(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】工具のガイド機構
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20241213BHJP
B25B 21/00 20060101ALI20241213BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
B25F5/00 G
B25B21/00 540D
B25B21/00 540A
B25B21/00 B
E04G21/16
(21)【出願番号】P 2023132195
(22)【出願日】2023-08-15
(62)【分割の表示】P 2021211247の分割
【原出願日】2021-06-14
【審査請求日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2020172474
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021044373
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000161356
【氏名又は名称】宮地エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】西垣 登
(72)【発明者】
【氏名】上原 正
(72)【発明者】
【氏名】奥村 恭司
(72)【発明者】
【氏名】越中 信雄
(72)【発明者】
【氏名】吉元 大介
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-133316(JP,A)
【文献】特開2020-007791(JP,A)
【文献】特開2012-006106(JP,A)
【文献】特開昭62-246343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0345386(US,A1)
【文献】特開2022-056080(JP,A)
【文献】特開2018-016257(JP,A)
【文献】特開2004-291171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00-5/02
B25B21/00-21/02
B25H3/00
E04G21/14-21/22
F16B5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を用いた作業が行われる作業対象箇所を有する作業対象物に設けられて前記工具の移動をガイドするガイド機構であって、
前記工具を保持する保持部と、
前記作業対象箇所の近傍に配置されるとともに前記保持部を支持し、前記保持部を複数方向に移動可能に構成された移動部と、を備えており、
前記移動部は、前記作業対象箇所に設けられる円柱状のマスト部材と、前記マスト部材に対して当該マスト部材の軸周りに回転可能に連結されるとともに前記保持部を支持するアーム状部材と、を有し、
前記アーム状部材は、
前記マスト部材に対して軸周りに回転可能に設けられた回転保持部と、
基端部が前記回転保持部に一体的に設けられた第一アームと、
基端部が前記第一アームに対して回転可能に連結され、先端部に前記保持部が設けられた第二アームと、を備え、
前記保持部は、前記マスト部材に沿って長尺に形成されて、前記工具を、前記作業対象箇所に対して近接する方向及び離間する方向に沿って移動可能な状態に保持していることを特徴とする工具のガイド機構。
【請求項2】
前記工具は、前記保持部によって保持される被保持部を有し、
前記保持部は、前記マスト部材に沿って長尺に形成されたレール状部材であり、前記被保持部は、前記保持部の長さ方向に沿ってスライド移動可能に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の工具のガイド機構。
【請求項3】
前記工具に対し、重力方向とは反対の方向に作用する付勢力を付与するための付勢部を更に備え、
前記付勢部は、前記保持部のうち前記作業対象箇所から遠い方の端部に設けられていて、前記工具の前記被保持部に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の工具のガイド機構。
【請求項4】
前記作業対象物に固定される固定部を更に備えており、
前記移動部は、前記固定部に設けられ、かつ、前記保持部を前記固定部に対して複数方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の工具のガイド機構。
【請求項5】
前記工具は、ボルト又はナットを締め付けるための締付工具であり、
前記作業対象物は、一方の接合対象物及び他方の接合対象物であって、前記締付工具による作業対象箇所は、前記一方の接合対象物と前記他方の接合対象物との接合部であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の工具のガイド機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具のガイド機構に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、人口の減少や少子高齢化により、建設現場において作業する若手の作業員の減少が懸念されている。そのため、作業員の減少を補うべく、従来の施工方法・管理方法の改善が望まれている。
このような改善例として、例えば、橋梁関連工事においては、生産性の向上を図るために、少ないボルト本数で効率良く施工可能な橋梁の主桁連結構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各種ボルト及びナットの締付作業はナットランナー等の締付工具によって行われるが、締付工具は重量物であるし、電源ケーブル等も繋がっているため、持ち運びが不便であることはもちろんのこと、無理な体勢での締付作業が続くと作業員の身体への負担が大きいという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、工具を用いて作業対象箇所における作業を行う作業員の身体への負担を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、工具を用いた作業が行われる作業対象箇所を有する作業対象物に設けられて前記工具の移動をガイドするガイド機構であって、
前記工具を保持する保持部と、
前記作業対象箇所の近傍に配置されるとともに前記保持部を支持し、前記保持部を複数方向に移動可能に構成された移動部と、を備え、
前記移動部は、前記作業対象箇所に設けられる円柱状のマスト部材と、前記マスト部材に対して当該マスト部材の軸周りに回転可能に連結されるとともに前記保持部を支持するアーム状部材と、を有し、
前記アーム状部材は、
前記マスト部材に対して軸周りに回転可能に設けられた回転保持部と、
基端部が前記回転保持部に一体的に設けられた第一アームと、
基端部が前記第一アームに対して回転可能に連結され、先端部に前記保持部が設けられた第二アームと、を備え、
前記保持部は、前記マスト部材に沿って長尺に形成されて、前記工具を、前記作業対象箇所に対して近接する方向及び離間する方向に沿って移動可能な状態に保持していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の工具のガイド機構であって、
前記工具は、前記保持部によって保持される被保持部を有し、
前記保持部は、前記マスト部材に沿って長尺に形成されたレール状部材であり、前記被保持部は、前記保持部の長さ方向に沿ってスライド移動可能に保持されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の工具のガイド機構であって、
前記工具に対し、重力方向とは反対の方向に作用する付勢力を付与するための付勢部を更に備え、
前記付勢部は、前記保持部のうち前記作業対象箇所から遠い方の端部に設けられていて、前記工具の前記被保持部に連結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の工具のガイド機構であって、
前記作業対象物に固定される固定部を更に備えており、
前記移動部は、前記固定部に設けられ、かつ、前記保持部を前記固定部に対して複数方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の工具のガイド機構であって、
前記工具は、ボルト又はナットを締め付けるための締付工具であり、
前記作業対象物は、一方の接合対象物及び他方の接合対象物であって、前記締付工具による作業対象箇所は、前記一方の接合対象物と前記他方の接合対象物との接合部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、工具を用いて作業対象箇所における作業を行う作業員の身体への負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態のボルト締付管理システムの概略構成図である。
【
図2】コントローラーの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】ボルトの締付作業を行う際の作業手順を示すフローチャートである。
【
図6】ボックス桁内部においてボルトの締付作業を行う際のコントローラーと無線式のナットランナーとの配置関係を示す図であり、(a)はボックス桁を側面から見た図、(b)は当該ボックス桁の断面図である。
【
図7】鉄道車両が走行する線路を跨いで建設される高層建築鉄骨の施工略図であって、建設時においてボルトの締付作業を行う際のコントローラー1と無線式のナットランナー2との配置関係を示す図である。
【
図8】(a)はI型の橋桁どうしが付き合わされる継手部において連結プレートを介して高力六角ボルトの締付がなされた際の断面図、(b)は同じくI型の橋桁どうしが付き合わされる継手部において連結プレートを介してトルシア形高力ボルトの締付がなされた際の断面図である。
【
図12】ガイド機構の他の変形例を示す平面図である。
【
図14】ガイド機構の他の変形例を示す側面図である。
【
図16】ボルトの締め付けエラー表示画面の一例を示す図である。
【
図17】ボルトの締め付けエラー表示画面の他の一例を示す図である。
【
図19】屈曲式回転アームにおける他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0014】
<ボルト締付管理システム100の構成>
まず、
図1を参照して、本実施形態の構成を説明する。
図1は、本実施形態のボルト締付管理システム100の概略構成図である。なお、以下では、本実施形態のボルト締付管理システム100が、例えば、全長数百メートルの大型の橋梁を構成するI桁(鈑桁(プレートガーダー))や箱桁(ボックスガーダー)等の主桁の連結部におけるボルトの締付作業に用いられる場合を想定して説明を行う。
なお、橋桁の種類は、上記のI桁や箱桁に限られるものではなく、例えば断面T型のT桁など、その他の形態の橋桁でもよい。
また、本実施形態のボルト締付管理システム100は、高層建築鉄骨の組立や比較的規模の大きい建築物の建造の際においても活用することができ、その効果を発揮することができる。
【0015】
図1に示すように、ボルト締付管理システム100は、コントローラー1と、ナットランナー2と、バーコードリーダー3と、タブレット端末4と、サーバー装置5とを備えている。
【0016】
コントローラー1は、ボルト締付管理システム100を司るコンピューターである。コントローラー1は、ボルトの締付作業が行われる作業現場に配置される。コントローラー1の詳細については後述する。
【0017】
ナットランナー2は、ボルトを締め付けるための工具(締付工具)である。ナットランナー2は、コントローラー1と情報通信可能に接続されており、コントローラー1で設定された締付条件に基づいてボルトの締付作業を行うことが可能となっている。また、ナットランナー2は、回転方向を右回転方向(時計回り)と左回転方向(反時計回り)とのいずれかに切り替え可能となっている。
なお、ナットランナー2は、上述のように建設現場で使用することを想定しており、当該建設現場に適応した防水カバー兼損傷等の養生カバーを具備することが好ましい。
【0018】
また、ナットランナー2は、報知手段を有し、ボルトの締付作業が行われた際に、設定されている締付条件を満たさなかった場合は、当該締付条件を満たさなかった旨を報知することが可能となっている。
【0019】
具体的には、ナットランナー2のヘッド部には、緑色ランプと、黄色ランプと、赤色ランプ(いずれも図示省略)とが設けられており、各ボルトに対し締付作業が行われた際の締付トルクが予め設定された目標トルクの許容範囲内である場合は、緑色ランプを点灯させるとともに所定のチャイム音を出力する。一方、締付トルクが目標トルクの許容範囲に満たない場合は、黄色ランプを点灯させるとともに所定のビープ音を出力し、締付トルクが目標トルクの許容範囲を超えた場合は、赤色ランプを点灯させるとともに上記のビープ音とは別のビープ音を出力する。
【0020】
バーコードリーダー3は、例えば、
図5に示すように“J-1-1”、“J-1-2”、“J-1-3”といった各番地に配設されたボルト群の締付作業を開始する際に、当該ボルト群の右横に貼り付けられているバーコードBCを読み取るための装置である。バーコードリーダー3は、コントローラー1と無線LANにより接続されており、読み取ったバーコードBCのコード情報をコントローラー1に送信する。なお、
図5は、I桁の連結部におけるボルトの締付作業の一風景を示す図である。
【0021】
タブレット端末4は、ボルトの締付作業が行われる作業現場の作業管理者が使用する端末装置である。タブレット端末4は、コントローラー1と無線LANにより接続されており、作業管理者による当該端末4の操作部への操作を受け付けることで、コントローラー1に対して、当該操作に対応した各種の指示入力を行うことが可能となっている。また、タブレット端末4では、コントローラー1の記憶部12に記憶されている作業履歴テーブル121(後述)から作業履歴(作業結果)を取得し、当該端末4の表示部(図示省略)に表示することが可能となっている。
【0022】
サーバー装置5は、通信ネットワークNを介してコントローラー1と情報通信可能に接続されており、コントローラー1から受信したデータ(例えば、作業履歴テーブル121(後述)のデータなど)を管理するための装置である。サーバー装置5は、コントローラー1が配置されている作業現場とは異なる場所(例えば、事務所など)に配置される。
【0023】
通信ネットワークNは、例えば、インターネットであるものとするが、LAN(Local Area Network)等、他のネットワークとしてもよい。
【0024】
<コントローラー1の構成>
次に、
図2を参照して、コントローラー1の機能構成について説明する。
図2は、コントローラー1の機能構成を示すブロック図である。
【0025】
図2に示すように、コントローラー1は、制御部11と、記憶部12と、操作部13と、表示部14と、通信部15と、計時部16と、バス17とを備えている。コントローラー1の各部は、バス17を介して接続されている。
【0026】
制御部11は、記憶部12に記憶されている各種のプログラムを実行して所定の演算や各部の制御を行うCPU(Central Processing Unit)とプログラム実行時の作業領域と
なるメモリとを備えている(いずれも図示省略)。制御部11は、記憶部12に記憶されているプログラムとの協働により、各種の処理を実行する。
【0027】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)といった、データの書き込み及び読み出しが可能な記憶装置を備え、各種のプログラムやデータを含むファイル等を記憶する。記憶部12に記憶されるデータとしては、例えば、作業履歴テーブル121がある。
【0028】
図3は、作業履歴テーブル121の内容例を示す図である。
作業履歴テーブル121は、ボルトの締付作業が行われた際の作業履歴を記録するテーブルであって、各ボルトの締付作業が行われるごとに更新されるようになっている。
作業履歴テーブル121は、番地、作業日時、バッチカウント、状態、ステータス情報、締付プログラム、目標トルク、最終トルク、及び、最終角度の各データが対応付けられた状態で、作業日時のデータを基準として降順に、すなわち作業日時の新しい順に記憶されるようになっている。
【0029】
操作部13は、各種機能キーを備え、ユーザーによる各キーの押下入力を受け付けてその操作情報を制御部11に出力する。また、操作部13は、表示部14の表面を覆うように透明電極を格子状に配置したタッチパネル等を有し、手指やタッチペン等で押下された位置を検出し、その位置情報を操作情報として制御部11に出力する。
【0030】
表示部14は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、制御部11からの表示制御信号に従って、画面上に各種表示を行う。
【0031】
通信部15は、LANに接続されたナットランナー2、バーコードリーダー3、タブレット端末4との通信を行う。また、通信部15は、無線により通信ネットワークNに接続し、通信ネットワークNに接続された外部機器(例えば、サーバー装置5など)との通信を行う。
【0032】
計時部16は、計時回路(RTC:Real Time Clock)を有し、この計時回路により現在日時を計時して制御部11に出力する。
【0033】
《ボルト締付管理システム100の動作》
次に、改良型高力ボルト(半円頭型高力ボルト)の締付作業を行う際の作業手順について説明する。
ここで、改良型高力ボルトとは、トルシア形高力ボルトを改良したボルトであり、ピンテールを有しないボルト本体部と、半円頭型の頭部と、を備えた半円頭型高力ボルトである。この改良型高力ボルトの頭部は、当該ボルトの軸心を挟んで互いに対向する端部にそれぞれ必要に応じてカット処理(頭部の端から2~3mm程度内側に入った位置をカット)を施し、平面視において弓形をなす領域を除去することによって、当該頭部を治具(例えばスパナ)で挟み易くした一対の治具挟み部が設けられている。この治具挟み部は、改良型高力ボルトの締付作業を行う際にナット又は座金の共廻りを防止することを目的として設けられたものである。
【0034】
まず、作業手順を説明する前に、締付作業の対象となる構造物について説明する。
締付作業の対象となる構造物は、
図5に示すように、ウェブと上下のフランジとから構成されるI型の橋桁BGどうしを連結した連結構造物であって、当該I型の橋桁BGどうしが付き合わされる継手部において連結プレートCPを介して改良型高力ボルトの締付作業が行われるようになっている。
【0035】
図4は、改良型高力ボルトの締付作業を行う際の作業手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、事前準備として、対象となる建設工事の施工図面等に基づいて、改良型高力ボルトの締付作業を行う各場所(ボルト群の締付対象領域)の番地設定を行い、設定された各番地に対応した締付条件をコード化したバーコードBCを作成する(ステップS1)。ここで、締付条件とは、例えば、改良型高力ボルトを締め付ける際の目標トルク、締付角度、締付本数等である。
【0036】
続けて、事前準備として、ステップS1で作成された各バーコードBCを、対応する番地にそれぞれ貼り付ける(ステップS2)。以上で、事前準備が終了する。
図5では“J-1-1”、“J-1-2”、“J-1-3”の各番地にそれぞれの番地に対応するバーコードBCが貼り付けられた状態を示している。なお、
図5に示すように、貼り付けられたバーコードBCの近傍(例えば、右横)に対応する番地を記してもよい。
【0037】
次いで、ナットランナー2によって改良型高力ボルトの締付作業(本締め)を行うにあたり、作業員がバーコードリーダー3によって当該締付作業の対象となる番地(例えば、J-1-1(
図5参照))に対応したバーコードBCを読み取る(ステップS3)。これにより、バーコードBCのコード情報がバーコードリーダー3からコントローラー1に送信され、コントローラー1において当該バーコードBCのコード情報に基づいて締付作業を行う際の締付条件が設定されることとなる。また、このとき、作業者に割り当てられている作業者IDをコード化したバーコード(図示省略)をタブレット端末4に読み取らせて、当該作業者を認識させた上で、当該作業者の操作に基づいて入力された作業条件(例えば、作業日時、作業箇所(ボルトの締付順を含む)、作業者名等)の情報をタブレット端末4からコントローラー1に送信する。これにより、コントローラー1では、締付条件と紐付けられて作業条件の情報が設定され、当該情報を確認することができるようになっている。この結果、各番地のボルト群において、各改良型高力ボルトに対して番号が付されることで、当該各改良型高力ボルトを識別することができるので、例えば、本締めに関してエラーが発生した場合に、該当する改良型高力ボルトの場所が分かり易くなる。
【0038】
なお、各改良型高力ボルトは、ナットランナー2による締付作業(本締め)の前に一次締めがなされる。この一次締めは、一般的に使用されている電動インパクトを用いて行われる。一次締めが行われる際は、電動インパクトに自動マーキングソケットを装着してボルト先端部に着色することで、従来のように手作業によりマーキングを行う手間を省くとともに、当該一次締めの締め忘れを防止する。
【0039】
次いで、予めキャリブレーションを実施した後、ナットランナー2によって、対象となる番地に配設されているボルト群の各改良型高力ボルトに対して締付作業(本締め)を行う(ステップS4)。このとき、作業履歴テーブル121に作業履歴が逐次記憶されていくようになっている。ここで、ナットランナー2は、ガイド機構6(
図5参照)により鉛直方向と水平方向にスライド可能に保持されている。より具体的には、ガイド機構6は、橋桁のフランジに着脱自在に固定されている。さらに、鉛直方向に長い第一レールと、第一レールに沿って鉛直方向に移動可能な水平方向に長い第二レールと、第二レールに設けられ、かつ第二レールに沿って水平方向に移動可能とされた保持部と、を有しており、ナットランナー2はこの保持部に保持されている。これにより、各ボルトに対して締付作業を行う際は、ガイド機構6を用いてナットランナー2を適宜移動させることができるので、当該締付作業の負担を軽減することができるようになっている。
なお、ガイド機構6は、上記の構成に限定されるものではなく、例えば、当該ガイド機構6を橋桁へ着脱自在に固定可能な固定部と、当該固定部から伸びるリンク機構と、当該リンク機構の先端に設けられてナットランナー2を保持する保持部と、を有するアーム型ガイド機構であってもよい。
【0040】
また、本締めが行われた際に、当該本締めが行われた番地に対応するバーコードBCをタブレット端末4に読み取らせることで、当該番地での作業履歴をコントローラー1の作業履歴テーブル121から取得し、当該端末4の表示部(図示省略)に表示させることができる。これにより、作業管理者や作業者が各番地での作業履歴を作業現場ですぐに確認することができる。つまり、本締めの作業時に共廻り、締め忘れの有無を確認することができる。
【0041】
なお、本締めが行われる際は、ナットランナー2に自動マーキングソケットを装着してボルト先端部に着色(一次締めの際のマーキング色とは異なる色で着色)することで、当該本締めの締め忘れを防止する。また、本締めが行われた際に、共廻り等の要因で目標トルク値及び締付角度の許容範囲内に収まらない場合は、上述のようにナットランナー2のヘッド部に設けられているランプによってエラー表示がなされるとともにスピーカーによってエラー音が出力される。
【0042】
次いで、コントローラー1によって、作業履歴テーブル121に記憶されている作業履歴を、通信部15を介してサーバー装置5へ送信し、保存する(ステップS5)。
【0043】
以上のように、本実施形態のボルト締付管理システム100は、予め設定された締付条件に基づいてボルトを締め付けるナットランナー(締付工具)2と、締付条件をコード化したバーコード(コード情報)BCを読み取るバーコードリーダー(読取装置)3と、締付条件を設定するコントローラー1と、を備え、バーコードBCは、締付条件が同一であるボルト群それぞれの番地(締付対象領域)に対応して設けられており、コントローラー1は、バーコードリーダー3によって読み取られたバーコードBCに対応する締付条件を設定し、ボルトの締付作業の作業結果を作業履歴テーブル121に記録する。
したがって、ボルト締付管理システム100によれば、各番地のボルト群の締付作業を開始する際に、当該番地に対応して設けられているバーコードBCをバーコードリーダー3で読み取ることで、コントローラー1により締付条件を設定するので、建設現場の煩雑な作業環境であっても当該締付条件の設定を円滑に行うことができる。また、ボルトの締付作業の作業結果を作業履歴テーブル121に記録しておくことで、当該締付作業時の共廻り・締め忘れを確認することができるとともに、当該作業結果を品質管理における証明書として保存しておくことができるようになる。この結果、建設現場の煩雑な作業環境におけるボルトの締付作業の効率を向上させるとともに、品質管理の自動化・ペーパーレス化を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態のボルト締付管理システム100は、ナットランナー2の所定方向への移動をガイドするガイド機構6を備える。
したがって、ボルト締付管理システム100によれば、各ボルトに対して締付作業を行う際は、ガイド機構6を用いてナットランナー2を適宜移動させることができるので、当該締付作業の負担を軽減することができる。
【0045】
また、本実施形態のボルト締付管理システム100によれば、改良型高力ボルトを締付作業の対象としているが、作業履歴テーブル121によって作業結果を記憶しているので、締付作業の完了後に抜き取り検査を行う手間を省くことができる。また、トルク値や回転角といった数値で作業結果を管理することができるので、当該作業結果を施工途中の検査や、竣工検査、経年劣化等の確認資料として有効に利用することができる。また、各改良型高力ボルトに対して締付作業を行う際は、ピンテール部分の回収やピンテール切断部の補修塗装を行う必要がないため、当該締付作業の負担を軽減することができる。
【0046】
また、本実施形態のボルト締付管理システム100は、コントローラー1によって、作業履歴テーブル121に記録されている作業履歴を、通信部15を介してサーバー装置5へ送信させる。作業履歴に係るデータは、サーバー装置5の記憶部に記憶される。
したがって、ボルト締付管理システム100によれば、ボルトの締付作業における作業結果を作業現場以外の場所(例えば、事務所)からでも確認することができるようになる。そして、サーバー装置5に記憶された作業履歴に係るデータは、タブレット端末4を含む外部の情報通信端末を通じて、作業現場以外の場所(例えば、事務所)から検索することができる。つまり、作業履歴には、番地や作業日時を始めとする種々のデータが含まれているため、データの種類ごとに検索したり、締め付けエラーのあったボルトの位置を検索したりすることができる。
【0047】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態において、ナットランナー2は、コントローラー1と有線接続する構成(
図1参照)としたが、例えば、無線LANにより接続する構成としてもよい。この無線LANによりコントローラー1と接続する無線式のナットランナー2は、複数台(例えば、5台)同時に使用可能となっている。
図6(a)及び同図(b)は、ボックス桁の外部や内部においてボルトの締付作業を行う際のコントローラー1と無線式のナットランナー2との配置関係を示す図である。
図6(a)は、ボックス桁を側面から見た図であり、同図(b)は、当該ボックス桁の断面図である。
図6(a)及び同図(b)に示すように、ボックス桁の外部(天井部)や内部においてボルトの締付作業を行う際に、無線LANルーター及び無線アンテナを介して、無線式のナットランナー2と当該ボックス桁の外側に存するコントローラー1とを無線接続することにより、配線を気にすることなく締付作業を行うことができるので、作業効率の向上が図られる。また、無線式のナットランナー2は、複数台同時に使用可能であるので、作業効率をより向上させることができる。また、無線式のナットランナー2とコントローラー1との間での情報伝達及び作業指示をリアルタイムで行うことができる。更に、ボックス桁にはマンホールが設けられている場合が多く、かかる場合にはマンホール近傍に無線アンテナを配置することで、無線式のナットランナー2とコントローラー1との間での情報伝達及び作業指示をより円滑にすることができる。
【0049】
また、上記の無線式のナットランナー2を使用したボルト締付管理システム100は、高層建築鉄骨の組立の際においても活用することができる。
図7は、鉄道車両が走行する線路を跨ぐようにして建設される高層建築鉄骨の施工略図であって、建設時においてボルトの締付作業を行う際のコントローラー1と無線式のナットランナー2との配置関係を示す図である。
【0050】
図7に示すように、高層鉄骨の組立時においてボルトの締付作業を行う際は、例えば、作業員が当該締付作業を行う階に無線アンテナを配置し、当該無線アンテナを介することで、無線式のナットランナー2と地上に配置されたコントローラー1との間での情報伝達及び作業指示を行う。また、高層鉄骨間に架け渡される大トラス鉄骨の組立時においてボルトの締付作業を行う際は、例えば、高層鉄骨の最上階にコントローラー1と無線LANルーターを配置するとともに、作業員が締付作業を行う近傍に無線アンテナを配置することで、無線式のナットランナー2とコントローラー1との間での情報伝達及び作業指示を行う。このように、高層建築鉄骨の組立の際において、無線式のナットランナー2とコントローラー1とを無線接続することにより、配線を気にすることなく締付作業を行うことができるので、作業効率の向上が図られる。また、無線式のナットランナー2は、複数台同時に使用可能であるので、作業効率をより向上させることができる。また、無線式のナットランナー2とコントローラー1との間での情報伝達及び作業指示をリアルタイムで行うことができる。
【0051】
また、上記実施形態では、締付条件をコード化したコード情報としてバーコードBCを用いる構成としたが、当該コード情報として、例えば、QRコード(登録商標)などを用いてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、改良型高力ボルトを対象として締付作業を行う際の作業手順について説明を行ったが、例えば、高力六角ボルトを対象としてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、タブレット端末4がバーコードBCを読み取り可能なバーコード読取機能を搭載し、このタブレット端末4によってバーコードBCを読み取ることで、当該バーコードBCに対応する番地での作業履歴(作業結果)をコントローラー1から取得し、当該作業履歴を表示部(図示省略)に表示させるようにしてもよい。また、タブレット端末4によってバーコードBCを読み取ることで、当該バーコードBCに対応する番地での締付作業に関する所定の作業指示を、当該端末4の操作部への操作に基づきコントローラー1に対して行うことができるようにしてもよい。
【0054】
なお、他産業(例えば、自動車産業等)でもボルト締付管理システムは活用されているが、当該他産業では、いわゆるライン生産方式においてベルトコンベア等により作業員のもとへ流れてくる構造物に対し作業を行う現場を対象としている。一方、建設工事現場において、高層建築鉄骨や橋梁等の巨大な構造物を施工する場合、高所作業を要し、屋外での作業により気象条件にも左右されやすいため、施工難易度が高く、他産業で活用されているボルト締付管理システムを容易に適用することができない。また、高層建築鉄骨や橋梁等の施工場所が河川上、海上、山間部、都心部(特に鉄道線路を跨ぐ場所)等である場合、施工難易度がさらに高くなり、上記のボルト締付管理システムを適用することが益々困難である。さらに、建設工事現場では、高力ボルトに関わる作業比率が多大であり、部材間の連結部は構造物の重要な部位であり、多様な施工条件での品質管理は厳しく求められるため、上記のボルト締付管理システムを容易に適用することができない。
【0055】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。また、以下の各変形例において、上述の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0056】
〔変形例1〕
上述の実施形態で挙げた改良型高力ボルトや高力六角ボルト等の各種ボルト及びナットの締付作業はナットランナー2によって行われるが、ナットランナー2は重量物であるし、電源ケーブル等も繋がっているため、持ち運びが不便であることはもちろんのこと、無理な体勢での締付作業が続くと作業員の身体への負担が大きいという問題があった。そこで、締付作業を行う作業員の身体への負担を軽減することが求められていた。
【0057】
本変形例において締付作業の対象となる構造物は、
図9~
図11に示すように、ウェブ20と上下のフランジ21から構成されるI型の橋桁BG同士を連結した連結構造物とされている。本変形例における連結構造物は、橋桁BGの長さ方向端部同士が付き合わされる継手部において連結プレート(以下、複数の添接板22,23,24)を介してボルト及びナットの締付作業が行われるようになっている。
【0058】
複数の添接板22,23,24のうち、第一添接板22は、互いに連結される橋桁BGのウェブ20における両側面同士の間に跨って配置されている。
第二添接板23は、互いに連結される橋桁BGの上フランジ21における上面同士の間と、下フランジ21における下面同士の間と、に跨って配置されている。
第三添接板24は、互いに連結される橋桁BGの上フランジ21における下面同士の間と、下フランジ21における上面同士の間と、に跨って配置されている。
【0059】
各添接板22,23,24は矩形板状の鋼板であり、これら各添接板22,23,24には、ボルトの軸部が通される複数の貫通孔が形成されている。
複数の貫通孔は、各添接板22,23,24の辺に沿って縦横に格子状に配置されている。また、これら複数の貫通孔同士は、縦方向(基本的に上下方向を指し、連結構造物の角度に応じて鉛直方向の場合もある)の間隔も、横方向(基本的に橋桁BGの長さ方向に沿う方向を指し、連結構造物の角度に応じて水平方向の場合もある)の間隔も等しくなるように形成されている。
したがって、これら複数の貫通孔に軸部が通される複数のボルト(ボルト群)及びナットも、縦方向及び横方向に等間隔とされた格子状に配置されることとなる。
【0060】
そして、本変形例においてボルト及びナットの締付作業を行うナットランナー2は、ガイド機構30により上下方向(連結構造物の角度に応じて鉛直方向の場合もある)及び横方向(基本的に橋桁BGの長さ方向に沿う方向を指し、連結構造物の角度に応じて水平方向の場合もある)にスライド移動可能に保持されている。
すなわち、本変形例のガイド機構30は、ナットランナー2を保持して、その上下方向及び横方向の移動をガイドするガイド装置30であって、第一ガイドフレーム31と、第二ガイドフレーム32と、保持部33と、付勢部34と、位置決め部35と、を備える。
【0061】
まず、第一ガイドフレーム31は、橋桁BGにおける上下のフランジ21間に架け渡されて設置されており、一対のフレーム材31aと、スライド部31bと、固定部31cと、を有する。
一対のフレーム材31aは、ガイドレールであり、互いに横方向に間隔を空けて配置されている。
スライド部31bは、一対のフレーム材31aを保持する状態で、当該一対のフレーム材31aの長さ方向に沿ってスライド移動可能に構成されている。
固定部31cは、一対のフレーム材31aの上端部及び下端部に設けられ、橋桁BGにおける上下のフランジ21に固定される。固定部31cは、一対のフレーム材31aから橋桁BG側に突出するブラケットと、ブラケットの先端下面に一体的に設けられた固定板と、を有し、固定板が橋桁BGにおける上下のフランジ21に固定されている。その固定方法は、固定板と上下のフランジ21とをクランプで強固に挟持する方法や、固定板に電磁石を設けて磁力によって固定板を上下のフランジ21に強固に固定する方法、固定板及び上下のフランジ21の双方に固定用ボルトを通す貫通孔を形成しておいて、固定板と上下のフランジ21とを固定用ボルト及びナットで強固に連結する方法などが挙げられ、いずれかの方法又はその他の方法が適宜採用される。
つまり、第一ガイドフレーム31は、橋桁BGに対して着脱自在に設けられている。
【0062】
続いて、第二ガイドフレーム32は、第一ガイドフレーム31のスライド部31bに取り付けられており、取付部32aと、第一アーム32bと、第二アーム32cと、を有する。
取付部32aは、第一ガイドフレーム31のスライド部31bに取り付けられる部分であり、スライド部31bと共に、一対のフレーム材31aの長さ方向に沿ってスライド移動する。
第一アーム32b及び第二アーム32cは、セットで用いられて伸縮可能に構成されている。すなわち、基端部(取付部32a)側に位置して筒状に形成された第一アーム32bの内部に、先端部(ナットランナー2)側に位置する第二アーム32cが挿入された状態となっており、第一アーム32bに対し、第二アーム32cが長さ方向(第一アーム32bの長さ方向)に沿って進退可能な状態となっている。
また、取付部32aは筒状に形成されており、内部に第一アーム32bが挿入されている。そして、第一アーム32bも、取付部32aに対して長さ方向(取付部32aの長さ方向)に沿って進退可能な状態となっている。これにより、ナットランナー2の横方向への移動距離を伸ばすことができるとともに、ナットランナー2を第一ガイドフレーム31に寄せて締付作業を行うことができる。
【0063】
続いて、保持部33は、第二ガイドフレーム32(第二アーム32c)の先端部に一体的に設けられており、ナットランナー2を、ナット及びボルト側に近接させる方向及びナット及びボルトから離間させる方向(以下、近接離間方向)に長尺に形成されている。
また、この保持部33は、断面略C字型に形成されており、開放された部分がナットランナー2側に向けられて配置されている。そして、この開放された部分に面する保持部33の両縁部によって、ナットランナー2の被保持部2aが、近接離間方向に沿ってスライド移動可能な状態に保持されている。
なお、被保持部2aは、ナットランナー2の本体部に対して、近接離間方向に沿う当該本体部の軸回りに180度回転できるように取り付けられている。すなわち、ナットランナー2の持ち手部分は、
図9に示す状態においては、鉛直上方から鉛直下方に回転可能となっている。これにより、ナットランナー2先端のレンチソケットとナットとを合致させやすくなる。
【0064】
続いて、付勢部34は、第一ガイドフレーム31における一対のフレーム材31aの上端部に設けられている。そして、このような付勢部34は、スライド部31bに対し、一対のフレーム材31aの上端部に向かう方向(重力方向とは反対の方向)に作用する付勢力を付与する。この付勢力は、ナットランナー2及び第二ガイドフレーム32を重力方向とは反対の方向に押し戻すか、もしくは釣り合うか、若干ずつ重力方向に移動する程度のいずれかに設定されている。
より具体的に説明すると、本変形例における付勢部34は、巻き取り式の定荷重バネが用いられている。定荷重バネは、一対のフレーム材31aに取り付けられる巻取部(ドラム)と、この巻取部に巻き取られる金属製の帯体と、を備えており、帯体を巻取部から引き出すことで、帯体には元の状態に戻ろうとする付勢力が生じる。この付勢力により、スライド部31bは、一対のフレーム材31aの上端部に向かう方向に付勢される。つまり、一対のフレーム材31aに沿って下方に移動させられたスライド部31bは、この付勢部34の付勢力によって上方に移動して元の位置に戻るか、上方に移動させやすい状態となる。
付勢部34における帯体の先端には、スライド部31bに連結される板状の連結部34aを有する。なお、本変形例における連結部34aは、第一ガイドフレーム31のスライド部31bに連結されるものとするが、第二ガイドフレーム32の取付部32aに連結されてもよい。
このような付勢部34をガイド機構30が備えることにより、重量物であるナットランナー2は、常に付勢部34の付勢力によって上方に移動して元の位置に戻ろうとすることになるので、ボルト及びナットの締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
【0065】
続いて、位置決め部35は、ナットランナー2の上下方向及び横方向の位置を位置決めするものであり、本変形例においてはクロスレーザーマーカー(クロスレーザーポインター)が採用されている。
クロスレーザーマーカーは、十字状のレーザー光35aを照射する装置本体が、保持部33の橋桁BG側端部に設けられている。十字状のレーザー光35aにおける中心の交点部分は、ナットランナー2のレンチソケットが締付作業対象のナット及びボルトに近接移動する位置である。そのため、十字状のレーザー光35aを、締付作業対象のナット及びボルトの上下方向及び横方向(十字方向)に隣り合って位置するナット及びボルト、又は貫通孔に目視で位置合わせすることで、ナットランナー2のレンチソケットの位置と、締付作業対象のナット及びボルトの位置とを合致させることができる。このように位置決めが完了したら、ナットランナー2を締付作業対象のナット及びボルト側に近接移動させて、締付作業を行うようにする。また、必要に応じてナットランナー2の本体部を、被保持部2aに対して回転させて、ナットランナー2先端のレンチソケットとナットとを合致させる。
このように位置決め部35を用いてナットランナー2の位置決めを行うと、締付作業の時間を短縮できるので、重量物であるナットランナー2を移動させる時間も短縮できることとなり、ボルト及びナットの締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
なお、レーザー光35aは十字状としたが、T字状(3方向)でもよいし、L字状(2方向)でもよい。
また、本変形例における位置決め部35はクロスレーザーマーカーを採用したが、これに限られるものではなく、ナットランナー2の本体部に付属して回転不能に設けられた照準器を採用してもよい。この照準器も、締付作業対象のナット及びボルトの上下方向及び横方向(十字方向)に隣り合って位置するナット及びボルト、又は貫通孔に照準(例えば交差方向に伸びるスリット)を合わせることで、ナットランナー2のレンチソケットの位置と、締付作業対象のナット及びボルトの位置とを合致させることができる。
さらに、追尾式レーザーマーカーを設置することで、締付作業の順番を予め指定し、その順番を追尾しながらナットランナー2によって締付作業を行うようにしてもよい。
【0066】
本変形例におけるガイド機構30は、保持部33で保持したナットランナー2を、上下方向と、橋桁BGの長さ方向に沿って移動させることができる。これにより、ウェブ20の側面における第一添接板22に設けられたボルト及びナットの締付作業を、ガイド機構30でガイドしながら行うことができる。
なお、第一ガイドフレーム31及び第二ガイドフレーム32に対し、スライド部31bや各アーム32b,32cに駆動部を適用して自動制御できるようにすると、ナットランナー2の移動を駆動部に委ねることができるので、作業員の負担をより軽減することができる。 また、これに加えて、ガイド機構30自体を、自動又は手動の運搬手段によって運搬できるようにしてもよい。
【0067】
以上のような本変形例によれば、格子状に配置されたナット及びボルト(又は貫通孔)の位置に合わせてナットランナー2を上下方向及び横方向に移動させやすくなるので、ナット締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
また、ガイド機構30は、橋桁BGに対して着脱自在であるため、すぐに隣の作業場所に持ち運んで移動することができるので、全体的な工期の短縮にも貢献できる。
【0068】
なお、本変形例のガイド機構30においては、被保持部2aが、ナットランナー2の本体部に対して、近接離間方向に沿う当該本体部の軸回りに180度回転できるように取り付けられているものとしたが、これに加えて、上下方向に180度回転できる第二の回転機構を備えていてもよい。保持部33の長さ(ウェブ20方向への長さ)にもよるが、第二の回転機構を備えることにより、上フランジ21の下面、及び下フランジ21の上面におけるボルト・ナットの締付作業を行うことも可能となる。
【0069】
〔変形例2〕
本変形例においてボルト及びナットの締付作業を行うナットランナー2は、橋桁BGの上面側に設けられたガイド機構40により縦方向(橋桁BGの長さ方向に沿う方向)及び横方向(橋桁BG・フランジ21の幅方向)にスライド移動可能に保持されている。
すなわち、本変形例のガイド機構40は、ナットランナー2を保持して、縦方向及び横方向の移動をガイドするガイド装置40であって、固定マスト41と、屈曲式回転アーム42と、保持部43と、付勢部44と、位置決め部45と、を備える。
なお、本変形例におけるガイド機構40は、橋桁BGの上面側に設けられるものとするが、これに限られるものではなく、下面側に設けられてもよいし(後述)、側面側に設けられてもよい(後述)。
【0070】
まず、固定マスト41は、橋桁BGの上フランジ21上面に設置されており、マスト本体41aと、固定部41bと、を有する。
マスト本体41aは、円柱状に形成されている。
固定部41bは、マスト本体41aの下端部に一体的に設けられた板状体であり、橋桁BGにおける上フランジ21に固定される。その固定方法は、固定部41bと上フランジ21とをクランプで強固に挟持する方法や、固定部41bに電磁石を設けて磁力によって固定部41bを上フランジ21に強固に固定する方法、固定部41b及び上フランジ21の双方に固定用ボルトを通す貫通孔を形成しておいて、固定部41bと上フランジ21とを固定用ボルト及びナットで強固に連結する方法などが挙げられ、いずれかの方法又はその他の方法が適宜採用される。固定部41bを板状体とせずに、固定部41b自体をクランプで構成してもよい。
つまり、固定マスト41は、橋桁BGに対して着脱自在に設けられている。
【0071】
続いて、屈曲式回転アーム42は、基端部が固定マスト41に対して当該固定マスト41の軸回りに回転可能に設けられたアームであり、回転保持部42aと、第一アーム42bと、第二アーム42cと、支持ブレース42dと、を有する。
回転保持部42aは、屈曲式回転アーム42の基端部に位置し、固定マスト41の上端部を保持する部位であり、固定マスト41の軸回りに回転可能となっている。
第一アーム42bと第二アーム42cは、セットで用いられて、第一アーム42bと第二アーム42cの連結部において回転可能に構成されている。すなわち、第一アーム42bは、基端部が回転保持部42aに一体的に設けられ、先端部には第二アーム42cが回転可能に連結されている。第二アーム42cは、基端部が第一アーム42bに回転可能に連結され、先端部には保持部43(ナットランナー2)が設けられている。これにより、互いに回転可能に連結された第一アーム42b及び第二アーム42cは、中央部が、くの字に屈曲する一本のアームとして構成されることとなる。つまり、屈曲式回転アーム42は、ナットランナー2を、第一アーム42b(回転保持部42a)が固定マスト41の軸回りに回転する範囲と、第二アーム42cが第一アーム42bに対して回転する範囲で移動させることができる。
【0072】
続いて、保持部43は、屈曲式回転アーム42(第二アーム42c)の先端部に一体的に設けられており、ナットランナー2を、ナット及びボルト側に近接させる方向及びナット及びボルトから離間させる方向(近接離間方向:上下方向)に長尺に形成されている。
保持部43は、断面略C字型に形成されており、開放された部分がナットランナー2側に向けられて配置されている。そして、この開放された部分に面する保持部43の両縁部によって、ナットランナー2の被保持部2aが、近接離間方向に沿ってスライド移動可能な状態に保持されている。
なお、被保持部2aは、ナットランナー2の本体部に対して、近接離間方向に沿う当該本体部の軸回りに180度回転できるように取り付けられている。
【0073】
続いて、付勢部44は、保持部43の上端部に設けられている。そして、このような付勢部34は、ナットランナー2の被保持部2aに対し、保持部43の上端部に向かう方向(重力方向とは反対の方向)に作用する付勢力を付与する。この付勢力は、ナットランナー2を重力方向とは反対の方向に押し戻すか、もしくは釣り合うか、若干ずつ重力方向に移動する程度のいずれかに設定されている。
本変形例における付勢部44は、巻き取り式の定荷重バネが用いられており、金属製の帯体の先端部に設けられた連結部44aが、ナットランナー2の被保持部2aに連結されている。
このような付勢部44をガイド機構40が備えることにより、重量物であるナットランナー2は、常に付勢部44の付勢力によって上方に移動して元の位置に戻ろうとすることになるので、ボルト及びナットの締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
【0074】
続いて、位置決め部45は、ナットランナー2の上下方向及び横方向の位置を位置決めするものであり、本変形例においてはクロスレーザーマーカー(クロスレーザーポインター)が採用されている。
クロスレーザーマーカーは、十字状のレーザー光45aを照射する装置本体が、保持部43の橋桁BG側端部(下端部)に設けられている。位置決めの方法は、上記の位置決め部35と同様である。
このように位置決め部45を用いてナットランナー2の位置決めを行うと、締付作業の時間を短縮できるので、重量物であるナットランナー2を移動させる時間も短縮できることとなり、ボルト及びナットの締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
【0075】
本変形例におけるガイド機構40は、保持部43で保持したナットランナー2を、橋桁BGの上フランジ21の上面に沿って移動させることができる。これにより、上フランジ21の上面における第二添接板23に設けられたボルト及びナットの締付作業を、ガイド機構40でガイドしながら行うことができる。
なお、ナットランナー2には、隣り合うボルト又はナットに接する反力金具2bを装着し、隣り合うボルト又はナットに反力金具2bを当接させて、ナットランナー2による締付力を向上させてもよい。
【0076】
以上のような本変形例によれば、格子状に配置されたナット及びボルト(又は貫通孔)の位置に合わせてナットランナー2を縦方向及び横方向に移動させやすくなるので、ナット締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。さらに、屈曲式回転アーム42を採用し、固定マスト41を回転中心として動作させるので、狭い作業スペースの場合でも、ナットランナー2の移動を、作業員による軽微な回転操作で速やかに行うことができる。
また、ガイド機構40は、橋桁BGに対して着脱自在であるため、すぐに隣の作業場所に持ち運んで移動することができるので、全体的な工期の短縮にも貢献できる。
【0077】
なお、本変形例におけるガイド機構40は、橋桁BGの上面側に設けられるものとしたが、下面側に設けられてもよい。ガイド機構40が、橋桁BGの下面側に設けられる場合は、付勢部44は定荷重バネであってもよいし、例えばナットランナー2を上方に向けて付勢するコイルバネなどの他の付勢手段でもよい。付勢部44の取付位置についても適宜変更してよいものとする。つまり、ガイド機構40が、橋桁BGの下面側に設けられる場合は、ナットランナー2による締付作業を上向きで行う必要があるので、上向きの締付作業を行う際にサポートしやすい位置に付勢部44を設けるようにする。
また、本変形例におけるガイド機構40が、橋桁BGの側面側に設けられる場合は、固定マスト41及び付勢部44の代わりに、上記の第一ガイドフレーム31及び付勢部34を用いるようにしてもよい。
さらに、本変形例におけるガイド機構40は、上フランジ21の下面側や、下フランジ21の上面側に設けられるようにしてもよい。
【0078】
〔変形例3〕
本変形例においてボルト及びナットの締付作業を行うナットランナー2は、ガイド機構50により縦方向(橋桁BGの長さ方向に沿う方向)及び横方向(橋桁BG・フランジ21の幅方向)にスライド移動可能に保持されている。
すなわち、本変形例のガイド機構50は、ナットランナー2を保持して、縦方向及び横方向の移動をガイドするガイド装置50であって、第一ガイドフレーム51と、第二ガイドフレーム52と、保持部53と、付勢部54と、位置決め部55と、測距部56と、を備える。
なお、本変形例におけるガイド機構50は、橋桁BGの上面側に設けられるものとするが、これに限られるものではなく、下面側に設けられてもよい。
【0079】
まず、第一ガイドフレーム51は、橋桁BGの上フランジ21における一側縁と他側縁の間に架け渡されて設置されており、一対のフレーム材51aと、スライド部51bと、一対の固定脚51cと、を有する。
一対のフレーム材51aは、ガイドレールであり、互いに縦方向(橋桁BGの長さ方向に沿う方向)に間隔を空けて配置されている。
スライド部51bは、一対のフレーム材51aを保持する状態で、当該一対のフレーム材51aの長さ方向に沿ってスライド移動可能に構成されている。
一対の固定脚51cは、一対のフレーム材51aの一端部及び他端部に設けられ、橋桁BGにおける上フランジ21に固定される。一対の固定脚51cは、下端部が、上フランジ21における一側縁と他側縁に固定され、上端部に、一対のフレーム材51aにおける長さ方向側端部が取り付けられている。固定脚51c下端部の固定方法は、当該下端部と上フランジ21とをクランプで強固に挟持する方法や、固定脚51c下端部に電磁石を設けて磁力によって固定脚51c下端部を上フランジ21に強固に固定する方法、固定脚51c下端部及び上フランジ21の双方に固定用ボルトを通す貫通孔を形成しておいて、固定脚51c下端部と上フランジ21とを固定用ボルト及びナットで強固に連結する方法などが挙げられ、いずれかの方法又はその他の方法が適宜採用される。
つまり、第一ガイドフレーム51は、橋桁BGに対して着脱自在に設けられている。
【0080】
続いて、第二ガイドフレーム52は、第一ガイドフレーム51のスライド部51bに取り付けられており、取付部52aと、第一アーム52bと、第二アーム52cと、を有する。
取付部52aは、第一ガイドフレーム51のスライド部51bに取り付けられる部分であり、スライド部51bと共に、一対のフレーム材51aの長さ方向に沿ってスライド移動する。
第一アーム52b及び第二アーム52cは、セットで用いられて伸縮可能に構成されており、第二アーム52cは、第一アーム52bに対し、第一アーム52bの長さ方向に沿って進退可能な状態となっている。
また、取付部52aは筒状に形成されており、内部に第一アーム52bが挿入されており、第一アーム52bも、取付部32aの長さ方向に沿って進退可能な状態となっている。これにより、ナットランナー2の横方向への移動距離を伸ばすことができるとともに、ナットランナー2を第一ガイドフレーム51に寄せて締付作業を行うことができる。
【0081】
続いて、保持部53は、第二ガイドフレーム52(第二アーム52c)の先端部に一体的に設けられており、ナットランナー2を、ナット及びボルト側に近接させる方向及びナット及びボルトから離間させる方向(以下、近接離間方向)に長尺に形成されている。
保持部53は、断面略C字型に形成されており、開放された部分がナットランナー2側に向けられて配置されている。そして、この開放された部分に面する保持部53の両縁部によって、ナットランナー2の被保持部2aが、近接離間方向に沿ってスライド移動可能な状態に保持されている。
なお、被保持部2aは、ナットランナー2の本体部に対して、近接離間方向に沿う当該本体部の軸回りに180度回転できるように取り付けられている。
【0082】
続いて、付勢部54は、保持部53の上端部に設けられている。そして、このような付勢部54は、ナットランナー2の被保持部2aに対し、保持部53の上端部に向かう方向(重力方向とは反対の方向)に作用する付勢力を付与する。この付勢力は、ナットランナー2を重力方向とは反対の方向に押し戻すか、もしくは釣り合うか、若干ずつ重力方向に移動する程度のいずれかに設定されている。
本変形例における付勢部54は、巻き取り式の定荷重バネが用いられており、金属製の帯体の先端部に設けられた連結部54aが、ナットランナー2の被保持部2aに連結されている。
このような付勢部54をガイド機構50が備えることにより、重量物であるナットランナー2は、常に付勢部54の付勢力によって上方に移動して元の位置に戻ろうとすることになるので、ボルト及びナットの締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
【0083】
続いて、位置決め部55は、ナットランナー2の上下方向及び横方向の位置を位置決めするものであり、本変形例においてはクロスレーザーマーカー(クロスレーザーポインター)が採用されている。
クロスレーザーマーカーは、十字状のレーザー光55aを照射する装置本体が、保持部53の橋桁BG側端部(下端部)に設けられている。位置決めの方法は、上記の位置決め部35と同様である。
このように位置決め部55を用いてナットランナー2の位置決めを行うと、締付作業の時間を短縮できるので、重量物であるナットランナー2を移動させる時間も短縮できることとなり、ボルト及びナットの締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
【0084】
続いて、測距部56(測距センサー、測距計ともいう)は、第二ガイドフレーム52における取付部52aの側面に取り付けられており、取付部52aの縦方向及び横方向における移動距離を測定することができる。測距方式は、光学式、電波式、超音波式、機械式等、特に限定されるものではなく、簡易的なメジャーやローラー式測距計を採用してもよい。
より具体的に説明すると、本変形例においては光学式、電波式、超音波式のいずれかの測距方式が採用された測距センサーが採用されており、取付部52aに設けられた本体部から発せられる送信波(投光)を本体部に反射させる反射板56aを更に有する。本変形例における測距部56は、縦方向と横方向の双方に送信波(投光)を発する構成となっており、反射板56aは、縦方向用と横方向用に二つ用いられている。
なお、縦方向と横方向の双方に送信波(投光)を発する構成としては、縦方向と横方向に対して同時に送信波(投光)を発して反射波を同時に受信して処理できる機能を有するものでもよいし、縦方向用の送受信と横方向用の送受信を別々に行って別個に処理できる機能を有するものを採用してもよい。
このように測距部56が設けられていると、縦方向及び横方向におけるナットランナー2の位置を常時測定することができる。これにより、どの位置のボルト・ナットの締付作業を行ったかを、タブレット端末4でモニタリングすることができる。
なお、ボルト・ナットが格子状に配置されている場合には、測距部56を利用することで、ボルト・ナットの位置のデータ管理がしやすい。例えば格子状の四隅や継手の位置にあるボルト・ナットを基準とし、この基準となる位置のボルト・ナットから縦方向と横方向にどれだけナットランナー2が移動したかが、測距部56によって容易に判明する。すなわち、基準となるボルト・ナットの位置のデータを最初にデータ入力しておくことでデータ管理がしやすくなり、更にナットランナー2の移動距離との関連付けも容易で、データ化しやすくなる。
【0085】
ボルト及びナットの締付作業が完了した位置は、例えば上記の測距部56を用いたり、カメラ撮影を行ったりすることでモニタリングすることができる。また、測距部56の場合は距離を測定した順番をそのまま締付作業を行った順番としてデータ処理することができる。しかしながら、締め付けにエラーが発生した場合に、タブレット端末4等の表示画面でエラーが発生した位置を特定できない。そこで、タブレット端末4等の表示画面でエラーが発生した位置を特定できるようにすることが求められている。
本変形例においては、例えば、
図16や
図17に示すように、締め付けエラー発生位置を表示して、タブレット端末4等の表示画面上で特定できるようにしている。
【0086】
カメラ撮影によって締め付けエラー発生位置を特定する場合は、例えばナットランナー2のレンチソケットにマーキング機能を持たせたものを採用し、エラーが発生した位置のボルト又はナットにマーキングを施すことによって、締め付けエラー発生位置を特定できるようにする。
図16は、カメラ撮影によって、締付作業を行った順番と、締め付けエラー発生位置をモニタリングした場合の、タブレット端末4等の表示画面4aの一例を表している。表示画面4aでは、格子の交点部分がボルト及びナット(貫通孔)の位置であり、丸印が施された位置が締付作業を行った位置である。また、その斜め上の数字が締付作業の順番を表している。そして、丸印のうち黒い丸印が施された位置がエラー発生位置となっている。すなわち、
図16に示す例では、8番目と13番目に締付作業を行った位置でエラーが発生している。
なお、この
図16に示す例は、上記の測距部56を用いる場合にも適用できる。
【0087】
また、
図17は、予め番号を付しておいた場合の、タブレット端末4等の表示画面4bの一例を表している。表示画面4bでは、ボルト及びナット(貫通孔)の位置に予め番号を付しておき、エラーが発生した位置だけをモニタリングするだけで、タブレット端末4等の表示画面上でエラー発生位置を容易に特定できるようにしている。エラーが発生したことを検知するには、ナットランナー2における上記の報知手段(締付条件を満たさなかった旨を報知する)の作動時に発せられる信号をコントローラー1に送信すればよい。タブレット端末4等の表示画面4bでは、受信した報知手段作動時の信号と、ナットランナー2の位置情報(順番)とをリンクさせて管理、表示させればよい。予め付与された番号は、ボルト及びナットの締付作業を行う順番であってもよい。
図17に示す例では、45番目と63番目に締付作業を行った位置でエラーが発生している。
この
図17に示す例は、上記の測距部56を用いる場合に適用できるのはもちろんのこと、カメラ撮影及びマーキングソケットを用いる場合にも適用できる。
なお、エラーの検知は、ナットランナー2の報知手段による報知を作業員が確認し、作業員が、自身の所持する通信端末からコントローラー1やタブレット端末4にエラー情報を送信できるようにしてもよい。
【0088】
本変形例におけるガイド機構50は、保持部53で保持したナットランナー2を、橋桁BGの上フランジ21の上面に沿って移動させることができる。これにより、上フランジ21の上面における第二添接板23に設けられたボルト及びナットの締付作業を、ガイド機構50でガイドしながら行うことができる。
【0089】
以上のような本変形例によれば、格子状に配置されたナット及びボルト(又は貫通孔)の位置に合わせてナットランナー2を縦方向及び横方向に移動させやすくなるので、ナット締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
また、ガイド機構50は、橋桁BGに対して着脱自在であるため、すぐに隣の作業場所に持ち運んで移動することができるので、全体的な工期の短縮にも貢献できる。
【0090】
なお、本変形例におけるガイド機構50は、橋桁BGの上面側に設けられるものとしたが、下面側に設けられてもよい。ガイド機構50が、橋桁BGの下面側に設けられる場合は、付勢部54は定荷重バネであってもよいし、例えばナットランナー2を上方に向けて付勢するコイルバネなどの他の付勢手段でもよい。付勢部54の取付位置についても適宜変更してよいものとする。つまり、ガイド機構50が、橋桁BGの下面側に設けられる場合は、ナットランナー2による締付作業を上向き行う必要があるので、上向きの締付作業を行う際にサポートしやすい位置に付勢部54を設けるようにする。
【0091】
〔変形例4〕
本変形例においてボルト及びナットの締付作業を行うナットランナー2は、
図18(a),(b)に示すように、橋桁BGの上面側に設けられたガイド機構60により縦方向(橋桁BGの長さ方向に沿う方向)及び横方向(橋桁BGの幅方向)にスライド移動可能に保持されている。
なお、本変形例においては、橋桁BGは箱桁とされており、互いに間隔を空けて配置された複数の橋桁BG間に、鉛直及び水平方向にブレース材25が架け渡されて設けられている。各ブレース材25は、橋桁BGに固定されたガセットプレート26に対してボルト及びナットによって固定され、当該ボルト及びナットの締付作業は、ガイド機構60によりスライド移動可能に保持されたナットランナー2によって行われる。また、上記の実施形態及び各変形例と同様に、橋桁BG同士を長さ方向に連結する場合もナットランナー2によってボルト及びナットの締付作業が行われることは言うまでもない。
【0092】
本変形例のガイド機構60は、ナットランナー2を保持して、縦方向及び横方向の移動をガイドするガイド装置60であって、可動マスト61と、屈曲式回転アーム62と、ロープ63と、付勢部64と、を備える。図示はしないが、ナットランナー2の被保持部2aには、上記の位置決め部(クロスレーザーマーカー)が設けられているものとする。
【0093】
可動マスト61は、マスト本体61aと、走行部61bと、軌条61cと、複数の受梁61dと、を有する。
マスト本体61aは、円柱状に形成されている。
走行部61b、軌条61c、複数の受梁61dは、マスト本体61aを縦方向及び横方向に移動させるための可動機構として機能する。
すなわち、複数の受梁61dは、一方の橋桁BGの上面に、互いに間隔を空けて、かつ、橋桁BGの長さ方向と直交する方向に配置されている。これら複数の受梁61dは、例えばブルマン等の留付金具によって橋桁BGに着脱自在に取り付けられている。そのため、複数の受梁61dの位置移動を容易に行うことができる。なお、本変形例においては、複数の受梁61d(ひいてはガイド機構60)は、一方の橋桁BGの上面に設けられるものとしたが、他方の橋桁BGの上面に設けられるものとしてもよいし、双方の橋桁BGの上面にそれぞれ設けられてもよい。
軌条61cは、複数の受梁61d間に架け渡されており、例えばブルマン等の留付金具によって複数の受梁61dに着脱自在に取り付けられている。そのため、軌条61cの位置移動を容易に行うことができ、橋桁BGの一側縁にマスト本体61aを配置したり、橋桁BGの他側縁にマスト本体61aを配置したりすることができる。
走行部61bは、マスト本体61aの下端部に一体的に設けられており、筒状に形成されて筒内部に軌条61cが通される。これにより、走行部61b(すなわち、マスト本体61a)は、軌条61cの長さ方向に沿って、かつ、複数の受梁61d同士の間隔の範囲内で移動可能となっている。なお、図示はしないが、走行部61bは、軌条61cに接する電動の走行ローラーを有していてもよく、その場合はコントローラーによって遠隔操作を行うことができる。
【0094】
屈曲式回転アーム62は、基端部が可動マスト61に対して当該可動マスト61の軸回りに回転可能に設けられたアームであり、回転保持部62aと、第一アーム62bと、第二アーム62cと、を有する。
回転保持部62aは、屈曲式回転アーム62の基端部に位置し、可動マスト61の上端部を保持する部位であり、可動マスト61の軸回りに360度回転可能となっている。また、回転保持部62aは、可動マスト61におけるマスト本体61aの長さ方向に沿って移動可能となっている。このような回転保持部62aの動作は、図示しないコントローラーを用いて電動操作によって行われるものとしてもよいし、手動操作によって行われるものとしてもよい。
第一アーム62bと第二アーム62cは、セットで用いられて、第一アーム62bと第二アーム62cの連結部において水平回転可能に構成されている。すなわち、第一アーム62bは、基端部が回転保持部62aに一体的に設けられ、先端部には第二アーム62cが回転可能に連結されている。第二アーム62cは、基端部が第一アーム62bに回転可能に連結され、先端部の上面には、ロープ63をガイドする転向シーブ62dが設けられている。互いに回転可能に連結された第一アーム62b及び第二アーム62cは、中央部が、くの字に屈曲する一本のアームとして構成されることとなる。つまり、屈曲式回転アーム62は、ナットランナー2を、第一アーム62b(回転保持部62a)が可動マスト61の軸回りに回転する範囲と、第二アーム62cが第一アーム62bに対して回転する範囲で移動させることができる。
第一アーム62bと第二アーム62cは、ガイド付き回転軸62eによって回転可能に連結されている。ガイド付き回転軸62eは、上端部が、ロープ63を通せるガイド部となっている。
【0095】
ロープ63は、基端部が、付勢部64の先端部に設けられた保持部64aに連結されており、先端部がナットランナー2の被保持部2aに取り付けられている。すなわち、ナットランナー2は、このロープ63を通じて付勢部64の保持部64aに保持されている。また、ロープ63は、付勢部64の保持部64aに対して自由度が高いため、ナットランナー2を移動させやすい。
なお、ロープ63は、例えばナイロン被覆ワイヤーが用いられている。
【0096】
付勢部64は、第一アーム62bにおける基端部の上面に設けられている。このような付勢部64は、ロープ63を通じて、ナットランナー2の被保持部2aに対し、第一アーム62bの基端部に向かう方向(ロープ63の下端部に位置するナットランナー2にとっては重力方向とは反対の方向)に作用する付勢力を付与する。この付勢力は、ナットランナー2を重力方向とは反対の方向に戻すか、もしくは釣り合うか、若干ずつ重力方向に移動する程度のいずれかに設定されている。
本変形例における付勢部64は、巻き取り式の定荷重バネが用いられており、帯状のバネの先端部における保持部64aに、ロープ63の基端部が連結されている。
このような付勢部64をガイド機構60が備えることにより、重量物であるナットランナー2は、常に付勢部64の付勢力によって上方に移動して元の位置に戻ろうとすることになるので、ボルト及びナットの締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
【0097】
本変形例におけるガイド機構60は、付勢部64で保持されてロープ63で吊られた状態のナットランナー2を、ロープ63の届く範囲内で自由に移動させることができる。これにより、橋桁BG同士を長さ方向に連結する場合の添接板におけるボルト及びナットの締付作業や、各ブレース材25とガセットプレート26とを連結する場合のボルト及びナットの締付作業を、ガイド機構60でガイドしながら行うことができる。
なお、ナットランナー2には、隣り合うボルト又はナットに接する反力金具を装着し、隣り合うボルト又はナットに反力金具を当接させて、ナットランナー2による締付力を向上させてもよい。
【0098】
以上のような本変形例によれば、格子状に配置されたナット及びボルト(又は貫通孔)の位置に合わせてナットランナー2を縦方向及び横方向に移動させやすくなるだけでなく、橋桁BGの周囲にあるナット及びボルトの位置に合わせてナットランナー2を移動させやすくなるので、ナット締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。さらに、屈曲式回転アーム62を採用し、可動マスト61を中心として動作させるので、狭い作業スペースの場合でも、ナットランナー2の移動を、作業員による軽微な回転操作で速やかに行うことができる。
また、ガイド機構60は、橋桁BGに対して着脱自在であるため、すぐに隣の作業場所に持ち運んで移動することができるので、全体的な工期の短縮にも貢献できる。
【0099】
なお、本変形例において第一アーム62bの長さは約1.3mとされ、第二アーム62cの長さは約1.0mとされている。定荷重バネである付勢部64の帯状のバネは、その作動距離が1.2m程度とされている。付勢部64に連結されたロープ63の先端部には、ロープ63の長さ調整が可能な長さ調整装置(例えば小型のチェーンブロック)が設けられてもよい。第一アーム62b、第二アーム62c、付勢部64の寸法設定は、以上の数値に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更であるが、付勢部64の作動距離を長くすることで作業効率を向上できる。
【0100】
図19に示す屈曲式回転アーム620は、上記の屈曲式回転アーム62の他の構成例であり、本変形例においては、上記の屈曲式回転アーム62に代えて、
図19に示す屈曲式回転アーム620を用いることができる。
図19の屈曲式回転アーム620は、第二アーム622が、第一アーム621に対して伸縮可能に連結されている。より詳細に説明すると、第一アーム621は筒状に形成されており、第二アーム622は、第一アーム621の筒内部に挿入されて、第一アーム621の長さ方向に沿って伸縮する。これに合わせて、付勢部64における帯状のバネの長さ(作動距離)も長く設定されており、作業効率の向上に貢献できるようになっている。
また、第二アーム622は、第一アーム621の筒内部に挿入される側の第一部位622aと、先端部側の第二部位622bと、を有しており、第一部位622aと第二部位622bの連結部において水平回転可能に構成されている。すなわち、第一部位622aは、基端部が第一アーム621の筒内部に挿入され、先端部には第二部位622bが回転可能に連結されている。第二部位622bは、基端部が第一部位622aに回転可能に連結され、先端部の上面には、ロープ63をガイドする転向シーブ62dが設けられている。互いに回転可能に連結された第一部位622a及び第二部位622bは、中央部が、くの字に屈曲する一本のアーム(第二アーム622)として構成されることとなる。なお、第一部位622aと第二部位622bは、ガイド付き回転軸62eによって回転可能に連結されている。ガイド付き回転軸62eは、上端部が、ロープ63を通せるガイド部となっている。
このような屈曲式回転アーム620によれば、第二アーム621が、第一アーム621に対して伸縮し、かつ、水平回転可能に構成されているので、平面的な作業範囲の拡大に貢献することができる。
【0101】
〔変形例5〕
本変形例においてボルト及びナットの締付作業を行うナットランナー2は、
図20(a),(b)に示すように、橋桁BGの上面側に設けられたガイド機構70により縦方向(橋桁BGの長さ方向に沿う方向)及び横方向(橋桁BGの幅方向)にスライド移動可能に保持されている。
なお、本変形例においては、橋桁BGは箱桁とされており、互いに間隔を空けて配置された複数の橋桁BG間に、鉛直及び水平方向にブレース材25が架け渡されて設けられている。各ブレース材25は、橋桁BGに固定されたガセットプレート26に対してボルト及びナットによって固定され、当該ボルト及びナットの締付作業は、ガイド機構60によりスライド移動可能に保持されたナットランナー2によって行われる。また、上記の実施形態及び各変形例と同様に、橋桁BG同士を長さ方向に連結する場合もナットランナー2によってボルト及びナットの締付作業が行われることは言うまでもない。
【0102】
本変形例のガイド機構70は、ナットランナー2を保持して、縦方向及び横方向の移動をガイドするガイド装置70であって、可動マスト71と、回転アーム72と、ロープ73と、付勢部74と、を備える。図示はしないが、ナットランナー2の被保持部2aには、上記の位置決め部(クロスレーザーマーカー)が設けられているものとする。
【0103】
可動マスト71は、マスト本体71aと、走行部71bと、軌条71cと、複数の受梁71dと、を有する。
マスト本体71aは、円柱状に形成されている。
走行部71b、軌条71c、複数の受梁71dは、マスト本体71aを縦方向及び横方向に移動させるための可動機構として機能する。
すなわち、複数の受梁71dは、一方の橋桁BGの上面と他方の橋桁BGの上面との間に架け渡されるとともに、互いに間隔を空けて配置されている。これら複数の受梁71dは、例えばブルマン等の留付金具によって双方の橋桁BGに着脱自在に取り付けられている。そのため、複数の受梁71dの位置移動を容易に行うことができる。
軌条71cは、複数の受梁71d間に架け渡されており、例えばブルマン等の留付金具によって複数の受梁71dに着脱自在に取り付けられている。そのため、軌条71cの位置移動(横行)を容易に行うことができ、一方の橋桁BG側にマスト本体71aを配置したり、他方の橋桁BG側にマスト本体71aを配置したりすることができる。つまり、可動マスト71の可動範囲が広く設定されている。
走行部71bは、マスト本体71aの下端部に一体的に設けられており、筒状に形成されて筒内部に軌条71cが通される。これにより、走行部71b(すなわち、マスト本体71a)は、軌条71cの長さ方向に沿って、かつ、複数の受梁71d同士の間隔の範囲内で移動可能となっている。なお、図示はしないが、走行部71bは、軌条71cに接する電動の走行ローラーを有していてもよく、その場合はコントローラーによって遠隔操作を行うことができる。
【0104】
回転アーム72は、基端部が可動マスト71に対して当該可動マスト71の軸回りに回転可能に設けられたアームであり、回転保持部72aと、アーム本体72bと、を有する。
回転保持部72aは、回転アーム72(アーム本体72b)の基端部に位置し、可動マスト71の上端部を保持する部位であり、可動マスト71の軸回りに360度回転可能となっている。また、回転保持部72aは、可動マスト71におけるマスト本体71aの長さ方向に沿って移動可能となっている。このような回転保持部72aの動作は、図示しないコントローラーを用いて電動操作によって行われるものとしてもよいし、手動操作によって行われるものとしてもよい。
アーム本体72bは、基端部が回転保持部72aに一体的に設けられ、先端部の上面には、ロープ73をガイドする転向シーブ72dが設けられている。
回転アーム62は、ナットランナー2を、アーム本体72b(回転保持部72a)が可動マスト71の軸回りに回転する範囲で移動させることができる。
【0105】
ロープ73は、基端部が、付勢部74の先端部に設けられた保持部74aに連結されており、先端部がナットランナー2の被保持部2aに取り付けられている。すなわち、ナットランナー2は、このロープ73を通じて付勢部74の保持部74aに保持されている。また、ロープ73は、付勢部74の保持部74aに対して自由度が高いため、ナットランナー2を移動させやすい。
なお、ロープ73は、例えばナイロン被覆ワイヤーが用いられている。
【0106】
付勢部74は、アーム本体72bにおける基端部の上面に設けられている。このような付勢部74は、ロープ73を通じて、ナットランナー2の被保持部2aに対し、第一アーム72bの基端部に向かう方向(ロープ73の下端部に位置するナットランナー2にとっては重力方向とは反対の方向)に作用する付勢力を付与する。この付勢力は、ナットランナー2を重力方向とは反対の方向に戻すか、もしくは釣り合うか、若干ずつ重力方向に移動する程度のいずれかに設定されている。
本変形例における付勢部74は、巻き取り式の定荷重バネが用いられており、帯状のバネの先端部における保持部74aに、ロープ73の基端部が連結されている。
このような付勢部74をガイド機構70が備えることにより、重量物であるナットランナー2は、常に付勢部74の付勢力によって上方に移動して元の位置に戻ろうとすることになるので、ボルト及びナットの締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
【0107】
本変形例におけるガイド機構70は、付勢部74で保持されてロープ73で吊られた状態のナットランナー2を、ロープ73の届く範囲内で自由に移動させることができる。これにより、橋桁BG同士を長さ方向に連結する場合の添接板におけるボルト及びナットの締付作業や、各ブレース材25とガセットプレート26とを連結する場合のボルト及びナットの締付作業を、ガイド機構70でガイドしながら行うことができる。
なお、ナットランナー2には、隣り合うボルト又はナットに接する反力金具を装着し、隣り合うボルト又はナットに反力金具を当接させて、ナットランナー2による締付力を向上させてもよい。
【0108】
以上のような本変形例によれば、格子状に配置されたナット及びボルト(又は貫通孔)の位置に合わせてナットランナー2を縦方向及び横方向に移動させやすくなるだけでなく、橋桁BGの周囲にあるナット及びボルトの位置に合わせてナットランナー2を移動させやすくなるので、ナット締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。さらに、回転アーム72を採用し、可動マスト71を中心として動作させるので、狭い作業スペースの場合でも、ナットランナー2の移動を、作業員による軽微な回転操作で速やかに行うことができる。
また、ガイド機構70は、橋桁BGに対して着脱自在であるため、すぐに隣の作業場所に持ち運んで移動することができるので、全体的な工期の短縮にも貢献できる。
さらに、本変形例の回転アーム72は、第一アームと第二アームとをセットで有して屈曲するタイプではなく、一本のアーム本体72bで構成されるため、シンプルな構成となっており、コスト面や操作性の面で有利となる。換言すれば、第一アームと第二アームとをセットで有して屈曲するタイプよりも作業範囲は限られたものとなるが、本変形例においては、可動マスト71の可動範囲が広く設定されているため、これにより、回転アーム72の作業範囲を補うことが可能となっている。
【0109】
なお、アーム本体72bの長さを1.8m程度まで伸ばし、付勢部74における帯状のバネの伸縮量を1.6mまで伸ばすことで、ナットランナー2の上下移動量を大きくする効果がある。
また、上記の回転アーム72に代えて、
図18に示す屈曲式回転アーム62や、
図19に示す屈曲式回転アーム620を用いてもよいものとする。
【0110】
〔変形例6〕
本変形例においてボルト及びナットの締付作業を行うナットランナー2は、
図21(a),(b)に示すように、橋桁BGの上面側に設けられたガイド機構80により縦方向(橋桁BGの長さ方向に沿う方向)及び横方向(橋桁BGの幅方向)にスライド移動可能に保持されている。
なお、本変形例においては、橋桁BGは箱桁とされており、互いに間隔を空けて配置された複数の橋桁BG間に、鉛直及び水平方向にブレース材25が架け渡されて設けられている。各ブレース材25は、橋桁BGに固定されたガセットプレート26に対してボルト及びナットによって固定され、当該ボルト及びナットの締付作業は、ガイド機構80によりスライド移動可能に保持されたナットランナー2によって行われる。また、上記の実施形態及び各変形例と同様に、橋桁BG同士を長さ方向に連結する場合もナットランナー2によってボルト及びナットの締付作業が行われることは言うまでもない。
【0111】
本変形例のガイド機構80は、ナットランナー2を保持して、縦方向及び横方向の移動をガイドするガイド装置80であって、可動マスト81と、回転アーム82と、ロープ83と、付勢部84と、移動用ワイヤー85と、通信部86と、を備える。図示はしないが、ナットランナー2の被保持部2aには、上記の位置決め部(クロスレーザーマーカー)が設けられているものとする。
【0112】
まず、移動用ワイヤー85は、橋桁BGの上面よりも上方の位置に、橋桁BGの長さ方向に沿って張られて設けられている。より詳細に説明すると、双方の橋桁BGの上方に、双方の橋桁BGの長さ方向に間隔を空けて、ワイヤー保持部85aが複数配置されており、これら複数のワイヤー保持部85a間に、移動用ワイヤー85が架け渡されている。なお、本変形例においては、2本の移動用ワイヤー85が、平面視において一方の橋桁BGと他方の橋桁BGとの間に収まる位置関係で配置されているが、一方の橋桁BGと他方の橋桁BGの外側に配置されてもよい。
複数のワイヤー保持部85aは、図示しない足場や防護柵等に設置されており、橋桁BGには設置されていないものとする。また、複数のワイヤー保持部85a間は10~15mの短いスパンとされており、撓みにくくなっている。
移動用ワイヤー85同士の間隔は、現場条件に応じて適宜変更可能である。
【0113】
可動マスト81は、マスト本体81aと、走行部81bと、移動フレーム81cと、を有しており、移動用ワイヤー85に沿って移動可能となっている。
マスト本体81aは、円柱状に形成されており、上方から下方に向かって伸びている。
走行部81b及び移動フレーム81cは、マスト本体81aを縦方向及び横方向に移動させるための可動機構として機能する。
すなわち、移動フレーム81cは、一方の移動用ワイヤー85と他方の移動用ワイヤー85との間に架け渡される複数の第一フレーム材81dと、複数の第一フレーム材81dの長さ方向両端部における下面側に一体的に設けられた複数の第二フレーム材81eと、を備える。複数の第二フレーム材81eは、複数の第一フレーム材81d間に架け渡されて、かつ、移動用ワイヤー85を間に挟むような位置関係で配置されている。すなわち、複数の第二フレーム材81eは、移動フレーム81cが移動用ワイヤー85に沿って移動する際のガイド兼振れ止めとして機能する。移動フレーム81cの移動は手動で行われるものとし、ナットランナー2による締付作業時には、ワイヤークリップ等によって仮固定を行うものとする。
走行部81bは、マスト本体81aの上端部に一体的に設けられており、移動フレーム81cにおける複数の第一フレーム材81d上を走行する走行ローラーを備えている。これにより、走行部81b(すなわち、マスト本体81a)は、複数の第一フレーム材81dの長さ方向に沿って移動可能となっている。なお、図示はしないが、走行部81bにおける走行ローラーは、手動操作でもよいし、コントローラーによって遠隔操作を行うこともできる。
【0114】
伸縮式回転アーム82は、基端部が可動マスト81に対して当該可動マスト81の軸回りに回転可能に設けられたアームであり、回転保持部82aと、第一アーム82bと、第二アーム82cと、を有する。
回転保持部82aは、伸縮式回転アーム82の基端部に位置し、可動マスト81の上端部を保持する部位であり、可動マスト81の軸回りに360度回転可能となっている。また、回転保持部82aは、可動マスト81におけるマスト本体81aの長さ方向に沿って移動可能となっている。このような回転保持部82aの動作は、図示しないコントローラーを用いて電動操作によって行われるものとしてもよいし、手動操作によって行われるものとしてもよい。
第一アーム82bと第二アーム82cは、セットで用いられて、第二アーム82cが、第一アーム82bに対して伸縮可能に連結されている。より詳細に説明すると、第一アーム82bは筒状に形成されており、第二アーム82cは、第一アーム82bの筒内部に挿入されて、第一アーム82bの長さ方向に沿って伸縮する。すなわち、第一アーム82bは、基端部が回転保持部82aに一体的に設けられ、先端部には第二アーム82cが伸縮可能に連結されている。第二アーム82cは、基端部が第一アーム82bに伸縮可能に連結され、先端部の上面には、ロープ83をガイドする転向シーブ82dが設けられている。
【0115】
ロープ83は、基端部が、付勢部84の先端部に設けられた保持部84aに連結されており、先端部がナットランナー2の被保持部2aに取り付けられている。すなわち、ナットランナー2は、このロープ83を通じて付勢部84の保持部84aに保持されている。また、ロープ83は、付勢部84の保持部84aに対して自由度が高いため、ナットランナー2を移動させやすい。
なお、ロープ83は、例えばナイロン被覆ワイヤーが用いられている。
【0116】
付勢部84は、第一アーム82bにおける基端部の上面に設けられている。このような付勢部84は、ロープ83を通じて、ナットランナー2の被保持部2aに対し、第一アーム82bの基端部に向かう方向(ロープ83の下端部に位置するナットランナー2にとっては重力方向とは反対の方向)に作用する付勢力を付与する。この付勢力は、ナットランナー2を重力方向とは反対の方向に戻すか、もしくは釣り合うか、若干ずつ重力方向に移動する程度のいずれかに設定されている。
本変形例における付勢部84は、巻き取り式の定荷重バネが用いられており、帯状のバネの先端部における保持部84aに、ロープ83の基端部が連結されている。
このような付勢部84をガイド機構80が備えることにより、重量物であるナットランナー2は、常に付勢部84の付勢力によって上方に移動して元の位置に戻ろうとすることになるので、ボルト及びナットの締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
【0117】
通信部86は、通信モジュールであり、走行部81bに設けられており、外部のコントローラーからの信号を受信して動作したり、ナットランナー2からのデータを受信してサーバー装置5に送信したりすることができる。
【0118】
本変形例におけるガイド機構80は、付勢部84で保持されてロープ83で吊られた状態のナットランナー2を、ロープ83の届く範囲内で自由に移動させることができる。これにより、橋桁BG同士を長さ方向に連結する場合の添接板におけるボルト及びナットの締付作業や、各ブレース材25とガセットプレート26とを連結する場合のボルト及びナットの締付作業を、ガイド機構80でガイドしながら行うことができる。
なお、ナットランナー2には、隣り合うボルト又はナットに接する反力金具を装着し、隣り合うボルト又はナットに反力金具を当接させて、ナットランナー2による締付力を向上させてもよい。
【0119】
以上のような本変形例によれば、格子状に配置されたナット及びボルト(又は貫通孔)の位置に合わせてナットランナー2を縦方向及び横方向に移動させやすくなるだけでなく、橋桁BGの周囲にあるナット及びボルトの位置に合わせてナットランナー2を移動させやすくなるので、ナット締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。さらに、伸縮式回転アーム82を採用し、可動マスト81を中心として動作させるので、狭い作業スペースの場合でも、ナットランナー2の移動を、作業員による軽微な回転操作で速やかに行うことができる。
また、ガイド機構80は、橋桁BGに対して着脱自在であるため、すぐに隣の作業場所に持ち運んで移動することができるので、全体的な工期の短縮にも貢献できる。さらに、本変形例のガイド機構80は、橋桁BG自体に設置する必要がないので、ガイド機構80のための設備の削減や簡素化を図ることができる。
また、複数の移動用ワイヤー85同士の設置間隔や、複数のワイヤー保持部85a同士の設置間隔(移動用ワイヤー85の長さ)は、橋梁形式や断面寸法に応じて柔軟に対応できるので、ガイド機構80の設置を簡易に行うことができる。
【0120】
〔変形例7〕
本変形例においてボルト及びナットの締付作業を行うナットランナー2は、
図22(a),(b)に示すように、橋桁BGの長さ方向端部同士が付き合わされる継手部の内部に設けられたガイド機構90により縦方向(橋桁BGの長さ方向に沿う方向)及び横方向(橋桁BGの幅方向)にスライド移動可能に保持されている。
なお、本変形例においては、橋桁BGは箱桁とされており、その内部においては、天面及び底面に、橋桁BGの長さ方向に沿って配置された複数のリブ27が一体形成されている。そして、橋梁の長さ方向一方の橋桁BGにおけるリブ27と、長さ方向他方の橋桁BGにおけるリブ27と、を連結することで橋桁BG同士を連結できるようになっている。リブ27同士の連結は、リブ27同士の両側面に跨る連結プレートCPを介してボルト及びナットの締付作業を行うことで連結できるようになっている。
【0121】
本変形例のガイド機構90は、箱桁である橋桁BGの内部において、ナットランナー2によってボルト及びナットの締付作業を行う場合に、ナットランナー2を保持して、縦方向及び横方向の移動をガイドするガイド装置90であって、可動支持フレーム91と、屈曲式回転アーム92と、を備える。図示はしないが、ナットランナー2の被保持部2aには、上記の位置決め部(クロスレーザーマーカー)が設けられているものとする。
なお、
図22において、ナットランナー2は概略表示するものとする。
【0122】
可動支持フレーム91は、上段支持梁91aと、下段支持梁91bと、上下連結フレーム91cと、スライドフレーム91dと、を有する。
上段支持梁91a及び下段支持梁91bは、箱桁である橋桁BGの左右の側壁間に架け渡されて設けられ、上下に間隔を空けて配置されている。上下連結フレーム91cは、上段支持梁91aと下段支持梁91bの長さ方向両端部間に架け渡されて、上段支持梁91a及び下段支持梁91bを連結している。
スライドフレーム91dは、上段支持梁91aと下段支持梁91bの間に架け渡され、スライダー91aを介して上段支持梁91a及び下段支持梁91bに設けられている。これにより、スライドフレーム91dは、上段支持梁91a及び下段支持梁91bの長さ方向に沿ってスライド移動可能となっている。本変形例においては、スライドフレーム91dは、左右に間隔を空けて二つ備えられており、これら二つのスライドフレーム91d間に、屈曲式回転アーム92が保持されている。
【0123】
屈曲式回転アーム92は、二つのスライドフレーム91d間に保持される筒状の第一アーム92aと、この第一アーム92aに対して伸縮可能に連結された第二アーム92bと、この第二アーム92bの先端部に対して回転可能に連結された第三アーム92cと、を有する。そして、第三アーム92cの先端部92dによってナットランナー2が保持されている。
第一アーム92aは、図示しないスライダーを介して二つのスライドフレーム91d間に設けられており、二つのスライドフレーム91dに対してスライド移動可能となっている。また、第一アーム92aは、橋桁BGの長さ方向に沿って配置されている。そして、第一アーム92aは、二つのスライドフレーム91dの長さ方向に沿って、かつ橋桁BGの長さ方向に沿ってスライド移動可能となっている。
第二アーム92bは、筒状に形成された第一アーム92aの筒内部に挿入されて、第一アーム92aの長さ方向に沿って伸縮する。
第三アーム92cは、第二アーム92bとの連結部において鉛直回転可能に構成されている。すなわち、第二アーム92bは、基端部が第一アーム92aの筒内部に挿入され、先端部には第三アーム92cが回転可能に連結されている。第三アーム92cは、基端部が第二アーム92bに回転可能に連結され、先端部92dの側面にナットランナー2が設けられている。第三アーム92cの先端部92dは、第三アーム92cの基端部側に対して旋回可能に構成されており、ナットランナー2を首振りできるようになっている。
このような屈曲式回転アーム92によれば、第一アーム92aがスライドフレーム91dに対してスライド移動し、第二アーム92bが第一アーム92aに対して伸縮し、第三アーム92cが第二アーム92bに対して鉛直回転可能に構成され、第三アーム92cの先端部92dが旋回するので、作業範囲の拡大に貢献することができる。
【0124】
本変形例におけるガイド機構90は、ナットランナー2を、屈曲式回転アーム92の届く範囲内で自由に移動させることができる。これにより、橋桁BG同士を長さ方向に連結する場合の連結プレートCPにおけるボルト及びナットの締付作業や、その他のボルト及びナットの締付作業を、ガイド機構90でガイドしながら行うことができる。
なお、ナットランナー2には、隣り合うボルト又はナットに接する反力金具を装着し、隣り合うボルト又はナットに反力金具を当接させて、ナットランナー2による締付力を向上させてもよい。
【0125】
以上のような本変形例によれば、格子状に配置されたナット及びボルト(又は貫通孔)の位置に合わせてナットランナー2を縦方向及び横方向に移動させやすくなるだけでなく、橋桁BGの周囲にあるナット及びボルトの位置に合わせてナットランナー2を移動させやすくなるので、ナット締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。さらに、作業範囲の自由度が高い屈曲式回転アーム92を採用するので、狭い作業スペースの場合でも、ナットランナー2の移動を、作業員による軽微な回転操作で速やかに行うことができる。
また、ガイド機構90は、橋桁BGに対して着脱自在であるため、すぐに隣の作業場所に持ち運んで移動することができるので、全体的な工期の短縮にも貢献できる。
【0126】
〔変形例8〕
本変形例においてボルト及びナットの締付作業を行うナットランナー2は、
図23(a),(b)に示すように、橋桁BGの長さ方向端部同士が付き合わされる継手部の外周面に設けられたガイド機構100により縦方向(橋桁BGの長さ方向に沿う方向)及び横方向(橋桁BGの幅方向)にスライド移動可能に保持されている。
なお、本変形例においては、橋桁BGは例えばトラス桁を構成する小断面の箱桁とされており、継手部の外周面における四面(上面、下面、左右の側面)のそれぞれに連結プレートCPが設けられている。そして、橋桁BGの長さ方向端部同士は、継手部の外周面に跨る連結プレートCPを介してボルト及びナットの締付作業を行うことで連結できるようになっている。
【0127】
本変形例のガイド機構100は、箱桁である橋桁BGの内部において、ナットランナー2によってボルト及びナットの締付作業を行う場合に、ナットランナー2を保持して、縦方向及び横方向の移動をガイドするガイド装置100であって、支持フレーム101と、伸縮式アーム102と、を備える。図示はしないが、ナットランナー2の被保持部2aには、上記の位置決め部(クロスレーザーマーカー)が設けられているものとする。
なお、
図23において、ナットランナー2は概略表示するものとする。
【0128】
支持フレーム101は、上段支持梁101aと、下段支持梁101bと、ガイドレール101cと、を有する。
上段支持梁101a及び下段支持梁101bは、橋桁BGの長さ方向と直交し、かつ橋桁BGを上下から挟み込むようにして配置されており、例えば留付金具によって橋桁BGの上面及び下面のそれぞれに留め付けられている。また、これら上段支持梁101a及び下段支持梁101bの長さ方向両端部は、橋桁BGの左右側面よりも外方に突出している。
ガイドレール101cは、上下に伸びる二本のレール材と左右に伸びる二本のレール材によって矩形枠状に形成されており、橋桁BGの周囲を取り囲むようにして配置されている。また、このガイドレール101cは、上段支持梁101a及び下段支持梁101bの長さ方向両端部に連結されている。
支持フレーム101は、継手部から離間した位置に配置されており、その位置から継手部に向かって伸縮式アーム102が伸びているような状態となっている。
【0129】
伸縮式アーム102は、矩形枠状に形成されたガイドレール101cにおける四本のレール材ごとに具備されており、各々の伸縮式アーム102は、各々のレール材の長さ方向に沿ってスライド移動可能となっている。
このような伸縮式アーム102は、筒状の第一アーム102aと、この第一アーム102aに対して伸縮可能に連結された第二アーム102bと、を有する。そして、第二アーム102cの先端部によってナットランナー2が保持されている。
第一アーム102aは、図示しないスライダーを介してガイドレール101cのレール材に設けられている。また、第一アーム102aは、橋桁BGの長さ方向に沿って配置されている。
第二アーム102bは、筒状に形成された第一アーム102aの筒内部に挿入されて、第一アーム102aの長さ方向に沿って伸縮する。第二アーム102bの先端部における橋桁BG側面にナットランナー2が取り付けられている。なお、ナットランナー2は、連結プレートCPに対して進退可能となっていてもよい。また、第二アーム102bの先端部は、第二アーム102bの基端部側に対して旋回可能に構成されて、ナットランナー2を首振りできるようになっていてもよい。
このような伸縮式アーム102によれば、第一アーム102aがガイドレール101cに沿ってスライド移動し、第二アーム102bが第一アーム102aに対して伸縮するので、作業範囲の拡大に貢献することができる。
【0130】
本変形例におけるガイド機構100は、ナットランナー2を、伸縮式アーム102の届く範囲内で自由に移動させることができる。これにより、橋桁BG同士を長さ方向に連結する場合の連結プレートCPにおけるボルト及びナットの締付作業や、その他のボルト及びナットの締付作業を、ガイド機構100でガイドしながら行うことができる。
なお、ナットランナー2には、隣り合うボルト又はナットに接する反力金具を装着し、隣り合うボルト又はナットに反力金具を当接させて、ナットランナー2による締付力を向上させてもよい。
【0131】
以上のような本変形例によれば、格子状に配置されたナット及びボルト(又は貫通孔)の位置に合わせてナットランナー2を縦方向及び横方向に移動させやすくなるだけでなく、橋桁BGの周囲にあるナット及びボルトの位置に合わせてナットランナー2を移動させやすくなるので、ナット締付作業を行う作業員の負担を軽減することができる。
さらに、橋桁BGの周囲を取り囲むようにして配置されるガイドレール101cを採用するので、橋桁BGの長さ方向端部同士が付き合わされる継手部の外周面に亘って満遍なくナットランナー2を移動させることができる。
また、ガイド機構90は、橋桁BGに対して着脱自在であるため、すぐに隣の作業場所に持ち運んで移動することができるので、全体的な工期の短縮にも貢献できる。
【0132】
なお、本変形例におけるガイドレール101cは矩形枠状に形成されるものとしたが、これに限られるものではなく、例えば円環状に形成されてもよい。この場合、ナットランナー2を円周方向に移動させることができるので、ナットランナー2の使用数を極力減らすことができる。
【符号の説明】
【0133】
100 ボルト締付管理システム
1 コントローラー
11 制御部
12 記憶部
121 作業履歴テーブル
13 操作部
14 表示部
15 通信部
16 計時部
2 ナットランナー
3 バーコードリーダー
4 タブレット端末
5 サーバー装置
6 ガイド機構
BC バーコード