(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】バーハンドルを備えたストラドルドビークル及び電動操舵装置
(51)【国際特許分類】
B62K 21/00 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
B62K21/00
(21)【出願番号】P 2022570064
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2021046605
(87)【国際公開番号】W WO2022131345
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/047450
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】原 延男
(72)【発明者】
【氏名】坪井 栄和
(72)【発明者】
【氏名】原薗 泰信
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直也
(72)【発明者】
【氏名】小原 大輝
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-232243(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087578(WO,A1)
【文献】特開2003-312503(JP,A)
【文献】特開2017-206170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 21/00
B62D 5/04
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーハンドルを備えた鞍乗型車両であって、
前記バーハンドルを有し、前記鞍乗型車両が直進するときのハンドル中立位置からの前記バーハンドルの最大操作角度が180度よりも小さくなるように、前記バーハンドルを回転可能に支持する車体と、
前記車体に支持され、前記鞍乗型車両の乗員による前記バーハンドルへの操作が機械的に伝達されることにより、前記操作に応じて操舵される操舵輪と、
前記鞍乗型車両の乗員による前記バーハンドルへの操作に応じて、補助操舵力を前記操舵輪に与えるように構成されたアクチュエータと、
前記バーハンドルへの操作に関連する物理量であるバーハンドル操作関連物理量に応じて、前記補助操舵力に関連する物理量である補助操舵力関連物理量を出力することにより、前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御処理を行い、
前記鞍乗型車両の外部から入力された指示、又は前記アクチュエータの動作を制限するための条件が満たされたことに応じて、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方により、前記バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される前記補助操舵力関連物理量が異なるように、前記バーハンドル操作関連物理量と前記補助操舵力関連物理量の関係を変化させるように構成された制御装置と
を備え
、
前記鞍乗型車両の外部から入力された指示、又は前記アクチュエータの動作を制限するための条件が満たされたことに応じて、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方により、前記バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される前記補助操舵力関連物理量が異なるように、前記バーハンドル操作関連物理量と前記補助操舵力関連物理量の関係を変化させるというのは、
前記鞍乗型車両の走行状態に応じて、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方により、前記バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される前記補助操舵力関連物理量が異なるように、前記バーハンドル操作関連物理量と前記補助操舵力関連物理量の関係を変化させることを含まないことを特徴とする、バーハンドルを備えた鞍乗型車両。
(1)前記バーハンドルが操作されても前記補助操舵力関連物理量が出力されないように設定された前記バーハンドル操作関連物理量の範囲を変化させることにより、前記バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される前記補助操舵力関連物理量が異なるようにする。
(2)前記バーハンドル操作関連物理量が大きくなると前記バーハンドル操作関連物理量に応じて出力される前記補助操舵力関連物理量も大きくなる出力増加領域において、前記バーハンドル操作関連物理量と、前記バーハンドル操作関連物理量に応じて出力される前記補助操舵力関連物理量との関係を変化させることにより、前記バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される前記補助操舵力関連物理量が異なるようにする。
【請求項2】
請求項1に記載のバーハンドルを備えた鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、
前記(1)により、前記バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される前記補助操舵力関連物理量が異なるように、前記バーハンドル操作関連物理量と前記補助操舵力関連物理量の関係を変化させるように構成される、バーハンドルを備えた鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバーハンドルを備えた鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、
少なくとも、前記バーハンドルへの操作により入力された前記バーハンドル操作関連物理量が小角度操作対応領域内である時において、前記バーハンドル操作関連物理量と前記補助操舵力関連物理量との前記関係を変化させるように構成され、
前記小角度操作対応領域は、
前記補助操舵力関連物理量の最大出力可能値の半分の値に対応する前記バーハンドル操作関連物理量の値よりも小さい領域であり、前記最大出力可能値は、前記バーハンドルへの操作が入力された時の前記関係において出力可能に設定された前記補助操舵力関連物理量の最大値である、バーハンドルを備えた鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のバーハンドルを備えた鞍乗型車両であって、
前記補助操舵力は、
前記操舵輪に対して、前記バーハンドルへの操作に応じた操舵と同方向又は反対方向に加えられる力である、バーハンドルを備えた鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のバーハンドルを備えた鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記(1)において、
前記バーハンドルが操作されて前記補助操舵力関連物理量の出力が開始されるときの前記バーハンドル操作関連物理量が異なるように、前記バーハンドルが操作されても前記補助操舵力関連物理量が出力されないように設定された前記バーハンドル操作関連物理量の範囲を変化させる、バーハンドルを備えた鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項5に記載のバーハンドルを備えた鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記(1)において、
前記バーハンドルが操作されて前記補助操舵力関連物理量の最大値の半分が出力されるときの前記バーハンドル操作関連物理量が異なるように、前記バーハンドルが操作されても前記補助操舵力関連物理量が出力されないように設定された前記バーハンドル操作関連物理量の範囲を変化させる、バーハンドルを備えた鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載のバーハンドルを備えた鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、
前記鞍乗型車両の外部から入力された指示、又は前記鞍乗型車両の車速に関連する車速関連情報に応じて、前記アクチュエータへの印加上限電圧を取得し、
前記アクチュエータ制御処理において、
前記補助操舵力関連物理量に対応する印加電圧に対して当該取得されたアクチュエータへの印加上限電圧を超えないように制限を加えることで得られる印加電圧を、補助操舵力関連物理量として出力することにより、前記アクチュエータを制御
し、
前記鞍乗型車両の外部から入力された指示に応じて、前記アクチュエータへの印加上限電圧を取得するというのは、
前記鞍乗型車両の走行状態に応じて、前記アクチュエータへの印加上限電圧を取得することを含まない、バーハンドルを備えた鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項7に記載のバーハンドルを備えた鞍乗型車両であって、
前記アクチュエータが回転電機であり、
前記制御装置は、
前記アクチュエータ制御処理において、前記アクチュエータへの印加電圧に基づいて、前記アクチュエータを制御し、
前記アクチュエータへの印加電圧は、前記アクチュエータのNT特性において、アクチュエータ出力がアクチュエータ出力上限を超えないように、前記補助操舵力関連物理量に対応する印加電圧及び前記アクチュエータへの印加上限電圧に基づいて得られ、
前記アクチュエータ出力上限は、前記アクチュエータへの印加上限電圧に対応しており、
前記アクチュエータ出力は、前記補助操舵力関連物理量に対応する印加電圧に対応している、バーハンドルを備えた鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項7に記載のバーハンドルを備えた鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両の車速が高い場合は、前記鞍乗型車両の車速が低い場合と比べて、前記アクチュエータへの印加上限電圧が小さい、バーハンドルを備えた鞍乗型車両。
【請求項10】
バーハンドルを備えた鞍乗型車両に設けられるように構成された電動操舵装置であって、
前記バーハンドルを備えた鞍乗型車両は、
前記バーハンドルを有し、前記鞍乗型車両が直進するときのハンドル中立位置からの前記バーハンドルの最大操作角度が180度よりも小さくなるように、前記バーハンドルを回転可能に支持する車体と、
前記車体に支持され、前記鞍乗型車両の乗員による前記バーハンドルへの操作が機械的に伝達されることにより、前記操作に応じて操舵される操舵輪と
を備えており、
前記電動操舵装置は、
前記鞍乗型車両の乗員による前記バーハンドルへの操作に応じて、補助操舵力を前記操舵輪に与えるように構成されたアクチュエータと、
前記バーハンドルへの操作に関連する物理量であるバーハンドル操作関連物理量に応じて、前記補助操舵力に関連する物理量である補助操舵力関連物理量を出力することにより、前記アクチュエータを制御し、
前記鞍乗型車両の外部から入力された指示、又は前記アクチュエータの動作を制限するための条件が満たされたことに応じて、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方により、前記バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される前記補助操舵力関連物理量が異なるように、前記バーハンドル操作関連物理量と前記補助操舵力関連物理量の関係を変化させる
ように構成された制御装置と
を備え
、
前記鞍乗型車両の外部から入力された指示、又は前記アクチュエータの動作を制限するための条件が満たされたことに応じて、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方により、前記バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される前記補助操舵力関連物理量が異なるように、前記バーハンドル操作関連物理量と前記補助操舵力関連物理量の関係を変化させるというのは、
前記鞍乗型車両の走行状態に応じて、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方により、前記バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される前記補助操舵力関連物理量が異なるように、前記バーハンドル操作関連物理量と前記補助操舵力関連物理量の関係を変化させることを含まないことを特徴とする、電動操舵装置。
(1)前記バーハンドルが操作されても前記補助操舵力関連物理量が出力されないように設定された前記バーハンドル操作関連物理量の範囲を変化させることにより、前記バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される前記補助操舵力関連物理量が異なるようにする。
(2)前記バーハンドル操作関連物理量が大きくなると前記バーハンドル操作関連物理量に応じて出力される前記補助操舵力関連物理量も大きくなる出力増加領域において、前記バーハンドル操作関連物理量と、前記バーハンドル操作関連物理量に応じて出力される前記補助操舵力関連物理量との関係を変化させることにより、前記バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される前記補助操舵力関連物理量が異なるようにする。
【請求項11】
請求項1又は7に記載のバーハンドルを備えた鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両の走行状態というのは、
前記鞍乗型車両の車速、前記鞍乗型車両の加速度、前記鞍乗型車両の減速度、前記鞍乗型車両の動力源がエンジンである場合の当該エンジンの回転数、スロットル開度のうち、少なくとも1つである、バーハンドルを備えた鞍乗型車両。
【請求項12】
請求項10に記載の電動操舵装置であって、
前記鞍乗型車両の走行状態というのは、
前記鞍乗型車両の車速、前記鞍乗型車両の加速度、前記鞍乗型車両の減速度、前記鞍乗型車両の動力源がエンジンである場合の当該エンジンの回転数、スロットル開度のうち、少なくとも1つである、電動操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーハンドルを備えた鞍乗型車両及び当該バーハンドルを備えた鞍乗型車両に用いられる電動操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バーハンドルを備えた鞍乗型車両が知られている。近年、このようなバーハンドルを備えた鞍乗型車両として、例えば、国際公開第2019/87578号に記載のように、鞍乗型車両の乗員によるバーハンドルへの操作に応じた補助操舵力を操舵輪に与える機能、すなわち、操舵補助機能を有するように構成されたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、バーハンドルを備え、操舵補助機能を有するように構成された鞍乗型車両であって、操舵補助機能に関する利便性を向上させることができる鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両は、車体と、操舵輪と、アクチュエータと、制御装置とを備える。車体は、バーハンドルを有する。車体は、鞍乗型車両が直進するときのハンドル中立位置からのバーハンドルの最大操作角度が180度よりも小さくなるように、バーハンドルを回転可能に支持する。操舵輪は、車体に支持される。操舵輪は、鞍乗型車両の乗員によるバーハンドルへの操作が機械的に伝達されることにより、当該操作に応じて操舵される。アクチュエータは、鞍乗型車両の乗員によるバーハンドルへの操作に応じて、補助操舵力を操舵輪に与えるように構成される。制御装置は、バーハンドルへの操作に関連する物理量であるバーハンドル操作関連物理量に応じて、補助操舵力に関連する物理量である補助操舵力関連物理量を出力することにより、アクチュエータを制御するアクチュエータ制御処理を行う。制御装置は、鞍乗型車両の外部から入力された指示、又はアクチュエータの動作を制限するための条件が満たされたことに応じて、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方により、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるように、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させるように構成される。
(1)バーハンドルが操作されても補助操舵力関連物理量が出力されないように設定されたバーハンドル操作関連物理量の範囲を変化させることにより、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるようにする。
(2)バーハンドル操作関連物理量が大きくなるとバーハンドル操作関連物理量に応じて出力される補助操舵力関連物理量も大きくなる出力増加領域において、バーハンドル操作関連物理量と、バーハンドル操作関連物理量に応じて出力される補助操舵力関連物理量との関係を変化させることにより、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるようにする。
【0006】
上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、操舵補助機能についての利便性が向上する。具体的には、以下のとおりである。
【0007】
バーハンドルを備えた鞍乗型車両においては、走行時におけるバーハンドルの操作角度が小さい。そのため、乗員によるハンドル操作の影響が出やすい。上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両においては、乗員によるバーハンドルへの操作が同じであっても、当該操作に応じた補助操舵力を変更することができる。つまり、操舵補助機能のセッティングを変更することができる。その結果、操舵補助機能についての利便性が向上する。
【0008】
本発明の一実施形態において、鞍乗型車両は、例えば、サドル型のシートを備える車両である。鞍乗型車両は、例えば、乗員が鞍にまたがるような状態で乗車する車両である。鞍乗型車両は、例えば、少なくとも1つの前輪と、少なくとも1つの後輪とを備える。つまり、鞍乗型車両は、二輪車に限定されず、前輪又は後輪が左右一対の車輪で構成された三輪車であってもよいし、前輪及び後輪がそれぞれ左右一対の車輪で構成された四輪車であってもよい。鞍乗型車両は、例えば、傾斜車両であってもよい。傾斜車両とは、左旋回時に車両の左方向に傾斜し、右旋回時に車両の右方向に傾斜する車体を備える車両である。鞍乗型車両は、駆動源を備えていてもよい。駆動源は、エンジンであってもよいし、電動機であってもよいし、エンジン及び電動機であってもよい。
【0009】
本発明の一実施形態において、バーハンドルは、例えば、鞍乗型車両の左右方向に連続して延びる単一のバーハンドルであってもよいし、鞍乗型車両の左右方向に離れて配置される左バーハンドル及び右バーハンドルを含んでいてもよい。
【0010】
本発明の一実施形態において、車体は、車体フレームを含む。車体フレームは、複数の部品を組み合わせたフレ-ムであってもよいし、複数の部品を一体的に成形したフレ-ムであってもよい。車体フレームの材料は、アルミ、鉄などの金属であってもよいし、CFRPなどの合成樹脂であってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。車体フレームは、鞍乗型車両の外観部品で構成したモノコック構造であってもよいし、その一部が鞍乗型車両の外観部品を兼ねるセミモノコック構造であってもよい。
【0011】
本発明の一実施形態において、操舵輪は、例えば、車体の上下方向に延びる軸線回りに回動可能な状態で車体に支持される。車体の上下方向に延びる軸線は、車体が直立している状態で、鉛直方向に延びていなくてもよい。車体の上下方向に延びる軸線は、例えば、車体が直立している状態で、鉛直方向に対して車体の後方向に傾斜していてもよい。別の表現をすれば、車体の上下方向に延びる軸線の上端は、車体が直立している状態で、車体の上下方向に延びる軸線の下端よりも後に位置していてもよい。操舵輪は、例えば、車体に直接支持されていてもよいし、車体に間接的に支持されていてもよい。操舵輪が車体に間接的に支持される態様には、例えば、操舵輪と車体との間に配置され操舵輪を車体に支持する懸架装置を用いる態様が含まれる。操舵輪は、前輪であってもよいし、後輪であってもよい。操舵輪は、1つであってもよいし、2つであってもよい。1つの操舵輪を車体に支持する懸架装置は、例えば、テレスコピック式やボトムリンク式のフロントフォークである。2つの操舵輪を車体に支持する懸架装置は、例えば、独立懸架方式のサスペンションである。2つの操舵輪は、例えば、鞍乗型車両の左右方向に並んで配置される。乗員によるバーハンドルへの操作が操舵輪に機械的に伝達される態様には、バーハンドルから操舵輪に力が伝達される経路上にアクチュエータが配置され、乗員がバーハンドルを操作することによってアクチュエータが補助操舵力を出力し、この操舵補助力が操舵輪に伝達される態様を含む。アクチュエータは、アクチュエータが動作していなくても、乗員によるバーハンドルへの操作が操舵輪に伝達されるように、バーハンドルから操舵輪に力が伝達される経路上に配置される。アクチュエータは、例えば、バーハンドルから操舵輪に力が伝達される経路上に配置され、バーハンドルから操舵輪に伝達される力を増加させる機能を有する。
【0012】
本発明の一実施形態において、アクチュエータは、操舵輪に与える補助操舵力を出力できるものであれば、特に限定されない。アクチュエータは、例えば、正転及び逆転可能な電気モータである。アクチュエータは、例えば、乗員によるバーハンドルへの操作を検出するセンサからの信号に基づいて、補助操舵力を操舵輪に与えるものである。乗員によるバーハンドルへの操作を検出するセンサは、例えば、乗員がバーハンドルを操作することで発生するトルクを検出するトルクセンサである。補助操舵力は、例えば、乗員がバーハンドルを操作した方向に操舵輪が操舵されるのを助けるものであってもよい。別の表現をすれば、補助操舵力は、乗員がバーハンドルを操作した方向に操舵輪が操舵されやすくするものであってもよい。補助操舵力は、例えば、乗員がバーハンドルを操作した方向に操舵輪が操舵されるのを妨げるものであってもよい。別の表現をすれば、補助操舵力は、乗員がバーハンドルを操作した方向に操舵輪が操舵されにくくするものであってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、制御装置は、例えば、ECU(Electric Control Unit)である。ECUは、例えば、IC(Integrated Circuit)、電子部品、回路基板等の組み合わせによって実現される。制御装置による制御は、例えば、CPU(Central Processing Unit)が不揮発性のメモリに記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムに従って所定の処理を実行すること等によって実現される。
【0014】
本発明の一実施形態において、バーハンドル操作関連物理量は、例えば、乗員によるバーハンドルへの操作に基づいて発生する物理量である。バーハンドル操作関連物理量は、例えば、バーハンドルが操作されるときの操作角度の単位時間当たりの変化を示す操作角速度であってもよいし、バーハンドルが操作されることで入力される操舵トルクであってもよいし、操舵トルクの周波数であってもよいし、操舵トルクの微分値であってもよい。なお、鞍乗型車両が高速で走行している場合には、操舵トルクとロール角速度が略比例関係にあるため、操舵トルクの代わりに、ロール角速度を用いてもよい。ロール角速度は、バーハンドルを備えた鞍乗型車両の車体の傾斜角の単位時間当たりの変化を示すものである。鞍乗型車両が高速で走行している場合とは、例えば、鞍乗型車両が80km/h以上の車速で走行している場合である。
【0015】
本発明の一実施形態において、補助操舵力関連物理量は、例えば、補助操舵力の出力に用いられる物理量である。補助操舵力関連物理量は、例えば、アクチュエータに供給する電流である。電流を出力する態様には、例えば、当該電流に相当する駆動信号を出力する態様が含まれる。バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させる際には、例えば、バーハンドル操作関連物理量と、補助操舵力関連物理量としての電流を規定する電流指令値との関係を変化させてもよい。上述したバーハンドル操作関連物理量が、制御装置に入力される物理量である一方、補助操舵力関連物理量は、制御装置が生成又は出力する物理量であり、両物理量は、互いに異なる。
【0016】
本発明の一実施形態において、「鞍乗型車両の外部から入力された指示」には、例えば、「鞍乗型車両の乗員によって入力された指示」が含まれる。つまり、制御装置は、鞍乗型車両の乗員によって入力された指示に応じて、(1)及び(2)の少なくとも一方により、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるように、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量との関係を変化させてもよい。乗員が指示を入力する態様には、例えば、鞍乗型車両に設けられた操作手段を乗員が操作することで指示を入力する態様や、鞍乗型車両と通信可能な端末を乗員が操作することで指示を入力する態様が含まれる。アクチュエータの動作を制限するための条件は、例えば、アクチュエータそのものの状態に関する条件であってもよいし、アクチュエータが鞍乗型車両に設けられた電力供給源から供給される電力によって動作する場合には、当該電力供給源の状態に関する条件であってもよい。アクチュエータそのものの状態に関する条件は、例えば、アクチュエータにおいて動作時に発熱する部分の温度が基準となる温度よりも高いか否かである。電力供給源の状態に関する条件は、例えば、制御装置に供給される電圧が基準となる電圧よりも低いか否かである。
【0017】
本発明の一実施形態において、「バーハンドルが操作されても補助操舵力関連物理量が出力されないように設定されたバーハンドル操作関連物理量の範囲」とは、例えば、バーハンドルが操作されても補助操舵力が操舵輪に与えられないようなバーハンドル操作関連物理量の範囲である。「バーハンドルが操作されても補助操舵力関連物理量が出力されないように設定されたバーハンドル操作関連物理量の範囲」を変化させる態様は、例えば、当該範囲の大きさを変化させる態様、つまり、当該範囲を広くしたり狭くしたりする態様であってもよいし、当該範囲をその大きさを変化させずに移動させる態様であってもよい。例えば、バーハンドル操作関連物理量が操舵トルクの周波数である場合、フィルタのカットオフ周波数を変更することで、バーハンドルが操作されても補助操舵力関連物理量が出力されない操舵トルクの周波数域が変更される。「バーハンドルが操作されても補助操舵力関連物理量が出力されないように設定されたバーハンドル操作関連物理量の範囲」を変化させるときには、例えば、バーハンドルが操作されて補助操舵力関連物理量の出力が開始されるときのバーハンドル操作関連物理量が異なるようにしてもよい。これにより、乗員が操舵補助機能のセッティング変更による効果を実感しやすくなる。また、「バーハンドルが操作されても補助操舵力関連物理量が出力されないように設定されたバーハンドル操作関連物理量の範囲」を変化させるときには、例えば、上記に加えて、バーハンドルが操作されて補助操舵力関連物理量の最大値の半分が出力されるときのバーハンドル操作関連物理量が異なるようにしてもよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、「バーハンドル操作関連物理量が大きくなるとバーハンドル操作関連物理量に応じて出力される補助操舵力関連物理量も大きくなる出力増加領域」は、バーハンドル操作関連物理量がとり得る値の範囲の全部又は一部に対して設定されることが可能である。バーハンドル操作関連物理量が出力増加領域内に含まれる時に、バーハンドル操作関連物理量が大きくなると、出力される補助操舵力関連物理量も大きくなる。また、出力増加領域は、例えば、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量との関係の変更前後の両方に存在する。バーハンドル操作関連物理量がとり得る値の範囲のうち、出力増加領域に相当するバーハンドル操作関連物理量の範囲は、上記関係の変更前後で異なっていてもよく、同じであってもよい。変更後における出力増加領域に相当するバーハンドル操作関連物理量の範囲が、変更前における当該範囲よりも大きくなる場合において、変更後に、変更前と同じ大きさの補助操舵力関連物理量を出力するためには、変更前よりも大きなバーハンドル操作関連物理量が必要になる。上記出力増加領域における補助操舵力関連物理量の範囲、つまり、上記出力増加領域において補助操舵力関連物理量がとり得る値の範囲は、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させる前と後で同じであってもよく、異なっていてもよい。上記出力増加領域においてバーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量との関係を変化させる態様には、例えば、「出力増加領域の始点に相当するバーハンドル操作関連物理量を変化させずに、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させる」態様が含まれる。上記出力増加領域の始点に相当するバーハンドル操作関連物理量は、例えば、バーハンドルが操作されて補助操舵力関連物理量の出力が開始されるときのバーハンドル操作関連物理量である。「出力増加領域の始点に相当するバーハンドル操作関連物理量を変化させずに、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させる」態様には、例えば、制御装置に入力されたバーハンドル操作関連物理量に対応する補助操舵力関連物理量に適当な係数を乗算する態様が含まれる。バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させる態様は、例えば、「バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させることで、補助操舵力関連物理量の出力をゼロにする」態様を含まない。
【0019】
本発明の一実施形態において、「バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるように、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量との関係を変化させる態様」は、例えば、「入力されるバーハンドル操作関連物理量の値(或いは、大きさ)が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量の値(或いは、大きさ)が異なるように、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量との関係を変化させる態様」である。本発明の一実施形態では、バーハンドル操作関連物理量(入力)と補助操舵力関連物理量(出力)との関係の変化により、出力される補助操舵力関連物理量は変化するので、出力される補助操舵力関連物理量は、当該関係の変化に起因する変化を含んでいる。出力される補助操舵力関連物理量が、上記関係以外の要素(上限値や下限値等)のみによって変化する態様自体は、当該関係の変化に起因する変化を全く含まないので、本発明に該当しない。出力される補助操舵力関連物理量が、上記関係以外の要素による変化だけでなく、上記関係の変化に起因する変化も含む態様は、本発明に該当する。
【0020】
本発明の一実施形態において、「制御装置が(2)により、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるように、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量との関係を変化させる態様」は、例えば、バーハンドル操作関連物理量が所定の値以上では、バーハンドル操作関連物理量に対応する補助操舵力関連物理量が特定の値に限定される態様を含まない。つまり、「制御装置が(2)により、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるように、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量との関係を変化させる態様」というのは、例えば、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させる前と後の両方に存在する出力増加領域において、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるようにする態様を含む。
【0021】
本発明の一実施形態において、「バーハンドルが操作されても補助操舵力関連物理量が出力されないように設定されたバーハンドル操作関連物理量の範囲を変化させる」ときや、「バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させる」ときには、例えば、鞍乗型車両の走行状態が参照されてもよい。この場合、鞍乗型車両の走行状態に応じて操舵補助機能を適切にセッティングすることができる。鞍乗型車両の走行状態は、例えば、鞍乗型車両の車速であってもよいし、鞍乗型車両の加速度や減速度であってもよいし、鞍乗型車両の動力源がエンジンである場合には、当該エンジンの回転数であってもよいし、スロットル開度であってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両において、制御装置は、前記(1)により、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるように、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させるように構成されていてもよい。
【0023】
本発明の一実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両において、制御装置は、少なくとも、バーハンドルへの操作により入力されたバーハンドル操作関連物理量が小角度操作対応領域内である時において、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させるように構成されていてもよい。小角度操作対応領域は、補助操舵力関連物理量の最大出力可能値の半分の値に対応するバーハンドル操作関連物理量の値よりも小さい領域である。最大出力可能値は、バーハンドルへの操作が入力された時の前記関係において出力可能に設定された補助操舵力関連物理量の最大値である。
【0024】
上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、操舵補助機能についての利便性がさらに向上する。具体的には、以下のとおりである。
【0025】
バーハンドルを備えた鞍乗型車両においては、走行時におけるバーハンドルの操作角度が小さい。そのため、補助操舵力関連物理量の最大出力可能値の半分の値に対応するバーハンドル操作関連物理量の値よりも小さい領域で、バーハンドルを操作することになる。つまり、上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、走行時においてバーハンドルを操作する小角度操作対応領域内で、操舵補助機能のセッティングを変更することができる。その結果、操舵補助機能についての利便性が向上する。
【0026】
本発明の一実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両において、補助操舵力は、操舵輪に対して、バーハンドルへの操作に応じた操舵と同方向又は反対方向に加えられる力である。
【0027】
本発明の一実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両において、制御装置は、前記(1)において、バーハンドルが操作されて補助操舵力関連物理量の出力が開始されるときのバーハンドル操作関連物理量が異なるように、バーハンドルが操作されても補助操舵力関連物理量が出力されないように設定されたバーハンドル操作関連物理量の範囲を変化させてもよい。
【0028】
上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、バーハンドルが操作されて補助操舵力関連物理量の出力が開始されるときのバーハンドル操作関連物理量が異なるようになるので、乗員が操舵補助機能のセッティング変更を実感しやすくなる。
【0029】
本発明の一実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両において、制御装置は、前記(1)において、バーハンドルが操作されて補助操舵力関連物理量の最大値の半分が出力されるときのバーハンドル操作関連物理量が異なるように、バーハンドルが操作されても補助操舵力関連物理量が出力されないように設定されたバーハンドル操作関連物理量の範囲を変化させてもよい。
【0030】
上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、バーハンドルが操作されて補助操舵力関連物理量の最大値の半分が出力されるときのバーハンドル操作関連物理量が異なるようになるため、走行時においてバーハンドルを操作する角度範囲内で、操舵補助機能のセッティングを全体的に変更することができる。
【0031】
本発明の一実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両において、
制御装置は、
鞍乗型車両の外部から入力された指示、又は鞍乗型車両の車速に関連する車速関連情報に応じて、アクチュエータへの印加上限電圧を取得し、
アクチュエータ制御処理において、
補助操舵力関連物理量に対応する印加電圧に対して当該取得されたアクチュエータへの印加上限電圧を超えないように制限を加えることで得られる印加電圧を、補助操舵力関連物理量として出力することにより、アクチュエータを制御してもよい。
【0032】
上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、アクチュエータへの印加電圧が印加上限電圧を超えないように制限される。これにより、例えば、バーハンドルへの操作が同じであっても、アクチュエータの出力が小さくなったり、アクチュエータが動作しないことがある。上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両においては、乗員によるバーハンドルへの操作が同じであっても、当該操作に応じた補助操舵力を変更することができる。つまり、操舵補助機能のセッティングを変更することができる。その結果、操舵補助機能についての利便性が向上する。
【0033】
制御装置は、アクチュエータ制御処理で使うために、アクチュエータへの印加上限電圧を取得する。印加電圧は、例えば、デューティ比によって示されてもよい。印加電圧は、例えば、デューティ比を変更することにより、変化させることができる。車速関連情報は、例えば、車速そのものであってもよいし、シフトポジションであってもよいし、シフトポジションとエンジン回転数であってもよい。
【0034】
本発明の一実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両において、
アクチュエータが回転電機であり、
制御装置は、
アクチュエータ制御処理において、アクチュエータへの印加電圧に基づいて、アクチュエータを制御し、
アクチュエータへの印加電圧は、アクチュエータのNT特性において、アクチュエータ出力がアクチュエータ出力上限を超えないように、補助操舵力関連物理量に対応する印加電圧及びアクチュエータへの印加上限電圧に基づいて得られ、
アクチュエータ出力上限は、アクチュエータへの印加上限電圧に対応しており、
アクチュエータ出力は、補助操舵力関連物理量に対応する印加電圧に対応していてもよい。
【0035】
上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、アクチュエータ出力がアクチュエータ出力上限を超えない。これにより、例えば、バーハンドルへの操作が同じであっても、アクチュエータの動作が異なることがある。つまり、乗員によるバーハンドルへの操作が同じであっても、当該操作に応じた補助操舵力を変更できる。そのため、操舵補助機能のセッティングを変更できる。その結果、操舵補助機能についての利便性が向上する。
【0036】
本発明の一実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両において、鞍乗型車両の車速が高い場合は、鞍乗型車両の車速が低い場合と比べて、アクチュエータへの印加上限電圧が小さくてもよい。
【0037】
上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、車速が高い場合には、車速が低い場合と比べて、アクチュエータの動作が制限されるようにすることができる。そのため、例えば、車速が高い場合には、バーハンドルの操作角速度を小さくしつつ、車速が低い場合には、バーハンドルの操作角速度を大きくすることができる。
【0038】
本発明の他の実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両は、以下の構成を備える。
バーハンドルを備えた鞍乗型車両であって、
前記バーハンドルを回転可能に支持する車体と、
前記車体に支持され、前記鞍乗型車両の乗員による前記バーハンドルへの操作が機械的に伝達されることにより、前記操作に応じて操舵される操舵輪と、
前記鞍乗型車両の乗員による前記バーハンドルへの操作に応じて、補助操舵力を前記操舵輪に与えるように構成されたアクチュエータと、
前記バーハンドルへの操作に関連する物理量であるバーハンドル操作関連物理量に応じて、前記補助操舵力に関連する物理量である補助操舵力関連物理量を出力することにより、前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御処理を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記鞍乗型車両の外部から入力された指示、又は前記鞍乗型車両の車速に関連する車速関連情報に応じて、前記アクチュエータへの印加上限電圧を取得し、
前記アクチュエータ制御処理において、
前記補助操舵力関連物理量に対応する印加電圧に対して当該取得されたアクチュエータへの印加上限電圧を超えないように制限を加えることで得られる印加電圧を、補助操舵力関連物理量として出力することにより、前記アクチュエータを制御する。
【0039】
本発明の他の実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、アクチュエータへの印加電圧が印加上限電圧を超えないように制限される。これにより、例えば、バーハンドルへの操作が同じであっても、アクチュエータの出力が小さくなったり、アクチュエータが動作しないことがある。上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両においては、乗員によるバーハンドルへの操作が同じであっても、当該操作に応じた補助操舵力を変更することができる。つまり、操舵補助機能のセッティングを変更することができる。その結果、操舵補助機能についての利便性が向上する。
【0040】
本発明の他の実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両は、例えば、以下の構成を備える。
前記アクチュエータが回転電機であり、
前記制御装置は、
前記アクチュエータ制御処理において、前記アクチュエータへの印加電圧に基づいて、前記アクチュエータを制御し、
前記アクチュエータへの印加電圧は、前記アクチュエータのNT特性において、アクチュエータ出力がアクチュエータ出力上限を超えないように、前記補助操舵力関連物理量に対応する印加電圧及び前記アクチュエータへの印加上限電圧に基づいて得られ、
前記アクチュエータ出力上限は、前記アクチュエータへの印加上限電圧に対応しており、
前記アクチュエータ出力は、前記補助操舵力関連物理量に対応する印加電圧に対応している。
【0041】
上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、アクチュエータ出力がアクチュエータ出力上限を超えない。これにより、例えば、バーハンドルへの操作が同じであっても、アクチュエータの動作が異なることがある。つまり、乗員によるバーハンドルへの操作が同じであっても、当該操作に応じた補助操舵力を変更できる。そのため、操舵補助機能のセッティングを変更できる。その結果、操舵補助機能についての利便性が向上する。
【0042】
本発明の他の実施形態に係るバーハンドルを備えた鞍乗型車両は、例えば、以下の構成を備える。
前記鞍乗型車両の車速が高い場合は、前記鞍乗型車両の車速が低い場合と比べて、前記アクチュエータへの印加上限電圧が小さい。
【0043】
上記バーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、車速が高い場合には、車速が低い場合と比べて、アクチュエータの動作が制限されるようにすることができる。そのため、例えば、車速が高い場合には、バーハンドルの操作角速度を小さくしつつ、車速が低い場合には、バーハンドルの操作角速度を大きくすることができる。
【0044】
本発明の一実施形態に係る電動操舵装置は、バーハンドルを備えた鞍乗型車両に設けられるように構成された電動操舵装置である。バーハンドルを備えた鞍乗型車両は、車体と、操舵輪とを備えている。車体は、バーハンドルを有する。車体は、鞍乗型車両が直進するときのハンドル中立位置からのバーハンドルの最大操作角度が180度よりも小さくなるように、バーハンドルを回転可能に支持する。操舵輪は、車体に支持される。操舵輪は、鞍乗型車両の乗員によるバーハンドルへの操作が機械的に伝達されることにより、当該操作に応じて操舵される。電動操舵装置は、アクチュエータと、制御装置とを備える。アクチュエータは、鞍乗型車両の乗員によるバーハンドルへの操作に応じて、補助操舵力を操舵輪に与えるように構成される。制御装置は、バーハンドルへの操作に関連する物理量であるバーハンドル操作関連物理量に応じて、補助操舵力に関連する物理量である補助操舵力関連物理量を出力することにより、アクチュエータを制御する。制御装置は、鞍乗型車両の外部から入力された指示、又はアクチュエータの動作を制限するための条件が満たされたことに応じて、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方により、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるように、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させるように構成される。
(1)バーハンドルが操作されても補助操舵力関連物理量が出力されないように設定されたバーハンドル操作関連物理量の範囲を変化させることにより、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるようにする。
(2)バーハンドル操作関連物理量が大きくなるとバーハンドル操作関連物理量に応じて出力される補助操舵力関連物理量も大きくなる出力増加領域において、バーハンドル操作関連物理量と、バーハンドル操作関連物理量に応じて出力される補助操舵力関連物理量との関係を変化させることにより、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるようにする。
【0045】
上記電動操舵装置が設けられた、バーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、操舵補助機能についての利便性が向上する。具体的には、以下のとおりである。
【0046】
バーハンドルを備えた鞍乗型車両においては、走行時におけるバーハンドルの操作角度が小さい。そのため、乗員によるハンドル操作の影響が出やすい。上記電動操舵装置が設けられた、バーハンドルを備えた鞍乗型車両においては、乗員によるバーハンドルへの操作が同じであっても、当該操作に応じた補助操舵力を変更することができる。つまり、操舵補助機能のセッティングを変更することができる。その結果、操舵補助機能についての利便性が向上する。
【0047】
本発明の他の実施形態に係る電動操舵装置は、例えば、以下の構成を備える。
バーハンドルを備えた鞍乗型車両に設けられるように構成された電動操舵装置であって、
前記バーハンドルを備えた鞍乗型車両は、
前記バーハンドルを回転可能に支持する車体と、
前記車体に支持され、前記鞍乗型車両の乗員による前記バーハンドルへの操作が機械的に伝達されることにより、前記操作に応じて操舵される操舵輪と
を備えており、
前記電動操舵装置は、
前記鞍乗型車両の乗員による前記バーハンドルへの操作に応じて、補助操舵力を前記操舵輪に与えるように構成されたアクチュエータと、
前記バーハンドルへの操作に関連する物理量であるバーハンドル操作関連物理量に応じて、前記補助操舵力に関連する物理量である補助操舵力関連物理量を出力することにより、前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御処理を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記鞍乗型車両の外部から入力された指示、又は前記鞍乗型車両の車速に関連する車速関連情報に応じて、前記アクチュエータへの印加上限電圧を取得し、
前記アクチュエータ制御処理において、
前記補助操舵力関連物理量に対応する印加電圧に対して当該取得されたアクチュエータへの印加上限電圧を超えないように制限を加えることで得られる印加電圧を、補助操舵力関連物理量として出力することにより、前記アクチュエータを制御する。
【0048】
上記電動操舵装置が設けられた、バーハンドルを備えた鞍乗型車両によれば、操舵補助機能についての利便性が向上する。具体的には、以下のとおりである。
【0049】
上記電動操舵装置によれば、アクチュエータへの印加電圧が印加上限電圧を超えないように制限される。これにより、例えば、バーハンドルへの操作が同じであっても、アクチュエータの出力が小さくなったり、アクチュエータが動作しないことがある。上記電動操舵装置が設けられた、バーハンドルを備えた鞍乗型車両においては、乗員によるバーハンドルへの操作が同じであっても、当該操作に応じた補助操舵力を変更することができる。つまり、操舵補助機能のセッティングを変更することができる。その結果、操舵補助機能についての利便性が向上する。
【0050】
この発明の上述の目的及びその他の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。本明細書にて使用される場合、用語「及び/又は(and/or)」は1つの、又は複数の関連した列挙されたアイテム(items)のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」、「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、多数の技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせの全てを繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び特許請求の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面又は説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、操舵補助機能についての利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の実施形態によるバーハンドルを備えた鞍乗型車両の概略構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態によるバーハンドルを備えた鞍乗型車両が備える電動操舵装置の一例を概念的に示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す電動操舵装置の制御装置が実行する制御であって、バーハンドル操作関連物理量の値(或いは、大きさ)が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量の値(或いは、大きさ)が異なるように、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させる制御を説明するための説明図である。
【
図4】本発明の他の実施形態による電動操舵装置の一例を概念的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態によるバーハンドルを備えた鞍乗型車両の詳細について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、あくまでも一例である。本発明は、以下に説明する実施形態によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0054】
図1を参照しながら、本発明の実施形態によるバーハンドルを備えた鞍乗型車両10(以下、単に、鞍乗型車両10と称する)について説明する。鞍乗型車両10は、車体20と、複数の車輪30と、電動操舵装置40とを備える。
【0055】
車体20は、バーハンドル22を有する。車体20は、鞍乗型車両10が直進するときのハンドル中立位置からのバーハンドル22の最大操作角度が180度よりも小さくなるように、バーハンドル22を回転可能に支持する。車体20は、鞍乗型車両10が左方向Lに旋回するときに左方向Lに傾斜し、鞍乗型車両10が右方向Rに旋回するときに右方向Rに傾斜する。なお、鞍乗型車両10における各種方向は、鞍乗型車両10のシートに着座した乗員を基準にしている。
【0056】
車体20は、複数の車輪30を支持する。複数の車輪30は、鞍乗型車両10が左方向Lに旋回するときには車体20とともに左方向Lに傾斜し、鞍乗型車両10が右方向Rに旋回するときには車体20とともに右方向Rに傾斜する。複数の車輪30は、操舵輪としての前輪30Fと、駆動輪としての後輪30Rとを含む。つまり、操舵輪としての前輪30Fは、車体20に支持される。操舵輪としての前輪30Fは、鞍乗型車両10の乗員によるバーハンドル22への操作が機械的に伝達されることにより、当該操作に応じて操舵される。なお、駆動輪としての後輪30Rには、車体20が支持するパワーユニット(図示せず)の動力が伝達されることで回転し、それによって、鞍乗型車両10が走行する。
【0057】
電動操舵装置40は、アクチュエータ42と、制御装置44とを備える。アクチュエータ42は、鞍乗型車両10の乗員によるバーハンドル22への操作に応じて、補助操舵力を前輪30Fに与えるように構成される。制御装置44は、バーハンドル操作関連物理量に応じて、補助操舵力関連物理量を出力することにより、アクチュエータ42を制御する。バーハンドル操作関連物理量は、バーハンドル22への操作に関連する物理量である。補助操舵力関連物理量は、補助操舵力に関連する物理量である。補助操舵力は、前輪30Fに対して、バーハンドル22への操作に応じた操舵と同方向又は反対方向に加えられる力である。なお、
図1では、アクチュエータ42と制御装置44の両方がバーハンドル22の近くに設けられているが、例えば、制御装置44は、バーハンドル22から離れた位置に設けられていてもよい。
【0058】
制御装置44は、鞍乗型車両10の外部から入力された指示、又はアクチュエータ42の動作を制限するための条件が満たされたことに応じて、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方により、バーハンドル操作関連物理量の値(或いは、大きさ)が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量の値(或いは、大きさ)が異なるように、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させるように構成される。
(1)バーハンドル22が操作されても補助操舵力関連物理量が出力されないように設定されたバーハンドル操作関連物理量の範囲を変化させることにより、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるようにする。
(2)バーハンドル操作関連物理量が大きくなるとバーハンドル操作関連物理量に応じて出力される補助操舵力関連物理量も大きくなる出力増加領域において、バーハンドル操作関連物理量と、バーハンドル操作関連物理量に応じて出力される補助操舵力関連物理量との関係を変化させることにより、バーハンドル操作関連物理量が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量が異なるようにする。
【0059】
制御装置44は、上記(1)により、バーハンドル操作関連物理量の値(或いは、大きさ)が同じであっても、出力される補助操舵力関連物理量の値(或いは、大きさ)が異なるように、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させるように構成されていてもよい。制御装置44は、上記(1)において、バーハンドル22が操作されて補助操舵力関連物理量の出力が開始されるときのバーハンドル操作関連物理量の値(或いは、大きさ)が異なるように、バーハンドルが操作されても補助操舵力関連物理量が出力されないように設定されたバーハンドル操作関連物理量の範囲を変化させてもよい。制御装置44は、上記(1)において、バーハンドル22が操作されて補助操舵力関連物理量の最大値の半分が出力されるときのバーハンドル操作関連物理量の値(或いは、大きさ)が異なるように、バーハンドル22が操作されても補助操舵力関連物理量が出力されないように設定されたバーハンドル操作関連物理量の範囲を変化させてもよい。
【0060】
制御装置44は、少なくとも、バーハンドルへの操作により入力されたバーハンドル操作関連物理量が小角度操作対応領域内である時において、バーハンドル操作関連物理量と補助操舵力関連物理量の関係を変化させるように構成されていてもよい。小角度操作対応領域は、例えば、補助操舵力関連物理量の最大出力可能値の半分の値に対応するバーハンドル操作関連物理量の値よりも小さい領域である。最大出力可能値は、バーハンドルへの操作が入力された時の前記関係において出力可能に設定された補助操舵力関連物理量の最大値である。
【0061】
鞍乗型車両10によれば、操舵補助機能についての利便性が向上する。具体的には、以下のとおりである。
【0062】
鞍乗型車両10においては、走行時におけるバーハンドル22の操作角度が小さい。そのため、乗員によるハンドル操作の影響が出やすい。鞍乗型車両10においては、乗員によるバーハンドル22への操作が同じであっても、当該操作に応じた補助操舵力を変更することができる。つまり、操舵補助機能のセッティングを変更することができる。その結果、操舵補助機能についての利便性が向上する。
【0063】
[電動操舵装置の実施形態]
続いて、
図2及び
図3を参照しながら、電動操舵装置40の実施形態について説明する。なお、
図2及び
図3は、電動操舵装置40の一例を示すものである。電動操舵装置40は、
図2及び
図3に示すものに限定されない。
【0064】
図2を参照して、制御装置44の機能を説明する。
図2の(A)に示すように、制御装置44は、乗員によるバーハンドル22の操作、つまり、入力に応じて、アクチュエータ42に出力する電流を生成する。制御装置44は、バーハンドル操作関連物理量に応じて、補助操舵力関連物理量を出力することにより、アクチュエータ42を制御するアクチュエータ制御処理を行う。
【0065】
入力されるのは、乗員によるバーハンドル22の操作に関連するバーハンドル操作関連物理量である。バーハンドル操作関連物理量は、例えば、適当なセンサによって検出される。センサによって検出されたバーハンドル操作関連物理量が、制御装置44に入力される。入力には、例えば、バーハンドル22が操舵軸線回りに回転する速度(以下、ステア角速度)や、乗員によるバーハンドル22の操作に起因して発生するトルク(以下、操舵トルク)がある。生成される電流は、補助操舵力関連物理量に相当する。
【0066】
アクチュエータ42に出力する電流を生成する際には、ハイパスフィルタとマップが用いられる。なお、
図2の(A)では、ハイパスフィルタが必ず用いられるように記載されているが、入力の種類によっては、ハイパスフィルタが用いられなくてもよい。ハイパスフィルタが適用される周波数、つまり、ハイパスフィルタによるカットオフの対象となる周波数は、例えば、操舵トルクの周波数である。操舵トルクにハイパスフィルタを適用すれば、操舵トルクの微分値が得られる。操舵トルクの微分値は、操舵トルクを時間で微分したものであり、操舵トルクの変化を示す。なお、マップの代わりに、テーブルや数式を用いてもよい。
【0067】
制御装置44は、所定の条件が満たされた場合に、入力が同じであってもアクチュエータ42に出力する電流が異なるように、ハイパスフィルタのカットオフ周波数、不感帯幅及びゲインのうち、少なくとも1つを変更する。なお、不感帯幅とは、入力があっても出力されないように設定された入力の幅(入力値の範囲)である。ゲインとは、入力に対する出力の比である。
【0068】
ハイパスフィルタのカットオフ周波数の変更により、アクチュエータ42の使用頻度が変わる。つまり、アクチュエータ42に電流を出力する回数が変化する。つまり、ハイパスフィルタのカットオフ周波数を変更することで、セッティングを変更することができる。カットオフ周波数が高くなると、乗員による入力へのアシストは小さくなり、カットオフ周波数が低くなると、乗員による入力へのアシストは大きくなる。
図3の(A)は、ハイパスフィルタのカットオフ周波数を変更する態様の一例を示す。
【0069】
不感帯幅の変更により、アクチュエータ42の使用頻度が変わる。つまり、アクチュエータ42に電流を出力する回数が変化する。また、入力が同じ場合であっても、アクチュエータ42に出力する電流を変化させることができる。つまり、不感帯幅を変更することで、セッティングを変更することができる。
図3の(B)は、不感帯幅を変更する態様の一例を示す。
【0070】
ゲインの変更により、入力が同じ場合であっても、アクチュエータ42に出力する電流を変化させることができる。つまり、ゲインを変更することで、セッティングを変更することができる。
図3の(C)は、ゲインを変更する態様の一例を示す。
【0071】
図2を参照して、制御装置44の機能について、さらに説明する。なお、
図2の(B)において、モータ421は、アクチュエータ42の一例である。
図2の(B)に示すように、制御装置44は、ステアダンパ機能部441と、ステアアシスト機能部442と、トルク微分機能部443と、電流指令値生成部444と、電流偏差生成部445と、モータ出力制御部446とを含む。
【0072】
ステアダンパ機能部441は、入力されるステア角速度に応じて、乗員がバーハンドル22を操作し難くなるような電流指令値を生成する。つまり、ステアダンパ機能部441は、入力されるステア角速度に応じて、ダンパ機能成分に係る電流指令値を生成する。ダンパ機能成分に係る電流指令値を生成する際には、例えば、入力されるステア角速度とマップが用いられる。所定の条件が満たされた場合、不感帯幅又はゲインが変更される。これにより、ダンパ機能のセッティングが変更される。その結果、モータ421に出力する電流のうち、ダンパ機能成分に係る電流指令値に対応する電流が変化する。
【0073】
ステアアシスト機能部442は、入力される操舵トルクに応じて、乗員によるバーハンドル22の操作(つまり、操舵)をアシストするような電流指令値を生成する。つまり、ステアアシスト機能部442は、入力される操舵トルクに応じて、アシスト機能成分に係る電流指令値を生成する。アシスト機能成分に係る電流指令値を生成する際には、例えば、入力される操舵トルクとマップが用いられる。所定の条件が満たされた場合、不感帯幅又はゲインが変更される。これにより、アシスト機能のセッティングが変更される。その結果、モータ421に出力する電流のうち、アシスト機能成分に係る電流指令値に対応する電流が変化する。
【0074】
トルク微分機能部443は、入力される操舵トルクが変化した場合に、乗員によるバーハンドル22の操作(つまり、操舵)をアシストするような電流指令値を生成する。つまり、トルク微分機能部443は、操舵トルクの微分値に応じて、トルク微分機能成分に係る電流指令値を生成する。トルク微分機能成分に係る電流指令値を生成する際には、例えば、入力される操舵トルクと、ハイパスフィルタと、マップが用いられる。具体的には、入力される操舵トルクにハイパスフィルタを適用して操舵トルクの微分値を生成した後、当該生成した操舵トルクの微分値とマップが用いられる。所定の条件が満たされた場合、ハイパスフィルタのカットオフ周波数が変更されるとともに、不感帯幅又はゲインが変更される。これにより、トルク微分機能のセッティングが変更される。その結果、モータ421に出力する電流のうち、トルク微分機能成分に係る電流指令値に対応する電流が変化する。
【0075】
ここで、ステアダンパ機能部441、ステアアシスト機能部442及びトルク微分機能部443の各々には、エンジン回転数と車速が入力される。エンジン回転数と車速は、ステアダンパ機能、ステアアシスト機能及びトルク微分機能のセッティング変更に用いられる。ステアダンパ機能部441、ステアアシスト機能部442及びトルク微分機能部443の各々には、エンジン回転数と車速の他に、加速度や減速度が入力されてもよい。加速度や減速度も、ステアダンパ機能、ステアアシスト機能及びトルク微分機能のセッティング変更に用いられる。例えば、加速時には乗員による入力へのアシストを小さくし、減速時には乗員による入力へのアシストを大きくしてもよい。
【0076】
電流指令値生成部444は、ステアダンパ機能部441、ステアアシスト機能部442及びトルク微分機能部443のそれぞれが生成した電流指令値に基づいて、電流指令値を生成する。生成される電流指令値は、例えば、ダンパ機能成分に係る電流指令値に対応する電流、アシスト機能成分に係る電流指令値に対応する電流、及びトルク微分機能成分に係る電流指令値に対応する電流を合算することで生成される電流に対応する。
【0077】
電流偏差生成部445は、電流指令値生成部444が生成した電流指令値と、電流観測値とに基づいて、電流偏差を生成する。電流観測値は、モータ421に実際に流れている電流を観測して取得したものである。
【0078】
モータ出力制御部446は、電流偏差生成部445が生成した電流偏差に基づいて、モータ421の駆動信号を生成する。モータ421は、モータ出力制御部446が生成した駆動信号により、駆動される。
【0079】
このような電動操舵装置40が設けられた鞍乗型車両10によれば、操舵補助機能についての利便性が向上する。具体的には、以下のとおりである。
【0080】
鞍乗型車両10においては、走行時におけるバーハンドル22の操作角度が小さい。そのため、乗員によるハンドル操作の影響が出やすい。電動操舵装置40が設けられた鞍乗型車両10においては、乗員によるバーハンドル22への操作が同じであっても、当該操作に応じた補助操舵力を変更することができる。つまり、操舵補助機能のセッティングを変更することができる。その結果、操舵補助機能についての利便性が向上する。
【0081】
図4を参照しながら、電動操舵装置の他の実施形態について説明する。他の実施形態に係る電動操舵装置40Aは、
図4(A)に示すように、電動操舵装置40と比べて、制御装置44の代わりに、制御装置44Aを備える。制御装置44Aは、制御装置44と比べて、モータ出力制御部446の代わりに、モータ出力制御部446Aを含む。
【0082】
図4(B)を参照しながら、説明する。モータ出力制御部446Aは、モータ421の電流指令値に基づいて、モータ421への印加電圧を得る。モータ出力制御部446Aは、モータ421への印加電圧に基づいて、デューティ比を計算する。このデューティ比は、そのまま使ってもよいし、変更してもよい。具体的には、モータ出力制御部446Aは、車速に応じて、デューティ比の上限を設定する。計算して得られたデューティ比が、設定されたデューティ比の上限を超える場合には、設定されたデューティ比の上限を超えないように、デューティ比が変更される。変更後のデューティ比は、モータ421を駆動させないものであってもよい。このようにして変更されたデューティ比、或いは、変更しなかったデューティ比(計算して得られたデューティ比そのもの)により、電圧パルスが生成される。当該電圧パルスがモータ421に供給されることにより、モータ421が駆動する。つまり、制御装置44Aは、アクチュエータ制御処理において、モータ421への印加電圧に基づいて、モータ421を制御する。
【0083】
図4(C)を参照しながら、モータ421への印加電圧について説明する。
モータ421への印加電圧は、モータ421のNT特性(
図4(C)参照)において、モータ出力がモータ出力上限を超えないように、モータ421の電流指令値に対応する印加電圧及びモータ421への印加上限電圧に基づいて得られる。モータ出力上限は、モータ421への印加上限電圧に対応している。モータ出力は、モータ421の電流指令値に対応する印加電圧に対応している。
図4(C)において、実線で示す斜線及び破線で示す斜線は、何れも、モータ421への印加上限電圧(デューティ比の上限)を示している。モータ421への印加上限電圧を変更すると、モータ421への印加上限電圧を示す線(実線で示す斜線や破線で示す斜線)は、矢印が示す方向(図中の右上方向又は左下方向)に移動する。破線の場合は、実線の場合よりも、モータ421への印加電圧が制限される。例えば、モータ421への印加電圧が実線で示す斜線と破線で示す斜線の間に存在する場合を想定する。この場合、実線で示すような印加上限電圧が設定されている場合には、モータ421への印加電圧を変更しなくてもよいが、破線で示すような印加上限電圧が設定されている場合には、モータ421への印加電圧を変更する。モータ421への印加電圧は、例えば、破線で示すような印加上限電圧以下になるように変更される。モータ421への印加電圧は、例えば、モータ421を駆動させないものに変更されてもよい。
【0084】
このような電動操舵装置40Aが設けられた鞍乗型車両によれば、操舵補助機能についての利便性が向上する。具体的には、以下のとおりである。
【0085】
電動操舵装置40Aによれば、モータ421への印加電圧が印加上限電圧を超えないように制限される。これにより、例えば、バーハンドル22への操作が同じであっても、モータ421の出力が小さくなったり、モータ421が動作しないことがある。電動操舵装置40Aが設けられた、バーハンドル22を備えた鞍乗型車両においては、乗員によるバーハンドル22への操作が同じであっても、当該操作に応じた補助操舵力を変更することができる。つまり、操舵補助機能のセッティングを変更することができる。その結果、操舵補助機能についての利便性が向上する。
【0086】
(その他の実施形態)
本明細書において記載と図示の少なくとも一方がなされた実施形態及び変形例は、本開示の理解を容易にするためのものであって、本開示の思想を限定するものではない。上記の実施形態及び変形例は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得る。当該趣旨は、本明細書に開示された実施形態に基づいて当業者によって認識されうる、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、実施形態及び変形例に跨る特徴の組み合わせ)、改良、変更を包含する。特許請求の範囲における限定事項は当該特許請求の範囲で用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態及び変形例に限定されるべきではない。そのような実施形態及び変形例は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、本明細書において、「好ましくは」、「よい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」、「よいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。
【0087】
例えば、電動操舵装置40Aにおいて電流指令値を得る方法は、電動操舵装置40において電流指令値を得る方法と異なっていてもよい。
【0088】
例えば、制御装置は、アクチュエータの出力がゼロになるように、つまり、アクチュエータの出力を停止するように、アクチュエータを制御してもよい。この場合、アクチュエータを慣性ダンパとして用いることができる。
【0089】
鞍乗型車両は、例えば、スクーター、モペッド、スノーモービル、ウォータークラフト、全地形対応車(ATV:All Terrain Vehicle)等を含む。
【符号の説明】
【0090】
10 バーハンドルを備えた鞍乗型車両
20 車体
22 バーハンドル
30 車輪
30F 前輪(操舵輪)
30R 後輪
40 電動操舵装置
42 アクチュエータ
44 制御装置