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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】モータ冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K9/19 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024033423
(22)【出願日】2024-03-05
【審査請求日】2024-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523429519
【氏名又は名称】MCF Electric Drive株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】板坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】椛嶌 寿行
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-009508(JP,A)
【文献】特開2022-181185(JP,A)
【文献】国際公開第2023/243161(WO,A1)
【文献】特開2018-085871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用のオイルをモータの各部へ供給するモータ冷却システムであって、
オイルを冷却する冷却手段と、
ステータコイルが装着される、円筒状のステータコアを有するステータと、
上記ステータコアの内側に配置される、円筒状のロータコアを有するロータと、
上記冷却手段を経由したオイルを上記ステータに供給可能なステータ側油路と、
上記冷却手段を経由したオイルを上記ロータに供給可能なロータ側油路と、を備え、
上記ステータは、上記ステータ側油路を通ったオイルの一部が、上記ステータコアの軸方向一方側の端部に取り付けられたオイルプレート内の、当該ステータコアと同心に形成された円環状の空間を通って、当該ステータコア内を流れることなく、上記ステータコイルにおける軸方向一方側のコイルエンドに供給されるとともに、オイルの残部のうちの少なくとも一部が、当該円環状の空間を通って、上記ステータコア内に軸方向に供給されるように構成され、
上記ロータは、上記ロータ側油路を通ったオイルの一部が、上記ロータコアの軸方向一方側の端部に取り付けられたエンドプレート内の、当該ロータコアと同心に形成された円環状の空間を通って、当該ロータコア内を流れることなく、上記軸方向一方側のコイルエンドに対して径方向内側から供給されるとともに、オイルの残部が、当該円環状の空間を通って、当該ロータコア内に軸方向に供給されるように構成されていることを特徴とするモータ冷却システム。
【請求項2】
上記請求項に記載のモータ冷却システムにおいて、
上記ステータは、上記ステータ側油路を通ったオイルの残部のうちの一部が、上記ステータコア内に供給されるとともに、オイルの残部のうちの他の一部が、上記ステータコアを流れることなく、軸方向他方側のコイルエンドに供給されるように構成され、
上記ロータは、上記ロータコア内に供給されたオイルが、当該ロータコアの軸方向他方側の端部に至った後、上記軸方向他方側のコイルエンドに対して径方向内側から供給されるように構成されていることを特徴とするモータ冷却システム。
【請求項3】
上記請求項に記載のモータ冷却システムにおいて、
上記ロータコアは、永久磁石が埋め込まれる、軸方向に延びる磁石孔が複数形成されたものであり、
上記ステータは、上記ステータコア内に供給されるオイルが、当該ステータコアに形成されたスロットと、当該スロットに挿入された上記ステータコイルと、の間を通って軸方向に流れるように構成され、
上記ロータは、上記ロータコア内に供給されるオイルが、上記磁石孔を通って軸方向に流れるように構成されていることを特徴とするモータ冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ冷却システムに関し、特に、冷却用のオイルをモータの各部へ供給するモータ冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の普及に伴い、その駆動源であるモータの、搭載性および生産性の向上、車種展開の容易化、並びに、低コスト化が望まれているところ、これらを実現するためには、出力を維持したままでのモータの小型化、換言すると、モータの出力密度を高めることが要求される。
【0003】
モータの出力密度を高めるに当たっては、ステータコイルに流す電流の高密度化が避けられないが、モータにおいて電流密度を上げると、例えば、ステータコアや、ステータコイルや、ロータコアや、(同期型モータの場合には)永久磁石等が高温になるため、場合によっては、モータ出力の低下に繋がる可能性がある。特に、ステータコアの軸方向両端部から突出するステータコイルのコイルエンドは、冷媒等が行渡り難く、高温になった場合にはコイル被覆(絶縁材)が溶損してしまう可能性もあるため、冷却の必要性が高い箇所の一つと言える。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、ステータコアの上方において軸方向に延びる冷媒流路を有し、冷媒流路に形成された孔である冷媒滴下部から、コイルエンドに冷媒を滴下することでコイルを冷却するステータ冷却手段と、冷媒が流通する軸流路(回転軸の内部の空洞)の吐出孔から吐出され、ロータの内部を流通した冷媒を、遠心力により径方向外側に飛ばしてコイルエンドに当てることでコイルを冷却する冷却手段と、を備える回転電機の冷却構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-146387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、ロータの内部を流通した冷媒、換言すると、ロータの内部を冷却することで、ある程度昇温した後の冷媒をコイルエンドに当てることから、運転状態によってはコイルエンドが十分に冷却されない可能性もあり、その点で、特許文献1のものには改善の余地がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ステータコイルのコイルエンドを効率良く冷却することが可能なモータ冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係るモータ冷却システムでは、ステータコアやロータコアの冷却に供されていない低温のオイルを、コイルエンドに対して複数の方向から同時に供給するようにしている。
【0009】
具体的には、本発明は、冷却用のオイルをモータの各部へ供給するモータ冷却システムを対象としている。
【0010】
そして、このモータ冷却システムは、オイルを冷却する冷却手段と、ステータコイルが装着される、円筒状のステータコアを有するステータと、上記ステータコアの内側に配置される、円筒状のロータコアを有するロータと、上記冷却手段を経由したオイルを上記ステータに供給可能なステータ側油路と、上記冷却手段を経由したオイルを上記ロータに供給可能なロータ側油路と、を備え、上記ステータは、上記ステータ側油路を通ったオイルの一部が、上記ステータコアの軸方向一方側の端部に取り付けられたオイルプレート内の、当該ステータコアと同心に形成された円環状の空間を通って、当該ステータコア内を流れることなく、上記ステータコイルにおける軸方向一方側のコイルエンドに供給されるとともに、オイルの残部のうちの少なくとも一部が、当該円環状の空間を通って、当該ステータコア内に軸方向に供給されるように構成され、上記ロータは、上記ロータ側油路を通ったオイルの一部が、上記ロータコアの軸方向一方側の端部に取り付けられたエンドプレート内の、当該ロータコアと同心に形成された円環状の空間を通って、上記ロータコア内を流れることなく上記軸方向一方側のコイルエンドに対して径方向内側から供給されるとともに、オイルの残部が、当該円環状の空間を通って、当該ロータコア内に軸方向に供給されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、冷却手段を経由した、換言すると、相対的に低温状態に維持されたオイル(便宜上「フレッシュなオイル」ともいう。)のうち、ステータ側油路を通ったオイルの少なくとも一部が、ステータコア内を流れることなく、少なくとも軸方向一方側(以下、単に「一方側」ともいう。)のコイルエンドに供給されることから、フレッシュなオイルによって、例えばコイルエンドの径方向外側や、径方向におけるコイルエンドの中央部等を冷却することができる。
【0012】
さらに、フレッシュなオイルのうち、ロータ側油路を通ったオイルの少なくとも一部が、ロータコア内を流れることなく、少なくとも一方側のコイルエンドに供給されることから、フレッシュなオイルによってコイルエンドを径方向内側(以下、単に「内側」ともいう。)から冷却することができる。
【0013】
このように、ステータコアやロータコアの冷却に供されていないフレッシュなオイルが、コイルエンドに対して、複数の方向から同時に供給されることから、コイルエンドを効率良く冷却することができる。
【0015】
また、ステータ側油路を通ったオイルの一部が、一方側のコイルエンドに供給されるとともに、オイルの残部のうちの少なくとも一部が、ステータコア内に軸方向に供給されることから、フレッシュなオイルによって一方側のコイルエンドが冷却される状態を維持しつつ、フレッシュなオイルによってステータコア内をも冷却することができる。
【0016】
さらに、ロータ側油路を通ったオイルの一部が、一方側のコイルエンドに供給されるとともに、オイルの残部が、ロータコア内に軸方向に供給されることから、フレッシュなオイルによって一方側のコイルエンドが内側から冷却される状態を維持しつつ、フレッシュなオイルによってロータコア内をも冷却することができる。
【0017】
このように、フレッシュなオイルが、一方側のコイルエンドに供給されるのみならず、ステータコア内およびロータコア内にも同時に供給されることから、コイルエンドを含むモータの各部を効率良く冷却することができる。
加えて、ステータコアの軸方向一方側の端部に取り付けられたオイルプレートや、ロータコアの軸方向一方側の端部に取り付けられたエンドプレートを利用することで、ステータコア内やロータコア内を流れることなく、フレッシュなオイルによってコイルエンドを冷却するという構成を容易に実現することができる。
しかも、ステータコア内やロータコア内に軸方向に供給されるフレッシュなオイルは、オイルプレート内やエンドプレート内に形成された円環状の空間を一旦通ってから、ステータコア内やロータコア内に分配されることから、例えばステータコアに形成された油路やロータコアに形成された油路等に、フレッシュなオイルを均等に供給することが可能となる。
このように、フレッシュなオイルが、一方側のコイルエンドに供給されるのみならず、ステータコア内およびロータコア内に均等に供給されることから、コイルエンドを含むモータの各部をより一層効率良く冷却することができる。
【0018】
さらに、上記モータ冷却システムでは、上記ステータは、上記ステータ側油路を通ったオイルの残部のうちの一部が、上記ステータコア内に供給されるとともに、オイルの残部のうちの他の一部が、上記ステータコアを流れることなく、軸方向他方側のコイルエンドに供給されるように構成され、上記ロータは、上記ロータコア内に供給されたオイルが、当該ロータコアの軸方向他方側の端部に至った後、上記軸方向他方側のコイルエンドに対して径方向内側から供給されるように構成されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、ステータ側油路を通ったオイルの残部のうちの他の一部が、軸方向他方側(以下、単に「他方側」ともいう。)のコイルエンドに供給されることから、フレッシュなオイルによって他方側のコイルエンドをも冷却することができる。
【0020】
さらに、ロータコア内に供給されたオイルが、他方側のコイルエンドに対して内側から供給されることから、ロータコア内を冷却した後のオイルによってとは言え、一方側のみならず他方側のコイルエンドを内側から冷却することができる。
【0021】
このように、フレッシュなオイルが、一方側のコイルエンド、ステータコア内およびロータコア内に同時に供給されるのみならず、他方側のコイルエンドへもオイルが供給されることから、一方側のコイルエンドを含むモータの各部をより広範囲に亘って効率良く冷却することができる。
【0026】
さらに、上記モータ冷却システムでは、上記ロータコアは、永久磁石が埋め込まれる、軸方向に延びる磁石孔が複数形成されたものであり、上記ステータは、上記ステータコア内に供給されるオイルが、当該ステータコアに形成されたスロットと、当該スロットに挿入された上記ステータコイルと、の間を通って軸方向に流れるように構成され、上記ロータは、上記ロータコア内に供給されるオイルが、上記磁石孔を通って軸方向に流れるように構成されていてもよい。
【0027】
この構成によれば、スロットとステータコイルとの間を通ってオイルがステータコア内を軸方向に流れるとともに、永久磁石が埋め込まれる磁石孔を通ってオイルがロータコア内を軸方向に流れることから、フレッシュなオイルによってステータコイルおよび永久磁石を直接的に冷却することができる。したがって、コイルエンドを含むモータの各部をより一層確実に効率良く冷却することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明に係るモータ冷却システムによれば、ステータコイルのコイルエンドを効率良く冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態1に係るモータ冷却システムの要部を模式的に示す縦断面図である。
図2】電気自動車における冷却システムの一例を模式的に説明するブロック図である。
図3】ステータを模式的に示す図である。
図4】オイルプレートを模式的に示す図である。
図5】ロータを模式的に示す斜視図である。
図6】ロータにおける油路およびオイルの流れを模式的に示す図である。
図7】実施形態1の変形例に係るモータ冷却システムを模式的に示す縦断面図である。
図8】本発明の実施形態2に係るモータ冷却システムを模式的に示す縦断面図である。
図9】ステータを模式的に示す図である。
図10】ロータを模式的に示す図である。
図11】ロータにおける油路およびオイルの流れを模式的に示す図である。
図12】本発明の実施形態3に係るモータ冷却システムを模式的に示す縦断面図である。
図13】オイルプレートおよびエンドプレートを模式的に示す図である。
図14】ステータにおけるオイルの流れを模式的に説明する斜視図である。
図15】ロータにおける油路およびオイルの流れを模式的に示す図である。
図16】その他の実施形態に係るロータコアを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、各図における、符号ACは同期型モータの軸心を、符号OSは出力軸側(軸方向(軸心ACの延びる方向)他方側)を、符号AOSは反出力軸側(軸方向一方側)をそれぞれ示している。
【0031】
(実施形態1)
-モータ冷却システムの概要-
図1は、本実施形態に係るモータ冷却システムS1の要部を模式的に示す縦断面図である。また、図2は、電気自動車における冷却システムSの一例を模式的に説明するブロック図である。このモータ冷却システムS1は、図2に示す電気自動車における冷却システムSの一部を構成していて、図1に示すように、冷却用のオイルをステータコイル17(図3参照)の第1コイルエンド(モータ1の各部)17aへ供給するものである。モータ冷却システムS1は、オイルを冷却する熱交換器(冷却手段)8と、ステータ10およびロータ40を有するモータ1と、熱交換器8を経由したオイルをステータ10に供給可能なステータ側油路80と、熱交換器8を経由したオイルをロータ40に供給可能なロータ側油路90と、を備えている。
【0032】
-冷却システム-
冷却システムSは、図2に示すように、インバータ冷却システム3と、モータ冷却システムS1と、を備えていて、インバータ冷却システム3とモータ冷却システムS1との間には熱交換器8が介在している。
【0033】
インバータ冷却システム3は、冷却水が循環する循環路3aと、各々循環路3a上に設けられた、インバータ5と、ラジエータ6と、冷却水を循環させるウォータポンプ7と、を有している。このインバータ冷却システム3では、インバータ5で生じた熱が冷却水に吸収されるとともに、冷却水に吸収された熱がラジエータ6により外部に放熱されることで、冷却水およびインバータ5が低温状態に維持される。
【0034】
一方、モータ冷却システムS1は、オイルが循環する循環路4と、各々循環路4上に設けられた、モータ1と、モータ1へオイルを圧送するオイルポンプ9と、を有している。このモータ冷却システムS1では、モータ1で生じた熱がオイルに吸収されるとともに、熱を吸収したオイルが、モータハウジング(図示せず)の底に溜まった後、循環路4へと戻るようになっている。そうして、このモータ冷却システムS1では、オイルが吸収した熱が、熱交換器8における循環路3aと循環路4との間接的な熱交換によって冷却水に吸収された後、ラジエータ6によって外部に放熱されることで、オイルが相対的に低温状態に維持される。
【0035】
以上のように構成された冷却システムSによって、本実施形態では、相対的に低温状態に維持されたオイル(便宜上「フレッシュなオイル」ともいう。)が、ステータ10側へはステータ側油路80を通って、また、ロータ40側へはロータ側油路90を通って、適宜の割合で送られるようになっている。
【0036】
-ステータ-
図3は、ステータ10を模式的に示す図である。より詳しくは、図3(a)は、ステータ10全体を示す斜視図であり、図3(b)は、第1コイルエンド17aを示す拡大斜視図である。なお、図3(a)では、図を見易くするために、ステータコイル17を図示省略している。ステータ10は、図3に示すように、円筒状のステータコア11と、ステータコア11に装着されるステータコイル17と、第1および第2オイルプレート20,20’と、第1および第2オイルガイド30,30’と、を備えている。
【0037】
<ステータコア>
ステータコア11は、例えば複数の電磁鋼鈑を軸方向に積層することで構成されていて、図3(a)に示すように、円筒状のヨーク12と、ヨーク12の内周面から径方向内側にそれぞれ突出するとともに、互いに間隔を空けて周方向に複数配列されるティース13と、を有している。このように、複数のティース13が互いに間隔を空けて周方向に配列されることで、隣り合うティース13によって区画(規定)される、径方向内側に開放するスロット15がステータコア11に複数形成されている。
【0038】
<オイルプレート>
図4は、第1オイルプレート20を模式的に示す図である。より詳しくは、図4(a)は、第1オイルプレート20の上部を示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のb-b線の矢視断面図であり、図4(c)は、ステータ10におけるオイルの流れを示す斜視図である。軸方向の反出力軸側AOS(以下、単に「反出力軸側AOS」ともいう。)の第1オイルプレート20、および、軸方向の出力軸側OS(以下、単に「出力軸側OS」ともいう。)の第2オイルプレート20’は、共に、樹脂等の非磁性材料からなり、円環状に形成されていて、ステータコア11と同様の断面外形を有している。具体的には、第1オイルプレート20は、ヨーク12に対応する部分(便宜上、「ヨーク22」という。)と、ティース13に対応する部分(便宜上、「ティース23」という。)と、スロット15に対応する部分(便宜上、「スロット25」という。)と、を有している。なお、第2オイルプレート20’も断面外形については、第1オイルプレート20と同様ゆえ、説明を省略する。
【0039】
第1オイルプレート20は、例えば2つの部材を軸方向に組み合わせることで構成されていて、図4(a)および(b)に示すように、内部に空間が形成されている。より詳しくは、第1オイルプレート20の内部には、円環状の外周壁部21によって径方向外側が区画される円環状の環状空間26が、第1オイルプレート20と同心に形成されている。外周壁部21の上端部は切欠かれていて、この切欠かれた部位が、環状空間26にオイルを導入するためのオイル導入口29となっている。
【0040】
また、第1オイルプレート20の内部には、環状空間26の径方向内側を区画する部位を径方向内側に窪ませることで、ティース23と同じ向きに延びる第1径方向油路27が形成されている。第1径方向油路27の先端部(径方向内側の端部)には、反出力軸側AOSに開口する貫通孔27aが形成されている。
【0041】
さらに、第1オイルプレート20の内部には、環状空間26の径方向内側を区画する部位を、第1径方向油路27よりも浅く径方向内側に窪ませることで、ティース23と同じ向きに延びる第2径方向油路28が形成されている。第2径方向油路28の先端部(径方向内側の端部)には、反出力軸側AOSに開口する貫通孔28aが形成されている。
【0042】
第1径方向油路27と第2径方向油路28とは、周方向で隣り合う一対の第1径方向油路27と、周方向で隣り合う一対の第2径方向油路28とが周方向に交互に並ぶように形成されている。なお、第2オイルプレート20’の内部には、このような環状空間26や第1径方向油路27や第2径方向油路28は形成されていない。
【0043】
第1オイルプレート20は、ステータコア11と同心で、且つ、周方向におけるティース23の位置がステータコア11のティース13の位置と一致するように、ステータコア11の反出力軸側AOSの端部に取り付けられている。また、第2オイルプレート20’も、第1オイルプレート20と同様の態様で、ステータコア11の出力軸側OSの端部に取り付けられている。
【0044】
<ステータコイル>
ステータコイル17は、互いに平行な2つの脚部と、2つの脚部を連結する連結部と、を有するU字状のコイル線で構成されていて、一部を除いてその表面が絶縁材で被覆されている。ステータコイル17は、例えば隣り合う一対のスロット15,25に対し、反出力軸側AOSから2つの脚部をそれぞれ挿入することでステータコア11並びに第1および第2オイルプレート20,20’に装着されている。そうして、第2オイルプレート20’のスロットから出力軸側OSに突出する、一のステータコイル17の脚部の先端部と、同じくスロットから出力軸側OSに突出する、他のステータコイル17の脚部の先端部と、が溶接等で接続されている。
【0045】
U字状のコイル線のうち、図3(b)に示すように、第1オイルプレート20のスロット25から反出力軸側AOSに突出している連結部が、第1コイルエンド17aを構成している。同様に、U字状のコイル線のうち、第2オイルプレート20’のスロットから出力軸側OSに突出して、溶接等で接続されている部分が、第2コイルエンド17bを構成している。このステータ10では、入力端子14を介して、電源(図示せず)からステータコイル17に電流が流れるようになっていて、ステータコイル17がステータ10における主な発熱源となっている。
【0046】
<オイルガイド>
反出力軸側AOSの第1オイルガイド30、および、出力軸側OSの第2オイルガイド30’は共に、樹脂等の非磁性材料からなり、円筒状に形成されている。第1および第2オイルガイド30,30’は、ステータコア11と同心で、且つ、軸方向において、ステータコア11並びに第1および第2オイルプレート20,20’とモータハウジングとの間に介在している。これにより、第1および第2オイルプレート20,20’がステータコア11側に押し込まれて、ステータコア11にしっかりと取り付けられるようになっている。
【0047】
第1オイルガイド30の上端部には、図3(a)に示すように、凹部が形成されていて、かかる凹部が、第1オイルプレート20のオイル導入口29にオイルを案内するオイル案内部31となっている。また、第1オイルガイド30の下端部は切欠かれていて、この切欠かれた部位が、オイルを排出するためのオイル排出口33となっている。
【0048】
<オイルの流れ>
以上のように構成されたステータ10では、熱交換器8における熱交換後のフレッシュなオイルが、ステータ側油路80を通って、図1および図4(c)の太線矢印OF1Aで示すように、ステータ10(より詳しくは、第1オイルガイド30のオイル案内部31)に供給される。オイル案内部31に供給されたフレッシュなオイルは、第1オイルプレート20のオイル導入口29に案内され、図4(b)の太線矢印で示すように、オイル導入口29から環状空間26に供給される。
【0049】
環状空間26に供給されたフレッシュなオイルは、図4(b)の細線矢印で示すように、第1径方向油路27および第2径方向油路28へ分流しながら、環状空間26内を流下する。これにより、図1および図4(c)の太線矢印OF1Bで示すように、環状空間26内にフレッシュなオイルが充填されていく。
【0050】
環状空間26内に充填されたフレッシュなオイルは、第1径方向油路27の先端部に形成された貫通孔27aや、第2径方向油路28の先端部に形成された貫通孔28aから、図1および図4(c)の太線矢印OF1Cで示すように、反出力軸側AOSに噴出され、第1コイルエンド17aに対し、貫通孔27a,28aの位置や傾斜角度等に応じて、例えば径方向外側から供給されたり、径方向における中央部等に供給されたりすることになる。
【0051】
このように、熱交換器8を経由して、ステータ側油路80を通ったフレッシュなオイルが、ステータコア11内を流れることなく、第1コイルエンド17aに対して直接的に供給されることから、フレッシュなままのオイルによって第1コイルエンド17aが径方向外側や中央部等から効率的に冷却される。
【0052】
-ロータ-
図5は、ロータ40を模式的に示す斜視図である。ロータ40は、図1に示すように、ステータ10と同心で、且つ、その外周面とティース13との間に隙間(エアギャップ)を空けるようにして、ステータコア11の内側に配置されている。ロータ40は、図5に示すように、ロータコア41と、ロータシャフト50と、ロータコア41に形成された磁石孔に埋め込まれる永久磁石101,102,103,104,105,106と、ロータコア41の軸方向の両端部にそれぞれ取り付けられる第1および第2エンドプレート60,70と、を有している。
【0053】
<ロータコア>
ロータコア41は、所定の形状に成形された円環状の磁性体薄板を所定枚数で軸方向に積み重ねた積層体であり、ロータシャフト50が焼き嵌めにて固定される中心穴を有する円筒状に形成されている。図5では4つの磁極のみを図示しているが、ロータコア41には、ロータ40の磁極数が8で且つ軸心ACから見た1磁極分の周方向に沿った見込み角度φが45度になるように、軸方向に延びる磁石孔が各磁極につき6つ形成されているとともに、かかる6つの磁石孔内に永久磁石101,102,…が埋め込まれている。ロータコア41は、図5に示すように、各々磁性体薄板を積み重ねた4つの積層体41A,41B,41C,41Dを、スキュー角=0度で組み合わせた、所謂スキューレスのロータコアとして構成されている。これにより、本実施形態では、磁石孔および永久磁石101,102,…は、軸方向におけるロータコア41の反出力軸側AOSの端から出力軸側OSの端まで真っ直ぐに延びている。なお、磁性体薄板の材質としては、珪素鋼板の一種である電磁鋼板を用いることができる。
【0054】
各磁極は、径方向外側でV字状に配置された2つの永久磁石101,102を含む外側埋込磁石部100Aと、径方向内側でU字状に配置された4つの永久磁石103,104,105,106を含む内側埋込磁石部100Bとの2層構造で構成されている。
【0055】
外側埋込磁石部100Aは、1つの磁石孔を有していて、2つの永久磁石101,102は、径方向外側に向かって互いの間隔が拡がり且つ径方向内側で互いの間隔が狭まるV字状をなすように磁石孔に挿入されている。磁石孔のうち、2つの永久磁石101,102で埋められていない部分は、空隙(フラックスバリア)42として残る。
【0056】
内側埋込磁石部100Bは、4つの磁石孔を有している。永久磁石103および永久磁石106は、径方向外側に向かって互いの間隔が拡がり且つ径方向内側で互いの間隔が狭まるように磁石孔にそれぞれ挿入されている。また、永久磁石104および永久磁石105は、磁石孔にそれぞれ挿入されていて、磁石孔のうち永久磁石104,105で埋められていない部分は、空隙43,44として残る。
【0057】
<ロータシャフト>
図6は、ロータ40における油路およびオイルの流れを模式的に示す図である。具体的には、図6(a)は、ロータシャフト50のオイル導入路50aを示す斜視図であり、図6(b)は、第1エンドプレート60内に形成される油路を示す斜視図であり、図6(c)は、ロータ40全体におけるオイルの流れを示す斜視図である。ロータシャフト50は、オイル導入部51と、シャフト本体部57と、を有している。
【0058】
≪オイル導入部≫
オイル導入部51は、図6(a)に示すように、円柱状の小径部52と、円柱状の大径部53とを、段差面を介して軸方向に同心で接続したような形状に形成されている。オイル導入部51には、ロータ側油路90と連通し、軸方向に延びるオイル導入孔54が貫通形成されている。大径部53の出力軸側OSの端部には、オイル導入孔54と連通する断面円形の凹部が形成されている。さらに、大径部53の出力軸側OSの端部には、凹部から径方向外側に、周方向に45度の等間隔で放射状に延びるオイル排出溝が8つ形成されている。各オイル排出溝は、径方向外側の端部が大径部53の外周面で開口している。
【0059】
≪シャフト本体部≫
シャフト本体部57は、図6(a)に示すように、軸心ACを中心とする円筒状に形成されている。このシャフト本体部57には、その中空部57aを軸方向に仕切る仕切り盤58が設けられている。また、シャフト本体部57には、周方向に45度の等間隔で径方向外側に放射状に延びてシャフト本体部57を貫通する、オイル排出孔59が8つ形成されている。
【0060】
≪オイル導入路≫
ロータシャフト50は、8つのオイル排出溝と8つのオイル排出孔59との周方向位置が一致するように、シャフト本体部57の中空部57aに大径部53を嵌合させた後、両者を溶接等で接合することで構成されている。オイル導入部51とシャフト本体部57とを組み合わせると、凹部およびオイル排出溝が、仕切り盤58の反出力軸側AOSの面で蓋をされて、図6(a)に示すように、円盤状空間55およびオイル排出路56がそれぞれ形成される。これにより、ロータ側油路90を流れたフレッシュなオイルが、オイル導入孔54を流れた後、円盤状空間55に充填され、この円盤状空間55からオイル排出路56を通って径方向外側に流れた後、オイル排出孔59を通じてロータシャフト50の外側に放射状に送り出される、オイル導入路50aが形成されることになる。
【0061】
<エンドプレート>
第1および第2エンドプレート60,70は、アルミニウム製の円環状のプレートであり、ロータコア41の外周面および内周面の形状と同じ外形をそれぞれ有している。第1エンドプレート60は、ロータコア41の反出力軸側AOSの端部に、また、第2エンドプレート70は、ロータコア41の出力軸側OSの端部にそれぞれ溶接等で組み付けられている。第1エンドプレート60は、図1に示すように、第1コイルエンド17aと径方向に見て重なるように配置されている。なお、第2エンドプレート70は、特徴を有しないため、その詳細な説明を省略する。
【0062】
第1エンドプレート60には、図6(b)に示すように、その内周面から径方向外側に、周方向に45度の等間隔で放射状に延びる連結流路61が8つ形成されている。また、第1エンドプレート60には、連結流路61の径方向外側の端部と連通し、連結流路61よりも径方向外側にさらに延びる第1拡散油路63が8つ形成されている。各第1拡散油路63は、第1エンドプレート60の外周面で開口しているとともに、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されている。そうして、8つのオイル排出孔59と8つの連結流路61とが周方向で一致するように、ロータシャフト50と第1エンドプレート60とを組み合わせると、図6(b)に示すように、ロータシャフト50のオイル導入路50aと第1拡散油路63とが連結流路61を介して連通することになる。
【0063】
なお、連結流路61および第1拡散油路63は、例えば鋳造用砂型を用いて形成してもよいし、また、例えば第1エンドプレート60を軸方向に2分割されるプレート(図示せず)でそれぞれ構成し、各プレートの表面や裏面に油路の一部となる溝や孔などを設け、それらの溝や孔などを軸方向に組み合わせることで形成してもよい。
【0064】
<オイルの流れ>
以上のように構成されたロータ40では、熱交換器8における熱交換後のフレッシュなオイルが、ロータ側油路90を通って、図1および図6(c)の太線矢印OF1Dで示すように、ロータ40(より詳しくは、オイル導入部51のオイル導入孔54)に供給される。オイル導入孔54に供給されたフレッシュなオイルは、オイル導入路50a内を順次流れて、図1および図6(c)の太線矢印OF1Eで示すように、オイル排出孔59を通じてロータシャフト50の外側に放射状に送り出される。
【0065】
そうして、オイル排出孔59から放射状に送り出されたフレッシュなオイルは、連結流路61を介して第1拡散油路63へと流れ、図1および図6(c)の太線矢印OF1Fで示すように、遠心力によって第1エンドプレート60の外周面から径方向外側に飛ばされて、第1コイルエンド17aに対して径方向内側から供給される。この際、第1拡散油路63は、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されていることから、第1拡散油路63がオイルで塞がれてしまうのを抑制することが可能となっている。
【0066】
このように、熱交換器8を経由して、ロータ側油路90を通ったフレッシュなオイルが、ロータコア41内を流れることなく、第1コイルエンド17aに対して径方向内側から供給されることから、フレッシュなままのオイルによって第1コイルエンド17aが径方向内側から効率的に冷却される。
【0067】
-効果-
以上説明したように、本実施形態に係るモータ冷却システムS1によれば、ステータコア11やロータコア41の冷却に供されていないフレッシュなオイルが、第1コイルエンド17aに対して、径方向における外側や中央部や内側等から同時に供給されることから、第1コイルエンド17aを効率良く冷却することができる。
【0068】
しかも、ステータコア11の端部に取り付けられた第1オイルプレート20や、ロータコア41の端部に取り付けられた第1エンドプレート60を利用することで、ステータコア11内やロータコア41内を流れることなく、フレッシュなオイルによって第1コイルエンド17aを冷却するという構成を容易に実現することができる。
【0069】
(変形例)
本変形例は、第1コイルエンド17aのみならず、第2コイルエンド17bを冷却する点が、上記実施形態1と異なるものである。以下、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0070】
-冷却システム-
図7は、本変形例に係るモータ冷却システムS1’を模式的に示す縦断面図である。このモータ冷却システムS1’では、図7に示すように、熱交換器8における熱交換後のフレッシュなオイルが、ステータ側油路81を通って、ステータ10の反出力軸側AOSの端部のみならず、出力軸側OSの端部にも供給されるようになっている。
【0071】
-ステータ-
本変形例に係るステータ10では、図7に示すように、ステータコア11の出力軸側OSの端部に第2オイルプレート20’ではなく、第1オイルプレート20と同じもの(第2オイルプレート20)が取り付けられている。具体的には、第1および第2オイルプレート20は、ステータコア11を挟んで対称となるように、ステータコア11の軸方向の両端部に取り付けられている。
【0072】
<オイルの流れ>
以上のように構成されたステータ10では、フレッシュなオイルが、ステータ側油路81を通って、図7の太線矢印OF1Aや太線矢印OF1A’で示すように、第1および第2オイルプレート20に供給される。そうして、フレッシュなオイルは、図7の太線矢印OF1Bや太線矢印OF1B’で示すように、環状空間26内にそれぞれ充填された後、図7の太線矢印OF1Cで示すように、第1オイルプレート20では反出力軸側AOSに噴出される一方、図7の太線矢印OF1C’で示すように、第2オイルプレート20では出力軸側OSに噴出されて、第1および第2コイルエンド17a,17bに対して供給される。
【0073】
このように、ステータ側油路81を通ったフレッシュなオイルが、ステータコア11内を流れることなく、第1コイルエンド17aのみならず、第2コイルエンド17bに対しても直接的に供給されることから、フレッシュなままのオイルによって第1および第2コイルエンド17a,17bが径方向における外側や中央部等から効率的に冷却される。
【0074】
-ロータ-
本変形例に係るロータ40では、図7に示すように、ロータコア41の出力軸側OSの端部に第2エンドプレート70ではなく、第1エンドプレート60と同じ第2エンドプレート60が取り付けられている。具体的には、第1および第2エンドプレート60は、ロータコア41を挟んで対称となるように、ロータコア41の軸方向の両端部に取り付けられている。出力軸側OSの第2エンドプレート60は、第2コイルエンド17bと径方向に見て重なるように配置されている。
【0075】
また、シャフト本体部57の中空部57aを軸方向に仕切る仕切り盤58には、仕切り盤58を軸方向に貫通する貫通孔58aが形成されている。さらに、シャフト本体部57には、軸方向における、第2エンドプレート60に対応する部分に、周方向に45度の等間隔で径方向外側に放射状に延びてシャフト本体部57を貫通する、オイル排出孔59’が8つ形成されている。
【0076】
<オイルの流れ>
以上のように構成されたロータ40では、フレッシュなオイルが、ロータ側油路90を通って、図7の太線矢印OF1Dで示すように、オイル導入部51のオイル導入孔54に供給される。オイル導入孔54に供給されたフレッシュなオイルは、図7の太線矢印OF1Eで示すように、反出力軸側AOSのオイル排出孔59を通じてロータシャフト50の外側に放射状に送り出されるとともに、貫通孔58aを通って、図7の太線矢印OF1D’で示すように、シャフト本体部57の中空部57aを出力軸側OSに流れる。
【0077】
シャフト本体部57の中空部57aを出力軸側OSに流れたフレッシュなオイルは、図7の太線矢印OF1E’で示すように、出力軸側OSのオイル排出孔59’を通じてロータシャフト50の外側に放射状に送り出される。反出力軸側AOSおよび出力軸側OSのオイル排出孔59,59’から放射状に送り出されたフレッシュなオイルは、図7の太線矢印OF1Fや太線矢印OF1F’で示すように、連結流路61を介して第1拡散油路63へと流れ、遠心力によって第1および第2エンドプレート60の外周面から径方向外側に飛ばされて、第1および第2コイルエンド17a,17bに対して径方向内側から供給される。
【0078】
このように、ロータ側油路90を通ったフレッシュなオイルが、ロータコア41内を流れることなく、第1コイルエンド17aのみならず、第2コイルエンド17bに対して径方向内側から供給されることから、フレッシュなままのオイルによって第1および第2コイルエンド17a,17bが径方向内側から効率的に冷却される。
【0079】
-効果-
以上説明したように、本変形例に係るモータ冷却システムS1’によれば、ステータコア11やロータコア41の冷却に供されていないフレッシュなオイルが、第1および第2コイルエンド17a,17bに対して同時に供給されることから、第1および第2コイルエンド17a,17bを効率良く冷却することができる。
【0080】
(実施形態2)
本実施形態は、第1コイルエンド17aのみならず、ステータコア11およびロータコア41を冷却する点が、上記実施形態1と異なるものである。以下、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0081】
-ステータ-
図8は、本実施形態に係るモータ冷却システムS2を模式的に示す縦断面図である。また、図9は、ステータ10を模式的に示す図である。なお、図9(a)は、第1オイルプレート120の出力軸側OSの面を見た断面図であり、図9(b)および(c)は、ロータコア41の断面図であり、図9(d)は、ステータ10におけるオイルの流れを示す斜視図である。
【0082】
<オイルプレート>
第1オイルプレート120の内部には、第1径方向油路27や第2径方向油路28の他、図9(a)に示すように、環状空間26の径方向内側を区画する部位を径方向内側に窪ませることで、スロット25と同じ向きに延びる第3径方向油路127が形成されている。かかる第3径方向油路127は、スロット25の数に対応した数だけ周方向に並ぶように形成されている。第3径方向油路127の先端部(径方向内側の端部)には、出力軸側OSに開口する貫通孔127aが形成されている。なお、第1オイルプレート120の反出力軸側AOSの面では、第1および第2径方向油路27,28の先端部に貫通孔27a,28aがそれぞれ形成されている点は、実施形態1と同様である。
【0083】
第1オイルプレート120は、ステータコア11と同心で、且つ、周方向におけるティース23の位置がステータコア11のティース13の位置と一致するように、ステータコア11の反出力軸側AOSの端部に取り付けられている。このように、第1オイルプレート120をステータコア11に取り付けると、図9(a)に示すように、ステータコア11に形成された軸方向油路19(19’)と貫通孔127aとが連通するようになっている。
【0084】
<ステータコア>
ステータコア11には、図9(b)に示すように、各スロット15の径方向外側で、軸方向の全長に亘ってステータコア11を貫通する軸方向油路19が形成されている。なお、このような軸方向油路19を別途形成することなく、図9(c)に示すように、スロット15と、スロット15に挿入されたステータコイル17と、の間の空間を軸方向油路19’として利用してもよい。
【0085】
<オイルの流れ>
以上のように構成されたステータ10では、フレッシュなオイルが、ステータ側油路80を通って、図8および図9(d)の太線矢印OF2Aで示すように、ステータ10(より詳しくは、第1オイルガイド30のオイル案内部31)に供給される。オイル案内部31に供給されたフレッシュなオイルは、第1オイルプレート120のオイル導入口29に案内され、図9(a)の太線矢印で示すように、オイル導入口29から環状空間26に供給される。
【0086】
環状空間26に供給されたフレッシュなオイルは、図9(a)の細線矢印で示すように、第1径方向油路27、第2径方向油路28および第3径方向油路127へ分流し(分配され)ながら、環状空間26内を流下する。これにより、図8および図9(d)の太線矢印OF2Bで示すように、環状空間26内にフレッシュなオイルが充填されていく。
【0087】
環状空間26内に充填されたフレッシュなオイルの一部が、第1径方向油路27の先端部に形成された貫通孔27aや、第2径方向油路28の先端部に形成された貫通孔28aから、図8の太線矢印OF2Cで示すように、反出力軸側AOSに噴出され、第1コイルエンド17aに供給される点は、実施形態1と同様である。
【0088】
一方、環状空間26内に充填されたフレッシュなオイルの残部は、第3径方向油路127の先端部に形成された貫通孔127aから出力軸側OSに噴出されて、図8および図9(d)の太線矢印OF2Dで示すように、ステータコア11を貫通する軸方向油路19(19’)内を出力軸側OSに流れる。
【0089】
このように、ステータ側油路80を通ったフレッシュなオイルの一部が、第1コイルエンド17aに供給されるとともに、フレッシュなオイルの残部が、ステータコア11内に軸方向に供給されることから、第1コイルエンド17aが冷却される状態を維持しつつ、フレッシュなままのオイルによってステータコア11内が冷却されることになる。
【0090】
なお、軸方向油路19(19’)内を流れて、ステータコア11の出力軸側OSの端部に至ったオイルは、例えば第2オイルプレート20’に排出孔(図示せず)を形成し、かかる排出孔からステータコア11外に排出するようにすればよい。
【0091】
-ロータ-
図10は、ロータ40を模式的に示す図である。より詳しくは、図10(a)は、ロータ40に形成される油路を示す斜視図であり、図10(b)は、第1エンドプレート160内に形成される空間を示す斜視図であり、図10(c)は、第1エンドプレート160内に形成される空間を説明する図である。なお、図10(c)では、図を見易くするために、永久磁石104,105を図示省略している。また、本実施形態のロータ40では、ロータシャフト50、ロータコア41および第2エンドプレート70は上記実施形態1と同じ構成になっている。
【0092】
<エンドプレート>
第1エンドプレート160は、図8に示すように、第1エンドプレート60と同様、第1コイルエンド17aと径方向に見て重なるように配置されている。第1エンドプレート160内には、図10(a)および(b)に示すように、軸方向に見て円環状をなすチャンバー空間162が、軸心ACと同心に形成されている。また、第1エンドプレート160内には、第1エンドプレート160の内周面から径方向外側に、周方向に45度の等間隔で放射状に延びてチャンバー空間162と繋がる(連通する)、連結流路161も8つ形成されている。第1エンドプレート160は、8つのオイル排出孔59と8つの連結流路161とが周方向で一致するように、ロータシャフト50とを組み合わせられる。
【0093】
さらに、第1エンドプレート160内には、チャンバー空間162よりも反出力軸側AOSで、径方向に延びる第1拡散油路163が8つ形成されている。各第1拡散油路163は、第1拡散油路63と同様に、第1エンドプレート160の外周面で開口しているとともに、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されているが、第1拡散油路63と異なり、図10(b)に示すように、径方向内側の端部が連通孔164を介してチャンバー空間162と連通している。
【0094】
なお、連結流路161、チャンバー空間162および第1拡散油路163は、例えば鋳造用砂型を用いて形成してもよいし、また、例えば第1エンドプレート160を軸方向に3分割されるプレート(図示せず)でそれぞれ構成し、各プレートの表面や裏面に油路等の一部となる溝や孔などを設け、それらの溝や孔などを軸方向に組み合わせることで形成してもよい。
【0095】
第1エンドプレート160の出力軸側OSの面には複数の溝が形成されており、図8に示すように、第1エンドプレート160の出力軸側OSの面をロータコア41の反出力軸側AOSの端面に溶接等で取り付けると、ロータコア41の反出力軸側AOSの端面で溝が蓋をされて、図10(c)に示すように、チャンバー空間162よりも出力軸側OSで、径方向に延びる第1径方向油路166が8つ形成されることになる。各第1径方向油路166は、径方向内側の端部がチャンバー空間162と連通孔165を介して連通している。かかる第1径方向油路166は、径方向外側の端部が磁石孔の空隙42(磁石孔のうち永久磁石101,102で埋められていない部分)と連通するようにその長さが設定されている。
【0096】
同様に、ロータコア41の反出力軸側AOSの端面で溝が蓋をされて、チャンバー空間162よりも出力軸側OSで、径方向外側に行くほど周方向に傾斜して延びる第2径方向油路168も16条形成されることになる。各第2径方向油路168は、径方向内側の端部が連通孔167を介してチャンバー空間162と連通している。かかる第2径方向油路168は、径方向外側の端部が磁石孔の空隙43、44と連通するようにその長さおよび傾斜方向が設定されている。
【0097】
以上のように構成された第1エンドプレート160は、図10(c)に示すように、第1径方向油路166の径方向外側の端部と磁石孔の空隙42とが周方向で一致するように、ロータコア41の反出力軸側AOSの端面に溶接等で取り付けられる。
【0098】
<オイルの流れ>
図11は、ロータ40における油路およびオイルの流れを模式的に示す図である。より詳しくは、図11(a)は、ロータコア41における油路を示す断面図であり、図11(b)は、ロータ40全体におけるオイルの流れを示す斜視図である。なお、図11(a)では、図を見易くするために、断面を表すハッチングを省略するとともに、オイルを黒塗り部分で示している。
【0099】
以上のように構成されたロータ40では、フレッシュなオイルが、ロータ側油路90を通って、図8および図11(b)の太線矢印OF2Eで示すように、オイル導入部51のオイル導入孔54に供給される。オイル導入孔54に導入されたフレッシュなオイルは、オイル導入路50a内を順次流れて、図8および図11(b)の太線矢印OF2Fで示すように、オイル排出孔59を通じてロータシャフト50の外側に放射状に送り出される。このように、ロータシャフト50の外側に送り出されたフレッシュなオイルは、連結流路161を通ってチャンバー空間162へ至り、図11(b)の太線矢印OF2Gで示すように、チャンバー空間162に充填される。
【0100】
チャンバー空間162に充填されたフレッシュなオイルは、第1コイルエンド17a側とロータコア41側とに分配される。具体的には、チャンバー空間162に充填されたフレッシュなオイルの一部は、図8および図11(b)の太線矢印OF2Hで示すように、連通孔164を介してチャンバー空間162から第1拡散油路163へ流れ、遠心力によって第1エンドプレート160の外周面から径方向外側に飛ばされて、第1コイルエンド17aに対して径方向内側から供給される。
【0101】
一方、チャンバー空間162に充填されたフレッシュなオイルの残部は、図8および図11(b)の太線矢印OF2Iで示すように、連通孔165,167を介してチャンバー空間162から第1径方向油路166および第2径方向油路168へ流れる。第1径方向油路166を通ったフレッシュなオイルは、図11(a)に示すように、空隙42内に流入し、また、第2径方向油路168を通ったフレッシュなオイルは、空隙43,44内に流入する。そうして、空隙42,43,44内に流入したフレッシュなオイルは、図8および図11(b)の太線矢印OF2Jで示すように、ロータコア41内部を反出力軸側AOSから出力軸側OSへ流れる。
【0102】
このように、ロータ側油路90を通ったオイルの一部が、第1コイルエンド17aに供給されるとともに、オイルの残部が、ロータコア41内に軸方向に供給されることから、第1コイルエンド17aが径方向内側から冷却される状態を維持しつつ、フレッシュなオイルによってロータコア41内が冷却されることになる。
【0103】
なお、空隙42,43,44内を流れて、ロータコア41の出力軸側OSの端部に至ったオイルは、例えば第2エンドプレート70に排出孔(図示せず)を形成し、かかる排出孔からロータコア41外に排出するようにすればよい。
【0104】
-効果-
以上説明したように、本実施形態に係るモータ冷却システムS2によれば、フレッシュなオイルが、第1コイルエンド17aに供給されるのみならず、ステータコア11内およびロータコア41内にも同時に供給されることから、第1コイルエンド17aを含むモータ1の各部を効率良く冷却することができる。
【0105】
しかも、ステータコア11内やロータコア41内に軸方向に供給されるフレッシュなオイルは、第1オイルプレート120内に形成された円環状の環状空間26や、第1エンドプレート160内に形成された円環状のチャンバー空間162を一旦通ってから、ステータコア11内やロータコア41内に分配されることから、例えばステータコア11に形成された軸方向油路19(19’)やロータコア41に形成された空隙42,43,44に、フレッシュなオイルを均等に供給することが可能となる。
【0106】
特に、ロータ40においては、第1拡散油路163が径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されていることから、第1拡散油路163がオイルで塞がれてしまうのを抑制することができ、これにより、第1拡散油路163内に負圧が生じ、これに起因してチャンバー空間162内におけるオイルの均一性が損なわれるのを抑えることが可能となっている。
【0107】
また、スロット15とステータコイル17との間を通ってオイルがステータコア11内を軸方向に流れる軸方向油路19’を採用すれば、ステータコイル17を直接的に冷却することができるとともに、永久磁石101,102,103,106が埋め込まれる磁石孔の空隙42,43,44を通ってオイルがロータコア41内を軸方向に流れることから、フレッシュなオイルによって永久磁石101,102,…を直接的に冷却することができる。
【0108】
加えて、上述の如く、ロータコア41を所謂スキューレスとしていることから、空隙42,43,44を流れるオイルに対する流路抵抗を小さくすることができ、これにより、永久磁石101,102,…をより一層効率良く冷却することができる。
【0109】
(実施形態3)
本実施形態は、第2コイルエンド17bを冷却する点が、上記実施形態1および2と異なるものである。以下、実施形態1および2と異なる点を中心に説明する。
【0110】
-冷却システム-
図12は、本実施形態に係るモータ冷却システムS3を模式的に示す縦断面図である。このモータ冷却システムS3では、図12に示すように、フレッシュなオイルが、ステータ側油路81を通って、ステータ10の反出力軸側AOSおよび出力軸側OSの端部に供給される。
【0111】
-ステータ-
本実施形態のステータ10では、ステータコア11は上記実施形態2と同じ構成になっている。
【0112】
<オイルプレート>
図13は、オイルプレート220および第2エンドプレート170を模式的に示す図である。より詳しくは、図13(a)は、オイルプレート220のステータコア11側の面を見た断面図であり、図13(b)は、第2エンドプレート170を示す斜視図である。なお、本実施形態では、ステータコア11における反出力軸側AOSおよび出力軸側OSのいずれの端部にも、ステータコア11を挟んで対称となるように、同じオイルガイド30が取り付けられている(図14参照)。
【0113】
また、本実施形態では、図12に示すように、ステータコア11における反出力軸側AOSおよび出力軸側OSのいずれの端部にも、ほぼ同じオイルプレート220が取り付けられている。反出力軸側AOSの第1オイルプレート220と、出力軸側OSの第2オイルプレート220と、の違いは、周方向における貫通孔127aと貫通孔227aとの位置が互い違いにずれているだけなので、以下では、代表して、反出力軸側AOSの第1オイルプレート220について説明する。
【0114】
第1オイルプレート220の内部には、上記実施形態2の第1オイルプレート120と同様に、第1径方向油路27、第2径方向油路28および第3径方向油路127が形成されているが、第3径方向油路127の数は、第1オイルプレート120における第3径方向油路127の数の半分となっている。より詳しくは、第1オイルプレート220では、周方向で隣り合い且つ径方向外側に第3径方向油路127が形成された一対のスロット25と、周方向で隣り合い且つ径方向外側に第3径方向油路127が形成されていない一対のスロット25と、が周方向に交互に並ぶように形成されている。
【0115】
そうして、径方向外側に第3径方向油路127が形成されていない一対のスロット25の径方向外側には、第1オイルプレート220を貫通する貫通孔227aが形成されている。このように、貫通孔227aは環状空間26と連通していないため、第1オイルプレート220のオイル導入口29から環状空間26に供給されるフレッシュなオイルは、貫通孔227aを通過しないようになっている。なお、オイルプレート120の反出力軸側AOSの面では、第1および第2径方向油路27,28の先端部に貫通孔27a,28aがそれぞれ形成されている点は、実施形態1および2と同様である。
【0116】
第1オイルプレート220は、ステータコア11と同心で、且つ、周方向におけるティース23の位置がステータコア11のティース13の位置と一致するように、ステータコア11の反出力軸側AOSの端部に取り付けられている。このように、第1オイルプレート220をステータコア11に取り付けると、ステータコア11に形成された軸方向油路19(19’)は、貫通孔127aと連通するのみならず、貫通孔227aとも連通するようになっている。
【0117】
<オイルの流れ>
図14は、ステータ10におけるオイルの流れを模式的に説明する斜視図である。なお、図14(a)は、第1オイルプレート220から反出力軸側AOSへのオイルの流れを、図14(b)は、第1オイルプレート220から出力軸側OSへのオイルの流れを、図14(c)は、第2オイルプレート220から出力軸側OSへのオイルの流れを、図14(d)は、第2オイルプレート220から反出力軸側AOSへのオイルの流れをそれぞれ示している。
【0118】
以上のように構成されたステータ10では、ステータ側油路81を通ったフレッシュなオイルが、図12並びに図14(a)および(b)の太線矢印OF3Aで示すように、第1オイルガイド30のオイル案内部31に供給される。このとき、出力軸側OSでも、ステータ側油路81を通ったフレッシュなオイルが、図12並びに図14(c)および(d)の太線矢印OF3A’で示すように、第2オイルガイド30のオイル案内部31に供給される。
【0119】
オイル案内部31に供給されたフレッシュなオイルは、第1および第2オイルプレート220のオイル導入口29に案内され、図13(a)の太線矢印で示すように、オイル導入口29から環状空間26に供給される。環状空間26に供給されたフレッシュなオイルは、図13(a)の細線矢印で示すように、第1径方向油路27、第2径方向油路28および第3径方向油路127へ分流し(分配され)ながら、環状空間26内を流下する。これにより、図12並びに図14(a)および(b)の太線矢印OF3Bや、図12並びに図14(c)および(d)の太線矢印OF3B’で示すように、第1および第2オイルプレート220における環状空間26内にフレッシュなオイルが充填されていく。
【0120】
第1オイルプレート220では、環状空間26内に充填されたフレッシュなオイルの一部が、第1径方向油路27の先端部に形成された貫通孔27aや、第2径方向油路28の先端部に形成された貫通孔28aから、図12および図14(a)の太線矢印OF3Cで示すように、反出力軸側AOSに噴出され、第1コイルエンド17aに供給される。このとき、第2オイルプレート220でも、環状空間26内に充填されたフレッシュなオイルの一部が、貫通孔27a,28aから、図12および図14(c)の太線矢印OF3C’で示すように、出力軸側OSに噴出され、第2コイルエンド17bに供給される。
【0121】
第1オイルプレート220において、環状空間26内に充填されたフレッシュなオイルの残部は、第3径方向油路127の先端部に形成された貫通孔127aから出力軸側OSに噴出されて、図12および図14(b)の太線矢印OF3Dで示すように、ステータコア11を貫通する軸方向油路19(19’)内を出力軸側OSに流れる。このとき、第2オイルプレート220でも、環状空間26内に充填されたフレッシュなオイルの残部は、第3径方向油路127の先端部に形成された貫通孔127aから反出力軸側AOSに噴出されて、図12および図14(d)の太線矢印OF3D’で示すように、ステータコア11を貫通する軸方向油路19(19’)内を反出力軸側AOSに流れる。
【0122】
そうして、第1オイルプレート220では、図12および図14(d)の太線矢印OF3D’で示すように、軸方向油路19(19’)内を反出力軸側AOSに流れたオイルが、貫通孔227aを通過して第1コイルエンド17aに供給される。このとき、第2オイルプレート220でも、図12および図14(b)の太線矢印OF3Dで示すように、軸方向油路19(19’)内を出力軸側OSに流れたオイルが、貫通孔227aを通過して、第2コイルエンド17bに供給される。
【0123】
このように、ステータ側油路81を通ったフレッシュなオイルの一部が、第1および第2コイルエンド17a,17bに供給されるとともに、フレッシュなオイルの残部が、ステータコア11内に軸方向に供給されることから、第1および第2コイルエンド17a,17bが効率的に冷却されるとともに、フレッシュなオイルによってステータコア11内が効率的に冷却される。
【0124】
なお、第1および第2コイルエンド17a,17bに供給されたオイルは、第1および第2オイルガイド30のオイル排出口33からステータ10の外部(モータハウジングの底部)へ排出される。
【0125】
-ロータ-
本実施形態のロータ40では、ロータシャフト50、第1エンドプレート160およびロータコア41は上記実施形態2と同じ構成になっている。
【0126】
<エンドプレート>
図15は、ロータ40における油路およびオイルの流れを模式的に示す図である。より詳しくは、図15(a)は、ロータ40内に形成される油路を示す斜視図であり、図15(b)は、ロータ40内におけるオイルの流れを示す斜視図である。
【0127】
第2エンドプレート170には、図13(b)に示すように、周方向に45度の等間隔で第2エンドプレート170の反出力軸側AOSの面を出力軸側OSに窪ませた、断面円形の外側孔171が8つ形成されている。これら外側孔171の径方向の位置は、8つの空隙42とそれぞれ一致している。また、第2エンドプレート170には、外側孔171よりも径方向内側で第2エンドプレート170の反出力軸側AOSの面を出力軸側OSに窪ませた、外側孔171よりも大径の内側孔173が16個形成されている。これら内側孔173の径方向の位置は、16個の空隙43,44とそれぞれ一致している。
【0128】
さらに、第2エンドプレート170には、図13(b)に示すように、径方向に延びる第2短型拡散油路172が8つ形成されている。各第2短型拡散油路172は、径方向内側の端部が外側孔171と連通し、且つ、第2エンドプレート170の外周面で開口しているとともに、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されている。同様に、第2エンドプレート170には、径方向に延びる第2長型拡散油路174が16条形成されている。各第2長型拡散油路174は、第2短型拡散油路172と同様に、径方向内側の端部が内側孔173と連通し、且つ、第2エンドプレート170の外周面で開口しているとともに、径方向外側に行くほど断面積が拡大するように形成されている。
【0129】
外側孔171と空隙42と(内側孔173と空隙43,44と)が周方向で一致するように、第2エンドプレート170の反出力軸側AOSの面をロータコア41の出力軸側OSの端面に溶接等で取り付けると、図15(a)に示すように、外側孔171を介して第2短型拡散油路172と空隙42とが連通するとともに、内側孔173を介して第2長型拡散油路174と空隙43,44とが連通する。
【0130】
なお、外側孔171、第2短型拡散油路172、内側孔173および第2長型拡散油路174は、例えば鋳造用砂型を用いて形成してもよいし、また、例えば第2エンドプレート170を軸方向に2分割されるプレート(図示せず)でそれぞれ構成し、各プレートの表面や裏面に油路の一部となる溝や孔などを設け、それらの溝や孔などを軸方向に組み合わせることで形成してもよい。
【0131】
<オイルの流れ>
以上のように構成されたロータ40では、ロータ側油路90からロータコア41の出力軸側OSの端部に至るまでのオイルの流れ、具体的には、図12図15(b)の太線矢印OF3E,OF3F,OF3G,OF3H,OF3I,OF3Jまでのオイルの流れは、図8図11(b)の太線矢印OF2E~OF2Jまでのオイルの流れと同じなので、説明を省略する。
【0132】
空隙42,43,44を流れてロータコア41の出力軸側OSの端部に至ったオイルは、図12および図15(b)の太線矢印OF3Kに示すように、外側孔171および内側孔173を介してそれぞれ第2短型拡散油路172および第2長型拡散油路174に至り、かかる第2短型拡散油路172および第2長型拡散油路174を通じて、遠心力によって第2エンドプレート170の外周面から径方向外側に飛ばされて、第2コイルエンド17bに対して径方向内側から供給される。
【0133】
-効果-
以上説明したように、本実施形態に係るモータ冷却システムS3によれば、ステータ側油路81を通ったフレッシュなオイルが、第2コイルエンド17bに供給されることから、フレッシュなオイルによって第2コイルエンド17bをも冷却することができる。
【0134】
さらに、ロータコア41内に供給されたオイルが、第2コイルエンド17bに対して径方向内側から供給されることから、第1コイルエンド17aのみならず第2コイルエンド17bをも径方向内側から冷却することができる。なお、第1コイルエンド17aとは異なり、第2コイルエンド17bには、ロータコア41等を冷やした後の(ある程度昇温した)オイルが供給されることになるが、第2短型拡散油路172および第2長型拡散油路174の数(24)は第1拡散油路163の数(8)よりも多く設定されていることから、換言すると、第2コイルエンド17bに供給されるオイル量を相対的に多くすることから、第2コイルエンド17bをも効率的に冷却することができる。
【0135】
このように、フレッシュなオイルが、第1コイルエンド17a、ステータコア11内およびロータコア41内に同時に供給されるのみならず、第2コイルエンド17bへもオイルが供給されることから、第1コイルエンド17aを含むモータ1の各部をより広範囲に亘って効率良く冷却することができる。
【0136】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0137】
上記各実施形態では、ロータコア41を所謂スキューレスとしたが、これに限らず、例えば図16に示すような、各々磁性体薄板を所定枚数で軸方向に積み重ねた4つの積層体41A’,41B’,41C’,41D’を、角度θずつずらして組み合わせた、スキュー角θを有するロータコア41’に本発明を適用してもよい。
【0138】
また、上記各実施形態では、軸方向に真っ直ぐ延びる貫通孔27a,28aを例示したが、これに限らず、例えば軸方向外側に行くほど径方向内側に傾斜して延びるように貫通孔を形成してもよい。
【0139】
さらに、上記実施形態1では、永久磁石101,102,…がロータコア41に埋め込まれた同期型モータに本発明を適用したが、これに限らず、永久磁石がロータコアに埋め込まれていない非同期型モータに本発明を適用するようにしてもよい。
【0140】
また、上記実施形態2および3では、永久磁石101,102,103,106を冷却対象としたが、これに限らず、径方向油路を増やして永久磁石104,105も冷却するようにしてもよい。
【0141】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明によると、ステータコイルのコイルエンドを効率良く冷却することができるので、冷却用のオイルをモータの各部へ供給するモータ冷却システムに適用して極めて有益である。
【符号の説明】
【0143】
1 モータ
8 熱交換器(冷却手段)
10 ステータ
11 ステータコア
15 スロット
17 ステータコイル
17a 第1コイルエンド
17b 第2コイルエンド
20,120,220 第1オイルプレート
26 環状空間(円環状の空間)
40 ロータ
41,41’ ロータコア
42,43,44 空隙(磁石孔)
60,160 第1エンドプレート
170 第2エンドプレート
80,81 ステータ側油路
90 ロータ側油路
162 チャンバー空間(円環状の空間)
S1,S2,S3 モータ冷却システム
101~106 永久磁石
【要約】
【課題】ステータコイルのコイルエンドを効率良く冷却することが可能なモータ冷却システムを提供する。
【解決手段】冷却用のオイルをモータ1の各部へ供給するモータ冷却システムS1である。熱交換器と、ステータコイルが装着されるステータコア11を有するステータ10と、ロータコア41を有するロータ40と、熱交換器を経由したオイルをステータ10およびロータ40に供給可能なステータ側およびロータ側油路80,90と、を備えている。ステータ10は、ステータ側油路80を通ったオイルが、ステータコア11内を流れることなく、第1コイルエンド17aに供給されるように構成されている。ロータ40は、ロータ側油路90を通ったオイルが、ロータコア41内を流れることなく、第1コイルエンド17aに径方向内側から供給されるように構成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16