(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】開閉装置及び開閉装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H01H 33/59 20060101AFI20241213BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
H01H33/59 H
H01H9/54 C
(21)【出願番号】P 2023578283
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2022004303
(87)【国際公開番号】W WO2023148895
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2024-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達広
(72)【発明者】
【氏名】小柳 公之
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 克彦
(72)【発明者】
【氏名】江戸 貴広
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-78146(JP,U)
【文献】特開2018-206539(JP,A)
【文献】特開平10-302585(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0334340(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0045104(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54 - 9/56
H01H 33/28 - 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉装置であって、
電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に接続されたスイッチ部と、
前記第1ノード及び前記第2ノードの間に前記スイッチ部と並列接続された電流抑制素子と、
前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された、前記電源及び前記負荷回路を含む通電回路内での異常を検知する事故検知部と、
前記スイッチ部の開閉を制御する開閉指令部とを備え、
前記開閉指令部は、前記開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御して前記事故検知部の出力に基づいて異常診断を実行し、前記異常診断において前記事故検知部によって異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様に、前記スイッチ部を制御し、
前記電流抑制素子は、限流のための電気抵抗であり、
前記開閉装置は、前記スイッチ部及び前記第2ノードの間に接続されて、前記開閉指令部によって開閉が制御される電流開閉部を更に備え、
前記スイッチ部は、電気接点又は転流開閉部によって構成され、
前記開閉指令部は、前記スイッチ部をオフする一方で前記電流開閉部をオンすることで前記第1の状態を形成して第1の異常診断を実行し、前記第1の異常診断において前記事故検知部によって異常状態が検知されない場合に、前記スイッチ部を更にオンして第2の異常診断を実行し、前記第2の異常診断において前記事故検知部によって前記異常状態が検知されない場合に、前記電流開閉部及び前記スイッチ部のオンを継続して前記第2の状態を形成する
、開閉装置。
【請求項2】
前記開閉指令部は、前記第1の異常診断において前記事故検知部によって前記異常状態が検知された場合には、前記電流開閉部をオフするとともに前記スイッチ部のオフを維持して前記閉路動作を終了し、前記第2の異常診断において前記事故検知部によって前記異常状態が検知された場合には、前記電流開閉部及び前記スイッチ部をオフして前記閉路動作を終了する、請求項
1記載の開閉装置。
【請求項3】
開閉装置であって、
電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に接続されたスイッチ部と、
前記第1ノード及び前記第2ノードの間に前記スイッチ部と並列接続された電流抑制素子と、
前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された、前記電源及び前記負荷回路を含む通電回路内での異常を検知する事故検知部と、
前記スイッチ部の開閉を制御する開閉指令部とを備え、
前記開閉指令部は、前記開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御して前記事故検知部の出力に基づいて異常診断を実行し、前記異常診断において前記事故検知部によって異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様に、前記スイッチ部を制御し、
前記電流抑制素子は、限流のための電気抵抗であり、
前記開閉装置は、前記スイッチ部及び前記第2ノードの間に接続されて、前記開閉指令部によって開閉が制御される電流開閉部を更に備え、
前記スイッチ部は、並列接続された転流開閉部及び電気接点を有し、
前記転流開閉部は、前記電気接点よりも遮断容量が大きく、かつ、前記電気接点のオン状態のインピーダンスは、前記転流開閉部のオン状態のインピーダンス以下であり、
前記開閉指令部は、前記第1の状態では、前記電流開閉部をオンする一方で前記スイッチ部において前記転流開閉部及び前記電気接点をオフして第1の異常診断を実行し、前記第1の異常診断において前記事故検知部によって前記異常状態が検知されない場合には、前記スイッチ部において前記転流開閉部をオンする一方で前記電気接点をオフした状態で第2の異常診断を実行し、前記第2の異常診断において前記事故検知部によって前記異常状態が検知されない場合に、前記電流開閉部及び前記電気接点をオンすることで前記第2の状態を形成する
、開閉装置。
【請求項4】
前記開閉指令部は、前記第1の異常診断において前記事故検知部によって前記異常状態が検知された場合には、前記電流開閉部をオフするとともに前記スイッチ部において前記転流開閉部及び前記電気接点のオフを維持して前記閉路動作を終了し、前記第2の異常診断において前記事故検知部によって前記異常状態が検知された場合には、前記電流開閉部及び前記転流開閉部をオフするとともに前記電気接点をオフに維持して前記閉路動作を終了する、請求項
3記載の開閉装置。
【請求項5】
開閉装置であって、
電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に接続されたスイッチ部と、
前記第1ノード及び前記第2ノードの間に前記スイッチ部と並列接続された電流抑制素子と、
前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された、前記電源及び前記負荷回路を含む通電回路内での異常を検知する事故検知部と、
前記スイッチ部の開閉を制御する開閉指令部とを備え、
前記開閉指令部は、前記開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御して前記事故検知部の出力に基づいて異常診断を実行し、前記異常診断において前記事故検知部によって異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様に、前記スイッチ部を制御し、
前記電流抑制素子は、限流のための電気抵抗であり、
前記スイッチ部は、並列接続された転流開閉部及び電気接点を有し、
前記転流開閉部は、前記電気接点よりも遮断容量が大きく、かつ、前記電気接点のオン状態のインピーダンスは、前記転流開閉部のオン状態のインピーダンス以下であり、
前記開閉指令部は、前記第1の状態では、前記転流開閉部をオンする一方で前記電気接点をオフして前記異常診断を実行し、前記異常診断において前記事故検知部によって前記異常状態が検知されない場合には、前記電気接点をオンすることで前記第2の状態を形成する
、開閉装置。
【請求項6】
開閉装置であって、
電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に接続されたスイッチ部と、
前記第1ノード及び前記第2ノードの間に前記スイッチ部と並列接続された電流抑制素子と、
前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された、前記電源及び前記負荷回路を含む通電回路内での異常を検知する事故検知部と、
前記スイッチ部の開閉を制御する開閉指令部とを備え、
前記開閉指令部は、前記開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御して前記事故検知部の出力に基づいて異常診断を実行し、前記異常診断において前記事故検知部によって異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様に、前記スイッチ部を制御し、
前記電流抑制素子は、遮断能力を有するエネルギ吸収素子であり、
前記スイッチ部は、並列接続された転流開閉部及び電気接点を有し、
前記転流開閉部は、前記電気接点よりも遮断容量が大きく、かつ、前記電気接点のオン状態のインピーダンスは、前記転流開閉部のオン状態のインピーダンス以下であり、
前記開閉指令部は、前記第1の状態では、前記転流開閉部をオンする一方で前記電気接点をオフして前記異常診断を実行し、前記異常診断において前記事故検知部によって前記異常状態が検知されない場合には、前記電気接点をオンすることで前記第2の状態を形成する
、開閉装置。
【請求項7】
前記開閉指令部は、前記異常診断において前記事故検知部によって前記異常状態が検知された場合には、前記転流開閉部をオフするとともに前記電気接点をオフに維持して前記閉路動作を終了する、請求項
5又は6記載の開閉装置。
【請求項8】
前記転流開閉部は、前記開閉指令部によってオンオフ制御される半導体スイッチで構成され、
前記開閉指令部は、前記第1の状態では、前記電気接点をオフする一方で前記半導体スイッチを繰り返しオンオフさせて前記異常診断を実行し、オンオフの繰り返し回数が予め定められた規定回数に達するまでに、前記半導体スイッチのオン期間で前記事故検知部によって前記異常状態が検知されなくなると、前記電気接点をオンする一方で前記半導体スイッチをオンに維持することで前記第2の状態を形成する、請求項
6記載の開閉装置。
【請求項9】
開閉装置であって、
電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に接続されたスイッチ部と、
前記第1ノード及び前記第2ノードの間に前記スイッチ部と並列接続された電流抑制素子と、
前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された、前記電源及び前記負荷回路を含む通電回路内での異常を検知する事故検知部と、
前記スイッチ部の開閉を制御する開閉指令部とを備え、
前記開閉指令部は、前記開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御して前記事故検知部の出力に基づいて異常診断を実行し、前記異常診断において前記事故検知部によって異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様に、前記スイッチ部を制御し、
前記電流抑制素子は、遮断能力を有するエネルギ吸収素子であり、
前記スイッチ部は、前記開閉指令部によってオンオフ制御される半導体スイッチで構成され、
前記開閉指令部は、前記第1の状態では、前記半導体スイッチを繰り返しオンオフさせて前記異常診断を実行し、オンオフの繰り返し回数が予め定められた規定回数に達するまでに、前記半導体スイッチのオン期間で前記事故検知部によって前記異常状態が検知されなくなると、前記半導体スイッチをオンに維持することで前記第2の状態を形成する
、開閉装置。
【請求項10】
前記転流開閉部は、
耐熱接点と、
前記耐熱接点で発生したアークを消弧するためのアークシュートとを含む、請求項
1又は2に記載の開閉装置。
【請求項11】
前記転流開閉部は、
前記電気接点よりも高融点の材料で形成された耐熱接点と、
前記耐熱接点で発生したアークを消弧するためのアークシュートとを含む、請求項
3~8のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項12】
前記事故検知部は、前記スイッチ部及び前記電流抑制素子に対して前記第2ノード側に配置される、請求項1~
11のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項13】
前記事故検知部は、前記通電回路内の電流、電圧、電気抵抗、及び、温度上昇の少なくともいずれかの情報を含む電気信号と、前記電気信号の周波数成分の分布と、光情報との少なくとも1つを含む測定情報に基づいて、前記異常状態を検知する、請求項1~
11のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項14】
前記事故検知部は、前記電気抵抗と接続されて、前記通電回路が形成されたときの前記電気抵抗での吸収エネルギ量及び温度上昇量の少なくとも一方を含む測定情報に基づいて、前記異常状態を検知する、請求項
1~5のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項15】
前記事故検知部は、前記通電回路の正常動作時に収集された前記測定情報を用いて当該測定情報の基準範囲を設定するとともに、前記異常診断時において前記基準範囲から外れた前記測定情報が得られると前記異常状態を検知する、請求項
13又は14に記載の開閉装置。
【請求項16】
開閉装置であって、
電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に接続されたスイッチ部と、
前記第1ノード及び前記第2ノードの間に前記スイッチ部と並列接続された電流抑制素子と、
前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された、前記電源及び前記負荷回路を含む通電回路内での異常を検知する事故検知部と、
前記スイッチ部の開閉を制御する開閉指令部とを備え、
前記開閉指令部は、前記開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御して前記事故検知部の出力に基づいて異常診断を実行し、前記異常診断において前記事故検知部によって異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様に、前記スイッチ部を制御し、
前記事故検知部は、前記通電回路内の電流、電圧、電気抵抗、及び、温度上昇の少なくともいずれかの情報を含む電気信号と、前記電気信号の周波数成分の分布と、光情報との少なくとも1つを含む測定情報に基づいて、前記異常状態を検知し、
前記事故検知部は、前記通電回路の正常動作時に収集された前記測定情報を用いて当該測定情報の基準範囲を設定するとともに、前記異常診断時において前記基準範囲から外れた前記測定情報が得られると前記異常状態を検知する、開閉装置。
【請求項17】
前記開閉指令部は、前記異常診断において前記事故検知部によって前記異常状態が検知された場合において、予め定められた待機時間の経過後に前記異常状態が検知されないときには、前記第2の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御する一方で、前記待機時間が経過しても前記異常状態が検知され
たときには、前記スイッチ部を開放して前記閉路動作を終了する、請求項
1~7のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項18】
前記事故検知部は、当該事故検知部の通過電流が予め定められた基準電流範囲よりも高いときに前記異常状態を検知し、
前記開閉指令部は、前記通過電流が導入されるコイルを含む電磁石からの電磁力によって、前記通過電流が前記基準電流範囲であるときに前記電気接点をオンする方向に第1の駆動力を発生する一方で、前記通過電流が前記基準電流範囲より高いときに前記電気接点をオフする方向の第2の駆動力を発生する様に構成される、請求項
3~6のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項19】
前記電気接点には、当該電気接点をオフするための付勢力が作用しており、
前記第1の駆動力は、前記付勢力とは反対方向に作用し、かつ、前記付勢力よりも大きく、
前記開閉指令部は、前記通過電流が前記基準電流範囲よりも低いときには、前記第1の駆動力を発生しない様に構成される、請求項18記載の開閉装置。
【請求項20】
前記電磁石は、
第1の空隙を挟んで配置された第1及び第2の鉄心と、
前記第2の鉄心に対して第2の空隙を挟んで前記第1の鉄心とは反対方向に配置された第3の鉄心とを含み、
前記第1及び第3の鉄心は、連結棒によって連結されて、前記第1又は第2の駆動力によって、固定された前記第2の鉄心に対して一体的に可動に配置され、
前記電気接点は、前記第1及び第2の鉄心の接触時にオンする一方で、前記第1及び第2の鉄心の非接触時にオフする様に構成され、
前記電磁石は、前記通過電流が前記基準電流範囲内であるときには、前記第1の空隙が縮小する方向に前記第1の鉄心を駆動する第1の磁路を形成することで前記第1の駆動力を発生する一方で、前記通過電流が前記基準電流範囲よりも高いときには、前記第1の磁路での磁気飽和の発生に応じて、前記第2の空隙が縮小する方向に前記第3の鉄心を駆動する第2の磁路を形成することで前記第2の駆動力を発生する様に構成される、請求項18又は19に記載の開閉装置。
【請求項21】
電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に配置された開閉装置の制御方法であって、
前記開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間に電流抑制素子と並列に接続されたスイッチ部を、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態を形成する様に制御するステップと、
前記第1の状態において、前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された、前記電源及び前記負荷回路を含む通電回路内での異常状態を検知する異常診断を実行するステップと、
前記異常診断において前記異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御するステップと、
前記異常診断において前記異常状態が検知された場合に、前記スイッチ部を開路するステップとを備え、
前記電流抑制素子は、限流のための電気抵抗であり、
前記開閉装置は、前記スイッチ部及び前記第2ノードの間に接続された電流開閉部を更に備え、
前記スイッチ部は、電気接点又は転流開閉部によって構成され、
前記第1の状態は、前記スイッチ部をオフする一方で、前記電流開閉部をオンすることによって形成され、
前記異常診断は、
前記第1の状態が形成された下で実行される第1の異常診断と、
前記第1の異常診断において前記異常状態が検知されない場合に、前記スイッチ部を更にオンして実行される第2の異常診断とを含み、
前記第2の状態は、前記第2の異常診断において前記異常状態が検知されない場合に、前記電流開閉部及び前記スイッチ部のオンを継続することによって形成される、開閉装置
の制御方法。
【請求項22】
前記第1の異常診断において前記異常状態が検知された場合には、前記電流開閉部をオフするとともに前記スイッチ部のオフを維持して前記閉路動作を終了するステップと、
前記第2の異常診断において前記異常状態が検知された場合には、前記電流開閉部及び前記スイッチ部をオフして前記閉路動作を終了するステップとを更に備える、請求項
21記載の開閉装置
の制御方法。
【請求項23】
電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に配置された開閉装置の制御方法であって、
前記開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間に電流抑制素子と並列に接続されたスイッチ部を、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態を形成する様に制御するステップと、
前記第1の状態において、前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された、前記電源及び前記負荷回路を含む通電回路内での異常状態を検知する異常診断を実行するステップと、
前記異常診断において前記異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御するステップと、
前記異常診断において前記異常状態が検知された場合に、前記スイッチ部を開路するステップとを備え、
前記電流抑制素子は、限流のための電気抵抗であり、
前記開閉装置は、前記スイッチ部及び前記第2ノードの間に接続された電流開閉部を更に備え、
前記スイッチ部は、並列接続された転流開閉部及び電気接点を有し、
前記転流開閉部は、前記電気接点よりも遮断容量が大きく、かつ、前記電気接点のオン状態のインピーダンスは、前記転流開閉部のオン状態のインピーダンス以下であり、
前記第1の状態は、前記電流開閉部をオンする一方で前記スイッチ部において前記転流開閉部及び前記電気接点をオフすることによって形成され、
前記異常診断は、
前記第1の状態が形成された下で実行される第1の異常診断と、
前記第1の異常診断において前記異常状態が検知されない場合に、前記スイッチ部において前記転流開閉部をオンする一方で前記電気接点をオフした状態で実行される第2の異常診断とを含み、
前記第2の状態は、前記第2の異常診断において前記異常状態が検知されない場合に、前記電流開閉部及び前記電気接点をオンすることで形成される
、開閉装置
の制御方法。
【請求項24】
前記第1の異常診断において前記異常状態が検知された場合に、前記電流開閉部をオフするとともに前記スイッチ部において前記転流開閉部及び前記電気接点のオフを維持して前記閉路動作を終了するステップと、
前記第2の異常診断において前記異常状態が検知された場合に、前記電流開閉部及び前記転流開閉部をオフするとともに前記電気接点をオフに維持して前記閉路動作を終了するステップとを更に備える、請求項
23記載の開閉装置
の制御方法。
【請求項25】
電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に配置された開閉装置の制御方法であって、
前記開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間に電流抑制素子と並列に接続されたスイッチ部を、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態を形成する様に制御するステップと、
前記第1の状態において、前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された、前記電源及び前記負荷回路を含む通電回路内での異常状態を検知する異常診断を実行するステップと、
前記異常診断において前記異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御するステップと、
前記異常診断において前記異常状態が検知された場合に、前記スイッチ部を開路するステップとを備え、
前記電流抑制素子は、限流のための電気抵抗であり、
前記スイッチ部は、並列接続された転流開閉部及び電気接点を有し、
前記転流開閉部は、前記電気接点よりも遮断容量が大きく、かつ、前記電気接点のオン状態のインピーダンスは、前記転流開閉部のオン状態のインピーダンス以下であり、
前記第1の状態は、前記転流開閉部をオンする一方で前記電気接点をオフすることによって形成され、
前記第2の状態は、前記異常診断において前記異常状態が検知されない場合に、前記電気接点をオンすることによって形成される
、開閉装置
の制御方法。
【請求項26】
電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に配置された開閉装置の制御方法であって、
前記開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間に電流抑制素子と並列に接続されたスイッチ部を、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態を形成する様に制御するステップと、
前記第1の状態において、前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された、前記電源及び前記負荷回路を含む通電回路内での異常状態を検知する異常診断を実行するステップと、
前記異常診断において前記異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御するステップと、
前記異常診断において前記異常状態が検知された場合に、前記スイッチ部を開路するステップとを備え、
前記電流抑制素子は、遮断能力を有するエネルギ吸収素子であり、
前記スイッチ部は、並列接続された転流開閉部及び電気接点を有し、
前記転流開閉部は、前記電気接点よりも遮断容量が大きく、かつ、前記電気接点のオン状態のインピーダンスは、前記転流開閉部のオン状態のインピーダンス以下であり、
前記第1の状態は、前記転流開閉部をオンする一方で前記電気接点をオフすることによって形成され、
前記第2の状態は、前記異常診断において前記異常状態が検知されない場合に、前記電気接点をオンすることによって形成される
、開閉装置
の制御方法。
【請求項27】
前記異常診断において前記異常状態が検知された場合に、前記転流開閉部をオフするとともに前記電気接点をオフに維持して前記閉路動作を終了するステップを更に備える、請求項
25又は26記載の開閉装置
の制御方法。
【請求項28】
前記転流開閉部は、制御信号によってオンオフ制御される半導体スイッチで構成され、
前記第1の状態は、前記電気接点をオフする一方で前記半導体スイッチを繰り返しオンオフさせる様に前記制御信号を生成することによって形成され、
前記第2の状態は、前記半導体スイッチのオンオフの繰り返し回数が予め定められた規定回数に達するまでに、前記半導体スイッチのオン期間で前記異常状態が検知されなくなると、前記電気接点をオンする一方で前記半導体スイッチをオンに維持する様に前記制御信号を生成することによって形成される、請求項
26記載の開閉装置
の制御方法。
【請求項29】
電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に配置された開閉装置の制御方法であって、
前記開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間に電流抑制素子と並列に接続されたスイッチ部を、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態を形成する様に制御するステップと、
前記第1の状態において、前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された、前記電源及び前記負荷回路を含む通電回路内での異常状態を検知する異常診断を実行するステップと、
前記異常診断において前記異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御するステップと、
前記異常診断において前記異常状態が検知された場合に、前記スイッチ部を開路するステップとを備え、
前記電流抑制素子は、遮断能力を有するエネルギ吸収素子であり、
前記スイッチ部は、制御信号によってオンオフ制御される半導体スイッチで構成され、
前記第1の状態は、前記半導体スイッチを繰り返しオンオフする様に前記制御信号を生成することによって形成され、
前記第2の状態は、前記半導体スイッチのオンオフの繰り返し回数が予め定められた規定回数に達するまでに、前記半導体スイッチのオン期間で前記異常状態が検知されなくなると、前記半導体スイッチをオンに維持する様に前記制御信号を生成することで形成される
、開閉装置
の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開閉装置及び開閉装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路を閉路及び開路するための開閉素子として、電気接点及び半導体スイッチ等が用いられる。実開平5-78146号公報(特許文献1)には、高速開閉器及び遮断器が直列接続された構成において、半導体スイッチ及び限流抵抗の各々を高速開閉器と並列に接続し限流遮断器が開示されている。
【0003】
特許文献1の限流遮断器によれば、通常時には、機械的接点で構成された高速開閉器によって大電流を通電する一方で、短絡事故発生時には、変流器によって異常が検知されると、半導体スイッチをオンした後に機械的接点を開放することで、短絡電流は、半導体スイッチに転流されるので、アークを速やかに消弧される。
【0004】
更に、半導体スイッチへの転流の完了後に、半導体スイッチをオフすることで、短絡電流を無アークで限流抵抗に更に転流することができる。これにより、特許文献1の限流遮断器では、特殊な転流機構を要することなく、アークを速やかに消弧して、安全に電気回路の開路を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の様に、特許文献1の限流遮断器によれば、正常な閉路状態から電気回路に短絡事故が発生した場合に、安全な回路を実現することができる。一方で、開閉装置を用いて電源と電気回路とを接続する場合、即ち、開路状態から閉路状態への閉路動作時に、接続先の回路に短絡状態等の異常が既に発生しているときには、閉路と同時に大電流が発生することで、開閉素子が破損することが懸念される。しかしながら、特許文献1には、閉路動作時の制御については特に記載されていない。
【0007】
一方で、上述の様な閉路と同時に短絡電流が発生するケースに対する耐性を確保するために、開閉器及び半導体スイッチについて、通電容量を大きくする、或いは、複数個並列配設するとともに、遮断器について遮断容量又は投入容量を大きくする対策が考えられる。しかしながら、この様な対策は、開閉装置の大型化及び高コスト化を招くことが懸念される。
【0008】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであって、本開示の目的は、短絡等の異常が発生した回路を閉路しても閉路動作時における、過大電流の発生、及び、構成部品の破損を防止することが可能な、開閉装置及び開閉装置の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある局面によれば、開閉装置が提供される。開閉装置は、スイッチ部と、電流抑制素子と、スイッチ部の開閉を制御する開閉指令部とを備える。スイッチ部は、電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に接続される。電流抑制素子は、前記第1ノード及び前記第2ノードの間に前記スイッチ部と並列接続される。事故検知部は、前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された電源及び負荷回路を含む通電回路内での異常を検知する。開閉指令部は、前記開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御して前記事故検知部の出力に基づいて異常診断を実行する。開閉指令部は、当該異常診断において前記事故検知部によって異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様にスイッチ部を制御する。
【0010】
本開示の他のある局面によれば、開閉装置の制御方法が提供される。電源と電気的に接続された第1ノードと、前記電源から電力供給を受ける負荷回路と電気的に接続された第2ノードとの間に配置された開閉装置の制御方法は、開閉装置の閉路動作の際に、前記第1ノード及び前記第2ノードの間に電流抑制素子と並列に接続されたスイッチ部を、前記第1ノード及び前記第2ノードの間のインピーダンスが第1の値となる第1の状態を形成する様に制御するステップと、第1の状態において、前記第1ノード及び前記第2ノードの間を電気的に接続することによって形成された、前記電源及び前記負荷回路を含む通電回路内での異常状態を検知する異常診断を実行するステップと、異常診断において前記異常状態が検知されない場合に、前記インピーダンスが前記第1の値以下である第2の値となる第2の状態が形成される様に前記スイッチ部を制御するステップと、異常診断において前記異常状態が検知された場合に、前記スイッチ部を開路するステップとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、第1ノード及び第2ノード間のインピーダンスが定常的な閉路状態(第2の状態)よりも高い状態(第1の状態)での異常診断が正常であった場合にのみ、第1ノード及び第2ノードの間が定常的な閉路状態となる様にスイッチ部が制御されるので、短絡等の異常が発生した回路を閉路した場合にも、過大電流の発生、及び、構成部品の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る開閉装置の構成例を説明する概念的な回路図である。
【
図2】実施の形態1に係る開閉装置の閉路動作における制御動作を説明する波形図である。
【
図3】実施の形態1に係る開閉装置の閉路動作時における制御処理の第1の例を説明するフローチャートである。
【
図4】実施の形態1に係る開閉装置の閉路動作時における制御処理の第2の例を説明するフローチャートである。
【
図5】転流開閉部の変形例を説明する断面図である。
【
図6】実施の形態1の変形例に係る開閉装置の構成例を説明する概念的な回路図である。
【
図7】実施の形態2に係る開閉装置の構成例を説明する概念的な回路図である。
【
図8】実施の形態2に係る開閉装置の閉路動作時における制御処理例を説明するフローチャートである。
【
図9A】実施の形態3に係る開閉指令部の構成及び低電流時の動作を説明する概念的な断面図である。
【
図9B】実施の形態3に係る開閉指令部の構成及び基準電流範囲での動作を説明する概念的な断面図である。
【
図9C】実施の形態3に係る開閉指令部の構成及び過電流時の動作を説明する概念的な断面図である。
【
図10】実施の形態4に係る開閉装置の構成例を説明する概念的な回路図である。
【
図11】実施の形態5に係る開閉装置の構成例を説明する概念的な回路図である。
【
図12】実施の形態5に係る開閉装置の閉路動作時における制御処理例を説明するフローチャートである。
【
図13】実施の形態5に係る開閉装置における半導体スイッチの動作波形図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る開閉装置10aの構成例を説明する概念的な回路図である。
【0015】
図1を参照して、開閉装置10aは、スイッチ部20と、開閉指令部25と、電流抑制素子30としての電気抵抗31と、事故検知部40と、電流開閉部50とを備える。
【0016】
スイッチ部20及び電流開閉部50は、ノードN1及びN2の間に直列接続されて、開閉指令部25からの指令に従って、ノードN1及びN2の間の接続状態を制御する。
【0017】
ノードN1は、図示しない電源と電気的に接続される。ノードN2は、上記電源から電力供給を受ける負荷回路(図示せず)と電気的に接続される。即ち、実施の形態1では、スイッチ部20とノードN2との間に、電流開閉部50が接続される。ノードN1及びN2は、「第1ノード」及び「第2ノード」の一実施例にそれぞれ対応する。
【0018】
スイッチ部20は、並列接続された、電気接点21及び転流開閉部22を含む。電気接点21及び転流開閉部22の各々は、開閉指令部25によって開路又は閉路される。開閉指令部25は、例えば、後述する制御処理を実行するためのプログラムが実装されたマイクロコンピュータによって構成することができる。
【0019】
電気接点21は、定常的な電流経路を形成するために配置されるので、低インピーダンスで構成される。例えば、電気接点21は、電磁力の有無によって機械的に開閉される様に構成される。転流開閉部22は、事故発生時に動作するために配置され、代表的には、半導体スイッチによって構成される。又、後程変形例として説明する様に、転流開閉部22は、有接点の構成とすることも可能である。
【0020】
電気接点21は、負荷回路(図示せず)への給電に対応した通電容量を有する一方で、遮断容量は基本的には不要である。これに対して、転流開閉部22は、電気接点21と比較すると、通電容量が小さい一方で、遮断容量は大きくなる様に構成される。又、電気接点21のオン状態でのインピーダンスは、転流開閉部22のオン状態でのインピーダンス以下である。
【0021】
電流開閉部50は、事故電流を遮断可能な、遮断器又は開閉器によって構成される。電流開閉部50は、電気接点21と同等の通電容量を要する。尚、一般的に、開閉器は、定格電流の数倍~十倍未満程度の過電流の遮断能力を有し、遮断器は、定格電流の10倍以上の短絡電流についても遮断する能力を有している。従って、電流開閉部50としては、遮断を想定する事故電流の大きさに対応させて、上記遮断器又は開閉器を選択することができる。
【0022】
事故検知部40は、ノードN1及びN2が電気的に接続されることで、ノードN1と接続された電源(図示せず)及びノードN2と電気的に接続された負荷回路(図示せず)を含んで形成された通電回路内での異常を検知する。事故検知部40の出力、即ち、異常状態の検出有無によって、異常診断が実行される。
【0023】
事故検知部40は、当該通電回路内の予め定められた部位における、電流、電圧、電流及び電圧の比で求められる電気抵抗、又は、温度上昇等の測定情報が反映された電気信号に基づいて、短絡による過電流に代表される異常状態(事故)の発生を検知する。或いは、事故検知部40は、上記電気信号の周波数成分の分布(周波数スペクトル)に基づいて、異常状態の発生を検知することも可能である。
【0024】
回路に異常が発生している場合には、電流が上昇するなどの回路特性の変化が生じるため、事故検知部40は、電流の変化を測定することで異常状態を検知することができる。又、短絡が生じている場合では、短絡箇所において、電圧の低下、又は、電気抵抗の低下が生じる。このため、事故検知部40は、電圧、又は、電気抵抗を測定することでも異常状態を検知することができる。
【0025】
或いは、通電回路内で異常発熱している場合もあるため、事故検知部40は、温度上昇を測定することによっても、異常状態を検知することができる。更に、放電を伴う異常が発生している場合では、上記電気信号内に放電ノイズが重畳される現象、又は、放電に伴う発光が生じる。このため、事故検知部40は、上記電気信号の周波数成分、または、発光に係る光情報を測定することでも異常を検知することができる。
【0026】
尚、上記光情報は、代表的には、イメージセンサによって測定された発光の強度値とすることができる。或いは、誤検知を回避するため、光学フィルタ又は分光器を介して取得された、特定波長の光の強度値を、光情報として用いることも可能である。
【0027】
事故検知部40は、上述した測定情報の複数個の組み合わせによって異常状態を検出することも可能である。この場合には、検知精度を向上するとともに、異常の種類についても判断することが可能となる。
【0028】
事故検知部40は、上記電気信号、電気信号の特定周波数の成分、及び、光情報を、予め設定された基準範囲と比較することによって、異常状態を検知することができる。或いは、基準範囲については、正常動作時に学習した測定情報に基づいて設定することも可能である。
【0029】
代表的には、正常状態時における上記電気信号等の測定情報を正常値として収集して、当該正常値の分布に従った統計処理によって、異常診断に用いられる基準範囲を設定することができる。例えば、収集された正常値の3σ範囲を基準範囲として設定して、電気信号等の測定情報が当該基準範囲外となったときに異常状態を検知することができる。
【0030】
或いは、複数の種類の測定情報を用いて異常状態を検知する場合には、上記の様に収集された正常値の分布(二次元、三次元、或いは、四次元以上)のパターン又は範囲を学習させて、異常診断時に得られた測定情報(実績値)と正常値(学習値)との間でのデータパターンの相関係数が予め定められた基準値以下となった場合に、異常状態を検知することができる。
【0031】
この様な学習によって基準範囲を設定することで、負荷回路を更新した場合等においても基準範囲を適切に修正することが可能となる。
【0032】
図2には、実施の形態1に係る開閉装置10aが開路状態から閉路状態へ移行する際、即ち、閉路動作時の制御動作を説明する波形図である。
【0033】
図2を参照して、開閉装置10aは、時刻t1において、電気接点21、転流開閉部22、及び、電流開閉部50の全てがオフされた状態である。開閉指令部25は、開閉装置10aに対して閉路動作が指示されると、まず、時刻t2において、電気接点21及び転流開閉部22をオフに維持する一方で、電流開閉部50をオンする。これにより、
図1では、ノードN1及びN2の間に、電気抵抗31及び電流開閉部50を経由する電流経路が形成される。この状態で、時刻t3において、事故検知部40の出力に基づく異常診断Aが行われる。
【0034】
開閉指令部25は、異常診断Aにおいて、異常状態が検知されないと、時刻t4において、電気接点21をオフに維持する一方で、転流開閉部22を更にオンする。この状態で、時刻t5において、事故検知部40の出力に基づく異常診断Bが行われる。開閉指令部25は、異常診断Bにおいて、異常状態が検知されない場合には、時刻t6において、更に電気接点21をオンする。
【0035】
更に、時刻t7では、開閉指令部25は、電気接点21をオンに維持したままで、転流開閉部22をオフしてもよい。例えば、転流開閉部22が半導体スイッチによって構成される場合には、時刻t7において、転流開閉部22をオフすることが好ましい。正常な閉路動作後の定常的な閉路状態として、低インピーダンスの電気接点21と、オン状態の電流開閉部50とによって、ノードN1及びN2の間に電流経路が形成される。一方で、転流開閉部22が、有接点の構成、即ち、電気接点を含んで構成される場合には、時刻t7以降において、転流開閉部22をオンに維持してもよい。又、転流開閉部22が半導体スイッチによって構成される場合においても、時刻t7において、転流開閉部22をオンに維持することが可能である。いずれにしても、定常的な閉路状態では、電気接点21のオンを伴ってノードN1及びN2の間に電流経路が形成される。定常的な閉路状態から過電流が発生した場合には、電流開閉部50の開路によって、事故電流を遮断することができる。
【0036】
図3は、
図2に示された閉路動作のための制御処理を説明するフローチャートである。
図3に示された制御処理は、開閉装置10aに閉路動作が指令されると、例えば、開閉指令部25によって実行される。
【0037】
図3を参照して、開閉指令部25は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110では、電流開閉部50をオンする。S110の処理は、
図2の時刻t2で行われる。これにより、開閉装置10a(
図1)では、オン状態の電流開閉部50及び電気抵抗31を経由して、ノードN1及びN2の間に電流経路が形成される。これにより、ノードN1及びN2の間に「第1の状態」が形成される。即ち、
図3の制御処理では、ノードN1及びN2間のインピーダンスの「第1の値」は、電流開閉部50のオン抵抗、及び、電気抵抗31の和に相当する。
【0038】
この状態から、開閉指令部25は、S120により、
図2の時刻t3と同様に、異常診断Aを実行する。即ち、S120では、事故検知部40の出力に基づいて、異常状態が検知されるか否かが判定される。異常状態が検知された場合には、処理はS180に進められて、S110でオンされた電流開閉部50がオフされる。この際に、電流開閉部50を通過する電流は電気抵抗31によって限流されているため、容易に電流を遮断することができる。そして、異常状態が発生しているため、電流開閉部50、並びに、スイッチ部20を構成する電気接点21及び転流開閉部22がオフした状態で、閉路動作は終了される。
【0039】
一方で、開閉指令部25は、S120による判定(異常診断A)で異常状態が検知されない場合には、S130により、
図2の時刻t4と同様に、電気接点21のオフを維持する一方で、転流開閉部22をオンする。これにより、開閉装置10a(
図1)では、転流開閉部22のオン抵抗は、電気抵抗31の抵抗値よりも大幅に低いため、オン状態の電流開閉部50及び転流開閉部22を経由して、ノードN1及びN2の間に電流経路が形成される。
【0040】
この状態から、開閉指令部25は、S140により、
図2の時刻t5と同様に、異常診断Bを実行する。S140においても、事故検知部40の出力に基づいて、異常状態が検知されるか否かが判定される。異常状態が検知された場合には、処理はS170及びS180に進められる。開閉指令部25は、S170では、S130でオンした転流開閉部22をオフし、S180では、上述の様に、S110でオンされた電流開閉部50をオフする。これにより、異常発生時には、電流開閉部50、並びに、スイッチ部20を構成する電気接点21及び転流開閉部22がオフした状態で、閉路動作が終了される。尚、S170及びS180の処理は、同時に実行されても良く、或いは、S180が先に実行されてもよい。
【0041】
通電回路での事故の種類によっては、電気抵抗31に事故電流が通過するケースでは、事故検知部40が検知する情報の変化が小さくなることがある。転流開閉部22がオンされる異常診断Bでは、事故電流に対する電気抵抗31の影響が小さくなるので、異常診断Aでは検知できなかった異常についても検出することが可能となる。特に、転流開閉部22が半導体スイッチで構成される場合には、電流が大きく上昇する前にターンオフ動作することが可能であるので、異常発生時にもアークを発生させることなく、通電回路を開路することができる。
【0042】
一方で、開閉指令部25は、S140による判定(異常診断B)で異常状態が検知されない場合には、S150により、
図2の時刻t6と同様に、電気接点21を更にオンする。その後、開閉指令部25は、S160により、
図2の時刻t7と同様に、転流開閉部22をオフする。これにより、開閉装置10aは、閉路動作後の定常的な閉路状態では、電気接点21及び電流開閉部50によって、ノードN1及びN2の間に低インピーダンスの電流経路を形成することができる。上述の様に、転流開閉部をオフするS160の処理は、省略されてもよい。
【0043】
この様にして、異常診断A及び異常診断Bによって異常状態が検知されない場合には、ノードN1及びN2の間に「第2の状態」が形成される。即ち、
図3の制御処理では、ノードN1及びN2間のインピーダンスの「第2の値」は、電流開閉部50のオン抵抗値と、電気接点21のオン抵抗値、又は、電気接点21及び転流開閉部22のオン抵抗を並列接続した抵抗値との和に相当する。即ち、第2の状態において、ノードN1及びN2間のインピーダンスは、第1の状態でのインピーダンス以下となる。又、第2の状態では、第1の状態から、スイッチ部20の構成素子のオンオフ状態が変化する。
【0044】
尚、実施の形態1では、電流開閉部50が配置されるため、電気接点21及び転流開閉部22のうちの一方のみで、スイッチ部20を構成することも可能である。
【0045】
図4は、スイッチ部20が電気接点21及び転流開閉部22のうちの一方のみで構成された場合での閉路動作の制御処理を説明するフローチャートである。
図4に示された制御処理についても、開閉装置10aに閉路動作が指令されると、例えば、開閉指令部25によって実行される。
【0046】
図4を参照して、開閉指令部25は、
図3と同様のS110により電流開閉部50をオンすると、
図3と同様のS120により、事故検知部40の出力に基づく異常診断Aを実行する。異常診断Aで異常状態が検知された場合には、処理はS180に進められる。S180では、S110でオンされた電流開閉部50がオフされることで、電気抵抗31によって限流された事故電流が遮断され、電流開閉部50,並びに、スイッチ部20を構成する電気接点21又は転流開閉部22の両方がオフされた状態で、閉路動作が終了される。
【0047】
即ち、
図4の制御処理においても、電流開閉部50のオンによりノードN1及びN2の間に「第1の状態」が形成される。即ち、ノードN1及びN2間のインピーダンスの「第1の値」は、電流開閉部50のオン抵抗、及び、電気抵抗31の和に相当する。
【0048】
一方で、開閉指令部25は、S120による判定(異常診断A)で異常状態が検知されない場合には、S132により、スイッチ部20を構成する電気接点21又は転流開閉部22をオンする。これにより、開閉装置10a(
図1)では、オン状態の電流開閉部50及びスイッチ部20(電気接点21又は転流開閉部22)を経由して、ノードN1及びN2の間に電流経路が形成される。
【0049】
この状態から、開閉指令部25は、
図3と同様のS140により、事故検知部40の出力に基づく異常診断Bを実行して、異常状態が検知された場合には、処理をS172及びS180に進める。開閉指令部25は、S172では、S132でオンした電気接点21又は転流開閉部22(即ち、スイッチ部20)をオフし、S180では、上述の様に、S110でオンされた電流開閉部50をオフする。これにより、異常発生時には、電流開閉部50,並びに、スイッチ部20の両方がオフされた状態で、閉路動作が終了される。
図2と同様に、S170及びS180の処理は、同時に実行されても良く、S180が先に実行されてもよい。尚、スイッチ部20が電気接点21のみで構成される場合には、S180を先に実行して、電流開閉部50が電気接点21よりも先にオフされる方が、アークの発生を防止する観点からは好ましい。
【0050】
開閉指令部25は、S140による判定(異常診断B)で異常状態が検知されない場合には、異常診断Bでの状態、即ち、電流開閉部50と、スイッチ部20(電気接点21又は転流開閉部22)とがオンされた状態を維持する。この結果、開閉装置10aは、閉路動作後の定常的な閉路状態を形成する。これにより、ノードN1及びN2の間に「第2の状態」が形成される。即ち、ノードN1及びN2間のインピーダンスの「第2の値」は、電流開閉部50のオン抵抗と、スイッチ部20(電気接点21又は転流開閉部22)のオン抵抗との和に相当する。
【0051】
この様に、本実施の形態に係る開閉装置では、閉路動作時において、ノードN1及びN2間のインピーダンスが定常的な閉路状態時よりも高い状態を形成する様に複数の開閉素子を制御した下で異常診断を実行して、当該異常診断において異常が検知されないときに、当該複数の開閉素子による定常的な閉路状態を形成する様に複数の開閉素子を制御する。これにより、短絡等の異常が発生した回路を閉路した場合にも、過大電流の発生、及び、構成部品の破損を防止することができる。
【0052】
特に、実施の形態1に係る開閉装置10aでは、最初に電気抵抗31を経由する経路を形成することで、限流効果を得ることができるので、短絡などの異常が発生している電気回路を閉路した場合においても、過大な電流を発生させることなく、異常状態の検知に応じて、電流開閉部50による開路を実現することができる。
【0053】
更に、スイッチ部20が並列接続された電気接点21及び転流開閉部22を含む構成では、
図2に示した順序に従って電気接点21及び転流開閉部22の開閉を制御することで、スイッチ部20を用いた異常診断(異常診断B)では転流開閉部22による遮断容量を活用するとともに、定常的な閉路状態では、電気接点21の低インピーダンス特性を活用することができる。
【0054】
又、負荷回路の種類によっては、起動時のみ、即ち、電気回路の閉路直後の一定期間のみで電流が大きくなる等で時限的に異常状態が検知される可能性がある。例えば、モータ等の起動後にインピーダンス又はリアクタンスが変動する負荷と、電源とを開閉装置によって接続した場合には、閉路直後のみに大きな始動電流が流れるケースがある。この様なケースに対応するために、異常診断A(
図3,4のS120)については、予め定められた待機時間にわたって事故検知部40の出力を監視し、当該待機時間の経過後における異常状態の検知有無に応じて、S180、又は、S130(S132)への分岐を判断する様に、電流開閉部50及びスイッチ部20の開閉制御を行うことも可能である。この様にすると、上記始動電流を異常と判定しないようにして、開閉装置の閉路動作を行うことができる。
【0055】
図1に示された転流開閉部22は、上述した半導体スイッチの他、
図5に示される様に、高融点の電気接点と、アークシュートとの組み合わせによっても構成することが可能である。
【0056】
図5を参照して、変形例に係る転流開閉部22Xは、ケース111に格納された、耐熱接点114と、アークシュート120とを含む。耐熱接点114は、銀及び銅よりも高融点の物質(例えば、タングステン、又は、ニッケル合金等)によって形成される。これに対して、電気接点21は、代表的な低電気抵抗率の物質である銀或いは銅、又は、これらの合金によって形成することができる。
【0057】
ケース111には、耐熱接点114を開閉するための、可動電極112、固定電極113、及び、電極操作部118が収納される。更に、ケース111の外部から電気的にコンタクト可能な端子115~117が配置される。端子115は、
図1における転流開閉部22の電源側の端子に相当する。端子116及び117は、
図1における転流開閉部22の負荷側の端子であり、端子116は、事故検知部40と接続される一方で、端子117は、電気抵抗31と接続される。
【0058】
アークシュート120は、耐熱接点114のオンオフ時に発生するアークを消弧させるための機械的機構として、一対のアークランナ121A,121B、及び、消弧部122を有する。
【0059】
端子115から、転流開閉部22に大きな電流が導入されると、当該電流によって生じる電磁力によって、可動電極112は自動的に固定電極113から開離する。可動電極112の開離に応じて電極間に発生したアークは、当該電極からの磁界作用によってアークシュート120側へ駆動される。
【0060】
この様なアークの駆動後、アークランナ121Bにアークが転流されることにより、アークランナ121B、電極操作部118、及び、端子116を介して、負荷回路側に電流が流れる。この際に、電極操作部118は、電磁力によって、可動電極112の開極を保持する様に動作する。
【0061】
この様なアークランナ121A及び121B間へのアークの駆動後、アークの放電抵抗の効果により、電流は、端子116(事故検知部40)側から、端子117(電気抵抗31)側へ移行し始め、時間経過に応じて、電気抵抗31に電流が流れる様に完全に転流される。この際に、電気抵抗31を経由した電流は、端子117、電極操作部118、及び、端子116を経由して負荷回路側に流れる様になる。これにより、大電流の通過に対して、電流を抑制した上で、転流開閉部22を開放(オフ)することができる。
【0062】
図5に示された転流開閉部22Xでは、上記動作原理により、異常判断は可動電極112又は固定電極113を通過する電流の大きさに基づいて実行されることになる。即ち、転流開閉部22Xは、予め定められた大きさ以上の電流が流れる場合には、異常と判断して、自動的にオフ動作を実行する。
【0063】
又、前記転流開閉部22Xでは、図示しない外部回路と接続することで手動でのオンオフ動作も可能である。即ち、当該外部回路と端子116及び端子117とを接続して通電することにより、電極操作部118を用いた可動電極の開閉制御が可能となる。例えば、
図3のS130及び
図4のS172では、この様な外部回路を用いて電極操作部118に電流を流すことで、転流開閉部22Xをオンするトリガを与えることができる。
【0064】
この様にして、
図5に示された転流開閉部22Xは、アーク放電を高抵抗化するためのアークシュート120を具備することで、異常診断Bでの異常状態の検知時における遮断容量を確保することができる。これにより、
図3及び
図4に示された開閉制御において、S170又S172における転流開閉部22のオフ動作を実現することができる。
【0065】
又、
図1に示された開閉装置10aでは、事故検知部40は、スイッチ部20よりも負荷側(即ち、ノードN2側)に配置されている。これにより、事故検知部40がスイッチ部20よりも電源側(即ち、ノードN1側)配置された構成と比較して、事故検知部40における電圧、電流、電気抵抗等の電気信号の変化が大きくなる。この結果、異常診断時における異常状態の検知が容易となる。
【0066】
或いは、
図6に示される様に、事故検知部40の配置個所を
図1から変形することも可能である。
【0067】
図6を参照して、実施の形態1の変形例に係る開閉装置10bでは、事故検知部40は、電気抵抗31の負荷回路側(ノードN2側)において、電気抵抗31と接続され、かつ、スイッチ部20に対して並列接続される。
【0068】
変形例に係る開閉装置10bでは、事故検知部40は、上述した電圧、電流、電気抵抗等の電気信号の他に、電気抵抗31の温度上昇量、又は、通過電流の二乗の積算値によって示される電気抵抗31での吸収エネルギ量に基づいて、異常状態を検知することができる。この結果、電気抵抗31の溶損等による故障を未然に防止する様に、
図3又は
図4に示された開閉制御を行うことが可能となる。
【0069】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係る開閉装置10cの構成例を説明する概念的な回路図である。
【0070】
図7を参照して、開閉装置10cは、スイッチ部20と、開閉指令部25と、電流抑制素子30としての電気抵抗31と、事故検知部40とを備える。スイッチ部20は、並列接続された、実施の形態1と同様の電気接点21及び転流開閉部22を含む。電気接点21及び転流開閉部22は、開閉指令部25によってオン又はオフされる。この様に、実施の形態1に係る開閉装置10a(
図1)は、実施の形態2に係る開閉装置10cと比較すると、スイッチ部20及びノードN2の間に電流開閉部50を更に備える構成であったことが理解される。
【0071】
実施の形態2に係る開閉装置10cは、電流開閉部50が配置されないため、スイッチ部20は、電気接点21及び転流開閉部22のうちの一方のみでは構成されず、並列接続された電気接点21及び転流開閉部22によって構成される。
【0072】
図8には、実施の形態2に係る開閉装置による閉路動作の制御処理を説明するフローチャートである。
図8に示された制御処理は、開閉装置10cに閉路動作が指令されると、例えば、開閉指令部25によって実行される。
【0073】
図8を参照して、開閉指令部25は、S210により、電気接点21をオフに維持する一方で、転流開閉部22をオンする。これにより、ノードN1及びN2の間に「第1の状態」が形成される。即ち、
図8の制御処理では、ノードN1及びN2間のインピーダンスの「第1の値」は、転流開閉部22のオン抵抗に相当する。
【0074】
開閉指令部25は、S220により、この状態にて異常診断を実行する。即ち、S220では、事故検知部40の出力に基づいて、異常状態が検知されるか否かが判定される。尚、S220においても、実施の形態1でのS120(
図3,
図4)と同様に、予め定められた待機時間の経過後における異常状態の検知有無に応じて、異常及び正常の判断を分岐してもよい。
【0075】
異常状態が検知された場合には、処理はS250に進められて、S210でオンされた転流開閉部22がオフされる。上述の様に、転流開閉部22は、電気接点21とは異なり、ある程度の遮断容量を有する様に構成されている。これにより、異常状態の検知に応じて、転流開閉部22のオン直後の電流が上がりきらない間に、事故電流を遮断することができる。そして、異常状態が発生しているため、電気接点21及び転流開閉部22の両方がオフされた状態で閉路動作は終了される。
【0076】
一方で、開閉指令部25は、S220による判定(異常診断)で異常状態が検知されない場合には、S230により、電気接点21を更にオンする。更に、開閉指令部25は、S240により、転流開閉部22をオフする。尚、S240の処理は、S160(
図3)と同様に、省略されてもよい。
【0077】
この様にして、開閉装置10cは、閉路動作後の定常的な閉路状態では、電気接点21によって、ノードN1及びN2の間に低インピーダンスで、かつ、通電容量が大きい電流経路を形成することができる。これにより、ノードN1及びN2の間に「第2の状態」が形成される。即ち、
図8の制御処理では、ノードN1及びN2間のインピーダンスの「第2の値」は、電気接点21のオン抵抗値、又は、電気接点21及び転流開閉部22のオン抵抗を並列接続した抵抗値に相当する。
【0078】
この様に、実施の形態2に係る開閉装置10cは、実施の形態1に係る開閉装置10aから電流開閉部50を省略した最小限の構成を有するものである。開閉装置10cでは、スイッチ部20の開路時には、電気抵抗31による電流経路が形成される。従って、開閉装置10cは、装置単独での遮断機能は有していないが、ノードN2と接続された負荷回路で短絡等の事故が発生しても、開閉装置10c(電気抵抗31)を流れる電流を抑制することが可能であり、限流機能を有している。
【0079】
又、開閉装置10cは、スイッチ部20による閉路動作時には、転流開閉部22のみがオンした状態での異常診断を実行して、当該異常診断において異常が検知されないときに、電気接点21がオンされる定常的な閉路状態が形成される。これにより、スイッチ部20による閉路に応じて事故による過電流が生じた場合には、転流開閉部22のオフにより事故電流を遮断することができる。当該遮断後には、電気抵抗31による限流効果で、開閉装置10cを流れる電流は抑制される。
【0080】
又、実施の形態2では、事故検知部40については、配置個所における通過電流が、予め定められた基準電流範囲から外れたときに異常を検知する様に構成することが可能である。この場合には、開閉指令部25は、事故検知部40を通過する電流が上記基準電流範囲よりも低い、又は、高いときには、スイッチ部20を開路、即ち、電気接点21及び転流開閉部22の両方をオフする様に動作する。
【0081】
このケースでは、ノードN1に電源が接続されておらず、事故検知部40の電流がゼロで、上記基準電流範囲よりも低い場合には、閉路動作が指令されていない状態となり、S210以降の処理が起動されないことになる。そして、ノードN1及びN2に対して、図示しない電源及び負荷回路がそれぞれ接続されることで、基準電流範囲内の通過電流が事故検知部40を通過すると、開放動作が指令された状態となって、S210以降の処理が起動される。そして、S220での異常診断において、事故検知部40の通過電流が、基準電流範囲よりも高くなると、異常状態が検知されることで、上述の開閉制御が実現できる。
【0082】
実施の形態3.
実施の形態3では、
図9A~
図9Cを用いて、実施の形態1,2でのスイッチ部20の開閉指令部25の変形例を説明する。実施の形態3に係る開閉指令部25Xは、事故検知部40の機能を併有しており、実施の形態1,2での事故検知部40の通過電流に応じて、電気接点21のオンオフを自動的に制御する機構を有する。
【0083】
具体的には、実施の形態3に係る開閉指令部25Xは、事故検知部40の通過電流が、予め定められた基準電流範囲内であるときは、電気接点21をオンする一方で、当該通過電流が上記基準電流範囲よりも低いとき(低電流時)、及び、基準電流範囲よりも高いとき(過電流時)には、電気接点21をオフする。
【0084】
図9Aには、コイル204の通過電流が基準電流範囲よりも低い、低電流時での開閉指令部25Xの状態が示される。
【0085】
図9Aを参照して、実施の形態3に係る開閉指令部25Xは、鉄心201~203及び通電導体(コイル)204によって構成される電磁石26と、連結棒27とを有する。鉄心201及び203は、鉄心
202を挟んで対向配置される。更に、
図9Aの状態において、鉄心201及び202の間、並びに、鉄心202及び203の間には、それぞれ空隙が生じる様に、鉄心201~203は配置される。
【0086】
鉄心201及び202は、電気接点21を構成する第1及び第2の接点(図示せず)の一方ずつとそれぞれ電気的に接続される。鉄心201及び202が接触すると上記第1及び第2の接点間も閉路される一方で、鉄心201及び202の間に空隙が生じているときは、上記第1及び第2の接点間も開路される。コイル204は、事故検知部40と同様の電流が通過する様に配置されている。
【0087】
連結棒27は、固定された鉄心202に設けられた、図示しない穴を貫通して、鉄心201及び203を一体的に連結する。即ち、鉄心201及び203は、固定された鉄心202に対して、コイル204の通過電流によって生じる電磁力に応じて一体的に可動である様に構成されている。
【0088】
コイル204に電流が流れていない状態では、図示しないバネ等による付勢力210が連結棒27に作用することによって、鉄心201及び202の間、並びに、鉄心202及び203の間には、それぞれ空隙が発生する。又、低電流時には、
図9A中に点線で示す磁路が形成されるものの当該磁路の磁力が小さいため、上記空隙を解消する磁力(吸引力)は発生しない。この結果、鉄心201及び202の間の空隙が維持されて、ノードN1及びN2とそれぞれ接続された第1及び第2の接点間も開路状態に維持される。即ち、電気接点21はオフされる。
【0089】
図9Bには、コイル204の通過電流が基準電流範囲
のときの開閉指令部25Xの状態が示される。
【0090】
図9Bに示される様に、
図9Aの状態よりもコイル204の通過電流が大きくなると、鉄心201及び202を通過する磁路250Aが形成される。磁路250Aによって生じる電磁力によって、固定された鉄心202に対する、可動の鉄心201の吸引力221が発生する。これにより、鉄心201及び203と接続された連結棒27には、
図9Aの付勢力210を上回る、図中右方向の駆動力211が作用する。これにより、鉄心201及び202の間の空隙が解消されて、鉄心201及び202が接触することにより、上記第1の接点及び第2の接点の間が閉路される。即ち、電気接点21はオンされる。
【0091】
図9Cには、コイル204の通過電流が基準電流範囲よりも高い、過電流時での開閉指令部25Xの状態が示される。
【0092】
図9Cに示される様に、鉄心202には、断面積が他よりも小さい薄肉部位202♯が設けられており、
図9Bの状態から、コイル204の電流増加に応じて磁路250Aの磁束密度が上昇すると、当該薄肉部位202♯において磁気飽和が発生する。
【0093】
図9Cに示される様に、この様な磁気飽和が発生すると、磁気抵抗が上昇した薄肉部位202♯を避ける様に、磁路250Bが、鉄心201~203を貫通して形成される。当該磁路250Bの形成により、固定された鉄心202に対する、可動の鉄心203の吸引力222が発生する。これにより、鉄心201及び203と接続された連結棒27には、
図9Aの付勢力210と同方向(図中左方向)の駆動力212が作用する。これにより、鉄心202及び203の間の空隙が解消される一方で、鉄心201及び202の間には空隙が発生するので、第1の接点及び第2の接点の間が開路される。即ち、電気接点21はオフされる。
【0094】
図9A~
図9Bにおいて、鉄心201は「第1の鉄心」、鉄心202は「第2の鉄心」、鉄心203は「第3の鉄心」の一実施例にそれぞれ対応する。又、
図9Bに示された駆動力211及び磁路250Aは、「第1の駆動力」及び「第1の磁路」にそれぞれ対応し、
図9Cに示された駆動力212及び磁路250Bは、「第2の駆動力」及び「第2の磁路」にそれぞれ対応する。
【0095】
実施の形態3に係る開閉指令部によれば、開閉装置の通過電流がゼロから上昇して予め定められた基準電流範囲内となると電気接点21をオフからオンに制御するとともに、当該オン時に負荷回路での短絡等の事故発生により過大電流が発生すると、自動的に電気接点21をオフすることができる。即ち、実施の形態3に係る開閉指令部によれば、制御信号の授受を伴わない電気接点21のオンオフ制御によって、実施の形態1,2で説明した開閉装置の閉路動作時における異常診断をハードウェア機構で実現することができる。
【0096】
尚、実施の形態3に係る開閉指令部25Xは、転流開閉部22と並列接続されてスイッチ部20を構成する電気接点21のオンオフ制御に適用される。即ち、転流開閉部22に対しては、実施の形態1,2と同様に転流開閉部22のオンオフを制御するための開閉指令部が配置されており、転流開閉部22をオンした状態での開閉指令部25の動作によって電気接点21のオンオフを自動的に制御することができる。
【0097】
この様に、実施の形態3に係る開閉指令部25Xによって電気接点21のオンオフを自動的に制御する構成としても、実施の形態1,2で説明したのと同様に、閉路動作時におけるスイッチ部20において、転流開閉部22をオンした状態での異常診断を行った上で、定常的な閉路状態時に電気接点21をオンすることができる。
【0098】
実施の形態4.
図10は、実施の形態4に係る開閉装置10dの構成例を説明する概念的な回路図である。
【0099】
図10を参照して、開閉装置10dは、スイッチ部20と、開閉指令部25と、電流抑制素子30としてのエネルギ吸収素子32と、事故検知部40とを備える。スイッチ部20は、並列接続された、実施の形態1と同様の電気接点21及び転流開閉部22を含む。電気接点21及び転流開閉部22は、開閉指令部25によってオン又はオフされる。
【0100】
転流開閉部22は、実施の形態1,2と同様に、半導体スイッチ、又は、電気接点(例えば、
図5)によって構成することが可能である。又、開閉指令部25の機能のうち、電気接点21のオンオフ機能については、実施の形態3(
図9A~
図9C)に係る開閉指令部25Xを適用することも可能である。
【0101】
この様に、実施の形態4に係る開閉装置10dは、実施の形態2に係る開閉装置10c(
図7)と比較して、電流抑制素子30が、電気抵抗31に代えて、エネルギ吸収素子32によって構成される点で異なる。エネルギ吸収素子32は、代表的には、ZnO(酸化亜鉛)等を材料とするバリスタによって構成される。バリスタは、ダイオードの様な、非オーム性及び電圧差吸収能力(即ち、遮断能力)を有しており、スペック値である制限電圧以下の電圧差が両端に印加されても、電流が流れない電圧-電流特性を有する。
【0102】
或いは、エネルギ吸収素子32は、温度上昇に伴って電気抵抗値が上昇するサーミスタ素子によって構成されてもよい。サーミスタ素子は、過電流のエネルギによる発生熱量によって電気抵抗値が上昇することで、等価的に電流遮断能力を有する。
【0103】
開閉装置10dの閉路動作時におけるスイッチ部20の開閉制御は、実施の形態2と同様である。即ち、スイッチ部20を構成する電気接点21及び転流開閉部22のオンオフは、
図8のフローチャートに従って制御することができる。又、異常診断について、実施の形態2で説明した様に、事故検知部40の電流が基準電流範囲内であるか否かを判定する様に実行することも可能である。この場合には、開閉指令部25の機能のうち、電気接点21のオンオフ制御機能については、実施の形態3に係る開閉指令部25Xのハードウェアを用いて実行することが可能である。
【0104】
実施の形態3に係る開閉装置10dは、ノードN1及びN2の間がバリスタ(エネルギ吸収素子)を介して常時接続される構成であるので、スイッチ部20を構成する電気接点21及び転流開閉部22の両方がオフされている場合にも、エネルギ吸収素子32によってノードN1及びN2の間の電流を遮断することができる。即ち、開閉装置10dは、開閉装置10cとは異なり、
図1の電流開閉部50を配置していないにも関わらず、スイッチ部20の開路時にも遮断機能を有している。
【0105】
又、開閉装置10dは、スイッチ部20による閉路動作時には、転流開閉部22のみがオンした状態での異常診断を実行して、当該異常診断において異常が検知されないときに、電気接点21がオンされる定常的な閉路状態が形成される。これにより、スイッチ部20による閉路に応じて事故による過電流が生じた場合には、転流開閉部22のオフにより事故電流を遮断することができる。当該遮断後には、エネルギ吸収素子32(バリスタ)によって、開閉装置10dを流れる電流を遮断することが可能である。
【0106】
実施の形態5.
図11は、実施の形態5に係る開閉装置10eの構成例を説明する概念的な回路図である。
【0107】
図11を参照して、開閉装置10eは、実施の形態4に係る開閉装置10d(
図10)と比較して、スイッチ部20が、半導体スイッチ23のみによって構成される点が異なる。半導体スイッチ23は、ノードN1及びN2の間に接続されて、開閉指令部25からの制御信号に応じてオンオフ制御される。開閉装置10eでは、回路動作時に半導体スイッチ23をオンオフ制御することで、半導体スイッチ23のみでスイッチ部20を構成することが可能となる。
【0108】
図12には、実施の形態5に係る開閉装置の閉路動作時の制御処理例を説明するフローチャートが示される。
図12に示された制御処理は、開閉装置10eに閉路動作が指令されると、例えば、開閉指令部25によって実行される。
【0109】
図12を参照して、開閉指令部25は、S310により、半導体スイッチ23をオンすると、S320により異常診断を実行する。S320では、半導体スイッチ23のオン期間を予め定められた時間長設けるとともに、当該オン期間中において、事故検知部40で検出される半導体スイッチ23の通過電流Iswと、予め定められた判定電流Itとが比較される。S320では、オン期間中にIsw≧Itが検出されると、異常状態が検知される。
【0110】
開閉指令部25は、上述したオン期間の終了時点において、S320による処理を分岐させる。半導体スイッチ23のオン期間中に異常状態が検知されると、処理はS330に進められて、半導体スイッチ23のオフ期間を設けるために、半導体スイッチ23はオフされる。これにより、通過電流Iswは一旦遮断される。この様に、実施の形態5では、半導体スイッチ23のオンオフを繰り返す態様で、異常診断が実行される。即ち、
図12の制御処理では、半導体スイッチ23を繰り返しオンオフするための制御信号を開閉指令部25が生成することによって、ノードN1及びN2の間に「第1の状態」が形成される。
【0111】
開閉指令部25は、S330による半導体スイッチ23のオフに伴って、異常診断のための半導体スイッチ23のオンオフの繰返し回数をカウントし、S340では、当該繰返し回数が予め定められた規定回数未満であるか否かを判定する。当該繰返し回数が規定回数に達するまでの間、S310~S340の処理は繰り返し実行される。代表的には、半導体スイッチ23のオンオフは、スイッチング周期、及び、スイッチング周期に対するオン期間比(デューティ比)を一定として繰り返し設けることができる。或いは、スイッチング周期については、起動時に電流が大きいことを考慮して、起動時に最小として、徐々に長くすることも可能である。
【0112】
繰返し回数が規定回数に達するまでの間に、半導体スイッチ23のオン期間の通過電流Iswが判定電流Itよりも上昇しなくなると、即ち、S320の異常診断で異常状態が検出されなくなると、開閉指令部25は、S330及びS340の処理をスキップして、開閉装置10eの閉路動作を終了する。これにより、半導体スイッチ23がオン状態に維持されて閉路動作が終了されることで、開閉装置10eによる定常的な閉路状態が形成される。即ち、
図12の制御処理では、半導体スイッチ23をオンに維持するための制御信号を開閉指令部25が生成することによって、ノードN1及びN2の間に、等価的なインピーダンスが「第1の状態」よりも低い「第2の状態」が形成される。
【0113】
これに対して、繰返し回数が規定回数に達しても、半導体スイッチ23のオン期間の通過電流Iswが判定電流It以上になる状態、即ち、異常状態の検出が継続した場合には、S340がYES判定とされて、半導体スイッチ23がオフ状態のままで、開閉装置10eの閉路動作は終了される。即ち、異常状態が発生しているため、半導体スイッチ23がオフされた状態で、閉路動作は終了される。
【0114】
図13には、実施の形態5に係る開閉装置における半導体スイッチの動作波形図の一例が示される。
【0115】
図13を参照して、半導体スイッチ23のオンオフを繰り返して異常診断を行うことにより、短絡等の異常発生時においても、通過電流Iswが上昇する途中で半導体スイッチ23がオフされることにより、閉路動作時に大電流が通過することを防止できる。
【0116】
又、モータ等の負荷回路では、回転数が低い起動時には、負荷インピーダンスが低く、回転数が上昇に伴って負荷インピーダンスが上昇して、開閉装置の通過電流も低下する現象が発生する。この場合には、短絡等の異常が発生していない正常状態でも大きな突入電流が発生する。正常時には、突入電流による過電流状態は時間経過と共に解消するが、異常発生時には、過電流状態が継続することになる。
【0117】
従って、
図12のS340での規定回数は、正常状態で突入電流が解消される時間長に対応する待機時間に従って、即ち、ノードN2に接続される負荷回路(図示せず)の特性に従って予め定めることができる。突入電流が発生せず始動電流がそれ程大きくない負荷回路に対して開閉装置10dが配置された場合には、上記規定回数を少なくすることにより、閉路動作を早期に完了することができる。
【0118】
この様に規定回数を定めることで、正常状態での突入電流に対しては、突入電流の解消後に開閉装置10eを定常的な閉路状態とすることができる。この際に、半導体スイッチ23をオンオフすることで、突入電流の大きさも抑制することができる。一方で、短絡等の異常に起因する過電流の発生時には、開閉装置10eを開放する様に異常診断が行われる。尚、上記規定回数は、上述した負荷回路の特性に従う待機時間と、異常診断での半導体スイッチ23のスイッチング周期とから求めることができる。従って、S340でのオンオフ繰返し回数と規定回数との比較は、閉路動作開始からの経過時間及び上記待機時間の比較と等価である点について、確認的に記載する。
【0119】
上述した様に、実施の形態5に係る開閉装置10eによれば、大きな起動電流が発生する特性を有する負荷回路を電源に接続する際に、異常状態を適切に検知する異常診断を伴って、閉路動作を実行することができる。更に、正常時の起動電流を含めて、閉路動作時に開閉装置10eを通過する電流を抑制することができるので機器保護の効果を高めることができる。
【0120】
尚、実施の形態5で説明した、半導体スイッチ23を繰り返しオンオフさせる異常診断(
図12,
図13)は、実施の形態4に係る開閉装置10d(
図10)において、転流開閉部22が半導体スイッチで構成された際における、電気接点21をオフする一方で転流開閉部22(半導体スイッチ)をオンした状態で実行される異常診断(
図8のS210,S220相当)に適用することも可能である。
【0121】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
10a~10e 開閉装置、20 スイッチ部、21 電気接点、22,22X 転流開閉部、23 半導体スイッチ、25,25X 開閉指令部、30 電流抑制素子、31 電気抵抗、32 エネルギ吸収素子、40 事故検知部、50 電流開閉部、111 ケース、112 可動電極、113 固定電極、114 耐熱接点、115~117 端子、118 電極操作部、120 アークシュート、121A,121B アークランナ、122 消弧部、201~203 鉄心、202♯ 薄肉部位、204 コイル、205 連結棒、210 付勢力、211,212 駆動力、221,222 吸引力、250A,250B 磁路、Isw 通過電流(半導体スイッチ)、It 判定電流、N1,N2 ノード。