(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法、及び検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01P 13/00 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
G01P13/00 A
(21)【出願番号】P 2023570514
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2021048568
(87)【国際公開番号】W WO2023127017
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】小林 翔一
(72)【発明者】
【氏名】和田 敏裕
(72)【発明者】
【氏名】荒木 宏
(72)【発明者】
【氏名】平井 敬秀
(72)【発明者】
【氏名】柴田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 敬士
(72)【発明者】
【氏名】宮野 一輝
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康太郎
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-316194(JP,A)
【文献】特開2020-064429(JP,A)
【文献】特開2020-189389(JP,A)
【文献】特開2021-094639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0265110(US,A1)
【文献】特表2010-539445(JP,A)
【文献】特開2006-321015(JP,A)
【文献】特開2019-188561(JP,A)
【文献】特開平07-186078(JP,A)
【文献】特開2018-202497(JP,A)
【文献】特開2015-223418(JP,A)
【文献】特開2002-166383(JP,A)
【文献】特開2018-203480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 13/00-15/18
G01L 1/00-1/26,5/00-5/28
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の状態を検査する検査装置であって、
第1の感圧面を有し、前記対象物から前記第1の感圧面に加えられた第1の圧力に対応する第1の電気信号を出力する第1の圧力センサと、
第2の感圧面を有し、前記対象物から前記第2の感圧面に加えられた第2の圧力に対応する第2の電気信号を出力する第2の圧力センサと、
前記第1の電気信号と前記第2の電気信号とに基づいて、前記対象物の状態が、前記第1の感圧面と前記第2の感圧面との間に前記対象物が挟まれて把持されており前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとが揺らされている把持加振状態であるか、又は前記第1の感圧面と前記第2の感圧面との間に前記対象物が挟まれて把持されており前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとが揺らされていない把持静止状態であるか、を判定
し、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号との相互相関値が予め定められた第1の閾値以上の場合に、前記対象物は前記把持加振状態であると判定する加振状態判定部と、
を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとを保持する、変形可能な保持部材を更に備え、
前記保持部材を人の身体部位に装着した状態で、前記第1の感圧面と前記第2の感圧面とが互いに向き合っている
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記保持部材は、手袋型のグローブであり、
前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとは、前記グローブの親指の位置と、前記グローブの前記親指以外の指の位置とにそれぞれ配置された
ことを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記加振状態判定部は、前記第1の電気信号の振幅と前記第2の電気信号の振幅とに基づいて、前記対象物の状態が、前記把持加振状態であるか又は前記把持静止状態であるかを判定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記加振状態判定部は、前記第1の電気信号の位相と前記第2の電気信号の位相との差が予め定められた第2の閾値以上の場合に、前記対象物は前記把持加振状態であると判定する
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
音に対応する第4の電気信号を出力するマイクと、
前記把持加振状態のときに、前記第4の電気信号に基づいて、前記対象物の締結部分に、がたつきが有るか否かを判定する締結状態判定部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記加振状態判定部の判定結果を報知する報知部を更に備えたことを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
第1の感圧面を有し、対象物から前記第1の感圧面に加えられた第1の圧力に対応する第1の電気信号を出力する第1の圧力センサと、
第2の感圧面を有し、前記対象物から前記第2の感圧面に加えられた第2の圧力に対応する第2の電気信号を出力する第2の圧力センサと、
を備えた検査装置によって実施される、対象物の状態を検査する検査方法であって、
前記第1の電気信号と前記第2の電気信号とに基づいて、前記対象物の状態が、前記第1の感圧面と前記第2の感圧面との間に前記対象物が挟まれて把持されており前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとが揺らされている把持加振状態であるか、又は前記第1の感圧面と前記第2の感圧面との間に前記対象物が挟まれて把持されており前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとが揺らされていない把持静止状態であるか、を判定
し、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号との相互相関値が予め定められた第1の閾値以上の場合に、前記対象物は前記把持加振状態であると判定するステップを有する
ことを特徴とする検査方法。
【請求項9】
第1の感圧面を有し、対象物から前記第1の感圧面に加えられた第1の圧力に対応する第1の電気信号を出力する第1の圧力センサと、
第2の感圧面を有し、前記対象物から前記第2の感圧面に加えられた第2の圧力に対応する第2の電気信号を出力する第2の圧力センサと、
を備え、前記対象物の状態を検査する検査装置の情報処理部に、
前記第1の電気信号と前記第2の電気信号とに基づいて、前記対象物の状態が、前記第1の感圧面と前記第2の感圧面との間に前記対象物が挟まれて把持されており前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとが揺らされている把持加振状態であるか、又は前記第1の感圧面と前記第2の感圧面との間に前記対象物が挟まれて把持されており前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとが揺らされていない把持静止状態であるか、を判定
し、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号との相互相関値が予め定められた第1の閾値以上の場合に、前記対象物は前記把持加振状態であると判定するステップを実行させる
ことを特徴とする検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物の状態を検査するための検査装置、検査方法、及び検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、手袋型のウェアラブルセンサに備えられた複数のセンサから出力された情報の組み合わせを照合して、身体動作を認識する動作照合部と、動作照合部で認識された身体動作に基づいて作業者の作業内容が正常に行われたかを判定する信号判定部と、信号判定部の判定結果を報知する報知部とを有する作業判定システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献は、作業者が対象物を揺らしているかどうかを自動的に判定する方法を開示していない。このため、対象物を揺らして行う検査が実行されたかどうかを判定することができない。
【0005】
本開示の目的は、対象物が把持されて揺らされている状態であるかどうかを判定することを可能にする検査装置、検査方法、及び検査プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の検査装置は、対象物の状態を検査する検査装置であって、第1の感圧面を有し、前記対象物から前記第1の感圧面に加えられた第1の圧力に対応する第1の電気信号を出力する第1の圧力センサと、第2の感圧面を有し、前記対象物から前記第2の感圧面に加えられた第2の圧力に対応する第2の電気信号を出力する第2の圧力センサと、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号とに基づいて、前記対象物の状態が、前記第1の感圧面と前記第2の感圧面との間に前記対象物が挟まれて把持されており前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとが揺らされている把持加振状態であるか、又は前記第1の感圧面と前記第2の感圧面との間に前記対象物が挟まれて把持されており前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとが揺らされていない把持静止状態であるか、を判定し、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号との相互相関値が予め定められた第1の閾値以上の場合に、前記対象物は前記把持加振状態であると判定する加振状態判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本開示の検査方法は、第1の感圧面を有し、対象物から前記第1の感圧面に加えられた第1の圧力に対応する第1の電気信号を出力する第1の圧力センサと、第2の感圧面を有し、前記対象物から前記第2の感圧面に加えられた第2の圧力に対応する第2の電気信号を出力する第2の圧力センサと、を備えた検査装置によって実施される、対象物の状態を検査する検査方法であって、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号とに基づいて、前記対象物の状態が、前記第1の感圧面と前記第2の感圧面との間に前記対象物が挟まれて把持されており前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとが揺らされている把持加振状態であるか、又は前記第1の感圧面と前記第2の感圧面との間に前記対象物が挟まれて把持されており前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとが揺らされていない把持静止状態であるか、を判定し、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号との相互相関値が予め定められた第1の閾値以上の場合に、前記対象物は前記把持加振状態であると判定するステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の検査装置、検査方法、又は検査プログラムを用いれば、対象物が把持されて揺らされている状態であるかどうかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る検査装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る検査装置の第1の圧力センサ及び第2の圧力センサを手袋型の保持部材であるグローブに備えた例を概略的に示す平面図である。
【
図3】実施の形態1に係る検査装置を概略的に示す側面図である。
【
図4】実施の形態1に係る検査装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【
図5】対象物が把持されていない状態である非把持状態を示す側面図である。
【
図6】対象物が把持されている状態である把持静止状態を示す側面図である。
【
図7】対象物が把持され且つ揺らされている状態である把持加振状態を示す側面図である。
【
図8】実施の形態1に係る検査装置の第1の圧力センサ及び第2の圧力センサから出力される検出信号の例を示す波形図である。
【
図9】実施の形態1に係る検査装置の動作を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態2に係る検査装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図11】実施の形態2に係る検査装置の第1の圧力センサ、第2の圧力センサ、及び加速度センサをグローブに備えた例を概略的に示す平面図である。
【
図12】実施の形態2に係る検査装置を概略的に示す側面図である。
【
図13】実施の形態2に係る検査装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【
図14】実施の形態2に係る検査装置の第1の圧力センサ、第2の圧力センサ、及び加速度センサから出力される検出信号の例(「がたつき」が有る場合)を示す波形図である。
【
図15】実施の形態2に係る検査装置の第1の圧力センサ、第2の圧力センサ、及び加速度センサから出力される検出信号の例(「がたつき」が無い場合)を示す波形図である。
【
図16】実施の形態2に係る検査装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態に係る検査装置、検査方法、及び検査プログラムを、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、実施の形態を適宜組み合わせること及び各実施の形態を適宜変更することが可能である。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る検査装置1の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図1に示されるように、検査装置1は、第1の圧力センサ10と、第2の圧力センサ20と、加振状態判定部31と、報知部32とを備えている。加振状態判定部31と報知部32とは、情報処理装置30の一部である。検査装置1は、実施の形態1に係る検査方法を実施することができる装置である。
【0012】
検査装置1は、検査の対象物の状態を検査する装置である。対象物は、例えば、2つ以上の構造体と、これらを連結するボルト又はネジなどの連結部品と、を有する機器である。実施の形態1において、「対象物の状態の検査」とは、第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20との間に対象物が挟まれて把持された状態で第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20とが揺らされている(すなわち、加振されている)状態である「把持加振状態」C2であるか、又は、第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20との間に対象物が挟まれて把持された状態で第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20とが揺らされていない(すなわち、加振されていない)状態である「把持静止状態」C1であるかの判定である。このときの、加振は、作業者が手で揺らす、又はロボットなどの機械のアームの先端(人の手に相当する部分)で揺らす、のいずれであってもよい。
【0013】
第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20とは、例えば、作業者の手に装着される手袋型の保持部材であるグローブの指先の腹面にそれぞれ配置されている。保持部材には、第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20とが保持されている。保持部材は、変形可能な部材であり、保持部材を人の身体部位(例えば、手)に装着し、対象物を把持しようとした状態で、第1の圧力センサ10の第1の感圧面11と第2の圧力センサ20の第2の感圧面21とが互いに向き合っている。保持部材がグローブ40である場合、第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20とは、グローブ40の親指の位置と、グローブ40の親指以外の指の位置とにそれぞれ配置される。一般に、第1の圧力センサ10は、グローブ40の親指の指先の腹面に配置され、第2の圧力センサ20は、グローブ40の人指し指の指先の腹面に配置される。保持部材の構造はこれに限定されない。
【0014】
第1の圧力センサ10及び第2の圧力センサ20としては、公知のものを使用することができる。例えば、センサ面に印加された圧力(又は力)に応じて抵抗値が変化するセンサ素子と抵抗素子とを用いて、抵抗分圧により生成される電圧を計測し、計測された電圧と印加される圧力の関係に基づいて、印加された圧力を算出する構成が知られている。また、センサ素子は、例えば、静電容量式センサであってもよい。
【0015】
加振状態判定部31は、第1の圧力センサ10から出力される第1の電気信号(すなわち、出力信号)P1及び第2の圧力センサ20から出力される第2の電気信号(すなわち、出力信号)P2に基づいて、対象物50の状態が、把持されていない状態である非把持状態C0、又は作業者がグローブ40を装着した手で対象物50を把持して静止している状態である把持静止状態C1、又は対象物50を把持して加振している状態である把持加振状態C2のいずれであるかを判定する。報知部32は、加振状態判定部31の判定結果を報知する。
【0016】
報知部32は、加振状態判定部31の判定結果、すなわち、対象物50の状態の検査の結果を示す情報を、例えば、報知信号として検査結果を管理するデータ管理装置に送信する。また、報知部32は、検査の結果を示す音(例えば、ブザーなどの電子音)又は表示を作業者に提供するためのスピーカ及び表示画面を備えてもよい。
【0017】
図2は、第1の圧力センサ10及び第2の圧力センサ20を手袋型の保持部材であるグローブ40に備えた例を概略的に示す平面図である。
図3は、検査装置1を概略的に示す側面図である。グローブ40は、作業者の身体の一部である手に装着される。この場合、検査装置1は、ウェアラブル検査装置である。また、グローブ40の形状は、図示のものに限定されない。また、圧力センサの個数は、3個以上であってもよい。また、第1の圧力センサ10及び第2の圧力センサ20とは、同じ規格のものであることが望ましいが、異なる規格又は異なる種類のセンサであってもよい。
【0018】
第1の圧力センサ10は、第1の感圧面11を有し、第1の感圧面11に加えられた第1の圧力F1に対応する第1の電気信号P1を出力する。第2の圧力センサ20は、第2の感圧面21を有し、第2の感圧面21に加えられた第2の圧力F2に対応する第2の電気信号P2を出力する。
【0019】
加振状態判定部31は、第1の電気信号P1と第2の電気信号P2とに基づいて、対象物50の状態が、把持されていない状態である非把持状態C0であるか、又は第1の感圧面11と第2の感圧面21との間に対象物50が挟まれて把持されており第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20とが揺らされている把持加振状態C2であるか、又は第1の感圧面11と第2の感圧面21との間に対象物50が挟まれて把持されており第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20とが揺らされていない把持静止状態C1であるか、を判定する。
【0020】
図4は、実施の形態1に係る検査装置1のハードウェア構成の例を示す図である。
図4に示されるように、検査装置1の情報処理装置30は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ101と、記憶装置であるメモリ102と、通信装置103と、インタフェース104とを有している。メモリ102は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの半導体メモリである。
【0021】
図1に示される情報処理装置30の各機能は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよく、又はメモリ102に格納されるプログラム(実施の形態に係る検査プログラムを含む。)を実行するプロセッサ101であってもよい。処理回路は、第1の圧力センサ10及び第2の圧力センサ20から出力される電圧を取得して変換するアナログ/デジタル(AD)コンバータを含むマイクロコンピュータ又はシングルボードコンピュータ、などを用いて構成することができる。なお、情報処理装置30は、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらのうちのいずれかの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0022】
図2及び
図3では、加振状態判定部31及び報知部32を内包する情報処理装置30は、グローブ40上に配置されているが、情報処理装置30は、グローブ40から離れた位置に配置されてもよい。また、情報処理装置30は、互いに通信可能な複数のコンピュータに分散させるように構成されてもよい。
【0023】
図5は、対象物50が把持されていない状態である非把持状態C0を示す側面図である。
図5は、第1の圧力センサ10の第1の感圧面11及び第2の圧力センサ20の第2の感圧面21が、対象物50に接触していない非把持状態C0を示している。なお、対象物50は、部材51と52とが、連結部品53、54によって連結された構造を持つ。連結部品53、54は、例えば、ネジ又はボルトである。
【0024】
図6は、対象物50が把持されている状態である把持静止状態C1を示す側面図である。
図6は、第1の圧力センサ10の第1の感圧面11及び第2の圧力センサ20の第2の感圧面21が、対象物50に接触している把持静止状態C1を示している。
図6では、グローブ40は揺らされていない静止状態なので、作業者の親指から第1の圧力センサ10を介して対象物50の下面に付与される第1の圧力F1と、作業者の人差し指から第2の圧力センサ20を介して対象物50の上面に付与される第2の圧力F2とは、ほぼ一定の値であり、互いにつり合っている。
【0025】
図7は、対象物50が把持され且つ揺らされている状態である把持加振状態C2を示す側面図である。
図7は、第1の圧力センサ10の第1の感圧面11及び第2の圧力センサ20の第2の感圧面21が、対象物50に接触しており、第1の圧力センサ10及び第2の圧力センサ20がD方向(図において上方向及び下方向)に揺らされている把持加振状態C2を示している。グローブ40は揺らされているので、対象物50の下面に付与される第1の圧力F1と、対象物50の上面に付与される第2の圧力F2とは、揺れに応じて変化しており、第1の圧力F1と第2の圧力F2の変化は互いに逆位相である。
【0026】
図8は、実施の形態1に係る検査装置の第1の圧力センサ10及び第2の圧力センサ20ら出力される第1及び第2の電気信号(「検出信号」ともいう。)P1、P2の例を示す波形図である。
図8において、時刻0から時刻t1までの期間は、検査装置1は
図5に示される状態であり、グローブ40が、対象物50に触れていない非把持状態C0であり、第1の圧力センサ10及び第2の圧力センサ20のいずれにも圧力が印加されていない。
【0027】
図8において、時刻t1から時刻t2までの期間は、検査装置1は、
図6に示される状態であり、グローブ40に備えられた第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20で対象物50を挟み把持している把持静止状態C1である。このとき、第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20の双方に力が加わることで圧力は、同期して高い値を示す。
【0028】
図8において、時刻t2から時刻t3までの期間は、検査装置1は、グローブ40に備えられた第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20で対象物50を挟んで把持し、対象物50を挟む第1の圧力センサ10及び第2の圧力センサ20がD方向に揺らされている把持加振状態C2である。把持した状態と同様に、圧力が付与されて高い値を示す。さらに、加振する動作においては、加わる力の強弱が交互に生じることから、加振する動作に同期して圧力の波形が振動する。第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20が対向している場合、第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20の振動は、正負が逆の変化を示す。これを便宜上、第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20の出力が逆位相であるという。
【0029】
図9は、検査装置1の動作を示すフローチャートである。
図9は、加振状態判定部31の処理を示している。ステップS11では、加振状態判定部31は、第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20の出力信号の値のいずれもが予め定められた閾値Th1以上であるかどうかを判定する。加振状態判定部31は、出力信号の値が閾値Th1以上である場合には、処理をステップS12に進め、出力信号の値が閾値Th1未満である場合には、検査が開始されていない非把持状態C0であると判定する。
【0030】
ステップS12では、加振状態判定部31は、第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20とが逆位相で振動しているかどうかを判定する。加振状態判定部31は、逆位相で振動していると判定した場合には、検査装置1は、把持加振状態C2であると判定し、逆位相で振動していると判定しない場合には、検査装置1は把持静止状態C1であると判定する。
【0031】
図9のフローチャートよる判定結果は、報知部32で報知される。報知部32では、例えば、判定結果を文字で表示してもよく、また、判定結果に応じたランプを点灯させてもよい。また、報知部32は、外部のコンピュータに結果を送信してもよい。
【0032】
また、ステップS11における閾値Th1は、把持静止状態C1と、非把持状態C0とを識別可能な値にするために予め設定される。例えば、それぞれの状態における圧力センサの出力データを多量に収集し、識別可能な境界を統計的に設定することができる。統計的な手法として、例えば、機械学習の分野で知られているサポートベクターマシンを用いて算出した境界面を、閾値Th1として設定することができる。また、多量のデータの例として、作業者、作業対象の部品、作業姿勢、などを変更して収集したデータを用いることができる。
【0033】
ステップS12における逆位相で振動しているかどうかの判定は、複数の方法により行うことができる。例えば、以下のように行うことができる。
【0034】
時刻tにおける第1の圧力センサ10の出力をP1(t)、第2の圧力センサ20の出力をP2(t)とする。
図8の時刻t1から時刻t2の期間と対応する把持静止状態C1におけるそれぞれの圧力値を基準にオフセット量を算出し、減算して補正する。例えば、第1の圧力センサ10の出力値P1(t)からオフセット量を減算した圧力値P1ac(t)、及び第2の圧力センサ20の出力値P2(t)からオフセット量を減算した圧力値P2ac(t)は、式(1)及び式(2)によって算出される。
【0035】
【0036】
把持加振状態C2において、すなわち時刻t2から時刻t3の期間において、P1ac(t)とP2ac(t)の差の絶対値が予め定められた閾値Thdより大きい値となる場合に、加振状態判定部31は、第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20の出力は、逆位相であると判定する。差の絶対値が予め定められた閾値Thdより小さい場合には、加振状態判定部31は、第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20の出力は、逆位相ではないと判定する。判定は瞬時値に基づいて行われてもよいし、標準偏差又は分散などの統計量に基づいて行われてもよい。また、P1ac(t)は、P1(t)に対してオフセット量を除去するよう予め設計されたハイパスフィルタを適用して得ることもできる。また、加振状態判定部31は、所定の長さの区間ごとに判定結果を取得し、その多数決を最終的な判定結果としてもよい。閾値Thdは、把持加振状態C2と把持静止状態C1とを識別可能な値に予め設定する。例えば、それぞれの状態における圧力センサの出力データを多量に収集し、識別可能な境界を統計的に設定することができる。統計的な手法として、例えば、機械学習の分野で知られているサポートベクターマシンを用いて算出した境界面を閾値Thdとして設定することができる。また、多量のデータの例として、作業者、作業対象の部品、作業姿勢、などを変更して収集したデータを用いることができる。
【0037】
また、逆位相で振動しているかどうかの別の判定方法として、例えば、式(3)のように相互相関値Cに基づいて判定するようにしてもよい。
【0038】
【0039】
式(3)は、オフセット補正後の第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20の出力値について、一方の圧力値を正負反転して相互相関値Cを算出する。すなわち、一方の圧力値を正負反転した後の第1の圧力センサ10と第2の圧力センサ20の出力が振動していて、かつ類似している場合に相互相関値は、大きい値を示す。加振状態判定部31は、このようにして算出する相互相関値が予め定められた閾値(第1の閾値)Thc以上の場合に、逆位相であると判定することができる。
【0040】
また、逆位相で振動しているかどうかの別の判定方法として、例えば、第1及び第2の圧力センサ10、20の出力値のそれぞれの時系列データを1次の正弦波とみなして位相を算出し、位相の差分に基づいて判定してもよい。加振状態判定部31は、位相の差分が予め定められた閾値(第2の閾値)Thp以上の場合に逆位相であり、閾値Thpより小さい場合には、逆位相ではないと判定する。時系列データの位相を算出する方法は、複数の方法が知られており、例えば、把持加振状態C2の波形に対してフーリエ変化を行い、最も振幅が大きい周波数成分における位相を参照する方法が一般的である。また、時系列データを1次の正弦波と仮定し、自己回帰モデルにより振幅・周波数・位相を算出する方法も一般的である。
【0041】
このように構成することで、グローブ40を用いて対象物を検査する際に、把持静止状態C1と把持加振状態C2とを判別することができる。特許文献1の作業判定システムでは、把持をした状態を検知する構成は記されているが、把持加振状態を検知する構成は記されていない。実施の形態1に係る検査装置1、検査方法、及び検査プログラムによれば、把持をした状態と加振した状態を判定することができるという、従来にはない効果を奏する。
【0042】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2に係る検査装置2の構成を概略的に示す機能ブロック図である。検査装置2は、実施の形態2に係る検査方法を実施することができる装置である。
図10において、
図1に示される構成と同一又は対応する構成には、
図1に示される符号と同じ符号が付されている。実施の形態2に係る検査装置2は、対象物50に発生する加速度に対応する第3の電気信号(出力信号)P3を出力する加速度センサ60を備えている点及び締結されている部材間の締結状態を判定する締結状態判定部33を備えている点において、実施の形態1に係る検査装置1と相違する。また、検査装置2は、加速度センサ60の代わりに、又は、加速度センサ60に加えて、音を収音するマイク61を備えてもよい。
【0043】
締結状態判定部33は、把持加振状態C2のときに、加速度センサ60から出力された第3の電気信号(出力信号)P3の振幅に基づいて、対象物50が締結不足部分を持つ、すなわち、「がたつき」があると判定する。具体的には、締結状態判定部33は、把持加振状態C2のときに、加速度センサ60から出力された第3の電気信号(出力信号)P3の振幅が予め定められた閾値Tha以上であるときに、対象物50が締結不足部分を持つと判定する。
【0044】
また、締結状態判定部33は、把持加振状態C2のときに、マイク61から出力された第4の電気信号(出力信号)P4の振幅に基づいて、対象物50が締結不足部分を持つと判定してもよい。具体的には、締結状態判定部33は、把持加振状態C2のときに、マイク61から出力された第4の電気信号(出力信号)P4の振幅が予め定められた閾値Thm以上であるときに、対象物50が締結不足部分を持つと判定してもよい。
【0045】
また、締結状態判定部33は、把持加振状態C2のときに、加速度センサ60から出力された第3の電気信号P3の振幅と、マイク61から出力された第4の電気信号P4の振幅とに基づいて、対象物50が締結不足部分を持つと判定してもよい。具体的には、締結状態判定部33は、把持加振状態C2のときに、加速度センサ60から出力された第3の電気信号P3の振幅が予め定められた閾値Tha以上であり、且つマイク61から出力された第4の電気信号P4の振幅が予め定められた閾値Thm以上であるときに、対象物50が締結不足部分を持つと判定してもよい。
【0046】
図11は、検査装置2の第1の圧力センサ10、第2の圧力センサ20、及び加速度センサ60をグローブ40に備えた例を概略的に示す平面図である。
図12は、対象物50が把持されているときの検査装置2を概略的に示す側面図である。対象物50は十分に締結されていないため、手を揺らして加振することで「がたつき」に伴う振動が対象物50に発生する。実施の形態2においては、親指圧力センサとしての第1の圧力センサ10と人指し指圧力センサとしての第2の圧力センサ20のほかに、対象物50を揺らして把持加振状態C2としたときに、指先の振動を計測する加速度センサ60を含むように構成されている。
【0047】
図13は、検査装置2のハードウェア構成の例を示す図である。
図13において、
図4に示される構成と、同一又は対応する構成には、
図4に示される符号と同じ符号が付されている。検査装置2のハードウェア構成は、加速度センサ60を備えている点において、実施の形態1のものと相違する。また、検査装置2は、加速度センサ60の代わりに、又は、加速度センサ60に加えて、音を収音するマイク61を備えてもよい。
【0048】
図14は、検査装置2の第1の圧力センサ10、第2の圧力センサ、及び加速度センサ60から出力される第1から第3の電気信号(検出信号)P1、P2、及びP3の例(「がたつき」が有る場合)を示す波形図である。
図15は、実施の形態2の検査装置の第1の圧力センサ10、第2の圧力センサ、及び加速度センサ60から出力される第1から第3の電気信号P1、P2、及びP3の例(「がたつき」が無い場合)を示す波形図である。
【0049】
図14と
図15では、時刻t2から時刻t3の期間において、対象物50を加振しているときの加速度センサ60の応答である。第1の圧力センサ10及び第2の圧力センサ20の応答は、
図8で示した実施の形態1の第1及び第2の圧力センサのものと同様である。
図14は、対象物50が十分に締結されておらず「がたつき」が生じているときの応答の一例を示している。作業者がグローブ40を手に装着して、手を揺らして加振することで「がたつき」に伴う振動が発生し加速度センサ60に伝搬する。
図15は、対象物50が十分に締結されているときの応答の一例を示している。グローブ40を装着して加振をした際に生じる「がたつき」はごく小さいため、振動が発生せず加速度センサ60では変動は観測されない。
【0050】
図16は、検査装置2の動作を示すフローチャートである。
図16において、
図9に示されるステップと同一のステップには、
図9に示される符号と同じ符号が付されている。ステップS13は、締結状態判定部33の処理に対応するステップである。時刻t2から時刻t3の期間において対象物50が加振されている状態において、締結状態判定部33加速度センサ60の応答に基づいて「がたつき」の有無、すなわち機器が十分に締結されているか否かを判定する。例えば、加速度センサ60から出力された第3の電気信号(加速度検出信号の振幅を特徴量とし閾値Tha以上の場合に「がたつき」あり(締結不十分)と判定し、閾値Thaより小さい場合は、「がたつき」なし(締結十分)と判定する。
【0051】
閾値Thaは、締結不十分の状態と締結十分の状態とを識別可能な値に予め設定される。例えば、締結十分の状態における加速度センサ60のデータを多量に収集し、識別可能な境界を統計的に設定することができる。統計的な手法として、例えば、機械学習の分野で知られている1クラスサポートベクターマシン(OCSVM)を用いて、締結十分の状態の空間と対応する境界面を算出して閾値Thaとして設定することができる。すなわち、締結不十分の状態を外れ値として検知することと同義である。
【0052】
また、多量のデータの例として、作業者、作業対象の部品、作業姿勢、などを変更して収集したデータを用いることができる。前記特徴量は、判定は、瞬時値に基づいて判定してもし、標準偏差又は分散などの統計量に基づいて判定してもよい。また、所定の長さの区間ごとに判定結果を出力し、その多数決を最終的な判定結果とするようにしてもよい。
【0053】
このように構成することで、グローブ40を用いて対象物を検査する際に、把持をした状態と、把持をして加振をした状態とを判定することができるという実施の形態1の効果に加え、加振をしたときに機器が十分に締結されているか否かを判定することができるという従来にはない効果を奏する。
【0054】
また、締結状態判定部33において、計測される加速度を時間積分することで速度及び変位量を算出し、速度又は変位量が予め定められた閾値より大きい場合に、「がたつき」があると判定するようにしてもよい。加速度を時間積分して速度及び変位量を算出する手法は、広く知られているが、加速度センサ60の傾きを主要因とする直流成分(オフセット)が加速度の計測値に加算されているため、時間積分をして算出する速度及び変位量の精度が低下する要因となる。実施の形態2において、把持静止状態C1を検知して静止している状態の加速度センサ60の出力値(すなわち、第3の電気信号の値)は、直流成分に対応していると考えられる。すなわち、把持静止状態C1における加速度センサ60の出力値に基づいて直流成分を算出した上で、把持加振状態C2における加速度センサ60の値から直流成分を減算し、時間積分をして速度及び変位量(「がたつき」の大きさに相当する。)を精度よく算出することができる。
【0055】
また、加速度センサ60としては、1軸のみ検出する1軸加速度センサを用いて、センサの軸方向と一致する変位量を算出するようにしてもよい。或いは、加速度センサ60として、2軸加速度センサ又は3軸加速度センサを用いて、変位の合成ベクトルに基づく変位量を算出してもよい。
【0056】
また、機器を構成する部材同士が十分に締結されているか否かを判定した結果と対象物50の締結条件(ボルトの締め付け力、ボルトの材質など)との関係付けを行ってもよい。判定結果と締結条件を外部と通信されたコンピュータに送信し、コンピュータは、どのような締結条件において機器が十分に締結されているかを分析する。そして、コンピュータは、定期的に対象物の締結状態を検査し、分析を繰り返す。これらの分析結果から、必要以上の締結力で機器が締結されていることを調査できる。継時的に締結が緩くなることもあり、また、必要以上の締結力で機器が締結されている場合には、機器とボルトとの境目で機器の劣化が進行することもある。したがって、この分析結果から、締結部分の劣化の進み具合を診断することができる。
【符号の説明】
【0057】
1、2 検査装置、 10 第1の圧力センサ、 11 第1の感圧面、 20 第2の圧力センサ、 21 第2の感圧面、 30 情報処理装置、 31 加振状態判定部、 32 報知部、 33 締結状態判定部、 50 対象物、 60 加速度センサ、 61 マイク、 F1 第1の圧力、 F2 第2の圧力、 P1 第1の電気信号、 P2 第2の電気信号、 P3 第3の電気信号、 P4 第4の電気信号、 C0 非把持状態、 C1 把持静止状態、 C2 把持加振状態。