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▶ バークストランド,オーヴィル,ジェイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】トロイダル揚力エンジン
(51)【国際特許分類】
   F03D 1/06 20060101AFI20241213BHJP
   F03B 17/06 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
F03D1/06 B
F03B17/06
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022552194
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 US2021019925
(87)【国際公開番号】W WO2021174011
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】62/982,421
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522340819
【氏名又は名称】バークストランド,オーヴィル,ジェイ
【氏名又は名称原語表記】BIRKESTRAND,Orville,J.
【住所又は居所原語表記】10 Oak Lane Davenport Iowa 52803 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】バークストランド,オーヴィル,ジェイ
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-011403(JP,A)
【文献】実開昭58-109502(JP,U)
【文献】米国特許第06988357(US,B2)
【文献】国際公開第2015/012677(WO,A1)
【文献】特開平11-132307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
F03B 13/00-13/26;17/00-17/06
F03B 1/00-11/08
F01D 1/00-11/24
F01D 13/00-15/12;23/00-25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸流タービンアセンブリと動作可能に相互接続された揚力タービンアセンブリであって、前記揚力タービンアセンブリと前記軸流タービンアセンブリが、ガスで満たされた容器内に収容されている、揚力タービンアセンブリ
を含む装置であって、
前記揚力タービンアセンブリが、
(a)第1の一組のブレードを有する入力ステータと
(b)第2の一組のブレードを有する揚力タービンであって、前記第2の一組のブレードが揚力を生成する、揚力タービンと
を含み、
前記第1の一組のブレードが前記ガスに逆回転流を生じさせ、前記逆回転流の方向が前記揚力タービンの回転方向に対向しており、前記第2の一組のブレードが前記ガスの前記逆回転流に向かって回転
前記軸流タービンアセンブリが、
(a)第3の一組のブレードを有する軸流入力ステータと、
(b)第4の一組のブレードを有する軸流タービンであって、第4の一組のブレードが前記第2の一組のブレードと同じ回転方向に回転する、軸流タービンと
を含む、装置。
【請求項2】
前記揚力タービンの回転は、ポンプを作動させる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポンプは、液圧作動液を駆動し、前記液圧作動液が、機械を作動させる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記機械は、熱交換器である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記機械は、発電機である、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記機械は、ニードルバルブである、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記ニードルバルブは、前記揚力タービンの速度を前記ガスの流れの速度に対して制御し、調整するように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記機械は、加圧されたアキュムレータである、請求項3に記載の装置。
【請求項9】
前記ガスは、1気圧よりも高くまで圧縮されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記ガスは、前記容器内で安定した圧力に保たれている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記容器は、トロイダル形状である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記ガスは、ヘリウムである、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記ガスは、二酸化炭素(CO)である、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記容器は、外部の大気から密閉されている、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記容器からガスが排出されない、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記ガスは、安定した温度に保たれている、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記揚力タービンと前記軸流タービンが、単一ユニットとして回転する、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記第4の一組のブレードは、調整可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記生成された揚力の法線方向成分が、推力を生成するために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記生成された推力が、前記装置に関連する速度とは無関係である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記生成された推力が、前記装置に関連する速度とは無関係である、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記揚力タービンアセンブリに動作可能に相互接続されたニードルバルブをさらに含み、前記ニードルバルブの開放により、前記揚力タービンの速度は上がり、生成される推力の大きさは減少する、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記ニードルバルブを閉じると、生成される推力の大きさは増加する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記揚力タービンの揚抗比(L/D)は、1:1よりも大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記揚力タービンの揚抗比(L/D、150:1である、請求項24に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月27日に出願されたバークストランド,オーヴィル,ジェイによる「TOROIDAL LIFT FORCE ENGINE」と題する米国仮特許出願第62/982,421号に対する優先権を主張する。この出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、2012年12月28日に「POWER GENERATION APPARATUS」と題して出願され、2017年11月14日に米国特許第9,816,383号として発行された米国特許出願第13/729,205号;2013年12月27日に「POWER GENERATION APPARATUS」と題して出願され、2017年11月14日に米国特許第9,816,384号として発行された米国特許出願第14/141,986号;及び、2017年4月7日に「WIND TURBINE」と題して出願された米国特許出願第15/482,313号に関連している。これらはすべてバークストランド,オーヴィル,ジェイによる出願であり、各出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
図1は、当業者に周知の例示的従来技術による農場用風車100の正面図である。風車100は、実質的に円形配置を成すように構成され、ギアボックス110と動作可能に相互接続された複数(典型的には18個)のブレード105を含む。ブレード105の最低部の高さよりもわずかに低い位置に足場115が配置され、メンテナンスなどの目的のためにブレード105及び/又はギアボックス110に容易にアクセスできるようになっている。ギアボックス110は、コネクタ125を末端に備えたポンプポール120と動作可能に相互接続されている。コネクタ125は、さらに、井戸140内に延びるスタンドパイプ135で囲まれたポンプロッド130と相互接続されている。典型的には、井戸ケーシング145は、井戸140の入口を入り込むように取り囲み、排出点150の支持を提供する。
【0004】
風車タワー160は、ブレード105が地面から相当な高さに配置されるように構造的支持を提供し、それによって、建物や地形などからの障害物なしに、風がブレード105に到達できるようになっている。タワー160は、ブレード105が風で回転することによって生じる力を打ち消すための支持も提供する。この力は、風が十分な速度に達したときに風車を転倒させる可能性がある横向きの力である場合がある。そのため、風車100は通常、風速が所定の閾値に達したとき、風を避けて回転するように構成されている。これにより、ブレードが速すぎる速度で回転すること、及び/又はタワー160に対して大きすぎる横向きの力が発生することに起因する損傷及び/又は破壊から、ブレード105やタワー160が保護される。
【0005】
運転中、風はブレード105を回転させ、それによってギアボックス110を回転させ、それによってポンプロッド130を介してポンプを作動させ、井戸の貯水池から水を引き上げ、排出点150から排出するという従来のポンプ機構が提供される。当業者には理解されるように、農場用風車100は、通常、水(又は他の流体)の汲み上げに制限されている。また、従来の農場用風車100は、特定の風速に制限され、風速が高いときには極めて効率が低い。この低い効率の原因は、ほぼ無風の日であっても遠くの扶養動物に唯一の水源を提供するために、風速が低いときにトルクを生成するようなそれらの基本設計にある。
【0006】
図2は、発電に使用できる現代の従来技術による風力タービン200を示す例示的正面斜視図である。風力タービン200は、タワー210によって支持されているハブに取り付けられた、複数(典型的には3つ)のブレード215を備えている。典型的な現代の風力タービンは、数十メートル程度(例えば、90メートル)の高さに、同じく数十メートル程度の長さのブレードと一緒に取り付けられている。現代の風力タービン200は、多くの場合、タワー210の中に、又は支持土台205の中に、全ての動作部品を内包している。そのため、この風力タービンの外観には、従来の農場用風車100の場合のように、その動作が現れることはない。
【0007】
現代の風力タービン200の顕著な欠点は、風の流れが減速したときや、高速なスパイクがブレード215の上で生じたときに、風力タービンの失速を防止するための独立した機構を一般に有していないことである。一般に、そのような極めて僅かな失速は、例えば、タービン200のブレード205上を流れる風の瞬間的なスパイク及び/又は一時的休止(凪)に起因して発生する。このようなスパイクや失速に対抗する機構がなければ、風力タービン200の全体的効率は、さらに著しく低下する。現代の風力タービンは、風の瞬間速度に対するローターの1分間当たりの回転数(RPM)を積極的に自動追跡し、所望の風の迎え角を常に維持するための単純な制御システムを有していない。その代わり、現代の風力タービンは、必要なグリッド周波数を生成するために、主として一般に、ほぼ一定の回転数(RPM)で動作する。比較的最近のシステムでは、±20%程度のわずかな回転数の変動を許容する、精巧で高価な電子制御システムが搭載されていることがある。このような制御上の制限により、風力タービンの可能な最大効率は制限されている。さらに、風力タービンは、風が突然失速したときに、風力タービンが逆風を起こして停止しないようにするために、ローター平面のローター先端で6以上の周速比(TSR)になるように、翼弦(ブレードコード)を稼働しなければならない。風力タービンには、常に存在する避けられない大気の乱れがあるからである。
【0008】
従来の3枚羽根の風車/風力タービンは、通常6以上のTSRで稼働されるため、揚力の接線方向部分しか、すなわち、生成された総揚力のうちの約6%しか獲得できない。残りの部分、すなわち、揚力の法線方向成分は、タワーを横転させようとすることによって打ち消され、その結果、全く利用されなくなる。このため、例示的タワー160、210及び/又は土台205は、タワーの転倒を防止するために、過剰に頑丈に構築されることになる。さらに、従来の風車は、例えば、1つのブレードからの流れが他の隣接するブレード上の流れを強めることにより、有用な電力を生成することが見込まれる生産力を何ら獲得することができない。
【0009】
従来の考え方では、あらゆる風力発電機には、風に含まれる運動エネルギーのうち16/27(59.3%)を超えて獲得することはできないというベッツの法則による限界がある。この16/27(又は0.593)という係数は、ベッツ限界として知られている。従来の3枚羽根の風車は、現在のところ、ベッツ限界の約75~80%でピークに達する。ベッツ限界は、特定の風車設置場所で抽出できるエネルギーの理論的の上限を示すものであり、抗力タイプの力には妥当であるが、揚力タイプの力には適用されない。特定の場所で風が吹き続けたと仮定しても(仮に)、一般的経験では、その年の風で得られる運動エネルギーのうち、ベッツ限界を超えて運動エネルギーを抽出することはできない。ただし、これは3枚羽根の従来機で可能な最大値と一致する可能性がある。実際には、大半の現在のシステムは、ベッツ限界の50%の性能比率にも達しない。大多数は、ベッツ限界の7%から17%までの典型的な比率である。
【0010】
さらに、現代の風力タービンの動作の顕著な欠点として、比較的高速で回転するローターブレードが周囲の空気を汚すこと、ブレードを増やしても生産性が上がらないこと、及び、一般的に耳障りな音が発生することなどが挙げられる。また、現代の風力タービンは、鳥などの飛行動物にとって危険である。これらの理由又は他の理由により、従来の風力タービンは、膨大な電力を消費する都市部や近郊で使用するには、実用的ではなく、望ましいものでもない。そのため、従来の風力タービンは一般に、効率的にサービスを提供できる場所や速い風にさらされる場所に、大きな集まり(すなわち、ウィンドファーム)を成して配置されている。そのため、従来の風力タービンは、発電した電力をそれが必要とされる場所まで運ぶための大規模な送電システムを必要とする。
【0011】
さらに、従来技術によるあらゆる風力発電機では、風力発電機が獲得するエネルギーが、Dよりも速い速度で増加することはない。ただし、Dは、ブレードの直径である。従来技術による風力タービンの他の大きな欠点は、6以上の周速比(TSR)で運転されることである。そのため、従来技術による風力タービンは、より速く動くる風に届くようにするだけでなく、より乱れの少ない風に届くようにするために、非常に高いタワーに配置されなければならない。その結果、従来技術による風力タービンは、正しく機能させるために、木や建物、あるいは他の風力発電機などの障害物から、かなりの距離(例えば、500フィート以上)に設置することが推奨されている。さらに、TSRが6以上である場合、万が一突風が吹いてTSRが例えば5以下になると、極めて僅かな失速が原因で、従来の3枚羽根の風力タービンには通常、流れの剥離やエネルギーの損失が生じる。なぜなら、従来の3枚羽根の風力タービンには、風速を粗く追跡する機構がなく、ブレードに対する見かけ上の風の迎え角を変化させて突風の範囲を制限する機構もないため、獲得される電力が減少するからである。
【0012】
最後に、おそらく最も重要なことは、現代の風力タービンで獲得できるエネルギーは、揚力の接線方向部分から獲得できるエネルギーのみであるということである。タワーを転倒させようとする揚力の法線方向部分は、数倍強力であるが、利用されずに無駄になってしまう。また、悪名高いことに、風力は断続的であるため、予備の電力システムや隙間を埋めるための電源システムに、コストのかかる投資が必要となる。
【0013】
概要
従来技術の上記の欠点及び他の欠点は、本発明の例示的実施形態によるトロイダル揚力エンジン(TLE)により克服される。トロイダル揚力エンジンは、例えば、封じ込められた再循環密閉加圧ガス(例えば、空気、ヘリウム、二酸化炭素(CO)等)環境で作動し、揚力の法線方向成分を使用して直進推力を生成するとともに、接線方向成分を使用して軸流圧縮機、ならびに補助装置や速度制御付属装置を駆動する。トロイダル揚力エンジンは、例えば、加圧ガス環境下で堅固な結合回転構造として動作する2つのタービンアセンブリから構成される。
【0014】
外側のタービンは、高揚力低抗力(HLLD)の揚力タービンであり、ガス中での揚力タービンのブレードの回転から、揚力を獲得して推力を直接生成するだけでなく、付属装置も駆動する。例えば、ガスが揚力タービンのブレードに衝突する前に、ガスは、入力ステータの一組のブレードによって事前に回転され、方向付けされる。出口ステータの一組のブレードは、揚力タービンを通過した後の流れを落ち着かせ、方向転換させる働きをする。例えば、揚力タービンの揚力と抗力の比(L/D)は、1よりも大きい。
【0015】
この結合構造の第2の内側のタービン部分は、効率のよい軸流圧縮機タイプのタービンであり、外側の揚力タービンに高速ガスの安定した流れを提供する働きをする。軸流タービンも、例えば、入力ステータと、ガスが揚力タービンアセンブリの入力ステータに入る前にガスを調整するのに役立つように構成されたブレードを有する出口ステータとを含む。
【0016】
動作中、軸流タービンは、揚力タービンにガスの安定した流れを提供する働きをする。例えば、揚力タービンアセンブリと軸流タービンアセンブリは、連続フロー配置を成すように構成される。すなわち、軸流タービンアセンブリから出たガスの流れは、揚力タービンアセンブリの入力ステータに入る。同様に、出力ステータから出たガスの流れは、軸流タービンの入力ステータに入る。
【0017】
トロイダル揚力エンジンは、周囲の大気や、及び/又は、トロイダル揚力エンジンが搭載された乗り物の速度とは無関係に推進力を得るために使用できる。トロイダル揚力エンジンを乗り物に搭載することで、その推力を利用して乗り物を加速/減速させることができる。この推力は密閉されたケーシング(例えば、トロイド(環状体))内で発生するため、外部の大気とも、乗り物の速度とも無関係である。このようなトロイダル揚力エンジンを搭載した約1.0Gで加速し続ける乗り物は、理論上、約11ヶ月で光速(c)に達するだけでなく、旅程の終わりには安全に減速できる潜在能力も有している。3Gで加速すれば、この時間は、4ヶ月未満に短縮されるであろう。これは、燃料があることが前提である。さらに、トロイダル揚力エンジンは、惑星の表面や宇宙空間の虚空でも同じように動作するであろう。
【0018】
例えば、トロイダル揚力エンジンは、航空機に搭載されてもよい。推力を前方に向けることによって、航空機は、通常よりも短い滑走路で離陸できる場合がある。同様に、推力を航空機の船尾に向けることにより、減速を助けることができ、航空機を短い滑走路や発着場に着陸できる場合がある。通常の飛行動作中、すなわち、離陸や着陸の際ではなく巡航中は、航空機のメインエンジンをオフにすることができ、それによってかなりの燃料費を節約することができ、その間、トロイダル揚力エンジンによって生成された推力が、真っすぐな飛行動作や水平/巡航飛行動作に十分な推力を提供する。ほんの少し強力なユニット(必ずしも大型である必要はない)があれば、メインプロペラを駆動するエンジンを完全に置き換えることができる。さらに強力なユニットがあれば、大気と相互作用する翼、尾翼、スタビライザー、ランディングギア(着陸装置)なども、余分な附属品になるであろう。もちろん、この推力が乗り物の総重量より大きければ、乗り物は、宇宙空間やその先まで加速することができる。
【0019】
例示的トロイダル揚力エンジンを使用する究極の乗り物の自然な外形は、対称な円盤型の形状であることに留意されたい。そのような形状の乗り物は、例えば、目的地までの半分の距離を1Gで加速し、180°回転してから、残りの旅程で減速することができる。このような巧みな操縦によれば、乗員の快適さと長期的健康を得るために、Gの力を同じ向きに維持することができる。様々な能力のうちの他の例としては、そのような乗り物は、大気圏内で高速で約135°回転してから、高速で直角に進路修正のためのターンを行うことが可能になる。このような装備を有する乗り物は、宇宙へ行くために、時速約40,234キロメートル(原文:「約25,000マイル」)の地球脱出速度まで加速する必要はない。代わりに、乗り物はまっすぐ上向きに移動し、ヘリコプターが大気圏内で行うようにホバリングすることができる。そうすれば、重い熱シールドなどは必要なくなるであろう。ホバリングした後は、乗り物は、目的地まで加速と減速を繰り返すことができる。
【0020】
さらに、トロイダル揚力エンジンの揚力タービンの回転を使用して、熱交換器、発電機などの動力源として使用される液圧作動液などの流体をポンプ輸送するように構成されたポンプに、動力を供給してもよい。このように、トロイダル揚力エンジンは、家その他の建造物に、電気、温水、熱、及び/又は空調を提供するために使用することができる。3次元トロイダル形状は、この任務にとって理想的であり、これまでに見つかった中で最も適した形状であると思われる。揚力タービンの平均ブレード速度は、揚力タービンの中を流れるガスの速度の約2~6倍であることが望ましいからである。同時に、例えば、軸流タービンを通過する同じガスの速度は、騒音が大きくて非効率的で高価で問題が発生しやすいギアに頼ることなく、軸流タービンの平均ブレード速度とほぼ1:1になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の上記の利点及びさらなる利点は、添付の図面に関連して説明される。図面において、同様の参照符号は、同一若しくは機能的に等価な要素を示している。
【0022】
図1】先に説明した、従来技術として知られているような例示的農場用風車の正面図である。
図2】先に説明した、従来技術として知られているような例示的3枚羽根風車の正面図である。
図3A】回転装置によるベルヌーイ力を示す図である。
図3B】角度付きの面による反力を示す図である。
図3C】ブレード上の揚力を示す図である。
図4】本発明の例示的実施形態による、例示的水平軸揚力タービン(HALT)の斜視図である。
図5】本発明の例示的実施形態による、例示的HALTの背面斜視図である。
図6】本発明の例示的実施形態による、例示的HALTの側面図である。
図7】本発明の例示的実施形態による、例示的HALTのブレードの断面図である。
図8A】本発明の例示的実施形態による、周速比(TSR)に対する、パワートルクと、法線方向成分及び接線方向成分への揚力の分布との関係を示す例示的グラフである。
図8B】本発明の例示的実施形態による、例示的揚力ブレードの圧力分布を示す図である。
図9A】本発明の例示的実施形態による、ブレードのレイアウトを示す例示的図である。
図9B】本発明の例示的実施形態による、TSRと出力との間の関係を示す例示的グラフである。
図10A】本発明の例示的実施形態による、迎え角のα(∝)のゴールデントライアングルと圧縮に関する例示的な力の図である。
図10B】本発明の例示的実施形態による、揚力タービンブレードの例示的な力の図である。
図11】本発明の例示的実施形態による、風速の瞬間的スパイクや一時的休止を示すグラフである。
図12】本発明の例示的実施形態による、例示的トロイダル揚力エンジン(TLE)の斜視図である。
図13】本発明の例示的実施形態による、例示的トロイダル揚力エンジンの斜視図である。
図14A】本発明の例示的実施形態による、手動制御アームを有する例示的トロイダル揚力エンジンの側面図である。
図14B】本発明の例示的実施形態による、手動制御アームを有する例示的トロイダル揚力エンジンの側面図である。
図15】本発明の例示的実施形態による、例示的トロイダル揚力エンジンの例示的断面図である。
図16】本発明の例示的実施形態による、出力アセンブリの概略図である。
図17A】本発明の例示的実施形態による、例示的揚力・軸流タービンの例示的ブレードの正面図である。
図17B】本発明の例示的実施形態による、例示的揚力・軸流タービンの例示的ブレードの例示的断面図である。
図18】本発明の例示的実施形態による、トロイダル揚力エンジンの入力/出口ステータ、及び軸流タービンに使用するための、例示的ブレードの断面図である。
図19A】本発明の例示的実施形態による、揚力タービンへの入力ステータ及び軸流圧縮機タービンへの出口ステータのブレードの正面図である。
図19B】本発明の例示的実施形態による、角度θ°を示す、入力ステータのブレードの断面図である。
図20A】本発明の例示的実施形態による、出口ステータの例示的ブレード、及び調節可能な軸流ブレードの正面図である。
図20B】本発明の例示的実施形態による、出口ステータの例示的ブレードの断面図である。
図20C】本発明の例示的実施形態による、入力ステータ及び出力ステータを有するトロイダル揚力エンジンの軸流タービンのブレード速度図の断面図である。
図20D】本発明の例示的実施形態による、入力ステータ及び出力ステータを有するトロイダル揚力エンジンの揚力タービンの、従来のガスタービン及び蒸気機関とは異なる、作動流体の流れに向かう回転を示す、ブレード速度図の断面図である。
図21】本発明の例示的実施形態による、トロイダル揚力エンジンの制御及びエネルギー獲得図の液圧作動の概略図である。
図22】本発明の例示的実施形態による、家(又は他の建物)におけるトロイダル揚力エンジンの使用を示す例示的環境を示す図である。
図23】本発明の例示的実施形態による、航空機又は他の移動する乗り物におけるトロイダル揚力エンジンの図である。
図24】本発明の例示的実施形態による、複数のトロイダル揚力エンジンを利用する例示的発電装置の斜視図である。
図25】本発明の例示的実施形態による、複数のトロイダル揚力エンジンを利用する例示的発電装置の平面図である。
図26】本発明の例示的実施形態による、複数のトロイダル揚力エンジンを利用する例示的発電装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
例示的実施形態の詳細な説明
上で述べたように、ベッツの法則は、流体の流れ(風、水又は他の流体)からエネルギーを抽出するように設計されたあらゆる機械の最大効率は、その運動エネルギーの16/27、すなわち、約59.3%に制限される旨を述べているというのが通例である。これは、エネルギー保存の法則により要求される。ベッツの法則は既存の機械にも適用されるように見えるが、このように見えるのは偶然であり、因果関係はない。上で述べたように、従来の3枚羽根の風力発電機が獲得するのは、生成された総揚力のせいぜい約6%と、法線方向の力の0%である。低風速から時速約29キロメートル(原文:「約18マイル」)までの風速で最も優れた機械、すなわち最も効率の良い機械は、依然として図1に関連して上で説明した古い農場用風車である。
【0024】
典型的な農場用風車は、時速約29キロメートル(原文:「約18マイル」)を超える速度では、風の流れを避けて回転する。また、農場用風車のブレードは、揚力の接線方向成分の一部しか獲得せず、典型的には、ポンプ負荷の大きさによって調整されたブレードの速度で良好な始動トルクを得るために、約45°の角度に設定される。ブレードの速度が風速を上回ると、ブレードが逆風を起こして失速するため、機械はそれ以上高いTSRに到達できなくなり、その結果、出力レベルを上げることができなくなる。高いTSRに設定されたブレードを有する機械は、主にブレードの逆風を引き起こす乱流ヌルが原因で、始動せず、動作速度に達することができない。本発明の例示的トロイダル揚力エンジンは、揚力の接線方向成分だけでなく揚力の法線方向成分も利用することで、流れる流体からより大きなエネルギーを獲得するため、従来の農場用風車及び/又は現代の3枚羽根風車よりも効率的な機械となる。
【0025】
従来の機械や農場用風車タイプの機械は、局所的な大気の密度、速度、及び発生頻度の高い状況に制限されており、出力は、空気の密度に見かけ上の風速の3乗をかけたものに比例する。同じこれらの規則にしたがって動作するトロイダル揚力エンジンは、24時間年中無休で無期限に動作することが十分に可能であるが、そのエネルギー密度は、大気中の同種の機械の数百万倍になる可能性がある。例えば、1気圧で約10MPHの例示的な平均風速の代わりに、トロイダル密閉加圧エンジンは、約1000MPH、100気圧で連続運転できる。これは、あらゆる大気圧エンジンの100の10倍、すなわち10倍、例えば100,000,000倍の出力密度を生み出す。その結果、トロイダル揚力エンジンの設計者は、環境的に制限されたエンジンのサイズよりも、トロイダル揚力エンジンの直径を概ね2桁程、10程容易に小さくすることができ、それでも必要な要求を満たすことができる豊富なパワーと推力源を得ることができる。
【0026】
具体的には、ベッツの法則は、圧縮できない非回転流についてのみ明示されたベルヌーイの式を単純化したものに基づいている。これは、ほとんどの従来の風車にとって合理的な仮定である。当業者には理解されるように、ベッツ限界の有効性は、ベルヌーイの式が適用されることを前提としている。ベルヌーイ自身が、風力タービンは明らかに回転流を受けるため、ベルヌーイの式は適用されないと述べていることに留意されたい。一方、本発明の様々な実施形態にしたがって作られたトロイダル揚力エンジンは、高度な回転流を生成及び強化し、それによって、生成された法線方向の揚力と接線方向の揚力を補強及び強化する。ベルヌーイやニュートンの時代には知られていなかった揚力を使用して、風から非常に大きなエネルギーを獲得することができる。
【0027】
図3Aは、本発明の例示的実施形態による、ベルヌーイ力を示す例示的図である。図3Aに示されるように、風(又は他の流体)Vは、水車などの回転装置のレバーアームに係合する。このような環境では、流体の流れは、回転運動Wに変換される。より一般的には、Vはレバーアームと相互作用し、レバーアームにF、すなわち抗力を印加して、これが回転運動に変換される。これは、運動エネルギーから位置エネルギーへの変換であり、ニュートンの第3法則の例である。
【0028】
図3Bは、本発明の例示的実施形態による、反力、すなわち運動量交換を示す例示的図である。図3Bに示されるように、流体の流れ(V)は、流体が角度付きの面と相互作用するときに、角度付きの面を速度Vで回転/移動させる反力Fを生成する。この交換は、従来の風車及び/又は風力タービンの基礎を形成するものである。ベルヌーイは、この種の装置への自分の理論の適用を明確に除外している。
【0029】
図3Cは、本発明の例示的実施形態による、揚力を示す図である。図3Cに示されるように、流体Vは、流れVに対して直角に揚力Fを発生させる特定の迎え角(∝)で、成形ブレード上を流れる(V)。また、ブレードに衝突する流体から、抗力Fも発生する。ただし、典型的な実施形態では、揚力Fは、少なくとも30対1の比率で、抗力Fよりも実質的に大きい(F/F≧30:1)。例えば、ロバート・リーベック博士は、ダグラス/リーベック LNV109A形のような成形ブレードを開発しており、これは、150:1を超えるL/D比を有すると報告されている。
【0030】
本発明の例示的トロイダル揚力エンジンは、例えば揚力を利用して、ベルヌーイ力及び/又は反力/抗力のみを利用する従来の風力タービンよりも実質的に大きな出力密度を生成する。さらに、揚力の生成によって、ニュートンの運動量交換だけでなく、ブレードに非対称の圧力分布も生成される。従来の常識では、この2つが区別されるとしても極めて稀であるが、本発明者のトロイダル揚力エンジンは、この非対称の圧力分布から得られる力をほぼ独占的に利用する。揚力は、ベルヌーイにもニュートンにも未知のものであり、予測されていなかった。彼らは、非対称圧力分布の揚力を使用するシステムからどのようなエネルギーを抽出できるかについてのガイドラインを提供していなかった。
【0031】
図4は、本発明の例示的実施形態によるトロイダル揚力エンジン(TLE)の特定の特徴を示す、例示的水平軸揚力タービン(HALT)400の斜視図である。例として、HALT400は、流れが回転翼に衝突する前に、静止翼を使用して流れを事前に回転させ、逆回転の流れに方向付けることの利点を例示している。この逆回転と向きの事前回転は、回転翼に対する流れの取り得る迎え角(∝)の範囲を圧縮し、流れの瞬間的な一時的休止が発生したときに失速を回避する働きをする。これは、ニュートンの第三法則の普遍性と矛盾するように見える。
【0032】
HALT400は、例えば、タワー405によって高い位置に支持される。例示的タワー405は、本発明の様々な代替実施形態により、様々なタイプの基部によって支持されてよい。一実施形態では、タワー405は、恒久的に固定された基部(図示せず)に固定される場合がある。本発明の代替実施形態では、タワー405は、タワーを上昇位置と下降位置との間で移動することができる旋回式基部(図示せず)に固定される場合がある。例として挙げた旋回式基部によれば、HALT400を地面に近い位置まで降下させることが可能となり、保守、交換、及び/又は修理の容易性を実現できる場合がある。当業者には理解されるように、そのような旋回式基部によれば、例えば、修理/保守の目的でHALTの種々の要素へのアクセスを可能にするための、梯子又は他の昇降機構の必要性がなくなるであろう。
【0033】
HALT400は、例えば、ノーズディッシュ420、複数の回転翼410、複数の固定翼415、及び尾部構成要素435を支持するナセル450から構成されている。回転翼410と固定翼415の他に、外側支持構造425が、回転翼410の各々の外縁を連結している。例えば、支持体425によれば、回転翼410にさらなる構造的安定性を与えることができる。尾部構成要素435は、例えば、ポール支持体440と動作可能に相互接続された横方向支持体430によって支持されている。本発明の代替実施形態において、HALT400は、構成要素の追加的配置、及び/又は異なる配置を含む場合があることに留意されたい。そのため、特定の構成要素に関する本明細書の説明は、例示的なものとしてのみ捉えるべきである。
【0034】
ナセル450は、例えば、ナセル450が回転できるような形でタワー405に取り付けられている。当業者には理解されるように、例えば高速回転が可能な傾斜軸容積式高効率液圧ポンプ/モーター(図示せず)のような様々な機構をナセル450に取り付けて、ブレード410の回転によって作動させることができる。例示的HALTマシンの開発における主要な洞察の1つは、以下で図16に開示するような閉ループ制御回路における例示的単純なニードルバルブの使用により、稼働中のブレードローター410に、定期的かつ自動的にリアルタイムで風速を直線的な形で追跡させる単純な自動技術の発見であった。
【0035】
風のエネルギーは、風速の3乗にしたがって変化する。もし、HALT400の閉ループ液圧制御回路内に、内部を通過する流体の速度の二乗に比例する圧力降下を有する何らかのデバイス(オリフィス又はニードルバルブは、拡張された温度範囲にわたって容易にかつ正確にこれを行う)があれば、稼働中のブレードローターは、直線的(1:1)に風速を追跡することになる/追跡する。容積式液圧ポンプと組み合わせると、液圧作動液の流量が、風速と直線的に直接相関する。HALTの大きなローターはゆっくりと回転するため、デバイスは、あらゆる風速でブレードに対する風の迎え角を制御するように非常に良好に機能することが簡単にわかる。例えば、HALTマシンは、これがないとうまく機能しない。閉ループ制御の同システムは、本明細書に記載された例示的トロイダル揚力エンジンにおいて使用される。
【0036】
上述のように、HALTのナセル450は、例えば、風に向かって回転できるような形でタワー405に取り付けられる。動作中、尾部構成要素は、回転翼と固定翼を風の方向に向かって差し向けるように動作する。HALTとその制御システムは頑丈に設計されるため、強風時にブレードが風を避けて回転する必要はない。万が一、HALTが台風やハリケーンなどの超強風に見舞われた場合、マシン全体を自動的に遠隔操作で地上に降ろし、収容して保護してもよい。このような下降は、例えば、遠隔操作のタワーを使用することや、アセンブリを下降できるヒンジ付きタワーを使用することなどによって達成できる。さらに、瞬間的な突風や風速の低下が、従来技術の風車や風力タービンでしばしば発生するような回転の喪失を引き起こすこともない。本発明の例示的実施形態によれば、回転システムは、タワーに取り付けられた種々の構成要素を特定の場所に固定するための制動機構及び/又はロック機構を含む場合がある。これは、例えばメンテナンスの目的で必要になる場合があり、あるいは、タワーを地面に降下させたときにHALTの様々な構成要素が地面に衝突して損傷しないようにするために、タワーが折り畳み式である場合に必要になることもある。ただし、当業者には理解されるように、本発明の代替実施形態によれば、制動機構や他のロック機構は使用されない。そのため、制動機構/ロック機構の説明は、例示的なものとしてのみ捉えるべきである。
【0037】
動作中、静止翼415は、風が回転翼410と相互作用する前に、風を逆回転の向きに事前回転させる。例えば、この逆回転の事前回転により、風又は他の流体が回転翼410と相互作用する際の、風又は他の流体の取り得る迎え角が圧縮される。これには、風の一時的休止及び/又はスパイクによる回転翼の瞬間的失速を防止する目的だけでなく、より優れた連続的揚力を得るという目的もある。
【0038】
図5は、本発明の例示的実施形態による、例示的HALT400の背面図500である。図500は、タワー405の上部と、回転翼410及び支持体425の後部を示している。尾部構成要素435だけでなく、ポール支持体440や横方向支持体430も示されている。
【0039】
従来の風力タービン又はジェットエンジン及び/又は蒸気タービンなどの他のタービンと比較した例示的HALTの主な違いの1つは、回転翼410が、ニュートンの第3法則に見かけ上違反して、風又は他の流体の流れに向かって回転することである。ジェットエンジン、ガスエンジン、又は広く使用されている蒸気力タービンなどの従来のタービンは、常に流れとともに回転している。これは、従来のタービンが反動マシン又はインパルスマシンであり、その回転速度は常に、流れよりも遅いからである。これは、トロイダル揚力エンジンのタービンが常に、対向する流れの数倍の速度で回転するのとは異なる。事実上、トロイダル揚力エンジンのタービンは、「自分で風を起こす」のである。回転翼410に衝突する前のこの流体の事前回転は、風の迎え角∝の取り得る範囲を圧縮するだけでなく、ブレードからさらなる揚力を生成するのにも役立つ。
【0040】
図6は、本発明の例示的実施形態による、例示的HALTの断面図600である。タワー405が、固定翼415、回転翼410、及び尾部構造430、435を含むナセル450を支持することが示されている。ナセル450の内部は、図示されていない。ノーズディッシュ420は、HALT400の中心軸に沿って取り付けられている。横方向支持体430とポール支持機構440も、図示されている。本発明の例示的実施形態によれば、風(又は他の流体)の方向から見たときに、回転翼と固定翼は、タワー405の後ろに配置されることに留意されたい。ただし、代替実施形態では、固定翼及び/又は回転翼は、タワー405の前に配置されてもよいことに留意されたい。さらに、代替実施形態では、回転翼がタワー405の後ろにあってもよく、固定翼がタワー405の前にあってもよい。したがって、固定翼415と回転翼410がタワー405の後ろに配置されるという本明細書に含まれる説明は、例示的なものとしてのみ捉えるべきである。
【0041】
図7は、本発明の例示的実施形態にしたがって使用できるRobert Liebeck博士のLNV109A型の高揚力低抗力のエアホイール(翼型)を利用した例示的回転翼の断面図700である。この特定の翼の断面形状は、最小限の後方凹みを有しているため、適当であると考えられる。これは、翼の高揚力特性が、ニュートン運動量交換の下降気流よりもむしろ、非対称の圧力分布に関係することを示している。例えば、図700に示した断面を有する回転翼は、図4図7を参照して上で説明したようなHALTに使用されてもよいし、あるいは、以下で詳しく説明するようなトロイダル揚力エンジンに使用されてもよい。代替実施形態では、所望の利点を達成するために、別の断面が使用されてもよいことに留意されたい。したがって、図700に示した断面は、例示としてのみ捉えるべきであり、限定的なものとして捉えるべきではない。
【0042】
表1は、本発明の例示的実施形態による、例示的回転翼の翼弦(コード)に対するパーセンテージに基づく寸法を示している。
【0043】
【表1】
【0044】
図8Aは、すべての航空形状に関する揚力/抗力の一般的な接線方向成分及び法線方向成分と、ゼロのTSRから約6のTSRまでの様々なTSRで動作中に迎え角を維持するために、それらの形状をどのような向きに配置しなければならないかを示す、詳細な数学的分析を示す図である。このモデルは、本発明の例示的実施形態によるものである。図8Aに示されるように、例えば、形状は、左上端の角で示されているTSRがゼロであるときの垂直位置から、右上端の角に示されているTSRが6であるときの水平姿勢まで、時計回りに回転しなければならない。揚力の法線方向成分は、周速比(TSR)の増加とともに着実に増加するが、接線方向成分は例えば一桁程小さく、TSRがL/D比に等しくなると着実にゼロになる。接線方向部分のエネルギー出力は、最大TSRの約半分にピークを有し、その後TSRの増加とともに減少する一方、法線方向部分のエネルギー出力は、獲得される場合、TSRとともに常に増加する。同様に、接線方向成分であるブレードのトルクは、TSRの増加とともに減少し、概ねTSR=L/Dのときに、ゼロになる。
【0045】
図8Bは、本発明の例示的実施形態による、ブレードにかかる揚力の非対称性を示す図であり、揚力の接線方向成分と法線方向成分を詳しく示している。
【0046】
図9Aは、HALTとトロイダル揚力エンジンの両方に使用される例示的ブレードレイアウトであり、例示的ブレード位置と様々な構成要素の向きを示している。ブレードは、必ずしも重なっている必要はないが、それらの流れは重なっている。これは、あるブレードの後縁からの流れが後続のブレードの境界層にエネルギーを与える働きをし、迎え角が大きいときに流れが剥離する可能性が最も高い領域で、ブレードがそうした大きい迎え角で機能するようにするためである。従来の常識では、この環状のブレードアレイが、観測された方向で、つまり流れの下流で通常の揚力を発揮するためには、結果として生じる下降気流が、それ自体に逆戻りする/逆戻りする必要があるとされていたが、これは明らかに不合理である。
【0047】
図9Bは、本発明の例示的実施形態による、HALTとトロイダル揚力エンジンの両方のブレードレイアウトについて、ブレードレイアウトに含まれる様々な角度の出力係数(Cpower)への影響を示すグラフである。
【0048】
図10Aは、本発明の例示的実施形態による、迎え角α(∝)の圧縮範囲を示す例示的ゴールデントライアングルを示す図である。
【0049】
図10Bは、本発明の例示的実施形態にしたがって本明細書に記載されるようなブレードに使用されたときに、方向転換された機械風によって、見かけ上の風がどのように強化されるかを示す図である。
【0050】
図11は、微風に対するローター速度の変化を示すグラフ1100である。線1115は、典型的な古い3枚羽根の従来のタービンを表しており、その近くの線1120は、それよりも近代的なタービンを表している。下側の曲線は、本発明の例示的実施形態による、トロイダル揚力エンジン又はHALTのものである。例えば、X軸は、線形時間であり、Y軸は、1時間当たりのキロメートル(km/h)で表された風速である。下側のグラフは、一分未満の僅かな時間間隔で測定された両方のマシンの風速(実線)1130を示しており、その近くの点線1125は、HALTの平均マシンローター速度を表している(破線)。例示的スパイク1105のような瞬間的スパイクは、ブレードの失速を引き起こす可能性があり、例えば一時的休止1110のような一時的休止は、両方のマシンにブレードバック現象を引き起こす可能性がある。デルタ(Δ)ウィンドとも呼ばれる瞬間的な風のこうした変化は、従来の風力タービンを瞬間的に失速させたり、風車やタービンを停止させたりする可能性がある。このような失速や停止の回復には、1秒以上程度を要することがある。このような回復が行われるまでに、新たな微風現象(スパイクや一時的休止など)が発生する可能性があり、それによってさらに失速が発生し、ローターが速度を上げられなくなり、獲得されるエネルギーの大幅な減少が発生する可能性がある。容易に理解されるように、HALTは、実際の微風の速度により近い形で追従する。従来の常識では、このフルブレードアレイは機能しないとされており、機能しない理由は、フルアレイの重なり合うブレードレイアウトが、ブレードの「下降気流」を妨げるためであろうと言われている。しかしながら、HALTの接線方向揚力の出力を直接経験的に観察しエネルギー測定したところ、明らかにこの考えは、否定的なものであった。
【0051】
本発明の原理は、微風現象に伴うそのような問題の克服に使用できる。風(又は他の流体)の流れを、回転翼に衝突する前に事前に回転させ、適当に方向付けることによって、回転翼に対する風の迎え角の取り得る最大変動幅を圧縮し、流体の速度の瞬間的低下がタービンの回転に悪影響を与えることを防止する。例えば、本発明の様々な例示的実施形態におけるHALT又はトロイダル揚力エンジンは、常に存在する局所的な風の乱れにもかかわらず、円滑に機能する。
【0052】
また、グラフ1100は、例示的タービンの例示的な一分間当たりの回転数(RPM)も示している。例えば、ローターのRPMは、瞬間的変化1120を有することがあるが、全体として実質的に一定の速度を維持する。
【0053】
図12は、本発明の例示的実施形態による、例示的トロイダル揚力エンジン1200の斜視図である。例示的トロイダル揚力エンジン1200は、例えば一対の支持体1210によって支持された外部ハウジング1205を含む。本発明の例示的実施形態にしたがって、一対の支持体1210が図示説明されるが、本発明の代替実施形態では、異なる数の支持体1210が使用されてもよい点に留意されたい。したがって、一対の支持体1210の説明は、例示的なものとして捉えるべきである。トロイダル揚力エンジン1200の内部構成要素については、図15を参照して以下で詳しく図示説明される。本発明の例示的実施形態によれば、トロイダル揚力エンジンは、揚力タービンによって生成された推力を増幅する働きをする加圧ガス、例えば、空気、ヘリウム、二酸化炭素(CO)などで満たされる。例えば、室温付近及び約1100psiで空気の約400倍の密度を有する超臨界COを使用すると、1気圧で同じ温度の通常の空気を使用した場合と比較して、顕著な出力の増大が得られる。例示的実施形態では、加圧ガスは、約101kPa(原文:「約1気圧、14.5psi、又は1バール」)の圧力を有し、これによって、約1334N(原文:「約300lbf」)の出力推力が得られる。だだし、代替実施形態では、圧力は、異なっていてもよい。例えば、約3気圧(原文:「3バール」)まで加圧したときに4000N(原文:「900lbf」)の推力が得られるとすれば、これは、軽量スポーツ航空機(LSA)や宇宙旅行者の乗り物に適しているであろう。圧力を約6気圧(原文:「6バール」)まで増加させたときに、結果として得られる約8,000N(原文「約1,800lbf」)の推力は、郵便車両、軽配送トラック、フェリー、輸送船などに動力を供給するのに役立つであろう。
【0054】
手動制御アーム1405は、トロイダル揚力エンジンを回転できるように、すなわち、推力が印加される方向を変更できるように、動作可能に接続されている。例えば図12において、手動制御アーム1405によれば、トロイダル揚力エンジンを2つの支持体の間で回転させることができる。本発明の代替実施形態では、別の制御機構を使用して、推力を任意の方向に差し向けてもよいことに留意されたい。したがって、手動制御アームの説明は、例示的なものとしてのみ捉えるべきである。代替実施形態では、モーター制御ユニット(図示せず)が、支持体1210の1つに取り付けられてもよい。モーター制御ユニットを使用して、トロイダル揚力エンジン1200を回転させることで、推力1235が発揮される方向を変更してもよい。例示的実施形態によれば、トロイダル揚力エンジンのブレードに生じる非対称の力によって、図12に矢印で示されるように、推力1235は一方向に生成される。この方向は、従来のジェットエンジンで体験するものとは反対である。これは、推力が、稼働中のブレードに生じる非対称の圧力分布によるものであり、様々な粒子の放出によるものではないからである。
【0055】
例えば、推力の方向を変更するには、トロイダル揚力エンジンを、推力の方向が所望の方向と一致するような向きに配置する必要がある。例えば、手動制御アーム1405は、微と粗のセレクタディテントによって、トロイダル揚力エンジンを360度如何なる向きにも配置することができ、推力を上方に差し向けて、重量超過の乗り物を離陸させることができる。実施形態によっては、手動制御アーム1405は、所定の度刻み、例えば、5度刻みでの調整に制限される場合がある。ただし、代替実施形態では、手動制御アーム1405は、そのように制限されなくてもよい。代替実施形態では、推力は、航空機、又は他の乗り物が前進方向に加速できるような第1の方向に差し向けられる場合がある。その後、トロイダル揚力エンジンは、180°後に回転され、減速を可能にする場合がある。
【0056】
さらに、流体(例えば、液圧作動液や冷却液)をトロイダル揚力エンジンに出し入れできるように、例示的入力ホース1225と出力ホース1230が設けられてもよい。例えば、流体は、揚力タービンによって作動されるポンプによりポンプ輸送されてもよい。流体は、発電機や熱交換器に動力を供給するために使用されてもよく、あるいは、ニードルバルブ(図示せず)のような精密調整な可能なオリフィスを通過させることで、本発明の例示的実施形態にしたがって、流れる作動ガスに対する密閉型揚力タービン1710(図17)の速度制御を行ってもよい。
【0057】
例示的調節ノブ1250は、例えば、軸流タービン入力ステータのブレードの角度を調節するために使用され、トロイダル揚力エンジンが様々な速度で効率的に動作することを可能にする。当業者には理解されるように、本発明の代替実施形態によれば、手動調節ノブ1250は、自動化されてもよい。
【0058】
図13は、本発明の例示的実施形態によるトロイダル揚力エンジンの例示的図1300である。図12に関連して上で説明したものと同様に、例示的図1300は、トロイダル揚力エンジンの斜視図を示している。支持体1210だけでなく、例えば音響減衰材料(図示せず)を取り囲む取り外し可能な外部容器カバー1205も、図示されている。液圧作動液のための入力ホース1225と出力ホース1230が図示されている。ここでも、本発明の例示的実施形態によれば、トロイダル揚力エンジン1200は、エンドプレート1220の方向から推力1235を出力する。
【0059】
また、図16を参照して以下で詳しく説明される一体型熱交換器1630も、図示されている。図16を参照して以下でさらに詳しく説明されるように、トロイダル揚力エンジンの液圧作動システムに使用するためのブリードバルブ1620とフィルタ1625も、図示されている。
【0060】
図14Aは、本発明の例示的実施形態による、例示的トロイダル揚力エンジン1200の側面図1400Aである。例示的図1400Aには、トロイダル揚力エンジン1200を支持体1210間で軸を中心に回転させることを可能にする手動制御機構1405が示されている。実施形態によっては、手動制御機構1405が使用されてもよい。例えば、トロイダル揚力エンジンが小型ボートや他の船舶に搭載され、推力やプロペラを方向付けることによって手動制御を通常使用して操縦されるような場合である。ただし、代替実施形態では、推力1235は、電子モーター制御システム1215及び/又は手動制御システム1405の両方によって制御されてもよいことに留意されたい。
【0061】
図14Bは、本発明の例示的実施形態による、例示的トロイダル揚力エンジン1200の図1400Bである。図1400Bには、例えば支持体1210に沿って延びる入力液圧ホース1225及び出力液圧ホース1230が示されている。ただし、代替実施形態では、スイベルジョイント(図示せず)に取り付けられた入力ホース1225と出力ホース1230は、通常、タービン起動回路2105(図21)や図16の例示的構成要素1610、1605、1606、及び1607につながっていてもよく、あるいは、代替配置を成すように構成され、支持体1210に直接沿っていなくてもよいことに注意されたい。さらに、代替実施形態では、ホース1225、1230は、支持体1210と一体化されていてもよいし、別の構成を成すように配置されていてもよい。
【0062】
図15は、本発明の例示的実施形態による、例示的トロイダル揚力エンジン1200の例示的断面図1500である。例示的トロイダル揚力エンジン1200は、例えば、2つのタービンアセンブリから構成される。周知のガスタービンと同様に、第1のタービンアセンブリは、例えば、軸流タービン1705、入力ステータ2005及び出口ステータ1905を含む、軸流圧縮機タービンアセンブリからなる。第2のパワータービンアセンブリは、揚力流タービン1710、揚力流入力ステータ1910、及び揚力流出力ステータ2010を含む。例示的トロイダル揚力エンジンにおける揚力は、従来のガスタービンにおける熱と同様の目的を果たすが、石油燃料を燃焼させる法外なコストはかからない。燃料を運ぶのに要するコスト、燃料を得るコスト、及び燃料を運ぶことによる乗り物の性能への悪影響もまた回避される。
【0063】
ガスタービンの動力タービンと同様に、例示的揚力タービンは、軸流タービン1705に動力を供給して、予め圧縮された作動ガスの高速で安定した流れを生成し、トロイダル揚力エンジンを通して再循環して流れるようにする。当業者には理解されるように、複数の軸流段を利用してもよいし、又は遠心圧縮機を利用して同じ結果を達成してもよい。例えば、圧縮ガスは、図19を参照して詳しく後述される入力ステータ1905に供給され、そこでガスは、揚力タービン1710に入る前に予め回転され、方向付けされる。ガスは、揚力タービン1710を通過する際に揚力を発生させた後、揚力タービン1710を出て、図20を参照して詳しく後述される出口ステータ2005に入る。我々の以前の風力発電機の実験から、揚力は、次の2つの異なる原因から構成されることが判明した。すなわち、(1)ニュートン運動量の交換と、(2)ブレードに対する非対称の圧力分布である。例示的トロイダル揚力エンジンは、非対称な部分のみを利用する。動作中は、揚力タービン1710のブレードに非対称の圧力分布が存在し、これにより、例示的密閉固体容器内にガスが収容されていても、揚力を発生させることができる。液圧制御システムの外部ニードルバルブは、揚力タービンのブレードに対する作動流体の迎え角αを常に、すべての速度で自動的に制御及び調整する。この非対称の圧力は、予め回転された向きの流れを利用して、例示的揚力タービンにより生成される。この予め回転された流れの目的は、流体の迎え角であるアルファの取り得る変動を常に最小限に抑えることであり、それによって、可変速ガスタービン及びジェットエンジンで一般的に見られる失速や、流れの中断サージを防止することである。さらに、上述したように、揚力タービンは、例えば、従来のジェットエンジンとは反対の流れを有し、すなわち、ガスの流れに向かって回転する。代替実施形態では、揚力タービン出口ステータ2010は、その機能を軸流圧縮機入力ステータ2005と結合することで、省略されてもよい。さらに、代替実施形態では、軸流出口ステータ1905が、揚力タービン入力ステータ1910と結合されてもよい。
【0064】
例示的トロイダル揚力エンジン1500は、揚力タービン1710のブレードの回転によって作動され、すなわち回転される、液圧ポンプ/モーター1510をさらに含む。遊星歯車ギアボックスアセンブリ1515は、揚力タービン1710と軸流タービン1705の結合体と、ポンプ1510との間の相互接続を提供する。ポンプ1510は、そのバルブプレートに、例えば、トロイダル揚力エンジンの加圧作動流体のための高圧最終動的システム圧力シールを含む。RPMセンサ1505は、ポンプ/モーター1510の速度、ひいては揚力タービンの速度を監視するために使用される。例えば、風速計センサ1512は、作動ガスの速度を監視する。入力及び出力ホース1225、1230は、例えば、トロイダル揚力エンジンにスイベルを介して接続される。液圧作動液は、ポンプ1510によってポンプ輸送され、熱交換器、発電機、エアコン、ヒートポンプなどに動力を供給し、及び/又はニードルバルブ速度制御(図示せず)を介してポンプ輸送される場合がある。ポンプ1510によって動力を与えられる例示的装置については、図21及び図22を参照して以下で詳しく説明される。
【0065】
例えば、トロイダル揚力エンジンは、いったん始動されると、燃料及び/又は更なるエネルギー入力を必要とせず、いかなる種類の粒子も排出しないで推力を生成する。トロイダル揚力エンジンは、熱機関ではないため、熱力学の様々なよく知られた法則は、その動作に適用されない。トロイダル揚力エンジンは、いったん始動された後、揚力タービンの揚抗比(L/D)が1を超え、約150:1に近づくと、動作し続けることになる。
【0066】
図16は、本発明の例示的実施形態による、例示的出力回路1600の概略図である。例示的出力回路1600は、本発明の例示的実施形態によるトロイダル揚力エンジンに使用するための例示的制御システム及び液圧システムの形で説明される。例えば、トロイダル揚力エンジン1500は、トロイダル揚力エンジン1500の動作によって駆動されるポンプ/モーター1510と動作可能に相互接続されている。手動液圧ポンプ1605と、押しボタン式オンオフバルブ1606に例示的に接続されたタンクアセンブリ1607とからなる例示的手動スターターアセンブリは、例えばトロイダル揚力エンジン1500に含まれるタービンの回転を開始させることにより、トロイダル揚力エンジン1500を初期設定する際に使用される。手動ポンプ1605は、予め加圧されたアキュムレータ1610の中に余分な液圧作動液をポンプ輸送するために使用される。例示的トロイダル揚力エンジン1500を始動するには、手動バルブ押しボタン1605を押し下げて、ポンプ/モーター1510を通って流れる液圧作動液の瞬間的パルスを生成する。これによって、揚力タービン1710と軸流タービン1705の結合体は、高速で回転し始める。これによって作動ガスが加速される。作動ガスは、ポンプ/モーターを通って流れた後、バルブを通って手動ポンプ1607の開放タンクに戻る。調節可能な高精度のオリフィスとして機能する例示的ニードルバルブ1640は、システム1500を通る液圧作動液の流量を制御するために使用される。例示的液-液熱交換器1630は、ニードルバルブ1640を通って流れることによって主に発生する液圧作動液から熱を取り出すために使用され、又は使用することができる。例示的に、トロイダル揚力エンジンの推力すなわち出力は、ニードルバルブ1640を使用して制御することができる。推力を減少させるには、ニードルバルブを開く。これにより、作動流体が逆流するまでは、揚力タービンの速度をわずかに上げることができる。推力を増加させるには、ニードルバルブを徐々に閉じる。これにより、揚力タービンの速度は、ガス速度に対して減速される。これにより、揚力タービンブレードの迎え角が大きくなり、そのような操作により揚力タービンが失速して停止するまでは、発生する出力/推力を増加させることができる。このようにして、出力/推力を、ほぼ瞬時に変化させることができる。
【0067】
例示的実施形態では、ニードルバルブ1640は、アクセルペダル、又は他の装置と動作可能に相互接続され、トロイダル揚力エンジンによって動力を与えられる乗り物の運転者は、生成される推力の大きさを変化させることができる場合がある。
【0068】
プリチャージガスアキュムレータ1610は、熱膨張のための容積を提供しつつ閉ループ液圧システムを軽く加圧したり、失われた流体を補充したりするために使用される。プリチャージガスアキュムレータ1610は、手動ポンプ1605及びタンク1607を介して充填される。例示的作動液フィルタ1625は、液圧作動液に汚染物質が混入しないようにするために使用される。ブリードバルブ1620は、閉ループ液圧システムから閉じ込められたガスを排出するために使用される。
【0069】
運転中、トロイダル揚力エンジンは、スターターアセンブリ1605を使用して、流体をトロイダル揚力エンジンのタービンブレードを通して流し、回転を開始させることにより、初期化される。一旦動作に入ると、タービンブレードは、例示的モーター/ポンプ1510を作動させ、例示的モーター/ポンプ1510が、システムを通して流体を移動させる。熱交換器1630からの余分な熱は、システムから追い出されてもよく、余分な熱は、様々な目的に利用されてよい。熱の例示的使用は、家や乗り物を暖めること、温水を生成すること、又は処理システムで使用すること、及び/又は他のシステムに動力を供給することであってもよい。
【0070】
本明細書に記載された例示的出力回路1600は、精密オリフィス/ニードルバルブ1640を使用して、揚力タービン1710の回転速度を作動ガスの速さ/速度に対して制御し、調整することを主目的とする例示的システムである。精密オリフィス/ニードルバルブ1640は、作動ガスがニードルバルブを通過するときに、副産物として熱も生成することに留意されたい。ただし、代替実施形態では、トロイダル揚力エンジンの所望の用途に応じて、異なる構成が使用されてもよいことが明示的に企図されており、例えば、家屋又は他の建物に熱及び/又はグリッド品質の電力を供給するために使用される図21に示されるようなもっと精巧な制御回路が使用されてもよい。例示的制御回路2100は、ニードルバルブ制御の他に、特に優先バルブ2140を有しており、モーター2170に液圧作動液の正確に一定の流れを送り、負荷にかかわらずほぼ一定のRPMで同期発電機2171を駆動することにより、必要な60又は50Hzのローカルグリッド周波数を生成することを主目的としている。したがって、本明細書の説明は、例示的なものとしてのみ捉えるべきである。
【0071】
図17Aは、本発明の例示的実施形態による、揚力タービン1710及び軸流タービン1705の例示的ブレードの正面図1700Aである。
【0072】
図17Bは、本発明の例示的実施形態による、例示的トロイダル揚力エンジン1200のブレードの断面図1700Bである。図17Aと同様に、揚力タービンブレード1710が、軸流ブレード1705と一緒に示されている。流れ1715及び流れ1720は、アセンブリ内の流体の流れの向きを示している。ハウジングの幾何学的形状の変化により、流れ1720の平均速度は、流れ1715の平均速度の約2倍になっている。
【0073】
図18は、本発明の例示的実施形態による、トロイダル揚力エンジンの例示的ブレードの断面図1800である。例示的ブレード1800は、揚力タービン自体を除くトロイダル揚力エンジン内で使用される全てのブレードについての例示的断面を示している。
【0074】
図19Aは、タービン揚力吸気ステータ1910の例示的ブレードの正面図1900Aであり、本発明の例示的実施形態によるものである。図19Bを参照して以下に示される、角度θで出る流れを有する例示的ブレード1910は、流れを予め回転させるためにステータによって使用される。具体的には、流れは、流体が揚力タービンに入るときの特定の迎え角が最大になるように、前もって回転される。ブレード1905は、流体が揚力タービン入力ステータ1910に再び入る前に、流れをまっすぐにして、流体が軸流タービン1705から出るときの流れの損失を最小限に抑えるために使用される。例えば、入力ステータ1900のブレードは、トロイダルエンジンの流体が通過するときに、流れを無理なく回転させ、及び/又は真っすぐにするために静止的に使用される。
【0075】
図19Bは、本発明の例示的実施形態による、角度θを示す入力ステータ1900の例示的ブレードの側面図1900Bである。流れ1915、1920は、本発明の例示的実施形態による、流体の流れの向きを示している。
【0076】
図20Aは、本発明の例示的本体による、出口ステータ2010の例示的ブレードの断面図の側面図2000Aである。例示的出口ステータ2000は、流体が揚力タービンを出るときに流体の流れ2015を真っすぐにするために使用される一組のブレード2010を含む。例示的ブレード2010は、調節可能ではなく、回転しない。例示的ブレード2005は、任意選択で調節可能であってもよく、流体が軸流タービン1705に入るときの流体の迎え角を調節するために使用される。
【0077】
図20Bは、本発明の例示的実施形態による、例示的ブレードの正面図2000Bである。図20Aに関連して上で説明したように、例示的ブレード2010は、静止したままであり、固定されている。ブレード2010は、流れ2015が揚力タービンを出るときに流れ2015を真っすぐにすることにより、流れの損失を最小限に抑える。ブレード2005は、静止したままであるが、流れ2020が軸流タービンブレード1705を通過するときの流れ2020の迎え角を修正するように、任意選択で調節されてもよい。
【0078】
図20Cは、本発明の例示的実施形態による、入力及び出力ステータを有するトロイダル揚力エンジンの軸流タービンのブレード速度図の断面図2000Cである。
【0079】
図20Dは、本発明の例示的実施形態による、従来のガスタービン及び蒸気機関とは異なる、入力ステータ及び出力ステータを有するトロイダル揚力エンジンの揚力タービンのブレード速度図の断面図2000Dであり、作動流体の流れに向かう揚力タービンの回転を示している。
【0080】
図21は、本発明の例示的実施形態による、例示的概略図2100である。図21は、マニホールドアセンブリ2110、流体タービンスターター/リチャージ回路2105、手動ポンプ/タンク動力供給スターター回路2120、及びエネルギー獲得アセンブリ2115と動作可能に相互接続されたトロイダル揚力エンジン1500を示している。トロイダル揚力エンジン1200はさらに、(始動時に)揚力タービンを駆動し、又は(電力の供給時に)揚力タービンによって駆動される例示的モーターポンプ1510と動作可能に相互接続されている。
【0081】
流体リチャージ回路2105は、トロイダル揚力エンジンのスターター回路として使用される。例示的回路2015は、手動ポンプとタンクとバルブの結合体2120を含み、これはアキュムレータ2125をポンプアップするために使用される。代替実施形態では、手動ポンプ2120は、電動ポンプで置き換えられてもよい。ただし、手動ポンプの使用によれば、外部の電力源へのアクセスを必要としない、オフグリッドでの操作が可能になる。
【0082】
マニホールドアセンブリ2110は、例えば、スターターバルブと作動バルブとから構成される。例示的ロジックバルブ2135は、スターター回路に必要であり、小型で高流量の能力を有する。ロジックバルブ2135は、ハンドパームボタンバルブ2130により操作される。優先バルブ2140は、一定の油の流れをモーターに供給することで、発電機2171のモーター2170に動力を供給するために使用される。例示的ニードルバルブ1640は、揚力タービンの速度を制御するために使用され、緊急電源遮断の際には、電磁バルブ2145を作動させると、ニードルバルブ1640はバイパスされる。
【0083】
任意選択の例示的パワーブースト回路2120によれば、ポンプ/モーター2160により流体の作動圧力を自動的に若しくは手動で高めたり、ニードルバルブ2161及び/又は電磁バルブ2150により流体の作動圧力を減らしたりすることが可能になる。これより、トロイダル揚力エンジンの動作中に、流体の密度が調節され、必要であれば、トロイダル揚力エンジンの出力は一桁増減される。
【0084】
エネルギー獲得アセンブリ2115は、システム遮断バルブ2180、例示的グリッド周波数油圧モーター発電機2170、熱交換器2166、システムフィルタ2165、及び調整アキュムレータ2175を含む。
【0085】
図16及び図21で図示説明した回路は、1つの例示的実施形態であることに留意されたい。電力、熱などを生成するため、及び/又はトロイダル揚力エンジンを始動及び制御するために、他の回路が使用されてもよい。したがって、図16及び図21の図示説明は、例示的なものとしてのみ捉えるべきである。
【0086】
図22は、本発明の例示的実施形態による、トロイダル揚力エンジン1200によって動力を供給されている、例えば家屋のような建物2205の例示的図である。運転中、トロイダル揚力エンジン1200は余分な熱を生成し、余分な熱は、温水タンク2210の加熱に利用される。さらに、余分な流れは、家に電力を供給するために電力を生成する発電機2230、及び/又は電気自動車のための充電ポイント2220にエネルギーを供給するために利用されてもよい。本発明の例示的実施形態によれば、単一のトロイダル揚力エンジンは、家屋2205に取り付けられ、家屋に十分な電力を提供するとともに、熱、温水及び/又は空調を提供するようなサイズを有することができる。
【0087】
図23は、本発明の例示的実施形態による、トロイダル揚力エンジンを利用する例示的航空機2300の図である。航空機2300は、プロペラ2305に動力を供給するエンジン2310を利用するものとして例示的に示されている。ただし、本発明の代替実施形態によれば、航空機2300は、例えばマルチエンジン構成を含む様々な異なる構成2310を利用してもよいことに留意されたい。そのため、航空機2300が単一エンジンのプロペラ機であることの説明は、例示的なものとしてのみ捉えるべきである。航空機2300は、一組の従来の翼2315と、複数の座席2320とを有している。トロイダル揚力エンジン1200は、例えば座席2320の後ろに取り付けられ、推力1235を上方、下方、前方又は後方に生成するような向きに配置することができる。例えば、トロイダル揚力エンジン1200は、航空機の前-後軸に垂直な軸に沿って回転可能に取り付けられる場合がある。
【0088】
例示的実施形態では、航空機2360がその航空機に通常必要とされるよりも短い滑走路から離陸できるように、推力1235は、後方に生成される場合がある。さらに、いったん空中に出た後は、トロイダル揚力エンジン1200により提供される推力1235が定常飛行を維持するのに十分である限り、エンジン2310の速度を落とし、及び/又はエンジン2310を完全に停止させることができる。そのような実施形態では、航行中にエンジン2310を運転し続ける必要性をなくすことで、かなりの航空機燃料を節約できる。
【0089】
トロイダル揚力エンジンは、航空機2300がその航空機2300に必要とされるよりも短い滑走路に着陸できるようにするため、推力1235を前方に向けるように、すなわち、逆方向の推力を提供するような向きに配置されてもよい。これによって航空機2300は、緊急滑走路、及び/又は、正規でない、すなわち型にはまらない着陸ゾーンに着陸することができる。これは、例えば、医療後送や他の緊急事態に有用であることが分かっている。例えば、生成される推力の大きさを変更できるように、航空機のスロットルは、ニードルバルブ1640に結合されてもよい。
【0090】
図24は、本発明の例示的実施形態による、複数のトロイダル揚力エンジン1200を利用する例示的発電装置2400の斜視図である。例えば、発電装置2400は、風車のような構成を成して配置される場合がある。トロイダル揚力エンジン1200の各々は、中央支持体2415の周りに取り付けられた支持アーム2420の端部に取り付けられてもよい。回転する支持アームは、離れた場所にある発電機2171、エアコン、ヒートポンプなどを駆動するための比較的大きな液圧ポンプ2610に動力を供給する。アセンブリは、基部2405に固定された支持ポスト2410に取り付けられてもよい。
【0091】
複数(例えば、8個)のトロイダル揚力エンジン1200をこのような配置で取り付け、それらを使用して発電機(図25参照)を回すことにより、約10,000馬力程度、又は他の任意の所望の量の電力を生成し、大型の建物、船舶、潜水艦、中央発電所、あるいは、大型のガス/蒸気タービン、ディーゼルエンジン及び/又は原子力発電所を利用するあらゆる場所に、電力を供給できることが推定されている。本発明の例示的実施形態によるシステムの使用によれば、燃料の節約コストが得られるだけでなく、前記燃料が消費される場所や電力が使用される場所に前記燃料を輸送するために必要な州内電力伝送、ガス/石油パイプライン、及び鉄道/トラック施設の小さくないコストを回避することも可能になる。
【0092】
図25は、本発明の例示的実施形態による、複数のトロイダル揚力エンジンを利用する例示的発電装置の平面図である。ナセルは、支持体2420に作用して回転を誘発するトロイダル揚力エンジン1200の動作によって回転される例示的発電機2660を含む。
【0093】
図26は、本発明の例示的実施形態による、複数のトロイダル揚力エンジン1200を利用する例示的発電装置2600の概略図である。装置2600は、図24図25に関連して上で説明したような、支持アーム2420に取り付けられた複数のトロイダル揚力エンジン1200を含む。例示的制御ユニット2605は、図16に関連して上で説明したものと同様の、ニードルバルブ制御システム1640を含む。残りの回路は、トロイダル揚力エンジンの動作に基づいて電力、熱などを供給するように設計されたエネルギー出力回路である。
【0094】
トロイダル揚力エンジン1200の回転を使用してポンプ2610を駆動することで、優先バルブ2615を通して流体がポンプ輸送され、例示的ローカルグリッド周波数発電機2660が駆動されるとともに、汎用暖房空調システム2620用の例示的ヒートポンプ2625も駆動される。流体は、バルブ2615から最終的に熱交換器2635、フィルタ2640、逆止バルブ2650を通って流れ、アキュムレータ2655を通過し、ポンプ2610への入口まで戻り、閉回路を完成させることができる。
【0095】
装置2600と同様のシステムを使用することで、複数のトロイダル揚力エンジンを使用して、実質的な電力、暖房、冷房などを提供することができる。
【0096】
上記の説明は、様々な例示的実施形態の観点で書かれている。したがって、上記の説明に含まれる、又は添付の図面に示されるすべての事項は、例示的なものとして解釈されるべきであり、限定的な意味ではないことが意図される。具体的には、各様々なサイズ、重なり具合、材料、ブレードの数などは、例示的なものと見るべきであり、本発明の範囲を限定するものではないことに留意されたい。当業者には理解されるように、本発明の原理は、様々な材料、サイズ、及び/又は目的と共に使用されてよい。
【0097】
本明細書には、電気、熱、温水、及び/又は空調を提供する構成要素の様々な説明及び配置が記載されているが、本発明の原理は、多種多様なシステムで使用できることに留意されたい。そのため、構成要素の特定の配置の説明は、例示的なものとしてのみ捉えるべきである。代替実施形態では、停止システムは、温水、電気、若しくは熱、又はそれらの任意の組み合わせのみを提供するように構成されてもよいことに、特に留意されたい。当業者によって理解されるように、本明細書に含まれる説明のための本発明の原理は、特定の設置の所望の目的を満たすために、不要な構成要素が除去されてもよい。

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C
図20D
図21
図22
図23
図24
図25
図26