、図13のような代謝経路により、ソイペプトン、酵母抽出物、麦芽糖、アンモニウムアセテート、シアノコバラミンカゼインナトリウムの組み合わせの培地成分は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイで代謝されることが推定され、高価なN-アセチルグルコサミンを代替することで経済性も高めた。
【0060】
実施例7.大量培養が可能か否かの確認
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイのようなEOS(Extremely oxygen sensitive)菌種の培養のために嫌気状態を確認し維持できるカスタマイズ型嫌気性発酵システム(anaerobic fermenter system)を用いて、前記確立された培地組成物(表6)で3リットルの発酵規模で大量培養を実現した。このために、下記表7の組成と表8の条件で培養を進行させ、成長曲線(growth curve)およびpHの変化を確認し、顕微鏡観察による形態学的変化および平板計数法を利用して生菌数を確認した。
【0061】
【表7】
【0062】
【表8】
【0063】
その結果、図14に示すように、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK11菌株は、ファーメンターを用いた大量培養で22.5時間ぶりに最大吸光度に到達し、この時の吸光度(OD600)は1.23で試験管培養と同じ水準であり、韓国登録特許第10-2245415号の培地(SPYE w/GSGC)と比較した時、2倍以上の大差を示しており、生菌数はそれぞれ2.0×1011CFUs/mLと2.04×10CFUs/mLで100倍上昇したことが明らかになった。同じく、顕微鏡観察の結果、図15に示すように、SPYE w/GSGC培地と比較して、SPYE w/MACN培養細胞は非常に短くなり、小さくなった棒状の細胞形態を示しており、細胞の密度(細胞数)も著しく向上したことを確認した。
【0064】
実施例8.大量生産の効率性と経済性を考慮した培養条件の探索
微生物のATP合成と酪酸生成経路は水素イオンを必要とするので、水に溶けて炭酸と水素イオンを発生させる二酸化炭素は、嫌気性微生物の成長のための適切な混合ガスの必須構成要素(Killam et al.J.Clin.Microbiol.,2003;41:2201-2202,Reilly et al.,J.Med.Microbiol.,1980;13:573-579,Stalons et al.,Appl.Microbiol.1974;27:1098-1104)として知られている。
【0065】
一般的に知られたフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌種の培養ガスの組成は、90%N+5%CO+5%H、80%N+10%CO+10%H、81%N+11%CO+8%Hと97%CO+3%Hで5%~97%のCOを含んでいる。しかし、大量培養時、COの添加が容易でなくて経済性が低い問題点がある。経済性を克服すべく、100%Nでのみ培養する場合、韓国登録特許第10-2245415号から分かるように、100%Nでのみ構成された嫌気ガスでフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌株を培養すれば、誘導期(lag phase)が非常に遅延することが分かる。
【0066】
高純度窒素(100%N)嫌気ガスの培養により大量培養システムの経済性を克服すると同時に、動物由来成分であるカゼインナトリウムを使用せずに高濃度培養が可能なのかを確認するために、炭酸塩化合物およびカゼインナトリウムの有無による培養性の差をフィログループIIの菌株を培養して比較した。
【0067】
基本培地は、前記実施例の結果に基づいて、ソイペプトン(soy-peptone)20g/L、酵母抽出物(yeast extract)10g/L、麦芽糖(maltose)12.5g/L、酢酸アンモニウム(ammonium acetate)6g/L、シアノコバラミン(cyanocobalamin、B12)0.1mg/Lを含み、0.05%w/v L-システイン(L-cysteine)が前処理された培地(以下、「SPYE w/MAC」)を用いた。下記表9のように、緩衝作用のためのリン酸塩化合物(KHPO、KHPO)とCO+H⇔HCO⇔HCO +Hの反応式により、緩衝作用と水素イオンおよびCOの発生が可能な炭酸塩化合物(KHCO)を導出し、炭酸塩化合物(KHCO)を組み合わせた培地で培養性を確認した。炭酸塩化合物の場合、熱分解(thermal decomposition)によってCOが発生するため、高圧蒸気滅菌よりは濾過滅菌により別途に添加した。また、下記表10から分かるように、大規模発酵では代表的な炭酸塩化合物である炭酸水素カリウム(KHCO)と炭酸水素ナトリウム(NaHCO)のうち熱分解温度と溶解度が高い炭酸水素カリウムがより適合することを確認した。
【0068】
【表9】
【0069】
【表10】
【0070】
【表11】
【0071】
前記表11と図16から分かるように、100%Nの条件では、炭酸水素カリウムの有無によって培養性が大差を示した。EB-FPDK11菌株は、2g/Lの濃度で吸光度は最大値となり、細胞の形態は非常に短い棒状に観察された。また、カゼインナトリウムの有無によって生菌数を計算した時、3.2×1011CFUs/mLと5.3×1011CFUs/mLと大差を示さなかった。100%Nの条件下、EB-FPYYK1とA2-165菌株は、炭酸水素カリウムの濃度が0.2g/Lよりは0.4g/Lで吸光度の増加量が最も高く、EB-FPYYK1菌株の生菌数は3.0×1010CFUs/mL、A2-165菌株の生菌数は2.7×1011CFUs/mLと確認された。しかし、カゼインナトリウムとともに組み合わされた時にはむしろ培養性が大きく減少することが明らかになり、EB-FPDK11菌株とはやや異なる様相を示した。
【0072】
結論として、リン酸塩化合物と炭酸塩化合物との組み合わせにより、COのないガス条件で培養が可能であることを確認し、これとともに、動物由来成分のない培地組成物でも1011CFUs/mL水準の高濃度培養が可能であることを確認した。
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