(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ハードカーボン及びその製造方法、それを含有する二次電池及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20241213BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241213BHJP
【FI】
C01B32/05
H01M4/587
(21)【出願番号】P 2023531034
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(86)【国際出願番号】 CN2021143486
(87)【国際公開番号】W WO2023123303
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼▲曉▼霞
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼欣欣
(72)【発明者】
【氏名】欧▲陽▼楚英
(72)【発明者】
【氏名】郭永▲勝▼
(72)【発明者】
【氏名】田佳瑞
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼宇
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲ベン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼孝吉
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-066629(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146900(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108584907(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113044827(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112811409(CN,A)
【文献】特表2018-514936(JP,A)
【文献】国際公開第2020/017553(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/189520(WO,A1)
【文献】宮嶋尚哉,外5名,多糖類から調製した炭素体の細孔構造とエチレン吸着特性,炭素,第2011巻 第249号,炭素材料学会,2011年,p.179-184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/05
H01M 4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度77Kで測定した窒素吸着等温線において、窒素相対圧P/P
0が10
-8から0.035の間の窒素吸着総量はV
1cm
3(STP)/gであり、窒素相対圧P/P
0が0.035から1の間の窒素吸着総量はV
2cm
3(STP)/gであり、
0.119≦V
2/V
1≦0.20であり、且つ
92.5≦V
1≦150の要件を満たし、Pは窒素の絶対圧を表し、P
0は窒素の温度77Kでの飽和蒸気圧を表すハードカーボン。
【請求項2】
98.5≦V
1≦150である、請求項1に記載のハードカーボン。
【請求項3】
101.6≦V
1≦150である、請求項2に記載のハードカーボン。
【請求項4】
0.132≦V
2/V
1≦0.20である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のハードカーボン。
【請求項5】
0.154≦V
2/V
1≦0.20である、請求項4に記載のハードカーボン。
【請求項6】
12.5≦V
2≦30である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のハードカーボン。
【請求項7】
15.5≦V
2≦30である、請求項6に記載のハードカーボン。
【請求項8】
ラマンスペクトルにおいて、I
d/I
gは1.20~1.32であり、I
dは1350±50cm
-1のラマンシフト範囲におけるdバンドピーク強度を表し、I
gは1580±50cm
-1のラマンシフト範囲におけるgバンドピーク強度を表す、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のハードカーボン。
【請求項9】
X線回折スペクトルにおいて、002ピークに対応する2θの値は22°~24°の間である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のハードカーボン。
【請求項10】
体積粒径Dv50は2μm~15μmである条件(1)と、
体積粒径Dv90は5μm~25μmである条件(2)と、
比表面積は5m
2/g以下である条件(3)と、
50000Nの作用力での圧粉密度が0.96g/cm
3~1.05g/cm
3である条件(4)と、
タップ密度は0.80g/cm
3~0.95g/cm
3である条件(5)と、のうちの少なくとも1つの条件を満たす請求項1乃至9のいずれか一項に記載のハードカーボン。
【請求項11】
体積粒径Dv50は4μm~8μmである条件(1)と、
体積粒径Dv90は8μm~15μmである条件(2)と、
比表面積は0.5m
2/g~5m
2/gである条件(3)と、のうちの少なくとも1つの条件を満たす請求項10に記載のハードカーボン。
【請求項12】
炭素源を提供するステップS10と、
前記炭素源を不活性雰囲気において、第1温度T1でt1時間熱処理して、第1中間生成物を得るステップであって、T1≦300℃であり、t1が4h~60hであるステップS20と、
得られた第1中間生成物を大気雰囲気において、第2温度T2でt2時間熱処理して、第2中間生成物を得るステップであって、T2<400℃であり、t2が1h~12hであるステップS30と、
得られた第2中間生成物を不活性雰囲気において、第3温度T3でt3時間炭化処理して、ハードカーボンを得るステップであって、T3が1000℃~1600℃であり、t3が1h~12hであるステップS40と、
を含み、
前記ハードカーボンは、温度77Kで測定した窒素吸着等温線において、窒素相対圧P/P
0が10
-8から0.035の間の窒素吸着総量はV
1cm
3(STP)/gであり、窒素相対圧P/P
0が0.035から1の間の窒素吸着総量はV
2cm
3(STP)/gであり、
0.119≦V
2/V
1≦0.20であり、且つ
92.5≦V
1≦150の要件を満たし、Pは窒素の絶対圧を表し、P
0は窒素の温度77Kでの飽和蒸気圧を表すハードカーボンの製造方法。
【請求項13】
T1≦T2である、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
T1は180℃~300℃であり、及び/又は、
T2は270℃~380℃であり、及び/又は、
T3は1000℃~1400℃である、請求項12
又は13に記載の方法。
【請求項15】
ステップS20の後、ステップS30の前に、ステップS20で得られた第1中間生成物を破砕するステップS21をさらに含むステップ(a)と、
ステップS30の後、ステップS40の前に、ステップS30で得られた第2中間生成物を破砕するステップS31をさらに含むステップ(b)と、
ステップS40で得られたハードカーボンを破砕するステップS50であるステップ(c)と、のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項12乃至
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(b)において、前記第2中間生成物の破砕後の体積粒径は、Dv50が2μm~15μmであり、及び/又は、Dv90が5μm~25μmである要件を満たす、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記不活性雰囲気は窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気のうちの1つ以上から選択される、請求項12乃至
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記炭素源はポリマー、樹脂、バイオマス材料のうちの1つ以上を含む、請求項12乃至
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーは
、ポリアニリン、ポリピロールのうちの1つ以上を含
み、及び/又は、
前記樹脂は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂のうちの1つ以上を含み、及び/又は、
前記バイオマス材料は、デンプン、グルコース、フルクトース、マルトース、スクロース、セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうちの1つ以上を含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のハードカーボンを含む負極シートを含む二次電池。
【請求項21】
請求項
20に記載の二次電池を含む電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池技術分野に属し、具体的にはハードカーボン及びその製造方法、それを含有する二次電池及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は水力、火力、風力及び太陽光発電所等のエネルギー貯蔵電源システム、さらには電動工具、電動自転車、電動オートバイ、電気自動車、軍事装備、航空宇宙等の複数の分野に広く応用されている。二次電池の応用及び普及に伴い、そのエネルギー密度、耐用年数及びレート特性にますます注目が集まっている。黒鉛は二次電池における最も一般的な負極活物質であるが、その理論容量は372mAh/gに過ぎず、エネルギー密度を向上させる余地が非常に限られており、また黒鉛は層間距離が小さく、レート特性の向上も制限される。ハードカーボンは新規の負極活物質として、二次電池の充放電過程において活性イオンの迅速な挿入及び脱離を実現することができ、発展の可能性が非常に高い。しかし、ハードカーボンは容量及び初期クーロン効率が低く、二次電池のエネルギー密度、耐用年数及びレート特性の向上には限界がある。
【発明の概要】
【0003】
本願の目的は、ハードカーボンの容量及び初期クーロン効率を同時に向上させることを意図したハードカーボン及びその製造方法、それを含有する二次電池及び電力消費装置を提供することである。
【0004】
本願の第1態様は、温度77Kで測定した窒素吸着等温線において、窒素相対圧P/P0が10-8から0.035の間の窒素吸着総量はV1cm3(STP)/gであり、窒素相対圧P/P0が0.035から1の間の窒素吸着総量はV2cm3(STP)/gであり、V2/V1≦0.20であり、且つ20≦V1≦150の要件を満たし、Pは窒素の絶対圧を表し、P0は窒素の温度77Kでの飽和蒸気圧を表すハードカーボンを提供する。
【0005】
現在商品化されているハードカーボンに比べて、本願が提供するハードカーボンは高い容量及び初期クーロン効率を両立させる。メカニズムはまだ明確ではないが、発明者らは可能性がある一つの理由として、本願のハードカーボン内部の欠陥数が適切であり、且つ独特なチャネル構造を有し、活性イオンの貯蔵部位が多く且つその利用率も高く、そのため、本願のハードカーボン構造は活性イオンの挿入、貯蔵及び脱離を容易に行うことができ、それにより本願のハードカーボンは高い容量及び初期クーロン効率を両立させることができると推測した。
【0006】
本願のいずれかの実施形態において、50≦V1≦150である。好ましくは、70≦V1≦150である。V1が適切な範囲内にある場合、本願が提供するハードカーボンはより高い容量及び初期クーロン効率を兼ね備えることができる。
【0007】
本願のいずれかの実施形態において、0.05≦V2/V1≦0.20である。好ましくは、0.08≦V2/V1≦0.20である。V2/V1が適切な範囲内にある場合、ハードカーボンはより高い容量及びより高い初期クーロン効率を兼ね備える。
【0008】
本願のいずれかの実施形態において、4≦V2≦30である。好ましくは、6≦V2≦30である。V2が適切な範囲内にある場合、ハードカーボンはより高い容量及びより高い初期クーロン効率を兼ね備え、同時に優れたレート特性を有する。
【0009】
本願の任意の実施形態において、前記ハードカーボンのラマンスペクトルにおいて、Id/Igは1.20~1.32であり、Idは1350±50cm-1のラマンシフト範囲におけるdバンドピーク強度を表し、Igは1580±50cm-1のラマンシフト範囲におけるgバンドピーク強度を表す。この時に、ハードカーボン構造の秩序度は適切であり、それによりハードカーボンはより高い容量及びより高い初期クーロン効率を兼ね備え、さらにはより優れたレート特性を有する。
【0010】
本願の任意の実施形態において、前記ハードカーボンのX線回折スペクトルにいて、002ピークに対応する2θの値は22°~24°の間にある。
【0011】
本願の任意の実施形態において、前記ハードカーボンの体積粒径Dv50は2μm~15μmであり、好ましくは4μm~8μmである。
【0012】
本願の任意の実施形態において、前記ハードカーボンの体積粒径Dv90は5μm~25μmであり、好ましくは8μm~15μmである。
【0013】
ハードカーボンの体積粒径Dv50及び/又はDv90が適切な範囲内にある場合、活性イオン及び電子の輸送特性を向上させることに有利であり、それにより二次電池のレート特性をさらに向上させる。
【0014】
本願の任意の実施形態において、前記ハードカーボンの比表面積は5m2/g以下であり、好ましくは0.5m2/g~5m2/gである。ハードカーボンの比表面積が適切な範囲内にある場合、ハードカーボンはより高い容量及びより高い初期クーロン効率を兼ね備えることができ、さらにはより良好なレート特性を有する。また、ハードカーボンの比表面積が適切な範囲内にある場合、ハードカーボンとバインダーとの間にさらに強い結合力を有することができ、それにより負極シートの凝集力及び接着力を向上させることができ、サイクル過程における負極シートの体積膨張を低下させ、二次電池はさらに良好なサイクル特性を有するようになる。
【0015】
本願の任意の実施形態において、前記ハードカーボンは、50000Nの作用力での粉末圧密度が0.96g/cm3~1.05g/cm3である。ハードカーボンの粉末圧密度が適切な範囲内にある場合、負極シートの圧密度を高めて、二次電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0016】
本願のいずれかの実施形態において、前記ハードカーボンのタップ密度は0.80g/cm3~0.95g/cm3である。ハードカーボンのタップ密度が適切な範囲内にある場合、負極シートの圧粉密度を高めて、二次電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0017】
本願の第2態様は、炭素源を提供するステップS10と、前記炭素源を不活性雰囲気において、第1温度T1でt1時間熱処理して、第1中間生成物を得るステップS20と、得られた第1中間生成物を大気雰囲気において、第2温度T2でt2時間熱処理して、第2中間生成物を得るステップS30と、得られた第2中間生成物を不活性雰囲気において、第3温度T3でt3時間炭化処理し、ハードカーボンを得るステップS40と、を含み、前記ハードカーボンは、温度77Kで測定した窒素吸着等温線において、窒素相対圧P/P0が10-8から0.035の間の窒素吸着総量はV1cm3(STP)/gであり、窒素相対圧P/P0が0.035から1の間の窒素吸着総量はV2cm3(STP)/gであり、V2/V1≦0.20であり、且つ20≦V1≦150の要件を満たし、Pは窒素の絶対圧を表し、P0は窒素の温度77Kでの飽和蒸気圧を表すハードカーボンの製造方法を提供する。
【0018】
発明人らは、前記炭素源に対して不活性雰囲気における低温熱処理プロセス、大気雰囲気における二次低温熱処理プロセス及び不活性雰囲気における高温炭化処理プロセスを同時に実施することで、得られたハードカーボンが高い容量及び高い初期クーロン効率を兼ね備えることができることを発見した。本願が提供するハードカーボンの製造方法はシンプルであり、商品化生産に適する。
【0019】
本願のいずれかの実施形態において、T1<T3であり、且つT2<T3である。
【0020】
本願のいずれかの実施形態において、T1≦T2であり、好ましくは、T1<T2である。
【0021】
本願のいずれかの実施形態において、T1≦300℃であり、好ましくは、T1は180℃~300℃である。T1が適切な範囲内にある場合、適切なチャネル構造を導入することに適し、且つ安定していて崩壊しにくい骨格構造を多く保持することができる。
【0022】
本願のいずれかの実施形態において、T2<400℃であり、好ましくは、T2は270℃~380℃である。T2が適切な範囲内にある場合、ステップS20で得られた炭素骨格材料粒子は、内側から外側へ向かって適切で且つ豊富なチャネル構造を形成することができ、活性イオン及び電子の輸送性能を向上させ、それによりハードカーボンの容量及び初期クーロン効率を向上させる。
【0023】
本願のいずれかの実施形態において、T3は1000℃~1600℃であり、好ましくは、T3は1000℃~1400℃である。T3が適切な範囲内にある場合、ハードカーボンの秩序度をより良好に向上させることができ、ハードカーボンは高い容量及び高い初期クーロン効率を兼ね備えるようになる。
【0024】
本願のいずれかの実施形態において、t1は4h~60hである。
【0025】
本願のいずれかの実施形態において、t2は1h~12hである。
【0026】
本願のいずれかの実施形態において、t3は1h~12hである。
【0027】
本願のいずれかの実施形態において、ステップS20の後、ステップS30の前に、前記製造方法はさらに、ステップS20で得られた第1中間生成物を破砕し、後続処理時に第1中間生成物が空気と十分に接触できることを保証するステップS21を含む。
【0028】
本願のいずれかの実施形態において、ステップS30の後、ステップS40の前に、前記製造方法はさらに、ステップS30で得られた第2中間生成物を破砕するステップS31を含む。好ましくは、前記第2中間生成物の破砕後の体積粒径は、Dv50が2μm~15μmであり、及び/又は、Dv90が5μm~25μmである要件を満たす。
【0029】
本願のいずれかの実施形態において、前記製造方法はさらに、ステップS40で得られたハードカーボンを破砕することにより、必要な粒径の要件を満たし、負極ペースト及び負極シートを製造しやすいようにするステップS50を含む。
【0030】
本願のいずれかの実施形態において、前記不活性雰囲気は窒素雰囲気、アルゴン雰囲気のうちの1つ以上から選択される。
【0031】
本願のいずれかの実施形態において、前記炭素源はポリマー、樹脂、バイオマス材料のうちの1つ以上を含む。
【0032】
本願のいずれかの実施形態において、前記ポリマーはポリアニリン、ポリピロールのうちの1つ以上を含む。
【0033】
本願のいずれかの実施形態において、前記樹脂はフェノール樹脂、エポキシ樹脂のうちの1つ以上を含む。
【0034】
本願のいずれかの実施形態において、前記バイオマス材料はデンプン、グルコース、フルクトース、マルトース、スクロース、セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうちの1つ以上を含む。好ましくは、前記デンプンは穀類デンプン、イモ類デンプン、豆類デンプンのうちの1つ以上を含む。
【0035】
本願の第3態様は、本願の第1態様に係るハードカーボン、又は本願の第2態様の方法によって製造されたハードカーボンを含む負極シートを含む二次電池を提供する。
【0036】
本願の第4態様は、本願の第3態様に係る二次電池を含む電力消費装置を提供する。
【0037】
本願の電力消費装置は本願の提供する二次電池を含み、従って前記二次電池と少なくとも同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本願の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するめに、以下に本願の実施例に必要な図面を簡単に説明する。理解すべきことは、以下に示された図面は本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、図面に基づいて他の図面をさらに取得することができる。
【0039】
【
図1】固体材料の6つの一般的な吸着等温線のタイプを示す。
【
図2】本願の二次電池の一実施形態に係る概略図である。
【
図3】
図2に示す二次電池の実施形態に係る分解概略図である。
【
図4】本願の電池モジュールの一実施形態に係る概略図である。
【
図5】本願の電池パックの一実施形態に係る概略図である。
【
図6】
図5に示す電池パックの実施形態に係る分解概略図である。
【
図7】本願の二次電池を電源として含む電力消費装置の一実施形態に係る概略図である。
【
図8】実施例2で製造されたハードカーボンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図9】実施例2で製造されたハードカーボンの温度77Kで測定された窒素吸着等温線である。
【
図10】比較例1で製造されたハードカーボンの温度77Kで測定された窒素吸着等温線である。
【0040】
図面において、図面は実際の比率に従って描かれたものではない。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本願のハードカーボン及びその製造方法、それを含有する二次電池及び電力消費装置を具体的に開示した実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、不必要な詳細な説明は省略する場合がある。例えば、周知の事項の詳細な説明や、実質的に同一の構造についての重複する説明は省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長にならないようにして、当業者の理解を容易にするためである。また、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されたものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0042】
本願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形で定義され、所与の範囲は、1つの下限と1つの上限を選定することによって定義され、選定された下限及び上限は、特定の範囲の境界を定義するものである。このような方法で定義された範囲は、両端の値が含まれてもよく又は含まれていなくてもよく、且つ任意に組み合わせることができ、すなわち、任意の下限を任意の上限と組み合わせて範囲を形成することができる。例えば、60~120及び80~110の範囲が特定のパラメータについて列挙されている場合、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1及び2が列挙されており、及び最大範囲値3、4及び5が列挙されている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲がすべて企図されている。本願において、説明がない限り、数値範囲「a~b」は、aからbの間の任意の実数の組み合わせの省略表現を意味し、a及びbは両方とも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、「0~5」の間の全ての実数が本明細書に全て列挙されていることを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの省略表現にすぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現する場合、そのパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等であることを開示することに相当する。
【0043】
本願のすべての実施形態及び選択可能な実施形態は、特に明記しない限り、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができ、且つそのような技術的解決手段は、本願の開示に含まれると見なされるべきである。
【0044】
本願のすべての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、特に明記しない限り、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができ、且つそのような技術的解決手段は、本願の開示に含まれると見なされるべきである。
【0045】
本願の全てのステップは、特に説明しない限り、順に又はランダムに実施することができ、好ましくは順に実施する。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含む場合、前記方法は、順に実施されるステップ(a)及び(b)を含んでもよく、又は順に実施されるステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを示す。例えば、前記言及された前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいという場合、ステップ(c)を任意の順序で前記方法に加えてもよいことを示し、例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、又はステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、又はステップ(c)、(a)及び(b)を含んでもよいなどを示す。
【0046】
本願で言及される「含む」及び「包含する」は、特に説明しない限り、開放形式及び閉鎖形式の両方を示す。例えば、前記「含む」及び「包含する」は、列挙されていない他の成分も含む又は包含してもよいことを示すことができ、又は列挙された成分のみを含む又は包含してもよいことを示すことができる。
【0047】
本願において、特に説明しない限り、「又は」という用語は包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はA及びBの両方」を意味する。より具体的には、「A又はB」という条件は、Aが真(又は存在)であり、Bが偽(又は存在しない)であるか、Aが偽(又は存在しない)であり、Bが真(又は存在する)であるか、又はA及びBの両方が真(又は存在する)のいずれかによって満たされる。
【0048】
本願において、「活性イオン」という用語は、特に説明しない限り、二次電池の正極と負極との間で往復して挿入及び脱離することができるイオンを意味し、リチウムイオン、ナトリウムイオンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
国際純正・応用化学連合(IUPAC)の定義によれば、マイクロ細孔(Micropores)は孔径<2nmの細孔を意味し、メソ細孔(Mesopores)は孔径2nm~50nmの細孔を意味し、マクロ細孔(Macropores)は孔径>50nmの細孔を意味する。本願の文脈において、「マイクロ細孔」という用語が存在する場合、いずれも孔径<2nmの細孔を指し、「メソ細孔」という用語が存在する場合、いずれも孔径2nm~50nmの細孔を指し、「マクロ細孔」という用語が存在する場合、いずれも孔径>50nmの細孔を指す。本願の文脈において、「より大きな細孔」及び「より小さな細孔」という用語は、相対的な概念を示す。
【0050】
二次電池は充電式電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池が放電した後に充電する方式で活性材料を活性化して使用を継続できる電池である。一般的に、二次電池は正極シート、負極シート、セパレータ及び電解質を含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極シートと負極シートとの間で往復して挿入及び脱離する。セパレータは正極シートと負極シートとの間に設置され、主に正負極の短絡を防止する役割を果たすと同時に、活性イオンを通過させることができる。電解質は、正極シートと負極シートとの間で活性イオンを伝導する役割を果たす。現在、二次電池は水力、火力、風力及び太陽光発電所等のエネルギー貯蔵電源システム、さらには電動工具、電動自転車、電動オートバイ、電気自動車、軍事装備、航空宇宙等の複数の分野に広く応用されている。
【0051】
二次電池の応用及び普及に伴い、そのエネルギー密度、耐用年数及びレート特性にますます注目が集まっている。負極活物質の特性は、二次電池のエネルギー密度、耐用年数及び安全性をある程度決定することができる。黒鉛(天然黒鉛、合成黒鉛を含む)は二次電池における最も一般的な負極活性材料であるが、その理論容量は372mAh/gに過ぎず、エネルギー密度を向上させる余地が非常に限られており、また黒鉛は層間距離が小さく、レート特性の向上も制限され、ハイレート特性に対する二次電池の実際のニーズを満たすことができない。
【0052】
ハードカーボンとは、黒鉛化されにくい炭素であり、2500℃以上の高温でも黒鉛化されにくい。ハードカーボンは構造が複雑であり、黒鉛微結晶構造を呈する炭素材料であり、黒鉛微結晶は不規則に配列され、且つ黒鉛微結晶層シートの数が少なく且つ層の端面が架橋する可能性がある。ハードカーボンの構造はまた無定形領域を含み、無定形領域は主に細孔、欠陥、sp3混成の炭素原子、炭素鎖、いくつかの官能基などを含む。従って、ハードカーボンの構造には複数の活性イオン貯蔵部位が存在する可能性があり、例えば、黒鉛微結晶の表面、黒鉛微結晶の層間、黒鉛微結晶層シートの端面及び細孔等である。
【0053】
黒鉛に比べて、ハードカーボン層の間隔はより大きく、細孔構造がより豊富であり、従って、活性イオンの貯蔵、迅速な挿入及び脱離に有利であり、それにより二次電池は優れた低温特性、出力特性及び安全性を有することができ、特に動力電池の分野において、ハードカーボンは独特の利点を有する。しかしながら、現在商品化されているハードカーボンの多くは低容量型の一般的なハードカーボンに属し、容量及び初期クーロン効率が低く、例えば容量は一般的に200mAh/gから280mAh/gの間であり、初期クーロン効率は一般的に80%未満であり、実際の応用においてかなり制限を受ける。
【0054】
従って、どのようにしてハードカーボンの容量及び初期クーロン効率を同時に向上させるかは、依然として早急に解決されるべき技術的課題である。
【0055】
これに鑑みて、本願の実施形態の第1態様は、高い容量及び初期クーロン効率を両立させることができ、かつ二次電池が高いエネルギー密度、長い耐用年数及び優れたレート特性を兼ね備えることができるハードカーボンを提供する。
【0056】
本願の実施形態の第1態様に係るハードカーボンは、温度77Kで測定した窒素吸着等温線において、窒素相対圧P/P0が10-8から0.035の間の窒素吸着総量はV1cm3(STP)/gであり、窒素相対圧P/P0が0.035から1の間の窒素吸着総量はV2cm3(STP)/gであり、V2/V1≦0.20であり、且つ20≦V1≦150の要件を満たし、Pは窒素の絶対圧を表し、P0は窒素の温度77Kでの飽和蒸気圧を表す。
【0057】
上記Kは絶対温度の単位ケルビンであり、77Kは液体窒素の温度を示す。
【0058】
気体分子が固体材料の表面に移動すると、ガス分子と固体材料の表面分子との間の相互作用(例えば、ファンデルワールス力又は化学結合等)により、ガス分子は固体の表面に一時的に留まり、固体材料の表面における気体分子の濃度を増加させ、このような現象は固体材料表面における気体分子の吸着と呼ばれる。気体を吸着質と称し、固体材料を吸着剤と称することができる。吸着等温線は、特定の温度において2つの相の界面(例えば、気体と固体材料との界面)で進行する吸着質(例えば、気体)の吸着プロセスが平衡に達した時の、吸着質の2つの相における濃度間の関係曲線のことである。固体材料のチャネル構造は異なり、吸着等温線のタイプも異なる。
図1は、固体材料の6つの一般的な吸着等温線のタイプを示す。
【0059】
本願のハードカーボンは、温度77Kで測定した窒素吸着等温線において、窒素相対圧P/P0が10-8から0.035の間の窒素吸着総量V1cm3(STP)/gと、窒素相対圧P/P0が0.035から1の間の窒素吸着総量V2cm3(STP)/gが、V2/V1≦0.20の要件を満たし、従って、本願のハードカーボンの吸着プロセスは、主に相対圧が小さい段階で、即ちP/P0が10-8から0.035の間にある段階で発生する。同時に、本願のハードカーボンは窒素相対圧P/P0が10-8から0.035である時の窒素吸着総量V1が、20cm3(STP)/gから150cm3(STP)/gの間にある。
【0060】
現在商品化されているハードカーボンに比べて、本願が提供するハードカーボンは高い容量及び初期クーロン効率を両立させる。メカニズムはまだ明確ではないが、発明者らは可能性がある一つの理由として、本願のハードカーボン内部の欠陥数が適切であり、且つ独特なチャネル構造を有し、活性イオンの貯蔵部位が多く且つその利用率も高く、そのため、本願のハードカーボン構造は活性イオンの挿入、貯蔵及び脱離を容易に行うことができ、それにより本願のハードカーボンは高い容量及び初期クーロン効率を両立させることができると推測した。
【0061】
現在、商品化されているハードカーボンは、温度77Kで測定した窒素吸着等温線において、窒素相対圧P/P0が10-8から0.035の間の窒素吸着総量V1cm3(STP)/gと、窒素相対圧P/P0が0.035から1の間の窒素吸着総量V2cm3(STP)/gが、いずれもV2/V1≦0.20の要件を満たさない。可能性のある理由として、商品化されたハードカーボンは内部欠陥が多く、チャネル構造が不合理で又はマイクロ細孔構造が少なく、多くの活性イオン貯蔵部位を提供することができず、且つ唯一の活性イオン貯蔵部位の利用率も低いことである。また、商品化されたハードカーボンは高い含有量のメソ細孔又はマクロ細孔構造を含む可能性があり、それによりハードカーボン内部の電解液浸潤領域の占める割合が高くなる。発明者がさらに研究した結果、吸着等温線におけるV2とV1との比が高いほど、ハードカーボン内部の電解液浸潤領域の占める割合が高くなり、ハードカーボンの初期不可逆容量の損失が高くなり、初期クーロン効率が低くなることを発見した。
【0062】
また、ハードカーボンの窒素相対圧P/P0が10-8から0.035の時の窒素吸着総量が20cm3(STP)/g未満であると、ハードカーボンのチャネル構造が発達せず且つ比表面積が低すぎて、ハードカーボンが多くの活性イオン貯蔵部位を提供することができず、それによりハードカーボンの比容量が低い。同時に、ハードカーボンのチャネル構造が発達せず、貯蔵部位に貯蔵された活性イオンが脱離しにくく、それによりハードカーボンの初期クーロン効率も低い。
【0063】
ハードカーボンの窒素相対圧P/P0が10-8から0.035の時の窒素吸着総量が150cm3(STP)/gを超えると、ハードカーボン構造が脆くなり、それにより内部のチャネル構造が崩壊して細孔の合併が生じやすく、ハードカーボン内部のメソ細孔又はマクロ細孔構造が占める割合が高くなりすぎて、電解液の大量浸透が容易に生じる。従って、ハードカーボンは多くの活性イオン貯蔵部位を提供し且つ高い比容量を提供することができるが、ハードカーボンの構造が複雑すぎることで活性イオン貯蔵部位に貯蔵された一部の活性イオンが脱離できなくなり、ハードカーボンの初期クーロン効率が低下する。
【0064】
本願が提供するハードカーボンは窒素相対圧P/P0が10-8から0.035の間の窒素吸着総量V1cm3(STP)/gが、20≦V1≦150の要件を満たす。V1が大きいほど、ハードカーボンが提供する活性イオン貯蔵部位が多くなり、ハードカーボンの容量が大きくなる。いくつかの実施例において、好ましくは、30≦V1≦150、40≦V1≦150、50≦V1≦150、60≦V1≦150、70≦V1≦150、80≦V1≦150、90≦V1≦150、100≦V1≦150、110≦V1≦150、120≦V1≦150、30≦V1≦140、40≦V1≦140、50≦V1≦140、60≦V1≦140、70≦V1≦140、80≦V1≦140、90≦V1≦140、100≦V1≦140、110≦V1≦140、120≦V1≦140、30≦V1≦130、40≦V1≦130、50≦V1≦130、60≦V1≦130、70≦V1≦130、80≦V1≦130、90≦V1≦130、100≦V1≦130、110≦V1≦130、30≦V1≦120、40≦V1≦120、50≦V1≦120、60≦V1≦120、70≦V1≦120、80≦V1≦120、90≦V1≦120、100≦V1≦120、110≦V1≦120である。V1が適切な範囲内にある場合、本願が提供するハードカーボンはより高い容量及び初期クーロン効率を兼ね備えることができる。
【0065】
本願が提供するハードカーボンは、窒素相対圧P/P0が10-8から0.035の間の窒素吸着総量V1cm3(STP)/gと、窒素相対圧P/P0が0.035から1の間の窒素吸着総量V2cm3(STP)/gが、V2/V1≦0.20の要件を満たす。該範囲内で、ハードカーボンは適切なチャネル構造を有することができ、より多くの活性イオン貯蔵部位を提供することができ、且つ活性イオン貯蔵部位の利用率も高い。同時に、ハードカーボン内部のチャネル構造はマイクロ細孔構造を主とし、メソ細孔又はマクロ細孔構造の含有量が適切であり、それによりハードカーボン内部の電解液浸潤領域を減少させることができる。いくつかの実施例において、V2/V1は、≦0.19、≦0.18、≦0.17、≦0.16、≦0.15、≦0.14、≦0.13、≦0.12、≦0.11、≦0.10であってもよい。同時に、V2/V1は低すぎてもならず、この場合には活性イオン貯蔵部位に貯蔵された活性イオンが脱離する難度が高い。いくつかの実施例において、好ましくは、0.05≦V2/V1≦0.20、0.06≦V2/V1≦0.20、0.08≦V2/V1≦0.20、0.10≦V2/V1≦0.20、0.12≦V2/V1≦0.20、0.14≦V2/V1≦0.20、0.16≦V2/V1≦0.20、0.05≦V2/V1≦0.18、0.06≦V2/V1≦0.18、0.08≦V2/V1≦0.18、0.10≦V2/V1≦0.18、0.12≦V2/V1≦0.18、0.14≦V2/V1≦0.18、0.16≦V2/V1≦0.18、0.05≦V2/V1≦0.16、0.06≦V2/V1≦0.16、0.08≦V2/V1≦0.16、0.10≦V2/V1≦0.16、0.12≦V2/V1≦0.16、0.14≦V2/V1≦0.16である。V2/V1が適切な範囲内にある場合、ハードカーボンはより高い容量及びより高い初期クーロン効率を兼ね備える。
【0066】
いくつかの実施例において、0<V2≦30である。V2が高い場合、ハードカーボン内部の電解液浸潤領域が占める割合が高く、ハードカーボンの初期不可逆容量の損失が増加する。同時に、V2は低すぎてもならない。V2が低い場合、活性イオンが迅速に脱離及び挿入しにくく、ハードカーボンのレート特性が低下する可能性がある。好ましくは、1≦V2≦30、2≦V2≦30、3≦V2≦30、4≦V2≦30、5≦V2≦30、6≦V2≦30、7≦V2≦30、8≦V2≦30、9≦V2≦30、10≦V2≦30、1≦V2≦25、2≦V2≦25、3≦V2≦25、4≦V2≦25、5≦V2≦25、6≦V2≦25、7≦V2≦25、8≦V2≦25、9≦V2≦25、10≦V2≦25、1≦V2≦20、2≦V2≦20、3≦V2≦20、4≦V2≦20、5≦V2≦20、6≦V2≦20、7≦V2≦20、8≦V2≦20、9≦V2≦20、10≦V2≦20である。V2が適切な範囲内にある場合、ハードカーボンはより高い容量及びより高い初期クーロン効率を兼ね備え、同時に優れたレート特性を有する。
【0067】
いくつかの実施例において、前記ハードカーボンは0.08≦V2/V1≦0.20で、70≦V1≦150であり、且つ6≦V2≦30である要件を同時に満たす。この時、ハードカーボンはより多くの活性イオン貯蔵部位を提供することができ、それにより高い容量を有するようになる。同時にハードカーボン内部は適切なチャネル構造を有し、活性イオンの挿入及び貯蔵を容易にするだけでなく、活性イオンの脱離を阻害せず、活性イオン貯蔵部位の利用率も高い。また、ハードカーボン内部のチャネル構造はマイクロ細孔構造を主とし、メソ細孔又はマクロ細孔構造の含有量が適切であり、それによりハードカーボン内部の電解液浸潤領域を減少させることができる。従って、ハードカーボンはより高い容量及びより高い初期クーロン効率を兼ね備え、同時に優れたレート特性を有する。いくつかの実施例において、前記ハードカーボンは0.08≦V2/V1≦0.20で、85≦V1≦140であり、且つ7≦V2≦25である要件を同時に満たす。
【0068】
いくつかの実施例において、前記ハードカーボンのラマンスペクトルにおいて、Id/Igは1.20~1.32であり、Idは1350±50cm-1のラマンシフト範囲におけるdバンドピーク強度を表し、Igは1580±50cm-1のラマンシフト範囲におけるgバンドピーク強度を表し、レーザー波長λは532nmである。
【0069】
dバンドピークは炭素原子の格子欠陥に由来し、gバンドピークはsp2炭素原子の面内振動に由来する。ハードカーボン構造において、dバンドピーク強度はハードカーボン構造の欠陥の数に関連し、gバンドピーク強度はハードカーボン構造における黒鉛微結晶の数に関連し、従って、Id/Igはハードカーボン構造の秩序度を特徴付けることができる。Id/Igが小さいほど、ハードカーボン構造の秩序度が高くなり、炭素面の完全性が高くなって、ハードカーボンの初期クーロン効率が向上するが、容量が低下し、レート特性が低下する。本願のハードカーボンはId/Igが1.20~1.32である要件を満たし、この時に、ハードカーボン構造の秩序度は適切であり、それによりハードカーボンはより高い容量及びより高い初期クーロン効率を兼ね備え、さらにはより優れたレート特性を有する。
【0070】
いくつかの実施例において、前記ハードカーボンのX線回折スペクトルにおいて、002ピークに対応する2θの値は22°~24°の間である。
【0071】
いくつかの実施例において、前記ハードカーボンの体積粒径Dv50は2μm~15μmであり、好ましくは4μm~8μmである。
【0072】
いくつかの実施例において、前記ハードカーボンの体積粒径Dv90は5μm~25μmであり、好ましくは8μm~15μmである。
【0073】
いくつかの実施例において、前記ハードカーボンは、体積粒径Dv50が4μm~8μmであり、且つ体積粒径Dv90が8μm~15μmである要件を同時に満たす。
【0074】
ハードカーボンの体積粒径Dv50及び/又はDv90が適切な範囲内にある場合、活性イオン及び電子の輸送特性を向上させることに有利であり、それにより二次電池のレート特性をさらに向上させる。
【0075】
いくつかの実施例において、前記ハードカーボンの比表面積は5m2/g以下である。好ましくは、前記ハードカーボンの比表面積は0.1m2/g~5m2/g、0.5m2/g~5m2/g、1m2/g~5m2/g、1.5m2/g~5m2/g、2m2/g~5m2/g、2.5m2/g~5m2/g、3m2/g~5m2/g、3.5m2/g~5m2/g、4m2/g~5m2/g、0.5m2/g~4m2/gm2/g、1m2/g~4m2/g、1.5m2/g~4m2/g、2m2/g~4m2/g、2.5m2/g~4m2/g、3m2/g~4m2/g、0.5m2/g~3m2/g、1m2/g~3m2/g、1.5m2/g~3m2/g、2m2/g~3m2/gであってもよい。低い比表面積はハードカーボンの表面活性を低下させ、固体電解質相間界面(SEI膜)の形成を減少させることに役立ち、それによりハードカーボン及び二次電池の初期クーロン効率を向上させ、より高い比表面積は活性イオンの輸送を加速することに役立ち、それにより二次電池のレート特性を向上させる。ハードカーボンの比表面積が適切な範囲内にある場合、ハードカーボンはより高い容量及び初期クーロン効率を兼ね備えることができ、さらにはより良好なレート特性を有する。また、ハードカーボンの比表面積が適切な範囲内にある場合、ハードカーボンとバインダーとの間にさらに強い結合力を有することができ、それにより負極シートの凝集力及び接着力を向上させることができ、サイクル過程における負極シートの体積膨張を低下させ、二次電池はさらに良好なサイクル特性を有するようになる。
【0076】
いくつかの実施例において、前記ハードカーボンは、50000Nの作用力での圧粉密度が0.96g/cm3~1.05g/cm3である。ハードカーボンの圧粉密度が適切な範囲内にある場合、負極シートの圧粉密度を高めて、二次電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0077】
いくつかの実施例において、前記ハードカーボンのタップ密度は0.80g/cm3~0.95g/cm3である。ハードカーボンのタップ密度が適切な範囲内にある場合、負極シートの圧粉密度を高めて、二次電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0078】
本願において、ハードカーボンの温度77Kにおける窒素ガス吸着試験は、GB/T 21650.2-2008「水銀圧入法及び気体吸着法による固体材料の孔径分布及び気孔率の測定 第2部分:気体吸着法によるメソ細孔及びマクロ細孔の分析」を参照して行うことができる。例えば、米国Micromeritics社のASAP 2460型表面積及び孔径分析装置などの表面積及び孔径分析装置を用いて測定することができる。
【0079】
本願において、ハードカーボンの体積粒径Dv50、Dv90は本分野で公知の意味であり、これは材料の累積体積分布パーセントがそれぞれ50%、90%に達する時の対応する粒径を示し、本分野で公知の装置及び方法を使用して測定することができる。例えばGB/T 19077-2016粒度分布レーザー回折法を参照し、英国マルバーン社のMastersizer 2000E型レーザー粒度分析装置などのレーザー粒度分析装置を用いて容易に測定することができる。
【0080】
本願において、ハードカーボンの比表面積は本分野で公知の意味であり、本分野で公知の装置及び方法を使用して測定することができる。例えばGB/T 19587-2017を参照し、窒素吸着法による比表面積を分析する試験方法を用いて測定し、且つBET(Brunauer Emmett Teller)法で計算して得ることができ、窒素吸着法による比表面積を分析する試験は、米国Micromeritics社のASAP 3020型の表面積及び孔径分析装置で実施することができる。
【0081】
本願において、ハードカーボンの圧粉密度は本分野で公知の意味であり、本分野で公知の装置及び方法を使用して測定することができる。例えば、推奨標準GB/T24533-2009を参照し、電子圧力試験機(UTM7305型など)により測定することができる。例示的な試験方法は、1gのハードカーボン粉末を秤量し、底面積が1.327cm2の金型内に加え、5000kg(50000Nに相当)まで加圧し、30s保圧してから、圧力を解放して、10s保持し、50000Nの作用力下でのハードカーボンの圧粉密度を記録し且つ計算するものである。
【0082】
本願において、ハードカーボンのタップ密度は本分野で公知の意味であり、本分野で公知の装置及び方法を使用して測定することができる。例えば、GB/T 5162-2006を参照し、粉体タップ密度計(丹東百特BT-301など)を用いて測定することができる。
ハードカーボンの製造方法
【0083】
本願の実施形態の第2態様は、炭素源を提供するステップS10と、前記炭素源を不活性雰囲気において、第1温度T1でt1時間熱処理して、第1中間生成物を得るステップS20と、得られた第1中間生成物を大気雰囲気において、第2温度T2でt2時間熱処理して、第2中間生成物を得るステップS30と、得られた第2中間生成物を不活性雰囲気において、第3温度T3でt3時間炭化処理し、ハードカーボンを得るステップS40と、を含むハードカーボンの製造方法を提供する。前記ハードカーボンは、温度77Kで測定した窒素吸着等温線において、窒素相対圧P/P0が10-8から0.035の間の窒素吸着総量はV1cm3(STP)/gであり、窒素相対圧P/P0が0.035から1の間の窒素吸着総量はV2cm3(STP)/gであり、V2/V1≦0.20であり、且つ20≦V1≦150の要件を満たし、Pは窒素の絶対圧を表し、P0は窒素の温度77Kでの飽和蒸気圧を表す。
【0084】
本願の実施形態の第2態様の製造方法は、本願の実施形態の第1態様におけるいずれかの実施例のハードカーボンを製造することができる。
【0085】
いくつかの実施例において、T1<T3であり、T2<T3である。
【0086】
いくつかの実施例において、T1≦T2である。好ましくは、T1<T2である。
【0087】
発明人らは、前記炭素源に対して不活性雰囲気における低温熱処理プロセス、大気雰囲気における二次低温熱処理プロセス及び不活性雰囲気における高温炭化処理プロセスを同時に実施することで、得られたハードカーボンが高い容量及び高い初期クーロン効率を兼ね備えることができるとともに、従来の商品化されたハードカーボンに比べて、本願の製造方法によって得られたハードカーボンの容量及び初期クーロン効率がいずれも顕著に向上することを発見した。
【0088】
本願が提供するハードカーボンの製造方法はシンプルであり、商品化生産に適する。
【0089】
本願が提供するハードカーボンの製造方法は導電剤を追加する必要がなく、他の助剤を追加する必要もなく、本願が提供する製造方法によって得られたハードカーボンはより低いヘテロ原子含有量を有し、ヘテロ原子の活性イオンに対する不可逆的な消耗をより減少させることができる。
【0090】
本願が提供するハードカーボンの製造方法は、炭素源を不活性雰囲気及び低い第1温度で熱処理することで、炭素源のフレーム構造をより良好に安定させることができ、且つ後続の二次低温熱処理及び高温炭化処理による孔形成プロセスのために安定した炭素骨格構造を提供する。第1中間生成物を空気雰囲気及び低い第2温度で二次低温熱処理し、炭素骨格構造の中に適切なチャネル構造を形成することができ、後続の高温炭化処理による二次孔形成プロセスを容易にする。第2中間生成物を不活性雰囲気及び高い第3温度で高温炭化処理することで、得られたハードカーボンの秩序度を向上させることができる。
【0091】
不活性雰囲気の種類を特に限定せず、いくつかの実施例において、前記不活性雰囲気は窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気のうちの1つ以上から選択される。
【0092】
いくつかの実施例において、第1温度T1は300℃以下である。第1温度T1が高い場合、炭素源を熱処理した後に形成される、適切なチャネル構造に転換されることに適した骨格構造の大量分解が生じやすく、それにより後続の熱処理プロセスにおいてチャネル構造を形成する適切な骨格構造が欠如し、ハードカーボンの温度77Kで測定された窒素吸着等温線においてV1及びV2がいずれも小さくなり、ハードカーボンの容量が低下する。さらに、第1温度T1は低すぎても好ましくない。第1温度T1が低い場合、炭素源熱処理後の架橋程度が低く、形成された骨格構造が脆く、安定性も低く、空気雰囲気中で低温熱処理してチャネル構造を導入する時に、脆い骨格構造が崩壊しハードカーボンのチャネル構造が減少しやすく、ハードカーボンの温度77Kで測定された窒素吸着等温線に表れるV1が小さくなる。同時に骨格構造が崩壊することにより細孔が合併し、サイズが大きい細孔の数及び割合が増加して、ハードカーボンの容量及び初期クーロン効率がさらに低下する。
【0093】
いくつかの実施例において、第1温度T1は、180℃~300℃、200℃~300℃、220℃~300℃、240℃~300℃、260℃~300℃、280℃~300℃、180℃~280℃、200℃~280℃、220℃~280℃、240℃~280℃、260℃~280℃、180℃~260℃、200℃~260℃、220℃~260℃、240℃~260℃、180℃~240℃、200℃~240℃、220℃~240℃、180℃~220℃であってもよい。第1温度T1が適切な範囲内にある場合、適切なチャネル構造を導入することに適し、且つ安定していて崩壊しにくい骨格構造を多く保持することができる。
【0094】
いくつかの実施例において、熱処理時間t1は4h~60hである。当業者は、採用する第1温度に応じて、上記範囲内で適切な熱処理時間を選択することができ、例えば、第1温度が高い場合、熱処理時間を適切に短縮することができる。熱処理時間は炭素源の種類によってもいくらか異なり、当業者は実際の状況に応じて調整することができる。
【0095】
いくつかの実施例において、第2温度T2は400℃未満である。第2温度T2が高すぎる場合、ステップS20で得られた炭素骨格材料と空気との反応速度が速く、空気が材料粒子の内部に十分に拡散せず、孔形成プロセスで形成されたチャネル構造が粒子の表面領域に偏って集中してしまう。また、粒子表面領域に細孔が過度に形成された後のチャネル構造は崩壊して細孔の合併が生じやすく、サイズが大きい細孔の数及び割合が増加して、ハードカーボンの容量及び初期クーロン効率がいずれも低下する。さらに、第2温度T2は低すぎても好ましくない。第2温度T2が低い場合、ステップS20で得られた炭素骨格材料と空気との反応速度が遅く、孔形成作用が微弱であり、それによりハードカーボンの容量が低下する。
【0096】
いくつかの実施例において、第2温度T2は200℃~395℃、220℃~395℃、240℃~395℃、260℃~395℃、280℃~395℃、300℃~395℃、320℃~395℃、340℃~395℃、360℃~395℃、200℃~380℃、220℃~380℃、240℃~380℃、260℃~380℃、270℃~350℃、270℃~380℃、280℃~380℃、300℃~380℃、320℃~380℃、340℃~380℃、360℃~380℃、290℃~380℃、290℃~350℃、200℃~360℃、220℃~360℃、240℃~360℃、260℃~360℃、280℃~360℃、300℃~360℃、320℃~360℃、200℃~340℃、220℃~340℃、240℃~340℃、260℃~340℃、280℃~340℃、300℃~340℃、200℃~320℃、220℃~320℃、240℃~320℃、260℃~320℃、280℃~320℃、200℃~300℃、220℃~300℃、240℃~300℃、260℃~300℃、200℃~280℃、220℃~280℃、240℃~280℃、200℃~260℃、220℃~260℃、200℃~240℃であってもよい。第2温度T2が適切な範囲内にある場合、ステップS20で得られた炭素骨格材料粒子は、内側から外側へ向かって適切で且つ豊富なチャネル構造を形成することができ、活性イオン及び電子の輸送性能を向上させ、それによりハードカーボンの容量及び初期クーロン効率をより向上させる。
【0097】
いくつかの実施例において、熱処理時間t2は1h~12hである。当業者は、採用する第2温度に応じて、上記範囲内で適切な熱処理時間を選択することができ、例えば、第2温度が高い場合、熱処理時間を適切に短縮することができる。熱処理時間は炭素源の種類によってもいくらか異なり、当業者は実際の状況に応じて調整することができる。
【0098】
いくつかの実施例において、好ましくは、T2≦270℃である場合、t2≧10hであり、さらに、200℃≦T2≦270℃である場合、10h≦t2≦12hである。
【0099】
いくつかの実施例において、好ましくは、270℃<T2<400℃である場合、t2≦8hであり、さらに、270℃<T2<400℃である場合、1h≦t2≦8hである
【0100】
いくつかの実施例において、270℃≦T2≦380℃であり、且つ1h≦t2≦4hである。両者が上記範囲内の要件を満たす場合、ハードカーボンの容量及び初期クーロン効率をより向上させることができる。
【0101】
いくつかの実施例において、第3温度T3は1000℃~1600℃である。第3温度T3が低い場合、ステップS30で得られた第2中間生成物構造における大量の極めて微小な細孔構造が残されるが、これらの極めて微小な細孔構造は強度が低く、後続の充放電プロセスにおいて極めて容易に破壊され活性イオン貯蔵部位の利用率を低下させ、それによりハードカーボンの容量及び初期クーロン効率がいずれも低下する。さらに、第3温度T3は低すぎても好ましくない。第3温度T3が高い場合、炭化処理プロセスで形成された黒鉛微結晶構造に微細な運動が発生しやすく、形成されたチャネル構造を強制的に調整するようになり、それによりチャネル構造が大幅に減少し、ハードカーボンの容量が低下する。
【0102】
いくつかの実施例において、第3温度T3は、1100℃~1600℃、1200℃~1600℃、1300℃~1600℃、1400℃~1600℃、1500℃~1600℃、1000℃~1500℃、1100℃~1500℃、1200℃~1500℃、1300℃~1500℃、1400℃~1500℃、1000℃~1400℃、1100℃~1400℃、1200℃~1400℃、1300℃~1400℃、1000℃~1300℃、1000℃~1350℃、1100℃~1300℃、1200℃~1300℃、1000℃~1200℃、1100℃~1200℃、1000℃~1100℃である。第3温度T3が適切な範囲内にある場合、ハードカーボンの秩序度をより良好に向上させることができ、ハードカーボンは高い容量及び高い初期クーロン効率を兼ね備えるようになる。
【0103】
いくつかの実施例において、熱処理時間t3は1h~12hである。当業者は、採用する第3温度に応じて、上記範囲内で適切な熱処理時間を選択することができ、例えば、第3温度が高い場合、熱処理時間を適切に短縮することができる。熱処理時間は炭素源の種類によってもいくらか異なり、当業者は実際の状況に応じて調整することができる。
【0104】
いくつかの実施例において、ステップS20における昇温速度は、1℃/min~10℃/minであってもよい。しかし本願はこれに限定されず、昇温速度は実際の状況に応じて調整することができる。例えば、昇温速度は1℃/min~9℃/min、1℃/min~8℃/min、1℃/min~7℃/min、1℃/min~6℃/min、1℃/min~5℃/min、1℃/min~4℃/min、1℃/min~3℃/min、1℃/min~2℃/min、2℃/min~10℃/min、3℃/min~9℃/min、4℃/min~8℃/min、5℃/min~7℃/minである。
【0105】
いくつかの実施例において、ステップS30における昇温速度は、1℃/min~5℃/minであってもよい。しかし本願はこれに限定されず、昇温速度は実際の状況に応じて調整することができる。例えば、昇温速度は1℃/min~4℃/min、1℃/min~3℃/min、1℃/min~2℃/min、2℃/min~5℃/min、2℃/min~4℃/min、2℃/min~3℃/min、3℃/min~5℃/min、3℃/min~4℃/min、4℃/min~5℃/minである。
【0106】
いくつかの実施例において、ステップS40における昇温速度は、1℃/min~10℃/minである。しかし本願はこれに限定されず、昇温速度は実際の状況に応じて調整することができる。例えば、昇温速度は1℃/min~9℃/min、1℃/min~8℃/min、1℃/min~7℃/min、1℃/min~6℃/min、1℃/min~5℃/min、1℃/min~4℃/min、1℃/min~3℃/min、1℃/min~2℃/min、2℃/min~10℃/min、3℃/min~9℃/min、4℃/min~8℃/min、5℃/min~7℃/minである。
【0107】
いくつかの実施例において、ステップS20の後、ステップS30の前に、前記製造方法はさらに、ステップS20で得られた第1中間生成物を破砕、例えばmmオーダーに破砕するステップS21を含み、この時に凝集した第1中間生成物を破砕して、後続処理時に第1中間生成物が空気と十分に接触できることを保証する。なお、いくつかの実施例において、該ステップは省略されてもよい。
【0108】
いくつかの実施例において、ステップS30の後、ステップS40の前に、前記製造方法はさらに、ステップS30で得られた第2中間生成物を破砕するステップS31を含む。例えば、いくつかの実施例において、前記第2中間生成物の粉砕後の体積粒径Dv50は2μm~15μmであり、好ましくは4μm~8μmである。いくつかの実施例において、前記第2中間生成物の粉砕後の体積粒径Dv90は5μm~25μmであり、好ましくは8μm~15μmである。いくつかの実施例において、前記第2中間生成物の粉砕後の体積粒径Dv50は4μm~8μmであり、且つ体積粒径Dv90は8μm~15μmである。なお、いくつかの実施例において、該ステップは省略されてもよい。
【0109】
いくつかの実施例において、前記製造方法はさらに、ステップS40で得られたハードカーボンを破砕し、この時に凝集したハードカーボンを破砕することにより、必要な粒径の要件を満たし、負極ペースト及び負極シートを製造しやすいようにするステップS50を含む。なお、いくつかの実施例において、該ステップは省略されてもよい。
【0110】
本願は前記炭素源の種類を特に制限せず、いくつかの実施例において、前記炭素源はポリマー、樹脂、バイオマス材料のうちの1つ以上を含む。
【0111】
例として、前記ポリマーはポリアニリン、ポリピロールのうちの1つ以上を含む。
【0112】
例として、前記樹脂はフェノール樹脂、エポキシ樹脂のうちの1つ以上を含む。好ましくは、前記フェノール樹脂はフェノールホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキノン-ホルムアルデヒド樹脂、フェノールフルフラール樹脂のうちの1つ以上を含む。
【0113】
例として、前記バイオマス材料はデンプン、グルコース、フルクトース、マルトース、スクロース、セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうちの1つ以上を含む。好ましくは、前記デンプンは穀類デンプン、イモ類デンプン、豆類デンプンのうちの1つ以上を含む。前記穀類デンプンの例はトウモロコシデンプン、米デンプン、粟デンプン、コーリャンデンプン、小麦デンプン、エンバクデンプン、ソバデンプン、ライ麦デンプンのうちの1つ以上を含むことができるがこれらに限定されず、前記イモ類デンプンの例はキャッサバデンプン、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、ヤマイモデンプン、サトイモデンプンのうちの1つ以上を含むことができるがこれらに限定されず、前記豆類デンプンの例は緑豆デンプン、ソラマメデンプン、エンドウデンプン、ササゲデンプンのうちの1つ以上を含むことができるがこれらに限定されない。
【0114】
好ましくは、前記炭素源はバイオマス材料から選択される。さらに、前記炭素源はデンプン、グルコース、フルクトース、マルトース、スクロース、セルロース、ヘミセルロース、リグニンのうちの1つ以上から選択される。上記バイオマス材料はヘテロ原子(O及びH以外の原子)の種類が少なく、炭素元素の含有量が高く、且つ価格が低く、ヘテロ原子のハードカーボン製造プロセスに対する影響を回避することができる。また、上記バイオマス材料は低い温度で架橋することができ、より安定した骨格構造を形成することに有利であり、それにより適切なチャネル構造を有するハードカーボンを得る。
【0115】
本願において、前記バイオマス材料は市販のままでもよく、植物から抽出して得られるものでもよい。
【0116】
いくつかの実施例において、前記ハードカーボンの製造方法は、バイオマス材料、好ましくはデンプンを炭素源として提供するステップと、前記炭素源を不活性雰囲気において、300℃以下の温度で4h~60h熱処理して、第1中間生成物を得るステップと、得られた第1中間生成物を大気雰囲気において、400℃未満の温度で1h~12h熱処理して、第2中間生成物を得るステップと、得られた第2中間生成物を不活性雰囲気において、1000℃~1600℃の温度で1h~12h炭化処理し、ハードカーボンを得るステップと、を含む。
【0117】
いくつかの実施例において、前記ハードカーボンの製造方法は、バイオマス材料、好ましくはデンプンを炭素源として提供するステップと、前記炭素源を不活性雰囲気において、300℃以下の温度で4h~60h熱処理して、第1中間生成物を得るステップと、得られた第1中間生成物を大気雰囲気において、400℃未満の温度で1h~12h熱処理して、第2中間生成物を得るステップと、得られた第2中間生成物を体積粒径Dv50が2μm-15μm及び/又はDv90が5μm-25μmになるまで粉砕し、不活性雰囲気において、1000℃~1600℃の温度で1h~12h炭化処理し、ハードカーボンを得るステップと、を含む。
二次電池
【0118】
本願の実施形態の第3態様は、二次電池を提供する。本願は二次電池の種類は特に限定されず、例えば、二次電池はリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池等であってもよく、特に、二次電池はナトリウムイオン二次電池である。一般的に、二次電池は正極シート、負極シート及び電解質などを含む。二次電池の充放電過程において、活性イオンは前記正極シートと前記負極シートとの間で往復して挿入及び脱離し、前記電解質は前記正極シートと前記負極シートとの間で活性イオンを伝導する役割を果たす。
[負極シート]
【0119】
いくつかの実施例において、前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる負極フィルム層と、を含む。例えば、前記負極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの面を有し、前記負極フィルム層は、前記負極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0120】
いくつかの実施例において、前記負極フィルム層は本願の実施形態の第1態様におけるいずれかの実施例に記載のハードカーボン、本願の実施形態の第2態様におけるいずれかの実施例に記載の方法で製造されたハードカーボンのうちの少なくとも1つを含む。
【0121】
いくつかの実施例において、前記負極フィルム層は、上記ハードカーボン以外の他の負極活物質をさらに含むことができる。いくつかの実施例において、前記他の負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない。前記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体、シリコン合金材料のうちの少なくとも1つを含むことができる。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物、スズ合金材料のうちの少なくとも1つを含むことができる。本願はこれらの材料に限定されず、二次電池の負極活物質として使用可能な公知の他の材料を使用することができる。
【0122】
いくつかの実施例において、前記負極フィルム層は、好ましくは負極導電剤をさらに含む。本願は前記負極導電剤の種類を特に制限せず、例として、前記負極導電剤は、超伝導カーボン、導電性黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つを含むことができる。いくつかの実施例において、前記負極フィルム層の総質量に対して、前記負極導電剤の質量パーセントは≦5%である。
【0123】
いくつかの実施例において、前記負極フィルム層は、好ましくは負極バインダーをさらに含む。本願は前記負極バインダーの種類を特に限定せず、例として、前記負極バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMAA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも1つを含むことができる。いくつかの実施例において、前記負極フィルム層の総質量に対して、前記負極バインダーの質量パーセントは≦5%である。
【0124】
いくつかの実施例において、前記負極フィルム層は、好ましくは他の助剤をさらに含む。例として、他の助剤は、増粘剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、PTCサーミスタ材料などを含むことができる。いくつかの実施例において、前記負極フィルム層の総質量に対して、前記他の助剤の質量パーセントは≦2%である。
【0125】
いくつかの実施例において、前記負極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔は、例として銅箔を用いることができる。複合集電体は、高分子基材層と、高分子基材層の少なくとも1つの表面に形成された金属材料層と、を含むことができる。例として、金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金のうちの少なくとも1つから選択することができる。例として、高分子基材層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選択することができる。
【0126】
前記負極フィルム層は、一般的に負極ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥させ、冷間プレスして形成される。前記負極ペーストは、一般的に負極活物質と、好ましくは導電剤、バインダー、その他の選択可能な助剤を溶媒に分散させ、均一に撹拌することにより形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0127】
前記負極シートは、前記負極フィルム層以外の付加機能層を排除するものではない。例えば、いくつかの実施形態において、本願に記載の負極シートは、前記負極集電体と前記負極フィルム層との間に挟まれ、前記負極集電体の表面に設けられる導電性プライマー層(例えば、導電剤及びバインダーからなる)をさらに含む。他のいくつかの実施形態において、本願に記載の負極シートは、前記負極フィルム層の表面を被覆する保護層をさらに含む。
[正極シート]
【0128】
いくつかの実施例において、前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極フィルム層と、を含む。例えば、前記正極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの面を有し、前記正極フィルム層は、前記正極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0129】
前記正極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔は、例としてアルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子基材層と、高分子基材層の少なくとも1つの表面に形成された金属材料層と、を含むことができる。例として、金属材料はアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金のうちの1つ以上から選択することができる。例として、高分子基材層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などから選択することができる。
【0130】
前記正極フィルム層は、一般的に正極活物質と、好ましくはバインダーと、好ましくは導電剤と、を含む。前記正極フィルム層は、一般的に正極ペーストを前記正極集電体に塗布し、乾燥させ、冷間プレスして形成される。前記正極ペーストは、一般的に正極活物質と、好ましくは導電剤、バインダー、その他の任意の成分を溶媒に分散させ、均一に撹拌することにより形成される。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されるものではない。例として、正極フィルム層に用いられるバインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ素含有アクリレート樹脂のうちの1つ以上を含むことができる。例として、正極フィルム層に用いられる導電剤は超伝導カーボン、導電性黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1つ以上を含む。
【0131】
前記正極活物質は、本分野で公知の二次電池用正極活物質を使用することができる。
【0132】
本願の二次電池がリチウムイオン電池である場合、前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びこれらの改質化合物のうちの1つ以上を含むことができる。リチウム遷移金属酸化物の例として、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、及びそれらの改質化合物のうちの1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例としてリン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合体、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合体、リン酸フェロマンガンリチウム、リン酸フェロマンガンリチウムと炭素との複合体、及びこれらの改質化合物のうちの1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。本願はこれらの材料に限定されず、リチウムイオン電池の正極活物質として使用可能な公知の他の材料を使用することができる。これらの正極活物質は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
いくつかの実施例において、二次電池のエネルギー密度をさらに増加させるために、リチウムイオン電池に用いられる正極活物質は、式(1)によって表されるリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうち1つ以上を含むことができ、
LiaNibCocMdOeAf (1)
式1において、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1であり、MはMn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti、Bのうちの1つ以上から選択され、AはN、F、S、Clのうちの1つ以上から選択される。
【0134】
例として、リチウムイオン電池に用いられる正極活物質は、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811)、LiNi0.85Co0.15Al0.05O2、LiFePO4、LiMnPO4のうちの1つ以上を含むことができる。
【0135】
本願の二次電池がナトリウムイオン電池であり、特に、ナトリウムイオン二次電池である場合、前記正極活物質はナトリウム含有遷移金属酸化物、ポリアニオン材料(例えばリン酸塩、フルオロリン酸塩、ピロリン酸塩、硫酸塩等)、プルシアンブルー系材料のうちの1つ以上を含むことができる。本願はこれらの材料に限定されず、ナトリウムイオン電池の正極活物質として使用可能な公知の他の材料を使用することができる。これらの正極活物質は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
例として、ナトリウムイオン電池に用いられる正極活物質は、NaFeO2、NaCoO2、NaCrO2、NaMnO2、NaNiO2、NaNi1/2Ti1/2O2、NaNi1/2Mn1/2O2、Na2/3Fe1/3Mn2/3O2、NaNi1/3Co1/3Mn1/3O2、NaFePO4、NaMnPO4、NaCoPO4、プルシアンブルー系材料、一般式がAaMb(PO4)cOxY3-xの材料(AはH+、Li+、Na+、K+、NH4
+のうちの1つ以上から選択され、Mは遷移金属カチオンであり、好ましくはV、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znのうちの1つ以上であってもよく、Yはハロゲンアニオンであり、好ましくはF、Cl、Brのうちの1つ以上であってもよく、0<a≦4、0<b≦2、1≦c≦3、0≦x≦2である)のうちの1つ以上を含むことができる。
【0137】
本願において、上記各正極活物質の改質化合物は、正極活物質に対してドーピング改質、又は表面被覆改質を行うことができる。
【0138】
本願の正極シートは、正極フィルム層以外の他の付加機能層を排除するものではない。例えば、いくつかの実施例において、本願の正極シートは、正極集電体と正極フィルム層との間に挟まれ、正極集電体の表面に設けられる導電性プライマー層(例えば、導電剤及びバインダーからなる)をさらに含む。他のいくつかの実施例において、本願の正極シートは、正極フィルム層の表面を被覆する保護層をさらに含む。
[電解質]
【0139】
本願は前記電解質の種類を特に限定せず、実際の必要に応じて選択することができる。例えば、前記電解質は、固体電解質及び液体電解質(すなわち電解液)のうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0140】
いくつかの実施例において、前記電解質は電解液を使用する。前記電解液は電解質塩と溶媒を含む。
【0141】
前記電解質塩の種類は具体的に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。
【0142】
本願の二次電池がリチウムイオン電池である場合、例として、前記電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiFSI)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiDFOB)、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)、リチウムビス(オキサラト)ジフルオロホスファナイト(LiDFOP)、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート(LiTFOP)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0143】
本願の二次電池がナトリウムイオン二次電池であり、特に、ナトリウムイオン二次電池である場合、前記電解質塩はヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF6)、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF4)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、ヘキサフルオロヒ酸ナトリウム(NaAsF6)、ビスフルオロスルホニルイミドナトリウム(NaFSI)、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドナトリウム(NaTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(NaTFS)、ナトリウムジフルオロオキサレートボレート(NaDFOB)、ナトリウムビスオキサレートボレート(NaBOB)、ナトリウムジフルオロホスフェート(NaPO2F2)、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸ナトリウム(NaDFOP)、ナトリウムテトラフルオロオキサレートホスフェート(NaTFOP)のうちの1つ以上を含むことができる。
【0144】
前記溶媒の種類は特に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。いくつかの実施例において、例として、前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1、4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、メチルスルフォニルメタン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)、ジエチルスルホン(ESE)のうちの1つ以上を含むことができる。
【0145】
いくつかの実施例において、前記電解液は、好ましくは添加剤をさらに含む。例えば、前記添加剤は、負極フィルム形成添加剤を含んでもよく、正極フィルム形成添加剤を含んでもよく、さらに、電池の特定の性能を改善することができる添加剤、例えば、電池の過充電特性を改善する添加剤、電池の高温特性を改善する添加剤、電池の低温出力特性を改善する添加剤などを含むことができる。
[セパレータ]
【0146】
電解液を用いた二次電池や、固体電解質を用いた二次電池において、さらにセパレータを含む。前記セパレータは前記正極シートと前記負極シートとの間に設置され、隔離の役割を果たす。本願は前記セパレータの種類を特に制限せず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0147】
いくつかの実施例において、前記セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンのうちの1つ以上から選択することができる。前記セパレータは単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。前記セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であっても異なっていてもよい。
【0148】
いくつかの実施例において、前記正極シート、前記セパレータ及び前記負極シートから捲回プロセス又はラミネートプロセスを経て電極アセンブリを製造することができる。
【0149】
いくつかの実施例において、前記二次電池は外装材を含むことができる。該外装材は、上記電極アセンブリ及び電解質を封入するために用いられる。
【0150】
いくつかの実施例において、前記二次電池の二次電池の外装材は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどの硬質ケースであってもよい。前記二次電池の外装材は、パウチ型ソフトパックなどのソフトパックであってもよい。前記ソフトパックの材質はプラスチック、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のうちの1つ以上であってもよい。
【0151】
本願は二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、角形、又は他の任意の形状であってもよい。
図2は一例としての角形構造の二次電池5である。
【0152】
いくつかの実施例において、
図3に示すように、外装材は、ハウジング51及びカバープレート53を含むことができる。ハウジング51は底板及び底板に接続された側板を含む。底板及び側板で囲まれて収容キャビティが形成される。ハウジング51は収容キャビティと連通する開口部を有し、カバープレート53は前記開口部をカバーして、前記収容キャビティを密閉するために用いられる。正極シート、負極シート及びセパレータから捲回プロセス又はラミネートプロセスを経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は前記収容キャビティに封入される。電解液は電極アセンブリ52内に含浸している。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は1つ又は複数であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0153】
本願の二次電池の製造方法は公知のものである。いくつかの実施例において、正極シート、セパレータ、負極シート及び電解液を組み立てて、二次電池を形成することができる。例として、正極シート、セパレータ、負極シートから捲回プロセス又はラミネートプロセスを経て電極アセンブリが形成され、電極アセンブリを外装材の内に入れて、乾燥させてから電解液を注入し、真空封入、静置、予備充電、整形などのプロセスを経て二次電池を得ることができる。
【0154】
本願のいくつかの実施例において、本願に係る二次電池を電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0155】
図4は一例としての電池モジュール4の概略図である。
図4に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5を電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並べて設置することができる。当然ながら、他の任意の方式で配置してもよい。また、該複数の二次電池5は締結具によって固定することができる。
【0156】
好ましくは、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有する外ケースをさらに備えてもよい。
【0157】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールはさらに電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0158】
図5及び
図6は一例としての電池パック1の概略図である。
図5及び
図6に示すように、電池パック1は、電池ケースと、電池ケース内に設置された複数の電池モジュール4と、を含むことができる。電池ケースは上筐体2及び下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3に被せて、且つ電池モジュール4を収容する密閉空間を形成するために用いられる。複数の電池モジュール4は、任意の方法で電池ケース内に配置することができる。
電力消費装置
【0159】
本願の実施形態はさらに、本願の二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置を提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として使用されてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵要素として使用されてもよい。前記電力消費装置はモバイル機器(例えば携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいがそれらに限定されない。
【0160】
前記電力消費装置は、二次電池、電池モジュール又は電池パックをその使用要件に応じて選択することができる。
【0161】
図7は、一例としての電力消費装置の概略図である。該電力消費装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。該電力消費装置の高出力及び高エネルギー密度の要件を満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0162】
別の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。該電力消費装置は、一般的に軽量薄型化が求められており、電源として二次電池を用いることができる。
実施例
【0163】
以下の実施例は、本願に開示された内容をより具体的に記載しているが、本願に開示された内容の範囲内でなされる種々の修正及び変更は当業者にとって明らかであることから、これらの実施例は例示に過ぎない。特に明記しない限り、以下の実施例で報告される全ての部、パーセント、比はいずれも質量を基準とし、且つ実施例で使用される全ての試薬は市販されているか、又は従来の方法に従って合成されたものであり、処理することなく直接使用することができ、実施例で使用される機器はいずれも市販のものである。
実施例1
【0164】
炭素源とするトウモロコシデンプンを管状炉に入れ、窒素ガス雰囲気下で5℃/minで300℃(第1温度t1)まで昇温した後に18h(熱処理時間t1)保温熱処理し、第1中間生成物を得る。窒素ガス雰囲気を大気雰囲気に変更し、その後3℃/minで300℃(第2温度T2)まで昇温した後に2h(熱処理時間T2)保温熱処理し、第2中間生成物を得る。得られた第2中間生成物を体積粒径Dv50が4μm~8μmで、且つDv90が8μm~15μmになるまで破砕し、さらに窒素ガス雰囲気下で5℃/minで1100℃(第3温度T3)まで昇温した後に12h(熱処理時間T3)保温熱処理し、ハードカーボンを得る。
実施例2~20
【0165】
ハードカーボンの製造方法は実施例1と同様であり、異なる点はハードカーボンの製造プロセスパラメータを調整したことであり、具体的には表1に示すとおりである。
比較例1
【0166】
炭素源とするトウモロコシデンプンを管状炉に入れ、窒素ガス雰囲気下で3℃/minで240℃まで昇温した後に36h保温熱処理して、第1中間生成物を得る。得られた第1中間生成物を体積粒径Dv50が4μm~8μmで、且つDv90が8μm~15μmになるまで粉砕し、さらに窒素ガス雰囲気下で5℃/minで1200℃まで昇温した後に12h保温熱処理し、ハードカーボンを得る。
比較例2
【0167】
炭素源とするトウモロコシデンプンを管状炉に入れ、大気雰囲気下で3℃/minで240℃まで昇温した後に36h保温熱処理して、第1中間生成物を得る。得られた第1中間生成物を体積粒径Dv50が4μm~8μmで、且つDv90が8μm~15μmになるまで粉砕し、さらに窒素ガス雰囲気下で5℃/minで1200℃まで昇温した後に12h保温熱処理し、ハードカーボンを得る。
比較例3
【0168】
炭素源とするトウモロコシデンプンを管状炉に入れ、大気雰囲気下で3℃/minで300℃まで昇温した後に2h保温熱処理して、第1中間生成物を得る。得られた第1中間生成物を体積粒径Dv50が4μm~8μmで、且つDv90が8μm~15μmになるまで粉砕し、さらに窒素ガス雰囲気下で5℃/minで1200℃まで昇温した後に12h保温熱処理し、ハードカーボンを得る。
比較例4~6
【0169】
ハードカーボンの製造方法は実施例1と同様であり、異なる点はハードカーボンの製造プロセスパラメータを調整したことであり、具体的には表1に示すとおりである。
【0170】
各実施例及び比較例で製造されたハードカーボン及びバインダーのスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、導電剤のカーボンブラックを質量比96.2:1.8:1.2:0.8で適量の溶媒脱イオン水中で十分に撹拌して混合し、均一な負極ペーストを形成する。負極ペーストを負極集電体の銅箔の表面に均一に塗布し、オーブンで乾燥させた後に使用に備える。エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合して有機溶媒を得た後、NaPF6を上記有機溶媒に溶解させて、濃度1mol/Lの電解液を調製した。その後、金属ナトリウムシートを対電極とし、ポリエチレン(PE)フィルムをセパレータとして、アルゴン保護のグローブボックス内でCR2430型ボタン電池を組み立てる。
【0171】
25℃で、まず10mA/gの電流密度で各実施例及び比較例で製造されたボタン電池を0Vまで定電流放電し、ボタン電池の第1サイクル放電容量を記録し、その後10mA/gの電流密度で2.0Vまで定電流充電し、ボタン電池の第1サイクル充電容量を記録する。
【0172】
ハードカーボンの比容量(mAh/g)=ボタン電池の第1サイクル充電容量/ハードカーボンの質量である。
【0173】
ハードカーボンの初期クーロン効率(%)=ボタン電池の第1サイクル充電容量/ボタン電池の第1サイクル放電容量×100%である。
【0174】
実施例1~20及び比較例1~6の試験結果を表2に示す。
【0175】
図8は実施例2で製造されたハードカーボンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、
図8からわかるように、本願の製造方法によって得られたハードカーボンは形態が規則的であり且つサイズが均一である。
【0176】
図9及び
図10はそれぞれ実施例2及び比較例1で製造されたハードカーボンの温度77Kで測定された窒素吸着等温線である。
【0177】
図9に示すように、実施例2で製造されたハードカーボンの温度77Kで測定された窒素吸着等温線は
図1におけるI型吸着等温線の要件を満たし、窒素相対圧P/P
0が10
-8から0.035の間の窒素吸着総量は117.1cm
3(STP)/gであり、窒素相対圧P/P
0が0.035から1の間の窒素吸着総量は15.5cm
3(STP)/gであり、且つV
2/V
1≦0.20の要件を満たす。表2の試験結果からわかるように、実施例2で製造されたハードカーボンの比容量は403mAh/gであり、初期クーロン効率は85.4%である。メカニズムはまだ明確ではないが、発明者らは可能性がある一つの理由として、実施例2で製造されたハードカーボンのチャネル構造が適切で且つ発達しており、ハードカーボンが多くの活性イオン貯蔵部位を提供することができ、それにより比容量が高く、同時に、ハードカーボンのチャネル構造が発達し、活性イオン貯蔵部位に貯蔵された活性イオンが脱離しやすく、それによりハードカーボンの初期クーロン効率も高いと推測した。
【0178】
比較例1はトウモロコシデンプンに対して不活性雰囲気において低温熱処理プロセスを経た後、不活性雰囲気において高温炭化処理を直接行った。
図10に示すように、比較例1で製造されたハードカーボンの温度77Kで測定された窒素吸着等温線は、
図1のタイプI吸着等温線の要件を満たさず、
図1のタイプII吸着等温線に類似しており、製造されたハードカーボンの温度77Kで測定された窒素吸着等温線はV
2/V
1≦0.20及び20≦V
1≦150の要件も満たさない。表2の試験結果からわかるように、比較例1で製造されたハードカーボンの比容量は251mAh/gに過ぎず、初期クーロン効率は77.7%に過ぎない。可能性のある理由は、比較例1で製造されたハードカーボンはマイクロ細孔構造が少なく、多くの活性イオン貯蔵部位を提供することができず、且つわずかに有する活性イオン貯蔵部位の利用率も低いことである。また、比較例1で製造されたハードカーボンにおいてサイズが大きい細孔(例えばメソ細孔又はマクロ細孔構造)が占める割合が高すぎて、ハードカーボンを二次電池に製造しても、ハードカーボン内部の電解液浸潤領域の割合が高すぎることで、活性イオン貯蔵部位の利用率をさらに低下させる。
【0179】
比較例2及び比較例3は、トウモロコシデンプンに対して大気雰囲気において低温熱処理プロセスを行った後、不活性雰囲気において高温炭化処理を直接行ったが、製造されたハードカーボンは高い比容量及び高い初期クーロン効率を兼ね備えることができない。可能性のある理由は、比較例2及び比較例3で製造されたハードカーボンもマイクロ細孔構造が少なく、多くの活性イオン貯蔵部位を提供することができず、且つわずかに有する活性イオン貯蔵部位の利用率も低いことである。また、比較例2及び比較例3で製造されたハードカーボンにおいてサイズが大きい細孔が占める割合が高すぎて、ハードカーボンを二次電池に製造しても、ハードカーボン内部の電解液浸潤領域の割合が高すぎることで、活性イオン貯蔵部位の利用率をさらに低下させる。
【0180】
比較例4~6は、トウモロコシデンプンに対して不活性雰囲気における低温熱処理プロセス、大気雰囲気における二次低温熱処理プロセス及び不活性雰囲気における高温炭化処理プロセスを同時に実施したが、熱処理温度及び熱処理時間が合理的ではなく、製造されたハードカーボンの吸着等温線はいずれもV2/V1≦0.20及び20≦V1≦150の要件を同時に満たすことができず、製造されたハードカーボンはいずれも高い比容量及び高い初期クーロン効率を兼ね備えることができない。
【0181】
比較例4はハードカーボンを製造する時に大気雰囲気中での熱処理時間が長すぎ、この時にハードカーボンに細孔が過度に形成され、ハードカーボンのチャネル構造が崩壊して細孔の合併が生じやすく、ハードカーボン内部のサイズが大きい細孔の数及び割合がいずれも増加する。ハードカーボンを二次電池に製造しても、ハードカーボン内部の電解液浸潤領域の割合が増加し、活性イオン貯蔵部位の利用率が低下し、ハードカーボンが高い比容量及び高い初期クーロン効率を兼ね備えることは困難である。
【0182】
比較例5はハードカーボンを製造する時に低すぎる第3温度T3を採用しており、製造されたハードカーボンに大量の極めて微小な細孔構造を含み、これらの極めて微小な細孔構造は強度が低く、破壊され又は崩壊して細孔の合併が生じやすく、ハードカーボン内部のサイズが大きい細孔の数及び割合がいずれも増加する。ハードカーボンを二次電池に製造しても、ハードカーボン内部の電解液浸潤領域の割合が増加し、活性イオン貯蔵部位の利用率が低下し、ハードカーボンが高い比容量及び高い初期クーロン効率を備えることは困難である。
【0183】
比較例6はハードカーボンを製造する時に高すぎる第3温度T3を採用しており、炭化処理プロセスで形成された黒鉛微結晶構造に微細な運動が発生しやすく、ハードカーボンのチャネル構造が強制的に調整され且つチャネル構造の数が大幅に減少し、ハードカーボンが高い比容量及び高い初期クーロン効率を兼ね備えることは困難である。
【0184】
実施例1~20の試験結果から、ハードカーボンの温度77Kで測定した窒素吸着等温線がV2/V1≦0.20及び20≦V1≦150の要件を同時に満たす場合、ハードカーボンは高い容量及び初期クーロン効率を兼ね備えることがわかる。実施例1~20の試験結果から、ハードカーボンの温度77Kで測定した窒素吸着等温線がさらに0.08≦V2/V1≦0.20、70≦V1≦150及び6≦V2≦30の要件を同時に満たす場合、ハードカーボンの容量及び初期クーロン効率がさらに改善されることがさらにわかる。
【0185】
なお、本願は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示に過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内で、技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術的範囲に包含される。また、本願の主旨を逸脱しない範囲で、当業者が想到できる各種の修正を実施形態に追加したものや、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も本願の範囲内に包含される。
【0186】
【0187】