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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】触媒、及び耐硫黄性転換触媒方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/882 20060101AFI20241213BHJP
   B01J 35/61 20240101ALI20241213BHJP
   C01B 3/16 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B01J23/882 M
B01J35/61
C01B3/16
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023548991
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 CN2021118430
(87)【国際公開番号】W WO2022089072
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】202011166843.0
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】523157575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司齊魯分公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王民
(72)【発明者】
【氏名】許金山
(72)【発明者】
【氏名】餘漢濤
(72)【発明者】
【氏名】白志敏
(72)【発明者】
【氏名】王昊
(72)【発明者】
【氏名】薑建波
(72)【発明者】
【氏名】薛紅霞
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-173809(JP,A)
【文献】特開平05-261289(JP,A)
【文献】特開平05-245372(JP,A)
【文献】特開平05-076762(JP,A)
【文献】特表2019-509964(JP,A)
【文献】特表2019-513114(JP,A)
【文献】国際公開第2010/116531(WO,A1)
【文献】特開昭50-064190(JP,A)
【文献】中国特許第1087192(CN,C)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01B 3/00-6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、該担体上に担持されたモリブデン酸化物、コバルト酸化物及びコバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物と、を含有し、前記コバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物は、モリブデン元素、コバルト元素、A元素、及び酸素元素を含有し、
A元素は、希土類金属元素、及びアルカリ土類金属元素のうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする耐硫黄性転換触媒。
【請求項2】
A元素は、La、Ce、Nd、Gd、Mg、Ca、Srのうちの1種又は複数種である、請求項1に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項3】
A元素は、A元素とA元素を含み、前記A元素は、希土類金属元素のうちの1種又は複数種であり、前記A元素は、アルカリ土類金属元素のうちの1種又は複数種である、請求項1又は2に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項4】
前記A 元素は、La、Ce、Nd、Gdのうちの1種又は複数種であり、前記A 元素は、Mg、Ca、Srのうちの1種又は複数種である、請求項3に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項5】
前記A 元素と前記A 元素とのモル比が、1~99:99~1である、請求項3または4に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項6】
前記A 元素と前記A 元素とのモル比が、1~9:9~1である、請求項5に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項7】
XRDスペクトルにおいて、27.9±0.2°に特徴的なピークが現れる、請求項1~のいずれか1項に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項8】
XRDスペクトルにおいて、24.9±0.2°、27.9±0.2°及び36.2±0.2°に特徴的なピークが現れる、請求項7に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項9】
-TPRスペクトルにおける主な還元ピーク温度が600℃以上にある、請求項1~のいずれか1項に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項10】
プログラム昇温加硫試験において、200℃以上では2つ以上の吸着・脱着ピークがある、請求項1~のいずれか1項に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項11】
前記耐硫黄性転換触媒において、モリブデン元素とコバルト元素との合計含有量1molに対して、A元素の含有量は0.4mol以上1mol未満である、請求項1~10のいずれか1項に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項12】
前記耐硫黄性転換触媒において、モリブデン元素とコバルト元素との合計含有量1molに対して、モリブデン元素の含有量は、0.4molよりも大きく1mol未満である、請求項1~11のいずれか1項に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項13】
前記担体は、酸化アルミニウム、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、及び炭素系担体又はこれらのうちの2種以上で形成される複合担体である、請求項1~12のいずれか1項に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項14】
前記耐硫黄性転換触媒において、担体は30~90質量%を占める、請求項1~13のいずれか1項に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項15】
前記耐硫黄性転換触媒の比表面積は、40m・g-1上である、請求項1~14のいずれか1項に記載の耐硫黄性転換触媒。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の耐硫黄性転換触媒の存在下で、原料ガス中のCOを水蒸気と接触させるステップを含み、
前記原料ガスはHSを含有し、前記HSの含有量は100ppm以上である、ことを特徴とする耐硫黄性転換触媒方法。
【請求項17】
前記H Sの含有量は、100~1500ppmである、請求項16に記載の耐硫黄性転換触媒方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、耐硫黄性触媒の分野に関し、具体的には、触媒、及び該触媒を用いた耐硫黄性転換触媒方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
耐硫黄性転換は、石炭を効率的に利用するための重要な手段であり、現在の水素製造の主要な方式でもあり、触媒は、耐硫黄性転換プロセスのコアである。他の種類の触媒と比べ、コバルト・モリブデン系触媒は、耐硫黄性があり、反応温度範囲が広く、低コストで、製造プロセスがシンプルであるなどの優位性を持ち、中国国内外の装置で最も広く応用されている。
【0003】
コバルト・モリブデン系耐硫黄性転換触媒には、高活性と高安定性が要求される。コバルト・モリブデン系耐硫黄性転換触媒を用いた耐硫黄性転換反応において、MoSは耐硫黄性転換反応における主要な活性成分と考えられるが、原料ガス中のHS含有量が低い場合、コバルト・モリブデン系耐硫黄性転換触媒の触媒活性は著しく低下する。
【0004】
ペロブスカイトは、優れた導電性、磁気、熱電性、圧電性などの多くの性能を有し、しかも安価に製造でき、高温で熱力学的安定性と機械安定性があり、また、高温条件では優れた酸素イオンと電子伝導体である。しかし、現在製造されたペロブスカイト型耐硫黄性転換触媒の比表面積が小さいので、この種の触媒活性の向上は厳しく制限されている。
【0005】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明の目的は、耐硫黄性触媒反応の触媒活性が低く、特にHS含有量の低い原料ガスに対して耐硫黄性触媒反応の触媒活性が低いという従来技術に存在する問題に対して、触媒活性及び安定性が高い触媒、及び該触媒を用いた耐硫黄性転換触媒方法を提供する。
【0006】
〔課題を解決するための手段〕
上記の目的を達成させるために、本発明の一態様は、担体と、該担体上に担持されたモリブデン酸化物、コバルト酸化物及びコバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物と、を含有し、前記コバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物は、モリブデン元素、コバルト元素、A元素、及び酸素元素を含有し、A元素は、希土類金属元素、アルカリ金属元素、及びアルカリ土類金属元素のうちの1種又は複数種である、触媒を提供する。
【0007】
好ましくは、A元素は、La、Ce、Nd、Gd、Na、K、Mg、Ca、Srのうちの1種又は複数種である。
【0008】
好ましくは、A元素は、A元素とA元素を含み、前記A元素は、希土類金属元素のうちの1種又は複数種であり、前記A元素は、アルカリ金属元素、及びアルカリ土類金属元素のうちの1種又は複数種であり、好ましくは、前記A元素は、La、Ce、Nd、Gdのうちの1種又は複数種であり、前記A元素は、Na、K、Mg、Ca、Srのうちの1種又は複数種であり、好ましくは、A元素とA元素とのモル比が1~99:99~1、好ましくは1~9:9~1である。
【0009】
好ましくは、前記触媒XRDスペクトルにおいて、27.9±0.2°に特徴的なピークが現れ、好ましくは24.9±0.2°、27.9±0.2°及び36.2±0.2°に特徴的なピークが現れる。
【0010】
好ましくは、前記触媒は、H-TPRスペクトルにおける主な還元ピーク温度が600℃以上、好ましくは600~850℃にある。
【0011】
好ましくは、前記触媒のプログラム昇温加硫試験において、200℃以上で2つ以上、好ましくは3つ以上の吸着・脱着ピークがある。
【0012】
好ましくは、前記触媒において、モリブデン元素とコバルト元素との合計含有量1molに対して、A元素の含有量は、0.4mol以上1mol未満、好ましくは0.4~0.9mol、より好ましくは0.5~0.9molである。
【0013】
好ましくは、前記触媒において、モリブデン元素とコバルト元素との合計含有量1molに対して、モリブデン元素の含有量は、0.4molよりも大きく1mol未満、好ましくは0.4molよりも大きく0.8mol未満、より好ましくは0.5~0.6mol、さらに好ましくは0.55~0.6molである。
【0014】
好ましくは、前記担体は、酸化アルミニウム、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、及び炭素系担体又はこれらのうちの2種以上で形成される複合担体であり、より好ましくは、酸化アルミニウム、又は酸化アルミニウムと、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、及び炭素系担体から選択される1種以上とで形成される複合担体である。
【0015】
好ましくは、前記触媒において、担体は、30~90質量%、好ましくは30~80質量%を占める。
【0016】
好ましくは、前記触媒の比表面積は、40m・g-1以上、好ましくは50m・g-1以上、より好ましくは60m・g-1以上である。
【0017】
本発明の第2態様は、上記の本発明の触媒の存在下で、原料ガス中のCOを水蒸気と接触させるステップを含み、前記原料ガスはHSを含有し、前記HSの含有量は100ppm以上、好ましくは100~1500ppmである耐硫黄性転換触媒方法を提供する。
【0018】
本発明の発明者らは、研究を深く行った結果、ペロブスカイト構造の触媒が、適切な組成を有する場合、従来の触媒と比べて、低硫黄、低水ガス比などの過酷な条件でも高い触媒性能及び高い安定性を有しながら、優れた触媒性能を提供することを見出した。
【0019】
これに基づいて、過量のMo、Coがペロブスカイト本体及び担体と強く相互作用し、また、各物質間に相乗作用が存在し、これにより、加硫物中間体の安定性が明らかに上昇する。
【0020】
これによって、本発明では、担体の表面にコバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物を担持する過程において、過量のコバルト及びモリブデンを加えることで、コバルト及びモリブデンの一部が元素Aとともにペロブスカイト複合酸化物を形成し、残りのコバルト及びモリブデンの一部がペロブスカイト複合酸化物の表面に付着し、他の一部のコバルト及びモリブデンが担体と強く相互作用することで、ペロブスカイト構造と担体及びコバルトとモリブデンとの間に強い相乗作用が存在し、これにより、触媒加硫後、加硫物が安定して存在し、反応において、反応ガス中のHS含有量が低い場合、触媒は高い安定性を有し、不活性することはない。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、Alは、一般的な比表面積の大きな担体であり、表面に豊富な有機基が存在し、触媒活性成分がその表面に分散すると、その表面が活性成分と強く相互作用し、適切な製造手法で、コバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物をその表面に担持させれば、ペロブスカイト型触媒の優位性を発揮するだけではなく、Alと活性成分との相互作用が強いという特徴を十分に利用し、担体とペロブスカイト複合酸化物との相乗作用を顕著に高め、耐硫黄性触媒による反応中の加硫物の安定性を明らかに高める。
【0022】
〔発明の効果〕
本発明の触媒は、下記利点を有する。
【0023】
(1)本発明の触媒は、ペロブスカイト型触媒が有する高い比表面積と高い耐硫黄性触媒活性を有するだけでなく、触媒中のコバルト及びびモリブデンがペロブスカイト複合酸化物及び担体と強く相互作用し、担体-ペロブスカイト構造-コバルト及びモリブデンの間に相乗作用が存在するため、硫黄含有量が低いような過酷な条件においても、高い触媒活性を維持しつつ高い安定性及び長い触媒寿命を有することができる。また、該触媒は、大きな比表面積を有し、活性部位への露出量が増加し、触媒活性が顕著に増加する。
【0024】
(2)本発明の触媒は、硫黄固定型耐硫黄性転換触媒として使用することができ、硫黄含有量が低いような過酷な条件においても高い安定性と長い触媒寿命を有する。
【0025】
(3)本発明の触媒は、製造過程が比較的シンプルで、低コストであり、取り扱い易く、大規模な工業的使用に適している。
【0026】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕本発明の実施例1及び比較例3~4で製造された触媒のXRDスペクトルである。
【0027】
図2〕本発明の実施例1~2及び比較例3で製造された触媒のH-TPRスペクトルである。
【0028】
図3〕本発明の実施例1及び比較例3~4で製造された触媒のTPSスペクトルである。
【0029】
図4〕本発明の実施例1、実施例13及び比較例3におけるペロブスカイト触媒中のMo種のXPSスペクトルを示す。
【0030】
図5〕本発明の実施例1及び比較例3におけるペロブスカイト触媒中のMo種のラマンスペクトルである。
【0031】
〔発明を実施するための形態〕
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、精確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個々のポイント値の間、及び個々のポイント値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0032】
本発明の一態様は、担体と、該担体上に担持されたモリブデン酸化物、コバルト酸化物及びコバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物と、を含有し、前記コバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物は、モリブデン元素、コバルト元素、A元素、及び酸素元素を含有し、A元素は、希土類金属元素、アルカリ金属元素、及びアルカリ土類金属元素のうちの1種又は複数種である触媒を提供する。
【0033】
本発明では、前記モリブデン酸化物は、任意のモリブデンの酸化物であってもよいが、好ましくは、モリブデン塩を焙焼して得る酸化物であり、例えば、MoO、MoO又はMoOなどであってもよい。前記コバルト酸化物は、任意のコバルトの酸化物であってもよいが、好ましくは、コバルト塩を焙焼して得る酸化物であり、例えば、Co、CoOなどであってもよい。本発明の1つの好ましい実施形態によれば、前記モリブデン酸化物はMoOであり、前記コバルト酸化物はCoである。
【0034】
本発明の触媒では、構造助剤としてのA元素としては、従来の任意のペロブスカイト複合酸化物(一般式ABOで表され、コバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物の場合は、B元素はCoとMo)中のA元素成分が使用されてもよく、例えば希土類金属元素、アルカリ金属元素、及びアルカリ土類金属元素のうちの1種又は複数種であってもよい。希土類金属元素は、例えばLa、Ce、Nd、Gdなどであってもよく、アルカリ金属元素は、例えばNa、Kなどであってもよく、アルカリ土類金属元素は、例えばMg、Ca、Srなどであってもよい。A元素は、好ましくは、希土類金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素、より好ましくはLa、Ce、Mg、Ca、Srなどである。
【0035】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、前記A元素は、A元素とA元素を含み、前記A元素は、希土類金属元素のうちの1種又は複数種であり、前記A元素は、アルカリ金属元素、及びアルカリ土類金属元素のうちの1種又は複数種、好ましくはアルカリ土類金属元素である。例えば、コバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物は、一般式(A(A1-xBOで表されてもよく、B元素はCoとMoであり、xは、0.1以上、0.15以上、0.2以上、0.25以上、0.3以上、0.35以上、0.4以上又は0.45以上であってもよく、また、xは、0.95以下、0.9以下、0.85以下、0.8以下、0.75以下、0.7以下、0.65以下、0.6以下又は0.55以下であってもよい。
【0036】
好ましい場合、前記A元素は、La、Ce、Nd、Gdのうちの1種又は複数種であり、前記A元素は、Na、K、Mg、Ca、Srのうちの1種又は複数種である。上記A元素とA元素を配合することにより、触媒の触媒活性及び安定性がさらに向上する。
【0037】
好ましい場合、A元素とA元素とのモル比は、1~99:99~1、好ましくは1~9:9~1、より好ましくは1~2:2~1である。上記割合でA元素とA元素を含有することにより、本発明の触媒の触媒活性及び安定性がさらに向上する。
【0038】
前記コバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物の場合、ペロブスカイト構造を備えるものであれば、特に限定はない。好ましくは、モリブデン元素とコバルト元素との合計含有量1molに対して、モリブデン元素の含有量は、0.4molよりも大きく1mol未満、より好ましくは0.4molよりも大きく0.8mol未満、さらに好ましくは0.5~0.6mol、一層好ましくは0.55~0.6molである。上記コバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物は、例えばAMoCo1-zで表されてもよく、ここで、zは0.4よりも大きく1未満、好ましくは、0.4よりも大きく0.8未満、より好ましくは、0.5~0.6、さらに好ましくは、0.55~0.6である。触媒の触媒活性及び安定性をさらに向上させることから、好ましくは、前記触媒において、モリブデン元素とコバルト元素とのモル比は、0.5~0.6:0.4~0.5であってもよいが、好ましくは、0.52~0.56:0.44~0.48である。
【0039】
適量のモリブデン酸化物、コバルト酸化物及びコバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物を同時に触媒に含有させることにより、その触媒活性及び安定性を向上させることを確保するために、好ましくは、前記触媒において、モリブデン元素とコバルト元素との合計含有量1molに対して、A元素の含有量は0.4mol以上1mol未満、好ましくは0.4~0.9mol、より好ましくは0.5~0.9molである。
【0040】
本発明では、理論的にはモリブデン元素及びコバルト元素がA元素とともに全量1:1(モル比)でペロブスカイト複合酸化物を形成し、残りのモリブデン元素及びコバルト元素がそれぞれの酸化物又は両方の複合酸化物の形態で存在する。従来の検出手段及び本発明の実際の使用効果に鑑み、理論に制限されないが、本発明では、触媒に含有されるモリブデン元素とコバルト元素が、A元素とペロブスカイト複合酸化物を形成するのに必要な化学量論よりも大きければ、触媒にモリブデンの酸化物(モリブデン酸化物)、コバルトの酸化物(コバルト酸化物)及びペロブスカイト複合酸化物が含有することを確保することができ、ペロブスカイト複合酸化物は理論量で形成されなくてもよい。モリブデンの酸化物、コバルトの酸化物及びペロブスカイト複合酸化物のそれぞれの正確な含有量については、これらが本発明の実施に影響を与えることはなく、すべて本発明の範囲内である。
【0041】
本発明によれば、前記担体は、酸化アルミニウム、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、及び炭素系担体又はこれらのうちの2種以上で形成される複合担体であってもよい。好ましくは、前記担体は、酸化アルミニウム、シリカ、二酸化チタン、及び二酸化ジルコニウム又はこれらのうちの2種以上で形成される複合担体である。モリブデン酸化物、コバルト酸化物及びコバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物が担体と相互作用することから、前記担体は、好ましくは酸化アルミニウム担体を含有し、より好ましくは、前記担体は、酸化アルミニウム、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、及び炭素系担体又はこれらのうちの2種以上で形成される複合担体である。
【0042】
さらに、本発明の触媒では、酸化アルミニウム担体の存在形態について特に限定はなく、α-Al、β-Al、γ-Al又は非晶質酸化アルミニウムのうちの1種又は複数種であってもよく、所望の触媒活性を提供できればよい。触媒の比表面積を大きくして触媒活性を向上させることから、好ましくは、前記酸化アルミニウム担体は、少なくとも一部のγ-Alを含む。本発明の触媒中の酸化アルミニウム担体は、原位置製造方法で形成されてもよいが、酸化アルミニウム担体に担持させることで本発明の触媒を得ることもできる。
【0043】
触媒活性及び安定性をさらに向上させるために、前記触媒において、担体は、30~90質量%、好ましくは30~80質量%、より好ましくは50~80質量%を占める。
【0044】
本発明によれば、前記触媒の比表面積は、40m・g-1以上、好ましくは50m・g-1以上又は60m・g-1以上、より好ましくは70m・g-1以上又は80m・g-1以上、さらに好ましくは90m・g-1以上又は100m・g-1以上、例えば40~180m・g-1であってもよい。担体を含有することにより触媒の比表面積を大きくすることができ、このため、前記触媒は好ましくは担体を含有する。
【0045】
本発明では、触媒に含有されるペロブスカイト複合酸化物及びモリブデン酸化物、コバルト酸化物、コバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物及び担体は、X線回折(XRD)などの方法で特徴付けられてもよい。本発明の1つの好ましい実施形態による触媒では、XRDスペクトルにおいて、25.5±0.2°における特徴的なピークがMoOを示し、36.2±0.2°における特徴的なピークがCoを示し、27.9±0.2°における特徴的なピークがコバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物を示す。担体については、酸化アルミニウム担体を使用する場合を例にして、酸化アルミニウム担体の存在形態によって、24.9±0.2°、30.6±0.2°、35.2±0.2°、43.3±0.2°、52.5±0.2°、57.5±0.2°のうちの1つ又は複数の位置に特徴的なピークがあってもよい。
【0046】
本発明によれば、前記触媒のTPRスペクトルにおいて、該触媒の主な還元ピーク温度が600℃以上、好ましくは600~850℃、より好ましくは700~800℃であることが明らかになった。触媒内部の還元可能な種のほとんどの還元温度が600℃以上であり、触媒内部のモリブデン酸化物とコバルト酸化物及び担体とペロブスカイト複合酸化物の間に強い相互作用力が存在することが示された。本発明では、「主な還元ピーク温度」とは、触媒のTPRスペクトルにおいて、ピーク面積が最も大きい還元ピークに対応するピーク温度である。
【0047】
本発明によれば、前記触媒のプログラム昇温加硫(TPS)スペクトルから明らかに、前記触媒のプログラム昇温加硫試験において、200℃以上に2つ以上の吸着・脱着ピーク、好ましくは3つ以上の吸着・脱着ピーク、より好ましくは200℃~600℃(好ましくは200~500℃)の範囲内に2つ以上の吸着・脱着ピーク(例えば3~5つ)が存在する。本発明の触媒は、加硫後に、温度が上昇するに伴い、触媒内部の加硫物の分解温度が200℃よりも高くなり、200℃~600℃の間に複数の吸着・脱着ピークが現れ、このことから、触媒が加硫して形成した加硫物の活性成分の安定性が高いことを示した。本発明の1つの好ましい実施形態によれば、前記触媒のプログラム昇温加硫試験において、250~270℃の範囲、330~350℃の範囲、410~430℃の範囲のそれぞれに吸着・脱着ピークがある。
【0048】
上記本発明の触媒の製造方法は、例えば、担体又は担体前駆体、モリブデン含有化合物、コバルト含有化合物、A元素含有化合物及び錯化剤を含む前駆体溶液をゲルにした後、前記ゲルを順次乾燥して焙焼するステップを含んでもよく、ここで、A元素は希土類金属元素、アルカリ金属元素、及びアルカリ土類金属元素のうちの1種又は複数種である。この製造方法では、担体又は担体前駆体は、直接担体として使用されるか、又は担体の形成に使用され、モリブデン含有化合物、コバルト含有化合物及びA元素含有化合物は共同で担体上に担持されたモリブデン酸化物、コバルト酸化物及びコバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物活性成分を形成することに用いられる。好ましい場合、担体の製造及び活性物質の形成がワンステップで製造され(すなわち、担体は原位置製造方法で合成される)、モリブデン酸化物、コバルト酸化物及びコバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物が同時に担体に担持された構造が得られる。
【0049】
本発明の製造方法では、前記モリブデン含有化合物、コバルト含有化合物及びA元素含有化合物は、好ましくは、対応する元素の可溶性塩(例えば、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩など)である。例えば、前記モリブデン含有化合物は、モリブデン酸アンモニウム、硝酸モリブデン、及び酢酸モリブデンのうちの1種又は複数種であってもよく、前記コバルト含有化合物は、硝酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト、及び炭酸コバルトのうちの1種又は複数種であってもよく、前記A元素含有化合物は、硝酸ランタン、硝酸セリウム、硝酸ネオジム、硝酸ガドリニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウムのうちの1種又は複数種であってもよい。酸化アルミニウム担体を例にして、前記担体又は担体前駆体は、酸化アルミニウム担体を使用してもよく、具体的なアルミニウム含有化合物は、アルミニウムイソプロポキシド、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、擬ベーマイト、酸化アルミニウムのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0050】
前記前駆体溶液は、これを化合物として水に溶解することにより製造することができ、化合物の具体的な混合方法については、上記化合物をそのまま水に順に溶解してもよく、直接各化合物の水溶液を利用して混合してもよい。好ましい混合順番としては、担体又は担体前駆体、モリブデン含有化合物、コバルト含有化合物、A元素含有化合物又はこれらの水溶液を順次混合してもよく、モリブデン含有化合物及びコバルト含有化合物を同時に溶解してモリブデンコバルト含有水溶液を形成してから混合してもよい。
【0051】
上記前駆体溶液の製造方法の具体例として、以下のステップを含んでもよい。
【0052】
(1)担体又は担体前駆体を脱イオン水に加えて、均一に混合する。
【0053】
(2)A元素含有化合物の水溶液をそれぞれステップ(1)で得られた混合物に加えて、均一に混合する。
【0054】
(3)モリブデン含有化合物の水溶液及びコバルト含有化合物の水溶液をそれぞれステップ(2)で得られた混合物に滴下し、均一に混合し、新しい液体混合物を得る。
【0055】
本発明によれば、ペロブスカイト複合酸化物の形成を促進するために、前記前駆体溶液には錯化剤がさらに含有される。錯化剤としては、クエン酸、EDTA、アミノ酢酸、アクリルアミド、乳酸、酒石酸、及びヒドロキシ酪酸のうちの1種又は複数種であってもよい。前駆体溶液に錯化剤を添加することで、活性成分の担体表面での分散性を向上させることができ、錯化剤に含有される有機基が金属とキレート化し、反応において金属同士の相互作用を促進し、ペロブスカイト物相の形成や活性成分の分散度向上を促進する。好ましくは、前記前駆体溶液中に含有される金属イオン全量1molに対して、前記錯化剤の使用量は1~4mol、好ましくは1~3mol、より好ましくは1~2molである。また、前駆体溶液を製造する過程において、錯化剤は、好ましくは、担体又は担体前駆体と順に又は同時に添加され、例えば、上記の前駆体溶液を製造する具体例では、ステップ(1)においてクエン酸が添加される。
【0056】
製造された触媒の触媒活性及び安定性を向上させることから、好ましくは、前記前駆体溶液において、モリブデン換算のモリブデン含有化合物とコバルト換算のコバルト含有化合物との合計量1molに対して、モリブデン換算のモリブデン含有化合物の使用量は、好ましくは、0.4molよりも大きく1mol未満、より好ましくは、0.4molよりも大きく0.8mol未満、さらに好ましくは、0.5~0.6mol、一層好ましくは0.55~0.6molである。好ましくは、モリブデン換算のモリブデン含有化合物とコバルト換算のコバルト含有化合物とのモル比は、0.5~0.6:0.4~0.5、好ましくは0.52~0.56:0.44~0.48である。
【0057】
適量のモリブデン酸化物、コバルト酸化物及びコバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物が製造された触媒に同時に含まれることを確保するために、好ましくは、モリブデン換算のモリブデン含有化合物とコバルト換算のコバルト含有化合物との合計量1molに対して、A元素換算のA元素含有化合物の使用量は、0.4mol以上1mol未満、好ましくは0.4~0.9mol、好ましくは0.5~0.9molである。
【0058】
本発明では、前記前駆体溶液をゲルに形成する方式については、特に限定はなく、例えば前記前駆体溶液中の少なくとも一部の水を除去してゲルを調製することができる。ゲルを形成する具体的な条件としては、温度が40~90℃、好ましくは60~80℃、より好ましくは70~80℃であること、時間が4~24h、好ましくは5~10h、より好ましくは6~8hであることが含まれてもよい。
【0059】
本発明では、前記乾燥及び焙焼を行う方式についても特に限定はなく、触媒を製造する任意の設備や条件を用いて行ってもよい。触媒の触媒活性及び安定性を向上させるために、前記乾燥の条件としては、温度が60~200℃、好ましくは80~150℃、より好ましくは80~120℃、さらに好ましくは80~110℃であること、時間が4~15h、好ましくは5~15h、より好ましくは6~12hであることが含まれてもよい。前記焙焼条件として、温度が400~1300℃、好ましくは500~900℃、より好ましくは600~900℃であること、時間が4~48h、好ましくは6~12h、より好ましくは8~12hであることが含まれてもよい。上記条件を用いて乾燥及び焙焼を行うことで、製造された触媒の触媒活性及び安定性をさらに向上させることができる。また、触媒の比表面積を大きくして触媒活性及び安定性を向上させることから、好ましくは、焙焼温度は600~700℃である。
【0060】
本発明の第2態様による耐硫黄性転換触媒方法では、該方法は、上記本発明の触媒の存在下で、原料ガス中のCOを水蒸気と接触させるステップを含み、前記原料ガスはHSを含有し、前記HSの含有量は、100ppm以上、好ましくは100~1500ppmである。
【0061】
上記した通り、本発明の触媒は、好ましくは、耐硫黄性転換触媒として使用される。本発明の触媒を使用すると、原料ガスのHS含有量が100ppm以上(例えば100~2000ppm又は300~2000ppm)であれば、良好な触媒効果が得られる。特に、原料ガス中のHS含有量が低い(例えば1500ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、600ppm以下又は500ppm以下)場合においても、良いCO転化率が得られる。
【0062】
以下、実施例によって本発明について詳細に説明する。
【0063】
実施例1
アルミニウムイソプロポキシド1.74mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.1molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C1を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0064】
実施例2
擬ベーマイト0.64mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸セリウム0.13molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.13mol及び硝酸コバルト0.13molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を60℃に昇温して水分を10h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で8hベークした。ベークして得た固体を800℃の条件で12h焙焼し、触媒C2を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の40%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は1:1である。
【0065】
実施例3
硝酸アルミニウム0.48mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸マグネシウム0.21molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.25mol及び硝酸コバルト0.17molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C3を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の30%を占め、Mg元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.6:0.4である。
【0066】
実施例4
硝酸アルミニウム0.91mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸カルシウム0.11molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.12mol及び硝酸コバルト0.1molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒A4を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の60%を占め、Ca元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0067】
実施例5
アルミニウムイソプロポキシド1.54mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.1molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.1mol及び硝酸コバルト0.1molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C5を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は1:1である。
【0068】
実施例6
アルミニウムイソプロポキシド1.76mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.1molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.12mol及び硝酸コバルト0.08molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C6を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.6:0.4である。
【0069】
実施例7
アルミニウムイソプロポキシド1.81mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.1molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.14mol及び硝酸コバルト0.06molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C7を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.7:0.3である。
【0070】
実施例8
アルミニウムイソプロポキシド1.95mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.13molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C8を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:1.5であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0071】
実施例9
アルミニウムイソプロポキシド1.96mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.15molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.097mol及び硝酸コバルト0.078molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C9を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:1.2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0072】
実施例10
アルミニウムイソプロポキシド1.74mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.1molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を800℃の条件で8h焙焼し、触媒C10を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0073】
実施例11
アルミニウムイソプロポキシド1.74mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.1molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を900℃の条件で8h焙焼し、触媒C11を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0074】
実施例12
α-Al0.87mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合して、懸濁液とし、その後、硝酸ランタン0.1molの水溶液を上記懸濁液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記懸濁液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C12を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0075】
実施例13
アルミニウムイソプロポキシド1.48mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.05mol及び硝酸マグネシウム0.05molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C13を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素及びMg元素の合計と、Mo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、La元素とMg元素とのモル比は1:1であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0076】
実施例14
アルミニウムイソプロポキシド1.52mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.05mol及び硝酸カルシウム0.05molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C14を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素及びCa元素の合計と、Mo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、La元素とCa元素とのモル比は1:1であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0077】
実施例15
取擬ベーマイト1.64mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.08mol及び硝酸カルシウム0.02molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C15を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素及びCa元素の合計と、Mo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、La元素とCa元素とのモル比は4:1であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0078】
実施例16
擬ベーマイト0.25mol、メタチタン酸0.26mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.05mol及び硝酸カルシウム0.05molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C16を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素及びCa元素の合計と、Mo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、La元素とCa元素とのモル比は1:1であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0079】
比較例1
アルミニウムイソプロポキシド1.48molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.05mol及び硝酸マグネシウム0.05molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒DC1を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素及びMg元素の合計と、Mo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0080】
比較例2
アルミニウムイソプロポキシド1.22mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.1molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.055mol及び硝酸コバルト0.045molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒DC2を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:1であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0081】
比較例3
モリブデン酸アンモニウム0.21mol及び硝酸コバルト0.17molを脱イオン水に溶解し、その後、上記水溶液を用いて擬ベーマイト2molに対して等体積含浸を12h行い、含浸後、120℃の条件下で12hベークし、ベーク後、600℃の条件で8h焙焼し、触媒DC3を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0082】
比較例4
α-Al124.3g及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合して、懸濁液とし、その後、硝酸ランタン0.2molの水溶液を上記懸濁液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記懸濁液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒DC4を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:1であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0083】
比較例5
クエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.1molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.055mol及び硝酸コバルト0.045molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒DC5を得た。XRF測定を行った結果、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:1であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0084】
比較例6
クエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.1molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒DC6を得た。XRF測定を行った結果、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0085】
比較例7
アルミニウムイソプロポキシド1.1mol及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒DC7を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0086】
比較例8
α-Al53.8g及びクエン酸2molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒C14を得て、DC8とした。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0087】
比較例9
アルミニウムイソプロポキシド1.638molを脱イオン水に注入し、均一に混合した後、硝酸ランタン0.1molの水溶液を上記溶液に滴下し、均一に混合した。モリブデン酸アンモニウム0.11mol及び硝酸コバルト0.09molの水溶液をそれぞれ上記溶液に滴下し、均一に混合して、前駆体溶液を得た。その後、該前駆体溶液を80℃に昇温して水分を6h蒸発させ、徐々にゲルにした。得られたゲルを120℃の条件で12hベークした。ベークして得た固体を600℃の条件で8h焙焼し、触媒DC9を得た。XRF測定を行った結果、最終的な酸化アルミニウム担体は触媒の全質量の70%を占め、La元素とMo元素及びCo元素の合計とのモル比は1:2であり、Mo元素とCo元素とのモル比は0.55:0.45である。
【0088】
試験例1
X’ Pert3 Powder型X線回折装置を利用して、実施例1、比較例4、及び比較例3で製造された触媒についてXRD特徴付けを行い、Cu Kαターゲット線(入射波長1.54056A)を用いて、走査範囲0~90°、走査速度10/minとし、図1に示すスペクトルを得た。
【0089】
図1から分かるように、実施例1で得た触媒C1のXRDスペクトルにおいて、24.9°、25.5°、27.9°、30.6°、35.2°、36.2°、43.3°、52.5°、57.5°のそれぞれに特徴的なピークが示される。比較例4で得た触媒DC4のXRDスペクトルにおいて、21.6°、24.9°、27.9°、30.6°、43.3°、47.5°のそれぞれに特徴的なピークが示される。比較例3で得た触媒DC3のXRDスペクトルにおいて、明らかな特徴的なピークはない。上記特徴的なピークの中で、25.5°における特徴的なピークはMoOを示し、36.2°における特徴的なピークはCoを示し、27.9°における特徴的なピークは、コバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物を示し、21.6°、24.9°、30.6°、35.2°、43.3°、47.5°、52.5°、及び57.5°などにおける特徴的なピークはAl担体を示す。
【0090】
同様に、上記方法を利用して実施例2~16及び比較例2、5~9で製造された触媒についてXRD特徴付けを行った。測定した結果、本発明の実施例2~16で製造された触媒のXRDスペクトルは、実施例1の触媒のXRDスペクトルと類似しており、すべてCo、MoO、コバルト・モリブデン系ペロブスカイト複合酸化物、及び酸化アルミニウム担体の特徴的なピークが示されたことが分かった。一方、比較例1、3、及び7~9の触媒はペロブスカイト構造を有さなかった。
【0091】
試験例2
天津先権社のTP5080吸着装置を用いて、実施例1~2及び比較例3で製造された触媒のH-TPRスペクトルを測定した結果を図2に示す。
【0092】
図2から、実施例1~2の触媒のいずれの主な還元ピーク温度も700~750℃の範囲内であり、比較例3の触媒の主な還元ピーク温度(400℃未満)よりもはるかに高いことが分かり、本発明の触媒では、活性成分とペロブスカイト本体及び酸化アルミニウム担体との間の相互作用が強いことが示された。
【0093】
試験例3
触媒の加硫挙動について、天津先権社のTPS-5096プログラム昇温加硫装置を利用してプログラム昇温加硫(TPS)を行い、実施例1及び比較例3~4の触媒の加硫能力を測定した結果を図3に示す。測定方法としては、具体的には、まず、20メッシュの触媒粒子0.3gを秤量し、漏斗で反応管に入れ、N雰囲気において10℃/minの速度で40℃に昇温して、30min保温し、室温に降温した。ガスを2.0体積% HS-98体積% H雰囲気に切り替え、10/minの昇温速度で900℃に昇温した。排気ガスをTCDにより検出した。
【0094】
図3から、実施例1の触媒C1は、261℃程度、340℃程度、418℃程度、647℃程度、672℃程度に吸着・脱着ピークがあることが分かった。比較例3の触媒DC3及び比較例4の触媒DC4と比べて、実施例1の触媒C1は、高温領域においても明らかなHS吸着が存在し、一方、比較例3の触媒は、高温領域においてHSの脱着が存在し、このことから、実施例1の触媒C1の加硫物中間体が安定していることが示された。
【0095】
試験例4
実施例1、13、及び比較例3で製造された触媒についてXPS特徴付けを行った。XPS特徴付けはAXIS-ULTRADLD線光電子分光器を用いて行い、単色Al-Kαターゲット源を採用して、試験前にサンプルをシート状にプレスし、1×10-8Paの条件下で真空吸引した。荷電効果を控除するため、汚染炭素のC1s(結合エネルギー284.6eV)ピークをスケーリング基準とした。
【0096】
図4から、ペロブスカイト構造を含む触媒C1及びC13中のMo種の結合エネルギーはγ-Al触媒に担持されたMo種の結合エネルギーより明らかに高く、ペロブスカイト構造にアルカリ土類金属を添加すると、結合エネルギーがさらに増強されていることから、ペロブスカイトの存在によりMo表面の電子が一時的に欠失し、Mo種の周囲環境がその相互作用力をさらに増強していることが示された。これはTPRの結果とも一致する。
【0097】
試験例5
実施例1及び比較例3で製造された触媒についてラマンスペクトル試験が行われた。ラマンスペクトル試験はHORIBA LabRAM HR Evolution型共焦点ラマン分光器を用いて行い、35mV空冷He-Neレーザーを用い、励起波長は532nmであった。ラマンの特徴付けには0.1gの粉末サンプル(100メッシュ未満)を使用し、400~3000cm-1の範囲のスペクトルを記録した。
【0098】
図5から、同量のMoCo含有量の条件下では、比較例3の触媒DC3にMo=Oの特徴的な伸縮ピークは存在せず、Co=Oの特徴的な伸縮ピークのみが存在することから、Mo種の触媒内部への分散度が高く、一部のCo種が粒子として存在していることが分かった。一方、実施例1の触媒C1にMo=Oの特徴的ピークが存在し、このことは、この触媒ではMo種の凝集度が高く、γ-Al表面に高度に分散していることを示しており、Mo種がペロブスカイト表面に高度に凝集していることを示しているとともに、γ-Al表面におけるCo種の含有量が著しく減少していることがわかり、Co種の一部がペロブスカイト鉱物相表面に分布していることが証明された。
【0099】
試験例6
加圧活性評価装置を用いて工業的条件を模擬し、上記実施例及び比較例で製造された触媒の排気ガス中の一酸化炭素濃度とその変化を試験することにより、触媒の転換活性や安定性などの性能を比較し、触媒の総合的な性能を評価した。
【0100】
該加圧活性評価装置では、反応管がФ45×5mmのステンレス管であり、中央にФ8×2mmの熱対管を有する。水ガス比=1.0で一定量の水を配合し、200℃の高温で気化した後、原料ガス(両試験で原料ガス組成:CO=45体積%、CO=2体積%、HS=0.15体積%又は0.05体積%、残部H)と一緒に反応管に送って水性ガス転換反応を行い、反応温度を260℃とし、反応後の排気ガスをクロマトグラフィーで分析した結果を表1に示す。
【0101】
さらに、BET法を用いて各触媒の比表面積を測定した結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
上記表1から、本発明の実施例で製造された触媒は、比較例に比べて、耐硫黄転換反応におけるCO転化率が高く、特に原料ガス中のHS含有量が低い場合においてもCO転化率が良好であることが分かり、耐硫黄性転換反応における触媒活性が良好であることが分かった。本発明の触媒は、反応ガス中のHS含有量が変動しても、高いCO転化率と安定性を維持することができた。
【0104】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術構想の範囲内では、本発明の技術案について、各技術的特徴を他の適切な方法で組み合わせることを含め、複数の簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形及び組み合わせは同様に本発明の開示された内容と見なすべきであり、いずれも本発明の特許範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】本発明の実施例1及び比較例3~4で製造された触媒のXRDスペクトルである。
図2】本発明の実施例1~2及び比較例3で製造された触媒のH-TPRスペクトルである。
図3】本発明の実施例1及び比較例3~4で製造された触媒のTPSスペクトルである。
図4】本発明の実施例1、実施例13及び比較例3におけるペロブスカイト触媒中のMo種のXPSスペクトルを示す。
図5】本発明の実施例1及び比較例3におけるペロブスカイト触媒中のMo種のラマンスペクトルである。
図1
図2
図3
図4
図5