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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】医薬送達器具
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20241213BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
A61M5/31
A61M5/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022580959
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2021066131
(87)【国際公開番号】W WO2022002584
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】20183143.5
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ムニブ・バーバー
(72)【発明者】
【氏名】マグナス・グスタフソン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・レーフ
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部品(7、7’)と、
前記第1の部品(7、7’)と同軸に配置された第2の部品(5、5’)と、
ハウジング(3、3’)と、
トリガボタン(11)と、
該トリガボタン(11)と同時に動くように構成され、軸方向に沿って延びる細長い阻止構造(13)と、
を備える医薬送達器具(1、1’)において、
前記第2の部品(5、5’)が、第1の位置から第2の位置に、前記第1の部品(7、7’)に対して軸方向に動くように構成され、
前記第1の部品(7、7’)が医薬容器ホルダであり、
前記第2の部品(5、5’)が送達部材カバーであり、
前記第1の部品(7、7’)および前記第2の部品(5、5’)が前記ハウジング(3、3’)内に配置され、前記第1の位置が前記ハウジング(3、3’)に対して引込み位置であり、前記第2の位置が伸張位置であり、前記第1の位置では前記第2の部品(5、5’)が前記第2の位置よりも前記ハウジング(3、3’)内に深く引き込まれ、
前記送達部材カバー(5’)が最初は前記第2の位置から前記第1の位置に動くように構成されており、前記医薬容器ホルダ(7’)が前部シーソーアーム(15a)および後部シーソーアーム(15b)を具備する枢動可能なシーソー型レバー(15)を有し、前記後部シーソーアーム(15b)は前記送達部材カバー(5’)が最初は前記第2の位置にあるときに前記トリガボタン(11)の軸方向の動きを阻止するように構成され、前記送達部材カバー(5’)は、前記送達部材カバー(5’)が前記第2の位置から前記第1の位置の方に動くとき、前記後部シーソーアーム(15b)に対して径方向内向きに付勢するように構成されて、前記トリガボタン(11)が押下位置まで軸方向に前進できるようにされており
前記前部シーソーアーム(15a)は、前記阻止構造(13)が前記後部シーソーアーム(15b)を径方向内向きに付勢したそれ以前よりも径方向外向きに伸張した位置に配置されることにより、前記前部シーソーアーム(15a)は前記送達部材カバー(5')の遠位端の後方への動きを阻止する、医薬送達器具(1、1’)。
【請求項2】
前記第2の部品(5、5’)が前記第2の位置の方向にバイアスをかけられた、請求項1に記載の医薬送達器具(1、1’)。
【請求項3】
前記第2の部品が径方向ウィンドウ(5a、5’a)を備えている、請求項1または2に記載の医薬送達器具(1、1’)。
【請求項4】
前記第1の部品および前記第2の部品が摺動して互いに作用を及ぼす、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬送達器具(1、1’)。
【請求項5】
前記第1の部品および前記第2の部品が可動ではあるが、取外し不能である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬送達器具(1、1’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に医薬送達器具に関する。
【背景技術】
【0002】
オートインジェクタのような医薬送達器具には往々にしてプラスチック部品が含まれる。通常、プラスチック部品は射出成形される。プラスチック部品は、その射出成形によって小欠陥、すなわちバリを生じていることがある。そうした小欠陥は、医薬送達器具を使用する際に器具内の他の部品と相互作用を起こす可能性がある。
【0003】
それによる潜在的な不都合として、医薬送達器具が意図どおりに機能しない、指に障碍のある一部ユーザおよび/または力の弱った一部ユーザには医薬送達器具の操作が困難である、といったことが考えられる。
【0004】
こうした製造欠陥は機械加工によって除去することができるが、それには追加の工程ステップが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、従来技術の問題を解決する、または少なくとも緩和する医薬送達器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は添付の請求各項によって規定されており、ここからはそれらへの参照が求められる。
【0007】
本開示において、「遠位方向」という用語が使用されるときは、医薬送達器具の使用時に投与部位から離れていく方向をいう。「遠位部/端」という用語が使用されるときは、送達器具の部分/端またはその部材の部分/端であって、医薬送達器具の使用時に投与部位から最も遠くに位置する部分/端をいう。それに呼応して、「近位方向」という用語が使用されるときは、医薬送達器具の使用時に投与部位に向かう方向のことをいう。「近位部/端」という用語が使用されるときは、送達器具の部分/端またはその部材の部分/端であって、医薬送達器具の使用時に投与部位の最も近くに位置する部分/端をいう。
【0008】
さらに、「長手方向」、「長手方向に」、「軸方向に」または「軸方向」という用語は、近位端から遠位端まで延びる方向であって、典型的には器具またはその部品に沿って器具および/またはその部品の長い方の延長方向をいう。
【0009】
同様にして、「横断方向」、「横断方向の」および「横断方向に」という用語は、全体に長手方向と垂直をなす方向をいう。
【0010】
さらに、「円周」、「円周の」または「円周沿いに」という用語は、軸、典型的には中心軸、すなわち器具および/または部品の長い方の延長方向に延びる中心軸に対する円周または円周方向をいう。同様に、「径方向」または「径方向に」とは、軸に対して径方向に延びる方向をいい、「回転」、「回転の」、「回転する」は軸に対する回転についていう。
【0011】
そこで提供されるのは、第1の部品と、第1の部品と同軸に配置された第2の部品とを備える医薬送達器具であって、第2の部品は、第1の位置から第2の位置に、第1の部品に対して軸方向に動くように構成され、第1の部品と第2の部品のいずれか一方が径方向に延びるバリを有しており、第1の部品と第2の部品のもう一方が、第2の部品が第1の位置にあるときにバリと位置合せされて向き合う面取り部を有しており、第2の部品が第1の位置から第2の位置に動くとき、面取り部とバリのいずれか一方が面取り部とバリのもう一方と接し、その後すれ違うように構成され、それによって第2の部品の動きが円滑になるようにされた医薬送達器具である。
【0012】
そのため、面取り部によって第2の部品の軸方向の動きは円滑になるが、それがなければ、バリによって、たとえばバリと直角になる縁部などのために、それはより困難となっているはずである。第2の部品を第2の位置まで動かすために必要とされる力はおかげで小さくなる。意図された医薬送達器具の操作がそれによって担保され、かつ/または身体能力に障碍のあるユーザによる医薬送達器具の操作を容易にすることができると考えられる。
【0013】
第1の部品および第2の部品のうち、バリを生じる部品というのは射出成形部品であると考えられる。第1の部品および第2の部品のうち、バリを生じる部品というのはプラスチック製であると考えられる。
【0014】
医薬送達器具は、オートインジェクタのようなインジェクタ、吸入器または点眼器であることができる。
【0015】
面取り部は、第2の部品が第1の位置にあるときは、バリから離れるように軸方向の間隔を空けることができる。
【0016】
1つの実施形態によれば、医薬送達器具は近位端と後端とを有しており、面取り部は遠位端から前端に向かう方向に先細りになる。
【0017】
1つの実施形態によれば、医用送達器具は長手方向の中心軸を有しており、面取り部はその長手方向中心軸と向き合う面取り面を有する。
【0018】
面取り面は、医薬送達器具の長手方向中心軸と交わる傾斜面を画定する。
【0019】
1つの実施形態によれば、第2の部品には第2の位置の方向にバイアスがかけられる。医薬送達器具は、第2の部品に対して第2の位置の方向にバイアスがかけられる、すなわち付勢されるように構成されたバネのような弾性部材を備えることができる。
【0020】
1つの実施形態によれば、第1の部品にはバリがあり、第2の部品は第1の部品に対して径方向外側に配置され、バリは径方向外向きに延びる。
【0021】
1つの実施形態はハウジングを含み、第1の部品と第2の部品はそのハウジング内に配置され、ハウジングに対して第1の位置は引込み位置、第2の位置は伸張位置であり、第1の位置では第2の部品は第2の位置におけるよりもハウジング内に深く引き込まれる。
【0022】
1つの実施形態によれば、第2の部品は送達部材カバーである。
【0023】
1つの実施形態によれば、第1の部品は径方向ウィンドウを備えており、面取り部はその径方向ウィンドウの径方向内側の後方縁を形成する。
【0024】
1つの実施形態によれば、第1の部品は医薬容器ホルダである。
【0025】
1つの実施形態では、トリガボタンが含まれ、送達部材カバーは最初は第2の位置から第1の位置に動くように構成され、医薬容器ホルダは、前部シーソーアームおよび後部シーソーアームを具備する枢動可能なシーソー型レバーを有し、後部シーソーアームは送達部材カバーが最初は第2の位置にあるときにトリガボタンの軸方向の動きを阻止するように構成され、送達部材カバーは、送達部材カバーが第2の位置から第1の位置に動くとき、後部シーソーアームに対して径方向内向きに付勢するように構成されて、トリガボタンが押下位置まで軸方向に前進できるようにする。
【0026】
1つの実施形態によれば、バリは前部シーソーアーム上に配置される。
【0027】
1つの実施形態によれば、バリは後部シーソーアーム上に配置される。
【0028】
1つの実施形態によれば、第2の部品はトリガボタンである。
【0029】
1つの実施形態では、医薬送達器具ハウジングと、その医薬送達器具ハウジングに対して同軸にアレンジされたトリガボタンとを備えた医薬送達器具において、その医薬送達器具ハウジングとトリガボタンが摺動可能に互いに作用を及ぼし、トリガボタンが医薬送達器具ハウジングに対して初期位置から押込み位置まで軸方向に動くように構成され、医薬送達器具ハウジングとトリガボタンのいずれか一方が径方向に延びるバリを有しており、トリガボタンがトリガボタンの初期位置にあるとき、医薬送達器具ハウジングとトリガボタンのいずれかもう一方がバリと位置合せされて向き合う面取り部を有しており、トリガボタンが初期位置から押込み位置に動かされるとき、面取り部とバリのいずれか一方が面取り部とバリのいずれかもう一方と接し、その後すれ違うように構成されて、それによってトリガボタンの動きを円滑にする医薬送達器具が提供される。
【0030】
トリガボタンは少なくとも部分的に医薬送達器具ハウジング内に収められる。
【0031】
1つの実施形態では、医薬送達器具ハウジングと、その医薬送達器具ハウジングに対して同軸にアレンジされた医薬容器ホルダとを備えた医薬送達器具において、その医薬送達器具ハウジングと医薬容器ホルダが摺動可能に互いに作用を及ぼし、医薬容器ホルダが医薬送達器具ハウジングに対して第1の位置から第2の位置まで軸方向に動くように構成され、医薬送達器具ハウジングと医薬容器ホルダのいずれか一方が径方向に延びるバリを有しており、医薬容器キャリアが医薬容器ホルダの第1の位置にあるとき、医薬送達器具ハウジングと医薬容器ホルダのいずれかもう一方がバリと位置合せされて向き合う面取り部を有しており、医薬容器ホルダが第1の位置から第2の位置に動かされるとき、面取り部とバリのいずれか一方が面取り部とバリのいずれかもう一方と接し、その後にすれ違うように構成されて、それによって医薬容器ホルダの動きを円滑にする医薬送達器具が提供される。
【0032】
医薬容器ホルダは医薬送達器具ハウジングの中に収められる。
【0033】
1つの実施形態によれば、第1の位置から第2の位置に動く医薬容器ホルダの動きは、医薬容器ホルダを医薬容器ホルダとともに近位方向に動かすように構成される。
【0034】
1つの実施形態によれば、医薬送達器具が注射器具である場合、医薬容器ホルダが第1の位置から第2の位置に動く医薬容器ホルダの動きは、自動注射針挿入操作が行われるように構成される。
【0035】
1つの実施形態によれば、第1の位置から第2の位置に動く医薬容器ホルダの動きは、医薬容器ホルダを医薬容器とともに遠位方向に動かすように構成される。
【0036】
1つの実施形態によれば、医薬送達器具が注射器具である場合、医薬容器ホルダが第1の位置から第2の位置に動く医薬容器ホルダの動きは、自動注射針引抜き操作が行われるように構成される。
【0037】
1つの実施形態によれば、第1の部品と第2の部品は摺動可能に互いに作用を及ぼし合う。
【0038】
1つの実施形態によれば、第1の部品および第2の部品は可動であるが、取外しはできない。
【0039】
1つの実施形態によれば、バリは径方向に最大0.1mm延びる。
【0040】
一般に、請求項で使用するすべての用語は、本明細書で別段の定義が明示的に与えられる場合を除き、当該技術分野におけるそれぞれの通常の意味に従って解釈されるものとする。「ある/その要素、装置、部品、手段等々」として示されているすべてのものは、別段の記載が明示的になされるのでない限り、その要素、装置、部品、手段等々の少なくとも1つの事例を指すものと包括的に解釈されるものとする。
【0041】
本発明の考え方の具体的な実施形態について、添付の下記図面を参照しながら例を挙げて以下で説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】医薬送達器具の第1の例を示した概略図である。
図2】第2の部品が第1の位置にあるときの図1の医薬送達器具の長手方向断面の細部を示した概略図である。
図3】第2の位置の方へ動く第2の部品の図である。
図4】医薬送達器具の一例を示した斜視図である。
図5】ハウジングを外した図4の医薬送達器具の図である。
図6図5の医薬送達器具の一部分の長手方向断面図である。
図7】送達部材カバーが引込み位置に動かされた図5の医薬送達器具の図である。
図8】起動後の図5の医薬送達器具の図である。
図9】起動後のクローズアップ図である。
図10】使用後の錠止状態にある医薬送達器具の図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の考え方について、ここからは、例として幾つかの実施形態を示した添付の図面を参照しながら、より詳しく説明を行う。ただし、本発明の考え方は数多くの異なる形態で実施することが可能であり、ここに記す実施形態だけに限定されると受け取られるべきものではなく、以下の実施形態は、この開示が入念かつ完全なものとなるため、そして本発明の考え方の範囲を当業者に対して十全に伝えるための例として提供されるものである。説明を通して、同様の要素に対しては同様の符号が与えられる。
【0044】
図1は医薬送達器具1の一例を概略的に示している。医薬送達器具は、たとえば、オートインジェクタのようなインジェクタ、吸入器または点眼器であることができる。
【0045】
例示した医薬送達器具1は、ハウジング3と、そのハウジング3内に配置された送達部材カバー5とを備える。送達部材カバー5はハウジング3と同軸に配置される。
【0046】
医薬送達器具1は近位端1aと遠位端1bとを有する。送達部材カバー5はハウジング3から突き出る前端部位を有する。前端部位は医薬送達器具1の近位端1aを形成する。
【0047】
送達部材カバー5はハウジング3に対して直線的に動くように構成される。送達部材カバー5はハウジング3の軸方向に沿って動くように構成される。送達部材カバー5は、図1に示すようなハウジング3に対する伸張位置と、引込み位置との間で動くように構成される。医薬送達器具1は、注射針のような送達部材を、伸張位置にある送達部材カバー5によって覆われた状態で、また送達部材カバー5が引込み位置にあるときは露出状態で有することができる。引込み位置のことをここでは「第1の位置」とも呼ぶ。伸張位置のことをここでは「第2の位置」とも呼ぶ。送達部材カバー5は伸張位置の方向にバイアスがかけられる。
【0048】
送達部材カバー5は、医薬送達器具の具体的な実施に応じて、伸張位置、すなわち第2の位置から引込み位置、すなわち第1の位置に動くことで、医薬送達器具1を起動すること、または起動を有効にすることができる。
【0049】
典型的には、送達部材カバー5は、送達部材カバー5を注入部位の方に押すことによって伸張位置から引込み位置に動く。送達部材はそれによって露出され、送達部材が注射針の場合には注射部位に侵入することができる。
【0050】
医薬送達器具1が注入部位から離れると、送達部材カバー5は伸張位置に戻る。これは、送達部材カバー5に対して伸張位置方向にバイアスがかかっている、すなわち付勢されているためである。
【0051】
医薬送達器具1の少なくとも一部の部品は射出成形によって製造されると考えられる。射出成形では、金型から部品が取り出された後にバリのある成形部品がもたらされるのが普通である。バリは通常、射出成形部品の縁部および/または半分ずつの2つの金型の間に広がる部分に生じる。
【0052】
図2は、医薬送達器具1の一例における一部分の長手方向断面の一部を示したものである。
【0053】
送達部材カバー5は、図2では引込み位置、すなわち第1の位置に配置されている。
【0054】
医薬送達器具1は医薬容器ホルダ7を備えている。医薬容器ホルダ7は送達部材カバー5の径方向内側に配置されている。医薬容器ホルダ7は径方向外向きに延びるバリ7aを有している。バリ7aは医薬容器ホルダ7の縁部に位置している。
【0055】
医薬容器ホルダ7はここでいう「第1の部品」の一例である。送達部材カバー5はここでいう「第2の部品」の一例である。
【0056】
送達部材カバー5は径方向ウィンドウ5aを有する。送達部材カバー5は面取り部5bを有する。面取り部5bは径方向ウィンドウ5aの径方向内側の後方縁を形成する。そのため、面取り部5bは、送達部材カバー5の内側にあって、径方向ウィンドウ5aの遠位端に位置する。内側は医薬容器ホルダ7と向き合う。面取り部5bは遠位端1bから近位端1aに向かう方向に先細りになる。
【0057】
送達部材カバー5が引込み位置にあるとき、面取り部5bは軸方向でバリ7aよりも医薬送達器具1の遠位端1bに近く配置される。送達部材カバー5が引込み位置にあるとき、面取り部5bはバリ7aと向き合う。面取り部5bはバリ7aと軸方向に位置合せされる。
【0058】
図3は、送達部材カバー5が引込み位置から伸張位置へ、すなわち第1の位置から第2の位置へと前進方向に動いたときの医薬送達器具1を概略的に示している。
【0059】
送達部材カバー5の面取り部5bは、バリ7aと接した後、そこを通過して動く。面取り部5bがあるため、バリ7aを通過する際の径方向ウィンドウ5aの内側後方縁の動きが円滑になる。そのため、送達部材カバー5を伸張位置に戻す動きに要求される力が小さくなる。
【0060】
送達部材カバー5は、送達部材カバー5が伸張位置に到達したところで錠止されるように構成することができる。送達部材カバー5は、錠止されたときは引込み位置に向かう動きを阻止される。当業者であれば周知であるように、そのための方法は無数にあるため、この例に関してこれ以上説明はしない。
【0061】
面取り部5bがあることにより、医薬送達器具1が注入部位から取り去られたとき、引込み位置から伸張位置に戻る送達部材カバー5の動きが担保されるようにすることができる。そのため、送達部材カバー5は伸張位置で錠止されることが担保され得る。その結果、使用済み医薬送達器具1の安全性を向上させることができる。
【0062】
医薬送達器具1の変形では、バリがあるのが送達部材カバーの方である、または送達部材カバーの方にもバリがあるという場合が考えられる。たとえば、ハウジングに面取り部を有する径方向ウィンドウが設けられ、バリは、送達部材カバーが引込み位置にあるとき、ハウジングの面取り部の方を向いて径方向外側に配置される場合が考えられる。あるいは、ハウジングがバリのある縁部を有しており、送達部材カバーには、送達部材カバーが引込み位置にあるときにバリと向き合う面取り部が設けられる場合が考えられる。
【0063】
さらに別の変形として、医薬容器ホルダに面取り部があり、送達部材カバーにバリがある場合を考えることができる。さらには、送達部材カバーが伸張位置から引込み位置に動くときにバリと面取り部が互いに作用するという変形を想定することもできる。一般に、互いに隣接して配置されて互いに相対運動をすることができる任意の2つの部品について、バリによる2つの部品間の動きを円滑にするように面取り部を構成した上で、それぞれがバリと面取り部の1つずつを備えるようにすることができる。
【0064】
図4は医薬送達器具の一例の斜視図を示している。医薬送達器具1'はハウジング3'を備えている。医薬送達器具1'は、ハウジング3'の近位端に取り付けることができるキャップ9を備えている。キャップ9はハウジング3'から取り外すことができる。キャップ9は、医薬送達器具1'を使用する際には、あらかじめハウジング3'から取り外すべきものである。
【0065】
医薬送達器具1'はトリガボタン11を備えている。トリガボタン11は、この例では、医薬送達器具1'の遠位端に設けられている。トリガボタン11は、医薬送達器具1'の長手方向中心軸と平行に動くように構成されている。トリガボタン11は、図4に示されている初期位置から押下位置に動かされることで医薬の放出を作動させるように構成されている。
【0066】
図5は、キャップ9およびハウジング3'を取り外した状態の薬品送達器具1'を示している。医薬送達器具1'は送達部材カバー5'を備えている。送達部材カバー5'はここでいう「第2の部品」の一例である。送達部材カバー5'は、すでに説明した送達部材カバー5と同じようにハウジング3に対して動くことができる。
【0067】
医薬送達器具1'は医薬容器ホルダ7'を備えている。医薬容器ホルダ7'は医薬容器または注射器を保持するように構成されている。医薬容器ホルダ7'はここでいう「第1の部品」の一例である。医薬容器ホルダ7'は送達部材カバー5と同軸に配置されている。送達部材カバー5は、医薬容器ホルダ7'の径方向外側に配置されている。
【0068】
医薬容器ホルダ7'は枢動可能なシーソー型レバー15を有している。シーソー型レバー15は、医薬送達器具1'の長手方向中心軸に対して横断方向または垂直をなす軸の周りを枢動可能である。シーソー型レバー15は医薬容器ホルダ7'の外側に設けられている。
【0069】
シーソー型レバー15は前部シーソーアーム15aと後部シーソーアーム15bを有している。前部シーソーアーム15aと後部シーソーアーム15bは、2つのアーム15aおよび15bをつなぐ支点を中心に枢動可能である。前部シーソーアーム15aにはバリ7'aがある。バリ7'aは前部シーソーアーム15aから径方向外向きに延びている。
【0070】
送達部材カバー5'は後方に延びる複数の平行な脚部5'cを有している。送達部材カバー5'は脚部5'cの間にスペースを有している。シーソー型レバー15は2つの脚部5'cの間に配置される。とりわけ、前部シーソーアーム15aは、送達部材カバー5'が伸張位置にあるときはスペース内に配置される。
【0071】
送達部材カバー5'は、スペースと位置合せされて軸方向に配置された径方向ウィンドウ5'aを有する。径方向ウィンドウ5'aはスペースよりも送達部材カバー5'の近位端に近接して配置されている。そのため、スペースは径方向ウィンドウ5'aに対して後方に配置される。
【0072】
医薬送達器具1'は、トリガボタン11と同時に動くように構成された細長い阻止構造13を備えている。阻止構造13とトリガボタンは一体で形成されても、別々の部品として形成されてもよい。阻止構造13はアームの形であることができる。
【0073】
阻止構造13は医薬送達器具1'の軸方向に沿って延びる。送達部材カバー5'が伸張位置にあるとき、阻止構造13は後部シーソーアーム15bの遠位端面の方に延びる。後部シーソーアーム15bの遠位端面は、阻止構造13が、したがってトリガボタン11が、前方に動くのを妨げる。そのため、送達部材カバー5'が伸張位置にあるときには、トリガボタン11は初期位置に保たれる。
【0074】
図6は、ハウジング3'を外した状態の医薬送達器具1'の一部の長手方向断面を示したものである。
【0075】
径方向ウィンドウ5'aは、面取りされた径方向内側の後部縁を有している。そのため、送達部材カバー5'は面取り部5'bを有している。この構成は図1図3の例と同様である。
【0076】
医薬送達器具1'操作中のバリ7'aと面取り部5'bの相互作用について、図7図10を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0077】
図7は、送達部材カバー5'が伸張位置から引込み位置に動かされたところを示している。前部シーソーアーム15aは径方向ウィンドウ5'a内に動いている。送達部材カバー5'の脚部5'cは後部シーソーアーム15b上方を径方向に動いて、後部シーソーアーム15bを径方向内向きに付勢する。それにより、後部シーソーアーム15bの遠位端面が阻止構造13よりも下の径方向レベルに動くため、阻止構造13が前方に動くことができる。
【0078】
図8は、トリガボタン11が押下されて押下位置にセットされたところを示している。トリガボタン11が前方に動くと、阻止構造13も前方に動く。この動きによって医薬送達器具1'のパワーパックが起動される。それによって医薬の放出が行われる。パワーパックの操作は本開示のテーマではないため、ここではこれ以上詳細に開示することはない。
【0079】
図9は、図8に示された医薬送達器具1'の状態のクローズアップ図である。
【0080】
図9は、送達部材カバー5'が引込み位置から解放されて伸張位置に戻ったところを示している。図6に示した面取り部5'bがあるおかげで、送達部材カバー5'が伸張位置に戻る動きをするとき、送達部材カバー5'は前部シーソーアーム15aのバリ6'aをスムーズに通過することができる。
【0081】
阻止構造13は、トリガボタン11が押下されたときに得られたその前進位置に保持される。それにより、後部シーソーアーム15bは、図示されるように阻止構造13によって径方向内向きに押される。てこの作用により、前部シーソーアーム15aは、阻止構造13が後部シーソーアーム15bを径方向内向きに押したそれ以前よりも径方向外向きに伸張した位置に配置される。それにより、前部シーソーアーム15aは遠位端5'dの後方への動きを阻止する。そのため、送達部材カバー5'は後方への動きを妨げられる。それにより、送達部材カバー5'は錠止状態となる。
【0082】
以上、本発明の考え方について、主としてわずかな例を参考に説明してきた。しかし、当業者であれば容易に理解されるように、上で開示したもの以外の実施形態も添付の請求項で規定されている本発明の考え方の範囲内で同様に可能である。
【符号の説明】
【0083】
1、1' 医薬送達器具
1a 近位端
1b 遠位端
3 ハウジング
5、5' 送達部材カバー
5a ウィンドウ
5b、5'a、5'b 面取り部
7 医薬容器ホルダ
7a、7'a バリ
9 キャップ
11 トリガボタン
13 阻止構造
15 シーソー型レバー
15a 前部シーソーアーム
15b 後部シーソーアーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10