(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】液圧式の非人力・車両ブレーキ設備のための逆止め弁、および液圧式の非人力・車両ブレーキ設備
(51)【国際特許分類】
B60T 11/228 20060101AFI20241213BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20241213BHJP
B60T 15/36 20060101ALI20241213BHJP
B60T 13/20 20060101ALI20241213BHJP
B60T 13/138 20060101ALI20241213BHJP
B60T 8/34 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B60T11/228
B60T17/18
B60T15/36 Z
B60T13/20
B60T13/138 A
B60T8/34
(21)【出願番号】P 2022541914
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2020081048
(87)【国際公開番号】W WO2021144049
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】102020200570.2
(32)【優先日】2020-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヴェー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハグスピエル,マルティン
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-526280(JP,A)
【文献】特開2008-081100(JP,A)
【文献】特開平10-067312(JP,A)
【文献】特公昭43-025426(JP,B1)
【文献】国際公開第2012/150120(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0016321(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012222897(DE,A1)
【文献】特表2019-505438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0290641(US,A1)
【文献】国際公開第2015/022264(WO,A1)
【文献】実開昭57-179562(JP,U)
【文献】特開2014-019243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 11/228
B60T 17/18
B60T 15/36
B60T 13/20
B60T 13/138
B60T 8/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫流方向に貫流可能である、ブレーキ液備蓄容器(10)とマスタブレーキシリンダ(22)との間に配置するための、液圧式の非人力・車両ブレーキ設備(1)のための逆止め弁において、前記逆止め弁(28)は、規定された背圧に達するまで前記貫流方向と反対向きの閉止方向に前記逆止め弁(28)を開いたままに保
ち、かつ前記逆止め弁(28)の弁座よりも前記閉止方向側に配置されるバルブ開放ばね(29)を有し、それにより前記逆止め弁(28)は前記規定された背圧を超えてから初めて前記閉止方向に閉止をすることを特徴とする逆止め弁。
【請求項2】
筋力操作可能なマスタブレーキシリンダ(22)と、非人力ブレーキ圧生成器(3)と、ブレーキ液備蓄容器(10)とを有する液圧式の非人力・車両ブレーキ設備において、前記マスタブレーキシリンダ(22)は逆止め弁(28)を通して前記ブレーキ液備蓄容器(10)に接続され、該逆止め弁は前記ブレーキ液備蓄容器(10)から前記マスタブレーキシリンダ(22)へ貫流方向に貫流可能であり、該逆止め弁は、規定された背圧に達するまで前記貫流方向と反対向きの閉止方向に前記逆止め弁(28)を開いたまま保
ち、かつ前記逆止め弁(28)の弁座よりも前記閉止方向側に配置されるバルブ開放ばね(29)を有し、それにより前記逆止め弁(28)は前記規定された背圧を超えてから初めて前記閉止方向に閉止をすることを特徴とする、液圧式の非人力・車両ブレーキ設備。
【請求項3】
前記逆止め弁(28)にフィルタ(
32)が前置および/または後置されることを特徴とする、請求項2に記載の液圧式の非人力・車両ブレーキ設備。
【請求項4】
前記車両ブレーキ設備(1)は非人力によって駆動可能なハイドロポンプ(16)を有し、前記非人力ブレーキ圧生成器(3)の障害または故障が生じたときに該ハイドロポンプによって前記車両ブレーキ設備(1)を操作可能であることを特徴とする、請求項2に記載の液圧式の非人力・車両ブレーキ設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルの構成要件を有する、液圧式の非人力・車両ブレーキ設備のための特別な逆止め弁に関し、および、請求項2のプレアンブルの構成要件を有する、このような逆止め弁を有する液圧式の非人力・車両ブレーキ設備に関する。請求項4は、請求項2の変形例を対象としている。
【背景技術】
【0002】
スプリングレス型とスプリング負荷型の逆止め弁が知られており、スプリング負荷型の逆止め弁は、バルブ閉止ばねによって規定される開放圧力を上回ったときに初めて開く。
【0003】
特許文献1は、筋力操作可能なマスタブレーキシリンダと、非人力ブレーキ圧生成器と、無通電の基本位置にあるときに開く電磁弁によってマスタブレーキシリンダのブレーキ回路が接続されるブレーキ液備蓄容器とを有する、液圧式の非人力・車両ブレーキ設備を開示している。電磁弁には、マスタブレーキシリンダの方向に貫流可能な逆止め弁が液圧的に並列につながれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際特許出願公開第2012/150120A1号パンフレット
【発明の概要】
【0005】
請求項1の構成要件を有する本発明の逆止め弁は、スプリングレス型の逆止め弁と同じように貫流方向へ貫流可能である。バルブ閉止ばねに代えて、本発明による逆止め弁は、規定された背圧に達するまで貫流方向と反対向きの閉止方向に逆止め弁を開いたままに保つバルブ開放ばねを有し、それによりこの逆止め弁は、規定された背圧を上回らない限り、貫流方向だけでなく、これと反対向きの閉止方向へも貫流可能である。背圧は、バルブ出口とバルブ入口との間で、または一般に逆止め弁の2つの接続部の間で生じる、逆止め弁の閉止方向に作用する圧力であり、この圧力が規定された値を上回ったときに、本発明による逆止め弁をバルブ開放ばねの開放力に抗して閉止する。すなわち本発明による逆止め弁は、規定された背圧を上回ったときに初めて、貫流方向と反対向きの閉止方向に閉止をする。規定された背圧は固定的または調整可能であってよく、背圧は、特にバルブ開放ばねによって規定されるが、逆止め弁のジオメトリーと構造形式によっても規定される。
【0006】
請求項2の構成要件を有する、本発明による液圧式の非人力・車両ブレーキ設備は、筋力操作可能なマスタブレーキシリンダと、非人力ブレーキ圧生成器と、特に無圧のブレーキ液備蓄容器とを有する。マスタブレーキシリンダは補助力によって、すなわちブレーキ倍力装置の補助力により増幅される筋力によって、操作可能であってもよい。マスタブレーキシリンダのブレーキ回路は、上に説明した種類の逆止め弁によってブレーキ液備蓄容器に接続される。この逆止め弁は、マスタブレーキシリンダの方向に貫流方向へ貫流可能である。これと反対向きの閉止方向には、規定された背圧に達するまで、この逆止め弁を同じく貫流可能である。規定された背圧を上回ったときに初めて、すなわち、逆止め弁のマスタブレーキシリンダ側での圧力が、規定された背圧を超えてブレーキ液備蓄容器の側よりも高くなったときに、マスタブレーキシリンダの方向からブレーキ液備蓄容器の方向への貫流に対して逆止め弁が閉じる。マスタブレーキシリンダが1つを超えるブレーキ回路を有している場合、他のブレーキ回路は、たとえばブレーキ液備蓄容器に接続されていなくてよく、またはバルブなしで直接的に、または電磁弁によって、または本発明によるのでない逆止め弁によって、または本発明によるのでないその他のバルブによって、ブレーキ液備蓄容器に接続されていてよい。
【0007】
請求項4に記載の別案は、逆止め弁に液圧的に並列につながれた切換可能なテスト弁を意図する。逆止め弁は、バルブ閉止ばねを有する、または有さない、標準逆止め弁であるのが好ましい。テスト弁は、ブレーキ液備蓄容器での圧力に対するマスタブレーキシリンダでの規定された過圧のもとで開き、それにより、マスタブレーキシリンダでの規定された過圧に達すると、またはこれを上回ると、テスト弁が閉じていてもブレーキ液がマスタブレーキシリンダからブレーキ液備蓄容器へと流出する。「切換可能」とは、テスト弁が閉じた位置と開いた位置との間で切換可能であることを意味する。
【0008】
明細書および図面に開示されている一切の構成要件は、それ自体として単独で、または原則として任意の組合せとして、本発明の各実施形態において具体化されていてよい。特許請求の範囲または本発明の実施形態の、すべての構成要件ではなく1つまたは複数の構成要件を有している本発明の実施形態も、原則として可能である。
【0009】
次に、図面に示されている実施形態を参照して本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による逆止め弁を有する、本発明による液圧式の非人力・車両ブレーキ設備の液圧回路図である。
【
図2a】本発明による逆止め弁を1つの切換位置で示す切換図である。
【
図2b】本発明による逆止め弁を別の切換位置で示す切換図である。
【
図2c】本発明による逆止め弁を別の切換位置で示す切換図である。
【
図3】改変された本発明の実施形態の液圧回路図の一部分である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による液圧式の非人力・車両ブレーキ設備1は、4つの液圧式のホイールブレーキ2を有する乗用車のために意図されており、ブレーキ回路ごとに2つの液圧式のホイールブレーキ2を有する2回路ブレーキ設備として施工されている。これ以外の実施形態も可能であり、たとえば1回路ブレーキ設備や、2つを超えるブレーキ回路を有する多回路ブレーキ設備、および/またはこれ以外の数のホイールブレーキ2、および/またはブレーキ回路へのホイールブレーキ2のこれ以外の割当てが可能である。
【0012】
車両ブレーキ設備1は、ピストン・シリンダ・ユニット5を備えた電気液圧式の非人力ブレーキ圧生成器3を有しており、そのピストン6がブレーキ圧の生成のために電気モータ7によってねじ伝動装置8を介して、またはその他の回転・並進・変換伝動装置を介して、シリンダ9の中で軸方向へスライド可能である。ピストン・シリンダ・ユニット5をプランジャユニット、ピストン6をプランジャピストン、シリンダ9をプランジャシリンダと呼ぶこともできる。
【0013】
非人力ブレーキ圧生成器3のピストン・シリンダ・ユニット5のシリンダ9は、ブレーキ配管26によってブレーキ液備蓄容器10に直接的に接続されるとともに、シリンダ9の方向に貫流可能な逆止め弁27によって間接的に無圧のブレーキ液備蓄容器10に接続されており、それにより、ブレーキ液備蓄容器10からブレーキ液を吸い込むことができる。ピストン・シリンダ・ユニット5のピストン6はそのストロークの開始時にブレーキ配管26を横切り、それによってブレーキ液備蓄容器10へのこの接続部が、ピストン・シリンダ・ユニット5のピストン6のストロークの開始時に閉じられる。逆止め弁27を介して、シリンダ9は常にブレーキ液備蓄容器10と接続されている。
【0014】
非人力ブレーキ圧生成器3には、厳密に言えば、非人力ブレーキ圧生成器3のピストン・シリンダ・ユニット5のシリンダ9には、ここでは非人力弁11と呼ぶバルブと、第1の分離弁12と、ブレーキ圧制御弁構造13とを介して、ホイールブレーキ2が接続されている。両方のブレーキ回路への分割のために、2つの非人力弁11が液圧的に並列に配置され、2つの第1の分離弁12が液圧的に同じく並列に配置されて、各々のブレーキ回路に両方の非人力弁11のうちの1つと、両方の第1の分離弁12のうちの1つとが液圧的に直列に配置される。ブレーキ圧制御弁構造13を介して、それぞれ2つのホイールブレーキ2が、1つの非人力弁11と1つの第1の分離弁12とを介して、非人力ブレーキ圧生成器3に接続されている。
【0015】
ブレーキ圧制御弁構造13は、各々のホイールブレーキ2について、取込弁14と排出弁15とを有している。取込弁14を介してホイールブレーキ2が第1の分離弁12に接続され、すなわち、各々のブレーキ回路でそれぞれ1つの取込弁14を有する2つのホイールブレーキ2が第1の分離弁12に接続される。排出弁15を介して、ホイールブレーキ2がブレーキ液備蓄容器10と接続される。
【0016】
取込弁14と排出弁15がブレーキ圧制御弁構造13を形成し、これによって各々のホイールブレーキ2でのホイールブレーキ圧を個別に制御することができる。ハイドロポンプ16と共同で、スリップコントロール、特にロック防止コントロール、トラクションコントロール、および/またはビークルダイナミックコントロールもしくはエレクトロニックスタビリティプログラムが可能である。これらのスリップコントロールについては略語ABS、ASR、および/またはFDRもしくはESPが慣用される。ビークルダイナミックコントロールやエレクトロニックスタビリティプログラムは、日常語では横滑りコントロールとも呼ばれる。こうしたスリップコントロールは周知であり、ここでは詳しく説明しない。
【0017】
本発明による車両ブレーキ設備1は、フットブレーキペダル21で操作可能な2回路マスタブレーキシリンダ22を筋力ブレーキ圧生成器として有していて、これに各々のブレーキ回路のホイールブレーキ2が、それぞれ1つの第2の分離弁23、第1の分離弁12、およびブレーキ圧制御弁構造13の取込弁14を介して接続されており、それにより、車両ブレーキ設備1を筋力によっても操作可能である。第2の分離弁23、第1の分離弁12、および取込弁16は液圧的に直列に配置されている。2回路マスタブレーキシリンダ22は、図示しないブレーキ倍力装置を有することができ、その場合には補助力ブレーキ圧生成器と呼ぶことができる。
【0018】
吸込弁20を通してハイドロポンプ16の吸込側がマスタブレーキシリンダ22と接続されており、これを通してハイドロポンプ16がブレーキ液をブレーキ液備蓄容器10から吸い込むことができる。各々のブレーキ回路について、共通の電気モータ17により駆動可能であるハイドロポンプ16が存在する。ハイドロポンプ16の圧力側は、第1の分離弁12と取込弁14とを通してホイールブレーキ2と接続されている。吸込弁20および第2の分離弁23とともに独自のハイドロリックブロックに格納されるハイドロポンプ16は、スリップコントロールの際のブレーキ圧生成に利用される。
【0019】
基本的には非人力による車両ブレーキ設備1の操作が意図され、このときブレーキ圧は電気液圧式の非人力ブレーキ圧生成器3によって生成される。電気液圧式の非人力ブレーキ圧生成器3に障害や故障があるときに、スリップコントロールのハイドロポンプ16によって、または選択的にマスタブレーキシリンダ22によって、ブレーキ圧生成が可能である。マスタブレーキシリンダ22自体は、機能性のある電気液圧式の非人力ブレーキ圧生成器3のもとでは、ホイールブレーキ2で調整されるべきホイールブレーキ圧についての目標値生成器としての役目を果たす。
【0020】
両方のブレーキ回路のうちの一方で、ペダルストロークシミュレータ24がシミュレータ弁25を介してマスタブレーキシリンダ22に接続されている。ペダルストロークシミュレータ24はスプリング負荷型のハイドロリザーバであり、シミュレータ弁25が開いているとき、その中にブレーキ液をマスタブレーキシリンダ22から押し除けることができ、それにより、第2の分離弁23が閉じられる非人力ブレーキングのときにマスタブレーキシリンダ22のピストンがスライド可能であり、運転者に通常のペダル感覚を伝えるためにフットブレーキペダル21が可動である。
【0021】
マスタブレーキシリンダ22の両方のブレーキ回路のうちの一方は、バルブ開放ばね29を有する本発明の逆止め弁28を通して、ブレーキ液備蓄容器10に接続されている。他方のブレーキ回路は、本実施例では、ブレーキ液備蓄容器10に直接的に接続されている。
図2aから
図2cは、逆止め弁28の3通りの異なる切換位置を示している。逆止め弁28は、ブレーキ液備蓄容器10からマスタブレーキシリンダ22の方向に貫流方向で貫流可能である。これと反対向きの閉止方向では、規定された背圧に達するまで、バルブ開放ばね29が逆止め弁28を開いたままに保つ。背圧は、無圧のブレーキ液備蓄容器10のもとでの、マスタブレーキシリンダ22とブレーキ液備蓄容器10との間の圧力差であり、すなわちマスタブレーキシリンダ22の圧力である。背圧が上回ると、バルブ開放ばね29のばね力に抗して背圧が逆止め弁28を閉止し、それにより、マスタブレーキシリンダ22からブレーキ液備蓄容器10へブレーキ液が流れることができなくなる。
【0022】
無圧のブレーキ液備蓄容器10に対する、ないしはブレーキ液備蓄容器10の圧力に対する、マスタブレーキシリンダ22の過圧として把握することもできる、逆止め弁28を閉じるために必要である背圧は、バルブ開放弁29によって、および逆止め弁28のジオメトリーと構造形態によって規定される。背圧は、固定的または調整可能であってよい。
【0023】
逆止め弁28にはフィルタ32が前置されるとともに別のフィルタ32が後置されており、このことは、フィルタ32がブレーキ液備蓄容器10と逆止め弁28との間に配置され、フィルタ32が逆止め弁28とマスタブレーキシリンダ22との間に配置されることを意味する。フィルタ32を有さない、またはただ1つのフィルタを有する実施形態も可能であり、この場合、フィルタ32は流動方向で見て逆止め弁28の前に配置されるのがよい。別個のフィルタ32を利用することができ、または、1つもしくは複数のフィルタ32が逆止め弁28に統合される。図示しているのは、ブレーキ液備蓄容器10と逆止め弁28との間で逆止め弁28に統合されたフィルタ32と、逆止め弁28とマスタブレーキシリンダ22との間の、逆止め弁28とは別個のフィルタ32である。
【0024】
(初回の)充填のために、非人力・車両ブレーキ設備1がまず排気され、引き続いてブレーキ液備蓄容器10によってブレーキ液で充填される。排気のとき、
図2aに示すように、バルブ開放ばね29が逆止め弁28をブレーキ液備蓄容器10とマスタブレーキシリンダ22との間で開いたままに保つ。ブレーキ液が充填されるとき、
図2cに示すように、逆止め弁28は場合により引き続き開いている。
【0025】
非人力ブレーキ圧生成器3の機能性の検査のために、液圧のブレーキ圧が非人力ブレーキ圧生成器3により生成されると、開いた第2の分離弁23のもとで非人力弁11が開いたときに、生成されるブレーキ圧がマスタブレーキシリンダ22へと伝わる。マスタブレーキシリンダ22でブレーキ圧が逆止め弁28の規定された背圧を上回ると、これが閉じられ、それにより、マスタブレーキシリンダ22を通ってブレーキ液備蓄容器10へとブレーキ液が流れることができなくなる。非人力ブレーキ圧生成器3の機能性、場合により気泡によるブレーキ液の圧縮性、および車両ブレーキ設備1の各弁の機能性を検査することができる。
【0026】
非人力ブレーキ圧生成器3の機能性を検査するために、本発明による逆止め弁28を有さないブレーキ回路の非人力弁11が閉じたままに保たれ、またはこのブレーキ回路の第2の分離弁23が閉じられて、このブレーキ回路のブレーキ液がマスタブレーキシリンダ22を通ってブレーキ液備蓄容器10へと流れないようにされる。
【0027】
図3は
図1の液圧回路図の一部を、ブレーキ液備蓄容器10とマスタブレーキシリンダ22の領域で示している。
図1と同じく、
図3でもブレーキ液備蓄容器10とマスタブレーキシリンダ22との間に逆止め弁30が配置され、これを貫流方向でブレーキ液備蓄容器10からマスタブレーキシリンダ22へと貫流可能であり、これと反対向きの閉止方向では貫流が遮蔽される。逆止め弁30にテスト弁31が液圧的に並列につながれており、このテスト弁は本実施例では、開いたときにブレーキ回路でマスタブレーキシリンダ22をブレーキ液備蓄容器10と接続し、閉じたときにマスタブレーキシリンダ22をブレーキ液備蓄容器10から液圧的に分離する電磁弁であり、すなわち切換可能な弁である。
【0028】
テスト弁31は、閉じているときに、マスタブレーキシリンダ22の規定された過圧のもとで開くように製作されている。この過圧は、本実施例では無圧であるブレーキ液備蓄容器10よりも高いマスタブレーキシリンダ22の圧力である。過圧は不変または調整可能であってよい。テスト弁31は、マスタブレーキシリンダ22が操作されていないときに、車両ブレーキ設備1での規定された過圧よりも高い圧力を回避する。
【0029】
図1について上で説明した非人力ブレーキ圧生成器3の機能性の検査は、テスト弁31が閉じられることによって
図3でも同様に可能であり、このとき検査圧力は、それを超えるとマスタブレーキシリンダ22が操作されていない限りにおいてテスト弁31が開く、規定された過圧に制限される。たとえば以前に非人力ブレーキ圧生成器3によってブレーキ液備蓄容器10から吸い込まれたブレーキ液が、マスタブレーキシリンダ22およびテスト弁31を通してブレーキ液備蓄容器10へ戻るように流れることができる。
【0030】
逆止め弁30はスプリングレス型であり、テスト弁31に統合されており、それにより追加の設計スペースを要しない。
【0031】
逆止め弁30とテスト弁31には、別の逆止め弁33が液圧的に並列につながれており、この逆止め弁はブレーキ液備蓄容器10からマスタブレーキシリンダ22へのブレーキ液の流動抵抗を低減し、このことは、非人力ブレーキ圧生成器3が故障した場合にハイドロポンプ12でブレーキ液を吸い込むときの著しい利点となる。追加の逆止め弁33はテスト弁31に統合されていないので、いっそう広い流動断面と低い流動抵抗を有することができる。
【0032】
図3でも、テスト弁31に統合されたフィルタ32が逆止め弁30とテスト弁31に前置および後置されている。すなわち1つのフィルタ32が、一方におけるブレーキ液備蓄容器10と、他方における逆止め弁30およびテスト弁31との間に配置され、1つのフィルタ32が、一方における逆止め弁30およびテスト弁31と、他方におけるマスタブレーキシリンダ22との間に配置されている。さらに別の逆止め弁34が、ブレーキ液備蓄容器10と別の逆止め弁33との間に設けられている。別の逆止め弁33とマスタブレーキシリンダ22との間にはフィルタは設けられていない。別の逆止め弁33は、マスタブレーキシリンダ22からブレーキ液備蓄容器10の方向への貫流に対して遮蔽をし、すなわち、マスタブレーキシリンダ22から別の逆止め弁33へと、フィルタリングされなければならないはずのブレーキ液は流れないからである。ブレーキ液備蓄容器10からマスタブレーキシリンダ22への貫流に対する逆止め弁33の流動抵抗は、ただ1つのフィルタ33によって、2つのフィルタによるよりも低くなっている。
【0033】
その他の点では、
図1および
図3に示す車両ブレーキ設備1は一致しており、同様の方式で機能するので、
図3の回路図を完全にするには
図1を援用することができ、
図3の説明を完全にするために
図1の説明を援用することができる。
【0034】
説明して図示した本発明の実施形態では、非人力弁11、第1の分離弁12、取込弁16、排出弁17、吸込弁20、第2の分離弁23、シミュレータ弁25、およびテスト弁31は2/2ウェイ電磁弁であり、第1の分離弁12、取込弁16、第2の分離弁23、およびテスト弁31は無通電の基本位置にあるときに開き、非人力弁11、排出弁17、吸込弁20、およびシミュレータ弁25は無通電の基本位置にあるときに閉じる。各弁のこれ以外の実施形態および/または切換位置も排除されるものではない。たとえば、取込弁14と排出弁15をまとめて3/2電磁弁にすることも可能である(図示せず)。
【符号の説明】
【0035】
1 液圧式の非人力・車両ブレーキ設備
3 非人力ブレーキ圧生成器
10 ブレーキ液備蓄容器
16 ハイドロポンプ
22 マスタブレーキシリンダ
28 逆止め弁
29 バルブ開放ばね
30 逆止め弁
31 テスト弁