(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】検出装置および検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/45 20060101AFI20241213BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
G01N21/45 B
G01N21/17 A
(21)【出願番号】P 2022544966
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2020032169
(87)【国際公開番号】W WO2022044162
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】中井 賢也
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/068836(WO,A1)
【文献】特開平09-021748(JP,A)
【文献】特開2002-243639(JP,A)
【文献】特開2020-060437(JP,A)
【文献】特開2016-031241(JP,A)
【文献】特開2014-174124(JP,A)
【文献】特開2011-220879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 33/00
G01J 1/00 - G01J 1/04
G01J 3/00 - G01J 3/51
G01M 3/38
B07C 5/342
G08B 21/12 - G08B 21/16
H04N 5/222- H04N 5/257
H04N 7/18
H04N 23/00
H04N 23/40 - H04N 23/76
H04N 23/90 - H04N 23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射され予め定められた検出領域を通過した光のうち、前記検出領域における屈折率変化によって偏向された光である偏向光と、前記屈折率変化によって偏向されなかった光である非偏向光とを分離する分離光学系と、
前記非偏向光の少なくとも一部および前記偏向光の少なくとも一部のうちの少なくとも一方を撮像して、前記検出領域における屈折率変化を示す輝度画像を取得する撮像部と、
前記偏向光の少なくとも一部を分光して、前記偏向光の分光特性を示す第1の分光特性情報を取得する第1の分光部と、
前記非偏向光が集光点に集光するように、前記光源から出射された光を集光する集光光学系とを備え、
前記分離光学系は、前記検出領域を通過し、かつ前記集光光学系により集光された光のうち、前記偏向光と前記非偏向光とを分離し、
前記分離光学系は、光を透過する透過部と、前記透過部の周辺に位置し、光を反射する反射面を有する反射部とを有する部分反射ミラー素子を含み、
前記部分反射ミラー素子は、前記透過部が前記集光点付近に位置し、前記反射面が前記集光光学系の光軸に対して傾斜し、前記非偏向光が前記透過部を透過して第1の光路を進み、前記偏向光が前記反射面で反射されて前記第1の光路と異なる第2の光路を進むように配置される
検出装置。
【請求項2】
光源と、
前記光源から出射され予め定められた検出領域を通過した光のうち、前記検出領域における屈折率変化によって偏向された光である偏向光と、前記屈折率変化によって偏向されなかった光である非偏向光とを分離する分離光学系と、
前記非偏向光の少なくとも一部および前記偏向光の少なくとも一部のうちの少なくとも一方を撮像して、前記検出領域における屈折率変化を示す輝度画像を取得する撮像部と、
前記偏向光の少なくとも一部を分光して、前記偏向光の分光特性を示す第1の分光特性情報を取得する第1の分光部と、
前記非偏向光が集光点に集光するように、前記光源から出射された光を集光する集光光学系とを備え、
前記分離光学系は、前記検出領域を通過し、かつ前記集光光学系により集光された光のうち、前記偏向光と前記非偏向光とを分離し、
前記分離光学系は、光を反射する反射面を有する反射部と、前記反射部の周辺に位置し、光を透過する透過部とを有する部分反射ミラー素子を含み、
前記部分反射ミラー素子は、前記反射面が前記集光点付近に位置するとともに前記集光光学系の光軸に対して傾斜し、前記非偏向光が前記反射面で反射されて第1の光路を進み、前記偏向光が前記透過部を透過して前記第1の光路と異なる第2の光路を進むように配置される
検出装置。
【請求項3】
光源と、
前記光源から出射され予め定められた検出領域を通過した光のうち、前記検出領域における屈折率変化によって偏向された光である偏向光と、前記屈折率変化によって偏向されなかった光である非偏向光とを分離する分離光学系と、
前記非偏向光の少なくとも一部および前記偏向光の少なくとも一部のうちの少なくとも一方を撮像して、前記検出領域における屈折率変化を示す輝度画像を取得する撮像部と、
前記偏向光の少なくとも一部を分光して、前記偏向光の分光特性を示す第1の分光特性情報を取得する第1の分光部と、
前記非偏向光が集光点に集光するように、前記光源から出射された光を集光する集光光学系とを備え、
前記分離光学系は、前記検出領域を通過し、かつ前記集光光学系により集光された光のうち、前記偏向光と前記非偏向光とを分離し、
前記分離光学系は、光を透過する透過部と、前記透過部の周辺に位置し、光を反射する第1の反射面を有する第1の反射部と、前記透過部の周辺に位置し、光を反射する第2の反射面を有する第2の反射部とを有する部分反射ミラー素子を含み、
前記部分反射ミラー素子は、前記透過部が前記集光点付近に位置し、前記第1および第2の反射面が互いに異なる方向を向くように前記集光光学系の光軸に対して傾斜し、前記非偏向光が前記透過部を透過して第1の光路を進み、前記偏向光の一部が前記第1の反射面で反射されて前記第1の光路と異なる第2の光路を進み、前記偏向光の他の一部が前記第2の反射面で反射されて前記第1および第2の光路と異なる第3の光路を進むように配置される
検出装置。
【請求項4】
光源と、
前記光源から出射され予め定められた検出領域を通過した光のうち、前記検出領域における屈折率変化によって偏向された光である偏向光と、前記屈折率変化によって偏向されなかった光である非偏向光とを分離する分離光学系と、
前記非偏向光の少なくとも一部および前記偏向光の少なくとも一部のうちの少なくとも一方を撮像して、前記検出領域における屈折率変化を示す輝度画像を取得する撮像部と、
前記偏向光の少なくとも一部を分光して、前記偏向光の分光特性を示す第1の分光特性情報を取得する第1の分光部と、
前記非偏向光が集光点に集光するように、前記光源から出射された光を集光する集光光学系とを備え、
前記分離光学系は、前記検出領域を通過し、かつ前記集光光学系により集光された光のうち、前記偏向光と前記非偏向光とを分離し、
前記分離光学系は、光を反射する第1の反射面を有する第1の反射部と、前記第1の反射部の周辺に位置し、光を透過する透過部と、前記第1の反射部の周辺に位置し、光を反射する第2の反射面を有する第2の反射部とを有する部分反射ミラー素子を含み、
前記部分反射ミラー素子は、前記第1の反射面が前記集光点付近に位置し、前記第1および第2の反射面が前記集光光学系の光軸に対して傾斜し、前記非偏向光が前記第1の反射面で反射されて第1の光路を進み、前記偏向光の一部が前記透過部を透過して前記第1の光路と異なる第2の光路を進み、前記偏向光の他の一部が前記第2の反射面で反射されて前記第1および第2の光路と異なる第3の光路を進むように配置される
検出装
置。
【請求項5】
前記第1の分光特性情報に基づく前記屈折率変化を生じさせた物質の種類に関する情報を前記輝度画像に付加した出力画像を出力する出力部をさらに備える
請求項1から
4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記撮像部は、前記非偏向光の少なくとも一部を撮像して前記輝度画像を取得する
請求項1から
5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記分離光学系は、前記検出領域を通過した光のうち、前記非偏向光と、前記偏向光の第1の部分と、前記偏向光の第2の部分とを分離し、
前記撮像部は、前記偏向光の第1の部分を撮像して前記輝度画像を取得し、
前記第1の分光部は、前記偏向光の第2の部分を分光して前記第1の分光特性情報を取得する
請求項1から
5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記分離光学系は、前記検出領域を通過した光のうち、前記偏向光と、前記非偏向光の第1の部分と、前記非偏向光の第2の部分とを分離し、
前記撮像部は、前記非偏向光の第1の部分を撮像して前記輝度画像を取得し、
前記検出装置は、前記非偏向光の第2の部分を分光して、前記非偏向光の分光特性を示す第2の分光特性情報を取得する第2の分光部をさらに備える
請求項
6に記載の検出装置。
【請求項9】
前記非偏向光の少なくとも一部を分光して、前記非偏向光の分光特性を示す第2の分光特性情報を取得する第2の分光部をさらに備える
請求項
7に記載の検出装置。
【請求項10】
前記第1の分光部により取得された前記第1の分光特性情報から、前記屈折率変化を生じさせた物質の種類を推定する推定部をさらに備える
請求項1から
9のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項11】
前記第2の分光部により取得された前記第2の分光特性情報に基づいて、前記第1の分光部により取得された前記第1の分光特性情報から、前記屈折率変化を生じさせた物質の種類を推定する推定部をさらに備える
請求項
8または
9に記載の検出装置。
【請求項12】
前記第1の分光部は、前記偏向光の少なくとも一部を撮像し、前記第1の分光特性情報として、前記偏向光の複数の波長帯の輝度値を示す分光画像を取得する分光カメラである
請求項1から
11のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項13】
前記輝度画像に前記分光画像が重畳された合成画像を生成する画像生成部をさらに備える
請求項
12に記載の検出装置。
【請求項14】
光源から出射され予め定められた検出領域を通過した光のうち、前記検出領域における屈折率変化によって偏向された光である偏向光と、前記屈折率変化によって偏向されなかった光である非偏向光とを分離すること、
前記非偏向光の少なくとも一部および前記偏向光の少なくとも一部のうちの少なくとも一方を撮像して、前記検出領域における屈折率変化を示す輝度画像を取得すること、
前記偏向光の少なくとも一部を分光して、前記偏向光の分光特性を示す第1の分光特性情報を取得すること、および
集光光学系を用いて前記非偏向光が集光点に集光するように、前記光源から出射された光を集光することを含み、
前記分離することは、前記検出領域を通過し、かつ前記集光された光のうち、前記偏向光と前記非偏向光とを分離することを含み、
前記分離することは、光を透過する透過部と、前記透過部の周辺に位置し、光を反射する反射面を有する反射部とを有する部分反射ミラー素子を用いて分離することを含み、
前記部分反射ミラー素子は、前記透過部が前記集光点付近に位置し、前記反射面が前記集光光学系の光軸に対して傾斜し、前記非偏向光が前記透過部を透過して第1の光路を進み、前記偏向光が前記反射面で反射されて前記第1の光路と異なる第2の光路を進むように配置される
検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置および検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
媒質中の屈折率変化を可視化するシュリーレン法が知られている。例えば、特許文献1には、光源と、光源から出射され測定部を通過した光を集光してスクリーン上に像を結ぶレンズと、レンズとスクリーンとの間で光の一部を遮るナイフエッジとを有し、測定部の媒質気体中に密度変化が生じたとき、光の屈折作用によりスクリーン上に光の明暗が画像として観測される構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のシュリーレン法では、媒質中の屈折率変化を可視化することはできるが、屈折率変化を生じさせた物質の種類に関する情報は得られない。
【0005】
本開示は、検出領域における屈折率変化を示す輝度画像だけでなく、屈折率変化を生じさせた物質の種類に関する情報も取得することができる検出装置および検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの態様に係る検出装置は、光源と、前記光源から出射され予め定められた検出領域を通過した光のうち、前記検出領域における屈折率変化によって偏向された光である偏向光と、前記屈折率変化によって偏向されなかった光である非偏向光とを分離する分離光学系と、前記非偏向光の少なくとも一部および前記偏向光の少なくとも一部のうちの少なくとも一方を撮像して、前記検出領域における屈折率変化を示す輝度画像を取得する撮像部と、前記偏向光の少なくとも一部を分光して、前記偏向光の分光特性を示す第1の分光特性情報を取得する第1の分光部と、前記非偏向光が集光点に集光するように、前記光源から出射された光を集光する集光光学系とを備え、前記分離光学系は、前記検出領域を通過し、かつ前記集光光学系により集光された光のうち、前記偏向光と前記非偏向光とを分離し、前記分離光学系は、光を透過する透過部と、前記透過部の周辺に位置し、光を反射する反射面を有する反射部とを有する部分反射ミラー素子を含み、前記部分反射ミラー素子は、前記透過部が前記集光点付近に位置し、前記反射面が前記集光光学系の光軸に対して傾斜し、前記非偏向光が前記透過部を透過して第1の光路を進み、前記偏向光が前記反射面で反射されて前記第1の光路と異なる第2の光路を進むように配置される。
本開示の他の態様に係る検出装置は、光源と、前記光源から出射され予め定められた検出領域を通過した光のうち、前記検出領域における屈折率変化によって偏向された光である偏向光と、前記屈折率変化によって偏向されなかった光である非偏向光とを分離する分離光学系と、前記非偏向光の少なくとも一部および前記偏向光の少なくとも一部のうちの少なくとも一方を撮像して、前記検出領域における屈折率変化を示す輝度画像を取得する撮像部と、前記偏向光の少なくとも一部を分光して、前記偏向光の分光特性を示す第1の分光特性情報を取得する第1の分光部と、前記非偏向光が集光点に集光するように、前記光源から出射された光を集光する集光光学系とを備え、前記分離光学系は、前記検出領域を通過し、かつ前記集光光学系により集光された光のうち、前記偏向光と前記非偏向光とを分離し、前記分離光学系は、光を反射する反射面を有する反射部と、前記反射部の周辺に位置し、光を透過する透過部とを有する部分反射ミラー素子を含み、前記部分反射ミラー素子は、前記反射面が前記集光点付近に位置するとともに前記集光光学系の光軸に対して傾斜し、前記非偏向光が前記反射面で反射されて第1の光路を進み、前記偏向光が前記透過部を透過して前記第1の光路と異なる第2の光路を進むように配置される。
本開示のさらに他の態様に係る検出装置は、光源と、前記光源から出射され予め定められた検出領域を通過した光のうち、前記検出領域における屈折率変化によって偏向された光である偏向光と、前記屈折率変化によって偏向されなかった光である非偏向光とを分離する分離光学系と、前記非偏向光の少なくとも一部および前記偏向光の少なくとも一部のうちの少なくとも一方を撮像して、前記検出領域における屈折率変化を示す輝度画像を取得する撮像部と、前記偏向光の少なくとも一部を分光して、前記偏向光の分光特性を示す第1の分光特性情報を取得する第1の分光部と、前記非偏向光が集光点に集光するように、前記光源から出射された光を集光する集光光学系とを備え、前記分離光学系は、前記検出領域を通過し、かつ前記集光光学系により集光された光のうち、前記偏向光と前記非偏向光とを分離し、前記分離光学系は、光を透過する透過部と、前記透過部の周辺に位置し、光を反射する第1の反射面を有する第1の反射部と、前記透過部の周辺に位置し、光を反射する第2の反射面を有する第2の反射部とを有する部分反射ミラー素子を含み、前記部分反射ミラー素子は、前記透過部が前記集光点付近に位置し、前記第1および第2の反射面が互いに異なる方向を向くように前記集光光学系の光軸に対して傾斜し、前記非偏向光が前記透過部を透過して第1の光路を進み、前記偏向光の一部が前記第1の反射面で反射されて前記第1の光路と異なる第2の光路を進み、前記偏向光の他の一部が前記第2の反射面で反射されて前記第1および第2の光路と異なる第3の光路を進むように配置される。
本開示のさらに他の態様に係る検出装置は、光源と、前記光源から出射され予め定められた検出領域を通過した光のうち、前記検出領域における屈折率変化によって偏向された光である偏向光と、前記屈折率変化によって偏向されなかった光である非偏向光とを分離する分離光学系と、前記非偏向光の少なくとも一部および前記偏向光の少なくとも一部のうちの少なくとも一方を撮像して、前記検出領域における屈折率変化を示す輝度画像を取得する撮像部と、前記偏向光の少なくとも一部を分光して、前記偏向光の分光特性を示す第1の分光特性情報を取得する第1の分光部と、前記非偏向光が集光点に集光するように、前記光源から出射された光を集光する集光光学系とを備え、前記分離光学系は、前記検出領域を通過し、かつ前記集光光学系により集光された光のうち、前記偏向光と前記非偏向光とを分離し、前記分離光学系は、光を反射する第1の反射面を有する第1の反射部と、前記第1の反射部の周辺に位置し、光を透過する透過部と、前記第1の反射部の周辺に位置し、光を反射する第2の反射面を有する第2の反射部とを有する部分反射ミラー素子を含み、前記部分反射ミラー素子は、前記第1の反射面が前記集光点付近に位置し、前記第1および第2の反射面が前記集光光学系の光軸に対して傾斜し、前記非偏向光が前記第1の反射面で反射されて第1の光路を進み、前記偏向光の一部が前記透過部を透過して前記第1の光路と異なる第2の光路を進み、前記偏向光の他の一部が前記第2の反射面で反射されて前記第1および第2の光路と異なる第3の光路を進むように配置される。
【0007】
本開示の一つの態様に係る検出方法は、光源から出射され予め定められた検出領域を通過した光のうち、前記検出領域における屈折率変化によって偏向された光である偏向光と、前記屈折率変化によって偏向されなかった光である非偏向光とを分離すること、前記非偏向光の少なくとも一部および前記偏向光の少なくとも一部のうちの少なくとも一方を撮像して、前記検出領域における屈折率変化を示す輝度画像を取得すること、前記偏向光の少なくとも一部を分光して、前記偏向光の分光特性を示す第1の分光特性情報を取得すること、および集光光学系を用いて前記非偏向光が集光点に集光するように、前記光源から出射された光を集光することを含み、前記分離することは、前記検出領域を通過し、かつ前記集光された光のうち、前記偏向光と前記非偏向光とを分離することを含み、前記分離することは、光を透過する透過部と、前記透過部の周辺に位置し、光を反射する反射面を有する反射部とを有する部分反射ミラー素子を用いて分離することを含み、前記部分反射ミラー素子は、前記透過部が前記集光点付近に位置し、前記反射面が前記集光光学系の光軸に対して傾斜し、前記非偏向光が前記透過部を透過して第1の光路を進み、前記偏向光が前記反射面で反射されて前記第1の光路と異なる第2の光路を進むように配置される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、検出領域における屈折率変化を示す輝度画像だけでなく、屈折率変化を生じさせた物質の種類に関する情報も取得することができる検出装置および検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る検出装置を示す概略図である。
【
図2】実施の形態1における分離素子の一例を示す概略斜視図である。
【
図3】実施の形態1における推定部による推定の一例を説明するための図である。
【
図4】実施の形態1における出力部による処理の一例を説明するための図である。
【
図5】実施の形態1の変形例に係る検出装置を示す概略図である。
【
図6】実施の形態1の変形例における分離素子の一例を示す概略斜視図である。
【
図7】実施の形態2に係る検出装置を示す概略図である。
【
図8】実施の形態2における分離素子の一例を示す概略斜視図である。
【
図9】実施の形態3に係る検出装置を示す概略図である。
【
図10】(A)および(B)は、実施の形態3における推定部による推定の一例を説明するための図である。
【
図11】実施の形態3の変形例に係る検出装置を示す概略図である。
【
図12】実施の形態4に係る検出装置を示す概略図である。
【
図13】実施の形態4の変形例1に係る検出装置を示す概略図である。
【
図14】実施の形態4の変形例1における分離素子の一例を示す概略斜視図である。
【
図15】実施の形態4の変形例1における分離素子の別の一例を示す概略斜視図である。
【
図16】実施の形態4の変形例2に係る検出装置を示す概略図である。
【
図17】実施の形態4の変形例3に係る検出装置を示す概略図である。
【
図18】(A)および(B)は、実施の形態4の変形例3における第2の分離素子の例を示す概略斜視図である。
【
図19】実施の形態5に係る検出装置を示す概略図である。
【
図20】実施の形態5における分離素子の一例を示す概略斜視図である。
【
図21】実施の形態6に係る検出装置を示す概略図である。
【
図22】実施の形態6における分光部(分光カメラ)の構成の一例を示す概略図である。
【
図23】実施の形態6における分光部(分光カメラ)の4種類の波長フィルタの中心波長を示す概略図である。
【
図24】実施の形態1に係る検出装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図25】実施の形態1に係る検出装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図26】(A)~(C)は、実施の形態1に係る検出装置における分離光学系までの光学系の変形例を示す図である。
【
図27】分離光学系の様々な構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る検出装置100を示す概略図である。以下、
図1を参照して、実施の形態1に係る検出装置100について説明する。以下の説明により、検出方法も明らかとなる。
【0011】
検出装置100は、予め定められた検出領域Rに対して検出(または分析)を行う装置である。検出領域Rは、光を透過する媒質(または透明な媒質)Mの領域、または媒質Mで満たされた領域である。検出領域Rには、屈折率変化(または屈折率勾配)が生じ得る。屈折率変化は、屈折率の空間的な変化である。検出装置100は、検出領域Rにおける屈折率変化を示す輝度画像を取得するとともに、屈折率変化を生じさせた物質の種類に関する情報を取得する。以下では、屈折率変化を生じさせた物質を「検出対象A」と呼ぶ。
図1には、検出対象Aが模式的に示されている。検出対象Aは、例えば、媒質Mと異なる種類の物質である。この場合、検出対象Aは、検出領域Rに流入する場合もあるし、配置される場合もある。一例では、媒質Mは空気であり、検出対象Aは空気と異なるガスである。ただし、媒質Mおよび検出対象Aは、これらに限られず、固体、液体、および気体のいずれであってもよい。
【0012】
図1において、検出装置100は、光源1、分離光学系4、撮像部5、および分光部6を備える。検出装置100は、照射光学系2、集光光学系3、推定部7、出力部8、および表示部9を備えてもよい。
【0013】
光源1は、出射光L1を出射する。光源1は、例えば、検出装置100の用途に適した分光分布を有する。光源1としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、発光ダイオードなど、種々の光源を用いることができる。
【0014】
照射光学系(または平行化光学系)2は、光源1から出射された出射光L1を平行化し、平行化された光を照明光L2として検出領域Rに照射する。照射光学系2は、例えば、出射光L1を略平行光である照明光L2に変換するレンズである。
【0015】
集光光学系3は、光源1から出射された光(
図1の例では、光源1から出射され検出領域Rを通過した光)を集光し、集光された光を集光光L3として出射する。集光光学系3は、例えば、照明光L2のうち検出領域Rを通過した光を集光して集光光L3に変換するレンズである。検出領域Rは、照射光学系2と集光光学系3との間に設けられる。
【0016】
検出領域Rを通過した光(
図1の例では、集光光学系3から出射される集光光L3)は、検出領域Rにおける屈折率変化によって偏向された光と、屈折率変化によって偏向されなかった光とを含む。例えば、検出領域Rを通過する光のうち、検出対象Aを通過する光は屈折率変化によって偏向し、検出対象Aを通過しない光は偏向しない。以下では、検出領域Rにおける屈折率変化によって偏向された光を偏向光と呼び、屈折率変化によって偏向されなかった光を非偏向光と呼ぶ。偏向光は、屈折率変化によって進行方向が変化した光であり、非偏向光は、進行方向が変化しなかった光である。なお、検出領域Rに屈折率変化がない場合(または検出対象Aが存在しない場合)には、集光光学系3から出射される集光光L3は、偏向光を含まない。
【0017】
集光光学系3は、非偏向光が集光点に集光するように、光源1から出射された光(
図1の例では、光源1から出射され検出領域Rを通過した光)を集光する。集光光学系3は、検出領域Rに屈折率変化がない場合に検出領域Rを通過した光が集光点に集光するように構成される。以下では、上記非偏向光の集光点を集光光学系3の集光点と呼ぶ。
図1の例では、集光光学系3の集光点は、集光光学系3の焦点と一致または略一致する。
【0018】
分離光学系(または分岐光学系)4は、検出領域Rを通過した光のうち、偏向光L4と非偏向光L5とを分離する(または分岐させる)。
図1の例では、分離光学系4は、検出領域Rを通過し、かつ集光光学系3により集光された光である集光光L3のうち、偏向光L4と非偏向光L5とを分離する。また、分離光学系4は、集光光学系3の集光点(または焦点)付近に配置され、集光光L3のうち偏向光L4と非偏向光L5とを分離する分離素子10を含む。分離素子10は、非偏向光L5を透過し、偏向光L4を反射する。分離素子10は、例えば、後述の部分反射ミラー素子である。なお、分離光学系4により分離される偏向光L4は、集光光L3に含まれる偏向光の全部でも一部でもよく、分離光学系4により分離される非偏向光L5は、集光光L3に含まれる非偏向光の全部でも一部でもよい。
【0019】
撮像部5は、分離光学系4により分離された非偏向光L5を撮像して、検出領域Rにおける屈折率変化(または屈折率分布)を示す輝度画像Im1を取得して出力する。輝度画像Im1は、例えば、複数の画素の輝度値を示す画像データである。輝度画像Im1は、例えば、非偏向光L5の輝度分布を示す輝度分布情報である。輝度画像Im1は、例えば、検出領域Rにおける屈折率変化が明暗の差(またはコントラスト)として表現された画像である。例えば、撮像部5により撮像される光には検出対象Aによって偏向された偏向光が含まれないことから、輝度画像Im1は、検出対象Aが存在する領域に対応する画像領域の輝度値がそれ以外の画像領域の輝度値よりも小さい画像(または検出対象Aが存在する領域に対応する画像領域が周囲よりも暗い画像)である。輝度画像Im1は、例えば、従来のシュリーレン法によって得られる、屈折率変化を可視化する画像と同様のものである。撮像部5としては、CCDカメラなど、種々のカメラを用いることができる。撮像部5は、カメラに加えて、焦点距離を調整する撮像光学系を備えてもよい。
【0020】
分光部6は、分離光学系4により分離された偏向光L4を分光して、偏向光の分光特性(または波長特性)を示す分光特性情報Is1を取得して出力する。つまり、分光部6は、偏向光の分光特性を検出する。分光部6は、例えば、偏向光L4の複数の波長成分の強度を検出し、各波長成分の強度を示す情報を分光特性情報Is1として出力する。分光部6としては、グレーティング分光器、プリズム分光器など、種々の分光器を用いることができる。
【0021】
偏向光は、検出対象Aにより偏向された光であり、検出対象Aの固有の分光特性を反映した分光特性を有する。ここで、検出対象Aの分光特性としては、分光透過特性、分光吸収特性、および分光反射特性がある。したがって、分光特性情報Is1は、検出対象Aの種類に関する情報、検出対象Aの種類を示す情報、または検出対象Aの種類を推定するための情報と言える。
【0022】
推定部7は、分光部6により取得された分光特性情報Is1から、検出対象Aの種類を推定し、推定された種類を示す種類情報It1を出力する。推定部7は、分光特性情報Is1によって示される偏向光の分光特性に含まれる、検出対象Aの分光特性を利用して、検出対象Aの種類を推定する。
【0023】
第1の例では、推定部7は、1以上の種類の候補物質の各々について、当該候補物質が検出領域Rに存在する場合における偏向光の分光特性と、分光特性情報Is1により示される分光特性とを比較することにより、検出対象Aの種類を判定する。例えば、推定部7は、ある候補物質が検出領域Rに存在する場合における偏向光の分光特性と、分光特性情報Is1により示される分光特性との一致度を算出し、一致度が予め定められた閾値より高い場合、当該候補物質の種類を検出対象Aの種類として判定する。また例えば、推定部7は、複数の種類の候補物質の各々について、当該候補物質が検出領域Rに存在する場合における偏向光の分光特性と、分光特性情報Is1により示される分光特性との一致度を算出し、一致度が最も高い候補物質の種類を検出対象Aの種類として判定する。ここで、候補物質が検出領域Rに存在する場合における偏向光の分光特性は、予め実験等により求められて検出装置100等に記憶される。
【0024】
上記第1の例において、推定部7は、分光特性情報Is1により示される分光特性から特徴波長域を検出し、当該特徴波長域において分光特性の比較を行ってもよい。ここで、特徴波長域は、例えば、分光特性情報Is1により示される分光特性のうち、予め定められた基準の分光特性にはない特徴(例えばピーク)が現れている波長域である。基準の分光特性は、例えば、検出領域Rが媒質Mのみを含む場合における集光光L3の分光特性であり、予め実験等により求められて検出装置100等に記憶される。
【0025】
第2の例では、推定部7は、分光特性情報Is1により示される分光特性から特徴波長域を検出する。ここで、特徴波長域は、上記と同様である。そして、推定部7は、検出された特徴波長域を、1以上の種類の候補物質の特徴波長域と比較することにより、検出対象Aの種類を判定する。この場合、推定部7は、上記第1の例と同様に、一致度を算出することにより検出対象Aの種類を判定することができる。各候補物質の特徴波長域は、例えば、当該候補物質が検出領域Rに存在する場合における偏向光の分光特性のうち、予め定められた基準の分光特性にはない特徴(例えばピーク)が現れる波長域であり、予め実験等により求められて検出装置100等に記憶される。ここで、基準の分光特性は、上記と同様である。
【0026】
出力部8は、撮像部5により取得された輝度画像Im1に基づく検出領域Rの屈折率分布に関する情報と、分光部6により取得された分光特性情報Is1に基づく検出対象Aの種類に関する情報とを含む検出結果Ir1を出力する。検出領域Rの屈折率分布に関する情報としては、輝度画像Im1と、輝度画像Im1から得られる情報とがある。輝度画像Im1から得られる情報としては、検出対象Aの位置、大きさ、これらの時間変化などがある。検出対象Aの種類に関する情報としては、分光特性情報Is1と、分光特性情報Is1から得られる情報とがある。分光特性情報Is1から得られる情報としては、推定部7により推定された検出対象Aの種類を示す種類情報It1などがある。出力部8は、例えば、検出結果Ir1を表示部(またはモニタ)9に表示させる。この場合、出力部8は、検出領域Rの屈折率分布に関する情報と検出対象Aの種類に関する情報とを合成して表示してもよいし、個別に表示してもよい。一例では、出力部8は、輝度画像Im1に種類情報It1を付加した出力画像(または検出対象Aの可視化画像)を検出結果Ir1として表示部9に表示させる。ただし、出力部8は、必ずしも検出結果Ir1を表示する必要はなく、検出結果Ir1を記憶媒体に記憶させてもよい。
【0027】
図2は、分離素子10の一例を示す概略斜視図である。以下、
図1および
図2を参照して、分離素子10の一例について説明する。
【0028】
図2において、分離素子10は、入射した光の一部を反射する部分反射ミラー素子である。分離素子10は、集光光学系3から出射される集光光L3のうち、集光光学系3の光軸近傍に分布する非偏向光を透過し、光軸近傍の外側に分布する偏向光を反射する。分離素子10は、例えば、非偏向光を透過するための微小な穴であるピンホールを中央部に有し、偏向光を反射するための反射面を中央部の周辺部に有するピンホールミラーである。
【0029】
分離素子10は、光を透過する透過部(または透過領域)21と、透過部21の周辺に位置し、光を反射する反射面(または反射領域)22aを有する反射部22とを有する。分離素子10は、透過部21が集光光学系3の集光点(または焦点)付近に位置し、反射面22aが集光光学系3の光軸に対して傾斜し、非偏向光L5が透過部21を透過して第1の光路を進み、偏向光L4が反射面22aで反射されて第1の光路と異なる第2の光路を進むように配置される。透過部21を透過した非偏向光L5は撮像部5に入射し、反射面22aで反射された偏向光L4は分光部6に入射する。
【0030】
図2の例では、透過部21は、分離素子10の中央に位置する中央部であり、反射部22は、当該中央部の周辺に位置する周辺部である。透過部21のサイズは、屈折率変化(または検出対象A)が存在しないときの集光光L3の集光スポットのサイズと同程度か、それより僅かに小さい。
図2では、透過部21は、円形であり、上記集光スポットの直径と同程度か、それより僅かに小さい直径を有する。ただし、透過部21の形状は、他の形状であってもよい。
【0031】
反射面22aは、例えば、蒸着によって形成された、高い反射率を有する金属膜または誘電体膜である。また、反射面22aは、反射部22の集光光L3が入射する側に配置されることが望ましい。これは、例えば、反射部22が基材と反射面22aとを有し、集光光L3が基材を透過して反射面22aで反射される構成では、基材内部での光の散乱などにより良好な反射が妨げられるからである。これらのことは、後述する他の反射面についても同様である。
【0032】
図3は、推定部7による推定の一例を説明するための図である。以下、
図3を参照して、推定部7による推定の一例について説明する。
【0033】
図3には、分光部6により取得された分光特性情報Is1により示される偏向光の分光特性31が示されている。分光特性31は、偏向光の波長毎の強度を示す。
【0034】
推定部7は、分光特性31から、特徴波長域32を検出する。
図3において、特徴波長域32は、波長λ1から波長λ2(>λ1)までの波長域である。例えば、検出対象Aによる光の吸収によって、波長λ1と波長λ2の間の特定の波長域付近で偏向光の強度が低下している。そして、推定部7は、特徴波長域32において、分光特性31と、特定のガスの固有の分光特性とを比較することにより、検出対象Aが当該特定のガスであるか否かを判定する。特定のガスの固有の分光特性は、例えば、当該ガスが検出領域Rに存在する場合における偏向光の分光特性であり、予め実験等により求められて検出装置100等に記憶される。
【0035】
図4は、出力部8による処理の一例を説明するための図である。以下、
図4を参照して、出力部8による処理の一例について説明する。
【0036】
出力部8は、輝度画像Im1に種類情報It1を付加して出力画像(または可視化画像)41を生成し、出力画像41を検出結果Ir1として表示部9に表示させる。
図4において、輝度画像Im1は、検出対象Aが存在する領域に対応する、周囲よりも暗い画像領域42を有する。出力画像41は、検出対象Aが存在する領域に対応する画像領域43を有する。出力画像41において、画像領域43は、種類情報It1によって示される物質の種類と関連付けられている。画像領域43は、種類情報It1によって示される物質の種類に対応する色、配色、パターンなどによって描画されてもよいし、当該物質の種類に対応する記号、文字などが付されてもよい。
【0037】
以上説明した実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
【0038】
検出装置100は、光源1と、光源1から出射され検出領域Rを通過した光のうち、検出領域Rにおける屈折率変化によって偏向された光である偏向光L4と、屈折率変化によって偏向されなかった光である非偏向光L5とを分離する分離光学系4と、非偏向光L5を撮像して、検出領域Rにおける屈折率変化を示す輝度画像Im1を取得する撮像部5と、偏向光L4を分光して、偏向光の分光特性を示す分光特性情報Is1を取得する分光部6とを備える。本構成によれば、検出領域Rにおける屈折率変化を示す輝度画像とともに、屈折率変化を生じさせた物質の種類に関する情報を取得することができる。また、分光特性情報Is1から、屈折率変化を生じさせた物質の種類を推定することができる。
【0039】
検出装置100は、非偏向光が集光点に集光するように、光源1から出射された光を集光する集光光学系3をさらに備え、分離光学系4は、検出領域Rを通過し、かつ集光光学系3により集光された光のうち、偏向光L4と非偏向光L5とを分離する。本構成によれば、偏向光L4と非偏向光L5との分離が容易となり、装置の小型化が可能となる。
【0040】
分離光学系4は、光を透過する透過部21と、透過部21の周辺に位置し、光を反射する反射面22aを有する反射部22とを有する部分反射ミラー素子を含み、部分反射ミラー素子は、透過部21が集光光学系3の集光点付近に位置し、反射面22aが集光光学系3の光軸に対して傾斜し、非偏向光L5が透過部21を透過して第1の光路を進み、偏向光L4が反射面22aで反射されて第1の光路と異なる第2の光路を進むように配置される。本構成によれば、非偏向光L5の光路(または進行方向)と、偏向光L4の光路(または進行方向)とを分離することができる。これにより、屈折率変化が微小である場合でも輝度画像Im1および分光特性情報Is1を高感度に検出することが可能となる。具体的には、屈折率変化が微小である場合、屈折率変化による光の進行方向の変化も微小となり、集光後における非偏向光に対する偏向光の位置ずれ(具体的には、集光面に現れる非偏向光の集光位置と偏向光の集光位置との位置ずれ)も微小となる。一方、撮像部5および分光部6として用いられる撮像装置および分光装置のそれぞれのサイズは、通常数センチメートル以上であり、上記集光位置の位置ずれと比べて非常に大きい。このため、非偏向光の光路と、偏向光の光路とを分離しなければ、撮像装置および分光装置を配置することが困難であり、比較的サイズが大きい高感度の撮像装置および分光装置を使用することは非常に困難である。本実施の形態における上記構成によれば、透過部21のサイズを適切なサイズ(例えば、上記集光スポットのサイズと同程度か、それより僅かに小さいサイズ)に設定することにより、透過部(例えばピンホール)21とその周辺の反射面22aとによって、非偏向光の集光位置と偏向光の集光位置との微小な位置ずれから、非偏向光の光路と偏向光の光路とを大きく分離することができる。これにより、撮像装置および分光装置の配置が容易となり、比較的サイズが大きい高感度の撮像装置および分光装置を使用することが可能となる。
【0041】
<変形例>
図5は、実施の形態1の変形例に係る検出装置100Aを示す概略図である。以下、
図5を参照して、実施の形態1の変形例に係る検出装置100Aについて説明する。
【0042】
検出装置100Aは、
図1の分離素子10の代わりに、分離素子51を備える。分離素子51は、非偏向光L5を反射し、偏向光L4を透過する。
【0043】
図6は、分離素子51の一例を示す概略斜視図である。以下、
図5および
図6を参照して、分離素子51の一例について説明する。
【0044】
分離素子51は、部分反射ミラー素子である。分離素子51は、集光光学系3から出射される集光光L3のうち、集光光学系3の光軸近傍に分布する非偏向光を反射し、光軸近傍の外側に分布する偏向光を透過する。
【0045】
分離素子51は、光を反射する反射面(または反射領域)61aを有する反射部61と、反射部61の周辺に位置し、光を透過する透過部(または透過領域)62とを有する。分離素子51は、反射面61aが集光光学系3の集光点(または焦点)付近に位置するとともに集光光学系3の光軸に対して傾斜し、非偏向光L5が反射面61aで反射されて第1の光路を進み、偏向光L4が透過部62を透過して第1の光路と異なる第2の光路を進むように配置される。反射面61aで反射された非偏向光L5は撮像部5に入射し、透過部62を透過した偏向光L4は分光部6に入射する。
【0046】
図6の例では、反射部61は、分離素子51の中央に位置する中央部であり、透過部62は、当該中央部の周辺に位置する周辺部である。反射面61aのサイズは、屈折率変化(または検出対象A)が存在しないときの集光光L3の集光スポットのサイズと同程度か、それより僅かに小さい。
図6では、反射面61aは、円形であり、上記集光スポットの直径と同程度か、それより僅かに小さい直径を有する。ただし、反射面61aの形状は、他の形状であってもよい。
【0047】
透過部62は、光を透過する部分であり、例えば透明な材料で形成される。分離素子51は、例えば、透明な基材の中央部に反射面を形成することによって形成される。
【0048】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係る検出装置200を示す概略図である。以下、
図7を参照して、実施の形態2に係る検出装置200について説明する。以下の説明では、実施の形態1に係る検出装置100の要素と同一または対応する要素については、同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0049】
実施の形態1に係る検出装置100が非偏向光の輝度画像を取得するのに対し、実施の形態2に係る検出装置200は偏向光の輝度画像を取得する。
【0050】
図7において、分離光学系4は、集光光学系3により集光された集光光L3のうち、非偏向光L5と、偏向光L4の第1の部分L41と、偏向光L4の第2の部分L42とを分離する。
図7の例では、分離光学系4は、集光光学系3の集光点(または焦点)付近に配置された分離素子71を含む。分離素子71は、非偏向光L5を透過し、偏向光L4の第1の部分L41と第2の部分L42とを互いに異なる方向に反射する。
【0051】
検出装置200は、撮像部72を備える。撮像部72は、分離光学系4からの偏向光の第1の部分L41を撮像して、検出領域Rにおける屈折率変化を示す輝度画像Im2を取得して出力する。輝度画像Im2は、例えば、複数の画素の輝度値を示す画像データである。輝度画像Im2は、例えば、偏向光の第1の部分L41の輝度分布を示す輝度分布情報である。輝度画像Im2は、例えば、検出領域Rにおける屈折率変化が明暗の差(またはコントラスト)として表現された画像である。例えば、撮像部72により撮像される光には、検出対象Aによって偏向された偏向光が含まれ、偏向されなかった光が含まれないことから、輝度画像Im2は、検出対象Aが存在する領域に対応する画像領域の輝度値がそれ以外の画像領域の輝度値よりも大きい画像(または検出対象Aが存在する領域に対応する画像領域が周囲よりも明るい画像)である。撮像部72としては、種々のカメラを用いることができる。撮像部72は、カメラに加えて、焦点距離を調整する撮像光学系を備えてもよい。
【0052】
分光部6は、分離光学系4からの偏向光の第2の部分L42を分光して、偏向光の分光特性を示す分光特性情報Is1を取得して出力する。
【0053】
推定部7は、分光部6により取得された分光特性情報Is1から、検出対象Aの種類を推定し、推定された種類を示す種類情報It1を出力する。
【0054】
検出装置200は、
図1の出力部8の代わりに、出力部73を備える。出力部73は、撮像部72により取得された輝度画像Im2に基づく検出領域Rの屈折率分布に関する情報と、分光部6により取得された分光特性情報Is1に基づく検出対象Aの種類に関する情報とを含む検出結果Ir2を出力する。例えば、出力部73は、輝度画像Im2に種類情報It1を付加した出力画像を検出結果Ir2として表示部9に表示させる。出力部73は、輝度画像Im1の代わりに輝度画像Im2を用いる点を除き、実施の形態1の出力部8と同様であってもよい。
【0055】
検出装置200は、分離光学系4から出射される非偏向光L5が不要な迷光とならないように、非偏向光L5を吸収または遮光するストッパ74を備えてもよい。
【0056】
図8は、分離素子71の一例を示す概略斜視図である。以下、
図7および
図8を参照して、分離素子71の一例について説明する。
【0057】
分離素子71は、部分反射ミラー素子である。分離素子71は、集光光学系3から出射される集光光L3のうち、集光光学系3の光軸近傍に分布する非偏向光を透過し、光軸近傍の外側に分布する偏向光を反射する。
【0058】
分離素子71は、光を透過する透過部81と、透過部81の周辺に位置し、光を反射する第1の反射面82aを有する第1の反射部82と、透過部81の周辺に位置し、光を反射する第2の反射面83aを有する第2の反射部83とを有する。
【0059】
分離素子71は、透過部81が集光光学系3の集光点(または焦点)付近に位置し、第1および第2の反射面82aおよび83aが互いに異なる方向を向くように集光光学系3の光軸に対して傾斜し、非偏向光L5が透過部81を透過して第1の光路を進み、偏向光L4の一部である第1の部分L41が第1の反射面82aで反射されて第1の光路と異なる第2の光路を進み、偏向光L4の他の一部である第2の部分L42が第2の反射面83aで反射されて第1および第2の光路と異なる第3の光路を進むように配置される。第1の反射面82aで反射された偏向光の第1の部分L41は撮像部72に入射し、第2の反射面83aで反射された偏向光の第2の部分L42は分光部6に入射する。
【0060】
図8の例では、透過部81は、分離素子71の中央に位置する中央部であり、第1および第2の反射部82および83は、当該中央部の周辺に位置する周辺部である。第1の反射部82と第2の反射部83との間に、透過部81が設けられる。
【0061】
透過部81のサイズは、屈折率変化(または検出対象A)が存在しないときの集光光L3の集光スポットのサイズと同程度か、それより僅かに小さい。
図8では、透過部81は、スリットであり、上記集光スポットの直径と同程度か、それより僅かに小さいスリット幅を有する。ただし、透過部81の形状は、他の形状であってもよい。
【0062】
第1および第2の反射面82aおよび83aは、偏向光の第1および第2の部分L41およびL42を互いに異なる方向に反射する。例えば、第1および第2の反射面82aおよび83aは、いずれも平面状であり、それらの法線の方向は互いに異なる。
【0063】
以上説明した実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
【0064】
検出装置200は、光源1と、光源1から出射され検出領域Rを通過した光のうち、検出領域Rにおける屈折率変化によって偏向された光である偏向光L4と、屈折率変化によって偏向されなかった光である非偏向光L5とを分離する分離光学系4と、偏向光L4の第1の部分L41を撮像して、検出領域Rにおける屈折率変化を示す輝度画像Im2を取得する撮像部72と、偏向光L4の第2の部分L42を分光して、偏向光の分光特性を示す分光特性情報Is1を取得する分光部6とを備える。本構成によれば、検出領域Rにおける屈折率変化を示す輝度画像とともに、屈折率変化を生じさせた物質の種類に関する情報を取得することができる。また、分光特性情報Is1から、屈折率変化を生じさせた物質の種類を推定することができる。
【0065】
検出装置200は、非偏向光が集光点に集光するように、光源1から出射された光を集光する集光光学系3をさらに備え、分離光学系4は、検出領域Rを通過し、かつ集光光学系3により集光された光のうち、偏向光L4と非偏向光L5とを分離する。本構成によれば、偏向光L4と非偏向光L5との分離が容易となり、装置の小型化が可能となる。
【0066】
分離光学系4は、光を透過する透過部81と、透過部81の周辺に位置し、光を反射する第1の反射面82aを有する第1の反射部82と、透過部81の周辺に位置し、光を反射する第2の反射面83aを有する第2の反射部83とを有する部分反射ミラー素子を含み、部分反射ミラー素子は、透過部81が集光光学系3の集光点付近に位置し、第1および第2の反射面82aおよび83aが互いに異なる方向を向くように集光光学系3の光軸に対して傾斜し、非偏向光L5が透過部81を透過して第1の光路を進み、偏向光L4の一部である第1の部分L41が第1の反射面82aで反射されて第1の光路と異なる第2の光路を進み、偏向光L4の他の一部である第2の部分L42が第2の反射面83aで反射されて第1および第2の光路と異なる第3の光路を進むように配置される。本構成によれば、非偏向光L5の光路と、偏向光L4の第1の部分L41の光路と、偏向光L4の第2の部分L42の光路とを分離することができる。これにより、屈折率変化が微小である場合でも輝度画像Im2および分光特性情報Is1を高感度に検出することが可能となる。具体的には、実施の形態1と同様に、透過部81のサイズを適切なサイズに設定することにより、透過部(例えばスリット)81とその周辺の反射面82aおよび83aとによって、非偏向光の光路と偏向光の光路とを大きく分離することができる。さらに、反射面82aと反射面83aとによって、偏向光の第1の部分L41の光路と第2の部分L42の光路とを大きく分離することができる。これにより、撮像装置および分光装置の配置が容易となり、比較的サイズが大きい高感度の撮像装置および分光装置を使用することが可能となる。
【0067】
実施の形態3.
図9は、実施の形態3に係る検出装置300を示す概略図である。以下、
図9を参照して、実施の形態3に係る検出装置300について説明する。以下の説明では、実施の形態1に係る検出装置100の要素と同一または対応する要素については、同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0068】
実施の形態3に係る検出装置300は、非偏向光の分光特性を検出し、それを基準として検出対象Aの種類を推定する点で、実施の形態1に係る検出装置100と異なる。
【0069】
図9において、分離光学系4は、集光光学系3により集光された集光光L3のうち、偏向光L4と、非偏向光L5の第1の部分L51と、非偏向光L5の第2の部分L52とを分離する。
図9の例では、分離光学系4は、第1の分離素子91と、第2の分離素子92とを含む。
【0070】
第1の分離素子91は、集光光L3のうち、偏向光L4と非偏向光L5とを分離する。第1の分離素子91は、例えば、
図1の分離素子10と同じものである。
【0071】
第2の分離素子92は、第1の分離素子91により分離された非偏向光L5を少なくとも第1の部分L51と第2の部分L52とに分離する。第2の分離素子92は、例えば、非偏向光L5の一部(ここでは、部分L51)を透過し、他の一部(ここでは、部分L52)を反射するビームスプリッタである。第2の分離素子92は、第1の分離素子91と撮像部5との間に配置される。
【0072】
非偏向光の第1の部分L51は撮像部5に入射し、非偏向光の第2の部分L52は分光部93に入射し、偏向光L4は分光部6に入射する。
【0073】
撮像部5は、分離光学系4からの非偏向光の第1の部分L51を撮像して、輝度画像Im1を取得して出力する。
【0074】
分光部6は、分離光学系4からの偏向光L4を分光して、偏向光の分光特性を示す分光特性情報Is1を取得して出力する。
【0075】
分光部93は、分離光学系4からの非偏向光の第2の部分L52を分光して、非偏向光の分光特性を示す分光特性情報Is2を取得して出力する。つまり、分光部93は、非偏向光の分光特性を検出する。分光部93は、例えば、非偏向光の複数の波長成分の強度を検出し、各波長成分の強度を示す情報を分光特性情報Is2として出力する。分光部93としては、種々の分光器を用いることができる。分光部93は、例えば、分光部6と同じ検出特性を有する。
【0076】
検出装置300は、
図1の推定部7および出力部8の代わりに、推定部94および出力部95を備える。
【0077】
推定部94は、分光部93により取得された分光特性情報Is2に基づいて、分光部6により取得された分光特性情報Is1から、検出対象Aの種類を推定し、推定された種類を示す種類情報It2を出力する。推定部94は、例えば、分光特性情報Is2を基準または参照情報として、分光特性情報Is1から検出対象Aの種類を推定する。推定部94は、例えば、分光特性情報Is1と分光特性情報Is2とを比較することにより、検出対象Aの種類を推定する。推定部94は、例えば、分光特性情報Is2を基準として、分光特性情報Is1に対して減算または除算等を行うことにより、検出対象Aの種類を推定する。
【0078】
分光特性情報Is1は、偏向光の分光特性を示すものであり、媒質M(すなわち検出対象Aの周囲の物質)の分光特性の影響と、検出対象Aの分光特性の影響とを含む。一方、分光特性情報Is2は、非偏向光の分光特性を示すものであり、媒質Mの分光特性の影響を含み、検出対象Aの分光特性の影響を含まない。そこで、推定部94は、例えば、分光特性情報Is2を用いて、分光特性情報Is1に含まれる媒質Mの分光特性の影響を除去または低減し、これにより得られた分光特性情報から検出対象Aの種類を推定する。また例えば、推定部94は、分光特性情報Is1により示される分光特性と、分光特性情報Is2により示される分光特性との比較(例えば、差または比)に基づいて、検出対象Aの種類を推定する。
【0079】
出力部95は、撮像部5により取得された輝度画像Im1に基づく検出領域Rの屈折率分布に関する情報と、分光部6および93により取得された分光特性情報Is1およびIs2に基づく検出対象Aの種類に関する情報とを含む検出結果Ir3を出力する。検出対象Aの種類に関する情報としては、分光特性情報Is1と、分光特性情報Is1およびIs2から得られる情報とがある。分光特性情報Is1およびIs2から得られる情報としては、推定部94により推定された検出対象Aの種類を示す種類情報It2などがある。例えば、出力部95は、輝度画像Im1に種類情報It2を付加した出力画像(または検出対象Aの可視化画像)を検出結果Ir3として表示部9に表示させる。出力部95は、種類情報It1の代わりに種類情報It2を用いる点を除き、実施の形態1の出力部8と同様であってもよい。
【0080】
以下、推定部94による推定の例を示す。
(第1の例)
検出領域Rにおいて非偏向光が媒質Mを通過する長さと偏向光が媒質Mを通過する長さとの差を無視すると、偏向光の分光強度I1(λ)および非偏向光の分光強度I2(λ)は、それぞれ下記式(1),(2)のように表すことができる。
I1(λ)=I(λ)×Tm(λ)×Ta(λ) …(1)
I2(λ)=I(λ)×Tm(λ) …(2)
ここで、I(λ)は光源1の分光強度であり、Tm(λ)は媒質Mの分光透過率であり、Ta(λ)は検出対象Aの分光透過率である。
【0081】
偏向光の分光強度I1(λ)を非偏向光の分光強度I2(λ)で除算すると、下記式(3)のように、検出対象Aの分光透過率Ta(λ)が得られる。
I1(λ)/I2(λ)={I(λ)×Tm(λ)×Ta(λ)}/{I(λ)×Tm(λ)}=Ta(λ) …(3)
【0082】
そこで、第1の例では、推定部94は、分光特性情報Is1により示される偏向光の分光特性を分光特性情報Is2により示される非偏向光の分光特性で除算することにより、検出対象Aの分光透過特性を算出する。そして、推定部94は、算出された検出対象Aの分光透過特性と、1以上の種類の候補物質の分光透過特性とを比較することにより、検出対象Aの種類を判定する。例えば、推定部94は、算出された検出対象Aの分光透過特性と、ある候補物質の分光透過特性との一致度を算出し、一致度が予め定められた閾値より高い場合、当該候補物質の種類を検出対象Aの種類として判定する。また例えば、推定部94は、複数の種類の候補物質の各々について、当該候補物質の分光透過特性と、算出された検出対象Aの分光透過特性との一致度を算出し、一致度が最も高い候補物質の種類を検出対象Aの種類として判定する。ここで、各候補物質の分光透過特性は、予め実験等により求められて検出装置300等に記憶される。
【0083】
本例によれば、上記式(3)から分かるように、除算によって媒質Mおよび光源1の分光特性の影響を除去または低減することができ、検出対象Aの種類を高精度に推定することができる。また、環境温度および湿度の変動等による媒質Mおよび光源1の分光特性の変動の影響を除去または低減することができ、媒質Mおよび光源1の分光特性の変動によらず、検出対象Aの種類を高精度に推定することができる。
具体的には、光源1の分光強度I(λ)、媒質Mの分光透過率Tm(λ)、検出対象Aの分光透過率Ta(λ)、偏向光の分光強度I1(λ)、非偏向光の分光強度I2(λ)は、温度Tおよび湿度Hの関数として、I(λ,T,H)、Tm(λ,T,H)、Ta(λ,T,H)、I1(λ,T,H)、I2(λ,T,H)と表すことができる。
偏向光の分光強度I1(λ,T,H)を非偏向光の分光強度I2(λ,T,H)で除算すると、下記式(3-2)のように、検出対象Aの分光透過率Ta(λ,T,H)が得られる。
I1(λ,T,H)/I2(λ,T,H)={I(λ,T,H)×Tm(λ,T,H)×Ta(λ,T,H)}/{I(λ,T,H)×Tm(λ,T,H)}=Ta(λ,T,H) …(3-2)
上記式(3-2)から、非偏向光の分光特性で除算することにより、温度Tおよび湿度Hの変動による媒質Mおよび光源1の分光特性の変動の影響が除去されることが分かる。
また、同様の理由により、環境温度および湿度の変動等による分光部6の分光検出特性の変動を除去または低減することができ、分光部6の分光検出特性の変動によらず、検出対象Aの種類を高精度に推定することができる。
【0084】
(第2の例)
検出領域Rにおいて非偏向光が媒質Mを通過する長さと偏向光が媒質Mを通過する長さとの差を無視すると、偏向光の分光強度I1(λ)および非偏向光の分光強度I2(λ)は、それぞれ下記式(4),(5)のように表すことができる。
I1(λ)=I(λ)-Am(λ)-Aa(λ) …(4)
I2(λ)=I(λ)-Am(λ) …(5)
ここで、I(λ)は光源1の分光強度であり、Am(λ)は媒質Mの分光吸収量であり、Aa(λ)は検出対象Aの分光吸収量である。
【0085】
偏向光の分光強度I1(λ)と非偏向光の分光強度I2(λ)との差をとると、下記式(6)のように、検出対象Aの分光吸収量Aa(λ)が得られる。
I2(λ)-I1(λ)={I(λ)-Am(λ)}-{I(λ)-Am(λ)-Aa(λ)}=Aa(λ) …(6)
【0086】
そこで、第2の例では、推定部94は、分光特性情報Is1により示される偏向光の分光特性と分光特性情報Is2により示される非偏向光の分光特性との差をとることにより、検出対象Aの分光吸収特性を算出する。そして、推定部94は、算出された検出対象Aの分光吸収特性と、1以上の種類の候補物質の分光吸収特性とを比較することにより、検出対象Aの種類を判定する。例えば、推定部94は、算出された検出対象Aの分光吸収特性と、ある候補物質の分光吸収特性との一致度を算出し、一致度が予め定められた閾値より高い場合、当該候補物質の種類を検出対象Aの種類として判定する。また例えば、推定部94は、複数の種類の候補物質の各々について、当該候補物質の分光吸収特性と、算出された検出対象Aの分光吸収特性との一致度を算出し、一致度が最も高い候補物質の種類を検出対象Aの種類として判定する。ここで、各候補物質の分光吸収特性は、予め実験等により求められて検出装置300等に記憶される。
【0087】
本例によれば、上記式(6)から分かるように、減算によって媒質Mおよび光源1の分光特性の影響を除去または低減することができ、検出対象Aの種類を高精度に推定することができる。また、環境温度および湿度の変動等による媒質Mおよび光源1の分光特性の変動の影響を除去または低減することができ、媒質Mおよび光源1の分光特性の変動によらず、検出対象Aの種類を高精度に推定することができる。
【0088】
上記第1および第2の例において、推定部94は、比較(例えば、除算または減算)によって得られた検出対象Aの分光特性から特徴波長域を検出し、当該特徴波長域において分光特性の比較を行ってもよい。ここで、特徴波長域は、例えば、分光特性情報Is2により示される非偏向光の分光特性に対する分光特性情報Is1により示される偏向光の分光特性の相違が現れている波長域、または検出対象Aの分光特性の特徴(例えば、変化、ピーク等)が現れている波長域である。
【0089】
(第3の例)
第3の例では、推定部94は、まず、第1または第2の例と同様に、除算または減算を行って検出対象Aの分光特性を得る。そして、推定部94は、得られた検出対象Aの分光特性から特徴波長域を検出する。ここで、特徴波長域は、上記と同様である。そして、推定部94は、検出された特徴波長域を、1以上の種類の候補物質の特徴波長域と比較することにより、検出対象Aの種類を判定する。この場合、推定部94は、上記第1および第2の例と同様に、一致度を算出することによって検出対象Aの種類を判定することができる。ここで、各候補物質の特徴波長域は、例えば、当該候補物質が検出領域Rに存在する場合に、非偏向光の分光特性に対する偏向光の分光特性の相違が現れる波長域、または、当該候補物質の分光特性の特徴(例えば、変化、ピーク等)が現れる波長域であり、予め実験等により求められて検出装置300等に記憶される。
【0090】
本例によれば、除算または減算によって媒質Mおよび光源1の分光特性の影響を除去または低減することができ、検出対象Aの特徴波長域を高精度に検出することができ、検出対象Aの種類を高精度に推定することができる。
【0091】
図10(A)および
図10(B)は、推定部94による推定の一例を説明するための図である。以下、
図10(A)および
図10(B)を参照して、推定部94による推定の一例について説明する。
【0092】
図10(A)には、分光部6により取得された分光特性情報Is1により示される偏向光の分光特性101が示されている。分光特性101は、偏向光の波長毎の強度を示す。
図10(B)には、分光部93により取得された分光特性情報Is2により示される非偏向光の分光特性102が示されている。分光特性102は、非偏向光の波長毎の強度を示す。
【0093】
推定部94は、
図10(A)の分光特性101と
図10(B)の分光特性102とを比較することにより、分光特性102に対する分光特性101の変化を、検出対象Aの分光特性として検出する。例えば、推定部94は、分光特性101と分光特性102との差または比をとることにより、検出対象Aの分光特性を得る。そして、推定部94は、得られた検出対象Aの分光特性から特徴波長域103を検出する。ここでは、特徴波長域103は、波長λ1から波長λ2(>λ1)までの波長域である。そして、推定部94は、検出された特徴波長域103において、検出対象Aの分光特性と、特定のガスの固有の分光特性とを比較することにより、検出対象Aが特定のガスであるか否かを判定する。ここで、特定のガスの分光特性は、予め実験等により求められて検出装置300等に記憶される。
【0094】
以上説明した実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
【0095】
実施の形態3に係る検出装置300によれば、実施の形態1と同様に、検出領域Rにおける屈折率変化を示す輝度画像とともに、屈折率変化を生じさせた物質の種類に関する情報を取得することができる。また、分光特性情報Is1から、屈折率変化を生じさせた物質の種類を推定することができる。
【0096】
検出装置300は、偏向光の分光特性を示す分光特性情報Is1を取得する分光部6と、非偏向光の分光特性を示す分光特性情報Is2を取得する分光部93とを備える。本構成によれば、分光特性情報Is2を基準として、分光特性情報Is1から、屈折率変化を生じさせた物質の種類を高精度に推定することができる。具体的には、分光特性情報Is1により示される偏向光の分光特性と分光特性情報Is2により示される非偏向光の分光特性とを比較することにより、検出対象Aの分光特性を検出することができ、検出された分光特性から検出対象Aの種類を精度良く推定することができる。例えば、検出対象Aの特徴波長域の検出の精度、および特徴波長域における検出対象Aの分光特性に基づく検出対象Aの種類の推定の精度を向上させることができる。また、環境温度および湿度の変動等による媒質M、光源1、分光部6等の分光特性の変動の影響を除去または低減することができ、それらの分光特性の変動によらず、検出対象Aの種類を高精度に推定することができる。
【0097】
<変形例>
図11は、実施の形態3の変形例に係る検出装置300Aを示す概略図である。以下、
図11を参照して、実施の形態3の変形例に係る検出装置300Aについて説明する。
【0098】
検出装置300Aでは、分離光学系4は、
図9の第1の分離素子91および第2の分離素子92の代わりに、第1の分離素子111および第2の分離素子112を含む。
【0099】
第1の分離素子111は、集光光学系3により集光された集光光L3のうち、偏向光L4と非偏向光L5とを分離する。第1の分離素子111は、非偏向光L5を反射し、偏向光L4を透過する。第1の分離素子111は、例えば、
図6に示されるような部分反射ミラー素子である。この場合、非偏向光L5は反射部61で反射され、偏向光L4は透過部62を透過する。
【0100】
第2の分離素子112は、第1の分離素子111により分離された非偏向光L5を、少なくとも第1の部分L51と第2の部分L52とに分離する。第2の分離素子112は、例えば、非偏向光L5の一部(ここでは、部分L51)を透過し、他の一部(ここでは、部分L52)を反射するビームスプリッタである。
【0101】
非偏向光の第1の部分L51は撮像部5に入射し、非偏向光の第2の部分L52は分光部93に入射し、偏向光L4は分光部6に入射する。
【0102】
実施の形態4.
図12は、実施の形態4に係る検出装置400を示す概略図である。以下、
図12を参照して、実施の形態4に係る検出装置400について説明する。以下の説明では、実施の形態2に係る検出装置200の要素と同一または対応する要素については、同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0103】
実施の形態2に係る検出装置200が分離光学系4により分離された非偏向光L5を検出に使用しないのに対し、実施の形態4に係る検出装置400は非偏向光L5の分光特性を検出する。
【0104】
図12において、検出装置400は、
図7のストッパ74の代わりに、分光部121を備える。また、検出装置400は、
図7の推定部7および出力部73の代わりに、推定部122および出力部123を備える。
【0105】
分光部121は、分離光学系4からの非偏向光L5を分光して、非偏向光の分光特性を示す分光特性情報Is2を取得して出力する。分光部121は、実施の形態3の分光部93と同様のものである。
【0106】
推定部122は、分光部121により取得された分光特性情報Is2に基づいて、分光部6により取得された分光特性情報Is1から、検出対象Aの種類を推定し、推定された種類を示す種類情報It2を出力する。推定部122は、実施の形態3の推定部94と同様のものである。
【0107】
出力部123は、撮像部72により取得された輝度画像Im2に基づく検出領域Rの屈折率分布に関する情報と、分光部6および121により取得された分光特性情報Is1およびIs2に基づく検出対象Aの種類に関する情報とを含む検出結果Ir4を出力する。例えば、出力部123は、輝度画像Im2に種類情報It2を付加した出力画像(または検出対象Aの可視化画像)を検出結果Ir4として表示部9に表示させる。出力部123は、種類情報It1の代わりに種類情報It2を用いる点を除き、実施の形態2の出力部73と同様であってもよく、輝度画像Im1の代わりに輝度画像Im2を用いる点を除き、実施の形態3の出力部95と同様であってもよい。
【0108】
以上説明した実施の形態4によれば、実施の形態2と同様の効果に加えて、実施の形態3と同様の効果が得られる。
【0109】
<変形例1>
図13は、実施の形態4の変形例1に係る検出装置400Aを示す概略図である。以下、
図13を参照して、実施の形態4の変形例1に係る検出装置400Aについて説明する。
【0110】
検出装置400Aでは、分離光学系4は、
図12の分離素子71の代わりに、分離素子131を含む。分離素子131は、偏向光L4の第1の部分L41を透過し、非偏向光L5と偏向光L4の第2の部分L42とを互いに異なる方向に反射する。
【0111】
図14は、分離素子131の一例を示す概略斜視図である。以下、
図13および
図14を参照して、分離素子131の一例について説明する。
【0112】
図14において、分離素子131は、部分反射ミラー素子である。分離素子131は、集光光L3のうち、集光光学系3の光軸近傍に分布する非偏向光を反射し、光軸近傍の外側に分布する偏向光の一部を透過し、他の一部を反射する。
【0113】
分離素子131は、光を反射する第1の反射面141aを有する第1の反射部141と、第1の反射部141の周辺に位置し、光を透過する透過部142と、第1の反射部141の周辺に位置し、光を反射する第2の反射面143aを有する第2の反射部143とを有する。
【0114】
分離素子131は、第1の反射面141aが集光光学系3の集光点(または焦点)付近に位置し、第1および第2の反射面141aおよび143aが集光光学系3の光軸に対して傾斜し、非偏向光L5が第1の反射面141aで反射されて第1の光路を進み、偏向光L4の一部である第1の部分L41が透過部142を透過して第1の光路と異なる第2の光路を進み、偏向光L4の他の一部である第2の部分L42が第2の反射面143aで反射されて第1および第2の光路と異なる第3の光路を進むように配置される。第1の反射面141aで反射された非偏向光L5は分光部121に入射し、透過部142を透過した偏向光の第1の部分L41は撮像部72に入射し、第2の反射面143aで反射された偏向光の第2の部分L42は分光部6に入射する。
【0115】
図14の例では、第1の反射部141は、分離素子131の中央に位置する中央部であり、透過部142は、中央部の周辺に位置する第1の周辺部であり、第2の反射部143は、中央部の周辺に位置する第2の周辺部である。透過部142および第2の反射部143は、第1の反射部141に隣接し、かつ第1の反射部141を挟むように配置される。
【0116】
第1および第2の反射面141aおよび143aは、非偏向光L5および偏向光の第2の部分L42を互いに異なる方向に反射する。例えば、第1および第2の反射面141aおよび143aは、いずれも平面状であり、互いに異なる方向を向く。第1および第2の反射面141aおよび143aの法線の方向は、互いに異なる。
【0117】
第1の反射面141aのサイズは、屈折率変化(または検出対象A)が存在しないときの集光光L3の集光スポットのサイズと同程度か、それより僅かに小さい。
図14では、第1の反射面141aは、帯状の平面であり、上記集光スポットの直径と同程度か、それより僅かに小さい幅を有する。ただし、第1の反射面141aの形状は、他の形状であってもよい。
【0118】
透過部142の表面142aは、例えば、第1の反射面141aと連続して同一平面を形成する。また、第1の反射部141と透過部142とは、一体成型された基材により構成することができ、第1の反射面141aは、当該基材の一部にアルミニウムまたは金などの金属を蒸着することによって形成することができる。また、第1の反射部141、透過部142、および第2の反射部143が、一体成型された基材により構成されてもよい。
【0119】
分離素子131の透過部142は、光を透過する部分であるので、
図15に示されるように、第1の反射部141に隣接する空間であってもよい。
【0120】
なお、上記の例では、透過部142を透過した偏向光の一部が撮像部72に入射し、第2の反射面143aで反射された偏向光の一部が分光部6に入射するが、第2の反射面143aで反射された偏向光の一部が撮像部72に入射し、透過部142を透過した偏向光の一部が分光部6に入射してもよい。
【0121】
<変形例2>
図16は、実施の形態4の変形例2に係る検出装置400Bを示す概略図である。以下、
図16を参照して、実施の形態4の変形例2に係る検出装置400Bについて説明する。
【0122】
検出装置400Bでは、分離光学系4は、
図12の分離素子71の代わりに、第1の分離素子161および第2の分離素子162を含む。
【0123】
第1の分離素子161は、集光光学系3により集光された集光光L3のうち、偏向光L4と非偏向光L5とを分離する。第1の分離素子161は、偏向光L4を透過し、非偏向光L5を反射する。第1の分離素子161は、例えば、
図6に示される部分反射ミラー素子である。この場合、非偏向光L5は反射部61で反射され、偏向光L4は透過部62を透過する。
【0124】
第2の分離素子162は、第1の分離素子161により分離された偏向光L4を少なくとも第1の部分L41と第2の部分L42とに分離する。第2の分離素子162は、例えば、偏向光L4の一部(ここでは、部分L41)を透過し、他の一部(ここでは、部分L42)を反射するビームスプリッタである。
【0125】
偏向光の第1の部分L41は撮像部72に入射し、偏向光の第2の部分L42は分光部6に入射し、非偏向光L5は分光部121に入射する。
【0126】
<変形例3>
図17は、実施の形態4の変形例3に係る検出装置400Cを示す概略図である。以下、
図17を参照して、実施の形態4の変形例3に係る検出装置400Cについて説明する。
【0127】
検出装置400Cは、
図16の第2の分離素子162の代わりに第2の分離素子171を備える点を除き、変形例2に係る検出装置400Bと同様である。
【0128】
第2の分離素子171は、第1の分離素子161からの偏向光L4を少なくとも第1の部分L41と第2の部分L42とに分離する。
【0129】
図18(A)は、第2の分離素子171の一例を示す概略斜視図である。
図18(A)において、第2の分離素子171は、第1の分離素子161を透過した偏向光L4の一部(ここでは、部分L42)を反射する反射面181aを有する反射部181と、偏向光L4の他の一部(ここでは、部分L41)を透過する透過部182とを有する。
【0130】
偏向光の第1の部分L41は撮像部72に入射し、偏向光の第2の部分L42は分光部6に入射し、非偏向光L5は分光部121に入射する。
【0131】
第2の分離素子171の透過部182は、光を透過する部分であるので、
図18(B)に示されるように、反射部181に隣接する空間であってもよい。
【0132】
実施の形態5.
図19は、実施の形態5に係る検出装置500を示す概略図である。以下、
図19を参照して、実施の形態5に係る検出装置500について説明する。以下の説明では、実施の形態1に係る検出装置100の要素と同一または対応する要素については、同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0133】
実施の形態5に係る検出装置500は、分離光学系4が凹面反射面を含む点で、実施の形態1に係る検出装置100と異なる。
【0134】
図19において、分離光学系4は、凹面反射面(または凹面ミラー面)191を含み、凹面反射面191は、偏向光L4の少なくとも一部が凹面反射面191で反射されて分光部6に集光されるように構成される。
【0135】
分離光学系4は、
図1の分離素子10の代わりに、分離素子192を含む。分離素子192は、凹面反射面191を有する点を除き、
図1の分離素子10と同様である。
【0136】
図20は、分離素子192の一例を示す概略斜視図である。
図20において、分離素子192は、部分反射ミラー素子である。分離素子192は、光を透過する透過部201と、透過部201の周辺に位置し、光を反射する反射面202aを有する反射部202とを有する。
図20の分離素子192は、反射面202aの形状が反射面22aと異なる点を除き、
図2の分離素子10と同様である。反射面202aは、曲面形状を有し、凹面反射面191として機能する。反射面202aの曲面形状は、例えば、球面形状、楕円形状、非球面形状、自由曲面形状などである。
【0137】
以上説明した実施の形態5によれば、実施の形態1の効果の他に、以下の効果が得られる。
【0138】
分離光学系4で反射される偏向光は、集光光学系3により集光された光であるので、焦点を結んだ後に拡散する。本実施の形態の構成によれば、拡散する偏向光を凹面反射面191により分光部6に効率良く集めることができる。これにより、偏向光のロスを回避または低減し、分光部6により偏向光を高い信号対雑音比(S/N比)で検出することができる。
【0139】
なお、上記凹面反射面191は、検出装置100の分離光学系4だけでなく、他の検出装置の分離光学系4にも適用可能である。例えば、他の検出装置の分離素子(または部分反射ミラー素子)において、分光部6に光を反射する平面状の反射面は、凹面反射面に変更可能である。凹面反射面を用いることにより、高いS/N比で光を検出することができる。
【0140】
実施の形態6.
図21は、実施の形態6に係る検出装置600を示す概略図である。以下、
図21を参照して、実施の形態6に係る検出装置600について説明する。以下の説明では、実施の形態1に係る検出装置100の要素と同一または対応する要素については、同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0141】
実施の形態6に係る検出装置600は、分光カメラを用いる点で、実施の形態1に係る検出装置100と異なる。
【0142】
図21において、検出装置600は、
図1の分光部6の代わりに、分光部211を備える。また、検出装置600は、
図1の推定部7および出力部8の代わりに、出力部212を備える。
【0143】
分光部211は、分離光学系4により分離された偏向光L4を撮像し、分光特性情報として、偏向光L4の複数の波長帯の輝度値を示す分光画像Im3を取得する分光カメラである。分光画像Im3は、偏向光の分光特性を、偏向光の複数の波長帯の輝度値により示す。具体的には、分光画像Im3は、複数の画素を有し、画素毎に、偏向光の複数の波長帯の輝度値を示す。したがって、分光画像Im3は、画素毎に、偏向光の分光特性を示す情報である。
【0144】
分光画像Im3は、輝度画像Im1と同様に、検出領域Rを視野とする2次元の画像である。分光画像Im3から、検出対象Aの位置、大きさなどを示す情報を抽出することができるとともに、検出対象Aの位置に対応する画素について、複数の波長帯の輝度値(または分光特性)を取得することができる。
【0145】
図22は、分光部(分光カメラ)211の構成の一例を示す概略図である。
図22において、分光部211は、撮像面221において、2次元に配列された複数の画素P11~Pmn(mおよびnは2以上の整数)を有する。複数の画素P11~Pmnの各々は、2次元に配列された4つの領域R1、R2、R3、およびR4を有する。各画素において、領域R1、R2、R3、およびR4には、それぞれ波長フィルタF1、F2、F3、およびF4が設けられる。波長フィルタF1、F2、F3、およびF4は、それぞれ中心波長λ1、λ2、λ3、およびλ4(λ1<λ2<λ3<λ4)の波長帯の光のみを透過する。分光部211は、各画素の各領域において、当該領域に設けられた波長フィルタを透過した、当該領域に対応する波長帯の光の輝度値を検出する。これにより、分光部211は、画素毎に、偏向光の複数(ここでは4つ)の波長帯の輝度値を取得する。
【0146】
図23には、偏向光の分光特性の一例を示す曲線231とともに、波長フィルタF1、F2、F3、およびF4の中心波長λ1、λ2、λ3、およびλ4が示されている。中心波長λ1、λ2、λ3、およびλ4は、例えば、想定される物質(例えば媒質Mに流入する可能性があるガス)の固有の分光特性または特徴波長に応じて任意に設定されることができる。
【0147】
出力部212は、輝度画像Im1に分光画像Im3が重畳された合成画像Im4を生成する画像生成部として機能する。出力部212は、例えば、輝度画像Im1における検出対象Aの位置、大きさ、輪郭等に関する情報と、分光画像Im3における検出対象Aの位置、大きさ、輪郭等に関する情報とを照合して、輝度画像Im1に分光画像Im3が重畳された合成画像Im4を生成する。出力部212は、例えば、合成画像Im4を検出結果として表示部9に表示させる。
【0148】
出力部212は、分光画像Im3から、検出対象Aの種類を推定してもよい。例えば、出力部212は、分光画像Im3の1以上の領域の各々について、当該領域における偏向光の複数の波長帯の輝度値(すなわち分光特性)から、例えば実施の形態1と同様の推定方法により、検出対象Aの種類を推定してもよい。ここで、各領域は、1つの画素で構成される領域でもよいし、複数の画素で構成される領域でもよい。出力部212は、分光画像Im3から検出対象Aの範囲を検出し、当該範囲内において上記推定を行ってもよい。
【0149】
出力部212は、上記推定の結果を示す推定結果画像を生成してもよい。推定結果画像は、例えば、分光画像Im3と同様に複数の画素を有し、画素毎に、当該画素での推定結果を示す。例えば、推定結果画像は、画素毎に、当該画素での推定結果に対応する画素値(例えば、階調、色などを示す値)を有する。この場合、出力部212は、輝度画像Im1に推定結果画像が重畳された合成画像を生成してもよく、当該合成画像を表示部9に表示させてもよい。
【0150】
出力部212は、分光特性情報Is1の代わりに分光画像Im3を用い、種類情報It1の代わりに分光画像Im3に基づく推定結果を用いて、実施の形態1の出力部8と同様の検出結果を出力してもよい。
【0151】
以上説明した実施の形態6によれば、実施の形態1の効果の他に、以下の効果が得られる。
【0152】
本実施の形態では、分光部211は、偏向光の少なくとも一部を撮像し、偏向光の分光特性情報として、偏向光の複数の波長帯の輝度値を示す分光画像を取得する分光カメラである。本構成によれば、分光画像の画素毎に、検出対象Aの種類に関する情報を取得することができ、分光画像の任意の領域において検出対象Aの種類を推定することができる。
【0153】
なお、上記実施の形態6の特徴は、検出装置100だけでなく、他の検出装置にも適用可能である。上記特徴が実施の形態2または4に適用される場合、出力部212は、輝度画像Im1の代わりに輝度画像Im2を用いればよい。上記特徴が実施の形態3または4に適用される場合、出力部212は、分光特性情報Is2に基づいて、分光画像Im3から検出対象Aの種類を推定してもよい。
【0154】
以下、検出装置のハードウェア構成について説明する。
図24は、実施の形態1に係る検出装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。以下、
図24を参照して、実施の形態1に係る検出装置100のハードウェア構成の一例について説明する。
【0155】
図24において、検出装置100は、撮像部5としてのカメラ241、分光部6としての分光器242、および処理回路243を有する。検出装置100の推定部7および出力部8の機能は、処理回路243により実現される。処理回路243は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
【0156】
処理回路243が専用のハードウェアである場合、処理回路243は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらの組み合わせである。推定部7および出力部8の機能は、それぞれ別々の処理回路で実現されてもよいし、単一の処理回路で実現されてもよい。
【0157】
処理回路243がプロセッサである場合、
図25に示されるように、検出装置100は、処理回路243としてのプロセッサ251と、メモリ252とを有する。プロセッサ251は、メモリ252に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、推定部7および出力部8の機能を実現する。メモリ252は、プロセッサ251により実行されるときに、推定部7および出力部8の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納する。メモリ252に格納されるプログラムは、推定部7および出力部8の手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。プロセッサ251は、例えば、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)などである。メモリ252は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)などである。メモリ252に格納されるプログラムは、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせである。
【0158】
以上、実施の形態1に係る検出装置100のハードウェア構成について説明したが、他の検出装置のハードウェア構成についても同様である。
【0159】
なお、上記実施の形態1~6およびそれらの変形例(以下、単に「上記実施の形態」と呼ぶ)の検出装置は、適宜変更されてもよい。例えば、上記実施の形態の検出装置に対して、構成要素の変更、追加、または削除を行うことができる。また、上記実施の形態の特徴または構成要素は、上記と異なる態様で適宜組み合わされてもよい。
【0160】
上記実施の形態において、検出装置は、物質の種類を推定する場合、物質の成分を推定してもよい。例えば、検出装置は、物質の1以上の成分の全部または一部の種類を推定してもよい。
【0161】
上記実施の形態において、検出装置は、非偏向光を撮像して輝度画像Im1を取得する撮像部と、偏向光を撮像して輝度画像Im2を取得する撮像部との両方を備えてもよい。この場合、出力部は、輝度画像Im1およびIm2に基づく検出結果を出力することができる。
【0162】
上記実施の形態において、検出装置における分離光学系4までの光学系の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、照射光学系2および集光光学系3の一方または両方が省略されてもよい。また、検出領域Rに照射される光は、非平行光であってもよい。また、集光光学系3は、検出領域Rの前段に配置されてもよく、非偏向光が集光点に集光するように、光源1から出射された光を集光して検出領域Rに照射するように構成されてもよい。以下、
図26(A)~(C)を参照して、検出装置100における分離光学系4までの光学系の変形例を示す。なお、検出装置100を例にとるが、上記の他の検出装置についても同様である。
【0163】
図26(A)では、照射光学系2は、非偏向光L5が集光点で集光するように、光源1から出射された光を集光して検出領域Rに照射するように構成されており、集光光学系3は省略されている。別の言い方をすると、集光光学系3が、検出領域Rの前段に配置され、非偏向光L5が集光点で集光するように、光源1から出射された光を集光して検出領域Rに照射するように構成されており、照射光学系2は省略されている。例えば、
図26(A)の集光光学系3は、実施の形態1の照射光学系2のレンズと同じレンズであるが、
図26(A)における集光光学系3のレンズから光源1までの距離は、
図1における照射光学系2のレンズから光源1までの距離よりも長い。分離光学系4は、検出領域Rを通過し、かつ集光光学系3により集光された光のうち、偏向光L4と非偏向光L5とを分離する。分離光学系4は、例えば、集光光学系3の集光点近傍に配置された分離素子10を備える。
【0164】
図26(B)では、照射光学系2が省略され、光源1から出射された光が検出領域Rに照射されている。集光光学系3は、非偏向光L5が集光点で集光するように、光源1から出射され検出領域Rを通過した光を集光する。分離光学系4は、検出領域Rを通過し、かつ集光光学系3により集光された光のうち、偏向光L4と非偏向光L5とを分離する。分離光学系4は、例えば、集光光学系3の集光点近傍に配置された分離素子10を備える。
【0165】
図26(C)では、照射光学系2および集光光学系3が省略されている。光源1は、例えば検出領域Rから十分に離れた位置に配置され、検出領域Rに平行光を照射する。分離光学系4は、検出領域Rを通過した光のうち、偏向光L4と非偏向光L5とを分離する。分離光学系4は、例えば、非偏向光L5の光軸上に配置された分離素子10を備える。
【0166】
上記実施の形態において、分離光学系4の構成は、適宜変更されてもよい。以下、
図27を参照して、分離光学系4の様々な構成を示す。
図27において、分離光学系4は、検出領域Rを通過した光(例えば、集光光L3)のうち、偏向光L4と非偏向光L5とを分離する分離素子261を備える。分離素子261は、例えば、上記の部分反射ミラー素子のいずれかである。分離光学系4は、分離素子261により分離された偏向光L4および非偏向光L5のうちの一方を少なくとも2つの部分に分離する分離素子262を備えてもよい。
図27の分離光学系4は、上記実施の形態の検出装置で使用可能である。
【0167】
上記実施の形態において、検出領域Rにおける屈折率変化は、媒質Mへの異物の流入などによって生じるほか、媒質M中の密度変化(または密度勾配)によっても生じ得る。そのため、検出対象Aは、媒質Mと同じ種類の物質である場合もある。例えば、検出対象Aは、媒質Mにおける周囲と密度が異なる部分である場合もある。媒質M中の密度変化は、例えば、温度勾配、圧力勾配(例えば、気圧勾配)などによって生じる。密度変化によって屈折率変化が生じる場合、検出装置により取得される輝度画像は、検出領域Rにおける密度変化(または密度分布)を示す画像であり、検出装置は、検出領域Rにおける密度変化の発生有無、発生個所などを検出することができる。
【0168】
上記実施の形態において、検出対象Aによる光の偏向作用は、媒質Mと検出対象Aとの屈折率の差によって生じる屈折、媒質Mと検出対象Aとの密度の差によって生じる屈折、および検出対象Aにより生じる光の散乱のいずれであってもよい。
【0169】
上記実施の形態の検出装置は、媒質中に生じる屈折率変化(または密度変化)の有無、位置などを検出することができる。検出装置は、例えば、媒質中の目に見えない気体または液体の流れ、目に見えない媒質中の目に見えない物質の流れ(例えば、呼気の気流、ガス冷媒の漏れなど)、媒質中を伝播する超音波または衝撃波の進行状況、炎による気流の上昇、光学部品の欠陥などを光学的に検出することができる。また、検出装置は、媒質中に生じる屈折率変化(または密度変化)とともに、その変化に関係する物質を検出することができる。例えば、検出装置は、媒質中に屈折率変化(または密度変化)が生じた場合に、その屈折率変化の発生個所とともに、その屈折率変化を生じさせた物質の種類に関する情報を検出することができる。例えば、検出装置は、空気中のガスの流れを検出または可視化するとともに、そのガスの種類に関する情報を検出することができる。また、空気中のガスが検出目的とする特定のガスであるか否かを判定することができる。
【0170】
上記実施の形態の検出装置は、様々な産業分野への適用が可能である。例えば、検出装置は、ガス漏れ検知装置、人または動物の呼気検知装置、車などの搭乗者の呼気を検出して搭乗者の健康状態を検知するドライバモニタシステム(DMS)、気流検知装置、エアコンなどの空調装置の温風または冷風の温度気流検知装置またはそれを用いた空調装置の空調制御装置、空調装置などの冷媒漏れ検知装置、液体中の異物の検知装置、半導体などの固体材料の中の不均質または欠陥の検査装置、光学部品などの脈理検査装置などに適用可能である。上記実施の形態の検出装置を適用することによって、より好適な機器の制御および保守が可能になる。
【符号の説明】
【0171】
1 光源、 2 照射光学系、 3 集光光学系、 4 分離光学系、 5 撮像部、 6 分光部、 7 推定部、 8 出力部、 9 表示部、 10 分離素子、 100 検出装置。