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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ロータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20241213BHJP
【FI】
H02K1/276
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023538321
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2022023675
(87)【国際公開番号】W WO2023007968
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/028379
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100221512
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 誠司
(72)【発明者】
【氏名】柴山 義康
(72)【発明者】
【氏名】今村 圭伍
(72)【発明者】
【氏名】植田 一輝
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/104956(WO,A1)
【文献】特開2006-314152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸回りに回転するロータ本体と、
前記ロータ本体において前記回転軸を中心とする周方向に配列され、前記周方向において交互に異なる磁極を形成する複数の磁極部とを備え、
前記磁極部は、第1磁石と、前記回転軸を中心とする径方向において前記第1磁石の内側に配置された第2磁石とを含み、
前記ロータ本体には、前記第1磁石が配置される第1配置孔と、前記第2磁石が配置される第2配置孔とが形成されており、
前記ロータ本体は、前記第2配置孔の前記第1磁石側に位置する部分と前記第2配置孔の前記第1磁石とは反対側に位置する部分とを連結して前記第2配置孔を分割する分割壁を有し、
前記第1配置孔は、分割されていない1つの孔であり、
前記ロータ本体の外周面のうち前記磁極部のd軸との交点を基準点としたとき、前記第1磁石のうち前記基準点と前記分割壁との間に位置する部分の磁化方向の寸法は、前記第1磁石のうち他の部分の磁化方向の寸法よりも大きく、
前記第1磁石は、前記回転軸に直交する断面において所定の第1基準線に沿って延びる形状をし、
前記第2磁石は、前記回転軸に直交する断面において所定の第2基準線に沿って延びる形状をし、
前記分割壁は、前記第2基準線の延びる方向において離間した第1分割壁及び第2分割壁を含み、
前記第1分割壁及び前記第2分割壁のそれぞれは、前記第2配置孔の前記第1磁石側に位置する部分と前記第2配置孔の前記第1磁石とは反対側に位置する部分とを連結し、
前記第1磁石のうち前記基準点と前記第1分割壁との間に位置する部分の磁化方向の寸法及び前記基準点と前記第2分割壁との間に位置する部分の磁化方向の寸法のそれぞれは、前記第1磁石のうち他の部分の磁化方向の寸法よりも大きいロータ。
【請求項2】
回転軸回りに回転するロータ本体と、
前記ロータ本体において前記回転軸を中心とする周方向に配列され、前記周方向において交互に異なる磁極を形成する複数の磁極部とを備え、
前記磁極部は、第1磁石と、前記回転軸を中心とする径方向において前記第1磁石の内側に配置された第2磁石とを含み、
前記ロータ本体には、前記第1磁石が配置される第1配置孔と、前記第2磁石が配置される第2配置孔とが形成されており、
前記ロータ本体は、前記第2配置孔の前記第1磁石側に位置する部分と前記第2配置孔の前記第1磁石とは反対側に位置する部分とを連結して前記第2配置孔を分割する分割壁を有し、
前記第1配置孔は、分割されていない1つの孔であり、
前記ロータ本体の外周面のうち前記磁極部のd軸との交点を基準点としたとき、前記第1磁石のうち前記基準点と前記分割壁との間に位置する部分の磁化方向の寸法は、前記第1磁石のうち他の部分の磁化方向の寸法よりも大きく、
前記ロータ本体において前記第2磁石よりも径方向の内側又は前記周方向に隣り合う前記磁極部の互いの前記第2磁石の間に設けられ、前記分割壁を通過する磁束の量を増加させる補助磁石をさらに備えているロータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のロータにおいて、
前記第1磁石のうち前記基準点と前記分割壁との間に位置する部分に、前記基準点の方又は前記分割壁の方へ突出した突部が形成されているロータ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のロータにおいて、
前記第2磁石の磁化方向の寸法の平均値は、前記第1磁石の磁化方向の寸法の平均値よりも大きいロータ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のロータと、
前記ロータを駆動するステータとを備えたモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、ロータ及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータが開示されている。モータは、ロータと、ステータとを備えている。ロータは埋込磁石型であり、ロータコアと、ロータコアに設けられた複数の磁極部とを備えている。磁極部は、ロータコアの径方向に並ぶ2つ磁石を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-41530号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたロータにあっては、ステータにより形成される回転磁界等の反磁界に起因して、磁極部の不可逆減磁を起こす可能性が高い。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、モータのトルクを確保しつつ、磁極部の不可逆減磁を生じ難くすることにある。
【0006】
ここに開示されたロータは、回転軸回りに回転するロータ本体と、前記ロータ本体において前記回転軸を中心とする周方向に配列され、前記周方向において交互に異なる磁極を形成する複数の磁極部とを備え、前記磁極部は、第1磁石と、前記回転軸を中心とする径方向において前記第1磁石の内側に配置された第2磁石とを含み、前記ロータ本体には、前記第1磁石が配置される第1配置孔と、前記第2磁石が配置される第2配置孔とが形成されており、前記ロータ本体は、前記第2配置孔の前記第1磁石側に位置する部分と前記第2配置孔の前記第1磁石とは反対側に位置する部分とを連結して前記第2配置孔を分割する分割壁を有し、前記第1配置孔は、分割されていない1つの孔であり、前記ロータ本体の外周面のうち前記磁極部のd軸との交点を基準点としたとき、前記第1磁石のうち前記基準点と前記分割壁との間に位置する部分の磁化方向の寸法は、前記第1磁石のうちの他の部分の磁化方向の寸法よりも大きい。
【0007】
ここに開示されたモータは、前記ロータと、前記ロータを駆動するステータとを備えている。
【0008】
前記ロータは、モータのトルクを確保しつつ、磁極部の不可逆減磁を生じ難くすることができる。
【0009】
前記モータは、トルクを確保しつつ、磁極部の不可逆減磁を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、モータの断面図である。
図2図2は、モータの拡大断面図である。
図3図3は、ロータの拡大断面図である。
図4図4は、ロータの拡大断面を示した説明図である。
図5図5は、変形例1のモータの拡大断面図である。
図6図6は、変形例2のモータの拡大断面図である。
図7図7は、変形例3のモータの拡大断面図である。
図8図8は、変形例4のモータの拡大断面図である。
図9図9は、変形例5のモータの拡大断面図である。
図10図10は、変形例6のモータの拡大断面図である。
図11図11は、変形例7のモータの拡大断面図である。
図12図12は、変形例8のモータの拡大断面図である。
図13図13は、変形例9のモータの拡大断面図である。
図14図14は、変形例10のモータの拡大断面図である。
図15図15は、変形例11のモータの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に実施形態に係るモータ100を示す。モータ100は、所定の回転軸X回りに回転するロータ1と、ロータ1を回転軸X回りに回転させるステータ6とを備えている。ロータ1には、永久磁石が埋め込まれている。すなわち、モータ100は、IPM(Interior Permanent Magnet)モータである。モータ100は、モータケース7を更に備えてもよい。モータケース7は、ロータ1及びステータ6を収容している。ステータ6は、モータケース7に対して固定されている。ロータ1はモータケース7に回転可能に支持されている。
【0012】
以下、回転軸Xが延びる方向を「回転軸方向」と称する。回転軸Xを中心とする周方向を単に「周方向」と称する。回転軸Xを中心とする径方向を単に「径方向」と称する。径方向において回転軸Xに向かう側を「径方向内側」と称する。径方向において回転軸Xとは反対側を「径方向外側」と称する。回転軸Xに直交する断面を「直交断面」と称する。モータ100の各要素の直交断面における形状を単に「断面形状」と称する。
【0013】
ステータ6は、ステータコア61と、巻線62とを備えている。ステータコア61は、軟磁性体である。ステータコア61は、例えば、積層された複数枚の電磁鋼板から形成される。
【0014】
ステータコア61は、環状に形成されている。具体的には、ステータコア61は、円筒状に形成されている。ステータコア61は、モータケース7に固定されている。ステータコア61には、ステータコア61の内側に向かって突出した複数のティース61aが形成されている。複数のティース61aは、ステータコア61において周方向に間隔をあけて並んでいる。巻線62は、複数のティース61aに巻かれている。巻線62に電流が供給されることにより、ステータ6は、ロータ1を回転させる回転磁界を形成する。
【0015】
ロータ1は、回転軸X回りに回転するロータ本体2と、ロータ本体2において、周方向に配列され、周方向において交互に異なる磁極を形成する複数の磁極部4とを備えている。この例では、ロータ1は、周方向に等間隔で配列された6つの磁極部4を備えている。ロータ1は、磁極部4とは別に、複数の補助磁石5a,5bをさらに備えてもよい。この例では、ロータ1は、6つの補助磁石5aと、6つの補助磁石5bとを備えている。
【0016】
ロータ本体2の少なくとも一部は、軟磁性体から形成されている。ロータ本体2は、磁気的突極性を有している。ロータ本体2は、ステータ6が形成する回転磁界においてリラクタンストルクを発生させる。ロータ本体2は、ロータコア20及びシャフト11を含んでいる。
【0017】
ロータコア20は、軟磁性体である。ロータコア20は、例えば、互いに積層された複数枚の電磁鋼板から形成される。ロータコア20は、回転軸Xを囲む環状に形成されている。具体的には、ロータコア20は、ステータコア61と同心の円筒状に形成されている。ロータコア20の外周面28は、ロータ本体2の外周面を形成する。ロータコア20の断面形状は、ロータコア20の回転軸方向の全長にわたって同じである。ロータコア20の外周面28とステータコア61の内周面との間には、エアギャップ10が形成されている。
【0018】
シャフト11は、ロータコア20の内側に嵌め込まれている。シャフト11は、ロータコア20に対して固定されている。シャフト11の軸心は、回転軸Xと一致している。シャフト11は、軸受等を介してモータケース7に回転可能に支持されている。ロータコア20は、シャフト11と共に回転軸X回りに回転する。シャフト11は、軟磁性体である。
【0019】
複数の磁極部4は、ロータコア20に設けられている。複数の磁極部4は、ステータ6によって形成された回転磁界においてマグネットトルクを発生させる。複数の磁極部4は、周方向に等間隔で配置されている。
【0020】
図2は、モータ100の拡大断面図である。図3は、ロータ1の拡大断面図である。ロータ1の各磁極部4は、径方向に延びる対称軸を中心とした線対称形状である。各磁極部4は、複数の磁石を含んでいる。具体的には、各磁極部4は、第1磁石41と、第2磁石42との2つの磁石を備えている。第1磁石41及び第2磁石42は、径方向に間隔をあけて並んでいる。第2磁石42は、第1磁石41の径方向内側に配置されている。第1磁石41と第2磁石42とは、層状に形成されている。つまり、磁極部4は、第1磁石41と第2磁石42との2層の磁石層を有している。
【0021】
第1磁石41及び第2磁石42の各々は、ボンド磁石である。ボンド磁石は、磁石粉末と磁石粉末を結合するバインダとを含んだ磁石材料によって形成されている。磁石粉末は、例えば、ネオジム磁石、サマリウム鉄窒素系磁石、サマリウムコバルト系磁石、フェライト磁石若しくはアルニコ磁石等の粉末、又はこれら粉末のうち2種以上の粉末の混合物である。バインダは、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂又はゴムである。
【0022】
ロータコア20には、第1磁石41が配置される第1配置孔21と、第2磁石42が配置される第2配置孔22とが形成されている。第1配置孔21及び第2配置孔22の各々は、ロータコア20を回転軸方向に貫通した孔である。第1配置孔21の断面形状3は、第1磁石41の断面形状と同じである。第2配置孔22の断面形状は、第2磁石42の断面形状と同じである。
【0023】
第1磁石41及び第2磁石42は、例えば、インサート成形によって形成される。具体的には、第1磁石41及び第2磁石42は、ロータコア20が収容された成形型内にボンド磁石の磁石材料を射出することで形成される。第1磁石41及び第2磁石42は、それぞれ、ロータコア20の第1配置孔21及び第2配置孔22に充填された磁石材料の硬化物である。第1配置孔21は、第1磁石41によって満たされている。第2配置孔22は、第2磁石42によって満たされている。
【0024】
第1磁石41及び第2磁石42のそれぞれは、回転軸Xに沿って延びた板状に形成されている。第1磁石41の断面形状は、第1磁石41の回転軸方向の全長にわたって同じである。第2磁石42の断面形状は、第2磁石42の回転軸方向の全長にわたって同じである。
【0025】
第1磁石41及び第2磁石42のそれぞれの断面形状は、線状である。すなわち、第1磁石41の断面形状は、所定の第1基準線R1に沿って延びる形状をしている。第2磁石42の断面形状は、所定の第2基準線R2に沿って延びる形状をしている。第1基準線R1及び第2基準線R2のそれぞれは、回転軸Xを通過し径方向に延びる所定の基準線Rと交差する方向に延びている。以下、第1磁石41において、回転軸Xに直交する平面に平行で且つ第1基準線R1に直交する方向を「厚み方向」とも称する。第2磁石42において、回転軸Xに直交する平面に平行で且つ第2基準線R2に直交する方向を「厚み方向」とも称する。
【0026】
第1磁石41は、第1基準線R1が延びる方向における2つの端部41a,41bと、2つの端部41a,41bの間に位置する中間部41cとを有している。以下、2つの端部41a,41bを区別する場合には、それぞれを「第1端部41a」、「第2端部41b」と称する。第2磁石42は、第2基準線R2が延びる方向における2つの端部42a,42bと、2つの端部42a,42bの間に位置する中間部42cとを有している。以下、2つの端部42a,42bを区別する場合には、それぞれを「第1端部42a」、「第2端部42b」と称する。
【0027】
尚、中間部41cは、第1磁石41における2つの端部41a,41bを除く残りの全ての部分を指すものではなく、2つの端部41a,41bを除く残りの部分のうちの少なくとも一部を指す。中間部41cは、第1磁石41のうち第1基準線R1が延びる方向における中央を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。中間部42cは、第2磁石42における2つの端部42a,42bを除く残りの全ての部分を指すものではなく、2つの端部42a,42bを除く残りの部分のうちの少なくとも一部を指す。中間部42cは、第2磁石42のうち第2基準線R2が延びる方向における中央を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0028】
第1磁石41は、径方向内側に向かって凹むように湾曲又は屈曲している。中間部41cは、2つの端部41a,41bよりも径方向内側に位置している。すなわち、第1磁石41は、2つの端部41a,41bの方が中間部41cよりもロータコア20の外周面28に接近するように湾曲又は屈曲している。具体的には、第1磁石41の断面形状は、略U字状である。すなわち、第1磁石41は、径方向内側へ向かって凹むように湾曲した弧状に形成されている。第1磁石41の断面形状は、径方向に延びる対称軸を中心とした線対称形状である。
【0029】
同様に、第2磁石42は、径方向内側に向かって凹むように湾曲又は屈曲している。中間部42cは、2つの端部42a,42bよりも径方向内側に位置している。すなわち、第2磁石42は、2つの端部42a,42bの方が中間部42cよりロータコア20の外周面28に接近するように湾曲又は屈曲している。具体的には、第2磁石42の断面形状は、略U字状である。すなわち、第2磁石42は、径方向内側へ向かって凹むように湾曲した弧状に形成されている。第2磁石42の断面形状は、径方向に延びる対称軸を中心とした線対称形状である。第2磁石42の線対称形状の中心となる対称軸は、第1磁石41の線対称形状の中心となる対称軸と一致している。
【0030】
図4は、ロータ1の拡大断面を示した説明図である。尚、図4では、説明に用いる線を明確にするため、断面を表すハッチングを省略している。第1磁石41は、第1基準線R1と交差する方向に磁化されている。詳しくは、第1磁石41は、図4に破線の矢印で示すように、回転軸Xに直交する平面に平行で且つ第1基準線R1と直交する方向に磁化されている。すなわち、第1磁石41の磁化方向は、第1磁石41の厚み方向である。第2磁石42は、第2基準線R2と交差する方向に磁化されている。詳しくは、第2磁石42は、図4に破線の矢印で示すように、回転軸Xに直交する平面に平行で且つ第2基準線R2と直交する方向に磁化されている。すなわち、第2磁石42の磁化方向は、第2磁石42の厚み方向である。
【0031】
磁極部4によって発生する磁束の方向は、第1磁石41が形成する磁界と第2磁石42が形成する磁界によって定まる。具体的には、図1及び図3に示すように、各磁極部4は、磁極部4が作る磁束の方向に延びるd軸と、d軸に対して電気的、磁気的に直交するq軸とを有している。
【0032】
d軸は、磁極部4の磁極中心線であり、径方向に延びる。この例では、直交断面において、d軸と、磁極部4の形状の中心軸とが一致している。詳しくは、d軸は、第1磁石41の線対称形状の中心となる対称軸と一致している。d軸は、第2磁石42の線対称形状の中心となる対称軸とも一致している。
【0033】
q軸は、d軸に対して電気角において90度ずれた軸である。q軸は、径方向に延び、直交断面において、周方向に隣り合う磁極部4の間を通過している。この例では、q軸は、直交断面において周方向に隣り合う磁極部4の間の中央を通過している。
【0034】
第1磁石41は、第1基準線R1が延びる方向にわたって連続している。すなわち、第1磁石41は、分割されていない。それに対し、第2磁石42は、第2基準線R2が延びる方向における途中で分割されている。
【0035】
ロータコア20は、第2配置孔22を分割する分割壁29を有している。分割壁29は、ロータコア20のうち第2配置孔22の第1磁石41側に位置する部分と第2配置孔22の第1磁石41とは反対側に位置する部分とを連結している。換言すれば、分割壁29は、第2配置孔22の径方向内側の部分(すなわち、外周面28とは反対側の部分)と、第2配置孔22の径方向外側の部分(すなわち、外周面28側の部分)とを連結している。
【0036】
分割壁29は、第2配置孔22において、第2基準線R2が延びる方向における中央部に配置されている。詳しくは、分割壁29は、磁極部4のd軸上に位置している。分割壁29は、直交断面において、第2基準線R2と交差する方向、詳しくは、第2基準線R2と直交する方向に延びている。すなわち、分割壁29は、径方向に延びている。第2配置孔22は、第2基準線R2が延びる方向に並ぶ2つの分割孔22a,22bに分割壁29によって分割されている。
【0037】
第2磁石42は、第2基準線R2が延びる方向に並ぶ2つの磁石片48,49に分割壁29によって分割されている。2つの磁石片48,49は、2つの分割孔22a,22bにそれぞれ配置されている。分割孔22a,22bはそれぞれ、磁石片48,49で満たされている。
【0038】
図4に示すように、ロータコア20の外周面28のうち磁極部4のd軸との交点を基準点Pとしたとき、第1磁石41のうち基準点Pと分割壁29との間に位置する部分の磁化方向の寸法t1aは、第1磁石41のうちの他の部分の磁化方向の寸法t1bよりも大きい。すなわち、第1磁石41は、少なくとも1つの薄肉部44と、薄肉部44の磁化方向の寸法t1bよりも大きい磁化方向の寸法t1aを有する厚肉部45とを有している。具体的には、第1磁石41は、第1基準線R1が延びる方向に離間した2つの薄肉部44と、2つの薄肉部44の間に位置する1つの厚肉部45とを有している。
【0039】
2つの薄肉部44は、基準点Pと分割壁29とを結ぶ仮想直線Sを挟んで第1磁石41の両側に位置している。各薄肉部44の磁化方向の寸法t1aは、第1基準線R1が延びる方向にわたって一定である。寸法t1aは、第1磁石41における磁化方向の寸法の最小値でもある。
【0040】
厚肉部45は、第1磁石41のうち第1基準線R1が延びる方向における中央部に位置している。具体的には、第1磁石41のうち仮想直線Sと交差する部分には、基準点Pに向かって突出した突部46が形成されている。突部46は、半円状の断面形状を有している。第1磁石41のうち突部46が形成された部分が厚肉部45である。寸法t1aは、厚肉部45における磁化方向の寸法の最大値である。寸法t1aは、第1磁石41における磁化方向の寸法の最大値でもある。
【0041】
第2磁石42の磁化方向の寸法t2は、第2基準線R2が延びる方向にわたって一定である。寸法t2は、第2磁石42における磁化方向の寸法の最小値でもあり、最大値でもあり、平均値でもある。
【0042】
第2磁石42の磁化方向の寸法の平均値(すなわち、第2基準線R2の方向にわたる平均値)は、第1磁石41の磁化方向の寸法の平均値(すなわち、第1基準線R1の方向にわたる平均値)よりも大きい。第2磁石42の磁化方向の寸法の最小値(すなわち、寸法t2)は、第1磁石41の磁化方向の寸法の最小値(すなわち、寸法t1b)よりも大きい。第2配置孔22の体積は、第1配置孔21の体積よりも大きい。そのため、第2磁石42の体積は第1磁石41の体積よりも大きく、第2磁石42の質量は、第1磁石41の質量よりも大きい。
【0043】
図3に示すように、第1磁石41の2つの端部41a,41b及び第2磁石42の2つの端部42a,42bは、ロータ本体2の外周面28に接近して配置されている。すなわち、第1磁石41の2つの端部41a,41b及び第2磁石42の2つの端部42a,42bは、外周面28に対して径方向内側から対向するように配置されている。第1磁石41の2つの端部41a,41bは、周方向において、第2磁石42の2つの端部42a,42bの間に配置されている。
【0044】
ロータコア20のうち第1磁石41の2つの端部41a,41bの径方向外側に位置する部分には、切欠24が形成されている。ロータコア20のうち第2磁石42の2つの端部42a,42bの径方向外側に位置する部分には、切欠25が形成されている。切欠24,25は、ロータコア20の外周面28に形成されている。切欠24,25は、ロータコア20の径方向外側に向かって開口している。切欠24,25は、ロータコア20の回転軸方向の全長にわたって形成されている。
【0045】
切欠24,25の断面形状は、例えば、矩形状である。ロータコア20の外周面28に切欠24が形成されることにより、第1磁石41の2つの端部41a、41bは、ロータ本体2の外周面28から径方向内側に離れて位置している。ロータコア20の外周面に切欠25が形成されることにより、第2磁石42の2つの端部42a、42bは、ロータ本体2の外周面28から径方向内側に離れて位置している。ロータコア20は、第1磁石41の2つの端部41a,42bの径方向外側に位置する部分33,34を有している。ロータコア20は、第2磁石42の2つの端部42a,42bの径方向外側に位置する部分35,36を有している。
【0046】
第1磁石41の第1端部41aと第2磁石42の第1端部42aとは、周方向に隣り合っている。第1磁石41の第2端部41bと第2磁石42の第2端部42bとは、周方向に隣り合っている。ロータコア20のうち第1端部41aと第1端部42aとの間の部分31は、ロータコア20の部分33,34,35,36よりも、径方向外側へ突出している。ロータコア20のうち第2端部41bと第2端部42bとの間の部分32は、ロータコア20の部分33,34,35,36よりも、径方向外側へ突出している。この例では、ロータコア20のうち切欠24と切欠25との間の部分が、径方向外側に向かって突出した突出部分となっている。
【0047】
複数の補助磁石5aは、図1に示すように、ロータ本体2において周方向に配列されている。補助磁石5aは、各磁極部4に1つずつ設けられている。補助磁石5aは、対応する磁極部4の第2磁石42の径方向の内側に配置されている。詳しくは、補助磁石5aは、分割壁29と回転軸Xとの間に配置されている。補助磁石5aは、対応する磁極部4のd軸上に配置されている。
【0048】
複数の補助磁石5bは、ロータ本体2において周方向に配列されている。補助磁石5bは、周方向に隣り合う磁極部4の互いの第2磁石42の間に配置されている。つまり、補助磁石5bは、隣り合う磁極部4の間に配置された極間磁石である。具体的には、補助磁石5bは、磁極部4のq軸上に配置されている。周方向に隣り合う補助磁石5bの間には、補助磁石5aが配置されている。補助磁石5aと補助磁石5bとは、周方向において離間している。
【0049】
補助磁石5a,5bは、ボンド磁石である。補助磁石5a,5bは、例えば、第1磁石41及び第2磁石42と同じ材料から形成される。
【0050】
ロータコア20には、図3に示すように、補助磁石5a,5bが配置される配置孔30が形成されている。配置孔30は、ロータコア20を回転軸方向に貫通している。配置孔30の断面形状は、補助磁石5a,5bの断面形状と同じである。
【0051】
補助磁石5a,5bは、例えば、第1磁石41及び第2磁石42と同様にインサート成形によって形成される。すなわち、補助磁石5a,5bは、ロータコア20が収容された成形型内にボンド磁石となる磁石材料を射出することで形成される。補助磁石5a,5bは、ロータコア20の配置孔30に充填された磁石材料の硬化物である。配置孔30は、補助磁石5a,5bによって満たされている。
【0052】
補助磁石5aの断面形状は、補助磁石5aの回転軸方向の全長にわたって同じである。補助磁石5aの断面形状は、径方向と交差する方向に延びた形状である。具体的には、補助磁石5aの断面形状は、径方向と直交する長手方向を有する長方形状である。補助磁石5aの全体は、第2磁石42よりも径方向内側に配置されている。補助磁石5aは、周方向と交差する方向、すなわち、補助磁石5aの長手方向と交差する方向に磁化されている。詳しくは、補助磁石5aは、図4の破線の矢印で示すように、径方向に磁化されている。
【0053】
補助磁石5bの断面形状は、補助磁石5bの回転軸方向の全長にわたって同じである。補助磁石5bの断面形状は、周方向と交差する方向に延びた形状である。具体的には、補助磁石5bの断面形状は、径方向と一致する長手方向を有する長方形状である。補助磁石5bの一部は、径方向において第2磁石42よりも内側に位置している。尚、補助磁石5bは、径方向において第2磁石42よりも内側に位置する部分を有さなくてもよい。すなわち、補助磁石5bの全体は、周方向に隣り合う磁極部4の互いの第2磁石42の間に配置されてもよい。補助磁石5bは、径方向と交差する方向、すなわち、補助磁石5bの長手方向と交差する方向に磁化されている。詳しくは、補助磁石5bは、図4の破線の矢印で示すように、周方向に磁化されている。
【0054】
補助磁石5a,5bの磁束は、ロータコア20のうち第2配置孔22よりも第1磁石41側に位置する部分と、分割壁29と、ロータコア20のうち第2配置孔22よりも第1磁石41とは反対側に位置する部分とを通過する。すなわち、補助磁石5a,5bは、分割壁29を通過する磁束の量を増加させるように磁化されている。
【0055】
ステータ6の巻線62に電流が供給されて回転磁界が形成されると、複数の磁極部4及び複数の補助磁石5a,5bによってマグネットトルクが発生すると共に、ロータ本体2によってリラクタンストルクが発生する。ロータ1は、マグネットトルク及びリラクタンストルクによって、回転軸Xを中心に回転する。この場合、各磁極部4は径方向に並んだ複数の磁石を含み、複数の磁石の間をステータ6の磁束が通過する。そのため、磁極部4が一つの磁石で形成される場合と比較して、リラクタンストルクが得られやすい。
【0056】
以上の構成を有するロータ1では、ロータ本体2に第2配置孔22を分割する分割壁29が形成されている。分割壁29の透磁率は、第2磁石42の透磁率よりも高い。そのため、ステータ6の磁束は、分割壁29を通過しやすく、第2磁石42を通過し難い。したがって、ステータ6の磁束によって第2磁石42の反磁界減磁が生じることを防止できる。
【0057】
仮にロータ本体2に分割壁29が形成されず、第2磁石42が分割されていない1つの磁石である場合を想定する。この場合、ステータ6の磁束のうち第1磁石41を通過する磁束は第2磁石42も通過するので、この磁束に対する磁気抵抗は大きくなる。そのため、ステータ6の磁束は、第1磁石41を通過し難く、ステータ6の磁束による第1磁石41の反磁界減磁は生じ難い。一方、ステータ6の磁束は、ロータ本体2のうち第1磁石41と第2磁石42との間の部分も通過する。この部分を通過するステータ6の磁束は、第1磁石41を通過せずに第2磁石42のみを通過する。そのため、第2磁石42を通過するステータ6の磁束に対する磁気抵抗は小さい。つまり、分割壁29が形成されていない場合、ステータ6の磁束は、第1磁石41よりも第2磁石42を通過しやすく、第2磁石42は、第1磁石41と比較して、ステータ6の磁束による反磁界減磁が生じやすい。そのため、分割壁29によって第2磁石42の反磁界減磁を低減できることは、第1磁石41と第2磁石42とを有する磁極部4の反磁界減磁を低減する上で特に有効である。
【0058】
前述のように分割壁29は第2磁石42の反磁界減磁を防止するが、第1磁石41の径方向内側に分割壁29が設けられると、分割壁29を通過するステータ6の磁束が第1磁石41を通過しやすくなる。特に、ロータコア20の外周面28のうち磁極部4のd軸と交差する基準点Pにはステータ6の磁束が集中するため、第1磁石41のうち基準点Pと分割壁29との間の部分には、分割壁29を通過するステータ6の磁束が通過しやすくなる。しかし、本開示のロータ1では、第1磁石41のうち基準点Pと分割壁29との間の部分の磁化方向の寸法は、第1磁石41のうちの他の部分の磁化方向の寸法よりも大きい。そのため、第1磁石41のうち基準点Pと分割壁29との間の部分のパーミアンス係数を高めることができる。したがって、分割壁29を通過する磁束に起因して第1磁石41の反磁界減磁が生じることを防止できる。
【0059】
さらに、第1磁石41が配置される第1配置孔21は、分割されていない1つの孔である。そのため、第1磁石41の磁石量を増加させ、マグネットトルクを向上させることができ、ひいてはモータ100のトルクを向上させることができる。つまり、第1配置孔21及び第2配置孔22のうち第2配置孔22にのみ分割壁29を設けると共に、第1磁石41に厚肉部45を設けることにより、モータ100のトルクを確保すると共に、磁極部4の反磁界減磁を生じ難くすることができる。
【0060】
詳しくは、第1磁石41のうち基準点Pと分割壁29との間に位置する部分には、突部46が形成され、厚肉部45は、第1磁石の41うち突部46が形成された部分である。そのため、第1磁石41のうち分割壁29を通過する磁束が特に通過しやすい部分のみを磁化方向の寸法の大きい部分とすることができる。したがって、第1磁石41の磁石量の増加を低減しつつ、第1磁石41の反磁界減磁を防止できる。
【0061】
また、分割壁29は、ロータ本体2のうち第2配置孔22の第1磁石41側に位置する部分と第2配置孔22の第1磁石41とは反対側に位置する部分とを連結する。そのため、ロータ1の回転時において磁極部4に作用する遠心力に対して、ロータコア20の強度を向上させることができる。特に、第2磁石42の質量が第1磁石41の質量よりも大きい場合、第2磁石42には大きな遠心力が作用するが、分割壁29は、第2磁石42に作用する遠心力に対するロータコア20の強度を適切に向上させることができる。
【0062】
さらに、第2磁石42が配置される第2配置孔22は、分割壁29によって分割されるため、第2配置孔22に配置される第2磁石42の体積を小さくし、第2磁石42の質量を小さくすることができる。そのため、第2磁石42に作用する遠心力を小さくすることができる。
【0063】
また、第2磁石42の磁化方向の寸法の平均値(すなわち、寸法t2)は、第1磁石41の磁化方向の寸法の平均値よりも大きい。そのため、第2磁石42のパーミアンス係数を大きくして、第2磁石42の不可逆減磁を生じ難くすることができる。すなわち、磁石の透磁率は空気の透磁率と略同じであり、第2磁石42が形成する磁気回路に第1磁石41が位置すると、第1磁石41がエアギャップとみなされ、第2磁石42のパーミアンス係数が小さくなりやすい。しかし、第2磁石42の磁化方向の寸法を大きくすることにより、第2磁石42のパーミアンス係数を大きくして、第2磁石42の不可逆減磁を生じ難くすることができる。加えて、第1磁石41の磁化方向の寸法の平均値は、第2磁石42の磁化方向の寸法の平均値よりも小さいので、ロータ本体2の体積を増やすことができ、ロータ本体2が発生させるリラクタンストルクを向上させることができる。
【0064】
また、分割壁29を通過する、補助磁石5a,5bの磁束は、マグネットトルクの発生に寄与するため、補助磁石5a,5bを有さないロータと比較して、マグネットトルクが得られやすい。したがって、モータ100のトルクを一層向上させることができる。さらに、補助磁石5bは、周方向に隣り合う磁極部4の第2磁石42同士の間に配置される。そのため、ロータ本体2のうち、周方向に隣り合う第2磁石42の間のスペースを利用して補助磁石5bを設けることができ、補助磁石5bを設けることによるロータ1の大型化を低減できる。
【0065】
また、ステータ6の磁束のうちリラクタンストルクに寄与するq軸磁束は、図4の二点鎖線の矢印に示すように、第1磁石41と第2磁石42との間を流れ、また、第2磁石42の第1磁石41とは反対側の縁に沿って流れる。仮にq軸磁束が通過する位置に磁気抵抗の大きい補助磁石5a,5bが配置されると、q軸インダクタンスが低下し、リラクタンストルクが低下する。しかし、この例では、補助磁石5aは、第2磁石42よりも径方向内側に配置されており、q軸磁束が通過し難い。また、補助磁石5bの一部は、第2磁石42よりも径方向内側に配置されており、q軸磁束が通過する部分が少ない。そのため、q軸インダクタンスが低下し難く、リラクタンストルクを向上させることができる。
【0066】
また、特許文献1に開示されたようなロータにあっては、ロータコアの直交断面における磁石の端部の径方向外側を、ステータで発生した磁束(すなわち、磁石で発生する磁束とは逆向きの磁束)が通過し、この磁束により、磁石の端部が反磁界減磁を起こす可能性がある。これに対し、この例のロータ1は、ロータ本体2のうち第1磁石41の2つの端部41a,41bの径方向外側に位置する部分33,34及び第2磁石42の2つの端部42a,42bの径方向外側に位置する部分35,36に、切欠24,25が形成されている。そのため、第1磁石41の端部41a,41bからステータ6までの距離L1及び第2磁石42の端部42a,42bからステータ6までの距離L2を長くすることができる。したがって、第1磁石41及び第2磁石42の各々のステータ6による反磁界減磁を生じ難くすることができる。
【0067】
ここで、切欠24,25は、第1磁石41の2つの端部41a,41b及び第2磁石42の2つの端部41a,41bの各々の外側領域における磁気抵抗を大きくする。そのため、第1磁石41及び第2磁石42の各々の端部41a,41b,42a,42bの外側領域には、ステータ6で発生した磁束が通過し難い。したがって、第1磁石41及び第2磁石42の各々の反磁界減磁を生じ難くすることができる。また、仮に第1磁石41及び第2磁石42の各々の端部41a,41b,42a,42bの外側領域にロータ本体2が存在しなければ、ロータコア20とステータコア61の内周面との間に形成されるエアギャップ10が大きくなり、ステータ6で発生した磁束がロータ1へ流れ難くなる。しかし、この例では、第1磁石41の2つの端部41a,41bの径方向外側にロータ本体2の部分33,34が位置し、且つ、第2磁石42の2つの端部42a,42bの径方向外側にロータ本体2の部分35,36が位置する。そのため、ロータコア20とステータコア61の内周面との間に形成されるエアギャップ10を小さくすることができ、ステータ6で発生した磁束がロータ1へ流れやすくなり、モータ100のトルクを効率良く発生させることができる。
【0068】
尚、第1磁石41及び第2磁石42の各々の反磁界減磁を生じ難くするには、第1配置孔21及び第2配置孔22をそれぞれ第1磁石41及び第2磁石42よりも大きく形成し、第1配置孔21及び第2配置孔22の一部を、第1磁石41の端部41a,41bに隣接する空隙及び第2磁石42の端部に隣接する空隙としてもよい。ただし、第1磁石41及び第2磁石42が第1配置孔21及び第2配置孔22に磁石材料を充填することで形成されるボンド磁石である場合、第1配置孔21及び第2配置孔22の全体にボンド磁石が形成されるため、前記空隙を形成することが難しい。そのため、第1磁石41及び第2磁石42がボンド磁石である場合には、ロータ本体2には、切欠24,25を形成することが好ましい。
【0069】
また、第1磁石41の2つの端部41a,41bと第2磁石42の2つの端部42a,42bとの間の部分31,32は、ロータ本体2のうち第1磁石41の2つの端部41a,41bの径方向外側の部分33,34及びロータ本体2のうち第2磁石42の2つの端部42a,42bの径方向外側の部分35,36よりも、径方向外側へ突出している。そのため、部分31,32とステータコア61との間のエアギャップ10を小さくすることができ、モータ100のトルクを一層効率良く発生させることができる。
【0070】
また、第1磁石41及び第2磁石42の各々はボンド磁石である。ボンド磁石は、樹脂のように成形することができ、焼結磁石と比較して、形状の自由度が高い。そのため、第1磁石41及び第2磁石42の各々を所望の形状に形成しやすい。
【0071】
続いて変形例1乃至11のモータ100A~100Kについて説明する。モータ100A~100Kの基本的な構成は、モータ100と同じである。そのため、以下では、モータ100A~100Kについて、モータ100と異なる点を中心に説明する。
【0072】
図5は、変形例1のロータ1Aを備えるモータ100Aの断面図である。この例では、ロータ1Aの突部46は、分割壁29の方へ突出している。
【0073】
図6は、変形例2のロータ1Bを備えるモータ100Bの断面図である。この例では、突部46は、基準点Pの方へ突出した外向突部46aと、分割壁29の方へ突出した内向突部46bとを含んでいる。
【0074】
図7は、変形例3のロータ1Cを備えるモータ100Cの断面図である。この例では、分割壁29は、第2基準線R2の延びる方向において離間した第1分割壁29a及び第2分割壁29bを有している。
【0075】
第1分割壁29a及び第2分割壁29bは、第2基準線R2の延びる方向においてd軸を挟んで離間して配置されている。第1分割壁29a及び第2分割壁29bのそれぞれは、第2基準線R2と交差する方向に延びている。詳しくは、第1分割壁29a及び第2分割壁29bのそれぞれは、第2基準線R2と直交する方向に延びている。第1分割壁29a及び第2分割壁29bのそれぞれは、ロータコア20のうち第2配置孔22の第1磁石41側に位置する部分と第2配置孔22の第1磁石41とは反対側に位置する部分とを連結している。
【0076】
第2配置孔22は、第2基準線R2が延びる方向に並ぶ3つの分割孔に第1分割壁29a及び第2分割壁29bによって分割されている。すなわち、第2磁石42は、第2基準線R2が延びる方向に並ぶ3つの磁石片に第1分割壁29a及び第2分割壁29bによって分割されている。
【0077】
第1磁石41のうち基準点Pと第1分割壁29aとの間に位置する部分の磁化方向の寸法及び基準点Pと第2分割壁29bとの間に位置する部分の磁化方向の寸法のそれぞれは、第1磁石41のうち他の部分の磁化方向の寸法よりも大きくなっている。
【0078】
具体的には、第1磁石41は、3つの薄肉部44と2つの厚肉部45とを有している。3つの薄肉部44は、第1基準線R1が延びる方向において互いに離間している。厚肉部45は、第1基準線R1が延びる方向に隣り合う薄肉部44の間に配置されている。2つの厚肉部45のうち一方は、基準点Pと第1分割壁29aとを結ぶ仮想直線S1上に位置し、他方は基準点Pと第2分割壁29bとを結ぶ仮想直線S2上に位置している。
【0079】
詳しくは、突部46は、第2基準線R2が延びる方向において互いに離間した第1突部46c及び第2突部46dを含んでいる。第1突部46cは、第1磁石41のうち仮想直線S1に交差する部分に形成されている。第1突部46cは、基準点Pの方へ突出している。第2突部46dは、第1磁石41のうち仮想直線S2に交差する部分に形成されている。第2突部46dは、基準点Pの方へ突出している。第1磁石41のうち第1突部46c及び第2突部46dのそれぞれが形成された部分が、厚肉部45である。
【0080】
この例では、第1分割壁29aと第2分割壁29bとの2つの分割壁が形成され、基準点Pを通過するステータ6の磁束は、第1分割壁29aと第2分割壁29bとのそれぞれを通過する。そのため、この例でも、ステータ6の磁束は第2磁石42を通過し難く、第2磁石42の反磁界減磁が生じ難い。また、第1磁石41のうち基準点Pと第1分割壁29aとの間の部分は、他の部分の磁化方向の寸法よりも大きい磁化方向の寸法を有しており、高いパーミアンス係数を有する。そのため、第1分割壁29aを通過するステータ6の磁束に起因して第1磁石41の反磁界減磁が生じることを防止できる。同様に、第1磁石41のうち基準点Pと第2分割壁29bとの間の部分は、他の部分の磁化方向の寸法よりも大きい磁化方向の寸法を有しており、高いパーミアンス係数を有する。そのため、第2分割壁29bを通過するステータ6の磁束に起因して第1磁石41の反磁界減磁が生じることを防止できる。
【0081】
図8は、変形例4のロータ1Dを備えるモータ100Dの拡大断面図である。この例のロータ1Dの基本的な構成は、変形例3のロータ1Cと同じである。ただし、この例では、第1突部46cは第1分割壁29aの方へ突出し、第2突部46dは第2分割壁29bの方へ突出している。
【0082】
図9は、変形例5のロータ1Eを備えるモータ100Eの拡大断面図である。この例のロータ1Eの基本的な構成は、変形例3のロータ1Cと同じである。ただし、この例では、第1突部46cは、基準点Pの方へ突出した外向突部46c1と、第1分割壁29aの方へ突出した内向突部46c2とを含んでいる。また、第2突部46dは、基準点Pの方へ突出した外向突部46d1と、第1分割壁29aの方へ突出した内向突部46d2とを含んでいる。
【0083】
図10は、変形例6のロータ1Fを備えるモータ100Fの拡大断面図である。この例では、第1磁石41に突部46が形成されておらず、第1磁石41の磁化方向の寸法は、第1磁石41のうち仮想直線Sと交差する部分から第1基準線R1が延びる方向において第1磁石41の両端に行くほど連続的に小さくなっている。ここで、「連続的に小さくなる」とは、第1磁石41の磁化方向の寸法が一定の変化率で漸次小さくなっていくこと又は非段階的に漸次小さくなっていくことを意味する。尚、この例では、厚肉部45と薄肉部44との境界は外観上明確には表れないが、第1磁石41のうち仮想直線Sと交差する部分を含む中央部が厚肉部45となり、第1磁石41のうち厚肉部45を挟んだ両側部分のそれぞれが薄肉部44となる。
【0084】
図11は、変形例7のロータ1Gを備えるモータ100Gの拡大断面図である。この例では、ロータ1Gは、補助磁石5a,5bを備えていない。
【0085】
図12は、変形例8のロータ1Hを備えるモータ100Hの拡大断面図である。この例では、磁極部4は、第1磁石41及び第2磁石42に加えて、第3磁石43を備えている。
【0086】
第3磁石43は、ロータコア20において第2磁石42の径方向内側に配置されている。第3磁石43は、層状に形成されている。つまり、磁極部4は、第1磁石41、第2磁石42及び第3磁石43の3層の磁石層を有している。
【0087】
第3磁石43は、ボンド磁石である。第3磁石43の磁石材料は、例えば、第1磁石41及び第2磁石42のそれぞれの磁石材料と同じである。ロータコア20には、第3磁石43が配置される第3配置孔23が形成されている。第3配置孔23は、ロータコア20を回転軸方向に貫通した孔である。第3配置孔23の断面形状は、第3磁石43の断面形状と同じである。第3磁石43は、ロータコア20の第3配置孔23に充填された磁石材料の硬化物である。
【0088】
第3磁石43は、回転軸Xに沿って延びた板状に形成されている。第3磁石43の断面形状は、第1磁石41の回転軸方向の全長にわたって同じである。第3磁石43の断面形状は、線状である。すなわち、第3磁石43の断面形状は、所定の第3基準線R3に沿って延びる形状をしている。
【0089】
第3磁石43は、第3基準線R3が延びる方向における2つの端部43a,43bと、2つの端部43a,43bの間に位置する中間部43cとを有している。尚、中間部43cは、第3磁石43における2つの端部43a,43bを除く残りの全ての部分を指すものではなく、2つの端部43a,43bを除く残りの部分のうちの少なくとも一部を指す。中間部43cは、第3磁石43のうち第3基準線R3が延びる方向における中央を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、第3磁石43において、回転軸Xに直交する平面に平行で且つ第3基準線R3に直交する方向を「厚み方向」とも称する。
【0090】
第3磁石43は、径方向内側に向かって凹むように湾曲又は屈曲している。中間部43cは、2つの端部43a,43bよりも径方向内側に位置している。すなわち、第3磁石43は、2つの端部43a,43bの方が中間部43cよりもロータコア20の外周面28に接近するように湾曲又は屈曲している。具体的には、第3磁石43は、略U字状に形成されている。すなわち、第3磁石43は、径方向内側へ向かって凹むように湾曲した弧状に形成されている。第3磁石43の断面形状は、径方向に延びる対称軸を中心とした線対称形状である。
【0091】
第3磁石43は、第3基準線R3と交差する方向に磁化されている。詳しくは、第3磁石43は、回転軸Xに直交する平面に平行で且つ第3基準線R3と直交する方向に磁化されている。すなわち、第3磁石43の磁化方向は、第3磁石43の厚み方向である。
【0092】
ロータコア20は、第3配置孔23を分割する分割壁37をさらに有している。分割壁37は、第3配置孔23において、第3基準線R3が延びる方向における中央部に配置されている。分割壁37は、ロータコア20のうち第3配置孔23の第2磁石42側に位置する部分と第3配置孔23の第2磁石42とは反対側に位置する部分とを連結している。
【0093】
分割壁37は、磁極部4のd軸上に位置している。分割壁37は、直交断面において、第3基準線R3と交差する方向、より詳しくは、第3基準線R3と直交する方向に延びている。第3配置孔23は、第3基準線R3が延びる方向に並ぶ2つの分割孔に分割壁37によって分割されている。第3磁石43は、第3基準線R3が延びる方向に並ぶ2つの磁石片に分割壁37によって分割されている。第1磁石41の厚肉部45は、分割壁37と基準点Pとの間に位置している。すなわち、直交断面において、厚肉部45、分割壁29及び分割壁37は、同一直線上に配置されている。
【0094】
第3磁石43の磁化方向の寸法は、第3基準線R3が延びる方向にわたって一定である。第3磁石43の磁化方向の寸法の平均値は、第2磁石42の磁化方向の寸法の平均値よりも大きい。尚、第3磁石43の磁化方向の寸法の平均値は、第2磁石42の磁化方向の寸法の平均値と同じであってもよいし、第2磁石42の磁化方向の寸法の平均値よりも小さくてもよい。
【0095】
この例では、ロータ本体2に第3配置孔23を分割する分割壁37が形成されている。そのため、ステータ6の磁束は、分割壁37を通過しやすく、第3磁石43を通過し難い。そのため、ステータ6の磁束によって第3磁石43の反磁界減磁が生じることを防止できる。
【0096】
図13は、変形例9のロータ1Iを備えるモータ100Iの拡大断面図である。この例では、ロータ本体2に切欠24,25に代えて孔26,27が形成されている。孔26,27は、切欠24,25と同様に、第1磁石41及び第2磁石42の各々のステータ6による反磁界減磁を生じ難くする。
【0097】
図14は、変形例10のロータ1Jを備えるモータ100Jの拡大断面図である。この例では、磁極部4は、第1磁石41及び第2磁石42のうち第2磁石42のみを有している。すなわち、磁極部4は、第2磁石42によって形成された1層の磁石層のみを有している。この例でも、分割壁29を通過する補助磁石5a,5bの磁束は、マグネットトルクマグネットトルクの発生に寄与し、モータ100のトルクを向上させることができる。
【0098】
図15は、変形例11のロータ1Kを備えるモータ100Kの拡大断面図である。この例では、ロータ1Kは、補助磁石5a,5bに代えて、複数の補助磁石5c,5dを備えている。補助磁石5c,5dは、各磁極部4に1つずつ設けられている。すなわち、ロータ1Kは、6つの補助磁石5cと、6つの補助磁石5dとを備えている。補助磁石5c,5dは、第2磁石42と回転軸Xとの間に配置されている。具体的には、補助磁石5cは、磁石片48と回転軸Xとの間に配置されている。補助磁石5dは、磁石片49と回転軸Xとの間に配置されている。補助磁石5cと補助磁石5dとは、周方向に並んでいる。補助磁石5cと補助磁石5dとは、周方向において仮想直線Sの延長線Saを挟んで離間して配置されている。
【0099】
補助磁石5c,5dは、ボンド磁石である。補助磁石5c,5dは、例えば、第1磁石41及び第2磁石42と同じ材料から形成される。補助磁石5c,5dは、例えば、補助磁石5a,5bと同様に、ロータコア20が収容された成形型内にボンド磁石となる磁石材料を射出することで形成される。
【0100】
補助磁石5c,5dの断面形状は、補助磁石5c,5dの回転軸方向の全長にわたって同じである。補助磁石5c,5dの断面形状は、径方向の外側にいくほど周方向において延長線Saから離れるように延びた形状である。すなわち、補助磁石5cと補助磁石5dとの周方向における間隔は、径方向の外側にいくほど広くなっている。具体的には、補助磁石5c,5dの断面形状は、径方向及び周方向と交差する長手方向を有する長方形状である。補助磁石5c,5dの一部は、周方向に隣り合う磁極部4の互いの第2磁石42の間に配置されている。また、補助磁石5c,5dの一部は、径方向において対応する磁極部4よりも内側に配置されている。補助磁石5c,5dは、図15の破線の矢印で示すように、補助磁石5c,5dの長手方向と直交する方向に磁化されている。
【0101】
補助磁石5c,5dの磁束は、ロータコア20のうち第2配置孔22よりも第1磁石41側に位置する部分と、分割壁29と、ロータコア20のうち第2配置孔22よりも第1磁石41とは反対側に位置する部分とを通過する。すなわち、補助磁石5c,5dも、分割壁29を通過する磁束の量を増加させるように磁化されている。この例でも、分割壁29を通過する、補助磁石5c,5dの磁束は、マグネットトルクの発生に寄与し、モータ100のトルクを向上させることができる。
【0102】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態及び変形例を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、実施形態及び変形例で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0103】
ロータ本体2は、シャフト11を備えず、ロータコア20だけで形成されてもよい。ロータ本体2は、ロータコア20を備えず、シャフト11だけで形成されてもよい。シャフト11は軟磁性体でなくてもよい。シャフト11は、ロータコア20と一体に形成されてもよい。
【0104】
ロータコア20は、4つ以上の分割壁29を有してもよい。すなわち、第2磁石42は、第2基準線R2の延びる方向における3か所以上で分割されてもよく、第2磁石42は4つ以上の磁石片を有してもよい。この場合、第1磁石41は、基準点Pと各分割壁との間の部分の磁化方向の寸法が、第1磁石41のうちの他の部分の磁化方向の寸法よりも大きくてもよい。
【0105】
ロータ1が有する磁極部4の数は、限定されない。磁極部4が有する磁石層の数は限定されない。磁極部4は、4つ以上の磁石層を含んでもよい。磁極部4のd軸は、磁極部4の形状の中心軸と一致しなくてもよい。磁極部4のq軸は、直交断面において周方向に隣り合う磁極部4の間の中央を通過しなくてもよい。
【0106】
第1磁石41及び第2磁石42の各々は、異方性ボンド磁石であってもよいし、等方性ボンド磁石であってもよい。第1磁石41及び第2磁石42の各々は、磁性粉末を焼結して形成された焼結磁石であってもよい。
【0107】
第1磁石41及び第2磁石42の各々の断面形状は、限定されない。第1磁石41及び第2磁石42の各々の断面形状は、例えば、略V字状又は略W字状等であってもよい。第1磁石41の対称軸は、磁極部4のd軸と一致しなくてもよい。第2磁石42の対称軸は、磁極部4のd軸と一致しなくてもよい。
【0108】
第1磁石41が有する薄肉部44の数は、限定されない。薄肉部44の磁化方向の寸法は、一定でなくてもよい。第1磁石41が有する厚肉部45の数は、限定されない。厚肉部45の磁化方向の寸法は、第1基準線R1が延びる方向にわたって一定であってもよい。
【0109】
第2磁石42の磁化方向の寸法t2は、一定でなくてもよい。第2磁石42の磁化方向の寸法t2は、第1磁石41の磁化方向の寸法の最大値よりも大きくてもよい。第2磁石42の磁化方向の寸法の平均値は、第1磁石41の磁化方向の寸法の平均値よりも小さくてもよいし、第1磁石41の磁化方向の寸法の平均値と同じであってもよい。第2磁石42の磁化方向の寸法は、第2基準線R2が延びる方向において変化してもよい。
【0110】
補助磁石5a~5dは、異方性ボンド磁石であってもよいし、等方性ボンド磁石であってもよい。補助磁石5a~5dは、磁性粉末を焼結して形成された焼結磁石であってもよい。補助磁石5a~5dの形状、位置及び大きさ等は、限定されない。補助磁石5a~5dの磁化方向は、補助磁石5a~5dによって分割壁29を通過する磁束の量を増加させるのであれば、限定されない。変形例1~6,8~12のロータ1A~1F,1H~1Kは、補助磁石5a~5dを備えなくてもよい。
【0111】
切欠24,25又は孔26,27は、ロータコア20のうち第1磁石41の端部41a,41bの外側に位置する部分33,34及び第2磁石42の端部42a,42bの外側に位置する部分35,36の少なくとも一方に形成されていればよい。また、切欠24,25及び孔26,27の各々の断面形状は限定されず、例えば、三角形状又は半円状等であってもよい。切欠24,25及び孔26,27は、省略可能である。
【0112】
本開示の技術の第1の側面に係るロータ1,1A~1I,1Kは、回転軸X回りに回転するロータ本体2と、ロータ本体2において回転軸Xを中心とする周方向に配列され、周方向において交互に異なる磁極を形成する複数の磁極部4とを備え、磁極部4は、第1磁石41と、回転軸Xを中心とする径方向において第1磁石41の内側に配置された第2磁石42とを含み、ロータ本体2には、第1磁石41が配置される第1配置孔21と、第2磁石42が配置される第2配置孔22とが形成されており、ロータ本体2は、第2配置孔22の第1磁石41側に位置する部分と第2配置孔22の第1磁石41とは反対側に位置する部分とを連結して第2配置孔22を分割する分割壁29を有し、第1配置孔21は、分割されていない1つの孔であり、ロータ本体2の外周面のうち磁極部4のd軸との交点を基準点Pとしたとき、第1磁石41のうち基準点Pと分割壁29との間に位置する部分の磁化方向の寸法t1aは、第1磁石41のうち他の部分の磁化方向の寸法t1bよりも大きい。
【0113】
この構成によれば、ステータ6の磁束は、分割壁29を通過しやすく、第2配置孔22に配置された第2磁石42を通過し難い。そのため、第2磁石42の反磁界減磁を生じ難くすることができる。また、第1磁石41のうち基準点Pと分割壁29との間に位置する部分の磁化方向の寸法t1aは、第1磁石41のうち他の部分の磁化方向の寸法t1bよりも大きいため、この部分のパーミアンス係数を高めることができる。そのため、ステータ6の磁束によって第1磁石41の反磁界減磁が生じることを防止できる。さらには、第1配置孔21は分割されていない1つの孔であるため、第1配置孔21に配置される第1磁石41の体積を大きくすることができ、マグネットトルクを向上させることができ、ひいてはモータ100のトルクを向上させることができる。
【0114】
また、本開示の技術の第2の側面に係るロータ1,1A~1E,1G~1I,1Kでは、第1の側面に係るロータ1,1A~1E,1G~1I,1Kにおいて、第1磁石41のうち基準点Pと分割壁29との間に位置する部分に、基準点Pの方又は分割壁29の方へ突出した突部46が形成されている。
【0115】
この構成によれば、第1磁石41のうち分割壁29を通過する磁束が特に通過しやすい部分のみを磁化方向の寸法の大きい部分とすることができる。したがって、第1磁石41の磁石量の増加を低減しつつ、第1磁石41の反磁界減磁を防止できる。
【0116】
また、本開示の技術の第3の側面に係るロータ1C~1Eでは、第1又は第2の側面に係るロータ1C~1Eにおいて、第1磁石41は、回転軸Xに直交する断面において所定の第1基準線R1に沿って延びる形状をし、第2磁石42は、回転軸Xに直交する断面において所定の第2基準線R2に沿って延びる形状をし、分割壁29は、第2基準線R2の延びる方向において離間した第1分割壁29a及び第2分割壁29bを含み、第1分割壁29a及び第2分割壁29bのそれぞれは、第2配置孔22の第1磁石41側に位置する部分と第2配置孔22の第1磁石41とは反対側に位置する部分とを連結し、第1磁石41のうち基準点Pと第1分割壁29aとの間に位置する部分の磁化方向の寸法及び基準点Pと第2分割壁29bとの間に位置する部分の磁化方向の寸法のそれぞれは、第1磁石41のうち他の部分の磁化方向の寸法よりも大きい。
【0117】
この構成によれば、第1分割壁29aと第2分割壁29bとの2つの分割壁が形成されるため、ステータ6の磁束は、第2磁石42を一層通過し難くなり、第2磁石42の反磁界減磁を一層生じ難くすることができる。また、第1磁石41のうち基準点Pと第1分割壁29aとの間の部分の磁化方向の寸法を大きくすることにより、この部分のパーミアンス係数を高めて反磁界減磁を生じ難くすることができる。同様に、第1磁石41のうち基準点Pと第2分割壁29bとの間の部分の磁化方向の寸法を大きくすることにより、この部分のパーミアンス係数を高めて反磁界減磁を生じ難くすることができる。したがって、第1磁石41の反磁界減磁を生じ難くすることができる。
【0118】
また、本開示の技術の第4の側面に係るロータ1,1A~1I,1Kでは、第1~第3のいずれか1つの側面に係るロータ1,1A~1I,1Kにおいて、第2磁石42の磁化方向の寸法の平均値は、第1磁石41の磁化方向の寸法の平均値よりも大きい。
【0119】
この構成によれば、第1磁石41のうち磁化寸法が大きくなった部分である厚肉部45は大きな磁気抵抗になるため、第2磁石42のうち厚肉部45を通過する磁束が通過する部分のパーミアンス係数は、小さくなりやすい。しかし、第2磁石42の磁化方向の寸法の平均値を大きくすることで、第2磁石42のパーミアンス係数を大きくして、第2磁石42の不可逆減磁を生じ難くすることができる。加えて、第1磁石41の磁化方向の寸法の平均値は、第2磁石42の磁化方向の寸法の平均値よりも小さいので、ロータ本体2の体積を増やすことができ、ロータ本体2が発生させるリラクタンストルクを向上させることができる。
【0120】
また、本開示の技術の第5の側面に係るロータ1,1A~1F,1H,1I,1Kは、第1乃至第4のいずれか1つの側面に係るロータ1,1A~1F,1H,1I,1Kにおいて、ロータ本体2において第2磁石42よりも径方向の内側又は周方向に隣り合う磁極部4の互いの第2磁石42の間に設けられ、分割壁29を通過する磁束の量を増加させる補助磁石5a~5dをさらに備えている。
【0121】
換言すれば、ロータ1,1A~1F,1H~1Kは、回転軸X回りに回転するロータ本体2と、ロータ本体2において回転軸Xを中心とする周方向に配列され、周方向において交互に異なる磁極を形成する複数の第2磁石42(磁石)とを備え、第2磁石42は、ロータ本体2には、第2磁石42が配置される第2配置孔22(配置孔)が形成されており、ロータ本体2は、第2配置孔22の径方向外側に位置する部分と第2配置孔22の径方向内側に位置する部分とを連結して第2配置孔22を分割する分割壁29を有し、ロータ本体2において第2磁石42よりも径方向の内側又は周方向に隣り合う第2磁石42の間に、分割壁29を通過する磁束の量を増加させる補助磁石5a~5dが設けられている。
【0122】
この構成によれば、補助磁石5a~5dによりマグネットトルクを向上させることができ、ひいては、モータ100のトルクを向上させることができる。また、補助磁石5bは、ロータ本体2のうち、周方向に隣り合う磁極部4の間のスペースを利用して設けることができ、ロータ1の大型化を低減できる。
【0123】
また、本開示の技術の第6の側面に係るモータ100,100A~100I,100Kは、第1乃至第5のいずれか1つの側面のロータ1,1A~1I,1Kと、ロータ1A~1I,1Kを駆動するステータ6とを備える。
【符号の説明】
【0124】
100,100A~100K モータ
1,1A~1K ロータ
2 ロータ本体
21 第1配置孔
22 第2配置孔
29 分割壁
29a 第1分割壁
29b 第2分割壁
4 磁極部
41 第1磁石
42 第2磁石
5a~5d 補助磁石
6 ステータ
t1a 寸法
t1b 寸法
t2 寸法
P 基準点
R1 第1基準線
R2 第2基準線
X 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15