(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】延焼防止ユニットおよびそれを備えるバッテリー
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6555 20140101AFI20241213BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241213BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241213BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20241213BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20241213BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20241213BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20241213BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20241213BHJP
【FI】
H01M10/6555
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/653
H01M10/658
H01M10/6567
H01M10/6556
H01M10/647
(21)【出願番号】P 2023543599
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2021031461
(87)【国際公開番号】W WO2023026458
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】安藤 均
(72)【発明者】
【氏名】細谷 資将
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-99940(JP,A)
【文献】特開2021-098308(JP,A)
【文献】特開2015-090750(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146438(WO,A1)
【文献】特開2020-165483(JP,A)
【文献】特開2020-140804(JP,A)
【文献】特開2015-185535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60-10/667
H01M 50/204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱源同士の間に挟んで配置される延焼防止シートと、
前記熱源からの熱を伝える先にある部材と前記熱源との間に配置される熱伝導部材と、を備え、
前記延焼防止シートは、
1または2以上のゴムシートと、
前記ゴムシートよりも耐熱性に優れる1または2以上の耐熱シートと、
前記ゴムシートおよび前記耐熱シートよりも熱伝導性に優れる1または2以上の熱伝導シートと、
を積層した多層シートであって、
前記熱伝導シートは、前記ゴムシートおよび前記耐熱シートよりも突出して前記熱伝導シートの厚さ方向両面を露出した突出部を有し、
前記延焼防止シートは、前記熱伝導シートの前記突出部を前記熱伝導部材に接触させた状態で前記熱伝導部材に立設していることを特徴とする延焼防止ユニット。
【請求項2】
前記熱伝導部材は、ゴム状弾性体の中に、前記ゴム状弾性体より熱伝導性に優れる熱伝導フィラーを含み、
前記突出部は、前記熱伝導部材の表面から内部に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止ユニット。
【請求項3】
前記熱伝導部材は、ゴムまたは樹脂を主材とする成形体と、前記成形体より熱伝導性に優れる熱伝導フィルムと、を備え、
前記熱伝導フィルムは、前記成形体の外表面に露出しており、
前記突出部は、前記熱伝導フィルムに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止ユニット。
【請求項4】
前記ゴムシートは、多孔性のスポンジシートであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の延焼防止ユニット。
【請求項5】
前記耐熱シートは、タルクおよび/またはシリカを含有するシートであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の延焼防止ユニット。
【請求項6】
前記熱伝導シートは、グラファイトおよび/またはアルミニウム化合物を含有するシートであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の延焼防止ユニット。
【請求項7】
前記多層シートは、その厚さ方向両面と当該両面をつなぐ少なくとも一方の端面とを有する袋を形成しており、
前記熱伝導シートは、前記袋の内部に配置され、
前記熱伝導シートは、前記袋を貫通して外に向けて前記突出部を突出させていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の延焼防止ユニット。
【請求項8】
筐体内に、複数の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、
前記バッテリーは、前記筐体内に請求項1から7のいずれか1項に記載の延焼防止ユニットを備え、
前記延焼防止シートは、前記バッテリーセル間に挟まれており、
前記熱伝導部材は、前記バッテリーセルと前記筐体の冷却部との間に挟まれていることを特徴とするバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【クロスリファレンス】
【0001】
本願において引用した特許、特許出願及び文献に記載された内容は、本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、延焼防止ユニットおよびそれを備えるバッテリーに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しようとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、電気自動車の普及が進行してきている。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置などの課題がある。
【0004】
上記自動車用バッテリー等の各種バッテリーは、内部短絡等が原因によりバッテリーが熱暴走し、発火や発煙等が生じる虞がある。近年、自動車用バッテリーとして、筐体内に複数のバッテリーセルを並べて装着したものが知られている。このような複数のバッテリーセルが並べて装着されたバッテリーにおいて、1つのバッテリーセルに発火や発煙等が生じた場合、周囲のバッテリーセルに熱が伝わることにより、さらに大きな発火、発煙、爆発等の不具合が生じる虞がある。このような不具合による被害を最小限に抑えるため、異常高温になったバッテリーセルの熱を周囲のバッテリーセルに伝え難くする方法が検討されており、例えば、複数のバッテリーセル同士の間に耐火材や断熱層等の延焼防止部材を設ける方法が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バッテリーセルは、充電および放電の際に温度上昇する。また、バッテリーセルの一部が異常に過熱する場合もある。このような場合、バッテリーセル間の熱伝導の低減が必要になる。また、バッテリーセルの温度上昇に伴いバッテリーセルの特に側面が膨らむ可能性がある。このため、バッテリーセル間の延焼防止部材は、バッテリーセルの膨張時に破損しないことが要求される。さらに、単にバッテリーセル間の熱伝導を低減するのみならず、積極的に熱を外部に逃がしてバッテリーセルを冷却するのが好ましい。上記要望は、バッテリーセルのみならず、回路基板、電子部品あるいは電子機器本体のような他の熱源にも通じることである。また、このような要望に応えることは、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」という本出願人の持続可能な開発目標の達成にも資する。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱源の温度上昇時に熱源同士の間の熱伝導を低減して延焼を防止し、熱源の膨張時に破損しにくく、かつ積極的に熱源からの放熱を可能とする延焼防止ユニットおよびそれを備えるバッテリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る延焼防止ユニットは、複数の熱源同士の間に挟んで配置される延焼防止シートと、
前記熱源からの熱を伝える先にある部材と前記熱源との間に配置される熱伝導部材と、を備え、
前記延焼防止シートは、
1または2以上のゴムシートと、
前記ゴムシートよりも耐熱性に優れる1または2以上の耐熱シートと、
前記ゴムシートおよび前記耐熱シートよりも熱伝導性に優れる1または2以上の熱伝導シートと、
を積層した多層シートであって、
前記熱伝導シートは、前記ゴムシートおよび前記耐熱シートよりも突出して前記熱伝導シートの厚さ方向両面を露出した突出部を有し、
前記延焼防止シートは、前記熱伝導シートの前記突出部を前記熱伝導部材に接触させた状態で前記熱伝導部材に立設している。
(2)別の実施形態に係る延焼防止ユニットにおいて、好ましくは、前記熱伝導部材は、ゴム状弾性体の中に、前記ゴム状弾性体より熱伝導性に優れる熱伝導フィラーを含み、
前記突出部は、前記熱伝導部材の表面から内部に挿入されていても良い。
(3)別の実施形態に係る延焼防止ユニットにおいて、好ましくは、前記熱伝導部材は、ゴムまたは樹脂を主材とする成形体と、前記成形体より熱伝導性に優れる熱伝導フィルムと、を備え、
前記熱伝導フィルムは、前記成形体の外表面に露出しており、
前記突出部は、前記熱伝導フィルムに接続されていても良い。
(4)別の実施形態に係る延焼防止ユニットにおいて、好ましくは、前記ゴムシートは、多孔性のスポンジシートであっても良い。
(5)別の実施形態に係る延焼防止ユニットにおいて、好ましくは、前記耐熱シートは、タルクおよび/またはシリカを含有するシートであっても良い。
(6)別の実施形態に係る延焼防止ユニットにおいて、好ましくは、前記熱伝導シートは、グラファイトおよび/またはアルミニウム化合物を含有するシートであっても良い。
(7)別の実施形態に係る延焼防止ユニットにおいて、好ましくは、前記多層シートは、その厚さ方向両面と当該両面をつなぐ少なくとも一方の端面とを有する袋を形成しており、
前記熱伝導シートは、前記袋の内部に配置され、
前記熱伝導シートは、前記袋を貫通して外に向けて前記突出部を突出させていても良い。
(8)上記目的を達成するための一実施形態に係るバッテリーは、
筐体内に、複数の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、
前記バッテリーは、前記筐体内に請求項1から7のいずれか1項に記載の延焼防止ユニットを備え、
前記延焼防止シートは、前記バッテリーセル間に挟まれており、
前記熱伝導部材は、前記バッテリーセルと前記筐体の冷却部との間に挟まれている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱源の温度上昇時に熱源同士の間の熱伝導を低減して延焼を防止し、熱源の膨張時に破損しにくく、かつ積極的に熱源からの放熱を可能とする延焼防止ユニットおよびそれを備えるバッテリーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る延焼防止ユニットを製造する状況の斜視図および熱伝導部材の一部Bの拡大図を示す。
【
図2】
図2は、
図1の延焼防止ユニットの製造後の状況の斜視図を示す。
【
図3】
図3は、
図2の延焼防止ユニットのC-C線断面図および一部Dの拡大図を示す。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る延焼防止ユニットにおける第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図および一部Eの拡大図を示す。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る延焼防止ユニットにおける第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図および一部Fの拡大図を示す。
【
図6】
図6は、第4実施形態に係る延焼防止ユニットにおける第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図および一部Gの拡大図を示す。
【
図7】
図7は、第5実施形態に係る延焼防止ユニットおよびそれを構成する延焼防止シートにおける第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図、ならびに当該延焼防止ユニットを構成する熱伝導部材の平面図および右側面図を示す。
【
図8】
図8は、第6実施形態に係る延焼防止ユニットにおける第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図を示す。
【
図9】
図9は、第7実施形態に係る延焼防止ユニットにおける第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図と、熱伝導部材の平面図および右側面図と、を示す。
【
図10】
図10は、変形例に係る延焼防止シートの断面図を示す。
【
図11】
図11は、第8実施形態に係る延焼防止ユニットの熱伝導部材の平面図を示す。
【
図12】
図12は、第8実施形態に係る延焼防止ユニットを製造する状況を、第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図にて示す。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係るバッテリーの縦断面図を示す。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係るバッテリーの縦断面図を示す。
【符号の説明】
【0011】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g・・・延焼防止ユニット、10,30,40,50・・・熱伝導部材,11・・・熱伝導フィラー、20,20a,20b,20c,20d,20e,20f・・・延焼防止シート(多層シート),21・・・耐熱シート、22・・・熱伝導シート,23・・・ゴムシート(一例として、スポンジシート)、25,25d・・・突出部、27・・・袋、31,41・・・成形体、32,42,60・・・熱伝導フィルム、61・・・ゴム管(成形体)、70,70a・・・バッテリー、71・・・筐体、72・・・底部(熱を伝える先にある部材、冷却部)、80・・・バッテリーセル(熱源の一例)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
1.延焼防止ユニット
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る延焼防止ユニットを製造する状況の斜視図および熱伝導部材の一部Bの拡大図を示す。
図2は、
図1の延焼防止ユニットの製造後の状況の斜視図を示す。
図3は、
図2の延焼防止ユニットのC-C線断面図および一部Dの拡大図を示す。
【0014】
この実施形態に係る延焼防止ユニット1は、複数の熱源同士の間に挟んで配置される延焼防止シート20と、熱源からの熱を伝える先にある部材と熱源との間に配置される熱伝導部材10と、を備える。延焼防止シート20は、所定の間隔をあけて熱伝導部材10に立設されている。当該所定の間隔の部位には、熱源を配置可能である。延焼防止ユニット1は、熱伝導部材10に切り込みを入れておき、延焼防止シート20を当該切り込みに挿入することで製造することができる。また、延焼防止ユニット1は、熱伝導部材10の硬化前の部材に延焼防止シート20を挿入し、当該硬化前の部材を硬化して熱伝導部材10を得ることにより、製造しても良い。延焼防止シート20の数は、この実施形態および以後の実施形態では9つである。延焼防止シート20の数は、1または2以上であれば熱源の数に応じて増減可能である。熱伝導部材10の数は、この実施形態では1つであるが、特に制約はなく1または2以上であれば良い。
【0015】
延焼防止シート20は、1または2以上のゴムシート23と、1または2以上の耐熱シート21と、1または2以上の熱伝導シート22とを積層した多層シートである。この実施形態に係る延焼防止シート20は、1つの耐熱シート21と、1つの熱伝導シート22と、1つのゴムシート23とを順に積層した多層シートである。延焼防止シート20を構成する耐熱シート21、熱伝導シート22およびゴムシート23の各数は、1以上であれば良い。また、隣り合うシートの積層方法については、特に制約はなく、接着剤、粘着剤または両面テープの接続手段を介在させて積層する方法の他、前記接続手段を介在させない方法(例えば、圧着)でも良い。
【0016】
耐熱シート21は、ゴムシート23よりも耐熱性に優れるシートである。熱伝導シート22は、ゴムシート23および耐熱シート21よりも熱伝導性に優れるシートである。
【0017】
(1)ゴムシート
ゴムシート23は、ゴム状弾性体からなるシートである。「ゴム状弾性体」という文言に代えて「弾性体」あるいは「クッション部材」という文言を使用しても良い。ゴムシート23は、複数の熱源同士の間にあってクッション性を発揮させて、耐熱シート21に加わる荷重によって耐熱シート21が破損しないようにする保護部材としての機能と、熱源の膨張に伴い変形する機能と、を有する。また、ゴムシート23は、この実施形態においては、延焼防止シート20とそれと接する熱源とを一体化しやすくする機能も有する。
【0018】
ゴムシート23は、その内部に気泡を有するスポンジ状の部材、あるいは気泡を含まないゴム状弾性体のいずれでも良いが、より好ましくはスポンジ状の部材である。ゴムシート23は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。
【0019】
ゴムシート23は、好ましくは、熱源から伝わる熱によって容易に溶融あるいは分解等せず、その形態を維持できる程度の耐熱性を有する。この実施形態では、ゴムシート23は、好ましくは、多孔性のスポンジシートである。それは、シート内の空孔は、断熱効果に優れる空気を含むからである。また、ゴムシート23は、好ましくは、シリコーンゴムを主として含むシートである。それは、シリコーンゴムは、200℃前後までの熱に耐え得るからである。本願において、「主として」または「主材」とは、全体の50質量%を超える比率を占めることを意味する。ゴムシート23は、より好ましくは、シリコーンゴムのスポンジシートである。ゴムシート23の硬度は、ショアA硬度で20度~80度が好ましく、30度~70度がより好ましい。ゴムシート23は、難燃性を高めるために、ゴム中に、カーボン、ホウ酸などの難燃材を分散して構成されていても良い。また、ゴムシート23については、その厚さに制約はないが、2~20mmが好ましく、3~8mmがより好ましい。ゴムシート23は、延焼防止シート20を構成する層の中で最も厚い方が好ましい。これにより、延焼防止シート20を構成する耐熱シート21あるいは熱伝導シート22の破損を低減できる。ただし、ゴムシート23は、シートの強度、可撓性および耐熱性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。なお、ゴムシート23をソリッドのゴムシートとする場合には、ゴムシート23の片面または両面に、凹部または溝を設け、あるいは厚さ方向に貫通する孔を設けるのが好ましい。凹部、溝または孔の中の空気が断熱効果を発揮できるからである。また、ゴムシート23の片面または両面を鏡面にしても良い。
【0020】
(2)熱伝導シート
熱伝導シート22は、ゴムシート23および耐熱シート21よりも突出して熱伝導シート22の厚さ方向両面を露出した突出部25を有する。延焼防止シート20は、突出部25を熱伝導部材10に向けて、熱伝導部材10中に挿入される(
図1の矢印Aを参照。)。延焼防止シート20は、熱伝導シート22の突出部25を熱伝導部材10に接触させた状態で熱伝導部材10に立設している。突出部25は、ゴムシート23および耐熱シート21に被覆されずに熱伝導シート22を露出した部位である。このため、熱源から熱伝導シート22に伝わってきた熱を速やかに熱伝導部材10へと伝えることができる。すなわち、熱伝導シート22は、延焼防止シート20において熱輸送路としての機能を有する。
【0021】
熱伝導シート22は、炭素(例えばグラファイト)、Al2O3、AlN、cBNまたはhBNのシートの他、炭素、Al2O3、AlN、cBNまたはhBNをフィラーとして含む樹脂シート、同フィラーを含む紙シートでも良い。樹脂としては、アラミド繊維を例示できる。熱伝導シート22は、より好ましくは、グラファイトおよび/またはアルミニウム化合物を含有するシートである。この実施形態において、熱伝導シート22は、好ましくは、グラファイト製のシートまたはグラファイトをフィラーとして樹脂中に分散させたシートである。また、熱伝導シート22については、その厚さに制約はないが、0.05~3mmが好ましく、0.08~0.6mmがより好ましい。ただし、熱伝導シート22は、シートの強度、可撓性および耐熱性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。
【0022】
(3)耐熱シート
耐熱シート21は、好ましくは、熱源間の延焼を有効に防止する機能を有する。耐熱シート21は、その構成材料を問わないが、好ましくは、タルクを主として含むシートである。耐熱シート21は、例えば、タルクと、樹脂(紙でも良い)とを含むシートでも良い。樹脂としては、例えば、アラミド繊維を挙げることができる。タルクの耐熱シート21に占める含有率は、好ましくは55~99質量%、より好ましくは75~90質量%である。タルクは、一般に、含水ケイ酸マグネシウムを主成分とするセラミックスであり、酸化鉄等の不純物を若干含有している。不純物の種類および量は、タルク原石の産地によって異なるが、耐熱シート21に含まれるタルクとしては、それらの点で特に限定されるものではない。タルクは、例えば、有機シラン系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ系化合物、有機チタネート系化合物、イソシアネート系化合物等の公知の表面処理剤で表面処理したものを使用しても良い。耐熱シート21は、上述のようなタルクを1種類のみ含んでいても良いし、粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種類以上を含んでいても良い。
【0023】
耐熱シート21は、好ましくは、耐熱性および難燃性に優れたシートである。耐熱シート21は、タルクを主として含むシートに限定されず、少なくともゴムシート23より耐熱性が高く、また難燃性の高い材料で構成されていれば良い。そのような材料としては、シリカ、ムライト、コージライト、ステアタイト、フォルステライト、チタニア、ジルコニアのような熱伝導率の比較的低い材料を例示できる。耐熱シート21は、より好ましくは、上述のタルクおよび/または上述のシリカを含有するシートである。耐熱シート21は、導電性に優れるか否かは問わない。耐熱シート21は、湾曲性(若しくは屈曲性)に優れるシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.05~2.0mmが好ましく、0.1~1.0mmがより好ましい。耐熱シート21の厚さは、好ましくは、ゴムシート23の厚さに比べて小さい。ただし、耐熱シート21は、シートの強度、可撓性および耐熱性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。
【0024】
(4)熱伝導部材
熱伝導部材10は、熱源から放熱する先にある部材(例えば、冷却部)と熱源との間に配置される部材である。熱伝導部材10は、この実施形態では、ゴム状弾性体の中に、ゴム状弾性体より熱伝導性に優れる熱伝導フィラー11を含む(
図1の一部Bの拡大図を参照。)。ゴム状弾性体は、好ましくは、ゴムシート23を構成するゴムと同じ選択肢から選ばれる。熱伝導部材10を構成するゴム状弾性体としては、比較的耐熱性に優れるシリコーンゴムが好ましい。熱伝導フィラー11としては、炭素(例えばグラファイト)、Al
2O
3、AlN、cBNまたはhBNの他、AlやCu等の金属を用いることができる。金属に、鉄、コバルト、ニッケルのような強磁性体のフィラーを用いても良い。
【0025】
熱伝導シート22の突出部25は、熱伝導部材10の表面から内部に挿入されている。突出部25は、熱伝導部材10の厚さ方向の途中まで挿入される以外、当該厚さ方向全長にわたって挿入されていても良い。また、突出部25以外に、耐熱シート21および/またはゴムシート23の一部も熱伝導部材10中に挿入されていても良い。
【0026】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る延焼防止ユニットについて説明する。先の実施形態と共通する部分については重複した説明を省略する。
【0027】
図4は、第2実施形態に係る延焼防止ユニットにおける第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図および一部Eの拡大図を示す。
【0028】
第2実施形態に係る延焼防止ユニット1aは、複数の熱源同士の間に挟んで配置される延焼防止シート20aと、熱源からの熱を伝える先にある部材と熱源との間に配置される熱伝導部材10と、を備える。延焼防止シート20aは、所定の間隔をあけて熱伝導部材10に立設されている。この実施形態に係る延焼防止シート20aは、2つの耐熱シート21と、1つの熱伝導シート22と、1つのゴムシート23とを有する。より詳細には、延焼防止シート20aは、1つの耐熱シート21と、1つの熱伝導シート22と、1つのゴムシート23と、1つの耐熱シート21とを順に積層した多層シートである。耐熱シート21は、延焼防止シート20aの2つの最外層を構成している。このため、延焼防止シート20aは、延焼防止効果に優れたシートとなる。熱伝導シート22の突出部25は、2つの耐熱シート21および1つのゴムシート23よりも外に突出している。延焼防止シート20aは、突出部25を熱伝導部材10に挿入して熱伝導部材10に立設されている。上述以外の点については、第1実施形態と共通するので、重複した説明を省略する。
【0029】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る延焼防止ユニットについて説明する。先の実施形態と共通する部分については重複した説明を省略する。
【0030】
図5は、第3実施形態に係る延焼防止ユニットにおける第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図および一部Fの拡大図を示す。
【0031】
第3実施形態に係る延焼防止ユニット1bは、複数の熱源同士の間に挟んで配置される延焼防止シート20bと、熱源からの熱を伝える先にある部材と熱源との間に配置される熱伝導部材10と、を備える。延焼防止シート20bは、所定の間隔をあけて熱伝導部材10に立設されている。この実施形態に係る延焼防止シート20bは、2つの耐熱シート21と、1つの熱伝導シート22と、1つのゴムシート23とを有する。より詳細には、延焼防止シート20bは、1つの熱伝導シート22と、1つの耐熱シート21と、1つのゴムシート23と、1つの耐熱シート21とを順に積層した多層シートである。熱伝導シート22は、延焼防止シート20bの1つの最外層を構成している。このため、延焼防止シート20bは、一方の熱源からの熱を迅速に熱伝導部材10へと伝えることができる。熱伝導シート22の突出部25は、2つの耐熱シート21および1つのゴムシート23よりも外に突出している。延焼防止シート20bは、突出部25を熱伝導部材10に挿入して熱伝導部材10に立設されている。上述以外の点については、前記各実施形態と共通するので、重複した説明を省略する。
【0032】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る延焼防止ユニットについて説明する。先の実施形態と共通する部分については重複した説明を省略する。
【0033】
図6は、第4実施形態に係る延焼防止ユニットにおける第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図および一部Gの拡大図を示す。
【0034】
第4実施形態に係る延焼防止ユニット1cは、複数の熱源同士の間に挟んで配置される延焼防止シート20cと、熱源からの熱を伝える先にある部材と熱源との間に配置される熱伝導部材10と、を備える。延焼防止シート20cは、所定の間隔をあけて熱伝導部材10に立設されている。この実施形態に係る延焼防止シート20cは、2つの耐熱シート21と、2つの熱伝導シート22と、1つのゴムシート23とを有する。より詳細には、延焼防止シート20cは、1つの熱伝導シート22と、1つの耐熱シート21と、1つのゴムシート23と、1つの耐熱シート21と、1つの熱伝導シート22とを順に積層した多層シートである。熱伝導シート22は、延焼防止シート20cの2つの最外層を構成している。このため、延焼防止シート20cは、このシート20cを挟む熱源からの熱をより迅速に熱伝導部材10へと伝えることができる。熱伝導シート22の突出部25は、2つの耐熱シート21および1つのゴムシート23よりも外に突出している。延焼防止シート20cは、2つの突出部25を熱伝導部材10に挿入して熱伝導部材10に立設されている。上述以外の点については、前記各実施形態と共通するので、重複した説明を省略する。
【0035】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る延焼防止ユニットについて説明する。先の実施形態と共通する部分については重複した説明を省略する。
【0036】
図7は、第5実施形態に係る延焼防止ユニットおよびそれを構成する延焼防止シートにおける第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図、ならびに当該延焼防止ユニットを構成する熱伝導部材の平面図および右側面図を示す。
【0037】
第5実施形態に係る延焼防止ユニット1dは、複数の熱源同士の間に挟んで配置される延焼防止シート20dと、熱源からの熱を伝える先にある部材と熱源との間に配置される熱伝導部材30と、を備える。延焼防止シート20dは、所定の間隔をあけて熱伝導部材30に立設されている。この実施形態に係る延焼防止シート20dは、第1実施形態に係る延焼防止シート20と同じ層構造を有しているが、熱伝導シート22の突出部25dを断面視にてL字状に屈曲させている点で延焼防止シート20と異なる。
【0038】
熱伝導部材30は、第1実施形態に係る延焼防止ユニット1を構成する1つの熱伝導部材10ではなく、10個のプレート状の部材である。
図7は、1つのプレート状の熱伝導部材30の平面図および右側面図を示す。熱伝導部材30は、ゴムまたは樹脂を主材とする成形体31と、成形体31より熱伝導性に優れる熱伝導フィルム32と、を備える。成形体31は、好ましくは、ゴムシート23のゴムと同様の選択肢から成る。熱伝導フィルム32は、好ましくは、炭素(グラファイトも含む)を主材とする炭素製のフィルム、樹脂中に熱伝導フィラー(炭素、金属、セラミックスなどのフィラー)を分散させたフィルムである。
【0039】
熱伝導フィルム32は、成形体31の外表面に露出している。より詳細には、成形体31は、薄い直方体形状を有する。帯状の熱伝導フィルム32は、成形体31の長さ方向(最も長い辺の方向)に向かって、成形体31の厚さ方向の表側の面と裏側の面とに交互に露出しながら蛇腹状に進行させて固定されている。突出部25dは、熱伝導部材30の側面と底面に接触し、かつ熱伝導フィルム32に接触するように、熱伝導部材30に固定されている。突出部25dと熱伝導部材30との固定方法については、特に制約はなく、接着剤、粘着剤または両面テープなどを介在させる方法の他、圧着などの何らの介在物を有しない方法でも良い。
【0040】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る延焼防止ユニットについて説明する。先の実施形態と共通する部分については重複した説明を省略する。
【0041】
図8は、第6実施形態に係る延焼防止ユニットにおける第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図を示す。
【0042】
第6実施形態に係る延焼防止ユニット1eは、第5実施形態の延焼防止シート20dを熱伝導部材30の表側の面の熱伝導フィルム32に固定している点を除き、第5実施形態に係る延焼防止ユニット1dと同様の構成を有する。このように、突出部25dは、熱伝導部材30の表側の面に固定されていても良い。なお、熱伝導部材30は、上述の構造と同じ構造の1個の部材であっても良い。
【0043】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態に係る延焼防止ユニットについて説明する。先の実施形態と共通する部分については重複した説明を省略する。
【0044】
図9は、第7実施形態に係る延焼防止ユニットにおける第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図と、熱伝導部材の平面図および右側面図と、を示す。
【0045】
第7実施形態に係る延焼防止ユニット1fは、第6実施形態の熱伝導部材30を、熱伝導部材40に変更している点を除き、第6実施形態に係る延焼防止ユニット1eと同様の構成を有する。熱伝導部材40の数は、延焼防止シート20dの並ぶ方向に3個、紙面奥行きに5個の合計15個である。ただし、熱伝導部材40の数に制約はない。
【0046】
図9は、1つのプレート状の熱伝導部材40の平面図および右側面図を示す。熱伝導部材40は、ゴムまたは樹脂を主材とする成形体41と、成形体41より熱伝導性に優れる熱伝導フィルム42と、を備える。成形体41は、好ましくは、ゴムシート23のゴムと同様の選択肢から成る。熱伝導フィルム42は、好ましくは、炭素(グラファイトも含む)を主材とする炭素製のフィルム、樹脂中に熱伝導フィラー(炭素、金属、セラミックスなどのフィラー)を分散させたフィルムである。
【0047】
熱伝導フィルム42は、成形体41の外表面に露出している。より詳細には、成形体41は、薄い直方体形状を有する。帯状の熱伝導フィルム42は、成形体41の幅方向(2番目に長い辺の方向)に向かって、成形体41の厚さ方向の表側の面と裏側の面とに交互に露出しながら蛇腹状に進行させて固定されている。熱伝導フィルム42は、成形体41の長さ方向(最も長い辺の方向)に2列で固定されている。突出部25dは、熱伝導部材40の熱伝導フィルム42に接触するように、熱伝導部材40の表側の面に固定されている。突出部25dと熱伝導部材40との固定方法については、特に制約はなく、接着剤、粘着剤または両面テープなどを介在させる方法の他、圧着などの何らの介在物を有しない方法でも良い。突出部25dは、熱伝導部材40の裏側の面に固定されていても良い。なお、熱伝導部材40は、上述の構造と同じ構造の1個の部材であっても良い。
【0048】
(変形例)
次に、延焼防止ユニットを構成する延焼防止シートの変形例について説明する。
【0049】
図10は、変形例に係る延焼防止シートの断面図を示す。
【0050】
変形例1に係る延焼防止シート20eは、耐熱シート21、熱伝導シート22、ゴムシート23、耐熱シート21の4層の多層シートである。多層シートは、その厚さ方向両面と当該両面をつなぐ一方の端面21aとを有する袋27を形成している。すなわち、袋27は、耐熱シート21によって形成されている。熱伝導シート21およびゴムシート23は、袋27の内部に配置されている。熱伝導シート21は、端面21aの一部に形成された開口部21bから袋27を貫通して外に向けて突出部25を突出させている。
【0051】
変形例2に係る延焼防止シート20fは、耐熱シート21、ゴムシート23、熱伝導シート22、ゴムシート23、耐熱シート21の5層の多層シートである。延焼防止シート20fにおけるその他の構成は、変形例1に係る延焼防止シート20eと同様である。なお、袋27は、耐熱シート21ではなく、ゴムシート23にて形成されていても良い。また、袋27は、端面21aとの対向面(
図10では、上方端面)のみを開けた形態を有する。しかし、当該上方端面は閉じられていても良い。袋27は、その周囲を完全に閉じた形態でも良い。
【0052】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態に係る延焼防止ユニットについて説明する。先の実施形態と共通する部分については重複した説明を省略する。
【0053】
図11は、第8実施形態に係る延焼防止ユニットの熱伝導部材の平面図を示す。
図12は、第8実施形態に係る延焼防止ユニットを製造する状況を、第1実施形態のC-C断面図と同視の断面図にて示す。
【0054】
第8実施形態に係る延焼防止ユニット1gを構成している熱伝導部材50は、ゴムまたは樹脂を主材とする成形体の一例であるゴム管61と、ゴム管61より熱伝導性に優れる熱伝導フィルム60と、を備える。熱伝導フィルム60は、ゴム管61の外表面に露出している。以下、熱伝導部材50のより具体的な構成を説明する。
【0055】
熱伝導部材50は、長尺状の筒体55を複数本並べて連結した形態を有する。この実施形態では、熱伝導部材50は、20本の筒体55を備えている。しかし、筒体55の数は、20本に限定されず、2以上であれば良い。筒体55同士を連結する手段は、この実施形態では、糸56である。しかし、糸56以外に連結手段を用いても良い。熱伝導部材50は、筒体55と筒体55との間に隙間65を有している。隙間65は、熱伝導部材50を厚さ方向に圧縮した際に筒体55が潰れるのに必要な空間である。また、隙間65は、延焼防止シート20の突出部25を挿入可能な空間ともなり得る。
【0056】
筒体55は、長尺方向に貫通路62を有する円筒形状のゴム管61の外側面に、帯状の熱伝導フィルム60をスパイラル状に巻いた形態を有する。ゴム管61の形状は、円筒形状に限定されず、楕円筒、角筒といった他の形状でも良い。熱伝導フィルム60とゴム管61とは、接着、溶着、粘着等の如何なる手段で固定されていても良い。ゴム管61は、好ましくは、ゴムシート23と同様の選択的なゴム材料から形成され得る。熱伝導フィルム60は、第7実施形態における熱伝導フィルム42と同様の選択的な材料から形成され得る。
【0057】
複数の延焼防止シート20は、好ましくは、突出部25を熱伝導部材50の隙間65に挿入して筒体55の熱伝導フィルム60に固定される。突出部25と熱伝導フィルム60との固定方法は、特に制約はなく、接着、粘着、嵌め込みなどを例示できる。突出部25は、点線矢印Sに示すように、L字状に曲げて、筒体55の表側の面に固定されても良い。また、突出部25は、点線矢印Tに示すように、隙間65から熱伝導部材50の厚さ方向を貫通し、L字状に曲げて、筒体55の側面および裏側の面に固定されても良い。
【0058】
2.バッテリー
次に、本発明に係るバッテリーの好適な実施形態について説明する。
【0059】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るバッテリーについて説明する。
【0060】
図13は、第1実施形態に係るバッテリーの縦断面図を示す。
【0061】
ここで、「縦断面図」は、バッテリー70の筐体71内部のバッテリーセル80の長さ方向にバッテリー70を切断する図を意味する。また、
図13において、バッテリー70は、10個のバッテリーセル80を備えているが、バッテリーセル80の数は特に限定されない。
【0062】
この実施形態において、バッテリー70は、例えば、電気自動車用のバッテリーである。バッテリー70は、一方に開口する有底型の筐体71を備える。筐体71は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリー70は、筐体71内に、複数の熱源としてのバッテリーセル80を備える。バッテリー70は、筐体71内に第1実施形態に係る延焼防止ユニット1を備える。延焼防止シート20は、バッテリーセル80間に挟まれている。熱伝導部材10は、バッテリーセル80と筐体71の底部72(冷却部の一例)との間に挟まれている。バッテリー70は、その種類を限定されず、好ましくは、リチウムイオンバッテリーである。バッテリーセル80の上方には、電極が突出して設けられている。複数のバッテリーセル80は、好ましくは、筐体71内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体71の底部72には、冷却剤75の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ73が備えられている。冷却剤75は、冷却媒体あるいは冷却材と称しても良い。
【0063】
このように、バッテリー70は、バッテリーセル80同士の間に延焼防止シート20を介在させ、バッテリーセル80と筐体71の底部72(熱を移動させる先にある部材)との間に熱伝導部材10を介在させ、かつ延焼防止シート20の熱伝導シート22の突出部25を熱伝導部材10に接触させている。このため、バッテリーセル80が過熱した際、バッテリーセル80から熱伝導部材10を介して底部72へと熱を移動させると共に、過熱状態のバッテリーセル80から隣のバッテリーセル80への熱伝導を低減させ、伝導してきた熱を熱伝導シート22から突出部25を介して熱伝導部材10へと移動させることができる。突出部25は、その端面のみならず厚さ方向両面をも熱伝導の部位に利用できる。このため、延焼防止シート20から熱伝導部材10への熱移動の促進を図ることができる。
【0064】
バッテリー70は、延焼防止ユニット1,1a,1b,1cを備えても良い。また、延焼防止シート20,20a,20b,20cを、変形例に係る延焼防止シート20e,20fに代えても良い。
【0065】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るバッテリーについて説明する。第2実施形態において第1実施形態と共通する部分については、重複した説明を省略する。
【0066】
図14は、第2実施形態に係るバッテリーの縦断面図を示す。
【0067】
この実施形態において、バッテリー70aは、一方に開口する有底型の筐体71を備える。バッテリー70aは、筐体71内に、複数の熱源としてのバッテリーセル80を備える。バッテリー70aは、筐体71内に第5実施形態に係る延焼防止ユニット1dを備える。延焼防止シート20dは、バッテリーセル80間に挟まれている。熱伝導部材30は、バッテリーセル80と筐体71の底部72(冷却部の一例)との間に挟まれている。バッテリー70aは、その種類を限定されず、好ましくは、リチウムイオンバッテリーである。
【0068】
このように、バッテリー70aは、バッテリーセル80同士の間に延焼防止シート20dを介在させ、バッテリーセル80と筐体71の底部72(熱を移動させる先にある部材)との間に熱伝導部材30を介在させ、かつ延焼防止シート20dの熱伝導シート22の突出部25dを熱伝導部材30に接触させている。このため、バッテリーセル80が過熱した際、バッテリーセル80から熱伝導部材30を介して底部72へと熱を移動させると共に、過熱状態のバッテリーセル80から隣のバッテリーセル80への熱伝導を低減させ、伝導してきた熱を熱伝導シート22から突出部25dを介して熱伝導部材30へと移動させることができる。突出部25dは、その端面のみならず厚さ方向少なくとも片面をも熱伝導の部位に利用できる。このため、延焼防止シート20dから熱伝導部材30への熱移動の促進を図ることができる。
【0069】
バッテリー70aは、延焼防止ユニット1e,1f、1gを備えても良い。また、延焼防止シート20dを、延焼防止シート20,20a,20b,20c,20e,20fに代えても良い。
【0070】
3.その他の実施形態
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0071】
各実施形態に係る延焼防止ユニット1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1gにおいて、ゴムシート23は、その一面から内部に窪む凹部を多数備えても良い。熱伝導部材30,40は、L字状の突出部25dを熱伝導フィルム32,42に接触させるのではなく、平板状の突出部25を熱伝導フィルム32,42に接触させても良い。
【0072】
また、熱源は、バッテリーセル80のみならず、回路基板や電子機器本体などの熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源は、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。また、延焼防止ユニット1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1gは、バッテリー70,70a以外の構造物、例えば、電子機器、家電、発電装置等に配置されていても良い。
【0073】
また、上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、延焼防止シート20e,20fの突出部20を曲げて突出部25に変形して、延焼防止ユニット1d,1e,1f,1gに用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、熱源同士または熱源から他の箇所への延焼防止を行うことが望まれる分野にて利用可能である。