(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】モータ車両を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20241213BHJP
B60W 50/08 20200101ALI20241213BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241213BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W50/08
B60W60/00
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2022531580
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2020081825
(87)【国際公開番号】W WO2021110377
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-13
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ, ジェオフレ
(72)【発明者】
【氏名】シェドヴィル, セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ド, アン-ラン
(72)【発明者】
【氏名】ルテリエ, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】グエン, ホア デュック
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0273087(US,A1)
【文献】国際公開第2018/088456(WO,A1)
【文献】特開2016-172548(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0089245(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
b62D 6/00- 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動推進デバイス(10)の制御システム(18)のアクチュエータ(15)を自律的に制御するための制御方法であって、前記方法が、
- 基準軌道(T0)を決定するステップと、
- 前記基準軌道(T0)に対する前記デバイス(10)の位置を決定するステップと、
- 前記制御システム(18)の手動制御手段(16)に対して運転者が付与する力に関係するパラメータ(Cc)を取得するステップと、
- コンピュータ(13)により、前記アクチュエータ(15)の制御
設定値(Cr)を算出するステップと
を含み、
前記制御
設定値(Cr)は、前記パラメータ(Cc)と前記基準軌道(T0)に対する前記デバイス(10)の前記位置との関数として算出されることを特徴と
し、
前記デバイス(10)は、道路上で走行するのに適しかつ少なくとも1つの駆動輪(11)を含むモータ車両であり、前記手動制御手段(16)は操舵輪であり、前記制御システム(18)は、各々の駆動輪(11)が操舵されることを可能とし、前記パラメータ(Cc)は、前記モータ車両の前記運転者が前記操舵輪に付与するトルク(Cc)に関係し、
前記基準軌道(T0)は、前記デバイス(10)が障害物(100)を回避するように決定され、前記デバイス(10)の環境の4つの区域であって、前記区域の限界が、前記障害物(100)の位置におよび/または前記障害物(100)に対する前記基準軌道(T0)の位置に依存する、4つの異なる計算アルゴリズムと関連付けられる4つの区域が前記コンピュータにより考慮され、前記制御設定値(Cr)の前記算出は、
- 前記デバイス(10)が位置する前記区域を決定すること、および
- 前記デバイス(10)が位置する前記区域の関数として選択される前記制御設定値(Cr)を算出するためのアルゴリズムを使用することにより
遂行され、
前記4つの区域が、
- 前記障害物(100)の上流に位置する、前記基準軌道(T0)と前記道路に平行な仮想的な線である保護線(L1)との間の区域(Z1)であって、前記保護線を越えると前記障害物(100)とのいかなる衝突も回避される、区域(Z1)、
- 前記基準軌道(T0)と前記保護線(L1)との間で、前記障害物(100)と並んで前記障害物(100)の下流に位置する区域(Z2)、
- 前記基準軌道(T0)からみて前記保護線(L1)とは反対の側で、前記障害物(100)の上流に位置する区域(Z3)、ならびに、
- 区域(Z4)であって、前記区域(Z4)の一部分が、前記保護線(L1)からみて前記基準軌道(T0)とは反対の側で、前記障害物(100)の上流に位置し、前記区域(Z4)の別の一部分が、前記基準軌道(T0)からみて前記保護線(L1)とは反対の側で、前記障害物(100)と並んで前記障害物(100)の下流に位置する、区域(Z4)
である、方法。
【請求項2】
インジケータ(K1)であって、前記インジケータの値が、前記デバイス(10)が位置する前記区域および前記パラメータ(Cc)に依存する、インジケータ(K1)を決定する
ように構成され、前記デバイス(10)を前記基準軌道(T0)に導くことを可能にする、前記アクチュエータ(15)の予備的な制御
設定値(Ca)を生成する
ように構成され、前記インジケータ(K1)の前記値の関数として前記予備的な
制御設定値(Ca)を補正する
ように構成される、請求項
1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記インジケータ(K1)は、2つの値のうちの一方または他方のみをとるように適合され、前記インジケータ(K1)の関数として、2つの値の間で断続的に変動する補正インジケータ(K1
rt)を決定する
ように構成され、前記予備的な制御
設定値(Ca)は、前記予備的な
制御設定値に前記補正インジケータ(K1
rt)の値を乗算することにより補正される、請求項
2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記デバイス(10)は道路上で走行するのに適するモータ車両であり、前記補正インジケータ(K1
rt)が変動するとき、前記補正インジケータ(K1
rt)の変動のレートは、前記モータ車両の横方向加速度が決定されたしきい値を超過しないように、前記モータ車両の速度および前記道路の曲率半径の関数として決定される、請求項
3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記予備的な制御
設定値(Ca)は、前記操舵輪の操舵角度
設定値(δ
c)から導出され、前記操舵角度
設定値自体は、前記基準軌道(T0)に対する前記デバイス(10)の前記位置の関数として算出され、
設定値振幅制限モデルおよび
設定値変動制限モデルを満たすコントロー
ラにより、フィルタリングされる、請求項
2から
4のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項6】
前記デバイス(10)が第1の区域から第2の区域に移動するとき、前記コンピュータ(13)は、前記デバイスが、前記基準軌道(T0)の関数として決定されるヒステリシス軌道(T0
1、T0
2)を越えて進行していない限りにおいて、前記第1の区域と関連付けられる前記アルゴリズムを使用することを継続する、請求項
1から
5のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項7】
前記デバイス(10)の軌道に影響を与えるように適合された少なくとも1つのアクチュエータと、前記アクチュエータを制御するためのコンピュータ(13)とを含む、自動推進デバイス(10)であって、前記コンピュータ(13)は、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法を実施するようにプログラムされることを特徴とする、自動推進デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、自動推進デバイス軌道追跡の自動化に関係する。
【0002】
本発明は、特に、モータ車両運転支援の背景状況において有利であるが、本発明は、さらには、航空学またはロボット工学の分野に応用され得る。
【0003】
本発明は、より詳しくは、自動推進デバイスの制御システムのアクチュエータを自律的に制御するための方法であって、
- 基準軌道を決定するステップと、
- 基準軌道に対する前記デバイスの位置を決定するステップと、
- 前記制御システムの手動制御手段に対して運転者が付与する力に関係するパラメータを取得するステップと、
- コンピュータにより、前記アクチュエータの制御セットポイントを算出するステップと
を含む、方法に関係する。
【0004】
本発明は、さらには、この方法を実施するように適合されたコンピュータを装備されるデバイスに関係する。
【背景技術】
【0005】
安全のために、モータ車両は、運転支援システムまたは自律運転システムを装備されることが増えている。
【0006】
これらのシステムの中で、とりわけ知られているのが、モータ車両の従来のブレーキシステムに単純に作用することにより、車両によりとられている車線内に位置する障害物とのいかなる衝突も回避するように設計される、自動緊急ブレーキ(AEB)システムである。
【0007】
しかしながら、これらの緊急ブレーキシステムが衝突を回避することを可能にしない、または、単純に使用可能でない状況が存する(例えば、車両がモータ車両に近く追従している場合)。
【0008】
これらの状況に対して、車両の操舵に作用することによって、または、車両の差動ブレーキシステムに作用することによってのいずれかで、障害物を回避することを、その障害物の軌道から車両をそらすことにより可能にする、(「自動逃避操舵(Automatic Evasive Steering)」または「自動緊急操舵(Automatic Emergency Steering)」の略語である、略称AESにより、よりよく知られている)自動回避システムが開発されてきた。
【0009】
障害物を回避するためのこのAESシステムが、運転者がとることを欲した回避軌道とは異なる回避軌道に追従することを車両に強要するように、運転者と対立するということがあり得る。このことの結果は、最良の場合でも、運転者にとっての邪魔であり(その運転者は、次いで、その運転者の安全を損ねるように、AESシステムを非アクティブ化することをあえて行う)、最悪の場合には、運転者にとっての理解の不足であり、そのことは潜在的には、その運転者が状況の不十分な理解を有することを引き起こす。
【0010】
運転者とこのAESシステムとの間の相互作用の管理は、それゆえに、実際には困難であることが判明している。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明は、運転者の願望とAESシステムによりとられる判断との間のより良好な調停を保証する追加的な機能を、既存のAESシステムに追加することにより、AESシステムを強化することを提案する。
【0012】
より詳しくは、本発明によれば、序文において定義されたような方法であって、制御セットポイントは、前記パラメータの関数として、および、基準軌道に対する前記デバイスの位置の関数として算出される、方法が提案される。
【0013】
かくして、本発明のおかげで、自動推進デバイスによりとられる軌道は、AESシステムにより生成されるセットポイントにのみではなく、さらには、運転者により表現される意志に依存する。
【0014】
本発明は、次いで、遭遇される状況の関数として、および特に、障害物に対する自動推進デバイスの位置の関数として、AESシステム、または、運転者により表現される意志を、調停および優遇することを可能にする。
【0015】
本発明は、かくして、運転者を理解不足の状況におくことを回避し、その運転者に最も良好な可能な運転快適性を保証しながら行うことを可能にする。
【0016】
個々に、または、すべての技術的に可能な組み合わせにしたがって取り入れられる、本発明にしたがう制御方法の、他の有利な、および非制限的な特色は、後に続くようなものである:
- デバイスは、道路上で走行するのに適し、かつ少なくとも1つの駆動輪を含むモータ車両であり、
- 手動制御手段は、操舵輪であり、
- 前記制御システムは、各々の駆動輪が操舵されることを可能とし、
- パラメータは、モータ車両の運転者が操舵輪に付与するトルクに関係し、
- 基準軌道は、デバイスが障害物を回避するように決定され、
- 前記デバイスの環境の少なくとも2つの区域であって、それらの区域の限界が、障害物の位置に、および/または、障害物に対する基準軌道の位置に依存する、少なくとも2つの区域が考慮され、制御セットポイントの算出は、前記デバイスが位置する区域を決定することにより、次いで、前記デバイスが位置する区域の関数として選択される、制御セットポイントを算出するためのアルゴリズムを使用することにより遂行され、
- インジケータであって、そのインジケータの値が、前記デバイスが位置する区域および前記パラメータに依存する、インジケータを決定することの用意がなされ、前記デバイスを基準軌道に導くことを可能にする、前記アクチュエータの予備的な制御セットポイントを生成することの用意がなされ、前記インジケータの値の関数として予備的なセットポイントを補正することの用意がなされ、
- 前記インジケータは、2つの値のうちの一方または他方のみをとるように適合され、前記インジケータの関数として、2つの値の間で断続的に変動する、補正インジケータを決定することの用意がなされ、予備的なセットポイントは、その予備的なセットポイントの値に補正インジケータの値を乗算することにより補正され、
- 前記補正インジケータが変動するとき、前記補正インジケータの変動のレートは、モータ車両の横方向加速度が、決定されたしきい値を超過しないように、前記モータ車両の速度および道路の曲率半径の関数として決定され、
- 予備的なセットポイントは、輪の操舵角度セットポイントから導出され、その操舵角度セットポイント自体は、基準軌道に対する前記デバイスの位置の関数として算出され、セットポイント振幅制限モデルおよびセットポイント変動制限モデルを満たすコントローラの手段によりフィルタリングされ、
- コンピュータは、4つの異なる計算アルゴリズムと関連付けられる4つの区域を考慮し、該4つの区域が、
*障害物の上流に位置する、基準軌道と保護線との間の区域であって、前記保護線を越えると前記障害物とのいかなる衝突も回避される、区域、
*基準軌道と保護線との間で、障害物と並んで障害物の下流に位置する区域、
*基準軌道からみて保護線とは反対の側で、障害物の上流に位置する区域、ならびに、
*区域であって、該区域の一部分が、保護線からみて基準軌道とは反対の側で、障害物の上流に位置し、該の区域の別の一部分が、基準軌道からみて保護線とは反対の側で、障害物と並んで障害物の下流に位置する、区域
であり、
- 前記デバイスが第1の区域から第2の区域に移動するとき、コンピュータは、前記デバイスが、基準軌道の関数として決定されるヒステリシス軌道を越えて進行していない限りにおいて、第1の区域と関連付けられるアルゴリズムを使用することを継続する、
- 基準軌道は、障害物を回避することを、障害物の一部分の周辺に位置する少なくとも1つの保護限界を避けることにより行うように決定される、
- 第1の保護限界は、障害物の形状の、および/または、センサであって、それらのセンサをモータ車両が装備される、センサの測定誤差の、および/または、障害物の速度の関数である、形状および位置を有する、
- 第2の保護限界は、あらかじめ決定された安全マージンの関数である、形状および位置を有する。
【0017】
本発明は、さらには、車などの自動推進デバイスであって、前記デバイスの軌道に影響を与えるように適合された少なくとも1つのアクチュエータと、前記アクチュエータを制御するためのコンピュータとを含む、自動推進デバイスであって、そのコンピュータは、上記で明記されたような方法を実施するようにプログラムされる、自動推進デバイスを提案する。
【0018】
当然ながら、本発明の様々な特色は、それらの特色が相互に相容れない、または排他的であるということでない限り、様々な組み合わせにしたがって互いと関連付けられ得る。
【0019】
添付される図面に照らして下記で与えられる、非制限的な例として与えられる説明が、何から本発明がなるか、および、どのように本発明が生み出され得るかの良好な理解を与えることになる。
【0020】
添付される図面において、次のものがある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】道路上で走行するモータ車両の上面概略視図であり、その道路上に、この車両がとらなければならない回避軌道が表される。
【
図2】本発明にしたがう制御方法を実施するのに適する制御システムのアーキテクチャを例解するブロック線図である。
【
図3】障害物の、
図1のモータ車両の、そのモータ車両の障害物回避軌道の、および、本発明にしたがう制御方法の背景状況において使用される異なる区域の概略視図である。
【
図4】障害物の、障害物回避軌道の、および、本発明にしたがう制御方法の使用の第1の例の背景状況において考察され得る2つの軌道の概略視図である。
【
図5】モータ車両の異なる制御トルクの傾向を表す、
図4のグラフを基礎としてプロットされるグラフである。
【
図6】障害物の、障害物回避軌道の、および、本発明にしたがう制御方法の使用の第1の例の背景状況において考察され得る2つの軌道の概略視図である。
【
図7】モータ車両の異なる制御トルクの傾向を表す、
図6のグラフを基礎としてプロットされるグラフである。
【
図8】障害物の、障害物回避軌道の、および、本発明にしたがう制御方法の使用の第1の例の背景状況において考察され得る2つの軌道の概略視図である。
【
図9】モータ車両の異なる制御トルクの傾向を表す、
図8のグラフを基礎としてプロットされるグラフである。
【
図10】障害物の、障害物回避軌道の、および、本発明にしたがう制御方法の使用の第1の例の背景状況において考察され得る2つの軌道の概略視図である。
【
図11】モータ車両の異なる制御トルクの傾向を表す、
図10のグラフを基礎としてプロットされるグラフである。
【
図12】障害物の、障害物回避軌道の、および、本発明にしたがう制御方法の使用の第1の例の背景状況において考察され得る2つの軌道の概略視図である。
【
図13】モータ車両の異なる制御トルクの傾向を表す、
図12のグラフを基礎としてプロットされるグラフである。
【
図14】障害物の、障害物回避軌道の、および、本発明にしたがう制御方法の使用の第1の例の背景状況において考察され得る2つの軌道の概略視図である。
【
図15】モータ車両の異なる制御トルクの傾向を表す、
図14のグラフを基礎としてプロットされるグラフである。
【
図16】時間の関数として操舵角度セットポイントの変動の例を例解するグラフである。
【
図17】本発明にしたがう制御方法の背景状況における、
図1の車両の制御システムのアクティブ化の、および非アクティブ化の時点を例解する、
図16のグラフを基礎としてプロットされるグラフである。
【
図18】本発明にしたがう方法の背景状況において使用されるパラメータK1およびK1
rtの変動を例解する、
図16のグラフを基礎としてプロットされるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、道路上で走行するモータ車両10を示す。後に続く例において、車両は右車線上で運転されるということを法律が請求する事例が検討されることになるが、本発明を、(例えば英国における事例であるような)左での運転の事例に、同様に対称的に応用することができることになる。
【0023】
図1が示すように、モータ車両10は、従来通り、車両室内を区切るシャーシと、2つの前駆動輪11と、2つの後非駆動輪12とを含む。変形例として、これらの2つの後輪は、さらには駆動輪であり得る。
【0024】
このモータ車両10は、車両を転回することができるように、前輪11の向きに作用することを可能にする、従来の操舵システム18を含む。検討される例において、操舵システム18は、操舵輪16の向きの関数として、および/または、事例次第では、コンピュータ13により発行されるセットポイントの関数として、前輪11の向きに作用することを可能にする、支援操舵アクチュエータ15により制御される。
【0025】
加えて、このモータ車両に対して、モータ車両を、そのモータ車両を転回させることにより減速させるように、前輪11の回転の速度に(それどころかさらには、後輪12の回転の速度に)異なるように作用することを可能にする、差動ブレーキシステムを備えることを用意することが可能であることになる。この差動ブレーキシステムは、例えば、車両の輪に配される、制御される差動または電気モータを含むことになる。
【0026】
本明細書において以降、本解説において、検討される操舵システムは、まさしく従来の操舵システムにより形成されることになる。変形例として、その操舵システムは、従来の操舵システムの、および、差動ブレーキシステムの組み合わせにより形成され得る。
【0027】
コンピュータ13は、アクチュエータ15を制御するように用意される。この最終目的のために、そのコンピュータ13は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリと、異なる入力および出力インターフェイスとを含む。
【0028】
そのコンピュータ13の入力インターフェイスのおかげで、コンピュータ13は、様々なセンサから発出する入力信号を受信するように適合される。
【0029】
これらのセンサの中で、後に続くものが、例えば用意される:
- 車両の、その車両の交通車線に対する位置をマーキングすることを可能にする、前部に取り付けられたカメラなどのデバイス、
- モータ車両10の軌道上に位置する障害物100(
図3)を検出することを可能にする、レーダまたはライダリモートセンサなどのデバイス、
- 車両の側部の環境を観測することを可能にする、レーダまたはライダリモートセンサなどの、少なくとも1つの側部に取り付けられたデバイス、
- モータ車両10の(垂直軸の周りの)ヨー回転の速度を決定することを可能にする、ジャイロメータなどのデバイス、ならびに、
- 操舵輪に働かされる力のセンサ、および/または、操舵輪角度位置センサ。
【0030】
そのコンピュータ13の出力インターフェイスのおかげで、コンピュータ13は、支援操舵アクチュエータ15にセットポイントを送信するように適合される。
【0031】
そのコンピュータ13は、かくして、車両が、障害物100回避軌道T0により
図3において例解される例において形成される基準軌道に追従することを、最も良好に、および、条件がその追従することを正当化するならば行うということを確実にすることを可能にする。
【0032】
そのコンピュータ13のメモリのおかげで、コンピュータ13は、本明細書において下記で説明される方法の背景状況において使用されるデータを記憶する。
【0033】
そのコンピュータ13は、特に、命令を含むコンピュータプログラムから組成されるコンピュータアプリケーションを記憶し、プロセッサによるそれらの命令の実行は、コンピュータが、本明細書において下記で説明される方法を実施することを可能とする。
【0034】
そのコンピュータ13は、とりわけ、2つのコンピュータアプリケーション、追従されることになる回避軌道T0と、無論のこと、モータ車両10がその回避軌道T0に追従することを可能とする操舵角度セットポイントδcとを決定することを可能にする、「AESシステム20」と本明細書において以降で呼ばれる第1のアプリケーション、および、上記で述べられた操舵角度セットポイントδcと、運転者により表現される意志とを斟酌して、支援操舵アクチュエータ15に送出されることになるセットポイントを決定することを可能にする、「EPSシステム21」と本明細書において以降で呼ばれる第2のアプリケーションを記憶する。
【0035】
運転者により表現される意志は、ここでは、「操舵輪トルクCc」と本明細書において以降で呼ばれることになる、操舵輪16に対して運転者が付与するトルクから推測される。変形例として、その意志は、この操舵輪トルク、および、例えば操舵輪の角度位置などの他の要因の組み合わせとして推測され得る。
【0036】
これらの2つのシステムAESおよびEPSを詳細に説明する前に、いろいろな変数であって、本明細書において下記で説明される制御方法の背景状況において使用されることになる、および、それらの変数のうちの一部が
図1において例解される、いろいろな変数が導入され得る。
【0037】
前駆動輪がモータ車両10の長手方向軸A1となす操舵角度は、「δ」と表象されることになり、ラジアンで表現されることになる。
【0038】
車両の前方に位置する、照準距離「ls」における、(重心CGを通過する)モータ車両10の長手方向軸A1と回避軌道T0との間の横方向ずれは、「yL」と表象されることになり、メートルで表現されることになる。
【0039】
上記で述べられた照準距離「ls」は、重心CGから測定されることになり、メートルで表現されることになる。
【0040】
長手方向軸A1上のモータ車両の速度は、「V」と表象されることになり、m/sで表現されることになる。
【0041】
図2は、上記で述べられた2つのシステムAES20およびEPS21を示す。これらのシステムが実際に動作する手立てが、次いで解説され得る。
【0042】
モータ車両10が、道路上で、(表されない、および、道路に実質的に平行な)初期軌道に沿って走行し、潜在的に危険な障害物100が検出されるとき、AESシステムがアクティブ化される。
【0043】
潜在的に危険な障害物は、初期軌道上に、もしくは、初期軌道に近接して位置する、固定された障害物、または、移動する障害物であって、その移動する障害物の軌道は初期軌道と交差するリスクがある、移動する障害物である。
【0044】
このシステムAES20は、次いで、入力として、モータ車両10の、そのモータ車両10の環境における、姿勢を特徴付けることを可能にするパラメータP1を受信する。これらのパラメータP1は、例えば、照準距離lsにおけるそのモータ車両10の横方向ずれyL、道路に対するそのモータ車両10の向首方向、そのモータ車両10のヨー速度、その他である。
【0045】
そのシステムAES20は、さらには、障害物100回避軌道T0を決定するように、または、別のコンピュータから障害物100回避軌道T0を受信するように適合される。この回避軌道T0は、例えば、上記で述べられたパラメータP1の、および、障害物100の特徴(寸法、速度、その他)の関数として生成される。
【0046】
図3において、および、本明細書において下記で検討されることになる例のすべてにおいて、この回避軌道T0は、障害物とのいかなる衝突も回避することを可能にする、保護限界101および102を避けることにより、障害物100を左で回避するように計画されるということが確かめられ得る。
【0047】
長方形形状の第1の保護限界101は、障害物100の形状の関数である形状、およびモータ車両が装備するセンサの何らかの測定誤差の関数である形状を有する。その第1の保護限界101は、障害物100の可能な速度を斟酌する位置を有する。
【0048】
第2の保護限界102は、与えられることを欲される安全マージンの関数として選定される寸法を有する。ここでは、その第2の保護限界102は、円であって、その円の中心が、回避軌道T0に最も近く位置する、第1の保護限界101の隅に位置する、円の形状をとる。
【0049】
回避軌道T0が生成される手立ては、ここでは特に本発明の目的ではないため、詳細には説明されないことになる。
【0050】
パラメータP1および回避軌道T0を与えられると、AESシステム20は、車両がこの回避軌道T0に最も良好に追従することを可能とすることになる、車両の前輪11の予備的な操舵角度セットポイントδcを決定することができる。
【0051】
入力としてこの予備的な操舵角度セットポイントδcを受信するEPSシステム21は、コントローラ22を使用して、振幅において、および、変動のレートにおいて飽和させられる、フィルタリングされた操舵角度セットポイントδsを決定する。
【0052】
換言すれば、予備的な操舵角度セットポイントδcは、その予備的な操舵角度セットポイントδcが、あらかじめ決定されたしきい値を(絶対値において)超過するならば、上限を設けられ、その予備的な操舵角度セットポイントδcは、別のあらかじめ決定された限界より高速に変動することができないように調節される。
【0053】
これらのしきい値は、車両の単独での制御を引き継ぐ事態において、モータ車両10がいかなる瞬間においても運転者により制御可能なままであるように、選定される。
【0054】
このフィルタリングされた操舵角度セットポイントδsと、(角度センサにより測定される)駆動輪11の瞬時操舵角度δとの間のずれが、次いで、予備的なトルクセットポイントCaを決定するために使用され、その予備的なトルクセットポイントCaは、その予備的なトルクセットポイントCaが支援操舵アクチュエータ15に直接的に送出されるならば、フィルタリングされた操舵角度セットポイントδsにしたがって、輪の操舵を制御することを可能にすることになる。
【0055】
この予備的なトルクセットポイントCaは、次いで、パラメータK1rtであって、そのパラメータK1rtの算出は本明細書において下記で解説されることになる、パラメータK1rtを乗算され、そのことは、中間トルクセットポイントCiを取得することを可能にする。
【0056】
この中間トルクセットポイントCiと、操舵輪トルクCcとの間の(乗算項の範囲内までの)ずれが、支援操舵アクチュエータ15に送出される最終的なトルクセットポイントCrを取得することを可能にする。
【0057】
本発明は、ここではより具体的には、上記で述べられたパラメータK1rtの算出に関係する。
【0058】
本明細書において以降で「補正利得K1rt」と呼ばれる、このパラメータは、AESシステム20を非アクティブ化することを、条件がそのことを可能としモータ車両10の運転の制御を運転者が取り戻したいときに行うために使用される。
【0059】
条件がそのことを可能とするかどうかをチェックするために、ここでは、モータ車両10が位置する障害物100の環境の区域を決定することの用意がなされる。
【0060】
どのようにこの補正利得K1rtが算出されるかを詳述する前に、これらの算出を実施するために考慮されることになる環境の区域が詳述され得る。
【0061】
図3が示すように、環境の4つの区域が優先的に区別される。変形例として、より小さい数(少なくとも2)、または、より大きい数を考慮することが可能であることになり、これらの区域を異なるように区切ることが可能であることになる。
【0062】
ここでは、これらの4つの区域は、回避軌道T0について、障害物100について、および、保護線L1であって、その保護線L1を越えると障害物100とのいかなる衝突も回避される、保護線L1について規定される。
【0063】
この保護線L1は、より具体的には、道路に平行である(ここでは、その保護線L1は直線状であるが、その保護線L1は、道路がカーブしているならば、カーブしていることがある)、および、障害物100から最も遠く離れている第2の保護限界102の点P1を通過する、仮想的な線に対応する。
【0064】
モータ車両10による(および、より具体的には、そのモータ車両10の重心CGによる)この線の横断は、障害物100が良好に回避されるということを確実にすることを可能にする。
【0065】
4つの区域は、後に続くように規定される。
【0066】
第1の区域Z1は、回避軌道T0と保護線L1との間で、障害物の上流に(より具体的には、ここでは、第1の保護限界101の上流に)位置する。
【0067】
この第1の区域Z1において、運転者の意志は、安全のために、AESシステムの動作を一時停止することができることの願望が存しないように、AESシステム20により算出されるセットポイントに近いと想定される。
【0068】
第2の区域Z2は、回避軌道T0と保護線L1との間で、障害物と並んで、および、障害物の下流に(より具体的には、ここでは、第1の保護限界101と並んで、および、第1の保護限界101の下流に)位置する。
【0069】
この区域は、障害物100の背後に位置し、それゆえに、いかなる危険ももはや存しないので、ここでは、運転者に、その運転者が両方の手を操舵輪につけている限りにおいて、車両の制御を完全に取り戻すことの可能性を認めることが望ましい。
【0070】
第3の区域Z3は、第1の区域Z1について基準軌道T0の他方の側で、障害物100の上流に(より具体的には、ここでは、第1の保護限界101の上流に)位置する。
【0071】
この区域において、願望は、運転者に、その運転者がAESシステム20に断固として逆らうということであれば、車両の運転の制御を取り戻すことの可能性を認めることができることである。
【0072】
第4の区域Z4は、環境の残りを網羅する。
【0073】
この第4の区域において、願望は、運転者に、その運転者がAESシステム20に逆らうならば、車両の運転の制御を取り戻すことの可能性を認めることができることである。かくして、第4の区域において、運転者が、AESシステムにより命じられる操縦に反対すると直ちに、しかしながら穏やかに、AES要求が中断される。
【0074】
補正利得K1rtを算出するために、コンピュータ13は、これらの4つの区域のうちのどれにモータ車両10が位置するかを決定し、次いで、そのコンピュータ13は、区域ごとに、同じではない計算アルゴリズムを使用する。
【0075】
モータ車両10が区域を変更するとき、コンピュータは、不安定性を生成しないように、計算アルゴリズムを即座に変更しない。そのコンピュータは、次いで、車両が、回避軌道T0の関数として算出される、いわゆるヒステリシス軌道を越えて進行するときにのみ、アルゴリズムを変更する。
【0076】
図3において、回避軌道T0に追従することを、その回避軌道T0の右に、または左に、あらかじめ決定された一定の距離、例えば1メートルにおいて行う、2つのヒステリシス軌道T0
1、T0
2が表される。
【0077】
モータ車両10が、区域Z1から区域Z3に(またはその逆に)、または、区域Z2から区域Z4に(またはその逆に)進むとき、コンピュータは、車両が、回避軌道T0のみではなく、さらには、これらの2つのヒステリシス軌道T01、T02を横断した後にのみ、計算アルゴリズムを変更し、そのことは、とりわけ、区域どうしの間の振動の現象を回避することを可能にする。
【0078】
補正利得K1rtが算出される手立てが、今から詳細に説明され得る。
【0079】
この補正利得K1rtの値は、ブール値である利得K1の値から導出され、そのブール値は、後に続くように決定される。
【0080】
モータ車両が第1の区域Z1内に位置するならば、この利得K1は、1に等しくセットされ、そのことは、AESシステム20を中断することの願望が存しないということを意味する。
【0081】
モータ車両が第2の区域Z2内に位置し、運転者が両方の手を操舵輪につけており、操舵輪トルクCcが、絶対値において、第1のしきい値Cc2より上であるならば、利得K1は、0に等しくセットされ、そのことは、AESシステム20を中断することの願望が存するということを意味する。
【0082】
第2の区域Z2における任意の他の状況において、利得K1は、1に等しくセットされる。
【0083】
モータ車両が第3の区域Z3内に位置し、運転者が、区域Z3内にとどまりながら、つまりは、障害物100について最小限にシフトすることにより、(AESシステム20に反して)右で障害物を回避することを意図するならば、利得K1は、0に等しくセットされ、そのことは、AESシステム20を中断することの願望が存するということを意味する。
【0084】
コンピュータ13が、運転者が最小限にシフトすることにより右で障害物を回避することを意図するということを考慮するために、そのコンピュータ13は、操舵輪トルクCcが負であるかどうか、および、その操舵輪トルクCcが負のしきい値Cc3min(例えば、-2Nm)より下であるかどうかをチェックする。
【0085】
このことを反映して、モータ車両が第3の区域Z3内に位置し、運転者が、しきい値Cc3max(例えば、2Nm)より上の操舵輪トルクCCを付与することにより、(AESシステム20に反して)左で障害物を回避することを意図し、AESシステムが負のトルクを生成するならば、利得K1は、さらには0に等しくセットされ、そのことは、AESシステム20を中断することの願望が存するということを意味する。
【0086】
第3の区域Z3における任意の他の状況において、利得K1は、1に等しくセットされ、そのことは、AESシステム20を維持することの願望が存するということを意味する。
【0087】
モータ車両が第4の区域Z4内に位置し、運転者が、負である、および、しきい値Cc4minであって、そのしきい値Cc4min自体が負である(例えば、-3Nm)、しきい値Cc4minより下である、操舵輪トルクCcを負わせることにより、その運転者の初期車線に復帰する、または少なくとも、モータ車両10の横方向速度を相殺することを欲し、AESシステムが正のトルクを生成するならば、利得K1は、0に等しくセットされる。
【0088】
モータ車両が第4の区域Z4内に位置し、運転者が、しきい値Cc4maxであって、そのしきい値Cc4max自体が正である(例えば、3Nm)、しきい値Cc4maxより上の、正の操舵輪トルクCcを負わせることにより、障害物100から最大限に離れて移動することを継続することにより、車線を変更することを欲し、AESシステムが負のトルクを生成するならば、利得K1は、0に等しくセットされる。
【0089】
第4の区域Z4における任意の他の状況において、利得K1は、1に等しくセットされる。
【0090】
利得K1が0に等しく、上記で述べられた条件のうちの少なくとも1つがもはや満たされない事例において、その利得K1は、即座に再度1にセットされるということが留意されることになる。
【0091】
コンピュータ13は、次いで、ここでは0から1の間に在る実数である、および、継続的に変動する、補正利得K1rtを算出することができる。
【0092】
この補正利得K1rtは、モータ車両10の制御におけるいかなる急激な修正も回避するように決定される。
【0093】
一定の勾配によって変動することの用意がなされる。換言すれば、この補正利得K1
rtの変動のレートは、0であり(その補正利得K1
rtの値が0または1に等しいとき)、さもなければ、一定であり、あらかじめ決定された速度に等しい。かくして、
図18が示すように、利得K1が長方形パルスの形状での変動を呈するならば、補正利得K1
rtは、台形パルスの形状での変動を呈し、それらの台形パルスの立ち上がりおよび立ち下がりエッジは、垂直ではなく、傾斜路の形状で斜めである。
【0094】
立ち上がりエッジに関する変動のレートに対して、立ち下がりエッジに関して呈される変動のレートより大きいことの用意をなすことができることになる。各々の立ち上がりエッジは、利得K1が0から1に変化するときに始まることになり、各々の立ち下がりエッジは、利得K1が1から0に変化するときにトリガされることになる。
【0095】
各々の立ち上がりまたは立ち下がりエッジに関する変動のレートは、車両の横方向加速度が(例えば、1m.s-2の)しきい値を超過しないように、車両の速度Vと道路の曲率半径との関数として決定される。
【0096】
使用される勾配は、それゆえに、速度Vが高いときに、相応に、より低く、道路の曲率半径が大きいときに、相応に、より大きいことになる。使用されることになる勾配を決定することを可能にするマッピングを、使用することができることになる。
【0097】
補正利得K1rtが取得されると、その補正利得K1rtは、予備的なトルクセットポイントCaと乗算される。
【0098】
この補正利得K1rtが1に等しいとき、そのことは、AESシステム20が動作可能であるということを意味するが、この予備的なトルクセットポイントCaは修正されず、支援操舵アクチュエータ15は、AESシステム20のみにより制御される。
【0099】
補正利得K1rtが0に等しいとき、そのことは、AESシステム20の動作が一時停止されなければならないということを意味するが、この予備的なトルクセットポイントCaは取り消され、支援操舵アクチュエータ15は、操舵輪16のみにより制御される。
【0100】
0から1の間の補正利得K1rtの変動は、しきい値効果を回避して、動作の一方のモードから他方に、徐々に、および緩やかに遷移することを可能にする。
【0101】
図2において、リセット信号に対応する2つの信号SA、SBが表される。
【0102】
これらの2つのリセット信号SA、SBは、とりわけ、補正利得K1rtが0から非0値に変化するときに、予備的なトルクセットポイントCaの算出を0にリセットし、測定された操舵角度値δを、フィルタリングされた操舵角度セットポイントδsに割り当てることを可能にする。
【0103】
これらの2つの信号の有益性は、本明細書において以降、
図16から18を参照する本解説において、明確に、はっきりすることになる。
【0104】
本発明の有益性を例解するいくつかの個別の事例が、今から説明され得る。
【0105】
図4および5において例解される第1の個別の事例は、第1の障害物100回避段階の後に、モータ車両10が第2の区域Z2内へと進入し、運転者がその運転者の初期交通車線に非常に急速に戻ることを欲する、状況に対応する。
【0106】
この状況において、運転者は、負である操舵輪トルクCcを付与することにより、操舵輪を右に転回する。この操舵輪トルクは、曲線C3により、
図4において例解される。
【0107】
この状況において、AESシステム20は、モータ車両10を回避軌道T0に導くことを可能にする、正のトルク(つまりは、車両を左に行かせる)を算出する。このトルクは、曲線C1により、
図5において例解される。
図4において例解される曲線T1は、モータ車両10により追従されることが、そのモータ車両10がAESシステム20の動作を中断することなく制御されるならば行われることになる、軌道を示す。
【0108】
本発明なしでは、つまりは、AESシステム20を中断することのこの可能性なしでは、操舵輪トルク、および、AESシステムにより生成されるトルクは、反対であることになり、そのことは、運転者にとっての悪い心地を創出することになるということが、次いで理解される。
【0109】
今は、ここで考察される状況は危険でないので、その状況は、運転者の意志に逆らうことを負わせない。
【0110】
次いで、本発明のおかげで、利得K1は、補正利得K1
rtが1から0に断続的に遷移することになるように、0に等しく選定される。中間トルクセットポイントCiが、次いで、その中間トルクセットポイントCiが取り消されるまで、徐々に減少することになり(
図5における曲線C2を確かめられたい)、そのことは、車両が、運転者が願望するように、初期車線に戻る(
図4において例解される軌道T2を確かめられたい)ことを可能とすることになる。
【0111】
図6および7において例解される第2の個別の事例は、運転者が、例えば交通車線を変更するために、AESシステム20により計画される回避より大きい回避を遂行することを欲することになる、状況に対応する。
【0112】
この状況において、障害物100を越えて進行した後に、運転者は、正である操舵輪トルクCcを付与することにより、操舵輪を左に転回することを継続する。この操舵輪トルクは、曲線C6により、
図6において例解される。
【0113】
AESシステム20は、そのAESシステム20としては、モータ車両10を回避軌道T0に導くことを可能にする、負のトルク(つまりは、車両を右に行かせる)を算出する。このトルクは、曲線C4により、
図7において例解される。
図6において例解される曲線T4は、モータ車両10により追従されることが、そのモータ車両10がAESシステム20の動作を中断することなく制御されるならば行われることになる、軌道を示す。
【0114】
本発明なしでは、操舵輪トルク、および、AESシステムにより生成されるトルクは、反対であることになるということが、次いで理解される。この状況は危険でないので、その状況は、運転者の意志に逆らうことを負わせない。
【0115】
次いで、本発明のおかげで、利得K1は、補正利得K1
rtが1から0に断続的に遷移することになるように、0に等しく選定される。中間トルクセットポイントCiが、次いで、その中間トルクセットポイントCiが取り消されるまで、徐々に増大することになり(
図7における曲線C5を確かめられたい)、そのことは、車両が、運転者が願望するように、別の交通車線上で進行する(
図6において例解される軌道T3を確かめられたい)ことを可能とすることになる。
【0116】
図8および9において例解される第3の個別の事例は、運転者が、AESシステム20により計画される回避より大きい回避を遂行することを欲することになり、次いで、その運転者の初期交通車線に急速に戻ることを欲することになる、状況に対応する。
【0117】
回避の開始において、運転者は、操舵輪を左に強く転回し、次いで、車両が第4の区域Z4内へと進入するとき、その運転者は、反して、操舵輪に負のトルクを付与する。この操舵輪トルクは、曲線C9により、
図8において例解される。
【0118】
回避の開始から、モータ車両10を回避軌道T0に導くために、AESシステム20は、次いで、負のトルク(つまりは、車両を右に行かせる)を算出する。このトルクは、曲線C7により、
図9において例解される。
図8において例解される曲線T6は、モータ車両10により追従されることが、そのモータ車両10がAESシステム20の動作を中断することなく制御されるならば行われることになる、軌道を示す。
【0119】
車両が区域Z4内にある、および、AESシステム20の動作を中断することが望ましくないと考えられる限りにおいて、利得K1は、1に等しく保たれる。
【0120】
他方では、車両が第2の区域Z2内へと進入し、運転者が、初期交通車線に急速に戻ることの、その運転者の意志を維持するとき、操舵輪トルクCc、および、AESシステムにより生成されるトルクが、反対の符号のものである、瞬間が来ることになる。この状況は、危険でないとみなされるので、その状況は、運転者の意志に逆らうことを負わせない。
【0121】
次いで、本発明のおかげで、利得K1は、補正利得K1
rtが1から0に断続的に遷移することになるように、0に等しく選定される。アクチュエータ15により負わされる中間トルクセットポイントCiが、次いで、その中間トルクセットポイントCiが取り消されるまで、徐々に減少することになり(
図9における曲線C8を確かめられたい)、そのことは、車両が、運転者が願望するように、その車両の初期交通車線に急速に戻る(
図8において例解される軌道T5を確かめられたい)ことを可能とすることになる。
【0122】
図10および11において例解される第4の個別の事例は、運転者が、左での障害物100の回避を遂行することを欲するが、その運転者が操舵輪に付与するトルクは、障害物100を効果的に回避するのに十分ではない、状況に対応する。
【0123】
この状況において、運転者は、それゆえに、正である、および、その運転者が障害物を検出するときにのみ十分に高い、操舵輪トルクCcを働かせ、次いで、その運転者は、この力をあまりにも急速に緩和する。この操舵輪トルクは、曲線C11により、
図11において例解される。
図10において例解される曲線T8は、モータ車両10により追従されることが、そのモータ車両10が運転者のみにより制御されるならば行われることになる、軌道を示す。
【0124】
この状況において、モータ車両10が、区域Z3において、障害物100の上流である限りにおいて、AESシステム20は、モータ車両10を回避軌道T0に導くことを可能にする、正のトルク(つまりは、車両を左に行かせる)を算出する。このトルクは、曲線C10により、
図11において例解される。
【0125】
この状況は、それゆえに、潜在的に危険であり、そのことによって、その状況は、運転者の意志に逆らうこと、および、AESシステム20の動作を中断しないことを負わせる。
【0126】
次いで、本発明のおかげで、利得K1は、操舵輪トルクCcが、車両によりとられる軌道への低減される影響力を有するように、1に等しく保たれる。
【0127】
図10において例解される曲線T7は、次いでモータ車両10により追従されることになる軌道を示す。
【0128】
図12および13において例解される第5の個別の事例は、運転者が、障害物100の満足のゆく回避を遂行するが、次いで、低減される距離において障害物100を通り越すために、その運転者がとっていた初期車線からあまりにも遠くそらされることを欲しない、状況に対応する。
【0129】
この状況において、運転者は、初期には、正である操舵輪トルクCcを付与することにより、操舵輪を左に転回し、次いで、その運転者は、ちょうどモータ車両10が障害物100と並ぶ前に、負のトルクを付与することにより、操舵輪を右に導く。この操舵輪トルクは、曲線C13により、
図13において例解される。
【0130】
この状況において、AESシステム20は、車両が障害物100の上流である限りにおいて、正である(つまりは、車両を左に行かせる)トルクを算出する。このトルクは、曲線C12により、
図13において例解される。
【0131】
図12において例解される曲線T10は、モータ車両10により追従されることが、そのモータ車両10がAESシステム20の動作を中断することなく制御されるならば行われることになる、軌道を示す。
【0132】
本発明なしでは、つまりは、AESシステム20の動作を中断することの可能性なしでは、操舵輪トルク、および、AESシステムにより生成されるトルクは、初期には、同じ符号のものであることになり、次いで、反対であることになり、そのことは、運転者にとっての悪い心地を創出することになるということが、次いで理解される。
【0133】
ここで検討される状況は危険でないので、その状況は、運転者の意志に逆らうことを負わせない。
【0134】
次いで、本発明のおかげで、利得K1は、初期には、1に等しく保たれ、次いで、その利得K1は、操舵輪トルクCcが、負になる、および、しきい値Cc
3min(-2Nm)より低くなるときの瞬間において0に導かれることになる。その帰結として、補正利得K1
rtは、1から0に断続的に遷移することになる。中間トルクセットポイントCiが、次いで、その中間トルクセットポイントCiが取り消されるまで、徐々に減少することになり(
図13における曲線C14を確かめられたい)、そのことは、車両が、運転者が願望するように、低減される距離において障害物100を通り越す(
図12において例解される軌道T9を確かめられたい)ことを可能とすることになる。
【0135】
図14および15において例解される第6の個別の事例は、運転者が障害物100を右に回避することを欲し、しかるに、回避軌道T0は左で障害物100を通り越す、状況に対応する。
【0136】
この状況において、運転者は、その運転者としては、常に負であり高い操舵輪トルクCcを付与することにより、操舵輪を右に転回する。この操舵輪トルクは、曲線C17により、
図15において例解される。
【0137】
この状況において、AESシステム20は、正である(つまりは、車両を左に行かせる)トルクを算出する。このトルクは、曲線C15により、
図15において例解される。
【0138】
図14において例解される曲線T12は、モータ車両10により追従されることが、そのモータ車両10がAESシステム20の動作を中断することなく制御されるならば行われることになる、軌道を示す。運転者により負わされるトルクは、AESシステムにより負わされるトルクに逆らうのに十分に高いということが確かめられ得る。それでも、心地は、運転者にとって非常に不愉快なままである。
【0139】
この状況において、それゆえに、運転者に、その運転者が障害物100を回避することを欲する側の選定を認めることができることが望ましい。
【0140】
次いで、本発明のおかげで、利得K1は、補正利得K1
rtが1から0に断続的に遷移することになるように、0に等しくセットされる。アクチュエータ15により負わされる最終的なトルクセットポイントCrが、次いで、その最終的なトルクセットポイントCrが取り消されるまで、徐々に減少することになり(
図15における曲線C16を確かめられたい)、そのことは、車両が、運転者が願望するように、障害物を右で回避する(
図14において例解される軌道T11を確かめられたい)ことを可能とすることになる。
【0141】
図16から18において、本発明を明確に例解する、パラメータの経時的な傾向の例が表される。
【0142】
図17において、信号S1のおかげで、AESシステムは、モータ車両10の初期軌道上の、そのモータ車両10に近接する、障害物100の検出の瞬間に対応する時点t
0においてアクティブ化されるということが確かめられ得る。さらには、信号S2のおかげで、確かめられることになるのは、時点t
2とt
4との間でAESシステムの動作を一時停止することの願望が存するということである。
【0143】
図16は、
- 予備的な操舵角度セットポイントδ
cの、
- 飽和させられた操舵角度セットポイントδ
sの、および、
- 測定された操舵角度δの
傾向を示す。
【0144】
障害物の検出の時点t0において、操舵角度が、現に測定された操舵角度より、まさに高いことが必要であることになるということが確かめられ得る。
【0145】
予備的な操舵角度セットポイントδcを飽和させるコントローラのおかげで、飽和させられた操舵角度セットポイントδsの変動のレートは、時点t0とt1との間で、不安定性を生成しないように、制約されたままである。
【0146】
時点t1とt2との間で、振幅の、または、変動のレートの見地において、予備的な操舵角度セットポイントδcを飽和させることは、もはや必要でないことになり、そのことによって、飽和させられた操舵角度セットポイントδsは、その予備的な操舵角度セットポイントδcに等しいことになる。
【0147】
時点t
2において、
図18が示すように、利得K1が、AESシステム20の動作を中断するために、0にセットされる。
【0148】
補正利得K1rtが、次いで、時点t3において値0に達するように、線形に減少する。
【0149】
予備的な操舵角度セットポイントδcが増大することを継続する一方で、飽和させられた操舵角度セットポイントδsは、次いで、リセット信号SA、SBのおかげで、時点t2とt3との間で、一定に保たれることになる。
【0150】
時点t3において、および、時点t4まで、飽和させられた操舵角度セットポイントδsは、次いで、測定された操舵角度δに等しく保たれることになる。この手立てにおいて、中間トルクセットポイントCiは、0に等しく保たれ、そのことは、操縦の制御において、運転者に単独で委ねる。
【0151】
時点t
4において、
図18が示すように、利得K1が、AESシステム20の動作の中断を一時停止するために、1にセットされる。
【0152】
補正利得K1rtが、次いで、さらには値1に達するように、線形に増大する。
【0153】
その時点t4において、リセット信号SA、SBのおかげで、予備的な操舵角度セットポイントδcは、次いで、測定された操舵角度δに等しく導かれることになる。その予備的な操舵角度セットポイントδcは、次いで、非常に急速に増大する。
【0154】
予備的な操舵角度セットポイントδcを飽和させるコントローラのおかげで、飽和させられた操舵角度セットポイントδsの変動のレートは、この状況において、不安定性を生成しないように、制約されたままである。
【0155】
測定された操舵角度δは、操舵輪16に、運転者により依然として負わされるトルクのために、飽和させられた操舵角度セットポイントδ
sに正しく追従しないということが、
図16において確かめられ得る。実のところは、追従される軌道は、運転者トルクの、および、AES要求の合成結果である。運転者が、操舵輪上で能動的に自身を顕在化させるならば、その運転者は、次いで、制御を取り戻す。
【0156】
本発明は、決して説明され表された実施形態に制限されるのではなく、当業者は、本発明にしたがう任意の変形例を本発明に追加することができることになる。
【0157】
かくして、方法を、例えば航空学における、またはロボット工学における、個別の軌道が追従されなければならない、他のタイプの領域に応用することができることになる。