(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】燃料気化設備
(51)【国際特許分類】
F25D 3/10 20060101AFI20241213BHJP
F17C 9/04 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
F25D3/10 F
F17C9/04
(21)【出願番号】P 2023501972
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007460
(87)【国際公開番号】W WO2022180810
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】502040041
【氏名又は名称】日揮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 知之
(72)【発明者】
【氏名】臼井 弘行
(72)【発明者】
【氏名】神谷 篤志
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-119344(JP,A)
【文献】実開昭58-096198(JP,U)
【文献】特表2018-506684(JP,A)
【文献】特開平02-093200(JP,A)
【文献】実公平05-034399(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 3/10
F17C 9/02 ~ 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化燃料を気化させる燃料気化設備であって、
前記液化燃料が供給される複数の伝熱管の外面に沿って海水を流すことにより、前記液化燃料を気化させるオープンラック気化器と、
発電機を駆動するための蒸気タービンから排出された蒸気を冷却するための復水器にて冷媒として用いられた後の海水を、前記オープンラック気化器に向けて供給するための海水供給ラインと、
前記オープンラック気化器にて前記液化燃料の気化に用いられ、前記液化燃料との熱交換により温度が低下した冷海水を、当該冷海水の冷熱を利用する冷熱利用設備へ供給する冷海水供給ラインと、
前記冷海水の温度を予め設定された温度まで低下させるため、前記オープンラック気化器から排出された冷海水の一部を、前記オープンラック気化器に再供給するための循環ラインと、を備え
、
前記オープンラック気化器から排出される冷海水を受け入れる冷海水ピットを備え、前記冷海水供給ラインは、前記冷海水ピット内の冷海水を前記冷熱利用設備へ供給し、前記循環ラインは、前記冷海水ピット内の冷海水を前記オープンラック気化器に再供給することと、
前記海水供給ラインに介設され、当該海水供給ラインを流れる海水が流れ込むと共に、前記冷海水ピットに対して仕切り壁を介して隣接して設けられ、前記仕切り壁の上端から溢れ出た前記冷海水を受け入れるように構成された海水供給ピットを備え、前記冷海水ピットから前記海水供給ピットに冷海水が流れ込む領域である前記仕切り壁の上端面が、前記循環ラインを構成していることと、
前記海水供給ピットに前記海水が流れ込む流量を増減することにより、前記冷海水ピットから前記海水供給ピットを介して前記オープンラック気化器に再供給される冷海水の流量を増減し、前記冷海水の温度を調節することと、を特徴とする燃料気化設備。
【請求項2】
液化燃料を気化させる燃料気化設備であって、
前記液化燃料が供給される複数の伝熱管の外面に沿って海水を流すことにより、前記液化燃料を気化させるオープンラック気化器と、
発電機を駆動するための蒸気タービンから排出された蒸気を冷却するための復水器にて冷媒として用いられた後の海水を、前記オープンラック気化器に向けて供給するための海水供給ラインと、
前記オープンラック気化器にて前記液化燃料の気化に用いられ、前記液化燃料との熱交換により温度が低下した冷海水を、当該冷海水の冷熱を利用する冷熱利用設備へ供給する冷海水供給ラインと、
前記冷海水の温度を予め設定された温度まで低下させるため、前記オープンラック気化器から排出された冷海水の一部を、前記オープンラック気化器に再供給するための循環ラインと、を備え
、
前記復水器にて冷媒として用いられ、前記オープンラック気化器で冷却されていない海水を前記冷熱利用設備へ向けて供給する未冷却海水供給ラインを備えたことを特徴とする燃料気化設備。
【請求項3】
前記冷熱利用設備は、前記冷海水の冷熱を利用して魚介類の養殖用水の温度調節を行う養殖槽、または、前記冷熱を利用して植物の育成雰囲気、育成土壌、若しくは培養水の少なくとも一つの温度調節を行う植物工場であることを特徴とする請求項1
または2に記載の燃料気化設備。
【請求項4】
前記液化燃料は、液化天然ガスまたは液化水素であることを特徴とする請求項1
または2に記載の燃料気化設備。
【請求項5】
前記オープンラック気化器は、前記伝熱管の外面に沿って流れた後の海水を受ける受槽部を備え、前記冷海水供給ラインは、前記受槽部内の冷海水を前記冷熱利用設備へ供給し、前記循環ラインは、前記受槽部内の冷海水を前記オープンラック気化器に再供給することを特徴とする請求項
2に記載の燃料気化設備。
【請求項6】
前記蒸気タービンは、発電機を駆動するガスタービンの排熱ボイラーで発生させた蒸気により駆動されるものであることを特徴とする請求項1
または2に記載の燃料気化設備。
【請求項7】
前記オープンラック気化器で気化させて得られたガスを、前記ガスタービンへ供給する燃料ガス供給ラインを備えたことを特徴とする請求項
6に記載の燃料気化設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化燃料を気化させる際に得られた冷熱を利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)や液化水素などの液化燃料を利用す
るにあたっては、液化燃料を気化させ、ガスの状態で燃料の消費設備へと供給する必要がある。
液化燃料を気化させる設備の一種として、多数の伝熱管から構成されるパネルの外面に沿って加熱媒体である海水を流すことにより、伝熱管の内部に供給された液化燃料を気化させるオープンラック気化器(ORV:Open Rack Vaporizer)が知られている。
【0003】
一方、液化燃料の気化設備においては、液化燃料との熱交換によって加熱媒体の温度が低下することから、加熱媒体に蓄積された冷熱を植物工場の温度調節などに利用する技術が提案されている(例えば特許文献1、2)。
【0004】
しかしながら、環境への影響を抑える目的で、液体燃料を使用する工場から外部へ排出される海水の下限温度には制約がある。また、海水は天候や季節に応じ温度が変化する場合がある一方で、気化設備においては必要流量の液化燃料を気化させる運転を行うことが最も優先される。このため、これらの条件に応じてORVから流出する海水の温度も変化してしまう場合がある。
これらのことから、ORVから排出された低温の海水(冷海水)の温度が、植物工場などの冷熱利用設備にて必要とされる温度と合致しない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-31964号公報
【文献】登録実用新案第3209642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、液化燃料の気化設備を利用し、冷熱利用設備に向けて所望の温度に調節された冷海水を供給する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、液化燃料を気化させる燃料気化設備であって、
前記液化燃料が供給される複数の伝熱管の外面に沿って海水を流すことにより、前記液化燃料を気化させるオープンラック気化器と、
発電機を駆動するための蒸気タービンから排出された蒸気を冷却するための復水器にて冷媒として用いられた後の海水を、前記オープンラック気化器に向けて供給するための海水供給ラインと、
前記オープンラック気化器にて前記液化燃料の気化に用いられ、前記液化燃料との熱交換により温度が低下した冷海水を、当該冷海水の冷熱を利用する冷熱利用設備へ供給する冷海水供給ラインと、
前記冷海水の温度を予め設定された温度まで低下させるため、前記オープンラック気化器から排出された冷海水の一部を、前記オープンラック気化器に再供給するための循環ラインと、を備え、
前記オープンラック気化器から排出される冷海水を受け入れる冷海水ピットを備え、前記冷海水供給ラインは、前記冷海水ピット内の冷海水を前記冷熱利用設備へ供給し、前記循環ラインは、前記冷海水ピット内の冷海水を前記オープンラック気化器に再供給することと、
前記海水供給ラインに介設され、当該海水供給ラインを流れる海水が流れ込むと共に、前記冷海水ピットに対して仕切り壁を介して隣接して設けられ、前記仕切り壁の上端から溢れ出た前記冷海水を受け入れるように構成された海水供給ピットを備え、前記冷海水ピットから前記海水供給ピットに冷海水が流れ込む領域である前記仕切り壁の上端面が、前記循環ラインを構成していることと、
前記海水供給ピットに前記海水が流れ込む流量を増減することにより、前記冷海水ピットから前記海水供給ピットを介して前記オープンラック気化器に再供給される冷海水の流量を増減し、前記冷海水の温度を調節することと、を特徴とする。
第2の発明は、液化燃料を気化させる燃料気化設備であって、
前記液化燃料が供給される複数の伝熱管の外面に沿って海水を流すことにより、前記液化燃料を気化させるオープンラック気化器と、
発電機を駆動するための蒸気タービンから排出された蒸気を冷却するための復水器にて冷媒として用いられた後の海水を、前記オープンラック気化器に向けて供給するための海水供給ラインと、
前記オープンラック気化器にて前記液化燃料の気化に用いられ、前記液化燃料との熱交換により温度が低下した冷海水を、当該冷海水の冷熱を利用する冷熱利用設備へ供給する冷海水供給ラインと、
前記冷海水の温度を予め設定された温度まで低下させるため、前記オープンラック気化器から排出された冷海水の一部を、前記オープンラック気化器に再供給するための循環ラインと、を備え、
前記復水器にて冷媒として用いられ、前記オープンラック気化器で冷却されていない海水を前記冷熱利用設備へ向けて供給する未冷却海水供給ラインを備えたことを特徴とする。
【0008】
前記燃料気化設備は、以下の特徴を備えてもよい。
(a)前記冷熱利用設備は、前記冷海水の冷熱を利用して魚介類の養殖用水の温度調節を行う養殖槽、または、前記冷熱を利用して植物の育成雰囲気、育成土壌、若しくは培養水の少なくとも一つの温度調節を行う植物工場であること。
(b)前記液化燃料は、液化天然ガスまたは液化水素であること。
(c)第2の発明において、前記オープンラック気化器は、前記伝熱管の外面に沿って流れた後の海水を受ける受槽部を備え、前記冷海水供給ラインは、前記受槽部内の冷海水を前記冷熱利用設備へ供給し、前記循環ラインは、前記受槽部内の冷海水を前記オープンラック気化器に再供給すること。
(d)前記蒸気タービンは、発電機を駆動するガスタービンの排熱ボイラーで発生させた蒸気により駆動されるものであること。このとき、前記オープンラック気化器で気化させて得られたガスを、前記ガスタービンへ供給する燃料ガス供給ラインを備えたこと。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オープンラック気化器にて液化燃料を気化させるための熱交換により温度が低下した冷海水の一部をオープンラック気化器に再供給するための循環ラインを備えるので、冷熱利用設備に供給される冷海水の温度を所望の温度に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施の形態に係るLNG気化設備の構成図である。
【
図3】第2の実施の形態に係るLNG気化設備の構成図である。
【
図4】第3の実施の形態に係るLNG気化設備の構成図である。
【
図5】第4の実施の形態に係るLNG気化設備の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態に係る燃料気化設備の構成を示す前に、
図1を参照しながら従来構成に係る燃料気化設備の構成例を説明する。以下に示す各図では、液化燃料の一例として、液化天然ガス(LNG)の気化を行うLNG気化設備を例に挙げて説明を行う。
【0012】
図1に記載のLNG気化設備は、発電設備に併設されている。
図1に示す発電設備は、燃料ガスを燃焼させて発電機34を駆動するガスタービン31と、ガスタービン31から排出された燃焼排ガスの熱回収を行い、蒸気を発生させるHRSG(Heat Recovery Steam Generator)32と、HRSG32にて発生させた蒸気により発電機34を駆動する蒸
気タービン33とを備える。
【0013】
図1に示す蒸気タービン33は復水式であり、冷媒である海水との熱交換により蒸気タービン33から排出された蒸気を凝縮させ、背圧を低下させる復水器331が併設されている。海水(例えば20℃)は、取水ポンプ41によって取水され、復水器海水供給ライン401を介して復水器331へ供給され、蒸気との熱交換を行った後、復水器排水ライン402を介して海水の放水口へ向けて排出される。
【0014】
LNG気化設備は、LNGタンク2に貯蔵されたLNGをオープンラック気化器(ORV)1にて気化させ、気化後の燃料ガスを、燃料ガス供給ライン101を介してガスタービン31へ供給する。
ORV1は、LNGタンク2からのLNGが供給される多数の伝熱管から構成されたパネル11の外面に沿って海水を流下させ、海水との熱交換によりLNGを気化させて燃料ガスを得る公知の構成を備える。
【0015】
図1に示すORV1は、LNGを気化させるための海水として、復水器331における蒸気との熱交換により温まった海水(例えば25℃)の一部を利用する。
具体的な構成例としては、既述の復水器排水ライン402から分岐し、ORV1に接続されたORV海水供給ライン403に向けて、ORV供給ポンプ42を用いて海水が供給される。海水の供給流量は、ORV海水供給ライン403に設けられた流量検出部432及び流量調節弁431を用いて調節される。LNGの気化に用いられた海水は、ORV排水ライン404を介して排出され、既述の復水器排水ライン402と合流して放水口へ向けて排出される。
【0016】
上述の構成を備えたLNG気化設備において、ORV1においてはLNGとの熱交換により温度が低下した海水が得られ、この海水の冷熱は種々の冷熱利用設備にて活用することが可能である。
冷熱利用設備における冷熱の利用先としては、魚介類の養殖槽にて養殖用水の温度調節を行う場合や、植物工場において植物の育成雰囲気、育成土壌、または培養水の少なくとも一つの温度調節を行う場合を例示できる。
【0017】
例えばサケの養殖用水は20℃未満であることが好ましく、アワビの養殖は25℃未満であることが好ましい。また、イチゴの育成土壌や当該土壌に供給される供給水は、15℃未満であることが好ましい。このように冷熱利用設備においては、それぞれの冷熱の利用目的に応じた好適な温度がある。
【0018】
しかしながら、環境への影響を抑える目的で、外部へ排出される海水の下限温度には制約があり、例えば放水口から排出される海水の温度を25℃程度に維持する必要がある。一方で、ORV1は大量の海水を利用するところ、当該ORV1から排出される海水の全量を冷熱利用設備にて利用することは困難な場合もある。
【0019】
従って、ORV1から排出された海水の一部を冷熱利用設備に供給する場合であっても、残りの大部分の海水はそのまま外部へ放出せざるを得ない。温度が低い多量の海水を排出すると、復水器排水ライン402を流れる比較的温度の高い海水と合流した後であっても、放水口へ放出される海水の温度が許容される温度を下回ってしまうおそれがある。このため、
図1に示す従来のLNG気化設備においては、例えばORV1の出口の海水温度は22℃程度までにしか低下させることができないのが実情であった。
【0020】
また、海水は天候や季節に応じ温度が変化する場合がある。一方で、LNG気化設備においてはガスタービン31側からの要求に見合った流量のLNGを気化させる運転を行うことが最も優先される。このため、供給される海水の温度が変化したとき、ORV1から排出される海水の温度を冷熱利用設備側の要求温度に保つことが困難となる場合もある。
【0021】
このように、従来構成のLNG気化設備では、冷熱利用設備に必要とされる温度の冷海水を通年で安定供給することが困難な場合があった。
本実施の形態に係るLNG気化設備は、上述の問題に対応し、環境への影響を抑えつつ、冷熱利用設備にて要求される温度の冷海水を安定して供給することが可能な構成を備えている。
【0022】
以下、
図2を参照しながら、実施の形態に係るLNG気化設備の全体構成例を説明する。
図2に示すLNG気化設備はORV1から排出された冷海水の一部を養殖槽や植物工場からなる冷熱利用設備6へ向けて供給することが可能な構成となっている。
なお、以下に説明する
図2~5においては、
図1を用いて説明したものと共通の構成要素に対しては、
図1に示したものと共通の符号を付してある。
【0023】
図2に示すLNG液化設備は、ORV1から排出される海水の流れる流路が、放水口へ向けて冷海水を排出するためのORV排水ライン404aと、冷熱利用設備6へ供給される冷海水が流れる冷海水ピットライン404bとに分岐している。
ORV排水ライン404aの下流端は、復水器排水ライン402に接続され、当該ORV排水ライン404aを流れる温かい海水と冷海水とが混合されて、放水口へ向けて排出される。一方、冷海水ピットライン404bの下流側には冷海水ピット51が設けられ、冷熱利用設備6に供給される冷海水はこの冷海水ピット51に受け入れられる。
【0024】
冷海水ピット51と冷熱利用設備6との間には、冷熱利用設備6へ向けて冷海水を供給するための冷海水供給ライン502が設けられている。冷海水ピット51に流れ込んだ冷海水は、冷海水供給ライン502の上流側に設けられた送液ポンプ54により、冷海水供給ライン502を介して冷熱利用設備6に供給される。冷熱利用設備6に対する冷海水の供給流量は、冷海水供給ライン502に設けられた流量検出部532及び流量調節弁531を用いて調節される。また冷海水供給ライン502には開閉弁533が設けられており、冷熱利用設備6に対する冷海水の供給、停止を実行することができる。
【0025】
さらに上述の冷海水供給ライン502からは、冷海水ピット51内の冷海水、即ち、ORV1から排出された冷海水の一部をORV1に再供給するための循環ライン501が分岐している。循環ライン501は、既述の開閉弁533よりも上流側の位置にて冷海水供給ライン502から分岐し、その下流端は、ORV海水供給ライン403に合流している。ORV海水供給ライン403は、本実施の形態の海水供給ラインに相当する。
【0026】
ORV1に対する冷海水の再供給流量(循環流量)は、冷海水ピット51に設けられた温度検出部522及び流量調節弁521を用いて、冷海水ピット51内の冷海水の温度が予め設定された目標温度(例えば15℃)となるように調節される。冷海水の目標温度は、冷熱利用設備6にて要求される冷海水の温度に設定される。また循環ライン501には開閉弁523が設けられており、ORV1に対する冷海水の再供給の実行、停止を行うことができる。
【0027】
以上に説明した構成によれば、循環ライン501を介してORV1に冷海水を再供給することにより、
図1を用いて説明した従来のLNG気化設備と比較してORV1に供給される海水の温度は低下する(例えば18℃)。
このとき、ORV1におけるLNGの気化の観点では、ガスタービン31に供給されるLNGを気化させるのに必要な熱量が確保されるように、ORV1に対する海水の供給流量、即ち、ORV海水供給ライン403を介して供給される海水の供給流量と、循環ライン501を介して供給される冷海水の循環流量との合計の流量が確保されていればよい。
【0028】
以上に説明した構成を有するLNG液化設備の作用について説明する。従来のLNG液化設備と同様に、ORV1においてはORV海水供給ライン403を介して供給された海水をパネル11の外面に沿って流下させ、LNGを気化させて燃料ガスを得る処理が実施される。LNGとの熱交換により温度が低下した冷海水の一部は、冷海水ピットライン404bを介して冷海水ピット51に受け入れられる。また、残りの冷海水は、ORV排水ライン404aを介して復水器排水ライン402に合流した後、放水口へ向けて排出される。
【0029】
冷海水ピット51に流れ込んだ冷海水のうち、冷熱利用設備6への供給分については、消費量に応じた流量調節を行いつつ冷海水供給ライン502を介して冷熱利用設備6に供給される。
一方で、循環ライン501を介してORV1に再供給される冷海水の循環流量は、冷海水ピット51の冷海水の温度に応じて調節される。即ち、冷海水の目標温度を中心とした運転管理範囲を設定しておき、冷海水ピット51内の冷海水の温度が運転管理範囲の上限値を上回った場合には、循環流量を増加させ、ORV1に供給される海水の温度を低下させる。また、冷海水ピット51内の冷海水の温度が運転管理範囲の下限値を下回った場合には、循環流量を減少させ、ORV1に供給される海水の温度を上昇させる。この結果、運転管理範囲内で安定した温度の冷海水を冷熱利用設備6に対して供給することができる。
【0030】
なお、冷海水ピットライン404bを介して冷海水ピット51に流れ込む冷海水の流量は、冷熱利用設備6への供給流量及びORV1への循環流量の合計流量とバランスするように調節される。
また、冷熱利用設備6への冷海水の供給を停止する場合は、開閉弁533、523を閉じて冷海水の払い出し及び循環を停止すると共に、ORV排水ライン404aを介して、ORV1から排出される海水の全量を外部へと排出する。
【0031】
図2に示すLNG気化設備においては、冷熱利用設備6に供給される冷海水の温度に対応して、ORV排水ライン404aを介して外部へ排出される冷海水の温度も低下することになる。しかしながら当該LNG気化設備においては、冷海水の一部をORV1の入口側に再供給している。このため、ORV1と冷海水ピット51とを含む冷海水の循環系外に排出される冷海水の流量(即ち、ORV海水供給ライン403の上流側から新たに供給さされる海水の流量)は、
図1を用いて説明した従来のLNG気化設備よりも大幅に少ない。
【0032】
発明者らは、
図1示す従来のLNG気化設備においてORV排水ライン404から復水器排水ライン402へ向けて排出される海水の流量と比較して、
図2に示す実施の形態においては、循環系外に排出される冷海水の流量を2~5割程度に低減することができることを把握している。
さらに、循環系外に排出される冷海水の一部は冷熱利用設備6へ向けて供給されるので、ORV排水ライン404aを介して排出される冷海水の流量はさらに少ない。このため、ORV排水ライン404aを介して排出された冷海水の温度が15℃まで低下していたとしても、復水器排水ライン402を介して排出された海水と合流した後、放水口から排出される海水の温度については、25℃を大きく下回らない状態を維持することができる。
【0033】
本実施の形態に係るLNG気化設備によれば以下の効果がある。ORV1にて液化燃料を気化させるための熱交換により温度が低下した冷海水の一部をORV1に再供給するための循環ラインを備えるので、冷熱利用設備6に供給される冷海水の温度を所望の温度に調節することができる。
また、ORV1に対して冷海水の再供給を行うことにより、外部へ排出される冷海水の流量を低減し、環境に対する冷海水の影響を低減することができる。
【0034】
次いで、
図3~5を参照しながら、実施の形態に係るLNG気化設備のバリエーションについて説明する。
図3は、冷海水ピット51に対して、冷海水供給ライン502用の冷海水供給ライン用ポンプ54bと、循環ライン501用の循環ライン用ポンプ54aとを独立して設けた例である。この構成により、冷熱利用設備6への冷海水の供給流量、及びORV1への冷海水の循環流量の調節の自由度を高めることができる。
【0035】
また
図3には、流量調節弁531から排出された冷却されていない海水の一部を冷熱利用設備6へ向けて供給するための未冷却海水供給ライン503を設けた例を示してある。未冷却海水供給ライン503は復水器排水ライン402から分岐して冷熱利用設備6に接続され、未冷却海水供給ライン用ポンプ55を用いて温かい海水の供給が行われる。海水の供給流量は、未冷却海水供給ライン503に設けられた流量検出部562及び流量調節弁561を用いて調節される。
【0036】
上述の構成により、取水ポンプ41側にて取水される海水の温度が高い期間(例えば夏季)は、冷海水供給ライン502を介して冷熱利用設備6へ向けて冷海水を供給する。そして、取水される海水の温度が低い期間(例えば冬季)は、冷海水供給ライン502からの冷海水の供給に替えて、または並行して、未冷却海水供給ライン503を介し、流量調節弁531から排出された比較的温かい海水を供給することもできる。
【0037】
次いで
図4は、
図2、3に示す配管からなる循環ライン501に替えて、ピット51a、52bを用いて冷海水の循環を行う構成例を示している。
図4に示すLNG気化設備においては、ORV海水供給ライン403a、403bに対して、上流側のORV海水供給ライン403aを流れる海水が流れ込むORV海水供給ピット51bが介設されている。当該ORV海水供給ピット51bは、冷海水ピットライン404bを介してORV1から排出された冷海水の全量が流れ込む冷海水ピット51aに対して仕切り壁511を介して隣接して設けられている。冷海水ピット51aには、放水口へ向けて冷海水が排出されるピット排水ライン404cが接続されている。
【0038】
仕切り壁511は、冷海水ピット51aに収容しきれない冷海水が当該仕切り壁511の上端を介してORV海水供給ピット51b側へ向けて溢れ出ることが可能な高さに構成されている。即ち、冷海水ピット51aからORV海水供給ピット51bに冷海水が流れ込む領域である仕切り壁511の上端面は、ORV1に再供給される冷海水が流れる循環ラインを構成していることになる。
【0039】
ORV海水供給ピット51bにはORV供給ポンプ42aが設けられ、ORV海水供給ライン403を介してORV1への海水供給が行われる。復水器排水ライン402からORV海水供給ピット51bへ向けて海水を供給するORV海水供給ライン403aには、流量調節弁431aが設けられている。流量調節弁431aは、ORV海水供給ピット51b内の海水温度を検出する温度検出部433の温度検出結果に基づき、当該ORV海水供給ピット51b内の海水の温度が目標温度に近づくように冷海水ピット51aに流れ込む海水の流量を増減する。
【0040】
即ち、冷海水ピット51aからORV海水供給ピット51bに流れ込む冷海水の温度が上昇することにより、ORV海水供給ピット51b内の海水の温度が目標温度を中心として設定された運転管理範囲の上限値を上回った場合には、流量調節弁431aの開度を大きくし、海水の受け入れ流量を増加させる。これに合わせてORV供給ポンプ42aを用いてORV1に供給する海水の流量も増加させる。
【0041】
この動作により、ORV1から排出される冷海水の流量が増加し、冷海水ピット51aからORV海水供給ピット51bへ流れ込む冷海水の循環量が増加する。その結果、冷海水ピット51aに流れ込む冷海水の温度が低下し、ORV海水供給ピット51b内の海水の温度も目標温度に近づく。なお、例えばピット排水ライン404cを介した冷海水の排出量の調節により、ORV海水供給ピット51b、冷海水ピット51a内の海水量は一定に保たれる。
【0042】
一方、冷海水ピット51aからORV海水供給ピット51bに流れ込む冷海水の温度が低下することにより、ORV海水供給ピット51b内の海水の温度が運転管理範囲の下限値を下回った場合には、流量調節弁431aの開度を小さくし、海水の受け入れ流量を減少させる。これに合わせてORV供給ポンプ42aを用いてORV1に供給する海水の流量も減少させる。
【0043】
この動作により、ORV1から排出される冷海水の流量が減少し、冷海水ピット51aからORV海水供給ピット51bへ流れ込む冷海水の循環量が減少する。その結果、冷海水ピット51aに流れ込む冷海水の温度が低下し、ORV海水供給ピット51b内の海水の温度も目標温度に近づくことになる。この場合にも、例えばピット排水ライン404cを介した冷海水の排出量の調節により、ORV海水供給ピット51b、冷海水ピット51a内の海水量は一定に保たれる。
【0044】
次いで
図5は、
図2、3に示す冷海水ピット51に替えて、ORV1に設けられているORVピット12に対して冷海水供給ライン502や循環ライン501への冷海水の送液用のポンプ54a、54bを設けた例を示している。ORVピット12は、LNGと海水との熱交換を行うパネル11の外面に沿って流れた後の海水を受ける役割を果たし、ORV1に装備されている。
【0045】
図5に示す例においては、循環ライン用ポンプ54aに対しては、ORVピット12内の冷海水をORV1に対して再供給するための循環ライン501と、復水器排水ライン402へ向けて冷海水を排出するためのピット排水ライン404cとが接続されている。一方、冷熱利用設備6に対しては、冷海水供給ライン用ポンプ54bを用い、冷海水供給ライン502を介して冷海水の供給が行われる点は、
図3に示すLNG気化設備と同様である。
【0046】
以上、
図2~5を用いて説明した各実施の形態に係るLNG気化設備は、液体燃料である液化水素の気化を行う水素気化設備として利用してもよい。
また本例の燃料気化設備から冷海水が供給される冷熱利用設備は、既述の養殖
槽や植物工場に限定されるものではない。例えば化学プラントや石油精製プラントなどのクーラーに対して、冷海水の供給を行ってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ORV
331 復水器
403、403a、403b
ORV海水供給ライン
404、404a
501 循環ライン
502 冷海水供給ライン
6 冷熱利用設備