IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-リチウムイオン二次電池の製造方法 図1
  • 特許-リチウムイオン二次電池の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/489 20210101AFI20241213BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241213BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241213BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20241213BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241213BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20241213BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20241213BHJP
【FI】
H01M50/489
H01M4/62 Z
H01M50/403 Z
H01M50/414
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/451
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023518302
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 KR2021017204
(87)【国際公開番号】W WO2022108411
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0157007
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ジ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ミ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ダ-キュン・ハン
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0044637(KR,A)
【文献】特表2020-532845(JP,A)
【文献】特開2005-019157(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0239239(US,A1)
【文献】特表2012-510704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
G01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)分析対象として選定されたバインダー樹脂組成物が含まれた分析試験片を準備する段階と、
(S2)前記分析試験片を分析対象として選定された有機溶媒に浸漬して所定時間維持する段階と、
(S3)前記分析試験片を前記有機溶媒から取り出した後、得られた有機溶媒の粘度を測定する段階と、
(S4)前記有機溶媒の粘度を基準値と比較する段階と、
(S5)負極と、正極と、前記負極と前記正極との間に介在される分離膜と、電解液と、を含む電極組立体を製造する段階と、
を含
前記(S2)段階は、23℃~28℃で24時間以上維持することであり、
前記(S2)段階で、前記分析試験片は、前記有機溶媒と前記バインダー樹脂組成物の総合計100wt%に対し、前記バインダー樹脂組成物が1wt%~10wt%の割合で投入され、
前記(S4)段階で前記有機溶媒の粘度が基準値以下である場合、前記分析対象であるバインダー樹脂組成物と前記分析対象である有機溶媒を電池の製造に適用し、
前記基準値が、15cP~20cPの範囲から選定され、
前記有機溶媒は、電池の製造に際し、電解液用有機溶媒として使用され、
前記バインダー樹脂組成物は、電池の製造に際し、分離膜のバインダー及び/または電極のバインダーとして使用される、
リチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記基準値が17cPである、請求項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記分析試験片は、アセトンに前記バインダー樹脂組成物を1wt%~10wt%溶解し、それを離型フィルムに塗布して加湿条件で乾燥して得られたものである、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記加湿条件が、相対湿度30%~60%の範囲を有することである、請求項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記分析試験片が、分離膜用多孔性基材及び前記多孔性基材の表面に形成された多孔性コーティング層を含み、前記多孔性コーティング層が、無機物粒子及びバインダー樹脂を含み、前記バインダー樹脂が、前記バインダー樹脂組成物を含む、請求項1からの何れか一項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記バインダー樹脂組成物をバインダーとして適用して電池用分離膜を製造する段階をさらに含む、請求項1からの何れか一項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項7】
記分離膜が、前記選定されたバインダー樹脂組成物を含み、前記電解液が、前記選定された有機溶媒を含む、請求項1からの何れか一項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記(S2)段階の有機溶媒がリチウム塩を含む、請求項1からの何れか一項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池駆動中に、バインダー樹脂の溶出が少なくて電解液の粘度上昇が防止されたリチウム二次電池及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2020年11月20日出願の韓国特許出願第10-2020-0157007号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、正極/負極/分離膜/電解液を基本にして構成され、化学エネルギーと電気エネルギーが可逆的に変換されながら充放電が可能な高エネルギー密度のエネルギー貯蔵体であって、携帯電話、ノートブックPCなどのような小型電子装備に幅広く使用される。最近には、環境問題、原油高、エネルギー効率及び貯蔵に対する対応として、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicles;HEV)、プラグイン電気自動車(Plug-in EV)、電気自転車(E-bike)及びエネルギー貯蔵システム(Energy storage system;ESS)への適用が急速に拡がりつつある。
【0004】
このようなリチウム二次電池の製造及び使用において、リチウム二次電池の安全性の確保は、重要な解決課題である。特に、リチウム二次電池で通常使用される分離膜(separator)は、その材料的特性及び製造工程上の特性によって高温などの状況で激しい熱収縮挙動を示すことから、内部短絡などの安全性の問題を含んでいる。最近、リチウム二次電池の安全性を確保するために、無機物粒子とバインダー樹脂の混合物を多孔性高分子基材にコーティングして多孔性コーティング層を形成した有機-無機複合多孔性分離膜が提案された。このような分離膜用バインダー樹脂としては、通常、PVDF系高分子が使用されているが、電極と分離膜との間の接着力が足りず、電極と分離膜が互いに分離する危険が大きく、そのような場合、分離過程で前記多孔性コーティング層から脱離する無機物粒子がリチウム二次電池素子内で局所的欠陥として作用し得る問題点が存在する。このような問題点を解決するために、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate;PVA)のような非結晶性の高分子材料の導入が提案された。しかし、このような非結晶性高分子材料は、電解液に対する溶解度が高くて電池駆動中に電解液へ溶出されて分離膜の接着力が低下することによって無機物粒子が脱離することがあり、電解液の粘度上昇によってバッテリーの抵抗特性が低下するという問題がある。そこで、電解液の粘度が一定の水準以下に制御される電池設計が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電池駆動中に電解液の粘度が一定の水準以下に制御される電池の製造方法を提供するために考案された。本発明による電池の製造方法は、予め分離膜用の分析試験片を製作して電解液の粘度上昇の程度を確認し、選定された材料を電池の製造に適用することを構成的特徴とする。
【0006】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに理解されるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1面は、電池の製造方法であって、前記電池の製造方法は、(S1)分析対象として選定されたバインダー樹脂組成物が含まれた分析試験片を準備する段階と、
(S2)前記分析試験片を分析対象として選定された有機溶媒に浸漬して所定時間維持する段階と、
(S3)前記分析試験片を前記有機溶媒から取り出した後、得られた有機溶媒の粘度を測定する段階と、
(S4)前記有機溶媒の粘度を基準値と比較する段階と、を含む。
【0008】
本発明の第2面によれば、前記第1面において、前記(S2)段階は、23℃~28℃で24時間以上維持することである。
【0009】
本発明の第3面によれば、前記第1または第2面において、前記(S2)段階で、前記分析試験片は、前記有機溶媒と前記バインダー樹脂組成物の総合計100wt%に対し、前記バインダー樹脂組成物が1wt%~10wt%の割合で投入される。
【0010】
本発明の第4面によれば、前記第1から第3面のいずれか一面において、前記(S4)段階で前記有機溶媒の粘度が基準値以下である場合、前記分析対象であるバインダー樹脂組成物と前記分析対象である有機溶媒を電池の製造に適用する。
【0011】
本発明の第5面によれば、前記第4面において、前記基準値は、15cP~20cPの範囲から選定される。
【0012】
本発明の第6面によれば、前記第5面において、前記基準値は、17cPである。
【0013】
本発明の第7面によれば、前記第4面において、前記有機溶媒は、電池の製造に際し、電解液に適用される。
【0014】
本発明の第8面によれば、前記第4面から第7面のうちいずれか一面において、前記バインダー樹脂組成物は、電池の製造時、分離膜用のバインダーに適用される。
【0015】
本発明の第9面によれば、前記第1面から第8面のいずれか一面において、前記分析試験片は、アセトンに前記バインダー樹脂組成物を1wt%~10wt%の濃度に溶解し、それを離型フィルムに塗布して加湿条件で乾燥して得られたものである。
【0016】
本発明の第10面によれば、前記第9面において、前記加湿条件は、相対湿度30%~60%の範囲を有する。
【0017】
本発明の第11面によれば、前記第1面から第10面のいずれか一面において、前記分析試験片が、分離膜用多孔性基材及び前記多孔性基材の表面に形成された多孔性コーティング層を含み、前記多孔性コーティング層が、無機物粒子及びバインダー樹脂を含み、前記バインダー樹脂が、前記バインダー樹脂組成物を含む。
【0018】
本発明の第12面によれば、前記第1面から第12面のいずれか一面において、前記バインダー樹脂組成物をバインダーとして適用して電池用分離膜を製造する段階をさらに含む。
【0019】
本発明の第13面によれば、前記第1面から第12面のいずれか一面において、(S5)負極と、正極と、前記負極と前記正極との間に介在される分離膜と、電解液と、を含む電極組立体を製造する段階をさらに含み、前記分離膜は、前記選定されたバインダー樹脂組成物を含み、前記電解液は、前記選定された有機溶媒を含む。
【0020】
本発明の第14面によれば、前記第1面から第12面のいずれか一面において、前記(S2)段階の有機溶媒はリチウム塩を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、電解液への溶出が少ないバインダー樹脂を電池の製造に適用することで、電池素子の接着力低下及び電解液の粘度上昇による抵抗の増加を予め防止することができる。
【0022】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、詳細な説明と共に本発明の原理を説明するためのものであって、発明の範囲がこれに限定されない。なお、本明細書に添付の図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などは、より明確な説明を強調するために誇張され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例及び比較例で製造された電池の高温充放電及びそれによる容量維持率を示した図である。
図2】実施例及び比較例で製造された電池の常温充放電及びそれによる容量維持率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0025】
本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法に関する。本発明の一実施態様において、前記製造方法は、電極組立体を製造する前に、バインダー樹脂の溶出による電解液の粘度上昇が低いバインダー樹脂と電解液用の有機溶媒を選定する段階を含むことを発明の構成的特徴とする。
【0026】
本発明の一実施態様において、前記選定段階は、以下のような手順を含む。
【0027】
先ず、分析対象として選定されたバインダー樹脂組成物が含まれた分析試験片を準備する(S1)。
【0028】
本発明において、前記バインダー樹脂組成物は、一種以上の高分子材料を含むもの、即ち、一種の高分子材料または二種以上の高分子材料の組合せを意味し、前記高分子材料は、電池用バインダーとして使用可能なものであれば、特に限定されない。即ち、前記高分子材料としては、リチウムイオン二次電池製造用のバインダーとして使用可能な候補群から一種以上が選択され得る。例えば、前記バインダー樹脂組成物は、一種の高分子材料のみからなるか、または二種以上の相異なる高分子材料を含み得る。また、バインダー樹脂組成物が二種以上の高分子材料を含む場合、これらの含量比は特定の樹脂に限定されず、実験設計によって多様な値を有し得る。即ち、本発明は、バインダーとして使用可能な高分子材料の最適の組合せを探すことであるので、分析対象となる高分子材料の種類や含量比を特定の範囲に限定しない。
【0029】
前記高分子材料としては、例えば、PVDF系バインダー樹脂、例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-cotrichloroethylene);ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyethylhexyl acrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)などの(メタ)アクリル系高分子樹脂;ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate,PVA)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetatepropionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)及びカルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)などが挙げられるが、これらのうちで一種以上を選択して分析試験片の準備に適用可能である。しかし、これらに特に限定されることはない。前記成分の他にも電池の製造時にバインダーとして適用が考慮可能な高分子材料の場合には、いずれも制限なく分析対象とし得る。
【0030】
本発明の一実施態様において、前記分析試験片は、リチウムイオン二次電池用分離膜の形態またはリチウムイオン二次電池用電極の形態で準備され得る。このように分析試験片が分離膜の形態またはリチウムイオン二次電池用電極の形態で設けられる場合には、実際に適用される電池と類似の環境を構成することができるので、分析結果の信頼性が高くなり得る。さらに他の一実施態様において、前記分析試験片は、バインダー樹脂組成物をシート状に成膜して準備した高分子フィルムの形態で準備され得る。このように高分子フィルムの形態で準備される場合には、分析工程にかかる時間を短縮し得る。
【0031】
本発明の一実施態様において、分析試験片が高分子フィルムの形態で準備される場合には、分析対象となるバインダー樹脂組成物を高温で溶融及び圧出してフィルム形態に成膜して準備され得る。または、分析対象となるバインダー樹脂組成物を有機溶媒に溶解して高分子溶液を製造した後、これを離型フィルムに塗布して乾燥して溶媒を除去する方式で分析試験片を準備し得る。前記有機溶媒は、バインダー樹脂組成物を溶解し、かつ乾燥が容易なものであれば、その種類は特に限定されない。例えば、前記有機溶媒は、アセトン、トルエン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、キシレンまたはN-メチルピロリドンより選択された一種以上を含み得る。
【0032】
一方、本発明の一実施態様において、前記乾燥は、通常の乾燥方法であれば、特に限定されず、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥などの適切な方法を選択して適用可能である。または、使用される高分子材料によって、前記乾燥は相対湿度30%~60%の加湿条件下で行われ得る。
【0033】
一方、本発明の一実施態様において、前記分析試験片が分離膜の形態を有する場合には、前記分離膜は、以下のような構造的特徴を有し得る。
【0034】
前記分離膜は、多孔性高分子基材と、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面にコーティングされており、バインダーと無機物粒子が混合されている多孔性コーティング層を備え、前記バインダーは、前記無機物粒子が互いに結着した状態を維持するようにこれらを互いに付着させ、前記無機物粒子と前記多孔性高分子基材が結着した状態を維持するようにこれらを付着させ、前記無機物粒子は、実質的に互いに接触した状態でインタースティシャルボリューム(interstitial volume)を形成し、前記無機物粒子の間のインタースティシャルボリュームは、空き空間になって多孔性コーティング層の気孔を形成する。
【0035】
本発明の具体的な一実施態様において、前記多孔性高分子基材は、負極及び正極を電気的に絶縁して短絡を防止すると共に、リチウムイオンの移動経路を提供できるものであって、通常的にリチウム二次電池用分離膜素材として使用可能なものであれば、特に制限なく使用可能である。このような多孔性高分子基材としては、高分子材料を含む多孔性フィルムや不織布が挙げられる。また、前記高分子材料は、例えば、ポリエチレン及び/またはポリプロピレンなどを含むポリオレフィン系高分子、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレンより選択された一種以上を含み得る。
【0036】
本発明による多孔性コーティング層は、前記多孔性高分子基材の一面または両面に層状に形成されている。前記多孔性コーティング層は、複数の無機物粒子とバインダーの混合物を含み、前記無機物粒子がバインダーを介して集積されて層状に形成されたものである。前記多孔性コーティング層のバインダーは、無機物粒子が互いに結着した状態を維持するようにこれらを互いに付着(即ち、バインダーが無機物粒子同士を連結及び固定)し、前記バインダーによって無機物粒子と多孔性高分子基材が結着した状態を維持できる。前記多孔性コーティング層の無機物粒子は、実質的に互いに接触した状態でインタースティシャルボリュームを形成でき、この際、インタースティシャルボリュームは、無機物粒子による充填構造(closed packed or densely packed)において実質的に接触する無機物粒子によって限定される空間を意味する。前記無機物粒子の間のインタースティシャルボリュームは、空き空間になって多孔性コーティング層の気孔を形成し得る。
【0037】
前記多孔性コーティング層を構成する無機物粒子とバインダー樹脂の組成比は、最終的に製造される本発明の多孔性コーティング層の厚さ、気孔サイズ及び気孔度を考慮して決定され得る。本発明の具体的な一実施態様において、無機物粒子とバインダーの組成比は、重量を基準にして無機物粒子が50~99.9重量%または60~99.5重量%、バインダーが0.1~50重量%または0.5~40重量%であり得る。
【0038】
一方、前記無機物粒子の直径D50及び/または種類は特に限定されず、実際の電池の製造に際し、適用対象となる無機物粒子が分析試験片の準備に使用され得る。例えば、前記無機物粒子は、電気化学的に安定さえすれば、特に制限されない。即ち、前記無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+を基準にして0~5V)で酸化及び/または還元反応が起こらないものであれば、特に制限されない。前記無機物粒子の例としては、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、Al、γ-AlOOH、SiC、TiOなどが挙げられ、これらより選択された一種または二種以上の混合物が使用され得る。
【0039】
前記分離膜分析試験片は、実際に製造対象となる分離膜を製造する方法に準じて製造され得る。本発明の具体的な一実施態様において、前記分離膜用の分析試験片は、下記のような方法で設けられ得る。
【0040】
先ず、適切な有機溶媒を準備した後、これに無機物粒子とバインダーを混合して多孔性コーティング層形成用スラリー組成物を準備し、これを多孔性高分子基材の少なくとも一面に塗布して乾燥することで形成される。前記有機溶媒は、バインダーを溶解して前記無機物粒子などを均一に分散させ得るものであれば、特に制限されない。これら溶媒としては沸点が低くて揮発性の高い溶媒が、短時間かつ低温で除去可能であるため、望ましい。具体的には、アセトン、トルエン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、キシレン、またはN-メチルピロリドン、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。望ましくは、分離膜の製造に際し、実際に使用される溶媒を使用し得る。
【0041】
一方、本発明の具体的な一実施態様において、前記スラリー組成物の塗布及び乾燥は、非溶媒による相分離現象が適用され得る。前記相分離は、加湿相分離または浸漬相分離の方法で行われ得る。前記加湿相分離とは、相分離のための非溶媒が気体状態で導入される方法をいい、前記浸漬相分離とは、前記スラリー組成物が塗布された結果物が非溶媒を含む凝固液に所定時間浸漬される方法をいう。前記非溶媒は、バインダー樹脂を溶解せず、溶媒と部分相溶性のあるものであれば、特に制限されない。例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノールからなる群より選択される一つ以上であり得る。
【0042】
前記分析試験片の製造方法は、多様な方法の一例として記述されるだけであり、前記方法に特に限定されない。本発明において、望ましくは、前記分析試験片の製造は、実際に電池製造のために設けられた製造方法が適用され得る。
【0043】
前記のように分析試験片が準備されると、前記分析試験片を分析対象として選定された有機溶媒に浸漬して24時間以上維持する(S2)。
【0044】
本発明の一実施態様において、前記有機溶媒の温度は23℃~28℃に維持することが望ましい。例えば、前記分析試験片が浸漬されている間に、前記有機溶媒の温度は約25℃に維持され得る。本発明の一実施態様において、前記有機溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトン、フッ素置換されたカーボネートまたはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一実施態様において、前記有機溶媒は、実際の電池の製造時に使用可能なものとして考慮される候補群のうちで一つ以上を選択して前記S2段階に投入され得る。
【0045】
一方、本発明の一実施態様において、前記S2で、前記分析試験片は、前記有機溶媒とバインダー樹脂組成物(高分子材料)の総合計100wt%に対してバインダー樹脂組成物(高分子材料)の含量が1wt%~10wt%の割合で投入され得る。例えば、前記分析試験片は、前記有機溶媒と高分子材料の総合計100wt%に対して、高分子材料の含量が3wt%~8wt%、例えば、約5wt%の割合で投入され得る。但し、ここに限定されず、実際の電池の製造時にバインダー樹脂と電解液の総合計に対してバインダー樹脂が含まれる量を考慮して適切に調節可能である。
【0046】
一方、本発明の一実施態様において、前記有機溶媒には、0.5M~1.5Mの範囲でリチウム塩がさらに含まれ得る。このようにリチウム塩を投入することで実際の電解液に近い環境を構成し得る。前記リチウム塩は、Aのような構造を有するものであって、Aは、Li、Na、Kのようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み、Bは、PF 、BF 、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO 、C(CFSO のような陰イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み得る。前記リチウム塩は、前記成分に特に限定されない。本発明の一実施態様において、前記リチウム塩は、実際の使用を考慮したものを候補群にして多様な組合せが前記選定方法を行うのに適用され得る。
【0047】
本発明の一実施態様において、前記分析方法は、一定の有機溶媒に対して高分子材料を選択するために使用されるか、または一定の高分子材料に対して有機溶媒を選択するために使用され得る。または、有機溶媒と高分子材料の多様な組合せに対する評価結果を確保するために、各実験毎にその組合せが相違するように構成し、それを対象にして前記分析方法を行うことも可能である。
【0048】
次に、前記有機溶媒から前記分析試験片を取り出して前記有機溶媒の粘度を測定し、これを基準値と比較する(S4)。前記有機溶媒は、分析試験片に含まれたバインダー樹脂が溶出されているものであって、分析試験片が含浸される前に比べてバインダー樹脂の溶出によって粘度が上昇した結果を有する。
【0049】
前記粘度の測定は、通常の粘度計が使用可能であり、その方法は特に限定されない。一方、本明細書においては、望ましくは、25℃、DV-E VISCOMETER(BROOKFIELD社)、1スピンドル、100rpm、60秒の条件で測定した粘度を意味する。
*粘度計:DV-E VISCOMETER、BROOKFIELD社
*粘度測定条件:25℃、#1スピンドル、30rpm、60秒
*粘度単位:cP
【0050】
一方、前記(S4)段階の粘度基準値は、電池駆動に適切な数値であり得、実験上帰納的に得られ、望ましくは、15cP~20cPの範囲で選択され得る。本発明の具体的な一実施態様において、前記(S4)段階の基準値は17cPであり得る。前記有機溶媒の粘度が17cP以下である場合、分析試験片に使用された高分子材料、または分析試験片に使用された高分子材料及び分析試験片に使用された有機溶媒を電池の製造に適用する。本明細書において、分析試験片に使用された高分子材料を電池の製造に適用するということは、分析試験片に使用されたバインダー樹脂組成物(高分子材料)と同じ材料を電池の製造に適用するという意味であり、分析対象として取り扱われたものを使用するという意味ではない。また、本明細書において、分析に使用した有機溶媒を電池の製造に適用するということは、分析に使用された有機溶媒と同じ成分の材料を電池の製造に適用するという意味であり、分析に直接使用されたものを使用するという意味ではない。即ち、(S4)で、分析試験片を取り出した後、得られた結果物を直接電解液として使用するという意味ではない。
【0051】
本発明の一実施態様において、前記(S4)段階で測定された有機溶媒の粘度が17cP以下である場合、電池の製造に際し、前記高分子材料は分離膜のバインダー及び/または電極のバインダーとして使用され、前記有機溶媒は、電解液用有機溶媒として使用され得る。例えば、電池の製造に際し、前記分離膜のバインダーは、分析試験片の製造に使用された高分子材料のみから構成され得る。これと共に、電池の製造に際し、電解液としては前記分析に適用された有機溶媒の成分のみから構成され得る。
【0052】
もし分析試験片を用いて測定された粘度が17cPを超過する場合には、使用されたバインダー樹脂組成物(高分子材料)の溶出率が高いか、溶出された量が少ないとしても、溶出された成分によって有機溶媒の粘度が過度に上昇する結果をもたらし得る。一方、前記分析試験片を用いて測定された粘度が17cP以下である場合には、バインダー樹脂組成物(高分子材料)の溶出が低いか、または溶出された量が多いとしても、有機溶媒の粘度上昇に影響を及ぼさないことがある。これによって、17cP以下の値を有する高分子材料及び/または有機溶媒を電池の製造に適用する場合、バインダー樹脂の電解液中への溶出が防止され、バインダーによって達成しようとする結着力の水準を維持できる。その結果、無機物粒子の脱離が防止でき、電極と分離膜との決着力が長期間に維持される。また、有機溶媒の粘度が上昇せず、適正な水準に維持されるので、その結果、抵抗増加による電池性能低下の問題が発生しない。
【0053】
本願明細書において選定されたバインダー樹脂組成物が分離膜に適用されることについて主に説明したが、前記選定されたバインダー樹脂組成物は、分離膜に適用されるか、または電極に適用されるか、または分離膜及び電極に共に適用可能である。
【0054】
本発明の一実施態様において、前記分離膜は、前記分析試験片について説明した内容を参照し得る。特に、前記分離膜は、バインダーが使用される場合、前記バインダーは、前述した内容に基づいて選定されたバインダー樹脂組成物を含み得る。望ましくは、前記バインダーは、選定されたバインダー樹脂組成物のみからなり得る。
【0055】
本発明の一実施態様において、前記電極は、リチウムイオン二次電池用電極であって、正極及び/または負極であり得る。
【0056】
本発明の具体的な一実施態様において、前記負極は、集電体、前記集電体の表面に形成された負極活物質層を含み得る。本発明の具体的な一実施態様によれば、前記負極は、前記集電体の上に負極活物質を塗布及び乾燥して製作され、バインダー及び導電材が必要に応じてさらに含まれ得る。
【0057】
本発明の一実施態様において、前記負極活物質層は、負極活物質、負極バインダー及び導電材を含む。
【0058】
前記負極活物質としては、二次電池分野で使用されるものであれば、成分は特に限定されない。例えば、前記負極活物質は、炭素系材料を含み得る。前記炭素系材料は、結晶質人造黒鉛、結晶質天然黒鉛、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラフェン及び繊維状炭素からなる群より選択される一つ以上であり得る。望ましくは、前記負極活物質は、結晶質人造黒鉛、及び/または結晶質天然黒鉛を含み得る。さらに、二次電池において負極活物質に使用可能な物質であれば、いずれも使用可能である。例えば、前記負極活物質は、リチウム金属;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム合金;ケイ素系合金;すず系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、及びBiなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などより選択された一種または二種以上をさらに含み得る。
【0059】
一方、本発明の具体的な一実施態様において、前記正極は、集電体と、前記集電体の表面に形成された正極活物質層と、を含み得る。本発明の具体的な一実施態様によれば、前記正極集電体の上に正極活物質を塗布及び乾燥して製作され、バインダー及び導電材が必要に応じてさらに含まれ得る。
【0060】
また、前記正極活物質は、二次電池の分野で使用されるものであれば、成分は特に限定されない。例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCoPO、LiFePO、LiNiMnCoO及びLiNi1-x-y-zCoM1M2(M1及びM2は互いに独立的に、Al、Ni、Co、Fe、Mn、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg及びMoからなる群より選択されたいずれか一つであり、x、y及びzは、互いに独立的に酸化物組成元素の原子分率であって、0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z<0.5、x+y+z≦1である。)からなる群より選択されたいずれか一つまたはこれらの二種以上の混合物からなり得る。
【0061】
前記集電体は、一般的に3~500μmの厚さに作る。このような集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ高い導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、ステンレススチール、銅、アルミニウム、ニッケル、チタンやまたはこれらの表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。
【0062】
一方、前記電極に含まれるバインダーは、前述した内容によって選定されたバインダー樹脂組成物を含み得る。望ましくは、前記バインダーは、選定されたバインダー樹脂組成物のみからなり得る。
【0063】
このように本発明は、電池を製造する前に電解液の粘度を上昇させない分離膜用及び/または電極用バインダー樹脂と電解液用有機溶媒を確認及び選定し、これらを電池の製造に適用することで電気化学的特性が優秀な電池を製造することができる。
【0064】
実施例
(1)バインダー樹脂組成物及び有機溶媒の選定
バインダー樹脂組成物をアセトンに5wt%に溶解した後、それをPETフィルムに塗布して相対湿度45%の条件で乾燥してバインダーフィルムを準備した。なお、エチルカーボネートとエチルメチルカーボネートが体積比(vol%)3:7の割合で混合された有機溶媒を準備した。前記有機溶媒に前記バインダーフィルムを浸漬して25℃で24時間維持した。その後、前記バインダーフィルムを前記有機溶媒から取り出して、有機溶媒を得た。前記有機溶媒を300メッシュの篩を用いて濾過した。最終的に得られた分析試験片の粘度をViscometer TV-22(TOKI Sangyo社)で測定した。測定条件は、25℃、100rpmにした。各実施例及び比較例で使用されたバインダー樹脂組成物の種類及び粘度測定結果は、下記の表1に示した。
【0065】
【表1】
【0066】
(2)電池の製造
1)分離膜の製造
無機物粒子として500nmのD50直径を有するAl粉末を準備し、バインダーとしては前記表1に示したように準備した。前記Al粉末及びバインダーは、重量比で80:20になるように準備した。前記バインダーをアセトンを溶媒にして60℃で約5時間溶解してバインダー溶液を製造した。続いて、前記無機物粒子を前記バインダー溶液に添加した。無機物粒子が含まれたバインダー溶液をビードミルを用いて、直径0.65mmのビードからなる層を3~5回通過させることで無機物粒子を分散させて多孔性コーティング層形成用の組成物を製造した。この際、多孔性コーティング層形成用の組成物中の固形分の含量は25重量%になるように調節した。
【0067】
多孔性高分子基材として、6cm×15cmサイズのポリエチレン多孔性高分子フィルム(厚さ9μm、気孔度43%、通気時間110秒、抵抗0.45Ω)を準備した。
【0068】
前記多孔性コーティング層形成用の組成物をディップコーティングによって、前述した6cm×15cmサイズのポリエチレン多孔性高分子基材の両面に塗布した。続いて、前記多孔性コーティング層形成用の組成物が塗布されたポリエチレン多孔性高分子基材を相対湿度40%の加湿下に維持しながら加湿相分離を行い、多孔性高分子基材の両面に、バインダーと無機物粒子が混合されている多孔性コーティング層を備えるリチウム二次電池用の分離膜を製造した。前記多孔性コーティング層において、前記バインダーは無機物粒子が互いに決着した状態を維持するようにこれらを互いに付着し、無機物粒子と多孔性高分子基材が決着した状態を維持するようにこれらを付着し、前記無機物粒子は互いに接触した状態でインタースティシャルボリュームを形成し、前記無機物粒子の間のインタースティシャルボリュームは空き空間になって、多孔性コーティング層の気孔を形成する構造を有する。また、バインダー層に、溶媒が非溶媒である水との交換時に発生した多孔性気孔も形成された構造を有する。塗布された多孔性コーティング層の全体コーティング量は5.8g/m水準であると測定された。このような方法で分離膜(実施例1-1、実施例2-1、比較例1-1、比較例2-1及び比較例3-1)を準備した。実施例1-1は実施例1のバインダー樹脂を、実施例2-1は実施例2のバインダー樹脂を、比較例1-1は比較例1のバインダー樹脂を、比較例2-1は比較例2のバインダー樹脂を、比較例3-1は比較例3のバインダー樹脂を使用した。
【0069】
2)電池の製造
負極活物質として人造黒鉛と、導電材としてデンカブラック(カーボンブラック)と、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVdF)とを、各々75:5:25の重量比で混合し、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)を添加して負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを3.8mAh/cmのローディング量で銅集電体にコーティング及び乾燥し、負極活物質が形成された負極を準備した。
【0070】
正極活物質としてLiCoOと、導電材としてデンカブラックと、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVdF)とを、85:5:15の重量比で溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に添加して正極スラリーを準備した。前記正極活物質のスラリーをシート状のアルミニウム集電体の上にコーティングして乾燥し、最終の正極ローディング量が3.3mAh/cmになるように正極活物質層を形成した。
【0071】
前記のように製作された負極と正極との間に前記分離膜を介在し、非水電解液(1M LiPF、エチルカーボネートとエチルメチルカーボネートが体積比(vol%)3:7の割合で混合)を注入してコインセルを製作した。このような方法で電池(実施例1-2、実施例2-2、比較例1-2、比較例2-2及び比較例3-2)を準備した。実施例1-2は実施例1-1の分離膜を、実施例2-2は実施例2-1の分離膜を、比較例1-2は比較例1-1の分離膜を、比較例2-2は比較例2-1の分離膜を、比較例3-2は比較例3-1の分離膜を使用した。
【0072】
(3)評価実験データ
1)高温サイクルテスト
実施例1-2、比較例1-2及び比較例2-2の電池を45℃で400回充放電を繰り返して行い、その結果を図1に示した。充電はCC/Cモードで1C、4.25Vまで充電し、0.05Cカットオフ(cut-off)条件にした。放電はCCモードで行い、1Cで3.0Vまで行った。図1を参照すると、比較例1-2及び比較例2-2の電池に比べて、実施例1-2の電池が容量維持率の面でより優秀であることを確認することができる。
【0073】
2)常温サイクルテスト
実施例1-2、実施例2-2及び比較例3-2で製造された電池を25℃で400回の充放電を繰り返して行い、その結果を図2に示した。充電はCC/CVモードで1C、4.25Vまで充電し、0.05Cカットオフ条件にした。放電はCCモードで行い、1Cで3.0Vまで行った。図2を参照すると、比較例3-2の電池に比べ、実施例の電池が容量維持率の面でさらに優秀であることを確認することができる。特に、実施例2-2の場合、粘度が17cpとして測定されたが、実施例1-2と類似な水準の容量維持率を示したことが確認された。一方、比較例3-2の場合には、実施例2-2と粘度差が少なかったが、容量維持率の面では比較例2-2の電池よりも顕著に低下した結果を示すことが確認された。
図1
図2