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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】給湯機
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20220101AFI20241213BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20241213BHJP
   F24H 7/02 20220101ALI20241213BHJP
   F24H 4/04 20060101ALN20241213BHJP
【FI】
F24H9/00 E
F24H1/18 A
F24H7/02 601A
F24H1/18 G
F24H4/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023522125
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2021019178
(87)【国際公開番号】W WO2022244195
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢次 慶和
(72)【発明者】
【氏名】中園 純一
(72)【発明者】
【氏名】西村 有理子
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 健
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠治
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6364002(US,B1)
【文献】国際公開第2013/030360(WO,A2)
【文献】特開2019-020017(JP,A)
【文献】特開2020-184455(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2204618(EP,A2)
【文献】特開2006-284070(JP,A)
【文献】特開2016-205725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F24H 7/02- 7/04
F28D 20/00-20/02
F24H 1/18
F24H 4/02- 4/04
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を加熱する加熱装置と、前記加熱装置で加熱された前記流体を貯留することによって蓄熱する蓄熱タンクユニットとを備え、前記加熱装置で加熱された前記流体を前記蓄熱タンクユニットに貯留する沸き上げ運転と、前記蓄熱タンクユニットに蓄えられた熱を利用して給湯を行う給湯運転とを実行する給湯機であって、
前記蓄熱タンクユニットは、
加熱された前記流体を貯留する蓄熱部と、
前記蓄熱部の上部に設けられた上部配管と、
前記蓄熱部の下部に設けられた下部配管と、
前記蓄熱部の外部に設けられた熱交換器と、を備え、
前記蓄熱部は、
前記沸き上げ運転において加熱された前記流体が流入する第1の蓄熱タンクと、
前記流体とは異なる蓄熱材が収納され、前記第1の蓄熱タンクと別体で形成されるとともに、前記第1の蓄熱タンクと当接して配置される第2の蓄熱タンクと
を有し、
前記熱交換器は、前記第1の蓄熱タンクから流入した前記流体と、給水配管から流入した流体との間で熱交換を行わせるものであって、
前記沸き上げ運転において加熱された前記流体が前記蓄熱部に流入した際に、前記第1の蓄熱タンク内の前記流体と前記第2の蓄熱タンクの前記蓄熱材との間の熱交換により、前記第2の蓄熱タンクに蓄熱され、
前記第1の蓄熱タンク内に貯留された前記流体は、前記給湯運転において、前記上部配管から前記熱交換器に流入して温度が低下した後、前記下部配管を介して前記第1の蓄熱タンクの下部に流入して循環するものであって、
前記第1の蓄熱タンクは、
下部側に形成された第1段部と、
上部側に形成され、水平面で切断したときの切断面が前記第1段部よりも小さい第2段部と、を有し、
前記第2の蓄熱タンクは、
前記第2段部の側面を覆って当接するように配置される
給湯機。
【請求項2】
前記第2の蓄熱タンクは、
さらに、前記第2段部の上面を覆って当接するように配置される
請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
前記第1の蓄熱タンクの前記第2段部と前記第2の蓄熱タンクとの上面における当接面がテーパ状に形成されている
請求項2に記載の給湯機。
【請求項4】
前記第2の蓄熱タンクは、
潜熱蓄熱材が収納されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の給湯機。
【請求項5】
前記第2の蓄熱タンクは、
前記潜熱蓄熱材としてパラフィンが収納されている
請求項4に記載の給湯機。
【請求項6】
前記第1の蓄熱タンクと前記第2の蓄熱タンクとの当接面に、熱伝導性材料が配置される
請求項1~5のいずれか一項に記載の給湯機。
【請求項7】
前記第1の蓄熱タンクと前記第2の蓄熱タンクとの当接面は、板厚が前記第1の蓄熱タンクおよび前記第2の蓄熱タンクにおける他の面よりも薄く形成されている
請求項1~6のいずれか一項に記載の給湯機。
【請求項8】
前記第2の蓄熱タンクは、
内部に内周側から外周側に向かって延びるフィン形状が形成されている
請求項1~7のいずれか一項に記載の給湯機。
【請求項9】
前記沸き上げ運転において、前記第1の蓄熱タンクに貯留された前記流体は、前記下部配管から流出して、前記加熱装置で加熱され、前記上部配管を介して前記第1の蓄熱タンクの上部に流入する
請求項1~8のいずれか一項に記載の給湯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱源で生成した熱を蓄える蓄熱タンクを備えた給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱源機で生成した熱を給湯に利用する給湯機が知られている。このような給湯機は、給湯の際に、予め熱源で生成した熱を蓄熱タンクユニットに蓄え、蓄えた熱で給水を加熱して給湯する構成となっている。給湯機で用いられる蓄熱タンクユニットでは、耐圧を向上させることを主な目的として、タンク形状を円筒形状にする技術が知られている。
【0003】
一方、従来の給湯機では、狭いスペースへの設置に対応するために、蓄熱タンクユニットの小型化が望まれている。そこで、蓄熱タンクユニットの小型化に対応するため、種々の蓄熱タンクユニットが提案されている。例えば、特許文献1には、蓄熱タンクを複数枚のプレートで形成し、隣接するプレート間の間隔を一定に保つとともに、プレート間に蓄熱材を複数配置し、プレート間に給水が流れる流路部を形成する給湯機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-97825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、腐食等によってプレート部分が破損した場合、蓄熱材が給水に混合する虞があるという課題があった。
【0006】
本開示は、上記従来の技術における課題に鑑みてなされたものであって、蓄熱材の給水への混入を防ぐことができる給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る給湯機は、流体を加熱する加熱装置と、前記加熱装置で加熱された前記流体を貯留することによって蓄熱する蓄熱タンクユニットとを備え、前記加熱装置で加熱された前記流体を前記蓄熱タンクユニットに貯留する沸き上げ運転と、前記蓄熱タンクユニットに蓄えられた熱を利用して給湯を行う給湯運転とを実行する給湯機であって、前記蓄熱タンクユニットは、加熱された前記流体を貯留する蓄熱部と、前記蓄熱部の上部に設けられた上部配管と、前記蓄熱部の下部に設けられた下部配管と、前記蓄熱部の外部に設けられた熱交換器と、を備え、前記蓄熱部は、前記沸き上げ運転において加熱された前記流体が流入する第1の蓄熱タンクと、前記流体とは異なる蓄熱材が収納され、前記第1の蓄熱タンクと別体で形成されるとともに、前記第1の蓄熱タンクと当接して配置される第2の蓄熱タンクとを有し、前記熱交換器は、前記第1の蓄熱タンクから流入した前記流体と、給水配管から流入した流体との間で熱交換を行わせるものであって、前記沸き上げ運転において加熱された前記流体が前記蓄熱部に流入した際に、前記第1の蓄熱タンク内の前記流体と前記第2の蓄熱タンクの前記蓄熱材との間の熱交換により、前記第2の蓄熱タンクに蓄熱され、前記第1の蓄熱タンク内に貯留された前記流体は、前記給湯運転において、前記上部配管から前記熱交換器に流入して温度が低下した後、前記下部配管を介して前記第1の蓄熱タンクの下部に流入して循環するものであって、前記第1の蓄熱タンクは、下部側に形成された第1段部と、上部側に形成され、水平面で切断したときの切断面が前記第1段部よりも小さい第2段部と、を有し、前記第2の蓄熱タンクは、前記第2段部の側面を覆って当接するように配置されるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、加熱された流体を貯留する蓄熱部を構成する第1の蓄熱タンクと蓄熱材が収納された第2の蓄熱タンクとが別体で形成されている。そのため、第2の蓄熱タンクが破損して内部の蓄熱材が漏れ出す場合でも、蓄熱材の給水への混入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る給湯機の構成の一例を示す概略図である。
図2図1の蓄熱部の構造の一例を示す斜視図である。
図3図1の蓄熱部の構造の一例を示す上面図である。
図4図3に示す蓄熱部のA-A断面図である。
図5】実施の形態2に係る蓄熱部の構造の一例を示す斜視図である。
図6】実施の形態2に係る蓄熱部の構造の一例を示す上面図である。
図7図6に示す蓄熱部のB-B断面図である。
図8図6に示す蓄熱部の変形例のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、以下の各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0011】
実施の形態1.
本実施の形態1に係る給湯機について説明する。本実施の形態1に係る給湯機は、時間帯別契約電力の電力単価が安価な深夜時間帯にヒートポンプ等の加熱装置を用いて流体を加熱して蓄熱し、蓄えられた熱を給湯に用いるものである。
【0012】
[給湯機100の構成]
図1は、本実施の形態1に係る給湯機の構成の一例を示す概略図である。図1に示すように、給湯機100は、蓄熱タンクユニット1および加熱装置2を含んで構成されている。蓄熱タンクユニット1および加熱装置2は、現地で配管接続される。蓄熱タンクユニット1および加熱装置2は、配管3および配管4で接続されている。また、蓄熱タンクユニット1には、給水配管5および給湯配管6が接続されている。給水配管5および給湯配管6は、それぞれ現地でシャワーおよび蛇口等の端末に接続される。
【0013】
(加熱装置2)
加熱装置2は、蓄熱タンクユニット1から供給される流体を加熱する加熱手段である。加熱装置2として、例えば、電気ヒーター、ガスボイラーまたはヒートポンプユニット等が用いられる。この例では、加熱装置2としてヒートポンプユニットが用いられる場合について説明する。
【0014】
加熱装置2は、圧縮機21、加熱熱交換器22、減圧装置23および吸熱熱交換器24を備えている。加熱装置2では、圧縮機21、加熱熱交換器22、減圧装置23および吸熱熱交換器24が冷媒配管によって環状に接続されることにより、二酸化炭素等の冷媒が循環する冷媒回路が形成されている。
【0015】
圧縮機21は、低温低圧の冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮し、高温高圧の冷媒を吐出する。圧縮機21は、例えば、運転周波数を変化させることにより、単位時間あたりの冷媒の送出量である容量が制御されるインバータ圧縮機等からなる。
【0016】
加熱熱交換器22は、その内部に、冷媒回路を循環する冷媒が流れる冷媒側流路と、後述する沸き上げ回路を循環する流体が流れる流体側流路との2つの流路が形成されている。加熱熱交換器22は、冷媒側流路を流れる冷媒と、流体側流路を流れる流体との間で熱交換を行う。加熱熱交換器22は、冷媒の熱を流体に放熱して冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。
【0017】
減圧装置23は、例えば膨張弁であり、冷媒を減圧して膨張させる。減圧装置23は、例えば、電子式膨張弁などの開度の制御を行うことができる弁で構成される。
【0018】
吸熱熱交換器24は、近傍に設けられた図示しないファン等によって供給される空気と冷媒との間で熱交換を行う。吸熱熱交換器24は、冷媒を蒸発させ、その際の気化熱により空気を冷却する。吸熱熱交換器24として、例えばフィンアンドチューブ型の熱交換器が用いられる。
【0019】
(蓄熱タンクユニット1)
蓄熱タンクユニット1は、加熱装置2によって加熱された流体を貯留することによって蓄熱する。蓄熱タンクユニット1は、蓄熱部10、加熱装置用ポンプ11、給湯用ポンプ12、熱交換器13および混合弁14を備え、外部の端末に接続された給水配管5および給湯配管6が接続されている。
【0020】
蓄熱タンクユニット1では、蓄熱部10、加熱装置用ポンプ11、加熱装置2の吸熱熱交換器24および蓄熱部10を流体が循環することにより、流体を加熱する沸き上げ回路が形成される。また、蓄熱タンクユニット1では、蓄熱部10、熱交換器13、給湯用ポンプ12および蓄熱部10を流体が循環することにより、市水等の水を加熱する給湯加熱回路が形成される。沸き上げ回路および給湯加熱回路を循環する流体として、水または不凍液が用いられる。なお、水は、不凍液と比較して安価であるため、流体として水を用いることが好ましい。
【0021】
蓄熱部10は、配管4を介して加熱装置2から供給される加熱された流体を貯留する。詳細は後述するが、蓄熱部10の上部には、上部配管33が設けられ、蓄熱部10の下部には、下部配管34が設けられている(図2図4参照)。蓄熱部10は、第1の蓄熱タンク30および第2の蓄熱タンク40で構成されている。蓄熱部10の詳細な構成については、後述する。
【0022】
加熱装置用ポンプ11は、蓄熱部10の下部配管34から流出した流体を、配管3を介して加熱装置2の加熱熱交換器22に対して送出するように、図示しないモータによって駆動される。給湯用ポンプ12は、蓄熱部10の上部配管33から流出した流体を、熱交換器13に対して送出するように、図示しないモータによって駆動される。
【0023】
熱交換器13は、その内部に、蓄熱部10から流出した流体が流れる一次側流路と、給水配管5から分岐した流体が流れる二次側流路との2つの流路が形成されている。熱交換器13は、内部に形成された2つの流路を流れる流体の間で熱交換を行う。熱交換器13は、例えばプレート式熱交換器であり、ステンレス、アルミニウムまたは銅等の金属を平板状に加工して積層することによって形成されている。
【0024】
混合弁14は、例えば三方弁であり、熱交換器13に接続された第1流入口と、給水配管5から分岐した流路に接続された第2流入口と、給湯配管6に接続された流出口とを有している。混合弁14は、第1流入口に流入する高温の流体と、第2流入口に流入する給水配管5を介して供給された市水等の流体とを混合し、流出口から流出させる。混合弁14の下流側には、図示しない温度センサが設けられており、温度センサで検出された混合された流体の温度が設定温度となるように、混合弁14における流体の混合比が制御される。
【0025】
[蓄熱部10の構造]
図2は、図1の蓄熱部の構造の一例を示す斜視図である。図3は、図1の蓄熱部の構造の一例を示す上面図である。図4は、図3に示す蓄熱部のA-A断面図である。図2図4に示すように、蓄熱部10は、第1の蓄熱タンク30と、第1の蓄熱タンク30と別体で形成された第2の蓄熱タンク40とで構成されている。
【0026】
第1の蓄熱タンク30は、直方体の断面形状を有する中空の角柱状に形成され、例えばステンレスで形成されている。第1の蓄熱タンク30における側壁の厚みは、例えば、2~3mm程度である。第1の蓄熱タンク30は、高さ方向(z方向)に段部を有し、下部側の第1段部31と、上部側の第2段部32とで形成されている。
【0027】
第1段部31の高さは、第2段部32の高さに対して1.5~2倍程度となっている。また、第1段部31における幅方向(x方向)および奥行き方向(y方向)のそれぞれの辺は、第2段部32における同方向のそれぞれの辺よりも、200mm程度長く形成されている。すなわち、幅方向(x方向)および奥行き方向(y方向)によって形成される水平面で第2段部32を切断した場合の切断面は、同様に水平面で切断した第1段部31の切断面よりも小さい。さらに、第1段部31および第2段部32の同一側面において、第1段部31の側面から第2段部32の側面までの距離は、それぞれ100mm程度となっている。
【0028】
このように第1段部31および第2段部32が形成されることにより、第1の蓄熱タンク30を上面から見た場合、第1段部31の対角線の交点と、第2段部32の対角線の交点とが、幅方向(x方向)および奥行き方向(y方向)において同一位置となっている。
【0029】
第1段部31の上面には、上方に突出する上部配管33が形成されている。第2段部32の底面には、下方に突出する下部配管34が形成されている。上部配管33および下部配管34は、第1の蓄熱タンク30の内部に貯留された流体が流入出可能に形成されている。上部配管33および下部配管34は、第1の蓄熱タンク30を上面側から見た場合に、第2段部32の対角線の交点と、幅方向(x方向)および奥行き方向(y方向)において略同位置に形成されると好ましい。
【0030】
第2の蓄熱タンク40は、第1の蓄熱タンク30における第2段部32の側面を覆って当接するように形成されている。第2の蓄熱タンク40の外周は、第1の蓄熱タンク30の第1段部31の外周と同寸法となるように形成されている。また、第2の蓄熱タンク40の内周は、第1の蓄熱タンク30の第2段部32の外周と同寸法となるように形成されている。
【0031】
第2の蓄熱タンク40は、例えばステンレスで形成された直方体の断面形状を有する中空の角柱状に形成されている。第2の蓄熱タンク40における側壁の厚みは、例えば、2mm程度であり、第1の蓄熱タンク30における側壁と同じ、あるいは薄く形成されている。第2の蓄熱タンク40の高さは、第1の蓄熱タンク30における第2段部32の高さと同等である。
【0032】
第1の蓄熱タンク30および第2の蓄熱タンク40には、それぞれ蓄熱材が貯えられる。第1の蓄熱タンク30には、蓄熱材として水が貯えられる。第2の蓄熱タンク40には、第1の蓄熱タンク30とは異なる蓄熱材が貯えられる。具体的には、第2の蓄熱タンク40には、蓄熱材として潜熱蓄熱材が貯えられる。潜熱蓄熱材とは、融解による固体から液体への相変化に伴い、潜熱を蓄熱する蓄熱材を示す。
【0033】
また、蓄熱材として、潜熱蓄熱材と異なる顕熱蓄熱材が挙げられる。顕熱蓄熱材とは、相変化を伴わず温度変化を利用して顕熱を蓄熱する蓄熱材を示す。第1の蓄熱タンク30に貯えられる水は、相変化を生じないため、本用途においては顕熱蓄熱材に分類される。
【0034】
潜熱蓄熱材は、例えば、酢酸ナトリウム3水和物やチオ硫酸ナトリウム5水和物などの水和物媒体や、パラフィンなどの有機系媒体であってもよい。酢酸ナトリウム3水和物の融点の一例は58℃であり、チオ硫酸ナトリウム5水和物の融点の一例は48℃であり、パラフィンの融点の一例は56℃である。また、ある温度帯におけるこれらの潜熱蓄熱材の蓄熱密度の一例は、酢酸ナトリウム3水和物が0.54MJ/Lであるのに対し、パラフィンは0.28MJ/Lである。
【0035】
ここで、酢酸ナトリウム3水和物の方が、パラフィンに比べて蓄熱密度は高いが、融点において液体から固体に相変化しない過冷却現象が発生するため、相変化の安定性に欠ける。そのため、蓄熱密度だけでなく安定性の観点から、潜熱蓄熱材としては、パラフィンなどのように相変化が安定している蓄熱材を選定することが好ましい。また、潜熱蓄熱材は、顕熱蓄熱材よりも蓄熱量が多いため、潜熱蓄熱材を蓄熱材に用いることは、給湯機100の小型化に有利となる。
【0036】
なお、第2の蓄熱タンク40の内周は、外周よりも板厚が薄くなるように構成すると好ましい。これは、当接する第1の蓄熱タンク30と第2の蓄熱タンク40との間の伝熱性能を向上させるためである。また、第1の蓄熱タンク30における第2段部32の板厚が、それ以外の板厚よりも薄くなるように構成することでも、同様の効果を奏することができる。
【0037】
なお、第2の蓄熱タンク40内に、複数のフィン形状の板材が内周から外周に向かって延びるように配置されてもよい。このとき、フィン形状の板材は、例えば、熱伝導率の高いアルミニウムが望ましい。このように、フィン形状の板材が第2の蓄熱タンク40内に配置されることにより、潜熱蓄熱材同士の熱伝導性を向上させることができ、また、第1の蓄熱タンク30と第2の蓄熱タンク40との間の伝熱性能を向上させることができる。
【0038】
また、第2の蓄熱タンク40の内壁には、フッ素コーティング等の潜熱蓄熱材であるパラフィンが付着しにくい加工が施されてもよい。これにより、壁面の周囲に位置する一部の潜熱蓄熱材のみが固相から液相に変化した際に、相変化したときの体積増により発生する圧力によるタンクへの応力を緩和することができる。
【0039】
図1において、蓄熱部10から沸き上げ回路に流体が流出する際の流出口、すなわち、蓄熱部10から加熱装置2に流体を供給する際の流出口が下部配管34である。下部配管34は、給湯加熱回路を介して蓄熱部10に流体を流入させる流入口、すなわち、熱交換器13で熱交換された流体が流入する流入口も兼ねている。
【0040】
また、沸き上げ回路を介して蓄熱部10に流体が流入する際の流入口、すなわち、加熱装置2で加熱された流体が蓄熱部10に流入する際の流入口が上部配管33である。上部配管33は、蓄熱部10から給湯加熱回路に流体が流出する際の流出口、すなわち、蓄熱部10から熱交換器13に流体を供給する際の流出口も兼ねている。
【0041】
このように、上部配管33および下部配管34は、2つの循環経路を流体が循環する際に、それぞれ流入出口として機能する部品である。そのため、上部配管33および下部配管34に、例えばT型の継手が設けられ、流路が2つに分岐するようになっている。
【0042】
なお、この例では、上部配管33および下部配管34を2つの循環回路の共用部品としているが、これに限られず、例えば、第1の蓄熱タンク30の上面および底面のそれぞれに、流体が流入出する流入出配管がさらに設けられてもよい。
【0043】
第1の蓄熱タンク30および第2の蓄熱タンク40が組み合わせられて蓄熱部10が形成される場合、これら2つのタンクの当接面には、熱伝導性グリスまたは熱伝導シート等の熱伝導性材料を配置すると好ましい。これは、第1の蓄熱タンク30と第2の蓄熱タンク40との間の熱伝導を促進させ、伝熱性能を向上させるためである。
【0044】
また、蓄熱部10の外周には、図示しない断熱材が配置されてもよい。これにより、蓄熱部10からの自然放熱を抑制することができる。このとき使用する断熱材として、例えば、平板状の真空断熱材、真空断熱材と真空断熱材との隙間を塞ぐための発泡ポリスチレンまたは発泡ポリプロピレン等の発泡断熱材、あるいは、ウレタン断熱材などが用いられる。
【0045】
さらに、この例では、第2の蓄熱タンク40の外周が第1段部31の外周と同寸法となり、第2の蓄熱タンク40の内周が第2段部32の外周と同寸法となるように形成されているように説明したが、これはこの例に限られない。例えば、第1の蓄熱タンク30を、段部を有さないように形成し、第2の蓄熱タンク40は、第1の蓄熱タンク30の側面の上部側を覆うように配置されてもよい。
【0046】
[給湯機100の動作]
上記構成を有する給湯機100の動作について説明する。本実施の形態1に係る給湯機100では、給湯機100における蓄熱動作である沸き上げ運転、および、給湯機100における給湯動作である給湯運転が行われる。
【0047】
(沸き上げ運転(蓄熱動作))
給湯機100による沸き上げ運転(蓄熱動作)について説明する。ここでは、蓄熱部10に貯留される流体が水である場合を例にとって説明する。沸き上げ運転は、加熱装置2によって低温の水を高温に沸き上げ、沸き上げられた水を蓄熱部10に貯留する運転である。沸き上げ運転は、主に、深夜電力時間帯などの電気料機が安価な時間帯、あるいは、蓄熱部10の蓄熱量が減少した場合に実施される。
【0048】
沸き上げ運転が開始されると、加熱装置2では、低温低圧のガス冷媒が圧縮機21によって圧縮され、高温高圧のガス冷媒となって吐出される。圧縮機21から吐出された高温高圧のガス冷媒は、加熱熱交換器22に流入し、沸き上げ回路を流れる水と熱交換して放熱しながら凝縮し、高圧の液冷媒となって加熱熱交換器22から流出する。
【0049】
加熱熱交換器22から流出した高圧の液冷媒は、減圧装置23によって減圧されて低温低圧の気液二相冷媒となる。低温低圧の気液二相冷媒は、吸熱熱交換器24に流入し、図示しないファンによって取り込まれた空気と熱交換して吸熱および蒸発し、低圧のガス冷媒となって圧縮機21へ吸入される。
【0050】
一方、蓄熱タンクユニット1では、加熱装置用ポンプ11が駆動され、それによって蓄熱部10の第1の蓄熱タンク30の下部に貯留された水が下部配管34から流出する。第1の蓄熱タンク30から流出した水は、加熱装置用ポンプ11の吸入側に吸入され、加圧されて送水される。
【0051】
加熱装置用ポンプ11から送水された水は、配管3を介して加熱装置2の加熱熱交換器22に流入する。加熱熱交換器22に流入した水は、冷媒側流路を流れる冷媒と熱交換して高温水となり、加熱熱交換器22から流出する。加熱熱交換器22から流出した高温水は、配管4および上部配管33を介して第1の蓄熱タンク30の上部に流入する。
【0052】
沸き上げ運転が実施される場合、第1の蓄熱タンク30の下部に貯えられている水は、季節にも依存するが、市水が10℃程度となる季節であれば、10℃程度の低温水となっている。一方、加熱装置2において、圧縮機21から吐出される冷媒の温度は、90℃程度である。したがって、沸き上げ運転時に加熱熱交換器22を通過する水は、冷媒との熱交換により65℃程度まで昇温した状態で、第1の蓄熱タンク30に流入する。
【0053】
第1の蓄熱タンク30に流入した高温の水は、第1の蓄熱タンク30の壁面を介して、第2の蓄熱タンク40内の蓄熱材を加熱する。すなわち、第1の蓄熱タンク30および第2の蓄熱タンク40は、熱交換器として機能する。
【0054】
ここで、第2の蓄熱タンク40に設けられた蓄熱材の蓄熱量が少ない場合、すなわち、蓄熱材の温度が低い場合は、第1の蓄熱タンク30に流入した水の熱は、第2の蓄熱タンク40の蓄熱材に多く奪われる。そのため、第1の蓄熱タンク30に流入した水の温度は、大きく低下する。
【0055】
このようにして、第1の蓄熱タンク30への加熱された水の流入が繰り返されることにより、第2の蓄熱タンク40の蓄熱材の温度が徐々に上昇する。そして、蓄熱材の温度が融点近傍まで到達すると、第1の蓄熱タンク30と第2の蓄熱タンク40との間の熱交換量が低下する。したがって、第1の蓄熱タンク30に流入した水は、高温を維持した状態で、第1の蓄熱タンク30に貯えられる。
【0056】
ところで、沸き上げ運転が行われることにより、蓄熱部10では、上部に高温水が貯留され、最下部に低温水が貯留される。また、上部と最下部との間には、温度成層が形成される。沸き上げ運転が進行すると、沸き上げ量が増加することによって高温水の領域が大きくなり、温度成層が最下部に近づく。そして、最下部に貯留された水の温度が上昇し、加熱装置2の加熱熱交換器22に流入する水の入水温度が次第に上昇する。
【0057】
一般的な給湯機では、必要な熱量を貯える、もしくは加熱装置であるヒートポンプユニットへの入水温度が上昇すると、ヒートポンプユニットの性能が低下する。そして、ヒートポンプユニットの性能が低下すると、沸き上げ運転が停止される。
【0058】
これに対して、本実施の形態1に係る給湯機100では、沸き上げ運転時に第1の蓄熱タンク30に流入した水は、第2の蓄熱タンク40に伝熱することによって温度が低下する。これにより、蓄熱部10に蓄熱される熱量に対して、蓄熱部10から流出する水の温度は、従来の蓄熱部から流出する水の温度と比較して低くなるため、加熱装置2の性能の低下を抑制することができる。
【0059】
(給湯運転(給湯動作))
給湯機100による給湯運転(給湯動作)について説明する。給湯運転は、シャワー、風呂の湯張り、および洗面等で所望の温度の水(湯)を利用するために、設定された給湯温度の水(湯)を給湯配管6から送出するための運転である。
【0060】
使用者によって給湯運転が指示され、給湯温度が設定されると、混合弁14の下流側に設けられた温度センサの温度が設定給湯温度となるように、混合弁14における開度が調整される。そして、使用者が蛇口をひねる等して給水配管5から蓄熱タンクユニット1に対して市水等の水が流入すると、給湯用ポンプ12が駆動される。
【0061】
給湯用ポンプ12の駆動により、第1の蓄熱タンク30に貯留された水は、上部配管33から流出し、熱交換器13の一次側流路に流入する。熱交換器13の一次側流路に流入した水は、二次側流路を流れる水と熱交換して低温水または中温水となり、熱交換器13から流出する。このとき、第1の蓄熱タンク30から流出した水は、熱交換器13での熱交換により、二次側流路を流れる水を、例えば40℃以上の高温の水に昇温させる。熱交換器13から流出した水は、給湯用ポンプ12の吸入側に吸入され、加圧されて送水される。給湯用ポンプ12から送水された水は、下部配管34を介して第1の蓄熱タンク30の下部に流入する。
【0062】
一方、給水配管5から流入した水は、蓄熱タンクユニット1内で分岐される。このとき、分岐された一方の水は、熱交換器13を経由して混合弁14の第2流入口に流入し、分岐された他方の水は、熱交換器13の二次側流路に流入する。
【0063】
熱交換器13の二次側流路に流入した水は、一次側流路を流れる水と熱交換して高温水となり、熱交換器13から流出する。熱交換器13から流出した水は、混合弁14の第1流入口に流入する。混合弁14では、第1流入口に流入した水と、第2流入口に流入した水とが混合され、混合水は、設定給湯温度となって流出口から流出する。
【0064】
給湯運転(給湯動作)時における蓄熱部10の蓄熱状態について説明する。蓄熱動作が完了した場合、蓄熱部10の第1の蓄熱タンク30では、上部が65℃程度となり、下部が市水の温度である10℃程度となる温度成層が形成されている。すなわち、第1の蓄熱タンク30内の水は、上部から下部に向かうにつれて低温となり、最下部は蓄熱動作終了時の加熱装置2への入水温度と略同一となっている。
【0065】
なお、ここでは、第2の蓄熱タンク40に第1の蓄熱タンク30内に貯留された水の熱が十分に伝達され、第2の蓄熱タンク40内の蓄熱材が液状に相変化して65℃に保たれている状態を給湯初期状態とするものとする。
【0066】
給湯初期状態において給湯動作を実行した場合、第1の蓄熱タンク30の上部配管33から流出する水は、概ね65℃の高温水、すなわち蓄熱状態において最も高温となっている。このような給湯初期状態から給湯運転が継続されることにより、第1の蓄熱タンク30内の水は、下部から上部に押し上げられる。したがって、第1の蓄熱タンク30の上部の水の温度は、給湯運転の継続に伴い、低下する。
【0067】
しかしながら、本実施の形態1では、第1の蓄熱タンク30の上部の水の温度が低下し、第2の蓄熱タンク40の蓄熱材の温度以下となった場合に、第2の蓄熱タンク40の蓄熱材の熱が第1の蓄熱タンク30の水へ伝熱する。これにより、第1の蓄熱タンク30の上部の水が昇温する。したがって、第1の蓄熱タンク30の第2段部32の領域では、水の温度の低下に伴い、第2の蓄熱タンク40から熱が補充される。
【0068】
ここで、第1の蓄熱タンク30と第2の蓄熱タンク40とは、別体で形成されている。そのため、腐食により第1の蓄熱タンク30あるいは第2の蓄熱タンク40が破損し、穴が生じた場合でも両タンク内の流体が混合することはない。したがって、本実施の形態1では、第1の蓄熱タンク30から流出する水への第2の蓄熱タンク40の蓄熱材の混入を防ぐことができる。
【0069】
このように、本実施の形態1に係る給湯機100では、蓄熱する蓄熱部10が第1の蓄熱タンク30および第2の蓄熱タンク40で構成されており、流体による蓄熱に加えて、水等の流体よりも蓄熱密度の高い潜熱蓄熱材が適用される。そのため、従来と同程度の熱を蓄える際には、蓄熱部10を小型化することができる。
【0070】
また、本実施の形態1では、第1の蓄熱タンク30に蓄えられた熱が第2の蓄熱タンク40に供給されるので、加熱装置2であるヒートポンプで加熱される流体の温度を低下させることができる。そのため、ヒートポンプの性能低下を抑制することができ、省エネ性能の低下を抑制することができる。
【0071】
以上のように、本実施の形態1に係る給湯機100では、蓄熱部10を構成する第1の蓄熱タンク30と第2の蓄熱タンク40とが別体で形成されている。そのため、第2の蓄熱タンク40が腐食等によって破損して内部の蓄熱材が漏れ出す場合でも、第1の蓄熱タンク30内の流体への蓄熱材の混入を防ぐことができる。さらには、蓄熱材の給水への混入を防ぐことができる。
【0072】
また、給湯機100では、蓄熱部10が第1の蓄熱タンク30および第2の蓄熱タンク40で形成され、加熱された流体が第1の蓄熱タンク30に流入する際に、流体と、第2の蓄熱タンク40の蓄熱材との間で熱交換が行われ、第2の蓄熱タンク40内に蓄熱される。これにより、第1の蓄熱タンク30内に貯留される流体の温度が低下するので、蓄熱動作を繰り返すことによって生じる、加熱装置2に供給される流体の温度上昇が、蓄熱しながらも抑制される。そのため、加熱装置2であるヒートポンプの性能の低下を抑制し、省エネ性能の低下を抑制することができる。
【0073】
実施の形態2.
次に、本実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係る給湯機100は、蓄熱部10の構造が実施の形態1と相違する。なお、本実施の形態2において、実施の形態1と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0074】
本実施の形態2に係る給湯機100は、蓄熱タンクユニット1に設けられた蓄熱部10の構造を除いて、上述した実施の形態1と共通する。そのため、以下では、給湯機100の蓄熱タンクユニット1に設けられた蓄熱部10の構造について説明する。
【0075】
[蓄熱部10の構造]
図5は、本実施の形態2に係る蓄熱部の構造の一例を示す斜視図である。図6は、本実施の形態2に係る蓄熱部の構造の一例を示す上面図である。図7は、図6に示す蓄熱部のB-B断面図である。図5図7に示すように、蓄熱部10は、第1の蓄熱タンク30と、第1の蓄熱タンク30と別体で形成された第2の蓄熱タンク40Aとで構成されている。
【0076】
第2の蓄熱タンク40Aは、第1の蓄熱タンク30における第2段部32の側面および上面を覆って当接するように形成されている。第2の蓄熱タンク40Aの外周は、実施の形態1と同様に、第1の蓄熱タンク30の第1段部31の外周と同寸法となるように形成されている。また、第2の蓄熱タンク40Aの内周は、実施の形態1と同様に、第1の蓄熱タンク30の第2段部32の外周と同寸法となるように形成されている。
【0077】
第2の蓄熱タンク40の上面中央には、第1の蓄熱タンク30の上部配管33に対応する位置に、高さ方向(z方向)に貫通する孔部41が形成されている。これにより、第1の蓄熱タンク30および第2の蓄熱タンク40が組み合わせられた際に、第1の蓄熱タンク30の上部配管33は、孔部41を貫通するように上方に突出する。
【0078】
第2段部32の上面は、放熱が最も多くなる部位である。そのため、このように第2の蓄熱タンク40によって覆われることにより、従来と比較して断熱性能が向上し、蓄えられた熱の放熱を抑制することができる。
【0079】
[蓄熱部10の変形例]
図8は、図6に示す蓄熱部の変形例のB-B断面図である。図8に示すように、本実施の形態2に係る蓄熱部10の変形例では、第1の蓄熱タンク30における第2段部32Bの上面が、上面中央からテーパ状に形成されている。また、第2の蓄熱タンク40Bにおける上面内周は、第1の蓄熱タンク30の第2段部32Bの上面に沿うようにテーパ状に形成されている。これらのテーパ形状は、幅方向(x方向)および奥行き方向(y方向)に対して5°程度傾斜するように形成されている。
【0080】
第2の蓄熱タンク40内の潜熱蓄熱材は、第1の蓄熱タンク30に流入する水と熱交換した際に、上部側から相変化する。そのため、第1の蓄熱タンク30と第2の蓄熱タンク40との上面における当接面がテーパ状に形成されることにより、タンクに生じる応力を緩和することができる。
【0081】
以上のように、本実施の形態2に係る給湯機100において、第1の蓄熱タンク30は、第2段部32の側面に加えて上面が第2の蓄熱タンク40によって覆われて当接されている。これにより、放熱が最も多くなる第2段部32の上面の断熱性能が向上するため、蓄えられた熱の放熱を抑制することができる。
【0082】
以上、本実施の形態1および2について説明したが、本開示は、上述した実施の形態1および2に限定されるものではなく、本開示要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、第2の蓄熱タンク40は、第1の蓄熱タンク30の上部を覆うように配置されることが望ましいが、これに限られず、第1の蓄熱タンク30の中間部または下部に配置させてもよい。このように第2の蓄熱タンク40が配置されることによっても、本実施の形態1および2の効果を奏することができる。
【0083】
ただし、第1の蓄熱タンク30内の流体は、上部が高温となり、下部が低温となるように温度成層が形成されており、給湯動作を行うことで、このような温度成層はさらに顕著となる。また、給湯時は、第1の蓄熱タンク30の上部の流体が熱交換器13に供給されるため、第1の蓄熱タンク30の上部に第2の蓄熱タンク40の熱を供給することが望ましい。
【0084】
また、実施の形態1および2の給湯機100では、第2の蓄熱タンク40の潜熱蓄熱材としてパラフィンが用いられる場合について説明したが、これに限られず、蓄熱温度近傍に融点がある材料であれば、その他の潜熱蓄熱材が適用されてもよい。
【0085】
さらに、蓄熱材として、潜熱蓄熱材に限られず、顕熱蓄熱材が適用されてもよい。この場合には、第1の蓄熱タンク30内の流体に対して、蓄熱密度の高い温度であれば、同様の効果を奏することができる。
【0086】
さらにまた、蓄熱部10は、直方体状に形成されるように説明したが、これに限られず、例えば円筒形状に形成されてもよい。形状以外の構成を実施の形態1および2と同等にすることにより、上述した効果を奏することができ、これにより、蓄熱部10の設置スペースの自由度は低下するものの、耐圧性能を向上させることができる。
【0087】
また、実施の形態1および2では、第1の蓄熱タンク30および第2の蓄熱タンク40がステンレスで形成されるように説明したが、これはこの例に限られない。内部の蓄熱材によって腐食しない材料であれば、第1の蓄熱タンク30および第2の蓄熱タンク40は、ステンレス以外の材料で形成されてもよい。例えば、蓄熱材によって腐食しない材料として、鉄、ニッケルクロム合金および樹脂等が挙げられる。ただし、第1の蓄熱タンク30と第2の蓄熱タンク40とが互いに接触する部分は、熱伝導率の高い材料で構成することが望ましい。
【符号の説明】
【0088】
1 蓄熱タンクユニット、2 加熱装置、3、4 配管、5 給水配管、6 給湯配管、10 蓄熱部、11 加熱装置用ポンプ、12 給湯用ポンプ、13 熱交換器、14 混合弁、21 圧縮機、22 加熱熱交換器、23 減圧装置、24 吸熱熱交換器、30 第1の蓄熱タンク、31 第1段部、32、32B 第2段部、33 上部配管、34 下部配管、40、40A 第2の蓄熱タンク、41 孔部、100 給湯機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8