(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】リサイクルされたパッド入り織物製品から詰め物を形成するためのプロセス及びプラント
(51)【国際特許分類】
D01G 9/06 20060101AFI20241213BHJP
D06H 7/20 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
D01G9/06
D06H7/20
(21)【出願番号】P 2022546576
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 IB2021060118
(87)【国際公開番号】W WO2022097016
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】102020000026203
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517252152
【氏名又は名称】フィージー フィブレ シンテティケ エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】FISI FIBRE SINTETICHE S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シニスカルチ,ルチオ
(72)【発明者】
【氏名】シニスカルチ,パトリツィオ
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512618(JP,A)
【文献】特開2005-245552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01G 1/00-99/00
D06H 1/00- 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクルされる又は過剰な生産によってもたらされる、パッド入り織物製品を元にして詰め物を形成するためのプロセスであって、前記パッド入り織物製品を形成する布地及び詰め物繊維の解繊及び引き裂きを、後から詰め物
繊維群へと変換される単一の詰め物層の形成と一緒に且つ同時に行ない、
(a)前記織物製品は、
圧縮及び粉砕するためのローラ(5)が設けられた圧縮ステーション(4)で処理され、前記
圧縮ステーション
(4)で粉砕及び圧縮され、
(b)ステップ(a)から来る破砕された製品が
解繊ステーション(6)の内部で処理され、前記
解繊ステーション(6)は、針(11,12)をそれぞれ備えた回転プレート(9,10)の2つの対(7,8)によって、これら全ての材料の解繊及び引き裂き処理を一緒に且つ同時に行ない、
(c)その後、前記ステップ(b)から得られた繊維材料は、針(18,19)がそれぞれ設けられたシリンダ(16,17)の2つの対(14,15)によって実質的に詰め物層を形成する平行化繊維の薄層に前記繊維材料を変換するために後続の
変換ステーション(13)で処理され、
(d)前記詰め物
繊維群を得るためのステップ(c)で得られた織物材料層は、後続の空気循環ステーション(21)
内の吸引装置(20)で引き裂かれて開かれる、
ことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記パッド入り織物製品は
、断熱ジャケット、寝袋、キルトのベッドカバー、パッド入り材料の生産
屑、余剰生産物
及びパッド入り衣服
のうち何れか1つ又は複数から成ることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロセスを用いてパッド入り織物製品を元にして詰め物を形成するためのプラントにおいて、
-回転プレート(9,10)の2つの対(7,8)を有する
解繊ステーション(6)であって、プレートの各対(7,8)が上側プレート(9)及び下側プレート(10)から形成され、上側プレート(9)及び下側プレート(10)は、
針の厚み及び
針の分布密度が異なる前記針(11,12)を伴い、前記上側プレート(9)の針(11)と前記下側プレート(10)の針(12)との間で互い違いの配置を成すとともに、互いに反対の回転を伴う、
前記解繊ステーション(6)と、
-前記繊維材料を、実質的に詰め物層を形成する平行化繊維の薄層に変換するための後続の
変換ステーション(13)であって、前記
変換ステーション(13)には、前記
解繊ステーション(6)で調製された繊維材料を平行化繊維の層に変換するシリンダ(16,17)の2つの対(14,15)が設けられ、シリンダの各対(14,15)が、互いに反対の回転方向を伴う上側シリンダ(16)及び下側シリンダ(17)から構成され、各シリンダ(16,17)が、
針の根元部から先端部までの長さ及び
針の分布密度が異なる針(18,19)もそれぞれ支持し、前記針(18,19)が、前記上側シリンダ(16)の針(18)と前記下側シリンダ(17)の針(19)との間で互い違いの配置を成して適切な支持体上に固定される、後続の
変換ステーション(13)と、
-詰め物
繊維群を得るための織物材料層が引き裂かれて開かれる後続の空気循環ステーション(21)と、
を備えることを特徴とするプラント。
【請求項4】
前記回転プレートの第1の対(7)の針(11,12)の
分布密度は、前の対の下流側に配置される前記プレートの第2の対(8)の
分布密度よりも低いことを特徴とする、請求項3に記載のプラント。
【請求項5】
シリンダの第1の対(14)の針(18,19)は、シリンダの前記対(14)の下流側に配置されるシリンダの第2の対(15)に存在する針(18,19)よりも
針の根元部から先端部までの長さ及び針の厚みが大き
いことを特徴とする、請求項3に記載のプラント。
【請求項6】
前記ステーション(21)は、前記
変換ステーション(13)の下流側に配置されるとともに、
前記変換ステーション(13)で得られる層を詰め物
繊維群に変換するための
吸引装置(20)を備えることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項7】
前記製品(1)を除染するための紫外線
又はオゾン電
流を伴うチャンバ(2)を更に備えることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項8】
回転プレートを伴う前記
解繊ステーション(6)の上流側で前記製品(1)を圧縮及び粉砕するためのローラ(5)が設けられた
圧縮ステーション(4)も備えることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項9】
除去されるべき金属部品の存在を検出するための金属検出器も備えることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載のプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルされたパッド入り織物製品から詰め物を形成するための方法及び関連プラントに関する。
【0002】
本発明の分野は、廃棄用衣類からもたらされる繊維の回収の分野である。
【背景技術】
【0003】
現在、このタイプの回収は、衣類を構成する様々な部分、すなわち、内側及び外側の布地、パッド及びその他を手作業で選択することによって行なわれる。その後、各単一の構成要素は、小さな部分に別々に切断され、これらの部分は、その後、従来のガーネット機械で処理される。
【0004】
しかしながら、リサイクルされるべき衣類を構成する異なる材料の記載された選択によって得られる繊維材料は、非常にコンパクトであり、あまり嵩張らないため、一般に衣服用及び家具用のパッド材料として使用され得る詰め物の形成には適していない。
【0005】
また、上記の従来の方法は、処理されるべき様々な材料の高価で長時間の手作業分離及び機械的処理を必要とするという欠点も有し、これは時間及び電気に関してかなりの労力を伴う。
【0006】
中国特許出願公開第208 917 366号明細書、中国特許出願公開第104 120 510号明細書、及び、米国特許出願公開第4 241 474号明細書は、回転シリンダのみが使用される、パッドなしの衣類を開封又は解繊するためのプラントを記載している。一方、中国特許出願公開第108 060 474号明細書に開示されるプラントは、回転ブレードによってパッドなしの布地の単純な切断を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許出願公開第208 917 366号明細書
【文献】中国特許出願公開第104 120 510号明細書
【文献】米国特許出願公開第4 241 474号明細書
【文献】中国特許出願公開第108 060 474号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の主な目的は、リサイクルされる又は過剰な生産によってもたらされるパッド入り織物製品を単一操作で回収するためのプロセス及びプラントを提供することであり、これは、同じタイプの従来の方法とは異なり、一般に衣服及び家具分野でパッドとして使用され得る詰め物を得ることができるようにする。
【0009】
本発明の更なる目的は、簡単で迅速な操作で、手動介入を伴うことなく、回収された又は過剰な生産によってもたらされる、パッド入り織物製品を元にして断熱繊維又は詰め物繊維群を形成できる上記のタイプのプロセス及びプラントを提供することである。
【0010】
これら及び他の目的は、請求項1及び請求項4のそれぞれのプロセス及びプラントによって達成される。好ましい実施形態が残りの特許請求の範囲から明らかである。
【0011】
この分野の既知の実施形態と比較して、本発明のプロセス及びプラントは、経済的で、迅速な、完全に機械化された方法で、衣服及び家具分野において断熱パッドとして使用され得る詰め物又は繊維群を生産できるようにする。
【0012】
また、本発明の方法及びプラントは、製造1時間当たり200個を超えるパッド入り衣類の加工を可能にし、約1kgの重量のパッド入り衣類から150~200kg/hの詰め物の時間毎の処理能力を伴うという利点を有する。
【0013】
持続可能な循環経済を生み出すこのプラントは、非常にコンパクトで省スペース(約5m×2m×1.5m)であるが、より大きく、したがってより生産的であり得る。
【0014】
1kgの繊維を製造するには2kgの油が必要であり、したがって、一時間当たり200kgの詰め物の生産で、本発明の方法及びプラントは、約400kgの油(生産の1日当たり8,000kgの油)を節約するという利点をもたらすことに留意されたい。このように、原料(油)の不使用、及び、輸送、出発織物繊維の機械的加工などの全ての結果として生じる動作に起因して、汚染物質の有意で実質的な低減が得られる。本発明のプロセス及びプラントによって必要とされるエネルギー消費両は実際には非常に低く(約10/12kW/h)、更に、水消費及び任意の形態の汚染が完全にない場合、本発明は、持続可能な循環経済の状況に完全に置くことができる。
【0015】
また、本発明のプロセスは、回収された出発布地の断片の痕跡をこのようにして形成された詰め物に残すことができるようにし、それにより、リサイクル材料の回収処理からのその起源を明らかにする。元の材料(製造された又は寄せ集めの切断物)がオゾン電流などを用いてUV放射線によって洗浄及び消毒されたことの保証として証明書が発行される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
これら及び他の目的、利点及び特徴は、添付図面の図に非限定的な例として示される本発明に係るプロセス及びプラントの好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。
【0017】
これらにおいて:
【
図1】本発明のプラントの概略的な実施形態の平面図である。
【
図2】
図1のプラントで使用される一対の回転プレートを側面図で示す。
【
図3】
図1のプラントで使用される一対のダブルシリンダを側面図で示す。
【
図4】
図2のプレートで使用されるカーディングウィローの側面図である。
【
図5】
図1のプラントのステーション13のシリンダの断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のプロセスでは、リサイクルされるべきパッド入り製品1、例えば、金属又はプラスチック部品が除去された状態で事前に洗浄された、一般に、断熱ジャケット、寝袋、ベッド掛け布団、パッド入り材料の生産屑など、過剰な生産物、パッド入り衣服は、例えばUV放射との接触により、オゾン電流などを介して殺菌作用を果たすことができるようにする除染チャンバ2内に配置される。
【0019】
このようにして除染チャンバ2内で処理された製品1は、その後、コンベアベルト3によって、一対のローラ5を備えた圧縮ステーション4に移送され、後続のステーションにおいて製品1をより加工可能にするべく、一対のローラ5間で製品1が破砕されて圧縮される。
【0020】
好ましくは、排除されるべき任意の金属部品の存在を検出できる金属検出器も設けられる。
【0021】
その後、ステーション4からの出口で、粉砕された製品1は、ステーション6の内部で、パッド及び布地を備えて全体として処理され、ステーション6は、これら全ての材料の解繊及び引裂き処理を一緒に同時に行なう。この目的のために、ステーション6には、回転プレートの2つの対7,8が設けられ、これらの対のうちの一方が
図2により良く示される。
【0022】
特に、プレートの前記対のそれぞれは、互いに反対の回転(
図2の矢印F1及びF2)を伴う上側プレート9及び下側プレート10によって形成される。圧縮ステーション4から来る製品1がその間で処理されるプレート9,10の対向面は、サイズ及び密度が異なる針11,12を有し、プレート9の針11とプレート10の針12との間で互い違いの配置を成す。
【0023】
好適には、本発明によれば、プレート9,10の前述の対7,8の針11,12は、
図4により良く示されるように、円弧又はカーディングウィローのように成形される。
【0024】
更により好適には、圧縮ステーション4から最初に製品1を受けるプレートの対7は、例えば2針/cm2の密度で分布した、例えば根元部11aで4mm、先端部11bで2mmの厚さを有する大型針11,12を有する。代わりに、プレート9,10の後続の対8は、より高い密度、例えば6針/cm2で分布した、例えば根元部で2mm、先端部で1mmなど、前の対よりも小さい寸法の針11,12を有する。好ましくは、プレートの前記対の針の長さは、2~3cmの範囲である。
【0025】
このようにして、プレート7の第1の対は、パッド入り製品1の第1の粗い引き裂きを行ない、一方、プレート8の第2の対は、布地及び詰め物の繊維のより微細でより完全な引き裂きを行なう。このようにして、詰め物及び布地の生繊維は、プレート9,10の第1の対7から出てくるが、プレート8の第2の対からは、プレート9,10の前の対からくるものよりも細くて短い繊維が得られる。
【0026】
その後、ステーション6で得られた繊維材料は、図示しない適切な空気圧搬送システムにより、前記繊維材料を実質的に詰め物層を形成する平行化繊維の薄層に変換するために後続のステーション13に移送される。
【0027】
特に、前記ステーション13には、前のステーション6で調製された繊維材料を平行化繊維の層に変換するシリンダ14,15の2つの対が設けられる。この目的のために、シリンダ14,15の各対は、互いに反対方向の回転F3,F4(
図3)を伴う上側シリンダ16及び下側シリンダ17から構成される。また、各シリンダ16,17は、長さ及び密度が異なる針18,19もそれぞれ支持し、針18,19は、シリンダ16の針18とシリンダ17の針19との間で互い違いの配置を成して適切な支持体上に固定される。好適には、シリンダ14の第1の対の針18,19は、前の対の下流側に配置された第2の対15の針よりも大きい寸法(長さ及び厚さ)を有する。好ましくは、前のステーション6から繊維を最初に受けるシリンダ16,17の対14は、シリンダの後続の対15上に存在する針の密度よりも低い密度の針18,19を有する。
【0028】
ステーション13に存在するシリンダの前述の対のおかげにより、バルク状態で不規則な向きで前のステーション6から出てくる布地及び詰め物繊維は、次のステーションで詰め物繊維群に変換されるのに適した繊維の単層を形成するために、引き伸ばされて互いに平行に配置される。
【0029】
その後、ステーション13から出てくる材料の層は、後続の空気循環ステーション21内の吸引装置20によって吸引され、この場合、詰め物繊維群22を得るための織物材料層が引き裂かれて開かれる。
【0030】
したがって、前述のプロセス及びプラントは、回収されるべき製品1を形成する異なる材料(布地、ライニング、異なる性質のパッド、合成、人工又は天然など)の開放を一緒に同時に達成し、それにより、それらの材料を、パッド材料として及びメンテナンスが容易な熱製品の新たな製品の断熱のために使用可能な貴重な詰め物繊維に変換する。
【0031】
その結果、初期製品1に既に存在する繊維に対して更なる繊維と一体化される必要がない場合でも少なくとも350~400Cuin(inches3/ounce)の嵩高性(又は充填力-FP)を有することができる繊維で構成された詰め物繊維群22が得られる。より高いFPが必要とされる場合、xパーセントの繊維を混合チャンバに添加すれば十分である。
【0032】
製品の嵩高性FPは、CLO値にかなり影響する。理論的には、特別な布地に封入された400cuinの回収材料のFPで、約1.7~1.8のCLO値が得られると考えることができる。
【0033】
それにもかかわらず、以下の特許請求の範囲の範囲内に入る変形例をもたらすために、前述の図示の発明に対して変更を加えることができる。したがって、例えば、本発明のプラントのステーション6,13は、回転プレートの単一の対及びシリンダの単一の対をそれぞれ有することもできる。更に、記載された解繊・引裂きステーション6及び詰め物を形成するステーション13は本発明にとって不可欠であるため、除染チャンバ2を省略することができる。