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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】端末及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/28 20090101AFI20241213BHJP
   H04W 16/32 20090101ALI20241213BHJP
   H04W 36/08 20090101ALI20241213BHJP
   H04W 72/0457 20230101ALI20241213BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20241213BHJP
【FI】
H04W36/28
H04W16/32
H04W36/08
H04W72/0457 110
H04W88/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023076841
(22)【出願日】2023-05-08
(65)【公開番号】P2024161801
(43)【公開日】2024-11-20
【審査請求日】2024-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】土屋 貴寛
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0076438(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0044993(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信方式及び第2通信方式の両方で同時通信可能な端末であって、
現在接続されている第2通信方式のセルの無線品質の劣化を検知する検知部と、
前記無線品質の劣化が検知された場合に、ハンドオーバの候補先となる前記第2通信方式のターゲットセルを決定する決定部と、
現在接続されている第1通信方式のセルのバンドと、前記第2通信方式のターゲットセルのバンドの組み合わせが、許容可能なバンドの組み合わせであるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づき、前記第1通信方式のセル、前記第2通信方式のセルのハンドオーバを制御するハンドオーバ制御部と、
を具備する端末。
【請求項2】
当該端末で実行中のアプリケーションを監視する監視部をさらに備え、
前記監視部は、実行中の前記アプリケーションが前記第2通信方式の通信を必須とするか否かを判定し、
前記検知部は、実行中の前記アプリケーションが前記第2通信方式の通信を必須とすると判定された場合に、前記第2通信方式のセルの無線品質の劣化を検知する、請求項1に記載の端末。
【請求項3】
前記第1通信方式のセル及び前記第2通信方式のセルの無線品質を測定する測定部をさらに備え、
前記検知部は、前記測定部の測定結果に基づき、現在接続されている第2通信方式のセルの無線品質の劣化を検知する、請求項1に記載の端末。
【請求項4】
前記ハンドオーバ制御部は、
許容可能なバンドの組み合わせであると判定された場合に、現在接続されている前記第2通信方式のセルから、前記第2通信方式のターゲットセルへハンドオーバを行う、請求項1に記載の端末。
【請求項5】
前記ハンドオーバ制御部は、
許容可能なバンドの組み合わせでないと判定された場合に、前記第2通信方式のターゲットセルのバンドと組み合わせ可能な前記第1通信方式のセルのバンドを特定し、特定したバンドの前記第1通信方式のセルを、前記第1通信方式のターゲットセルとして決定し、
前記第1通信方式のターゲットセルにハンドオーバさせるためのハンドオーバ支援設定を行う、請求項1から4のいずれか一項に記載の端末。
【請求項6】
前記ハンドオーバ制御部は、
前記第1通信方式のターゲットセルを決定する際、前記特定したバンドが複数ある場合には、複数のバンドの中から無線品質のよいバンドの前記第1通信方式のセルを、前記第1通信方式のターゲットセルとして決定する、請求項5に記載の端末。
【請求項7】
前記ハンドオーバ制御部は、
前記ハンドオーバ支援設定を行った場合に、現在接続されている前記第1通信方式のセル及び前記第2通信方式のセルとの接続を切断した後、前記ハンドオーバ支援設定に基づき、前記第1通信方式のターゲットセルへハンドオーバを行った後、前記第2通信方式のターゲットセルへハンドオーバを行う、請求項5に記載の端末。
【請求項8】
前記ハンドオーバ制御部は、
前記第2通信方式のターゲットセルへハンドオーバを行った後、前記ハンドオーバ支援設定を解除する、請求項7に記載の端末。
【請求項9】
第1通信方式及び第2通信方式の両方で同時通信可能な端末に、
現在接続されている第2通信方式のセルの無線品質の劣化を検知する検知ステップと、
前記無線品質の劣化が検知された場合に、ハンドオーバの候補先となる前記第2通信方式のターゲットセルを決定する決定ステップと、
現在接続されている第1通信方式のセルのバンドと、前記第2通信方式のターゲットセルのバンドの組み合わせが、許容可能なバンドの組み合わせであるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果に基づき、前記第1通信方式のセル、前記第2通信方式のセルのハンドオーバを制御するハンドオーバ制御ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project(登録商標))において、第5世代(5G)のセルラーシステムに向けた新しい無線アクセス技術であるNR(New Radio)の検討が行われている。NRは、第4世代(4G)のセルラーシステムであるLTE及びLTE-Advancedよりも、多種多様なサービスを実現可能とするための技術が検討されている。
【0003】
例えば、5Gのセルラーシステムにおいては、4GのLTEのコアネットワークや基地局(セル)を残しつつ、一部の基地局から5Gの基地局(セル)を導入していくNSA(Non-Stand Alone)方式のネットワークシステム(以下、NSA構成)のシナリオが検討されている。NSA構成では、NR、LTEのそれぞれのセルにおいてハンドオーバが発生するが、5Gでは車両の隊列走行や遠隔操作をはじめとする通信のリアルタイム性(すなわち低遅延性)が求められるユースケースが多数存在する(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】山崎 義樹,“5Gの概要とそのユースケースについて”[online],2020年2月21日,一般社団法人電波産業会,[2023年4月12日検索],インターネット<chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.kiai.gr.jp/jigyou/h31/PDF/0221p2.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NSA構成において低遅延性を実現するためには、端末がNRのセルと接続されていない時間(別言すると、端末がLTEのセルのみと接続され、NRのセルとの接続が切断されている時間)をできる限り短くすることが求められるが、かかる要求を十分に満足するような技術は未だ存在しない。
【0006】
本開示は上記の点に鑑みてなされたものであり、NSA構成においてハンドオーバを行う際に、低遅延性等を担保することが可能なハンドオーバの支援技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る端末は、第1通信方式及び第2通信方式の両方で同時通信可能な端末であって、現在接続されている第2通信方式のセルの無線品質の劣化を検知する検知部と、無線品質の劣化が検知された場合に、ハンドオーバの候補先となる第2通信方式のターゲットセルを決定する決定部と、現在接続されている第1通信方式のセルのバンドと、前記第2通信方式のターゲットセルのバンドの組み合わせが、許容可能なバンドの組み合わせであるか否かを判定する判定部と、判定部の判定結果に基づき、第1通信方式のセル、第2通信方式のセルのハンドオーバを制御するハンドオーバ制御部と、を具備することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、NSA構成においてハンドオーバを行う際に、低遅延性等を担保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】現状のNSA構成におけるハンドオーバの仕様の概要を説明するための図である。
図2】メジャメントレポート(イベント型)に関する標準規格を例示する図である。
図3】NRセル間でハンドオーバすることができない場合を説明するための図である。
図4】無線通信システムの構成の一例を示す図である。
図5】端末及び基地局のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6】端末の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図7A】LTE-NRバンド組合せがOKである場合の説明図である。
図7B】LTE-NRバンド組合せがNGである場合の説明図である。
図8】ハンドオーバ支援処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0011】
A.本実施形態
(現状のNSA構成におけるハンドオーバの仕様の概要)
最初に、現状のNSA構成におけるハンドオーバの仕様について、図1を用いて説明する。
【0012】
無線通信端末は、通信先である基地局と当該基地局に隣接する隣接基地局a及びbから電波を受信し、電波強度(RSRP:Reference Signal Received Power)や信号対干渉雑音比(SINR:Signal to Interference plus Noise Ratio)などの無線品質を測定する(ステップS1)。そして、無線通信端末は、測定結果をメジャメントレポートメッセージ(Measurement Report message)により通信先である基地局に送信する(ステップS2)。
【0013】
メジャメントレポートメッセージを受信した基地局は、メジャメントレポートメッセージに含まれる電波強度や信号対干渉雑音比、無線リソースなどの無線品質に関する情報に基づき、どの隣接基地局にハンドオーバさせるか(すなわち、ハンドオーバ候補の基地局)を決定する(ステップS3)。ハンドオーバ候補の基地局(図1では、隣接基地局a)が決定されると、無線通信端末は、ハンドオーバ候補の隣接基地局aとの間でハンドオーバの手続きを開始する(ステップS4)。
【0014】
このように、基地局がハンドオーバ先を決定するためには、無線通信端末からメジャメントレポートメッセージを受信することが必要となる。無線通信端末がメジャメントレポートメッセージを送信するタイミングは、無線通信端末に設定される送信トリガに基づいて決まる。メジャメントレポートメッセージの送信タイミングを定める送信トリガは、無線通信端末が一定の間隔で送信する「周期型(periodic type)トリガ」と、特定の電波条件が満たされた場合にのみ送信する「イベント型(event type)トリガ」の2種類が存在する。イベント型トリガは、3GPP TS 38.331(図2参照)に規定されており、現状ではイベントA1~A6、B1、B2等が規定されている。
【0015】
一例として、イベントA1とA2には、サービングセル(無線通信端末がキャンプしているセル)の無線品質に関する条件等が規定され、イベントA3~A6には、隣接セル(サービングセルに隣接しているセル)の無線品質に関する条件等が規定され、イベントB1とB2には、Inter RAT(Radio Access Technology)の無線品質に関する条件等が規定されている。
【0016】
無線通信端末は、図2に示す送信トリガの条件(以下、イベント条件)に従い、メジャメントレポートメッセージを基地局に送信する。
【0017】
すでに説明したように、NR及びLTEの両方の無線リンクを同時に利用可能なNSA構成では、NRとLTEのそれぞれにおいてセルのハンドオーバが発生する。例えば、無線通信端末は、NRの無線品質の悪化を検出すると、図2に示すイベント条件に従ってNRのハンドオーバを実施しようとするが、ハンドオーバには、以下に示すような制約が存在するために、常にハンドオーバできるわけではない。例えば、通信分野の標準規格(例えば、ARIB STD-T120-38/101-3)では、NSA構成(EN-DC:E-UTRA NR Dual Connectivity)のLTEとNRのバンド(周波数)の組合せ等が規定されており、周波数や通信方式(FDD(Frequency Division Duplex)/TDD(Time Division Duplex))の違いにより、LTEとNRのバンドの組合せが認められるもの(組合せOK)、組合せが認められないもの(組合せNG)が存在する。
【0018】
例えば、LTEバンドB8(900MHz帯)とNRバンドn28(700MHz帯)は、組合せNGであり、LTEバンドB42とNRバンドn3(またはn28など)の組合せは、前者がTDD、後者がFDDであるため、これらも組合せNGである。なお、LTEとNRの組合せがOKであるか、NGであるかを判定するための判定条件(組合せ判定条件)は、標準規格や無線通信端末の仕様などに基づいて設定可能である。
【0019】
このように、NSA構成では、LTEとNRのバンドの組合せに関して、上記制約が存在するため、NRの無線品質が悪化しても、NRのセル間でハンドオーバすることができず、NRセルとの通信が切断される(すなわち、NRセルとの接続が外れる)といった事態が生じる。このような場合は、NRの無線品質が改善するまで待つなどして対応する必要があり、遅延時間が長くなるという問題があった。
【0020】
図3は、NSA構成のNRセル間でハンドオーバすることができない場合の説明図である。図3では、LTEとNRのバンドの組合せに関して、LTEバンド「a」とNRバンド「β」の組合せと、LTEバンド「b」とNRバンド「α」の組合せが、「組合せOK」である場合を想定する。また、図3の中段に示す点線は、それぞれNSA構成においてNRセル間でハンドオーバを必要とするか否かを判断するための無線品質の閾値(品質閾値)Qth1を示す。
【0021】
図3に示す例では、NRバンドの無線品質が、品質閾値Qth1を下回ると、NRセルとの接続が外れる(図3に示す「NR外れ区間A」参照)。この場合、無線通信端末は、NR外れ区間AのNRバンド「α」から、無線品質の良いNRバンド「β」にハンドオーバしようとするが、NRバンド「β」と組合せOKなLTEバンドは、現在接続中のLTEバンド「b」ではなく、LTEバンド「a」である。このため、現状では、NRのセル間でハンドオーバを実施することができず、NRの無線品質が改善するまで待つなどして対応する必要があり、遅延時間が長くなっていた(図3に示す区間Aにおける「遅延時間」を参照)。
【0022】
(方策)
上記問題を解消するために、本実施形態においては、5GのNR構成において、NRの無線品質が悪化した場合であっても、LTEバンドとNRバンドの組合せを考慮し、NRの無線品質をもとにLTEのセル間で接続の切り替えを行い、次いで無線品質の良いNRのセルに接続を切り替える(すなわち、ハンドオーバする)ことで、NRセルとの接続が外れてしまう時間を短くし、低遅延性の実現を可能とする。なお、本願発明では、標準規格に沿った基地局間でのハンドオーバ処理のみならず、接続する基地局を切り替える処理も含めて「ハンドオーバ」と総称する。
【0023】
<システム構成>
本実施形態に係る無線通信システムについて説明する。本実施形態に係る無線通信システムは、LTEシステムの基地局(eNB:evolved NodeB)とNRシステムの基地局(gNB:g NodeB)との間でデータを分割し、これらの基地局によってデータを同時送受信する、LTE-NRデュアルコネクティビティを導入したNSA構成のシステムを想定する。なお、本実施形態に係る無線通信システムは、TDD(Time Division Duplex)とFDD(Frequency Division Duplex)のどちらの方式を適用しても良く、各基地局が形成するセルごとに異なる方式が適用されてもよい。
【0024】
図4は、本実施形態に係る無線通信システム1の構成の一例を示す図である。
無線通信端末(UE:User Equipment)10は、LTEシステムの基地局20及びNRシステムの基地局20とそれぞれ同時に無線接続可能となっている。
無線通信端末10は、スマートフォン、携帯端末、ウェアラブル端末、タブレット端末、パーソナルコンピュータ(PC)、ノートPCのほか、様々なIoT端末(例えば、テレビ、カメラ、ゲーム機などの家電や医療機器、各種センサなど)や、車両やドローンといった移動体向けのコネクテッド端末(例えば、ナビゲーションシステムなど)など、5GのNSA構成に対応したあらゆる端末に適用可能である。
【0025】
無線通信端末10は、基地局20と接続される。無線通信端末10は、基地局20と複数のセルを用いて接続(キャリアアグリゲーション)されてもよい。無線通信端末10が複数の基地局20を介して接続(デュアルコネクティビティ)される場合、初期接続される基地局(ここではeNB)20をマスターノード(MN:Master Node)、追加で接続される基地局(ここではgNB)20をセカンダリノード(SN:Secondary Node)と呼ぶ。無線通信端末10が接続している複数のセルのうち、マスターノードにより提供される1以上のセルにはプライマリセル(PCell)が含まれる。一方、セカンダリノードにより提供される1以上のセルにはプライマリセカンダリセル(PSCell)が含まれる。なお、以下の説明では、LTEシステムの基地局20がPCellを提供し、NRシステムの基地局20がPSCellを提供する場合を想定するが、これに限る趣旨ではない。
【0026】
基地局20間は、基地局インタフェースにより接続されている。また、基地局20とコアネットワーク装置30とは、コアネットワークインターフェースにより接続されている。基地局インタフェースは、ハンドオーバや基地局20間の連携動作に必要な制御信号をやり取りするためなどに使用される。コアネットワーク装置30は、基地局20を配下に持ち、基地局20間の負荷制御や、無線通信端末10の呼び出し(ページング)、位置登録などの移動制御を主に取り扱う。
【0027】
無線通信端末10と基地局20は、無線リソース制御(RRC: Radio Resource Control)層において、RRCメッセージを送受信する。また、無線通信端末10と基地局20は、媒体アクセス制御(MAC:Medium Access Control)層において、MAC制御要素(MAC CE:MAC Control Element)を送受信する。RRCメッセージは、RRC PDU(Protocol Data Unit)として送信され、マッピングされる論理チャネルとして、共通制御チャネル(CCCH:Common Control Channel)、個別制御チャネル(DCCH:Dedicated Control Channel)、ページング制御チャネル(PCCH:Paging Control Channel)、ブロードキャスト制御チャネル(BCCH:Broadcast Control Channel)、あるいはマルチキャスト制御チャネル(MCCH:Multicast Control Channel)が用いられる。MAC CEは、MAC PDU(または、MAC subPDU)として送信される。MAC subPDUは、MAC層におけるサービスデータユニット(SDU:Service Data Unit)に8ビットのヘッダーを加えたものに等しく、MAC PDUは、一つ以上のMAC subPDUを含む。
【0028】
<ハードウェア構成>
図5は、無線通信端末10及び基地局20のハードウェア構成の一例を示す図である。無線通信端末10及び基地局20は、プロセッサ11、メモリ12、記憶装置13、有線又は無線通信を行う通信装置14、入力操作を受け付ける入力装置15、情報の出力を行う出力装置16及びアンテナ17を有する。
【0029】
プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、無線通信端末10及び基地局20を制御する。
【0030】
メモリ12は、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)及び/又はRAM(Random Access Memory)等から構成される。
【0031】
記憶装置13は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)及び/又はeMMC(embedded Multi Media Card)等のストレージから構成される。
【0032】
通信装置14は、有線及び/又は無線ネットワークを介して通信を行う装置であり、例えば、ネットワークカード、通信モジュールなどである。また、通信装置14には、アンプ、無線信号に関する処理を行うRF(Radio Frequency)装置と、ベースバンド信号処理を行うBB(Base Band)装置とを含んでいてもよい。
【0033】
RF装置は、例えば、BB装置から受信したデジタルベースバンド信号に対して、D/A変換、変調、周波数変換、電力増幅等を行うことで、アンテナ17から送信する無線信号を生成する。また、RF装置は、アンテナ17から受信した無線信号に対して、周波数変換、復調、A/D変換等を行うことでデジタルベースバンド信号を生成してBB装置に送信する。BB装置は、デジタルベースバンド信号をパケットデータ(例えばIPパケット)に変換する処理、及び、IPパケットをデジタルベースバンド信号に変換する処理を行う。
【0034】
入力装置15は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力装置16は、例えば、ディスプレイ及び/又はスピーカ等である。
【0035】
<機能ブロック構成>
(端末)
図6は、無線通信端末10の機能ブロック構成の一例を示す図である。無線通信端末10は、送信部110と、受信部120と、監視部130と、測定部140と、検知部150と、決定部160と、判定部170と、ハンドオーバ制御部180とを含む。なお、図6は、本実施形態において主要な機能ブロックを示すものである。送信部110及び受信部120は、例えば通信装置14により実現されてもよいし、通信装置14に加えてプロセッサ11が記憶装置13に記憶されたプログラムを実行することにより実現されてもよい。監視部130、測定部140、検知部150、決定部160、判定部170及びハンドオーバ制御部180は、プロセッサ11が、記憶装置13に記憶されたプログラムを実行することにより実現されてもよい。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0036】
送信部110は、基地局20に送信する上りリンクの信号を生成して送信する一方、受信部120は、基地局20から下りリンクの信号を受信する。
【0037】
監視部130は、当該無線通信端末10にて実行中の各アプリケーションの通信状況を監視する。具体的には、監視部130は、実行中の各アプリケーションの設定、仕様などを参照することで、NRセルとの通信(NR通信)を必須とするか否か(別言すれば、LTEセルとの通信(LTE通信)のみで足りるか否か)を判定する。各アプリケーションの設定、仕様などについて、「アプリケーションAはNR通信を必須とし、アプリケーションBはNR通信を必須としない」という通信種別設定が行われる場合を例に具体的に説明する。
まず、無線通信端末10を起動する前に、当該端末自身、または各アプリケーションの提供サーバにおいて上記通信種別設定が行われる。
無線通信端末10を起動した後、当該端末にてアプリケーションが実行されると、無線通信端末10の監視部130は、実行中のアプリケーションについて、上記通信種別設定に基づき、NR通信を必須とするか否かを判定する。監視部130は、例えば、実行中のアプリケーションがアプリケーションAであれば、NR通信が必須であると判定する一方、実行中のアプリケーションがアプリケーションBであれば、NR通信は必須でなく、LTE通信のみで足りると判定する。
なお、監視部130は、上記通信種別設定が行われていない場合には、基地局20などから得られるアップリンクのスループット情報に基づき、当該実行中のアプリケーションについてNR通信を利用するか、LTE通信のみで足りるかを判定してもよい。この場合には、当該端末10で実行中のアプリケーションによらず、NR通信を利用するか否かを判定することができる。
また、無線通信端末10において実行されるアプリケーションは様々であるが、例えば超高速・大容量のデータ通信が必要となるVR(Virtual Reality)/AR(Augmented Reality)を用いたゲーム・アプリケーションや、超低遅延が求められる自動運転、ロボットの遠隔操作に関わるアプリケーションなどは、NR通信を必須とするアプリケーションに該当すると考えられる。もちろん、NR通信を必須とするアプリケーションはこれらに限られない。
【0038】
測定部140は、NRセル(NRバンド)やLTEセル(LTEバンド)について、無線品質(RSRPやSINRなど)を測定し、測定結果を出力する。無線品質は、RSRPやSINRに限る趣旨ではなく、RSRQ(Reference Signal Received Quality)やRSSI(received signal strength indicator)などであってもよい。
【0039】
検知部150は、監視部130によって実行中のアプリケーションがNR通信を必須とすると判定された場合に、現在接続されているNRセル(ここでは、PSCell)の無線品質の劣化を検知する。詳述すると、検知部150は、記憶装置13に記憶されている品質閾値Qth1と、測定部140によって測定されるNRバンドの無線品質とを比較することで、NRバンドの無線品質が劣化したか否かを検知する。一例として、検知部150は、測定されるNRバンドの無線品質が品質閾値Qth1を下回っている場合に、NRバンドの無線品質が劣化したと判定する。なお、NRバンドの無線品質の劣化を検知する方法や、NRバンドの無線品質が劣化したか否かの判定基準などは、これに限る趣旨ではない。例えば、当該無線通信端末10の使用ルート・エリアの無線品質を事前測定・記憶し、これを利用することでNRバンドの無線品質の劣化を検知してもよい。
【0040】
決定部160は、ハンドオーバの候補先となるNRのターゲットセルを決定する。
詳述すると、決定部160は、検知部150によってNRセル(PSCell)の無線品質の劣化が検知された場合に、測定部140による測定結果等に基づき、無線品質の良いNRのセルを、NRのターゲットセルとして決定する。NRのターゲットセルの決定方法は、これに限る趣旨ではなく、例えば予めスループット重視等の優先バンドが設定されている場合には、当該設定を考慮してNRのターゲットセルを決定してもよい。一例として、上り(UL:Up Link)ではNRバンドn28/n23、下り(DL:Down Link)ではNRバンドn77等が、優先バンドとして設定されている場合、決定部160は、設定された優先バンドを考慮してNRのターゲットセルを決定してもよい。
【0041】
判定部170は、現在接続されているLTEセル(すなわち、PCell)が、NRのターゲットセルと組合せ可能であるか否かを判定する。詳述すると、判定部170は、記憶装置13に記憶されている組合せ判定条件に基づき、現在接続されているPCellのバンドと、NRのターゲットセルのバンドの組合せ(以下、「LTE-NRバンド組合せ」ともいう)がOKであるか否かを判定する。
【0042】
ハンドオーバ制御部180は、判定部170による判定結果に基づき、現在接続されているLTEセル(PCell)、及びNRセル(PSCell)のハンドオーバを制御する。
【0043】
図7Aは、LTE-NRバンド組合せがOKである場合の説明図、図7Bは、LTE-NRバンド組合せがNGである場合の説明図である。
【0044】
(LTE-NRバンド組合せがOKである場合)
図7Aに示すように、現在接続されているPCellのバンドと、NRのターゲットセルのバンドの組合せがOKであると判定されると、ハンドオーバ制御部180は、図2に示すイベント条件などが示された標準規格に準拠した情報(以下、規格関連情報)に従い、現在接続されているPSCellから、NRのターゲットセルへハンドオーバを実行する。
【0045】
(LTE-NRバンド組合せがNGである場合)
図7Bに示すように、現在接続されているPCellのバンドと、NRのターゲットセルのバンドの組合せがNGであると判定されると、ハンドオーバ制御部180は、以下に示す処理を実行する。
【0046】
まず、ハンドオーバ制御部180は、NRのターゲットセルのバンドと組合せ可能なLTEのバンドを特定する。そして、ハンドオーバ制御部180は、測定部140による測定結果等に基づき、特定したLTEバンドの中から、無線品質の良いLTEバンドのセルを、LTEのターゲットセルとして決定する。なお、優先バンドが設定等されている場合には、これらを考慮してLTEのターゲットセルを決定してもよい。
【0047】
次に、ハンドオーバ制御部180は、現在接続されているPCellから、決定したLTEのターゲットセルにハンドオーバさせるためのハンドオーバ支援設定を行う。
【0048】
一例として、ハンドオーバ制御部180は、当該無線通信端末10にコマンドを入力することで、使用するバンドを動的に設定・変更する、または、通過域の変更が可能な周波数可変フィルタを利用することで、使用するバンドを動的に設定・変更してもよい。
【0049】
ハンドオーバ制御部180は、このようにしてハンドオーバ支援設定を行うと、図2に示す規格関連情報に従い、現在接続中のPCell及びPSCellとの接続を切断し、PCellからLTEのターゲットセルにハンドオーバ(接続切り替え)を行う。さらに、ハンドオーバ制御部180は、図2に示す規格関連情報に従い、PSCellからNRのターゲットセルにハンドオーバ(接続切り替え)を行う。
【0050】
ハンドオーバ制御部180は、LTEのターゲットセルへの接続、及びNRのターゲットセルへの接続が完了すると、ハンドオーバ支援設定を解除する。次に、図8を参照して無線通信端末10によって実行されるハンドオーバ支援処理を説明する。
【0051】
(ハンドオーバ支援処理)
図8は、ハンドオーバ支援処理の一例を示すフローチャートである。前提として、無線通信端末10の記憶装置13には、品質閾値Qth1や組合せ判定条件、図2に示す規格関連情報などが格納されているものとする。
【0052】
無線通信端末10は、まず、当該無線通信端末10にて実行中の各アプリケーションの設定、仕様などを参照することで、NR通信を必須とするか否かを判定する(ステップS101)。
【0053】
無線通信端末10は、実行中のアプリケーションがNR通信を必須としない、すなわち、LTE通信のみで足りると判定すると(ステップS101;NO)、以下に示すステップを実行することなく処理を終了する。一方、無線通信端末10は、実行中のアプリケー-ションがNR通信を必須とすると判定すると(ステップS101;YES)、現在接続されているNRセル(ここでは、PSCell)の無線品質の測定を開始する(ステップS102)。そして、無線通信端末10は、PSCellの無線品質の測定結果等に基づき、PSCellの無線品質の劣化を検知する(ステップS103)具体的には、無線通信端末10は、記憶装置13に記憶されている品質閾値Qth1と、測定したNRバンドの無線品質とを比較することで、NRバンドの無線品質の劣化を検知する。NRバンドの無線品質の劣化が検知されていない場合(ステップS103;NO)、無線通信端末10はステップS102に戻る。一方、NRバンドの無線品質の劣化が検知されると(ステップS103;YES)、無線通信端末10は、NRバンドの測定結果等に基づき、無線品質の良いNRのセルを、NRのターゲットセルとして決定する(ステップS104)。なお、NRのターゲットセルの決定方法に関する詳細は、すでに説明したため割愛する。
【0054】
無線通信端末10は、現在接続されているLTEセル(ここでは、PCell)が、NRのターゲットセルと組合せ可能であるか否かを判定する(ステップS105)。具体的には、無線通信端末10は、記憶装置13に記憶されている組合せ判定条件に基づき、現在接続されているPCellのバンドと、NRのターゲットセルのバンドの組合せ(すなわち、LTE-NRバンド組合せ)がOKであるか否かを判定する。無線通信端末10は、LTE-NRバンド組合せがOKであると判定すると(ステップS105;YES)、図2に示す規格関連情報に従い、現在接続されているPSCellから、NRのターゲットセルへのハンドオーバを実行し(ステップS106)、処理を終了する。
【0055】
一方、無線通信端末10は、LTE-NRバンド組合せがNGであると判定すると(ステップS105;NO)、まず、現在接続されているPCellのバンドと組合せ可能なLTEのバンドを特定する(ステップS107)。そして、無線通信端末10は、LTEバンドの測定結果等に基づき、特定したLTEバンドの中から、無線品質の良いLTEバンドのセルを、LTEのターゲットセルとして決定する(ステップS108)。
【0056】
次いで、無線通信端末10は、現在接続されているPCellから、決定したLTEのターゲットセルにハンドオーバさせるためのハンドオーバ支援設定を行う(ステップS109)。なお、ハンドオーバ支援設定に関する詳細は、すでに説明したため割愛する。
【0057】
無線通信端末10は、ハンドオーバ支援設定を行うと、図2に示す規格関連情報に従い、現在接続中のPCell及びPSCellとの接続を切断し、PCellからLTEのターゲットセルにハンドオーバ(接続切り替え)を行う(ステップS110)。その後、無線通信端末10は、図2に示す規格関連情報に従い、PSCellからNRのターゲットセルにハンドオーバ(接続切り替え)を行う(ステップS111)。
【0058】
無線通信端末10は、LTEのターゲットセルへの接続、及びNRのターゲットセルへの接続が完了すると、ハンドオーバ支援設定を解除し(ステップS112)、処理を終了する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、5GのNR構成において、NRの無線品質が悪化した場合であっても、LTEバンドとNRバンドの組合せを考慮し、NRの無線品質をもとにLTEのセル間でハンドオーバを行い、次いで無線品質の良いNRのセルにハンドオーバする。これにより、NRセルとの接続が外れてしまう時間を抑制することができ、低遅延性の実現が可能となる。
また、本実施形態によれば、無線通信端末側でハンドオーバに必要なパラメータの設定などを行うため、基地局側で新たにパラメータを設定するといった煩雑な処理を必要としない。このため、既存の無線通信システム(NSA構成)に対して容易に導入することが可能となる。
【0060】
B.その他
以上説明した本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0061】
<まとめ>
以上説明した本開示によれば、NSA構成においてハンドオーバを行う際に、低遅延性等を担保することが可能となる。そのため、本開示に係る技術は、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【符号の説明】
【0062】
1…無線通信システム、10…無線通信端末、11…プロセッサ、12…メモリ、13…記憶装置、14…通信装置、15…入力装置、16…出力装置、17…アンテナ、20…基地局、110…送信部、120…受信部、130…監視部、140…測定部、150…検知部、160…決定部、170…判定部、180…ハンドオーバ制御部、Qth1…品質閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8