(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ロータ構造
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
H02K9/19 B
(21)【出願番号】P 2024033421
(22)【出願日】2024-03-05
【審査請求日】2024-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523429519
【氏名又は名称】MCF Electric Drive株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】板坂 直樹
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019402(WO,A1)
【文献】特開2022-073753(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030372(WO,A1)
【文献】特開2011-083139(JP,A)
【文献】特開2022-128783(JP,A)
【文献】特開2023-130845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータで発生する回転磁界に同期してロータが回転する同期型モータ内部の冷却対象部にオイルを供給するロータ構造であって、
上記ロータは、上記冷却対象部の一つである複数の永久磁石と、当該各永久磁石が埋め込まれる、軸方向に延びる磁石孔が複数形成された円筒状のロータコアと、
当該ロータコアに相対回転不能に挿入されるロータシャフトと、当該ロータコアの軸方向一方側の端部に、当該ロータコアの軸心と同心に取り付けられる円環状の一方側エンドプレートと、を備
え、
上記一方側エンドプレートには、軸方向に見て円環状をなすチャンバー空間が、上記ロータコアの軸心と同心に形成されているとともに、当該チャンバー空間の径方向内側で径方向に延びて、上記ロータシャフト内の油路と当該チャンバー空間と連通する複数の連結流路と、径方向に延びて当該チャンバー空間と複数の上記磁石孔とを連通する複数の径方向油路と、が周方向および軸方向で互いにずれるように形成されており、
上記ロータシャフト内の油路から、複数の上記連結流路を介して上記チャンバー空間へオイルが充填されるとともに、当該チャンバー空間から、複数の上記径方向油路を介して分配されたオイルが複数の
上記磁石孔内を通って
上記ロータコア内部を軸方向に流れるように構成されていることを特徴とするロータ構造。
【請求項2】
上記請求項
1に記載のロータ構造において、
複数の上記径方向油路は、上記チャンバー空間よりも軸方向他方側で径方向に延び、径方向内側の端部が当該チャンバー空間と連通するとともに、径方向外側の端部が複数の上記磁石孔と連通する
ように上記一方側エンドプレートに形成されており、
上記各径方向油路は、軸方向一方側で当該径方向油路を区画する面と、径方向外側で当該径方向油路を区画する面とが、周方向に見て、R形状で接続されていることを特徴とするロータ構造。
【請求項3】
上記請求項
1に記載のロータ構造において、
複数の上記径方向油路は、上記チャンバー空間よりも軸方向他方側で径方向に延び、径方向内側の端部が当該チャンバー空間と連通するとともに、径方向外側の端部が複数の上記磁石孔と連通する
ように上記一方側エンドプレートに形成されており、
上記各径方向油路における上記径方向外側の端部は、上記各磁石孔における径方向内側の部分と連通していることを特徴とするロータ構造。
【請求項4】
上記請求項
1に記載のロータ構造において、
上記一方側エンドプレートは、上記ステータに装着されるステータコイルにおける、上記冷却対象部の一つである軸方向一方側のコイルエンドと、径方向に見て重なるように配置されており、
上記一方側エンドプレートには、上記チャンバー空間よりも軸方向一方側で径方向に延び、径方向内側の端部が当該チャンバー空間と連通するとともに、当該一方側エンドプレートの外周面で開口する第1拡散油路が複数形成されており、
上記各第1拡散油路は、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されていることを特徴とするロータ構造。
【請求項5】
上記請求項
4に記載のロータ構造において、
上記ロータは、上記ロータコアの軸方向他方側の端部に、当該ロータコアの軸心と同心に取り付けられる円環状の他方側エンドプレートをさらに有し、
上記他方側エンドプレートは、上記ステータコイルにおける、上記冷却対象部の一つである軸方向他方側のコイルエンドと、径方向に見て重なるように配置されており、
上記他方側エンドプレートには、径方向に延びて、径方向内側の端部が複数の上記磁石孔と連通するとともに、当該他方側エンドプレートの外周面で開口し、且つ、径方向外側に行くほど断面積が拡大する第2拡散油路が複数形成されており、
上記第2拡散油路の数が、上記第1拡散油路の数よりも多く設定されていることを特徴とするロータ構造。
【請求項6】
上記請求項1に記載のロータ構造において、
上記ロータコアは、スキュー角が0度であることを特徴とするロータ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ構造に関し、特に、同期型モータ内部の冷却対象部にオイルを供給するためのロータ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の普及に伴い、その駆動源であるモータの、搭載性および生産性の向上、車種展開の容易化、並びに、低コスト化が望まれているところ、これらを実現するためには、出力を維持したままでのモータの小型化、換言すると、モータの出力密度を高めることが要求される。
【0003】
モータの出力密度を高めるに当たっては、ステータコイルに流す電流の高密度化が避けられないが、同期型モータにおいて電流密度を上げると、永久磁石の発熱量が大きくなり、モータ内部における各部の温度が上昇することになるため、場合によっては、永久磁石の減磁、延いてはモータトルクの低下に繋がる可能性がある。
【0004】
そこで、ロータコア内部の永久磁石を冷却するべく、例えば特許文献1には、ロータコアに収容された磁石近傍で軸方向に延びる冷媒流路を設けるようにした回転電機のロータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モータではロータコア自体も発熱するところ、上記特許文献1のもののように、冷却対象部(永久磁石)の近傍に設けられた冷媒流路に供給される冷媒(冷却油)によって、冷却対象部の冷却を行う構成では、冷却対象部の冷却の前に、ロータコアとの熱交換によって冷却油が昇温してしまい、冷却対象部の冷却が不十分となる可能性がある。それ故、特許文献1のものには、モータ内部の冷却対象部の効率的な冷却という点で、改善の余地がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、同期型モータ内部の冷却対象部を効率的に冷却することが可能なロータ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係るロータ構造では、オイルによって、ロータに埋め込まれた永久磁石を直接的に冷却するようにしている。
【0009】
具体的には、本発明は、ステータで発生する回転磁界に同期してロータが回転する同期型モータ内部の冷却対象部にオイルを供給するロータ構造を対象としている。
【0010】
そして、このロータ構造は、上記ロータは、上記冷却対象部の一つである複数の永久磁石と、当該各永久磁石が埋め込まれる、軸方向に延びる磁石孔が複数形成された円筒状のロータコアと、当該ロータコアに相対回転不能に挿入されるロータシャフトと、当該ロータコアの軸方向一方側の端部に、当該ロータコアの軸心と同心に取り付けられる円環状の一方側エンドプレートと、を備え、上記一方側エンドプレートには、軸方向に見て円環状をなすチャンバー空間が、上記ロータコアの軸心と同心に形成されているとともに、当該チャンバー空間の径方向内側で径方向に延びて、上記ロータシャフト内の油路と当該チャンバー空間と連通する複数の連結流路と、径方向に延びて当該チャンバー空間と複数の上記磁石孔とを連通する複数の径方向油路と、が周方向および軸方向で互いにずれるように形成されており、上記ロータシャフト内の油路から、複数の上記連結流路を介して上記チャンバー空間へオイルが充填されるとともに、当該チャンバー空間から、複数の上記径方向油路を介して分配されたオイルが複数の上記磁石孔内を通って上記ロータコア内部を軸方向に流れるように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、永久磁石が埋め込まれる磁石孔内を通って、オイルがロータコア内部を軸方向に流れることから、かかるオイルによって冷却対象部の一つである永久磁石を直接的に冷却することができる。これにより、例えば、ロータコアにおける永久磁石の近傍に設けられた孔(油路)内にオイルを流すような構造等に比して、冷却対象部の一つである永久磁石を効率的に冷却することができる。
【0012】
ところで、オイルをロータに送る場合には、ロータシャフトに設けられた油路からオイルを送るのが一般的であるが、例えばロータシャフトの油路と磁石孔とを直接的に接続するような構成を採用すると、磁石孔へ供給されるオイル量にバラツキが生じるケースが想定される。そうして、かかるオイル量のバラツキが生じてしまうと、ロータコアに埋め込まれた複数の永久磁石のうちの一部の永久磁石に対する冷却が不十分となり、一部の永久磁石が減磁して、トルク低下が発生する可能性がある。
【0014】
この点、上記構成によれば、ロータシャフト内の油路から磁石孔へオイルを直接的に送るのではなく、一方側エンドプレートに形成されたチャンバー空間にオイルを一旦充填した後、円環状をなすチャンバー空間から複数の磁石孔へオイルを分配することから、ロータコアに形成された複数の磁石孔にオイルを均等に供給することができる。
【0015】
しかも、磁石孔へ分配されるオイルは、チャンバー空間に一旦充填されるだけであり、ロータコア等を冷やした(昇温した)後ではなく、十分に冷えた状態のまま磁石孔に供給されることから、永久磁石を効果的に冷却することができる。
【0016】
これらにより、一部の永久磁石に対する冷却が不十分となるのを抑制することができ、したがって、永久磁石が減磁すること、延いてはトルク低下が発生するのを確実に抑えることができる。
【0017】
また、上記ロータ構造では、複数の上記径方向油路は、上記チャンバー空間よりも軸方向他方側で径方向に延び、径方向内側の端部が当該チャンバー空間と連通するとともに、径方向外側の端部が複数の上記磁石孔と連通するように上記一方側エンドプレートに形成されており、上記各径方向油路は、軸方向一方側で当該径方向油路を区画する面と、径方向外側で当該径方向油路を区画する面とが、周方向に見て、R形状で接続されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、チャンバー空間よりも軸方向他方側(ロータコアに近い側)で径方向に延び、径方向内側の端部がチャンバー空間と連通するとともに、径方向外側の端部が複数の磁石孔と連通する径方向油路が複数形成されていることから、かかる複数の径方向油路を通じて、チャンバー空間に充填されたオイルを複数の磁石孔へ均等に分配することができる。
【0019】
ここで、オイルは、径方向油路を径方向外側に流れる一方、磁石孔へ供給される際は軸方向に流れるところ、仮に、軸方向一方側で径方向油路を区画する面(「第1区画面」とする。)と、径方向外側で径方向油路を区画する面(「第2区画面」とする。)と、が直交しているような構造では、オイルがスムーズに方向転換しないケースも想定される。加えて、冷却の必要性が高まるモータ駆動中は、ロータは絶えず回転しており、オイルにも遠心力が作用することから、径方向油路を径方向に流れたオイルは、第2区画面に押し付けられ易くなるため、第1区画面と第2区画面とが直交しているような構造等では、より一層オイルが方向転換し難くなることが想定される。
【0020】
この点、この構成では、第1区画面と第2区画面とが、周方向に見て、R形状で接続されていることから、遠心力下において、径方向油路を径方向外側に流れたオイルが磁石孔へ供給される際の、軸方向へのスムーズな方向転換を実現することができ、これにより、冷却対象部である永久磁石をより効率的に冷却することができる。
【0021】
さらに、上記ロータ構造では、複数の上記径方向油路は、上記チャンバー空間よりも軸方向他方側で径方向に延び、径方向内側の端部が当該チャンバー空間と連通するとともに、径方向外側の端部が複数の上記磁石孔と連通するように上記一方側エンドプレートに形成されており、上記各径方向油路における上記径方向外側の端部は、上記各磁石孔における径方向内側の部分と連通していてもよい。
【0022】
上述の如く、冷却の必要性が高まるモータ駆動中は、ロータは絶えず回転しており、オイルにも遠心力が作用することから、磁石孔内を軸方向に流れるオイルも、磁石孔における径方向外側部分に集まり易くなる。このため、仮に、径方向油路における径方向外側の端部を、磁石孔における、オイルが集まっている径方向外側の部分と連通させてしまうと、オイルが磁石孔内にスムーズに導入され難くなるケースも想定される。
【0023】
この点、この構成によれば、径方向油路における径方向外側の端部が、各磁石孔における径方向内側の部分と連通していることから、換言すると、磁石孔における、オイルが集まり難い部分と連通していることから、径方向油路から磁石孔内にオイルをスムーズに導入させることができ、これにより、冷却対象部である永久磁石をより効率的に冷却することができる。
【0024】
また、上記ロータ構造では、上記一方側エンドプレートは、上記ステータに装着されるステータコイルにおける、上記冷却対象部の一つである軸方向一方側のコイルエンドと、径方向に見て重なるように配置されており、上記一方側エンドプレートには、上記チャンバー空間よりも軸方向一方側で径方向に延び、径方向内側の端部が当該チャンバー空間と連通するとともに、当該一方側エンドプレートの外周面で開口する第1拡散油路が複数形成されており、上記各第1拡散油路は、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されていてもよい。
【0025】
この構成によれば、チャンバー空間よりも軸方向一方側(チャンバー空間を挟んでロータコアと反対側)で径方向に延び、径方向内側の端部がチャンバー空間と連通するとともに、一方側エンドプレートの外周面で開口する第1拡散油路が複数形成されていることから、かかる複数の第1拡散油路を通じて、チャンバー空間に充填されたオイルの一部を、遠心力によって一方側エンドプレートの外周面から径方向外側に飛ばすことができる。そうして、かかる第1拡散油路が形成された一方側エンドプレートは、軸方向一方側のコイルエンドと、径方向に見て重なるように配置されていることから、冷却対象部の一つである軸方向一方側のコイルエンドを冷却することができる。
【0026】
しかも、コイルエンドへ飛ばされるオイルは、磁石孔へ分配されるオイルと同様、チャンバー空間に一旦充填されるだけであり、ロータコア等を冷やした(昇温した)後ではなく、十分に冷えた状態のままコイルエンドに供給されることから、永久磁石のみならずコイルエンドをも効率的に冷却することができる。
【0027】
ここで、仮に第1拡散油路がオイルで塞がれてしまうと、第1拡散油路内に負圧が生じ、これに起因してチャンバー空間内におけるオイルの均一性が損なわれ、複数の磁石孔へのオイルの均等な分配が阻害されるケースも想定される。この点、この構成では、第1拡散油路は、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されていることから、第1拡散油路がオイルで塞がれてしまうのを抑えることができ、これにより、コイルエンドを冷却しつつ永久磁石の効率的な冷却を維持することが可能となる。
【0028】
さらに、上記ロータ構造では、上記ロータは、上記ロータコアの軸方向他方側の端部に、当該ロータコアの軸心と同心に取り付けられる円環状の他方側エンドプレートをさらに有し、上記他方側エンドプレートは、上記ステータコイルにおける、上記冷却対象部の一つである軸方向他方側のコイルエンドと、径方向に見て重なるように配置されており、上記他方側エンドプレートには、径方向に延びて、径方向内側の端部が複数の上記磁石孔と連通するとともに、当該他方側エンドプレートの外周面で開口し、且つ、径方向外側に行くほど断面積が拡大する第2拡散油路が複数形成されており、上記第2拡散油路の数が、上記第1拡散油路の数よりも多く設定されていてもよい。
【0029】
この構成によれば、上述した第1拡散油路の場合と同様に、冷却対象部の一つである軸方向他方側のコイルエンドを冷却することができる。また、第2拡散油路も、第1拡散油路と同様、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されていることから、第2拡散油路がオイルで塞がれてしまうのを抑えることができ、これにより、例えば負圧の生じた第2拡散油路と連通する磁石孔を流れるオイルの量が増えることで、オイルの均等な分配が損なわれるといった現象が生じるのを抑えることができる。
【0030】
なお、軸方向一方側のコイルエンドとは異なり、軸方向他方側のコイルエンドには、ロータコア等を冷やした後の(ある程度昇温した)オイルが供給されるが、第2拡散油路の数は第1拡散油路の数よりも多く設定されている(軸方向他方側のコイルエンドに供給されるオイル量を相対的に多くする)ことから、軸方向他方側のコイルエンドをも効率的に冷却することができる。
【0031】
また、上記ロータ構造では、上記ロータコアは、スキュー角が0度であってもよい。
【0032】
この構成によれば、ロータコアを所謂スキューレスとすることで、磁石孔内を流れるオイルに対する流路抵抗を小さくすることができ、これにより、冷却対象部である永久磁石をより一層効率的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明に係るロータ構造によれば、同期型モータ内部の冷却対象部を効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態に係る同期型モータの概略を模式的に示す縦断面図である。
【
図2】電気自動車における冷却システムの一例を模式的に説明するブロック図である。
【
図3】ロータにおけるオイルが流れる空間を模式的に示す斜視図である。
【
図4】ロータにおけるオイルが流れる向きを模式的に説明する斜視図である。
【
図6】シャフト本体部の要部を模式的に示す図である。
【
図8】ロータコアおよび永久磁石を模式的に示す断面図である。
【
図9】第2エンドプレートを模式的に示す図である。
【
図10】第3エンドプレートを模式的に示す図である。
【
図11】第2エンドプレートと第3エンドプレートとを重ねた状態を模式的に示す図である。
【
図12】第1エンドプレートと第2エンドプレートとを重ねた状態を模式的に示す図である。
【
図13】第3エンドプレートをロータコアに取り付けた状態を模式的に示す図である。
【
図14】ロータコアの要部を模式的に示す断面図である。
【
図16】第4エンドプレートを模式的に示す図である。
【
図17】第5エンドプレートを模式的に示す図である。
【
図18】第4エンドプレートと第5エンドプレートとを重ねた状態を模式的に示す図である。
【
図19】外側および内側貫通孔を模式的に示す斜視図である。
【
図20】その他の実施形態に係る油路の一例を模式的に示す図である。
【
図21】その他の実施形態に係るロータコアを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
-モータの概要-
図1は、本実施形態に係る同期型モータ1の概略を模式的に示す縦断面図である。なお、
図1における、符号ACは同期型モータ1の軸心を、符号OSは出力軸側(軸方向他方側)を、符号AOSは反出力軸側(軸方向一方側)をそれぞれ示している。また、
図1では、ステータ90については、図を見易くするために、ステータコア91の詳細な断面を示すことなく、ステータコア91の外形、および、ステータコア91に装着されるステータコイル93のコイルエンド93a,93bのみを示している。
【0037】
本実施形態に係る同期型モータ1は、例えば電気自動車に搭載されるものであり、
図1に示すように、ロータシャフト20が中心を貫通しているロータコア30を有するロータ10と、ロータコア30の外周を囲むように配置されたステータコア91を有するステータ90と、を備えていて、ステータ90で発生する回転磁界に同期してロータ10が回転するように構成されている。
【0038】
ロータシャフト20は、オイル導入部21と、シャフト本体部27と、を有していて、その内部にオイルが流れるオイル導入路20aが形成されている。ロータ10は、ロータシャフト20およびロータコア30の他、ロータコア30に形成された磁石孔31(
図8参照)に埋め込まれる永久磁石101,102,103,106(
図3等参照)と、ロータコア30の軸方向(軸心ACの延びる方向)の端部に取り付けられる第1~第5エンドプレート40,50,60,70,80と、を有している。なお、
図1は、飽く迄も同期型モータ1の概略を示すものであり、分かり易さを重視していることから、ロータ10における各部品の周方向の位置は必ずしも整合がとれていない。
【0039】
-冷却システム-
図2は、電気自動車における冷却システム2の一例を模式的に説明するブロック図である。この冷却システム2は、
図2に示すように、インバータ冷却システム3と、モータ冷却システム4と、を備えていて、インバータ冷却システム3とモータ冷却システム4との間には熱交換器8が介在している。
【0040】
インバータ冷却システム3は、冷却水が循環する循環路3aと、各々循環路3a上に設けられた、インバータ5と、ラジエータ6と、冷却水を循環させるウォータポンプ7と、を有している。このインバータ冷却システム3では、インバータ5で生じた熱が冷却水に吸収されるとともに、冷却水に吸収された熱がラジエータ6により外部に放熱されることで、冷却水およびインバータ5が低温状態に維持される。
【0041】
一方、モータ冷却システム4は、オイルが循環する循環路4aと、各々循環路4a上に設けられた、モータ1と、ロータシャフト20のオイル導入部21へオイルを圧送するオイルポンプ9と、を有している。このモータ冷却システム4では、同期型モータ1で生じた熱がオイルに吸収されるとともに、熱を吸収したオイルが、モータハウジング(図示せず)の底に溜まった後、循環路4aへと戻るようになっている。そうして、このモータ冷却システム4では、オイルが吸収した熱が、熱交換器8における循環路3aと循環路4aとの間接的な熱交換によって冷却水に吸収された後、ラジエータ6によって外部に放熱されることで、オイルが相対的に低温状態に維持される。
【0042】
以上のように構成された冷却システム2によって、本実施形態では、相対的に低温状態に維持されたオイル(便宜上「フレッシュなオイル」ともいう。)が、ロータシャフト20のオイル導入部21へ送られるようになっている。
【0043】
-ロータ構造の概要-
図3は、ロータ10におけるオイルが流れる空間を模式的に示す斜視図であり、
図4は、ロータ10におけるオイルが流れる向きを模式的に説明する斜視図である。本実施形態の採用するロータ構造では、上述の如くロータシャフト20のオイル導入部21へ送られたフレッシュなオイルが、第2および第3エンドプレート50,60において適宜分配されて、
図1の太線矢印で示すように、同期型モータ1内部の冷却対象部の一つである永久磁石101,102,…が埋め込まれた磁石孔31における空隙31aに直接的に供給されて、永久磁石101,102,…が効率的に冷却されるようになっている。
【0044】
同様に、フレッシュなオイルが、冷却対象部の一つである、軸方向の反出力軸側AOS(以下、単に「反出力軸側AOS」ともいう。)のコイルエンド93aにも直接的に供給されて、コイルエンド93aが効率的に冷却されるようになっている。さらに、このロータ構造では、永久磁石101,102,…を冷却した後のオイルによってではあるが、冷却対象部の一つである、軸方向の出力軸側OS(以下、単に「出力軸側OS」ともいう。)のコイルエンド93bも効率的に冷却されるようになっている。
【0045】
より詳しくは、本実施形態のロータ構造では、ロータシャフト20、ロータコア30および第1~第5エンドプレート40,50,…の内部に、
図3のハッチングで示すように、オイルが流れる空間部Sが形成されている。これにより、このロータ構造では、
図4の太線矢印で示すように、ロータシャフト20、ロータコア30および第1~第5エンドプレート40,50,…の内部を、オイルが、周方向、径方向および軸方向、換言すると、三次元的に流れて、狙いとする冷却対象部に供給されるようになっている。
【0046】
以下では、このような三次元的なオイルの流れを可能とするロータ構造について詳細に説明する。
【0047】
-ロータ構造の詳細-
<ロータシャフト>
ロータシャフト20は、円筒状のロータコア30の中心穴38(
図8参照)に相対回転不能に挿入され、且つ、モータハウジングに回転可能に支持されることで、ロータコア30をモータハウジングに対して相対回転可能とするとともに、オイル導入路20aを通じてロータ10の反出力軸側AOSからフレッシュなオイルを導入する役割を担っている。このロータシャフト20は、上述したように、オイル導入部21と、シャフト本体部27と、を有している。
【0048】
≪オイル導入部≫
図5は、オイル導入部21を模式的に示す図である。なお、
図5(a)は、オイル導入部21の斜視図である。また、
図5(b)は、オイル導入部21の出力軸側OSの面を示す図である。さらに、
図5(c)は、
図5(a)のc-c線の矢視断面図である。オイル導入部21は、
図5(a)に示すように、円柱状の小径部22と、小径部22よりも外径の大きい円柱状の大径部23とを、軸心ACを中心として同心となるように、段差面を介して軸方向に接続したような形状に形成されている。
【0049】
オイル導入部21には、小径部22および大径部23の軸心を通って両者を軸方向に貫通するオイル導入孔24が形成されている。また、大径部23の出力軸側OSの端部には、
図5(a)~(c)に示すように、反出力軸側AOSに窪む断面円形の凹部25が形成されている。凹部25は、その中心でオイル導入孔24と連通している。さらに、大径部23の出力軸側OSの端部には、
図5(a)および(b)に示すように、凹部25から径方向外側に、周方向に45度の等間隔で放射状に延びる、反出力軸側AOSに窪むオイル排出溝26が8つ形成されている。各オイル排出溝26は、径方向内側の端部が凹部25と連通し、且つ、径方向外側の端部が大径部23の外周面で開口している。
【0050】
≪シャフト本体部≫
図6は、シャフト本体部27の要部を模式的に示す図である。なお、
図6(a)は、シャフト本体部27の要部の斜視図である。また、
図6(b)は、
図6(a)のb-b線の矢視断面図である。さらに、
図6(c)は、
図6(a)のc-c線の矢視断面図である。シャフト本体部27は、
図6(a)に示すように、軸心ACを中心とする円筒状に形成されていて、その内径が大径部23の外径よりも若干大きく設定されている。
【0051】
このシャフト本体部27には、
図6(a)および(c)に示すように、その中空部を軸方向に仕切る円盤状の仕切り盤28が設けられている。シャフト本体部27の反出力軸側AOSの端から、仕切り盤28の反出力軸側AOSの面までの長さは、大径部23の軸方向の長さと同じ長さに設定されている。また、シャフト本体部27には、
図6(a)および(b)に示すように、周方向に45度の等間隔で径方向外側に放射状に延びてシャフト本体部27を貫通する、オイル排出孔29が8つ形成されている。オイル排出孔29は、オイル排出溝26の深さと略同じ直径の断面円形の孔であり、仕切り盤28の反出力軸側AOSの面と接するような位置に形成されている。
【0052】
≪オイル導入路≫
図7は、ロータシャフト20を模式的に示す図である。なお、
図7(a)は、シャフト本体部27の要部の斜視図である。また、
図7(b)は、
図7(a)のb-b線の矢視断面図である。さらに、
図7(c)は、
図7(a)のc-c線の矢視断面図である。また、
図7(d)は、ロータシャフト20内におけるオイルの流れを示す斜視図である。ロータシャフト20は、以上のように構成された、オイル導入部21とシャフト本体部27とを組み合わせたものである。具体的には、ロータシャフト20は、8つのオイル排出溝26と8つのオイル排出孔29との周方向位置が一致するように、シャフト本体部27の中空部に大径部23を嵌合させた後、両者を溶接等で接合することで構成されている。
【0053】
オイル導入部21とシャフト本体部27とを組み合わせると、凹部25およびオイル排出溝26が、仕切り盤28の反出力軸側AOSの面で蓋をされて、円盤状空間25’および閉断面を有するオイル排出路26’がそれぞれ形成される。これにより、フレッシュなオイルが、オイル導入孔24を出力軸側OSに流れた後、円盤状空間25’に充填され、この円盤状空間25’からオイル排出路26’を通って径方向外側に流れた後、オイル排出孔29を通じてロータシャフト20の外側に放射状に送り出される、オイル導入路20aが形成されることになる。
【0054】
以上のようにして、
図7(d)に示すようなオイルの流れが、換言すると、
図4に示すロータ10におけるオイルの流れのうち、ロータシャフト20に対応する部分が実現されることになる。
【0055】
<ロータコア>
図8は、ロータコア30および永久磁石101,102,…を模式的に示す断面図である。なお、
図8(a)は、ロータコア30の全体図である。また、
図8(b)は、
図8(a)における破線で区切った磁極の拡大図である。ロータコア30は、所定の形状に成形された円環状の磁性体薄板を所定枚数で軸方向に積み重ねた積層体であり、
図8(a)に示すように、ロータシャフト20が焼き嵌めにて固定される中心穴38を有する円筒状に形成されている。なお、磁性体薄板の材質としては、珪素鋼板の一種である電磁鋼板を用いることができる。
【0056】
ロータコア30には、ロータ10の磁極数が8で且つ軸心ACから見た1磁極分の周方向に沿った見込み角度φが45度になるように、軸方向に延びる磁石孔31,33,34,35,36が複数形成されているとともに、かかる複数の磁石孔31,33,…内に永久磁石101,102,103,104,105,106が埋め込まれている。ロータコア30は、スキュー角が0度になるように構成されており、それ故、磁石孔31,33,…および永久磁石101,102,…は、軸方向におけるロータコア30の反出力軸側AOSの端から出力軸側OSの端まで真っ直ぐに延びている。なお、各磁極は、磁石孔31,33,…および永久磁石101,102,…の位置や形状が異なるものの、基本的な構成は同じであることから、8つの磁極を代表して
図8(b)の拡大図に示す磁極を参照して、各磁極における磁石孔31,33,…および永久磁石101,102,…等について説明する。
【0057】
各磁極は、
図8(b)に示すように、径方向外側でV字状に配置された2つの永久磁石101,102を含む外側埋込磁石部100Aと、径方向内側でU字状に配置された4つの永久磁石103,104,105,106を含む内側埋込磁石部100Bとの2層構造で構成されている。なお、
図8に示す突起部37や突起部37内の空隙37aは、磁束に含まれる高調波成分の発生を抑えるためのものであり、本実施形態とは関係性が薄いため、詳細な説明は省略する。
【0058】
外側埋込磁石部100Aは、1つの磁石孔31を有していて、2つの永久磁石101,102は、径方向外側に向かって互いの間隔が拡がり且つ径方向内側で互いの間隔が狭まるV字状をなすように磁石孔31に挿入されている。磁石孔31のうち、2つの永久磁石101,102で埋められていない部分や、ブリッジ39で区画された部分は、空隙(フラックスバリア)31a,31b,31c,31d,31eとして残る。これらの空隙31a,31b,31c,31d,31eのうち、空隙31cは、後述するように、永久磁石101,102を冷却するためのオイルが流れる油路となる。
【0059】
内側埋込磁石部100Bは、4つの磁石孔33,34,35,36を有している。永久磁石103および永久磁石106は、径方向外側に向かって互いの間隔が拡がり且つ径方向内側で互いの間隔が狭まるように磁石孔33および磁石孔36にそれぞれ挿入されている。磁石孔33,36のうち永久磁石103,106で埋められていない部分は、空隙33a,33b,36a,36bとして残る。また、永久磁石104および永久磁石105は、磁石孔34および磁石孔35にそれぞれ挿入されていて、磁石孔34,35のうち永久磁石104,105で埋められていない部分は、空隙34a,35aとして残る。これらの空隙33a,33b,34a,35a,36a,36bのうち、空隙33b,36aは、後述するように、永久磁石103,106を冷却するためのオイルが流れる油路となる。
【0060】
<反出力軸側のエンドプレート>
図1,3および4に示すように、ロータコア30の反出力軸側AOSの端部に取り付けられるエンドプレートには、第1~第3エンドプレート40,50,60が含まれている。なお、請求項との関係では、本実施形態の第1~第3エンドプレート40,50,60が、本発明で言うところの「ロータコアの軸方向一方側の端部に、ロータコアの軸心と同心に取り付けられる円環状の一方側エンドプレート」に相当する。
【0061】
第1~第3エンドプレート40,50,60は、アルミニウム製の円環状のプレートであり、ロータコア30の外周面および内周面の形状と同じ外形をそれぞれ有していて、溶接等で組み付けられることで反出力軸側AOSのエンドプレートを構成する。第1~第3エンドプレート40,50,60は、
図1に示すように、冷却対象部の一つである反出力軸側AOSのコイルエンド93aと径方向に見て重なるように配置されている。なお、第1エンドプレート40は、下記
図12(a)に示すように、表面40a(反出力軸側AOSの面)および裏面40b(出力軸側OSの面)とも平坦に形成されていて、特徴を有しないため、その詳細な説明を省略する。
【0062】
≪第2エンドプレート≫
図9は、第2エンドプレート50を模式的に示す図である。なお、
図9(a)は、反出力軸側AOSの面(表面50a)を示す図である。また、
図9(b)は、
図9(a)および(c)のb-b線の矢視断面図である。さらに、
図9(c)は、出力軸側OSの面(裏面50b)を示す図である。また、
図9(d)は、第1拡散溝51を示す斜視図である。さらに、
図9(e)は、環状溝53および連結溝55を示す斜視図である。また、
図9(a)および(c)における、太枠内に示す図は、破線枠内を拡大した部分拡大図である。さらに、
図9(b)では、図を見易くするために、第2エンドプレート50の厚さを直径に比して誇張して示している。
【0063】
第2エンドプレート50の表面50aには、
図9(a)および(d)に示すように、周方向に45度の等間隔で径方向外側に放射状に延び、出力軸側OSに窪む第1拡散溝51が8つ形成されている。各第1拡散溝51は、第2エンドプレート50の外周面50cまで延びて、当該外周面50cで開口するとともに、径方向外側に行くほどその溝幅が大きくなるように形成されている。
【0064】
一方、第2エンドプレート50の裏面50bには、
図9(c)および(e)に示すように、反出力軸側AOSに窪む、円環状の環状溝53が、第2エンドプレート50の軸心ACと同心に形成されている。加えて、第2エンドプレート50の裏面50bには、第2エンドプレート50の内周面から径方向外側に、周方向に45度の等間隔で放射状に延びて環状溝53と繋がる、反出力軸側AOSに窪む連結溝55が8つ形成されている。
【0065】
図9(a)および(c)の太枠内、並びに、
図9(b)に示すように、表面50aに形成された第1拡散溝51の径方向内側の端部は、軸方向に見て、裏面50bに形成された環状溝53と重なっている。また、表面50aに形成された8つの第1拡散溝51と、裏面50bに形成された8つの連結溝55とは、周方向における位置がそれぞれ一致しており、同じ半径上でそれぞれ径方向に延びている。さらに、表面50aに形成された第1拡散溝51と、裏面50bに形成された環状溝53とは、両者が重なっている部分で軸方向に延びる断面円形の連通孔57を介して連通している。
【0066】
≪第3エンドプレート≫
図10は、第3エンドプレート60を模式的に示す図である。なお、
図10(a)は、反出力軸側AOSの面(表面60a)を示す図である。また、
図10(b)は、
図10(a)および(c)のb-b線の矢視断面図である。さらに、
図10(c)は、出力軸側OSの面(裏面60b)を示す図である。また、
図10(d)は、環状溝63および連結溝65を示す斜視図である。さらに、
図10(e)は、第1および第2径方向溝61,62を示す斜視図である。また、
図10(a)および(c)における、太枠内に示す図は、破線枠内を拡大した部分拡大図である。さらに、
図10(b)では、図を見易くするために、第3エンドプレート60の厚さを直径に比して誇張して示している。
【0067】
第3エンドプレート60の表面60aには、
図10(c)および(e)に示すように、出力軸側OSに窪む、円環状の環状溝63が、第3エンドプレート60の軸心ACと同心に形成されている。加えて、第3エンドプレート60の表面60aには、第3エンドプレート60の内周面から径方向外側に、周方向に45度の等間隔で放射状に延びて環状溝63と繋がる、出力軸側OSに窪む連結溝65が8つ形成されている。
【0068】
一方、第3エンドプレート60の裏面60bには、
図10(c)および(e)に示すように、周方向に45度の等間隔で径方向外側に放射状に延び、反出力軸側AOSに窪む第1径方向溝61が8つ形成されている。また、第3エンドプレート60の裏面60bには、周方向に隣接する第1径方向溝61の間に2つずつ設けられ、径方向外側に行くほど周方向に傾いて延び、反出力軸側AOSに窪む第2径方向溝62が16条形成されている。第2径方向溝62の長さは、第1径方向溝61の長さよりも短く設定されている。
【0069】
図10(a)および(c)の太枠内、並びに、
図10(b)に示すように、裏面60bに形成された第1および第2径方向溝61,62の径方向内側の端部は、軸方向に見て、表面60aに形成された環状溝63と重なっている。また、裏面60bに形成された第1および第2径方向溝61,62と、表面60aに形成された環状溝63とは、両者が重なっている部分で軸方向に延びる断面円形の連通孔67を介して連通している。
【0070】
もっとも、第2エンドプレート50における、第1拡散溝51と連結溝55との関係とは異なり、裏面60bに形成された8つの第1径方向溝61および16条の第2径方向溝62と、表面60aに形成された8つの連結溝65とは、周方向における位置がいずれも一致していない。換言すると、裏面60bに形成された第1および第2径方向溝61,62と、表面60aに形成された環状溝63と、を連通する連通孔67は、連結溝65と周方向における位置が一致していない。
【0071】
さらに、第3エンドプレート60の裏面60bには、
図10(c)および(e)に示すように、周方向に45度の等間隔で、外周縁を反出力軸側AOSに窪ませたU字状の排出凹部69が8つ形成されている。
【0072】
≪チャンバー空間≫
図11は、第2エンドプレート50と第3エンドプレート60とを重ねた状態を模式的に示す図である。なお、
図11(a)は、第2および第3エンドプレート50,60を重ねた状態を示す断面図である。また、
図11(b)は、第2および第3エンドプレート50,60を重ねることで形成される空間を示す斜視図である。さらに、
図11(c)および(d)は、ロータシャフト20と第2および第3エンドプレート50,60とを組み合わせた状態をそれぞれ示す断面図および斜視図である。また、
図11(e)は、ロータシャフト20並びに第2および第3エンドプレート50,60内におけるオイルの流れを示す斜視図である。
図11(a)では、図を見易くするために、第2および第3エンドプレート50,60の厚さを直径に比して誇張して示している。
【0073】
図11(a)に示すように、連結溝55と連結溝65とが周方向で一致するように、第2エンドプレート50の裏面50bと第3エンドプレート60の表面60aとを同心で軸方向に重ねると、
図11(b)に示すように、環状溝53と環状溝63とで区画される、軸方向に見て円環状をなすチャンバー空間43が、軸心ACと同心に形成されることになる。また、連結溝55と連結溝65とで区画される、第2および第3エンドプレート50,60の内周面から径方向外側に、周方向に45度の等間隔で放射状に延びてチャンバー空間43と繋がる(連通する)、連結流路45も8つ形成されることになる。
【0074】
そうして、
図11(c)に示すように、8つのオイル排出孔29と8つの連結流路45とが周方向で一致するように、換言すると、8つのオイル排出孔29と8つの連結流路45とが連通するように、ロータシャフト20と第2および第3エンドプレート50,60とを組み合わせると、
図11(d)に示すように、ロータシャフト20のオイル導入路20aとチャンバー空間43とが連結流路45を介して連通することになる。これにより、ロータシャフト20のオイル導入路20aから放射状に送り出されたフレッシュなオイルがチャンバー空間43に充填されることになる。
【0075】
以上のようにして、
図11(e)に示すようなオイルの流れが、換言すると、
図4に示すロータ10におけるオイルの流れのうち、ロータシャフト20並びに第2および第3エンドプレート50,60に対応する部分が実現されることになる。
【0076】
≪第1拡散油路≫
図12は、第1エンドプレート40と第2エンドプレート50とを重ねた状態を模式的に示す図である。なお、
図12(a)は、第1および第2エンドプレート40,50を重ねた状態を示す断面図である。また、
図12(b)は、第1および第2エンドプレート40,50を重ねることで形成される空間を示す斜視図である。さらに、
図12(c)は、ロータシャフト20並びに第1~第3エンドプレート40,50,60内におけるオイルの流れを示す斜視図である。また、
図11(a)では、図を見易くするために、第1および第2エンドプレート40,50の厚さを直径に比して誇張して示している。
【0077】
図12(a)に示すように、第1エンドプレート40の裏面40bと第2エンドプレート50の表面50aとを同心で軸方向に重ねると、
図12(b)に示すように、第1エンドプレート40の裏面40bで第1拡散溝51が蓋をされて、チャンバー空間43よりも反出力軸側AOSで径方向に延びる空間である第1拡散油路41が8つ形成されることになる。各第1拡散油路41は、第1拡散溝51が蓋をされたものであることから、第1拡散溝51と同様に、径方向内側の端部が連通孔57を介してチャンバー空間43と連通し、且つ、第2エンドプレート50の外周面50cで開口しているとともに、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されている。
【0078】
このような8つの第1拡散油路41が形成されることで、チャンバー空間43に充填されたフレッシュなオイルの一部を、かかる第1拡散油路41を通じて、遠心力によって第2エンドプレート50の外周面50cから径方向外側に飛ばすことが可能となる。そうして、第1~第3エンドプレート40,50,60は、反出力軸側AOSのコイルエンド93aと径方向に見て重なるように配置されていることから、冷却対象部の一つであるコイルエンド93aを冷却することができる。
【0079】
しかも、コイルエンド93aへ飛ばされるオイルは、ロータコア30とは別体の第2および第3エンドプレート50,60に形成されたチャンバー空間43に一旦充填されるだけであり、ロータコア30等を冷やした(昇温した)後ではなく、十分に冷えた状態のままコイルエンド93aに供給されることから、コイルエンド93aを効率的に冷却することができる。
【0080】
ここで、仮に第1拡散油路41がオイルで塞がれてしまうと、第1拡散油路41内に負圧が生じ、これに起因してチャンバー空間43内におけるオイルの均一性が損なわれるケースも想定される。もっとも、本実施形態では、第1拡散油路41は、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されていることから、第1拡散油路41がオイルで塞がれてしまうのを抑制することができ、これにより、コイルエンド93aを冷却しつつチャンバー空間43内におけるオイルの均一性を維持することが可能となっている。
【0081】
以上のようにして、
図12(c)に示すようなオイルの流れが、換言すると、
図4に示すロータ10におけるオイルの流れのうち、第1~第3エンドプレート40,50,60に対応する部分が実現されることになる。
【0082】
≪径方向油路≫
図13は、第3エンドプレート60をロータコア30に取り付けた状態を模式的に示す図である。なお、
図13(a)は、第3エンドプレート60をロータコア30の反出力軸側AOSの端面30aに取り付けた状態を示す部分透視図である。また、
図13(b)および(c)は、それぞれ
図13(a)のb-b線およびc-c線の矢視断面図である。さらに、
図13(d)は、第1~第3エンドプレート40,50,60内およびロータコア30内におけるオイルの流れを示す斜視図である。また、
図13(a)では、図を見易くするために、径方向油路61’,62’以外を破線で示している。さらに、
図13(b)および(c)では、図を見易くするために、第3エンドプレート60の厚さを直径に比して誇張して示している。
【0083】
図13(a)に示すように、第1径方向溝61と各磁極の中心線(所謂d軸)とが周方向で一致するように、第3エンドプレート60の裏面60bをロータコア30の反出力軸側AOSの端面30aに溶接等で取り付けると、
図13(b)に示すように、ロータコア30の反出力軸側AOSの端面30aで第1径方向溝61が蓋をされて、チャンバー空間43よりも出力軸側OSで径方向に延びる第1径方向油路61’が8つ形成されることになる。各第1径方向油路61’は、第1径方向溝61が蓋をされたものであることから、第1径方向溝61と同様に、径方向内側の端部がチャンバー空間43と連通孔67を介して連通している。かかる第1径方向油路61’は、径方向外側の端部が磁石孔31の空隙31cと連通するようにその長さが設定されている。
【0084】
また、ロータコア30の反出力軸側AOSの端面30aで第2径方向溝62も蓋をされて、チャンバー空間43よりも出力軸側OSで径方向外側に行くほど周方向に傾斜して延びる第2径方向油路62’が16条形成されることになる。各第2径方向油路62’は、第2径方向溝62が蓋をされたものであることから、第2径方向溝62と同様に、径方向内側の端部が連通孔67を介してチャンバー空間43と連通している。かかる第2径方向油路62’は、径方向外側の端部が磁石孔36の空隙36a(または空隙33b)と連通するようにその長さおよび傾斜方向が設定されている。
【0085】
図14は、ロータコア30の要部を模式的に示す断面図である。なお、
図14(a)では、オイルを黒塗り部分で示している。また、
図14(b)は、
図14(a)に示すオイルに遠心力が作用した状態を示している。本実施形態のロータ構造では、このような8つの第1径方向油路61’および16条の第2径方向油路62’を形成することで、
図13(a)の黒塗り部分で示すように、オイルが24か所の空隙31c,33b,36a(磁石孔31,33,36内)を通ってロータコア30内部を反出力軸側AOSから出力軸側OSへ流れるようになっている。
【0086】
このように、複数の空隙31c,33b,36aを通って、オイルがロータコア30内部を軸方向に流れることから、かかるオイルによって冷却対象部の一つである永久磁石101,102,103,106を直接的に冷却することができる。これにより、例えば、ロータコア30における永久磁石101,102,…の近傍に設けられた孔(油路)内にオイルを流すような構造等に比して、永久磁石101,102,…を効率的に冷却することができる。
【0087】
さらに、本実施形態のロータ構造では、ロータシャフト20のオイル導入路20aからチャンバー空間43へオイルが充填されるとともに、チャンバー空間43から複数の空隙31c,33b,36aへオイルが分配されるように構成されていることから、例えばオイル導入路20aから空隙31c,33b,36aへ直接的にオイルを送るような構造に比して、複数の空隙31c,33b,36aに対してオイルを均等に分配することができる。
【0088】
なお、上述の如く、裏面60bに形成された第1および第2径方向溝61,62と、表面60aに形成された環状溝63と、を連通する連通孔67は、連結溝65と周方向における位置が一致していない。それ故、8つの連結流路45を通って、チャンバー空間43に充填されるフレッシュなオイルが、8つの第1径方向油路61’および16条の第2径方向油路62’へ均等に流れ易くなり、これにより、複数の空隙31c,33b,36aに対してオイルをより一層均等に分配することが可能となっている。
【0089】
しかも、空隙31c,33b,36aへ分配されるオイルは、ロータコア30とは別体の第2および第3エンドプレート50,60に形成されたチャンバー空間43に一旦充填されるだけであり、ロータコア30等を冷やした(昇温した)後ではなく、十分に冷えた状態のまま空隙31c,33b,36aに供給されることから、永久磁石101,102,…を効果的に冷却することができる。これらにより、永久磁石101,102,…に対する冷却が不十分となるのを抑制することができ、したがって、永久磁石101,102,…が減磁すること、延いてはトルク低下が発生するのを抑えることができる。
【0090】
加えて、本実施形態のロータ構造では、上述の如く、ロータコア30を所謂スキューレスとしていることから、空隙31c,33b,36aを流れるオイルに対する流路抵抗を小さくすることができ、これにより、永久磁石101,102,…をより一層効率的に冷却することができる。
【0091】
なお、本実施形態では、
図14(a)に示すように、空隙34a,35aにはオイルを流していない(永久磁石104,105を冷却対象としていない)が、これは、チャンバー空間43からロータコア30側にオイルを流し過ぎると、コイルエンド93aへのフレッシュなオイルの供給量が減り過ぎること、および、ステータ90に近い永久磁石101,102,103,106の方が、ステータ90から遠い永久磁石104,105よりも高温になり易いことを考慮したためである。
【0092】
ところで、冷却の必要性が高まるモータ駆動中は、ロータ10は絶えず回転しており、オイルにも遠心力(
図14(b)の太線矢印参照)が作用することから、空隙31c,33b,36a(磁石孔31,33,36内)を軸方向に流れるオイルも、
図14(b)に示すように、空隙31c,33b,36aにおける径方向外側部分に集まり易くなる。このため、仮に、第1および第2径方向油路61’,62’における径方向外側の端部を、空隙31c,33b,36aにおける、オイルが集まっている径方向外側の部分と連通させてしまうと、空隙31c,33b,36aにオイルがスムーズに導入され難くなるケースも想定される。
【0093】
また、オイルは、第1および第2径方向油路61’,62’を径方向外側に流れる一方、空隙31c,33b,36aへ供給される際は軸方向に流れるところ、仮に、反出力軸側AOSで第1および第2径方向油路61’,62’を区画する面(「第1区画面」とする。)61a,62aと、径方向外側で第1および第2径方向油路61’,62’を区画する面(「第2区画面」とする。)61b,62bと、が直交している場合には、オイルがスムーズに方向転換しないケースも想定される。加えて、上述の如く、オイルにも遠心力が作用することから、第1および第2径方向油路61’,62’を径方向に流れたオイルは、第2区画面61b,62bに押し付けられ易くなるため、第1区画面61a,62aと第2区画面61b,62bとが直交している場合等には、より一層オイルが方向転換し難くなることが想定される。
【0094】
そこで、本実施形態のロータ構造では、第1および第2径方向油路61’,62’における径方向外側の端部を、空隙31c,33b,36aにおける径方向内側の部分と連通させるとともに、第1区画面61a,62aと第2区画面61b,62bとを、周方向に見て、R形状で接続するようにしている。
【0095】
図15は、第1および第2径方向油路61’,62’を模式的に示す斜視図である。本実施形態では、
図13(b)および(c)並びに
図15(a)に示すように、第1および第2径方向油路61’,62’における径方向外側の端部が、空隙31c,33b,36aにおける径方向内側の部分と連通していることから、換言すると、空隙31c,33b,36aにおける、オイルが集まっていない部分と連通していることから、第1および第2径方向油路61’,62’から空隙31c,33b,36aにオイルをスムーズに導入させることができる。
【0096】
また、
図13(b)および(c)並びに
図15(b)に示すように、第1区画面61a,62aと第2区画面61b,62bとが、周方向に見て、R形状部61c,62cで接続されていることから、遠心力下において、第1および第2径方向油路61’,62’を径方向外側に流れたオイルが空隙31c,33b,36aへ供給される際の、軸方向へのスムーズな方向転換を実現することができる。これらにより、冷却対象部の一つである永久磁石101,102,103,106をより効率的に冷却することができる。
【0097】
以上のようにして、
図13(d)に示すようなオイルの流れが、換言すると、
図4に示すロータ10におけるオイルの流れのうち、第2および第3エンドプレート50,60並びにロータコア30に対応する部分が実現されることになる。
【0098】
<出力軸側のエンドプレート>
図1,3および4に示すように、ロータコア30の出力軸側OSの端部に取り付けられるエンドプレートには、第4および第5エンドプレート70,80が含まれている。なお、請求項との関係では、本実施形態の第4および第5エンドプレート70,80が、本発明で言うところの「ロータコアの軸方向他方側の端部に、ロータコアの軸心と同心に取り付けられる円環状の他方側エンドプレート」に相当する。
【0099】
第4および第5エンドプレート70,80は、第1~第3エンドプレート40,50,60と同様、アルミニウム製の円環状のプレートであり、ロータコア30の外周面および内周面の形状と同じ外形をそれぞれ有していて、溶接等で組み付けられることで出力軸側OSのエンドプレートを構成する。第4および第5エンドプレート70,80は、
図1に示すように、冷却対象部の一つである出力軸側OSのコイルエンド93bと径方向に見て重なるように配置されている。
【0100】
≪第4エンドプレート≫
図16は、第4エンドプレート70を模式的に示す図である。なお、
図16(a)は、反出力軸側AOSの面(表面70a)を示す図である。また、
図16(b)は、
図16(a)および(c)のb-b線の矢視断面図である。さらに、
図16(c)は、出力軸側OSの面(裏面70b)を示す図である。また、
図16(b)では、図を見易くするために、第4エンドプレート70の厚さを直径に比して誇張して示している。
【0101】
第4エンドプレート70には、
図16(a)~(c)に示すように、周方向に45度の等間隔で第4エンドプレート70を貫通する、外側貫通孔71が8つ形成されている。これら外側貫通孔71の径方向の位置は、8つの空隙31cとそれぞれ一致している。また、第4エンドプレート70には、外側貫通孔71よりも径方向内側で第4エンドプレート70を貫通する、外側貫通孔71よりも大径の内側貫通孔73が16個形成されている。これら内側貫通孔73の径方向の位置は、16個の空隙33b,36aとそれぞれ一致している。
【0102】
第4エンドプレート70の表面70aには、
図16(a)に示すように、周方向に45度の等間隔で、外周縁を出力軸側OSに窪ませたU字状の排出凹部79が8つ形成されている。一方、第4エンドプレート70の裏面70bには、
図16(c)に示すように、外側貫通孔71および内側貫通孔73から径方向外側に突出するとともに、反出力軸側AOSに窪む、軸方向に見て台形状の連通溝75,77がそれぞれ形成されている。
【0103】
≪第5エンドプレート≫
図17は、第5エンドプレート80を模式的に示す図である。
図17(a)は、反出力軸側AOSの面(表面80a)を示す図である。また、
図17(b)は、第2拡散溝81,83を示す斜視図である。なお、第5エンドプレート80の出力軸側OSの面(裏面80b(
図18参照))は、平坦に形成されていて、特徴を有しないため、その詳細な説明を省略する。
【0104】
第5エンドプレート80の表面80aには、
図17(a)および(b)に示すように、周方向に45度の等間隔で径方向外側に放射状に延び、出力軸側OSに窪む第2短型拡散溝81が8つ形成されている。第2短型拡散溝81は、その径方向内側の端部が外側貫通孔71と略一致しているとともに、第5エンドプレート80の外周面80cまで延びて、当該外周面80cで開口している。第2短型拡散溝81は、径方向外側に行くほどその溝幅が大きくなるように形成されている。
【0105】
また、第5エンドプレート80の表面80aには、径方向外側に放射状に延び、出力軸側OSに窪む、第2短型拡散溝81よりも長い第2長型拡散溝83が16個形成されている。第2長型拡散溝83は、その径方向内側の端部が内側貫通孔73と略一致しているとともに、第5エンドプレート80の外周面80cまで延びて、当該外周面80cで開口している。第2長型拡散溝83は、第2短型拡散溝81と同様、径方向外側に行くほどその溝幅が大きくなるように形成されている。
【0106】
≪第2拡散油路≫
図18は、第4エンドプレート70と第5エンドプレート80とを重ねた状態を模式的に示す図である。なお、
図18(a)は、第4エンドプレート70と第5エンドプレート80とを重ねた状態を示す部分透視図である。また、
図18(b)は、第4および第5エンドプレート70,80を重ねることで形成される空間を示す斜視図である。さらに、
図18(c)および(d)は、それぞれ
図18(a)のc-c線およびd-d線の矢視断面図に相当する、第4および第5エンドプレート70,80をロータコア30に取り付けた状態を示す断面図である。また、
図18(e)は、ロータコア30並びに第4および第5エンドプレート70,80内におけるオイルの流れを示す斜視図である。
図18(c)および(d)では、図を見易くするために、第4および第5エンドプレート70,80の厚さを直径に比して誇張して示している。
【0107】
図18(a)に示すように、第4エンドプレート70の裏面70bと第5エンドプレート80の表面80aとを同心で軸方向に重ねると、
図18(b)に示すように、第4エンドプレート70の裏面70bで第2短型拡散溝81が蓋をされて、径方向に延びる空間である第2短型拡散油路81’が8つ形成されることになる。各第2短型拡散油路81’は、第2短型拡散溝81が蓋をされたものであることから、第2短型拡散溝81と同様に、径方向内側の端部が外側貫通孔71と連通し、且つ、第5エンドプレート80の外周面80cで開口しているとともに、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されている。
【0108】
同様に、第4エンドプレート70の裏面70bで第2長型拡散溝83が蓋をされて、径方向に延びる空間である第2長型拡散油路83’が16個形成されることになる。各第2長型拡散油路83’は、第2長型拡散溝83が蓋をされたものであることから、第2長型拡散溝83と同様に、径方向内側の端部が内側貫通孔73と連通し、且つ、第5エンドプレート80の外周面80cで開口しているとともに、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されている。
【0109】
外側貫通孔71と空隙31cと(内側貫通孔73と空隙33b,36aと)が周方向で一致するように、第4エンドプレート70の表面70aをロータコア30の出力軸側OSの端面30bに溶接等で取り付けると、
図18(c)に示すように、外側貫通孔71を介して第2短型拡散油路81’と空隙31cとが連通するとともに、内側貫通孔73を介して第2長型拡散油路83’と空隙33b,36aとが連通する。
【0110】
図19は、外側および内側貫通孔71,73を模式的に示す斜視図である。ところで、オイルは、空隙31c,33b,36aを軸方向に流れる一方、第2短型拡散油路81’および第2長型拡散油路83’を径方向外側に流れることから、オイルがスムーズに方向転換しないケースも想定される。そこで、本実施形態のロータ構造では、第2短型拡散油路81’および第2長型拡散油路83’と外側および内側貫通孔71,73とが連通する部分に、周方向に見て、R形状をなす連通溝75,77を形成するようにしている。これにより、空隙31c,33b,36aから第2短型拡散油路81’および第2長型拡散油路83’にオイルをスムーズに導入させることができる。
【0111】
このような第2短型拡散油路81’および第2長型拡散油路83’が形成されることで、空隙31c,33b,36aを流れたオイルを、かかる第2短型拡散油路81’および第2長型拡散油路83’を通じて、遠心力によって第5エンドプレート80の外周面80cから径方向外側に飛ばすことが可能となる。そうして、第4および第5エンドプレート70,80は、出力軸側OSのコイルエンド93bと径方向に見て重なるように配置されていることから、冷却対象部の一つである出力軸側OSのコイルエンド93bを冷却することができる。
【0112】
また、第2短型拡散油路81’および第2長型拡散油路83’も、第1拡散油路41と同様、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されていることから、第2短型拡散油路81’および第2長型拡散油路83’がオイルで塞がれてしまうのを抑えることができる。これにより、例えば負圧の生じた第2短型拡散油路81’および第2長型拡散油路83’と連通する磁石孔を流れるオイルの量が増えることで、オイルの均等な分配が損なわれるといった現象が生じるのを抑えることができる。
【0113】
ここで、反出力軸側AOSのコイルエンド93aとは異なり、出力軸側OSのコイルエンド93bには、ロータコア30等を冷やした後の(ある程度昇温した)オイルが供給されることになるが、第2短型拡散油路81’および第2長型拡散油路83’の数(24)は第1拡散油路41の数(8)よりも多く設定されていることから、換言すると、コイルエンド93bに供給されるオイル量を相対的に多くすることから、コイルエンド93bをも効率的に冷却することができる。
【0114】
以上のようにして、
図18(e)に示すようなオイルの流れが、換言すると、
図4に示すロータ10におけるオイルの流れのうち、ロータコア30並びに第4および第5エンドプレート70,80に対応する部分が実現されることになる。
【0115】
なお、上記ロータ構造では、第3エンドプレート60と第4エンドプレート70とでロータコア30を軸方向に挟むが、ロータコア30は磁性体薄板を積み重ねた積層体であることから、ロータコア30内部を軸方向に流れるオイルが磁性体薄板同士の隙間に漏れる場合も想定される。この場合には、第3エンドプレート60と第4エンドプレート70とで挟まれていることで、漏れオイルが逃げ場を失うとも思えるが、本実施形態では、第3および第4エンドプレート60,70に排出凹部69,79を形成していることから、かかる排出凹部69,79を通じて、磁性体薄板同士の隙間に漏れたオイルをロータコア30外に排出することができる。
【0116】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0117】
上記実施形態では、永久磁石101,102,103,106およびコイルエンド93a,93bを冷却対象部としたが、これに限らず、例えば、コイルエンド93a,93bについては別の冷却手段を講じ、永久磁石101,102,103,106のみを冷却するようにしてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、各磁極を構成する6つの永久磁石101,102,103,104,105,106のうち4つの永久磁石101,102,103,106を冷却対象としたが、これに限らず、例えば
図20(a)に示すように、チャンバー空間43と連通する径方向油路62”を設けて、
図20(b)の黒塗り部分で示すように、空隙34a,35aにもオイルを流して、永久磁石104,105を冷却対象とするようにしてもよい。加えて、
図20(c)の黒塗り部分で示すように、永久磁石101,102,103,104,105,106と接触しない空隙31a,31e,37aにもオイルを流して、永久磁石103,106を間接的に冷却するようにしてもよい。
【0119】
さらに、上記実施形態では、ロータコア30を所謂スキューレスとしたが、これに限らず、例えば
図21に示すような、各々磁性体薄板を所定枚数で軸方向に積み重ねた4つの積層体30A’,30B’,30C’,30D’を、角度θずつずらして組み合わせた、スキュー角θを有するロータコア30’に本発明を適用してもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、オイル排出孔29や連結流路45や第1拡散油路41や第1径方向油路61’や第2短型拡散油路81’などの数を8つとし、第2径方向油路62’や第2長型拡散油路83’などの数を16条としたが、これに限らず、これらの数は適宜設定するようにしてもよい。
【0121】
さらに、上記実施形態では、ロータ10の磁極を8極としたが、これに限らず、例えば磁極を8極未満としてもよいし、磁極数を8極を超える数としてもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、各磁極を径方向外側でV字状に配置された外側埋込磁石部100Aと、径方向内側でU字状に配置された内側埋込磁石部100Bとの2層構造としたが、これに限らず、例えばV字状や直線状に配置された外側埋込磁石部の1層構造としてもよい。
【0123】
さらに、上記実施形態では、第1~第3エンドプレート40,50,60にて反出力軸側AOSのエンドプレートを構成するとともに、第4および第5エンドプレート70,80にて出力軸側OSのエンドプレートを構成するようにしたが、これに限らず、例えば鋳造用砂型を用いて、反出力軸側AOSおよび出力軸側OSのエンドプレートをそれぞれ一部材で構成するようにしてもよい。
【0124】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明によると、同期型モータ内部の冷却対象部を効率的に冷却することができるので、同期型モータのロータ構造に適用して極めて有益である。
【符号の説明】
【0126】
1 同期型モータ
10 ロータ
20 ロータシャフト
30 ロータコア
31,33,36 磁石孔
40 第1エンドプレート(一方側エンドプレート)
41 第1拡散油路
43 チャンバー空間
50 第2エンドプレート(一方側エンドプレート)
50c 外周面
60 第3エンドプレート(一方側エンドプレート)
61’ 第1径方向油路
61a,62a 第1区画面(軸方向一方側で径方向油路を区画する面)
62’ 第2径方向油路
61b,62b 第2区画面(径方向外側で径方向油路を区画する面)
70 第4エンドプレート(他方側エンドプレート)
80 第5エンドプレート(他方側エンドプレート)
81’ 第2短型拡散油路(第2拡散油路)
83’ 第2長型拡散油路(第2拡散油路)
90 ステータ
93 ステータコイル
93a,93b コイルエンド(冷却対象部)
101,102 外側の永久磁石(冷却対象部)
103,106 内側の永久磁石(冷却対象部)
【要約】
【課題】同期型モータ内部の冷却対象部を効率的に冷却することが可能なロータ構造を提供する。
【解決手段】ステータで発生する回転磁界に同期してロータ10が回転する同期型モータ内部の冷却対象部にオイルを供給するロータ構造である。ロータ10は、冷却対象部の一つである複数の永久磁石101,102,103,106と、各永久磁石101,102が埋め込まれる、軸方向に延びる磁石孔31が複数形成された円筒状のロータコア30と、を備えている。ロータ10は、オイルが複数の磁石孔31内を通ってロータコア30内部を軸方向に流れるように構成されている。
【選択図】
図4