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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】テープフィーダ段取りシステム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
H05K13/02 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023523744
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2021019722
(87)【国際公開番号】W WO2022249263
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 由治
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特許第2832318(JP,B2)
【文献】特許第5535032(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/109793(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/216832(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に装着する部品を複数個収容したキャリアテープをリールから繰り出し所定の供給方向へ送る駆動機構を有して前記部品を供給するテープフィーダ、を載置する載置台と、
前記部品の使用実績から求めた実績使用頻度における最近の傾向を考慮して、今後の使用頻度を推定する推定部と、
前記載置台に載置された前記テープフィーダを対象として、前記部品の今後の使用計画、および前記推定部が推定した前記部品の今後の前記使用頻度に基づき、前記キャリアテープを自動で前記供給方向の逆方向へ戻すか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記キャリアテープを自動で前記逆方向へ戻すと判定した場合に、前記テープフィーダの前記駆動機構を制御して、前記キャリアテープを前記逆方向へ戻させる制御部と、
を備えるテープフィーダ段取りシステム。
【請求項2】
前記判定部および前記制御部は、生産する前記基板の種類を前基板種から次基板種に変更する段取り替え時に、前記前基板種の前記基板の生産に対応するように前記載置台に載置された複数の前記テープフィーダを対象として動作する、請求項1に記載のテープフィーダ段取りシステム。
【請求項3】
基板に装着する部品を複数個収容したキャリアテープをリールから繰り出し所定の供給方向へ送る駆動機構を有して前記部品を供給するテープフィーダ、を載置する載置台と、
前記載置台に載置された前記テープフィーダを対象として、前記部品の今後の使用計画、および推定可能な前記部品の今後の使用頻度に基づき、前記キャリアテープを自動で前記供給方向の逆方向へ戻すか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記キャリアテープを自動で前記逆方向へ戻すと判定した場合に、前記テープフィーダの前記駆動機構を制御して、前記キャリアテープを前記逆方向へ戻させる制御部と、を備え
前記判定部および前記制御部は、生産する前記基板の種類を前基板種から次基板種に変更する段取り替え時に、前記前基板種の前記基板の生産に対応するように前記載置台に載置された複数の前記テープフィーダを対象として動作し、
前記判定部は、
前記次基板種の前記基板の生産に使用する前記部品を収容した前記キャリアテープを前記逆方向へ戻さないと判定し、
前記次基板種の前記基板の生産に使用せず、かつ、前記使用頻度が所定の閾頻度以上の前記部品を収容した前記キャリアテープを前記逆方向へ戻さないと判定し、
前記次基板種の前記基板の生産に使用せず、かつ、前記使用頻度が前記閾頻度よりも低い前記部品を収容した前記キャリアテープを自動で前記逆方向へ戻すと判定する、
テープフィーダ段取りシステム。
【請求項4】
前記判定部は、予め設定された一部の部品種の前記部品を対象として、前記次基板種の前記基板の生産に使用せず、かつ、前記使用頻度が前記閾頻度よりも低い前記部品を収容した前記キャリアテープを手動で前記逆方向へ戻すと判定する、請求項に記載のテープフィーダ段取りシステム。
【請求項5】
基板に装着する部品を複数個収容したキャリアテープをリールから繰り出し所定の供給方向へ送る駆動機構を有して前記部品を供給するテープフィーダ、を載置する載置台と、
前記載置台に載置された前記テープフィーダを対象として、前記部品の今後の使用計画、および推定可能な前記部品の今後の使用頻度に基づき、前記キャリアテープを自動で前記供給方向の逆方向へ戻すか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記キャリアテープを自動で前記逆方向へ戻すと判定した場合に、前記テープフィーダの前記駆動機構を制御して、前記キャリアテープを前記逆方向へ戻させる制御部と、を備え、
前記判定部および前記制御部は、生産する前記基板の種類を前基板種から次基板種に変更する段取り替え時に、前記前基板種の前記基板の生産に対応するように前記載置台に載置された複数の前記テープフィーダを対象として動作し、
前記次基板種の前記基板の生産に使用する前記部品を供給する第一種の前記テープフィーダ、
前記次基板種の前記基板の生産に使用せず、かつ、前記使用頻度が所定の閾頻度以上の前記部品を供給する第二種の前記テープフィーダ、および、
前記次基板種の前記基板の生産に使用せず、かつ、前記使用頻度が前記閾頻度よりも低い前記部品を供給する第三種の前記テープフィーダの種別を表示する表示部を備える、
テープフィーダ段取りシステム。
【請求項6】
基板に装着する部品を複数個収容したキャリアテープをリールから繰り出し所定の供給方向へ送る駆動機構を有して前記部品を供給するテープフィーダ、を載置する載置台と、
前記載置台に載置された前記テープフィーダを対象として、前記部品の今後の使用計画、および推定可能な前記部品の今後の使用頻度に基づき、前記キャリアテープを自動で前記供給方向の逆方向へ戻すか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記キャリアテープを自動で前記逆方向へ戻すと判定した場合に、前記テープフィーダの前記駆動機構を制御して、前記キャリアテープを前記逆方向へ戻させる制御部と、を備え
前記判定部および前記制御部は、生産する前記基板の種類を前基板種から次基板種に変更する段取り替え時に、前記前基板種の前記基板の生産に対応するように前記載置台に載置された複数の前記テープフィーダを対象として動作し、
前記次基板種の前記基板の生産に使用する前記部品を供給する前記テープフィーダを前記載置台に残す第一の段取り作業、
前記次基板種の前記基板の生産に使用せず、かつ、前記使用頻度が所定の閾頻度以上の前記部品を供給する前記テープフィーダを前記載置台から取り外す第二の段取り作業、および、
前記次基板種の前記基板の生産に使用せず、かつ、前記使用頻度が前記閾頻度よりも低い前記部品を供給する前記テープフィーダを前記載置台から取り外し、さらに取り外した前記テープフィーダから前記リールを取り外す第三の段取り作業の作業区別を表示する表示部を備える、
テープフィーダ段取りシステム。
【請求項7】
前記表示部が複数の前記テープフィーダの各々に設けられている、請求項またはに記載のテープフィーダ段取りシステム。
【請求項8】
基板に装着する部品を複数個収容したキャリアテープをリールから繰り出し所定の供給方向へ送る駆動機構を有して前記部品を供給するテープフィーダ、を載置する載置台と、
前記載置台に載置された前記テープフィーダを対象として、前記部品の今後の使用計画、および推定可能な前記部品の今後の使用頻度に基づき、前記キャリアテープを自動で前記供給方向の逆方向へ戻すか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記キャリアテープを自動で前記逆方向へ戻すと判定した場合に、前記テープフィーダの前記駆動機構を制御して、前記キャリアテープを前記逆方向へ戻させる制御部と、
前記載置台に配列して載置される複数の前記テープフィーダの各々の配列位置、前記テープフィーダの個体を識別するフィーダID、および前記リールの個体を識別するリールIDを関連付けて記憶する記憶部と、
前記制御部により前記キャリアテープが自動で前記逆方向へ戻される場合に、前記記憶部によって記憶された前記配列位置、前記フィーダID、および前記リールIDの関連付けを解除し、前記キャリアテープが前記逆方向へ戻されることなく前記テープフィーダが前記載置台から取り外される場合に、前記フィーダIDと前記リールIDの関連付けを維持しつつ前記配列位置との関連付けを解除する解除部と、
を備えるテープフィーダ段取りシステム。
【請求項9】
維持された前記フィーダIDと前記リールIDの関連付けに基づいて、今後に生産する前記基板に装着する前記部品を収容した前記キャリアテープを前記供給方向へ送った前記テープフィーダが有るか無いかを判別する判別部を備える、請求項に記載のテープフィーダ段取りシステム。
【請求項10】
複数種類の前記基板の今後の生産計画に含まれる前記部品の前記使用計画に基づいて、今後の前記使用頻度を演算する演算部を備える、請求項3~9のいずれか一項に記載のテープフィーダ段取りシステム。
【請求項11】
前記部品の使用実績から求めた実績使用頻度に基づいて、今後の前記使用頻度を推定する推定部を備える、請求項3~9のいずれか一項に記載のテープフィーダ段取りシステム。
【請求項12】
前記載置台は、前記基板に前記部品を装着する部品装着機に着脱可能であり、さらに、前記制御部を備える外段取りステーションに着脱可能であり、あるいは通信接続可能である、請求項1~11のいずれか一項に記載のテープフィーダ段取りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品装着機に用いるテープフィーダの段取り替えを補助ないしは支援するテープフィーダ段取りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンが形成された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。さらに、対基板作業を実施する対基板作業機を複数台並べて、対基板作業ラインを構成することが一般的となっている。対基板作業機の代表例として、部品の装着作業を実施する部品装着機がある。多くの部品装着機は、部品を複数個収容したキャリアテープをリールから繰り出して送るテープフィーダを使用する。生産する基板の種類を変更するときに、複数のテープフィーダの段取り替えが必要になる場合が多い。この種のテープフィーダの段取り替えに関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたテープフィーダ段取りシステムは、テープフィーダを載置する載置台と、テープフィーダから供給する部品の使用予定があるか否かを判別する使用予定判別部と、使用予定がない場合にテープフィーダの駆動機構を制御してキャリアテープを逆方向へ戻す制御部と、を備える。これによれば、作業者の手作業によることなくテープフィーダに対するキャリアテープの係合状態を解除して、信頼性良くかつ作業者の大きな手間を費やすことなくリールの取り外しを行うことができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/109793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の技術によれば、使用予定がない部品を収容したキャリアテープを逆方向へ戻すことにより、テープフィーダからリールを取り外す手間を軽減することができる。しかしながら、このリールを再び使用する場合に、リールの再セット作業、およびキャリアテープの再装填作業の二度手間が生じる。このため、使用予定がなくとも近い将来に使用されるリールについては、取り外さないほうが手間の軽減になる。一方、長期間にわたって使用しないリールをセットしたままのテープフィーダは、生産に使用することができない。これにより、限られた保有台数のテープフィーダの使用効率が低下したり、基板製品の生産に支障が生じたりする。したがって、リールを取り外すべきか否かの判断は、次の使用予定があるか否かだけでなく、近い将来に使用される可能性の高低も考慮することが望ましい。
【0006】
それゆえ、本明細書は、部品の今後の使用計画だけでなく今後の使用頻度も考慮して、リールを取り外すべきか否かを適正に判断し、段取り替えの手間を確実に軽減することができるテープフィーダ段取りシステムを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、基板に装着する部品を複数個収容したキャリアテープをリールから繰り出し所定の供給方向へ送る駆動機構を有して前記部品を供給するテープフィーダ、を載置する載置台と、前記載置台に載置された前記テープフィーダを対象として、前記部品の今後の使用計画、および推定可能な前記部品の今後の使用頻度に基づき、前記キャリアテープを自動で前記供給方向の逆方向へ戻すか否かを判定する判定部と、前記判定部が前記キャリアテープを自動で前記逆方向へ戻すと判定した場合に、前記テープフィーダの前記駆動機構を制御して、前記キャリアテープを前記逆方向へ戻させる制御部と、を備えるテープフィーダ段取りシステムを開示する。
【発明の効果】
【0008】
開示したテープフィーダ段取りシステムでは、載置台に載置されたテープフィーダを対象として、部品の今後の使用計画および今後の使用頻度に基づき、キャリアテープを自動で逆方向へ戻すか否を判定する。したがって、使用予定がなく、かつ今後の使用頻度が低くて近い将来に使用される可能性が低い部品を収容したキャリアテープのみを選択して、逆方向に戻すことができる。これによれば、テープフィーダに対するキャリアテープの係合状態が自動的に解除されるので、リールを取り外す段取り替えの手間が軽減される。一方、使用予定がなくとも今後の使用頻度が高くて近い将来に使用される可能性が高い部品を収容したキャリアテープは、テープフィーダへの装填状態が維持される。これによれば、近い将来におけるリールの再セット作業やキャリアテープの再装填作業の二度手間が不要となり、段取り替えの手間が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のテープフィーダ段取りシステムを適用する部品装着機の平面図である。
図2】テープフィーダおよびリールの側面図である。
図3】実施形態のテープフィーダ段取りシステムの構成を模式的に示す図である。
図4】外段取りステーションの斜視図である。
図5】テープフィーダ段取りシステムの制御の構成を示すブロック図である。
図6】複数種類の基板を生産する工程を概念的に示す生産フローの図である。
図7】段取り工程におけるテープフィーダ段取りシステムの動作を説明する動作フローの図である。
図8】表示部が段取り工程で必要となる段取り作業を表示する表示例の図である。
図9】記憶部の動作を模式的に説明する図である。
図10】後段取り工程におけるテープフィーダ段取りシステムの動作を説明する動作フローの図である。
図11】表示部が後段取り工程で必要となる段取り作業を表示する表示例の図である。
図12】解除部の動作を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.部品装着機1の構成
まず、実施形態のテープフィーダ段取りシステムを適用する部品装着機1の構成について、図1を参考にして説明する。部品装着機1は、基板製品を量産する対基板作業ラインに設置される。部品装着機1は、図1に示されるように、基板搬送部2、部品供給部3、および部品移載部4などで構成される。図1の左右方向は、基板Kを搬送するX軸方向であり、図1の上下方向は、部品装着機1の前後方向に相当するY軸方向となる。
【0011】
基板搬送部2は、回路パターンが形成された基板Kを搬送する。基板搬送部2は、一対のガイドレール22、一対のコンベアベルト26、およびクランプ装置28を有する。一対のガイドレール22は、間隔を空けて互いに平行に配置される。一対のコンベアベルト26は、基板Kを載置可能な環状のベルト部材で形成される。一対のコンベアベルト26の各々は、ガイドレール22に沿って輪転駆動され、X軸方向に基板Kを搬送する。クランプ装置28は、X軸方向の略中央に設定された装着実施位置の下側に配置される。クランプ装置28は、基板Kを下側から押し上げて、ガイドレール22との間にクランプし、位置決めする。
【0012】
部品供給部3は、基板Kに装着する部品Pを供給する。部品供給部3は、図1に示されるように、部品装着機1の前側に配置される。部品供給部3は、載置台32、フィーダ保持部34、および複数のテープフィーダ5などで構成される。載置台32は、部品装着機1に対して着脱可能に取り付けられる。載置台32は、例えば、台車形状に形成される。載置台32には、その個体を特定する載置台IDを表すラベル(図略)が貼付される。
【0013】
フィーダ保持部34は、概ね長方形の形状を有して、載置台32の上側に配置される。フィーダ保持部34は、X軸方向に並んで配列されかつY軸方向に延在して互いに平行する複数のスロット36を有する。各スロット36には、相互に異なるスロット番号が付されている。図3に示されるように、フィーダ保持部34の後部には、スロット36ごとに設けられた副コネクタ37が配列される。さらに、複数の副コネクタ37は、一つの主コネクタ38に対して並列接続される。
【0014】
複数のテープフィーダ5の各々は、フィーダ保持部34のスロット36に着脱可能に挿入されて載置される。したがって、スロット番号は、複数のテープフィーダ5の各々の配列位置を表す。テープフィーダ5がスロット36に挿入されると、フィーダ側コネクタが副コネクタ37に自動的に連結される。これにより、後述するフィーダ制御部59は、主コネクタ38まで通信接続される。各テープフィーダ5は、前側に保持したリールRからキャリアテープT(図2参照)を引き出して、後端に近い部品供給位置51まで送り、部品供給位置51で部品Pを供給する。テープフィーダ5の詳細な構成については後述する。
【0015】
部品移載部4は、部品Pを部品供給位置51から採取して、基板K上の所定の装着位置に移載する。部品移載部4は、一対のガイドレール41、Y軸スライダ42、X軸スライダ43、装着ヘッド44、および基板カメラ46などで構成される。一対のガイドレール41は、部品装着機1の左右両側に離隔して配置され、Y軸方向に延在して互いに平行する。Y軸スライダ42は、X軸方向に長い部材で形成され、一対のガイドレール41に架け渡されて装架される。Y軸スライダ42は、図略のY軸サーボモータに駆動されてY軸方向に移動する。
【0016】
X軸スライダ43は、Y軸スライダ42に装架される。X軸スライダ43は、Y軸スライダ42に設けられた図略のX軸サーボモータに駆動されてX軸方向に移動する。装着ヘッド44は、X軸スライダ43の下側に取り付けられる。装着ヘッド44は、Y軸スライダ42およびX軸スライダ43の移動に伴い、水平二方向(X-Y方向)に移動する。装着ヘッド44は、負圧を利用して部品Pを吸着する吸着ノズル45を着脱可能に有する。吸着ノズル45は、部品供給部3の部品供給位置51まで移動して部品Pを吸着し、基板K上の所定の装着位置に移動して部品Pを装着する。なお、装着ヘッド44は、複数の吸着ノズル45を有してもよい。また、装着ヘッド44は、吸着ノズル45に代えて、部品Pを挟持する部品装着具を有してもよい。
【0017】
基板カメラ46は、X軸スライダ43の下側の装着ヘッド44の後側に取り付けられる。基板カメラ46は、位置決めされた基板Kの基準マークを上方から撮像して画像データを取得する。この画像データが画像処理されて、基板Kの正確な位置情報が求められる。この位置情報は、吸着ノズル45が部品Pを装着するときの位置制御に用いられる。
【0018】
また、基板搬送部2と部品供給部3との間に、部品カメラ48が取り付けられる。部品カメラ48は、吸着ノズル45に吸着された部品Pを下方から撮像して画像データを取得する。この画像データが画像処理されて、部品Pの形状情報や、吸着位置および回転姿勢の情報が求められる。形状情報は、例えば、部品の正誤判定に用いられる。また、吸着位置および回転姿勢の情報は、吸着ノズル45が部品Pを装着するときの位置制御および姿勢制御に用いられる。
【0019】
2.テープフィーダ5の詳細な構成
次に、テープフィーダ5の詳細な構成について、図2を参考にして説明する。テープフィーダ5は、幅寸法が小さな薄型に形成される。図2に示されるように、テープフィーダ5は、リールRを保持するリール保持軸52を前側寄りに有する。リール保持軸52は、リールRの中心孔に係入して、リールRを着脱可能かつ回転可能に保持する。リールRは、部品Pを複数個収容したキャリアテープTが巻回される回転体である。キャリアテープTは、部品Pを一つずつ収容する図略のキャビティ部が多数設けられる。さらに、キャリアテープTは、テープ幅方向の片側にスプロケット孔が多数設けられる。
【0020】
リールRの側面には、リールRの個体を特定するリールIDを表すラベル53が貼付される。リールIDは、部品Pの種類を特定する情報を含み、または、部品Pの種類を特定する情報と関連付けられて記憶される。ラベル53は、例えば、バーコードや二次元コード、文字列などが印刷されて作成される。
【0021】
テープフィーダ5は、キャリアテープTを送る搬送路として、テープ挿入口54およびガイドレール55を有する。テープ挿入口54は、リール保持軸52に保持されたリールRの後上の位置に配置される。ガイドレール55は、所定の供給方向に延在し、換言するとテープ挿入口54から部品供給位置51まで延在する。また、ガイドレール55の部品供給位置51の手前側に、テープ剥離機構56が設けられる。テープ剥離機構56は、キャリアテープTのカバーテープを剥離して、ベーステープのキャビティ部に収容された部品Pを露出させ、吸着ノズル45が部品Pを吸着できるようにする。
【0022】
また、テープフィーダ5は、キャリアテープTを送る駆動機構として、スプロケット57および駆動モータ58を有する。スプロケット57は、部品供給位置51とテープ剥離機構56の間に回転可能に軸支される。スプロケット57の歯は、ガイドレール55に形成された孔を突き抜けてキャリアテープTのスプロケット孔に係入する。駆動モータ58は、スプロケット57の回転軸に連結される。駆動モータ58は、正転することにより、キャリアテープTを所定の供給方向へ送るようにスプロケット57を正回転駆動する。かつ、駆動モータ58は、逆転することにより、キャリアテープTを供給方向の逆方向へ戻すようにスプロケット57を逆回転駆動する。駆動モータ58の動作および停止、ならびに正転および逆転の切り替えは、フィーダ制御部59によって制御される。
【0023】
キャリアテープTの先端は、作業者の装填作業により、テープ挿入口54に挿入され、ガイドレール55に沿って送られる。キャリアテープTの先端がスプロケット57に到達して、スプロケット57の歯がキャリアテープTのスプロケット孔に係入した以降は、駆動モータ58によるキャリアテープTの送りが行われる。キャリアテープTは、部品供給位置51を通過した後に適宜切断されるので、逆方向への戻しが可能となっている。
【0024】
フィーダ制御部59は、部品装着機1の上位制御部(図略)に通信接続され、双方向の情報伝送を行う。フィーダ制御部59は、上位制御部からの指令にしたがって、駆動モータ58を制御する。また、フィーダ制御部59は、テープフィーダ5の個体を特定するフィーダIDの情報を保持する。さらに、フィーダ制御部59は、セットされているリールRのリールIDと、フィーダIDとを関連付けて保持する。テープフィーダ5のケースには、フィーダIDを表すラベル(図略)が貼付される。
【0025】
また、テープフィーダ5は、前側上部に操作スイッチ5Aおよび表示部5Bを有する。操作スイッチ5Aおよび表示部5Bは、フィーダ制御部59に電気的に接続される。操作スイッチ5Aは、キャリアテープTを供給方向に送る送りスイッチ、およびキャリアテープTを逆方向に戻す戻しスイッチを有する。フィーダ制御部59は、上位制御部からの指令を受け付けることがなく操作スイッチ5Aの操作が有効化されている場合に、操作スイッチ5Aの操作にしたがって駆動モータ58を制御する。
【0026】
段取り替えでテープフィーダ5からリールRを取り外す際に、スプロケット57の歯がキャリアテープTのスプロケット孔に係入した係合状態では、キャリアテープTをリールRに巻き取ることができず、リールRを取り外すことができない。このため、作業者は、操作スイッチ5Aの戻しスイッチを押下し、キャリアテープTを逆方向に戻すことによって係合状態を解消する。これにより、手動でキャリアテープTを巻き取り、リールRを取り外すことができるようになる。
【0027】
表示部5Bは、例えば、複数の表示灯で構成され、これに限定されない。実施形態において、表示部5Bは、三つの表示灯、すなわち緑色灯、橙色灯、および赤色灯の組み合わせにより構成される。表示部5Bは、各表示灯の点灯状態、点滅状態、および消灯状態による表示を行う。表示部5Bの表示内容は、例えば、テープフィーダ5の現在状態や、異常発生時の異常項目などである。
【0028】
3.テープフィーダ段取りシステム6の構成
次に、実施形態のテープフィーダ段取りシステム6の構成について、図3および図4を参考にして説明する。テープフィーダ段取りシステム6は、載置台32へのテープフィーダ5の着脱作業や、テープフィーダ5へのリールRの着脱作業などの段取り替えを補助ないしは支援する。実施形態において、テープフィーダ段取りシステム6は、部品装着機1が設置された対基板作業ラインと別に設けられた外段取りエリアで、部品装着機1から取り外された載置台32を対象として動作する。これに限定されず、テープフィーダ段取りシステム6は、部品装着機1に取り付けられた載置台32を対象として動作してもよい。テープフィーダ段取りシステム6は、図3に示されるように、ホストコンピュータ7、外段取りステーション8、および、部品装着機1から取り外された載置台32などで構成される。
【0029】
ホストコンピュータ7は、1台または複数台の部品装着機1を用いた基板Kの生産計画や、部品装着機1の稼動状況、基板Kの生産状況、部品Pの供給状況、および基板Kの生産実績などを管理する。ホストコンピュータ7は、LAN71などを介して、外段取りステーション8に設けられたパソコン83に通信接続される。したがって、ホストコンピュータ7およびパソコン83は、通信を介して多くの情報を共有する。
【0030】
外段取りステーション8は、図4に示されるように、外段取りエリアを移動可能な台車形状に形成される。外段取りステーション8は、筐体81、電源タップ82、パソコン83、通信ユニット84、制御ボックス85、コネクタ87、およびリールセット台89などで構成される。筐体81は、箱形状に形成されており、下部に移動用のキャスタ811を複数有する。電源タップ82は、元電源に接続されており、例えばAC100ボルトの電源を供給する。具体的に、電源タップ82は、パソコン83およびリールセット台89に電源を供給する。さらに、電源タップ82は、制御ボックス85、ハーネス86、およびコネクタ87を介して、載置台32上のテープフィーダ5に電源を供給する。図3において、電源供給系統が二重線で描かれている。
【0031】
パソコン83は、筐体81の上面812の左寄りに配置される。パソコン83は、作業者が入力操作を行うキーボードやマウスなどの操作部831、作業者が視認を行う液晶ディスプレィなどの表示部832、および演算制御を行う中央処理部833を有する。パソコン83は、USBケーブル834などを介して、通信ユニット84に通信接続される。さらに、通信ユニット84は、制御ボックス85に通信接続される。制御ボックス85は、電源線861および通信線862を含むハーネス86を介して、コネクタ87に接続される。制御ボックス85は、電源中継器および通信中継器の機能を有する。なお、制御ボックス85は、中継機能の実行と停止を切り替える操作スイッチを有してよい。
【0032】
コネクタ87は、載置台32のフィーダ保持部34に設けられた主コネクタ38に嵌合される。前述したように、主コネクタ38は、分岐用のハーネスを介して、スロット36ごとに設けられた複数の副コネクタ37に並列接続されている。したがって、複数のテープフィーダ5のフィーダ制御部59の各々と、パソコン83とが通信接続される。実施形態において、載置台32は、外段取りステーション8に着脱されないが、パソコン83に通信接続される。これに限定されず、載置台32を外段取りステーション8に取り付けて、フィーダ制御部59の各々とパソコン83とを通信接続するように構成してもよい。
【0033】
また、パソコン83には、バーコードリーダ88が付属されている。バーコードリーダ88は、作業者によって操作され、前述した操作台ID、フィーダID、およびリールIDをそれぞれ表すラベル53を読み取る。さらに、バーコードリーダ88は、読み取ったID情報をパソコン83に送信する。バーコードリーダ88は、使用時以外は筐体81の左側面上部に設けられたホルダ813に掛けて保管される。
【0034】
リールセット台89は、筐体81の上面812の右寄りに配置される。リールセット台89は、フィーダ保持部34に載置するテープフィーダ5を段取りする箇所である。換言すると、リールセット台89は、テープフィーダ5にリールRをセットする段取り作業を行う箇所である。リールセット台89は、フィーダ保持部34と同じ形状のスロットおよび副コネクタを有して、複数のテープフィーダ5を載置できるように形成される。また、リールセット台89に載置されたテープフィーダ5のフィーダ制御部59と、パソコン83とが通信接続される。リールセット台89は、載置台32と異なり、テープフィーダ5の両側に広い作業空間が確保されるので、リールRのセット作業やキャリアテープTの装填作業が容易になる。
【0035】
4.テープフィーダ段取りシステム6の制御の構成
次に、実施形態のテープフィーダ段取りシステム6の制御の構成について、図5を参考にして説明する。図5において、1台のテープフィーダ5が例示され、他のテープフィーダ5が図示省略されている。図5に示されるように、ホストコンピュータ7は、付属の記憶装置72に生産計画データ73、生産実績データ74、および機器データ75を記憶する。
【0036】
生産計画データ73は、今後に生産する基板Kの種類、生産順序、生産枚数、使用する部品装着機1のID情報、生産開始時期、および生産終了時期などの計画情報を含む。生産計画データ73は、基板Kの種類に合わせて使用する部品Pの種類や数量を表す部品Pの使用計画を含む。生産計画データ73は、ある種類の基板Kの生産が終了したときや新たな基板Kの生産が指示されたときに逐次更新され、あるいは定期的に更新される。
【0037】
生産実績データ74は、現在までに生産した基板Kの種類、生産順序、生産枚数、使用された部品装着機1のID情報、生産開始時期、および生産終了時期などの実績情報を含む。生産実績データ74は、基板Kの種類に合わせて使用した部品Pの種類や数量を示す部品Pの使用実績を含む。生産実績データ74は、ある種類の基板Kの生産が終了するたびに逐次更新され、あるいは定期的に更新される。
【0038】
機器データ75は、部品装着機1に関する情報、および、部品装着機1で着脱可能に使用される載置台32やテープフィーダ5などの機器に関する情報を含む。機器データ75は、機器の性能や仕様に関する情報に加えて、機器の稼働履歴およびメンテナンス履歴に関する情報、機器相互を組み合わせて使用している現在の組み合わせ状況や過去の組み合わせ履歴に関する情報を含む。
【0039】
ホストコンピュータ7は、ソフトウェアを用いて実現された六つの機能部、すなわち判定部91、演算部92、推定部93、記憶部94、解除部95、および判別部96を有する。一方、パソコン83は、ソフトウェアを用いて実現された機能部である制御部97を中央処理部833に有する。制御部97は、バーコードリーダ88が読み取ったID情報を取得する。また、制御部97は、テープフィーダ5のフィーダ制御部59を制御するとともに、表示部832への表示によって作業者に段取り情報を提供する。次に、七つの機能部の各機能について説明する。
【0040】
判定部91は、バーコードリーダ88が読み取ったID情報および機器データ75の少なくとも一方を参照して、対象となる載置台32、テープフィーダ5、部品P、キャリアテープT、およびリールRを特定する。また、判定部91は、生産計画データ73から部品Pの今後の使用計画を取得する。さらに、判定部91は、演算部92または推定部93から、推定可能な部品Pの今後の使用頻度を取得する。そして、判定部91は、載置台32に載置されたテープフィーダ5を対象として、部品Pの今後の使用計画、および推定可能な部品Pの今後の使用頻度に基づき、キャリアテープTを自動で供給方向の逆方向へ戻すか否かを判定する。この判定は、複数のテープフィーダ5の各々について、個別に行われる。
【0041】
ここで、演算部92は、生産計画データ73に複数種類の基板Kの今後の生産計画がある場合に動作する。演算部92は、複数種類の基板Kの今後の生産計画に含まれる部品Pの使用計画に基づいて、今後の使用頻度を演算する。今後の使用頻度は、例えば、計画されている基板Kの全生産枚数を分母とし、部品Pが装着される基板Kの枚数を分子とする分数で表される。演算部92は、推定部93に優先して、部品Pの今後の使用頻度を判定部91に受け渡す。
【0042】
一方、推定部93は、生産計画データ73に複数種類の基板Kの今後の生産計画がない場合に動作する。つまり、推定部93は、次に生産する基板Kの種類(基板種)が未定であるか、または、次に生産する基板種が一つだけ計画されていて、演算部92が有効な使用頻度を演算できない場合に限って動作する。推定部93は、生産実績データ74を参照し、部品Pの使用実績から求めた実績使用頻度に基づいて、今後の使用頻度を推定する。推定部93は、実績使用頻度をそのまま今後の使用頻度としてもよい。また、推定部93は、実績使用頻度に最近の傾向を考慮して今後の使用頻度を推定してもよい。例えば、長期間にわたる平均的な実績使用頻度が低くとも、最近の使用機会が増加傾向を示す場合に、推定部93は、今後の使用頻度を高めに推定することが妥当となる。
【0043】
判定部91についてさらに説明する。判定部91は、生産する基板種を前基板種から次基板種に変更する段取り替え時に、前基板種の基板Kの生産に対応するように載置台32に載置された複数のテープフィーダ5を対象として、次の(1)から(3)の判定を選択的に行う。
【0044】
(1)次基板種の基板Kの生産に使用する部品Pを収容したキャリアテープTを逆方向へ戻さないと判定する。この場合、当該のテープフィーダ5は、次基板種の基板Kの生産に使用する部品Pを供給する第一種のテープフィーダ5となる。そして、作業者は、第一種のテープフィーダ5を載置台32に残す第一の段取り作業を行う。第一の段取り作業は、実質的な作業を伴わないことを意味する。
【0045】
(2)次基板種の基板Kの生産に使用せず、かつ、使用頻度が所定の閾頻度以上の部品Pを収容したキャリアテープTを逆方向へ戻さないと判定する。閾頻度の値は、テープフィーダ5の余裕台数や計画されている部品Pの種類数に応じて、適宜設定される。定性的には、テープフィーダ5の余裕台数が多数で、部品Pの種類数が少ないと、閾頻度は低く設定される。この場合、当該のテープフィーダ5は、次基板種の基板Kの生産に使用せず、かつ、使用頻度が所定の閾頻度以上の部品Pを供給する第二種のテープフィーダ5となる。そして、作業者は、第二種のテープフィーダ5を載置台32から取り外す第二の段取り作業を行う。
【0046】
(3)次基板種の基板Kの生産に使用せず、かつ、使用頻度が閾頻度よりも低い部品Pを収容したキャリアテープTを自動で逆方向へ戻すと判定する。この場合、当該のテープフィーダ5は、次基板種の基板Kの生産に使用せず、かつ、使用頻度が閾頻度よりも低い部品Pを供給する第三種のテープフィーダ5となる。そして、作業者は、第三種のテープフィーダ5を載置台32から取り外し、さらに取り外したテープフィーダ5からリールRを取り外す第三の段取り作業を行う。
【0047】
また、判定部91は、予め設定された一部の部品種の部品Pを対象として、(3)に代わる判定を行う。すなわち、判定部91は、次基板種の基板Kの生産に使用せず、かつ、使用頻度が閾頻度よりも低い部品Pを収容したキャリアテープTを手動で逆方向へ戻すと判定する。つまり、キャリアテープTを自動でなく手動で逆方向へ戻すことにより、テープ剥離機構56によってキャリアテープTの先端付近のカバーテープが剥離された領域から部品Pが脱落することを抑制できる。通常は、一部の部品種として高価な部品種が予め設定され、部品Pの脱落による経済的損失が削減される。
【0048】
制御部97は、テープフィーダ5の各々について、判定部91から(1)~(3)のいずれかの判定結果を受け取る。制御部97は、判定部91の判定結果が(3)の場合に、テープフィーダ5の駆動モータ58(駆動機構)を制御して、キャリアテープTを逆方向へ戻させる。
【0049】
記憶部94は、載置台32に配列して載置される複数のテープフィーダ5の各々の配列位置(スロット番号)、テープフィーダ5の個体を識別するフィーダID、およびリールRの個体を識別するリールIDを関連付けて、機器データ75に記憶する。これにより、機器相互を組み合わせて使用している現在の組み合わせ状況が、正確に記憶される。
【0050】
解除部95は、制御部97によりキャリアテープTが自動で逆方向へ戻される場合に、記憶部94によって記憶された配列位置(スロット番号)、フィーダID、およびリールIDの関連付けを解除する。これにより、第三の段取り作業が行われた後の機器相互の組み合わせ状況が、正確に記憶される。
【0051】
また、解除部95は、キャリアテープTが逆方向へ戻されることなくテープフィーダ5が載置台32から取り外される場合に、フィーダIDとリールIDの関連付けを維持しつつ、配列位置(スロット番号)との関連付けを解除する。これにより、第二の段取り作業が行われた後の機器相互の組み合わせ状況が、正確に記憶される。
【0052】
判別部96は、維持されたフィーダIDとリールIDの関連付けに基づいて、今後に生産する基板Kに装着する部品Pを収容したキャリアテープTを供給方向へ送ったテープフィーダ5が有るか無いかを判別する。これにより、リールRがセットされてキャリアテープTが装填されたテープフィーダ5が単体で存在するか否か明らかとなる。さらには、リールセット台89におけるテープフィーダ5の段取り作業の要否が判明する。
【0053】
5.テープフィーダ段取りシステム6の動作
次に、テープフィーダ段取りシステム6の動作について、図6図12を参考にして説明する。まず、複数種類の基板Kを生産する生産フローの概要について説明する。図6に示されるように、生産フローは、計画作成工程MP1、出庫調達工程MP2、段取り工程MP3、生産実施工程MP4、後段取り工程MP5、および入庫工程MP6からなる。テープフィーダ段取りシステム6は、段取り工程MP3および後段取り工程MP5で使用される。以降では、生産実施工程MP4で第一の載置台32を用いて現基板種の基板Kを生産しているときに、段取り工程MP3で第二の載置台32の段取り替えを行う場合を想定して、説明を進める。
【0054】
計画作成工程MP1で、前述した生産計画データ73の作成や更新が行われる。次の出庫調達工程MP2で、次基板種の基板Kに装着する部品Pが調達される。部品Pの在庫がある場合、当該部品Pを収容したキャリアテープTが巻回されたリールRが保管倉庫79から出庫される(矢印A1参照)。または、既にリールRがセットされたテープフィーダ5が保管倉庫79から出庫される。部品Pの在庫がない場合や在庫量が不足する場合、当該部品P(リールR)が購買などの方法で調達される。
【0055】
次の段取り工程MP3で、前基板種の基板Kの生産に使用して使用済みになった第二の載置台32の段取り替えが行われる。作業者は、外段取りステーション8のリールセット台89を利用して、テープフィーダ5にリールRをセットし、リールRからキャリアテープTを引き出して装填作業を行う。さらに、作業者は、リールRがセットされたテープフィーダ5を第二の載置台32に載置する。第二の載置台32の段取り替えの進行状況は、パソコン83の表示部832に表示される。
【0056】
次の生産実施工程MP4で、現基板種の基板Kの生産が終了すると、部品装着機1から第一の載置台32が取り外される。そして、部品装着機1に第二の載置台32が取り付けられて、次基板種の基板Kの生産が開始される。なお、上記の説明と異なり、現基板種の基板Kの生産が終了してから、第一の載置台32に対する段取り替えが行われてもよい。それでも、2台の載置台32が交互に使用されることにより、部品装着機1の休止時間が削減される。
【0057】
次の後段取り工程MP5で、第一の載置台32の後段取りが行われる。作業者は、前述した第一、第二、および第三の段取り作業を行う。この結果、第一種のテープフィーダ5は、第一の載置台32に残される。第二種のテープフィーダ5は、載置台32から取り外され、キャリアテープの装填状態およびリールRのセット状態が維持される。第三種のテープフィーダ5は、載置台32から取り外され、さらにリールRが取り外される。第一種のテープフィーダ5が残された第一の載置台32は、次回の段取り工程MP3に使用される(矢印A2参照)。
【0058】
次の入庫工程MP6で、作業者は、リールRがセットされた第二種のテープフィーダ5、リールRが取り外された第三種のテープフィーダ、および第三種のテープフィーダから取り外された使いかけのリールRを保管倉庫79に入庫する(矢印A3参照)。なお、作業者は、近い将来に使用計画がある第二種のテープフィーダ5を入庫せず、例えば、外段取りステーション8の筐体81内部に一時保管するようにしてもよい。
【0059】
次に、段取り工程MP3におけるテープフィーダ段取りシステム6の動作について、作業者の作業内容と併せて説明する。図7のステップS1で、作業者は、載置台32を外段取りステーション8の近くに移動して、コネクタ87を主コネクタ38に嵌合させる。次のステップS2で、作業者は、バーコードリーダ88を用いて、操作台IDを読み取らせる。操作台IDは、バーコードリーダ88から制御部97に送信される。制御部97は、各配列位置のテープフィーダ5のフィーダ制御部59の各々から、フィーダIDおよびリールIDを取得する。操作台ID、配列位置、フィーダID、およびリールIDの組み合わせは、載置台32の現在状態を表す。
【0060】
次のステップS3で、制御部97は、ホストコンピュータ7の生産計画データ73から、次基板種に使用する部品Pの使用計画を取得する。次のステップS4で、制御部97は、載置台32の現在状態と部品Pの使用計画とを対比して、部品Pの不足分を求める。さらに、制御部97は、部品Pの不足分を解消するのに必要となる段取り作業を、パソコン83の表示部832に表示する。表示部832は、例えば、図8に例示される表示を行う。
【0061】
図8の表示例において、1~3番目の段取り作業が、矢印B1~B3で示される。矢印B1に示される1番目の段取り作業は、「R101」のIDをもつリールRを、「F011」のIDをもつテープフィーダ5にセットする作業である。矢印B2に示される2番目の段取り作業は、1番目の段取り作業で段取りされたテープフィーダ5を配列位置S01に載置する作業である。矢印B3に示される3番目の段取り作業は、「R102」のIDをもつリールRが既にセットされていて「F012」のIDをもつテープフィーダ5を、配列位置S02に載置する作業である。なお、既にリールRがセットされたテープフィーダ5の有無は、判別部96によって予め判別されている。また、配列位置S03に関して、「F013」のIDをもつ第一種のテープフィーダ5が載置されており、段取り作業は不要である。
【0062】
次のステップS5で、作業者は、表示部832の表示にしたがって、リールRのセット作業を行う。例えば、上記した1番目の段取り作業において、作業者は、まず、「F011」のIDをもつテープフィーダ5をリールセット台89に載置する。作業者は、次に、このテープフィーダ5に「R101」のIDをもつリールRをセットし、セットしたリールRからキャリアテープTを引き出して装填作業を行う。作業者は、その次に、バーコードリーダ88を用いて、リールIDを読み取らせる。読み取られたリールIDは、制御部97からフィーダ制御部59まで転送される。フィーダ制御部59は、リールIDと自身のフィーダIDとを関連付けて保持する。
【0063】
次のステップS6で、作業者は、テープフィーダ5の載置作業を行う。例えば、上記した2番目の段取り作業において、作業者は、「F011」のIDをもつテープフィーダ5を配列位置S01に載置する。また、3番目の段取り作業において、作業者は、「F012」のIDをもつテープフィーダ5を配列位置S02に載置する。なお、段取り作業の進捗に伴い、図8に例示される表示がリアルタイムで更新され、終了した段取り作業が消えて、残された段取り作業のみが表示される。したがって、作業者は、段取り作業の進捗状況の把握が容易であり、また、段取り作業の間違いが防止される。
【0064】
なお、実際には、さらに多数のテープフィーダ5を対象とする多数の段取り作業が実施される場合が多い。また、上記した2番目および3番目の段取り作業は、作業順序の入れ替わりが許容される。一方、1番目および2番目の段取り作業は、作業順序を変更することができない。その理由は、載置台32上のテープフィーダ5にリールRをセットしようとしても、作業空間が狭隘でセット作業が難しいことに因る。
【0065】
次のステップS7で、記憶部94は、ID情報を関連付けて機器データ75に記憶する。記憶部94は、例えば図9に示されるように、配列位置、フィーダID、およびリールIDの関連付けをそれぞれ1行で表す一覧表の形式を用いて記憶する。次のステップS8で、作業者は、コネクタ87を主コネクタ38から外す。これにより、載置台32の全ての段取り作業が終了し、載置台32を部品装着機1に移動して取り付ける準備が整う。
【0066】
次に、後段取り工程MP5におけるテープフィーダ段取りシステム6の動作について、作業者の作業内容と併せて説明する。以降では、図9に現在状態が例示された載置台32を使用した後を想定して、説明を進める。図10のステップS11で、作業者は、使用後の載置台32を外段取りステーション8の近くに移動して、コネクタ87を主コネクタ38に嵌合させる。次のステップS12で、ステップS2と同様にして、操作台ID、配列位置、フィーダID、およびリールIDを取得する。これにより、制御部97は、図9に示される載置台32の現在状態を取得する。
【0067】
次のステップS13で、判定部91は、第一の配列位置(スロット番号)を設定し、第一の配列位置に載置されたテープフィーダ5、およびこのテープフィーダ5が供給する部品Pに着目する。次のステップS14で、判定部91は、生産計画データ73から部品Pの今後の使用計画を取得する。さらに、判定部91は、演算部92または推定部93から、部品Pの今後の使用頻度を取得する。
【0068】
次のステップS15で、判定部91は、キャリアテープTを自動で供給方向の逆方向へ戻すか否かに関して、前述した(1)~(3)のいずれかの判定を行う。次のステップS16で、判定部91は、判定結果に基づいて、動作フローの分岐先を制御する。すなわち、判定結果の(1)、(2)、(3)に対応して、動作フローの実行はステップS22、ステップS17、ステップS19に分岐される。
【0069】
判定結果が(2)の場合のステップS17で、第二の段取り作業であることが、パソコン83の表示部832およびテープフィーダ5の表示部5Bに表示される。例えば、表示部832は、図11に例示される表示を行う。図11の表示例において、第二の段取り作業が実線の矢印C1で示される。第二の段取り作業は、配列位置S02から「F012」のIDをもつテープフィーダ5を取り外す作業である。また、当該のテープフィーダ5の表示部5Bは、橙色灯を点灯させることにより第二の段取り作業を表示する。
【0070】
次のステップS18で、解除部95は、機器データ75に記憶された関連付けの一部を解除する。つまり、テープフィーダ5が載置台32から取り外されるが、リールRは取り外されないので、解除部95は、フィーダIDとリールIDの関連付けを維持しつつ、配列位置(スロット番号)との関連付けを解除する。これにより、図12に例示されるように、配列位置S02に対応するフィーダIDの欄、およびリールIDの欄が空欄(―で示す)となる。一方、載置台IDおよび配列位置が空欄で、「F012」のフィーダIDと「R102」のリールIDを関連付けた行が新規に設けられる。このようにフィーダIDおよびリールIDの二つを関連付けた行が、判別部96によって検索される。ステップS18が実行された後、動作フローはステップS22に合流される。
【0071】
判定結果が(3)の場合のステップS19で、第三の段取り作業であることが、パソコン83の表示部832およびテープフィーダ5の表示部5Bに表示される。例えば、図11の表示例において、第三の段取り作業が破線の矢印C2、C3で示される。第三の段取り作業は、配列位置S03から「F013」のIDをもつテープフィーダ5を取り外し(矢印C2参照)、さらに取り外したテープフィーダ5から「R103」のIDをもつリールRを取り外す(矢印C3参照)作業である。また、当該のテープフィーダ5の表示部5Bは、赤色灯を点灯させることにより第三の段取り作業を表示する。
【0072】
次のステップS20で、制御部97は、フィーダ制御部59に指令して駆動モータ58を逆転させ、キャリアテープTを逆方向へ戻させる。これにより、テープフィーダ5に対するキャリアテープTの係合状態が自動的に解除される。次のステップS21で、解除部95は、機器データ75に記憶された関連付けを解除する。これにより、図12に例示されるように、配列位置S03に対応するフィーダIDの欄、およびリールIDの欄が空欄となる。ステップS21が実行された後、動作フローはステップS22に合流される。
【0073】
なお、判定結果が(1)の場合、第一の段取り作業により、当該のテープフィーダ5は、載置台32に載置された状態が維持される。このため、表示部832は、図11の配列位置S01に示されるように、作業を示す矢印を表示しない。また、表示部5Bの三つの表示灯は、一つも点灯しない。
【0074】
ステップS22で、判定部91は、最後の配列位置であるか否か判定する。否の場合のステップS23で、判定部91は、次の配列位置を設定し、着目するテープフィーダ5および部品Pを変更して、動作フローをステップS14に戻す。ステップS22で最後の配列位置である場合、判定部91は、動作フローをステップS24に進める。
【0075】
ステップS24で、作業者は、第二および第三の段取り作業に対応するテープフィーダ5およびリールRの取り外し作業を行う。このとき、取り外し作業の内容は、表示部832および表示部5Bの二箇所に表示される。加えて、テープフィーダ5の取り外し作業の進捗に伴い、図11に例示される表示がリアルタイムで更新され、終了した取り外し作業が消えて、残された取り外し作業のみが表示される。したがって、作業者は、取り外し作業の進捗状況の把握が容易であり、また、取り外し作業の間違いが防止される。
【0076】
全ての取り外し作業が終了した後のステップS25で、作業者は、コネクタ87を主コネクタ38から外す。これにより、載置台32を保管することができる。なお、作業者は、コネクタ87を主コネクタ38から外すことなく、載置台32に対して次回の段取り工程MP3を行ってもよい。
【0077】
実施形態のテープフィーダ段取りシステム6では、載置台32に載置されたテープフィーダ5を対象として、部品Pの今後の使用計画および今後の使用頻度に基づき、キャリアテープTを自動で逆方向へ戻すか否を判定する。したがって、使用予定がなく、かつ今後の使用頻度が低くて近い将来に使用される可能性が低い部品Pを収容したキャリアテープTのみを選択して、逆方向に戻すことができる。これによれば、テープフィーダ5に対するキャリアテープTの係合状態が自動的に解除されるので、リールRを取り外す段取り替えの手間が軽減される。また、保有台数が限られるテープフィーダ5を有効利用することができる。
【0078】
一方、使用予定がなくとも今後の使用頻度が高くて近い将来に使用される可能性が高い部品Pを収容したキャリアテープTは、テープフィーダ5への装填状態が維持される。これによれば、近い将来におけるリールRの再セット作業やキャリアテープTの再装填作業の二度手間が不要となり、段取り替えの手間が軽減される。また、リールRのセット作業および取り外し作業の総作業回数が減少するので、作業に伴ってキャリアテープTから脱落する部品Pの損失を削減することができる。
【0079】
6.実施形態の応用および変形
なお、ホストコンピュータ7とパソコン83の機能分担は、様々に変更することができる。例えば、七つの機能部をパソコン83に集約して、ホストコンピュータ7を省略することが可能である。また、演算部92および推定部93の一方は、省略されてもよい。さらに、パソコン83の表示部832およびテープフィーダ5の表示部5Bの表示方法は、様々に変更することができる。また、表示部832および表示部5Bの一方のみで表示を行ってもよい。テープフィーダ5の構成についても、様々な変形が可能である。例えば、リールRをテープフィーダ5の外部に配置したリール別置形の構成にも、本実施形態を応用することができる。その他にも、実施形態は、様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1:部品装着機 2:基板搬送部 3:部品供給部 32:載置台 4:部品移載部 5:テープフィーダ 57:スプロケット 58:駆動モータ 59:フィーダ制御部 5B:表示部 6:テープフィーダ段取りシステム 7:ホストコンピュータ 73:生産計画データ 74:生産実績データ 75:機器データ 8:外段取りステーション 83:パソコン 832:表示部 88:バーコードリーダ 89:リールセット台 91:判定部 92:演算部 93:推定部 94:記憶部 95:解除部 96:判別部 97:制御部 K:基板 R:リール T:キャリアテープ P:部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12