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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】乗客コンベアの床板装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/00 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
B66B23/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024031793
(22)【出願日】2024-03-04
【審査請求日】2024-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垰 敦義
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-093869(JP,A)
【文献】特開2003-081566(JP,A)
【文献】特開平07-157257(JP,A)
【文献】特開平08-188365(JP,A)
【文献】特開2009-249133(JP,A)
【文献】特開平06-322964(JP,A)
【文献】特開2008-095373(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0320444(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラスにおける機械室の上部に形成されている開口部を覆う覆い位置と前記開口部を開放する開放位置との間で変位可能な可動床板と、
前記トラスに対して固定されており、長穴が設けられている固定ガイド部材と、
前記固定ガイド部材に取り付けられており、前記固定ガイド部材に対して前記長穴に沿った方向へ前記長穴をスライド可能なスライド部材と、
前記可動床板と前記スライド部材とを連結しており、前記固定ガイド部材に対する前記スライド部材のスライドに応じて前記可動床板を前記覆い位置と前記開放位置との間で変位させる連結部材と、
前記スライド部材に接続されているワイヤと、
前記トラスに対して固定されており、前記ワイヤの巻き取り及び繰り出しを行う巻取装置と
を備え、
前記可動床板は、前記覆い位置から前記機械室の外側へ前記トラスに対して回転することにより前記開放位置に向かって変位され、
前記巻取装置が前記ワイヤを巻き取る方向へ前記スライド部材が前記固定ガイド部材に対して前記長穴をスライドすることにより、前記可動床板が前記覆い位置から前記開放位置に向かって変位される乗客コンベアの床板装置。
【請求項2】
前記可動床板が前記覆い位置に位置している状態で前記機械室の内部を向くように前記可動床板に形成された梯子設置面に梯子軸を介して設けられた梯子を備え、
前記梯子は、複数のステップ部材を含む梯子部材を有しており、
前記複数のステップ部材は、前記梯子軸の軸線と直交する前記梯子部材の長手方向において互いに間隔をあけて配置されており、
前記梯子は、前記梯子軸を中心として前記可動床板に対して回転して前記梯子の向きが反転することにより、前記梯子設置面に重なる収容位置と、前記可動床板から突出する突出位置との間で前記可動床板に対して変位可能になっており、
前記梯子部材の長手方向における前記梯子の一端部は、前記梯子軸に設けられており、
前記梯子は、前記可動床板が前記開放位置に位置している状態で、前記梯子部材の長手方向における前記梯子の他端部が前記梯子の一端部よりも前記機械室から遠い側になるように前記梯子軸を中心として前記可動床板に対して回転することにより、前記収容位置に変位され、
前記梯子は、前記可動床板が前記開放位置に位置している状態で、前記梯子部材の長手方向における前記梯子の他端部が前記梯子の一端部よりも前記機械室に近い側になるように前記梯子軸を中心として前記可動床板に対して回転することにより、前記突出位置に変位され、
前記可動床板が前記開放位置に位置している状態では、前記梯子が前記収容位置から前記突出位置へ変位されることにより、前記梯子が前記可動床板から前記機械室の内部に向けて突出する請求項1に記載の乗客コンベアの床板装置。
【請求項3】
前記梯子は、前記梯子軸から順次スライド可能に連結された複数の前記梯子部材を有しており、
前記梯子は、前記複数の梯子部材が互いにスライドすることにより伸縮する請求項2に記載の乗客コンベアの床板装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアの床板装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エスカレータの保守点検作業の際に、マンホールを覆うマンホールカバーをマンホールの内部に落とし込んでマンホールを開放するようにしたエスカレータのマンホールカバー装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-73162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1に開示された従来のエスカレータのマンホールカバー装置では、マンホールカバーをマンホールの内部に落とし込むため、マンホールの内部の空間がマンホールカバーによって狭くなってしまう。これにより、マンホールの内部における保守点検作業の作業効率が低下してしまう。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、保守点検作業の作業効率の低下を抑制することができる乗客コンベアの床板装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る乗客コンベアの床板装置では、トラスにおける機械室の上部に形成されている開口部を覆う覆い位置と開口部を開放する開放位置との間で変位可能な可動床板と、トラスに対して固定されており、長穴が設けられている固定ガイド部材と、固定ガイド部材に取り付けられており、固定ガイド部材に対して長穴に沿った方向へ長穴をスライド可能なスライド部材と、可動床板とスライド部材とを連結しており、固定ガイド部材に対するスライド部材のスライドに応じて可動床板を覆い位置と開放位置との間で変位させる連結部材と、スライド部材に接続されているワイヤと、トラスに対して固定されており、ワイヤの巻き取り及び繰り出しを行う巻取装置とを備え、可動床板は、覆い位置から機械室の外側へトラスに対して回転することにより開放位置に向かって変位され、巻取装置がワイヤを巻き取る方向へスライド部材が固定ガイド部材に対して長穴をスライドすることにより、可動床板が覆い位置から開放位置に向かって変位される。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る乗客コンベアの床板装置によれば、保守点検作業の作業効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る乗客コンベアとしてのエスカレータを示す構成図である。
図2図1の下部床板装置を示す上面図である。
図3図2の矢印IIIに沿って見たときの下部床板装置を示す正面図である。
図4図2のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図2のV-V線に沿った断面図である。
図6図2のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図6の可動床板が覆い位置と開放位置との中間の位置に位置している状態を示す一部破断断面図である。
図8図6の巻取装置を示す拡大断面図である。
図9図2のIX-IX線に沿った断面図である。
図10図7の可動床板が開放位置に位置している状態を示す一部破断断面図である。
図11図10の梯子が突出位置に位置し、かつ梯子の状態が伸長状態となっているときの下部床板装置を示す一部破断断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の対象を実施するための形態について添付の図を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本開示の対象は、以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、又は実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る乗客コンベアとしてのエスカレータを示す構成図である。図において、下階と上階との間には、トラス1が設置されている。トラス1は、複数のアングル材によって構成された枠体である。トラス1の長手方向一端部は、下階における不図示の構造物にトラス1の下端部として掛けられている。トラス1の長手方向他端部は、上階における不図示の構造物にトラス1の上端部として掛けられている。トラス1の幅方向は、トラス1の長手方向に直交する水平な方向と一致している。
【0011】
トラス1の下端部には、下部機械室11が設けられている。下部機械室11の上部には、下部床板装置2が設けられている。下部床板装置2は、下階におけるエスカレータの下部乗降口の床としてトラス1に支持された床板装置である。
【0012】
トラス1の上端部には、上部機械室12が設けられている。上部機械室12の上部には、上部床板装置3が設けられている。上部床板装置3は、上階におけるエスカレータの上部乗降口の床としてトラス1に支持された床板装置である。
【0013】
下部機械室11の内部には、下部スプロケット4が機械室内機器として設けられている。上部機械室12の内部には、上部スプロケット5と、不図示の駆動機と、不図示の制御盤とが機械室内機器として設けられている。
【0014】
トラス1には、複数の踏段6が支持されている。複数の踏段6は、踏段チェーン7によって無端状に連結されている。踏段チェーン7は、下部スプロケット4及び上部スプロケット5に巻き掛けられている。
【0015】
駆動機は、各踏段6を循環移動させる駆動力を発生する。制御盤は、駆動機を制御する。上部スプロケット5は、駆動機の駆動力を受けることにより回転する。各踏段6は、上部スプロケット5の回転によって下部機械室11と上部機械室12との間で循環移動する。
【0016】
トラス1上には、トラス1の幅方向において互いに対向する一対の欄干8が設けられている。各欄干8の周縁部には、無端状の移動手摺9が個別に設けられている。各移動手摺9は、駆動機の駆動力により、各踏段6と同期して各欄干8の周縁部を移動する。
【0017】
図2は、図1の下部床板装置2を示す上面図である。図3は、図2の矢印IIIに沿って見たときの下部床板装置2を示す正面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿った断面図である。図5は、図2のV-V線に沿った断面図である。下部機械室11の上部には、第1支持梁13及び第2支持梁14が配置されている。第1支持梁13及び第2支持梁14のそれぞれは、トラス1に固定されている。
【0018】
第1支持梁13及び第2支持梁14は、トラス1の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。第1支持梁13及び第2支持梁14のそれぞれは、トラス1の幅方向に沿って配置されている。第2支持梁14は、トラス1の長手方向において第1支持梁13よりもトラス1の中間部に近い位置に配置されている。第1支持梁13は、下部機械室11の上部に形成された開口部の縁に配置されている。
【0019】
下部床板装置2は、第1支持梁13及び第2支持梁14を介してトラス1に支持されている。下部床板装置2は、図2に示すように、一対の固定床板21と、可動床板22と、一対の可動機構部23と、操作機構部24と、梯子25とを有している。
【0020】
一対の固定床板21は、第1支持梁13及び第2支持梁14に支持された状態でトラス1に固定されている。固定床板21は、下部機械室11を上方から見たとき、トラス1の幅方向における下部機械室11の両端部にそれぞれ配置されている。
【0021】
可動床板22は、一対の固定床板21の間に配置されている。可動床板22における第1支持梁13側の端部には、図2に示すように、一対の床板軸221が固定されている。一対の床板軸221は、トラス1の幅方向における可動床板22の両外側へ可動床板22から突出している。一対の床板軸221は、トラス1の幅方向に沿った1つの軸線上に位置している。
【0022】
第1支持梁13には、一対の回転支持部材15が固定されている。一対の回転支持部材15は、下部機械室11の上部に形成された開口部の縁に設けられている。一対の回転支持部材15は、トラス1の幅方向において可動床板22の両側に位置している。一対の回転支持部材15は、一対の床板軸221に対応して配置されている。各床板軸221は、対応する回転支持部材15に設けられている。これにより、可動床板22は、各床板軸221を介して一対の回転支持部材15に支持されている。
【0023】
図6は、図2のVI-VI線に沿った断面図である。可動床板22は、回転支持部材15に設けられた床板軸221の軸線を中心としてトラス1に対して回転可能になっている。可動床板22は、トラス1に対する可動床板22の回転角度の変化により、覆い位置と開放位置との間で変位可能になっている。覆い位置は、下部機械室11の上部に形成された開口部を覆う可動床板22の位置である。開放位置は、下部機械室11の上部に形成された開口部を開放する可動床板22の位置である。なお、図6では、可動床板22が覆い位置に位置している状態が示されている。以下、下部機械室11の上部に形成された開口部を「下部機械室11の上部開口部」と呼ぶ。
【0024】
可動床板22が覆い位置に位置している状態では、一対の固定床板21の間において可動床板22が下部機械室11の上部開口部を覆っている。可動床板22が覆い位置に位置している状態では、可動床板22が第1支持梁13及び第2支持梁14のそれぞれに支持されている。
【0025】
可動床板22が開放位置に位置している状態では、可動床板22が覆い位置よりも下部機械室11の外側に位置している。これにより、可動床板22は、覆い位置から下部機械室11の外側へトラス1に対して回転することにより開放位置に向かって変位される。本実施の形態では、可動床板22がトラス1に対して上方へ回転することにより、可動床板22が覆い位置から開放位置に向かって変位される。可動床板22が開放位置に位置している状態では、一対の固定床板21の間において下部機械室11の上部開口部が開放されている。可動床板22が開放位置に位置している状態では、可動床板22が第2支持梁14から離れている。
【0026】
一対の可動機構部23は、図2に示すように、トラス1の幅方向における可動床板22の両側に設けられている。各可動機構部23は、固定ガイド部材231と、スライド部材232と、連結部材233とを有している。一対の可動機構部23のうち、一方の可動機構部23における固定ガイド部材231は一方の固定床板21に固定されており、他方の可動機構部23における固定ガイド部材231は他方の固定床板21に固定されている。従って、各固定ガイド部材231は、トラス1に対して固定されている。
【0027】
固定ガイド部材231は、床板軸221の軸線に対して直交する平面上に配置された板である。固定ガイド部材231には、図6に示すように、長穴234が設けられている。本実施の形態では、長穴234がトラス1の長手方向に沿って各固定ガイド部材231に設けられている。長穴234の両端部のうち、長穴234の一端部は長穴234の他端部よりも床板軸221に近い位置に位置している。長穴234は、固定ガイド部材231を貫通している。
【0028】
スライド部材232は、長穴234に挿入された状態で固定ガイド部材231に取り付けられている。スライド部材232は、固定ガイド部材231に対して長穴234に沿った方向へ長穴234をスライド可能になっている。床板軸221からスライド部材232までの距離は、スライド部材232が固定ガイド部材231に対してスライドすることにより変化する。
【0029】
ここで、図7は、図6の可動床板22が覆い位置と開放位置との中間の位置に位置している状態を示す一部破断断面図である。連結部材233は、可動床板22とスライド部材232とを連結している。連結部材233の一端部は、スライド部材232に回転可能に取り付けられている。連結部材233の他端部は、可動床板22に固定された突起222を介して可動床板22に回転可能に取り付けられている。突起222は、トラス1の幅方向における可動床板22の側部に固定されている。各可動機構部23では、トラス1に対する可動床板22の回転角度の変化に応じて連結部材233が連動しながら、スライド部材232が固定ガイド部材231に対してスライドする。
【0030】
各可動機構部23において床板軸221に近づく方向へスライド部材232が固定ガイド部材231に対してスライドすると、連結部材233が可動床板22を押し上げながら、可動床板22が覆い位置から開放位置に向かって変位する。また、各可動機構部23において床板軸221から遠ざかる方向へスライド部材232が固定ガイド部材231に対してスライドすると、連結部材233が可動床板22を支えながら、可動床板22が開放位置から覆い位置に向かって変位する。従って、連結部材233は、固定ガイド部材231に対するスライド部材232のスライドに応じて、可動床板22をトラス1に対して回転させる。
【0031】
可動床板22が覆い位置に位置している状態では、図6に示すように、突起222の中心位置が長穴234の中心線よりも高い位置となっている。これにより、床板軸221に近づく方向へスライド部材232が固定ガイド部材231に対してスライドするときに、連結部材233が可動床板22を押し上げやすくなる。
【0032】
操作機構部24は、ワイヤ241と、巻取装置242とを有している。ワイヤ241は、一方の可動機構部23におけるスライド部材232に接続されている。
【0033】
巻取装置242は、ワイヤ241の巻き取り及び繰り出しを行う装置である。巻取装置242は、一方の固定床板21に固定されている。これにより、巻取装置242は、トラス1に対して固定されている。巻取装置242は、固定ガイド部材231よりも床板軸221に近い位置に配置されている。
【0034】
スライド部材232は、巻取装置242がワイヤ241を巻き取ることにより、可動床板22の重量に逆らって床板軸221に近づく方向へ固定ガイド部材231に対して長穴234をスライドする。これにより、可動床板22は、覆い位置から開放位置に向かって変位される。即ち、巻取装置242がワイヤ241を巻き取る方向へスライド部材232が固定ガイド部材231に対して長穴234をスライドすることにより、可動床板22が覆い位置から開放位置に向かって変位される。
【0035】
スライド部材232は、巻取装置242がワイヤ241を繰り出すことにより、可動床板22の重量を受けながら床板軸221から遠ざかる方向へ固定ガイド部材231に対して長穴234をスライドする。これにより、可動床板22は、開放位置から覆い位置に向かって変位される。即ち、巻取装置242がワイヤ241を繰り出す方向へスライド部材232が固定ガイド部材231に対して長穴234をスライドすることにより、可動床板22が開放位置から覆い位置に向かって変位される。
【0036】
巻取装置242は、一方の固定床板21の裏面に固定されている。一方の固定床板21には、巻取装置242の位置に合わせて操作用穴211が設けられている。巻取装置242には、固定床板21の上方から操作用穴211を通して操作具243が嵌るようになっている。操作具243としては、例えば電動モータ付きの操作具が用いられる。巻取装置242は、巻取装置242に嵌った操作具243の回転に応じて、ワイヤ241の巻き取り及び繰り出しを行う。
【0037】
図8は、図6の巻取装置242を示す拡大断面図である。巻取装置242は、ケース244と、巻取軸245と、一対のベアリング246とを有している。
【0038】
ケース244は、固定床板21の裏面に固定された筒状のケースである。ケース244の内部は、操作用穴211を通して固定床板21の上方へ開放されている。
【0039】
巻取軸245は、巻取軸245の軸線方向を上下方向にしてケース244の内部に収容されている。巻取軸245は、一対のベアリング246を介してケース244に回転可能に支持されている。巻取軸245には、ワイヤ241が接続されている。巻取軸245は、ケース244の内部において巻取軸245の軸線を中心として回転することにより、ワイヤ241の巻き取り及び繰り出しを行う。
【0040】
巻取軸245の上端部は、嵌合部245aとなっている。操作用穴211を通してケース244の内部に挿入された操作具243は、嵌合部245aに嵌るようになっている。巻取軸245は、嵌合部245aに嵌った操作具243と一体にケース244に対して回転する。
【0041】
図9は、図2のIX-IX線に沿った断面図である。可動床板22には、梯子設置面22aが形成されている。可動床板22が覆い位置に位置している状態では、梯子設置面22aが下部機械室11の内部に向いている。従って、本実施の形態では、可動床板22が覆い位置に位置している状態において梯子設置面22aが下方に向いている。
【0042】
梯子25は、梯子設置面22aに設けられている。梯子設置面22aには、一対の梯子取付部材223が固定されている。一対の梯子取付部材223は、図2に示すように、トラス1の幅方向における梯子25の両側に配置されている。
【0043】
梯子25には、一対の梯子軸253が設けられている。一対の梯子軸253は、図2に示すように、トラス1の幅方向における梯子25の両外側へ梯子25から突出している。一対の梯子軸253は、トラス1の幅方向に沿った1つの軸線上に位置している。
【0044】
各梯子軸253は、図9に示すように、各梯子取付部材223を介して梯子設置面22aに設けられている。これにより、各梯子軸253は、梯子設置面22aに沿って配置されている。また、各梯子軸253は、床板軸221と平行に配置されている。
【0045】
梯子25は、各梯子軸253を中心として可動床板22に対して回転可能になっている。これにより、梯子25の向きは、各梯子軸253を中心として反転可能になっている。梯子25は、各梯子軸253を中心として梯子25の向きが反転することにより、梯子設置面22aに重なる収容位置と、可動床板22から突出する突出位置との間で可動床板22に対して変位可能になっている。
【0046】
梯子設置面22aには、梯子保持部材224が固定されている。梯子25は、梯子留め具255によって梯子保持部材224に留められている。梯子留め具255は、梯子25及び梯子保持部材224のそれぞれに設けられた通し穴に挿入されることにより、梯子25を梯子保持部材224に留める。梯子留め具255は、梯子25を梯子保持部材224に留めることにより、梯子25を収容位置に保持する。
【0047】
ここで、図10は、図7の可動床板22が開放位置に位置している状態を示す一部破断断面図である。梯子25が収容位置に保持された状態は、梯子留め具255が梯子保持部材224及び梯子25から外されることにより解除される。梯子25が収容位置に保持された状態が解除されることにより、梯子25は、収容位置と突出位置との間で可動床板22に対して変位可能になる。可動床板22が開放位置に位置している状態では、梯子25が収容位置から突出位置へ変位されることにより、梯子25が可動床板22から下部機械室11の内部に向けて突出する。
【0048】
可動床板22が開放位置に位置している状態では、長穴234の両端部のうち、床板軸221に近い側の端部にスライド部材232が位置している。これにより、可動床板22が開放位置に位置している状態では、床板軸221に近づく方向へのスライド部材232の移動が固定ガイド部材231によって阻止されている。
【0049】
可動床板22が開放位置に位置している状態では、固定ガイド部材231からみて床板軸221よりも外側へ可動床板22が水平面に対して傾いていることにより、床板軸221に近づく方向へ可動床板22の重量がスライド部材232に加わっている。これにより、固定ガイド部材231は、可動床板22の重量をスライド部材232から受けた状態で、可動床板22を開放位置に保持する。
【0050】
梯子25は、伸縮可能になっている。従って、梯子25の状態は、収縮状態と、伸長状態との間で変化する。梯子25の長さは、梯子25の収縮状態よりも梯子25の伸長状態で長くなっている。梯子25は、梯子25の状態を収縮状態にして収容位置に保持されている。梯子25が収容位置に保持された状態では、梯子25が梯子留め具255によって梯子保持部材224に留められることにより、梯子25の収縮状態から伸長状態への変化が阻止されている。梯子25が収容位置に保持された状態が解除されると、梯子25が伸縮可能になる。
【0051】
図11は、図10の梯子25が突出位置に位置し、かつ梯子25の状態が伸長状態となっているときの下部床板装置2を示す一部破断断面図である。梯子25は、第1梯子部材251と、第2梯子部材252とを複数の梯子部材として有している。これにより、本実施の形態では、梯子25が2つの梯子部材を有している。第1梯子部材251及び第2梯子部材252のそれぞれは、一対の縦部材と、複数のステップ部材とを有している。一対の縦部材は、梯子25の伸縮方向に沿って互いに平行に配置されている。複数のステップ部材は、各縦部材の長手方向において互いに間隔をあけて一対の縦部材の間に固定されている。
【0052】
第1梯子部材251における各縦部材には、第1梯子溝251aが梯子25の伸縮方向に沿ってそれぞれ設けられている。第2梯子部材252における各縦部材には、第2梯子溝252aが梯子25の伸縮方向に沿ってそれぞれ設けられている。
【0053】
第1梯子部材251における各縦部材には、第1梯子連結具256がそれぞれ固定されている。各第1梯子連結具256は、各第2梯子溝252aに挿入されている。これにより、各第1梯子連結具256は、各第2梯子溝252aに沿った方向へスライド可能に第1梯子部材251を第2梯子部材252に連結している。
【0054】
第2梯子部材252における各縦部材には、第2梯子連結具257がそれぞれ固定されている。各第2梯子連結具257は、各第1梯子溝251aに挿入されている。これにより、各第2梯子連結具257は、各第1梯子溝251aに沿った方向へスライド可能に第2梯子部材252を第1梯子部材251に連結している。
【0055】
これにより、第1梯子部材251及び第2梯子部材252は、互いにスライド可能に連結されている。梯子25は、第1梯子部材251及び第2梯子部材252が互いにスライドすることにより伸縮する。梯子25の状態は、図10に示すように、第1梯子部材251及び第2梯子部材252が互いに重なることにより収縮状態となる。また、梯子25の状態は、図11に示すように、第2梯子部材252の位置が第1梯子部材251の位置に対してずれることにより伸長状態となる。
【0056】
一対の梯子軸253は、梯子25の伸縮方向における第1梯子部材251の端部に設けられている。これにより、第1梯子部材251及び第2梯子部材252は、各梯子軸253から、第1梯子部材251及び第2梯子部材252の順に順次スライド可能に連結されている。梯子軸253は、第1梯子部材251における各縦部材にそれぞれ固定されている。各梯子軸253の軸線は、第1梯子部材251における各縦部材の長手方向に対して直交している。
【0057】
梯子留め具255は、図10に示すように、第2梯子部材252を梯子保持部材224に留めることにより、梯子25を収容位置に保持する。梯子留め具255は、梯子25の伸縮方向における第2梯子部材252の両端部のうち、梯子軸253から遠い側の端部を梯子保持部材224に留める。梯子保持部材224には、図2に示すように、第2梯子部材252における一対の縦部材のうち、一方のみが梯子留め具255によって留められる。
【0058】
可動床板22が開放位置に保持されている状態では、梯子25が収容位置から突出位置へ変位されるとともに、梯子25の状態が収縮状態から伸長状態となることにより、図11に示すように、梯子25が下部機械室11の底部に達する。梯子25が下部機械室11の底部に達している状態では、第1梯子部材251が可動床板22から下部機械室11の内部へ突出し、第2梯子部材252が下部機械室11の底部に達している。なお、上部床板装置3の構成は、下部床板装置2の構成と同様である。
【0059】
次に、下部機械室11の機械室内機器に対する保守点検作業を行うときの手順について説明する。下部機械室11の機械室内機器に対する保守点検作業を作業員が行うときには、まず固定床板21の上方から操作具243を操作用穴211に挿入して操作具243を巻取軸245の嵌合部245aに嵌める。この後、操作具243を回すことにより、ワイヤ241を巻取軸245に巻き取る。これにより、可動床板22が覆い位置から開放位置に向かって変位される。この後も、操作具243を回して巻取軸245にワイヤ241を巻き取り続けると、図10に示すように、可動床板22が開放位置に達する。これにより、下部機械室11の上部開口部が開放される。可動床板22が開放位置に達すると、可動床板22の重量が固定ガイド部材231によって支持されるため、操作具243を巻取装置242から外しても可動床板22が開放位置に保持される。
【0060】
この後、梯子留め具255を梯子保持部材224から外す。これにより、梯子25が収容位置に保持された状態が解除されるとともに、梯子25が伸縮可能になる。
【0061】
この後、各梯子軸253を中心として梯子25を反転させることにより、梯子25を収容位置から突出位置へ可動床板22に対して変位させる。また、第2梯子部材252を第1梯子部材251に対してスライドさせることにより、梯子25の状態を収縮状態から伸長状態にする。これにより、図11に示すように、梯子25が可動床板22から下部機械室11の底部に達する。
【0062】
この後、作業員は、下部機械室11の上部開口部から梯子25を降りて下部機械室11の内部に入る。これにより、作業員は、下部機械室11の内部において機械室内機器に対する保守点検作業を行う。このとき、下部機械室11の外側に可動床板22が保持されているため、下部機械室11の内部における作業員の作業空間が確保される。この後、作業員は、下部機械室11の内部から梯子25を登って下部機械室11の外部へ出る。
【0063】
この後、梯子25の状態を伸長状態から収縮状態に変化させるとともに、梯子25を突出位置から収容位置に可動床板22に対して変位させる。この後、梯子留め具255によって梯子保持部材224に梯子25を留めることにより、梯子25を収容位置に保持させる。
【0064】
この後、可動床板22を支えながら可動床板22を開放位置から覆い位置へ変位させる。このとき、開放位置から覆い位置への可動床板22の変位に伴って、スライド部材232が床板軸221から遠ざかる方向へ移動しながら、ワイヤ241が巻取装置242から繰り出される。このようにして、下部機械室11の機械室内機器に対する保守点検作業が終了する。
【0065】
なお、上部機械室12の機械室内機器に対する保守点検作業を行うときの手順は、下部機械室11の機械室内機器に対する保守点検作業を行うときの手順と同様である。
【0066】
このようなエスカレータの下部床板装置2では、可動床板22が、覆い位置から下部機械室11の外側へトラス1に対して回転することにより開放位置に向かって変位される。巻取装置242がワイヤ241を巻き取る方向へスライド部材232が固定ガイド部材231に対して長穴234をスライドすることにより、可動床板22が覆い位置から開放位置に向かって変位される。このため、可動床板22を下部機械室11の内部に入れることなく、下部機械室11の上部開口部を開放することができる。これにより、下部機械室11の内部の空間が可動床板22によって狭くなることを回避することができ、下部機械室11の内部における作業空間を確保することができる。従って、エスカレータの保守点検作業の作業効率の低下を抑制することができる。また、巻取装置242によるワイヤ241の巻き取り及び繰り出しを行うことにより、可動床板22を覆い位置と開放位置との間で変位させることができる。これにより、可動床板22を直接持ち上げる作業を少なくすることができ、可動床板22を動かすときの作業員の負担の軽減化を図ることもできる。
【0067】
上部床板装置3の構成も、下部床板装置2の構成と同様である。このため、エスカレータの保守点検作業の際に上部機械室12の内部における作業空間を確保することができ、エスカレータの保守点検作業の作業効率の低下を抑制することができる。また、上部床板装置3の可動床板を動かすときの作業員の負担の軽減化を図ることもできる。
【0068】
また、梯子25は、可動床板22に設けられた梯子軸253を中心として梯子25の向きが反転することにより、収容位置と突出位置との間で可動床板22に対して変位可能になっている。このため、可動床板22が開放位置に位置している状態では、梯子25を収容位置から突出位置へ変位させることにより、可動床板22から下部機械室11の内部に向けて梯子25を突出させることができる。これにより、下部機械室11の内部に対する作業員の出入りを容易にすることができる。
【0069】
上部床板装置3の構成も、下部床板装置2の構成と同様である。このため、上部床板装置3の可動床板から上部機械室12の内部に向けて梯子を突出させることができ、上部機械室12の内部に対する作業員の出入りを容易にすることができる。
【0070】
また、梯子25は、第1梯子部材251及び第2梯子部材252が互いにスライドすることにより伸縮する。このため、収容位置に保持される梯子25の寸法が可動床板22の大きさによって制限される場合でも、下部機械室11の深さに応じて梯子25を伸ばすことができ、下部機械室11の内部に対する作業員の出入りを容易にすることができる。
【0071】
上部床板装置3の構成も、下部床板装置2の構成と同様である。このため、上部床板装置3の梯子を上部機械室12の深さに応じて伸ばすことができ、上部機械室12の内部に対する作業員の出入りを容易にすることができる。
【0072】
なお、上記実施の形態では、梯子25に含まれる梯子部材の数が第1梯子部材251及び第2梯子部材252の2つである。しかし、梯子25に含まれる梯子部材の数は、2つに限定されない。例えば、梯子25に含まれる梯子部材の数を3つ以上にしてもよい。この場合、3つ以上の梯子部材は、梯子軸253から順次スライド可能に連結される。また、この場合、梯子25は、3つ以上の梯子部材が互いにスライドすることにより伸縮する。
【0073】
また、上記実施の形態では、梯子25が伸縮可能になっている。しかし、梯子25を伸ばさなくても下部機械室11に対する作業員の出入りが可能であれば、梯子25は伸縮可能でなくてもよい。即ち、梯子25に含まれる梯子部材の数が1つであってもよい。
【0074】
また、上記実施の形態では、梯子25が可動床板22に設けられている。しかし、下部機械室11の内部に対する作業員の出入りが可能であれば、梯子25はなくてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態では、下部床板装置2及び上部床板装置3が乗客コンベアとしてのエスカレータに適用されている。しかし、下部床板装置2及び上部床板装置3を乗客コンベアとしての動く歩道に適用してもよい。
【0076】
以上、上記の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。実施の形態は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 トラス、11 下部機械室(機械室)、12 上部機械室(機械室)、22 可動床板、22a 梯子設置面、25 梯子、231 固定ガイド部材、232 スライド部材、233 連結部材、234 長穴、241 ワイヤ、242 巻取装置、251 第1梯子部材(梯子部材)、252 第2梯子部材(梯子部材)、253 梯子軸。
【要約】
【課題】保守点検作業の作業効率の低下を抑制することができる乗客コンベアの床板装置を提供する。
【解決手段】エスカレータの下部床板装置11において、スライド部材232は、固定ガイド部材231に対して長穴234に沿った方向へ長穴234をスライド可能になっている。連結部材233は、可動床板22とスライド部材232とを連結している。可動床板22は、覆い位置から下部機械室11の外側へトラス1に対して回転することにより開放位置に向かって変位される。巻取装置242がワイヤ241を巻き取る方向へスライド部材232が固定ガイド部材231に対して長穴234をスライドすることにより、可動床板22が覆い位置から開放位置に向かって変位される。
【選択図】図6
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11