(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】符号化装置、符号化方法、ビットストリーム生成装置、復号装置、および復号方法
(51)【国際特許分類】
H04N 19/13 20140101AFI20241213BHJP
H04N 19/14 20140101ALI20241213BHJP
H04N 19/18 20140101ALI20241213BHJP
H04N 19/61 20140101ALI20241213BHJP
【FI】
H04N19/13
H04N19/14
H04N19/18
H04N19/61
(21)【出願番号】P 2023031600
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2020549291の分割
【原出願日】2019-09-25
【審査請求日】2023-03-02
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐介
(72)【発明者】
【氏名】安倍 清史
(72)【発明者】
【氏名】西 孝啓
(72)【発明者】
【氏名】遠間 正真
【審査官】坂東 大五郎
(56)【参考文献】
【文献】SCHWARZ, Heiko et al.,Non-CE7: Alternative Entropy Coding for Dependent Quantization,Joint Video Experts Team (JVET),2018年07月10日,[JVET-K0072-v2]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00-19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリと、
前記メモリに接続され、CABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)を実行するプロセッサとを備え、
カレントブロックの予測残差符号化において、前記プロセッサは、
前記カレントブロックと予測ブロックとの差分に対して、変換および量子化を行うことによって生成された複数の量子化係数である複数の係数の各々について、
係数の数値の性質をそれぞれ示す複数のフラグの各々をCABACによって符号化し、
前記複数のフラグは、
前記係数がゼロか否かを示す第1のフラグと、
前記係数が奇数か偶数かを示す第2のフラグと、
前記係数の絶対値が第1の閾値(第1の閾値は自然数)以上であるか否かを示す第3のフラグと、
前記係数の絶対値が、第2の閾値(第2の閾値は前記第1の閾値よりも大きい自然数)以上であるか否かを示す第4のフラグと、
を含み、
前記係数の絶対値を表現するためにさらに必要な数値からなる残部(remainder)を求めるための基準値となるベースレベルを決定し
、
前記カレントブロック内における前記係数の5つの周辺係数の総和の絶対値に基づいて、前記係数の予測絶対値を算出し
、
前記算出された前記予測絶対値と前記ベースレベルとの差分に基づいて、ライスパラメーターの値を複数の候補の中から決定し、
前記差分が第1の値未満である場合は、前記ライスパラメーターはゼロに設定され、
前記差分が第1の値以上、第2の値未満である場合は、前記ライスパラメーターは1に設定され、
前記差分が第2の値以上である場合は、前記ライスパラメーターは2に設定され、
前記ライスパラメーターを用いて前記係数の残部を符号化し、前記残部は、前記係数の絶対値と前記ベースレベルとを用いて計算され、
前記係数の絶対値がゼロよりも大きい場合は、前記係数が正の値か負の値かを示す第5のフラグを符号化する、
符号化装置。
【請求項2】
符号化方法であって、
CABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)を実行し、
カレントブロックの予測残差符号化において、
前記カレントブロックと予測ブロックとの差分に対して、変換および量子化を行うことによって生成された複数の量子化係数である複数の係数の各々について、
係数の数値の性質をそれぞれ示す複数のフラグの各々をCABACによって符号化し、
前記複数のフラグは、
前記係数がゼロか否かを示す第1のフラグと、
前記係数が奇数か偶数かを示す第2のフラグと、
前記係数の絶対値が第1の閾値(第1の閾値は自然数)以上であるか否かを示す第3のフラグと、
前記係数の絶対値が、第2の閾値(第2の閾値は前記第1の閾値よりも大きい自然数)以上であるか否かを示す第4のフラグと、
を含み、
前記係数の絶対値を表現するためにさらに必要な数値からなる残部(remainder)を求めるための基準値となるベースレベルを決定し
、
前記カレントブロック内における前記係数の5つの周辺係数の総和の絶対値に基づいて、前記係数の予測絶対値を算出し
、
前記算出された前記予測絶対値と前記ベースレベルとの差分に基づいて、ライスパラメーターの値を複数の候補の中から決定し、
前記差分が第1の値未満である場合は、前記ライスパラメーターはゼロに設定され、
前記差分が第1の値以上、第2の値未満である場合は、前記ライスパラメーターは1に設定され、
前記差分が第2の値以上である場合は、前記ライスパラメーターは2に設定され、
前記ライスパラメーターを用いて前記係数の残部を符号化し、前記残部は、前記係数の絶対値と前記ベースレベルとを用いて計算され、
前記係数の絶対値がゼロよりも大きい場合は、前記係数が正の値か負の値かを示す第5のフラグを符号化する、
符号化方法。
【請求項3】
メモリと、
前記メモリに接続され、CABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)復号を実行するプロセッサとを備え、
カレントブロックの予測残差復号において、前記プロセッサは、
前記カレントブロックと予測ブロックとの差分に対して、変換および量子化を行うことによって生成された複数の量子化係数である複数の係数の各々について、
係数の数値の性質をそれぞれ示す複数のフラグの各々をCABAC復号によって復号し、
前記複数のフラグは、
前記係数がゼロか否かを示す第1のフラグと、
前記係数が奇数か偶数かを示す第2のフラグと、
前記係数の絶対値が第1の閾値(第1の閾値は自然数)以上であるか否かを示す第3のフラグと、
前記係数の絶対値が、第2の閾値(第2の閾値は前記第1の閾値よりも大きい自然数)以上であるか否かを示す第4のフラグと、
を含み、
前記係数の絶対値を表現するためにさらに必要な数値からなる残部(remainder)を求めるための基準値となるベースレベルを決定し
、
前記カレントブロック内における前記係数の5つの周辺係数の総和の絶対値に基づいて、前記係数の予測絶対値を算出し
、
前記算出された前記予測絶対値と前記ベースレベルとの差分に基づいて、ライスパラメーターの値を複数の候補の中から決定し、
前記差分が第1の値未満である場合は、前記ライスパラメーターはゼロに設定され、
前記差分が第1の値以上、第2の値未満である場合は、前記ライスパラメーターは1に設定され、
前記差分が第2の値以上である場合は、前記ライスパラメーターは2に設定され、
前記ライスパラメーターを用いて前記係数の残部を復号し
、
前記係数の絶対値がゼロよりも大きい場合は、前記係数が正の値か負の値かを示す第5のフラグを復号する、
復号装置。
【請求項4】
カレントブロックの予測残差復号において、
前記カレントブロックと予測ブロックとの差分に対して、変換および量子化を行うことによって生成された複数の量子化係数である複数の係数の各々について、
係数の数値の性質をそれぞれ示す複数のフラグの各々をCABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)復号によって復号し、
前記複数のフラグは、
前記係数がゼロか否かを示す第1のフラグと、
前記係数が奇数か偶数かを示す第2のフラグと、
前記係数の絶対値が第1の閾値(第1の閾値は自然数)以上であるか否かを示す第3のフラグと、
前記係数の絶対値が、第2の閾値(第2の閾値は前記第1の閾値よりも大きい自然数)以上であるか否かを示す第4のフラグと、
を含み、
前記係数の絶対値を表現するためにさらに必要な数値からなる残部(remainder)を求めるための基準値となるベースレベルを決定し
、
前記カレントブロック内における前記係数の5つの周辺係数の総和の絶対値に基づいて、前記係数の予測絶対値を算出し
、
前記算出された前記予測絶対値と前記ベースレベルとの差分に基づいて、ライスパラメーターの値を複数の候補の中から決定し、
前記差分が第1の値未満である場合は、前記ライスパラメーターはゼロに設定され、
前記差分が第1の値以上、第2の値未満である場合は、前記ライスパラメーターは1に設定され、
前記差分が第2の値以上である場合は、前記ライスパラメーターは2に設定され、
前記ライスパラメーターを用いて前記係数の残部を復号し
、
前記係数の絶対値がゼロよりも大きい場合は、前記係数が正の値か負の値かを示す第5のフラグを復号する、
復号方法。
【請求項5】
メモリと、
前記メモリに接続されたプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、動作において、
カレントブロックの予測残差復号を行う復号装置が復号するためのビットストリーム
を生成し、
前記カレントブロックに含まれる係数の数値の性質をそれぞれ示す複数のフラグ
を、CABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)符号化によって
前記ビットストリームに含め、
前記複数のフラグは、
前記係数がゼロか否かを示す第1のフラグと、
前記係数が奇数か偶数かを示す第2のフラグと、
前記係数の絶対値が第1の閾値(第1の閾値は自然数)以上であるか否かを示す第3のフラグと、
前記係数の絶対値が、第2の閾値(第2の閾値は前記第1の閾値よりも大きい自然数)以上であるか否かを示す第4のフラグと、
前記複数のフラグのみでは前記係数の絶対値を表現することができない場合に、前記係数の絶対値を表現するためにさらに必要な数値からなる残部(remainder)であって、前記係数の絶対値と前記係数のベースレベルとを用いて計算され、ライスパラメーターを用いて符号化された前記残部と、
前記係数の絶対値がゼロよりも大きい場合に、前記係数が正の値か負の値かを示すフラグであって、前記CABAC符号化によって符号化された第5のフラグと、
を含み
、
前記係数の予測絶対値は、前記カレントブロック内における前記係数の5つの周辺係数の総和の絶対値に基づいて算出され
、
前記ライスパラメーターは、前記係数の予測絶対値と前記ベースレベルとの差分に基づいて、複数の候補の中から決定され、
前記差分が第1の値未満である場合は、前記ライスパラメーターはゼロに設定され、
前記差分が第1の値以上、第2の値未満である場合は、前記ライスパラメーターは1に設定され、
前記差分が第2の値以上である場合は、前記ライスパラメーターは2に設定される、
ビットストリーム
生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビデオコーディングに関し、例えば、動画像の符号化および復号におけるシステム、構成要素、ならびに方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオコーディング技術は、H.261およびMPEG-1から、H.264/AVC(Advanced Video Coding)、MPEG-LA、H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)、およびH.266/VVC(Versatile Video Codec)へ進歩している。この進歩に伴い、様々な用途において増え続けるデジタルビデオデータ量を処理するために、ビデオコーディング技術の改良および最適化を提供することが常に必要とされている。
【0003】
なお、非特許文献1は、上述されたビデオコーディング技術に関する従来の規格の一例に関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】H.265(ISO/IEC 23008-2 HEVC)/HEVC(High Efficiency Video Coding)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような符号化方式に関して、符号化効率の改善、画質の改善、処理量の削減、回路規模の削減、又は、フィルタ、ブロック、サイズ、動きベクトル、参照ピクチャ又は参照ブロック等の要素又は動作の適切な選択等のため、新たな方式の提案が望まれている。
【0006】
本開示は、例えば、符号化効率の改善、画質の改善、処理量の削減、回路規模の削減、処理速度の改善、及び、要素又は動作の適切な選択等のうち1つ以上に貢献し得る構成又は方法を提供する。なお、本開示は、上記以外の利益に貢献し得る構成又は方法を含み得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、本開示の一態様に係る符号化装置は、メモリと、前記メモリに接続され、CABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)を実行するプロセッサとを備え、カレントブロックの予測残差符号化において、前記プロセッサは、前記カレントブロックと予測ブロックとの差分に対して、変換および量子化を行うことによって生成された複数の量子化係数である複数の係数の各々について、係数の数値の性質をそれぞれ示す複数のフラグの各々をCABACによって符号化し、前記複数のフラグは、前記係数がゼロか否かを示す第1のフラグと、前記係数が奇数か偶数かを示す第2のフラグと、前記係数の絶対値が第1の閾値(第1の閾値は自然数)以上であるか否かを示す第3のフラグと、前記係数の絶対値が、第2の閾値(第2の閾値は前記第1の閾値よりも大きい自然数)以上であるか否かを示す第4のフラグと、を含み、前記係数の絶対値を表現するためにさらに必要な数値からなる残部(remainder)を求めるための基準値となるベースレベルを決定し、前記カレントブロック内における前記係数の5つの周辺係数の総和の絶対値に基づいて、前記係数の予測絶対値を算出し、前記算出された前記予測絶対値と前記ベースレベルとの差分に基づいて、ライスパラメーターの値を複数の候補の中から決定し、前記差分が第1の値未満である場合は、前記ライスパラメーターはゼロに設定され、前記差分が第1の値以上、第2の値未満である場合は、前記ライスパラメーターは1に設定され、前記差分が第2の値以上である場合は、前記ライスパラメーターは2に設定され、前記ライスパラメーターを用いて前記係数の残部を符号化し、前記残部は、前記係数の絶対値と前記ベースレベルとを用いて計算され、前記係数の絶対値がゼロよりも大きい場合は、前記係数が正の値か負の値かを示す第5のフラグを符号化する。
【0008】
例えば、本開示の一態様に係る符号化装置は、メモリと、前記メモリに接続され、CABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)を実行するプロセッサとを備え、カレントブロックの予測残差符号化において、前記プロセッサは、前記カレントブロックと予測ブロックとの差分に対して、変換および量子化を行うことによって生成された複数の量子化係数である複数の係数の各々について、係数の数値の性質をそれぞれ示す複数のフラグの各々をCABACによって符号化し、前記複数のフラグは、前記係数がゼロか否かを示す第1のフラグと、前記係数が奇数か偶数かを示す第2のフラグと、前記係数の絶対値が第1の閾値(第1の閾値は自然数)以上であるか否かを示す第3のフラグと、前記係数の絶対値が、第2の閾値(第2の閾値は前記第1の閾値よりも大きい自然数)以上であるか否かを示す第4のフラグと、を含み、前記複数のフラグのみでは前記係数の絶対値を表現することができない場合に、前記係数の絶対値を表現するためにさらに必要な数値からなる残部(remainder)を求めるための基準値となるベースレベルを決定し、前記ベースレベルは、符号化されたフラグの数がCABAC符号化回数の制限に達している場合は、前記制限に達していない場合よりも小さい値をとり、前記カレントブロック内における前記係数の5つの周辺係数の総和の絶対値に基づいて、前記係数の予測絶対値を算出し、前記算出された前記予測絶対値と前記ベースレベルとの差分に基づいて、ライスパラメーターの値を複数の候補の中から決定し、前記ライスパラメーターを用いて前記係数の残部を符号化する。
【0009】
本開示における実施の形態のいくつかの実装は、符号化効率を改善してもよいし、符号化/復号処理を簡素化してもよいし、符号化/復号処理速度を速くしてもよいし、適切なフィルタ、ブロックサイズ、動きベクトル、参照ピクチャ、参照ブロック等のような、符号化及び復号に用いられる適切な構成要素/動作を効率よく選択してもよい。
【0010】
本開示の一態様におけるさらなる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施の形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ得られるが、1つまたはそれ以上の利点および/または効果を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【0011】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、記録媒体、又は、これらの任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様に係る構成又は方法は、例えば、符号化効率の改善、画質の改善、処理量の削減、回路規模の削減、処理速度の改善、及び、要素又は動作の適切な選択等のうち1つ以上に貢献し得る。なお、本開示の一態様に係る構成又は方法は、上記以外の利益に貢献してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る符号化装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、符号化装置による全体的な符号化処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、ブロック分割の一例を示す概念図である。
【
図4A】
図4Aは、スライスの構成の一例を示す概念図である。
【
図5A】
図5Aは、様々な変換タイプに対応する変換基底関数を示す表である。
【
図5B】
図5Bは、SVT(Spatially Varying Transform)の一例を示す概念図である。
【
図6A】
図6Aは、ALF(adaptive loop filter)で用いられるフィルタの形状の一例を示す概念図である。
【
図6B】
図6Bは、ALFで用いられるフィルタの形状の他の一例を示す概念図である。
【
図6C】
図6Cは、ALFで用いられるフィルタの形状の他の一例を示す概念図である。
【
図7】
図7は、DBF(deblocking filter)として機能するループフィルタ部の詳細な構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、ブロック境界に対して対称なフィルタ特性を有するデブロッキング・フィルタの例を示す概念図である。
【
図9】
図9は、デブロッキング・フィルタ処理が行われるブロック境界を説明するための概念図である。
【
図11】
図11は、符号化装置の予測処理部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、符号化装置の予測処理部で行われる処理の他の例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、符号化装置の予測処理部で行われる処理の他の例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施の形態のイントラ予測における67個のイントラ予測モードの一例を示す概念図である。
【
図15】
図15は、インター予測の基本的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、動きベクトル導出の一例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、動きベクトル導出の他の例を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、動きベクトル導出の他の例を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、ノーマルインターモードによるインター予測の例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、マージモードによるインター予測の例を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、マージモードによる動きベクトル導出処理の一例を説明するための概念図である。
【
図22】
図22は、FRUC(frame rate up conversion)処理の一例を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、動き軌道に沿う2つのブロック間でのパターンマッチング(バイラテラルマッチング)の一例を説明するための概念図である。
【
図24】
図24は、カレントピクチャ内のテンプレートと参照ピクチャ内のブロックとの間でのパターンマッチング(テンプレートマッチング)の一例を説明するための概念図である。
【
図25A】
図25Aは、複数の隣接ブロックの動きベクトルに基づくサブブロック単位の動きベクトルの導出の一例を説明するための概念図である。
【
図25B】
図25Bは、3つの制御ポイントを有するアフィンモードにおけるサブブロック単位の動きベクトルの導出の一例を説明するための概念図である。
【
図26B】
図26Bは、2つの制御ポイントを有するアフィンマージモードを説明するための概念図である。
【
図26C】
図26Cは、3つの制御ポイントを有するアフィンマージモードを説明するための概念図である。
【
図27】
図27は、アフィンマージモードの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図28A】
図28Aは、2つの制御ポイントを有するアフィンインターモードを説明するための概念図である。
【
図28B】
図28Bは、3つの制御ポイントを有するアフィンインターモードを説明するための概念図である。
【
図29】
図29は、アフィンインターモードの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図30A】
図30Aは、カレントブロックが3つの制御ポイントを有し、隣接ブロックが2つの制御ポイントを有するアフィンインターモードを説明するための概念図である。
【
図30B】
図30Bは、カレントブロックが2つの制御ポイントを有し、隣接ブロックが3つの制御ポイントを有するアフィンインターモードを説明するための概念図である。
【
図31A】
図31Aは、DMVR(decoder motion vector refinement)を含むマージモードを示すフローチャートである。
【
図32】
図32は、予測画像の生成の一例を示すフローチャートである。
【
図33】
図33は、予測画像の生成の他の例を示すフローチャートである。
【
図34】
図34は、予測画像の生成の他の例を示すフローチャートである。
【
図35】
図35は、OBMC(overlapped block motion compensation)処理による予測画像補正処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図36】
図36は、OBMC処理による予測画像補正処理の一例を説明するための概念図である。
【
図37】
図37は、2つの三角形の予測画像の生成を説明するための概念図である。
【
図38】
図38は、等速直線運動を仮定したモデルを説明するための概念図である。
【
図39】
図39は、LIC(local illumination compensation)処理による輝度補正処理を用いた予測画像生成方法の一例を説明するための概念図である。
【
図40】
図40は、符号化装置の実装例を示すブロック図である。
【
図41】
図41は、実施の形態に係る復号装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図42】
図42は、復号装置による全体的な復号処理の一例を示すフローチャートである。
【
図43】
図43は、復号装置の予測処理部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図44】
図44は、復号装置の予測処理部で行われる処理の他の例を示すフローチャートである。
【
図45】
図45は、復号装置におけるノーマルインターモードによるインター予測の例を示すフローチャートである。
【
図46】
図46は、復号装置の実装例を示すブロック図である。
【
図47】
図47は、DQ(Dependent Quantization)の概要を説明するための図である。
【
図48】
図48は、量子化部の状態遷移の一例を示す図である。
【
図49】
図49は、量子化部の状態遷移の一例を示す図である。
【
図50】
図50は、remainderの二値化の一例を示す図である。
【
図51】
図51は、ライスパラメタを決定する方法を説明するための図である。
【
図52】
図52は、remainderのゴロム・ライス符号化によって得られる二値信号の符号長(すなわちビット数)を示す図である。
【
図53】
図53は、第1態様の第1の例におけるエントロピー符号化部の全体的な処理動作を示すフローチャートである。
【
図54】
図54は、
図53のステップS110における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図55】
図55は、
図53のステップS120における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図56】
図56は、
図53のステップS130における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図57】
図57は、第1態様の第1の例におけるエントロピー符号化に関わるシンタックスを示す図である。
【
図58】
図58は、4×4個の係数を含むサブブロックの一具体例を示す図である。
【
図59】
図59は、
図58のサブブロックに含まれる各係数を、第1態様の第1の例におけるフラグ形式で表した一具体例を示す図である。
【
図60】
図60は、第1態様の第2の例におけるエントロピー符号化部の全体的な処理動作を示すフローチャートである。
【
図61】
図61は、
図60のステップS210における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図62】
図62は、
図60のステップS220における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図63】
図63は、
図60のステップS230における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図64】
図64は、第1態様の第2の例におけるエントロピー符号化に関わるシンタックスを示す図である。
【
図65】
図65は、
図58のサブブロックに含まれる各係数を、第1態様の第2の例におけるフラグ形式で表した一具体例を示す図である。
【
図66】
図66は、第2態様におけるエントロピー符号化部の全体的な処理動作を示すフローチャートである。
【
図67】
図67は、
図66のステップS330における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図68】
図68は、第2態様におけるエントロピー符号化に関わるシンタックスを示す図である。
【
図69】
図69は、
図58のサブブロックに含まれる各係数を、第2態様におけるフラグ形式で表した一具体例を示す図である。
【
図70】
図70は、第3態様におけるエントロピー符号化部の全体的な処理動作を示すフローチャートである。
【
図71】
図71は、
図70のステップS430における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図72】
図72は、実施の形態2における符号化装置の処理動作を示すフローチャートである。
【
図73】
図73は、実施の形態2における符号化装置による残部の符号化を示すフローチャートである。
【
図74】
図74は、実施の形態2における復号装置の処理動作を示すフローチャートである。
【
図75】
図75は、実施の形態2における復号装置によるフラグと残部の復号を示すフローチャートである。
【
図76】
図76は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図77】
図77は、スケーラブル符号化時の符号化構造の一例を示す概念図である。
【
図78】
図78は、スケーラブル符号化時の符号化構造の一例を示す概念図である。
【
図79】
図79は、webページの表示画面例を示す概念図である。
【
図80】
図80は、webページの表示画面例を示す概念図である。
【
図81】
図81は、スマートフォンの一例を示すブロック図である。
【
図82】
図82は、スマートフォンの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の一態様に係る符号化装置は、回路と、前記回路に接続されたメモリとを備え、前記回路は、動作において、変換および量子化された画像の構成単位に含まれる複数の係数のそれぞれについて、予め定められた順にしたがって当該係数の絶対値を符号化し、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数が正か負かを示す符号を符号化し、前記絶対値の符号化では、前記絶対値の最下位ビットであるパリティーを示す信号を符号化し、前記絶対値の最下位ビット以外の部分の符号化にフラグを用いるか否かを第1の条件および第2の条件に基づいて判定し、前記フラグを用いると判定される場合に、シンボル発生確率の更新を伴うCABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)によって前記フラグを符号化し、前記第1の条件は、前記絶対値の大きさに基づく条件であり、前記第2の条件は、前記構成単位に用いられる前記フラグの数を制限するための条件である。
【0015】
これにより、係数の絶対値の大きさに基づく第1の条件だけでなく、フラグの数を制限するための第2の条件にも基づいて、フラグを用いるか否かが判定されるため、フラグの数を適切に制限することができる。
【0016】
なお、フラグが用いられる場合には、係数の絶対値の符号量を抑えることができ、フラグが用いられない場合には、係数の絶対値の符号量、具体的には、係数の絶対値を表すためのremainderの符号量が増加する可能性がある。また、フラグの符号化には、適応的な可変のシンボル発生確率が用いられるCABACが適用され、remainderの符号化には、固定のシンボル発生確率が用いられるCABACのバイパス処理が適用される場合がある。ここで、可変のシンボル発生確率が用いられるCABACでは、バイパス処理よりも処理負担が大きい傾向がある。したがって、本開示の一態様に係る符号化装置では、フラグの数を適切に制限することができるため、その絶対値の符号量の低減と、その絶対値の符号化にかかる処理負担の軽減との両立を図ることができる。
【0017】
また、前記回路は、前記絶対値の符号化では、前記フラグが符号化されるごとに、符号化された前記フラグの数をカウントし、前記第1の条件が満たされていても前記第2の条件が満たされていなければ、前記絶対値の最下位ビット以外の部分の符号化に前記フラグを用いないと判定し、前記第2の条件は、カウントされた前記フラグの数に応じたカウント数が制限数未満であるという条件であってもよい。
【0018】
これにより、フラグが符号化されるごとに、その符号化されたフラグの数がカウントされるため、そのフラグの数をより適切に制限することができる。
【0019】
また、前記第1の条件は、前記絶対値が第1の値ではないという条件、または前記絶対値が第2の値以上であるという条件であってもよい。例えば、前記第1の値は0であり、前記第2の値は3であってもよい。
【0020】
これにより、絶対値が0ではない係数に対して、例えば、その絶対値が3以上であるか否かを示すフラグ(例えば、gt1_flag)の数を適切に制限することができる。または、絶対値が3以上の係数に対して、例えば、その絶対値が5以上であるか否かを示すフラグ(例えば、gt2_flag)の数を適切に制限することができる。
【0021】
また、前記フラグは、互に異なる複数種のフラグからなっていてもよい。
【0022】
これにより、例えば、上述のgt1_flagおよびgt2_flagなどの複数種のフラグのそれぞれの数を適切に制限することができる。
【0023】
また、前記回路は、前記絶対値の符号化では、さらに、前記フラグを用いることができない場合、または、前記絶対値を少なくとも1つのフラグのみで表現することができない場合に、前記絶対値を表現するための数値からなる残部を導出し、導出された前記残部をCABACのバイパス処理によって符号化してもよい。
【0024】
これにより、係数の絶対値を、フラグとして、または、少なくとも1つのフラグと残部(remainder)とからなるデータ群として適切に符号化することができる。
【0025】
また、前記回路は、前記残部の導出では、前記残部に対応する係数の前にある各係数に対して符号化された前記フラグの数に応じたカウント数が制限数に達しているか否かに応じて異なる数値を示すベースレベルを決定し、決定された前記ベースレベルを用いて前記残部を導出し、前記残部の符号化では、前記残部の導出に用いられた前記ベースレベルに基づいて、互に異なる複数の二値化方法から前記残部に対応する二値化方法を選択し、選択された前記二値化方法にしたがって前記残部を二値化し、二値化された前記残部を算術符号化してもよい。例えば、前記カウント数が前記制限数に達しているときに決定されるベースレベルは、前記制限数に達していないときに決定されるベースレベルよりも小さくてもよい。
【0026】
これにより、係数の絶対値に対する残部を、ベースレベルを用いて適切に導出することができる。さらに、そのベースレベルに基づいて、残部の二値化に用いられる二値化方法が選択されるため、その残部の符号量を適切に低減することができる。
【0027】
また、本開示の一態様に係る復号装置は、回路と、前記回路に接続されたメモリとを備え、前記回路は、動作において、符号化された画像の構成単位に含まれる複数の係数のそれぞれについて、予め定められた順にしたがって当該係数の絶対値を復号し、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数が正か負かを示す符号を復号し、前記構成単位では、それぞれ大きさに関する所定の条件を満たす絶対値を有するN個(Nは2以上の整数)の係数のうち、M個(MはN未満の整数)の係数のそれぞれの絶対値の符号化にはフラグが用いられ、残りの(N-M)個の係数のそれぞれの絶対値の符号化には前記フラグが用いられておらず、前記絶対値の復号では、前記絶対値の最下位ビットであるパリティーを示す信号を復号し、前記絶対値の最下位ビット以外の部分の符号化に前記フラグが用いられている場合には、シンボル発生確率の更新を伴うCABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)によって前記フラグを復号する。
【0028】
これにより、画像の構成単位の符号化に用いられるフラグの数が制限されていても、その符号化された画像の構成単位を適切に復号することができる。
【0029】
また、前記所定の条件は、前記係数の絶対値が第1の値ではないという条件、または前記係数の絶対値が第2の値以上であるという条件であってもよい。例えば、前記第1の値は0であり、前記第2の値は3であってもよい。
【0030】
これにより、絶対値が0ではない係数に対して、例えば、その絶対値が3以上であるか否かを示すフラグ(例えば、gt1_flag)の数が制限されていても、その符号化された画像の構成単位を適切に復号することができる。または、絶対値が3以上の係数に対して、例えば、その絶対値が5以上であるか否かを示すフラグ(例えば、gt2_flag)の数が制限されていても、その符号化された画像の構成単位を適切に復号することができる。
【0031】
また、前記フラグは、互に異なる複数種のフラグからなっていてもよい。
【0032】
これにより、例えば、上述のgt1_flagおよびgt2_flagなどの複数種のフラグのそれぞれの数が制限されていても、その符号化された画像の構成単位を適切に復号することができる。
【0033】
また、前記回路は、前記絶対値の復号では、さらに、前記絶対値を表現するための数値からなる残部が符号化されている場合には、前記残部をCABACのバイパス処理によって復号してもよい。
【0034】
これにより、係数の絶対値が、フラグとして、または、少なくとも1つのフラグと残部(remainder)とからなるデータ群として符号化されていても、その符号化された画像の構成単位を適切に復号することができる。
【0035】
また、前記回路は、前記残部の復号では、前記残部に対応する係数の前にある各係数に対して復号された前記フラグの数に応じたカウント数が制限数に達しているか否かに応じて異なる数値を示すベースレベルを決定し、前記残部を二値信号に算術復号し、決定された前記ベースレベルに基づいて、互に異なる複数の多値化方法から前記二値信号に対応する多値化方法を選択し、選択された前記多値化方法にしたがって前記二値信号を多値化してもよい。例えば、前記カウント数が前記制限数に達しているときに決定されるベースレベルは、前記制限数に達していないときに決定されるベースレベルよりも小さくてもよい。
【0036】
これにより、ベースレベルに基づいて、二値信号の多値化に用いられる多値化方法が選択されるため、その残部を適切に復号することができる。
【0037】
あるいは、例えば、本開示の一態様に係る符号化装置は、分割部と、イントラ予測部と、インター予測部と、ループフィルタ部と、変換部と、量子化部と、エントロピー符号化部とを備える。
【0038】
前記分割部は、画像に含まれるピクチャを複数のブロックに分割する。前記イントラ予測部は、前記ピクチャを用いて、前記ピクチャに含まれるブロックを予測する。前記インター予測部は、前記ピクチャとは異なる参照ピクチャを用いて、前記ブロックを予測する。ループフィルタ部は、前記イントラ予測部または前記インター予測部による予測によって生成された予測画像から再構成された画像に対して、フィルタを適用する。
【0039】
前記変換部は、前記予測画像と前記ブロックとの間の予測誤差を変換して、前記ブロックの変換係数を生成する。前記量子化部は、前記変換係数を量子化する。前記エントロピー符号化部は、量子化済みの前記変換係数を符号化する。
【0040】
また、例えば、前記エントロピー符号化部は、変換および量子化された画像の構成単位に含まれる複数の係数のそれぞれについて、予め定められた順にしたがって当該係数の絶対値を符号化し、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数が正か負かを示す符号を符号化し、前記絶対値の符号化では、前記絶対値の最下位ビットであるパリティーを示す信号を符号化し、前記絶対値の最下位ビット以外の部分の符号化にフラグを用いるか否かを第1の条件および第2の条件に基づいて判定し、前記フラグを用いると判定される場合に、シンボル発生確率の更新を伴うCABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)によって前記フラグを符号化し、前記第1の条件は、前記絶対値の大きさに基づく条件であり、前記第2の条件は、前記構成単位に用いられる前記フラグの数を制限するための条件である。
【0041】
あるいは、例えば、本開示の一態様に係る復号装置は、エントロピー復号部と、逆量子化部と、逆変換部と、イントラ予測部と、インター予測部と、ループフィルタ部とを備える。
【0042】
前記エントロピー復号部は、符号化された画像に含まれるピクチャを構成するブロックの量子化済みの変換係数を復号する。前記逆量子化部は、量子化済みの前記変換係数を逆量子化する。前記逆変換部は、前記変換係数を逆変換して、前記ブロックの予測誤差を取得する。
【0043】
前記イントラ予測部は、前記ピクチャを用いて前記ブロックを予測する。前記インター予測部は、前記ピクチャとは異なる参照ピクチャを用いて前記ブロックを予測する。ループフィルタ部は、前記イントラ予測部または前記インター予測部による予測によって生成された予測画像から再構成された画像に対して、フィルタを適用する。
【0044】
また、例えば、前記エントロピー復号部は、符号化された画像の構成単位に含まれる複数の係数のそれぞれについて、予め定められた順にしたがって当該係数の絶対値を復号し、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数が正か負かを示す符号を復号し、前記構成単位では、それぞれ大きさに関する所定の条件を満たす絶対値を有するN個(Nは2以上の整数)の係数のうち、M個(MはN未満の整数)の係数のそれぞれの絶対値の符号化にはフラグが用いられ、残りの(N-M)個の係数のそれぞれの絶対値の符号化には前記フラグが用いられておらず、前記絶対値の復号では、前記絶対値の最下位ビットであるパリティーを示す信号を復号し、前記絶対値の最下位ビット以外の部分の符号化に前記フラグが用いられている場合には、シンボル発生確率の更新を伴うCABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)によって前記フラグを復号する。
【0045】
さらに、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、又は、コンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、及び、記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0046】
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの関係及び順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。
【0047】
以下では、符号化装置および復号装置の実施の形態を説明する。実施の形態は、本開示の各態様で説明する処理および/または構成を適用可能な符号化装置および復号装置の例である。処理および/または構成は、実施の形態とは異なる符号化装置および復号装置においても実施可能である。例えば、実施の形態に対して適用される処理および/または構成に関して、例えば以下のいずれかを実施してもよい。
【0048】
(1)本開示の各態様で説明する実施の形態の符号化装置または復号装置の複数の構成要素のうちいずれかは、本開示の各態様のいずれかで説明する他の構成要素に置き換えまたは組み合わせられてもよい。
【0049】
(2)実施の形態の符号化装置または復号装置において、当該符号化装置または復号装置の複数の構成要素のうち一部の構成要素によって行われる機能または処理に、機能または処理の追加、置き換え、削除などの任意の変更がなされてもよい。例えば、いずれかの機能または処理は、本開示の各態様のいずれかで説明する他の機能または処理に、置き換えまたは組み合わせられてもよい。
【0050】
(3)実施の形態の符号化装置または復号装置が実施する方法において、当該方法に含まれる複数の処理のうちの一部の処理について、追加、置き換えおよび削除などの任意の変更がなされてもよい。例えば、方法におけるいずれかの処理は、本開示の各態様のいずれかで説明する他の処理に、置き換えまたは組み合わせられてもよい。
【0051】
(4)実施の形態の符号化装置または復号装置を構成する複数の構成要素のうちの一部の構成要素は、本開示の各態様のいずれかで説明する構成要素と組み合わせられてもよいし、本開示の各態様のいずれかで説明する機能の一部を備える構成要素と組み合わせられてもよいし、本開示の各態様で説明する構成要素が実施する処理の一部を実施する構成要素と組み合わせられてもよい。
【0052】
(5)実施の形態の符号化装置または復号装置の機能の一部を備える構成要素、または、実施の形態の符号化装置または復号装置の処理の一部を実施する構成要素は、本開示の各態様いずれかで説明する構成要素と、本開示の各態様でいずれかで説明する機能の一部を備える構成要素と、または、本開示の各態様のいずれかで説明する処理の一部を実施する構成要素と組み合わせまたは置き換えられてもよい。
【0053】
(6)実施の形態の符号化装置または復号装置が実施する方法において、当該方法に含まれる複数の処理のいずれかは、本開示の各態様のいずれかで説明する処理に、または、同様のいずれかの処理に、置き換えまたは組み合わせられてもよい。
【0054】
(7)実施の形態の符号化装置または復号装置が実施する方法に含まれる複数の処理のうちの一部の処理は、本開示の各態様のいずれかで説明する処理と組み合わせられてもよい。
【0055】
(8)本開示の各態様で説明する処理および/または構成の実施の仕方は、実施の形態の符号化装置または復号装置に限定されるものではない。例えば、処理および/または構成は、実施の形態において開示する動画像符号化または動画像復号とは異なる目的で利用される装置において実施されてもよい。
【0056】
[符号化装置]
まず、実施の形態に係る符号化装置を説明する。
図1は、実施の形態に係る符号化装置100の機能構成を示すブロック図である。符号化装置100は、動画像をブロック単位で符号化する動画像符号化装置である。
【0057】
図1に示すように、符号化装置100は、画像をブロック単位で符号化する装置であって、分割部102と、減算部104と、変換部106と、量子化部108と、エントロピー符号化部110と、逆量子化部112と、逆変換部114と、加算部116と、ブロックメモリ118と、ループフィルタ部120と、フレームメモリ122と、イントラ予測部124と、インター予測部126と、予測制御部128と、を備える。
【0058】
符号化装置100は、例えば、汎用プロセッサ及びメモリにより実現される。この場合、メモリに格納されたソフトウェアプログラムがプロセッサにより実行されたときに、プロセッサは、分割部102、減算部104、変換部106、量子化部108、エントロピー符号化部110、逆量子化部112、逆変換部114、加算部116、ループフィルタ部120、イントラ予測部124、インター予測部126及び予測制御部128として機能する。また、符号化装置100は、分割部102、減算部104、変換部106、量子化部108、エントロピー符号化部110、逆量子化部112、逆変換部114、加算部116、ループフィルタ部120、イントラ予測部124、インター予測部126及び予測制御部128に対応する専用の1以上の電子回路として実現されてもよい。
【0059】
以下に、符号化装置100の全体的な処理の流れを説明した後に、符号化装置100に含まれる各構成要素について説明する。
【0060】
[符号化処理の全体フロー]
図2は、符号化装置100による全体的な符号化処理の一例を示すフローチャートである。
【0061】
まず、符号化装置100の分割部102は、動画像である入力画像に含まれる各ピクチャを複数の固定サイズのブロック(例えば、128×128画素)に分割する(ステップSa_1)。そして、分割部102は、その固定サイズのブロックに対して分割パターン(ブロック形状ともいう)を選択する(ステップSa_2)。つまり、分割部102は、固定サイズのブロックを、その選択された分割パターンを構成する複数のブロックに、さらに分割する。そして、符号化装置100は、その複数のブロックのそれぞれについて、そのブロック(すなわち符号化対象ブロック)に対してステップSa_3~Sa_9の処理を行う。
【0062】
つまり、イントラ予測部124、インター予測部126および予測制御部128の全てまたは一部からなる予測処理部は、符号化対象ブロック(カレントブロックともいう)の予測信号(予測ブロックともいう)を生成する(ステップSa_3)。
【0063】
次に、減算部104は、符号化対象ブロックと予測ブロックとの差分を予測残差(差分ブロックともいう)として生成する(ステップSa_4)。
【0064】
次に、変換部106および量子化部108は、その差分ブロックに対して変換および量子化を行うことによって、複数の量子化係数を生成する(ステップSa_5)。なお、複数の量子化係数からなるブロックを係数ブロックともいう。
【0065】
次に、エントロピー符号化部110は、その係数ブロックと、予測信号の生成に関する予測パラメータとに対して符号化(具体的にはエントロピー符号化)を行うことによって、符号化信号を生成する(ステップSa_6)。なお、符号化信号は、符号化ビットストリーム、圧縮ビットストリーム、またはストリームともいう。
【0066】
次に、逆量子化部112および逆変換部114は、係数ブロックに対して逆量子化および逆変換を行うことによって、複数の予測残差(すなわち差分ブロック)を復元する(ステップSa_7)。
【0067】
次に、加算部116は、その復元された差分ブロックに予測ブロックを加算することによってカレントブロックを再構成画像(再構成ブロックまたは復号画像ブロックともいう)に再構成する(ステップSa_8)。これにより、再構成画像が生成される。
【0068】
この再構成画像が生成されると、ループフィルタ部120は、その再構成画像に対してフィルタリングを必要に応じて行う(ステップSa_9)。
【0069】
そして、符号化装置100は、ピクチャ全体の符号化が完了したか否かを判定し(ステップSa_10)、完了していないと判定する場合(ステップSa_10のNo)、ステップSa_2からの処理を繰り返し実行する。
【0070】
なお、上述の例では、符号化装置100は、固定サイズのブロックに対して1つの分割パターンを選択し、その分割パターンにしたがって各ブロックの符号化を行うが、複数の分割パターンのそれぞれにしたがって各ブロックの符号化を行ってもよい。この場合には、符号化装置100は、複数の分割パターンのそれぞれに対するコストを評価し、例えば最も小さいコストの分割パターンにしたがった符号化によって得られる符号化信号を、出力される符号化信号として選択してもよい。
【0071】
図示されているように、これらのステップSa_1~Sa_10の処理は、符号化装置100によってシーケンシャルに行われる。あるいは、それらの処理のうちの一部の複数の処理が並列に行われてもよく、それらの処理の順番の入れ替え等が行われてもよい。
【0072】
[分割部]
分割部102は、入力動画像に含まれる各ピクチャを複数のブロックに分割し、各ブロックを減算部104に出力する。例えば、分割部102は、まず、ピクチャを固定サイズ(例えば128x128)のブロックに分割する。他の固定ブロックサイズが採用されてもよい。この固定サイズのブロックは、符号化ツリーユニット(CTU)と呼ばれることがある。そして、分割部102は、例えば再帰的な四分木(quadtree)及び/又は二分木(binary tree)ブロック分割に基づいて、固定サイズのブロックの各々を可変サイズ(例えば64x64以下)のブロックに分割する。すなわち、分割部102は、分割パターンを選択する。この可変サイズのブロックは、符号化ユニット(CU)、予測ユニット(PU)あるいは変換ユニット(TU)と呼ばれることがある。なお、種々の処理例では、CU、PU及びTUは区別される必要はなく、ピクチャ内の一部又はすべてのブロックがCU、PU、TUの処理単位となってもよい。
【0073】
図3は、実施の形態におけるブロック分割の一例を示す概念図である。
図3において、実線は四分木ブロック分割によるブロック境界を表し、破線は二分木ブロック分割によるブロック境界を表す。
【0074】
ここでは、ブロック10は、128x128画素の正方形ブロック(128x128ブロック)である。この128x128ブロック10は、まず、4つの正方形の64x64ブロックに分割される(四分木ブロック分割)。
【0075】
左上の64x64ブロックは、さらに2つの矩形の32x64ブロックに垂直に分割され、左の32x64ブロックはさらに2つの矩形の16x64ブロックに垂直に分割される(二分木ブロック分割)。その結果、左上の64x64ブロックは、2つの16x64ブロック11、12と、32x64ブロック13とに分割される。
【0076】
右上の64x64ブロックは、2つの矩形の64x32ブロック14、15に水平に分割される(二分木ブロック分割)。
【0077】
左下の64x64ブロックは、4つの正方形の32x32ブロックに分割される(四分木ブロック分割)。4つの32x32ブロックのうち左上のブロック及び右下のブロックはさらに分割される。左上の32x32ブロックは、2つの矩形の16x32ブロックに垂直に分割され、右の16x32ブロックはさらに2つの16x16ブロックに水平に分割される(二分木ブロック分割)。右下の32x32ブロックは、2つの32x16ブロックに水平に分割される(二分木ブロック分割)。その結果、左下の64x64ブロックは、16x32ブロック16と、2つの16x16ブロック17、18と、2つの32x32ブロック19、20と、2つの32x16ブロック21、22とに分割される。
【0078】
右下の64x64ブロック23は分割されない。
【0079】
以上のように、
図3では、ブロック10は、再帰的な四分木及び二分木ブロック分割に基づいて、13個の可変サイズのブロック11~23に分割される。このような分割は、QTBT(quad-tree plus binary tree)分割と呼ばれることがある。
【0080】
なお、
図3では、1つのブロックが4つ又は2つのブロックに分割されていたが(四分木又は二分木ブロック分割)、分割はこれらに限定されない。例えば、1つのブロックが3つのブロックに分割されてもよい(三分木ブロック分割)。このような三分木ブロック分割を含む分割は、MBT(multi type tree)分割と呼ばれることがある。
【0081】
[ピクチャの構成 スライス/タイル]
ピクチャを並列にデコードするために、ピクチャはスライス単位またはタイル単位で構成される場合がある。スライス単位またはタイル単位からなるピクチャは、分割部102によって構成されてもよい。
【0082】
スライスは、ピクチャを構成する基本的な符号化の単位である。ピクチャは、例えば1つ以上のスライスから構成される。また、スライスは、1つ以上の連続するCTU(Coding Tree Unit)からなる。
【0083】
図4Aは、スライスの構成の一例を示す概念図である。例えば、ピクチャは、11×8個のCTUを含み、かつ、4つのスライス(スライス1-4)に分割される。スライス1は、16個のCTUからなり、スライス2は、21個のCTUからなり、スライス3は、29個のCTUからなり、スライス4は、22個のCTUからなる。ここで、ピクチャ内の各CTUは、いずれかのスライスに属する。スライスの形状は、ピクチャを水平方向に分割した形になる。スライスの境界は、画面端である必要はなく、画面内のCTUの境界のうちどこであってもよい。スライスの中のCTUの処理順(符号化順または復号順)は、例えばラスタ・スキャン順である。また、スライスは、ヘッダ情報と符号化データを含む。ヘッダ情報には、スライスの先頭のCTUアドレス、スライス・タイプなどそのスライスの特徴が記述されてもよい。
【0084】
タイルは、ピクチャを構成する矩形領域の単位である。各タイルにはTileIdと呼ばれる番号がラスタ・スキャン順に割り振られてもよい。
【0085】
図4Bは、タイルの構成の一例を示す概念図である。例えば、ピクチャは、11×8個のCTUを含み、かつ、4つの矩形領域のタイル(タイル1-4)に分割される。タイルが使用される場合、タイルが使用されない場合と比べてCTUの処理順が変更される。タイルが使用されない場合、ピクチャ内の複数のCTUはラスタ・スキャン順に処理される。タイルが使用される場合には、複数のタイルのそれぞれにおいて、少なくとも1つのCTUがラスタ・スキャン順に処理される。例えば、
図4Bに示すように、タイル1に含まれる複数のCTUの処理順は、タイル1の1行目左端からタイル1の1行目右端まで向かい、次に、タイル1の2行目左端からタイル1の2行目右端まで向かう順である。
【0086】
なお、1つのタイルは、1つ以上のスライスを含む場合があり、1つのスライスは、1つ以上のタイルを含む場合がある。
【0087】
[減算部]
減算部104は、分割部102から入力され、分割部102によって分割されたブロック単位で、原信号(原サンプル)から予測信号(以下に示す予測制御部128から入力される予測サンプル)を減算する。つまり、減算部104は、符号化対象ブロック(以下、カレントブロックという)の予測誤差(残差ともいう)を算出する。そして、減算部104は、算出された予測誤差(残差)を変換部106に出力する。
【0088】
原信号は、符号化装置100の入力信号であり、動画像を構成する各ピクチャの画像を表す信号(例えば輝度(luma)信号及び2つの色差(chroma)信号)である。以下において、画像を表す信号をサンプルということもある。
【0089】
[変換部]
変換部106は、空間領域の予測誤差を周波数領域の変換係数に変換し、変換係数を量子化部108に出力する。具体的には、変換部106は、例えば空間領域の予測誤差に対して所定の離散コサイン変換(DCT)又は離散サイン変換(DST)を行う。所定のDCT又はDSTは、予め定められていてもよい。
【0090】
なお、変換部106は、複数の変換タイプの中から適応的に変換タイプを選択し、選択された変換タイプに対応する変換基底関数(transform basis function)を用いて、予測誤差を変換係数に変換してもよい。このような変換は、EMT(explicit multiple core transform)又はAMT(adaptive multiple transform)と呼ばれることがある。
【0091】
複数の変換タイプは、例えば、DCT-II、DCT-V、DCT-VIII、DST-I及びDST-VIIを含む。
図5Aは、変換タイプ例に対応する変換基底関数を示す表である。
図5AにおいてNは入力画素の数を示す。これらの複数の変換タイプの中からの変換タイプの選択は、例えば、予測の種類(イントラ予測及びインター予測)に依存してもよいし、イントラ予測モードに依存してもよい。
【0092】
このようなEMT又はAMTを適用するか否かを示す情報(例えばEMTフラグまたはAMTフラグと呼ばれる)及び選択された変換タイプを示す情報は、通常、CUレベルで信号化される。なお、これらの情報の信号化は、CUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、ビットシーケンスレベル、ピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル又はCTUレベル)であってもよい。
【0093】
また、変換部106は、変換係数(変換結果)を再変換してもよい。このような再変換は、AST(adaptive secondary transform)又はNSST(non-separable secondary transform)と呼ばれることがある。例えば、変換部106は、イントラ予測誤差に対応する変換係数のブロックに含まれるサブブロック(例えば4x4サブブロック)ごとに再変換を行う。NSSTを適用するか否かを示す情報及びNSSTに用いられる変換行列に関する情報は、通常、CUレベルで信号化される。なお、これらの情報の信号化は、CUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、ピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル又はCTUレベル)であってもよい。
【0094】
変換部106には、Separableな変換と、Non-Separableな変換とが適用されてもよい。Separableな変換とは、入力の次元の数だけ方向ごとに分離して複数回変換を行う方式であり、Non-Separableな変換とは、入力が多次元であった際に2つ以上の次元をまとめて1次元とみなして、まとめて変換を行う方式である。
【0095】
例えば、Non-Separableな変換の一例として、入力が4×4のブロックであった場合にはそれを16個の要素を持ったひとつの配列とみなし、その配列に対して16×16の変換行列で変換処理を行うようなものが挙げられる。
【0096】
また、Non-Separableな変換のさらなる例では、4×4の入力ブロックを16個の要素を持ったひとつの配列とみなした後に、その配列に対してGivens回転を複数回行うような変換(Hypercube Givens Transform)が行われてもよい。
【0097】
変換部106での変換では、CU内の領域に応じて周波数領域に変換する基底のタイプを切替えることもできる。一例として、SVT(Spatially Varying Transform)がある。SVTでは、
図5Bに示すように、水平あるいは垂直方向にCUを2等分し、いずれか一方の領域のみ周波数領域への変換を行う。変換基底のタイプは領域毎に設定でき、例えば、DST7とDCT8が用いられる。本例ではCU内の2つの領域のうち、どちらか一方のみ変換を行い、もう一方は変換を行わないが、2つの領域共に変換してもよい。また、分割方法も2等分だけでなく、4等分、あるいは分割を示す情報を別途符号化してCU分割と同様にシグナリングするなど、より柔軟にすることもできる。なお、SVTは、SBT(Sub-block Transform)と呼ぶこともある。
【0098】
[量子化部]
量子化部108は、変換部106から出力された変換係数を量子化する。具体的には、量子化部108は、カレントブロックの変換係数を所定の走査順序で走査し、走査された変換係数に対応する量子化パラメータ(QP)に基づいて当該変換係数を量子化する。そして、量子化部108は、カレントブロックの量子化された変換係数(以下、量子化係数という)をエントロピー符号化部110及び逆量子化部112に出力する。所定の走査順序は、予め定められていてもよい。
【0099】
所定の走査順序は、変換係数の量子化/逆量子化のための順序である。例えば、所定の走査順序は、周波数の昇順(低周波から高周波の順)又は降順(高周波から低周波の順)で定義されてもよい。
【0100】
量子化パラメータ(QP)とは、量子化ステップ(量子化幅)を定義するパラメータである。例えば、量子化パラメータの値が増加すれば量子化ステップも増加する。つまり、量子化パラメータの値が増加すれば量子化誤差が増大する。
【0101】
また、量子化には、量子化マトリックスが使用される場合がある。例えば、4x4および8x8などの周波数変換サイズと、イントラ予測およびインター予測などの予測モードと、輝度および色差などの画素成分とに対応して数種類の量子化マトリックスが使われる場合がある。なお、量子化とは、所定の間隔でサンプリングした値を所定のレベルに対応づけてデジタル化することをいい、この技術分野では、丸め、ラウンディング、スケーリングといった他の表現を用いて参照されてもよいし、丸め、ラウンディング、スケーリングを採用してもよい。所定の間隔及びレベルは、予め定められていてもよい。
【0102】
量子化マトリックスを使用する方法として、符号化装置側で直接設定された量子化マトリックスを使用する方法と、デフォルトの量子化マトリックス(デフォルトマトリックス)を使用する方法とがある。符号化装置側では、量子化マトリックスを直接設定することにより、画像の特徴に応じた量子化マトリックスを設定することができる。しかし、この場合、量子化マトリックスの符号化によって、符号量が増加するというデメリットがある。
【0103】
一方、量子化マトリックスを使用せず、高域成分の係数も低域成分の係数も同じように量子化する方法もある。なお、この方法は、係数が全て同じ値である量子化マトリックス(フラットなマトリックス)を用いる方法に等しい。
【0104】
量子化マトリックスは、例えば、SPS(シーケンスパラメータセット:Sequence Parameter Set)またはPPS(ピクチャパラメータセット:Picture Parameter Set)で指定されてもよい。SPSは、シーケンスに対して用いられるパラメータを含み、PPSは、ピクチャに対して用いられるパラメータを含む。SPSとPPSとは、単にパラメータセットと呼ばれる場合がある。
【0105】
[エントロピー符号化部]
エントロピー符号化部110は、量子化部108から入力された量子化係数に基づいて符号化信号(符号化ビットストリーム)を生成する。具体的には、エントロピー符号化部110は、例えば、量子化係数を二値化し、二値信号を算術符号化し、圧縮されたビットストリームまたはシーケンスを出力する。
【0106】
[逆量子化部]
逆量子化部112は、量子化部108から入力された量子化係数を逆量子化する。具体的には、逆量子化部112は、カレントブロックの量子化係数を所定の走査順序で逆量子化する。そして、逆量子化部112は、カレントブロックの逆量子化された変換係数を逆変換部114に出力する。所定の走査順序は、予め定められていてもよい。
【0107】
[逆変換部]
逆変換部114は、逆量子化部112から入力された変換係数を逆変換することにより予測誤差(残差)を復元する。具体的には、逆変換部114は、変換係数に対して、変換部106による変換に対応する逆変換を行うことにより、カレントブロックの予測誤差を復元する。そして、逆変換部114は、復元された予測誤差を加算部116に出力する。
【0108】
なお、復元された予測誤差は、通常、量子化により情報が失われているので、減算部104が算出した予測誤差と一致しない。すなわち、復元された予測誤差には、通常、量子化誤差が含まれている。
【0109】
[加算部]
加算部116は、逆変換部114から入力された予測誤差と予測制御部128から入力された予測サンプルとを加算することによりカレントブロックを再構成する。そして、加算部116は、再構成されたブロックをブロックメモリ118及びループフィルタ部120に出力する。再構成ブロックは、ローカル復号ブロックと呼ばれることもある。
【0110】
[ブロックメモリ]
ブロックメモリ118は、例えば、イントラ予測で参照されるブロックであって符号化対象ピクチャ(カレントピクチャという)内のブロックを格納するための記憶部である。具体的には、ブロックメモリ118は、加算部116から出力された再構成ブロックを格納する。
【0111】
[フレームメモリ]
フレームメモリ122は、例えば、インター予測に用いられる参照ピクチャを格納するための記憶部であり、フレームバッファと呼ばれることもある。具体的には、フレームメモリ122は、ループフィルタ部120によってフィルタされた再構成ブロックを格納する。
【0112】
[ループフィルタ部]
ループフィルタ部120は、加算部116によって再構成されたブロックにループフィルタを施し、フィルタされた再構成ブロックをフレームメモリ122に出力する。ループフィルタとは、符号化ループ内で用いられるフィルタ(インループフィルタ)であり、例えば、デブロッキング・フィルタ(DFまたはDBF)、サンプルアダプティブオフセット(SAO)及びアダプティブループフィルタ(ALF)などを含む。
【0113】
ALFでは、符号化歪みを除去するための最小二乗誤差フィルタが適用され、例えばカレントブロック内の2x2サブブロックごとに、局所的な勾配(gradient)の方向及び活性度(activity)に基づいて複数のフィルタの中から選択された1つのフィルタが適用される。
【0114】
具体的には、まず、サブブロック(例えば2x2サブブロック)が複数のクラス(例えば15又は25クラス)に分類される。サブブロックの分類は、勾配の方向及び活性度に基づいて行われる。例えば、勾配の方向値D(例えば0~2又は0~4)と勾配の活性値A(例えば0~4)とを用いて分類値C(例えばC=5D+A)が算出される。そして、分類値Cに基づいて、サブブロックが複数のクラスに分類される。
【0115】
勾配の方向値Dは、例えば、複数の方向(例えば水平、垂直及び2つの対角方向)の勾配を比較することにより導出される。また、勾配の活性値Aは、例えば、複数の方向の勾配を加算し、加算結果を量子化することにより導出される。
【0116】
このような分類の結果に基づいて、複数のフィルタの中からサブブロックのためのフィルタが決定される。
【0117】
ALFで用いられるフィルタの形状としては例えば円対称形状が利用される。
図6A~
図6Cは、ALFで用いられるフィルタの形状の複数の例を示す図である。
図6Aは、5x5ダイヤモンド形状フィルタを示し、
図6Bは、7x7ダイヤモンド形状フィルタを示し、
図6Cは、9x9ダイヤモンド形状フィルタを示す。フィルタの形状を示す情報は、通常、ピクチャレベルで信号化される。なお、フィルタの形状を示す情報の信号化は、ピクチャレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、スライスレベル、タイルレベル、CTUレベル又はCUレベル)であってもよい。
【0118】
ALFのオン/オフは、例えば、ピクチャレベル又はCUレベルで決定されてもよい。例えば、輝度についてはCUレベルでALFを適用するか否かが決定されてもよく、色差についてはピクチャレベルでALFを適用するか否かが決定されてもよい。ALFのオン/オフを示す情報は、通常、ピクチャレベル又はCUレベルで信号化される。なお、ALFのオン/オフを示す情報の信号化は、ピクチャレベル又はCUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、スライスレベル、タイルレベル又はCTUレベル)であってもよい。
【0119】
選択可能な複数のフィルタ(例えば15又は25までのフィルタ)の係数セットは、通常、ピクチャレベルで信号化される。なお、係数セットの信号化は、ピクチャレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、スライスレベル、タイルレベル、CTUレベル、CUレベル又はサブブロックレベル)であってもよい。
【0120】
[ループフィルタ部 > デブロッキング・フィルタ]
デブロッキング・フィルタでは、ループフィルタ部120は、再構成画像のブロック境界にフィルタ処理を行うことによって、そのブロック境界に生じる歪みを減少させる。
【0121】
図7は、デブロッキング・フィルタとして機能するループフィルタ部120の詳細な構成の一例を示すブロック図である。
【0122】
ループフィルタ部120は、境界判定部1201、フィルタ判定部1203と、フィルタ処理部1205と、処理判定部1208と、フィルタ特性決定部1207と、スイッチ1202、1204および1206とを備える。
【0123】
境界判定部1201は、デブロッキング・フィルタ処理される画素(すなわち対象画素)がブロック境界付近に存在しているか否かを判定する。そして、境界判定部1201は、その判定結果をスイッチ1202および処理判定部1208に出力する。
【0124】
スイッチ1202は、対象画素がブロック境界付近に存在していると境界判定部1201によって判定された場合には、フィルタ処理前の画像を、スイッチ1204に出力する。逆に、スイッチ1202は、境界判定部1201によって対象画素がブロック境界付近に存在していないと判定された場合には、フィルタ処理前の画像をスイッチ1206に出力する。
【0125】
フィルタ判定部1203は、対象画素の周辺にある少なくとも1つの周辺画素の画素値に基づいて、対象画素に対してデブロッキング・フィルタ処理を行うか否かを判定する。そして、フィルタ判定部1203は、その判定結果をスイッチ1204および処理判定部1208に出力する。
【0126】
スイッチ1204は、対象画素にデブロッキング・フィルタ処理を行うとフィルタ判定部1203によって判定された場合には、スイッチ1202を介して取得したフィルタ処理前の画像を、フィルタ処理部1205に出力する。逆に、スイッチ1204は、対象画素にデブロッキング・フィルタ処理を行わないとフィルタ判定部1203によって判定された場合には、スイッチ1202を介して取得したフィルタ処理前の画像をスイッチ1206に出力する。
【0127】
フィルタ処理部1205は、スイッチ1202および1204を介してフィルタ処理前の画像を取得した場合には、フィルタ特性決定部1207によって決定されたフィルタ特性を有するデブロッキング・フィルタ処理を、対象画素に対して実行する。そして、フィルタ処理部1205は、そのフィルタ処理後の画素をスイッチ1206に出力する。
【0128】
スイッチ1206は、処理判定部1208による制御に応じて、デブロッキング・フィルタ処理されていない画素と、フィルタ処理部1205によってデブロッキング・フィルタ処理された画素とを選択的に出力する。
【0129】
処理判定部1208は、境界判定部1201およびフィルタ判定部1203のそれぞれの判定結果に基づいて、スイッチ1206を制御する。つまり、処理判定部1208は、対象画素がブロック境界付近に存在していると境界判定部1201によって判定され、かつ、対象画素にデブロッキング・フィルタ処理を行うとフィルタ判定部1203によって判定された場合には、デブロッキング・フィルタ処理された画素をスイッチ1206から出力させる。また、上述の場合以外では、処理判定部1208は、デブロッキング・フィルタ処理されていない画素をスイッチ1206から出力させる。このような画素の出力が繰り返し行われることによって、フィルタ処理後の画像がスイッチ1206から出力される。
【0130】
図8は、ブロック境界に対して対称なフィルタ特性を有するデブロッキング・フィルタの例を示す概念図である。
【0131】
デブロッキング・フィルタ処理では、例えば、画素値と量子化パラメータを用いて、特性の異なる2つのデブロッキング・フィルタ、すなわちストロングフィルタおよびウィークフィルタのうちの何れか1つが選択される。ストロングフィルタでは、
図8に示すように、ブロック境界を挟んで画素p0~p2と、画素q0~q2とが存在する場合、画素q0~q2のそれぞれの画素値は、例えば以下の式に示す演算を行うことによって、画素値q’0~q’2に変更される。
【0132】
q’0=(p1+2×p0+2×q0+2×q1+q2+4)/8
q’1=(p0+q0+q1+q2+2)/4
q’2=(p0+q0+q1+3×q2+2×q3+4)/8
【0133】
なお、上述の式において、p0~p2およびq0~q2は、画素p0~p2および画素q0~q2のそれぞれの画素値である。また、q3は、画素q2にブロック境界と反対側に隣接する画素q3の画素値である。また、上述の各式の右辺において、デブロッキング・フィルタ処理に用いられる各画素の画素値に乗算される係数が、フィルタ係数である。
【0134】
さらに、デブロッキング・フィルタ処理では、演算後の画素値が閾値を超えて設定されないように、クリップ処理が行われてもよい。このクリップ処理では、上述の式による演算後の画素値は、量子化パラメータから決定される閾値を用いて、「演算対象画素値±2×閾値」にクリップされる。これにより、過度な平滑化を防ぐことができる。
【0135】
図9は、デブロッキング・フィルタ処理が行われるブロック境界を説明するための概念図である。
図10は、Bs値の一例を示す概念図である。
【0136】
デブロッキング・フィルタ処理が行われるブロック境界は、例えば、
図9で示すような8×8画素ブロックのPU(Prediction Unit)またはTU(Transform Unit)の境界である。デブロッキング・フィルタ処理は、4行または4列を単位に行われ得る。まず、
図9に示すブロックPおよびブロックQに対して、
図10のようにBs(Boundary Strength)値が決定される。
【0137】
図10のBs値にしたがい、同一の画像に属するブロック境界であっても、異なる強さのデブロッキング・フィルタ処理を行うか否かが決定される。色差信号に対するデブロッキング・フィルタ処理は、Bs値が2の場合に行われる。輝度信号に対するデブロッキング・フィルタ処理は、Bs値が1以上であって、所定の条件が満たされた場合に行われる。所定の条件は、予め定められていてもよい。なお、Bs値の判定条件は
図10に示したものに限定されず、他のパラメータに基づいて決定されてもよい。
【0138】
[予測処理部(イントラ予測部・インター予測部・予測制御部)]
図11は、符号化装置100の予測処理部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。なお、予測処理部は、イントラ予測部124、インター予測部126、および予測制御部128の全てまたは一部の構成要素からなる。
【0139】
予測処理部は、カレントブロックの予測画像を生成する(ステップSb_1)。この予測画像は、予測信号または予測ブロックともいう。なお、予測信号には、例えばイントラ予測信号またはインター予測信号がある。具体的には、予測処理部は、予測ブロックの生成、差分ブロックの生成、係数ブロックの生成、差分ブロックの復元、および復号画像ブロックの生成が行われることによって既に得られている再構成画像を用いて、カレントブロックの予測画像を生成する。
【0140】
再構成画像は、例えば、参照ピクチャの画像であってもよいし、カレントブロックを含むピクチャであるカレントピクチャ内の符号化済みのブロックの画像であってもよい。カレントピクチャ内の符号化済みのブロックは、例えばカレントブロックの隣接ブロックである。
【0141】
図12は、符号化装置100の予測処理部で行われる処理の他の例を示すフローチャートである。
【0142】
予測処理部は、第1の方式で予測画像を生成し(ステップSc_1a)、第2の方式で予測画像を生成し(ステップSc_1b)、第3の方式で予測画像を生成する(ステップSc_1c)。第1の方式、第2の方式、および第3の方式は、予測画像を生成するための互いに異なる方式であって、それぞれ例えば、インター予測方式、イントラ予測方式、および、それら以外の予測方式であってもよい。これらの予測方式では、上述の再構成画像を用いてもよい。
【0143】
次に、予測処理部は、ステップSc_1a、Sc_1b、およびSc_1cで生成された複数の予測画像のうちの何れか1つを選択する(ステップSc_2)。この予測画像の選択、すなわち最終的な予測画像を得るための方式またはモードの選択は、生成された各予測画像に対するコストを算出し、そのコストに基づいて行われてもよい。または、その予測画像の選択は、符号化の処理に用いられるパラメータに基づいて行われてもよい。符号化装置100は、その選択された予測画像、方式またはモードを特定するための情報を符号化信号(符号化ビットストリームともいう)に信号化してもよい。その情報は、例えばフラグなどであってもよい。これにより、復号装置は、その情報に基づいて、符号化装置100において選択された方式またはモードにしたがって予測画像を生成することができる。なお、
図12に示す例では、予測処理部は、各方式で予測画像を生成した後に、何れかの予測画像を選択する。しかし、予測処理部は、それらの予測画像を生成する前に、上述の符号化の処理に用いられるパラメータに基づいて、方式またはモードを選択し、その方式またはモードにしたがって予測画像を生成してもよい。
【0144】
例えば、第1の方式および第2の方式は、それぞれイントラ予測およびインター予測であって、予測処理部は、これらの予測方式にしたがって生成される予測画像から、カレントブロックに対する最終的な予測画像を選択してもよい。
【0145】
図13は、符号化装置100の予測処理部で行われる処理の他の例を示すフローチャートである。
【0146】
まず、予測処理部は、イントラ予測によって予測画像を生成し(ステップSd_1a)、インター予測によって予測画像を生成する(ステップSd_1b)。なお、イントラ予測によって生成された予測画像を、イントラ予測画像ともいい、インター予測によって生成された予測画像を、インター予測画像ともいう。
【0147】
次に、予測処理部は、イントラ予測画像およびインター予測画像のそれぞれを評価する(ステップSd_2)。この評価には、コストが用いられてもよい。つまり、予測処理部は、イントラ予測画像およびインター予測画像のそれぞれのコストCを算出する。このコストCは、R-D最適化モデルの式、例えば、C=D+λ×Rによって算出され得る。この式において、Dは、予測画像の符号化歪であって、例えば、カレントブロックの画素値と予測画像の画素値との差分絶対値和などによって表される。また、Rは、予測画像の発生符号量であって、具体的には、予測画像を生成するための動き情報などの符号化に必要な符号量などである。また、λは、例えばラグランジュの未定乗数である。
【0148】
そして、予測処理部は、イントラ予測画像およびインター予測画像から、最も小さいコストCが算出された予測画像を、カレントブロックの最終的な予測画像として選択する(ステップSd_3)。つまり、カレントブロックの予測画像を生成するための予測方式またはモードが選択される。
【0149】
[イントラ予測部]
イントラ予測部124は、ブロックメモリ118に格納されたカレントピクチャ内のブロックを参照してカレントブロックのイントラ予測(画面内予測ともいう)を行うことで、予測信号(イントラ予測信号)を生成する。具体的には、イントラ予測部124は、カレントブロックに隣接するブロックのサンプル(例えば輝度値、色差値)を参照してイントラ予測を行うことでイントラ予測信号を生成し、イントラ予測信号を予測制御部128に出力する。
【0150】
例えば、イントラ予測部124は、規定の複数のイントラ予測モードのうちの1つを用いてイントラ予測を行う。複数のイントラ予測モードは、通常、1以上の非方向性予測モードと、複数の方向性予測モードと、を含む。規定の複数のモードは、予め規定されていてもよい。
【0151】
1以上の非方向性予測モードは、例えばH.265/HEVC規格で規定されたPlanar予測モード及びDC予測モードを含む。
【0152】
複数の方向性予測モードは、例えばH.265/HEVC規格で規定された33方向の予測モードを含む。なお、複数の方向性予測モードは、33方向に加えてさらに32方向の予測モード(合計で65個の方向性予測モード)を含んでもよい。
図14は、イントラ予測において用いられ得る全67個のイントラ予測モード(2個の非方向性予測モード及び65個の方向性予測モード)を示す概念図である。実線矢印は、H.265/HEVC規格で規定された33方向を表し、破線矢印は、追加された32方向を表す(2個の非方向性予測モードは
図14には図示されていない)。
【0153】
種々の処理例では、色差ブロックのイントラ予測において、輝度ブロックが参照されてもよい。つまり、カレントブロックの輝度成分に基づいて、カレントブロックの色差成分が予測されてもよい。このようなイントラ予測は、CCLM(cross-component linear model)予測と呼ばれることがある。このような輝度ブロックを参照する色差ブロックのイントラ予測モード(例えばCCLMモードと呼ばれる)は、色差ブロックのイントラ予測モードの1つとして加えられてもよい。
【0154】
イントラ予測部124は、水平/垂直方向の参照画素の勾配に基づいてイントラ予測後の画素値を補正してもよい。このような補正をともなうイントラ予測は、PDPC(position dependent intra prediction combination)と呼ばれることがある。PDPCの適用の有無を示す情報(例えばPDPCフラグと呼ばれる)は、通常、CUレベルで信号化される。なお、この情報の信号化は、CUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、ピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル又はCTUレベル)であってもよい。
【0155】
[インター予測部]
インター予測部126は、フレームメモリ122に格納された参照ピクチャであってカレントピクチャとは異なる参照ピクチャを参照してカレントブロックのインター予測(画面間予測ともいう)を行うことで、予測信号(インター予測信号)を生成する。インター予測は、カレントブロック又はカレントブロック内のカレントサブブロック(例えば4x4ブロック)の単位で行われる。例えば、インター予測部126は、カレントブロック又はカレントサブブロックについて参照ピクチャ内で動き探索(motion estimation)を行い、そのカレントブロック又はカレントサブブロックに最も一致する参照ブロック又はサブブロックを見つける。そして、インター予測部126は、参照ブロック又はサブブロックからカレントブロック又はサブブロックへの動き又は変化を補償する動き情報(例えば動きベクトル)を取得する。インター予測部126は、その動き情報に基づいて、動き補償(または動き予測)を行い、カレントブロック又はサブブロックのインター予測信号を生成する。インター予測部126は、生成されたインター予測信号を予測制御部128に出力する。
【0156】
動き補償に用いられた動き情報は、多様な形態でインター予測信号として信号化されてもよい。例えば、動きベクトルが信号化されてもよい。他の例として、動きベクトルと予測動きベクトル(motion vector predictor)との差分が信号化されてもよい。
【0157】
[インター予測の基本フロー]
図15は、インター予測の基本的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0158】
インター予測部126は、まず、予測画像を生成する(ステップSe_1~Se_3)。次に、減算部104は、カレントブロックと予測画像との差分を予測残差として生成する(ステップSe_4)。
【0159】
ここで、インター予測部126は、予測画像の生成では、カレントブロックの動きベクトル(MV)の決定(ステップSe_1およびSe_2)と、動き補償(ステップSe_3)とを行うことによって、その予測画像を生成する。また、インター予測部126は、MVの決定では、候補動きベクトル(候補MV)の選択(ステップSe_1)と、MVの導出(ステップSe_2)とを行うことによって、そのMVを決定する。候補MVの選択は、例えば、候補MVリストから少なくとも1つの候補MVを選択することによって行われる。また、MVの導出では、インター予測部126は、少なくとも1つの候補MVから、さらに少なくとも1つの候補MVを選択することによって、その選択された少なくとも1つの候補MVを、カレントブロックのMVとして決定してもよい。あるいは、インター予測部126は、その選択された少なくとも1つの候補MVのそれぞれについて、その候補MVで指示される参照ピクチャの領域を探索することによって、カレントブロックのMVを決定してもよい。なお、この参照ピクチャの領域を探索することを、動き探索(motion estimation)と称してもよい。
【0160】
また、上述の例では、ステップSe_1~Se_3は、インター予測部126によって行われるが、例えばステップSe_1またはステップSe_2などの処理は、符号化装置100に含まれる他の構成要素によって行われてもよい。
【0161】
[動きベクトルの導出のフロー]
図16は、動きベクトル導出の一例を示すフローチャートである。
【0162】
インター予測部126は、動き情報(例えばMV)を符号化するモードで、カレントブロックのMVを導出する。この場合、例えば動き情報が予測パラメータとして符号化されて、信号化される。つまり、符号化された動き情報が、符号化信号(符号化ビットストリームともいう)に含まれる。
【0163】
あるいは、インター予測部126は、動き情報を符号化しないモードでMVを導出する。この場合には、動き情報は、符号化信号に含まれない。
【0164】
ここで、MV導出のモードには、後述のノーマルインターモード、マージモード、FRUCモードおよびアフィンモードなどがあってもよい。これらのモードのうち、動き情報を符号化するモードには、ノーマルインターモード、マージモード、およびアフィンモード(具体的には、アフィンインターモードおよびアフィンマージモード)などがある。なお、動き情報には、MVだけでなく、後述の予測動きベクトル選択情報が含まれてもよい。また、動き情報を符号化しないモードには、FRUCモードなどがある。インター予測部126は、これらの複数のモードから、カレントブロックのMVを導出するためのモードを選択し、その選択されたモードを用いてカレントブロックのMVを導出する。
【0165】
図17は、動きベクトル導出の他の例を示すフローチャートである。
【0166】
インター予測部126は、差分MVを符号化するモードで、カレントブロックのMVを導出する。この場合、例えば差分MVが予測パラメータとして符号化されて、信号化される。つまり、符号化された差分MVが、符号化信号に含まれる。この差分MVは、カレントブロックのMVと、その予測MVとの差である。
【0167】
あるいは、インター予測部126は、差分MVを符号化しないモードでMVを導出する。この場合には、符号化された差分MVは、符号化信号に含まれない。
【0168】
ここで、上述のようにMVの導出のモードには、後述のノーマルインター、マージモード、FRUCモードおよびアフィンモードなどがある。これらのモードのうち、差分MVを符号化するモードには、ノーマルインターモードおよびアフィンモード(具体的には、アフィンインターモード)などがある。また、差分MVを符号化しないモードには、FRUCモード、マージモードおよびアフィンモード(具体的には、アフィンマージモード)などがある。インター予測部126は、これらの複数のモードから、カレントブロックのMVを導出するためのモードを選択し、その選択されたモードを用いてカレントブロックのMVを導出する。
【0169】
[動きベクトルの導出のフロー]
図18は、動きベクトル導出の他の例を示すフローチャートである。MV導出のモード、すなわちインター予測モードには、複数のモードがあり、大きく分けて、差分MVを符号化するモードと、差分動きベクトルを符号化しないモードとがある。差分MVを符号化しないモードには、マージモード、FRUCモード、およびアフィンモード(具体的には、アフィンマージモード)がある。これらのモードの詳細については、後述するが、簡単には、マージモードは、周辺の符号化済みブロックから動きベクトルを選択することによって、カレントブロックのMVを導出するモードであり、FRUCモードは、符号化済み領域間で探索を行うことによって、カレントブロックのMVを導出するモードである。また、アフィンモードは、アフィン変換を想定して、カレントブロックを構成する複数のサブブロックそれぞれの動きベクトルを、カレントブロックのMVとして導出するモードである。
【0170】
具体的には、図示されるように、インター予測部126は、インター予測モード情報が0を示す場合(Sf_1で0)、マージモードにより動きベクトルを導出する(Sf_2)。また、インター予測部126は、インター予測モード情報が1を示す場合(Sf_1で1)、FRUCモードにより動きベクトルを導出する(Sf_3)。また、インター予測部126は、インター予測モード情報が2を示す場合(Sf_1で2)、アフィンモード(具体的には、アフィンマージモード)により動きベクトルを導出する(Sf_4)。また、インター予測部126は、インター予測モード情報が3を示す場合(Sf_1で3)、差分MVを符号化するモード(例えば、ノーマルインターモード)により動きベクトルを導出する(Sf_5)。
【0171】
[MV導出 > ノーマルインターモード]
ノーマルインターモードは、候補MVによって示される参照ピクチャの領域から、カレントブロックの画像に類似するブロックに基づいて、カレントブロックのMVを導出するインター予測モードである。また、このノーマルインターモードでは、差分MVが符号化される。
【0172】
図19は、ノーマルインターモードによるインター予測の例を示すフローチャートである。
【0173】
インター予測部126は、まず、時間的または空間的にカレントブロックの周囲にある複数の符号化済みブロックのMVなどの情報に基づいて、そのカレントブロックに対して複数の候補MVを取得する(ステップSg_1)。つまり、インター予測部126は、候補MVリストを作成する。
【0174】
次に、インター予測部126は、ステップSg_1で取得された複数の候補MVの中から、N個(Nは2以上の整数)の候補MVのそれぞれを予測動きベクトル候補(予測MV候補ともいう)として、所定の優先順位に従って抽出する(ステップSg_2)。なお、その優先順位は、N個の候補MVのそれぞれに対して予め定められていてもよい。
【0175】
次に、インター予測部126は、そのN個の予測動きベクトル候補の中から1つの予測動きベクトル候補を、カレントブロックの予測動きベクトル(予測MVともいう)として選択する(ステップSg_3)。このとき、インター予測部126は、選択された予測動きベクトルを識別するための予測動きベクトル選択情報をストリームに符号化する。なお、ストリームは、上述の符号化信号または符号化ビットストリームである。
【0176】
次に、インター予測部126は、符号化済み参照ピクチャを参照し、カレントブロックのMVを導出する(ステップSg_4)。このとき、インター予測部126は、さらに、その導出されたMVと予測動きベクトルとの差分値を差分MVとしてストリームに符号化する。なお、符号化済み参照ピクチャは、符号化後に再構成された複数のブロックからなるピクチャである。
【0177】
最後に、インター予測部126は、その導出されたMVと符号化済み参照ピクチャとを用いてカレントブロックに対して動き補償を行ことにより、そのカレントブロックの予測画像を生成する(ステップSg_5)。なお、予測画像は、上述のインター予測信号である。
【0178】
また、符号化信号に含められる、予測画像の生成に用いられたインター予測モード(上述の例ではノーマルインターモード)を示す情報は、例えば予測パラメータとして符号化される。
【0179】
なお、候補MVリストは、他のモードに用いられるリストと共通に用いられてもよい。また、候補MVリストに関する処理を、他のモードに用いられるリストに関する処理に適用してもよい。この候補MVリストに関する処理は、例えば、候補MVリストからの候補MVの抽出もしくは選択、候補MVの並び替え、または、候補MVの削除などである。
【0180】
[MV導出 > マージモード]
マージモードは、候補MVリストから候補MVをカレントブロックのMVとして選択することによって、そのMVを導出するインター予測モードである。
【0181】
図20は、マージモードによるインター予測の例を示すフローチャートである。
【0182】
インター予測部126は、まず、時間的または空間的にカレントブロックの周囲にある複数の符号化済みブロックのMVなどの情報に基づいて、そのカレントブロックに対して複数の候補MVを取得する(ステップSh_1)。つまり、インター予測部126は、候補MVリストを作成する。
【0183】
次に、インター予測部126は、ステップSh_1で取得された複数の候補MVの中から1つの候補MVを選択することによって、カレントブロックのMVを導出する(ステップSh_2)。このとき、インター予測部126は、選択された候補MVを識別するためのMV選択情報をストリームに符号化する。
【0184】
最後に、インター予測部126は、その導出されたMVと符号化済み参照ピクチャとを用いてカレントブロックに対して動き補償を行ことにより、そのカレントブロックの予測画像を生成する(ステップSh_3)。
【0185】
また、符号化信号に含められる、予測画像の生成に用いられたインター予測モード(上述の例ではマージモード)を示す情報は、例えば予測パラメータとして符号化される。
【0186】
図21は、マージモードによるカレントピクチャの動きベクトル導出処理の一例を説明するための概念図である。
【0187】
まず、予測MVの候補を登録した予測MVリストを生成する。予測MVの候補としては、対象ブロックの空間的に周辺に位置する複数の符号化済みブロックが持つMVである空間隣接予測MV、符号化済み参照ピクチャにおける対象ブロックの位置を投影した近辺のブロックが持つMVである時間隣接予測MV、空間隣接予測MVと時間隣接予測MVのMV値を組み合わせて生成したMVである結合予測MV、および値がゼロのMVであるゼロ予測MV等がある。
【0188】
次に、予測MVリストに登録されている複数の予測MVの中から1つの予測MVを選択することで、対象ブロックのMVとして決定する。
【0189】
さらに、可変長符号化部では、どの予測MVを選択したかを示す信号であるmerge_idxをストリームに記述して符号化する。
【0190】
なお、
図21で説明した予測MVリストに登録する予測MVは一例であり、図中の個数とは異なる個数であったり、図中の予測MVの一部の種類を含まない構成であったり、図中の予測MVの種類以外の予測MVを追加した構成であったりしてもよい。
【0191】
マージモードにより導出した対象ブロックのMVを用いて、後述するDMVR(decoder motion vector refinement)処理を行うことによって最終的なMVを決定してもよい。
【0192】
なお、予測MVの候補は、上述の候補MVであり、予測MVリストは、上述の候補MVリストである。また、候補MVリストを、候補リストと称してもよい。また、merge_idxは、MV選択情報である。
【0193】
[MV導出 > FRUCモード]
動き情報は符号化装置側から信号化されずに、復号装置側で導出されてもよい。なお、上述のように、H.265/HEVC規格で規定されたマージモードが用いられてもよい。また例えば、復号装置側で動き探索を行うことにより動き情報が導出されてもよい。実施の形態において、復号装置側では、カレントブロックの画素値を用いずに動き探索が行われる。
【0194】
ここで、復号装置側で動き探索を行うモードについて説明する。この復号装置側で動き探索を行うモードは、PMMVD(pattern matched motion vector derivation)モード又はFRUC(frame rate up-conversion)モードと呼ばれることがある。
【0195】
フローチャートの形式でFRUC処理の一例を
図22に示す。まず、カレントブロックに空間的又は時間的に隣接する符号化済みブロックの動きベクトルを参照して、各々が予測動きベクトル(MV)を有する複数の候補のリスト(すなわち、候補MVリストであって、マージリストと共通であってもよい)が生成される(ステップSi_1)。次に、候補MVリストに登録されている複数の候補MVの中からベスト候補MVを選択する(ステップSi_2)。例えば、候補MVリストに含まれる各候補MVの評価値が算出され、評価値に基づいて1つの候補MVが選択される。そして、選択された候補の動きベクトルに基づいて、カレントブロックのための動きベクトルが導出される(ステップSi_4)。具体的には、例えば、選択された候補の動きベクトル(ベスト候補MV)がそのままカレントブロックのための動きベクトルとして導出される。また例えば、選択された候補の動きベクトルに対応する参照ピクチャ内の位置の周辺領域において、パターンマッチングを行うことにより、カレントブロックのための動きベクトルが導出されてもよい。すなわち、ベスト候補MVの周辺の領域に対して、参照ピクチャにおけるパターンマッチングおよび評価値を用いた探索を行い、さらに評価値が良い値となるMVがあった場合は、ベスト候補MVを前記MVに更新して、それをカレントブロックの最終的なMVとしてもよい。より良い評価値を有するMVへの更新を行う処理を実施しない構成とすることも可能である。
【0196】
最後に、インター予測部126は、その導出されたMVと符号化済み参照ピクチャとを用いてカレントブロックに対して動き補償を行ことにより、そのカレントブロックの予測画像を生成する(ステップSi_5)。
【0197】
サブブロック単位で処理を行う場合も全く同様の処理としてもよい。
【0198】
評価値は、種々の方法によって算出されてもよい。例えば、動きベクトルに対応する参照ピクチャ内の領域の再構成画像と、所定の領域(その領域は、例えば、以下に示すように、他の参照ピクチャの領域またはカレントピクチャの隣接ブロックの領域であってもよい)の再構成画像とを比較する。所定の領域は予め定められていてもよい。
【0199】
そして、2つの再構成画像の画素値の差分を算出して、動きベクトルの評価値に用いてもよい。なお、差分値に加えてそれ以外の情報を用いて評価値を算出してもよい。
【0200】
次に、パターンマッチングの例について詳細に説明する。まず、候補MVリスト(例えばマージリスト)に含まれる1つの候補MVを、パターンマッチングによる探索のスタートポイントとして選択する。例えば、パターンマッチングとしては、第1パターンマッチング又は第2パターンマッチングが用いられ得る。第1パターンマッチング及び第2パターンマッチングは、それぞれ、バイラテラルマッチング(bilateral matching)及びテンプレートマッチング(template matching)と呼ばれることがある。
【0201】
[MV導出 > FRUC > バイラテラルマッチング]
第1パターンマッチングでは、異なる2つの参照ピクチャ内の2つのブロックであってカレントブロックの動き軌道(motion trajectory)に沿う2つのブロックの間でパターンマッチングが行われる。したがって、第1パターンマッチングでは、上述した候補の評価値の算出のための所定の領域として、カレントブロックの動き軌道に沿う他の参照ピクチャ内の領域が用いられる。所定の領域は、予め定められていてもよい。
【0202】
図23は、動き軌道に沿う2つの参照ピクチャにおける2つのブロック間での第1パターンマッチング(バイラテラルマッチング)の一例を説明するための概念図である。
図23に示すように、第1パターンマッチングでは、カレントブロック(Cur block)の動き軌道に沿う2つのブロックであって異なる2つの参照ピクチャ(Ref0、Ref1)内の2つのブロックのペアの中で最もマッチするペアを探索することにより2つの動きベクトル(MV0、MV1)が導出される。具体的には、カレントブロックに対して、候補MVで指定された第1の符号化済み参照ピクチャ(Ref0)内の指定位置における再構成画像と、前記候補MVを表示時間間隔でスケーリングした対称MVで指定された第2の符号化済み参照ピクチャ(Ref1)内の指定位置における再構成画像との差分を導出し、得られた差分値を用いて評価値を算出する。複数の候補MVの中で最も評価値が良い値となる候補MVを最終MVとして選択することが可能であり、良い結果をもたらし得る。
【0203】
連続的な動き軌道の仮定の下では、2つの参照ブロックを指し示す動きベクトル(MV0、MV1)は、カレントピクチャ(Cur Pic)と2つの参照ピクチャ(Ref0、Ref1)との間の時間的な距離(TD0、TD1)に対して比例する。例えば、カレントピクチャが時間的に2つの参照ピクチャの間に位置し、カレントピクチャから2つの参照ピクチャへの時間的な距離が等しい場合、第1パターンマッチングでは、鏡映対称な双方向の動きベクトルが導出される。
【0204】
[MV導出 > FRUC > テンプレートマッチング]
第2パターンマッチング(テンプレートマッチング)では、カレントピクチャ内のテンプレート(カレントピクチャ内でカレントブロックに隣接するブロック(例えば上及び/又は左隣接ブロック))と参照ピクチャ内のブロックとの間でパターンマッチングが行われる。したがって、第2パターンマッチングでは、上述した候補の評価値の算出のための所定の領域として、カレントピクチャ内のカレントブロックに隣接するブロックが用いられる。
【0205】
図24は、カレントピクチャ内のテンプレートと参照ピクチャ内のブロックとの間でのパターンマッチング(テンプレートマッチング)の一例を説明するための概念図である。
図24に示すように、第2パターンマッチングでは、カレントピクチャ(Cur Pic)内でカレントブロック(Cur block)に隣接するブロックと最もマッチするブロックを参照ピクチャ(Ref0)内で探索することによりカレントブロックの動きベクトルが導出される。具体的には、カレントブロックに対して、左隣接および上隣接の両方もしくはどちらか一方の符号化済み領域の再構成画像と、候補MVで指定された符号化済み参照ピクチャ(Ref0)内の同等位置における再構成画像との差分を導出し、得られた差分値を用いて評価値を算出し、複数の候補MVの中で最も評価値が良い値となる候補MVをベスト候補MVとして選択することが可能である。
【0206】
このようなFRUCモードを適用するか否かを示す情報(例えばFRUCフラグと呼ばれる)は、CUレベルで信号化されてもよい。また、FRUCモードが適用される場合(例えばFRUCフラグが真の場合)、適用可能なパターンマッチングの方法(第1パターンマッチング又は第2パターンマッチング)を示す情報がCUレベルで信号化されてもよい。なお、これらの情報の信号化は、CUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、ピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル、CTUレベル又はサブブロックレベル)であってもよい。
【0207】
[MV導出 > アフィンモード]
次に、複数の隣接ブロックの動きベクトルに基づいてサブブロック単位で動きベクトルを導出するアフィンモードについて説明する。このモードは、アフィン動き補償予測(affine motion compensation prediction)モードと呼ばれることがある。
【0208】
図25Aは、複数の隣接ブロックの動きベクトルに基づくサブブロック単位の動きベクトルの導出の一例を説明するための概念図である。
図25Aにおいて、カレントブロックは、16の4x4サブブロックを含む。ここでは、隣接ブロックの動きベクトルに基づいてカレントブロックの左上角制御ポイントの動きベクトルv
0が導出され、同様に、隣接サブブロックの動きベクトルに基づいてカレントブロックの右上角制御ポイントの動きベクトルv
1が導出される。そして、以下の式(1A)により、2つの動きベクトルv
0及びv
1が投影されてもよく、カレントブロック内の各サブブロックの動きベクトル(v
x,v
y)が導出されてもよい。
【0209】
【0210】
ここで、x及びyは、それぞれ、サブブロックの水平位置及び垂直位置を示し、wは、所定の重み係数を示す。所定の重み係数は、予め決定されていてもよい。
【0211】
このようなアフィンモードを示す情報(例えばアフィンフラグと呼ばれる)は、CUレベルで信号化されてもよい。なお、このアフィンモードを示す情報の信号化は、CUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、ピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル、CTUレベル又はサブブロックレベル)であってもよい。
【0212】
また、このようなアフィンモードでは、左上及び右上角制御ポイントの動きベクトルの導出方法が異なるいくつかのモードを含んでもよい。例えば、アフィンモードには、アフィンインター(アフィンノーマルインターともいう)モードと、アフィンマージモードの2つのモードがある。
【0213】
[MV導出 > アフィンモード]
図25Bは、3つの制御ポイントを有するアフィンモードにおけるサブブロック単位の動きベクトルの導出の一例を説明するための概念図である。
図25Bにおいて、カレントブロックは、16の4x4サブブロックを含む。ここでは、隣接ブロックの動きベクトルに基づいてカレントブロックの左上角制御ポイントの動きベクトルv
0が導出され、同様に、隣接ブロックの動きベクトルに基づいてカレントブロックの右上角制御ポイントの動きベクトルv
1、隣接ブロックの動きベクトルに基づいてカレントブロックの左下角制御ポイントの動きベクトルv
2が導出される。そして、以下の式(1B)により、3つの動きベクトルv
0、v
1及びv
2が投影されてもよく、カレントブロック内の各サブブロックの動きベクトル(v
x,v
y)が導出されてもよい。
【0214】
【0215】
ここで、x及びyは、それぞれ、サブブロック中心の水平位置及び垂直位置を示し、wは、カレントブロックの幅、hは、カレントブロックの高さを示す。
【0216】
異なる制御ポイント数(例えば、2つと3つ)のアフィンモードは、CUレベルで切り替えて信号化されてもよい。なお、CUレベルで使用しているアフィンモードの制御ポイント数を示す情報を、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、ピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル、CTUレベル又はサブブロックレベル)で信号化してもよい。
【0217】
また、このような3つの制御ポイントを有するアフィンモードでは、左上、右上及び左下角制御ポイントの動きベクトルの導出方法が異なるいくつかのモードを含んでもよい。例えば、アフィンモードには、アフィンインター(アフィンノーマルインターともいう)モードと、アフィンマージモードの2つのモードがある。
【0218】
[MV導出 > アフィンマージモード]
図26A、
図26Bおよび
図26Cは、アフィンマージモードを説明するための概念図である。
【0219】
アフィンマージモードでは、
図26Aに示すように、例えば、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックA(左)、ブロックB(上)、ブロックC(右上)、ブロックD(左下)およびブロックE(左上)のうち、アフィンモードで符号化されたブロックに対応する複数の動きベクトルに基づいて、カレントブロックの制御ポイントのそれぞれの予測動きベクトルが算出される。具体的には、符号化済みブロックA(左)、ブロックB(上)、ブロックC(右上)、ブロックD(左下)およびブロックE(左上)の順序でこれらのブロックが検査され、アフィンモードで符号化された最初の有効なブロックが特定される。この特定されたブロックに対応する複数の動きベクトルに基づいて、カレントブロックの制御ポイントの予測動きベクトルが算出される。
【0220】
例えば、
図26Bに示すように、カレントブロックの左に隣接するブロックAが2つの制御ポイントを有するアフィンモードで符号化されている場合は、ブロックAを含む符号化済みブロックの左上角および右上角の位置に投影した動きベクトルv
3およびv
4が導出される。そして、導出された動きベクトルv
3およびv
4から、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
0と、右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
1が算出される。
【0221】
例えば、
図26Cに示すように、カレントブロックの左に隣接するブロックAが3つの制御ポイントを有するアフィンモードで符号化されている場合は、ブロックAを含む符号化済みブロックの左上角、右上角および左下角の位置に投影した動きベクトルv
3、v
4およびv
5が導出される。そして、導出された動きベクトルv
3、v
4およびv
5から、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
0と、右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
1と、左下角の制御ポイントの予測動きベクトルv
2が算出される。
【0222】
なお、後述する
図29のステップSj_1におけるカレントブロックの制御ポイントのそれぞれの予測動きベクトルの導出に、この予測動きベクトル導出方法を用いてもよい。
【0223】
図27は、アフィンマージモードの一例を示すフローチャートである。
【0224】
アフィンマージモードでは、図示されるように、まず、インター予測部126は、カレントブロックの制御ポイントのそれぞれの予測MVを導出する(ステップSk_1)。制御ポイントは、
図25Aに示すように、カレントブロックの左上角および右上角のポイント、或いは
図25Bに示すように、カレントブロックの左上角、右上角および左下角のポイントである。
【0225】
つまり、インター予測部126は、
図26Aに示すように、符号化済みブロックA(左)、ブロックB(上)、ブロックC(右上)、ブロックD(左下)およびブロックE(左上)の順序にこれらのブロックを検査し、アフィンモードで符号化された最初の有効なブロックを特定する。
【0226】
そして、ブロックAが特定されブロックAが2つの制御ポイントを有する場合、
図26Bに示すように、インター予測部126は、ブロックAを含む符号化済みブロックの左上角および右上角の動きベクトルv
3およびv
4から、カレントブロックの左上角の制御ポイントの動きベクトルv
0と、右上角の制御ポイントの動きベクトルv
1とを算出する。例えば、インター予測部126は、符号化済みブロックの左上角および右上角の動きベクトルv
3およびv
4を、カレントブロックに投影することによって、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
0と、右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
1とを算出する。
【0227】
或いは、ブロックAが特定されブロックAが3つの制御ポイントを有する場合、
図26Cに示すように、インター予測部126は、ブロックAを含む符号化済みブロックの左上角、右上角および左下角の動きベクトルv
3、v
4およびv
5から、カレントブロックの左上角の制御ポイントの動きベクトルv
0と、右上角の制御ポイントの動きベクトルv
1、左下角の制御ポイントの動きベクトルv
2とを算出する。例えば、インター予測部126は、符号化済みブロックの左上角、右上角および左下角の動きベクトルv
3、v
4およびv
5を、カレントブロックに投影することによって、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
0と、右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
1、左下角の制御ポイントの動きベクトルv
2とを算出する。
【0228】
次に、インター予測部126は、カレントブロックに含まれる複数のサブブロックのそれぞれについて、動き補償を行う。すなわち、インター予測部126は、その複数のサブブロックのそれぞれについて、2つの予測動きベクトルv0およびv1と上述の式(1A)、或いは3つの予測動きベクトルv0、v1およびv2と上述の式(1B)とを用いて、そのサブブロックの動きベクトルをアフィンMVとして算出する(ステップSk_2)。そして、インター予測部126は、それらのアフィンMVおよび符号化済み参照ピクチャを用いてそのサブブロックに対して動き補償を行う(ステップSk_3)。その結果、カレントブロックに対して動き補償が行われ、そのカレントブロックの予測画像が生成される。
【0229】
[MV導出 > アフィンインターモード]
図28Aは、2つの制御ポイントを有するアフィンインターモードを説明するための概念図である。
【0230】
このアフィンインターモードでは、
図28Aに示すように、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックA、ブロックBおよびブロックCの動きベクトルから選択された動きベクトルが、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
0として用いられる。同様に、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックDおよびブロックEの動きベクトルから選択された動きベクトルが、カレントブロックの右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
1として用いられる。
【0231】
図28Bは、3つの制御ポイントを有するアフィンインターモードを説明するための概念図である。
【0232】
このアフィンインターモードでは、
図28Bに示すように、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックA、ブロックBおよびブロックCの動きベクトルから選択された動きベクトルが、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
0として用いられる。同様に、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックDおよびブロックEの動きベクトルから選択された動きベクトルが、カレントブロックの右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
1として用いられる。更に、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックFおよびブロックGの動きベクトルから選択された動きベクトルが、カレントブロックの左下角の制御ポイントの予測動きベクトルv
2として用いられる。
【0233】
図29は、アフィンインターモードの一例を示すフローチャートである。
【0234】
図示されるように、アフィンインターモードでは、まず、インター予測部126は、カレントブロックの2つまたは3つの制御ポイントのそれぞれの予測MV(v
0,v
1)または(v
0,v
1,v
2)を導出する(ステップSj_1)。制御ポイントは、
図25Aまたは
図25Bに示すように、カレントブロックの左上角、右上角或いは左下角のポイントである。
【0235】
つまり、インター予測部126は、
図28Aまたは
図28Bに示すカレントブロックの各制御ポイント近傍の符号化済みブロックのうちの何れかのブロックの動きベクトルを選択することによって、カレントブロックの制御ポイントの予測動きベクトル(v
0,v
1)または(v
0,v
1,v
2)を導出する。このとき、インター予測部126は、選択された2つの動きベクトルを識別するための予測動きベクトル選択情報をストリームに符号化する。
【0236】
例えば、インター予測部126は、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックからどのブロックの動きベクトルを制御ポイントの予測動きベクトルとして選択するかを、コスト評価等を用いて決定し、どの予測動きベクトルを選択したかを示すフラグをビットストリームに記述してもよい。
【0237】
次に、インター予測部126は、ステップSj_1で選択または導出された予測動きベクトルをそれぞれ更新しながら(ステップSj_2)、動き探索を行う(ステップSj_3およびSj_4)。つまり、インター予測部126は、更新される予測動きベクトルに対応する各サブブロックの動きベクトルをアフィンMVとして、上述の式(1A)または式(1B)を用いて算出する(ステップSj_3)。そして、インター予測部126は、それらのアフィンMVおよび符号化済み参照ピクチャを用いて各サブブロックに対して動き補償を行う(ステップSj_4)。その結果、インター予測部126は、動き探索ループにおいて、例えば最も小さいコストが得られる予測動きベクトルを、制御ポイントの動きベクトルとして決定する(ステップSj_5)。このとき、インター予測部126は、さらに、その決定されたMVと予測動きベクトルとのそれぞれの差分値を差分MVとしてストリームに符号化する。
【0238】
最後に、インター予測部126は、その決定されたMVと符号化済み参照ピクチャとを用いてカレントブロックに対して動き補償を行ことにより、そのカレントブロックの予測画像を生成する(ステップSj_6)。
【0239】
[MV導出 > アフィンインターモード]
異なる制御ポイント数(例えば、2つと3つ)のアフィンモードをCUレベルで切り替えて信号化する場合、符号化済みブロックとカレントブロックで制御ポイントの数が異なる場合がある。
図30Aおよび
図30Bは、符号化済みブロックとカレントブロックで制御ポイントの数が異なる場合の、制御ポイントの予測ベクトル導出方法を説明するための概念図である。
【0240】
例えば、
図30Aに示すように、カレントブロックが左上角、右上角および左下角の3つの制御ポイントを有し、カレントブロックの左に隣接するブロックAが2つの制御ポイントを有するアフィンモードで符号化されている場合は、ブロックAを含む符号化済みブロックの左上角および右上角の位置に投影した動きベクトルv
3およびv
4が導出される。そして、導出された動きベクトルv
3およびv
4から、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
0と、右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
1が算出される。更に、導出された動きベクトルv
0およびv
1から、左下角の制御ポイントの予測動きベクトルv
2が算出される。
【0241】
例えば、
図30Bに示すように、カレントブロックが左上角および右上角の2つの制御ポイントを有し、カレントブロックの左に隣接するブロックAが3つの制御ポイントを有するアフィンモードで符号化されている場合は、ブロックAを含む符号化済みブロックの左上角、右上角および左下角の位置に投影した動きベクトルv
3、v
4およびv
5が導出される。そして、導出された動きベクトルv
3、v
4およびv
5から、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
0と、右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv
1が算出される。
【0242】
図29のステップSj_1におけるカレントブロックの制御ポイントのそれぞれの予測動きベクトルの導出に、この予測動きベクトル導出方法を用いてもよい。
【0243】
[MV導出 > DMVR]
図31Aは、マージモードおよびDMVRの関係を示すフローチャートである。
【0244】
インター予測部126は、マージモードでカレントブロックの動きベクトルを導出する(ステップSl_1)。次に、インター予測部126は、動きベクトルの探索、すなわち動き探索を行うか否かを判定する(ステップSl_2)。ここで、インター予測部126は、動き探索を行わないと判定すると(ステップSl_2のNo)、ステップSl_1で導出された動きベクトルを、カレントブロックに対する最終の動きベクトルとして決定する(ステップSl_4)。すなわち、この場合には、マージモードでカレントブロックの動きベクトルが決定される。
【0245】
一方、ステップSl_1で動き探索を行うと判定すると(ステップSl_2のYes)、インター予測部126は、ステップSl_1で導出された動きベクトルによって示される参照ピクチャの周辺領域を探索することによって、カレントブロックに対して最終の動きベクトルを導出する(ステップSl_3)。すなわち、この場合には、DMVRでカレントブロックの動きベクトルが決定される。
【0246】
図31Bは、MVを決定するためのDMVR処理の一例を説明するための概念図である。
【0247】
まず、(例えばマージモードにおいて)カレントブロックに設定された最適MVPを、候補MVとする。そして、候補MV(L0)に従って、L0方向の符号化済みピクチャである第1参照ピクチャ(L0)から参照画素を特定する。同様に、候補MV(L1)に従って、L1方向の符号化済みピクチャである第2参照ピクチャ(L1)から参照画素を特定する。これらの参照画素の平均をとることでテンプレートを生成する。
【0248】
次に、前記テンプレートを用いて、第1参照ピクチャ(L0)および第2参照ピクチャ(L1)の候補MVの周辺領域をそれぞれ探索し、コストが最小となるMVを最終的なMVとして決定する。なお、コスト値は、例えば、テンプレートの各画素値と探索領域の各画素値との差分値および候補MV値等を用いて算出してもよい。
【0249】
なお、典型的には、符号化装置と、後述の復号装置とでは、ここで説明した処理の構成および動作は基本的に共通である。
【0250】
ここで説明した処理例そのものでなくても、候補MVの周辺を探索して最終的なMVを導出することができる処理であれば、どのような処理を用いてもよい。
【0251】
[動き補償 > BIO/OBMC]
動き補償では、予測画像を生成し、その予測画像を補正するモードがある。そのモードは、例えば、後述のBIOおよびOBMCである。
【0252】
図32は、予測画像の生成の一例を示すフローチャートである。
【0253】
インター予測部126は、予測画像を生成し(ステップSm_1)、例えば上述の何れかのモードによってその予測画像を補正する(ステップSm_2)。
【0254】
図33は、予測画像の生成の他の例を示すフローチャートである。
【0255】
インター予測部126は、カレントブロックの動きベクトルを決定する(ステップSn_1)。次に、インター予測部126は、予測画像を生成し(ステップSn_2)、補正処理を行うか否かを判定する(ステップSn_3)。ここで、インター予測部126は、補正処理を行うと判定すると(ステップSn_3のYes)、その予測画像を補正することによって最終的な予測画像を生成する(ステップSn_4)。一方、インター予測部126は、補正処理を行わないと判定すると(ステップSn_3のNo)、その予測画像を補正することなく最終的な予測画像として出力する(ステップSn_5)。
【0256】
また、動き補償では、予測画像を生成するときに輝度を補正するモードがある。そのモードは、例えば、後述のLICである。
【0257】
図34は、予測画像の生成の他の例を示すフローチャートである。
【0258】
インター予測部126は、カレントブロックの動きベクトルを導出する(ステップSo_1)。次に、インター予測部126は、輝度補正処理を行うか否かを判定する(ステップSo_2)。ここで、インター予測部126は、輝度補正処理を行うと判定すると(ステップSo_2のYes)、輝度補正を行いながら予測画像を生成する(ステップSo_3)。つまり、LICによって予測画像が生成される。一方、インター予測部126は、輝度補正処理を行わないと判定すると(ステップSo_2のNo)、輝度補正を行うことなく通常の動き補償によって予測画像を生成する(ステップSo_4)。
【0259】
[動き補償 > OBMC]
動き探索により得られたカレントブロックの動き情報だけでなく、隣接ブロックの動き情報も用いて、インター予測信号が生成されてもよい。具体的には、(参照ピクチャ内の)動き探索により得られた動き情報に基づく予測信号と、(カレントピクチャ内の)隣接ブロックの動き情報に基づく予測信号と、を重み付け加算することにより、カレントブロック内のサブブロック単位でインター予測信号が生成されてもよい。このようなインター予測(動き補償)は、OBMC(overlapped block motion compensation)と呼ばれることがある。
【0260】
OBMCモードでは、OBMCのためのサブブロックのサイズを示す情報(例えばOBMCブロックサイズと呼ばれる)は、シーケンスレベルで信号化されてもよい。さらに、OBMCモードを適用するか否かを示す情報(例えばOBMCフラグと呼ばれる)は、CUレベルで信号化されてもよい。なお、これらの情報の信号化のレベルは、シーケンスレベル及びCUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えばピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル、CTUレベル又はサブブロックレベル)であってもよい。
【0261】
OBMCモードの例について、より具体的に説明する。
図35及び
図36は、OBMC処理による予測画像補正処理の概要を説明するためのフローチャート及び概念図である。
【0262】
まず、
図36に示すように、処理対象(カレント)ブロックに割り当てられた動きベクトル(MV)を用いて通常の動き補償による予測画像(Pred)を取得する。
図36において、矢印“MV”は参照ピクチャを指し、予測画像を得るためにカレントピクチャのカレントブロックが何を参照しているかを示している。
【0263】
次に、符号化済みの左隣接ブロックに対して既に導出された動きベクトル(MV_L)を符号化対象ブロックに適用(再利用)して予測画像(Pred_L)を取得する。動きベクトル(MV_L)は、カレントブロックから参照ピクチャを指す矢印”MV_L”によって示される。そして、2つの予測画像PredとPred_Lとを重ね合わせることで予測画像の1回目の補正を行う。これは、隣接ブロック間の境界を混ぜ合わせる効果を有する。
【0264】
同様に、符号化済みの上隣接ブロックに対して既に導出された動きベクトル(MV_U)を符号化対象ブロックに適用(再利用)して予測画像(Pred_U)を取得する。動きベクトル(MV_U)は、カレントブロックから参照ピクチャを指す矢印”MV_U”によって示される。そして、予測画像Pred_Uを1回目の補正を行った予測画像(例えば、PredとPred_L)に重ね合わせることで予測画像の2回目の補正を行う。これは、隣接ブロック間の境界を混ぜ合わせる効果を有する。2回目の補正によって得られた予測画像は、隣接ブロックとの境界が混ぜ合わされた(スムージングされた)、カレントブロックの最終的な予測画像である。
【0265】
なお、上述の例は、左隣接および上隣接のブロックを用いた2パスの補正方法であるが、その補正方法は、右隣接および/または下隣接のブロックも用いた3パスまたはそれ以上のパスの補正方法であってもよい。
【0266】
なお、重ね合わせを行う領域はブロック全体の画素領域ではなく、ブロック境界近傍の一部の領域のみであってもよい。
【0267】
なお、ここでは1枚の参照ピクチャから、追加的な予測画像Pred_LおよびPred_Uを重ね合わせることで1枚の予測画像Predを得るためのOBMCの予測画像補正処理について説明した。しかし、複数の参照画像に基づいて予測画像が補正される場合には、同様の処理が複数の参照ピクチャのそれぞれに適用されてもよい。このような場合、複数の参照ピクチャに基づくOBMCの画像補正を行うことによって、各々の参照ピクチャから、補正された予測画像を取得した後に、その取得された複数の補正予測画像をさらに重ね合わせることで最終的な予測画像を取得する。
【0268】
なお、OBMCでは、対象ブロックの単位は、予測ブロック単位であっても、予測ブロックをさらに分割したサブブロック単位であってもよい。
【0269】
OBMC処理を適用するかどうかの判定の方法として、例えば、OBMC処理を適用するかどうかを示す信号であるobmc_flagを用いる方法がある。具体的な一例としては、符号化装置は、対象ブロックが動きの複雑な領域に属しているかどうかを判定してもよい。符号化装置は、動きの複雑な領域に属している場合は、obmc_flagとして値1を設定してOBMC処理を適用して符号化を行い、動きの複雑な領域に属していない場合は、obmc_flagとして値0を設定してOBMC処理を適用せずにブロックの符号化を行う。一方、復号装置では、ストリーム(例えば圧縮シーケンス)に記述されたobmc_flagを復号することで、その値に応じてOBMC処理を適用するかどうかを切替えて復号を行う。
【0270】
インター予測部126は、上述の例では、矩形のカレントブロックに対して1つの矩形の予測画像を生成する。しかし、インター予測部126は、その矩形のカレントブロックに対して矩形と異なる形状の複数の予測画像を生成し、それらの複数の予測画像を結合することによって、最終的な矩形の予測画像を生成してもよい。矩形と異なる形状は、例えば三角形であってもよい。
【0271】
図37は、2つの三角形の予測画像の生成を説明するための概念図である。
【0272】
インター予測部126は、カレントブロック内の三角形の第1パーティションに対して、その第1パーティションの第1MVを用いて動き補償を行うことによって、三角形の予測画像を生成する。同様に、インター予測部126は、カレントブロック内の三角形の第2パーティションに対して、その第2パーティションの第2MVを用いて動き補償を行うことによって、三角形の予測画像を生成する。そして、インター予測部126は、これらの予測画像を結合することによって、カレントブロックと同じ矩形の予測画像を生成する。
【0273】
なお、
図37に示す例では、第1パーティションおよび第2パーティションはそれぞれ三角形であるが、台形であってもよく、それぞれ互いに異なる形状であってもよい。さらに、
図37に示す例では、カレントブロックが2つのパーティションから構成されているが、3つ以上のパーティションから構成されていてもよい。
【0274】
また、第1パーティションおよび第2パーティションは重複していてもよい。すなわち、第1パーティションおよび第2パーティションは同じ画素領域を含んでいてもよい。この場合、第1パーティションにおける予測画像と第2パーティションにおける予測画像とを用いてカレントブロックの予測画像を生成してもよい。
【0275】
また、この例では2つのパーティションともにインター予測で予測画像が生成される例を示したが、少なくとも1つのパーティションについてイントラ予測によって予測画像を生成してもよい。
【0276】
[動き補償 > BIO]
次に、動きベクトルを導出する方法について説明する。まず、等速直線運動を仮定したモデルに基づいて動きベクトルを導出するモードについて説明する。このモードは、BIO(bi-directional optical flow)モードと呼ばれることがある。
【0277】
図38は、等速直線運動を仮定したモデルを説明するための概念図である。
図38において、(vx,vy)は、速度ベクトルを示し、τ0、τ1は、それぞれ、カレントピクチャ(Cur Pic)と2つの参照ピクチャ(Ref0,Ref1)との間の時間的な距離を示す。(MVx0,MVy0)は、参照ピクチャRef0に対応する動きベクトルを示し、(MVx1、MVy1)は、参照ピクチャRef1に対応する動きベクトルを示す。
【0278】
このとき速度ベクトル(vx,vy)の等速直線運動の仮定の下では、(MVx0,MVy0)及び(MVx1,MVy1)は、それぞれ、(vxτ0,vyτ0)及び(-vxτ1,-vyτ1)と表され、以下のオプティカルフロー等式(2)が採用されてもよい。
【0279】
【0280】
ここで、I(k)は、動き補償後の参照画像k(k=0,1)の輝度値を示す。このオプティカルフロー等式は、(i)輝度値の時間微分と、(ii)水平方向の速度及び参照画像の空間勾配の水平成分の積と、(iii)垂直方向の速度及び参照画像の空間勾配の垂直成分の積と、の和が、ゼロと等しいことを示す。このオプティカルフロー等式とエルミート補間(Hermite interpolation)との組み合わせに基づいて、マージリスト等から得られるブロック単位の動きベクトルが画素単位で補正されてもよい。
【0281】
なお、等速直線運動を仮定したモデルに基づく動きベクトルの導出とは異なる方法で、復号装置側で動きベクトルが導出されてもよい。例えば、複数の隣接ブロックの動きベクトルに基づいてサブブロック単位で動きベクトルが導出されてもよい。
【0282】
[動き補償 > LIC]
次に、LIC(local illumination compensation)処理を用いて予測画像(予測)を生成するモードの一例について説明する。
【0283】
図39は、LIC処理による輝度補正処理を用いた予測画像生成方法の一例を説明するための概念図である。
【0284】
まず、符号化済みの参照ピクチャからMVを導出して、カレントブロックに対応する参照画像を取得する。
【0285】
次に、カレントブロックに対して、参照ピクチャとカレントピクチャとで輝度値がどのように変化したかを示す情報を抽出する。この抽出は、カレントピクチャにおける符号化済み左隣接参照領域(周辺参照領域)および符号化済み上隣参照領域(周辺参照領域)の輝度画素値と、導出されたMVで指定された参照ピクチャ内の同等位置における輝度画素値とに基づいて行われる。そして、輝度値がどのように変化したかを示す情報を用いて、輝度補正パラメータを算出する。
【0286】
MVで指定された参照ピクチャ内の参照画像に対して前記輝度補正パラメータを適用する輝度補正処理を行うことで、カレントブロックに対する予測画像を生成する。
【0287】
なお、
図39における前記周辺参照領域の形状は一例であり、これ以外の形状を用いてもよい。
【0288】
また、ここでは1枚の参照ピクチャから予測画像を生成する処理について説明したが、複数枚の参照ピクチャから予測画像を生成する場合も同様であり、各々の参照ピクチャから取得した参照画像に、上述と同様の方法で輝度補正処理を行ってから予測画像を生成してもよい。
【0289】
LIC処理を適用するかどうかの判定の方法として、例えば、LIC処理を適用するかどうかを示す信号であるlic_flagを用いる方法がある。具体的な一例としては、符号化装置において、カレントブロックが、輝度変化が発生している領域に属しているかどうかを判定し、輝度変化が発生している領域に属している場合はlic_flagとして値1を設定してLIC処理を適用して符号化を行い、輝度変化が発生している領域に属していない場合はlic_flagとして値0を設定してLIC処理を適用せずに符号化を行う。一方、復号装置では、ストリームに記述されたlic_flagを復号化することで、その値に応じてLIC処理を適用するかどうかを切替えて復号を行ってもよい。
【0290】
LIC処理を適用するかどうかの判定の別の方法として、例えば、周辺ブロックでLIC処理を適用したかどうかに従って判定する方法もある。具体的な一例としては、カレントブロックがマージモードであった場合、マージモード処理におけるMVの導出の際に選択した周辺の符号化済みブロックがLIC処理を適用して符号化したかどうかを判定する。その結果に応じてLIC処理を適用するかどうかを切替えて符号化を行う。なお、この例の場合でも、同じ処理が復号装置側の処理に適用される。
【0291】
LIC処理(輝度補正処理)の態様について
図39を用いて説明したが、以下、その詳細を説明する。
【0292】
まず、インター予測部126は、符号化済みピクチャである参照ピクチャから符号化対象ブロックに対応する参照画像を取得するための動きベクトルを導出する。
【0293】
次に、インター予測部126は、符号化対象ブロックに対して、左隣接および上隣接の符号化済み周辺参照領域の輝度画素値と、動きベクトルで指定された参照ピクチャ内の同等位置における輝度画素値とを用いて、参照ピクチャと符号化対象ピクチャとで輝度値がどのように変化したかを示す情報を抽出して輝度補正パラメータを算出する。例えば、符号化対象ピクチャ内の周辺参照領域内のある画素の輝度画素値をp0とし、当該画素と同等位置の、参照ピクチャ内の周辺参照領域内の画素の輝度画素値をp1とする。インター予測部126は、周辺参照領域内の複数の画素に対して、A×p1+B=p0を最適化する係数A及びBを輝度補正パラメータとして算出する。
【0294】
次に、インター予測部126は、動きベクトルで指定された参照ピクチャ内の参照画像に対して輝度補正パラメータを用いて輝度補正処理を行うことで、符号化対象ブロックに対する予測画像を生成する。例えば、参照画像内の輝度画素値をp2とし、輝度補正処理後の予測画像の輝度画素値をp3とする。インター予測部126は、参照画像内の各画素に対して、A×p2+B=p3を算出することで輝度補正処理後の予測画像を生成する。
【0295】
なお、
図39における周辺参照領域の形状は一例であり、これ以外の形状を用いてもよい。また、
図39に示す周辺参照領域の一部が用いられてもよい。例えば、上隣接画素および左隣接画素のそれぞれから間引いた所定数の画素を含む領域を周辺参照領域として用いてもよい。また、周辺参照領域は、符号化対象ブロックに隣接する領域に限らず、符号化対象ブロックに隣接しない領域であってもよい。画素に関する所定数は、予め定められていてもよい。
【0296】
また、
図39に示す例では、参照ピクチャ内の周辺参照領域は、符号化対象ピクチャ内の周辺参照領域から、符号化対象ピクチャの動きベクトルで指定される領域であるが、他の動きベクトルで指定される領域であってもよい。例えば、当該他の動きベクトルは、符号化対象ピクチャ内の周辺参照領域の動きベクトルであってもよい。
【0297】
なお、ここでは、符号化装置100における動作を説明したが、復号装置200における動作も典型的には同様である。
【0298】
なお、LIC処理は輝度のみではなく、色差に適用してもよい。このとき、Y、Cb、およびCrのそれぞれに対して個別に補正パラメータを導出してもよいし、いずれかに対して共通の補正パラメータを用いてもよい。
【0299】
また、LIC処理はサブブロック単位で適用してもよい。例えば、カレントサブブロックの周辺参照領域と、カレントサブブロックのMVで指定された参照ピクチャ内の参照サブブロックの周辺参照領域を用いて補正パラメータを導出してもよい。
【0300】
[予測制御部]
予測制御部128は、イントラ予測信号(イントラ予測部124から出力される信号)及びインター予測信号(インター予測部126から出力される信号)のいずれかを選択し、選択した信号を予測信号として減算部104及び加算部116に出力する。
【0301】
図1に示すように、種々の符号化装置例では、予測制御部128は、エントロピー符号化部110に入力される予測パラメータを出力してもよい。エントロピー符号化部110は、予測制御部128から入力されるその予測パラメータ、量子化部108から入力される量子化係数に基づいて、符号化ビットストリーム(またはシーケンス)を生成してもよい。予測パラメータは復号装置に使用されてもよい。復号装置は、符号化ビットストリームを受信して復号し、イントラ予測部124、インター予測部126および予測制御部128において行われる予測処理と同じ処理を行ってもよい。予測パラメータは、選択予測信号(例えば、動きベクトル、予測タイプ、または、イントラ予測部124またはインター予測部126で用いられた予測モード)、または、イントラ予測部124、インター予測部126および予測制御部128において行われる予測処理に基づく、あるいはその予測処理を示す、任意のインデックス、フラグ、もしくは値を含んでいてもよい。
【0302】
[符号化装置の実装例]
図40は、符号化装置100の実装例を示すブロック図である。符号化装置100は、プロセッサa1及びメモリa2を備える。例えば、
図1に示された符号化装置100の複数の構成要素は、
図40に示されたプロセッサa1及びメモリa2によって実装される。
【0303】
プロセッサa1は、情報処理を行う回路であり、メモリa2にアクセス可能な回路である。例えば、プロセッサa1は、動画像を符号化する専用又は汎用の電子回路である。プロセッサa1は、CPUのようなプロセッサであってもよい。また、プロセッサa1は、複数の電子回路の集合体であってもよい。また、例えば、プロセッサa1は、
図1等に示された符号化装置100の複数の構成要素のうち、複数の構成要素の役割を果たしてもよい。
【0304】
メモリa2は、プロセッサa1が動画像を符号化するための情報が記憶される専用又は汎用のメモリである。メモリa2は、電子回路であってもよく、プロセッサa1に接続されていてもよい。また、メモリa2は、プロセッサa1に含まれていてもよい。また、メモリa2は、複数の電子回路の集合体であってもよい。また、メモリa2は、磁気ディスク又は光ディスク等であってもよいし、ストレージ又は記録媒体等と表現されてもよい。また、メモリa2は、不揮発性メモリでもよいし、揮発性メモリでもよい。
【0305】
例えば、メモリa2には、符号化される動画像が記憶されてもよいし、符号化された動画像に対応するビット列が記憶されてもよい。また、メモリa2には、プロセッサa1が動画像を符号化するためのプログラムが記憶されていてもよい。
【0306】
また、例えば、メモリa2は、
図1等に示された符号化装置100の複数の構成要素のうち、情報を記憶するための構成要素の役割を果たしてもよい。例えば、メモリa2は、
図1に示されたブロックメモリ118及びフレームメモリ122の役割を果たしてもよい。より具体的には、メモリa2には、再構成済みブロック及び再構成済みピクチャ等が記憶されてもよい。
【0307】
なお、符号化装置100において、
図1等に示された複数の構成要素の全てが実装されなくてもよいし、上述された複数の処理の全てが行われなくてもよい。
図1等に示された複数の構成要素の一部は、他の装置に含まれていてもよいし、上述された複数の処理の一部は、他の装置によって実行されてもよい。
【0308】
[復号装置]
次に、例えば上記の符号化装置100から出力された符号化信号(符号化ビットストリーム)を復号可能な復号装置について説明する。
図41は、実施の形態に係る復号装置200の機能構成を示すブロック図である。復号装置200は、動画像をブロック単位で復号する動画像復号装置である。
【0309】
図41に示すように、復号装置200は、エントロピー復号部202と、逆量子化部204と、逆変換部206と、加算部208と、ブロックメモリ210と、ループフィルタ部212と、フレームメモリ214と、イントラ予測部216と、インター予測部218と、予測制御部220と、を備える。
【0310】
復号装置200は、例えば、汎用プロセッサ及びメモリにより実現される。この場合、メモリに格納されたソフトウェアプログラムがプロセッサにより実行されたときに、プロセッサは、エントロピー復号部202、逆量子化部204、逆変換部206、加算部208、ループフィルタ部212、イントラ予測部216、インター予測部218及び予測制御部220として機能する。また、復号装置200は、エントロピー復号部202、逆量子化部204、逆変換部206、加算部208、ループフィルタ部212、イントラ予測部216、インター予測部218及び予測制御部220に対応する専用の1以上の電子回路として実現されてもよい。
【0311】
以下に、復号装置200の全体的な処理の流れを説明した後に、復号装置200に含まれる各構成要素について説明する。
【0312】
[復号処理の全体フロー]
図42は、復号装置200による全体的な復号処理の一例を示すフローチャートである。
【0313】
まず、復号装置200のエントロピー復号部202は、固定サイズのブロック(例えば、128×128画素)の分割パターンを特定する(ステップSp_1)。この分割パターンは、符号化装置100によって選択された分割パターンである。そして、復号装置200は、その分割パターンを構成する複数のブロックのそれぞれに対してステップSp_2~Sp_6の処理を行う。
【0314】
つまり、エントロピー復号部202は、復号対象ブロック(カレントブロックともいう)の符号化された量子化係数および予測パラメータを復号(具体的にはエントロピー復号)する(ステップSp_2)。
【0315】
次に、逆量子化部204および逆変換部206は、複数の量子化係数に対して逆量子化および逆変換を行うことによって、複数の予測残差(すなわち差分ブロック)を復元する(ステップSp_3)。
【0316】
次に、イントラ予測部216、インター予測部218および予測制御部220の全てまたは一部からなる予測処理部は、カレントブロックの予測信号(予測ブロックともいう)を生成する(ステップSp_4)。
【0317】
次に、加算部208は、差分ブロックに予測ブロックを加算することによってカレントブロックを再構成画像(復号画像ブロックともいう)に再構成する(ステップSp_5)。
【0318】
そして、この再構成画像が生成されると、ループフィルタ部212は、その再構成画像に対してフィルタリングを行う(ステップSp_6)。
【0319】
そして、復号装置200は、ピクチャ全体の復号が完了したか否かを判定し(ステップSp_7)、完了していないと判定する場合(ステップSp_7のNo)、ステップSp_1からの処理を繰り返し実行する。
【0320】
図示されたように、ステップSp_1~Sp_7の処理は、復号装置200によってシーケンシャルに行われる。あるいは、それらの処理のうちの一部の複数の処理が並列に行われてもよく、順番の入れ替え等が行われてもよい。
【0321】
[エントロピー復号部]
エントロピー復号部202は、符号化ビットストリームをエントロピー復号する。具体的には、エントロピー復号部202は、例えば、符号化ビットストリームから二値信号に算術復号する。そして、エントロピー復号部202は、二値信号を多値化(debinarize)する。エントロピー復号部202は、ブロック単位で量子化係数を逆量子化部204に出力する。エントロピー復号部202は、実施の形態におけるイントラ予測部216、インター予測部218および予測制御部220に、符号化ビットストリーム(
図1参照)に含まれている予測パラメータを出力してもよい。イントラ予測部216、インター予測部218および予測制御部220は、符号化装置側におけるイントラ予測部124、インター予測部126および予測制御部128で行われる処理と同じ予測処理を実行することができる。
【0322】
[逆量子化部]
逆量子化部204は、エントロピー復号部202からの入力である復号対象ブロック(以下、カレントブロックという)の量子化係数を逆量子化する。具体的には、逆量子化部204は、カレントブロックの量子化係数の各々について、当該量子化係数に対応する量子化パラメータに基づいて当該量子化係数を逆量子化する。そして、逆量子化部204は、カレントブロックの逆量子化された量子化係数(つまり変換係数)を逆変換部206に出力する。
【0323】
[逆変換部]
逆変換部206は、逆量子化部204からの入力である変換係数を逆変換することにより予測誤差を復元する。
【0324】
例えば符号化ビットストリームから読み解かれた情報がEMT又はAMTを適用することを示す場合(例えばAMTフラグが真)、逆変換部206は、読み解かれた変換タイプを示す情報に基づいてカレントブロックの変換係数を逆変換する。
【0325】
また例えば、符号化ビットストリームから読み解かれた情報がNSSTを適用することを示す場合、逆変換部206は、変換係数に逆再変換を適用する。
【0326】
[加算部]
加算部208は、逆変換部206からの入力である予測誤差と予測制御部220からの入力である予測サンプルとを加算することによりカレントブロックを再構成する。そして、加算部208は、再構成されたブロックをブロックメモリ210及びループフィルタ部212に出力する。
【0327】
[ブロックメモリ]
ブロックメモリ210は、イントラ予測で参照されるブロックであって復号対象ピクチャ(以下、カレントピクチャという)内のブロックを格納するための記憶部である。具体的には、ブロックメモリ210は、加算部208から出力された再構成ブロックを格納する。
【0328】
[ループフィルタ部]
ループフィルタ部212は、加算部208によって再構成されたブロックにループフィルタを施し、フィルタされた再構成ブロックをフレームメモリ214及び表示装置等に出力する。
【0329】
符号化ビットストリームから読み解かれたALFのオン/オフを示す情報がALFのオンを示す場合、局所的な勾配の方向及び活性度に基づいて複数のフィルタの中から1つのフィルタが選択され、選択されたフィルタが再構成ブロックに適用される。
【0330】
[フレームメモリ]
フレームメモリ214は、インター予測に用いられる参照ピクチャを格納するための記憶部であり、フレームバッファと呼ばれることもある。具体的には、フレームメモリ214は、ループフィルタ部212によってフィルタされた再構成ブロックを格納する。
【0331】
[予測処理部(イントラ予測部・インター予測部・予測制御部)]
図43は、復号装置200の予測処理部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。なお、予測処理部は、イントラ予測部216、インター予測部218、および予測制御部220の全てまたは一部の構成要素からなる。
【0332】
予測処理部は、カレントブロックの予測画像を生成する(ステップSq_1)。この予測画像は、予測信号または予測ブロックともいう。なお、予測信号には、例えばイントラ予測信号またはインター予測信号がある。具体的には、予測処理部は、予測ブロックの生成、差分ブロックの生成、係数ブロックの生成、差分ブロックの復元、および復号画像ブロックの生成が行われることによって既に得られている再構成画像を用いて、カレントブロックの予測画像を生成する。
【0333】
再構成画像は、例えば、参照ピクチャの画像であってもよいし、カレントブロックを含むピクチャであるカレントピクチャ内の復号済みのブロックの画像であってもよい。カレントピクチャ内の復号済みのブロックは、例えばカレントブロックの隣接ブロックである。
【0334】
図44は、復号装置200の予測処理部で行われる処理の他の例を示すフローチャートである。
【0335】
予測処理部は、予測画像を生成するための方式またはモードを判定する(ステップSr_1)。例えば、この方式またはモードは、例えば予測パラメータなどに基づいて判定されてもよい。
【0336】
予測処理部は、予測画像を生成するためのモードとして第1の方式を判定した場合には、その第1の方式にしたがって予測画像を生成する(ステップSr_2a)。また、予測処理部は、予測画像を生成するためのモードとして第2の方式を判定した場合には、その第2の方式にしたがって予測画像を生成する(ステップSr_2b)。また、予測処理部は、予測画像を生成するためのモードとして第3の方式を判定した場合には、その第3の方式にしたがって予測画像を生成する(ステップSr_2c)。
【0337】
第1の方式、第2の方式、および第3の方式は、予測画像を生成するための互いに異なる方式であって、それぞれ例えば、インター予測方式、イントラ予測方式、および、それら以外の予測方式であってもよい。これらの予測方式では、上述の再構成画像を用いてもよい。
【0338】
[イントラ予測部]
イントラ予測部216は、符号化ビットストリームから読み解かれたイントラ予測モードに基づいて、ブロックメモリ210に格納されたカレントピクチャ内のブロックを参照してイントラ予測を行うことで、予測信号(イントラ予測信号)を生成する。具体的には、イントラ予測部216は、カレントブロックに隣接するブロックのサンプル(例えば輝度値、色差値)を参照してイントラ予測を行うことでイントラ予測信号を生成し、イントラ予測信号を予測制御部220に出力する。
【0339】
なお、色差ブロックのイントラ予測において輝度ブロックを参照するイントラ予測モードが選択されている場合は、イントラ予測部216は、カレントブロックの輝度成分に基づいて、カレントブロックの色差成分を予測してもよい。
【0340】
また、符号化ビットストリームから読み解かれた情報がPDPCの適用を示す場合、イントラ予測部216は、水平/垂直方向の参照画素の勾配に基づいてイントラ予測後の画素値を補正する。
【0341】
[インター予測部]
インター予測部218は、フレームメモリ214に格納された参照ピクチャを参照して、カレントブロックを予測する。予測は、カレントブロック又はカレントブロック内のサブブロック(例えば4x4ブロック)の単位で行われる。例えば、インター予測部218は、符号化ビットストリーム(例えば、エントロピー復号部202から出力される予測パラメータ)から読み解かれた動き情報(例えば動きベクトル)を用いて動き補償を行うことでカレントブロック又はサブブロックのインター予測信号を生成し、インター予測信号を予測制御部220に出力する。
【0342】
符号化ビットストリームから読み解かれた情報がOBMCモードを適用することを示す場合、インター予測部218は、動き探索により得られたカレントブロックの動き情報だけでなく、隣接ブロックの動き情報も用いて、インター予測信号を生成する。
【0343】
また、符号化ビットストリームから読み解かれた情報がFRUCモードを適用することを示す場合、インター予測部218は、符号化ストリームから読み解かれたパターンマッチングの方法(バイラテラルマッチング又はテンプレートマッチング)に従って動き探索を行うことにより動き情報を導出する。そして、インター予測部218は、導出された動き情報を用いて動き補償(予測)を行う。
【0344】
また、インター予測部218は、BIOモードが適用される場合に、等速直線運動を仮定したモデルに基づいて動きベクトルを導出する。また、符号化ビットストリームから読み解かれた情報がアフィン動き補償予測モードを適用することを示す場合には、インター予測部218は、複数の隣接ブロックの動きベクトルに基づいてサブブロック単位で動きベクトルを導出する。
【0345】
[MV導出 > ノーマルインターモード]
符号化ビットストリームから読み解かれた情報がノーマルインターモードを適用することを示す場合、インター予測部218は、符号化ストリームから読み解かれた情報に基づいて、MVを導出し、そのMVを用いて動き補償(予測)を行う。
【0346】
図45は、復号装置200におけるノーマルインターモードによるインター予測の例を示すフローチャートである。
【0347】
復号装置200のインター予測部218は、ブロックごとに、そのブロックに対して動き補償を行う。インター予測部218は、時間的または空間的にカレントブロックの周囲にある複数の復号済みブロックのMVなどの情報に基づいて、そのカレントブロックに対して複数の候補MVを取得する(ステップSs_1)。つまり、インター予測部218は、候補MVリストを作成する。
【0348】
次に、インター予測部218は、ステップSs_1で取得された複数の候補MVの中から、N個(Nは2以上の整数)の候補MVのそれぞれを予測動きベクトル候補(予測MV候補ともいう)として、所定の優先順位に従って抽出する(ステップSs_2)。なお、その優先順位は、N個の予測MV候補のそれぞれに対して予め定められていてもよい。
【0349】
次に、インター予測部218は、入力されたストリーム(すなわち符号化ビットストリーム)から予測動きベクトル選択情報を復号し、その復号された予測動きベクトル選択情報を用いて、そのN個の予測MV候補の中から1つの予測MV候補を、カレントブロックの予測動きベクトル(予測MVともいう)として選択する(ステップSs_3)。
【0350】
次に、インター予測部218は、入力されたストリームから差分MVを復号し、その復号された差分MVである差分値と、選択された予測動きベクトルとを加算することによって、カレントブロックのMVを導出する(ステップSs_4)。
【0351】
最後に、インター予測部218は、その導出されたMVと復号済み参照ピクチャとを用いてカレントブロックに対して動き補償を行ことにより、そのカレントブロックの予測画像を生成する(ステップSs_5)。
【0352】
[予測制御部]
予測制御部220は、イントラ予測信号及びインター予測信号のいずれかを選択し、選択した信号を予測信号として加算部208に出力する。全体的に、復号装置側の予測制御部220、イントラ予測部216およびインター予測部218の構成、機能、および処理は、符号化装置側の予測制御部128、イントラ予測部124およびインター予測部126の構成、機能、および処理と対応していてもよい。
【0353】
[復号装置の実装例]
図46は、復号装置200の実装例を示すブロック図である。復号装置200は、プロセッサb1及びメモリb2を備える。例えば、
図41に示された復号装置200の複数の構成要素は、
図46に示されたプロセッサb1及びメモリb2によって実装される。
【0354】
プロセッサb1は、情報処理を行う回路であり、メモリb2にアクセス可能な回路である。例えば、プロセッサb1は、符号化された動画像(すなわち符号化ビットストリーム)を復号する専用又は汎用の電子回路である。プロセッサb1は、CPUのようなプロセッサであってもよい。また、プロセッサb1は、複数の電子回路の集合体であってもよい。また、例えば、プロセッサb1は、
図41等に示された復号装置200の複数の構成要素のうち、複数の構成要素の役割を果たしてもよい。
【0355】
メモリb2は、プロセッサb1が符号化ビットストリームを復号するための情報が記憶される専用又は汎用のメモリである。メモリb2は、電子回路であってもよく、プロセッサb1に接続されていてもよい。また、メモリb2は、プロセッサb1に含まれていてもよい。また、メモリb2は、複数の電子回路の集合体であってもよい。また、メモリb2は、磁気ディスク又は光ディスク等であってもよいし、ストレージ又は記録媒体等と表現されてもよい。また、メモリb2は、不揮発性メモリでもよいし、揮発性メモリでもよい。
【0356】
例えば、メモリb2には、動画像が記憶されてもよいし、符号化ビットストリームが記憶されてもよい。また、メモリb2には、プロセッサb1が符号化ビットストリームを復号するためのプログラムが記憶されていてもよい。
【0357】
また、例えば、メモリb2は、
図41等に示された復号装置200の複数の構成要素のうち、情報を記憶するための構成要素の役割を果たしてもよい。具体的には、メモリb2は、
図41に示されたブロックメモリ210及びフレームメモリ214の役割を果たしてもよい。より具体的には、メモリb2には、再構成済みブロック及び再構成済みピクチャ等が記憶されてもよい。
【0358】
なお、復号装置200において、
図41等に示された複数の構成要素の全てが実装されなくてもよいし、上述された複数の処理の全てが行われなくてもよい。
図41等に示された複数の構成要素の一部は、他の装置に含まれていてもよいし、上述された複数の処理の一部は、他の装置によって実行されてもよい。
【0359】
[各用語の定義]
各用語は一例として、以下のような定義であってもよい。
【0360】
ピクチャは、モノクロフォーマットにおける複数の輝度サンプルの配列、又は、4:2:0、4:2:2及び4:4:4のカラーフォーマットにおける複数の輝度サンプルの配列及び複数の色差サンプルの2つの対応配列である。ピクチャは、フレーム又はフィールドであってもよい。
【0361】
フレームは、複数のサンプル行0、2、4、・・・が生じるトップフィールド、及び、複数のサンプル行1、3、5、・・・が生じるボトムフィールドの組成物である。
【0362】
スライスは、1つの独立スライスセグメント、及び、(もしあれば)同じアクセスユニット内の(もしあれば)次の独立スライスセグメントに先行する全ての後続の従属スライスセグメントに含まれる整数個の符号化ツリーユニットである。
【0363】
タイルは、ピクチャにおける特定のタイル列及び特定のタイル行内の複数の符号化ツリーブロックの矩形領域である。タイルは、タイルのエッジを跨ぐループフィルタが依然として適用されてもよいが、独立して復号及び符号化され得ることが意図された、フレームの矩形領域であってもよい。
【0364】
ブロックは、複数のサンプルのMxN(N行M列)配列、又は、複数の変換係数のMxN配列である。ブロックは、1つの輝度及び2つの色差の複数の行列からなる複数の画素の正方形又は矩形の領域であってもよい。
【0365】
CTU(符号化ツリーユニット)は、3つのサンプル配列を有するピクチャの複数の輝度サンプルの符号化ツリーブロックであってもよいし、複数の色差サンプルの2つの対応符号化ツリーブロックであってもよい。あるいは、CTUは、モノクロピクチャと、3つの分離されたカラー平面及び複数のサンプルの符号化に用いられるシンタックス構造を用いて符号化されるピクチャとのいずれかの複数のサンプルの符号化ツリーブロックであってもよい。
【0366】
スーパーブロックは、1つ又は2つのモード情報ブロックを構成し、又は、再帰的に4つの32×32ブロックに分割され、さらに分割され得る64×64画素の正方形ブロックであってもよい。
【0367】
(実施の形態2)
本実施の形態における符号化装置100は、実施の形態1と同様の構成を有する。また、本実施の形態における符号化装置100の量子化部108、逆量子化部112およびエントロピー符号化部110は、実施の形態1に対して付加的な機能、または代替え的な機能を有する。同様に、本実施の形態における復号装置200は、実施の形態1と同様の構成を有する、また、本実施の形態における復号装置200の逆量子化部204およびエントロピー復号部202は、実施の形態1に対して付加的な機能、または代替え的な機能を有する。
【0368】
例えば、本実施の形態における量子化部108は、DQ(Dependent Quantization)を行い、本実施の形態における逆量子化部112および204は、DQに対応する逆量子化を行う。また、本実施の形態におけるエントロピー符号化部110は、フラグを用いて量子化係数を算術符号化し、エントロピー復号部202は、フラグを用いて算術符号化された量子化係数を算術復号する。
【0369】
以下の第1態様~第3態様は、本実施の形態における符号化装置100および復号装置200による処理の具体的な態様である。
【0370】
[第1態様]
<係数符号化の概要>
本実施の形態における符号化装置100のエントロピー符号化部110は、上述の量子化係数を、少なくとも1つのフラグを用いた形式(以下、フラグ形式という)に変換し、その形式の量子化係数に対して算術符号化を行う。なお、量子化係数は、インター予測またはイントラ予測によって生成された予測残差に対して、変換および量子化を行うことによって得られる値である。また、量子化係数は、残差係数ともいう。また、以下の説明では、量子化係数を単に係数ともいう。
【0371】
エントロピー符号化部110は、significant_flag(以下、sig_flagという)と、parity_flagと、greater1_flag(以下、gt1_flag)と、greater2_flag(以下、gt2_flag)と、remainderとのうちの少なくとも1つを用いたフラグ形式に係数を変換する。
【0372】
sig_flagは、係数が0か否かを示すフラグである。例えば、係数が0であれば、sig_flagは0を示し、係数が0でなければ、sig_flagは1を示す。
【0373】
parity_flagは、係数が0でないときに用いられるフラグであって、その係数が偶数か奇数かを示す。言い換えれば、parity_flagは、係数の第1ビット(例えば最下位ビット)が0か1かを示すフラグである。例えば、係数が偶数であれば、parity_flagは1を示し、係数が奇数であれば、parity_flagは0を示す。また、parity_flagは、sig_flagと共に用いられ、そのsig_flagと合わせて1から2の値を示す。
【0374】
gt1_flagは、係数が0でないときに用いられるフラグであって、その係数の絶対値が例えば3以上であるか否かを示す。例えば、係数の絶対値が3以上であれば、gt1_flagは1を示し、係数の絶対値が3以上でなければ、gt1_flagは0を示す。
【0375】
gt2_flagは、係数の絶対値が3以上のとき(すなわち、gt1_flag=1のとき)に用いられるフラグであって、その係数の絶対値が例えば5以上であるか否かを示す。例えば、係数の絶対値が5以上であれば、gt2_flagは1を示し、係数の絶対値が5以上でなければ、gt2_flagは0を示す。
【0376】
remainderは、gt2_flag=1の係数に対して用いられる、例えば(AbsLevel-5)/2によって示される値である。なお、AbsLevelは、係数の絶対値である。また、(AbsLevel-5)/2の小数点以下は切り捨てられてもよい。
【0377】
したがって、エントロピー復号部202は、AbsLevelを、「AbsLevel=sig_flag+parity_flag+2*gt1_flag+2*gt2_flag+2*remainder」によって算出する。
【0378】
なお、H.265/HEVCの規格では、parity_flagは用いられていない。したがって、エントロピー復号では、AbsLevelは、「AbsLevel=sig_flag+gt1_flag+gt2_flag+remainder」によって算出される。
【0379】
ここで、parity_flagは、例えば上述のDQに用いられてもよい。
【0380】
図47は、DQ(Dependent Quantization)の概要を説明するための図である。
【0381】
符号化装置100の量子化部108は、互いに異なる2つの量子化器を切り換えて用いる。なお、これらの2つの量子化器は互いに異なる2つの量子化方法をそれぞれ用いるため、量子化部108は、互いに異なる2つの量子化方法を切り換えて用いるとも言える。
【0382】
2つの量子化器は、
図47に示すように、第1量子化器Q0および第2量子化器Q1である。第1量子化器Q0は、量子化パラメータから定まるそれぞれ等間隔の量子化幅を用い、第2量子化器Q1は、互いに異なる少なくとも2つの量子化幅を用いる。具体的な一例では、
図47に示すように、第2量子化器Q1における、数値「0」と数値「1」との間の範囲と、数値「0」と数値「-1」との間の範囲とに用いられる量子化幅は、それらの範囲外で用いられる量子化幅の半分である。例えば、逆量子化部112および204は、第1量子化器Q0を用いる場合には、ビットストリームに含まれる数値「1」、「2」および「3」を、「12」、「24」および「36」にそれぞれ逆量子化する。一方、逆量子化部112および204は、第2量子化器Q1を用いる場合には、ビットストリームに含まれる数値「1」、「2」および「3」を、「6」、「18」および「30」にそれぞれ逆量子化する。
【0383】
図48および
図49は、量子化部108の状態遷移の一例を示す図である。具体的には、
図48は、状態遷移を視覚的に示す図である。
図49は、その状態遷移を二次元のテーブル形式で示す図であって、遷移前の状態と、量子化係数によって決まる遷移後の状態とを示す。
【0384】
量子化部108は、4つのstateを取り得る。4つのstateは、state=0、1、2、3である。state=0、1のときには、量子化部108は、第1量子化器Q0を用いた量子化を行い、state=2、3のときには、量子化部108は、第2量子化器Q1を用いた量子化を行う。
【0385】
初期状態では、例えばstate=0である。このとき、量子化部108は、スキャン順で最初の量子化前係数を、第1量子化器Q0を用いて量子化することによって、量子化係数kを求める。なお、量子化前係数は、量子化が行われる前の係数であって、上述の変換係数である。その結果、量子化部108は、量子化係数kの第1ビットが0であれば、state=0に遷移し、量子化係数kの第1ビットが1であれば、state=2に遷移する。したがって、量子化部108は、その遷移後のstateに対応する量子化器を用いて、スキャン順で次の量子化前係数を量子化することによって、新たな量子化係数kを求める。このように、量子化部108は、新たな量子化係数kを求めるたびに、その量子化係数kの第1ビットが0か1かに応じて状態遷移を行う。
【0386】
なお、量子化部108は、DQでは、2つの量子化器を用いるが、3つ以上の量子化器を用いてもよく、
図48および
図49とは異なる状態遷移を行ってもよい。
【0387】
また、上述のparity_flagは、量子化係数kの第1ビットが0か1かを示している。したがって、量子化部108は、DQにおいて、そのparity_flagに応じて、次の量子化前係数に対して用いられる量子化器を決定してもよい。
【0388】
また、逆量子化部112および204も、量子化部108と同様に、DQでは複数の量子化器を用いた状態遷移を行う。
【0389】
図50は、remainderの二値化の一例を示す図である。
【0390】
エントロピー符号化部110は、ゴロム・ライス符号を用いてremainderを符号化する。また、エントロピー符号化部110は、例えばライスパラメタによって、remainderの符号化方法を切り換える。例えば、ライスパラメタは、g=0、1、2のように、3つの値を取り得る。なお、gは、ライスパラメタを示す変数である。したがって、エントロピー符号化部110は、3つの符号化方法の中から、ライスパラメタによって示される値に応じた符号化方法を選択し、その符号化方法を用いてremainderを符号化する。なお、その符号化方法は、二値化方法とも言える。
【0391】
また、エントロピー符号化部110は、ゴロム・ライス符号では、プレフィックスとサフィックスとを用いてremainderを二値化する。プレフィックスでは、ライス符号化が用いれ、サフィックスでは、ユーナリー符号および指数ゴロム符号が用いられる。
【0392】
例えば、エントロピー符号化部110は、
図50に示すように、ライスパラメタがg=0のときには、サフィックスを用いずにプレフィックスを用いてremainderを二値化する。一方、エントロピー符号化部110は、ライスパラメタがg=1または2のときには、プレフィックスおよびサフィックスを用いてremainderを二値化する。
【0393】
また、
図50に示す例では、remainderの値が小さいほど、g=0の符号化方法の方が、他の符号化方法よりも、そのremainderを少ないビット数に二値化することができる。逆に、remainderの値が大きいほど、g=2の符号化方法の方が、他の符号化方法よりも、そのremainderを少ないビット数に二値化することができる。また、remainderの値が小さくもなく大きくもなければ、g=1の符号化方法の方が、他の符号化方法よりも、そのremainderを少ないビット数に二値化することができる。
【0394】
なお、
図50に示す例では、ライスパラメタは3つの値を取り得るが、4つ以上の値を取ってもよい。この場合には、エントロピー符号化部110は、4つ以上の符号化方法(すなわち二値化方法)から、そのライスパラメタに応じた符号化方法を選択し、その選択された符号化方法を用いてremainderを符号化する。
【0395】
なお、エントロピー復号部202も、エントロピー符号化部110と同様に、ライスパラメタに応じて復号方法(具体的には多値化方法)を切り換えてもよい。
【0396】
図51は、ライスパラメタを決定する方法を説明するための図である。具体的には、
図51は、ブロック(例えば変換ユニット)に含まれる各係数のうち、符号化対象の係数(
図51中の黒四角形)と、その符号化対象の係数の周囲にある5つの係数(
図51中のハッチングされた四角形)とを示す。
【0397】
例えば、エントロピー符号化部110は、符号化対象の係数を符号化するときには、その係数の周囲にある5つの係数(以下、周辺係数という)を用いて、その符号化対象の係数に対するライスパラメタを決定する。5つの周辺係数は、符号化対象の係数の右に水平方向に配列された2つの係数と、符号化対象の係数の下に垂直方向に配列された2つの係数と、符号化対象の係数の右下にある1つの係数とを含む。なお、符号化では、これらの5つの周辺係数は、符号化対象の係数よりも先に符号化され、復号では、これらの5つの周辺係数は、復号対象の係数(符号化対象の係数と同じ係数)よりも先に復号される。
【0398】
エントロピー符号化部110は、ライスパラメタを決定するために、sum_minus1を、sum_minus1=sum_abs-num_sigによって算出する。sum_absは、5つの周辺係数の総和の絶対値である。num_sigは、5つの周辺係数のうちの、0でない係数の数である。なお、ここで説明したsum_minus1の導出方法は一例であり、これ以外の方法を用いて導出してもよい。例えば、num_sigを用いずにsum_minus1=sum_absによってsum_minus1を導出してもよいし、num_sigの代りに別のoffset値を用いてsum_minus1=sum_abs-offset値によってsum_minus1を導出してもよい。
【0399】
その算出によって、エントロピー符号化部110は、sum_minus1<12のときには、ライスパラメタをg=0に決定する。また、エントロピー符号化部110は、12≦sum_minus1<25のときには、ライスパラメタをg=1に決定する。また、エントロピー符号化部110は、25≦sum_minus1のときには、ライスパラメタをg=2に決定する。エントロピー符号化部110は、このように決定されたライスパラメタに対応する符号化方法を選択し、その符号化方法を用いてremainder、すなわち(AbsLevel-5)/2をゴロム・ライス符号化する。
【0400】
図52は、remainderのゴロム・ライス符号化によって得られる二値信号の符号長(すなわちビット数)を示す図である。
【0401】
例えば、remainder=0のゴロム・ライス符号化によって得られる二値信号の符号長は、ライスパラメタがg=0のときには、1であり、ライスパラメタがg=1のときには、2であり、ライスパラメタがg=2のときには、3である。また、remainder=1のゴロム・ライス符号化によって得られる二値信号の符号長は、ライスパラメタがg=0のときには、2であり、ライスパラメタがg=1のときには、2であり、ライスパラメタがg=2のときには、3である。また、remainder=6のゴロム・ライス符号化によって得られる二値信号の符号長は、ライスパラメタがg=0のときには、7であり、ライスパラメタがg=1のときには、5であり、ライスパラメタがg=2のときには、4である。
【0402】
ここで、sum_minus1<12のときには、上述の5つの周辺係数は、凡そ平均3~4以下の値を有すると考えられる。その結果、符号化対象の係数は、その5つの周辺係数に近く、かつ、その周辺係数よりも大きい可能性があるため、5または6と予測される。したがって、その符号化対象の係数のフラグ形式では、gt1_flagおよびgt2_flagが用いられるため、その係数のremainderは、remainder=0と予測される。例えば
図52に示す例では、remainder=0の場合、エントロピー符号化部110は、二値信号の符号長を最も短くするために、ライスパラメタとして、g=0を選択する。
【0403】
また、12≦sum_minus1<25のときには、上述の5つの周辺係数は、凡そ平均3~5の値を有すると考えられる。その結果、符号化対象の係数は、その5つの周辺係数に近く、かつ、その周辺係数よりも大きい可能性があるため、7または8と予測される。したがって、その符号化対象の係数のフラグ形式では、gt1_flagおよびgt2_flagが用いられるため、その係数のremainderは、remainder=1と予測される。例えば
図52に示す例では、remainder=1の場合、エントロピー符号化部110は、二値信号の符号長を最も短くするために、ライスパラメタとして、g=1を選択する。
【0404】
また、25≦sum_minus1のときには、上述の5つの周辺係数は、凡そ7以上の値を有すると考えられる。その結果、符号化対象の係数は、その5つの周辺係数に近く、かつ、その周辺係数よりも大きい可能性があるため、9以上と予測される。したがって、その符号化対象の係数のフラグ形式では、gt1_flagおよびgt2_flagが用いられるため、その係数のremainderは、remainder≧2と予測される。例えば
図52に示す例では、remainder≧2の場合、エントロピー符号化部110は、二値信号の符号長を最も短くするために、ライスパラメタとして、g=2を選択する。
【0405】
なお、エントロピー復号部202も、エントロピー符号化部110と同様に、ライスパラメタを決定することができる。
【0406】
<第1態様の第1の例>
図53は、第1態様の第1の例におけるエントロピー符号化部110の全体的な処理動作を示すフローチャートである。なお、
図53のフローチャートは、例えば上述のDQが使用される場合におけるエントロピー符号化部110の処理動作を示す。
【0407】
エントロピー符号化部110は、サブブロックごとに、そのサブブロック内の各係数が符号化されるように、ステップS110~S140の処理を繰り返す。サブブロックは、例えば上述の変換ユニットをさらに分割することによって得られる4×4画素からなるブロックである。
【0408】
具体的には、まず、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、その係数のsig_flagを符号化し、そのsig_flagが1であれば、その係数のparity_flagを符号化する。さらに、エントロピー符号化部110は、そのsig_flagが1であれば、その係数のAbsLevelが3以上か否かの判定に基づいて、その係数のgt1_flagを符号化する(ステップS110)。
【0409】
次に、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、その係数が3以上であれば、その係数のAbsLevelが5以上か否かの判定に基づいて、その係数のgt2_flagを符号化する(ステップS120)。
【0410】
次に、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、その係数のAbsLevelが5以上か否かの判定に基づいて、その係数のremainder=(AbsLevel-5)/2を符号化する(ステップS130)。
【0411】
そして、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、係数が0でなければ、その係数の符号(プラスまたはマイナス)を符号化する(ステップS140)。なお、その符号は、sign_flagとして符号化されてもよい。
【0412】
エントロピー符号化部110は、サブブロックに対してステップS110~S140の処理を行うと、他のサブブロックに対しても同様に、ステップS110~S140の処理を行う。
【0413】
図54は、
図53のステップS110における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0414】
エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数に対して、ステップS111~S117の処理を繰り返す。
【0415】
まず、エントロピー符号化部110は、符号化対象の係数のAbsLevelがAbsLevel≠0であるか否かを判定する(ステップS111)。ここで、エントロピー符号化部110は、AbsLevel≠0ではないと判定すると(ステップS111のNo)、その係数に対してsig_flag=0を符号化する(ステップS112b)。一方、エントロピー符号化部110は、AbsLevel≠0であると判定すると(ステップS111のYes)、その係数に対してsig_flag=1を符号化する(ステップS112a)。
【0416】
次に、エントロピー符号化部110は、符号化対象の係数のAbsLevelの第1ビット(最下位ビット)が1か否かを判定する(ステップS113)。ここで、エントロピー符号化部110は、第1ビットが1であると判定すると(ステップS113のYes)、その係数に対してparity_flag=0を符号化する(ステップS114a)。一方、エントロピー符号化部110は、第1ビットが1ではないと判定すると(ステップS113のNo)、その係数に対してparity_flag=1を符号化する(ステップS114b)。
【0417】
次に、エントロピー符号化部110は、符号化対象の係数のAbsLevelが3以上か否かを判定する(ステップS115)。ここで、エントロピー符号化部110は、AbsLevelが3以上であると判定すると(ステップS115のYes)、その係数に対してgt1_flag=1を符号化する(ステップS116a)。一方、エントロピー符号化部110は、AbsLevelが3以上ではないと判定すると(ステップS115のNo)、その係数に対してgt1_flag=0を符号化する(ステップS116b)。
【0418】
そして、エントロピー符号化部110は、その符号化対象の係数に応じて、すなわちparity_flagに応じて、DQのstateを量子化部108および逆量子化部112に更新させる(ステップS117)。
【0419】
エントロピー符号化部110は、サブブロックに含まれる係数に対してステップS111~S117の処理を行うと、そのサブブロックに含まれる次の係数に対しても同様に、ステップS111~S117の処理を行う。これにより、サブブロックに含まれる各係数に対して、sig_flag、parity_flag、およびgt1_flagのうちのその係数に応じた少なくとも1つのフラグが符号化される。
【0420】
図55は、
図53のステップS120における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0421】
エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数に対して、ステップS121~S123bの処理を繰り返す。
【0422】
まず、エントロピー符号化部110は、符号化対象の係数のAbsLevelが3以上であるか否かを判定する(ステップS121)。ここで、エントロピー符号化部110は、AbsLevelが3以上ではないと判定すると(ステップS121のNo)、その係数に対するgt2_flagの符号化を行わない。一方、エントロピー符号化部110は、AbsLevelが3以上であると判定すると(ステップS121のYes)、さらに、AbsLevelが5以上であるか否かを判定する(ステップS122)。ここで、エントロピー符号化部110は、AbsLevelが5以上であると判定すると(ステップS122のYes)、その係数に対してgt2_flag=1を符号化する(ステップS123a)。一方、エントロピー符号化部110は、AbsLevelが5以上ではないと判定すると(ステップS122のNo)、その係数に対してgt2_flag=0を符号化する(ステップS123b)。
【0423】
エントロピー符号化部110は、サブブロックに含まれる係数に対してステップS121~S123bの処理を行うと、そのサブブロックに含まれる次の係数に対しても同様に、ステップS121~S123bの処理を行う。これにより、サブブロックに含まれる各係数に対して、gt2_flagが必要に応じて符号化される。
【0424】
図56は、
図53のステップS130における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0425】
エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数に対して、ステップS131~S132の処理を繰り返す。
【0426】
まず、エントロピー符号化部110は、符号化対象の係数のAbsLevelが5以上であるか否かを判定する(ステップS131)。ここで、エントロピー符号化部110は、AbsLevelが5以上ではないと判定すると(ステップS131のNo)、その係数に対するremainderの符号化を行わない。一方、エントロピー符号化部110は、AbsLevelが5以上であると判定すると(ステップS131のYes)、その係数に対してremainderを符号化する(ステップS132)。すなわち、エントロピー符号化部110は、(AbsLevel-5)/2を符号化する(ステップS132)。
【0427】
エントロピー符号化部110は、サブブロックに含まれる係数に対してステップS131~S132の処理を行うと、そのサブブロックに含まれる次の係数に対しても同様に、ステップS131~S132の処理を行う。これにより、サブブロックに含まれる各係数に対して、remainderが必要に応じて符号化される。
【0428】
図57は、第1態様の第1の例におけるエントロピー符号化に関わるシンタックスを示す図である。具体的には、
図57は、
図53~
図56のフローチャートによって示される処理によって生成されるストリームのシンタックス構成を示す。
【0429】
エントロピー符号化部110は、この
図57に示すシンタックスにしたがって、複数のサブブロックのそれぞれについて、そのサブブロックに含まれる各係数を符号化する。なお、
図57におけるsig_flag[n]およびparity_flag[n]は、サブブロックに含まれるn番目の係数のsig_flagおよびparity_flagである。また、
図57におけるabs_gt1_flag[n]およびabs_gt2_flag[n]は、サブブロックに含まれるn番目の係数のgt1_flagおよびgt2_flagである。また、
図57におけるabs_remainder[n]およびsign_flag[n]は、サブブロックに含まれるn番目の係数のremainderおよびsign_flagである。
【0430】
図58は、4×4個の係数を含むサブブロックの一具体例を示す図である。
図59は、
図58のサブブロックに含まれる各係数を、第1態様の第1の例におけるフラグ形式で表した一具体例を示す図である。なお、
図59では、各係数がスキャン順に左から右に向けて配列されている。
【0431】
エントロピー符号化部110は、
図58に示すサブブロックに対してスキャンを行う。つまり、エントロピー符号化部110は、サブブロックに含まれる各係数を予め定められた順(すなわちスキャン順)に取得する。例えば、エントロピー符号化部110は、サブブロックの右下にある係数から左上にある係数に向かって斜め方向に沿った順序で各係数を取得する。
図58に示す例では、エントロピー符号化部110は、
図58に示すように、1、1、0、2、3、4、7、5、4、5、3、6、10、8、10、20の順で各係数を取得する。そして、エントロピー符号化部110は、その取得された順に各係数をフラグ形式に変換する。
【0432】
具体的には、エントロピー符号化部110は、係数が「1」であれば、AbsLevelが「1」であるため、その係数に対して、sig_flag=1、parity_flag=0、およびgt1_flag=0を符号化する。
【0433】
また、エントロピー符号化部110は、係数が「0」であれば、その係数に対して、sig_flag=0を符号化する。また、エントロピー符号化部110は、係数が「4」であれば、AbsLevelが「4」であるため、その係数に対して、sig_flag=1、parity_flag=1、gt1_flag=1、およびgt2_flag=0を符号化する。また、エントロピー符号化部110は、係数が「7」であれば、AbsLevelが「7」であるため、その係数に対して、sig_flag=1、parity_flag=0、gt1_flag=1、gt2_flag=1、およびremainder=1を符号化する。
【0434】
また、エントロピー符号化部110は、これらのsig_flag、parity_flag、gt1_flag、gt2_flag、およびremainderを算術符号化する。算術符号化には、例えばCABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)が用いられる。また、sig_flag、parity_flag、gt1_flag、およびgt2_flagに対しては、適応的な可変のシンボル発生確率が用いられ、remainderに対しては、固定のシンボル発生確率が用いられてもよい。つまり、エントロピー符号化部110は、CABACによってシンボル発生確率を更新しながらsig_flag、parity_flag、gt1_flag、およびgt2_flagを算術符号化する。一方、remainderについては、エントロピー符号化部110は、そのremainderに対して上述のライスパラメタを決定し、そのライスパラメタに応じた二値化方法によってremainderを二値化する。そして、エントロピー符号化部110は、CABACのバイパス処理により、固定のシンボル発生確率を用いて、二値化されたremainderを算術符号化する。
【0435】
また、第1態様の第1の例におけるエントロピー復号部202は、
図57に示すシンタックスによって構成される符号化された各係数のフラグおよびremainderを順に復号する。そして、エントロピー復号部202は、符号化された係数ごとに、復号されたフラグおよびremainderなどを用いて上述のようにAbsLevelを算出することによって、その符号化された係数を復号する。
【0436】
<第1態様の第1の例における効果>
このような第1態様の第1の例では、係数の符号化において、gt1_flagおよびgt2_flagなどの各フラグを用いることによって、remainderの符号量を抑えることができる。
【0437】
なお、一般に、符号化ユニットまたは変換ユニットでは、サブブロックが低域側(つまり左上側)にあるほど、そのサブブロックには0でない係数が多い。
図59に示す例では、サブブロックに含まれる多くの係数に対して、gt1_flagおよびgt2_flagなどが用いられている。また、このように、サブブロック内に3以上の値を持つ係数が多い場合、そのサブブロックの符号量は、gt1_flagおよびgt2_flagによって大きくなる可能性がある。
【0438】
また、各フラグをCABACによってシンボル発生確率を更新しながら算術符号化する場合には、バイパス処理によって算術符号化するよりも処理負担が大きい。したがって、各フラグをCABACによってシンボル発生確率を更新しながら算術符号化する場合には、これらのフラグが多いほど、処理負担が大きくなる。したがって、これらのフラグの数を制限してもよい。
【0439】
<第1態様の第2の例>
図60は、第1態様の第2の例におけるエントロピー符号化部110の全体的な処理動作を示すフローチャートである。
【0440】
第1態様の第2の例では、第1の例とは異なり、サブブロックに用いられるgt1_flagおよびgt2_flagのそれぞれの数が制限されている。例えば、gt1_flagの数は、n_1個までに制限され、gt2_flagの数は、n_2個までに制限されている。例えば、n_1は、1≦n_1≦16を満たす整数であり、n_2は、1≦n_2≦16を満たす整数である。
【0441】
例えば、
図60に示すように、エントロピー符号化部110は、サブブロックごとに、そのサブブロック内の各係数が符号化されるように、ステップS210~S230およびS140の処理を繰り返す。
【0442】
具体的には、まず、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、その係数のsig_flagを符号化し、そのsig_flagが1であれば、その係数のparity_flagを符号化する。さらに、エントロピー符号化部110は、その係数が、0ではないn_1番目以内の係数であれば、その係数のAbsLevelが3以上か否かの判定に基づいて、その係数のgt1_flagを符号化する(ステップS210)。なお、0ではないn_1番目以内の係数は、サブブロック内の0ではない各係数のうちの、スキャン順でn_1番目以内にある係数である。
【0443】
次に、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、その係数が、3以上のAbsLevelを有するn_2番目以内の係数であれば、その係数のAbsLevelが5以上か否かの判定に基づいて、その係数のgt2_flagを符号化する(ステップS220)。なお、3以上のAbsLevelを有するn_2番目以内の係数は、サブブロック内の3以上のAbsLevelを有する各係数のうちの、スキャン順でn_2番目以内にある係数である。
【0444】
次に、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、その係数のAbsLevelがbaseLevel以上であれば、その係数のremainder=(AbsLevel-baseLevel)/2を符号化する(ステップS230)。baseLevelは、gt1_flagおよびgt2_flagのそれぞれが使用された数に応じて異なる値である。例えば、baseLevelの初期値は5である。また、baseLevelは、gt2_flagがn_2個使用されると、その初期値5から3に更新され、その後、gt1_flagがn_1個(例えばn_1>n_2)使用されると、3から1に更新される。
【0445】
そして、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、係数が0でなければ、その係数の符号(プラスまたはマイナス)を符号化する(ステップS140)。
【0446】
エントロピー符号化部110は、サブブロックに対してステップS210~S230およびS140の処理を行うと、他のサブブロックに対しても同様に、ステップS210~S230およびS140の処理を行う。
【0447】
図61は、
図60のステップS210における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図61に示すフローチャートは、
図54に示すフローチャートのステップS111~S117を含み、さらにステップS211を含む。
【0448】
つまり、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数に対して、ステップS111~S117およびS211の処理を繰り返す。
【0449】
具体的には、エントロピー符号化部110は、上述の第1の例と同様に、ステップS111~114bの処理を実行する。その後、エントロピー符号化部110は、符号化対象の係数aが、0ではないn_1番目以内の係数であるか否かを判定する(ステップS211)。ここで、エントロピー符号化部110は、符号化対象の係数aが、0ではないn_1番目以内の係数であると判定すると(ステップS211のYes)、上述の第1の例と同様に、ステップS115~S117の処理を実行する。一方、エントロピー符号化部110は、符号化対象の係数aが、0ではないn_1番目以内の係数ではないと判定すると(ステップS211のNo)、ステップS115~S116bの処理を行うことなく、ステップS117の処理を実行する。つまり、第1の例では、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の全ての0でない係数に対してgt1_flagを用いている。しかし、第2の例では、エントロピー符号化部110は、gt1_flagをn_1回使用すると、その後に、0ではない係数を符号化するときには、その係数に対してgt1_flagを用いない。
【0450】
図62は、
図60のステップS220における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図62に示すフローチャートは、
図55に示すフローチャートのステップS122~S123bを含み、ステップS121の代わりにステップS221を含む。
【0451】
つまり、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数に対して、ステップS221およびS122~S123bの処理を繰り返す。
【0452】
具体的には、エントロピー符号化部110は、符号化対象の係数aが、AbsLevel≧3を満たすn_2番目以内の係数であるか否かを判定する(ステップS221)。ここで、エントロピー符号化部110は、係数aが、AbsLevel≧3を満たすn_2番目以内の係数ではないと判定すると(ステップS221のNo)、その係数aに対するgt2_flagの符号化を行わない。一方、エントロピー符号化部110は、係数aが、AbsLevel≧3を満たすn_2番目以内の係数であると判定すると(ステップS221のYes)、さらに、AbsLevelが5以上であるか否かを判定する(ステップS122)。ここで、エントロピー符号化部110は、AbsLevelが5以上であると判定すると(ステップS122のYes)、その係数に対してgt2_flag=1を符号化する(ステップS123a)。一方、エントロピー符号化部110は、AbsLevelが5以上ではないと判定すると(ステップS122のNo)、その係数に対してgt2_flag=0を符号化する(ステップS123b)。
【0453】
エントロピー符号化部110は、サブブロックに含まれる係数に対してステップS221およびS122~S123bの処理を行うと、そのサブブロックに含まれる次の係数に対しても同様に、ステップS221およびS122~S123bの処理を行う。これにより、サブブロックに含まれる各係数に対して、gt2_flagが必要に応じて符号化される。
【0454】
図63は、
図60のステップS230における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0455】
エントロピー符号化部110は、まず、baseLevelを5に設定する(ステップS231)。そして、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数に対して、ステップS232~S236の処理を繰り返す。
【0456】
具体的には、エントロピー符号化部110は、サブブロック内における符号化対象の係数aのスキャン順で前にある各係数に対して、gt1_flagがn_1個用いられているか否かを判定する(ステップS232)。ここで、エントロピー符号化部110は、そのgt1_flagがn_1個用いられていると判定すると(ステップS232のYes)、baseLevelを1に更新する(ステップS233)。
【0457】
一方、エントロピー符号化部110は、そのgt1_flagがn_1個用いられていないと判定すると(ステップS232のNo)、さらに、gt2_flagの個数に関する判定を行う。つまり、エントロピー符号化部110は、サブブロック内における符号化対象の係数aのスキャン順で前にある各係数に対して、gt2_flagがn_2個用いられているか否かを判定する(ステップS234)。ここで、エントロピー符号化部110は、そのgt2_flagがn_2個用いられていると判定すると(ステップS234のYes)、baseLevelを3に更新する(ステップS235)。
【0458】
一方、エントロピー符号化部110は、そのgt1_flagがn_2個用いられていないと判定すると(ステップS234のNo)、係数aに対してremainderを符号化する(ステップS236)。また、ステップS233およびS235のそれぞれの処理が行われた後にも、エントロピー符号化部110は、係数aに対してremainderを符号化する(ステップS236)。すなわち、エントロピー符号化部110は、(AbsLevel-baseLevel)/2を符号化する。なお、remainderの符号化は、AbsLevel≧baseLevelが満たされているときに行われる。また、baseLevelは、ステップS233およびS235のいずれの処理も行われていない場合には、5である。また、baseLevelは、ステップS233の処理が行われている場合には、1であり、ステップS235の処理が行われている場合には、3である。なお、
図63に示すフローチャートでは、n_1>n_2であってもよい。
【0459】
エントロピー符号化部110は、サブブロックに含まれる係数に対してステップS232~S236の処理を行うと、そのサブブロックに含まれる次の係数に対しても同様に、ステップS232~S236の処理を行う。これにより、サブブロックに含まれる各係数に対して、remainderが必要に応じて符号化される。
【0460】
図64は、第1態様の第2の例におけるエントロピー符号化に関わるシンタックスを示す図である。具体的には、
図64は、
図60~
図63のフローチャートによって示される処理によって生成されるストリームのシンタックス構成を示す。
【0461】
エントロピー符号化部110は、この
図64に示すシンタックスにしたがって、複数のサブブロックのそれぞれについて、そのサブブロックに含まれる各係数を符号化する。
【0462】
ここで、
図64に示すシンタックスは、
図57に示すシンタックスと比べて、さらに、2つのカウンタの設定または更新と、baseLevelの設定または更新とを含む。2つのカウンタは、numNonZeroと、numUpper3とである。numNonZeroは、0に初期化され、sig_flag[n]が1であれば、インクリメントされる。そして、sig_flag[n]が1であって、かつnumNonZeroがn_1以下であれば、abs_gt1_flag[n]が符号化される。numUpper3は、0に初期化される。その後、abs_gt1_flag[n]が1であって、かつ、numUpper3がn_2以下であれば、abs_gt2_flag[n]が符号化され、numUpper3がインクリメントされる。
【0463】
また、remainderの符号化では、まず、numNonZeroおよびnumUpper3のそれぞれが0に初期化され、baseLevelが5に初期化される。そして、absLevel[n]が0でなければ、numNonZeroがインクリメントされ、さらに、absLevel[n]が3以上であれば、numUpper3がインクリメントされる。なお、absLevel[n]は、n番目の係数のAbsLevelである。そして、absLevel[n]がbaseLevel以上であれば、abs_remainder[n]として、n番目の係数の(AbsLevel-baseLevel)/2が符号化される。そして、numNonZeroがn_1以上であれば、baseLevelが1に更新される。さらに、baseLevelが5であって、かつ、numUpper3がn_2以上であれば、そのbaseLevelが3に更新される。
【0464】
図65は、
図58のサブブロックに含まれる各係数を、第1態様の第2の例におけるフラグ形式で表した一具体例を示す図である。なお、
図65では、各係数がスキャン順に左から右に向けて配列されている。
【0465】
この
図65に示す例では、n_1=8およびn_2=1である。したがって、gt2_flagは、スキャン順で最初のAbsLevel≧3の係数に対して用いられ、その係数以降にある他の係数に対しては用いられない。また、gt1_flagは、それぞれ0ではない、スキャン順で最初の8個の係数に対して用いられ、それ以降にある係数に対しては用いられない。さらに、baseLevelは、初期には5に設定されているが、gt2_flagを用いることができなくなったときには、3に更新され、gt1_flagを用いることができなくなったときには、1に更新される。そして、このように更新されるbaseLevelを用いて、remainderが、(AbsLevel-baseLevel)/2によって算出されて符号化される。
【0466】
また、第1態様の第2の例におけるエントロピー復号部202は、
図64に示すシンタックスによって構成される符号化された各係数のフラグおよびremainderを順に復号する。そして、エントロピー復号部202は、符号化された係数ごとに、復号されたフラグおよびremainderなどを用いて上述のようにAbsLevelを算出することによって、その符号化された係数を復号する。
【0467】
<第1態様の第2の例における効果>
このような第2の例では、サブブロック内の係数に用いられるフラグ(例えば、gt1_flagまたはgt2_flag)の数が制限されている。したがって、フラグの符号量を削減することができる。
【0468】
具体的には、
図65に示す例では、gt1_flagおよびgt2_flagの個数は8個および1個にそれぞれ制限されている。したがって、gt1_flagが8個用いられた後には、係数が0でなくてもその係数に対してgt1_flagは用いられない。同様に、gt2_flagが1個用いられた後には、係数のAbsLevelが3以上であっても、その係数に対してgt2_flagは用いられない。したがって、第2の例では、第1の例(例えば
図59に示す例)と比べると、gt1_flagおよびgt2_flagのそれぞれの発生個数を少なくできるため、これらのフラグの符号化量を減らすことができる。また、gt1_flagおよびgt2_flagの符号化に、可変のシンボル発生確率のCABACが用いられる場合には、その符号化の処理負担を抑えることができる。つまり、可変のシンボル発生確率のCABACは、CABACのバイパス処理よりも処理負担が大きい。しかし、この第2の例では、その可変のシンボル発生確率のCABACが適用されるフラグの数を減らすことができるため、第1の例よりも処理負担を抑えることができる。つまり、第2の例では、係数の符号量の削減と、係数の符号化にかかる処理負担の軽減との両立を図ることができる。
【0469】
なお、この第2の例では、
図65において、gt1_flagが用いられる最大数はn_1=8であり、gt2_flagが用いられる最大数はn_2=1である。しかし、その最大数はこれらに限らず、他の値であってもよい。さらに、最大数n_1と最大数n_2とは、予め定められた固定値であってもよく、適宜設定または更新されてもよい。つまり、エントロピー符号化部110は、最大数n_1と最大数n_2とをそれぞれ適応的に決定してもよい。
【0470】
例えば、上述のように、サブブロック内の各係数の符号化では、これらの係数に対する特定のフラグ、つまり、gt1_flagおよびgt2_flag以外の特定の種別のフラグが先に符号化される。なお、特定の種別のフラグは、例えば、sig_flagおよびparity_flagのうちの少なくとも1つのフラグなどである。その特定の種別のフラグの後に、各係数に対するgt1_flagが符号化され、その後に、各係数に対するgt2_flagが符号化される。このような場合、エントロピー符号化部110は、その特定の種別のフラグの総数Mに依存する値として、最大数n_1を決定してもよい。あるいは、エントロピー符号化部110は、その特定の種別のフラグのうち、0または1などの特定の値を示すフラグの総数Maに依存する値として、最大数n_1を決定してもよい。また、エントロピー符号化部110は、その特定の種別のフラグおよびgt1_flagのうちの少なくとも1つのフラグの総数Nに依存する値として、最大数n_2を決定してもよい。あるいは、エントロピー符号化部110は、その特定の種別のフラグおよびgt1_flagのうちの少なくとも1つのフラグのうち、0または1などの特定の値を示すフラグの総数Naに依存する値として、最大数n_2を決定してもよい。なお、上述のフラグの総数M、Ma、N、およびNaは、いずれも既に符号化されたフラグの総数であってもよい。
【0471】
なお、この第2の例では、gt1_flagおよびgt2_flagについて、最大数に達した場合にそのフラグの符号化を行わない方法について説明したが、本開示はそれらのフラグに限るものではない。例えば、gt1_flagおよびgt2_flag以外のフラグであっても、係数の絶対値の符号化に関わるフラグであり、かつシンボル発生確率の更新を伴うCABACを用いて符号化されるフラグであれば、同様の方法を用いてそのフラグの符号化を行うかどうかを切り替えてもよい。
【0472】
[第2態様]
上記第1態様の第2の例では、用いられるgt1_flagの数が最大数n_1以下に制限され、用いられるgt2_flagの数が最大数n_2以下に制限されている。この第2態様では、n_2=0である。つまり、第2態様では、gt2_flagは用いられない。
【0473】
図66は、第2態様におけるエントロピー符号化部110の全体的な処理動作を示すフローチャートである。
【0474】
エントロピー符号化部110は、サブブロックごとに、そのサブブロック内の各係数が符号化されるように、ステップS210、S330およびS140の処理を繰り返す。
【0475】
具体的には、まず、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、その係数のsig_flagを符号化し、そのsig_flagが1であれば、その係数のparity_flagを符号化する。さらに、エントロピー符号化部110は、その係数が、0ではないn_1番目以内の係数であれば、その係数のAbsLevelが3以上か否かの判定に基づいて、その係数のgt1_flagを符号化する(ステップS210)。
【0476】
次に、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、その係数のAbsLevelがbaseLevel以上であれば、その係数のremainder=(AbsLevel-baseLevel)/2を符号化する(ステップS330)。この第2態様では、baseLevelは、gt1_flagが使用された数に応じて異なる値である。例えば、baseLevelの初期値は3である。また、baseLevelは、gt1_flagがn_1個使用されると、3から1に更新される。
【0477】
そして、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、係数が0でなければ、その係数の符号(プラスまたはマイナス)を符号化する(ステップS140)。
【0478】
エントロピー符号化部110は、サブブロックに対してステップS210、S330およびS140の処理を行うと、他のサブブロックに対しても同様に、ステップS210、S330およびS140の処理を行う。なお、ステップS210の処理は、
図61に示すフローチャートにしたがって行われる。
【0479】
図67は、
図66のステップS330における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0480】
エントロピー符号化部110は、まず、baseLevelを3に設定する(ステップS235)。そして、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数に対して、ステップS232、S233およびS236の処理を繰り返す。
【0481】
具体的には、エントロピー符号化部110は、サブブロック内における符号化対象の係数aのスキャン順で前にある各係数に対して、gt1_flagがn_1個用いられているか否かを判定する(ステップS232)。ここで、エントロピー符号化部110は、そのgt1_flagがn_1個用いられていると判定すると(ステップS232のYes)、baseLevelを1に更新する(ステップS233)。
【0482】
一方、エントロピー符号化部110は、そのgt1_flagがn_1個用いられていないと判定すると(ステップS232のNo)、係数aに対してremainderを符号化する(ステップS236)。また、ステップS233の処理が行われた後にも、エントロピー符号化部110は、係数aに対してremainderを符号化する(ステップS236)。すなわち、エントロピー符号化部110は、(AbsLevel-baseLevel)/2を符号化する。なお、remainderの符号化は、AbsLevel≧baseLevelが満たされているときに行われる。また、baseLevelは、ステップS233の処理が行われていない場合には、3であり、ステップS233の処理が行われている場合には、1である。
【0483】
エントロピー符号化部110は、サブブロックに含まれる係数に対してステップS232、S233およびS236の処理を行うと、そのサブブロックに含まれる次の係数に対しても同様に、ステップ232、S233およびS236の処理を行う。これにより、サブブロックに含まれる各係数に対して、remainderが必要に応じて符号化される。
【0484】
図68は、第2態様におけるエントロピー符号化に関わるシンタックスを示す図である。具体的には、
図68は、
図61、
図66および
図67のフローチャートによって示される処理によって生成されるストリームのシンタックス構成を示す。
【0485】
エントロピー符号化部110は、この
図68に示すシンタックスにしたがって、複数のサブブロックのそれぞれについて、そのサブブロックに含まれる各係数を符号化する。
【0486】
ここで、
図68に示すシンタックスは、
図64に示すシンタックスと比べて、numUpper3の設定または更新と、gt2_flagの符号化とを含んでいない。また、remainderの符号化では、
図64に示すシンタックスとは異なり、baseLevelが3に初期化される。
【0487】
図69は、
図58のサブブロックに含まれる各係数を、第2態様におけるフラグ形式で表した一具体例を示す図である。なお、
図69では、各係数がスキャン順に左から右に向けて配列されている。
【0488】
この
図69に示す例では、n_1=16である。したがって、gt1_flagは、それぞれ0ではない、スキャン順で最初の16個の係数に対して用いられ、それ以降にある係数に対しては用いられない。さらに、baseLevelは、初期には3に設定されているが、gt1_flagを用いることができなくなったときには、1に更新される。そして、このように更新されるbaseLevelを用いて、remainderが、(AbsLevel-baseLevel)/2によって算出されて符号化される。
【0489】
また、第2態様におけるエントロピー復号部202は、
図68に示すシンタックスによって構成される符号化された各係数のフラグおよびremainderを順に復号する。そして、エントロピー復号部202は、符号化された係数ごとに、復号されたフラグおよびremainderなどを用いて上述のようにAbsLevelを算出することによって、その符号化された係数を復号する。
【0490】
<第2態様における効果>
この第2態様では、gt2_flagは用いられない。これにより、フラグの符号量を削減し、処理負担を軽減することができる。また、第1態様の第2の例と同様に、gt1_flagの個数がn_1個以下に制限されていることにより、さらに、処理負担を軽減することができる。
【0491】
具体的には、
図69に示す例では、gt2_flagは用いられず、gt1_flagの個数は16個以下に制限されている。したがって、gt1_flagが16個用いられた後には、係数が0でなくてもその係数に対してgt1_flagは用いられない。また、第1態様の第2の例と同様に、gt1_flagの個数は8個以下に制限されていてもよく、16個または8個以外の任意の個数に制限されていてもよい。したがって、第2態様では、第1態様の第2の例(例えば
図65に示す例)と比べると、フラグの符号化量をさらに減らすことができる。また、gt1_flagおよびgt2_flagの符号化に、可変のシンボル発生確率のCABACが用いられる場合には、その符号化の処理負担を抑えることができる。つまり、可変のシンボル発生確率のCABACは、CABACのバイパス処理よりも処理負担が大きい。しかし、この第2態様では、その可変のシンボル発生確率のCABACが適用されるフラグの数をさらに減らすことができるため、第1態様の第2の例よりも処理負担をさらに抑えることができる。
【0492】
[第3態様]
第1態様および第2態様では、sum_minus1によってライスパラメタが決定され、そのライスパラメタに応じた符号化方法でremainderが符号化される。具体的には、ライスパラメタは、sum_minus1と閾値(例えば、12または25など)との比較によって決定される。
【0493】
第3態様では、第2態様と同様、gt1_flagおよびgt2_flagのそれぞれの数が制限され、それらのフラグが用いられた数に応じてbaseLevelが更新される。さらに、第3態様では、ライスパラメタを決定するためにsum_minus1と比較される上述の閾値が、そのbaseLevelに応じて変更される。
【0494】
図70は、第3態様におけるエントロピー符号化部110の全体的な処理動作を示すフローチャートである。なお、
図70に示すフローチャートは、
図60のフローチャートに含まれるステップS230の代わりにステップS430を含む。
【0495】
第3態様では、第1態様の第2の例と同様、サブブロックに用いられるgt1_flagおよびgt2_flagのそれぞれの数が制限されている。例えば、gt1_flagの数は、n_1個までに制限され、gt2_flagの数は、n_2個までに制限されている。例えば、n_1は、1≦n_1≦16を満たす整数であり、n_2は、1≦n_2≦16を満たす整数である。
【0496】
例えば、
図70に示すように、エントロピー符号化部110は、サブブロックごとに、そのサブブロック内の各係数が符号化されるように、ステップS210、S220、S430およびS140の処理を繰り返す。
【0497】
具体的には、エントロピー符号化部110は、第1態様の第2の例と同様に、ステップS210およびS220の処理を行う。すなわち、エントロピー符号化部110は、まず、サブブロック内の各係数について、その係数のsig_flagを符号化し、そのsig_flagが1であれば、その係数のparity_flagを符号化する。さらに、エントロピー符号化部110は、その係数が、0ではないn_1番目以内の係数であれば、その係数のAbsLevelが3以上か否かの判定に基づいて、その係数のgt1_flagを符号化する(ステップS210)。そして、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、その係数が、3以上のAbsLevelを有するn_2番目以内の係数であれば、その係数のAbsLevelが5以上か否かの判定に基づいて、その係数のgt2_flagを符号化する(ステップS220)。
【0498】
次に、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、その係数のAbsLevelがbaseLevel以上であれば、その係数のremainder=(AbsLevel-baseLevel)/2を符号化する(ステップS430)。このとき、第3態様では、エントロピー符号化部110は、baseLevelに応じて異なるライスパラメタを決定し、そのライスパラメタに応じた符号化方法で上述のremainderを符号化する。
【0499】
そして、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数について、係数が0でなければ、その係数の符号(プラスまたはマイナス)を符号化する(ステップS140)。
【0500】
エントロピー符号化部110は、サブブロックに対してステップS210、S220、S430およびS140の処理を行うと、他のサブブロックに対しても同様に、ステップS210、S220、S430およびS140の処理を行う。
【0501】
図71は、
図70のステップS430における詳細な処理動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図71に示すフローチャートは、
図63のフローチャートに含まれるステップS236の代わりにステップS431を含む。
【0502】
エントロピー符号化部110は、第1態様の第2の例と同様に、まず、baseLevelを5に設定する(ステップS231)。そして、エントロピー符号化部110は、サブブロック内の各係数に対して、ステップS232~S235およびS431の処理を繰り返す。
【0503】
具体的には、エントロピー符号化部110は、第1態様の第2の例と同様に、符号化対象の係数aに対してステップS232~S235の処理を行う。
【0504】
そして、エントロピー符号化部110は、サブブロック内における符号化対象の係数aのスキャン順で前にある各係数に対して、gt2_flagがn_2個用いられていないと判定すると(ステップS234のNo)、係数aに対してremainderを符号化する(ステップS431)。また、ステップS233およびS235のそれぞれの処理が行われた後にも、エントロピー符号化部110は、係数aに対してremainderを符号化する(ステップS236)。すなわち、エントロピー符号化部110は、(AbsLevel-baseLevel)/2を符号化する。なお、remainderを符号化は、AbsLevel≧baseLevelが満たされているときに行われる。
【0505】
エントロピー符号化部110は、サブブロックに含まれる係数に対してステップS232~S235およびS431の処理を行うと、そのサブブロックに含まれる次の係数に対しても同様に、ステップS232~S235およびS431の処理を行う。これにより、サブブロックに含まれる各係数に対して、remainderが必要に応じて符号化される。
【0506】
ここで、ステップS431において、baseLevelは、ステップS233およびS235のいずれの処理も行われていない場合には、5である。また、baseLevelは、ステップS233の処理が行われている場合には、1であり、ステップS235の処理が行われている場合には、3である。そして、この第3態様では、エントロピー符号化部110は、そのbaseLevelに応じて異なるライスパラメタを決定し、そのライスパラメタに応じた符号化方法で上述のremainderを符号化する。ライスパラメタに応じた符号化方法は、例えば
図50に示す3つの符号化方法のうちの何れかである。
【0507】
具体的には、第3態様では、baseLevelの値に応じて、ライスパラメタを決定するための閾値が変更される。
【0508】
つまり、baseLevel=5のときには、その閾値として第1態様および第2態様と同様に、その閾値として12および25が用いられる。したがって、エントロピー符号化部110は、sum_minus1<12のときには、ライスパラメタをg=0に決定する。また、エントロピー符号化部110は、12≦sum_minus1<25のときには、ライスパラメタをg=1に決定する。また、エントロピー符号化部110は、25≦sum_minus1のときには、ライスパラメタをg=2に決定する。エントロピー符号化部110は、このように決定されたライスパラメタに対応する符号化方法を選択し、その符号化方法を用いてremainder、すなわち(AbsLevel-baseLevel)/2をゴロム・ライス符号化する。
【0509】
また、baseLevel=3のときには、その閾値として、12よりも小さな値であるthres_1と、25よりも小さな値であるthres_2とが用いられる。なお、thres_1とthres_2とは、thres_1<thres_2の関係を満たす。したがって、エントロピー符号化部110は、sum_minus1<thres_1のときには、ライスパラメタをg=0に決定する。また、エントロピー符号化部110は、thres_1≦sum_minus1<thres_2のときには、ライスパラメタをg=1に決定する。また、エントロピー符号化部110は、thres_2≦sum_minus1のときには、ライスパラメタをg=2に決定する。エントロピー符号化部110は、このように決定されたライスパラメタに対応する符号化方法を選択し、その符号化方法を用いてremainder、すなわち(AbsLevel-baseLevel)/2をゴロム・ライス符号化する。
【0510】
また、baseLevel=1のときには、その閾値として、thres_1よりも小さな値であるthres_3と、thres_2よりも小さな値であるthres_4とが用いられる。なお、thres_3とthres_4とは、thres_3<thres_4の関係を満たす。したがって、エントロピー符号化部110は、sum_minus1<thres_3のときには、ライスパラメタをg=0に決定する。また、エントロピー符号化部110は、thres_3≦sum_minus1<thres_4のときには、ライスパラメタをg=1に決定する。また、エントロピー符号化部110は、thres_4≦sum_minus1のときには、ライスパラメタをg=2に決定する。エントロピー符号化部110は、このように決定されたライスパラメタに対応する符号化方法を選択し、その符号化方法を用いてremainder、すなわち(AbsLevel-baseLevel)/2をゴロム・ライス符号化する。
【0511】
より具体的な一例として、上述の4つの閾値は、thres_1=2、thres_2=12、thres_3=1、およびthres_4=2である。
【0512】
このような例において、baseLevel=3の場合には、ライスパラメタは以下のように決定される。
【0513】
sum_minus1<2のときには、ライスパラメタはg=0に決定される。これは、g=0であれば、remainderの符号長を最も短くすることができるからである。つまり、sum_minus1<2のときには、例えば
図51に示すように、符号化対象の係数の周囲にある5つの周辺係数は、平均的に1または2である。したがって、符号化対象の係数は、3または4と予測され、その符号化対象の係数のremainderは、0と予測される。これにより、
図52に示すように、ライスパラメタがg=0であれば、そのremainderの符号長を最も短くすることができる。
【0514】
2≦sum_minus1<12のときには、ライスパラメタはg=1に決定される。これは、g=1であれば、remainderの符号長を最も短くすることができるからである。つまり、2≦sum_minus1<12のときには、例えば
図51に示すように、符号化対象の係数の周囲にある5つの周辺係数は、平均的に3または4である。したがって、符号化対象の係数は、5または6と予測され、その符号化対象の係数のremainderは、1と予測される。これにより、
図52に示すように、ライスパラメタがg=1であれば、そのremainderの符号長を最も短くすることができる。
【0515】
12≦sum_minus1のときには、ライスパラメタはg=2に決定される。これは、g=2であれば、remainderの符号長を最も短くすることができるからである。つまり、12≦sum_minus1のときには、例えば
図51に示すように、符号化対象の係数の周囲にある5つの周辺係数は、平均的に5以上である。したがって、符号化対象の係数は、7以上と予測され、その符号化対象の係数のremainderは、2以上と予測される。これにより、
図52に示すように、ライスパラメタがg=2であれば、そのremainderの符号長を最も短くすることができる。
【0516】
また、baseLevel=1の場合には、ライスパラメタは以下のように決定される。
【0517】
sum_minus1=0のときには、ライスパラメタはg=0に決定される。これは、g=0であれば、remainderの符号長を最も短くすることができるからである。つまり、sum_minus1=0のときには、例えば
図51に示すように、符号化対象の係数の周囲にある5つの周辺係数は、平均的に0または1である。したがって、符号化対象の係数は、1または2と予測され、その符号化対象の係数のremainderは、0と予測される。これにより、
図52に示すように、ライスパラメタがg=0であれば、そのremainderの符号長を最も短くすることができる。
【0518】
1≦sum_minus1<2のときには、ライスパラメタはg=1に決定される。これは、g=1であれば、remainderの符号長を最も短くすることができるからである。つまり、1≦sum_minus1<2のときには、例えば
図51に示すように、符号化対象の係数の周囲にある5つの周辺係数は、平均的に1または2である。したがって、符号化対象の係数は、3または4と予測され、その符号化対象の係数のremainderは、1と予測される。これにより、
図52に示すように、ライスパラメタがg=1であれば、そのremainderの符号長を最も短くすることができる。
【0519】
2≦sum_minus1のときには、ライスパラメタはg=2に決定される。これは、g=2であれば、remainderの符号長を最も短くすることができるからである。つまり、2≦sum_minus1のときには、例えば
図51に示すように、符号化対象の係数の周囲にある5つの周辺係数は、平均的に3以上である。したがって、符号化対象の係数は、5以上と予測され、その符号化対象の係数のremainderは、2以上と予測される。これにより、
図52に示すように、ライスパラメタがg=2であれば、そのremainderの符号長を最も短くすることができる。
【0520】
<第3態様における効果>
この第3態様では、第1様態の第2の例に比べて、適切なライスパラメタが決定されるため、remainderの符号量を減らすことができる可能性がある。なお、この第3態様では、ライスパラメタをbaseLevelに応じて切り替えたが、baseLevelに限らず、係数の符号化の際に使用されるフラグ(例えば、gt1_flagまたはgt2_flag)の使用回数が上述の最大数に到達したかどうかで、ライスパラメタを切り替えてもよい。なお、remainderの符号化の際に、ライスパラメタを用いずに、baseLevelによってremainderの二値化方法を切り替えてもよい。
【0521】
なお、第3態様では、baseLevelの値に応じて、ライスパラメタを決定するための閾値が変更されるが、閾値を変更することなく、符号化対象の係数の絶対値の予測値とbaseLevelとの差分に基づいて、ライスパラメタを決定してもよい。つまり、第3態様では、baseLevelに応じて閾値を変更することによって、その閾値と比較される同一の数値(例えば同一のsum_minus1)に対して、互に異なるライスパラメタが決定される場合がある。しかし、その閾値を変更することなく、閾値と比較される数値(例えば上述の差分)をbaseLevelに応じて変更することによって、互に異なるライスパラメタが決定されてもよい。この場合であっても、この第3態様と同様の効果を奏することができる。
【0522】
<実施の形態2のまとめ>
以上、本実施の形態では、係数の符号化にフラグが用いられるとともに、そのフラグの数を適切に制限することができる。
【0523】
図72は、本実施の形態における符号化装置100の処理動作を示すフローチャートである。なお、
図72によって示されるフローチャートは、上記第1態様の第2の例または第3態様の処理動作を示す。
【0524】
本実施の形態における符号化装置100は、回路と、その回路に接続されたメモリとを備え、その回路は、動作において、ステップS10およびS20の処理を行う。
【0525】
つまり、回路は、変換および量子化された画像の構成単位に含まれる複数の係数のそれぞれについて、予め定められた順にしたがって当該係数の絶対値を符号化する(ステップS10)。次に、回路は、その複数の係数のそれぞれについて、当該係数が正か負かを示す符号を符号化する(ステップS20)。ここで、回路は、その絶対値の符号化(ステップS10)では、その絶対値の最下位ビットであるパリティーを示す信号を符号化する(ステップS11a)。次に、回路は、その絶対値の最下位ビット以外の部分の符号化にフラグを用いるか否かを第1の条件および第2の条件に基づいて判定する(ステップS12a)。そして、回路は、フラグを用いると判定される場合に、シンボル発生確率の更新を伴うCABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)によってそのフラグを符号化する(ステップS13a)。上述の第1の条件は、絶対値の大きさに基づく条件であり、第2の条件は、構成単位に用いられるフラグの数を制限するための条件である。例えば、上述のパリティーを示す信号は、parity_flagである。
【0526】
これにより、係数の絶対値の大きさに基づく第1の条件だけでなく、フラグの数を制限するための第2の条件にも基づいて、フラグを用いるか否かが判定されるため、フラグの数を適切に制限することができる。
【0527】
なお、フラグが用いられる場合には、係数の絶対値の符号量を抑えることができ、フラグが用いられない場合には、係数の絶対値の符号量、具体的には、係数の絶対値を表すためのremainderの符号量が増加する可能性がある。また、フラグの符号化には、適応的な可変のシンボル発生確率が用いられるCABACが適用され、remainderの符号化には、固定のシンボル発生確率が用いられるCABACのバイパス処理が適用される場合がある。ここで、可変のシンボル発生確率が用いられるCABACでは、バイパス処理よりも処理負担が大きい傾向がある。したがって、本開示の一態様に係る符号化装置では、フラグの数を適切に制限することができるため、その絶対値の符号量の低減と、その絶対値の符号化にかかる処理負担の軽減との両立を図ることができる。
【0528】
また、回路は、絶対値の符号化(ステップS10)では、フラグが符号化されるごとに、符号化されたフラグの数をカウントし、第1の条件が満たされていても第2の条件が満たされていなければ、絶対値の最下位ビット以外の部分の符号化にフラグを用いないと判定してもよい。ここで、第2の条件は、カウントされたフラグの数に応じたカウント数が制限数未満であるという条件である。制限数は、例えば上述の最大数であって、その具体的な一例は、上述のn_1またはn_2である。
【0529】
例えば、
図61のステップS211の処理では、符号化されたgt1_flagの数がカウントされている。そして、カウント数が制限数未満であるという第2の条件が満たされていれば、ステップS115~S116bの処理が行われる。一方、その第2の条件が満たされていなければ、AbsLevel≠0の条件(すなわち第1の条件)が満たされていても、ステップS115~S116bの処理が行われない。すなわち、絶対値の符号化にgt1_flagを用いないと判定される。
【0530】
また、
図62のステップS221の処理では、符号化されたgt2_flagの数がカウントされている。そして、カウント数が制限数未満であるという第2の条件が満たされていれば、ステップS122~S123bの処理が行われる。一方、その第2の条件が満たされていなければ、AbsLevel≧3の条件(すなわち第1の条件)が満たされていても、ステップS122~S123bの処理が行われない。すなわち、絶対値の符号化にgt2_flagを用いないと判定される。
【0531】
これにより、フラグが符号化されるごとに、その符号化されたフラグの数がカウントされるため、そのフラグの数をより適切に制限することができる。
【0532】
また、第1の条件は、絶対値が第1の値ではないという条件、または絶対値が第2の値以上であるという条件であってもよい。例えば、その第1の値は0であり、第2の値は3であってもよい。
【0533】
これにより、絶対値が0ではない係数に対して、例えば、その絶対値が3以上であるか否かを示すフラグ(例えば、gt1_flag)の数を適切に制限することができる。または、絶対値が3以上の係数に対して、例えば、その絶対値が5以上であるか否かを示すフラグ(例えば、gt2_flag)の数を適切に制限することができる。
【0534】
また、そのフラグは、互に異なる複数種のフラグからなっていてもよい。
【0535】
これにより、例えば、上述のgt1_flagおよびgt2_flagなどの複数種のフラグのそれぞれの数を適切に制限することができる。なお、複数種のフラグには、sig_flagおよびparity_flagなども含まれていてもよい。
【0536】
また、回路は、絶対値の符号化(ステップS10)では、さらに、フラグを用いることができない場合、または、絶対値を少なくとも1つのフラグのみで表現することができない場合に、絶対値を表現するための数値からなる残部を導出してもよい。そして、回路は、その導出された残部をCABACのバイパス処理によって符号化してもよい。
【0537】
これにより、係数の絶対値を、フラグとして、または、少なくとも1つのフラグと残部(remainder)とからなるデータ群として適切に符号化することができる。
【0538】
図73は、本実施の形態における符号化装置100による残部の符号化を示すフローチャートである。なお、
図73によって示されるフローチャートは、上記第3態様の処理動作を示す。
【0539】
回路は、上述の残部の導出では、その残部に対応する係数の前にある各係数に対して符号化されたフラグの数に応じたカウント数が制限数に達しているか否かに応じて異なる数値を示すベースレベル(すなわち上述のbaseLevel)を決定する(ステップS11b)。次に、回路は、決定されたそのベースレベルを用いて残部を導出する(ステップS12b)。さらに、回路は、その残部の符号化では、その残部の導出に用いられたベースレベルに基づいて、互に異なる複数の二値化方法からその残部に対応する二値化方法を選択する(ステップS13b)。次に、回路は、選択されたその二値化方法にしたがってその残部を二値化し(ステップS14b)、二値化された残部を算術符号化する(ステップS15b)。
【0540】
例えば、ステップS11bは、
図71に示すステップS231、S233、S235の処理に対応する。つまり、カウント数が制限数に達しているときに決定されるベースレベルは、例えば1または3であって、その制限数に達していないときに決定されるベースレベル(例えば、5)よりも小さい。また、ステップS12b~S15bは、
図71に示すステップS431の処理に対応する。
【0541】
これにより、係数の絶対値に対する残部を、ベースレベルを用いて適切に導出することができる。さらに、そのベースレベルに基づいて、残部の二値化に用いられる二値化方法が選択されるため、その残部の符号量を適切に低減することができる。
【0542】
図74は、本実施の形態における復号装置200の処理動作を示すフローチャートである。なお、
図74によって示されるフローチャートは、上記第1態様の第2の例または第3態様のそれぞれの符号化に対応する復号の処理動作を示す。
【0543】
本実施の形態における復号装置200は、回路と、その回路に接続されたメモリとを備え、その回路は、動作において、ステップS30およびS40の処理を行う。
【0544】
つまり、回路は、符号化された画像の構成単位に含まれる複数の係数のそれぞれについて、予め定められた順にしたがって当該係数の絶対値を復号する(ステップS30)。次に、回路は、その複数の係数のそれぞれについて、当該係数が正か負かを示す符号を復号する(ステップS40)。ここで、その構成単位では、それぞれ大きさに関する所定の条件を満たす絶対値を有するN個(Nは2以上の整数)の係数のうち、M個(MはN未満の整数)の係数のそれぞれの絶対値の符号化にはフラグが用いられ、残りの(N-M)個の係数のそれぞれの絶対値の符号化にはフラグが用いられていない。また、その絶対値の復号(ステップS30)では、回路は、その絶対値の最下位ビットであるパリティーを示す信号を復号する(ステップS31a)。そして、回路は、その絶対値の最下位ビット以外の部分の符号化にフラグが用いられている場合には、シンボル発生確率の更新を伴うCABAC(Context-Based Adaptive Binary Arithmetic Coding)によってそのフラグを復号する(ステップS32a)。例えば、上述のパリティーを示す信号は、parity_flagである。
【0545】
これにより、画像の構成単位の符号化に用いられるフラグの数が制限されていても、その符号化された画像の構成単位を適切に復号することができる。
【0546】
また、前記所定の条件は、前記係数の絶対値が第1の値ではないという条件、または前記係数の絶対値が第2の値以上であるという条件であってもよい。例えば、第1の値は0であり、第2の値は3であってもよい。
【0547】
これにより、絶対値が0ではない係数に対して、例えば、その絶対値が3以上であるか否かを示すフラグ(例えば、gt1_flag)の数が制限されていても、その符号化された画像の構成単位を適切に復号することができる。または、絶対値が3以上の係数に対して、例えば、その絶対値が5以上であるか否かを示すフラグ(例えば、gt2_flag)の数が制限されていても、その符号化された画像の構成単位を適切に復号することができる。
【0548】
また、フラグは、互に異なる複数種のフラグからなっていてもよい。
【0549】
これにより、例えば、上述のgt1_flagおよびgt2_flagなどの複数種のフラグのそれぞれの数が制限されていても、その符号化された画像の構成単位を適切に復号することができる。なお、複数種のフラグには、sig_flagおよびparity_flagなども含まれていてもよい。
【0550】
また、回路は、その絶対値の復号(ステップS30)では、さらに、その絶対値を表現するための数値からなる残部が符号化されている場合には、その残部をCABACのバイパス処理によって復号してもよい。
【0551】
これにより、係数の絶対値が、フラグとして、または、少なくとも1つのフラグと残部(remainder)とからなるデータ群として符号化されていても、その符号化された画像の構成単位を適切に復号することができる。
【0552】
図75は、本実施の形態における復号装置200による残部の復号を示すフローチャートである。なお、
図74によって示されるフローチャートは、上記第3態様の符号化に対応する復号の処理動作を示す。
【0553】
回路は、上述の残部の復号では、まず、その残部に対応する係数の前にある各係数に対して復号されたフラグの数に応じたカウント数が制限数に達しているか否かに応じて異なる数値を示すベースレベル(すなわち上述のbaseLevel)を決定する(ステップS31b)。次に、回路は、その残部を二値信号に算術復号する(ステップS32b)。次に、回路は、決定されたベースレベルに基づいて、互に異なる複数の多値化方法からその二値信号に対応する多値化方法を選択する(ステップS33b)。そして、回路は、選択された多値化方法にしたがって二値信号を多値化する(ステップS34b)。
【0554】
例えば、ステップS31bは、
図71に示すステップS231、S233、S235の処理に対応する。つまり、カウント数が制限数に達しているときに決定されるベースレベルは、例えば1または3であって、その制限数に達していないときに決定されるベースレベル(例えば、5)よりも小さい。
【0555】
これにより、ベースレベルに基づいて、二値信号の多値化に用いられる多値化方法が選択されるため、その残部を適切に復号することができる。
【0556】
なお、本実施の形態では、画像の構成単位の一例としてサブブロックを用いたが、サブブロックに限らず、その構成単位はどのような単位であってもよい。また、本実施の形態では、サブブロックの具体例として変換ユニットに含まれる4×4画素からなるブロックを用いている。しかし、サブブロックはその具体例に限定されず、どのようなブロックであってもよい。
【0557】
また、本実施の形態では、複数の係数のそれぞれの絶対値を順に符号化するときには、既に符号化されたフラグの数をカウントし、そのカウントされたフラグの数が制限数または最大数未満であれば、次の係数の絶対値の符号化にフラグを用いると決定される。しかし、そのフラグの数に限定されることなく、そのフラグの数を含むカウント数が制限数未満であれば、フラグを用いると決定し、そのカウント数が制限数未満でなければ、フラグを用いないと決定してもよい。カウント数は、既に符号化されたフラグの数が増えるほど大きな値をとる数値であればよく、そのカウント数には、他のフラグの数が含まれていてもよい。
【0558】
また、本実施の形態では、gt1_flagおよびgt2_flagの数が制限されるが、このように数が制限されるフラグの定義は、どのようなものであってもよい。例えば、gt1_flagは、絶対値が0ではない係数に用いられ、その絶対値が3以上であるか否かを示すが、その絶対値が3以外の他の数値以上であるか否かを示してもよい。また、gt2_flagは、3以上の絶対値を有する係数に用いられ、その絶対値が5以上であるか否かを示すが、3以外の他の数値以上の絶対値を有する係数に用いられ、その絶対値が5以外の他の数値以上であるか否かを示してもよい。
【0559】
[その他の例]
上述された各例における符号化装置100及び復号装置200は、それぞれ、画像符号化装置及び画像復号装置として利用されてもよいし、動画像符号化装置及び動画像復号装置として利用されてもよい。
【0560】
あるいは、符号化装置100および復号装置200は、エントロピー符号化装置およびエントロピー復号装置としてそれぞれ利用されてもよい。すなわち、符号化装置100および復号装置200は、エントロピー符号化部110およびエントロピー復号部202のみに対応していてもよい。そして、他の構成要素は、他の装置に含まれていてもよい。
【0561】
また、上述された各例の少なくとも一部が、符号化方法として利用されてもよいし、復号方法として利用されてもよいし、エントロピー符号化方法またはエントロピー復号方法として利用されてもよいし、その他の方法として利用されてもよい。
【0562】
また、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0563】
具体的には、符号化装置100および復号装置200のそれぞれは、処理回路(Processing Circuitry)と、当該処理回路に電気的に接続された、当該処理回路からアクセス可能な記憶装置(Storage)とを備えていてもよい。例えば、処理回路はプロセッサa1またはb1に対応し、記憶装置はメモリa2またはb2に対応する。
【0564】
処理回路は、専用のハードウェアおよびプログラム実行部の少なくとも一方を含み、記憶装置を用いて処理を実行する。また、記憶装置は、処理回路がプログラム実行部を含む場合には、当該プログラム実行部により実行されるソフトウェアプログラムを記憶する。
【0565】
ここで、上述された符号化装置100または復号装置200などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0566】
例えば、このプログラムは、コンピュータに、以下の符号化方法の処理を実行させる。その符号化方法では、変換および量子化された画像の構成単位に含まれる複数の係数のそれぞれについて、予め定められた順にしたがって当該係数の絶対値を符号化し、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数が正か負かを示す符号を符号化し、前記絶対値の符号化では、前記絶対値の最下位ビットであるパリティーを示す信号を符号化し、前記絶対値の最下位ビット以外の部分の符号化にフラグを用いるか否かを第1の条件および第2の条件に基づいて判定し、前記フラグを用いると判定される場合に、シンボル発生確率の更新を伴うCABACによって前記フラグを符号化し、前記第1の条件は、前記絶対値の大きさに基づく条件であり、前記第2の条件は、前記構成単位に用いられる前記フラグの数を制限するための条件である。
【0567】
また、例えば、このプログラムは、コンピュータに、以下の復号方法の処理を実行させる。その復号方法では、符号化された画像の構成単位に含まれる複数の係数のそれぞれについて、予め定められた順にしたがって当該係数の絶対値を復号し、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数が正か負かを示す符号を復号し、前記構成単位では、それぞれ大きさに関する所定の条件を満たす絶対値を有するN個(Nは2以上の整数)の係数のうち、M個(MはN未満の整数)の係数のそれぞれの絶対値の符号化にはフラグが用いられ、残りの(N-M)個の係数のそれぞれの絶対値の符号化には前記フラグが用いられておらず、前記絶対値の復号では、前記絶対値の最下位ビットであるパリティーを示す信号を復号し、前記絶対値の最下位ビット以外の部分の符号化に前記フラグが用いられている場合には、シンボル発生確率の更新を伴うCABACによって前記フラグを復号する。
【0568】
また、各構成要素は、上述の通り、回路であってもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路であってもよい。また、各構成要素は、汎用的なプロセッサで実現されてもよいし、専用のプロセッサで実現されてもよい。
【0569】
また、特定の構成要素が実行する処理を別の構成要素が実行してもよい。また、処理を実行する順番が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、符号化復号装置が、符号化装置100および復号装置200を備えていてもよい。
【0570】
また、説明に用いられた第1および第2等の序数は、適宜、付け替えられてもよい。また、構成要素などに対して、序数が新たに与えられてもよいし、取り除かれてもよい。
【0571】
以上、符号化装置100および復号装置200の態様について、複数の例に基づいて説明したが、符号化装置100および復号装置200の態様は、これらの例に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を各例に施したものや、異なる例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、符号化装置100および復号装置200の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0572】
ここで開示された1以上の態様を本開示における他の態様の少なくとも一部と組み合わせて実施してもよい。また、ここで開示された1以上の態様のフローチャートに記載の一部の処理、装置の一部の構成、シンタックスの一部などを他の態様と組み合わせて実施してもよい。
【0573】
[実施及び応用]
以上の各実施の形態において、機能的又は作用的なブロックの各々は、通常、MPU(micro proccessing unit)及びメモリ等によって実現可能である。また、機能ブロックの各々による処理は、ROM等の記録媒体に記録されたソフトウェア(プログラム)を読み出して実行するプロセッサなどのプログラム実行部として実現されてもよい。当該ソフトウェアは、配布されてもよい。当該ソフトウェアは、半導体メモリなどの様々な記録媒体に記録されてもよい。なお、各機能ブロックをハードウェア(専用回路)によって実現することも可能である。ハードウェア及びソフトウェアの様々な組み合わせが採用され得る。
【0574】
各実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
【0575】
本開示の態様は、以上の実施例に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本開示の態様の範囲内に包含される。
【0576】
さらにここで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)又は動画像復号化方法(画像復号方法)の応用例、及び、その応用例を実施する種々のシステムを説明する。このようなシステムは、画像符号化方法を用いた画像符号化装置、画像復号方法を用いた画像復号装置、又は、両方を備える画像符号化復号装置を有することを特徴としてもよい。このようなシステムの他の構成について、場合に応じて適切に変更することができる。
【0577】
[使用例]
図76は、コンテンツ配信サービスを実現する適切なコンテンツ供給システムex100の全体構成を示す図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ、図示された例における固定無線局である基地局ex106、ex107、ex108、ex109、ex110が設置されている。
【0578】
このコンテンツ供給システムex100では、インターネットex101に、インターネットサービスプロバイダex102又は通信網ex104、及び基地局ex106~ex110を介して、コンピュータex111、ゲーム機ex112、カメラex113、家電ex114、及びスマートフォンex115などの各機器が接続される。当該コンテンツ供給システムex100は、上記のいずれかの装置を組合せて接続するようにしてもよい。種々の実施において、基地局ex106~ex110を介さずに、各機器が電話網又は近距離無線等を介して直接的又は間接的に相互に接続されていてもよい。さらに、ストリーミングサーバex103は、インターネットex101等を介して、コンピュータex111、ゲーム機ex112、カメラex113、家電ex114、及びスマートフォンex115などの各機器と接続されてもよい。また、ストリーミングサーバex103は、衛星ex116を介して、飛行機ex117内のホットスポット内の端末等と接続されてもよい。
【0579】
なお、基地局ex106~ex110の代わりに、無線アクセスポイント又はホットスポット等が用いられてもよい。また、ストリーミングサーバex103は、インターネットex101又はインターネットサービスプロバイダex102を介さずに直接通信網ex104と接続されてもよいし、衛星ex116を介さず直接飛行機ex117と接続されてもよい。
【0580】
カメラex113はデジタルカメラ等の静止画撮影、及び動画撮影が可能な機器である。また、スマートフォンex115は、2G、3G、3.9G、4G、そして今後は5Gと呼ばれる移動通信システムの方式に対応したスマートフォン機、携帯電話機、又はPHS(Personal Handy-phone System)等である。
【0581】
家電ex114は、冷蔵庫、又は家庭用燃料電池コージェネレーションシステムに含まれる機器等である。
【0582】
コンテンツ供給システムex100では、撮影機能を有する端末が基地局ex106等を通じてストリーミングサーバex103に接続されることで、ライブ配信等が可能になる。ライブ配信では、端末(コンピュータex111、ゲーム機ex112、カメラex113、家電ex114、スマートフォンex115、及び飛行機ex117内の端末等)は、ユーザが当該端末を用いて撮影した静止画又は動画コンテンツに対して上記各実施の形態で説明した符号化処理を行ってもよく、符号化により得られた映像データと、映像に対応する音を符号化した音データと多重化してもよく、得られたデータをストリーミングサーバex103に送信してもよい。即ち、各端末は、本開示の一態様に係る画像符号化装置として機能する。
【0583】
一方、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して送信されたコンテンツデータをストリーム配信する。クライアントは、上記符号化処理されたデータを復号化することが可能な、コンピュータex111、ゲーム機ex112、カメラex113、家電ex114、スマートフォンex115、又は飛行機ex117内の端末等である。配信されたデータを受信した各機器は、受信したデータを復号化処理して再生してもよい。即ち、各機器は、本開示の一態様に係る画像復号装置として機能してもよい。
【0584】
[分散処理]
また、ストリーミングサーバex103は複数のサーバ又は複数のコンピュータであって、データを分散して処理したり記録したり配信するものであってもよい。例えば、ストリーミングサーバex103は、CDN(Contents Delivery Network)により実現され、世界中に分散された多数のエッジサーバとエッジサーバ間をつなぐネットワークによりコンテンツ配信が実現されていてもよい。CDNでは、クライアントに応じて物理的に近いエッジサーバが動的に割り当てられ得る。そして、当該エッジサーバにコンテンツがキャッシュ及び配信されることで遅延を減らすことができる。また、いくつかのタイプのエラーが発生した場合又はトラフィックの増加などにより通信状態が変わる場合に複数のエッジサーバで処理を分散したり、他のエッジサーバに配信主体を切り替えたり、障害が生じたネットワークの部分を迂回して配信を続けることができるので、高速かつ安定した配信が実現できる。
【0585】
また、配信自体の分散処理にとどまらず、撮影したデータの符号化処理を各端末で行ってもよいし、サーバ側で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。一例として、一般に符号化処理では、処理ループが2度行われる。1度目のループでフレーム又はシーン単位での画像の複雑さ、又は、符号量が検出される。また、2度目のループでは画質を維持して符号化効率を向上させる処理が行われる。例えば、端末が1度目の符号化処理を行い、コンテンツを受け取ったサーバ側が2度目の符号化処理を行うことで、各端末での処理負荷を減らしつつもコンテンツの質と効率を向上させることができる。この場合、ほぼリアルタイムで受信して復号する要求があれば、端末が行った一度目の符号化済みデータを他の端末で受信して再生することもできるので、より柔軟なリアルタイム配信も可能になる。
【0586】
他の例として、カメラex113等は、画像から特徴量(特徴又は特性の量)を抽出し、特徴量に関するデータをメタデータとして圧縮してサーバに送信する。サーバは、例えば特徴量からオブジェクトの重要性を判断して量子化精度を切り替えるなど、画像の意味(又は内容の重要性)に応じた圧縮を行う。特徴量データはサーバでの再度の圧縮時の動きベクトル予測の精度及び効率向上に特に有効である。また、端末でVLC(可変長符号化)などの簡易的な符号化を行い、サーバでCABAC(コンテキスト適応型二値算術符号化方式)など処理負荷の大きな符号化を行ってもよい。
【0587】
さらに他の例として、スタジアム、ショッピングモール、又は工場などにおいては、複数の端末によりほぼ同一のシーンが撮影された複数の映像データが存在する場合がある。この場合には、撮影を行った複数の端末と、必要に応じて撮影をしていない他の端末及びサーバを用いて、例えばGOP(Group of Picture)単位、ピクチャ単位、又はピクチャを分割したタイル単位などで符号化処理をそれぞれ割り当てて分散処理を行う。これにより、遅延を減らし、よりリアルタイム性を実現できる。
【0588】
複数の映像データはほぼ同一シーンであるため、各端末で撮影された映像データを互いに参照し合えるように、サーバで管理及び/又は指示をしてもよい。また、各端末からの符号化済みデータを、サーバが受信し複数のデータ間で参照関係を変更、又はピクチャ自体を補正或いは差し替えて符号化しなおしてもよい。これにより、一つ一つのデータの質と効率を高めたストリームを生成できる。
【0589】
さらに、サーバは、映像データの符号化方式を変更するトランスコードを行ったうえで映像データを配信してもよい。例えば、サーバは、MPEG系の符号化方式をVP系(例えばVP9)に変換してもよいし、H.264をH.265に変換等してもよい。
【0590】
このように、符号化処理は、端末、又は1以上のサーバにより行うことが可能である。よって、以下では、処理を行う主体として「サーバ」又は「端末」等の記載を用いるが、サーバで行われる処理の一部又は全てが端末で行われてもよいし、端末で行われる処理の一部又は全てがサーバで行われてもよい。また、これらに関しては、復号処理についても同様である。
【0591】
[3D、マルチアングル]
互いにほぼ同期した複数のカメラex113及び/又はスマートフォンex115などの端末により撮影された異なるシーン、又は、同一シーンを異なるアングルから撮影した画像或いは映像を統合して利用することが増えてきている。各端末で撮影した映像は、別途取得した端末間の相対的な位置関係、又は、映像に含まれる特徴点が一致する領域などに基づいて統合され得る。
【0592】
サーバは、2次元の動画像を符号化するだけでなく、動画像のシーン解析などに基づいて自動的に、又は、ユーザが指定した時刻において、静止画を符号化し、受信端末に送信してもよい。サーバは、さらに、撮影端末間の相対的な位置関係を取得できる場合には、2次元の動画像だけでなく、同一シーンが異なるアングルから撮影された映像に基づき、当該シーンの3次元形状を生成できる。サーバは、ポイントクラウドなどにより生成した3次元のデータを別途符号化してもよいし、3次元データを用いて人物又はオブジェクトを認識或いは追跡した結果に基づいて、受信端末に送信する映像を、複数の端末で撮影した映像から、選択、又は、再構成して生成してもよい。
【0593】
このようにして、ユーザは、各撮影端末に対応する各映像を任意に選択してシーンを楽しむこともできるし、複数画像又は映像を用いて再構成された3次元データから選択視点の映像を切り出したコンテンツを楽しむこともできる。さらに、映像と共に、音も複数の相異なるアングルから収音され、サーバは、特定のアングル又は空間からの音を対応する映像と多重化して、多重化された映像と音とを送信してもよい。
【0594】
また、近年ではVirtual Reality(VR)及びAugmented Reality(AR)など、現実世界と仮想世界とを対応付けたコンテンツも普及してきている。VRの画像の場合、サーバは、右目用及び左目用の視点画像をそれぞれ作成し、Multi-View Coding(MVC)などにより各視点映像間で参照を許容する符号化を行ってもよいし、互いに参照せずに別ストリームとして符号化してもよい。別ストリームの復号時には、ユーザの視点に応じて仮想的な3次元空間が再現されるように互いに同期させて再生するとよい。
【0595】
ARの画像の場合には、サーバは、現実空間のカメラ情報に、仮想空間上の仮想物体情報を、3次元的位置又はユーザの視点の動きに基づいて重畳してもよい。復号装置は、仮想物体情報及び3次元データを取得又は保持し、ユーザの視点の動きに応じて2次元画像を生成し、スムーズにつなげることで重畳データを作成してもよい。または、復号装置は仮想物体情報の依頼に加えてユーザの視点の動きをサーバに送信してもよい。サーバは、サーバに保持される3次元データから受信した視点の動きに合わせて重畳データを作成し、重畳データを符号化して復号装置に配信してもよい。なお、重畳データは、典型的には、RGB以外に透過度を示すα値を有し、サーバは、3次元データから作成されたオブジェクト以外の部分のα値が0などに設定し、当該部分が透過する状態で、符号化してもよい。もしくは、サーバは、クロマキーのように所定の値のRGB値を背景に設定し、オブジェクト以外の部分は背景色にしたデータを生成してもよい。所定の値のRGB値は、予め定められていてもよい。
【0596】
同様に配信されたデータの復号処理はクライアント(例えば、端末)で行っても、サーバ側で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。一例として、ある端末が、一旦サーバに受信リクエストを送り、そのリクエストに応じたコンテンツを他の端末で受信し復号処理を行い、ディスプレイを有する装置に復号済みの信号が送信されてもよい。通信可能な端末自体の性能によらず処理を分散して適切なコンテンツを選択することで画質のよいデータを再生することができる。また、他の例として大きなサイズの画像データをTV等で受信しつつ、鑑賞者の個人端末にピクチャが分割されたタイルなど一部の領域が復号されて表示されてもよい。これにより、全体像を共有化しつつ、自身の担当分野又はより詳細に確認したい領域を手元で確認することができる。
【0597】
屋内外の近距離、中距離、又は長距離の無線通信が複数使用可能な状況下で、MPEG-DASHなどの配信システム規格を利用して、シームレスにコンテンツを受信することが可能かもしれない。ユーザは、ユーザの端末、屋内外に配置されたディスプレイなどの復号装置又は表示装置を自由に選択しながらリアルタイムで切り替えてもよい。また、自身の位置情報などを用いて、復号する端末及び表示する端末を切り替えながら復号を行うことができる。これにより、ユーザが目的地へ移動している間に、表示可能なデバイスが埋め込まれた隣の建物の壁面又は地面の一部に情報をマップ及び表示することが可能になる。また、符号化データが受信端末から短時間でアクセスできるサーバにキャッシュされている、又は、コンテンツ・デリバリー・サービスにおけるエッジサーバにコピーされている、などの、ネットワーク上での符号化データへのアクセス容易性に基づいて、受信データのビットレートを切り替えることも可能である。
【0598】
[スケーラブル符号化]
コンテンツの切り替えに関して、
図77に示す、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法を応用して圧縮符号化されたスケーラブルなストリームを用いて説明する。サーバは、個別のストリームとして内容は同じで質の異なるストリームを複数有していても構わないが、図示するようにレイヤに分けて符号化を行うことで実現される時間的/空間的スケーラブルなストリームの特徴を活かして、コンテンツを切り替える構成であってもよい。つまり、復号側が性能という内的要因と通信帯域の状態などの外的要因とに応じてどのレイヤを復号するかを決定することで、復号側は、低解像度のコンテンツと高解像度のコンテンツとを自由に切り替えて復号できる。例えばユーザが移動中にスマートフォンex115で視聴していた映像の続きを、例えば帰宅後にインターネットTV等の機器で視聴したい場合には、当該機器は、同じストリームを異なるレイヤまで復号すればよいので、サーバ側の負担を軽減できる。
【0599】
さらに、上記のように、レイヤ毎にピクチャが符号化されており、ベースレイヤの上位のエンハンスメントレイヤでスケーラビリティを実現する構成以外に、エンハンスメントレイヤが画像の統計情報などに基づくメタ情報を含んでいてもよい。復号側が、メタ情報に基づきベースレイヤのピクチャを超解像することで高画質化したコンテンツを生成してもよい。超解像は、解像度を維持及び/又は拡大しつつ、SN比を向上してもよい。メタ情報は、超解像処理に用いるような線形或いは非線形のフィルタ係数を特定するため情報、又は、超解像処理に用いるフィルタ処理、機械学習或いは最小2乗演算におけるパラメータ値を特定する情報などを含む。
【0600】
または、画像内のオブジェクトなどの意味合いに応じてピクチャがタイル等に分割される構成が提供されてもよい。復号側が、復号するタイルを選択することで一部の領域だけを復号する。さらに、オブジェクトの属性(人物、車、ボールなど)と映像内の位置(同一画像における座標位置など)とをメタ情報として格納することで、復号側は、メタ情報に基づいて所望のオブジェクトの位置を特定し、そのオブジェクトを含むタイルを決定できる。例えば、
図78に示すように、メタ情報は、HEVCにおけるSEI(supplemental enhancement information)メッセージなど、画素データとは異なるデータ格納構造を用いて格納されてもよい。このメタ情報は、例えば、メインオブジェクトの位置、サイズ、又は色彩などを示す。
【0601】
ストリーム、シーケンス又はランダムアクセス単位など、複数のピクチャから構成される単位でメタ情報が格納されてもよい。復号側は、特定人物が映像内に出現する時刻などを取得でき、ピクチャ単位の情報と時間情報を合わせることで、オブジェクトが存在するピクチャを特定でき、ピクチャ内でのオブジェクトの位置を決定できる。
【0602】
[Webページの最適化]
図79は、コンピュータex111等におけるwebページの表示画面例を示す図である。
図80は、スマートフォンex115等におけるwebページの表示画面例を示す図である。
図79および
図80に示すようにwebページが、画像コンテンツへのリンクであるリンク画像を複数含む場合があり、閲覧するデバイスによってその見え方は異なっていてもよい。画面上に複数のリンク画像が見える場合には、ユーザが明示的にリンク画像を選択するまで、又は画面の中央付近にリンク画像が近付く或いはリンク画像の全体が画面内に入るまで、表示装置(復号装置)は、リンク画像として各コンテンツが有する静止画又はIピクチャを表示してもよいし、複数の静止画又はIピクチャ等でgifアニメのような映像を表示してもよいし、ベースレイヤのみを受信し、映像を復号及び表示してもよい。
【0603】
ユーザによりリンク画像が選択された場合、表示装置は、例えばベースレイヤを最優先にしつつ復号を行う。なお、webページを構成するHTMLにスケーラブルなコンテンツであることを示す情報があれば、表示装置は、エンハンスメントレイヤまで復号してもよい。さらに、リアルタイム性を担保するために、選択される前又は通信帯域が非常に厳しい場合には、表示装置は、前方参照のピクチャ(Iピクチャ、Pピクチャ、前方参照のみのBピクチャ)のみを復号及び表示することで、先頭ピクチャの復号時刻と表示時刻との間の遅延(コンテンツの復号開始から表示開始までの遅延)を低減できる。またさらに、表示装置は、ピクチャの参照関係を敢えて無視して、全てのBピクチャ及びPピクチャを前方参照にして粗く復号し、時間が経ち受信したピクチャが増えるにつれて正常の復号を行ってもよい。
【0604】
[自動走行]
また、車の自動走行又は走行支援のため2次元又は3次元の地図情報などのような静止画又は映像データを送受信する場合、受信端末は、1以上のレイヤに属する画像データに加えて、メタ情報として天候又は工事の情報なども受信し、これらを対応付けて復号してもよい。なお、メタ情報は、レイヤに属してもよいし、単に画像データと多重化されてもよい。
【0605】
この場合、受信端末を含む車、ドローン又は飛行機などが移動するため、受信端末は、当該受信端末の位置情報を送信することで、基地局ex106~ex110を切り替えながらシームレスな受信及び復号の実行を実現できる。また、受信端末は、ユーザの選択、ユーザの状況及び/又は通信帯域の状態に応じて、メタ情報をどの程度受信するか、又は地図情報をどの程度更新していくかを動的に切り替えることが可能になる。
【0606】
コンテンツ供給システムex100では、ユーザが送信した符号化された情報をリアルタイムでクライアントが受信して復号し、再生することができる。
【0607】
[個人コンテンツの配信]
また、コンテンツ供給システムex100では、映像配信業者による高画質で長時間のコンテンツのみならず、個人による低画質で短時間のコンテンツのユニキャスト、又はマルチキャスト配信が可能である。このような個人のコンテンツは今後も増加していくと考えられる。個人コンテンツをより優れたコンテンツにするために、サーバは、編集処理を行ってから符号化処理を行ってもよい。これは、例えば、以下のような構成を用いて実現できる。
【0608】
撮影時にリアルタイム又は蓄積して撮影後に、サーバは、原画データ又は符号化済みデータから撮影エラー、シーン探索、意味の解析、及びオブジェクト検出などの認識処理を行う。そして、サーバは、認識結果に基づいて手動又は自動で、ピントずれ又は手ブレなどを補正したり、明度が他のピクチャに比べて低い又は焦点が合っていないシーンなどの重要性の低いシーンを削除したり、オブジェクトのエッジを強調したり、色合いを変化させるなどの編集を行う。サーバは、編集結果に基づいて編集後のデータを符号化する。また撮影時刻が長すぎると視聴率が下がることも知られており、サーバは、撮影時間に応じて特定の時間範囲内のコンテンツになるように上記のように重要性が低いシーンのみならず動きが少ないシーンなどを、画像処理結果に基づき自動でクリップしてもよい。または、サーバは、シーンの意味解析の結果に基づいてダイジェストを生成して符号化してもよい。
【0609】
個人コンテンツには、そのままでは著作権、著作者人格権、又は肖像権等の侵害となるものが写り込んでいるケースもあり、共有する範囲が意図した範囲を超えてしまうなど個人にとって不都合な場合もある。よって、例えば、サーバは、画面の周辺部の人の顔、又は家の中などを敢えて焦点が合わない画像に変更して符号化してもよい。さらに、サーバは、符号化対象画像内に、予め登録した人物とは異なる人物の顔が映っているかどうかを認識し、映っている場合には、顔の部分にモザイクをかけるなどの処理を行ってもよい。または、符号化の前処理又は後処理として、著作権などの観点からユーザが画像を加工したい人物又は背景領域を指定してもよい。サーバは、指定された領域を別の映像に置き換える、又は焦点をぼかすなどの処理を行ってもよい。人物であれば、動画像において人物をトラッキングして、人物の顔の部分の映像を置き換えることができる。
【0610】
データ量の小さい個人コンテンツの視聴はリアルタイム性の要求が強いため、帯域幅にもよるが、復号装置は、まずベースレイヤを最優先で受信して復号及び再生を行ってもよい。復号装置は、この間にエンハンスメントレイヤを受信し、再生がループされる場合など2回以上再生される場合に、エンハンスメントレイヤも含めて高画質の映像を再生してもよい。このようにスケーラブルな符号化が行われているストリームであれば、未選択時又は見始めた段階では粗い動画だが、徐々にストリームがスマートになり画像がよくなるような体験を提供することができる。スケーラブル符号化以外にも、1回目に再生される粗いストリームと、1回目の動画を参照して符号化される2回目のストリームとが1つのストリームとして構成されていても同様の体験を提供できる。
【0611】
[その他の実施応用例]
また、これらの符号化又は復号処理は、一般的に各端末が有するLSIex500において処理される。LSI(large scale integration circuitry)ex500(
図76参照)は、ワンチップであっても複数チップからなる構成であってもよい。なお、動画像符号化又は復号用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な何らかの記録メディア(CD-ROM、フレキシブルディスク、又はハードディスクなど)に組み込み、そのソフトウェアを用いて符号化又は復号処理を行ってもよい。さらに、スマートフォンex115がカメラ付きである場合には、そのカメラで取得した動画データを送信してもよい。このときの動画データはスマートフォンex115が有するLSIex500で符号化処理されたデータであってもよい。
【0612】
なお、LSIex500は、アプリケーションソフトをダウンロードしてアクティベートする構成であってもよい。この場合、端末は、まず、当該端末がコンテンツの符号化方式に対応しているか、又は、特定サービスの実行能力を有するかを判定する。端末がコンテンツの符号化方式に対応していない場合、又は、特定サービスの実行能力を有さない場合、端末は、コーデック又はアプリケーションソフトをダウンロードし、その後、コンテンツ取得及び再生してもよい。
【0613】
また、インターネットex101を介したコンテンツ供給システムex100に限らず、デジタル放送用システムにも上記各実施の形態の少なくとも動画像符号化装置(画像符号化装置)又は動画像復号装置(画像復号装置)のいずれかを組み込むことができる。衛星などを利用して放送用の電波に映像と音が多重化された多重化データを載せて送受信するため、コンテンツ供給システムex100のユニキャストがし易い構成に対してマルチキャスト向きであるという違いがあるが符号化処理及び復号処理に関しては同様の応用が可能である。
【0614】
[ハードウェア構成]
図81は、
図76に示されたスマートフォンex115のさらに詳細を示す図である。また、
図82は、スマートフォンex115の構成例を示す図である。スマートフォンex115は、基地局ex110との間で電波を送受信するためのアンテナex450と、映像及び静止画を撮ることが可能なカメラ部ex465と、カメラ部ex465で撮像した映像、及びアンテナex450で受信した映像等が復号されたデータを表示する表示部ex458とを備える。スマートフォンex115は、さらに、タッチパネル等である操作部ex466と、音声又は音響を出力するためのスピーカ等である音声出力部ex457と、音声を入力するためのマイク等である音声入力部ex456と、撮影した映像或いは静止画、録音した音声、受信した映像或いは静止画、メール等の符号化されたデータ、又は、復号化されたデータを保存可能なメモリ部ex467と、ユーザを特定し、ネットワークをはじめ各種データへのアクセスの認証をするためのSIMex468とのインタフェース部であるスロット部ex464とを備える。なお、メモリ部ex467の代わりに外付けメモリが用いられてもよい。
【0615】
表示部ex458及び操作部ex466等を統括的に制御し得る主制御部ex460と、電源回路部ex461、操作入力制御部ex462、映像信号処理部ex455、カメラインタフェース部ex463、ディスプレイ制御部ex459、変調/復調部ex452、多重/分離部ex453、音声信号処理部ex454、スロット部ex464、及びメモリ部ex467とが同期バスex470を介して接続されている。
【0616】
電源回路部ex461は、ユーザの操作により電源キーがオン状態にされると、スマートフォンex115を動作可能な状態に起動し、バッテリパックから各部に対して電力を供給する。
【0617】
スマートフォンex115は、CPU、ROM及びRAM等を有する主制御部ex460の制御に基づいて、通話及データ通信等の処理を行う。通話時は、音声入力部ex456で収音した音声信号を音声信号処理部ex454でデジタル音声信号に変換し、変調/復調部ex452でスペクトラム拡散処理を施し、送信/受信部ex451でデジタルアナログ変換処理及び周波数変換処理を施し、その結果の信号を、アンテナex450を介して送信する。また受信データを増幅して周波数変換処理及びアナログデジタル変換処理を施し、変調/復調部ex452でスペクトラム逆拡散処理し、音声信号処理部ex454でアナログ音声信号に変換した後、これを音声出力部ex457から出力する。データ通信モード時は、本体部の操作部ex466等の操作に基づいてテキスト、静止画、又は映像データが操作入力制御部ex462を介して主制御部ex460の制御下で送出され得る。同様の送受信処理が行われる。データ通信モード時に映像、静止画、又は映像と音声を送信する場合、映像信号処理部ex455は、メモリ部ex467に保存されている映像信号又はカメラ部ex465から入力された映像信号を上記各実施の形態で示した動画像符号化方法によって圧縮符号化し、符号化された映像データを多重/分離部ex453に送出する。音声信号処理部ex454は、映像又は静止画をカメラ部ex465で撮像中に音声入力部ex456で収音した音声信号を符号化し、符号化された音声データを多重/分離部ex453に送出する。多重/分離部ex453は、符号化済み映像データと符号化済み音声データを所定の方式で多重化し、変調/復調部(変調/復調回路部)ex452、及び送信/受信部ex451で変調処理及び変換処理を施してアンテナex450を介して送信する。所定の方式は、予め定められていてもよい。
【0618】
電子メール又はチャットに添付された映像、又はウェブページにリンクされた映像を受信した場合等において、アンテナex450を介して受信された多重化データを復号するために、多重/分離部ex453は、多重化データを分離することにより、多重化データを映像データのビットストリームと音声データのビットストリームとに分け、同期バスex470を介して符号化された映像データを映像信号処理部ex455に供給するとともに、符号化された音声データを音声信号処理部ex454に供給する。映像信号処理部ex455は、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法に対応した動画像復号化方法によって映像信号を復号し、ディスプレイ制御部ex459を介して表示部ex458から、リンクされた動画像ファイルに含まれる映像又は静止画が表示される。音声信号処理部ex454は、音声信号を復号し、音声出力部ex457から音声が出力される。リアルタイムストリーミングがますます普及しだしているため、ユーザの状況によっては音声の再生が社会的にふさわしくないこともあり得る。そのため、初期値としては、音声信号は再生せず映像データのみを再生する構成の方が望ましく、ユーザが映像データをクリックするなど操作を行った場合にのみ音声を同期して再生してもよい。
【0619】
またここではスマートフォンex115を例に説明したが、端末としては符号化器及び復号化器を両方持つ送受信型端末の他に、符号化器のみを有する送信端末、及び、復号化器のみを有する受信端末という他の実装形式が考えられる。デジタル放送用システムにおいて、映像データに音声データが多重化された多重化データを受信又は送信するとして説明した。ただし、多重化データには、音声データ以外に映像に関連する文字データなどが多重化されてもよい。また、多重化データではなく映像データ自体が受信又は送信されてもよい。
【0620】
なお、CPUを含む主制御部ex460が符号化又は復号処理を制御するとして説明したが、種々の端末はGPUを備えることも多い。よって、CPUとGPUで共通化されたメモリ、又は共通に使用できるようにアドレスが管理されているメモリにより、GPUの性能を活かして広い領域を一括して処理する構成でもよい。これにより符号化時間を短縮でき、リアルタイム性を確保し、低遅延を実現できる。特に動き探索、デブロックフィルタ、SAO(Sample Adaptive Offset)、及び変換・量子化の処理を、CPUではなく、GPUでピクチャなどの単位で一括して行うと効率的である。
【産業上の利用可能性】
【0621】
本開示は、例えば、テレビジョン受像機、デジタルビデオレコーダー、カーナビゲーション、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、テレビ会議システム、又は、電子ミラー等に利用可能である。
【符号の説明】
【0622】
100 符号化装置
102 分割部
104 減算部
106 変換部
108 量子化部
110 エントロピー符号化部
112、204 逆量子化部
114、206 逆変換部
116、208 加算部
118、210 ブロックメモリ
120、212 ループフィルタ部
122、214 フレームメモリ
124、216 イントラ予測部
126、218 インター予測部
128、220 予測制御部
200 復号装置
202 エントロピー復号部
1201 境界判定部
1202、1204、1206 スイッチ
1203 フィルタ判定部
1205 フィルタ処理部
1207 フィルタ特性決定部
1208 処理判定部
a1、b1 プロセッサ
a2、b2 メモリ