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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】製造システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20241213BHJP
   A21C 1/02 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
G01L5/00 H
A21C1/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024052222
(22)【出願日】2024-03-27
(62)【分割の表示】P 2021037830の分割
【原出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2024074848
(43)【公開日】2024-05-31
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一平
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-023269(JP,A)
【文献】特開2020-020760(JP,A)
【文献】特開2018-132434(JP,A)
【文献】特開平05-261026(JP,A)
【文献】特表2016-534724(JP,A)
【文献】国際公開第2015/173021(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00 - 1/14
G01L 3/00 - 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1撹拌装置と、第2撹拌装置と、製造支援装置とを含む製造システムであって、
前記第1撹拌装置は、
処理対象物をモータを用いて撹拌する撹拌部と、
前記モータの撹拌速度が変更された直前のトルク値であって、前記モータの回転軸に作用する製造時トルク値を取得するトルク取得部と、
前記モータの撹拌速度と、前記トルク取得部により取得された製造時トルク値とを含む製造情報を前記製造支援装置に送信する製造情報送信部と、
を備え、
前記製造支援装置は、
前記製造情報を取得する製造情報取得部と、
前記製造情報取得部により取得された前記製造情報に基づき、前記第2撹拌装置を制御するための制御情報を導出する導出部と、
前記導出部により導出された前記制御情報を前記第2撹拌装置に提供する提供部と、
を備えた製造システム。
【請求項2】
前記導出部は、前記第2撹拌装置を制御するための制御用トルク値を導出し、
前記制御情報は、前記制御用トルク値となるまで前記製造情報に含まれる前記撹拌速度で撹拌するように前記第2撹拌装置を制御するための情報である請求項1に記載の製造システム。
【請求項3】
前記第1撹拌装置は、処理対象物の硬さ値を取得する硬さ取得部を備え、
前記製造情報は、前記硬さ取得部により取得された硬さ値を含み、
前記導出部は、前記硬さ値と、前記製造時トルク値とを用いて、前記硬さ値と前記製造時トルク値との関係を示す関係情報を生成し、生成した関係情報から、所望の硬さ値となるトルク値を前記制御用トルク値として導出する請求項2に記載の製造システム。
【請求項4】
前記第2撹拌装置は、
処理対象物をモータを用いて撹拌する他の撹拌部と、
前記モータの回転軸に作用する製造時トルク値を取得する他のトルク取得部と、
前記制御情報を取得する制御情報取得部と、
前記制御情報取得部により取得された前記制御情報に応じて、前記他の撹拌部を制御する制御情報実行部と、
を備えた請求項2または請求項3に記載の製造システム。
【請求項5】
前記第1撹拌装置は、
前記製造情報送信部により自らが送信した前記制御情報を取得する他の制御情報取得部と、
前記他の制御情報取得部により取得された前記制御情報および前記トルク取得部により取得されたトルク値に応じて、前記撹拌部を制御する他の制御情報実行部と、
を備えた請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の製造システム。
【請求項6】
第1撹拌装置と、第2撹拌装置と、製造支援装置とを含む製造システムにおいて前記第1撹拌装置を第1のコンピュータとして機能させ、前記製造支援装置を第2のコンピュータとして機能させるためのプログラムであって、
前記第1のコンピュータを、
モータの撹拌速度が変更された直前のトルク値であって、処理対象物を前記モータを用いて撹拌する撹拌部における前記モータの回転軸に作用する製造時トルク値を取得するトルク取得部と、
前記モータの撹拌速度と、前記トルク取得部により取得された製造時トルク値とを含む製造情報を前記製造支援装置に送信する製造情報送信部として機能させ、
前記第2のコンピュータを、
前記製造情報を取得する製造情報取得部と、
前記製造情報取得部により取得された前記製造情報に基づき、前記第2撹拌装置を制御するための制御情報を導出する導出部と、
前記導出部により導出された前記制御情報を前記第2撹拌装置に提供する提供部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製造システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、処理対象物を撹拌する技術について種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、ホイップドクリームの製造に関する技術が開示されている。特許文献1に開示された技術では、電動機から撹拌子に加わる回転トルクを測定したトルク計測信号を用いて、回転トルクの増加特性曲線の変曲点が検出された際に、電動機への回転停止信号を出力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-20760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ホイップドクリームを製造する職人の中には、変曲点に達する前のタイミングが、撹拌を停止する最適なタイミングと考える職人もいるなど、撹拌を停止する最適なタイミングは職人によって異なる。
【0005】
このように、ホイップドクリームの製造方法は、職人によってそれぞれ異なるため、一律に変曲点を用いる特許文献1に開示された技術では、個々の職人が最適と考える製造方法の自動化には適していないという問題があった。このような問題は、ホイップドクリームに限らず、撹拌対象となる処理対象物を撹拌する場合にも生じる。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、個々の職人が最適と考える処理対象物の製造方法を自動化する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
[1]第1撹拌装置と、第2撹拌装置と、製造支援装置とを含む製造システムであって、前記第1撹拌装置は、処理対象物をモータを用いて撹拌する撹拌部と、前記モータの回転軸に作用する製造時トルク値を取得するトルク取得部と、前記モータの撹拌速度と、前記トルク取得部により取得された製造時トルク値とを含む製造情報を前記製造支援装置に送信する製造情報送信部と、を備え、前記製造支援装置は、前記製造情報を取得する製造情報取得部と、前記製造情報取得部により取得された前記製造情報に基づき、前記第2撹拌装置を制御するための制御情報を導出する導出部と、前記導出部により導出された前記制御情報を前記第2撹拌装置に提供する提供部と、を備えた製造システム。
【0008】
[2]前記導出部は、前記第2撹拌装置を制御するための制御用トルク値を導出し、 前記制御情報は、前記制御用トルク値となるまで前記製造情報に含まれる前記撹拌速度で撹拌するように前記第2撹拌装置を制御するための情報である[1]に記載の製造システム。
【0009】
[3]前記第1撹拌装置は、処理対象物の硬さ値を取得する硬さ取得部を備え、
前記製造情報は、前記硬さ取得部により取得された硬さ値を含み、
前記導出部は、前記硬さ値と、前記製造時トルク値とを用いて、前記硬さ値と前記製造時トルク値との関係を示す関係情報を生成し、生成した関係情報から、所望の硬さ値となるトルク値を前記制御用トルク値として導出する[2]に記載の製造システム。
【0010】
[4]前記第2撹拌装置は、処理対象物をモータを用いて撹拌する他の撹拌部と、前記モータの回転軸に作用する製造時トルク値を取得する他のトルク取得部と、前記制御情報を取得する制御情報取得部と、前記制御情報取得部により取得された前記制御情報に応じて、前記他の撹拌部を制御する制御情報実行部と、を備えた[2]または[3]に記載の製造システム。
【0011】
[5]前記第1撹拌装置は、前記製造情報送信部により自らが送信した前記制御情報を取得する他の制御情報取得部と、前記他の制御情報取得部により取得された前記制御情報および前記トルク取得部により取得されたトルク値に応じて、前記撹拌部を制御する他の制御情報実行部と、を備えた[2]から[4]のいずれか1項に記載の製造システム。
【0012】
[6]第1撹拌装置と、第2撹拌装置と、製造支援装置とを含む製造システムにおいて前記第1撹拌装置を第1のコンピュータとして機能させ、前記製造支援装置を第2のコンピュータとして機能させるためのプログラムであって、前記第1のコンピュータを、処理対象物をモータを用いて撹拌する撹拌部における前記モータの回転軸に作用する製造時トルク値を取得するトルク取得部と、前記モータの撹拌速度と、前記トルク取得部により取得された製造時トルク値とを含む製造情報を前記製造支援装置に送信する製造情報送信部として機能させ、前記第2のコンピュータを、前記製造情報を取得する製造情報取得部と、前記製造情報取得部により取得された前記製造情報に基づき、前記第2撹拌装置を制御するための制御情報を導出する導出部と、前記導出部により導出された前記制御情報を前記第2撹拌装置に提供する提供部として機能させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、個々の職人が最適と考える処理対象物の製造方法を自動化する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ホイップ製造システムのシステム構成を表すシステム構成図である。
図2】撹拌装置の全体構成例を示す図である。
図3】制御装置の機能構成例を示す図である。
図4】製造支援装置の機能構成を表す機能ブロック図である。
図5】製造情報の一例を示す図である。
図6】PSNの一例を示す図である。
図7】撹拌装置と製造支援装置の処理の流れを示すシーケンス図である。
図8】全体制御情報記憶部に記憶される全体制御情報の一例を示す図である。
図9】制御情報応答のメッセージフォーマットを示す図である。
図10】撹拌装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図11】製造支援装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図12】撹拌装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図13】全体制御情報記憶部に記憶される全体制御情報の一例を示す図である。
図14】制御情報応答のメッセージフォーマットを示す図である。
図15】撹拌装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、処理対象物の一例としてホイップクリームを用いた形態について説明する。
【0016】
図1は、製造システム1のシステム構成を表すシステム構成図である。製造システム1は、2つ以上の撹拌装置100_1~100_n(nは2以上の整数)、および製造支援装置200を備える。以下、撹拌装置100_1~100_nのそれぞれを特に区別しない場合には任意の1台を撹拌装置100と表現する。ネットワーク300は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)で構成される。撹拌装置100_1~100_nのうち、任意の1台の撹拌装置が第1撹拌装置に対応し、当該第1撹拌装置とは異なる他の撹拌装置が第2撹拌装置に対応する。
【0017】
図2は、撹拌装置100の全体構成例を示す図である。撹拌装置100は、制御装置110、モータ131、トルク計測器132、撹拌子140、および容器141を備える。制御装置110は、撹拌装置100全体を制御する。モータ131は、制御装置110による制御に応じて撹拌子140を回転する。トルク計測器132は、モータ131の回転軸に作用するトルク値を計測する。撹拌子140は、容器141内のクリーム142を撹拌する。
【0018】
図3は、撹拌装置100の制御装置110の機能構成例を示す図である。制御装置110は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、製造プログラムを実行することによって通信部111、入力部112、個別制御情報記憶部151、および制御部120を備える装置として機能する。なお、通信部111、個別制御情報記憶部151、および制御部120の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、PLC(programmable logic controller)を用いて撹拌装置100を制御してもよい。製造プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。製造プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0019】
通信部111は、ネットワークインタフェースである。通信部111はネットワーク300を介して、製造支援装置200と通信する。入力部112は、操作ボタン等の入力装置を用いて構成される。
【0020】
個別制御情報記憶部151は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。個別制御情報記憶部151については後述する。
【0021】
制御部120は撹拌装置100の各部の動作を制御する。制御部120は、例えばCPU等のプロセッサ、およびRAMを備えた装置により実行される。制御部120は、製造プログラムを実行することによって、モータ制御部121、トルク取得部122、硬さ取得部123、製造情報送信部124、制御情報取得部125、および制御情報実行部126として機能する。
【0022】
モータ制御部121は、モータ131の回転開始、回転停止、および回転速度(撹拌速度)を制御する。モータ制御部121と、モータ131と、撹拌子140とで撹拌部が構成される。トルク取得部122は、トルク計測器132で計測されたトルク値を取得する。硬さ取得部123は、入力部112に入力された硬さ値を取得する。製造情報送信部124は、モータ131の撹拌速度と、トルク取得部122により取得された製造時トルク値とを含む製造情報を製造支援装置200に送信する。また、製造情報送信部124は、硬さ取得部123により取得された硬さ値を送信する。
【0023】
制御情報取得部125は、製造支援装置200から制御情報を取得する。制御情報取得部125は、取得した制御情報を個別制御情報記憶部151に記憶する。制御情報実行部126は、制御情報およびトルク取得部122により取得されたトルク値に応じて、撹拌部を制御する。
【0024】
図4は、製造支援装置200の機能構成を表す機能ブロック図である。製造支援装置200は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、製造支援プログラムを実行することによって通信部210、全体制御情報記憶部241、および制御部220を備える装置として機能する。
【0025】
通信部210は、ネットワークインタフェースである。通信部210はネットワーク300を介して、撹拌装置100と通信する。なお、通信部210、および制御部220の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。製造支援プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0026】
制御部220は製造支援装置200の各部の動作を制御する。制御部220は、例えばCPU等のプロセッサ、およびRAMを備えた装置により実行される。制御部220は、製造支援プログラムを実行することによって、製造情報取得部221、導出部222、および制御情報提供部223として機能する。
【0027】
製造情報取得部221は、製造情報送信部124により送信された製造情報を取得する。導出部222は、製造情報に基づき、撹拌装置100を制御するための制御情報を導出する。導出部222は、導出した制御情報を全体制御情報記憶部241に記憶する。制御情報提供部223は、導出された制御情報を撹拌装置100に提供する。
【0028】
図5は、製造情報の一例を示す図である。図5には、「経過時間」、「PSN」(プログラムステップナンバー)、「トルク値」、および「撹拌速度」が示されている。「経過時間」は、所定タイミング(例えば電源投入)から経過した時間を示す。なお、図5、13においては、X分YZ秒をX’YZと表記している。「PSN」については後述する。「トルク値」は、「経過時間」に示されるタイミングにおいてトルク取得部122に取得されたトルク値(N・m)を示す。「撹拌速度」は、「経過時間」に示されるタイミングにおけるモータ131の実際の撹拌速度(rpm)を示す。以下の説明において、時間、トルク値、撹拌速度について、単位を省略することがある。
【0029】
この図5の説明に先立ち、図6を用いて、PSNについて説明する。図6は、PSNの一例を示す図である。図6における「PSN」は、撹拌状態を示す番号である。本実施形態において、「PSN」は1から10まで設けられている。「PSN」が1は、撹拌ON待ちを示す。具体的に、「1」は、電源が投入され、撹拌開始指示の入力待ちである。そのときの撹拌速度は当然に0である。「2」は、撹拌速度が180であることを示す。「3」は、撹拌速度が140であることを示す。「4」は撹拌速度が160であることを示す。以下、「5」から「9」まで、それぞれ撹拌速度が対応付けられている。「10」は、撹拌停止指示が入力されたことを示す。そのときの撹拌速度は当然に0である。以下の説明において、PSNMとは、PSNがMであることを示す。例えばPSN2は、PSNが2であることを示す。
【0030】
なお、図6における撹拌速度は、モータ131を当該撹拌速度となるように制御することを示し、実際の撹拌速度を示すものではない。例えば回転開始時などは回転速度0から上昇することから、実際の撹拌速度とは異なることがある。
【0031】
図5の説明に戻り、図5に示される製造情報では、経過時間が1秒から5秒までは、撹拌ON待ちであり、経過時間が6秒から2分14秒まで、撹拌速度が180で制御され、経過時間が2分15秒から2分37秒まで、撹拌速度が160で制御されたことが示されている。また、経過時間が2分38秒のタイミングで撹拌停止指示が入力されたことが示されている。その後、経過時間が2分40秒のタイミングで撹拌速度が0となることが示されている。
【0032】
図5の製造情報により、PSN2で約128秒間(経過時間6秒から2分14秒まで)制御され、次いでPSN4で約22秒間(経過時間2分15秒から2分37秒まで)制御され、撹拌停止指示が入力されたことが導出できる。
【0033】
また、トルク値について着目すると、PSN2でトルク値が0.09となるまで制御され、次いでPSN4でトルク値が0.09となるまで制御され、撹拌停止指示が入力されたことが導出できる。
【0034】
このように、製造情報から、撹拌速度、トルク値、あるPSN(すなわち撹拌速度)の経過時間を導出することができる。そこで、製造支援装置200は、製造情報に基づき、撹拌速度、トルク値、ある撹拌速度で制御した経過時間から制御情報を導出する。
【0035】
本実施形態では、後述する第1実施形態において、撹拌速度とトルク値を用いて制御する制御情報について説明し、後述する第2実施形態において、撹拌速度とトルク値と経過時間を用いて制御する制御情報について説明する。
【0036】
最初に、いずれの実施形態においても共通する処理の流れについて説明する。図7は、撹拌装置100と製造支援装置200の処理の流れを示すシーケンス図である。図7に示されるシーケンス図は、一例として2つの撹拌装置A、Bと、製造支援装置200との処理の流れを示す。
【0037】
撹拌装置Aは、製造情報を取得すると(ステップS101)、製造情報を製造情報通知として製造支援装置200に送信する(ステップS102)。製造情報通知には、撹拌装置Aであることを一意に示す装置識別子(図7の場合(A))も送信される。
【0038】
製造支援装置200は、製造情報通知(A)により撹拌装置Aの製造情報を取得し(ステップS103)、撹拌装置Aにおける製造方法を自動化するために撹拌装置100を制御するための制御情報を導出し(ステップS104)、撹拌装置Aの制御情報を記録する(ステップS105)。
【0039】
撹拌装置Bは、撹拌装置Aの制御情報を要求する制御情報要求(A)を製造支援装置200に送信する(ステップS106)。このステップS106は、撹拌装置Bを操作する操作者により、制御情報を要求する操作が入力部112において行われたことを契機に実行される。制御情報要求には、いずれの撹拌装置100で製造された制御情報を要求したかを特定するための装置識別子(図7の場合(A))も送信される。製造支援装置200は、記録しておいた撹拌装置Aの制御情報を制御情報応答として撹拌装置Bに提供する(ステップS107)。これにより、撹拌装置Bは、撹拌装置Aでの製造方法を自動化することができる。
【0040】
撹拌装置Aの制御情報は、撹拌装置Bのように、他の撹拌装置だけではなく、製造情報を送信した制御装置A自身も要求できる。この場合、撹拌装置Bの場合と同様に、撹拌装置Aは、撹拌装置Aの制御情報を要求する制御情報要求(A)を製造支援装置200に送信する(ステップS108)。このステップS108は、撹拌装置Aを操作する操作者により、制御情報を要求する操作が入力部112において行われたことを契機に実行される。製造支援装置200は、記録しておいた撹拌装置Aの制御情報を制御情報応答として撹拌装置Aに送信する(ステップS109)。これにより、撹拌装置Aは、撹拌装置Aの製造方法を自動化することができる。
【0041】
上記シーケンス図から分かるように、まず撹拌装置Aにおいて、例えば職人がホイップドクリームを製造し、そのときの製造情報を製造支援装置200に送信する。製造支援装置200は、制御情報を導出し、例えば撹拌装置Bに提供する。これにより、撹拌装置Bは職人の製造方法でホイップドクリームを製造することが可能となる。また、撹拌装置Aにおいて、職人が不在であっても、製造支援装置200から制御情報を取得することで、職人の製造方法でホイップドクリームを製造することが可能となる。
【0042】
図7におけるステップS108、109に示されるように、製造情報を提供した撹拌装置自身が、制御情報を取得するという運用のみを行う場合には、図1に示した製造システム1における撹拌装置は1つとなることもある。すなわち、製造システム1は、撹拌装置100_1と製造支援装置200のみを備えたシステムとなる。
【0043】
[第1実施形態]
第1実施形態は、撹拌速度とトルク値を用いて制御する制御情報を用いた実施形態である。製造支援装置200は、上述したように製造情報からPSNとトルク値を取得して、制御情報を導出する。図8は全体制御情報記憶部241に記憶される全体制御情報の一例を示す図である。導出部222は、製造情報から、全体制御情報記憶部241に示される制御情報を導出する。
【0044】
図8における制御情報は、「装置識別子」、「PSN(1)」、「TRQ(1)」、「PSN(2)」、「TRQ(2)」、…が示されている。「装置識別子」は、上述したように、撹拌装置100を一意に識別するための識別情報であり、図8の場合は、一例として撹拌装置100が設置された地名(千葉、東京、神奈川)を用いている。
【0045】
「TRQ(1)」、「TRQ(2)」、…などのTRQの配列は、制御用トルク値を示す。「TRQ(r)」(rは1以上の整数)は、「PSN(r)」での制御を終了するか否かを判定するために用いられる。具体的に、撹拌装置100は「PSN(r)」で制御を開始し、トルク計測器132により計測されるトルク値が「TRQ(r)」以上か否かを判定し、トルク値が「TRQ(r)」以上と判定された場合に、「PSN(r)」での制御を終了する。
【0046】
なお、上述した図5の製造情報に示されるように、最初はPSN2で制御し、次いでPSN4で制御するというように、PSNを順番に変更して制御することができる。そこで、図8に示されるように、1番目のPSNをPSN(1)で示し、そのときの最終トルク値をTRQ(1)とする。2番目のPSNをPSN(2)で示し、そのときの最終トルク値をTRQ(2)とする。以下、3番目のPSNでの制御があれば、「PSN(3)」、「TRQ(3)」というように、PSNが変更された回数分のPSNとトルク値が次々と記録される。したがって、PSNが変更された回数が5であれば、PSN(5)とTRQ(5)まで存在し、PSNが変更された回数が1回であれば、PSN(1)とTRQ(1)のみ存在する。
【0047】
なお、最終トルク値とは、PSNが変更された直前のトルク値を示す。例えば、図5の場合、PSN2からPSN4に変更されたタイミングの経過時間は2分15秒であるので、その直前の2分14秒におけるトルク値(0.09)が、PSN2における最終トルク値となる。この最終トルク値は、製造時トルク値の一例である。
【0048】
図8の例では、例えば千葉の撹拌装置100は最初にPSN2で、トルク値が0.06となるまで制御し、次いでPSN4でトルク値が0.09となるまで制御したことが示されている。
【0049】
図9は、制御情報応答のメッセージフォーマットを示す図である。制御情報応答は、制御情報応答であることを示すメッセージヘッダと、いずれの撹拌装置100における制御情報かを示す装置識別子と、1番目からn番目までのPSNの配列と、1番目からn番目までのトルク値の配列で構成される。nは、撹拌装置100でPSNが変更された回数を示す。
【0050】
この制御情報を取得した撹拌装置100は、個別制御情報記憶部151に装置識別子と、PSNの配列と、トルク値の配列とを個別制御情報として記憶する。そして、撹拌装置100は、トルク取得部122に取得されるトルク値がTRQ(1)になるまでPSN(1)で制御し、次いでトルク値がTRQ(2)になるまでPSN(2)で制御するというように、トルク値がTRQ(n)になるまでPSN(n)で制御する。これにより、例えば千葉の撹拌装置100での製造方法を他の撹拌装置100において自動化することができる。
【0051】
次に、撹拌装置100および製造支援装置200の処理の流れについてフローチャートを用いて説明する。図10は、製造情報を送信する撹拌装置100の処理の流れを示すフローチャートである。撹拌装置100は、製造情報(図5参照)を取得する(ステップS201)。撹拌装置100は、例えば不図示の不揮発性メモリに記憶された自らの装置識別子を取得する(ステップS202)。撹拌装置100は、製造支援装置200に製造情報通知を送信し(ステップS203)、処理を終了する。
【0052】
図11は、製造支援装置200の処理の流れを示すフローチャートである。製造支援装置200は、撹拌装置100から製造情報通知と制御情報要求の2つのメッセージを受信する。そこでまず、製造支援装置200は、製造情報通知を受信したか否かを判定する(ステップS301)。製造支援装置200は、製造情報通知を受信した場合には(ステップS301:YES)、製造情報から制御情報を導出し、全体制御情報記憶部241に記憶された全体制御情報を更新し(ステップS302)、処理を終了する。ここでの更新とは、新規の制御情報を記憶する処理と、既に存在する制御情報を新たな制御情報で上書きする処理のいずれかを示す。
【0053】
製造支援装置200は、製造情報通知を受信していない場合には(ステップS301:NO)、制御情報要求を受信したか否かを判定する(ステップS303)。製造支援装置200は、制御情報要求を受信していない場合には(ステップS303:NO)、何もせずに処理を終了する。制御情報要求を受信した場合には(ステップS303:YES)、製造支援装置200は、制御情報要求に示される装置識別子を全体制御情報記憶部241で検索し、検索された制御情報を制御情報応答として送信し(ステップS304)、処理を終了する。
【0054】
図12は、制御情報を受信する撹拌装置100の処理の流れを示すフローチャートである。撹拌装置100は、製造支援装置200に制御情報要求を送信する(ステップS401)。撹拌装置100は、送信した制御情報要求に対する制御情報応答を受信し、制御情報を取得する(ステップS402)。
【0055】
撹拌装置100は、ループカウンタkを1に初期化し(ステップS403)、nに制御回数を代入する(ステップS404)。ここで制御回数とは、制御情報におけるPSNの配列の配列番号の最大値である。例えば、制御情報においてPSN(1)からPSN(5)まで存在する場合には、nに5が代入される。
【0056】
撹拌装置100は、PSN(k)で制御する(ステップS405)。具体的に、PSN(k)は、撹拌速度を示すものであるので、モータ131による撹拌速度がPSN(k)に示される撹拌速度となるように制御する。撹拌装置100は、トルク値を取得する(ステップS406)。撹拌装置100は、取得したトルク値がTRQ(k)以上になったか否かを判定する(ステップS407)。トルク値がTRQ(k)以上となっていない場合には(ステップS407:NO)、再びトルク値を取得する(ステップS406)。
【0057】
撹拌装置100は、トルク値がTRQ(k)以上となった場合には(ステップS407:YES)、kを1だけ増分する(ステップS408)。撹拌装置100は、kがnより大きいか否かを判定する(ステップS409)。kがnより大きくない場合には(ステップS409:NO)、撹拌装置100は、ステップS405に戻る。kがnより大きい場合には(ステップS409:YES)、制御情報の最後の配列まで処理されたことを示すので、撹拌装置100は、処理を終了する。
【0058】
なお、ホイップドクリームの硬さ値を取得する場合には、最小二乗法を用いて、所望の硬さ値となるトルク値を導出することができる。以下、具体的に説明する。
【0059】
本実施形態におけるホイップドクリームの硬さ値は、コーンをホイップドクリームの表面から自由落下させ、落下後の所定時間経過後のコーンの落下距離(ミリメートル)を用いている。この落下距離を取得する方法については、特開2020-153902号公報を参照されたい。このようにして得られた硬さ値は、入力部112により入力される。
【0060】
また硬さ値は、PSN(*)ごとに入力される。例えば、PSN(1)とPSN(2)の2つの場合、ホイップドクリームの製造後に、PSN(1)のときの硬さ値と、PSN(2)のときの硬さ値が入力される。また、このとき、所望の硬さ値もPSN(*)ごとに入力される。例えば、PSN(1)とPSN(2)の2つの場合、PSN(1)における所望の硬さ値とPSN(2)における所望の硬さ値が入力される。なお、所望の硬さ値とは職人が所望する硬さ値を示す。
【0061】
硬さ値をx、トルク値をyとし、撹拌装置100から製造情報として複数回にわたり取得することで、硬さ値とトルク値の複数のペア(xi、yi)(i=1、2、…)が取得される。また、上述したように、PSN(*)ごとに所望の硬さ値も入力される。
【0062】
導出部222は、硬さ値とトルク値の複数のペア(xi、yi)から、硬さ値と製造時トルク値との関係を示す関係情報を生成し、生成した関係情報から、所望の硬さ値となるトルク値を制御用トルク値として導出する。
【0063】
上記関係情報を生成方法について説明する。硬さ値をxとし、トルク値をyとし、トルク値と硬さ値の関係式を決定するために、以下の式1を用いる。
y=ax…(式1)
この式1の自然対数をとると式2となる。
ln(y)=bln(x)+ln(a)…(式2)
【0064】
上述したように、撹拌装置100から複数回にわたり硬さ値xと、トルク値yを取得することで、硬さ値とトルク値の複数のペア(xi、yi)(i=1、2、…)が取得される。
【0065】
そこで、Yi=ln(yi)、Xi=ln(xi)として、最小二乗法を用いて、ln(a)と、bとを決定する。これにより、式1におけるa、bが決定されるため、所望の硬さ値をxに代入することで、トルク値yが定まる。
【0066】
所望の硬さ値となるトルク値yは、PSN(*)ごとに導出される。よって、所望の硬さ値となるトルク値yを、図9のTRQ(*)とすることで、硬さ値を用いた制御情報を提供することができる。
以上説明した第1実施形態により、撹拌速度とトルク値を用いて制御する制御情報を用いて、個々の職人が最適と考えるホイップドクリームの製造方法を自動化することができる。
【0067】
[第2実施形態]
第2実施形態は、撹拌速度とトルク値と経過時間を用いて制御する制御情報を用いた実施形態である。製造支援装置200は、上述したように製造情報からPSNと経過時間とトルク値を取得する。図13は全体制御情報記憶部241に記憶される全体制御情報の一例を示す図である。導出部222は、製造情報から、全体制御情報記憶部241に示される制御情報を導出する。
【0068】
図13における制御情報は、「装置識別子」、「PSN(1)」、「TM(1)」、「PSN(2)」、「TM(2)」、…、「停止時TRQ」が示されている。「装置識別子」は、上述したように、撹拌装置100を一意に識別するための識別情報である。「TM(r)」(rは1以上の整数)は、「PSN(r)」で制御を開始してから終了するまでに経過した経過時間である。この経過時間は、製造情報(図5参照)により導出される。例えば、図5において、PSN4で制御を開始したタイミングは2分15秒で、PSN4で制御を終了したタイミングは2分37秒であることから、経過時間は22秒として導出される。
「停止時TRQ」は、制御用トルク値を示し、撹拌停止指示が入力された直前のトルク値を示す。例えば、図5の場合、撹拌停止指示は、経過時間が2分38秒のタイミングで入力されているため、その直前の2分37秒におけるトルク値(0.09)が、停止時TRQとなる。
【0069】
なお、図8の制御情報と同様に、図13に示される制御情報はPSNが変更された回数分のPSNと経過時間が次々と記録される。
【0070】
図13の例では、例えば神奈川の撹拌装置100は、最初にPSN2で、経過時間が2分10秒となるまで制御し、次いでPSN3で経過時間が35秒となるまで制御し、停止時TRQは0.09であることが示されている。
【0071】
図14は、制御情報応答のメッセージフォーマットを示す図である。制御情報応答は、制御情報応答であることを示すメッセージヘッダと、いずれの撹拌装置100における制御情報かを示す装置識別子と、1番目からn番目までのPSNの配列と、1番目からn-1番目までのTMの配列と、停止時TRQで構成される。nは、撹拌装置100でPSNが変更された回数を示す。
【0072】
この制御情報を取得した撹拌装置100は、個別制御情報記憶部151に装置識別子と、PSNの配列と、TMの配列と、停止時トルク値を個別制御情報として記憶する。そして、撹拌装置100は、PSN(1)で制御を開始してからの経過時間がTM(1)になるまでPSN(1)で制御し、次いでPSN(2)で制御を開始してからの経過時間がTM(2)になるまでPSN(2)で制御するというように、PSN(n-1)で制御を開始してからの経過時間がTM(n-1)になるまで制御し、トルク値が停止時TRQ以上になるまでPSN(n)で制御する。これにより、例えば神奈川の撹拌装置100での製造方法を他の撹拌装置100において自動化することができる。
【0073】
第2実施形態における製造情報を送信する撹拌装置100の処理の流れを示すフローチャートは、図10に示されるフローチャートと同じである。また、第2実施形態における製造支援装置200の処理の流れを示すフローチャートは、図11に示されるフローチャートと同じである。
【0074】
図15は、制御情報を受信する撹拌装置100の処理の流れを示すフローチャートである。撹拌装置100は、製造支援装置200に制御情報要求を送信する(ステップS501)。撹拌装置100は、送信した制御情報要求に対する制御情報応答を受信し、制御情報を取得する(ステップS502)。
【0075】
撹拌装置100は、ループカウンタkを1に初期化し(ステップS503)、nに制御回数を代入する(ステップS504)。ここで制御回数とは、撹拌装置100でPSNが変更された回数である。
【0076】
撹拌装置100は、PSN(k)で制御する(ステップS505)。撹拌装置100は、k=nか否かを判定する(ステップS506)。撹拌装置100は、k=nではない場合には(ステップS506:NO)、PSN(k)で制御している経過時間を取得する(ステップS507)。撹拌装置100は、取得した経過時間がTM(k)になったか否かを判定する(ステップS508)。経過時間がTM(k)となっていない場合には(ステップS508:NO)、再び経過時間を取得する(ステップS507)。
【0077】
撹拌装置100は、経過時間がTM(k)となった場合には(ステップS508:YES)、kを1だけ増分し(ステップS509)、ステップS505に戻る。
【0078】
上記ステップS506において、k=nの場合には(ステップS506:YES)、撹拌装置100は、トルク値を取得する(ステップS510)。撹拌装置100は、取得したトルク値が停止時TRQ以上になったか否かを判定する(ステップS511)。トルク値がTRQ(k)以上になっていない場合には(ステップS511:NO)、再びトルク値を取得する(ステップS510)。撹拌装置100は、トルク値が停止時TRQ以上になった場合には(ステップS511:YES)、処理を終了する。
【0079】
以上説明した第2実施形態により、撹拌速度とトルク値と経過時間を用いて制御する制御情報を用いて、個々の職人が最適と考えるホイップドクリームの製造方法を自動化することができる。
【0080】
以上説明した第1実施形態と、第2実施形態を組み合わせた制御を行ってもよい。例えば、第1実施形態ではトルク値が制御用トルク値以上となると、そのPSNでの制御は終了するが、これに代えて、トルク値が制御用トルク値以上となり、かつ第2実施形態で示した経過時間が経過した場合に、そのPSNでの制御は終了する制御を行ってもよい。例えば、図5に示したように、同じPSNにおいても、同じトルク値が継続することも一般的であることから、トルク値が制御用トルク値となっただけでなく、経過時間も用いて制御することで、より職人の製造方法に近い自動化を行うことができる。
【0081】
本実施形態では、制御情報としてPSNとトルク値、またはPSNと経過時間を例にしたが、これに限るものではない。制御情報は第2ホイップドクリーム撹拌装置を制御するためのものであることから、そのように制御するプログラムそのものを制御情報としてもよい。
【0082】
本実施形態では、処理対象物の一例としてホイップクリームを用いた形態について説明したが、他の処理対象物として、例えば食品生地、または起泡性食品が挙げられる。このうちの食品生地として、例えばパン生地、シュー生地、またはスポンジ生地が挙げられる。起泡性食品として、例えばホイップクリーム、バタークリーム、またはメレンゲが挙げられる。
【0083】
これらの処理対象物は、いずれも職人の操作により撹拌装置において撹拌されるものであり、このときの職人の操作は本実施形態で説明したホイップドクリーム製造時の操作と同様の操作である。したがって、ホイップクリーム以外の処理対象物に対しても、本実施形態をそのまま適用することができる。なお。処理対象物は、流動状原料とも表現されることがある。
【0084】
また、ホイップクリームにも複数の品種がある。例えば、植物脂肪のホイップクリームや純乳脂のホイップクリームがあり、それぞれで気泡の条件が異なることがある。この場合、品種ごとに職人の操作も異なる可能性があることから、同じ撹拌装置であっても制御内容が異なることとなる。そこで、図8図13の全体制御情報において、新たに品種を識別するための識別子(例えば、「品種識別子」など)を設けるようにする。このように、装置識別子だけではなく品種を識別するための識別子を設けることにより、品種に適した制御を行うことができるので、製造精度をより高めることができる。
【0085】
上述した実施形態における撹拌装置100や製造支援装置200の機能をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
1…製造システム、100、100_1、100_n…撹拌装置、110…制御装置、111…通信部、112…入力部、120…制御部、121…モータ制御部、122…トルク取得部、123…硬さ取得部、124…製造情報送信部、125…制御情報取得部、126…制御情報実行部、131…モータ、132…トルク計測器、140…撹拌子、141…容器、142…クリーム、151…個別制御情報記憶部、200…製造支援装置、210…通信部、220…制御部、221…製造情報取得部、222…導出部、223…制御情報提供部、241…全体制御情報記憶部、300…ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15