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特許7603845偏波に依存しない出力光を提供するための光回路、光集積回路および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】偏波に依存しない出力光を提供するための光回路、光集積回路および方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/126 20060101AFI20241213BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
G02B6/126
G02B6/12 351
G02B6/12 301
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023563471
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2021043593
(87)【国際公開番号】W WO2023095323
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植草 弘一郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 雅裕
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-003708(JP,A)
【文献】特開平08-184788(JP,A)
【文献】特開2010-060656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0319409(US,A1)
【文献】特開2011-064657(JP,A)
【文献】特表2016-535302(JP,A)
【文献】特開2021-124578(JP,A)
【文献】国際公開第2016/005418(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12- 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光のうちの第1偏光方向の成分である第1成分と、前記入力光のうちの前記第1偏光方向に直交する第2偏光方向の成分を前記第1偏光方向に変換した第2成分と、を空間的に分離して出力する偏波回転分離素子と、
前記偏波回転分離素子の出力側に配置され、前記第1成分および前記第2成分を合波する合波器と、
前記偏波回転分離素子の出力側に配置され、前記第1成分および前記第2成分の一方、前記第1成分および前記第2成分の両方、および、前記合波器によって合波された合波光、のうちの何れかの光パワーを減衰させる少なくとも1つの減衰素子と
を備える光回路。
【請求項2】
前記少なくとも1つの減衰素子は、前記光回路から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなる減衰量で前記何れかの光パワーを減衰させる、
請求項1に記載の光回路。
【請求項3】
前記少なくとも1つの減衰素子は、前記偏波回転分離素子および前記合波器の間に配置され、前記第1成分および前記第2成分のうち、少なくとも、前記偏波回転分離素子で損失する光パワーの割合が相対的に小さい成分の光パワーを減衰させる、
請求項1または2に記載の光回路。
【請求項4】
前記少なくとも1つの減衰素子は、前記第1成分および前記第2成分のそれぞれの、前記偏波回転分離素子に入力されてから前記合波器に入力されるまでの間に損失する光パワーの割合が互いに予め定められた範囲で等しくなる減衰量で前記何れかの光パワーを減衰させる、
請求項3に記載の光回路。
【請求項5】
前記少なくとも1つの減衰素子は、前記偏波回転分離素子および前記合波器の間で、前記第1成分および前記第2成分のそれぞれの光路上に1つずつ配置される、
請求項3または4に記載の光回路。
【請求項6】
前記少なくとも1つの減衰素子は、前記偏波回転分離素子および前記合波器の間で、前記第1成分および前記第2成分のそれぞれの光路のうち、前記偏波回転分離素子で損失する光パワーの割合が相対的に小さい成分の光路上だけに配置される、
請求項3または4に記載の光回路。
【請求項7】
前記合波器および前記少なくとも1つの減衰素子の両方と前記光回路の出力側との間の光路上に配置され、前記合波光の一部を、前記光回路の出力側への進路とは異なる方向に分岐させる光分岐カップラと、
前記光回路から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように前記少なくとも1つの減衰素子による光パワーの減衰量を予め決定するべく、前記光分岐カップラによって分岐された前記合波光の一部を受光する受光素子と
を更に備える、請求項1から6の何れか一項に記載の光回路。
【請求項8】
前記偏波回転分離素子および前記合波器の間で、前記第1成分および前記第2成分のそれぞれの光路上に配置され、前記第1成分および前記第2成分の一部を、前記合波器への進路とは異なる方向に分岐させる第2の光分岐カップラと、
前記光回路から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように前記少なくとも1つの減衰素子による光パワーの減衰量を予め決定するべく、前記第2の光分岐カップラによって分岐された前記第1成分および前記第2成分の一部を受光する第2の受光素子と
を更に備える、請求項1から7の何れか一項に記載の光回路。
【請求項9】
前記少なくとも1つの減衰素子は、前記合波器と、前記光回路の出力側との間に配置され、前記光回路から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなる減衰量で前記合波光の光パワーを減衰させる、
請求項1または2に記載の光回路。
【請求項10】
前記合波器と前記少なくとも1つの減衰素子との間の光路上に配置され、前記合波光の一部を、前記少なくとも1つの減衰素子への進路とは異なる方向に分岐させる光分岐カップラと、
前記光回路から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように前記少なくとも1つの減衰素子による光パワーの減衰量をリアルタイムに調整するべく、前記光分岐カップラによって分岐された前記合波光の一部を受光する受光素子と
を更に備える、請求項9に記載の光回路。
【請求項11】
前記偏波回転分離素子および前記合波器の間で、前記第1成分および前記第2成分の位相を互いに揃える少なくとも1つの位相シフタを更に備える、
請求項1から10の何れか一項に記載の光回路。
【請求項12】
前記偏波回転分離素子は、
偏波モードを変換する導波路構造と、
非対称方向結合器として機能する互いに隣接した2つの導波路と
が結合した導波路とを有する請求項1から11のいずれか1項に記載の光回路。
【請求項13】
光機能素子と、
請求項1から12の何れか一項に記載の光回路と、
を備え、
前記光回路は、出力する合波光を前記光機能素子に入力させる、
光集積回路。
【請求項14】
偏波回転分離素子によって、入力光のうちの第1偏光方向の成分である第1成分と、前記入力光のうちの前記第1偏光方向に直交する第2偏光方向の成分を前記第1偏光方向に変換した第2成分と、を空間的に分離して出力する段階と、
前記偏波回転分離素子の出力側に配置された合波器によって、前記第1成分および前記第2成分を合波する段階と、
前記偏波回転分離素子の出力側に配置された少なくとも1つの減衰素子によって、前記第1成分および前記第2成分の一方、前記第1成分および前記第2成分の両方、および、前記合波器によって合波された合波光、のうちの何れかの光パワーを減衰させる段階と、
出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように前記少なくとも1つの減衰素子による光パワーの減衰量を調整する段階と
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏波に依存しない出力光を提供するための光回路、光集積回路および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「偏波面が時間的に変動する入力光は、可変偏波回転手段11を介して直交偏波分離手段12に入力され、S偏波(垂直偏波)とP偏波(水平偏波)に分離され…2つの光路が合波手段14で結合される…S偏波またはP偏波の光路…には…偏波回転手段15が挿入され、一方の偏波面(S偏波)を他方の偏波面(P偏波)に合わせ、一方の直線偏波(P偏波)として合波手段14から偏波保持光ファイバに出力され」(段落0008)、「可変偏波回転手段11としては、例えばファラデー回転子を用いる…直交偏波分離手段12としては、例えば偏波ビームスプリッタまたは方解石を用いる」(段落0013)、「偏波回転手段15としては、例えば1/2波長板を用いる」(段落0014)と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開平9-90299号公報
【一般的開示】
【0003】
本発明の第1の態様においては、光回路を提供する。光回路は、入力光のうちの第1偏光方向の成分である第1成分と、入力光のうちの第1偏光方向に直交する第2偏光方向の成分を第1偏光方向に変換した第2成分と、を空間的に分離して出力する偏波回転分離素子を備えてもよい。光回路は、偏波回転分離素子の出力側に配置され、第1成分および第2成分を合波する合波器を備えてもよい。光回路は、偏波回転分離素子の出力側に配置され、第1成分および第2成分の一方、第1成分および第2成分の両方、および、合波器によって合波された合波光、のうちの何れかの光パワーを減衰させる少なくとも1つの減衰素子を備えてもよい。
【0004】
少なくとも1つの減衰素子は、光回路から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなる減衰量で何れかの光パワーを減衰させてもよい。
【0005】
少なくとも1つの減衰素子は、偏波回転分離素子および合波器の間に配置され、第1成分および第2成分のうち、少なくとも、偏波回転分離素子で損失する光パワーの割合が相対的に小さい成分の光パワーを減衰させてもよい。
【0006】
少なくとも1つの減衰素子は、第1成分および第2成分のそれぞれの、偏波回転分離素子に入力されてから合波器に入力されるまでの間に損失する光パワーの割合が互いに予め定められた範囲で等しくなる減衰量で何れかの光パワーを減衰させてもよい。
【0007】
少なくとも1つの減衰素子は、偏波回転分離素子および合波器の間で、第1成分および第2成分のそれぞれの光路上に1つずつ配置されてもよい。
【0008】
少なくとも1つの減衰素子は、偏波回転分離素子および合波器の間で、第1成分および第2成分のそれぞれの光路のうち、偏波回転分離素子で損失する光パワーの割合が相対的に小さい成分の光路上だけに配置されてもよい。
【0009】
光回路は、合波器および少なくとも1つの減衰素子の両方と光回路の出力側との間の光路上に配置され、合波光の一部を、光回路の出力側への進路とは異なる方向に分岐させる光分岐カップラを更に備えてもよい。光回路は、光回路から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように少なくとも1つの減衰素子による光パワーの減衰量を予め決定するべく、光分岐カップラによって分岐された合波光の一部を受光する受光素子を更に備えてもよい。
【0010】
光回路は更に、偏波回転分離素子および合波器の間で、第1成分および第2成分のそれぞれの光路上に配置され、第1成分および第2成分の一部を、合波器への進路とは異なる方向に分岐させる第2の光分岐カップラを備えてもよい。光回路は更に、光回路から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように少なくとも1つの減衰素子による光パワーの減衰量を予め決定するべく、第2の光分岐カップラによって分岐された第1成分および第2成分の一部を受光する第2の受光素子を備えてもよい。
【0011】
少なくとも1つの減衰素子は、合波器と、光回路の出力側との間に配置され、光回路から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなる減衰量で合波光の光パワーを減衰させてもよい。
【0012】
光回路は更に、合波器と少なくとも1つの減衰素子との間の光路上に配置され、合波光の一部を、少なくとも1つの減衰素子への進路とは異なる方向に分岐させる光分岐カップラを備えてもよい。光回路は更に、光回路から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように少なくとも1つの減衰素子による光パワーの減衰量をリアルタイムに調整するべく、光分岐カップラによって分岐された合波光の一部を受光する受光素子を備えてもよい。
【0013】
光回路は更に、偏波回転分離素子および合波器の間で、第1成分および第2成分の位相を互いに揃える少なくとも1つの位相シフタを備えてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、光集積回路を提供する。光集積回路は、光機能素子を備えてもよい。光集積回路は、上記の何れかの光回路を備えてもよい。光回路は、出力する合波光を光機能素子に入力させてもよい。
【0015】
本発明の第3の態様においては、方法を提供する。方法は、偏波回転分離素子によって、入力光のうちの第1偏光方向の成分である第1成分と、入力光のうちの第1偏光方向に直交する第2偏光方向の成分を第1偏光方向に変換した第2成分と、を空間的に分離して出力する段階を備えてもよい。方法は、偏波回転分離素子の出力側に配置された合波器によって、第1成分および第2成分を合波する段階を備えてもよい。方法は、偏波回転分離素子の出力側に配置された少なくとも1つの減衰素子によって、第1成分および第2成分の一方、第1成分および第2成分の両方、および、合波器によって合波された合波光、のうちの何れかの光パワーを減衰させる段階を備えてもよい。方法は、出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように少なくとも1つの減衰素子による光パワーの減衰量を調整する段階を備えてもよい。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態による光回路100を備える光集積回路10の一例を模式的に示す図である。
図2】第1実施形態による減衰量調整方法の一例を示すフローチャートである。
図3】第1実施形態による、偏波に依存しない出力光を光機能素子50に提供するための方法の一例を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態による光回路101の一例を模式的に示す図である。
図5】第3実施形態による光回路200の一例を模式的に示す図である。
図6】第3実施形態による減衰量調整方法の一例を示すフローチャートである。
図7】第4実施形態による光回路201の一例を模式的に示す図である。
図8】第5実施形態による光回路300の一例を模式的に示す図である。
図9】第6実施形態による光回路301の一例を模式的に示す図である。
図10】第7実施形態による光回路400の一例を模式的に示す図である。
図11】第7実施形態による、偏波に依存しない出力光を光機能素子50に提供するための方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、第1実施形態による光回路100を備える光集積回路10の一例を模式的に示す図である。光集積回路10は、例えば光導波路型の光スイッチとして光試験に用いられ、光集積回路10に入力される入力光をキャリブレーションして出力する。当該入力光は、単色で位相が揃っているコヒーレント光、例えばレーザー光である。当該入力光は、偏光であってもよく、任意の偏光状態であってもよい。当該入力光は、偏波面が時々刻々と変化するものであってもよく、変化しないものであってもよい。
【0020】
また、本実施形態では、光集積回路10に入力される入力光の光量、すなわち光パワーの大きさは既知である。例えば、光集積回路10に入力される入力光の光パワーが予め定められた大きさとなるように、予め光集積回路10の上流側で当該光パワーの大きさが調整される。これに代えて、光集積回路10は、光集積回路10に入力される入力光の光パワーが予め定められた大きさとなるように、自ら調整する機能を有してもよい。
【0021】
光集積回路10は、光機能素子50と、光回路100とを備える。光集積回路10は、同一基板上に、光機能素子50および光回路100が一体的に実装された集積回路であってもよい。光機能素子50は、光導波路型の光素子、例えば半導体レーザ、光変調器、光検出器などであってもよい。光機能素子50は、光機能素子50に入力される入力光の偏光状態に依存する特性を有する。
【0022】
光回路100は、例えば光ファイバを用いた光導波路型の回路である。光回路100は、偏波に依存しない出力光を光機能素子50に提供するために、光回路100に入力される入力光をキャリブレーションする。光回路100は、少なくとも、当該入力光を、一の偏光方向を有する直線偏波に変換して出力する。
【0023】
具体的には、光回路100は、当該入力光を、一の偏光方向の成分と、当該一の偏光方向に直交する別の偏光方向の成分を当該一の偏光方向に変換した成分とに分離し、これらを合波して出力する。好ましくは、光回路100は、分離した2つの成分の位相を揃えてから合波する。
【0024】
光回路100は、出力する合波光を光機能素子50に入力させる。光回路100は、光回路100に入力される入力光の光パワーを減衰させて、当該合波光を出力する。好ましくは、光回路100は、当該入力光の光パワーを、光機能素子50で必要とされる光パワーとなるように減衰させる。
【0025】
本実施形態による光回路100は、偏波回転分離素子110と、合波器120と、減衰素子131、133とを備える。偏波回転分離素子110は、入力光のうちの第1偏光方向の成分である第1成分と、入力光のうちの第1偏光方向に直交する第2偏光方向の成分を第1偏光方向に変換した第2成分と、を空間的に分離して出力する。
【0026】
第1成分は、例えばTE偏波(電界が入射面に直交している平面波。直交偏波。)であり、第2偏光方向の成分は、例えばTM偏波(磁界が入射面に直交している平面波。平行偏波。)であり、この場合、第2偏光方向の成分を第1偏光方向に変換した第2成分はTE偏波である。なお、これに代えて、第1成分がTM偏波で、第2偏光方向の成分がTE偏波であってもよい。
【0027】
偏波回転分離素子110は、例えば、光回路A、光回路Bおよび光回路Cをこの順に連結した導波路であってもよく、光は光回路Aに入力されて光回路Cから出力される。偏波回転分離素子110がTE偏波を変換せずに出力すると共にTM偏波をTE偏波に変換して出力する機能を有する場合について、以下、光回路A、光回路Bおよび光回路Cの各機能を詳述する。
【0028】
光回路Aは、モード変換機能を有する。光回路Aは、TE偏波入力について、TE基本モードをTE基本モードのまま出力する。光回路Aは、TM偏波入力について、垂直方向の対称性を壊す導波路構造により、TM基本モードをTE1次モードに変換して出力する。
【0029】
光回路Bは、互いに隣接する2つの導波路を有する非対称方向性結合器として機能し、光回路Aから出力される光は一方の導波路に入力される。光回路Bは、TE偏波入力について、光回路Aから入力されるTE基本モードをTE基本モードのまま当該一方の導波路の出力端から出力する。光回路Bは、TM偏波入力について、光回路Aから入力される、TM基本モードから変換されたTE1次モードを、上記の一方の導波路から他方の導波路にパワーを移行させ且つTE基本モードに変換し、当該他方の導波路の出力端から出力する。
【0030】
光回路Cは、出力端が空間的に分離された2つの導波路を有し、光回路Bの2つの出力端から出力される光は、当該2つの導波路のそれぞれの入力端に入力される。光回路Cは、TE偏波入力について、光回路Bから一方の導波路の入力端に入力されるTE基本モードをTE基本モードのまま、当該一方の導波路の出力端から出力する。光回路Cは、TM偏波入力について、光回路Bから他方の導波路の入力端に入力される、TE1次モードから変換されたTE基本モードを、TE基本モードのまま、当該他方の導波路の出力端から出力する。
【0031】
合波器120は、偏波回転分離素子110の出力側に配置され、偏波回転分離素子110によって空間的に分離されて出力される上述の第1成分および第2成分を合波する。
【0032】
減衰素子131、133は、偏波回転分離素子110の出力側に配置される。本実施形態による減衰素子131、133は、偏波回転分離素子110および合波器120の間で、偏波回転分離素子110によって空間的に分離されて出力される上述の第1成分および第2成分のそれぞれの光路上に1つずつ配置される。具体的には、第1成分であるTE偏波の光路上に減衰素子131が配置され、第2偏光方向の成分であるTM偏波から変換された第2成分であるTE偏波の光路上に減衰素子133が配置される。
【0033】
減衰素子131、133は、第1成分および第2成分の両方の光パワーを減衰させてもよく、減衰素子131、133の何れか一方のみが、第1成分および第2成分のうち対応する一方の光パワーを減衰させてもよい。減衰素子131、133の何れか一方のみが第1成分および第2成分の一方を減衰させる場合、減衰素子131、133の他方は第1成分および第2成分の他方の光路上に配置されていてもよく、配置されていなくてもよい。
【0034】
光回路100は更に、光分岐カップラ140と、受光素子150とを備えてもよい。本実施形態による光分岐カップラ140は、合波器120および減衰素子131、133の両方と光回路100の出力側との間の光路上に配置され、合波器120によって合波された合波光の一部を、光回路100の出力側への進路とは異なる方向に分岐させる。合波器120によって合波された合波光の残りは、光回路100の出力側への進路を進行する。
【0035】
受光素子150は、合波器120によって合波された合波光のうち、光分岐カップラ140によって分岐された合波光を受光する。本実施形態による受光素子150は、光回路100から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように、減衰素子131、133による光パワーの減衰量を予め決定することを目的として、光分岐カップラ140と共に光回路100に設けられる。
【0036】
ここで仮に、受光素子が光分岐カップラと共に合波器120および減衰素子131、133の少なくとも一方よりも上流側の光路上に配置された場合、受光素子等よりも下流側に位置する合波器120等や導波路によって光の挿入損失が生じる可能性が有り、この場合には、受光素子は光機能素子50に提供される出力光の光パワーを正確に検出できない。これに対して本実施形態による受光素子150は、光分岐カップラ140と共に、合波器120および減衰素子131、133の両方と光回路100の出力側との間の光路上に配置される。これにより、受光素子150は、上述した、受光素子が合波器120および減衰素子131、133の少なくとも一方よりも上流側の光路上に配置される場合に比べて、光回路100から光機能素子50に提供される出力光の光パワーをより正確に検出することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、光分岐カップラ140および受光素子150は、減衰素子131、133による減衰量を決定次第、光回路100の光路上から取り外されてもよい。なお、受光素子150が検出した光パワーの大きさを示す信号は、上記の目的のため、例えばパソコンなどの外部装置に送信されてもよい。この場合、ユーザが当該パソコンを使用して、光回路100から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように、減衰素子131、133による光パワーの減衰量を決定してもよい。なお、光回路100は、受光素子150に代えて、受光素子150以外の他の光パワー検出手段を備えてもよい。
【0038】
光回路100は更に、位相シフタ161、163を備えてもよい。位相シフタ161、163は、偏波回転分離素子110および合波器120の間で、第1成分および第2成分の位相を互いに揃える。位相シフタ161、163は、第1成分および第2成分の両方の位相を予め定められた大きさだけ遅延させることによって、第1成分および第2成分の位相を互いに揃えてもよい。
【0039】
また、位相シフタ161、163の何れか一方のみが、第1成分および第2成分のうち対応する一方の位相を予め定められた大きさだけ遅延させることによって、第1成分および第2成分の位相を互いに揃えてもよい。位相シフタ161、163の何れか一方のみが第1成分および第2成分の一方の位相を遅延させる場合、位相シフタ161、163の他方は第1成分および第2成分の他方の光路上に配置されていてもよく、配置されていなくてもよい。なお、上述の予め定められた大きさの位相遅延量は、例えば偏波回転分離素子110の特性を考慮して決定されてもよい。
【0040】
位相シフタ161、163は、一例として、ヒータなどであってもよい。光回路100は、位相シフタ161、163に代えて、または加えて、減衰素子131、133のそれぞれが配置された光路の長さを調整することより、第1成分および第2成分の位相を互いに揃えてもよい。
【0041】
図2は、第1実施形態による減衰量調整方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態による光回路100は、偏波に依存しない出力光を光機能素子50に提供するための方法を実行する前段階として、図2に示す減衰量調整方法を実行する。
【0042】
光回路100は、第1検出段階を実行する(ステップS11)。具体的には、光回路100は、減衰素子131、133の減衰量を0%にした状態で、既知の光パワーを有するTE偏波のみを光回路100に入力して受光素子150で光パワーを検出する。光回路100は、受光素子150で検出した光パワーの大きさを示す信号を外部装置に送信する。なお、TE偏波のみを含んでTM偏波を含まない入力光は、偏波回転分離素子110によって変換されることなく減衰素子131が配置された光路を進行し、減衰素子133が配置された光路を進行しない。
【0043】
光回路100は、第2検出段階を実行する(ステップS13)。具体的には、光回路100は、減衰素子131、133の減衰量を0%にした状態で、第1検出段階と同じ光パワーを有するTM偏波のみを光回路100に入力して受光素子150で光パワーを検出する。光回路100は、受光素子150で検出した光パワーの大きさを示す信号を外部装置に送信する。なお、TM偏波のみを含んでTE偏波を含まない入力光は、偏波回転分離素子110によってTE偏波に変換されて減衰素子133が配置された光路を進行し、減衰素子131が配置された光路を進行しない。
【0044】
光回路100は、第1検出段階および第2検出段階の検出結果に基づいて、減衰量調整段階を実行する(ステップS15)。具体的には、光回路100は、光回路100から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように、減衰素子131、133による光パワーの減衰量を決定する。当該予め定められた大きさの光パワーは、例えば光機能素子50で必要とされる光パワーである。これにより、光回路100は、入力光における、第1偏光方向の第1成分および第1偏光方向に直交する第2偏光方向の成分の割合に依らずに、光回路100から出力される合波光の光パワーを一定にすることができる。
【0045】
本実施形態による減衰素子131、133は、一例として、光パワーを減衰させる減衰量をユーザが調整可能な構成を有する。一例として、減衰量は、入力光の光パワーに対する、減衰される光パワーの比率を、百分率で表わしたものであってもよく、0~100%の範囲で設定可能であってもよい。これに代えて、減衰素子131、133は、互いに異なる減衰量に設定された複数の減衰素子から選択されてもよい。
【0046】
上記のように減衰量を決定される減衰素子131、133は、光回路100から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなる減衰量で第1成分および第2成分の両方または一方の光パワーを減衰させることとなる。
【0047】
具体的には、減衰素子131、133は、第1成分および第2成分のうち、少なくとも、偏波回転分離素子110で損失する光パワーの割合が相対的に小さい成分の光パワーを減衰させる。偏波回転分離素子110で損失する光パワーの割合が相対的に小さい成分は、偏波回転分離素子110によって第2偏光方向から第1偏光方向に変換された第2成分、例えばTE偏波から変換されたTM偏波である。
【0048】
更に具体的には、減衰素子131、133は、第1成分および第2成分のそれぞれの、偏波回転分離素子110に入力されてから合波器120に入力されるまでの間に損失する光パワーの割合が互いに予め定められた範囲で等しくなる減衰量で第1成分および第2成分の両方または一方の光パワーを減衰させる。換言すると、光回路100は、光回路100で生じる第1成分と第2成分の挿入損失の割合を揃える。
【0049】
例えば、第1検出段階の検出結果として、既知の光パワーを有するTE偏波が偏波回転分離素子110を経由したことによって光パワーを10%損失し、第2検出段階の検出結果として、同じ光パワーを有するTM偏波が偏波回転分離素子110でTE偏波に変換されたことによって光パワーを20%損失することが判明したとする。また、光機能素子50で必要とされる光パワーを、当該既知の光パワーの70%とする。この場合、光回路100は、減衰素子131の減衰量を20%と決定し、減衰素子133の減衰量を10%と決定してもよい。
【0050】
図3は、第1実施形態による、偏波に依存しない出力光を光機能素子50に提供するための方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態による光回路100は、図3のフローチャートに示す方法を実行する前に、図2のフローチャートに示す減衰量調整方法を実行することにより、光回路100から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように減衰素子131、133による光パワーの減衰量を調整する。
【0051】
光回路100は、偏波回転分離段階を実行する(ステップS101)。具体的には、光回路100は、偏波回転分離素子110によって、入力光のうちの第1偏光方向の成分である第1成分と、入力光のうちの第1偏光方向に直交する第2偏光方向の成分を第1偏光方向に変換した第2成分と、を空間的に分離して出力する。
【0052】
光回路100は、光パワー減衰段階を実行する(ステップS103)。具体的には、光回路100は、偏波回転分離素子110の出力側に配置された減衰素子131、133によって、第1成分および第2成分の一方または両方の光パワーを減衰させる。
【0053】
光回路100は、合波段階を実行する(ステップS105)。具体的には、光回路100は、偏波回転分離素子110の出力側に配置された合波器120によって、第1成分および第2成分を合波する。これにより、光回路100は、偏波に依存しない出力光として、例えばTE偏波を出力し、当該TE偏波を光機能素子50に入力させる。
【0054】
なお、光回路100は、光パワー減衰段階を実行後、合波段階を実行する前に、位相シフタ161、163によって第1成分および第2成分の位相を揃えることが好ましい。
【0055】
以上、本実施形態による光回路100によれば、入力光のうちの第1偏光方向の成分である第1成分と、入力光のうちの第1偏光方向に直交する第2偏光方向の成分を第1偏光方向に変換した第2成分と、を空間的に分離して出力する偏波回転分離素子110と、偏波回転分離素子110の出力側に配置され、第1成分および第2成分を合波する合波器120とを備える。光回路100は更に、偏波回転分離素子110の出力側に配置され、第1成分および第2成分の一方または両方の光パワーを減衰させる少なくとも1つの減衰素子131、133を備える。
【0056】
ここで、比較例として、ファラデー回転子によって入力光のS偏波およびP偏波の光強度を調整してから偏光ビームスプリッタによって両偏波を分離した後、1/2波長板によってS偏波を回転させてP偏波とし、2つのP偏波を合波して出力する光回路を仮定する。当該比較例による光回路は更に、入力光のS偏波およびP偏波の光強度をリアルタイムに調整するべく、分離された2つの偏波のそれぞれの光路上にビームスプリッタおよび光検出器の組を配置し、光検出器で検出された光強度を示すデータを偏波制御回路へとフィードバックさせる。
【0057】
これに対して、上記の構成を備える本実施形態の光回路100によれば、偏波回転分離素子110から出力される、互いに同じ偏光方向の第1成分および第2成分の一方または両方の光パワーを、偏波回転分離素子110の出力側に配置された少なくとも1つの減衰素子131、133によって減衰させる。本実施形態による光回路100は、上記の比較例による光回路と比べて、ファラデー回転子、偏光ビームスプリッタおよび1/2波長板といった素子、およびこれらの素子間を接続する導波路を不要として、1つの偏波回転分離素子110と少なくとも1つの減衰素子131、133だけで、減衰量が調整された、互いに同じ偏光方向の第1成分および第2成分を生成できる。これにより、本実施形態による光回路100は、上記の比較例による光回路と比べて、より小型化することができ、よって、光回路100を実装する光集積回路10の小型化に寄与することができる。具体的な一例として、本実施形態による光回路100によれば、1つの偏波回転分離素子110と少なくとも1つの減衰素子131、133との組み合わせを100um×800um以下で実現することができる。また、当該光回路100によれば、出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように減衰素子131、133による光パワーの減衰量を調整することにより、入力光の偏光状態に依存する特性を有する光機能素子50に対して偏波に依存しない出力光を提供することができる。
【0058】
図4は、第2実施形態による光回路101の一例を模式的に示す図である。本実施形態による光回路101は、第1実施形態による光回路100と異なる点として、減衰素子133および位相シフタ163の組を備えず、減衰素子131および位相シフタ161の組のみを備える。光回路101における他の構成は、光回路100の対応する構成と同じであるため、同じ参照番号を使用して、重複する説明を省略する。また、第1実施形態による光回路100が備える構成と対応する構成、例えば同じ機能を有して配置が異なる構成には、光回路100における参照番号と同様の参照番号を使用して、重複する説明を省略する。以降で説明する複数の実施形態においても同様とする。
【0059】
本実施形態による光回路101によれば、減衰素子131が、偏波回転分離素子110および合波器120の間で、第1成分および第2成分のそれぞれの光路のうち、偏波回転分離素子110で損失する光パワーの割合が相対的に小さい成分の光路上だけに配置される。偏波回転分離素子110によって分離されて出力される第1成分および第2成分のうち、第2成分は、偏波回転分離素子110によって第2偏光方向の成分から変換される際の光パワー損失が相対的に大きい。そこで、光回路101は、光パワーが相対的に大きく損失した第2成分の光パワーと同じになるように、第1成分の光パワーを追加で減衰させるべく、減衰素子131によって第1成分のみを減衰させる。換言すると、減衰素子131は、第1成分および第2成分のうち、偏波回転分離素子110で損失する光パワーの割合が相対的に小さい成分のみの光パワーを減衰させる。
【0060】
また、本実施形態による光回路101においては、位相シフタ161のみが、減衰素子131が配置された光路上だけに配置される。これに代えて、図1の構成と同様に、位相シフタ161、163がそれぞれの光路上に配置されてもよく、位相シフタ163のみが、減衰素子131が配置されていない光路上だけに配置されてもよい。
【0061】
以上の第2実施形態による光回路101によっても、第1実施形態による光回路100の上記効果と同様の効果を奏する。
【0062】
図5は、第3実施形態による光回路200の一例を模式的に示す図である。本実施形態による光回路200は、第1実施形態による光回路100と異なる点として、光分岐カップラ140および受光素子150に代えて、第2の光分岐カップラ241、243および第2の受光素子251、253を備える。
【0063】
第2の光分岐カップラ241、243は、偏波回転分離素子110および合波器120の間で、第1成分および第2成分のそれぞれの光路上に配置され、第1成分および第2成分の一部を、合波器120への進路とは異なる方向に分岐させる。より具体的には、第2の光分岐カップラ241、243は、位相シフタ161、163および合波器120の間で、第1成分および第2成分のそれぞれの光路上に配置される。第2の受光素子251、253は、第2の光分岐カップラ241、243によって分岐された第1成分および第2成分の一部を受光する。
【0064】
第2の受光素子251、253は、第1実施形態における受光素子150と同様に、光回路200から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように減衰素子131、133による光パワーの減衰量を予め決定することを目的として、第2の光分岐カップラ241、243と共に光回路200に設けられる。
【0065】
ここで仮に、受光素子が光分岐カップラと共に第1成分および第2成分の何れか一方の光路上だけに配置された場合、第1成分および第2成分の他方の光パワーを検出することができず、よって上記目的を達成することができない。また、受光素子が光分岐カップラと共に位相シフタ161、163よりも上流側の第1成分および第2成分の光路上に配置された場合、受光素子等よりも下流側に位置する位相シフタ161、163や導波路によって挿入損失が生じる可能性が有り、この場合には、受光素子は光機能素子50に提供される出力光の光パワーを正確に検出できない。これに対して本実施形態による第2の受光素子251、253は、第2の光分岐カップラ241、243と共に、位相シフタ161、163および合波器120の間で、第1成分および第2成分のそれぞれの光路上に配置される。これにより、第2の受光素子251、253は、上述の何れの問題も回避できる。
【0066】
図6は、第3実施形態による減衰量調整方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態による光回路200は、図3のフローチャートに示した偏波に依存しない出力光を光機能素子50に提供するための方法を実行する前段階として、図6に示す減衰量調整方法を実行する。
【0067】
光回路200は、第1検出段階を実行する(ステップS21)。具体的には、光回路200は、減衰素子131、133の減衰量を0%にした状態で、既知の光パワーを有するTE偏波のみを光回路200に入力して第2の受光素子251で光パワーを検出する。光回路200は、第2の受光素子251で検出した光パワーの大きさを示す信号を外部装置に送信する。なお、TE偏波のみを含んでTM偏波を含まない入力光は、偏波回転分離素子110によって変換されることなく減衰素子131が配置された光路を進行し、減衰素子133が配置された光路を進行しない。
【0068】
光回路200は、第2検出段階を実行する(ステップS23)。具体的には、光回路200は、減衰素子131、133の減衰量を0%にした状態で、第1検出段階と同じ光パワーを有するTM偏波のみを光回路200に入力して第2の受光素子253で光パワーを検出する。光回路200は、第2の受光素子253で検出した光パワーの大きさを示す信号を外部装置に送信する。なお、TM偏波のみを含んでTE偏波を含まない入力光は、偏波回転分離素子110によってTE偏波に変換されて減衰素子133が配置された光路を進行し、減衰素子131が配置された光路を進行しない。
【0069】
光回路200は、第1検出段階および第2検出段階の検出結果に基づいて、減衰量調整段階を実行する(ステップS25)。ステップS25は、図2のフローチャートに示したステップS15と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0070】
以上の第3実施形態による光回路200によっても、第1実施形態による光回路100の上記効果と同様の効果を奏する。
【0071】
図7は、第4実施形態による光回路201の一例を模式的に示す図である。本実施形態による光回路201は、第3実施形態による光回路200と異なる点として、減衰素子133および位相シフタ163の組を備えず、減衰素子131および位相シフタ161の組のみを備える。
【0072】
本実施形態による光回路201によれば、第2実施形態による光回路101と同様、減衰素子131は、偏波回転分離素子110および合波器120の間で、第1成分および第2成分のそれぞれの光路のうち、偏波回転分離素子110で損失する光パワーの割合が相対的に小さい成分の光路上だけに配置される。すなわち、光回路201は、光パワーが相対的に大きく損失した第2成分の光パワーと同じになるように、第1成分の光パワーを追加で減衰させるべく、減衰素子131によって第1成分のみを減衰させる。換言すると、減衰素子131は、第1成分および第2成分のうち、偏波回転分離素子110で損失する光パワーの割合が相対的に小さい成分のみの光パワーを減衰させる。
【0073】
また、本実施形態による光回路201においては、第2実施形態による光回路101と同様、位相シフタ161のみが、減衰素子131が配置された光路上だけに配置される。これに代えて、図5の構成と同様に、位相シフタ161、163がそれぞれの光路上に配置されてもよく、位相シフタ163のみが、減衰素子131が配置されていない光路上だけに配置されてもよい。
【0074】
以上の第4実施形態による光回路201によっても、第1実施形態による光回路100の上記効果と同様の効果を奏する。
【0075】
図8は、第5実施形態による光回路300の一例を模式的に示す図である。本実施形態による光回路300は、第1実施形態による光回路100と異なる点として、光回路100の構成に加えて、第2の光分岐カップラ241、243および第2の受光素子251、253を備える。換言すると、本実施形態による光回路300は、第1実施形態による光回路100が備える構成と、第3実施形態による光回路200が備える構成とを組み合わせた構成を備える。
【0076】
本実施形態による光回路300は、図3のフローチャートに示した偏波に依存しない出力光を光機能素子50に提供するための方法を実行する前段階として、図2のフローチャートに示した減衰量調整方法を実行してもよく、図6のフローチャートに示した減衰量調整方法を実行してもよく、これら2つの減衰量調整方法を同時に又は順に実行してもよい。
【0077】
以上の第4実施形態による光回路300によっても、第1実施形態による光回路100の上記効果と同様の効果を奏する。
【0078】
図9は、第6実施形態による光回路301の一例を模式的に示す図である。本実施形態による光回路301は、第5実施形態による光回路300と異なる点として、減衰素子133および位相シフタ163の組を備えず、減衰素子131および位相シフタ161の組のみを備える。
【0079】
本実施形態による光回路301によれば、第2実施形態による光回路101と同様、減衰素子131は、偏波回転分離素子110および合波器120の間で、第1成分および第2成分のそれぞれの光路のうち、偏波回転分離素子110で損失する光パワーの割合が相対的に小さい成分の光路上だけに配置される。すなわち、光回路301は、光パワーが相対的に大きく損失した第2成分の光パワーと同じになるように、第1成分の光パワーを追加で減衰させるべく、減衰素子131によって第1成分のみを減衰させる。換言すると、減衰素子131は、第1成分および第2成分のうち、偏波回転分離素子110で損失する光パワーの割合が相対的に小さい成分のみの光パワーを減衰させる。
【0080】
また、本実施形態による光回路301においては、第2実施形態による光回路101と同様、位相シフタ161のみが、減衰素子131が配置された光路上だけに配置される。これに代えて、図8の構成と同様に、位相シフタ161、163がそれぞれの光路上に配置されてもよく、位相シフタ163のみが、減衰素子131が配置されていない光路上だけに配置されてもよい。
【0081】
なお、光回路301は、図9に示した構成のうち、第2の光分岐カップラ243および第2の受光素子253を備えなくてもよい。この場合、第2の光分岐カップラ243および第2の受光素子253を備えない光回路301は、図3のフローチャートに示した偏波に依存しない出力光を光機能素子50に提供するための方法を実行する前段階として、図2のフローチャートに示した減衰量調整方法を実行してもよく、図6のフローチャートに示したステップS21およびステップS25と図2のフローチャートに示したステップS13との組み合わせから成る減衰量調整方法を実行してもよい。
【0082】
後者について具体的には、光回路301は、減衰素子131、133の減衰量を0%にした状態で、既知の光パワーを有するTE偏波のみを光回路301に入力して第2の受光素子251で光パワーを検出する。光回路301は、これと同じ光パワーを有するTM偏波のみを光回路301に入力して受光素子150で光パワーを検出する。光回路301は、これらの検出結果に基づいて、上述のステップS25を実行する。
【0083】
なお、光回路301は、第2の光分岐カップラ243および第2の受光素子253を備える一方で、第2の光分岐カップラ241および第2の受光素子251を備えなくてもよい。この場合の減衰量調整方法の一例として、光回路301は、減衰素子131、133の減衰量を0%にした状態で、既知の光パワーを有するTE偏波のみを光回路301に入力して受光素子150で光パワーを検出する。光回路301は、これと同じ光パワーを有するTM偏波のみを光回路301に入力して第2の受光素子253で光パワーを検出する。光回路301は、これらの検出結果に基づいて、上述のステップS25を実行する。
【0084】
以上の第6実施形態による光回路301によっても、第1実施形態による光回路100の上記効果と同様の効果を奏する。
【0085】
図10は、第7実施形態による光回路400の一例を模式的に示す図である。本実施形態による光回路300は、第1実施形態による光回路100と異なる点として、減衰素子131、133を備えず、減衰素子430および制御回路470を備える。
【0086】
本実施形態による光回路400によれば、減衰素子430は、合波器120によって合波された合波光の光パワーを減衰させる。より具体的には、減衰素子430は、合波器120と、光回路400の出力側との間に配置され、光回路400から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなる減衰量で合波光の光パワーを減衰させる。
【0087】
制御回路470は、光分岐カップラ140を経由して受光素子150で検出された光パワーの大きさに基づいて、減衰素子430による減衰量をリアルタイムに制御する。本実施形態による光回路400によれば、光分岐カップラ140は、合波器120と減衰素子430との間の光路上に配置され、合波光の一部を、減衰素子430への進路とは異なる方向に分岐させる。受光素子150は、合波器120によって合波された合波光のうち、光分岐カップラ140によって分岐された合波光を受光する。本実施形態による受光素子150は、光回路100から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように、減衰素子430による光パワーの減衰量をリアルタイムに調整することを目的として、光分岐カップラ140と共に光回路400に設けられる。よって、本実施形態では、光分岐カップラ140および受光素子150は、光回路400が偏波に依存しない出力光を光機能素子50に提供するための方法を実行するのに必要とされる。
【0088】
図11は、第7実施形態による、偏波に依存しない出力光を光機能素子50に提供するための方法の一例を示すフローチャートである。
【0089】
本実施形態による光回路400は、偏波回転分離段階を実行する(ステップS201)。具体的には、光回路400は、偏波回転分離素子110によって、入力光のうちの第1偏光方向の成分である第1成分と、入力光のうちの第1偏光方向に直交する第2偏光方向の成分を第1偏光方向に変換した第2成分と、を空間的に分離して出力する。
【0090】
光回路400は、合波段階を実行する(ステップS203)。具体的には、光回路400は、偏波回転分離素子110の出力側に配置された合波器120によって、第1成分および第2成分を合波する。なお、光回路400は、偏波回転分離段階を実行後、合波段階を実行する前に、位相シフタ161、163によって第1成分および第2成分の位相を揃えることが好ましい。
【0091】
光回路400は、減衰量調整段階を実行する(ステップS205)。具体的には、光回路400は、出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように減衰素子430による光パワーの減衰量を調整する。更に具体的には、光回路400の制御回路470は、光分岐カップラ140を経由して受光素子150で検出された光パワーの大きさに基づいて、光回路100から出力される合波光の光パワーが予め定められた大きさとなるように、減衰素子430による光パワーの減衰量をリアルタイムに調整する。
【0092】
光回路400は、光パワー減衰段階を実行する(ステップS207)。具体的には、光回路400は、偏波回転分離素子110の出力側に配置された減衰素子430によって、合波器120によって合波された合波光の光パワーを減衰させる。これにより、光回路400は、偏波に依存しない出力光として、例えばTE偏波を出力し、当該TE偏波を光機能素子50に入力させる。
【0093】
以上の第7実施形態による光回路400によっても、第1実施形態による光回路100の上記効果と同様の効果を奏する。
【0094】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0095】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0096】
10 光集積回路
50 光機能素子
100、101、200、201、300、301、400 光回路
110 偏波回転分離素子
120 合波器
131、133、430 減衰素子
140 光分岐カップラ
150 受光素子
161、163 位相シフタ
241、243 第2の光分岐カップラ
251、253 第2の受光素子
470 制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11