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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】薬剤送達部材モジュール
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
A61M5/32 500
A61M5/32 510
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023572615
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2022057526
(87)【国際公開番号】W WO2022248098
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】63/193,133
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ティン・イン
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-504049(JP,A)
【文献】特表2015-532191(JP,A)
【文献】特表2012-530582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達デバイスのための薬剤送達部材モジュール(10)であって、前記薬剤送達部材モジュール(10)は、近位遮蔽体(30)と、遠位遮蔽体(50)と、薬剤送達部材ハブ(70)とを備え、前記薬剤送達部材モジュール(10)は、軸方向(13)において近位端(14)から遠位端(15)へと長手方向軸(12)に沿って延び、
前記近位遮蔽体(30)は、前記長手方向軸(12)の方を向く第1の表面(31)と、前記長手方向軸(12)から離れる方を向く第2の表面(32)とを備え、
前記薬剤送達部材ハブ(70)は、前記長手方向軸(12)から離れる方を向く第3の表面(73)を備え、前記遠位遮蔽体(50)は、前記長手方向軸の方を向く第4の表面(54)を備え、
前記近位遮蔽体(30)は、前記軸方向(13)において、前記遠位遮蔽体(50)に対して、近位位置から遠位位置へと移動可能であり、
前記薬剤送達部材モジュール(10)は、前記近位位置から前記遠位位置への前記近位遮蔽体(30)の移動の第1の部分において、
前記第1の表面(31)と前記第3の表面(73)とが互いと接触し、前記第2の表面(32)と前記第4の表面(54)とが互いと接触し、
前記第1の表面(31)と前記第3の表面(73)との間の摩擦が、前記第2の表面(32)と前記第4の表面(54)との間の摩擦よりも大きくなるように、および、
前記近位位置から前記遠位位置への前記近位遮蔽体(30)の前記移動の前記第1の部分の間、前記薬剤送達部材ハブ(70)が前記近位遮蔽体(30)と共に移動するように、
配置され、
前記薬剤送達部材モジュール(10)は、前記近位位置から前記遠位位置への前記近位遮蔽体(30)の前記移動の後続の部分において、
前記第1の表面(31)と前記第3の表面(73)とが互いと接触し、前記第2の表面(32)と前記第4の表面(54)とが互いから離間され、
前記薬剤送達部材ハブ(70)が、遠位方向におけるさらなる移動から制限されるように、および、
前記近位遮蔽体(30)が、前記近位位置から前記遠位位置への前記近位遮蔽体(30)の前記移動の前記後続の部分の間、前記遠位方向において前記遠位遮蔽体(50)と前記薬剤送達部材ハブ(70)との両方に対して移動するように、
配置される、薬剤送達部材モジュール(10)。
【請求項2】
前記第1の表面と前記第2の表面とは両方とも突起(36)にある、請求項1に記載の薬剤送達部材モジュール(10)。
【請求項3】
前記突起(36)は圧縮可能である、請求項2に記載の薬剤送達部材モジュール(10)。
【請求項4】
前記突起(36)は前記近位遮蔽体(30)のタブにある、請求項2または3に記載の薬剤送達部材モジュール(10)。
【請求項5】
前記第3の表面(73)は突起(74)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の薬剤送達部材モジュール(10)。
【請求項6】
前記突起(74)は、前記長手方向軸(12)の周りで周方向に延びる隆条部である、請求項5に記載の薬剤送達部材モジュール(10)。
【請求項7】
前記第3の表面は、前記軸方向において互いから離間される複数の突起(74)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の薬剤送達部材モジュール(10)。
【請求項8】
前記複数の突起(74)は、前記長手方向軸(12)の周りで周方向に延びる隆条部である、請求項7に記載の薬剤送達部材モジュール(10)。
【請求項9】
前記近位遮蔽体(30)は前記遠位遮蔽体(50)の内側で伸縮自在に配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載の薬剤送達部材モジュール(10)。
【請求項10】
前記近位遮蔽体(30)は、前記軸方向(13)において、前記遠位遮蔽体(50)に対して、初期位置から前記近位位置へと移動可能であり、
前記初期位置において、前記第1の表面(31)と前記第3の表面(73)とが互いと接触し、前記第2の表面(32)と前記第4の表面(54)とが互いから離間され、
前記薬剤送達部材モジュール(10)は、前記薬剤送達部材モジュール(10)が前記初期位置から前記近位位置へと移動するとき、前記近位遮蔽体(30)および前記薬剤送達部材ハブ(70)が遠位方向において前記遠位遮蔽体(50)に対して移動するように配置される、請求項1から9のいずれか一項に記載の薬剤送達部材モジュール(10)。
【請求項11】
前記遠位遮蔽体(50)は第5の表面(55)を備え、前記第5の表面(55)は近位方向を向き、前記薬剤送達部材ハブ(70)は第6の表面(76)を備え、前記第6の表面(76)は遠位方向を向き、
前記第5の表面(55)は、前記薬剤送達部材ハブ(70)が、移動行程の前記後続の部分の間に、前記遠位方向におけるさらなる移動から制限されるように、前記移動行程の前記後続の部分の間に前記第6の表面(76)と接触するように配置される、請求項1から10のいずれか一項に記載の薬剤送達部材モジュール(10)。
【請求項12】
カートリッジと、請求項1から11のいずれか一項に記載の薬剤送達部材モジュール(10)とを備える、薬剤送達デバイスの部分組立体。
【請求項13】
前記カートリッジは第5の表面を備え、前記第5の表面は近位方向を向き、前記薬剤送達部材ハブ(70)は第6の表面(76)を備え、前記第6の表面(76)は遠位方向を向き、
前記第5の表面は、前記薬剤送達部材ハブ(70)が、移動行程の前記後続の部分の間に、遠位方向におけるさらなる移動から制限されるように、前記移動行程の前記後続の部分の間に前記第6の表面(76)と接触するように配置される、請求項1から10のいずれか一項に従属するときの請求項12に記載の部分組立体。
【請求項14】
薬剤送達デバイスのパワーパックに付着するためのカートリッジ組立体であって、請求項1から11のいずれか一項に記載の薬剤送達部材モジュール(10)、または、請求項12もしくは13に記載の部分組立体を備えるカートリッジ組立体。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載の薬剤送達部材モジュール(10)、請求項12もしくは13に記載の部分組立体、または、請求項14に記載のカートリッジ組立体を備える薬剤送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
SHL Medical AGによって2021年5月26日に出願された米国仮特許出願第63/193133号の開示が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
薬剤送達デバイスのための薬剤送達部材モジュールである。
【背景技術】
【0003】
自動注入装置などのカートリッジに基づく薬剤送達デバイスにおいて、針の刺さる怪我を回避するために、および、無菌状態を保つためにも、薬剤送達部材(例えば、針)が使用の前に安全に保たれていることは重要である。また、カートリッジに基づく薬剤送達デバイスには、典型的には、薬剤容器から分離された薬剤送達部材が設けられ、これは、典型的には、注入を実行する前に、使用者が薬剤送達部材を薬剤容器に何とかして取り付ける必要があることを意味する。これは、余分なステップを追加し、そのため、デバイス使用に余分な複雑さを追加し、これは使用の容易性の観点において望ましくない。これを考慮して、本出願者は、既存の設計と比較して、改善を行うことができることを理解した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】PCT/EP2021/084082
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで、添付の請求項が参照されるべきである。
【0006】
態様が、薬剤送達デバイスのための薬剤送達部材モジュールであって、薬剤送達部材モジュールは、近位遮蔽体と、遠位遮蔽体と、薬剤送達部材ハブとを備え、薬剤送達部材モジュールは、軸方向において近位端から遠位端へと長手方向軸に沿って延び、近位遮蔽体は、長手方向軸の方を向く第1の表面と、長手方向軸から離れる方を向く第2の表面とを備え、薬剤送達部材ハブは、長手方向軸から離れる方を向く第3の表面を備え、遠位遮蔽体は、長手方向軸の方を向く第4の表面を備え、近位遮蔽体は、軸方向において、遠位遮蔽体に対して、近位位置から遠位位置へと移動可能であり、薬剤送達部材モジュールは、近位位置から遠位位置への近位遮蔽体の移動の第1の部分において、第1の表面と第3の表面とが互いと接触し、第2の表面と第4の表面とが互いと接触し、第1の表面と第3の表面との間の摩擦が、第2の表面と第4の表面との間の摩擦よりも大きくなるように、および、近位位置から遠位位置への近位遮蔽体の移動の第1の部分の間、薬剤送達部材ハブが近位遮蔽体と共に移動するように、配置され、薬剤送達部材モジュールは、近位位置から遠位位置への近位遮蔽体の移動の後続の部分(第1の部分の後である)において、第1の表面と第3の表面とが互いと接触し、第2の表面と第4の表面とが(典型的には、軸方向において)互いから離間され、薬剤送達部材ハブが、遠位方向におけるさらなる移動から制限されるように、および、近位遮蔽体が、近位位置から遠位位置への近位遮蔽体の移動の後続の部分の間、遠位方向において遠位遮蔽体と薬剤送達部材ハブとの両方に対して移動するように、配置される、薬剤送達部材モジュールに関係する。使用されるとき、これは、薬剤送達部材に、初めにカートリッジを穿孔させ、その後、注入部位を続けて穿孔させる。
【0007】
任意選択で、第1の表面と第2の表面とは両方とも突起にある。任意選択で、突起は圧縮可能である。任意選択で、突起は近位遮蔽体のタブにある。任意選択で、タブは近位遮蔽体の遠位端にある。任意選択で、第3の表面は突起を備える。これは、第1の表面と第3の表面との間の摩擦を増加させることができる。任意選択で、突起は、長手方向軸の周りで周方向に延びる隆条部である。任意選択で、第3の表面は、軸方向において互いから離間される複数の突起を備える。任意選択で、複数の突起は、長手方向軸の周りで周方向に延びる隆条部である。
【0008】
任意選択で、近位遮蔽体は遠位遮蔽体の内側に少なくとも部分的にある。任意選択で、薬剤送達部材ハブは近位遮蔽体の内側に少なくとも部分的にある。任意選択で、近位遮蔽体と、遠位遮蔽体と、薬剤送達部材ハブとは同軸にある。任意選択で、近位遮蔽体は遠位遮蔽体の内側で伸縮自在に配置される。
【0009】
任意選択で、近位遮蔽体および遠位遮蔽体のうちの1つまたは複数が、遠位遮蔽体に対する近位遮蔽体の移動の間、薬剤送達部材によって穿孔されるシールを備える。
【0010】
任意選択で、近位遮蔽体は管状である。任意選択で、近位遮蔽体は円筒状である。任意選択で、遠位遮蔽体は管状である。任意選択で、遠位遮蔽体は円筒状である。任意選択で、針ハブは円筒状である。任意選択で、近位遮蔽体は、遠位遮蔽体よりも針モジュールの近位端に近い。
【0011】
任意選択で、針ハブは薬剤送達部材を備える。任意選択で、薬剤送達部材は針である。
【0012】
任意選択で、近位遮蔽体は、軸方向において、遠位遮蔽体に対して、初期位置から近位位置へと移動可能であり、初期位置において、第1の表面と第3の表面とが互いと接触し、第2の表面と第4の表面とが互いから離間され、薬剤送達部材モジュールは、薬剤送達部材モジュールが初期位置から近位位置へと移動するとき、近位遮蔽体および薬剤送達部材ハブが遠位方向において遠位遮蔽体に対して移動するように配置される。
【0013】
任意選択で、遠位遮蔽体は第5の表面を備え、第5の表面は近位方向を向き、薬剤送達部材ハブは第6の表面を備え、第6の表面は遠位方向を向き、第5の表面は、薬剤送達部材ハブが、移動行程の後続の部分の間に、遠位方向におけるさらなる移動から制限されるように、移動行程の後続の部分の間に第6の表面と接触するように配置される。
【0014】
態様が、カートリッジと、先に記載されているようないずれかの薬剤送達部材モジュールとを備える薬剤送達デバイスの部分組立体に関係する。任意選択で、カートリッジは第5の表面を備え、第5の表面は近位方向を向き、薬剤送達部材ハブは第6の表面を備え、第6の表面は遠位方向を向き、第5の表面は、薬剤送達部材ハブが、移動行程の後続の部分の間に、遠位方向におけるさらなる移動から制限されるように、移動行程の後続の部分の間に第6の表面と接触するように配置される。
【0015】
態様が、薬剤送達デバイスのパワーパックに付着するためのカートリッジ組立体であって、先に記載されているいずれかの薬剤送達部材モジュール、または、先に記載されているいずれかの部分組立体を備えるカートリッジ組立体に関係する。
【0016】
態様が、先に記載されているいずれかの薬剤送達部材モジュール、先に記載されているいずれかの部分組立体、または、先に記載されているいずれかのカートリッジ組立体を備える薬剤送達デバイスに関係する。任意選択で、薬剤送達デバイスは自動注入装置である。
【0017】
態様が、針の遠位端がカートリッジを穿孔し、針の近位端が注入部位を穿孔するように、薬剤送達デバイスの針モジュールを作動させる方法であって、以下のステップを以下の順番で、すなわち、近位遮蔽体と、針を備える針ハブとを、遠位方向において、遠位遮蔽体に対して押すステップであって、近位遮蔽体と針ハブとは、近位遮蔽体と針ハブとの間の摩擦によって一体に保持される、ステップと、近位遮蔽体と針ハブとの間の摩擦が、遠位遮蔽体との針ハブの係合によって、または、他の薬剤送達デバイス構成要素との針ハブの係合によって、克服される状態で、近位遮蔽体を遠位方向において遠位遮蔽体および針ハブに対して押すステップとを含む方法に関する。
【0018】
ここで、本開示の実施形態が、例だけを用いて、以下の添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】モジュールの部品が透過として示されている(点線)、針モジュールの斜視図である。
図2図1の近位遮蔽体の斜視断面図である。
図3図1の針ハブの斜視図である。
図4図1の遠位遮蔽体の一部の斜視断面図である。
図5】使用前の図1の針モジュールの断面図である。
図6】使用中の図1の針モジュールの断面図である。
図7】使用中の図1の針モジュールの断面図である。
図8】他の針モジュールの図である。
図9】他の針モジュールの図である。
図10】他の針モジュールの図である。
図11】他の針モジュールの図である。
図12】他の針モジュールの図である。
図13】他の針モジュールの図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
カートリッジに基づく薬物カセットのための組み込み針モジュールとして、本明細書に記載されている概念は、針カバー圧縮行程を2つ異なる下位ステップへと連続して、すなわち、針をカートリッジに取り付け、その後、針を注入部位に続けて突き刺すことを、どのように切り替えるかについて詳しく述べている。
【0021】
概して、針カバーは、デバイスを起動し、連続して、カートリッジ隔膜および注入部位を穿孔する針を制御するために使用できる。連続的な制御が、前遮蔽体(近位遮蔽体)のタブの配置と、針ハブの浮き彫りされた特徴と、後遮蔽体(遠位遮蔽体)の内向きに突出する隆条部とによって提供される。これによる可能な利点は、前遮蔽体、後遮蔽体、および針ハブだけが殺菌ステップを必要とすることである。
【0022】
薬剤送達部材モジュールの第1の例は、図1に示されているような針モジュール10である。針モジュール10は、近位遮蔽体(または前遮蔽体または第1の遮蔽体)30と、遠位遮蔽体(または後遮蔽体または第2の遮蔽体)50と、針ハブ70とを備える。針ハブ70は針72を備える。カートリッジ90の一部も参考のために示されている。針ハブ70は、軸方向13において近位端14から遠位端15へと長手方向軸12に沿って延びる。この状況について、軸12に関する周方向16と、軸12に関する径方向17とが同じく示されている。
【0023】
図2に示されているように、近位遮蔽体30は、軸の方を向く第1の表面31と、軸から離れる方を向く第2の表面32とを備える。図3に示されているように、針ハブ70は、軸から離れる方を向く第3の表面73を備える。図4に示されているように、遠位遮蔽体50は、軸の方を向く第4の表面54を備える。
【0024】
近位遮蔽体30は、図5図7を参照して後でより詳細に説明されるように、軸方向13において、遠位遮蔽体50に対して、近位位置から遠位位置へと移動可能である。
【0025】
針モジュールは、近位位置から遠位位置への近位遮蔽体の移動の第1の部分において、第1の表面31と第3の表面73とが互いと接触し、第2の表面32と第4の表面54とが互いと接触し、第1の表面31と第3の表面73との間の摩擦が、第2の表面32と第4の表面54との間の摩擦よりも大きくなるように、配置される。これによる結果は、近位位置から遠位位置への移動の第1の部分の間、針ハブ70は近位遮蔽体30と共に移動することである。
【0026】
針モジュールは、第1の位置から第2の位置への近位遮蔽体の移動の後続の部分において、第1の表面31と第3の表面73とが互いと接触し、第2の表面32と第4の表面54とが軸方向13において互いから離間され、針ハブ70が遠位方向におけるさらなる移動から制限されるようにも配置される。これによる結果は、近位遮蔽体30が、近位位置から遠位位置への移動の後続の部分の間、遠位方向において遠位遮蔽体50と針ハブ70との両方に対して移動することである。
【0027】
ここで、近位遮蔽体30、遠位遮蔽体50、および針ハブ70の構造が、図2図4を参照してより詳細に説明される。図2は近位遮蔽体30を示している。具体的には、近位遮蔽体30は、軸12の方を向く第1の表面31と、軸12から離れる方を向く第2の表面32とを備える。近位遮蔽体は、閉じた近位端と開放した遠位端とを伴う管状(より明確には、円筒状)である。近位端は、任意選択のシール34を備え、このシールは針72によって穿孔され得る。代替で、近位端における孔が、遠位遮蔽体の孔56と同様の手法で(図4参照)、シール34の場所に設けられ得、シールの提供を通じて、無菌状態に役立つことができる。
【0028】
近位遮蔽体の遠位端において、複数のタブ36(この場合には4つであるが、1つ、2つ、またはより多くが提供されてもよい)が、解放した遠位端の周りで周方向において離間されている。各々のタブ36は、第1の表面31と第2の表面32とを備える突起を備える。各々のタブは、ゴムまたは熱可塑性エラストマ(TPF)などの圧縮可能な材料から少なくとも部分的に作られる。この例では、第1の表面31は、突起のため、近位遮蔽体30の残りの部分の外面よりも軸方向からさらに離れている。この例では、第2の表面32は、突起のため、近位遮蔽体30の残りの部分の内面よりも軸に近い(そのため、近位遮蔽体30の円筒部よりも表面に近い)。任意選択の凹部38も、タブ36に隣接する近位遮蔽体の内面に設けられ、これらの凹部はタブを曲げるのを助けることができる。タブを曲げることは任意選択であるが、近位遮蔽体30が第1の位置から第2の位置への近位遮蔽体の移動の後続の部分において針ハブ70を越えて滑るのを助けることができる。代替で、タブは柔軟なアームであってもよい。
【0029】
図3は針ハブ70を示している。具体的には、針ハブ70は、軸から離れる方を向く第3の表面73を備える。第3の表面は複数の突起74を備える。針ハブ70は基部71と針72とを備える。針72は近位部78と遠位部79とを備える。近位部78は、薬剤を送達するために、注入部位を穿孔するように設計されている。遠位部は、カートリッジにおける薬剤にアクセスするために、カートリッジを穿孔するように設計されている。
【0030】
図4は遠位遮蔽体50を示している。具体的には、遠位遮蔽体50は、軸の方を向く第4の表面54を備える。遠位遮蔽体は、部分的に閉じた遠位端と開放した近位端とを伴う管状(より明確には、円筒状)である。第5の表面55を備える壁が、孔56から離れて、遠位端を部分的に閉じている。孔は任意選択でシールによって閉じることができ、シールは使用中に針の遠位端によって穿孔されることになる。複数の突起58が設けられており(この場合には4つであるが、例えばタブ36の数に依存して、1つ、2つ、またはより多くが設けられてもよい)、各々の突起58は第4の表面54を備える。
【0031】
遠位遮蔽体50は、遠位遮蔽体50の遠位端において凹部59も備える。凹部は、遠位遮蔽体50の円筒形の壁の一部と、第5の表面55を備える壁とによって形成されている。凹部は任意選択であるが、カートリッジの配置を案内することができるため、ならびに/または、薬剤送達デバイスの組み立ての間にカートリッジを支持すること、および/もしくは、完成した薬剤送達デバイスにおいてカートリッジを支持することができるため、有益であり得る。
【0032】
ここで、モジュールを備える薬剤送達デバイスの使用の間の針モジュール10の構成要素同士の相対移動が、図5図7を使用して説明される。近位遮蔽体は、任意選択の初期位置(図5)から、近位位置、遠位位置、そして最終位置へと移動可能である。図6は、近位位置と遠位位置との間の位置を示しており、図7は、遠位位置と最終位置との間の位置を示している。
【0033】
任意選択の初期位置が図5に示されており、第1の表面31と第3の表面73とが互いと接触しており、第2の表面32と第4の表面54とが互いから離間しており、第5の表面55と第6の表面76とが互いから離間している。この位置において、タブの圧縮可能な材料は、第3の表面73と第4の表面54との間で圧縮されておらず(または、部分的に圧縮されている)、これは、保存されている製品を圧縮されていない(または、より少なく圧縮されている)状態で提供することで、保存可能期間を延ばすことができる。この初期位置は任意選択であり、針モジュール10は、具体的には(後で記載されているような)圧縮材料を使用しない例において、近位位置において直接的に提供されてもよい。
【0034】
薬剤送達デバイスが使用のために準備されるとき、部品の回転、キャップおよび/もしくは他の部品の取り外し、ならびに/またはボタンを押すことを含め、様々なステップが取られ得る。本明細書に記載されている考えは、針が注入部位に突き刺さることができるように針を露出させるために、および、薬剤送達を作動させるために、デバイスの筐体に対して遠位方向に押される針保護部が設けられるデバイスで特に有用であり得ることが、考えられている。そのため、遠位方向に移動する針保護部は、(遠位遮蔽体の移動がデバイスの筐体に対して軸方向で制限されている状態で)近位遮蔽体を遠位方向において遠位遮蔽体に対して押すために必要とされる力を提供することができるが、力は、代替で、例えばデバイスの使用の前に使用者によってなど、他の方法で提供されてもよい。
【0035】
近位遮蔽体が遠位遮蔽体に対して遠位方向に押されるとき、第1の表面31と第3の表面73との間の摩擦が針ハブ70と近位遮蔽体30とを一緒に移動させるため、近位遮蔽体は針ハブと共に遠位方向に移動することになる。この移動は、第2の表面32と第4の表面54とが接触する結果となる。この位置が近位位置であり、これは、初期位置が任意選択であるため、先に記載されているような完成した薬剤送達デバイスにおける位置でもあり得る。第1の表面31と第3の表面73との間の摩擦が第2の表面32と第4の表面54との間の摩擦よりも大きくなるため、針ハブ70と近位遮蔽体30とは、遠位遮蔽体50に対して遠位方向において一緒に移動する(移動し続ける)ことになり、それによって、図6に示されている位置に到達する。
【0036】
針ハブ70と近位遮蔽体30とは遠位方向において遠位遮蔽体50に対して一緒に移動し続けるとき、近位遮蔽体は、第2の表面32と第4の表面54とがもはや接触しない(つまり、離間される)位置に到達する。針ハブ70と近位遮蔽体30とは、接触のため、なおも遠位方向において遠位遮蔽体50に対して一緒に移動し続け、第1の表面31と第3の表面73との間に摩擦をもたらす。
【0037】
次に、第5の表面55と第6の表面76とが互いと接触し、遠位遮蔽体に対する針ハブの引き続きの遠位への移動に対して、第1の表面31と第3の表面73との間に摩擦より大きい抵抗を提供する。第5の表面55と第6の表面76とが互いと接触するときまでに、針72はカートリッジを穿孔している。
【0038】
任意選択で、第5の表面55と第6の表面76とが互いと接触する一方で、第2の表面32と第4の表面54とはなおも接触しているが、これは、遠位方向において遠位遮蔽体に対して移動する近位遮蔽体の抵抗を増加させることができ、これは、場合によっては不利であり得る。
【0039】
接触している第5の表面55と第6の表面76とによって提供される抵抗のため、遠位方向においての遠位遮蔽体50に対する近位遮蔽体30の引き続きの移動は、遠位方向においての遠位遮蔽体50と針ハブ70との両方に対する近位遮蔽体30の移動をもたらす。この結果、図7に示されているように、針72はシール34を穿孔する。
【0040】
最終位置において、針は近位遮蔽体の近位端から外へ延び、針は遠位遮蔽体の遠位端から外へ延びる。結果として、針は、針の近位端において注入部位を穿孔することができ、針の遠位端においてカートリッジを穿孔することができる。最終位置において、近位遮蔽体30は遠位遮蔽体50に対して最も遠位の位置にあり、針ハブも遠位遮蔽体50に対して最も遠位の位置にある。針モジュールは、典型的には、軸方向において最も小さい長さになってもいる(および、針モジュールは、典型的には、組み立てられた薬剤送達デバイスにおいて、軸方向でその最も大きい長さにある)。
【0041】
本明細書に記載されている針モジュールは、カートリッジなどの針なしの容器を伴う薬剤送達デバイスと主に使用されることが、考えられている。これらのデバイスは1回の使用または複数回の使用であり得る。薬剤送達デバイスは、使用者によって分解することができない単一の結合したユニットとして提供され得る、または、使用者が薬剤送達デバイスを使用する前に一体に組み立てる必要がある2つ以上の部品であり得る。本明細書で使用される針モジュールは、薬剤送達デバイスにおいて、または、薬剤送達デバイスのパワーパックに付着するためのカートリッジ組立体において、使用され得る。薬剤送達デバイスは、例えば、自動注入装置であり得る。本明細書に記載されている針モジュールが使用できるデバイスの例が、PCT/EP2021/084082において提供されており、これは本明細書において参照により組み込まれている。
【0042】
本明細書に記載されている考えは、針に基づく注入に主に注力しているが、ジェット式注射器など、針以外の薬剤送達部材で使用することができる。
【0043】
技術的な立場から、近位遮蔽体が遠位端に来るように、針モジュール全体を薬剤送達デバイスの中で180度回転させることも実現可能であり、その結果、その逆に代わって、針を初めに注入部位に突き刺し、その後、カートリッジに続けて突き刺すことになる。
【0044】
典型的には、近位遮蔽体と、遠位遮蔽体と、薬剤送達部材ハブとは同軸にある。様々な調整が、針モジュールの構成要素の具体的な形および特徴に対して行うことができ、ここで、ある例の調整が説明される。近位遮蔽体30は管状(および円筒状)として示されているが、形は、特に針モジュールの無菌性が必要とされないとき、変化させることができる。同様に、遠位遮蔽体50は管状(および円筒状)として示されているが、形は、特に針モジュールの無菌性が必要とされないとき、変化させることができる。
【0045】
近位遮蔽体30は、遠位遮蔽体50の内側で伸縮自在に配置されて示されている。任意選択で、近位遮蔽体30と遠位遮蔽体50とは、例えば、近位遮蔽体および遠位遮蔽体の一方における溝と、近位遮蔽体および遠位遮蔽体の他方における隆条部とによって、互いに対して回転において制限される。同様に、近位遮蔽体と針ハブとは、例えば、近位遮蔽体および針ハブの一方における溝と、他方における隆条部とによって、任意選択で、互いに対して回転において制限される。近位遮蔽体と遠位遮蔽体とは、回転の制限なしで、2つの入れ子にされた円筒とでき、ある実施形態では、第2の表面32および第4の表面54などの接触表面が軸の周りで全体に延び、これは、互いに対する構成要素同士の回転位置が重要ではないことを意味する。同様に、近位遮蔽体と針ハブとは、回転の制限なしで、2つの入れ子にされた円筒とでき、ある実施形態では、第1の表面31および第3の表面73などの接触表面が軸の周りで全体に延び、これは、互いに対する構成要素同士の回転位置が重要ではないことを意味する。
【0046】
第2の表面32と第4の表面54とは、両方ともそれぞれの遮蔽体30、50の表面を越えて突出するとして示されており、第2の表面32は軸から離れるようにして近位遮蔽体30の外面から突出しており、第4の表面54は軸に向けて遠位遮蔽体50の内面から突出している。代替で、第2の表面32および第4の表面54の一方だけが突起にある。代替で、第2の表面32および第4の表面54のいずれも突起になく、これは、例えば、外面/内面の隣接の領域においてよりも大きい摩擦を第2の表面32および/または第4の表面54において材料に提供することで達成できる。同様に、突起において第1の表面31を提供することは任意選択である。
【0047】
針モジュールの様々な特徴は、軸の周りに4つの要素から成る対称性を有し、つまり、4つの各々の特徴(例えば、第1の表面31、近位遮蔽体30のタブ36、および遠位遮蔽体50の突起58)が設けられている。代わりに、1つ、2つ、またはより多くの各々の特徴が設けられてもよい。
【0048】
タブ36は圧縮可能として説明されている。これは、同じ効果が圧縮不可能なタブで提供できるため、任意選択であるが、圧縮可能性は、摩擦を変化させるのを助けることができ、タブ36に突起74を通過させるのを助けることができる(これは、例えば、柔軟なアームにタブ36を提供する、または、タブ36に隣接する任意選択の凹部38を提供することによって、残りの近位遮蔽体30に対するタブ自体の曲げをより容易にすることなどで、圧縮不可能なものではタブ36の曲げによって代わりに行うことができる)。
【0049】
第5の表面55と、第5の表面55を備える壁とは任意選択であり、第6の表面76は、代替で、遠位遮蔽体50に対する針ハブ70の遠位の移動を制限するために、他の薬剤送達デバイス構成要素(カートリッジ、または筐体の突起など)に当接することができる。凹部59も、カートリッジが他の薬剤送達デバイスの構成要素と使用して位置合わせできるため、任意選択である。
【0050】
針ハブ70は、円筒として示されている基部71を備えるが、これは、例えば近位遮蔽体30の形に依存して変えることができる。描写されている例では、突起74は周方向に延びる隆条部であるが、他の形が使用されてもよい。針72は、基部を通じて延びる単一の管とできる、または、近位部分と遠位部分とを、それらを連結する基部を通る孔を伴って備えることができる。針はジェット式注射器によって置き換えられてもよい。針の端は、鋭くされているとして示されているが、これも任意選択である。
【0051】
図8は、前遮蔽体30(近位遮蔽体)と、針ハブ70と、後遮蔽体50(遠位遮蔽体)とを備える他の針モジュールを示している。
【0052】
前遮蔽体および針ハブに関して、前遮蔽体の内側隆条部は、第1の行程においてこれら2つの構成要素の間での軸方向の回転運動を同期させるために、針ハブのスロットのうちのスロットの内側に位置付けられる。
【0053】
前遮蔽体および後遮蔽体に関して、前遮蔽体の外向きの突起は後遮蔽体の内面に沿って滑る。前遮蔽体および後遮蔽体は、回転を伴う第1の行程において、後遮蔽体の外側ネジ山を通じて進み、第2の行程においてスロットを通じて真っ直ぐに通る。
【0054】
針ハブおよび後遮蔽体に関して、針ハブのネジ山は、針ハブが第1の行程において前遮蔽体によって回転させられるとき、カートリッジへと後方へ移動させられもするように、後遮蔽体の内側ネジ山を通じて滑る。
【0055】
針モジュールの7つの具体的な態様が、図9図11に示されている。
1. 内側隆条部101が、前遮蔽体と針ハブとの間の回転運動を同期させるために、針ハブのスロットと係合する。
2. 前遮蔽体が後方向に押されるとき、前遮蔽体が回転させられ得るように、前遮蔽体の外向きの突起102が後遮蔽体の外側ネジ山と結合する。
3. 針ハブが前遮蔽体と回転させられ得るように、針ハブのスロット103が前遮蔽体の内側隆条部と係合する。
4. 針ハブが前遮蔽体によって回転させられるとき、針ハブがカートリッジに向けて移動することができるように、針ハブのネジ山104が後遮蔽体の内側ネジ山と結合される。
5. 後遮蔽体が第1の行程で押されるとき、後遮蔽体の外側ネジ山105が前遮蔽体を回転させる。
6. 後遮蔽体の内側ネジ山106がカートリッジへの針ハブの挿入を導く。
7. 後遮蔽体の真っ直ぐなスロット107は、前遮蔽体が第2の行程において真っ直ぐに移動し、針を皮膚へと挿入するためである。
【0056】
ここで、この流れが、図12および図13を参照して説明される。第1の行程(「第1の部分の行程」)において、前遮蔽体は、後方へ押されるとき、後遮蔽体の外側ネジ山を通じて回転する。その回転運動は、針ハブも回転させるため、針ハブを後遮蔽体の内側ネジ山を通じて後方に移動させる。第2の行程(「第2の部分の行程」)において、前遮蔽体は、後遮蔽体の真っ直ぐなスロットを通じて真っ直ぐ押される。その内側隆条部は、針ハブとなおも係合させられるが、針ハブを通じて滑るだけである。
【0057】
より詳細には、第1の行程において、上方が針カバーを押すとき、前遮蔽体も後方へ押され、その外方への突起は、後遮蔽体の外側ネジ山を通じて滑るとき、構成要素を回転させる。前遮蔽体の回転は、その内側の隆条部によって針ハブへも伝えられ、後遮蔽体の内側ネジ山と針ハブのネジ山との間の接続のため、針ハブを後方へと移動させる。針の遠位端がカートリッジに付着させられ、前遮蔽体の外向きの突起が後遮蔽体の外側ネジ山の端に到達すると、これは第1の行程の終わりであり、第2の行程の始まりである。第2の行程において、前遮蔽体の外向きの突起は、後遮蔽体の真っ直ぐなスロットを通じて滑ることができ、そのため回転が伴われない。その間、前遮蔽体の内側の隆条部も針ハブのスロットを通じて滑り、そのため、それらの結合された特徴部は、行程のこの部分においては有効ではない。第2の行程は、前遮蔽体が後遮蔽体へと全体で押され、針が注入部位において皮膚へと挿入されるときに終わる。次に、注入過程が始まることができる。
【0058】
本開示では、「遠位方向」という用語が使用されるとき、これは、薬剤送達デバイスの使用の間の服用量送達部位から離れる方を指す方向に言及している。「遠位部/遠位端」という用語が使用されるとき、これは、薬剤送達デバイスの使用の下で、服用量送達部位から最も遠くに離れて位置付けられる送達デバイスの一部/端、または送達デバイスの部材の一部/端に言及している。対応するように、「近位方向」という用語が使用されるとき、これは、薬剤送達デバイスの使用の間の服用量送達部位の方を指す方向に言及している。「近位部/近位端」という用語が使用されるとき、これは、薬剤送達デバイスの使用の下で、服用量送達部位の最も近くに位置付けられる送達デバイスの一部/端、または送達デバイスの部材の一部/端に言及している。
【0059】
さらに、「長手方向の」、「長手方向に」、「軸方向に」、および「軸方向の」という用語は、典型的にはデバイスおよび/または構成要素の最も長い延在の方向において、デバイス、またはデバイスの構成要素に沿って、近位端から遠位端へと延びる方向に言及している。
【0060】
同様に、「横断の」、「横断する」、および「横断して」という用語は、長手方向に対して概して垂直な方向に言及している。
【0061】
概して、使用されているすべての用語は、本明細書において他に明示的に定められていない場合、本技術分野における通常の意味に従って解釈されるものである。「要素、装置、部材、構成要素、手段など」へのすべての言及は、他に明示的に述べられていない場合、要素、装置、部材、構成要素、手段などの少なくとも1つの例を参照しているとしてオープンに解釈されるものである。
【0062】
本明細書に記載されている送達デバイスは、多くの異なる種類の疾患のうちの1つまたは複数の治療および/または予防のために使用できる。例示の疾患には、限定されることはないが、関節リウマチ、炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)、高コレステロール血症、糖尿病(例えば、2型糖尿病)、乾癬、片頭痛、多発性硬化症、貧血、狼瘡、アトピー性皮膚炎、喘息、鼻ポリープ、急性低血糖、肥満、アナフィラキシ、およびアレルギがある。本明細書に記載されている薬剤送達デバイスに含まれ得る薬物の例示の種類には、限定されることはないが、抗体、タンパク質、融合タンパク質、ペプチボディ、ポリペプチド、ペグ化タンパク質、タンパク質断片、タンパク質類似体、タンパク質変異体、タンパク質前駆体、および/またはタンパク質誘導体がある。本明細書に記載されている送達デバイスに含まれ得る例示の薬物には、エタネルセプト(関節リウマチ、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など))、エボロクマブ(高コレステロール血症)、エクセナチド(2型糖尿病)、セクキヌマブ(乾癬)、エレヌマブ(片頭痛)、アリロクマブ(関節リウマチ)、メトトレキサート(アメトプテリン)(関節リウマチ)、トシリズマブ(関節リウマチ)、インターフェロンベータ-1a(多発性硬化症)、スマトリプタン(片頭痛)、アダリムマブ(関節リウマチ)、ダルベポエチンアルファ(貧血)、ベリムマブ(狼瘡)、ペグインターフェロンベータ-1a'(多発性硬化症))、サリルマブ(関節リウマチ)、セマグルチド(2型糖尿病、肥満)、デュピルマブ(アトピー性皮膚炎、喘息、鼻ポリープ、アレルギ)、グルカゴン(急性低血糖)、エピネフリン(アナフィラキシ)、インスリン(糖尿病)、アトロピン、およびベドリズマブ(炎症性腸疾患(例えば、クローン病およい潰瘍性大腸炎))が含まれるが、(括弧内の関連する病気の例に限定されないとともに)これらに限定されない。例えば、本明細書に列記されているような薬物(または、薬学的に許可可能な薬物の塩)、および薬学的に許可可能なキャリアを備える製剤処方といった、限定されることはないが、本明細書に記載されている任意の薬物を含む製剤処方も、本明細書に記載されている送達デバイスにおける使用のために検討されている。本明細書に列記されているような薬物(または、薬学的に許可可能な薬物の塩)を備える製剤処方は、1つまたは複数の他の有効成分を含んでもよい、または、存在する唯一の有効成分であってもよい。
【0063】
記載されている実施形態への様々な変更が可能であり、下記の請求項によって定められる本発明から逸脱することなく、当業者には思い付くものである。
【0064】
特定の態様が、以下の条項によってまとめられる。
【0065】
1. 薬剤送達デバイスのための薬剤送達部材モジュールであって、薬剤送達部材モジュールは、近位遮蔽体と、遠位遮蔽体と、薬剤送達部材ハブとを備え、薬剤送達部材モジュールは、軸方向において近位端から遠位端へと長手方向軸に沿って延び、
近位遮蔽体は、長手方向軸の方を向く第1の表面と、長手方向軸から離れる方を向く第2の表面とを備え、
薬剤送達部材ハブは、長手方向軸から離れる方を向く第3の表面を備え、遠位遮蔽体は、長手方向軸の方を向く第4の表面を備え、
近位遮蔽体は、軸方向において、遠位遮蔽体に対して、近位位置から遠位位置へと移動可能であり、
薬剤送達部材モジュールは、近位位置から遠位位置への近位遮蔽体の移動の第1の部分において、
第1の表面と第3の表面とが互いと接触し、第2の表面と第4の表面とが互いと接触し、
第1の表面と第3の表面との間の摩擦が、第2の表面と第4の表面との間の摩擦よりも大きくなるように、および、
近位位置から遠位位置への近位遮蔽体の移動の第1の部分の間、薬剤送達部材ハブが近位遮蔽体と共に移動するように、
配置され、
薬剤送達部材モジュールは、近位位置から遠位位置への近位遮蔽体の移動の後続の部分(第1の部分の後である)において、
第1の表面と第3の表面とが互いと接触し、第2の表面と第4の表面とが(典型的には、軸方向において)互いから離間され、
薬剤送達部材ハブが、遠位方向におけるさらなる移動から制限されるように、および、
近位遮蔽体が、近位位置から遠位位置への近位遮蔽体の移動の後続の部分の間、遠位方向において遠位遮蔽体と薬剤送達部材ハブとの両方に対して移動するように、
配置される、薬剤送達部材モジュール。
【0066】
2. 第1の表面と第2の表面とは両方とも突起にある、条項1の薬剤送達部材モジュール。
【0067】
3. 突起は圧縮可能である、条項2の薬剤送達部材モジュール。
【0068】
4. 突起は近位遮蔽体のタブにある、条項2または3の薬剤送達部材モジュール。
【0069】
5. タブは近位遮蔽体の遠位端にある、条項1から4のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0070】
6. 第3の表面は突起を備える、条項1から5のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0071】
7. 突起は、長手方向軸の周りで周方向に延びる隆条部である、条項6の薬剤送達部材モジュール。
【0072】
8. 第3の表面は、軸方向において互いから離間される複数の突起を備える、条項1から5のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0073】
9. 複数の突起は、長手方向軸の周りで周方向に延びる隆条部である、条項8に記載の薬剤送達部材モジュール。
【0074】
10. 近位遮蔽体は遠位遮蔽体の内側に少なくとも部分的にある、条項1から9のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0075】
11. 薬剤送達部材ハブは近位遮蔽体の内側に少なくとも部分的にある、条項1から10のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0076】
12. 近位遮蔽体と、遠位遮蔽体と、薬剤送達部材ハブとは同軸にある、条項1から11のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0077】
13. 近位遮蔽体は遠位遮蔽体の内側で伸縮自在に配置される、条項1から12のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0078】
14. 近位遮蔽体および遠位遮蔽体のうちの1つまたは複数が、遠位遮蔽体に対する近位遮蔽体の移動の間、薬剤送達部材によって穿孔されるシールを備える、条項1から13のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0079】
15. 近位遮蔽体は管状である、条項1から14のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0080】
16. 近位遮蔽体は円筒状である、条項1から15のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0081】
17. 遠位遮蔽体は管状である、条項1から16のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0082】
18. 遠位遮蔽体は円筒状である、条項1から17のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0083】
19. 針ハブは円筒状である、条項1から18のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0084】
20. 近位遮蔽体は、遠位遮蔽体よりも針モジュールの近位端に近い、条項1から19のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0085】
21. 針ハブは薬剤送達部材を備える、条項1から20のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0086】
22. 薬剤送達部材は針である、条項21の薬剤送達部材モジュール。
【0087】
23. 近位遮蔽体は、軸方向において、遠位遮蔽体に対して、初期位置から近位位置へと移動可能であり、
初期位置において、第1の表面と第3の表面とが互いと接触し、第2の表面と第4の表面とが互いから離間され、
薬剤送達部材モジュールは、薬剤送達部材モジュールが初期位置から近位位置へと移動するとき、近位遮蔽体および薬剤送達部材ハブが遠位方向において遠位遮蔽体に対して移動するように配置される、条項1から22のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0088】
24. 遠位遮蔽体は第5の表面を備え、第5の表面は近位方向を向き、薬剤送達部材ハブは第6の表面を備え、第6の表面は遠位方向を向き、
第5の表面は、薬剤送達部材ハブが、移動行程の後続の部分の間に、遠位方向におけるさらなる移動から制限されるように、移動行程の後続の部分の間に第6の表面と接触するように配置される、条項1から23のいずれかの薬剤送達部材モジュール。
【0089】
25. カートリッジと、条項1から24のいずれかの薬剤送達部材モジュールとを備える、薬剤送達デバイスの部分組立体。
【0090】
26. カートリッジは第5の表面を備え、第5の表面は近位方向を向き、薬剤送達部材ハブは第6の表面を備え、第6の表面は遠位方向を向き、
第5の表面は、薬剤送達部材ハブが、移動行程の後続の部分の間に、遠位方向におけるさらなる移動から制限されるように、移動行程の後続の部分の間に第6の表面と接触するように配置される、条項1から23のいずれかに従属するときの条項25の部分組立体。
【0091】
27. 薬剤送達デバイスのパワーパックに付着するためのカートリッジ組立体であって、条項1から24のいずれかの薬剤送達部材モジュール、または、条項25もしくは26の部分組立体を備えるカートリッジ組立体。
【0092】
28. 条項1から24のいずれかの薬剤送達部材モジュール、条項25もしくは26の部分組立体、または、条項27のカートリッジ組立体を備える薬剤送達デバイス。
【0093】
29. 薬剤送達デバイスは自動注入装置である、条項28の薬剤送達デバイス。
【符号の説明】
【0094】
10 針モジュール
12 長手方向軸
13 軸方向
14 近位端
15 遠位端
16 周方向
17 径方向
30 近位遮蔽体、前遮蔽体、第1の遮蔽体
31 第1の表面
32 第2の表面
34 シール
36 タブ
38 凹部
50 遠位遮蔽体、後遮蔽体、第2の遮蔽体
54 第4の表面
55 第5の表面
56 孔
58 突起
59 凹部
70 針ハブ
71 基部
72 針
73 第3の表面
74 突起
76 第6の表面
78 近位部
79 遠位部
101 内側隆条部
102 外向きの突起
103 スロット
104 ネジ山
105 外側ネジ山
106 内側ネジ山
107 スロット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13