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特許7603852接着装置、吐出装置、制御プログラム、及び接着体製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】接着装置、吐出装置、制御プログラム、及び接着体製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20241213BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241213BHJP
   B05C 9/12 20060101ALI20241213BHJP
   B32B 37/10 20060101ALI20241213BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241213BHJP
   B01F 27/80 20220101ALI20241213BHJP
   B01F 35/212 20220101ALI20241213BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20241213BHJP
   B01F 35/90 20220101ALI20241213BHJP
   B01F 35/222 20220101ALI20241213BHJP
   B01F 101/36 20220101ALN20241213BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05C9/12
B32B37/10
C09J201/00
B01F27/80
B01F35/212
B01F35/71
B01F35/90
B01F35/222
B01F101:36
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023573929
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2022046434
(87)【国際公開番号】W WO2023136045
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2022004502
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】西村 良知
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-126593(JP,A)
【文献】特開2005-74285(JP,A)
【文献】特開2001-149838(JP,A)
【文献】特開2017-100285(JP,A)
【文献】特開2021-166966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00
B05C 11/00
B05C 9/00
B32B 37/00
C09J 201/00
B01F 27/00
B01F 35/00
B01F 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤を供給する主剤供給装置と、
前記主剤を硬化させる硬化剤を供給する硬化剤供給装置と、
前記主剤供給装置によって前記主剤が供給され、かつ前記硬化剤供給装置によって前記硬化剤が供給される混合容器と、
前記混合容器の内部に配置されている撹拌羽根と、前記撹拌羽根を回転させるモータとを有し、前記混合容器の前記内部で回転する前記撹拌羽根によって、前記主剤と前記硬化剤とを混合することにより、前記混合容器の前記内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物である接着剤を形成する混合装置と、
前記混合容器から吐出された前記接着剤が付着した第1部材に対して、該接着剤を介して第2部材を対向させ、かつ該接着剤が押し広げられるまで、前記第1部材と前記第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う押し付け装置と、
前記主剤と前記硬化剤とが前記撹拌羽根によって混合される際、又は既に前記混合容器の前記内部に形成された前記接着剤が前記撹拌羽根によって練り直される際に、前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量を検出する検出器と、
前記検出器によって検出された前記トルク又は前記物理量の値に応じて、前記押し付け装置が行う前記押し付けの力の大きさと、前記押し付け装置が行う前記押し付けの時間長との少なくとも一方を制御する制御装置と、
を備える、接着装置。
【請求項2】
主剤を供給する主剤供給装置と、
前記主剤を硬化させる硬化剤を供給する硬化剤供給装置と、
前記主剤供給装置によって前記主剤が供給され、かつ前記硬化剤供給装置によって前記硬化剤が供給される混合容器と、
前記混合容器の内部に配置されている撹拌羽根と、前記撹拌羽根を回転させるモータとを有し、前記混合容器の前記内部で回転する前記撹拌羽根によって、前記主剤と前記硬化剤とを混合することにより、前記混合容器の前記内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物である接着剤を形成する混合装置と、
前記混合容器から吐出された前記接着剤が付着した第1部材に対して、該接着剤を介して第2部材を対向させ、かつ該接着剤が押し広げられるまで、前記第1部材と前記第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う押し付け装置と、
前記主剤と前記硬化剤とが前記撹拌羽根によって混合される際、又は既に前記混合容器の前記内部に形成された前記接着剤が前記撹拌羽根によって練り直される際に、前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量を検出する検出器と、
前記検出器によって検出された前記トルク又は前記物理量の値が予め定められた第1上限閾値を上回る場合に、前記主剤供給装置から前記混合容器への前記主剤の供給及び前記硬化剤供給装置から前記混合容器への前記硬化剤の供給を停止させる停止制御と、前記接着剤の粘度が異常である旨を報知する報知制御との少なくとも一方を行う制御装置と、
を備える、接着装置。
【請求項3】
主剤を供給する主剤供給装置と、
前記主剤を硬化させる硬化剤を供給する硬化剤供給装置と、
前記主剤供給装置によって前記主剤が供給され、かつ前記硬化剤供給装置によって前記硬化剤が供給される混合容器と、
前記混合容器の内部に配置されている撹拌羽根と、前記撹拌羽根を回転させるモータとを有し、前記混合容器の前記内部で回転する前記撹拌羽根によって、前記主剤と前記硬化剤とを混合することにより、前記混合容器の前記内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物を含む接着剤を形成する混合装置と、
前記混合容器から吐出された前記接着剤が付着した第1部材に対して、該接着剤を介して第2部材を対向させ、かつ該接着剤が押し広げられるまで、前記第1部材と前記第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う押し付け装置と、
前記主剤と前記硬化剤とが前記撹拌羽根によって混合される際、又は既に前記混合容器の前記内部に形成された前記接着剤が前記撹拌羽根によって練り直される際に、前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量を検出する検出器と、
外部から作動指令が与えられた場合に、前記混合容器の内部の前記混合物に対して、前記混合物の粘度を低下させる粘度低下剤を添加する粘度低下剤供給装置と、
前記検出器によって検出された前記トルク又は前記物理量の値が予め定められた第2上限閾値を上回る場合に、前記粘度低下剤供給装置に前記作動指令を与えることにより、前記トルク又は前記物理量の値が前記第2上限閾値以下に低下するまで、前記混合物に前記粘度低下剤を添加させる粘度低下制御を行う制御装置と、
を備える、接着装置。
【請求項4】
主剤を供給する主剤供給装置と、
前記主剤を硬化させる硬化剤を供給する硬化剤供給装置と、
前記主剤供給装置によって前記主剤が供給され、かつ前記硬化剤供給装置によって前記硬化剤が供給される混合容器と、
前記混合容器の内部に配置されている撹拌羽根と、前記撹拌羽根を回転させるモータとを有し、前記混合容器の前記内部で回転する前記撹拌羽根によって、前記主剤と前記硬化剤とを混合することにより、前記混合容器の前記内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物である接着剤を形成する混合装置と、
前記混合容器から吐出された前記接着剤が付着した第1部材に対して、該接着剤を介して第2部材を対向させ、かつ該接着剤が押し広げられるまで、前記第1部材と前記第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う押し付け装置と、
前記主剤と前記硬化剤とが前記撹拌羽根によって混合される際、又は既に前記混合容器の前記内部に形成された前記接着剤が前記撹拌羽根によって練り直される際に、前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量を検出する検出器と、
外部から作動指令が与えられた場合に、前記混合容器の内部の前記接着剤を冷却することにより前記接着剤の粘度を上昇させる冷却装置と、
前記検出器によって検出された前記トルク又は前記物理量の値が予め定められた第2下限閾値を下回る場合に、前記冷却装置に前記作動指令を与えることにより、前記トルク又は前記物理量の値が前記第2下限閾値以上に上昇するまで、前記冷却装置に前記接着剤を冷却させる粘度上昇制御を行う制御装置と、
を備える、接着装置。
【請求項5】
主剤を供給する主剤供給装置と、
前記主剤を硬化させる硬化剤を供給する硬化剤供給装置と、
前記主剤供給装置によって前記主剤が供給され、かつ前記硬化剤供給装置によって前記硬化剤が供給される混合容器と、
前記混合容器の内部に配置されている撹拌羽根と、前記撹拌羽根を回転させるモータとを有し、前記混合容器の前記内部で回転する前記撹拌羽根によって、前記主剤と前記硬化剤とを混合することにより、前記混合容器の前記内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物である接着剤を形成する混合装置と、
前記主剤と前記硬化剤とが前記撹拌羽根によって混合される際、又は既に前記混合容器の前記内部に形成された前記接着剤が前記撹拌羽根によって練り直される際に、前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量を検出する検出器と、
前記検出器によって検出された前記トルク又は前記物理量の値が予め定められた第1上限閾値を上回る場合に、前記主剤供給装置から前記混合容器への前記主剤の供給及び前記硬化剤供給装置から前記混合容器への前記硬化剤の供給を停止させる停止制御と、前記接着剤の粘度が異常である旨を報知する報知制御との少なくとも一方を行う制御装置と、
を備える、吐出装置。
【請求項6】
主剤を供給する主剤供給装置と、
前記主剤を硬化させる硬化剤を供給する硬化剤供給装置と、
前記主剤供給装置によって前記主剤が供給され、かつ前記硬化剤供給装置によって前記硬化剤が供給される混合容器と、
前記混合容器の内部に配置されている撹拌羽根と、前記撹拌羽根を回転させるモータとを有し、前記混合容器の前記内部で回転する前記撹拌羽根によって、前記主剤と前記硬化剤とを混合することにより、前記混合容器の前記内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物である接着剤を形成する混合装置と、
前記混合容器から吐出された前記接着剤が付着した第1部材に対して、該接着剤を介して第2部材を対向させ、かつ該接着剤が押し広げられるまで、前記第1部材と前記第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う押し付け装置と、
前記主剤と前記硬化剤とが前記撹拌羽根によって混合される際、又は既に前記混合容器の前記内部に形成された前記接着剤が前記撹拌羽根によって練り直される際に、前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量を検出する検出器と、
を備える接着装置、を制御するコンピュータに、
前記検出器によって検出された前記トルク又は前記物理量の値に応じて、前記押し付け装置が行う前記押し付けの力の大きさと、前記押し付け装置が行う前記押し付けの時間長との少なくとも一方を制御する制御機能、
を実現させる、制御プログラム。
【請求項7】
主剤を供給する主剤供給装置と、
前記主剤を硬化させる硬化剤を供給する硬化剤供給装置と、
前記主剤供給装置によって前記主剤が供給され、かつ前記硬化剤供給装置によって前記硬化剤が供給される混合容器と、
前記混合容器の内部に配置されている撹拌羽根と、前記撹拌羽根を回転させるモータとを有し、前記混合容器の前記内部で回転する前記撹拌羽根によって、前記主剤と前記硬化剤とを混合することにより、前記混合容器の前記内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物である接着剤を形成する混合装置と、
前記混合容器から吐出された前記接着剤が付着した第1部材に対して、該接着剤を介して第2部材を対向させ、かつ該接着剤が押し広げられるまで、前記第1部材と前記第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う押し付け装置と、
前記主剤と前記硬化剤とが前記撹拌羽根によって混合される際、又は既に前記混合容器の前記内部に形成された前記接着剤が前記撹拌羽根によって練り直される際に、前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量を検出する検出器と、
を備える接着装置、を制御するコンピュータに、
前記検出器によって検出された前記トルク又は前記物理量の値が予め定められた第1上限閾値を上回る場合に、前記主剤供給装置から前記混合容器への前記主剤の供給及び前記硬化剤供給装置から前記混合容器への前記硬化剤の供給を停止させる停止制御と、前記接着剤の粘度が異常である旨を報知する報知制御との少なくとも一方を行う制御機能、
を実現させる、制御プログラム。
【請求項8】
主剤を供給する主剤供給装置と、
前記主剤を硬化させる硬化剤を供給する硬化剤供給装置と、
前記主剤供給装置によって前記主剤が供給され、かつ前記硬化剤供給装置によって前記硬化剤が供給される混合容器と、
前記混合容器の内部に配置されている撹拌羽根と、前記撹拌羽根を回転させるモータとを有し、前記混合容器の前記内部で回転する前記撹拌羽根によって、前記主剤と前記硬化剤とを混合することにより、前記混合容器の前記内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物を含む接着剤を形成する混合装置と、
前記混合容器から吐出された前記接着剤が付着した第1部材に対して、該接着剤を介して第2部材を対向させ、かつ該接着剤が押し広げられるまで、前記第1部材と前記第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う押し付け装置と、
前記主剤と前記硬化剤とが前記撹拌羽根によって混合される際、又は既に前記混合容器の前記内部に形成された前記接着剤が前記撹拌羽根によって練り直される際に、前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量を検出する検出器と、
外部から作動指令が与えられた場合に、前記混合容器の内部の前記混合物に対して、前記混合物の粘度を低下させる粘度低下剤を添加する粘度低下剤供給装置と、
を備える接着装置、を制御するコンピュータに、
前記検出器によって検出された前記トルク又は前記物理量の値が予め定められた第2上限閾値を上回る場合に、前記粘度低下剤供給装置に前記作動指令を与えることにより、前記トルク又は前記物理量の値が前記第2上限閾値以下に低下するまで、前記混合物に前記粘度低下剤を添加させる粘度低下制御を行う制御機能、
を実現させる、制御プログラム。
【請求項9】
主剤を供給する主剤供給装置と、
前記主剤を硬化させる硬化剤を供給する硬化剤供給装置と、
前記主剤供給装置によって前記主剤が供給され、かつ前記硬化剤供給装置によって前記硬化剤が供給される混合容器と、
前記混合容器の内部に配置されている撹拌羽根と、前記撹拌羽根を回転させるモータとを有し、前記混合容器の前記内部で回転する前記撹拌羽根によって、前記主剤と前記硬化剤とを混合することにより、前記混合容器の前記内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物である接着剤を形成する混合装置と、
前記混合容器から吐出された前記接着剤が付着した第1部材に対して、該接着剤を介して第2部材を対向させ、かつ該接着剤が押し広げられるまで、前記第1部材と前記第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う押し付け装置と、
前記主剤と前記硬化剤とが前記撹拌羽根によって混合される際、又は既に前記混合容器の前記内部に形成された前記接着剤が前記撹拌羽根によって練り直される際に、前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量を検出する検出器と、
外部から作動指令が与えられた場合に、前記混合容器の内部の前記接着剤を冷却することにより前記接着剤の粘度を上昇させる冷却装置と、
を備える接着装置、を制御するコンピュータに、
前記検出器によって検出された前記トルク又は前記物理量の値が予め定められた第2下限閾値を下回る場合に、前記冷却装置に前記作動指令を与えることにより、前記トルク又は前記物理量の値が前記第2下限閾値以上に上昇するまで、前記冷却装置に前記接着剤を冷却させる粘度上昇制御を行う制御機能、
を実現させる、制御プログラム。
【請求項10】
主剤を供給する主剤供給装置と、
前記主剤を硬化させる硬化剤を供給する硬化剤供給装置と、
前記主剤供給装置によって前記主剤が供給され、かつ前記硬化剤供給装置によって前記硬化剤が供給される混合容器と、
前記混合容器の内部に配置されている撹拌羽根と、前記撹拌羽根を回転させるモータとを有し、前記混合容器の前記内部で回転する前記撹拌羽根によって、前記主剤と前記硬化剤とを混合することにより、前記混合容器の前記内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物である接着剤を形成する混合装置と、
前記主剤と前記硬化剤とが前記撹拌羽根によって混合される際、又は既に前記混合容器の前記内部に形成された前記接着剤が前記撹拌羽根によって練り直される際に、前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量を検出する検出器と、
を備える吐出装置、を制御するコンピュータに、
前記検出器によって検出された前記トルク又は前記物理量の値が予め定められた第1上限閾値を上回る場合に、前記主剤供給装置から前記混合容器への前記主剤の供給及び前記硬化剤供給装置から前記混合容器への前記硬化剤の供給を停止させる停止制御と、前記接着剤の粘度が異常である旨を報知する報知制御との少なくとも一方を行う制御機能、
を実現させる、制御プログラム。
【請求項11】
主剤と前記主剤を硬化させる硬化剤とを、モータに回転される撹拌羽根によって混合容器の内部で混合することにより、前記混合容器の内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物である接着剤を形成するか、又は既に前記混合容器の内部に形成した前記接着剤を前記撹拌羽根によって練り直す接着剤準備工程と、
前記混合容器から第1部材に向けて前記接着剤を吐出する接着剤吐出工程と、
前記混合容器から吐出された前記接着剤が付着した前記第1部材に対して、該接着剤を介して第2部材を対向させ、かつ該接着剤が押し広げられるまで、前記第1部材と前記第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う押し付け工程と、
前記接着剤準備工程の前に、前記押し付け工程で前記接着剤を押し広げるのに必要な前記押し付けの力の大きさ又は前記押し付けの時間長の、前記接着剤準備工程で前記撹拌羽根を回転させるのに必要なトルクに対する依存性を表す必要値データを計測により取得しておく必要値データ取得工程と、
を有し、
前記押し付け工程では、前記必要値データを用いて、前記接着剤準備工程における前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量の値に応じて、前記押し付けの力の大きさと、前記押し付けの時間長との少なくとも一方を制御する、
接着体製造方法。
【請求項12】
主剤と前記主剤を硬化させる硬化剤とを、モータに回転される撹拌羽根によって混合容器の内部で混合することにより、前記混合容器の内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物である接着剤を形成するか、又は既に前記混合容器の内部に形成した前記接着剤を前記撹拌羽根によって練り直す接着剤準備工程と、
前記混合容器から第1部材に向けて前記接着剤を吐出する接着剤吐出工程と、
前記混合容器から吐出された前記接着剤が付着した前記第1部材に対して、該接着剤を介して第2部材を対向させ、かつ該接着剤が押し広げられるまで、前記第1部材と前記第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う押し付け工程と、
前記接着剤準備工程の前に、前記押し付け工程で前記押し付けを行った場合の前記接着剤の広がる程度を表す充填率の、前記接着剤準備工程で前記撹拌羽根を回転させるのに必要なトルクに対する依存性を計測し、その計測結果を用いて、必要な前記充填率を得るための前記トルクの上限値を表す第1上限閾値を特定する閾値特定工程と、
を有し、
前記接着剤準備工程では、前記撹拌羽根の回転の前記トルク又は該トルクを表す物理量が前記第1上限閾値を上回るか否かを判定し、前記トルク又は前記物理量が前記第1上限閾値を上回った場合には、前記接着剤吐出工程における前記混合容器から前記第1部材への前記接着剤の吐出を停止する、
接着体製造方法。
【請求項13】
主剤と前記主剤を硬化させる硬化剤とを、モータに回転される撹拌羽根によって混合容器の内部で混合することにより、前記混合容器の内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物を含む接着剤を形成するか、又は既に前記混合容器の内部に形成した前記接着剤を前記撹拌羽根によって練り直す接着剤準備工程と、
前記混合容器から第1部材に向けて前記接着剤を吐出する接着剤吐出工程と、
前記混合容器から吐出された前記接着剤が付着した前記第1部材に対して、該接着剤を介して第2部材を対向させ、かつ該接着剤が押し広げられるまで、前記第1部材と前記第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う押し付け工程と、
を有し、
前記接着剤準備工程では、前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量の値が予め定められた第2上限閾値を上回る場合に、前記トルク又は前記物理量の値が前記第2上限閾値以下に低下するまで、前記混合容器の内部の前記混合物に対して、前記混合物の粘度を低下させる粘度低下剤を添加する、
接着体製造方法。
【請求項14】
主剤と前記主剤を硬化させる硬化剤とを、モータに回転される撹拌羽根によって混合容器の内部で混合することにより、前記混合容器の内部に前記主剤と前記硬化剤との混合物である接着剤を形成するか、又は既に前記混合容器の内部に形成した前記接着剤を前記撹拌羽根によって練り直す接着剤準備工程と、
前記混合容器から第1部材に向けて前記接着剤を吐出する接着剤吐出工程と、
前記混合容器から吐出された前記接着剤が付着した前記第1部材に対して、該接着剤を介して第2部材を対向させ、かつ該接着剤が押し広げられるまで、前記第1部材と前記第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う押し付け工程と、
を有し、
前記接着剤準備工程では、前記撹拌羽根の回転のトルク又は該トルクを表す物理量の値が予め定められた第2下限閾値を下回る場合に、前記トルク又は前記物理量の値が前記第2下限閾値以上に上昇するまで、前記混合容器の内部の前記接着剤を冷却する、
接着体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着装置、吐出装置、制御プログラム、及び接着体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、主剤の成分と、その主剤を硬化させる硬化剤の成分とを含む接着剤を形成する装置が知られている。この装置は、主剤を供給する主剤供給装置と、主剤とは独立して硬化剤を供給する硬化剤供給装置と、主剤及び硬化剤が供給される混合容器とを備える。
【0003】
混合容器の内部で主剤と硬化剤とが混合されることにより、主剤と硬化剤との混合物としての接着剤が得られる。得られた接着剤を第1部材に塗布し、かつその第1部材に第2部材を押し付けることで接着体が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-183937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
混合容器に対する主剤の供給量と、硬化剤の供給量との比を一定に保つ場合でも、得られる接着剤の粘度には、ばらつきが生じ得る。
【0006】
接着剤の粘度がばらつくと、第1部材と第2部材とを貼り合わせる際に、両者によって接着剤が押し広げられる領域の面積がばらつく。このことは、第1部材と第2部材との接着の強度(以下、接着強度という。)のばらつきをもたらす。そこで、接着強度のばらつきを抑えることができる技術が望まれる。
【0007】
本開示の目的は、接着剤の粘度のばらつきに起因する接着強度のばらつきを抑えることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る接着装置は、主剤供給装置、硬化剤供給装置、混合容器、混合装置、押し付け装置、検出器、及び制御装置を備える。主剤供給装置は、主剤を供給する。硬化剤供給装置は、主剤を硬化させる硬化剤を供給する。混合容器には、主剤供給装置によって主剤が供給され、かつ硬化剤供給装置によって硬化剤が供給される。混合装置は、混合容器の内部に配置されている撹拌羽根と、撹拌羽根を回転させるモータとを有し、混合容器の内部で回転する撹拌羽根によって、主剤と硬化剤とを混合することにより、混合容器の内部に主剤と硬化剤との混合物である接着剤を形成する。押し付け装置は、混合容器から吐出された接着剤が付着した第1部材に対して、その接着剤を介して第2部材を対向させ、かつその接着剤が押し広げられるまで、第1部材と第2部材との一方の、他方に対する押し付けを行う。検出器は、主剤と硬化剤とが撹拌羽根によって混合される際、又は既に混合容器の内部に形成された接着剤が撹拌羽根によって練り直される際に、撹拌羽根の回転のトルク又はそのトルクを表す物理量を検出する。制御装置は、検出器によって検出されたトルク又は物理量の値に応じて、押し付け装置が行う押し付けの力の大きさと、押し付け装置が行う押し付けの時間長との少なくとも一方を制御する。
【発明の効果】
【0009】
上記接着装置によれば、撹拌羽根の回転のトルク又はそのトルクを表す物理量の値に応じて、押し付けの力の大きさと、押し付けの時間長との少なくとも一方が制御される。このため、接着剤の粘度にばらつきがある場合でも、第1部材と第2部材とによって接着剤が押し広げられる領域の面積のばらつきを抑えることが可能である。この結果、接着剤の粘度のばらつきに起因する接着強度のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る接着装置の構成を示す概念図
図2】実施の形態1に係る吐出装置の構成を示す概念図
図3】実施の形態1に係る押し付け装置及び制御装置の構成を示す概念図
図4A】実施の形態1に係る接着体の構成を示す側面図
図4B】実施の形態1に係る第1部材の表面の目標領域を示す平面図
図5】実施の形態1に係る接着剤の粘度と、その粘度の接着剤を形成するときの撹拌羽根の回転トルクとの関係を示すグラフ
図6】実施の形態1に係る撹拌羽根の回転トルクと、目標充填率を達成するのに必要な必要押し付け力との関係を示すグラフ
図7】実施の形態1に係る押し付け力を上限押し付け力に固定した場合における、接着剤の充填率と、その接着剤の粘度との関係を示すグラフ
図8】実施の形態1に係る事前工程のフローチャート
図9】実施の形態1に係る接着体製造工程のフローチャート
図10】実施の形態2に係る撹拌羽根の回転トルクと、目標充填率を達成するのに必要な必要押し付け時間長との関係を示すグラフ
図11】実施の形態3に係る接着体製造工程の一部を示すフローチャート
図12】実施の形態4に係る吐出装置の構成を示す概念図
図13】実施の形態4に係る接着体製造工程のフローチャート
図14】実施の形態5に係る冷却装置の設置の態様を示す概念図
図15】実施の形態5に係る接着体製造工程のフローチャート
図16】実施の形態5及び6に係る接着剤の粘度と、その粘度の接着剤を形成するときの撹拌羽根の回転トルクとの関係を示すグラフ
図17】実施の形態6に係る制御装置の機能を示す概念図
図18】実施の形態6に係る接着体製造工程のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、実施の形態に係る接着装置について説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。
【0012】
[実施の形態1]
図4Aを参照し、まず、本実施の形態で製造する接着体600の構成を述べる。接着体600は、各々板状の第1部材610と第2部材620とが、接着剤530で接合された構造を有する。
【0013】
第1部材610の材質と、第2部材620の材質とは互いに異なる。具体的には、第1部材610と第2部材620との一方は、金属その他の無機物で構成され、他方は、樹脂その他の有機物で構成されている。
【0014】
次に、接着体600を製造する接着装置について説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る接着装置400は、接着剤530を第1部材610に吐出する吐出部100と、吐出された接着剤530が付着した第1部材610に対して、第2部材620を押し付ける押し付け部200と、吐出部100及び押し付け部200を制御する制御装置300とを備える。
【0016】
吐出部100は、接着剤530の形成及び吐出を行う吐出装置100aと、吐出装置100aを搬送する吐出装置用搬送装置100bとを備える。押し付け部200は、第2部材620の押し付けを行う押し付け装置200aと、押し付け装置200aを搬送する押し付け装置用搬送装置200bとを備える。
【0017】
製造の現場において、吐出装置用搬送装置100bは、第1部材610が置かれている第1位置まで、吐出装置100aを搬送する。吐出装置100aは、第1位置において、第1部材610の表面に接着剤530を吐出する。接着剤530が吐出された後、吐出装置用搬送装置100bは、吐出装置100aを第1位置から退ける。
【0018】
一方、押し付け装置用搬送装置200bは、まず、第2部材620が置かれている第2位置まで、押し付け装置200aを搬送する。そして、押し付け装置200aは、第2位置において、第2部材620を取得する。
【0019】
次に、押し付け装置用搬送装置200bは、第2部材620を取得した押し付け装置200aを、上述した第1位置まで搬送する。そして、押し付け装置200aは、第1位置において、接着剤530が付着した第1部材610に対して、第2部材620を押し付ける。制御装置300は、吐出部100及び押し付け部200に、以上説明した動作を繰り返し行わせる。
【0020】
以下、吐出装置100aの構成を具体的に説明する。
【0021】
図2に示すように、吐出装置100aは、接着剤530の原料である主剤510を供給する主剤供給装置110を備える。主剤供給装置110は、主剤510を貯める主剤容器111と、予め定められた量の主剤510を主剤容器111から送り出す主剤送り出し機構112とを有する。
【0022】
また、吐出装置100aは、主剤510を硬化させる硬化剤520を供給する硬化剤供給装置120を備える。なお、硬化剤520も主剤510と同様、接着剤530の原料である。硬化剤供給装置120は、硬化剤520を貯める硬化剤容器121と、予め定められた量の硬化剤520を硬化剤容器121から送り出す硬化剤送り出し機構122とを有する。
【0023】
また、吐出装置100aは、主剤510と硬化剤520とを混合するための混合容器130を備える。主剤送り出し機構112によって主剤容器111から送り出された主剤510は、混合容器130に供給される。また、硬化剤送り出し機構122によって硬化剤容器121から送り出された硬化剤520も、混合容器130に供給される。混合容器130に対する主剤510の供給量と硬化剤520の供給量との比は一定である。
【0024】
予め定められた体積比の主剤510と硬化剤520とが混合されることにより、接着剤530が得られる。即ち、接着剤530は、主剤510と硬化剤520との混合物である。なお、混合容器130は、接着剤530を吐出する吐出ノズル130aを有する。
【0025】
また、吐出装置100aは、混合容器130の内部の主剤510と硬化剤520とを混合する混合装置140を備える。混合装置140は、混合容器130の内部に配置されている撹拌羽根141と、混合容器130の外部に配置されているモータ143と、モータ143と撹拌羽根141とを連結する回転軸142と、モータ143に電力を供給する電源回路144とを有する。
【0026】
電源回路144から供給される電力によって、モータ143が作動する。モータ143は、回転軸142を通じて撹拌羽根141を一定の回転数で回転させる。混合容器130の内部で回転する撹拌羽根141によって、主剤510と硬化剤520とが混合される。これにより、主剤510と硬化剤520との混合物である接着剤530が混合容器130の内部に形成される。
【0027】
次に、押し付け装置200aの構成を説明する。
【0028】
図3に示すように、押し付け装置200aは、第2部材620の取得及び保持を行う保持機構210を備える。保持機構210は、複数の吸引孔211が開口した保持面212と、各々の吸引孔211の内部を減圧させる図示せぬ真空ポンプとを有する。
【0029】
真空ポンプによって各々の吸引孔211の内部を減圧しつつ、保持面212を板状の第2部材620にあてがう。これにより、気圧の差を利用して、第2部材620を保持面212に吸着させることができる。
【0030】
また、押し付け装置200aは、ロードセル(load cell)220を介して保持機構210に連結された進退機構230を備える。進退機構230は、保持面212に対する法線の方向に、保持機構210を進退させる。具体的には、進退機構230は、制御装置300の制御に従って、以下の動作を行う。
【0031】
まず、進退機構230は、既述の第2位置において保持機構210が第2部材620を取得する際に、保持機構210を第2部材620に向けて進出させる。
【0032】
また、進退機構230は、既述の第1位置において第1部材610と第2部材620との貼り合わせを行う際に、第2部材620を保持している状態の保持機構210を、接着剤530が付着した第1部材610に向けて進出させる。このようにして、進退機構230は、第2部材620の、第1部材610に対する押し付けを行う。
【0033】
図4Aに示すように、第2部材620は、第1部材610と第2部材620とによって接着剤530が押し広げられるまで、第1部材610に押し付けられる。
【0034】
図4Bは、押し広げられた接着剤530を示す平面図である。破線で示した目標領域CAは、第1部材610の表面における、接着剤530で被覆すべき領域を指す。本実施の形態では、目標領域CAは、図4Aに示す第2部材620を第1部材610に垂直投影した投影領域に一致する。
【0035】
本実施の形態では、目標領域CAの面積に対する、実際に押し広げられた接着剤530が被覆した領域の面積の割合を“充填率”と定義する。第1部材610と第2部材620との接着の品質を高く保つために、充填率を、目標とする或る基準値(以下、目標充填率という。)以上、具体的には85%以上確保することが望まれる。
【0036】
しかし、充填率は、接着剤530の粘度に依存する。しかも、接着剤530の粘度には、ばらつきが生じ得る。このため、従来は、接着剤530の粘度が高すぎる場合に目標充填率を達成できない懸念があった。
【0037】
そこで、目標充填率を達成する確実性を高めるために、接着剤530の粘度に応じて、第1部材610に対する第2部材620の押し付けの力(以下、押し付け力という。)を調整したい場合がある。また、接着剤530の粘度の値を用いて、目標充填率の達成が見込めるか否かを事前に判定したい場合がある。
【0038】
そのためには、第1部材610と第2部材620との貼り合わせを行う前に、図2に示す混合容器130に収容されている接着剤530の粘度を知ることが必要である。しかし、接着剤530の粘度の測定には手間を要する。このため、1つの接着体600の製造のたびに、接着剤530の粘度の測定を人手により行うのは非現実的である。
【0039】
そこで、本願発明者は、図2に示す撹拌羽根141の回転のトルク(以下、回転トルクという。)によって、接着剤530の粘度を把握することを着想した。以下、この点について説明する。
【0040】
図5は、接着剤530の粘度と、その接着剤530を混合容器130で形成するときの撹拌羽根141の回転トルクとの関係を表すグラフである。なお、粘度は、JISZ8803に記載の方法に則って測定した。
【0041】
接着剤530は、その接着剤530に作用するせん断力によって粘度が変化する非ニュートン流体に該当する。このため、接着剤530の粘度と、撹拌羽根141の回転トルクとは、単純な比例関係は示さない。
【0042】
しかし、接着剤530の粘度と、撹拌羽根141の回転トルクとの間には、明確な依存関係が認められる。即ち、接着剤530の粘度が低いほど、撹拌羽根141を回転させるのに必要な回転トルクは小さくなる。また、接着剤530の粘度が高いほど、撹拌羽根141を回転させるのに必要な回転トルクは大きくなる。
【0043】
このように、接着剤530の粘度と、撹拌羽根141の回転トルクとが1:1に対応する。従って、撹拌羽根141の回転トルクは、その回転トルクが必要とされたときの接着剤530の粘度を表していると言える。このため、接着剤530の粘度を把握するためには、撹拌羽根141の回転トルクが分かればよい。
【0044】
そこで、以下、撹拌羽根141の回転トルクを把握する方法を説明する。
【0045】
図3に示す制御装置300は、図2に示すモータ143の制御も行う。具体的には、制御装置300は、電源回路144からモータ143に供給される電圧(以下、供給電圧という。)を調整することにより、撹拌羽根141の回転数を予め定められた一定値に近づけるフィードバック制御である定回転制御を行う。
【0046】
このため、モータ143にかかる負荷が大きいほど、撹拌羽根141の回転数を保つために、モータ143に対する供給電圧は自ずと大きくなる。つまり、定回転制御のもとでは、撹拌羽根141の回転トルクと、モータ143に対する供給電圧とが1:1に対応する。従って、モータ143に対する供給電圧は、撹拌羽根141の回転トルクを表す。
【0047】
なお、このように回転トルクと供給電圧とが1:1に対応するため、図5の横軸に示した回転トルクは、回転トルクと供給電圧との間の既知の対応関係を用いて、供給電圧を換算することにより求めた。
【0048】
以上のように、撹拌羽根141の回転トルクは、モータ143に対する供給電圧によって表される。そこで、制御装置300は、撹拌羽根141の回転トルクを把握するために、モータ143に対する供給電圧を検知する。
【0049】
図3に示すように、具体的には、モータ143に対する供給電圧を表す電圧信号SVが制御装置300に入力される。この電圧信号SVは、図2に示す電源回路144から制御装置300に出力される。制御装置300は、電圧信号SVによって、モータ143に対する供給電圧をリアルタイムに監視する供給電圧監視処理を行う。
【0050】
なお、制御装置300は、その制御装置300の動作を規定する制御プログラム321が格納されたメモリ320と、制御プログラム321を実行するプロセッサ310とを有する。プロセッサ310が制御プログラム321を実行することにより、上述した供給電圧監視処理及び定回転制御が実現される。
【0051】
以上のように、本実施の形態において、モータ143に対する供給電圧は、撹拌羽根141の回転トルクを表す物理量の一例である。また、本実施の形態において、電源回路144は、モータ143に対する供給電圧を検出する役割を兼ねる。このため、電源回路144は、上記物理量を検出する検出器の一例に該当する。
【0052】
以上説明したように、電圧信号SVによってモータ143に対する供給電圧が分かれば、撹拌羽根141の回転トルク、ひいては、接着剤530の粘度が分かる。
【0053】
次に、撹拌羽根141の回転トルクと、目標充填率を達成するのに必要な押し付け力(以下、必要押し付け力という。)との関係について説明する。
【0054】
一般に、必要押し付け力は、接着剤530の粘度に依存する。そして、既述のとおり、接着剤530の粘度は、撹拌羽根141の回転トルクに依存する。このため、必要押し付け力は、撹拌羽根141の回転トルクに依存する。以下、具体的に説明する。
【0055】
図6は、撹拌羽根141の回転トルクと、その回転トルクが必要とされた接着剤530を用いた場合の必要押し付け力との関係を示すグラフである。なお、このグラフを計測するに際し、第1部材610に対する接着剤530の付着量は、一定量に固定した。また、第1部材610に対する第2部材620の押し付けの時間長も一定の長さに固定した。
【0056】
図6に示すように、必要押し付け力は、撹拌羽根141の回転トルクに依存する。また、その回転トルクは、既述のように、モータ143に対する供給電圧で表される。従って、必要押し付け力は、モータ143に対する供給電圧と1:1に対応する。
【0057】
そこで、必要押し付け力とモータ143に対する供給電圧との対応関係を予め計測により把握しておく。すると、実際に接着体600を製作する過程で、撹拌羽根141の回転トルクをモータ143に対する供給電圧によって検知した場合に、その供給電圧の値に対応する必要押し付け力を特定することができる。そして、第1部材610と第2部材620との貼り合わせを行う際に、第2部材620の押し付け力を、先に特定した必要押し付け力に一致させれば、目標充填率を達成できる。
【0058】
このような手法で目標充填率を達成するために、制御装置300は、モータ143に対する供給電圧に応じて、押し付け力を必要押し付け力に近づける押し付け力制御を行う。
【0059】
図3を参照し、押し付け力制御を実現する構成を具体的に説明する。制御装置300のメモリ320には、必要押し付け力を知るための必要値データ322が予め格納されている。必要値データ322は、必要押し付けの力の大きさの、接着剤530を準備する際の撹拌羽根141の回転トルクに対する依存性、即ち、必要押し付けの力の大きさの、モータ143に与える供給電圧に対する依存性を表す。
【0060】
また、ロードセル220は、進退機構230が第2部材620を第1部材610に押し付ける押し付け力の大きさをリアルタイムに計測する。そして、ロードセル220は、その計測結果を表す押し付け力信号SPを制御装置300に出力する。
【0061】
そして、制御装置300は、以下に述べる押し付け力制御を行う。
【0062】
まず、制御装置300は、接着剤530が形成される際に、モータ143に対する供給電圧を電圧信号SVによって検知する。既述のとおり、モータ143に対する供給電圧は、撹拌羽根141の回転トルクを表す。
【0063】
次に、制御装置300は、電圧信号SVが表す回転トルクに対応する必要押し付けの力の大きさを、必要値データ322を用いて特定する。
【0064】
次に、制御装置300は、第1部材610と第2部材620との貼り合わせが行われる際に、進退機構230を制御することにより、第2部材620の押し付け力を、先に特定した必要押し付け力に近づける。これは、ロードセル220から取得する押し付け力信号SPを用いて、進退機構230をフィードバック制御することにより実現される。
【0065】
以上、撹拌羽根141の回転トルク、即ち、モータ143に対する供給電圧に基づいて、押し付け力を調整する押し付け力制御について説明した。押し付け力制御は、プロセッサ310が制御プログラム321を実行することにより実現される。
【0066】
次に、撹拌羽根141の回転トルクの上限となる閾値の設定について説明する。
【0067】
たとえ押し付け力を調整するとしても、大きすぎる必要押し付け力を出力することは、第1に接着体600における接着の品質を良好に保つ観点から、また第2に進退機構230に過負荷がかかることを避ける観点から、好ましいとは言えない。そこで、本実施の形態では、必要押し付け力に上限値(以下、上限押し付け力という。)を定める。
【0068】
図7は、押し付け力を上限押し付け力に固定した場合における、接着剤530の充填率と、その接着剤530の粘度との関係を示すグラフである。図7に示すように、接着剤530の充填率は、その接着剤530の粘度に依存する。
【0069】
このため、図7に示す依存関係から、目標充填率が達成されるときの接着剤530の粘度(以下、上限粘度という。)が特定される。一方、図5に示したように、接着剤530の粘度は、撹拌羽根141の回転トルクに依存する。
【0070】
従って、図7に示す依存関係を用いて目標充填率から上限粘度が特定されれば、図5に示すように、その上限粘度の接着剤530を形成するのに必要な回転トルク(以下、上限回転トルクという。)が特定される。即ち、上限回転トルクは、目標充填率が達成されるときの回転トルクを表す。
【0071】
撹拌羽根141の回転トルクが上限回転トルクを上回る合であっても、第1部材610に対する第2部材620の押し付け力を、上限押し付け力を上回る値に調整すれば、目標充填率を達成し得る。しかし、上述した理由で、上限押し付け力を上回る押し付け力の出力は避けたい。
【0072】
そこで、制御装置300は、上限押し付け力を上回る押し付け力が必要とされる事態が生じたか否かを監視するために、撹拌羽根141の回転トルクが上限回転トルクを上回るか否かの粘度適正判定を行う。
【0073】
なお、既述のとおり、撹拌羽根141の回転トルクは、モータ143に対する供給電圧によって表される。従って、制御装置300は、電圧信号SVが表す供給電圧が、上限回転トルクを表す供給電圧(以下、上限供給電圧という。)を上回るか否かによって粘度適正判定を行う。
【0074】
図3を参照し、粘度適正判定を実現する構成を具体的に説明する。制御装置300のメモリ320には、上述した上限供給電圧を表す閾値データ323が予め格納されている。制御装置300は、電圧信号SVが表す供給電圧と、閾値データ323が表す上限供給電圧とを比較することにより、粘度適正判定を行う。供給電圧が上限供給電圧以下であることは、回転トルクが上限回転トルク以下であることを表す。供給電圧が上限供給電圧を上回ることは、回転トルクが上限回転トルクを上回ることを表す。
【0075】
また、供給電圧が上限供給電圧を上回る場合、即ち、撹拌羽根141の回転トルクが上限回転トルクを上回る場合は、上限押し付け力を上回る押し付け力が必要とされる。そこで、その場合、制御装置300は、上限押し付け力を上回る押し付け力の出力を回避すべく、以下に述べる停止制御及び報知制御を行う。
【0076】
停止制御とは、主剤供給装置110から混合容器130への主剤510の供給、硬化剤供給装置120から混合容器130への硬化剤520の供給、及び混合容器130からの接着剤530の吐出を停止させる制御である。
【0077】
報知制御とは、接着剤530の粘度が異常である旨をユーザに報知する制御である。以上説明した粘度適正判定、停止制御、及び報知制御は、プロセッサ310が制御プログラム321を実行することにより実現される。
【0078】
以下、接着装置400を用いて接着体600を製造する接着体製造方法についてまとめる。本実施の形態に係る接着体製造方法は、図8に示す事前工程と、図9に示す接着体製造工程とを含む。事前工程の後に、接着体製造工程が行われる。
【0079】
まず、事前工程について説明する。事前工程では、接着剤530の粘度に対する接着装置400の応答特性を把握するために、製品としての接着体600の製造に先立ち、試験的に接着装置400を稼働させる。ここで“試験的に稼働させる”とは、各種のパラメータを様々な値に変更しながら接着体600を製作するが、その製作された接着体600が必ずしも製品として供される訳ではないことを意味する。
【0080】
図8に示すように、事前工程では、必要値データ322を計測により取得する(ステップS11)。必要値データ322とは、既述のとおり、必要押し付けの力の大きさの、モータ143に与える供給電圧に対する依存性を表す。
【0081】
必要値データ322は、接着剤530の粘度と、第1部材610に対する第2部材620の押し付け力とを様々な値に変更しながら取得される。取得された必要値データ322は、図3に示すように、制御装置300のメモリ320に格納される。なお、本ステップS11は、本開示に係る必要値データ取得工程の一例である。
【0082】
また、事前工程では、接着剤530の充填率の、撹拌羽根141の回転トルクに対する依存性を表す閾値決定用データを計測により取得する(ステップS12)。閾値決定用データは、押し付け力を上限押し付け力に固定したうえで、接着剤530の粘度を様々な値に変更しながら計測される。
【0083】
既述のとおり、撹拌羽根141の回転トルクは、モータ143に与える供給電圧によって表される。従って、充填率の回転トルクに対する依存性は、充填率の供給電圧に対する依存性と等価である。従って、具体的には、閾値決定用データは、接着剤530の充填率と、モータ143に与える供給電圧との対応関係を表す。
【0084】
次に、ステップS12で取得した閾値決定用データを用いて、目標充填率が達成されるときの回転トルクである上限回転トルクを表す上限供給電圧を、閾値として特定する(ステップS13)。回転トルクはモータ143に対する供給電圧によって表されるので、上限回転トルクを特定することは、上限回転トルクを表す供給電圧である上限供給電圧を特定することと等価である。特定された上限供給電圧は、図3に示したように、閾値データ323として、制御装置300のメモリ320に格納される。
【0085】
なお、ステップS13で特定する上限供給電圧は、目標充填率を得るための回転トルクの上限値を表す第1上限閾値の一例である。また、ステップS12及びステップS13は、本開示に係る閾値特定工程の一例である。
【0086】
以上説明した事前工程で取得した必要値データ322及び閾値データ323は、製品としての接着体600を製造する接着体製造工程で活用される。以下、接着体製造工程について述べる。
【0087】
図9に示すように、まず、制御装置300は、接着剤530の形成を開始させる(ステップS21)。具体的には、制御装置300は、主剤送り出し機構112及び硬化剤送り出し機構122を制御することにより、混合容器130への主剤510及び硬化剤520の供給を開始させ、かつモータ143を起動させる。
【0088】
すると、モータ143に回転される撹拌羽根141によって、主剤510と硬化剤520とが混合容器130の内部で混合される。これにより、主剤510と硬化剤520との混合物である接着剤530が混合容器130の内部に形成される。このとき、制御装置300は、撹拌羽根141の回転数を予め定められた一定値に近づける定回転制御を行う。
【0089】
また、制御装置300は、接着剤530が形成される最中に、モータ143に対する供給電圧を電圧信号SVによって検知する(ステップS22)。なお、既述のとおり、定回転制御のもとでは、撹拌羽根141の回転トルクと、モータ143に対する供給電圧とが1:1に対応する。従って、モータ143に対する供給電圧は、撹拌羽根141の回転トルクを表す。
【0090】
次に、制御装置300は、電圧信号SVによって検知した供給電圧が、既述の第1上限閾値としての上限供給電圧を上回るか否かを判定する(ステップS23)。以上説明したステップS21-S23は、本開示に係る接着剤準備工程の一例である。
【0091】
供給電圧が上限供給電圧以下である場合(ステップS23;NO)、即ち、撹拌羽根141の回転トルクが既述の上限回転トルク以下である場合は、上限押し付け力を出力することなく目標充填率を達成できることが見込める。
【0092】
そこで、この場合は、第1部材610と第2部材620との貼り合わせを実行すべく、混合容器130から第1部材610に接着剤530を吐出する(ステップS24)。接着剤530の吐出量は予め定められた一定量とする。吐出された接着剤530は、第1部材610に付着する。本ステップS24は、本開示に係る接着剤吐出工程の一例である。
【0093】
なお、本実施の形態では、制御装置300が、混合容器130における吐出ノズル130aの開閉を制御する。即ち、ステップS24における混合容器130から第1部材610への定量の接着剤530の吐出は、制御装置300の制御によって自動的に行われる。但し、ステップS24における混合容器130から第1部材610への定量の接着剤530の吐出は、ユーザの操作によって行われてもよい。
【0094】
次に、押し付け装置200aは、混合容器130から吐出された接着剤530が付着した第1部材610に対して、その接着剤530を介して第2部材620を対向させる。そして、押し付け装置200aは、接着剤530が押し広げられるまで、第1部材610への第2部材620の押し付けを行う(ステップS25)。
【0095】
また、本ステップS25では、制御装置300が押し付け力制御を行う。具体的には、まず、制御装置300は、電圧信号SVが表す回転トルクに対応する必要押し付けの力の大きさを、必要値データ322を用いて特定する。
【0096】
次に、制御装置300は、進退機構230を制御することにより、第2部材620の押し付け力を、先に特定した必要押し付け力に収束させる。なお、本ステップS25は、本開示に係る押し付け工程の一例である。
【0097】
このようにして、第1部材610に付着させた接着剤530の粘度に見合った必要押し付け力で、第2部材620が押し付けられる。これにより、目標充填率が達成される。その後、第1部材610と第2部材620との間に介在する接着剤530の硬化が完了すると、接着体600が完成する。
【0098】
ステップS25の後、接着体600の製造を止める場合は(ステップS26;YES)、本接着体製造工程を終える。
【0099】
一方、ステップS25の後、接着体600の製造を続ける場合は(ステップS26;NO)、次の接着体600を製造すべく、ステップS22に戻る。このようにして、1つの接着体600を製造するたびに、その接着体600を構成する接着剤530の粘度を、撹拌羽根141の回転トルクを通じて把握する。
【0100】
また、ステップS23で、供給電圧が既述の第1上限閾値としての上限供給電圧を上回る場合(ステップS23;YES)、即ち、撹拌羽根141の回転トルクが既述の上限回転トルクを上回る場合は、接着剤530の粘度が高すぎると言える。この場合、必ずしも目標充填率を達成できない訳ではないが、目標充填率の達成には、上限押し付け力を超える大きさの押し付け力の出力が必要とされる。
【0101】
そこで、そのような接着剤530が押し付けに供されるのを回避すべく、制御装置300は、既述の停止制御及び報知制御を行う(ステップS27)。
【0102】
停止制御により、主剤供給装置110から混合容器130への主剤510の供給、及び硬化剤供給装置120から混合容器130への硬化剤520の供給が停止されるので、新たな接着剤530の形成が停止される。また、混合容器130からの接着剤530の吐出も停止されるので、粘度の高すぎる接着剤530が押し付けに供されることが回避される。
【0103】
また、報知制御により、接着剤530の粘度が異常である旨がユーザに報知される。これにより、ユーザは、混合容器130に残留している高粘度の接着剤530を廃棄し、かつ混合容器130の内部及び撹拌羽根141を洗浄したり、吐出装置100aの各部分を点検したり、吐出装置100aを構成する撹拌羽根141その他の部品を交換したりするといった措置をとることができる。
【0104】
以上のようにして、吐出部100及び押し付け部200の稼働を一旦停止させた状態で接着剤530の除去及び必要なメンテナンスを終えた後は、ステップS26に進む。
【0105】
以下、本実施の形態で得られる効果について述べる。
【0106】
以上説明したように、本実施の形態では、制御装置300が押し付け力制御を行う。具体的には、制御装置300は、撹拌羽根141の回転トルクを表す物理量である供給電圧の値に応じ、回転トルクが大きいほど押し付け力が大きくなる条件で、押し付け力の大きさを制御する。このため、接着剤530の粘度にばらつきがある場合でも、第1部材610と第2部材620とによって接着剤530が押し広げられる領域の面積のばらつきが抑えられる。従って、接着剤530の粘度のばらつきに起因する接着強度のばらつきを抑えることができる。
【0107】
具体的には、押し付け力制御は、個々の接着体600の製造のたびに行われる。つまり、接着体600をロット生産する場合であっても、ロットごとに必要押し付け力が決定されるのではなく、個々の接着体600の製造のたびに、その接着体600に用いる接着剤530の粘度に応じて必要押し付け力が決定される。このため、ロット内での、接着強度のばらつきを抑えることが可能である。
【0108】
また、押し付け力制御によれば、接着剤530の粘度が小さいほど、即ち、撹拌羽根141の回転トルクが小さいほど、押し付け力が小さく制御される。このため、接着剤530の粘度が小さい場合に、図4Bに示す目標領域CAから接着剤530がはみ出ることが防止される。このことも、接着の品質を高めることに寄与する。また、目標領域CAからはみ出た接着剤530を取り除く作業が不要となる利便性が得られる。
【0109】
また、本実施の形態によれば、接着剤530の粘度が高すぎる場合は、撹拌羽根141の回転トルクが既述の上限回転トルクを上回る結果、制御装置300が停止制御及び報知制御を行う。このため、粘度の高すぎる接着剤530の、接着体600への適用を回避できる。従って、粘度が高すぎる接着剤530を使用することによる、接着強度のばらつき、あるいは接着の品質の低下を防ぐことができる。
【0110】
[実施の形態2]
上記実施の形態1では、モータ143に対する供給電圧に応じて、第1部材610に対する第2部材620の押し付け力を制御する押し付け力制御について述べた。押し付け力ではなく、第1部材610に対する第2部材620の押し付けの時間長(以下、押し付け時間長という。)を制御してもよい。以下、押し付け時間長を制御する具体例を述べる。
【0111】
一般に、目標充填率を達成するのに必要な押し付け時間長(以下、必要押し付け時間長という。)は、接着剤530の粘度に依存する。そして、既述のとおり、接着剤530の粘度は、撹拌羽根141の回転トルクに依存する。このため、必要押し付け時間長は、撹拌羽根141の回転トルクに依存する。以下、具体的に説明する。
【0112】
図10は、撹拌羽根141の回転トルクと、その回転トルクが必要とされた接着剤530を用いた場合の必要押し付け時間長との関係を示すグラフである。なお、このグラフを計測するに際し、第1部材610に対する接着剤530の付着量は、一定量に固定した。また、第1部材610に対する第2部材620の押し付け力は、一定の強さ(以下、標準押し付け力という。)に固定した。なお、標準押し付け力は、既述の上限押し付け力よりも小さい。
【0113】
図10に示すように、必要押し付け時間長は、撹拌羽根141の回転トルクに依存する。また、その回転トルクは、既述のように、モータ143に対する供給電圧で表される。従って、必要押し付け時間長は、モータ143に対する供給電圧と1:1に対応する。
【0114】
そこで、必要押し付け時間長とモータ143に対する供給電圧との対応関係を予め計測により把握しておく。すると、実際に接着体600を製作する過程で、撹拌羽根141の回転トルクをモータ143に対する供給電圧によって検知した場合に、その供給電圧の値に対応する必要押し付け時間長を特定することができる。そして、第1部材610と第2部材620との貼り合わせを行う際に、第2部材620の押し付け時間長を、先に特定した必要押し付け時間長に一致させれば、目標充填率を達成できる。
【0115】
本実施の形態では、このような手法で目標充填率を達成する。具体的には、本実施の形態では、図8のステップS11で、押し付け力を標準押し付け力に固定したうえで、接着剤530の粘度と、第1部材610に対する第2部材620の押し付け時間長とを様々な値に変更しながら、必要値データ322を計測により取得する(ステップS11)。
【0116】
本実施の形態に係る必要値データ322は、必要押し付け時間長と、モータ143に与える供給電圧との依存性を表す。
【0117】
そして、本実施の形態に係る制御装置300は、必要値データ322を用いて、モータ143に対する供給電圧に応じて、回転トルクが大きいほど押し付け時間長が長くなる条件で、押し付け時間長を制御する押し付け時間長制御を行う。
【0118】
具体的には、制御装置300は、まず接着剤530が形成される際に、モータ143に対する供給電圧を電圧信号SVによって検知する。既述のとおり、モータ143に対する供給電圧は、撹拌羽根141の回転トルクを表す。
【0119】
次に、制御装置300は、電圧信号SVが表す回転トルクに対応する必要押し付け時間長を、必要値データ322を用いて特定する。
【0120】
次に、制御装置300は、第1部材610と第2部材620との貼り合わせが行われる際に、進退機構230を制御することにより、第2部材620の押し付け時間長を、先に特定した必要押し付け時間長に一致させる。以上説明した押し付け時間長制御は、プロセッサ310が制御プログラム321を実行することにより実現される。
【0121】
本実施の形態によれば、第1部材610に対する第2部材620の押し付け力を標準押し付け力に固定できるので、押し付け装置200aの構成を簡素にできるという利点が得られる。他の構成及び効果は、実施の形態1と同様である。
【0122】
[実施の形態3]
上記実施の形態1では、接着体600を次々に連続して製造する接着体製造工程について述べた。1つの接着体600を製造した後、次の接着体600の製造に着手する前に、撹拌羽根141の回転を一時的に停止させる期間(以下、回転停止期間という。)を介在させてもよい。
【0123】
以下、図9のステップS22が回転停止期間を含む場合の具体例を述べる。本実施の形態では、図9のステップS22が、図11に示すステップS221-S225によって構成される。以下、ステップS221-S225について具体的に説明する。
【0124】
図11に示すように、まず、接着体600の製造を中断するか否かが判定され(ステップS221)、接着体600の製造を中断する場合(ステップS221;YES)、制御装置300は、撹拌羽根141の回転を停止させる(ステップS222)。また、制御装置300は、押し付け部200の稼働も停止させる。
【0125】
ステップS222の処理が実行された後、接着体600の製造の中断を終了するか否かが判定される(ステップS223)。接着体600の製造の中断を終了しない場合は(ステップS223;NO)、再びステップS223に戻る。
【0126】
一方、接着体600の製造の中断を終了する場合(ステップS223;YES)、制御装置300は、撹拌羽根141の回転を再開させる(ステップS224)。また、制御装置300は、押し付け部200も起動させる。なお、ステップS222からステップS224までの期間が、既述の回転停止期間である。
【0127】
撹拌羽根141の回転の再開により、ステップS221に至るまでに既に混合容器130の内部に形成されていた接着剤530が、撹拌羽根141によって練り直される。
【0128】
なお、ステップS221の判定は、ユーザが行ってもよい。即ち、接着体600の製造を中断する旨の、接着装置400に対するユーザの操作を契機として、制御装置300がステップS222の処理を実行してもよい。同様に、ステップS223の判定は、ユーザが行ってもよい。即ち、接着体600の製造を再開する旨の、接着装置400に対するユーザの操作を契機として、制御装置300がステップS224の処理を実行してもよい。
【0129】
また、ステップS221の判定は、制御装置300が行ってもよい。即ち、予め定められた時刻の到来、又は接着体600の製造を中断すべき旨の信号の取得を契機として、制御装置300がステップS222の処理を実行してもよい。同様に、ステップS223の判定は、制御装置300が行ってもよい。即ち、予め定められた時刻の到来、又は接着体600の製造を再開すべき旨の信号の取得を契機として、制御装置300がステップS224の処理を実行してもよい。
【0130】
ステップS224の処理の実行後、制御装置300は、接着剤530の練り直しに要する撹拌羽根141の回転トルクを検知する(ステップS225)。具体的には、制御装置300は、その回転トルクを表す供給電圧を、電圧信号SVによって検知する。
【0131】
また、ステップS221で接着体600の製造を中断しない場合は(ステップS221;NO)、そのままステップS225に進む。この場合は、ステップS225で、主剤510と硬化剤520との混合に要する撹拌羽根141の回転トルクが検知される。
【0132】
ステップS225の後、図9のステップS23に進む。本実施の形態では、ステップS225で検知された回転トルクを用いて、図9のステップS23の判定が行われる。他の処理は、実施の形態1と同様である。
【0133】
以下、本実施の形態で得られる効果について述べる。接着体製造工程に回転停止期間を含める場合は、既に混合容器130に形成された接着剤530の硬化が、回転停止期間に進行してしまう。このため、従来は、回転停止期間を終えた直後に混合容器130から吐出された接着剤530は、目標充填率を達成できない懸念があった。
【0134】
これに対し、本実施の形態では、回転停止期間を終えた後に、接着剤530の練り直しが行われる。また、その練り直しに要する撹拌羽根141の回転トルクに応じて、回転トルクが大きいほど押し付け力が大きくなる条件で、押し付け力制御が行われる。あるいは、接着剤530の練り直しに要する撹拌羽根141の回転トルクに応じ、回転トルクが大きいほど押し付け時間長が長くなる条件で、押し付け時間長制御が行われる。このため、練り直された接着剤530を用いるにも関わらず、目標充填率が達成される。他の構成及び効果は、実施の形態1と同様である。
【0135】
[実施の形態4]
図9のステップS23で、供給電圧が上限供給電圧を上回る場合(ステップS23;YES)、即ち、撹拌羽根141の回転トルクが既述の上限回転トルクを上回る場合は、接着剤530の粘度が高すぎると言える。この場合、必ずしも目標充填率を達成できない訳ではないが、目標充填率の達成には、上限押し付け力を超える大きさの押し付け力の出力が必要とされる。
【0136】
そこで、実施の形態1では、供給電圧が上限供給電圧を上回る場合は(ステップS23;YES)、粘度が高すぎる接着剤530が押し付け工程(ステップS25)に供給されるのを回避すべく、制御装置300が既述の停止制御及び報知制御(ステップS27)を行った。
【0137】
しかし、接着剤530の粘度を低下させることが可能であるならば、供給電圧が上限供給電圧を上回る場合でも、必ずしも停止制御及び報知制御(ステップS27)を行わなくてもよい。以下、制御装置300が、停止制御及び報知制御(ステップS27)に代えて、接着剤530の粘度を低下させる制御である粘度低下制御を行う具体例を述べる。
【0138】
図12に示すように、本実施の形態に係る吐出装置100aは、粘度低下剤540を供給する粘度低下剤供給装置150をさらに備える。他の構成は、実施の形態1の場合と同じである。
【0139】
粘度低下剤540は、主剤510と硬化剤520との混合物の粘度を低下させるものである。粘度低下剤540は、主剤510と硬化剤520との混合物に相溶する。
【0140】
粘度低下剤供給装置150は、粘度低下剤540を貯める粘度低下剤容器151と、粘度低下剤540を粘度低下剤容器151から混合容器130の内部へ送り出す粘度低下剤送り出し機構152とを有する。粘度低下剤供給装置150は、制御装置300から第1作動指令が与えられた場合に、混合容器130の内部の上記混合物に対して粘度低下剤540を添加する。
【0141】
図13に示すように、本実施の形態でも、ステップS23で、制御装置300が、供給電圧が上限供給電圧を上回るか否かを判定する。
【0142】
なお、既述のとおり、実施の形態1では、図9のステップS23で制御装置300が参照する上限供給電圧は、停止制御と報知制御の少なくとも一方を遂行する条件の成立を判定するための第1上限閾値としての意義を有するものであった。これに対し、本実施の形態では、図13のステップS23で制御装置300が参照する上限供給電圧は、上記粘度低下制御を開始する条件の成立を判定するための第2上限閾値としての意義を有する。
【0143】
即ち、実施の形態では、供給電圧が第2上限閾値としての上限供給電圧を上回る場合に(ステップS23;YES)、制御装置300が、粘度低下制御を開始させるべく、粘度低下剤供給装置150に上記第1作動指令を与える。粘度低下剤供給装置150は、第1作動指令を受けると、混合容器130の内部の上記混合物に対して、予め定められた量の粘度低下剤540を添加する(ステップS31)。
【0144】
これにより、混合容器130の内部で、撹拌羽根141によって、上記混合物に粘度低下剤540が練り合わされる。なお、この場合、接着剤530は、主剤510、硬化剤520、及び粘度低下剤540によって構成されることになる。粘度低下剤540の添加によって、接着剤530の粘度が低下する。
【0145】
ステップS31の後、処理は、再びステップS23の判定に戻る。このようにして、供給電圧が上限供給電圧以下に低下するまで、即ち、撹拌羽根141の回転トルクが既述の上限回転トルク以下に低下するまで、混合容器130の内部への粘度低下剤540の添加が繰り返される。他の処理は、図9に示した実施の形態1に係る接着体製造工程と同じである。
【0146】
以上のように、本実施の形態に係る制御装置300は、供給電圧が第2上限閾値としての上限供給電圧以下に低下するまで、混合容器130の内部に粘度低下剤540を添加させる粘度低下制御を行う。このため、粘度低下剤540の添加によって粘度を低下させた接着剤530を、押し付け工程(ステップS25)に供することができる。
【0147】
本実施の形態によれば、図9に示した停止制御及び報知制御(ステップS27)を省略できる結果、吐出装置100aの稼働を停止させる期間の短縮を図ることができ、かつ混合容器130の洗浄その他のメンテナンスに要する時間の短縮を図ることができる。
【0148】
[実施の形態4の変形例]
上記実施の形態4では、図13のステップS25で、実施の形態1で述べた押し付け力制御が行われることとした。図13のステップS25では、押し付け力制御に代えて、実施の形態2で述べた押し付け時間長制御を行ってもよいし、押し付け力制御と押し付け時間長制御との両方を行ってもよい。
【0149】
また、図13のステップS23で、供給電圧が上限供給電圧以下と判定されたときは(ステップS23;NO)、接着剤530の粘度が充分に低下されていると言える。このため、図13のステップS25では、必ずしも押し付け力制御及び押し付け時間長制御の少なくとも一方を行わずとも、良好な品質の接着体600を製造し得る。即ち、図13のステップS25では、第1部材610に対する第2部材620の押し付け力及び押し付け時間長を一定に保ってもよい。
【0150】
[実施の形態5]
図9及び図13に示すステップS23では、接着剤530の粘度が高すぎるか否かの判定を行った。この判定に代えて、接着剤530の粘度が低すぎるか否かの判定を行ってもよい。また、接着剤530の粘度が低すぎると判定された場合には、接着剤530の粘度を高める粘度上昇制御を行ってもよい。以下、具体的に説明する。
【0151】
図14に、本実施の形態に係る吐出装置100aの、混合容器130の周囲を拡大して示す。本実施の形態に係る吐出装置100aは、接着剤530を冷却する冷却装置160をさらに備える。他の構成は、実施の形態1の場合と同じである。
【0152】
冷却装置160は、制御装置300から第2作動指令が与えられた場合に、混合容器130の内部の接着剤530を冷却する。冷却装置160は、混合容器130の外面に取り付けられており、混合容器130を介して接着剤530を冷却する。
【0153】
具体的には、本実施の形態に係る冷却装置160は、混合容器130を覆うフレキシブルなシート状に形成されたペルチェ素子(Peltier device)のモジュールによって構成されている。
【0154】
接着剤530の粘度が低すぎる場合は、図4Bに示した目標領域CAから接着剤530がはみ出るといった問題が生じ得るため、第1部材610と第2部材620とを適切に貼り合わせることが難しい。そこで、接着剤530の粘度が低すぎる場合には、冷却装置160によって接着剤530を冷却することで、接着剤530の粘度を上昇させる。
【0155】
なお、接着剤530の粘度の低下は、撹拌羽根141の回転によって発生するせん断熱で接着剤530が加温されることに起因して起こり得る。
【0156】
図16を参照し、次に、接着剤530の粘度が過剰に低くなったことを検知する手法について説明する。第1部材610と第2部材620との適切な貼り合わせが可能な粘度の下限値を“下限粘度”と呼ぶことにする。
【0157】
また、接着剤530の粘度が下限粘度であるときの、撹拌羽根141の回転トルクを“下限回転トルク”と呼ぶことにする。また、撹拌羽根141の回転トルクが“下限回転トルク”であるときの、モータ143に対する供給電圧を“下限供給電圧”と呼ぶことにする。
【0158】
接着剤530の粘度が過剰に低くなったことは、モータ143に対する供給電圧が下限供給電圧を下回ったことをもって検知できる。
【0159】
図15を参照し、本実施の形態に係る接着体製造工程を具体的に説明する。本実施の形態では、制御装置300は、既述のステップS22で、モータ143に対する供給電圧を検知した後、供給電圧が下限供給電圧を下回るか否かを判定する(ステップS41)。
【0160】
なお、本実施の形態では、図15のステップS41で制御装置300が参照する下限供給電圧は、上記粘度上昇制御を開始する条件の成立を判定するための第2下限閾値としての意義を有する。
【0161】
即ち、制御装置300は、供給電圧が第2下限閾値としての下限供給電圧を下回る場合は(ステップS41;YES)、接着剤530の粘度が低すぎるため、冷却装置160に上記第2作動指令を与えることにより、冷却装置160に接着剤530の冷却を開始させる(ステップS42)。接着剤530の温度の低下に伴って、接着剤530の粘度が次第に上昇する。
【0162】
ステップS42の後、処理は、再びステップS41の判定に戻る。そして、制御装置300は、供給電圧が下限供給電圧以上となった場合は(ステップS41;NO)、冷却装置160に接着剤530の冷却を停止させる(ステップS43)。
【0163】
このようにして、供給電圧が下限供給電圧以上に上昇するまで、即ち、撹拌羽根141の回転トルクが既述の下限回転トルク以上に上昇するまで、接着剤530の冷却を継続する粘度上昇制御が行われる。
【0164】
ステップS43の後、処理は、既述のステップS24以降に進められる。他の処理は、図9に示した実施の形態1に係る接着体製造工程と同じである。
【0165】
以上のように、本実施の形態に係る制御装置300は、供給電圧が第2下限閾値としての下限供給電圧以上に上昇するまで、冷却装置160に接着剤530を冷却させる粘度上昇制御を行う。このため、冷却によって粘度が適切に高められた接着剤530を、押し付け工程(ステップS25)に供することができる。
【0166】
本実施の形態によっても、実施の形態4の場合と同様、図9に示した停止制御及び報知制御(ステップS27)を省略できる。このため、吐出装置100aの稼働を停止させる期間の短縮を図ることができ、かつ混合容器130の洗浄その他のメンテナンスに要する時間の短縮を図ることができる。
【0167】
[実施の形態5の変形例]
上記実施の形態5では、図15のステップS25で、実施の形態1で述べた押し付け力制御が行われることとした。図15のステップS25では、押し付け力制御に代えて、実施の形態2で述べた押し付け時間長制御を行ってもよいし、押し付け力制御と押し付け時間長制御との両方を行ってもよい。
【0168】
また、図15のステップS41で、供給電圧が下限供給電圧以上と判定されたときは(ステップS41;NO)、接着剤530の粘度が充分に高められていると言える。このため、図15のステップS25では、必ずしも押し付け力制御及び押し付け時間長制御の少なくとも一方を行わずとも、良好な品質の接着体600を製造し得る。即ち、図15のステップS25では、第1部材610に対する第2部材620の押し付け力及び押し付け時間長を一定に保ってもよい。
【0169】
[実施の形態6]
実施の形態4で述べた粘度低下制御と、実施の形態5で述べた粘度上昇制御と、実施の形態1で述べた停止制御及び報知制御とを組み合わせてもよい。
【0170】
また、図13のステップS23では、上限粘度を表す上限供給電圧よりも供給電圧が大きいか否かを判定し、図15のステップS41では、下限粘度を表す下限供給電圧よりも供給電圧が小さいか否かを判定した。これらの判定よりもきびしい判定を行うことで、押し付け工程(ステップS25)に先立って、接着剤530の粘度を理想的な範囲に調整しておくことができる。以下、具体的に説明する。
【0171】
図16を再び参照し、接着剤530の粘度が理想的な範囲(以下、理想粘度範囲という。)にあることを検知する手法について説明する。なお、理想粘度範囲の上端点は、既述の上限粘度よりも小さく、理想粘度範囲の下端点は、既述の下限粘度よりも大きい。
【0172】
接着剤530の粘度が理想粘度範囲にあるときの、撹拌羽根141の回転トルクの範囲を“理想回転トルク範囲”と呼ぶことにする。また、撹拌羽根141の回転トルクが理想回転トルク範囲にあるときの、モータ143に対する供給電圧の範囲を“理想供給電圧範囲”と呼ぶことにする。
【0173】
なお、理想回転トルク範囲の上端点は、既述の上限回転トルクよりも小さく、理想回転トルク範囲の下端点は、既述の下限回転トルクよりも大きい。また、理想供給電圧範囲の上端点は、既述の上限供給電圧よりも小さく、理想供給電圧範囲の下端点は、既述の下限供給電圧よりも大きい。
【0174】
接着剤530の粘度が理想粘度範囲に収まっていることは、モータ143に対する供給電圧が理想供給電圧範囲に収まっていることをもって検知できる。
【0175】
図17に、本実施の形態に係る制御装置300の機能を示す。本実施の形態に係る制御装置300は、既述の粘度低下制御を行う粘度低下制御部311と、既述の粘度上昇制御を行う粘度上昇制御部312と、既述の停止制御及び報知制御を行う停止・報知制御部313とを有する。
【0176】
また、制御装置300は、判定部314も有する。判定部314は、電圧信号SVによって検知される供給電圧の値に基づいて、粘度低下制御と、粘度上昇制御と、停止制御及び報知制御とのいずれを遂行させるかを判定する。
【0177】
以上説明した粘度低下制御部311、粘度上昇制御部312、停止・報知制御部313、及び判定部314の機能は、プロセッサ310が制御プログラム321を実行することにより実現される。
【0178】
図18を参照し、本実施の形態に係る接着体製造工程を具体的に説明する。本実施の形態では、判定部314は、既述のステップS22で、モータ143に対する供給電圧を検知した後、接着剤530の粘度が調整に適した値か否かを判定する(ステップS51)。
【0179】
接着剤530の粘度が下限粘度未満である場合、即ち、供給電圧が下限供給電圧未満である場合、又は接着剤530の粘度が上限粘度を超える場合、即ち、供給電圧が上限供給電圧を超える場合は、そうでない場合に比べると、接着剤530の粘度のやや過度な調整が必要である。
【0180】
そこで、本実施の形態では、接着剤530の粘度が“調整に適した値”であるとは、その接着剤530の粘度が、下限粘度以上、上限粘度以下であることを意味するものと定義する。
【0181】
つまり、供給電圧が下限供給電圧未満である場合、又は供給電圧が上限供給電圧を超える場合は、接着剤530の粘度が調整に適した値であるとは言えない。この場合(ステップS51;NO)、判定部314は、停止・報知制御部313に、既述の停止制御及び報知制御を行わせ(ステップS27)、処理を図9のステップS26へ進める。
【0182】
本実施の形態では、ステップS51で判定部314が参照する上限供給電圧、下限供給電圧は、それぞれ、停止制御と報知制御の少なくとも一方を遂行する条件の成立を判定するための第1上限閾値、第1下限閾値としての意義を有する。
【0183】
一方、供給電圧が、下限供給電圧以上かつ上限供給電圧以下である場合は、接着剤530の粘度が調整に適した値であると言える。この場合(ステップS51;YES)、判定部314は、接着剤530の粘度が理想粘度範囲の下端点を下回るか否か、即ち、供給電圧が理想供給電圧範囲の下端点を下回るか否かをさらに判定する(ステップS52)。
【0184】
本実施の形態では、ステップS52で判定部314が参照する、理想供給電圧範囲の下端点が、既述の粘度上昇制御を開始する条件の成立を判定するための第2下限閾値としての意義を有する。
【0185】
即ち、判定部314は、供給電圧が第2下限閾値としての、理想供給電圧範囲の下端点を下回る場合は(ステップS52;YES)、粘度上昇制御部312に接着剤530の冷却を開始させる(ステップS42)。これにより、接着剤530の粘度が次第に上昇する。
【0186】
ステップS42の後、処理は、再びステップS52の判定に戻る。そして、判定部314は、供給電圧が第2下限閾値以上となった場合は(ステップS52;NO)、粘度上昇制御部312に接着剤530の冷却を停止させる(ステップS43)。このようにして、供給電圧が第2下限閾値以上に上昇するまで、接着剤530を冷却する粘度上昇制御が行われる。
【0187】
また、判定部314は、ステップS43の後に、接着剤530の粘度が理想粘度範囲の上端点を上回るか否か、即ち、供給電圧が理想供給電圧範囲の上端点を上回るか否かをさらに判定する(ステップS53)。
【0188】
本実施の形態では、ステップS53で判定部314が参照する、理想供給電圧範囲の上端点が、既述の粘度低下制御を開始する条件の成立を判定するための第2上限閾値としての意義を有する。
【0189】
即ち、判定部314は、供給電圧が第2上限閾値としての、理想供給電圧範囲の上端点を上回る場合は(ステップS53;YES)、粘度低下制御部311に既述の粘度低下制御を行わせる(ステップS31)。これにより、混合容器130の内部の上記混合物に対して、予め定められた量の粘度低下剤540を添加され、接着剤530の粘度が低下する。
【0190】
ステップS31の後、処理は、再びステップS53の判定に戻る。このようにして、供給電圧が第2上限閾値以下に低下するまで、混合容器130の内部への粘度低下剤540の添加が繰り返される。
【0191】
一方、判定部314は、供給電圧が第2上限閾値以下となった場合は(ステップS53;NO)、処理を、図9のステップS24に進める。他の処理は、図9に示した実施の形態1に係る接着体製造工程と同じである。
【0192】
本実施の形態によれば、粘度が理想粘度範囲に調整された接着剤530を、押し付け工程(ステップS25)に供することができる。また、やや過度な粘度の調整が必要とされるため粘度が調整に適した値とは言えない接着剤530については、押し付け工程(ステップS25)への供給が回避される。この結果、接着体600の製造の品質を高めることができる。
【0193】
[実施の形態6の変形例]
上記実施の形態6では、図18のステップS53で、供給電圧が第2上限閾値以下となった場合に(ステップS53;NO)、図9のステップS25で押し付け力制御が行われることとした。図9のステップS25では、押し付け力制御に代えて、実施の形態2で述べた押し付け時間長制御を行ってもよいし、押し付け力制御と押し付け時間長制御との両方を行ってもよい。
【0194】
また、図18のステップS53で、供給電圧が第2上限閾値以下と判定されたときは(ステップS53;NO)、接着剤530の粘度が理想粘度範囲にある。このため、図9のステップS25では、必ずしも押し付け力制御及び押し付け時間長制御の少なくとも一方を行わずとも、良好な品質の接着体600を製造し得る。即ち、図9のステップS25では、第1部材610に対する第2部材620の押し付け力及び押し付け時間長を一定に保ってもよい。
【0195】
以上、実施の形態1-6について説明した。以下に述べる変形も可能である。
【0196】
上記実施の形態1では、目標充填率を得るために、第1部材610に対する第2部材620の押し付け力の大きさを制御する押し付け力制御を行った。また、上記実施の形態2では、目標充填率を得るために、第1部材610に対する第2部材620の押し付け時間長を制御する押し付け時間長制御を行った。制御装置300は、押し付け力制御と押し付け時間長制御との両方を並行して行ってもよい。
【0197】
即ち、制御装置300は、撹拌羽根141の回転トルクが大きいほど、押し付け力が高まりかつ押し付け時間長が長くなる一方、撹拌羽根141の回転トルクが小さいほど、押し付け力が小さくなりかつ押し付け時間長が短くなる条件で、押し付け力と押し付け時間長との両方を制御してもよい。このような制御は、必要押し付け力及び必要押し付け時間長と、モータ143に与える供給電圧との依存性を表す必要値データ322を用いて実現することができる。
【0198】
上記実施の形態1では、制御装置300は、押し付け力制御と、停止制御及び報知制御とを行った。押し付け力制御と、停止制御及び報知制御とは互いに独立しているため、制御装置300は、これらのうち押し付け力制御のみを行ってもよいし、停止制御及び報知制御のみを行ってもよい。また、停止制御と報知制御のうち一方のみを行ってもよい。また、既述のとおり、押し付け力制御に代えて、押し付け時間長制御を行ってもよいし、押し付け力制御と押し付け時間長制御との両方を行ってもよい。
【0199】
上記実施の形態1では、撹拌羽根141の回転トルクを、モータ143に対する供給電圧を通じて間接的に検知する構成を例示したが、トルクメータ(torque meter)その他の検出器を用いて撹拌羽根141の回転トルクを直接的に検知してもよい。
【0200】
上記実施の形態1では、接着剤530が付着した1部材610に対して第2部材620を押し付ける構成を例示したが、接着剤530が付着した1部材610を第2部材620に押し付けてもよい。
【0201】
図3に示す制御装置300は、既存のコンピュータによって実現できる。即ち、図3に示す制御プログラム321をコンピュータにインストールすることで、そのコンピュータを制御装置300として機能させることができる。具体的には、制御プログラム321は、以下に述べる第1制御機能から第4制御機能をコンピュータに実現させる。
【0202】
第1制御機能とは、撹拌羽根141の回転トルク又はその回転トルクを表す物理量の値に応じて、第1部材610に対する第2部材620の押し付け力の大きさと、押し付け時間長との少なくとも一方を制御する機能である。
【0203】
第2制御機能とは、撹拌羽根141の回転トルク又はその回転トルクを表す物理量の値が予め定められた第1上限閾値を上回る場合に、主剤供給装置110から混合容器130への主剤510の供給及び硬化剤供給装置120から混合容器130への硬化剤520の供給を停止させる停止制御と、接着剤530の粘度が異常である旨を報知する報知制御との少なくとも一方を行う機能である。撹拌羽根141の回転トルク又はその回転トルクを表す物理量の値が予め定められた第1下限閾値を下回る場合にも、停止制御と報知制御との少なくとも一方を行うことが好ましい。
【0204】
第3制御機能とは、撹拌羽根141の回転トルクを表す物理量の値が予め定められた第2上限閾値を上回る場合に、粘度低下剤供給装置150に第1作動指令を与えることにより、その物理量の値が第2上限閾値以下に低下するまで、混合物に粘度低下剤540を添加させる粘度低下制御を行う機能である。
【0205】
第4制御機能とは、撹拌羽根141の回転トルクを表す物理量の値が予め定められた第2下限閾値を下回る場合に、冷却装置160に第2作動指令を与えることにより、その物理量の値が第2下限閾値以上に上昇するまで、冷却装置160に接着剤530を冷却させる粘度上昇制御を行う機能である。
【0206】
制御プログラム321は、通信ネットワークを介して配布してもよいし、コンピュータによる読み取りが可能な、非一時的な記録媒体に格納したうえで配布してもよい。
【0207】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされる。また、上述した実施の形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。つまり、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【0208】
本出願は、2022年1月14日に出願された、日本国特許出願特願2022-004502号に基づく。本明細書中に、日本国特許出願特願2022-004502号の明細書、特許請求の範囲、及び図面全体を参照として取り込むものとする。
【符号の説明】
【0209】
100 吐出部、100a 吐出装置、100b 吐出装置用搬送装置、110 主剤供給装置、111 主剤容器、112 主剤送り出し機構、120 硬化剤供給装置、121 硬化剤容器、122 硬化剤送り出し機構、130 混合容器、130a 吐出ノズル、140 混合装置、141 撹拌羽根、142 回転軸、143 モータ、144 電源回路(検出器)、150 粘度低下剤供給装置、151 粘度低下剤容器、152 粘度低下剤送り出し機構、160 冷却装置、200 押し付け部、200a 押し付け装置、200b 押し付け装置用搬送装置、210 保持機構、211 吸引孔、212 保持面、220 ロードセル、230 進退機構、300 制御装置、310 プロセッサ、311 粘度低下制御部、312 粘度上昇制御部、313 停止・報知制御部、314 判定部、320 メモリ、321 制御プログラム、322 必要値データ、323 閾値データ、400 接着装置、510 主剤、520 硬化剤、530 接着剤、540 粘度低下剤、600 接着体、610 第1部材、620 第2部材、CA 目標領域、SP 押し付け力信号、SV 電圧信号。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18