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特許7603811軟磁性粉末、およびその調製方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】軟磁性粉末、およびその調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/36 20060101AFI20241213BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20241213BHJP
   H01F 1/153 20060101ALI20241213BHJP
   H01F 3/08 20060101ALI20241213BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20241213BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20241213BHJP
   B22F 1/08 20220101ALI20241213BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241213BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20241213BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20241213BHJP
【FI】
H01F1/36
H01F1/147 166
H01F1/147 191
H01F1/147 108
H01F1/153 108
H01F3/08
H01F27/255
B22F1/052
B22F1/08
B22F1/00 Y
B22F1/16 100
B22F1/102 100
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023529050
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 CN2021088596
(87)【国際公開番号】W WO2022121208
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】202011448283.8
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517366220
【氏名又は名称】横店集団東磁股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金志洪
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼相▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】胡江平
(72)【発明者】
【氏名】徐君
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-220609(JP,A)
【文献】特開2013-171967(JP,A)
【文献】特開2009-117484(JP,A)
【文献】特開2010-251600(JP,A)
【文献】特開2020-072183(JP,A)
【文献】特開平09-111421(JP,A)
【文献】国際公開第2020/105603(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0392978(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0135371(US,A1)
【文献】特開2003-243215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/36
H01F 1/147
H01F 1/153
H01F 3/08
H01F 27/255
B22F 1/052
B22F 1/08
B22F 1/00
B22F 1/16
B22F 1/102
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末を、それぞれ独立して表面シランカップリング化およびシリコン窒化処理して、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第1磁性粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第2磁性粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第3磁性粉末を得るステップ(1)と、
表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第1磁性粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第2磁性粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第3磁性粉末を混合して、軟磁性粉末を得るステップ(2)と、
含み、
ステップ(1)における表面シランカップリング化の処理は、前記第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末を、それぞれ独立してシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させることを含み、
ステップ(1)におけるシリコン窒化処理は、シランカップリング化処理された後の第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末を、それぞれ、管状アニール炉にてアニール処理することを含み、
前記第1磁性粉末がFe-Si-Al系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Si系合金、Fe-Si-Cr系合金またはFe-Si-Ni系合金のいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含み、
前記第2磁性粉末がFe-Si-Al系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Si系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Si-Ni系合金、カルボニル鉄粉のいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含み、
前記第3磁性粉末がFe-Si-B系アモルファス合金、Fe-Si-Cr-B系アモルファス合金、カルボニル鉄粉アモルファスのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含み、
前記第1磁性粉末のD50が15~45μmであり、前記第2磁性粉末のD50が2~10μmであり、前記第3磁性粉末のD50が2~8μmである、
軟磁性粉末の調製方法。
【請求項2】
前記シランカップリング剤-アセトン溶液の濃度が5~15wt%である、
請求項1に記載の軟磁性粉末の調製方法。
【請求項3】
前記第1磁性粉末を浸漬するためのシランカップリング剤-アセトン溶液におけるシランカップリング剤の添加量が、前記第1磁性粉末の重量の0.3~1wt%であり、
前記第2磁性粉末を浸漬するためのシランカップリング剤-アセトン溶液におけるシランカップリング剤の添加量が、前記第2磁性粉末の重量の0.6~1.2wt%であり、
前記第3磁性粉末を浸漬するためのシランカップリング剤-アセトン溶液におけるシランカップリング剤の添加量が、前記第3磁性粉末の重量の1~2wt%であり、
ステップ(1)におけるシランカップリング化処理は、前記浸漬された後の第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末を撹拌して溶液が除去されるまでに自然揮発させることをさらに含む
請求項1または2に記載の軟磁性粉末の調製方法。
【請求項4】
前記アニール処理における雰囲気のガスが、窒素ガス-アンモニアガスの混合ガスまたは窒素ガスを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の軟磁性粉末の調製方法。
【請求項5】
前記アニール処理におけるアニール温度が350~550℃であり、
前記アニール処理におけるガスの総流量速度が0.2~1L/minであり、
前記アニール処理におけるアニール時間が1~5hである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の軟磁性粉末の調製方法。
【請求項6】
ステップ(2)における混合は、ステップ(1)における表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第1磁性粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第2磁性粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第3磁性粉末を、3次元ミキサーに入れて混合することを含み、
ステップ(2)における混合の時間は1~2hである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の軟磁性粉末の調製方法。
【請求項7】
前記調製方法は、
第1磁性粉末を濃度5~15wt%のシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させ、シランカップリング剤の添加量が第1磁性粉末の重量の0.3~1.0wt%であり、そして撹拌しながら溶液が除去されるまでに自然揮発させ、
第2磁性粉末を濃度5~15wt%のシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させ、シランカップリング剤の添加量が第2磁性粉末の重量の0.6~1.2wt%であり、そして撹拌しながら溶液が除去されるまでに自然揮発させ、
第3磁性粉末を濃度5~15wt%のシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させ、シランカップリング剤の添加量が第3磁性粉末の重量の1~2wt%であり、そして撹拌しながら溶液が除去されるまでに自然揮発させ、
前記シランカップリング化処理された後の第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末をそれぞれ独立して窒素ガス-アンモニアガスの混合雰囲気下、管状アニール炉にて、アニール温度350~550℃下で1~5hアニールして、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第1磁性粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第2磁性粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第3磁性粉末を得るステップ(1)(ここで、アニール過程における総流量速度が0.2~1L/minである)と、
ステップ(1)における表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第1磁性粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第2磁性粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第3磁性粉末を3次元ミキサーに入れ、1~2h混合して、軟磁性粉末を得るステップ(2)と、
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の軟磁性粉末の調製方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の軟磁性粉末の調製方法により調製される軟磁性粉末であって、
第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末を含み、
前記第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む、軟磁性粉末。
【請求項9】
前記軟磁性粉末における前記第1磁性粉末の重量比が50~90%であり、
前記第1磁性粉末のD50が21~30μmである
請求項8に記載の軟磁性粉末。
【請求項10】
前記軟磁性粉末における前記第2磁性粉末の重量比が10~40%であり、
前記第2磁性粉末のD50が4~7μmである
請求項8または9に記載の軟磁性粉末。
【請求項11】
前記軟磁性粉末における前記第3磁性粉末の重量比が5~15%であり、
前記第3磁性粉末のD50が3~7μmである
請求項8~10のいずれか一項に記載の軟磁性粉末。
【請求項12】
前記第1磁性粉末の表面における化合物膜の厚さが20~100nmであり、
前記第2磁性粉末の表面における化合物膜の厚さが10~40nmであり、
前記第3磁性粉末の表面における化合物膜の厚さが20~70nmである、
請求項8~11のいずれか一項に記載の軟磁性粉末。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項に記載の軟磁性粉末により調製される、磁性粉末コア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、磁性材料の分野に属し、軟磁性粉末、およびその調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電子技術の進歩、および市場の発展傾向に伴い、インダクタンスアセンブリは、高周波化、小型化及び低電力消費を目指して発展している。
【0003】
軟磁性粉末の一般的な適用は、磁気コア部材を含む。該磁気コア部材は、電気装置、電気機械装置、および磁性装置、たとえば昇圧回路、発電/変電機器に用いられるリアクトル、変圧器、チョークコイルなどのインダクタにおいて制限およびガイドするための、高透磁率を有する磁性材料部材となる。ここで、用いられる圧粉磁気コアは、軟磁性材料、および粘着材料を含有する軟磁性粉末混合物により調製されてもよい。そして、このような磁性粉末と粘着材料とを含有する混合物は、プレス成形工程によって磁性体または磁気コアに形成される。このような圧粉コアを備えるインダクタは、透磁率が高く、鉄損が低く、および直流重畳特性に優れたなどの特性を兼ねることが求めている。
【0004】
一般的に、電子的適用、特に交流電流(AC)の適用において、磁気コア部材の2つの主要特徴は、透磁率および磁気コア損失特徴である。これに対して、材料の透磁率は、材料の磁化する能力または材料の磁束を持つ能力の指標を提供する。透磁率は、誘発される磁束と磁化力または磁場強度との比率として定義される。磁性材料が急速に変化する磁場に曝される時、コアの総エネルギーは、ヒステリシス損失および/または渦電流損失の発生により減少される。ヒステリシス損失は、必要なエネルギー消費がコア部材の中に保持される磁力を超える原因となる。渦電流損失は、コア部材において電流(AC条件により引き起こされる磁束の磁束によるもの)が発生する原因となり、且つ基本的には抵抗損失が発生する。
【0005】
通常、高周波適用のためのインダクタンスは、磁気コア損失に敏感であり、渦電流による損失を減少するために、絶縁特性を改良する必要がある。この目的を実現する最も簡単な手段は、各粒子の絶縁層を厚くすることである。しかしながら、絶縁層が厚くなるほど、軟磁性粒子のコア密度が低くなり、磁束密度が低くなる(対応する透磁率も低くなる)。また、高圧下での圧縮成形により磁束密度を増大させる試みは、コアにおける大きい応力を引き起こして、高いヒステリシス損失を引き起こす恐れがある。
【0006】
そのため、最適な主要特徴を有する軟磁性粉末コアを製造するために、コアの抵抗率および密度を同時に増大させる必要がある。これにより、粒子が高い絶縁特性を有する薄い絶縁層で覆われることが望まれている。磁性粉末の分野において、この問題を解決するための異なるルートが存在する。
【0007】
CN103415899Bでは、圧粉磁気コア用鉄基軟磁性粉末の表面にリン酸系化成皮膜を形成し、この皮膜の表面にシリコン樹脂皮膜が形成されているものが開示されている。上述したリン酸系樹脂およびシリコン樹脂で粉末を被覆して絶縁皮膜を形成することにより、粉末の絶縁抵抗、熱安定性を向上させ、渦電流損失を低減させる目的を達成する。
【0008】
JP2009120915Aでは、無機物コーディング層(リン酸塩)で金属磁性材料を被覆する例が開示されている。
【0009】
上述した2つの文献に記載されているリン酸塩の靭性が低いので、成形圧力が増えた際に、コーティングフィルムが破損し、650℃以上のアニール温度下で安定せず、さらに渦電流損失を大幅に増加させてインダクタンス性能を悪化させる場合がある。
【0010】
JP2010251437Aでは、磁性粉末の表面における絶縁性を向上させて渦電流損失を低下させる効果を提供するために、コーティング層にフッ化マグネシウム(MgF)が含まれる磁性粉末の塗布方法が開示されている。該文献におけるフッ化マグネシウム(MgF)は、熱安定性が悪く、650℃以上のアニールプロセスに適用されない。
【0011】
US20080117008A1では、酸化物バインダーおよび絶縁膜が塗布された磁性粉末を含む磁性体が開示されている。ここで、前記絶縁膜が磁性粉末と酸化物バインダーとの間に存在する。前記酸化物バインダーには、シリカのようなガラス状の酸化物が含まれる。該文献におけるシリカのようなガラス状酸化物は、磁性粉末との結合が機械的な結合に属し、その自体が離散状態となり、分布が均一ではなく、かつ高圧成形条件下で磁性粉末から剥離されて脱落するという問題が発生しやすく、絶縁被覆の効果に大きく影響する。
【0012】
CN102543350Aでは、鉄基軟磁性粉末と、ポリヒドロキシカルボン酸アミドなどの潤滑剤とを混合して混合物を調製するとともに、該混合物を圧縮成形して圧粉成型体を得ることにより、磁束密度が高い効果を達成する調製方法が開示されている。潤滑剤系を最適化にすることにより高プレス密度(高磁束密度)を達成することができるものの、従来のインダクタンスの小型化後に求める高周波数、低損失、および高透磁率の性能を満たすことができないので、さらに磁束密度を向上させる必要がある。
【0013】
従って、インダクタンス電子素子を製造するための混合磁性粉末、特に、高周波で適用される、高透磁率を持ち、かつ高周波数、低損失な混合磁性粉末を如何に提供するかは、現在の解決する必要がある技術課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本願は、軟磁性粉末、およびその調製方法及び使用を提供することを目的とする。本願では、表面シランカップリング化、およびシリコン窒化処理された、粒径および種類が全く同じではない3種の磁性粉末を組み合わせて堆積することにより、通常のプレス圧力下で、高堆積密度および超高絶縁抵抗の効果を達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するために、本願は、以下の技術案を講じた。
【0016】
第1の態様として、本願は、
第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末をそれぞれ独立して表面シランカップリング化およびシリコン窒化処理し、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第1磁性粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第2磁性粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第3磁性粉末を得るステップ(1)と、
表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第1磁性粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第2磁性粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第3磁性粉末を混合して、軟磁性粉末を得るステップ(2)と、を含む軟磁性粉末の調製方法を提供する。
【0017】
上記調製方法において、第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末をそれぞれ独立して表面シランカップリング化およびシリコン窒化処理を行い、この2種の処理は、相乗作用を発揮し、軟磁性粉末の表面に緻密で、一定の厚さを有する、-Si-N-化学結合を含む化合物膜を形成することができることにより、通常のプレス圧力下で、軟磁性粉末が高堆積密度および超高絶縁抵抗の効果を達成することができる。
【0018】
それと同時に、表面シランカップリング化だけによって1層の緻密な薄膜を形成することができない。単一のシランカップリング剤は加水分解した後シラノールを形成して、金属基の軟磁性粉末の表面との結合力が悪く、ただ一般的な物理的結合または水素結合に過ぎず、良好な有機結合を達成することができない。そのため、粉末を磁気コアにプレスする過程において、剥離しやすく、対応する絶縁作用および保護作用を達成しない。
【0019】
好ましくは、ステップ(1)における表面シランカップリング化の処理は、前記第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末をそれぞれ独立してシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させることが含まれる。
【0020】
本願において、前記シランカップリング剤-アセトン溶液とは、シランカップリング剤およびアセトンを混合してなる溶液を指す。ここで、シランカップリング剤は、KH550、KH540、KH560、KH792またはKH793から選ばれてもよく、KH550であることが好ましい。
【0021】
好ましくは、前記シランカップリング剤-アセトン溶液の濃度は、5~15wt%、たとえば5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、10wt%、12wt%または15wt%などである。
【0022】
好ましくは、前記第1磁性粉末を浸漬するためのシランカップリング剤-アセトン溶液におけるシランカップリング剤の添加量は、前記第1磁性粉末の重量の0.3~1wt%、たとえば0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、0.9wt%または1wt%などである。
【0023】
好ましくは、前記第2磁性粉末を浸漬するためのシランカップリング剤-アセトン溶液におけるシランカップリング剤の添加量は、前記第2磁性粉末の重量の0.6~1.2wt%、たとえば0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、0.9wt%、1wt%、1.1wt%または1.2wt%などである。
【0024】
好ましくは、前記第3磁性粉末を浸漬するためのシランカップリング剤-アセトン溶液におけるシランカップリング剤の添加量は、前記第3磁性粉末の重量の1~2wt%、たとえば1wt%、1.1wt%、1.2wt%、1.3wt%、1.4wt%、1.5wt%、1.6wt%、1.7wt%、1.8wt%、1.9wt%または2wt%などである。
【0025】
上記シランカップリング剤-アセトン溶液におけるシランカップリング剤の添加量は、磁性粉末の平均粒径により決められる。磁性粉末が粗いほど、所要するシランカップリング剤の添加量が低くなる。それは主に粗い粉末の比表面積が小さいことに関係しており、粉末が細いほど、比表面積が大きくなり、所要するシランカップリング剤の添加量が高くなる。
【0026】
好ましくは、ステップ(1)におけるシランカップリング化処理は、前記浸漬された後の第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末を撹拌して溶液が除去されるまでに自然揮発させることがさらに含まれる。
【0027】
好ましくは、ステップ(1)におけるシリコン窒化処理は、シランカップリング化処理された後の第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末を、それぞれ、管状アニール炉にてアニール処理することが含まれる。
【0028】
好ましくは、前記アニール処理における雰囲気のガスは、窒素ガス-アンモニアガスの混合ガスまたは窒素ガスを含む。
【0029】
磁性粉末は、シランカップリング剤で表面処理された後、アニール処理される。通常のカップリング後アニール処理しない場合に比較して、アニール処理を用いる場合は、緻密な-Si-N-系化合物薄膜層を形成することができることで、粉末の絶縁性、およびプレスされた磁気コアの絶縁性を顕著に向上させる(対応する磁気コア損失が顕著に低下する)。さらに、アニールに用いられる雰囲気ガスは、窒素ガス-アンモニアガスの混合ガスまたは窒素ガスを含むが、水素ガス、空気、酸素ガス、アルゴンガスなどの雰囲気が使用されることができない。それは、主に、水素ガス、空気、酸素ガス、アルゴンガスなどの雰囲気を使用すると、緻密な-Si-N-系化合物薄膜層を形成できず、絶縁効果を達成することができないためである。しかしながら、本願における磁性粉末がシランカップリング剤で表面処理された後、表面にケイ素含有薄膜が形成されており、窒素ガス-アンモニアガスの混合ガスまたは窒素ガスなどを含むアニール処理により、緻密な-Si-N-系化合物薄膜層を形成することができ、特に-Si-N-系化合物の耐温性、絶縁性がいずれも優れている。しかし、水素ガス、空気、酸素ガス、アルゴンガスなどの雰囲気により、対応する耐温性および絶縁性に優れた薄膜層を形成することができない。
【0030】
好ましくは、前記アニール処理におけるアニール温度は、350~550℃、たとえば350℃、380℃、400℃、430℃、450℃、480℃、500℃、530℃または550℃などである。
【0031】
好ましくは、前記アニール処理におけるガスの総流量速度は、0.2~1L/min、たとえば0.2L/min、0.3L/min、0.4L/min、0.5L/min、0.6L/min、0.7L/min、0.8L/min、0.9L/minまたは1L/minなどである。
【0032】
好ましくは、前記アニール処理におけるアニール時間は、1~5h、たとえば1h、2h、3h、4hまたは5hなどである。
【0033】
好ましくは、ステップ(2)における混合は、ステップ(1)における表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第1磁性粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第2磁性粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第3磁性粉末を3次元ミキサーに入れて混合することが含まれる。
【0034】
好ましくは、ステップ(2)における混合の時間は、1~2h、たとえば1.1h、1.2h、1.3h、1.4h、1.5h、1.6h、1.7h、1.8h、1.9hまたは2hなどである。
【0035】
好ましい技術案として、前記軟磁性材料の調製方法は、
第1磁性粉末を濃度5~15wt%のシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させ、シランカップリング剤の添加量が第1磁性粉末の重量の0.3~1.0wt%であり、そして撹拌しながら溶液が除去されるまでに自然揮発させ、
第2磁性粉末を濃度5~15wt%のシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させ、シランカップリング剤の添加量が第2磁性粉末の重量の0.6~1.2wt%であり、そして撹拌しながら溶液が除去されるまでに自然揮発させ、
第3磁性粉末を濃度5~15wt%のシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させ、シランカップリング剤の添加量が第3磁性粉末の重量の1~2wt%であり、そして撹拌しながら溶液が除去されるまでに自然揮発させ、
前記シランカップリング化処理された後の第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末をそれぞれ独立して窒素ガス-アンモニアガスの混合雰囲気下、管状アニール炉にて、アニール温度350~550℃下で1~5hアニールして、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第1磁性粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第2磁性粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第3磁性粉末を得るステップ(1)(ここで、アニール過程における総流量速度が0.2~1L/minである)と、
ステップ(1)における表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第1磁性粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第2磁性粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆された第3磁性粉末を3次元ミキサーに入れ、1~2h混合して、軟磁性粉末を得るステップ(2)と、を含む。
【0036】
第2の態様として、本願は、第1の態様に記載された軟磁性粉末の調製方法により調製される軟磁性粉末であって、第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末を含み、前記第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む軟磁性粉末を提供する。
【0037】
本願において、前記軟磁性粉末のうちの第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末の表面における-Si-N-化学結合を含む化合物膜は、磁性粉末の表面に密着して、表面絶縁の作用を果たすことができることで、軟磁性粉末の絶縁抵抗を向上させ、さらに3種の磁性粉末を組み合わせて堆積することで、軟磁性粉末の磁束密度、透磁率、および大電流下での重畳性能を向上させるとともに、ヒステリシス損失を明らかに低下させることができる。
【0038】
好ましくは、前記第1磁性粉末は、Fe-Si-Al系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Si系合金、Fe-Si-Cr系合金またはFe-Si-Ni系合金のいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。
【0039】
好ましくは、前記軟磁性粉末における前記第1磁性粉末の重量比は、50~90%、たとえば50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%または90%などである。
【0040】
好ましくは、前記第1磁性粉末のD50は、15~45μm、たとえば15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μmまたは45μmなどであり、21~30μmであることが好ましい。
【0041】
上記メジアン径の範囲である第1磁性粉末は、高周波条件下で適用される場合、良好な透磁率、および比較的低い磁気コア損失性能を有する。
【0042】
好ましくは、前記第2磁性粉末は、Fe-Si-Al系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Si系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Si-Ni系合金、カルボニル鉄粉のいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。
【0043】
好ましくは、前記軟磁性粉末における前記第2磁性粉末の重量比は、10~40%、たとえば10%、15%、20%、25%、30%、35%または40%などである。
【0044】
好ましくは、前記第2磁性粉末のD50は、2~10μm、たとえば2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μmまたは10μmなどであり、4~7μmであることが好ましい。
【0045】
上記メジアン径の範囲である第2磁性粉末は、前記第1磁性粉末と効果的な粒度での組合せ及び堆積が行われることができることで、高周波条件下で適用される場合に良好な透磁率、磁気コア損失性能を得る。
【0046】
好ましくは、前記第3磁性粉末は、Fe-Si-B系アモルファス合金、Fe-Si-Cr-B系アモルファス合金、カルボニル鉄粉アモルファスのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。
【0047】
好ましくは、前記軟磁性粉末における前記第3磁性粉末の重量比は、5~15%、たとえば5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%または15%などである。
【0048】
好ましくは、前記第3磁性粉末のD50は、2~8μm、たとえば2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmまたは8μmなどであり、3~7μmであることが好ましい。
【0049】
上記メジアン径の範囲である第3磁性粉末は、前記第1磁性粉末と効果的な粒度での組合せ及び堆積が行われることができることで、高周波条件下で適用される場合に良好な透磁率、磁気コア損失性能を得る。
【0050】
好ましくは、前記第1磁性粉末の表面における化合物膜の厚さは、20~100nm、たとえば20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nmまたは100nmなどであり、30~70nmであることが好ましい。
【0051】
好ましくは、前記第2磁性粉末の表面における化合物膜の厚さは、10~40nm、たとえば10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nmまたは40nmなどであり、15~25nmであることが好ましい。
【0052】
好ましくは、前記第3磁性粉末の表面における化合物膜の厚さは、20~70nm、たとえば20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nmまたは70nmなどであり、30~50nmであることが好ましい。
【0053】
-Si-N-化学結合を含む化合物膜の厚さが大きいほど、粉末の絶縁抵抗が大きくなり、高周波下での渦電流損失が低くなることを意味するが、通常、初期透磁率を極めて大きく低下させ、ヒステリシス損失を向上させるため、前記第1磁性粉末、第2磁性粉末および第3磁性粉末の表面絶縁被覆厚さは、高周波適用に対して意義が重大である。
【0054】
第3の態様として、本願は、第2の態様に記載された軟磁性粉末により調製される磁性粉末コアをさらに提供する。
【発明の効果】
【0055】
従来技術に比較すると、本願は、以下の有益な効果を有する。
【0056】
本願は、異なる磁性特性及び異なる粒度分布の磁性粉末を組み合わせて堆積しながら、磁性粉末を表面シランカップリング化及びシリコン窒化処理して、表面に緻密で、-Si-N-化学結合を含む化合物膜を1層形成することにより、良好な絶縁作用を果たし、軟磁性粉末の絶縁抵抗を向上させ、かつ通常のプレス圧力下で軟磁性粉末が高堆積密度(それに伴い、対応する磁束密度、透磁率、および大電流下での重畳性能が向上し、ヒステリシス損失が降下する)および超高絶縁抵抗(対応する渦電流損失、特に高周波下での渦電流損失が明らかに降下する)の効果を達成することができる。その初期透磁率は、72.3以上に達しながら、磁気コア損失は、3795@1M*50mTに低下することができる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下は、具体的な実施例に基づき、本願の技術案をさらに説明する。当業者であれば、前記実施例は、本願を理解するためのものに過ぎず、本願を具体的に限定すると見なされるべきではないことを理解すべきである。
【0058】
以下の実施例および比較例に用いられるシランカップリング剤は、いずれもKH550である。
【0059】
実施例1
【0060】
本実施例は、Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末を含む軟磁性粉末を提供し、前記Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む。
【0061】
前記Fe-Si-Al粉末の表面における化合物膜の厚さが48nmであり、
前記Fe-Ni粉末の表面における化合物膜の厚さが22nmであり、
前記カルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面における化合物膜の厚さが38nmである。
【0062】
前記軟磁性粉末の調製方法は、
メジアン径25.6μmのFe-Si-Al粉末を濃度10wt%のシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させ、シランカップリング剤の添加量がFe-Si-Al粉末の重量の0.7wt%であり、そして撹拌しながら溶液が除去されるまでに自然揮発させ、
メジアン径5.8μmのFe-Ni粉末を濃度13wt%のシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させ、シランカップリング剤の添加量がFe-Ni粉末の重量の1wt%であり、そして撹拌しながら溶液が除去されるまでに自然揮発させ、
メジアン径4.5μmのカルボニル鉄粉アモルファス粉末を濃度15wt%のシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させ、シランカップリング剤の添加量がカルボニル鉄粉アモルファス粉末の重量の1.5wt%であり、そして撹拌しながら溶液が除去されるまでに自然揮発させ、
シランカップリング化処理された後のFe-Si-Al粉末を、総流量速度0.6L/minの窒素ガス雰囲気下、管状アニール炉にて、380℃のアニール温度で3hアニールし、
シランカップリング化処理された後のFe-Ni粉末を、総流量速度0.6L/minの窒素ガス雰囲気下、管状アニール炉にて、420℃のアニール温度で3hアニールし、
シランカップリング化処理された後のカルボニル鉄粉アモルファス粉末を、総流量速度0.6L/minの窒素ガス雰囲気下、管状アニール炉にて、420℃のアニール温度で3hアニールし、
表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆されたFe-Si-Al粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆されたFe-Ni粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆されたカルボニル鉄粉アモルファス粉末を得るステップ(1)と、
混合比率が70:22:8であるステップ(1)における表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆されたFe-Si-Al粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆されたFe-Ni粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆されたカルボニル鉄粉アモルファス粉末を3次元ミキサーに入れ、2h均一に混合して、前記軟磁性粉末を得るステップ(2)と、を含む。
【0063】
実施例2
【0064】
本実施例は、Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末を含む軟磁性粉末を提供し、前記Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む。
【0065】
前記Fe-Si-Al粉末の表面における化合物膜の厚さが20nmであり、
前記Fe-Ni粉末の表面における化合物膜の厚さが22nmであり、
前記カルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面における化合物膜の厚さが38nmである。
【0066】
本実施例が実施例1との区別は、Fe-Si-Al粉末のメジアン径が21μm、Fe-Ni粉末のメジアン径が4μm、カルボニル鉄粉アモルファス粉末のメジアン径が4μmであり、他の調製方法およびパラメータは実施例1と一致する。
【0067】
実施例3
【0068】
本実施例は、Fe-Ni粉末、カルボニル鉄粉末およびFe-Si-B粉末を含む軟磁性粉末を提供し、前記Fe-Ni粉末、カルボニル鉄粉末およびFe-Si-B粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む。
【0069】
前記Fe-Ni粉末の表面における化合物膜の厚さが100nmであり、
前記カルボニル鉄粉末の表面における化合物膜の厚さが10nmであり、
前記Fe-Si-B粉末の表面における化合物膜の厚さが70nmである。
【0070】
前記軟磁性粉末の調製方法は、
メジアン径45μmのFe-Ni粉末を濃度5wt%のシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させ、シランカップリング剤の添加量がFe-Ni粉末の重量の0.9wt%であり、そして撹拌しながら溶液が除去されるまでに自然揮発させ、
メジアン径7μmのカルボニル鉄粉末を濃度5wt%のシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させ、シランカップリング剤の添加量がカルボニル鉄粉末の重量の0.8wt%であり、そして撹拌しながら溶液が除去されるまでに自然揮発させ、
メジアン径7μmのFe-Si-B粉末を濃度5wt%のシランカップリング剤-アセトン溶液に浸漬させ、シランカップリング剤の添加量がFe-Si-B粉末の重量の1.8wt%であり、そして撹拌しながら溶液が除去されるまでに自然揮発させ、
シランカップリング化処理された後のFe-Ni粉末を、総流量速度0.4L/minの窒素ガス雰囲気下、管状アニール炉にて、350℃のアニール温度で5hアニールし、
シランカップリング化処理された後のカルボニル鉄粉末を、総流量速度1L/minの窒素ガス雰囲気下、管状アニール炉にて、450℃のアニール温度で1hアニールし、
シランカップリング化処理された後のFe-Si-B粉末を、総流量速度0.6L/minの窒素ガス雰囲気下、管状アニール炉にて、420℃のアニール温度で3hアニールし、
表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆されたFe-Ni粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆されたカルボニル鉄粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆されたFe-Si-B粉末を得るステップ(1)と、
混合比率が60:30:10であるステップ(1)における表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆されたFe-Ni粉末、表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆されたカルボニル鉄粉末および表面に-Si-N-化学結合の化合物膜が被覆されたFe-Si-B粉末を3次元ミキサーに入れ、1h均一に混合して、前記軟磁性粉末を得るステップ(2)と、を含む。
【0071】
実施例4
【0072】
本実施例が実施例1との区別は、シリコン窒化処理における雰囲気のガスが窒素ガス-アンモニアガスの混合ガスであり、他の調製方法およびパラメータは実施例1と一致する。
【0073】
実施例5
【0074】
本実施例は、Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末を含む軟磁性粉末を提供し、前記Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む。
【0075】
前記Fe-Si-Al粉末の表面における化合物膜の厚さが17nmであり、
前記Fe-Ni粉末の表面における化合物膜の厚さが22nmであり、
前記カルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面における化合物膜の厚さが38nmである。
【0076】
本実施例が実施例1との区別は、Fe-Si-Al粉末のメジアン径が14μmであり、他の調製方法およびパラメータは実施例1と一致する。
【0077】
実施例6
【0078】
本実施例は、Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末を含む軟磁性粉末を提供し、前記Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む。
【0079】
前記Fe-Si-Al粉末の表面における化合物膜の厚さが110nmであり、
前記Fe-Ni粉末の表面における化合物膜の厚さが22nmであり、
前記カルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面における化合物膜の厚さが38nmである。
【0080】
本実施例が実施例1との区別は、Fe-Si-Al粉末のメジアン径が46μmであり、他の調製方法およびパラメータは実施例1と一致する。
【0081】
実施例7
【0082】
本実施例は、Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末を含む軟磁性粉末を提供し、前記Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む。
【0083】
前記Fe-Si-Al粉末の表面における化合物膜の厚さが48nmであり、
前記Fe-Ni粉末の表面における化合物膜の厚さが22nmであり、
前記カルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面における化合物膜の厚さが38nmである。
【0084】
本実施例が実施例1との区別は、Fe-Ni粉末のメジアン径が2μmであり、他の調製方法およびパラメータは実施例1と一致する。
【0085】
実施例8
【0086】
本実施例は、Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末を含む軟磁性粉末を提供し、前記Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む。
【0087】
前記Fe-Si-Al粉末の表面における化合物膜の厚さが48nmであり、
前記Fe-Ni粉末の表面における化合物膜の厚さが22nmであり、
前記カルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面における化合物膜の厚さが38nmである。
【0088】
本実施例が実施例1との区別は、Fe-Ni粉末のメジアン径が10μmであり、他の調製方法およびパラメータは実施例1と一致する。
【0089】
実施例9
【0090】
本実施例は、Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末を含む軟磁性粉末を提供し、前記Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む。
【0091】
前記Fe-Si-Al粉末の表面における化合物膜の厚さが48nmであり、
前記Fe-Ni粉末の表面における化合物膜の厚さが7nmであり、
前記カルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面における化合物膜の厚さが38nmである。
【0092】
本実施例が実施例1との区別は、カルボニル鉄粉アモルファス粉末のメジアン径が2μmであり、他の調製方法およびパラメータは実施例1と一致する。
【0093】
実施例10
【0094】
本実施例は、Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末を含む軟磁性粉末を提供し、前記Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む。
【0095】
前記Fe-Si-Al粉末の表面における化合物膜の厚さが48nmであり、
前記Fe-Ni粉末の表面における化合物膜の厚さが22nmであり、
前記カルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面における化合物膜の厚さが75nmである。
【0096】
本実施例が実施例1との区別は、カルボニル鉄粉アモルファス粉末のメジアン径が8μmであり、他の調製方法およびパラメータは実施例1と一致する。
【0097】
実施例11
【0098】
本実施例が実施例1との区別は、シリコン窒化処理における雰囲気のガスが空気であり、他の調製方法およびパラメータは実施例1と一致する。
【0099】
実施例12
【0100】
本実施例が実施例1との区別は、シリコン窒化処理における雰囲気のガスが水素ガスであり、他の調製方法およびパラメータは実施例1と一致する。
【0101】
比較例1
【0102】
本比較例は、Fe-Si-Al粉末およびFe-Ni粉末を含む軟磁性粉末を提供し、前記Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む。
【0103】
前記Fe-Si-Al粉末の表面における化合物膜の厚さが48nmであり、
前記Fe-Ni粉末の表面における化合物膜の厚さが22nmであり。
【0104】
調製方法には、カルボニル鉄粉アモルファス粉末に対する処理が存在しない以外、他の調製過程およびパラメータは実施例1と一致する。
【0105】
比較例2
【0106】
本比較例は、Fe-Si-Al粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末を含む軟磁性粉末を提供し、前記Fe-Si-Al粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む。
【0107】
前記Fe-Si-Al粉末の表面における化合物膜の厚さが48nmであり、
前記カルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面における化合物膜の厚さが38nmである。
【0108】
調製方法には、Fe-Ni粉末に対する処理が存在しない以外、他の調製過程およびパラメータは実施例1と一致する。
【0109】
比較例3
【0110】
本比較例は、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末を含む軟磁性粉末を提供し、前記Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面に、いずれも1層の化合物膜が被覆され、前記化合物膜における化合物が-Si-N-化学結合を含む。
【0111】
前記Fe-Ni粉末の表面における化合物膜の厚さが22nmであり、
前記カルボニル鉄粉アモルファス粉末の表面における化合物膜の厚さが38nmである。
【0112】
調製方法には、Fe-Si-Al粉末に対する処理が存在しない以外、他の調製過程およびパラメータは実施例1と一致する。
【0113】
比較例4
【0114】
本比較例は、Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末を含む軟磁性粉末を提供する。
【0115】
調製方法には、Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末に対して表面シランカップリング化の処理およびシリコン窒化処理を行わない以外、他の調製過程およびパラメータは実施例1と一致する。
【0116】
比較例5
【0117】
本比較例は、Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末を含む軟磁性粉末を提供する。
【0118】
調製方法には、Fe-Si-Al粉末、Fe-Ni粉末およびカルボニル鉄粉アモルファス粉末に対して、シリコン窒化処理を行わず、表面シランカップリング化の処理のみを行う以外、他の調製過程およびパラメータは実施例1と一致する。
【0119】
実施例1~12および比較例1~5で調製された軟磁性粉末に対して試験を行った。試験方法および過程は、以下の通りである。
【0120】
1、実施例1~12および比較例1~5における軟磁性粉末をそれぞれ独立して被覆装置に入れ、1.0wt%のシリコン有機樹脂結着剤(濃度10wt%のアセトン溶液)を徐々に添加し、生乾き状態で造粒機によって一定の真円度を有する柱状軟磁性粉末材に調製した。2、上記軟磁性粉末材を、1500MPaのプレス力でプレス成形して、Φ26.92*Φ14.73*11.18の磁気コアを得た。3、上記成形された磁気コアを、700℃の温度でアニールすることにより、磁気コアのプレス成形応力を除去し、ここで、雰囲気が窒素ガスであった。4、試験評価分析:上記アニールされた磁気コアに対して、コイルの巻回数を30回とし、英Wayne KerrのWK3260B精密磁性素子分析装置を利用して磁気コアの初期透磁率μiを評価し、コイルの巻回数を30*5回とし、日本岩崎SY-8218軟磁性B-H分析装置を利用して、磁気コアの異なる周波数、外部磁場での磁気コア損失を評価した。本願において、主に、高周波1M、外部磁場50mTの条件下でのものを特徴値として評価した。
【0121】
表1は、実施例1~12および比較例1~5のデータ結果を示す。
【0122】
【表1】
【0123】
実施例1および実施例5のデータ結果から分かるように、Fe-Si-Al粉末のメジアン径が15μmよりも小さいと、それに伴い、その対応する表面における化合物膜の厚さが20nm以下に低下した。この場合、実施例5の初期透磁率が70よりも小さかった。
【0124】
実施例1および実施例6のデータ結果から分かるように、Fe-Si-Al粉末のメジアン径が45μmを超えると、それに伴い、その対応する表面における化合物膜の厚さが100nm以上に向上した。粉末が粗すぎて、磁気コアの損失をさらに悪化させた。
【0125】
実施例1および実施例5~10のデータ結果から分かるように、第1磁性粉末でも、第2または第3磁性粉末でも、磁性粉末のいずれか1種のメジアン径が本願における数値範囲を超えるか、またはそれよりも小さいであれば、その初期透磁率または損失がいずれも変化して、磁性粉末コアの性能を明らかに悪化させた。
【0126】
実施例1、実施例11および実施例12のデータ結果から分かるように、空気または水素ガス雰囲気下でアニール処理を行うことにより、磁性粉末が緻密な-Si-N-系化合物薄膜層を形成できないことに起因して、その絶縁効果が極めて悪くなり、最終に磁性粉末コアの損失をより悪化させた。
【0127】
実施例1および比較例1~3のデータ結果から分かるように、2種の磁性粉末の混合による効果がいずれも本願における3種の磁性粉末の混合による効果よりも悪いことに起因して、透磁率が向上できないか、または損失が増加した。実施例1および比較例4のデータ結果から分かるように、磁性粉末に対して表面シランカップリング化の処理およびシリコン窒化処理を行わないことに起因して、粉末の表面の絶縁性が悪く、高周波条件下での損失が高い。
【0128】
実施例1および比較例5のデータ結果から分かるように、シリコン窒化処理を行わず、表面シランカップリング化の処理のみを行うことに起因して、損失も明らかに高くなった。
【0129】
上述した具体的な実施例は、本願の目的、技術案および有益な効果についてさらに詳細に説明したが、上述した具体的な実施例は、本願の具体的な実施例に過ぎず、本願を限定するためのものではないことを理解すべきである。