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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ワイヤ送出装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20241213BHJP
   A61M 25/092 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
A61M25/09 530
A61M25/092
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023515936
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2021016082
(87)【国際公開番号】W WO2022224359
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土肥 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勇作
(72)【発明者】
【氏名】山極 智輝
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-510830(JP,A)
【文献】米国特許第05749371(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0375223(US,A1)
【文献】特開2018-064822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを先端方向に送出するワイヤ送出装置であって、
前記ワイヤを把持可能及び把持解除可能且つ前記先端方向及び後端方向に移動可能な把持部と、
前記把持部を前記先端方向へ付勢可能な弾性体と、
前記弾性体を変形させて前記先端方向への付勢力を増加させる付勢部と、を備え、
前記付勢部による前記弾性体の変形が解除されると、前記弾性体による付勢力で前記把持部に把持された前記ワイヤを前記先端方向に送出することとし、
第1の所定の操作に応じて、前記付勢部による前記弾性体の変形が所定の状態となった場合に、前記弾性体の変形を自動的に解除することにより前記ワイヤの前記先端方向への送出が連続的に行われる第1のモードと、
前記付勢部による前記弾性体の変形が所定の状態となった場合に、第2の所定の操作に応じて、前記付勢部による前記弾性体の変形を解除して前記ワイヤの前記先端方向への送出が1回行われる第2のモードと、で動作可能であるワイヤ送出装置。
【請求項2】
前記第1のモードでは、前記第1の所定の操作に応じて、下記(a)、(b)及び(c)の順で一連の動作を繰り返し実行することとし、
(a)前記把持部による前記ワイヤの把持、及び、前記付勢部による前記弾性体の変形、
(b)前記弾性体の変形の解除及び前記弾性体の付勢力による、前記ワイヤを把持した前記把持部の前記先端側への送出、及び、
(c)前記把持部による前記ワイヤの把持解除、及び、前記把持部の前記後端側への移動、
前記第2のモードでは、前記(a)を実行した後、前記第2の所定の操作に応じて前記(b)を実行する、請求項1に記載のワイヤ送出装置。
【請求項3】
前記第1のモードと前記第2のモードとを切り替え可能な操作部を更に備える請求項1または請求項2に記載のワイヤ送出装置。
【請求項4】
前記付勢部により付勢力が増加されて所定の状態となった前記弾性体の変形状態の維持が可能な変形維持部と、
前記変形維持部による前記弾性体の変形状態の維持を不能な状態に変更可能な維持状態変更部と、をさらに備え、
前記操作部は、前記維持状態変更部を、前記変形維持部による前記弾性体の変形状態の維持が不能な状態に設定可能であり、
前記変形維持部により前記付勢部により付勢力が増加されて所定の状態となった前記弾性体の変形状態が維持されている場合において、前記操作部が操作されて、前記維持状態変更部が、前記変形維持部による前記弾性体の変形状態の維持が不能な状態に設定されると、前記変形状態の維持が不能となった前記弾性体による付勢力によって前記把持部を前記先端方向に移動させて、前記把持部に把持された前記ワイヤを前記先端方向に送出するように構成されている
請求項に記載のワイヤ送出装置。
【請求項5】
前記操作部により、前記維持状態変更部が、前記変形維持部による前記弾性体の変形状態の維持が不能な状態に設定して維持することにより、前記第1のモードで動作可能となる
請求項4に記載のワイヤ送出装置。
【請求項6】
前記操作部を、前記維持状態変更部が前記変形維持部による前記弾性体の変形状態の維持が不能な状態に設定された状態で固定可能な操作固定部を更に備える
請求項5に記載のワイヤ送出装置。
【請求項7】
前記把持部による前記ワイヤの把持の状態を操作可能な把持操作部を更に備える請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のワイヤ送出装置。
【請求項8】
前記把持部の基端側に配置され、前記ワイヤの軸方向に移動可能且つ前記把持部と接離可能な打撃部を、更に備える
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のワイヤ送出装置。
【請求項9】
ワイヤを先端方向に送出するワイヤ送出装置であって、
前記ワイヤを把持可能及び把持解除可能且つ前記先端方向及び後端方向に移動可能な把持部と、
前記把持部を前記先端方向へ付勢可能な弾性体と、
前記弾性体を変形させて前記先端方向への付勢力を増加させる付勢部と、
前記付勢部により付勢力が増加された前記弾性体の変形状態を解放する解放部と、を備え、
前記解放部により変形状態が解放された前記弾性体による付勢力によって、前記把持部を前記先端方向に移動させて、前記把持部に把持された前記ワイヤを前記先端方向に送出することとし、
前記把持部による前記ワイヤの把持の状態を操作可能な把持操作部と
前記把持部の基端側に配置され、前記ワイヤの軸方向に移動可能且つ前記把持部と接離可能な打撃部と、を更に備える、
ワイヤ送出装置。
【請求項10】
前記解放部は、
前記付勢部により付勢力が増加されて所定の状態となった前記弾性体の変形状態の維持が可能な変形維持部と、
前記変形維持部による前記弾性体の変形状態の維持を不能な状態に変更可能な維持状態変更部と、を有し、
前記把持操作部は、前記変形維持部により前記弾性体の変形状態が維持されている場合において、前記ワイヤを把持する前記把持部を把持解除の状態に操作可能である
請求項に記載のワイヤ送出装置。
【請求項11】
前記把持部は、前記ワイヤを挟持する第1挟持部及び第2挟持部と、前記第1挟持部と前記第2挟持部との間隔を調整可能なカム部とを有する
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のワイヤ送出装置。
【請求項12】
前記把持部に把持させるワイヤを載置可能であり、載置される前記ワイヤの長手方向に亘って所定方向の全面が開放されている載置部と、
前記載置部の記所定方向の開放されている面の少なくとも一部を開閉可能な開閉部と、をさらに備える
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のワイヤ送出装置。
【請求項13】
前記付勢部による前記弾性体に対する付勢力を増加させるために手技者が手で操作する付勢操作部をさらに備え、
前記付勢操作部は、前記ワイヤの載置位置から離れるようにオフセットされた位置に操作時に手技者が手で操作する取手部を有する
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のワイヤ送出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤを送出するワイヤ送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性完全閉塞(CTO:Chronic total occlusion)のような血管を閉塞する閉塞物を除去して血流を改善する際には、例えば、柔らかいガイドワイヤにより閉塞物を穿通できるかを試し、閉塞物を穿通できない場合に、徐々に固い順行性ガイドワイヤに交換することが行われる。
【0003】
この方法においては、ガイドワイヤを交換する手間がかかるとともに、ガイドワイヤを複数本使用するためにコストがかかる。
【0004】
また、ガイドワイヤにより閉塞物を穿通させる際には、手技者が手でガイドワイヤを摘まんで操作するために、ガイドワイヤを送出する距離は、手技者の感覚によるものとなっていた。
【0005】
これに対して、医療用ワイヤを所定の移動量で送り出すことができ、医療用ワイヤの押し付け力を良好に伝達することができる技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-202711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、手技者はスプリングを押圧することにより医療用ワイヤを送出する。このため、医療用ワイヤに対する押し付け力は、比較的限られてしまい、医療用ワイヤにより閉塞物を穿通させるために十分でない場合があり、閉塞物を穿通させるために、医療用ワイヤを交換する必要がでてくる。このため、医療用ワイヤを交換する手間がかかるとともに、医療用ワイヤを複数本使用するためにコストがかかるという問題が解決できない。
【0008】
また、特許文献1の技術においては、医療用ワイヤを保持する把持部材が所定の移動量を超えて先端側に移動したときに、医療用ワイヤの把持した状態を維持する係合部材と把持部材との係合を解除することにより、医療用ワイヤの移動量が所定の移動量を超えないようにしているが、係合部材と把持部材との係合が解除されるタイミングによって、医療用ワイヤの移動量が変動する虞がある。
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、ワイヤの移動量を適切な量にすることができるとともに、ワイヤを適切な力で送出することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、第1の観点に係るワイヤ送出装置は、ワイヤを先端方向に送出するワイヤ送出装置であって、前記ワイヤを把持可能及び把持解除可能且つ前記先端方向及び後端方向に移動可能な把持部と、前記把持部を前記先端方向へ付勢可能な弾性体と、前記弾性体を変形させて前記先端方向への付勢力を増加させる付勢部と、を備え、前記付勢部による前記弾性体の変形が解除されると、前記弾性体による付勢力で前記把持部に把持された前記ワイヤを前記先端方向に送出することとし、第1の所定の操作に応じて、前記ワイヤの前記先端方向への送出が連続的に行われる第1のモードと、第2の所定の操作に応じて、前記ワイヤの前記先端方向への送出が1回行われる第2のモードと、で動作可能である。
【0011】
上記ワイヤ送出装置において、前記第1のモードでは、前記第1の所定の操作に応じて、下記(a)、(b)及び(c)の順で一連の動作を繰り返し実行することとし、(a)前記把持部による前記ワイヤの把持、及び、前記付勢部による前記弾性体の変形、(b)前記弾性体の変形の解除及び前記弾性体の付勢力による、前記ワイヤを把持した前記把持部の前記先端側への送出、及び、(c)前記把持部による前記ワイヤの把持解除、及び、前記把持部の前記後端側へ移動、前記第2のモードでは、前記(a)を実行した後、前記第2の所定の操作に応じて前記(b)を実行するようにしてもよい。
【0012】
上記ワイヤ送出装置において、前記第1のモードと前記第2のモードとを切り替え可能な操作部を更に備えてもよい。
【0013】
上記ワイヤ送出装置において、前記付勢部により付勢力が増加されて所定の状態となった前記弾性体の変形状態の維持が可能な変形維持部と、前記変形維持部による前記弾性体の変形状態の維持を不能な状態に変更可能な維持状態変更部と、を更に備え、前記操作部は、前記維持状態変更部を前記変形維持部による前記弾性体の変形状態の維持が不能な状態に設定可能であり、前記変形維持部により前記付勢部により付勢力が増加されて所定の状態となった前記弾性体の変形状態が維持されている場合において、前記操作部に対する操作により、前記維持状態変更部によって前記変形維持部による前記弾性体の変形状態の維持が不能な状態にされると、前記変形状態の維持が不能となった前記弾性体による付勢力によって前記把持部を前記先端方向に移動させて、前記把持部に把持された前記ワイヤを前記先端方向に送出するように構成されていてもよい。
【0014】
上記ワイヤ送出装置において、前記操作部により、前記維持状態変更部を前記変形維持部による前記弾性体の変形状態の維持が不能な状態に操作されている状態において、して維持することにより、前記第1のモードで動作可能となってもよい。
【0015】
上記ワイヤ送出装置において、前記操作部を、前記維持状態変更部が前記変形維持部による前記弾性体の変形状態の維持が不能な状態に操作された状態で固定可能な操作固定部をさらに備えてもよい。
【0016】
上記ワイヤ送出装置において、前記把持部による前記ワイヤの把持の状態を操作可能な把持操作部を更に備えてもよい。
【0017】
第2の観点に係るワイヤ送出装置は、ワイヤを先端方向に送出するワイヤ送出装置であって、前記ワイヤを把持可能及び把持解除可能且つ前記先端方向及び後端方向に移動可能な把持部と、前記把持部を前記先端方向へ付勢可能な弾性体と、前記弾性体を変形させて前記先端方向への付勢力を増加させる付勢部と、前記付勢部により付勢力が増加された前記弾性体の変形状態を解放する解放部と、を備え、前記解放部により変形状態が解放された前記弾性体による付勢力によって、前記把持部を前記先端方向に移動させて、前記把持部に把持された前記ワイヤを前記先端方向に送出することとし、前記把持部による前記ワイヤの把持の状態を操作可能な把持操作部を更に備える。
【0018】
上記ワイヤ送出装置において、前記解放部は、前記付勢部により付勢力が増加されて所定の状態となった前記弾性体の変形状態の維持が可能な変形維持部と、前記変形維持部による前記弾性体の変形状態の維持を不能な状態に変更可能な維持状態変更部と、を有し、前記把持操作部は、前記変形維持部により前記弾性体の変形状態が維持されている場合において、前記ワイヤを把持する前記把持部を把持解除の状態に操作可能であってもよい。
【0019】
上記ワイヤ送出装置において、前記把持部の基端側に配置され、前記ワイヤの軸方向に移動可能且つ前記把持部と接離可能な打撃部を、更に備えてもよい。
【0020】
上記ワイヤ送出装置において、前記把持部は、前記ワイヤを挟持する第1挟持部及び第2挟持部と、前記第1挟持部と前記第2挟持部との間隔を調整可能なカム部とを有してもよい。
【0021】
上記ワイヤ送出装置において、前記把持部に把持させるワイヤを載置可能であり、載置される前記ワイヤの長手方向に亘って所定方向の全面が開放されている載置部と、前記載置部の記所定方向の開放されている面の少なくとも一部を開閉可能な開閉部と、をさらに備えてもよい。
【0022】
上記ワイヤ送出装置において、前記付勢部による前記弾性体に対する付勢力を増加させるために手技者が手で操作する付勢操作部をさらに備え、前記付勢操作部は、前記ワイヤの載置位置から離れるようにオフセットされた位置に操作時に手技者が手で操作する取手部を有してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、ワイヤの移動量を適切な量にすることができるとともに、ワイヤを適切な力で送出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ワイヤ送出装置に接続されるガイドワイヤ及びカテーテルと、ワイヤ送出装置に接続するためのコネクタとを説明する図である。
図2】ガイドワイヤ及びカテーテルとコネクタとの接続状態を示す図である。
図3】第1実施形態に係るワイヤ送出装置の斜視図である。
図4】ガイドワイヤ及びカテーテルが接続されたワイヤ送出装置の斜視図である。
図5図3に示すワイヤ送出装置の初期状態における上面断面図である。
図6】ワイヤ送出装置の把持部の構成図である。
図7図5に示す初期状態における底面からの斜視断面図である。
図8】ワイヤ送出装置の射出スイッチの斜視図である。
図9】ワイヤ送出装置のスライダの斜視図である。
図10】ワイヤ送出装置のフックの斜視図である。
図11】ワイヤ送出装置の把持準備状態における上面断面図である。
図12】ワイヤ送出装置の送出可能状態における上面断面図である。
図13図12に示す送出可能状態における底面からの斜視断面図である。
図14】ワイヤ送出装置の送出時における底面断面図である。
図15図14に示す送出時における上面断面図である。
図16】ワイヤ送出装置の把持開閉スイッチの非操作時の側面断面図である。
図17図16に示す把持開閉スイッチの操作時における上面断面図である。
図18図17に示す操作時における側面断面図である。
図19】変形例に係る把持開閉スイッチの非操作時における側面断面図である。
図20図19に示す把持開閉スイッチの操作時における側面断面図である。
図21】第2実施形態に係るワイヤ送出装置の初期状態における上面断面図である。
図22図21に示す初期状態における底面からの斜視断面図である。
図23】ワイヤ送出装置の射出スイッチの斜視図である。
図24】ワイヤ送出装置のスライダの第1の斜視図である。
図25図24に示すスライダの第2の斜視図である。
図26】ワイヤ送出装置の送出可能状態における上面断面図である。
図27図26に示す送出可能状態における底面からの斜視断面図である。
図28】ワイヤ送出装置の送出時における底面斜視図である。
図29】ワイヤ送出装置の送出後における側面断面図である。
図30】第3実施形態に係るワイヤ送出装置の初期状態における上面断面図である。
図31図30に示す初期状態における側面断面図である。
図32図30に示すワイヤ送出装置の把持部の分解斜視図である。
図33図32に示す把持部の把持解除状態の斜視図である。
図34図33に示す把持解除状態の側面断面図である。
図35】把持部の把持状態の斜視図である。
図36】把持部の把持状態の側面断面図である。
図37図30に示すワイヤ送出装置の把持開閉スイッチの斜視図である。
図38】ワイヤ送出装置の送出可能状態における上面断面図である。
図39図38に示す送出可能状態における側面断面図である。
図40】変形例に係る把持部の分解斜視図である。
図41図32に示す把持部の把持解除状態の斜視図である。
図42】第4実施形態に係るワイヤ送出装置の蓋開放時における上面図である。
図43図42に示す蓋開放時における上面断面図である。
図44】蓋閉鎖時における上面図である。
図45】蓋の斜視図である。
図46】蓋の装着部分の拡大斜視図である。
図47】ワイヤ送出装置にガイドワイヤが載置された状態を示す上面図である。
図48】ワイヤ送出装置のガイドワイヤ収容部を含む一部分の側面断面図である。
図49】ワイヤ送出装置のガイドワイヤの送出可能状態における斜視図である。
図50】第5実施形態に係るワイヤ送出装置の斜視図である。
図51図50に示すワイヤ送出装置の射出スイッチの非固定時における底面からの斜視断面図である。
図52図51に示す射出スイッチの固定時における底面からの斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施形態に係るワイヤ送出装置について図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態のみに限定されるものではない。
【0026】
本明細書において、「ガイドワイヤ」とは、血管などの体腔内の術部に押し進められ、その術部にカテーテルを導くために用いられる医療用のガイドワイヤを意味する。
【0027】
本明細書において、「先端側」及び「先端方向」とは、ガイドワイヤの長手方向に沿った方向(ガイドワイヤの軸方向に沿う方向)で、ガイドワイヤにより穿通させる閉塞物が位置する側及び方向を意味する。「後端側」及び「後端方向」とは、先端側及び方向の逆である。また、「基端側」とは、ガイドワイヤの長手方向に沿った方向に沿う方向であって、先端側と反対側の方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ示す。
【0028】
[第1実施形態]
第1実施形態に係るワイヤ送出装置1(図3参照)は、ワイヤの一例としてのガイドワイヤを送出する装置である。ガイドワイヤは、例えば、血管などの体腔内の術部に押し進められ、その術部の閉塞物を穿通させるために使用される。ワイヤ送出装置1は、ガイドワイヤGWが挿入されたカテーテルを装置に接続させて使用される。
【0029】
ワイヤ送出装置1の詳細を説明する前に、ワイヤ送出装置1に接続されるガイドワイヤ及びカテーテルの説明を行う。図1は、ワイヤ送出装置1に接続されるガイドワイヤ及びカテーテルとワイヤ送出装置に接続するためのコネクタとを説明する図であり、図2は、ガイドワイヤ及びカテーテルとコネクタとの接続状態を示す図である。
【0030】
ガイドワイヤGWは、中空状のカテーテル51に挿入される。カテーテル51の基端側には、その向きを調整するためのカテーテルハブ52が回転不能に装着されている。図1(A)の例では、図面左側が患者の体内側(先端側)となり、図面右側が患者の体外側(基端側)となる。
【0031】
カテーテル51は、図2に示すようにコネクタ60に接続され、コネクタ60を介してワイヤ送出装置1に接続される。コネクタ60は、図1(B)に示すように、ダイヤル部60Aと取付部60Cと後端部60Dとを有する。ダイヤル部60Aは、コネクタ60と接続されたカテーテル51の方向を手技者が操作するための部位である。取付部60Cは、円筒状に形成され、ワイヤ送出装置1の後述するコネクタ接続部3(図3参照)に取り付けるための部位である。取付部60Cの軸方向の長さは、コネクタ接続部3の後述する接続片3A,3BのX軸方向の幅とほぼ同じとなっている。後端部60Dは、取付部60Cの円筒よりも大きい径の円盤状に形成されている。後端部60Dは、コネクタ接続部3に対してコネクタ60のX軸方向の位置決めをするために作用する。
【0032】
コネクタ60には、長手方向に延びる貫通孔60Bが形成されている。貫通孔60Bは、カテーテルハブ52の後端部52Aと係合するように構成されている。カテーテルハブ52の後端部52Aを、貫通孔60Bに係合させると、カテーテルハブ52とコネクタ60とが結合され、一体回転可能となる。
【0033】
図3は、ワイヤ送出装置の斜視図であり、図4は、ガイドワイヤ及びカテーテルが接続されたワイヤ送出装置の斜視図である。ワイヤ送出装置1は、筐体2とレバー31とコネクタ接続部3とガイドワイヤ収容部4と把持部20とを備える。
【0034】
筐体2は、ガイドワイヤGWを装着した場合に、その軸方向(図面X軸方向)が長手方向となる略直方体形状である。筐体2の内部には、把持部20の他、ガイドワイヤGWを把持して送出するための後述する各種構成を含む。レバー31は、後述するレバー回転軸31O(図5参照)を中心として回動可能となっており、ガイドワイヤGWを送出する際に手技者が操作する部位である(第1の所定の操作部)。本実施形態では、手技者は、片手でレバー31を握って回動させることにより、ガイドワイヤGWを送出することができる。
【0035】
コネクタ接続部3は、取付部60Cを接続するための部位であり、X軸方向に延びる1対の接続片3A,3Bを有する。接続片3A,3Bは、例えば、樹脂等の弾性体で構成され、取付部60Cの外周面をY軸方向の両側から挟み込んで、コネクタ60を回転可能に接続する。ガイドワイヤ収容部4は、送出対象のガイドワイヤGWを収容する部位であり、X軸方向に延び、X軸方向の全体に亘ってZ軸の正方向が解放された凹状に形成されている。把持部20は、ガイドワイヤGWを把持可能且つX軸方向に移動可能な部位であり、ガイドワイヤ収容部4のX軸方向の中間部に配置され、後述する把持面部21A及び22A(図6参照)を外部に開放させた状態となっている。なお、本実施形態では、ガイドワイヤGWをガイドワイヤ収容部4のZ軸の負方向の面(ここでは、底面ともいう)に載置した場合には、ガイドワイヤGWは、把持面部21Aと把持面部22AとのガイドワイヤGWを保持する把持面の隙間(配置空間)に配置されるようになっている。
【0036】
ワイヤ送出装置1に対して、カテーテル51及びガイドワイヤGWを接続する場合には、コネクタ60よりも基端側となる部分のガイドワイヤGWを、ガイドワイヤ収容部4の凹状部の底面に載置し、ガイドワイヤGWが挿入されたカテーテル51に接続された取付部60Cを接続片3A,3Bにはめ込んで装着させることとなる。このように、ワイヤ送出装置1にカテーテル51及びガイドワイヤGWを接続すると、図4に示すようになる。このように、ワイヤ送出装置1にカテーテル51及びガイドワイヤGWを接続した状態においては、操作ダイヤル60A(図1参照)を手技者が回転させることにより、カテーテル51の向きを容易に調整することができる。この状態では、後端部60DのX軸の負方向側(X軸の矢印の方向と逆の方向)の面と、筐体2のX軸の正方向側の面との間に隙間が確保されている状態となっているので、カテーテル51内を通過した血液や薬液等の液体は、その隙間から流れ落ちやすくなり、筐体2側の構成が液体と接触することを適切に防止することができる。また、レバー31を初期状態としている場合には、後述するようにガイドワイヤGWが把持されていないので、ガイドワイヤGWを前後に移動及び回転させることでその位置を調整及び向きを調整することができる。
【0037】
次に、ワイヤ送出装置1について詳細に説明する、図5は、その初期状態における上面断面図である。ワイヤ送出装置1は、筐体と把持部と押しばねと戻しばね(図11参照)とスライダとフックと把持開閉スイッチと射出スイッチとを備えており、図6は、把持部の構成図である。図7は、ワイヤ送出装置1の初期状態における底面斜視図である。図8は、射出スイッチの斜視図、図9は、スライダの斜視図、図10は、フックの斜視図である。図7は、ワイヤ送出装置1からZ軸の負方向側の筐体の一部を取り外した状態を示し、本明細書における他の図の底面斜視図においても同様の状態を示す場合がある。
【0038】
ワイヤ送出装置1は、筐体2と、把持部20と、押しばね12と、戻しばね16(図11参照)と、スライダ13と、フック14と、把持開閉スイッチ40と、射出スイッチ45と、を備える。図5に示すように、ワイヤ送出装置1は、ハンマー11を更に備えることが好ましい。押しばね12は弾性体の一例である。スライダ13及びフック14は、付勢部の一例である。ハンマー11は打撃部の一例である。ワイヤ送出装置1は、更に、図7に示すように、レバー31と、リンク35,37と、ジョイント36,38と、を備える。ここで、レバー31、リンク35,37、ジョイント36,38、及びスライダ13は、動力伝達機構の一例であり、スライダ13、フック14、及び射出スイッチ45は、変形維持部の一例であり、射出スイッチ45は、維持状態変更部及び操作部の一例であり、第2の所定の操作部の一例でもある。把持開閉スイッチ40は、把持操作部の一例である。スライダ13、フック14、及び射出スイッチ45は、解放部の一例である。
【0039】
筐体2は、ガイドワイヤGWを装着した場合におけるその軸方向(図面X軸方向)に延びた略直方体形状である。また、筐体2には、図5に示すように、把持部20をX軸方向に移動可能に収容する把持部収容部2Aと、スライダ13及びフック14をX軸方向に移動可能に収容するスライダ収容部2Bと、が形成されている。筐体2には、更に、リンク35の一端側の円筒部35Aを回動可能に支持する支持孔2Cが形成されている。
【0040】
ガイドワイヤGWを把持可能な把持部20は、把持部収容部2AにおいてX軸方向に移動可能である。把持部20は、図6に示すように、第1部品21と第2部品22と把持ばね23とを有する。第1部品21は、例えば、X軸方向に延びて形成されている把持面部21Aと、Y軸方向に延びる略円柱状の脚部21Bと、を有する。第2部品22は、X軸方向に延びて形成され、第1部品21の把持面部21Aと対向する面を有する把持面部22Aと、Z軸方向の両方向に面する凹部を有する凹状部22Bと、脚部21Bが挿入可能となる貫通孔が形成された貫通孔部22Cと、を有する。
【0041】
第1部品21と第2部品22とは、脚部21Bが、貫通孔部22Cの貫通孔に挿入された状態に組み合わされている。脚部21Bと第2部品22との間に付勢力が発生するように、把持ばね23が取り付けられており、把持ばね23の付勢力が、第1部品21の把持面部21Aの第2部品22側の面(把持面)と、第2部品22の把持面部22Aの第1部品21側の面(把持面)と、が近づくように作用する。
【0042】
本実施形態においては、把持面部21Aの第2部品22側の把持面と、把持面部22Aの第1部品21側の把持面と、の隙間(配置空間)にガイドワイヤGWを配置しておくことができ、把持ばね23の付勢力により、把持部20がガイドワイヤGWを把持することができる。この配置空間は、把持部20の移動可能方向の全体に亘って延びる開口によって外部に開放可能となっている。本実施形態では、ガイドワイヤGWをガイドワイヤ収容部4の凹状部に載置することにより、把持面部21Aの把持面と把持面部22Aの把持面とのZ軸方向での略中央にガイドワイヤGWを位置させることができる。一方、脚部21Bが第1部品21側(Y軸の負方向側)に押下されて、把持ばね23が圧縮された場合には、把持面部21Aの把持面と把持面部22Aの把持面とが離れて空間が生じるので、把持部20によりガイドワイヤGWが把持されなくなる(把持解除)。
【0043】
凹状部22Bは、筐体2の把持部収容部2AのZ軸方向の両方の壁部にX軸方向に延びて形成された図示しない凸部と係合して、把持部20のX軸方向への移動を正確にガイドするように作用する。
【0044】
射出スイッチ45は、図8に示すように、凸部45Aと延長片45Bと凸部45Cと固定孔45Dとばね収容部45Eとを有する。凸部45Aは、射出スイッチ45を回動させることにより、フック14の凸部14B(図10図13参照)と接触し、凸部14Bを押し上げることができる。延長片45Bは、Y軸の正方向に延びて形成されている。凸部45Cは、延長片45BのY軸の正方向の先端に形成され、Z軸の負方向に突出している。凸部45Cは、スライダ13の凸部13B(図9図13参照)と係合し、スライダ13のX軸方向の移動を制限可能である。固定孔45Dは、射出スイッチ45を回動可能に筐体2に固定するためのねじ46が挿入される孔である。射出スイッチ45は、ねじ46によって筐体2に固定されることにより、固定孔45Dを中心に回動可能となる。ばね収容部45Eには、射出スイッチ45をY軸の負方向に付勢する図示しないばねが収容される。なお、ばねを用いずに、射出スイッチ45自体を、弾性を有する構成とし、Y軸の負方向に付勢されているようにしてもよい。
【0045】
スライダ13は、図9に示すように、X軸の正方向に延びる延長部13Aと、延長片45B及び凸部45Cと係合可能な凸部13Bと、フック14を装着可能な装着部13Cと、を有する。延長部13Aは、X軸方向の先端側のY軸の負方向の面が、先端側ほど厚さが薄くなる傾斜を有する板状となっている。延長部13Aは、図5に示すように、先端部分がX軸方向の先端側に移動されると、把持部20の脚部21BをY軸の負方向側に押下する状態となり、把持ばね23を圧縮させて、脚部21BをY軸の負方向に移動させる。これにより、把持面部21Aの第2部品22側の面と、把持面部22Aの第1部品21側の面と、が離れるので、ガイドワイヤGWの把持が解放される。
【0046】
フック14は、スライダの装着部13Cに装着される。フック14は、図10に示すように、ばね用フック14Aと凸部14Bとを有する。ばね用フック14Aは、ハンマー11の凸部11Aと係合可能である。凸部14Bは、射出スイッチ45の凸部45Aと接触する部位である。フック14は、凸部14Bが凸部45AにY軸の正方向に押されると、弾性変形し、ばね用フック14Aが同一方向に動かされる。本実施形態では、スライダ13とフック14とは別体で構成されているが、一体として構成してもよい。
【0047】
把持部20のX軸方向の基端側には、図5に示すように、ハンマー11が、長手方向がX軸方向となるように配置され、ハンマー11の基端側の部分の周囲及びハンマー11の基端側には、押しばね12が、長手方向がX軸方向となるように配置されている。
【0048】
ハンマー11は、例えば、金属で構成され、X軸方向に移動可能となっている。ハンマー11には、スライダ収容部2B側に凸部11Aが形成されている。凸部11Aは、ばね用フック14Aに係合可能となっている。押しばね12は、例えば、金属製のばねであり、X軸方向に対して変形可能(圧縮可能)となっており、ハンマー11に対してX軸の正方向への付勢力を印加可能である。
【0049】
戻しばね16は、例えば、金属製のばねであり、X軸方向に対して変形可能(圧縮可能)となっており、把持部20を基端側に付勢している。戻しばね16による把持部20に対する付勢力は、押しばね12の初期状態(ハンマー11の移動による圧縮が発生していない状態)での把持部20に対する付勢力より小さくなっている。これにより、押しばね12が初期状態である場合には、把持部20は、移動可能範囲の最先端位置(把持部収容部2A内のX軸方向の最先端の位置)に位置し、押しばね12が圧縮されて把持部20に対して付勢力が掛からなくなった状態である場合には、把持部20は、戻しばね16の付勢力により移動可能範囲の最後端位置(把持部収容部2A内のX軸方向の最後端の位置)に位置することとなる。
【0050】
ワイヤ送出装置1において、レバー31、リンク35,37、ジョイント36,38、及びスライダ13によって、動力伝達機構が構成されている。
【0051】
レバー31は、ワイヤ送出装置1を使用する手技者が手により回動操作するための部位である。レバー31は、レバー回転軸31Oを中心に回動可能となっている。図7に示すように、レバー31とリンク35の円筒部35Aとは、図示しないジョイントを介して、レバー31からリンク35に対して回動力が伝達可能に接続されている。本実施形態では、レバー31の回動と一体して、リンク35が回動するように構成されている。
【0052】
リンク35の他端と、リンク37の一端とは、ジョイント36を介して回転自在に接続されている。リンク37の他端と、スライダ13とは、ジョイント38を介して回転自在に接続されている。スライダ13は、X軸方向に直線移動可能となっている。
【0053】
この動力伝達機構によると、レバー31がR1方向に回動されると、リンク35がR2方向に回動し、リンク35の回動に伴って、リンク37がスライダ13のX軸に沿っての移動を伴って移動する。本実施形態では、この動力伝達機構は、レバー31の回動可能な範囲において、スライダ13がX軸方向の移動範囲の全体を移動可能なように、レバー31の回動角度、リンク35,37の長さ等が調整されている。
【0054】
スライダ13が自身の移動範囲のX軸方向の最先端位置から基端側に移動すると、ばね用フック14Aがハンマー11の凸部11Aと係合し、更に移動すると、ハンマー11を基端側に移動させて、押しばね12を圧縮させることとなる。スライダ13が最後端位置に近づくと、射出スイッチ45の延長片45Bの凸部45Cがスライダ13の凸部13BをX軸の正方向に乗り越えてお互いが係合する。これにより、押しばね12が圧縮された状態で、スライダ13がX軸の正方向に移動不能となる。この後、射出スイッチ45がY軸の正方向に押されると、凸部45Aが、フック14の凸部14BをY軸の正方向の押すこととなり、フック14のX軸の正方向側の部位がY軸の正方向に変形され、フック14のばね用フック14Aとハンマー11の凸部11Aとの係合が解放される。この結果、押しばね12の変形状態(圧縮状態)が一気に解放されて、押しばね12がハンマー11をX軸方向に押すこととなる。
【0055】
次に、ワイヤ送出装置1の使用方法及びその動作について各図を参照して具体的に説明する。図11は、ワイヤ送出装置の把持準備状態における上面断面図であり、図12及び13は、送出可能状態における上面断面図及び底面斜視図であり、図14及び15は、送出時における底面図及び上面断面図である。ワイヤ送出装置1は、(a)ガイドワイヤGWの把持、(b)ガイドワイヤGWの先端方向への把持部20の移動、(c)ガイドワイヤGWの把持解除、把持部20の後端方向への移動、をこの順で動作するように、把持部20とハンマー11とスライダ13とフック14とが連動するように構成されている。
【0056】
まず、手技者が、ガイドワイヤGWを血管内に挿入した後、血管に沿って閉塞部位までガイドワイヤGWを押し進める。次いで、ガイドワイヤGWの先端が閉塞部位に到達した後、ガイドワイヤGWをガイドとしてカテーテル51を閉塞部位まで押し進める。次いで、カテーテル51のカテーテルハブ52にコネクタ60を接続し、コネクタ60をワイヤ送出装置1のコネクタ接続部3にZ軸の正方向から押し込みつつ、ガイドワイヤGWの基端側を筐体2のガイドワイヤ収容部4にZ軸の正方向側から収容させて、コネクタ60をワイヤ送出装置1に接続する。
【0057】
この場合には、図5に示すように、延長部13Aによって脚部21BがY軸の負方向に押さえられ、把持ばね23が圧縮されているので、把持面部21Aの第2部品22側の面と把持面部22Aの第1部品21側の面とが離れ、配置空間が形成され、把持部20によるガイドワイヤGWの把持が解放された状態となっている。このため、上述のように、ガイドワイヤGWを挿入されたカテーテル51をワイヤ送出装置1に装着することにより、ガイドワイヤGWを容易に配置空間に収容させることができる。このため、ガイドワイヤGWをワイヤ送出装置1により送出させるための準備時間を短縮することができ、患者や手技者の負荷を軽減することができる。
【0058】
次いで、レバー31を図7のR1方向に少し回動させると、スライダ13及びフック14が基端側にスライドし、図11に示すように、ばね用フック14Aにハンマー11の凸部11Aが係合しているので、スライダ13の移動に伴ってハンマー11が基端側に移動し、押しばね12が圧縮される。
【0059】
この際、把持部20がハンマー11によってX軸の正方向に押されなくなるので、把持部20は、戻しばね16の付勢力により移動可能範囲の最後端までスライドする。これにより、把持部20は、図11に示すように、移動可能範囲の最先端(初期位置)から移動可能範囲の最後端までの距離Dだけ移動する。この距離Dが、ワイヤ送出装置1による1回の送出量に相当する。例えば、ワイヤ送出装置1の1回の送出量が2mmである場合には、初期位置から2mmだけ後端側にスライドされることとなる。なお、この際には、延長部13Aは、把持部20の把持ばね23を圧縮する位置に存在するように構成されているので、把持部20がガイドワイヤGWを把持していない状態が維持されている。
【0060】
さらに、レバー31をR1方向に回動させると、スライダ13及びフック14が基端側にさらにスライドし、ばね用フック14Aがハンマー11の凸部11Aに係合している状態が維持されるので、スライダ13及びフック14の移動に伴ってハンマー11が基端側に移動し、押しばね12がさらに圧縮される。
【0061】
この際、延長部13Aは、脚部21Bと接触しなくなって把持ばね23を圧縮しなくなり、把持面部21Aの第2部品22側の面と把持面部22Aの第1部品21側の面とでガイドワイヤGWが把持されることとなる。
【0062】
さらに、レバー31をスライダ13が移動範囲の最も基端側となる位置(送出可能位置)まで回動させると、スライダ13及びフック14が基端側にさらにスライドし、図12及び図13に示すように、射出スイッチ45の凸部45Cがスライダ13の凸部13Bを乗り越えて、凸部13BのX軸の正方向に位置するようになり、お互いが係合する。これにより、スライダ13がX軸の正方向に移動不能となり、押しばね12が圧縮された状態が維持され、送出が可能な状態(圧縮維持状態:送出可能状態)となる。
【0063】
この後、手技者により射出スイッチ45がY軸の正方向に押されると、図14に示すように、凸部45Aが、凸部14BをY軸の正方向の押すこととなり、フック14のX軸の正方向側の部位がY軸の正方向に屈曲し、ばね用フック14Aが図15に示すようにY軸の正方向に移動し、ばね用フック14Aがハンマー11の凸部11Aに係合している状態が解放される。また、延長片45Bの凸部45Cがスライダ13のY軸の正方向の面よりも正方向に移動し、凸部13Bと係合しなくなり、スライダ13は、X軸の正方向に移動可能となる。
【0064】
これにより、押しばね12の付勢力が一気にハンマー11の先端方向の移動に充てられて、ハンマー11が先端方向に移動して、ハンマー11の先端側が把持部20の基端側と衝突することとなる。
【0065】
この結果、ガイドワイヤGWを把持する把持部20がハンマー11との衝突による衝撃により、先端方向に移動し、把持部20の最先端位置に停止する。この際、スライダ13の延長部13Aが把持部20と接触していないので、ガイドワイヤGWを把持した状態を維持したままである。
【0066】
したがって、把持部20は、最後端位置から最先端位置までガイドワイヤGWを把持した状態を維持して移動することとなる。この結果、ガイドワイヤGWは、把持部20の最後端位置から最先端位置までの距離Dだけ先端側に送出されることとなる。
【0067】
この後、手技者がレバー31をR1と逆方向に回動させると、スライダ13及びフック14がX軸の正方向に移動し、ワイヤ送出装置1を図5に示す初期状態に戻すことができる。ここまでの動作が、ワイヤ送出を1回行う単発モード(第2のモード)の動作に対応する。単発モードでは、(a)把持部20によるガイドワイヤGWの把持、及び、スライダ13及びフック14による押しばね12の変形、の後に、射出スイッチ45を押下することで、(b)押しばね12の変形の解除及び付勢によって、ガイドワイヤGWを把持した把持部20を先端側へ送り出し、次いで、(c)把持解除を行い、ガイドワイヤGWを送出することができる。
【0068】
ガイドワイヤGWを連続して送出する必要がある場合には、レバー31を連続的に回動させ、同様な操作を行えばよい(第1のモード)。射出スイッチ45を押された状態に維持することにより、ワイヤ送出装置1を連続モードで動作させることができる。射出スイッチ45が押された状態が維持されて連続モードとされると、手技者がレバー31を操作して、押しばね12が圧縮されると、射出スイッチ45の凸部45Aが凸部14Bを押した状態であるので、フック14のバネ用フック14Aがハンマー11の凸部11Aから外れて、ハンマー11が把持部220に衝突することとなる。この結果、ガイドワイヤGWを先端方向に送出することができる。この後、手技者がレバー31を連続して操作することにより、ガイドワイヤGWを連続して先端側に送出することができる(第1のモード)。すなわち、前述の(a)、(b)及び(c)の順で一連の動作を繰り返すことが可能となる。
【0069】
このように、ワイヤ送出装置1によると、押しばね12に蓄積した付勢力による衝撃力をガイドワイヤGWに加えて、適切な量だけ送出することができる。このように、衝撃力をガイドワイヤGWに加えることができるので、ガイドワイヤGWにより効果的に閉塞物を穿通することができる。
【0070】
次に、把持部20によって把持されているガイドワイヤGWの把持を開放するための把持開閉スイッチ40の周辺部の構成及びその動作について説明する。図16は、ワイヤ送出装置の把持開閉スイッチの非操作時の側面断面図であり、図17及び18は、把持開閉スイッチの操作時における上面断面図及び側面断面図である。
【0071】
把持開閉スイッチ40は、図16に示すように断面がL字状の形状をしており、手技者が押すための押下部40Aと、把持部20の脚部21Bに対してY軸の正方向に配置され、押下部40Aが押された場合に、脚部21BをY軸の負方向に押すように作用する作用部40Bと、を有する。把持開閉スイッチ40は、Y軸方向に移動可能となっている。把持開閉スイッチ40は、ばね41によりY軸の正方向に付勢されており、押下部40Aを手技者が押していない場合に、図16に示すように、作用部40Bが脚部21Bに接触しない位置となるように構成されている。本実施形態では、把持開閉スイッチ40は、押下部40Aを手技者が押していない場合には、図11に示すように、作用部40B(図16参照)がスライダ13の延長部13Aと接触しない位置となるように調整されている。
【0072】
図16に示す状態においては、把持部20の把持ばね23が圧縮されていないので、第1部品21の把持面部21Aの第2部品22側の面と、第2部品22の把持面部22Aの第1部品21側の面との間にガイドワイヤGWが把持されている。
【0073】
例えば、ガイドワイヤ送出装置1が図12図13に示すように送出可能状態にある場合において、図17図18に示すように、把持開閉スイッチ40(押下部40A)がY軸の負方向に押されると、作用部40Bが脚部21BをY軸の負方向に押さえ、把持ばね23が圧縮されるので、把持面部21Aの第2部品22側の面と把持面部22Aの第1部品21側の面とが離れて、把持部20によるガイドワイヤGWの把持が解放された状態となる。
【0074】
このように、ワイヤ送出装置1によると、把持開閉スイッチ40を押すことにより、例えば、図12に示すようにワイヤ送出装置1が送出可能状態にある場合であっても把持部20によるガイドワイヤGWの把持を解除することができる。このため、送出可能状態となった後に、把持部20によるガイドワイヤGWの把持を解除させて、ガイドワイヤGWの位置や向きの変更等の調整を容易に行うことができる。
【0075】
次に、把持部20によって把持されているガイドワイヤGWの把持を開放するための変形例に係る構成及びその動作について説明する。本変形例は、Z軸方向に押すことにより把持部20による把持を解除することができるようにした把持開閉スイッチである。図19は、その変形例に係る把持開閉スイッチの非操作時における側面断面図であり、図20は、操作時における側面断面図である。
【0076】
変形例に係る把持開閉スイッチ42は、図19に示すように、手技者が押すための押下部42Aと、把持部20の脚部21Bに対してZ軸の負方向に配置され、押下部42Aが押された場合に、脚部21BをY軸の負方向に押すように作用する作用部42Bと、を有する。作用部42BのZ軸の正方向の端部のY軸の負方向の面は、Z軸の負方向に行くほどY軸の負方向になるような斜面42Cとなっている。このため、作用部42BがZ軸の正方向に押されると、斜面42Cが脚部21Bにあたって、脚部21Bは、Y軸の負方向に押されることとなる。把持開閉スイッチ42は、Z軸方向に移動可能となっている。把持開閉スイッチ42は、ばね43によりZ軸の負方向に付勢されており、押下部42Aを手技者が押していない場合に、作用部42Bの斜面42Cが脚部21Bに接触しない位置となるように構成されている。
【0077】
図19に示す状態においては、把持部20の把持ばね23が圧縮されていないので、第1部品21の把持面部21Aの第2部品22側の面と、第2部品22の把持面部22Aの第1部品21側の面との間にガイドワイヤGWが把持されている。
【0078】
例えば、ガイドワイヤ送出装置1が送出可能状態にある場合において、図20に示すように、把持開閉スイッチ42(押下部42A)がZ軸の正方向に押されると、作用部42Bの斜面42Cが脚部21BをY軸の負方向に押さえ、把持ばね23が圧縮されるので、第1部品21の把持面部21Aの第2部品22側の面と、第2部品22の把持面部22Aの第1部品21側の面との間が離れて配置空間が形成され、把持部20によるガイドワイヤGWの把持が解放された状態となる。
【0079】
このように、把持開閉スイッチ42を押すことにより、ワイヤ送出装置1が送出可能状態にある場合であっても把持部20によるガイドワイヤGWの把持を解除することができる。このため、送出可能状態となった後に、把持部20によるガイドワイヤGWの把持を解除させて、ガイドワイヤGWの位置や向きの変更等の調整を容易に行うことができる。
【0080】
[第2実施形態]
第2実施形態に係るワイヤ送出装置101について各図を参照して説明する。図21及び22は、ワイヤ送出装置101の初期状態における上面断面図及び底面斜視図であり、図23は、ワイヤ送出装置101の射出スイッチの斜視図であり、図24は、スライダの第1の斜視図であり、図25は、スライダの第2の斜視図である。なお、第1実施形態に係るワイヤ送出装置1と同様な部分については、同一番号を付し、重複する説明を省略してある。
【0081】
ワイヤ送出装置101は、筐体2に凸部2D(図22参照)をさらに備え、リンク35に凸部35Bを更に備え、射出スイッチ45ではなく射出スイッチ110を備え、スライダ13及びフック14ではなくスライダ113を備えている。
【0082】
筐体2の凸部2Dは、スライダ113のフック113Dと係合可能な部位である。リンク35の凸部35Bは、射出スイッチ110の凸部110D(図23参照)と係合可能な部位である。
【0083】
射出スイッチ110は、図23に示すように、凸部110Aと、凸部110Bと、延長片110Cと、凸部110Dと、固定孔110Eと、ばね収容部110Fと、を有する。凸部110Aは、射出スイッチ110を回動させることにより、スライダ113の凸部113B(図24参照)と接触し、凸部113Bを押し上げることができる。凸部110Bは、射出スイッチ110を回動させることにより、スライダ113のフック113Dと接触し、フック113Dを押し上げることができる。延長片110Cは、Y軸の正方向に延びて形成されている。凸部110Dは、延長片110CのY軸の正方向の先端にZ軸の負方向に突出する。凸部110Dは、リンク35の凸部35Bと係合し、凸部113Dと凸部2Dとの係合を阻止し、スライダ113のX軸方向の移動を可能とする。固定孔110Eは、射出スイッチ110を回動可能に筐体2に固定するためのねじ111(図22参照)が挿入される孔である。射出スイッチ110は、ねじ111によって筐体2に固定されることにより、回転孔110Eを中心に回動可能となる。ばね収容部110Fには、射出スイッチ110をY軸の負方向に付勢する図示しないばねが収容される。なお、ばねを備えずに、射出スイッチ110自体を、弾性を有する構成とし、Y軸の負方向に付勢されているようにしてもよい。
【0084】
スライダ113は、図24及び図25に示すように、延長部113Aと、凸部113Bと、ばね用フック113Cと、フック113Dと、を有する。延長部113Aは、X軸の正方向に延び、X軸方向の先端側のY軸の負方向の面が、先端側ほど厚さが薄くなる傾斜を有する板状となっている。延長部113Aは、図21に示すように、先端部分がX軸方向の先端側に移動されると、脚部21BをY軸の負方向側に押下する状態となり、把持ばね23を圧縮させて、脚部21BをY軸の負方向に移動させる。これにより、第1部品21の把持面部21Aの第2部品22側の面と、第2部品22の把持面部22Aの第1部品21側の面との間が離れるので、ガイドワイヤGWの把持が解放される。凸部113Bは、射出スイッチ110の凸部110Aと接触する部位である。ばね用フック113Cは、ハンマー11の凸部11Aと係合可能である。凸部113Bが凸部110Aに押されると、ばね用フック113Cが同一方向に動かされる。フック113Dは、筐体2の凸部2Dと係合可能である。フック113Dが凸部2Dと係合すると、スライダ113のX軸の正方向への移動が制限される。
【0085】
次に、ワイヤ送出装置101の使用方法及びその動作について各図を参照して具体的に説明する。図26及び27は、ワイヤ送出装置の送出可能状態における上面断面図及び底面斜視図であり、図28は、ワイヤ送出装置の送出時における底面斜視図であり、図29は、ワイヤ送出装置の送出後における側面断面図である。図26乃至図29においては、ガイドワイヤGW、カテーテル51、コネクタ60等については図示を省略してあるものの、ワイヤ送出装置101に、カテーテル51及びコネクタ60が接続されている状態となっているものとして、以降の処理について説明する。なお、第1実施形態に係るワイヤ送出装置と同様な部分については、同一番号を付し、重複する説明を省略する。
【0086】
ワイヤ送出装置101もまた、ガイドワイヤGWの把持、ガイドワイヤGWの先端方向への把持部20の移動、ガイドワイヤGWの把持解除、把持部20の後端方向への移動、をこの順で動作するように、把持部20とハンマー11とスライダ113とが連動するように構成されている。
【0087】
この状態においては、ワイヤ送出装置101は、図21に示すように、延長部113Aによって脚部21BがY軸の負方向に押さえられ、把持ばね23が圧縮されているので、第1部品21の把持面部21Aの第2部品22側の面と、第2部品22の把持面部22Aの第1部品21側の面との間が離れて配置空間が形成されており、把持部20によるガイドワイヤGWの把持が解放された状態となっている。
【0088】
次いで、レバー31を図22のR1方向に回動させると、スライダ113が基端側にスライドし、図26に示すように、スライダ113のばね用フック113Cにハンマー11の凸部11Aが係合しているので、スライダ113の移動に伴ってハンマー11が基端側に移動し、押しばね12が圧縮される。
【0089】
この際、把持部20がハンマー11によってX軸の正方向に押されなくなるので、把持部20は、戻しばね16(図11参照)の付勢力により移動可能範囲の最後端までスライドする。これにより、把持部20は、移動可能範囲の最先端(初期位置)から移動可能範囲の最後端まで移動する。
【0090】
さらに、レバー31をR1方向に回動させると、スライダ113が基端側にさらにスライドし、スライダ113のばね用フック113Cがハンマー11の凸部11Aに係合している状態が維持されるので、スライダ113の移動に伴ってハンマー11が基端側に移動し、押しばね12がさらに圧縮される。
【0091】
この際、延長部113Aは、把持部20の脚部21Bと接触しなくなって把持ばね23を圧縮しなくなり、把持面部21Aの第2部品22側の面と把持面部22Aの第1部品21側の面とでガイドワイヤGWが把持されることとなる。
【0092】
さらに、レバー31をスライダ113が移動範囲の最も基端側となる位置(送出可能位置)まで回動させると、スライダ113が基端側にさらにスライドし、図26及び図27に示すように、フック113Dが、筐体2の凸部2DをX軸の負方向に乗り越えて、フック113Dと凸部2Dとが係合する。これにより、押しばね12が圧縮状態で維持され、送出が可能な状態(圧縮維持状態:送出可能状態)となり、スライダ113がX軸の正方向に移動不能となる。
【0093】
この後、手技者により射出スイッチ110がY軸の正方向に押されると、図28に示すように、凸部110Aが、スライダ113の凸部113BをY軸の正方向の押すこととなり、これにより、ばね用フック113CがY軸の正方向に移動し、ばね用フック113Cがハンマー11の凸部11Aに係合している状態から解放される。
【0094】
これにより、押しばね12の付勢力が一気にハンマー11の先端方向の移動に充てられて、ハンマー11が先端方向に移動して、ハンマー11の先端側が把持部20の基端側と衝突することとなる。
【0095】
この結果、ガイドワイヤGWを把持する把持部20がハンマー11との衝突による衝撃により、先端方向に移動し、把持部20の最先端位置に停止する。この際、スライダ113の延長部113Aが把持部20と接触していないので、ガイドワイヤGWを把持した状態を維持したままである。
【0096】
したがって、把持部20は、最後端位置から最先端位置までガイドワイヤGWを把持した状態を維持して移動することとなる。この結果、ガイドワイヤGWは、把持部20の最後端位置から最先端位置まで先端側に送出されることとなる。
【0097】
その後、手技者が、射出スイッチ110をY軸の正方向にさらに押すと、凸部110Bが、フック113DをY軸の正方向に押し、フック113Dが筐体2の凸部2Dに係合している状態から解放され、図29に示すように、凸部110Dが、リンク35の凸部35BをY軸の正方向に乗り越える。これにより、射出スイッチ110は、凸部110Dが凸部35BよりもY軸の正方向に位置する状態が維持される。この状態においては、フック113Dが凸部2Dに係合していない状態が維持される。すなわち、スライダ113がX軸の正方向に移動可能な状態が維持される。
【0098】
この後、手技者がレバー31をR1方向と逆方向に回動させると、スライダ113がX軸の正方向に移動し、ワイヤ送出装置101を図21に示す初期状態に戻すことができる。なお、ガイドワイヤGWを連続して送出する必要がある場合には、レバー31を上記同様に回動させ、同様な操作を行えばよい。
【0099】
このように、本実施形態に係るワイヤ送出装置101によると、押しばね12に蓄積した付勢力による衝撃力をガイドワイヤGWに加えて、適切な量だけ送出することができる。このように、衝撃力をガイドワイヤGWに加えることができるので、ガイドワイヤGWにより効果的に閉塞物を穿通することができる。
【0100】
[第3実施形態]
第3実施形態に係るワイヤ送出装置201について説明する。図30及び31は、第3実施形態に係るワイヤ送出装置の初期状態における上面断面図及び側面断面図である。第1実施形態及び第2実施形態に係るワイヤ送出装置と同様な部分については、同一番号を付し、重複する説明を省略する。
【0101】
ワイヤ送出装置201は、ワイヤ送出装置1において、把持部20ではなく把持部220を備え、スライダ13及びフック14ではなくスライダ210を備え、把持開閉スイッチ40等の把持開閉ではなく把持開閉スイッチ240を備えている。
【0102】
スライダ210は、スライダ13及びフック14を一体化させた構成を有し、延長部13Aに代えて延長部210Aを有する。延長部210Aには、スライダ210の移動時において、把持部220の操作凸部223Aを案内するスリット210Bが形成されている。スリット210Bは、X軸の正方向の端部は、操作凸部223AのZ軸方向の移動可能範囲以上の幅を有している。本実施形態では、スリット210Bは、スライダ210が基端側に移動した場合に、操作凸部223Aが、把持部220がガイドワイヤGWの把持をした状態となる位置(Z軸の負方向側)に案内され、スライダ210が先端側の端部まで移動した場合に、操作凸部223Aが、把持部220がガイドワイヤGWの把持を解除した状態となる位置(Z軸の正方向側)に案内されるように形成されている。なお、スリット210Bの形状はこれに限られず、使用状況に応じて変更させてもよい。
【0103】
次に、把持部220について説明する。図32は、把持部の分解斜視図であり、図33及び34は、把持部の把持解除状態の斜視図及び側面断面図であり、図35及び36は、把持部の把持状態の斜視図及び側面断面図である。
【0104】
把持部220は、第1挟持部の一例としての本体部221と、第2挟持部の一例としての対向部品222と、カム部223と、把持解除ばね224と、支持ピン225と、止め輪226と、を有する。
【0105】
本体部221は、把持面221Aと壁部221Bとを有する。把持面221Aは、ガイドワイヤGWを把持するY軸の負方向の面であり、例えば、この面に、ゴム部材を取り付けてもよい。本実施形態では、把持面221Aは、把持部220の移動可能方向(X軸方向)と交差する面を有している。壁部221Bは、カム部223を回動可能に支持する支持ピン225を挿入させるための孔221Cと、対向部品222を回動可能に支持する支持ピン225を挿入させるための孔221Dと、を有する。
【0106】
カム部223は、操作凸部223Aと貫通孔223Bと接触面223Cとを有する。操作凸部223Aは、カム部223の側面に設けられ、カム部223の状態を操作するための部位である。貫通孔223Bは、カム部223を回転支持するための支持ピン225を挿入させる孔である。接触面223Cは、対向部品222のY軸の正方向の面と接触する面である。接触面223CのX軸な垂直な面での断面形状(側面と同じ形状)は、直線部223Dと曲線部223Eとを有する。曲線部223Eの中間点には、カム部223の回動軸からの距離が最大となる最大外形部223Fがある。最大外形部223Fは、カム部223を、把持部220がガイドワイヤGWを把持した状態としている場合に接触する曲線部223Eの位置よりも少しZ軸の正方向側に位置している。このため、カム部223を、把持部220がガイドワイヤGWを把持している状態に維持させておくことができる。
【0107】
対向部品222は、把持面222Aと貫通孔222Bとを有する。把持面222Aは、ガイドワイヤGWを把持するY軸の正方向の面であり、本体部221の把持面221Aに対応する面形状をしている。把持面222Aに、ゴム部材を取り付けてもよい。貫通孔222Bは、対向部品222を回転支持するための支持ピン225を挿入させる孔である。
【0108】
把持解除ばね224は、本体部221と対向部品222との対向面の間隔を開くように付勢されて配置される。本実施形態では、把持解除ばね224は、カム部223が把持部220による把持状態を固定する状態でない場合、具体的には、カム部223と対向部品222とが最大外形部223FよりもZ軸の正方向の位置で接触するようになっている場合や直線部223Dに接触するようになっている場合に、本体部221と対向部品222との対向面の間隔を開くように作用する。
【0109】
支持ピン225は、円柱状の部材であり、第1の端部に頭部225Aを有し、第1の端部と反対側の第2の端部側に止め輪226をはめ込む溝部225Bを有する。
【0110】
止め輪226は、支持ピン225の溝部225Bに装着されることにより、孔221C,221Dからの支持ピン225の脱落を防止する。
【0111】
次に、把持部220の組立方法について説明する。
【0112】
まず、本体部221に対して把持解除ばね224を組み込んだ状態で、支持ピン225を、本体部221のX軸の負方向の孔221D、対向部品222の貫通孔222B、及び本体部221のX軸の正方向の孔221Dに挿入させ、支持ピン225の溝部225Bに止め輪226を装着する。次いで、支持ピン225を、本体部221のX軸の負方向の孔221C、カム部223の貫通孔223B、本体部221のX軸の正方向の孔221Cに挿入させ、支持ピン225の溝部225Bに止め輪226を装着する。これにより、図33に示す把持部220が完成する。
【0113】
図33に示す把持部220は、ガイドワイヤGWの把持が解除されている状態(把持解除状態)である。この状態においては、把持部220は、図34に示すように、カム部223の接触面223Cの直線部223Dが、対応部品222のY軸の正方向の面に接触しており、把持面222Aと把持面221Aとの間が離れた状態となっている。
【0114】
これに対して、カム部223の操作凸部223AをR3方向に回動させると、カム部223の接触面223Cの曲線部223Eが、対応部品222のY軸の正方向の面に接触するようになる。これにより、対向部品222の把持面222AがR4方向に回動し、図35に示すように、把持面222Aと把持面221Aとの間隔が狭まり、最終的には、接触した状態となる。
【0115】
この状態においては、把持部220は、図36に示すように、最大外形部223FよりもZ軸の負方向の位置が、対応部品222のY軸の正方向の面に接触し、把持面222Aと把持面221Aとが接触した状態となっている。最大外形部223Fは、カム部223の回動軸からの距離が、接触している位置よりも長いので、カム部223がR3方向と逆方向に移動することを抑制し、結果として、把持面222Aと把持面221Aとが接触した状態が維持される。なお、操作凸部223Aに対して、R3方向の逆方向に所定以上の力が加えられた場合には、この状態が解消され、把持部220は、図33及び図34に示すように、把持面222Aと把持面221Aとが離れた状態、すなわち、把持解除状態となる。なお、把持面222Aと把持面221Aとが接触した状態が維持されるように、対向部品222の上面に、カム部223がR3方向と逆方向に移動することを抑制する突起を設けるようにしてもよい。
【0116】
次に、把持開閉スイッチ240について説明する。図37は、ワイヤ送出装置の把持開閉スイッチの斜視図である。
【0117】
把持開閉スイッチ240は、手技者が操作するための操作部240Aと、把持部220の操作凸部223Aが収容される収容部240Bと、を有する。把持開閉スイッチ240は、Z軸方向に水平移動可能なように筐体2に装着されている。収容部240Bは、Y軸の負方向の面のみが開放された直方体形状となっており、収容部240BのX軸方向の幅は、把持部220のX軸方向の移動範囲に対応する操作凸部223AのX軸方向の移動範囲の幅となっている。このため、把持部220がX軸方向のいずれの位置にあっても操作凸部223Aが収容部240Bに収容されることが保証される。したがって、把持開閉スイッチ240を操作すると、把持部220がX軸方向のどこにあっても、操作に従って、操作凸部223AのZ軸方向の位置を変更することができる。例えば、本実施形態では、後述する図38及び図39に示すように、ワイヤ送出装置201が送出可能状態となっている場合において、把持開閉スイッチ240により操作凸部223Aの位置を変更することができる。このため、送出可能状態において、把持部220によるガイドワイヤGWの把持を解除させて、ガイドワイヤGWの位置や向きの変更等の調整を容易に行うことができる。なお、本実施形態では、スライダ210のスリット210Bによって操作凸部223Aの移動範囲が規制されている場合には、把持開閉スイッチ240により操作凸部223Aの位置を変更することはできない。
【0118】
次に、第3実施形態に係るワイヤ送出装置201の使用方法及びその際の動作について各図を参照して具体的に説明する。図38及び39は、ワイヤ送出装置の送出可能状態における上面断面図及び側面断面図である。図38及び図39においては、ガイドワイヤGW、カテーテル51、コネクタ60を省略しているものの、ワイヤ送出装置201に、カテーテル51及びコネクタ60が接続されている状態となっていると想定して説明する。
【0119】
ワイヤ送出装置201は、ガイドワイヤGWの把持、ガイドワイヤGWの先端方向への把持部220の移動、ガイドワイヤGWの把持解除、把持部220の後端方向への移動、をこの順で動作するように、把持部220とハンマー11とスライダ210とが連動するように構成されている。
【0120】
この場合には、ワイヤ送出装置201は、図31に示すように、延長部210Aのスリット210Bによって把持部220の操作凸部223Aが、把持部220の把持を解除する位置に案内されているので、対向部品222の把持面222Aと、本体部品221の把持面221Aとが離れた状態となっており、把持部220によるガイドワイヤGWの把持が解放された状態となっている。
【0121】
次いで、レバー31をR1方向に回動させると、スライダ210が基端側にスライドし、図38に示すように、ばね用フック14Aに凸部11Aが係合しているので、スライダ210の移動に伴ってハンマー11が基端側に移動し、押しばね12が圧縮される。
【0122】
この際、把持部220がハンマー11によってX軸の正方向に押されなくなるので、把持部220は、戻しばね16の付勢力により移動可能範囲の最後端までスライドする。これにより、把持部20は、移動可能範囲の最先端(初期位置)から移動可能範囲の最後端まで移動する。本実施形態では、戻しばね16を用いずに、スライダ210のスリット210Bの斜面に操作凸部223Aを引っかけて戻すようにしてもよい。
【0123】
さらに、レバー31をR1方向に回動させると、スライダ210が基端側にさらにスライドし、ばね用フック14Aがハンマー11の凸部11Aに係合している状態が維持されるので、スライダ210の移動に伴ってハンマー11が基端側に移動し、押しばね12がさらに圧縮される。
【0124】
この際、延長部210Aのスリット210Bによって、把持部220の操作凸部223Aが、把持部220の把持を行う位置に案内されるので、対向部品222の把持面222Aと、本体部品221の把持面221Aとの間のガイドワイヤGWが把持されることとなる。
【0125】
レバー31をスライダ210が移動範囲の最も基端側となる位置(送出可能位置)まで回動させると、スライダ210が基端側にさらにスライドし、図12及び図13に示す場合と同様に、射出スイッチ45の凸部45Cがスライダ210の凸部13Bを乗り越えて、凸部13BのX軸の正方向に位置するようになり、お互いが係合する。これにより、押しばね12が圧縮された状態が維持され、送出が可能な状態(圧縮維持状態:送出可能状態)となり、スライダ210がX軸の正方向に移動不能となる。
【0126】
この後、手技者により射出スイッチ45がY軸の正方向に押されると、図14に示す場合と同様に、凸部45Aが、スライダ210の凸部14BをY軸の正方向に押すこととなり、ばね用フック14Aが図15に示す場合と同様にY軸の正方向に移動し、ばね用フック14Aが凸部11Aに係合している状態が解放される。また、凸部45Cがスライダ210のY軸の正方向の面よりも正方向に移動し、凸部13Bと係合しなくなり、スライダ210は、X軸の正方向に移動可能となる。
【0127】
これにより、押しばね12の付勢力が一気にハンマー11の先端方向の移動に充てられて、ハンマー11が先端方向に移動して、ハンマー11の先端側が把持部220の基端側と衝突することとなる。
【0128】
この結果、ガイドワイヤGWを把持する把持部220がハンマー11との衝突による衝撃により、先端方向に移動し、把持部220の最先端位置に停止する。この際、把持部220は、ガイドワイヤGWを把持した状態を維持したままである。
【0129】
したがって、把持部220は、最後端位置から最先端位置までガイドワイヤGWを把持した状態を維持して移動することとなる。この結果、ガイドワイヤGWは、把持部220の最後端位置から最先端位置までの距離だけ先端側に送出されることとなる。
【0130】
この後、手技者がレバー31をR1と逆方向に回動させると、スライダ210がX軸の正方向に移動し、ワイヤ送出装置201を図30に示す初期状態に戻すことができる。ガイドワイヤGWを連続して送出する必要がある場合には、レバー31を上記同様に回動させ、同様な操作を行えばよい。
【0131】
このように、本実施形態に係るワイヤ送出装置201によると、押しばね12に蓄積した付勢力による衝撃力をガイドワイヤGWに加えて、適切な量だけ送出することができる。このように、衝撃力をガイドワイヤGWに加えることができるので、ガイドワイヤGWにより効果的に閉塞物を穿通することができる。
【0132】
次に、変形例に係る把持部260を各図を参照して説明する。図40は、把持部260の分解斜視図であり、図41は、把持部260の把持解除状態の斜視図である。把持部260は、ワイヤ送出装置201の把持部220と入れ替えて同様に使用することができる。
【0133】
把持部260は、本体部261と、対向部品262と、背面部263と、カム部264と、把持解除ばね265と、を有する。
【0134】
本体部261は、把持面261Aと、対向する設置壁部261Bと、を有する。把持面261Aは、ガイドワイヤGWを把持するY軸の負方向の面であり、例えば、この面に、ゴム部材を取り付けてもよい。設置壁部261Bは、カム部264のX軸方向の両端のボス264Bをはめ込むための孔261Cと、対向部品262のX軸方向の両端のボス262Bをはめ込むための孔261Dと、背面部263に対してはめ込むためのボス261Eと、を有する。
【0135】
カム部264は、操作凸部264Aと、ボス264Bと、接触面264Cと、固定凸部264Dと、を有する。操作凸部264Aは、カム部264の側面に立設され、カム部264の状態を操作するための部位である。ボス264Bは、円柱状の形状をし、カム部264のX軸方向の両端に形成されている。接触面264Cは、対向部品262のY軸の正方向の面と接触する面である。接触面264Cの断面形状は、把持部220のカム部223の接触面223Cと同様な形状をしている。固定凸部264Dは、背面部263の固定凹部263Bと係合し、カム部264を、把持部260がガイドワイヤGWを把持した状態とする状態に維持可能である。
【0136】
対向部品262は、把持面262Aとボス262Bとを有する。把持面262Aは、ガイドワイヤGWを把持するY軸の正方向の面であり、例えば、この面に、ゴム部材を取り付けてもよい。ボス262Bは、円柱状の形状をし、対向部品262のX軸方向の両端に形成されている。
【0137】
背面部263は、孔263Aと固定凹部263Bとを有する。孔263Aは、X軸方向の両端に本体部261のボス261Eをはめ込むための孔である。固定凹部263Bは、カム部264の固定凸部264Dと係合し、カム部264を、把持部260がガイドワイヤGWを把持した状態とする状態に維持可能である。
【0138】
把持解除ばね265は、本体部261と対向部品262との対向面の間隔を開くように付勢されて配置される。本実施形態では、把持解除ばね265は、カム部264が把持部260による把持状態を固定する状態でない場合、具体的には、カム部264の固定凸部264Dが背面部263の固定凹部263Bに係合していない場合に、本体部261と対向部品262との対向面の間隔を開くように作用する。
【0139】
次に、把持部260の組立方法について説明する。
【0140】
まず、本体部261に対して把持解除ばね265を組み込んだ状態で、対向部品262又は本体部261を弾性変形させて対向部品262のボス262Bを、本体部261の設置壁部261Bの孔261Dにはめ込む。次いで、カム部264又は本体部261を弾性変形させてカム部264のボス264Bを、本体部261の設置壁部261Bの孔261Cにはめ込む。その後、背面部263又は本体部261を弾性変形させて本体部261のボス261Eを、背面部263の孔263Aにはめ込む。これにより、図41に示す把持部260が完成する。
【0141】
[第4実施形態]
第4実施形態に係るワイヤ送出装置を各図を参照して説明する。図42及び43は、そのワイヤ送出装置の蓋開放時の上面図及び断面図であり、図44は、蓋閉鎖時の上面図であり、図45は、蓋の斜視図であり、図46は、蓋の装着部分の拡大斜視図である。なお、第1実施形態乃至第3実施形態に係るワイヤ送出装置と同様な部分については、同一番号を付し、重複する説明を省略する。
【0142】
ワイヤ送出装置301は、図42に示すように、更に、ガイドワイヤ収容部4を覆うための開閉部310を備え、前述の装置で用いていたレバー31に代えて、レバー320(付勢操作部の一例)を備える。開閉部310は、図43に示すように、蓋311とシャフト312とばね313とねじ314とを有している。
【0143】
蓋311は、図45に示すように、X軸方向に延びる円筒部311Aと、円筒部311Aに接続され、ガイドワイヤ収容部4(載置部の一例)の少なくとも一部を覆うための覆部311Cと、蓋311を回転させる操作を行うための回転操作部311Bと、を有する。
【0144】
円筒部311Aは、長手方向に貫通する貫通孔311Eとボス部311Fとを有する。貫通孔311Eは、取付用のシャフト312を挿入させるための孔である。ボス部311Fは、蓋311の回動状態を所定の状態で固定するために利用するボスであり、貫通孔311Eに対して、回転操作部311Bがある側に配置されている。覆部311Cは、リブ2Jとの接触を防止する開口部311Dを有する。
【0145】
ワイヤ送出装置301の筐体2には、図46に示すように、取付領域2Eと非貫通孔2Fと貫通孔2Gとリブ2Jとが形成されている。更には、筐体2には、非貫通孔2Fに対して、Z軸の正方向に延びて形成された溝2Hと、Y軸の負方向に延びて形成された溝2Iと、が形成されている。
【0146】
蓋311は、図43に示すように、筐体2の貫通孔2G、ばね313、蓋311の貫通孔311E、非貫通孔2Fに対してシャフト312を挿入させることにより、筐体2にシャフト312を中心に回動可能に取り付けられる。シャフト312は、筐体2の貫通孔2Gに対してねじ314によってワイヤ送出装置301から脱落しないように固定される。ばね313は、蓋311を先端側(X軸の正方向側)に付勢している。
【0147】
ボス部311Fが溝2Iに係合すると、開閉部310を開放状態、すなわち、ガイドワイヤ収容部4が開放されてガイドワイヤGWをガイドワイヤ収容部4に載置可能となる。ボス部311Fが溝2Hに係合すると、開閉部310を閉鎖状態、すなわち、ガイドワイヤ収容部4の少なくとも一部が閉鎖されてガイドワイヤGWをガイドワイヤ収容部4から取り外せない状態になる。蓋311は、ばね313の付勢に抗してX軸の負方向に移動させることにより、回動自在となり、開閉部310の開放状態と閉鎖状態とを切り替えることができる。
【0148】
ワイヤ送出装置301のレバー320は、機構部を駆動させるレバー回転軸320Oから延びる接続部320Aと、接続部320Aから延び、手技者が手で操作する取手部320Bと、を有する。
【0149】
ワイヤ送出装置301におけるガイドワイヤGWの載置方法について説明する。図47は、ガイドワイヤGWが載置された状態を示す上面図であり、図48は、ワイヤ送出装置のガイドワイヤ収容部を含む一部分の側面断面図である。
【0150】
ワイヤ送出装置301の開閉部310を図42に示すように開放状態としている場合において、図47に示すように、カテーテル51をコネクタ60に接続し、コネクタ60をコネクタ接続部3に接続する。この際に、カテーテル51に挿入されているガイドワイヤGWをガイドワイヤ収容部4に収容されるようにする。ここで、ガイドワイヤ収容部4においては、リブ2Jにより、ガイドワイヤGWは、ガイドワイヤ収容部4のY軸の負方向側に寄せられて載置されることとなる。これにより、開閉部310を閉鎖状態にする場合において、開閉部310の覆部311CがガイドワイヤGWに干渉してしまうことを適切に防止することができる。
【0151】
この後、開閉部310を閉鎖状態にすることにより、ガイドワイヤGWは、図48に示すように、ガイドワイヤ収容部4の壁面と、開閉部310の覆部311Cとの間の空間に収容された状態となる。これにより、ガイドワイヤGWがワイヤ送出装置301から脱落してしまうことを適切に防止することができるようになる。
【0152】
次に、ワイヤ送出装置301におけるレバー320によるガイドワイヤGW送出操作について各図を参照して説明する。図49は、ワイヤ送出装置の送出可能状態における斜視図である。
【0153】
ワイヤ送出装置301では、押しばねが圧縮されていない状態においては、図44に示すように、レバー320の接続部320Aは、レバー回転軸320OからX軸の正方向且つY軸の正方向に延び、取手部320Bは、接続部320Aとの接続部分からX軸の負方向且つY軸の正方向に延びた状態となっている。取手部320Bの底面は、筐体2の上面から所定の高さ以上高い位置となっている。所定の高さは、想定される手技者の指や手の厚さを考慮した高さでもよい。より高くすることにより、取手部320Bを握る手や指が、ガイドワイヤGWに接触することを適切に防止することができる。
【0154】
ワイヤ送出装置301では、図44に示す状態からレバー320を時計回り方向に回動させて、図49に示す状態にすることにより、押しばね12を圧縮した状態、すなわち、ガイドワイヤGWを送出可能状態で維持させることができる。このように、押しばね12を圧縮した状態においては、接続部320Aは、レバー回転軸320OからY軸の正方向に延び、取手部320Bは、接続部320Aとの接続部分からX軸の負方向に延びた状態となっている。
【0155】
このようにワイヤ送出装置301では、ガイドワイヤGWを送出させるために操作を行う場合のレバー320(接続部320A及び取手部320B)の移動範囲は、ガイドワイヤGWの載置位置を通るZ軸方向に延びる垂直面に対して、レバー回転軸320O側となっている。このため、取手部320Bを握る手や指が、ガイドワイヤGWに接触することを適切に防止することができる。
【0156】
[第5実施形態]
第5実施形態に係るワイヤ送出装置401について各図を参照して説明する。図50は、ワイヤ送出装置401の斜視図であり、図51は、ワイヤ送出装置401の射出スイッチの非固定時における底面斜視図であり、図52は、固定時における底面斜視図である。第1実施形態乃至第4実施形態に係るワイヤ送出装置と同様な部分については、同一番号を付し、重複する説明を省略する。
【0157】
ワイヤ送出装置401は、ワイヤ送出装置301において、更に、射出スイッチ45を押した状態で固定するための操作固定部403を備える。
【0158】
操作固定部403は、固定スイッチ404と、固定スイッチ404を射出スイッチ45側に付勢するばね405と、を有する。固定スイッチ404は、手技者が操作するための筐体2の外部に突出する凸部404Aと、射出スイッチ45に接触する接触部404Bと、を有する。
【0159】
射出スイッチ45が押されていない場合には、図51に示すように、固定スイッチ404の接触部404Bは、射出スイッチ45のX軸の負方向の側面に接触している状態となっている。この場合には、手技者が射出スイッチ45を押すことができる。
【0160】
射出スイッチ45が押された場合には、図52に示すように、固定スイッチ404の接触部404Bは、射出スイッチ45のY軸のマイナス側の側面に接触し、X軸の正方向に移動する。これにより、射出スイッチ45は、接触部404BによりY軸の負方向に回動不能となり、押された状態が維持されることとなる。
【0161】
このように、射出スイッチ45が押された状態で維持されている場合には、押しばね12が圧縮されると、射出スイッチ45の凸部45Aが凸部14Bを押した状態であるので、フック14のバネ用フック14Aがハンマー11の凸部11Aから外れて、ハンマー11が把持部220に衝突することとなる。したがって、手技者は射出スイッチ45を再度操作することなくレバー31を連続して操作することにより、ガイドワイヤGWを連続して送出することができる。
【0162】
射出スイッチ45が押された状態で維持されている場合において、手技者が固定スイッチ404の凸部404AをX軸の負方向に移動させる操作を行うことにより、図51に示すように射出スイッチ45を押されていない状態に戻すことができる。
【0163】
本明細書で開示している技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0164】
上述の実施形態では、押しばね12として金属製のばねを用いていたが、例えば、ゴム紐、板ばね等の他の種類の弾性体であってもよく、また、弾性体の材質は、樹脂材料であってもよい。上述の実施形態では、ハンマー11も金属製であったが、押しばねと同様に、樹脂材料であってもよい。
【0165】
ハンマー11を移動させて押しばね12を圧縮させることにより、ハンマー11の先端方向への付勢力を増加させるようにしていたが、例えば、ハンマー11の基端側の移動に対して伸張するように弾性体を設け、弾性体の伸張によって付勢力を増加させるようにしてもよい。他には、例えば、ハンマー11を用いずに、押しばね12で把持部20,220,260を先端方向に直接移動させるようにしてもよい。
【0166】
把持部20,220,260のX軸方向の移動可能範囲を調整する機構、例えば、移動可能範囲を確定するX軸方向の壁の位置を移動させる機構を設けるようにしてもよい。このようにすると、ワイヤ送出装置によるワイヤの送出量を容易且つ適切に調整することができる。
【0167】
押しばね12の初期状態の圧縮量を調整する機構、例えば、押しばね12の基端側の壁の位置を移動させる機構を設けるようにしてもよい。このようにすると、ワイヤ送出装置におけるハンマー11により把持部20,220,260に与える衝撃力を容易且つ適切に調整することができる。また、上述の実施形態では、押しばね12は初期状態で全く圧縮していない状態を想定してあるが、初期状態で押しばね12が多少圧縮してあってもよい。
【0168】
手技者が手でレバー31,320を回動させることにより、ガイドワイヤGWを送出するようにしていたが、電力で動作する発動機で送出するようにしてもよい。例えば、モータの動力によりリンク35を回動させてもよい。この場合には、リンク35を所定角度回動させた時点でモータを停止させるようにしてもよい。例えば、モータを駆動させるスイッチを備え、このスイッチを1回押下すると、リンク35を所定角度回動させるだけモータを駆動させるようにしてもよい。
【0169】
前述の複数の実施形態に係るワイヤ送出装置の構成を組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態における把持部20を、第3実施形態における把持部220,260に代えてもよい。また、第1実施形態及び第2実施形態におけるレバー31を、第4実施形態におけるレバー320に代えてもよい。また、第4実施形態における開閉部310を、第1実施形態及び第2実施形態に係るワイヤ送出装置に備えるようにしてもよい。また、第5実施形態における操作固定部403を、第1実施形態乃至第3実施形態に係るワイヤ送出装置に備えるようにしてもよい。
【0170】
本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0171】
1 ワイヤ送出装置
2 筐体
2A 把持部収容部 2B スライダ収容部 2C 支持孔 2D 凸部
2E 取付領域 2F 非貫通孔 2G 貫通孔 2H,2I 溝
2J リブ
3 コネクタ接続部
3A,3B 接続片
4 ガイドワイヤ収容部
11 ハンマー
11A 凸部
12 押しばね
13 スライダ
13A 延長部 13B 凸部 13C 装着部
14 フック
14A ばね用フック 14B 凸部
16 戻しばね
20 把持部
21 第1部品
21A 把持面部 21B 脚部
22 第2部品
22A 把持面部 22B 凹状部 22C 貫通孔部
23 把持ばね
31 レバー
31O レバー回転軸
35,37 リンク
35A 円筒部 35B 凸部
36,38 ジョイント
40,42 把持開閉スイッチ
40A,42A 押下部 40B,42B 作用部 42C 斜面
41,43 ばね
45 射出スイッチ
45A 凸部 45B 延長片 45C 凸部 45D 固定孔
45E ばね収容部
46 ねじ
51 カテーテル
52 カテーテルハブ
52A 後端部
60 コネクタ
60A ダイヤル部 60B 貫通孔 60C 取付部 60D 後端部
101 ワイヤ送出装置(第2実施形態)
110 射出スイッチ
110A 凸部 110B 凸部 110C 延長片 110D 凸部
110E 固定孔 110F ばね収容部
111 ねじ
113 スライダ
113A 延長部 113B 凸部 113C ばね用フック
113D フック
201 ワイヤ送出装置(第3実施形態)
210 スライダ
210A 延長部 210B スリット
220 把持部
221 本体部
221A 把持面 221B 壁部 221C,221D 孔
222 対向部品
222A 把持面 222B 貫通孔
223 カム部
223A 操作凸部 223B 貫通孔 223C 接触面
223D 直線部 223E 曲線部 223F 最大外形部
224 把持解除ばね
225 支持ピン
225A 頭部 225B 溝部
226 止め輪
240 把持開閉スイッチ
240A 操作部 240B 収容部
260 把持部
261 本体部
261A 把持面 261B 設置壁部 261C 孔 261D 孔
261E ボス
262 対向部品
262A 把持面 262B ボス
263 背面部
263A 孔 263B 固定凹部
264 カム部
264A 操作凸部 264B ボス 264C 接触面 264D 固定凸部
265 把持解除ばね
301 ワイヤ送出装置(第4実施形態)
310 開閉部
311 蓋
311A 円筒部 311B 覆部 311C 回転操作部
311D 開口部
312 シャフト
313 ばね
314 ねじ
320 レバー
320A 接続部 320B 取手部
401 ワイヤ送出装置(第5実施形態)
403 操作固定部
404 固定スイッチ
404A 凸部 404B 接触部
405 ばね
GW ガイドワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図30
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図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52