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  • 特許-固体材料の一部の光熱分析 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】固体材料の一部の光熱分析
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
G01N25/72 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022526190
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2020080306
(87)【国際公開番号】W WO2021089383
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】1912330
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518023164
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デテュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】トゥロティエ,カミーユ
【審査官】寺田 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-539404(JP,A)
【文献】特開平10-142179(JP,A)
【文献】特開2000-028560(JP,A)
【文献】米国特許第06343874(US,B1)
【文献】特開2019-158803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの固体材料から構成される、部品(10)の光熱分析方法であって、
前記方法は、少なくとも1つの欠陥が前記部品の表面部分に存在するかを明らかにすることを目的とし、
前記方法は、
[1]加熱領域(ZC)と呼ばれる、前記部品の表面部分の第1の領域に熱を注入し、次に、検出領域(ZD)と呼ばれ、前記加熱領域とは別個である、前記部品の表面の別の領域に注入した熱の一部を拡散させた期間の後、分析画像(ANA)と呼ばれる、前記検出領域の少なくとも1つの熱イメージを捕捉する工程;および、
[2]少なくとも1つの欠陥が前記検出領域に存在するかを示す顕現画像(REV)を得るため、前記検出領域(ZD)に対応する前記分析画像(ANA)の少なくとも一部について、当該分析画像から基準画像(REF)を差し引く工程、を含み、
前記方法は、
捕捉された各分析画像(ANA)について、当該分析画像から差し引かれる前記基準画像(REF)が、当該部品の表面部分の前記検出領域に欠陥がない場合に前記部品(10)の表面部分に注入された熱の少なくとも一部によって引き起こされる、前記検出領域(ZD)における熱放出分布に対応し、
前記分析画像(ANA)から差し引かれる前記基準画像(REF)が、当該分析画像と、前記部品(10)の表面部分の前記検出領域(ZD)に欠陥がない場合を規定するために使用される熱放出分布の構成モデルとの間の適合度の検索から得られる、方法。
【請求項2】
熱が前記加熱領域(ZC)中に、一定の照射時間、当該加熱領域上に向けられたレーザービーム(F)によって注入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部品(10)の表面部分の検出領域(ZD)に欠陥がない場合を規定するのに使用される熱放出分布モデルは、当該検出領域内の熱拡散の定常状態、特に、前記部品の表面部分内に画定される2つの幾何学的座標の関数として温度値を提供する方程式によって説明される熱拡散の定常状態に対応し、
前記方程式は前記2つの幾何学的座標のうちの少なくとも1つのガウス関数を含み、一定の振幅係数を乗じ、それに一定のオフセット項を加えたものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程[1]を数回実行し、各回は前記部品(10)の表面部分内の前記加熱領域(ZC)を移動させ、前記加熱領域の連続する部分と共に、当該表面部分においてスキャンを行い、当該加熱領域の各位置についての新規の分析画像(ANA)を捕捉し、前記部品の表面部分内を前記加熱領域と共に前記検出領域(ZD)を移動させることによって、前記部品の表面部分における任意の位置が前記検出領域に少なくとも1回含まれ;および、
前記工程[2]は工程[1]の実行毎に繰り返し、各回は当該工程[1]の実行における前記部品(10)の表面部分に位置する検出領域(ZD)に割り当てられる基準画像(REF)を使用する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程[1]の実行毎に、前記検出領域(ZD)は前記加熱領域(ZC)に対して、スキャンの間当該加熱領域の移動方向に従って下流にシフトする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
以下の工程をさらに含む、請求項4または5に記載の方法:
[3]工程[2]の複数の実行中に得られるいくつかの前記顕現画像(REV)に適用される、スプライシング、重ね合わせ、平均化および/または平滑化操作を使用し、前記部品(10)の全体の表面部分の全体画像を再構築し、すべての前記表面部分に存在する欠陥を示すことを目的とする、工程。
【請求項7】
冶金部品、少なくとも一部がセラミック材料から構成される部品、少なくとも一部が複合材料から構成される部品、特にターボジェットエンジンまたはファンのブレード、エネルギー生成タービンのブレード、発電所の容器をふさぐまたは密閉する部品、および動きを伝達するための機械部品に使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記部品(10)が、固体基板(10s)と、少なくとも当該部品の表面部分において当該基板によって担持されるコーティング(10r)とを含み、
前記方法は、前記コーティングに存在する亀裂を明らかにするために使用される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの固体材料から構成される部品(10)の表面部分に少なくとも1つの欠陥が存在するかを明らかにするための、光熱分析組立品であって、
加熱領域(ZC)と呼ばれる、前記部品(10)の表面部分の第1の領域に熱を注入するのに適している熱供給手段(1);
検出領域(ZD)と呼ばれ、前記加熱領域(ZC)とは別個である、前記部品(10)の表面部分の別の領域の、分析画像(ANA)と呼ばれる熱イメージを捕捉するために構成された、熱イメージを捕捉するための手段(2)であって、前記熱供給手段(1)によって注入された熱の一部が前記加熱領域から前記検出領域内に拡散された期間の後、各分析画像を捕捉するために制御されている、手段;および、
前記検出領域(ZD)に対応する分析画像の少なくとも一部について、当該検出領域に少なくとも1つの欠陥が存在するかを示す顕現画像(REV)を得るために、各分析画像(ANA)から基準画像(REF)を差し引くのに適している画像処理部(4)を含み、
捕捉された各分析画像(ANA)について、当該分析画像から差し引かれる基準画像(REF)が、当該部品の表面部分の前記検出領域に欠陥がない場合に前記部品(10)の表面部分に注入された熱の少なくとも一部によって引き起こされる、前記検出領域(ZD)における熱放出分布に対応するために、前記画像処理部(4)が適合され、
前記分析画像(ANA)から差し引かれる前記基準画像(REF)が、当該分析画像と、前記部品(10)の表面部分の前記検出領域(ZD)に欠陥がない場合を規定するために使用される、熱放出分布の構成モデルとの間の適合度の検索から得られる、組立品。
【請求項10】
請求項2~8のいずれか1項に記載の方法の実行にさらに適している、請求項9に記載の組立品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本明細書は、固体材料片の表面に存在する欠陥を明らかにするための光熱分析方法および組立品に関する。
【0002】
〔背景技術〕
少なくとも1つの固体材料から構成される部品の表面部分に存在する、少なくとも1つの欠陥を、光熱分析方法を使用することによって明らかにすることが知られている。当該方法は以下の工程を含む。
[1]加熱領域と呼ばれる、部品の表面部分の第1の領域に熱を注入し、次に、検出領域と呼ばれ、加熱領域とは別個である、部品の表面部分の別の領域に一部の注入した熱を拡散させた期間の後、分析画像と呼ばれる、検出領域の少なくとも1つの熱イメージを捕捉する工程;および、
[2]少なくとも1つの欠陥が検出領域に存在するかを示す顕現画像(revealing image)を得るため、検出領域に対応する分析画像の少なくとも一部について、当該分析画像から基準画像を差し引く工程。
【0003】
従来技術(例えば、文献WO98/39641)から知られている上記方法は、工程[1]を実行し、各回は部品の表面部分内の加熱領域を移動させ、連続する検出領域と共に、当該表面部分においてスキャンを行う。検出領域は、部品の表面部分内を加熱領域と共に移動させ、工程[1]を繰り返す度に新規の分析画像を捕捉する。工程[1]の実行毎に工程[2]も繰り返す。文献WO98/39641によれば、同一のスキャン経路に沿って分析対象の同一の表面部分を2回スキャンするが、当該2回はスキャン経路上で反対の移動方向である。そして、同一の検出領域に関する分析画像(スキャン経路上の異なる移動方向についてそれぞれ捕捉されたものである)が互いに差し引かれ、顕現画像を形成する。つまり、第1のスキャン方向について捕捉された分析画像は、第2のスキャン方向について捕捉された分析画像についての基準画像として使用される。このようにして得られた顕現画像は、部品の表面部分に存在するいくつかの欠陥(例えば、各欠陥の一方の側に位置する温度差の形態)を、欠陥側による温度差の兆候とともに明らかにする。実際、欠陥が部品のわずかに高い局所的な熱抵抗を引き起こす場合、スキャンの各方向についての欠陥に向かって移動する、欠陥と熱領域との間にいくらか大きな量の熱が蓄積する。
【0004】
上記方法は効率的ではあるが、両方の反対のスキャン方向に対応する分析画像を得るために、部品の表面部分を2回スキャンする必要があるという欠点がある。これにより、各部品の分析サイクル時間が長くなり、部品の大量製造と高製造速度とを両立させることは困難である。
【0005】
〔技術的課題〕
このような状況から、本発明の目的は、各部品の分析サイクル時間がより短縮された、光熱分析方法による部品の検査を可能にすることにある。
【0006】
本発明の別の目的は、光熱分析によって、従来技術で知られている方法によって提供されるものよりも信号対雑音比の値が高い顕現画像を提供することである。
【0007】
〔発明の概要〕
これらまたは他の目的のうちの少なくとも1つを達成するために、本発明の第1の態様は、上述の工程[1]および[2]を含む新規の光熱分析方法を提供する。当該方法は、分析画像から差し引かれる基準画像が、部品の表面部分の検出領域に欠陥がない場合に部品の表面部分に注入された熱の少なくとも一部によって引き起こされる、検出領域における熱放出分布に対応する。当該基準画像を使用するために、各検出領域について単一の分析画像で十分であるため、1つの部品を分析するのに必要なサイクル時間は実質半分となる。分析対象の表面部分が大きく、完全にカバーするために多数の連続する検出領域が必要であるときに、分析サイクル時間の節約はさらに重要となる。
【0008】
さらに、本発明の方法は各検出領域に対して単一の分析画像の捕捉が必要であるのみなので、いくつかの分析画像の組み合わせから各顕現画像が生じる方法と比較して、各顕現画像の信号対雑音比が減少するという変化がもたらされる。
【0009】
概して、本発明について、分析画像において画像化される検出領域は加熱領域を含んでいてもよく、好ましくは、検出領域はこの加熱領域に対して中心から外れるかまたはシフトしていてもよく、分析対象の表面部分内で加熱領域と隣接しているまたは加熱領域から離れていてもよい。
【0010】
さらに、概して、本発明について、熱は、加熱領域中に、一定の照射時間、当該加熱領域上に向けられたレーザービームによって注入されてもよい。熱を供給する上記方法は特に、簡便および迅速に実施される。したがって、各部品の分析サイクル時間を短くすることに適している。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、分析画像から差し引かれる基準画像は、当該分析画像と、部品の表面部分の検出領域に欠陥がない場合を規定するために使用される熱放出分布の構成モデルとの間の適合度検索(search for best match)から得られてもよい。
【0012】
部品の表面部分の検出領域に欠陥がない場合を規定するために使用される熱放出分布のこのモデルは、当該検出領域内の熱拡散の定常状態に対応させることは可能である。特に、このモデルは、部品の表面部分内に画定される2つの幾何学的座標の関数として温度値を提供する方程式によって説明される熱拡散の定常状態であってもよい。この方程式は、特に、2つの幾何学的座標のうちの少なくとも1つのガウス関数を含み、ガウス関数は一定の振幅係数を乗じ、それに一定のオフセット項を加えたものであってもよい。
【0013】
あるいは、分析画像から差し引かれる基準画像を、基準領域と呼ばれる、欠陥がないとみなされる部品の表面領域の熱イメージから得てもよい。この場合、工程[1]の構成と同一である加熱領域および検出領域の構成において、基準領域に近いまたは基準領域内の部品に熱量を注入した後に、基準画像として役割を果たすことが目的であるこの熱イメージが捕捉される。
【0014】
好ましくは、検出領域の範囲よりも大きな範囲を有する部品に効率的に適用できるために、分析対象の表面部分においてスキャンを実行することによって、本方法は実施される。この場合、
工程[1]は数回実行し、各回は部品の表面部分内の加熱領域を移動させ、前記加熱領域の連続する部分と共に、当該表面部分においてスキャンを行い、加熱領域の各位置についての新規の分析画像を捕捉し、前記部品の表面部分内を加熱領域と共に検出領域を移動させることによって、部品の表面部分における任意の位置が検出領域に少なくとも1回含まれ;および、
前記工程[2]は工程[1]の実行毎に繰り返し、各回は当該工程[1]の実行における部品の表面部分に位置する検出領域に割り当てられる基準画像(REF)を使用する。
【0015】
工程[1]および[2]の異なる繰り返しについて別個の異なる検出領域とは別々に関係する顕現画像を得るために、分析対象の表面部分において検出領域の別個の位置に割り当てられる基準画像は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0016】
分析対象の表面部分のスキャンを伴う本発明の上記実施形態について、工程[1]の実行毎に、検出領域は加熱領域に対して、スキャンの間当該加熱領域の移動方向に従って下流にシフトしてもよい。したがって、本方法は、検出領域においてより緩やかな加熱を引き起こす構成と比較して、感度がより高い。
【0017】
この場合も、スキャンを伴う上記実施形態について、本方法は以下の工程をさらに含んでいてもよい:
[3]工程[2]の複数の実行中に得られるいくつかの顕現画像(REV)に適用される、スプライシング、重ね合わせ、平均化および/または平滑化操作を使用し、部品全体の表面部分の全体画像を再構築し、当該表面部分のすべてに存在する欠陥を示す工程。
【0018】
全体画像によって、表面部分全体を迅速および効率的に、視覚によって検証することができる。
【0019】
概して、本発明の方法は、冶金部品、少なくとも一部がセラミック材料から構成される部品、または、少なくとも一部が複合材料から構成される部品を含む、少なくとも1つの固体材料から構成されるあらゆる種類の部品に使用してもよい。特に、本発明は、ターボジェットエンジンまたはファンのブレード、エネルギー生成タービンのブレード、発電所の容器をふさぐまたは密閉する部品、および動きを伝達するための機械部品の分析に有利に使用されてもよい。
【0020】
部品は任意で、固体基板と、少なくとも分析対象の表面部分において当該基板によって担持されるコーティングとを含んでいてもよい。そして、本方法は、コーティングに存在するかもしれない任意の亀裂を明らかにするために使用し得る。
【0021】
本発明の第2の態様は、少なくとも1つの固体材料から構成される部品の表面部分に存在する少なくとも1つの欠陥を明らかにするための光熱分析組立品を提案する。当該組立品は、
加熱領域と呼ばれる、部品の表面部分の第1の領域に熱を注入するのに適している熱供給手段;
検出領域と呼ばれ、前記加熱領域とは別個である、部品の表面部分の別の領域の、分析画像と呼ばれる熱イメージを捕捉するために構成された、熱イメージを捕捉するための手段であって、熱供給手段によって注入された熱の一部が前記加熱領域から前記検出領域内に拡散された期間の後、各分析画像を捕捉するために制御されている、熱イメージを捕捉するための手段;
検出領域に対応する分析画像の少なくとも一部について、当該検出領域に少なくとも1つの欠陥が存在するかを示す顕現画像を得るために、各分析画像から基準画像を差し引くのに適している画像処理部;
任意で、加熱領域の連続する位置で当該表面部分においてスキャンを行うために、部品の表面部分内の加熱領域を移動させるのに適しているスキャン手段であって、検出領域は、部品の表面部分内を加熱領域と共に移動させることによって、部品の表面部分における任意の位置が前記検出領域に少なくとも1回含まれる。
【0022】
捕捉された各分析画像について、当該分析画像から差し引かれる基準画像が、部品の表面部分の検出領域に欠陥がない場合に部品の表面部分に注入された熱の少なくともによって引き起こされる、検出領域における熱放出分布に対応するために画像処理部が適合されている。
【0023】
上記光熱分析組立品は、本発明の第1の態様に係る方法を実施するのに適しており、上記の好ましい実施形態および任意の改良を含み得る。
【0024】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照しつつ、いくつかの例の非限定的な実施形態の以下の詳細な記載から、より明確になるであろう。
【0025】
図1]は、本発明に係る光熱分析組立品のブロック図である。
【0026】
図2]は、本発明に係る方法を使用して分析対象の部品をスキャンするための可能な構成である。
【0027】
〔発明の詳細な説明〕
明確にする目的で、これらの図で表される要素の寸法は、実際の寸法にも、実際の寸法比にも対応しない。さらに、これらの要素のいくつかは記号を象徴的にのみ表す。
【0028】
図1]によると、部品10の表面において存在するかもしれない欠陥を明らかにすることを目的としている光熱分析組立品は、熱供給手段1および熱イメージを捕捉する手段2を含む。熱供給手段1は、レーザー源に基づいていてもよく、エネルギーの流れを局所的に受け取ることを目的としている、部品10の表面領域に向かってビームFが向けられている。熱流束に変換し、部品10内に拡散するために、部品10によってレーザー放射が本質的に吸収されるためにレーザー源の波長を選択する。レーザー源は例えば、10.6μm(マイクロメートル)の波長である放射を生成するCOレーザーであってもよい。したがって、部品10に生成された熱流束は、レーザービームFを受け取る領域から離れた位置において、部品の表面温度の局所的な上昇をもたらす。熱イメージを捕捉する手段2(PHOTOと示す)は、熱供給手段1によって生成される、部品10の表面温度の局所的な上昇を検出するのに十分な感度を有する。例えば、熱イメージを捕捉する手段2は、マイクロボロメーターイメージセンサから構成されていてもよい。当該センサは、部品10の表面内の検出領域とイメージセンサの高感度の表面とを光学的に連結するために配置された集束光学系と関連がある。
【0029】
熱供給手段1および熱イメージを捕捉する手段2を協調的に制御するためにコントローラ3(CRTLと示す)を設けてもよい。そして、加熱領域(ZCと示す)と呼ばれる、部品10の表面の一定の領域内に熱量を注入し、検出領域(ZDと示し、部品10の表面内に位置し、加熱領域ZCに近接している)の熱イメージを捕捉するために、一連の光熱分析は熱供給手段1を作動させることを含む。加熱領域ZCは、部品10の表面におけるターゲットポイントPを中心としたレーザービームFの断面に対応する。熱を加熱領域ZCから拡散領域ZD内に拡散させるために、熱供給手段1の作動によって開始する一定持続期間後、検出領域ZDの熱イメージが捕捉される。この持続時間(例えば、0.01秒~0.05秒であってもよい)は、コントローラ3によって制御される。したがって、手段2によって捕捉される熱イメージを[図1]ではANAと示し、本明細書の概略部で分析画像と示す。検出領域ZDにおける部品10によって生成される熱放出放射の空間的な変動を再現し、続いて領域ZC内を加熱する。これらの空間的な変動は、加熱領域ZCから検出領域ZD内への、部品10への熱の拡散により生じ、領域ZCとZDとの間および領域ZD内の部品10に存在し得るあらゆる欠陥によって引き起こされる障害と組み合わされる。部品10の表面において検出領域ZDが加熱領域ZCに近接するために、熱供給手段1および熱イメージを捕捉する手段2は配向されている。赤外線イメージセンサが飽和していない場合、任意に、検出領域ZDは加熱領域ZCを含んでいてもよい。しかしながら、好ましくは、検出領域ZDおよび加熱領域ZCは連続している、または、小さな隙間を有して互いに離れている。検出領域ZDの範囲は約6mm(ミリメートル)×4mmであってもよく、加熱領域ZCは直径1mmの円板であってもよい。
【0030】
本発明によれば、画像処理部4は、分析画像ANAと基準画像とを比較するのに適している。熱イメージを捕捉する手段2によって送達される分析画像ANAの入力を受け取り、および、基準熱イメージ(REFと示し、基準画像と呼ばれる)を受け取るために連結されている、プロセッサ(CPUと示す)から画像処理部4が構成されていてもよい。処理部4は、分析画像ANAの強度値からの基準画像REFの強度値のポイントツーポイントの差し引きから得られる、差分画像を算出するために設計またはプログラムが作られてもよい。基準画像REFが検出領域ZD内に欠陥が存在しないときの部品10内の熱の拡散に対応しているとき、差分画像は高コントラストで部品10の欠陥を明らかにする。この理由で、本明細書の概略部において、差分画像は、検出領域ZDにおいて少なくとも1つの欠陥が存在することを示す顕現画像と呼び、[図1]においてREVと示す。
【0031】
ここで、基準画像REFを得るための異なる方法を示す。概して、基準画像REFについて、少なくとも1つのパラメータに従って分析画像ANAに調整されることは有利である。上記調整パラメータは、例えば、一定の乗法因数および一定である加法項を含んでいてもよく、これらは基準画像REFの一連の画像点強度値に適用される。これらのパラメータは特に、周囲温度値および分析画像ANAの捕捉に対応する実験環境と基準画像REFに対応する条件との間の加熱領域ZC内に注入される熱量値の偏りを削除することを可能にする。さらなる調整パラメータは、基準画像REFを分析画像ANAに調整するために追加的または代替的に使用してもよく、例えば、部品10における温度減少の少なくとも1つの特徴的な長さである。上記温度減少の特徴的な長さは、分析画像ANAの捕捉の実験環境と基準画像REFに対応する条件との間に存在し得る熱容量および熱抵抗値の違いの影響を削除することを可能にし得る。概して、適合度順のアルゴリズム(best-match algorithm)を、分析画像ANAに従って基準画像REFのパラメータを調整するのに使用してもよい。
【0032】
本発明の第1の可能性のある実施形態によると、基準画像REFは、加熱領域ZCに注入される熱によって引き起こされ、熱拡散の定常状態に対応する、検出領域ZDにおける熱放出分布を説明するモデルから得られてもよい。公知の態様において、上記定常状態のモデルは、以下の種類の方程式で表される、検出領域ZDにおける温度分布の方程式に対応している。
【0033】
【数1】
【0034】
式中、Tは検出領域ZDにおける局所温度を示す。Aは乗法調整因数を示す。Bは加法調整項を示す。xおよびyは部品10の表面において画定される2つのデカルト座標である。e(.)は基本指数関数eを示す。σおよびσはそれぞれ座標xおよびyに沿った2つの標準偏差である。xおよびyは、部品10の表面に平行である熱分布モデルの並進位置値(translational positioning value)である。標準偏差σおよびσの値ならびにxおよびyの値は、パラメータAおよびBに加えて、分析画像ANAに対して調整され得る。公知の態様において、上記温度分布はデカルト座標xおよびyのパラメータで表示されたガウス関数である。
【0035】
他のモデルは基準画像REFを提供するために代替的に使用してもよい。特に、当該他のモデルは部品10の表面の一定の厚さの層の存在を考慮してもよく、これは部品10の基礎部分のコーティング材料とは異なるコーティング材料から成る。他のモデルは、インターフェースの検出領域ZDにおける存在を考慮してもよく、これは部品10の隣接部分を構成する2つの異なる材料間の、部品10の表面に対して垂直または斜めの方向に配向している。また、他のモデルは加熱領域ZCの可変な形状、および/または検出領域ZDに対する加熱領域の可変な位置を考慮してもよい。
【0036】
本発明の他の可能性のある実施形態において、基準画像REFは、欠陥がないと仮定される部品の表面部分において、分析対象である部品10の画像捕捉手段1によって捕捉される熱イメージであってもよい。上記欠陥がないと仮定される部品の表面部分は、本明細書の概略部において、基準領域と示す。当該他の実施形態の利点は、分析画像ANAに使用される実験パラメータ等の実験パラメータに基準画像REFが対応し得るという事実による。特に、加熱領域ZCに注入されるエネルギー量、周囲温度、加熱領域ZCの形状、加熱領域ZCおよび検出領域ZDの相対的配置、部品10の材料、本部品の表面のコーティング層の存在の可能性等は、したがって、分析画像ANAと基準画像REFとの間で同一であり得る。
【0037】
画像処理部4によって算出される顕現画像REVは、制御する操作者が観察するために、スクリーン5(DISPLと示される)に表示してもよい。これは、基準画像REFに有効である拡散態様と比較して、熱拡散を変化させる検出領域ZD内の部品10の態様を明らかにする。当該態様は部品10の欠陥に対応し、表面に存在する亀裂であってもよく、部品10の表面のコーティングの亀裂などの、異なる相を含む。任意に、上記欠陥をさらに強調するために、スクリーン5に画像を表示する前に、ハイパス型画像フィルタを顕現画像REVに適用してもよい。例えば、ソーベル型画像フィルタを本目的に使用してもよい。
【0038】
上記光熱分析方法は特に、その後の故障を引き起こす可能性があるいかなる欠陥がない部品10を検証するために適していてもよい。例えば、部品10は航空機ターボジェットコンプレッサのブレードであってもよく、これは、薄層10rで被覆されている固体基板10sから構成される。層10rの機能は、腐食に対する保護であってもよい。そして、本発明の光熱分析方法は特に、層10rにおける亀裂のレベルを検査するために使用してもよい。
【0039】
熱を注入し分析画像を捕捉する単一の順序に対応し、上述で説明した検出領域ZDの範囲よりも大きい範囲を有していてもよい部品10の表面部分を迅速に検査するために、分析対象の部品10の表面部分をスキャン経路SCに沿ってスキャンしてもよい([図2]参照)。連続的に採用される加熱領域の中心点は、当該スキャン経路SCに続く。熱供給手段1および熱イメージを捕捉する手段2の相対的な位置および配向は好ましくは一定であるが、部品10に対して可動である。光熱分析組立品の考えられる1つの構成によれば、部品10は組立品の基部11bに対して可動である支持体11a上に取り付けてもよく、基部は手段1および2に対して固定される。このように、部品10は、互いに垂直な2つの方向において、分析対象であるその表面に対して平行に移動し、これらの2つの方向に対して垂直な軸の周りで回転し得る。したがって、スキャン手段11は、可動支持体11aと、基部11bと、手段1および2のトリガと同期する態様において部品10の動きを制御するための制御装置3の一部とを含む。
【0040】
図2]は、部品10の表面の分析対象の部分の立面図であり、分析対象の表面部分のすべての位置が検出領域内に少なくとも1回含まれるために設計されたスキャン経路SCを示す。加熱領域の中心点は部品10の表面におけるスキャン経路SCに追従し得、部品10の連続する位置については、上述した静的光熱分析の順序が各位置で行われる。この場合、熱供給手段1は断続的および周期的に動作し、例えば、レーザーパルスを部品10の表面に向けてその位置毎に照射する。スキャン経路SCに沿って示された点Pは、加熱領域の中心に対する可能な連続した位置を示す。部品10の分析サイクル時間を短縮するために、これらの位置Pは、[図2]に示されている矢印に対応して、スキャン経路SCに沿って連続的な順序で、時系列的に実行してもよい。次いで、特に有利なことは、捕捉された分析画像ANAのコントラスト、および本発明に従って計算された顕現画像REVのコントラストを、分析対象の表面部分における加熱領域の各位置についての1つの顕現画像REVの割合で増加させるために、検出領域がスキャン方向に対して加熱領域の下流に位置する。別の言い方をすれば、分析対象の表面内の1つの同じ位置は好ましくは手段1によって標的とされる加熱領域として使用される前に、または当該加熱領域に隣接する前に、手段2によって画像化される検知領域内に最初に現れる。[図2]では、Pは、加熱領域ZCおよび検出領域ZDに対応する、スキャン経路SC上の加熱領域の中心点を指定する。後者は、点Pを含む経路セグメントに対するスキャン経路SC上の矢印によって示される移動方向における加熱領域ZCに対するオフセットである。同様に、Pは、スキャン経路SC上の加熱領域の別の中心点を指定し、これは点Pより後に達成され、加熱領域ZCおよび検出領域ZDに対応する。次いで、点Pを含む経路セグメントに関するスキャン経路SC上の矢印によって示される移動方向において検出領域ZDは加熱領域ZCに対してシフトされる。
【0041】
スキャン経路SCは好ましくは、部品10の分析対象のすべての表面部分がすべての連続する点Pに関連する検出領域によってカバーされるために設計される。したがって、すべての顕現画像REVをグループ化することはスクリーン5上に表示することを目的とした包括的な視覚化画像において、部品10の分析対処のすべての表面部分を再構成することを可能にする。任意に、異なる検出領域の重複するストリップ(strip)が、スキャン経路SC内の隣接する蛇行の間に存在してもよい。画像スプライシング操作は個々の顕現画像REVの間で使用されてもよく、その結果、画像全体は別個の部分で生成されるためにアーチファクトを含まない。画像処理の分野で公知の方法では、当該画像スプライシング操作は、個々の顕現画像の平均強度値の補正、個々の画像の端を横切る画像パターンの連続性を保証するための隣接する顕現画像の相対変位、個々の画像の端に垂直な画像点の強度値の平滑化などを含んでいてもよい。
【0042】
したがって、本発明は、表面部分の1回のみスキャンを行うことによって、部品10の全体の表面部分を検査することが可能である。検証時間(分析サイクル時間と呼ばれる)はしたがって、反対の移動方向においてスキャン経路を2回実行することが必要である光熱分析方法と比較して減少する。部品10の分析サイクル時間が可動支持体11a上に部品10を搭載するよりも、むしろ主にスキャンによるとき、分析サイクル時間の節約は2つの因子(factor)のオーダーとなり得る。
【0043】
さらに、本発明による方法において各顕現画像REVは単一の分析画像ANAを捕捉することのみを必要とすることを考慮すると、各顕現画像が同じ検出領域に関係する2つの分析画像の差から各顕現画像REVが推定される従来技術の方法と比較して、信号対雑音比の値が減少している。実際、これらの従来の方法では、一緒に組み合わされる2つの分析画像の各々が他の分析画像のものとは無関係なランダムな熱画像形成ノイズの影響を受ける。顕現画像の信号対雑音比(SNRと表記される)が以下の式に従ってデシベル(dB)で表されるとき、
【0044】
【数2】
【0045】
式中、Sは部品10の表面の亀裂における画像点の強度の変動の最大振幅であり、Bは、欠陥がないとみなされる部品10の表面の基準領域で測定される熱画像形成ノイズの最大振幅である。腐食に対する保護の薄層で覆われた固体基板で構成される分析対象の物品に対して、2.8~6.3の因子の信号対雑音比の改善が得られた。
【0046】
引用された利点の少なくともいくつかを保持しながら、上記で詳細に説明した実施形態の第2の態様を改変することによって本発明を再現してもよいことが理解される。特に、加熱領域ZCは、任意の形状(特に、スキャン経路SCに対して垂直に配向された直線セグメントの形状)を有していてもよい。同様に、検出領域ZDの形状は、熱イメージセンサのアレイに対応する直方体に限定されない。例えば、検出領域ZDは、焦点が加熱領域ZCの中心に重ね合わされ、スキャン経路SC上の進行方向に対して後者の下流に配向されていてもよい半円板の形状を有していてもよい。さらに、引用されたすべての数値は単に例示の目的のためであり、関連する用途に応じて変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明に係る光熱分析組立品のブロック図である。
図2】本発明に係る方法を使用して分析対象の部品をスキャンするための可能な構成である。
図1
図2