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  • 特許-基地局装置、制御方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】基地局装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/14 20090101AFI20241213BHJP
   H04W 60/04 20090101ALI20241213BHJP
   H04W 48/18 20090101ALI20241213BHJP
   H04W 36/16 20090101ALI20241213BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20241213BHJP
【FI】
H04W36/14
H04W60/04
H04W48/18 111
H04W36/16
H04W88/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023147078
(22)【出願日】2023-09-11
【審査請求日】2024-02-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 洸
【審査官】久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】Huawei, HiSilicon, CMCC, China Telecom, China Unicom, LG Uplus,EPS fallback enhancements for UEs in IDLE/INACTIVE,3GPP TSG RAN WG2 #116-e R2-2110485,2021年10月22日
【文献】vivo, China Telecom, CMCC, SoftBank, China Unicom, Vodafone, Ericsson,Early measurement for EPS Fallback,3GPP TSG RAN WG2 #118-e R2-2205054,2022年04月25日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1無線通信システムの基地局装置からのハンドオーバ先となる第2無線通信システムの基地局装置であって、
前記第1無線通信システムに接続中の端末装置が前記第1無線通信システムから前記第2無線通信システムへハンドオーバして音声通信を行うためのハンドオーバ要求を、前記第2無線通信システムの移動管理装置から受信すると、前記ハンドオーバ要求に従ってハンドオーバ処理を行う第1処理手段と、
前記ハンドオーバ処理が完了すると、前記移動管理装置によって管理される、前記端末装置の位置登録エリアを更新する更新処理を行う第2処理手段と、
前記更新処理が行われている間に前記第2無線通信システムにおける前記端末装置のハンドオーバのための測定設定が前記端末装置へ送信されないように、前記移動管理装置から受信した前記ハンドオーバ要求に対する応答を前記移動管理装置へ送信する際に、前記測定設定を含めずに当該応答を前記移動管理装置へ送信する通信制御手段と、
を備える、基地局装置。
【請求項2】
前記通信制御手段は、前記更新処理の完了後に、前記第2無線通信システムにおける前記端末装置のハンドオーバを実行可能にするためのメッセージを前記端末装置へ送信する、請求項に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記通信制御手段は、前記更新処理の完了後に、前記測定設定を含むメッセージを前記端末装置へ送信する、請求項に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記通信制御手段は、前記更新処理の完了後に、前記音声通信に用いられるベアラを確立するためのベアラ確立要求を前記移動管理装置から受信すると、前記測定設定を含むメッセージを前記端末装置へ送信する、請求項に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記通信制御手段は、前記測定設定を含む前記メッセージとして、前記測定設定を含む無線リソース制御(RRC)接続再設定メッセージを前記端末装置へ送信する、請求項に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記第1無線通信システムはNRシステムであり、前記第2無線通信システムはLTEシステムである、請求項1又は2に記載の基地局装置。
【請求項7】
第1無線通信システムの基地局装置からのハンドオーバ先となる第2無線通信システムの基地局装置の制御方法であって、
前記第1無線通信システムに接続中の端末装置が前記第1無線通信システムから前記第2無線通信システムへハンドオーバして音声通信を行うためのハンドオーバ要求を、前記第2無線通信システムの移動管理装置から受信すると、前記ハンドオーバ要求に従ってハンドオーバ処理を行う工程と、
前記ハンドオーバ処理が完了すると、前記移動管理装置によって管理される、前記端末装置の位置登録エリアを更新する更新処理を行う工程と、
前記更新処理が行われている間に前記第2無線通信システムにおける前記端末装置のハンドオーバのための測定設定が前記端末装置へ送信されないように、前記移動管理装置から受信した前記ハンドオーバ要求に対する応答を前記移動管理装置へ送信する際に、前記測定設定を含めずに当該応答を前記移動管理装置へ送信する工程と、
を含む、制御方法。
【請求項8】
請求項に記載の制御方法を基地局装置のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム(移動体通信システム)における基地局装置、制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))の第5世代(5G)規格(NR(New Radio)規格とも称される。)の無線通信システム(移動体通信システム)における音声通信サービスの提供方式の1つとして、EPS(Evolved Packet System)フォールバック方式が規定されている。EPSフォールバック方式では、NR規格の無線通信システム(NRシステム又は5G NRシステム)で待ち受け又は通信中の端末を、LTE(Long Term Evolution)/LTE Advanced規格の無線通信システム(LTEシステム)へハンドオーバさせ、LTEシステムにおいて音声通信サービスを提供する。なお、NRシステムは5Gシステム(5GS)とも称され、LTEシステムはEPSとも称される。
【0003】
EPSフォールバック方式では、NRシステムからLTEシステムへのハンドオーバ(HO)処理の完了後に、端末の位置登録エリアの管理をNRシステムからLTEシステムへ移す必要がある。このため、HO処理の完了後に、端末の位置登録エリア(トラッキングエリア)を更新するトラッキングエリア更新(TAU:Tracking Area Update)処理が行われる(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】清水, 阿部, 宮崎, 小原, 「5G SA方式での音声通話を実現するコアネットワーク技術概要」, NTT DOCOMOジャーナル, Vol.30, No.4, 2023年1月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の方式では、通常、NRシステムからLTEシステムへのHO処理の完了直後から、LTEシステムにおける端末の次のHO処理(例えば、受信品質の低下に伴うセル間のHO処理)を行うことが可能になる。しかし、TAU処理が行われている間に、LTEシステムにおいて端末の次のHO処理が開始されると、当該HO処理とTAU処理との競合が生じる。その結果、TAU処理を完了できなくなり、音声呼の確立が失敗することになる。
【0006】
そこで、本発明は、第1無線通信システム(NRシステム)から第2無線通信システム(LTEシステム)へ端末装置の接続先を切り替えて音声通信サービスを提供する際に、処理競合の発生を防止する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る基地局装置は、第1無線通信システムの基地局装置からのハンドオーバ先となる第2無線通信システムの基地局装置であって、前記第1無線通信システムに接続中の端末装置が前記第1無線通信システムから前記第2無線通信システムへハンドオーバして音声通信を行うためのハンドオーバ要求を、前記第2無線通信システムの移動管理装置から受信すると、前記ハンドオーバ要求に従ってハンドオーバ処理を行う第1処理手段と、前記ハンドオーバ処理が完了すると、前記移動管理装置によって管理される、前記端末装置の位置登録エリアを更新する更新処理を行う第2処理手段と、前記更新処理が行われている間に前記第2無線通信システムにおける前記端末装置のハンドオーバのための測定設定が前記端末装置へ送信されないように、前記移動管理装置から受信した前記ハンドオーバ要求に対する応答を前記移動管理装置へ送信する際に、前記測定設定を含めずに当該応答を前記移動管理装置へ送信する通信制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1無線通信システム(NRシステム)から第2無線通信システム(LTEシステム)へ端末装置の接続先を切り替えて音声通信サービスを提供する際に、処理競合の発生を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】通信システムの構成例を示す図。
図2】基地局装置(eNB)のハードウェア構成例を示すブロック図。
図3】基地局装置(eNB)の機能構成例を示すブロック図。
図4】通信システムにおいて実行される処理のシーケンスの例を示すシーケンス図。
図5】通信システムにおいて実行される処理のシーケンスの例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<通信システムの構成>
図1は、本開示の実施形態に係る通信システムの構成例を示す。本実施形態では、第1無線通信システムから第2無線通信システムへ端末装置の接続先を切り替えて音声通信サービスを提供する通信システムについて説明する。第1無線通信システム及び第2無線通信システムは、それぞれ異なる無線通信技術(RAT)に対応するセルラ通信システムである。本実施形態では、一例として、第1無線通信システムは、3GPPのNR規格(5G規格)に従うセルラ通信システム(NRシステム)で構成される。また、第2無線通信システムは、3GPPのLTE/LTE Advanced規格に従うセルラ通信システム(LTEシステム)で構成される。
【0012】
NRシステム20は、基地局装置(gNB)21と、コアネットワーク200とを含む。コアネットワーク200は、端末装置のモビリティ管理を行う移動管理装置としてAMF(Access and Mobility Management Function)25を含む。なお、コアネットワーク200は5GC(5G Core)とも称される。コアネットワーク200は、インターネット等のデータネットワーク40に接続されている。
【0013】
LTEシステム30は、基地局装置(eNB)31と、コアネットワーク300とを含む。コアネットワーク300は、端末装置のモビリティ管理を行う移動管理装置としてMME(Mobility Management Entity)35を含む。なお、コアネットワーク300はEPC(Evolved Packet Core)とも称される。コアネットワーク300は、データネットワーク40に接続されている。
【0014】
ユーザ装置(UE)10は、NR規格のRAT及びLTE/LTE Advanced規格のRATに対応している端末装置(無線端末)であり、例えば、スマートフォン又はタブレット端末等で構成される。UE10は、NRシステム20のgNB21に対して無線アクセスを行うことで、gNB21及びコアネットワーク200を介してデータネットワーク40にアクセス可能である。また、UE10は、LTEシステム30のeENB31に対して無線アクセスを行うことで、eNB31及びコアネットワーク300を介してデータネットワーク40にアクセス可能である。
【0015】
本実施形態の通信システムにおいて、端末装置(UE10)に対する音声通信サービスの提供は、LTEシステム30によって行われる。このため、NRシステム20で待ち受け中又は通信中の端末装置に対して音声通信サービスの提供を開始する際には、NRシステム20からLTEシステム30へ端末装置の接続先の切り替え(ハンドオーバ)を行う必要がある。NRシステム20からLTEシステム30へのこのような切り替えは、上述のように、EPSフォールバックとも称される。
【0016】
本実施形態では、通信システムにおいて、gNB21のセルとeNB31のセルとが重なり合っているエリアにUE10が位置している状態で、UE10に対して音声通信サービスを提供する例について説明する。
【0017】
<基地局装置(eNB)の構成>
図2は、本実施形態に係る、第2無線通信システム(LTEシステム30)の基地局装置(eNB31)のハードウェア構成例を示す。eNB31は、1つ以上のプロセッサ311、ROM312、RAM313、HDD等の記憶装置(ストレージ)314、及び通信デバイス315を備える。
【0018】
eNB31では、例えばROM312、RAM313及びストレージ314のいずれかに格納された、後述するeNB31の各機能を実現するプログラムが、CPU等のプロセッサ311によって実行される。なお、プロセッサ311は、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサによって置き換えられてもよい。通信デバイス315は、プロセッサ311による制御下で、外部装置(端末装置、コアネットワーク300のネットワークノード等)との通信を行うための通信インタフェースである。通信デバイス315は、eNB31によって形成されるセル内の端末装置(無線端末)との無線通信のための無線通信インタフェースを含む。eNB31は、それぞれ接続先が異なる複数の通信デバイス315を有していてもよい。
【0019】
図3は、本実施形態に係る、第2無線通信システム(LTEシステム30)の基地局装置(eNB31)の機能構成(ソフトウェア構成)例を示す。eNB31は、ハンドオーバ(HO)処理部321、位置登録エリア更新(TAU)処理部322、及び通信制御部323を有する。eNB31のこれらの機能ユニットは、例えばROM312、RAM313及びストレージ314のいずれかに格納されたプログラムをプロセッサ311が実行することによって、eNB31において実現される。
【0020】
HO処理部321は、eNB31のセル内の端末装置(UE10)のハンドオーバ(HO)処理を行うように構成される。本実施形態では、HO処理部321は、NRシステム20に接続中の端末装置(UE10)がNRシステム20からLTEシステム30へハンドオーバして音声通信を行うためのハンドオーバ(HO)要求をMME35から受信すると、HO要求に従ってHO処理を行う。
【0021】
TAU処理部322は、MME35によって管理されている、eNB31のセル内の端末装置(UE10)の位置登録エリア(トラッキングエリア)を更新する更新処理(TAU処理)を行うように構成される。本実施形態では、TAU処理部322は、端末装置(UE10)が音声通信を行うためのNRシステム20からLTEシステム30へのHO処理が完了すると、MME35によって管理される、端末装置(UE10)のTAU処理を行う。
【0022】
通信制御部323は、通信デバイス315による通信を制御するように構成される。例えば、通信制御部323は、HO処理部321によるHO処理、及びTAU処理部322によるTAU処理において行われる通信を制御する。本実施形態では、後述するように、通信制御部323は、TAU処理が行われている間にLTEシステム30における端末装置(UE10)のハンドオーバを抑制するように、端末装置(UE10)との通信を制御する。
【0023】
<処理手順>
図4は、通信システムにおいて実行される処理のシーケンスの例を示すシーケンス図であり、後述する本実施形態におけるシーケンス(図5)に対する比較例のシーケンスを示している。
【0024】
本例は、NRシステム20からLTEシステム30へUE10の接続先を切り替えて(即ち、ハンドオーバを行って)、LTEシステム30において音声通信サービスを提供する、EPSフォールバックの手順の例を示す。本例において、UE10は、NRシステム20で待ち受け中又は通信中の状態にあり、gNB21によって形成されるセル(NRセル)に在圏しているものとする。本例において、gNB21は、セル内のUE10に通信サービスを提供するサービング基地局である。
【0025】
UE10による発呼又はUE10に対する着呼が生じることで、NRシステム20において、UE10に対して音声呼を確立するための処理が開始される。S401で、UE10は、Measurement Report(測定報告)メッセージを、サービングgNB(gNB21)へ送信する。測定報告メッセージには、サービングセル(gNB21のセル)及び隣接LTEセルについての受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power)又は受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality)等の測定結果を示す情報が含まれる。gNB21は、測定報告メッセージに含まれる情報に基づいて、EPSフォールバックのためのハンドオーバ先となるLTEセルを決定する。本例では、eNB31のセルがハンドオーバ先として決定されるものとする。
【0026】
S402で、gNB21は、NRシステム20(NRセル)からLTEシステム30(LTE)へのUE10のHO処理の実行を要求するHandover Requiredメッセージを、AMF25へ送信する。Handover Requiredメッセージには、ハンドオーバ先のセル(本例では、eNB31のセル)のセルID等が含まれうる。
【0027】
Handover Requiredメッセージを受信したAMF25は、S403で、LTEシステム30におけるターゲットMMEを選択し、当該MMEに対して、UE10がハンドオーバすることを通知するForward Relocation Request(リロケーション転送要求)メッセージを送信する。本例では、MME35に対してForward Relocation Requestメッセージが送信されるものとする。Forward Relocation Requestメッセージを受信したMME35は、S404で、ハンドオーバ先のLTEセルに対応するeNB31へ、Handover Request(ハンドオーバ要求(HO要求))メッセージを送信する。
【0028】
MME35からHandover Requestメッセージを受信したeNB31は、受信した当該メッセージ(HO要求)に従って、UE10についてのHO処理を開始する。まずS405で、eNB31は、Handover Requestメッセージに対する応答として、Handover Request AcknowledgeメッセージをMME35へ送信する。Handover Request Acknowledgeメッセージには、Measurement Configuration(測定設定)が含められる。測定設定は、ハンドオーバ先のLTEシステム30におけるハンドオーバ(セル間のハンドオーバ等)のためにHandover Request Acknowledgeメッセージに含められ、UE10に対して設定されることになる。なお、Handover Request Acknowledgeメッセージには更に、ハンドオーバ先からハンドオーバ元へ無線関連情報を伝えるための「Target to Source Transparent Container」IE(情報要素)等が含められる。
【0029】
MME35は、Handover Request AcknowledgeメッセージをeNB31から受信すると、S406で、Forward Relocation Requestメッセージ(S403)に対する応答として、Forward Relocation ResponseメッセージをAMF25へ送信する。
【0030】
AMF25は、Forward Relocation ResponseメッセージをMME35から受信すると、S407で、Handover Commandメッセージを、ハンドオーバ元のgNBであるgNB21へ送信する。Handover Commandメッセージには、MME35によってeNB31から受信されたHandover Request Acknowledgeメッセージ内の情報が含まれる。
【0031】
gNB21は、Handover CommandメッセージをAMF25から受信すると、S408で、mobilityFromNRCommandメッセージをUE10へ送信する。mobilityFromNRCommandメッセージは、NRシステム20(NRセル)からLTEシステム30(LTEセル)へのハンドオーバを指示するハンドオーバコマンドとしてUE10へ送信される、RRCメッセージである。mobilityFromNRCommandメッセージには、Handover Request Acknowledgeメッセージ(S405)に設定された測定設定が含まれている。このため、UE10は、受信したメッセージに含まれる測定設定に従って、LTEシステム30におけるハンドオーバのための測定(RSRP又はRSRQ等の測定)を行い、測定報告をeNB31へ送信するように動作する。
【0032】
UE10は、mobilityFromNRCommandメッセージに従って、eNB31のセルへの接続を行う。接続に成功すると、S409で、ハンドオーバの完了を示すRRC Reconfiguration CompleteメッセージをeNB31へ送信する。当該メッセージを受信したeNB31は、S410で、UE10のハンドオーバの完了を示すHandover NotifyメッセージをMME35へ送信する。以上の処理により、eNB31は、MME35から受信したHO要求によるUE10のHO処理を完了する。NRシステム20(NRセル)からLTEシステム30(LTEセル)へのHO処理が完了すると、UE10は、当該HO処理の完了直後から、上述の測定設定に従った測定に基づいて、LTEシステム30における次のHO処理を行うことが可能になる。
【0033】
上述のHO処理の完了後、eNB31は、UE10からのTAU要求(TAU accept)メッセージの受信に応じて、MME35によって管理される、UE10の位置登録エリア(トラッキングエリア)を更新するトラッキングエリア更新(TAU)処理を行う。具体的には、eNB31は、UE10のトラッキングエリアの更新を求めるTAU要求メッセージを、MME35に向けて送信する。TAU要求メッセージは、S411で、UL Information Transferメッセージに含められて、UE10からeNB31へ送信される。TAU要求メッセージは更に、S412で、UPlink NAS Transportメッセージに含められて、eNB31からMME35へ送信される。MME35は、このようにUE10から受信したTAU要求メッセージに従って、UE10のトラッキングエリアを更新する。
【0034】
図4の例では、上述のように、TAU処理が行われている間に、LTEシステム30においてUE10の次のHO処理(S421~S427)が開始される。具体的には、S421で、UE10は、上述のようにS408において受信した測定設定に従って測定を行い、Measurement Report(測定報告)メッセージをeNB31へ送信する。eNB31は、受信した測定報告メッセージに基づいてLTEシステム30におけるUE10のハンドオーバ先の基地局を決定する。本例では、eNB32がハンドオーバ先の基地局として決定される。即ち、eNB31をソースeNB(SeNB)、eNB32をターゲットeNB(TeNB)として、UE10のHO処理が実行される。
【0035】
S422で、eNB31(SeNB)は、UE10のハンドオーバの実行を求めるHandover Requestメッセージを、eNB32(TeNB)へ送信する。Handover Requestメッセージを受信したeNB32(TeNB)は、UE10のハンドオーバの受け入れを決定すると、S423で、Handover Requestメッセージに対する応答として、Handover Request AcknowledgeメッセージをeNB31(SeNB)へ送信する。
【0036】
eNB31(SeNB)は、Handover Request Acknowledgeメッセージを受信すると、S424で、ハンドオーバ先の基地局(セル)等の情報を含むRRC Connection Reconfigurationメッセージを、UE10へ送信する。eNB31(SeNB)は更に、S425で、UE10のセッション情報等を含むSN Status Transferメッセージを、eNB32(TeNB)へ送信する。また、UE10は、eNB32(TeNB)のセルへの接続を行い、接続に成功すると、S426で、ハンドオーバの完了を示すRRC Reconfiguration CompleteメッセージをeNB32(TeNB)へ送信する。
【0037】
本例では、UE10がeNB32(TeNB)のセルへの接続を完了した後に、上述のようにTAU要求メッセージに従ってUE10のトラッキングエリアの更新を行ったMME35から、S413で、TAU受入(TAU accept)メッセージがeNB31へ送信される。TAU受入メッセージは、Downlink NAS Transportメッセージに含められて、MME35からeNB31へ送信される。
【0038】
本例においてeNB31は、S414で、受信したTAU受入メッセージを、Downlink Information Transferメッセージに含めてUE10へ転送することを試みる。しかしながら、このタイミングにおいて、上述のようにeNB31(SeNB)のセルからeNB32(TeNB)のセルへのUE10の接続の切り替えが完了しているため、Downlink Information TransferメッセージをUE10へ届けることはできない。このように、LTEシステム30へのHO処理の完了後に、UE10のTAU処理が行われている間に、UE10の次のHO処理が行われると、当該HO処理とTAU処理とが競合し、TAU処理を完了できなくなる。その結果、UE10に対する音声呼の確立が失敗することになる。
【0039】
また、本例においてeNB32(TeNB)は、S427で、UE10との間のデータの伝送に用いられるパスの切り替えを求めるPath Switch Request(パス切り替え要求)メッセージを、MME35へ送信する。しかしながら、本例では、MME35では、TAU処理よりUE10のトラッキングエリアが更新されているため、UE10用のパスの切り替えを行うことができず、HO処理を完了できなくない。このように、HO処理とTAU処理との競合に起因して、HO処理も完了できなくなりうる。
【0040】
本実施形態では、第1無線通信システム(NRシステム20)から第2無線通信システム(LTEシステム30)へ端末装置(UE10)の接続先を切り替えて音声通信サービスを提供する際に、処理競合の発生を防止する。このために、本実施形態におけるLTEシステム30の基地局装置(eNB31)は、NRシステム20からLTEシステム30へのUE10のHO処理の完了後に、UE10のTAU処理(UE10の位置登録エリアを更新する更新処理)が行われている間にLTEシステム30におけるUE10のハンドオーバを抑制するように、UE10との通信を制御する通信制御を行う。
【0041】
以下では、図5を参照して、LTEシステム30の基地局装置(eNB31)による上述の通信制御の例について説明する。本例では、eNB31は、NRシステム20からLTEシステム30へのUE10のHO処理が完了しても、LTEシステム30におけるUE10のハンドオーバが実行可能とならないように、HO処理のための通信を制御するように構成される。
【0042】
図5は、本実施形態の通信システムにおいて実行される処理のシーケンスの例を示すシーケンス図である。なお、図5では、図4に示す比較例と基本的に同様の処理を行うステップに同一の参照符号を付しており、以下では主に比較例と異なる部分について主に説明する。
【0043】
図5の例では、図4と同様、NRシステム20からLTEシステム30へUE10の接続先を切り替えて(即ち、ハンドオーバを行って)、LTEシステム30において音声通信サービスを提供する、EPSフォールバックの手順の例を示す。本例において、UE10は、NRシステム20で待ち受け中又は通信中の状態にあり、gNB21によって形成されるセル(NRセル)に在圏しているものとする。本例において、gNB21は、そのセル内のUE10に通信サービスを提供するサービング基地局である。
【0044】
UE10による発呼又はUE10に対する着呼が生じることで、NRシステム20において、UE10に対して音声呼を確立するための処理が開始される。S401~S403の処理は、上述の比較例(図4)と同様に行われる。S403においてAMF25からForward Relocation Requestメッセージを受信したMME35は、S404で、ハンドオーバ先のLTEセルに対応するeNB31へ、Handover Request(HO要求)メッセージを送信する。このHO要求は、第1無線通信システム(NRシステム20)に接続中の端末装置(UE10)が第1無線通信システムから第2無線通信システム(LTEシステム30)へハンドオーバして音声通信を行うためのハンドオーバ要求の一例である。このようにして、eNB31は、第2無線通信システム(LTEシステム30)の移動管理装置(MME35)からHO要求を受信する。
【0045】
MME35からHandover Requestメッセージを受信したeNB31は、受信した当該メッセージ(ハンドオーバ要求)に従って、UE10についてのHO処理を開始する。S405で、eNB31は、Handover Requestメッセージに対する応答として、Handover Request AcknowledgeメッセージをMME35へ送信する。本実施形態では、eNB31は、このHandover Request Acknowledgeメッセージに、Measurement Configuration(測定設定)を含めないように動作する。このように、eNB31は、MME35から受信したHO要求に対する応答をMME35へ送信する際に、ハンドオーバ先のLTEシステム30におけるハンドオーバ(セル間のハンドオーバ等)のための測定設定を含めずに当該応答をMME35へ送信する。
【0046】
MME35は、Handover Request AcknowledgeメッセージをeNB31から受信すると、S406で、Forward Relocation Requestメッセージ(S403)に対する応答として、Forward Relocation ResponseメッセージをAMF25へ送信する。AMF25は、Forward Relocation ResponseメッセージをMME35から受信すると、S407で、Handover CommandメッセージをgNB21へ送信する。
【0047】
gNB21は、Handover CommandメッセージをAMF25から受信すると、S408で、mobilityFromNRCommandメッセージをUE10へ送信する。本実施形態では、上述のように、Handover Request Acknowledgeメッセージ(S405)には測定設定が含まれないため、gNB21からUE10へ送信されるmobilityFromNRCommandメッセージにも、測定設定が含まれてない。測定設定を受信していない状態で、UE10は、LTEシステム30におけるハンドオーバのための測定(RSRP又はRSRQ等の測定)を行うことはなく、測定報告をeNB31へ送信することもない。
【0048】
S409~S410の処理は、上述の比較例(図4)と同様に行われる。S410の処理の完了により、eNB31は、MME35から受信したHO要求によるUE10のHO処理を完了する。本例では、上述のように、UE10が設定を受信していない状態であるため、HO処理が完了してもLTEシステム30におけるUE10のハンドオーバが実行可能とならない。このため、HO処理の完了後に以下のTAU処理(S411~S416)が行われている間に、UE10の次のHO処理が開始されることは無くなる。
【0049】
TAU処理において、S411~S412の処理は、上述の比較例(図4)と同様に行われる。MME35は、UE10から受信したTAU要求メッセージに従って、UE10のトラッキングエリアを更新した後、TAU受入(TAU accept)メッセージをUE10に向けて送信する。TAU受入メッセージは、S413で、Downlink NAS Transportメッセージに含められて、MME35からeNB31へ送信される。TAU受入メッセージは更に、S414で、Downlink Information Transferメッセージに含められて、eNB31からUE10へ送信される。
【0050】
TAU受入メッセージを受信したUE10は、TAU完了メッセージをMME35へ送信する。TAU完了メッセージは、S415で、UL Information Transferメッセージに含められて、UE10からeNB31へ送信される。TAU完了メッセージは更に、S416で、UPlink NAS Transportメッセージに含められて、eNB31からMME35へ送信される。以上により、UE10のTAU処理が完了する。
【0051】
TAU処理の完了後に、eNB31(通信制御部323)は、音声通信に用いられるベアラを確立するためのベアラ確立要求をMME35から受信すると、上述のMeasurement Configuration(測定設定)を含むメッセージをUE10へ送信する。これにより、UE10による、LTEシステム30におけるハンドオーバのための測定を可能にし、UE10についての次のHO処理を可能にする。
【0052】
具体的には、S417で、音声通信に用いられるベアラを確立するためのベアラ確立要求に相当するActive dedicated EPS bearer context requestを含む、E-RAB Setup Requestメッセージを、MME35から受信する。当該メッセージの受信に応じて、eNB31は、Measurement Configuration(測定設定)メッセージをUE10へ送信する。このメッセージは、RRC Configuration Reconfiguration(RRC接続再設定)メッセージとして送信される。当該メッセージを受信したUE10は、これ以降、次のHO処理を行うことが可能になる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のeNB31(基地局装置)において、HO処理部321は、NRシステム20(第1無線通信システム)に接続中のUE10(端末装置)がNRシステム20からLTEシステム30(第2無線通信システム)へハンドオーバして音声通信を行うためのハンドオーバ要求(HO要求)を、LTEシステム30のMME35(移動管理装置)から受信すると、当該HO要求に従ってハンドオーバ処理(HO処理)を行う。TAU処理部322は、HO処理が完了すると、MME35によって管理される、UE10の位置登録エリアを更新する更新処理(TAU処理)を行う。通信制御部323は、TAU処理が行われている間にLTEシステム30におけるUE10のハンドオーバを抑制するように、UE10との通信を制御する。
【0054】
本実施形態によれば、TAU処理が行われている間に、LTEシステム30においてUE10の次のHO処理が開始されることがなくなるため、当該HO処理とTAU処理との競合を防止できる。即ち、第1無線通信システム(NRシステム20)から第2無線通信システム(LTEシステム30)へ端末装置(UE10)の接続先を切り替えて音声通信サービスを提供する際に、処理競合の発生を防止することが可能になる。これにより、端末装置(UE10)に対する音声呼の確立が失敗することを防止できる。
【0055】
[その他の実施形態]
上述の実施形態に係る端末装置は、コンピュータをサーバ装置として機能させるためのコンピュータプログラムにより実現することができる。当該コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて配布が可能なもの、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0056】
なお、本発明により、例えば、端末装置に対して音声通信サービスを提供する際に、処理競合による音声呼の確立の失敗を防止することが可能になることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0057】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
10:UE、21:gNB、31:eNB、25:AMF、35:MME、321:HO処理部、322:TAU処理部、323:通信制御部
【要約】
【課題】第1無線通信システム(NRシステム)から第2無線通信システム(LTEシステム)へ端末装置の接続先を切り替えて音声通信サービスを提供する際に、処理競合の発生を防止する。
【解決手段】eNB31(基地局装置)において、HO処理部321は、NRシステム20に接続中のUE10がNRシステム20からLTEシステム30へハンドオーバして音声通信を行うためのハンドオーバ(HO)要求を、LTEシステム30のMME35から受信すると、当該HO要求に従ってHO処理を行う。TAU処理部322は、HO処理が完了すると、MME35によって管理される、UE10の位置登録エリアを更新する更新処理(TAU処理)を行う。通信制御部323は、TAU処理が行われている間にLTEシステム30におけるUE10のハンドオーバを抑制するように、UE10との通信を制御する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5