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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   B61D 27/00 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
B61D27/00 N
B61D27/00 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024527926
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2022023682
(87)【国際公開番号】W WO2023242924
(87)【国際公開日】2023-12-21
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】新宮 和平
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-16803(JP,A)
【文献】特開2017-144853(JP,A)
【文献】特開2020-199805(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0101543(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に搭載される空気調和装置であって、
前記空気調和装置を構成する機器を搭載する筐体と、
前記筐体の上方にあって、前記筐体の上面と側面を覆うカバーであって、前記カバーの側面と前記筐体の側面との間に隙間が形成されるカバーを備えるとともに、
前記筐体は、
前記鉄道車両の車室から流入する空気と、冷凍回路内を循環する冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、前記熱交換器において熱交換を終えた前記空気を前記車室に向けて送出する送風機とが配置される室内機室と、
前記カバーの側面と前記筐体の側面との間の隙間にある空気を前記室内機室に導入する筐体側空気導入口を備え、
前記カバーは、前記カバーの側面と前記筐体の側面との間の隙間に車外の空気を導入するカバー側空気導入口を備え、
前記カバー側空気導入口と前記筐体側空気導入口は、前記鉄道車両の走行方向において前後に離隔して配置されている、
空気調和装置。
【請求項2】
前記カバー側空気導入口を、前記カバーの側面に備える、
請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記カバー側空気導入口を、前記鉄道車両の走行方向における前記カバーの前後の端面に備える、
請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記筐体側空気導入口の開度を調整するダンパを備える、
請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記筐体と前記鉄道車両の屋根の間に配置されて、前記鉄道車両の車室と前記室内機室と間で空気を輸送するダクトを備え、
前記ダクトは、前記鉄道車両の車室から前記室内機室に空気が輸送される第1領域と、前記室内機室から前記鉄道車両の車室に空気が輸送される第2領域を備え、
前記筐体は、
前記空気調和装置を構成する機器に電力を供給するインバータ装置が配置される電気装置室を備え、
前記インバータ装置に伝熱的に接続されるヒートシンクが前記第2領域の内部に配置されている、
請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項6】
前記電気装置室は前記室内機室に隣接して配置され、
前記筐体は、
前記電気装置室と前記室内機室とを区画する隔壁に、空気を流通させる連通口を備えるととともに、
前記第1領域を流れる空気の一部を前記電気装置室に導入する冷却空気導入口を備える、
請求項5に記載の空気調和装置。
【請求項7】
前記冷却空気導入口と前記インバータ装置の間に、前記冷却空気導入口から導入される空気を前記インバータ装置に誘導する誘導部材を備える、
請求項6に記載の空気調和装置。
【請求項8】
前記筐体は、
前記カバーの側面と前記筐体の側面との間の隙間と前記電気装置室との間で空気を流通させる通気口を備える、
請求項6に記載の空気調和装置。
【請求項9】
前記筐体と前記鉄道車両の屋根の間に配置されて、前記鉄道車両の車室と前記室内機室と間で空気を輸送するダクトを備え、
前記ダクトは、前記鉄道車両の車室から前記室内機室に空気が輸送される第1領域と、前記室内機室から前記鉄道車両の車室に空気が輸送される第2領域を備え、
前記ダクトの前記第2領域に、前記室内機室から前記第2領域に流入する空気の流れを、前記鉄道車両の前端に向かう流れと、前記鉄道車両の後端に向かう流れとに分流する分流部材を備える、
請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項10】
前記送風機が備える羽根車を構成するブレードを前記羽根車の回転軸に直交する平面で切断して得られる断面形の前記羽根車の回転中心に近い部位は、前記羽根車の回転方向に対して後ろ向きに傾斜しているとともに、
前記断面形の前記羽根車の回転中心から遠い部位は、前記羽根車の回転方向に対して前向きに傾斜している、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両に搭載される空気調和装置であって、車室内の空気の温度調整と同時に、車室の換気を行うことができる空気調和装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の空気調和装置は、鉄道車両の屋根の上に搭載される車両用空調ダクトの側面に車外の空気が流入する外気取入グリルを備えて、外気取入グリルから流入する外気を鉄道車両の車室から流入する空気と混合して、冷却器に導いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭54-77910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の空気調和装置においては、車外の空気が、外気取入グリルを通して、空気調和装置に直接流入するので、降雨時において、雨水が車外の空気とともに、空気調和装置の内部に浸入して、その後、鉄道車両の車室内に拡散すると言う問題がある。特に、車外の空気の取り込み量を増やした場合に、車室内に拡散する雨水の量が増加すると言う問題がある。
【0005】
本開示は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、鉄道車両に搭載される空気調和装置であって、車室の換気のために外気の取り込み量を増やした場合であっても、降雨時における雨水の浸入が抑制される空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本開示に係る空気調和装置は、鉄道車両に搭載される空気調和装置であって、空気調和装置を構成する機器を搭載する筐体と、筐体の上方にあって、筐体の上面と側面を覆うカバーを備え、カバーの側面と筐体の側面との間に隙間が形成される。筐体は、鉄道車両の車室から流入する空気と、冷凍回路内を循環する冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、熱交換器において熱交換を終えた空気を車室に向けて送出する送風機とが配置される室内機室と、カバーの側面と筐体の側面との間の隙間にある空気を室内機室に導入する筐体側空気導入口を備える。カバーは、カバーの側面と筐体の側面との間の隙間に車外の空気を導入するカバー側空気導入口を備える。そして、カバー側空気導入口と筐体側空気導入口は、鉄道車両の走行方向において前後に離隔して配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、筐体側空気導入口とカバー側空気導入口が、鉄道車両の走行方向において前後に離隔して配置されているので、雨水の空気調和装置の内部への侵入が抑制される。そのため、降雨時であっても、外気の取り込み量を増やして、車室の換気を十分に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施の形態に係る空気調和装置を基本的な構成要素に分解して示す説明図
図2図1に記載の空気調和装置が備えるカバーの外形を示す斜視図
図3図1に記載の空気調和装置が備える筐体の外形を示す斜視図
図4図1に記載の空気調和装置の平面図
図5図4に記載の空気調和装置の側面図
図6図4に記載の空気調和装置からカバーを取り外した状態を示す平面図
図7図6に記載の空気調和装置の室内機室を図6においてVII-VII線で示す平面で切断して示す断面図
図8図7に記載の空気調和装置が備える筐体側空気導入口の構成を示す説明図であって、ダンパが全閉された状態を示す図
図9図7に記載の空気調和装置が備える筐体側空気導入口の構成を示す説明図であって、ダンパが全開された状態を示す図
図10図6に記載の空気調和装置の電気装置室を図6においてX-X線で示す平面で切断して示す断面図
図11図6に記載の空気調和装置を図6においてXI-XI線で示す平面で切断して示す断面図
図12】変形例に係る空気調和装置の構成を図6に倣って示す平面図
図13図12に記載の空気調和装置の電気装置室を図12においてXIII-XIII線で示す平面で切断して示す断面図
図14図6あるいは図12に記載の室内機用送風機が備える羽根車の外形を示す斜視図
図15図14に記載の羽根車が備えるブレードを羽根車の回転軸に直交する平面で切断して示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態に係る空気調和装置の構成と作用を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面においては、同一または同等の部分に同一の符号を付している。
【0010】
図1は、本開示の実施の形態に係る空気調和装置1を、基本的な構成要素に分解して示す説明図である。図1に示すように、空気調和装置1は、鉄道車両2の屋根の上に搭載される。また、空気調和装置1は、カバー3と筐体4とダクト5を備えている。カバー3は、筐体4の上面と側面を覆って、筐体4を風雨と日射から保護する構造部材である。筐体4は、上面が開放された箱状の部材であって、空気調和装置1の後述する構成部品が搭載される構造部材である。ダクト5は、筐体4と鉄道車両2の間にあって、空気調和装置1と鉄道車両2との間で空気を輸送する流路を形成する構造部材である。鉄道車両2の図示しない車室内の空気は、ダクト5を通って、筐体4の内部に輸送されて、そこで、冷却されて、ダクト5を通って、鉄道車両2の図示しない車室に輸送される。
【0011】
(カバー)
図2は、空気調和装置1(図2において図示なし)が備えるカバー3の外形を示す斜視図である。図2に示すように、カバー3は、その上面に吸気グリル6と排気グリル7a,7bを備えている。また、カバー3は、左右の側面に、側面空気導入口8a,8bを備えている。なお、側面空気導入口8a,8bは、本開示に係るカバー側空気導入口の具体例である。
【0012】
(筐体)
図3は、空気調和装置1(図3において図示なし)が備える筐体4の外形を示す斜視図である。前述したように、筐体4は、上面が開放された箱状の部材であって、図3に示すように、その底板に、リターンエア導入口9a,9bと空気送出口10を備えている。鉄道車両2(図3において図示なし)の車内の空気は、リターンエア導入口9a,9bを通って、筐体4の内部に流入し、空気調和装置1における処理を終えた空気は、空気送出口10を通って、鉄道車両2に向けて送出される。
【0013】
筐体4は、その左右の側面に筐体側空気導入口11a,11bを備えている。後述するように、側面空気導入口8a,8b(図3において図示なし)を通って、カバー3と筐体4の間に流入した空気が、筐体側空気導入口11a,11bを通って、筐体4の内部に流入する。また、筐体4は、その底面に冷却空気導入口12a,12bを、その側面に通気口13a,13bを備えている。冷却空気導入口12a,12bと通気口13a,13bの作用については後述する。そして、筐体4は、隔壁14を備えていて、隔壁14によって複数個の区画に区切られている。
【0014】
(空気調和装置)
図4は、空気調和装置1の平面図である。図5は空気調和装置1の側面図である。なお、図4において、図の左右方向は鉄道車両2(図4において図示なし)の走行方向に相当する。つまり、鉄道車両2は図4の左右方向に走行する。図4の上下方向は鉄道車両2の幅方向に相当する。また、図5に現れる空気調和装置の側面は、鉄道車両2の走行方向における端面に相当する。前述したように、空気調和装置1の上面はカバー3で覆われていて、カバー3は、その上面に吸気グリル6と排気グリル7a,7bを備え、左右の側面に側面空気導入口8a,8bを備えている。
【0015】
前述したように、空気調和装置1は、空気調和装置1と鉄道車両2との間で空気を輸送する流路を形成するダクト5を備えている。図5に示すように、ダクト5は、鉄道車両2の車室から空気調和装置1に向けて、空気を輸送する第1領域5a,5bと、空気調和装置1から鉄道車両2の車室に向けて、空気を輸送する第2領域5cと、に区画されている。なお、本明細書において、鉄道車両2の車室から第1領域5a,5bを通って筐体4に流入する空気をリターンエア(RA)と呼び、筐体4から第2領域5cを通って鉄道車両2の車室に流出する空気を冷却エア(CR)と呼ぶことにする。また、図5以下の各図面においては、空気が流れる方向を矢印付きの1点鎖線で示すことにする。
【0016】
図6は、図4に示した空気調和装置1からカバー3を取り除いた状態を示す平面図である。図6に示すように、空気調和装置1が備える筐体4は、隔壁14によって、4個の区画、すなわち、室外機室15、電気装置室16、室内機室17及び圧縮機室18と、に区画されている。また、カバー3の側面と筐体4の側面の間には隙間3aが形成されている。隙間3aには、側面空気導入口8a,8bを通って、鉄道車両2(図6において図示なし)の車外の空気が流入する。なお、本明細書において、鉄道車両2の車外から側面空気導入口8a,8bを通って、空気調和装置1に流入する空気をフレッシュエア(FA)と呼ぶことにする。
【0017】
(室外機室)
室外機室15には、室外機用送風機19と、2台の室外機用熱交換器20a,20bが配置されている。室外機用送風機19は鉄道車両2の外部の空気を、図4に示した吸気グリル6を経由して室外機室15内に吸引して、室外機用熱交換器20a,20bに送気する装置である。室外機用熱交換器20a,20bは後述する冷凍回路の構成要素の一つである。室外機用熱交換器20a,20bにおいては、冷凍回路内を循環する冷媒と室外機用熱交換器20a,20bを通過する空気との間で熱が交換される。その結果、冷凍回路内を循環する冷媒が、室外機用熱交換器20a,20bを通過する空気によって冷却される。室外機用熱交換器20a,20bを通過した空気は、図4に示した排気グリル7a,7bを通って、鉄道車両2の外部に排出される。
【0018】
(電気装置室)
電気装置室16は、空気調和装置1の運転と制御に関与する各種の電気装置が配置される区画である。インバータ装置21は電気装置室16内に配置される電気装置の一つである。インバータ装置21は空気調和装置1に運転用の交流電力を供給する装置であって、当該交流電力の周波数を必要に応じて変更して、空気調和装置1の速度あるいは出力を調整する電気装置である。
【0019】
前述した冷却空気導入口12a,12bは電気装置室16の底面に配置されていて、ダクト5の第1領域5a,5b内の空気が冷却空気導入口12a,12bを通って、電気装置室16に導入される。また、電気装置室16内には、冷却空気導入口12a,12bを通って電気装置室16に流入する空気をインバータ装置21に向かう方向に誘導する案内板22a,22bが配置されている。なお、案内板22a,22bは、本開示に係る誘導部材の例示である。また、前述した通気口13a,13bは、電気装置室16の側壁に配置されていて、電気装置室16と隙間3aとの間で空気が出入りする。なお、通気口13a,13bは電気装置室16の側壁の室外機室15に寄った位置に配置されている。また、通気口13a,13bと室外機室15の間の距離は、冷却空気導入口12a,12bと室外機室15の間の距離よりも小さくされている。
【0020】
(室内機室)
室内機室17には、2台の室内機用送風機23a,23bと、2台の室内機用熱交換器24a,24bが配置されている。室内機用熱交換器24a,24bも後述する冷凍回路の構成要素である。室内機用熱交換器24a,24bにおいては、冷凍回路内を循環する冷媒と室内機用熱交換器24a,24bを通過する空気との間で熱が交換される。また、前述したリターンエア導入口9a,9bと空気送出口10は、室内機室17の底面に配置されている。
【0021】
前述した筐体側空気導入口11a,11bは室内機室17の側壁に配置されている。また、筐体側空気導入口11a,11bと側面空気導入口8a,8bは、鉄道車両2の走行方向において前後に離隔して配置されている。そのため、カバー3の外側から側面空気導入口8a,8bに正対する場合に、側面空気導入口8a,8bを通して、筐体側空気導入口11a,11bを視認することができない。その結果、降雨時において、側面空気導入口8a,8bから雨水が隙間3aに吹き込まれても、その雨水が、筐体側空気導入口11a,11bに直接吹き込まれることがない。そのため、室内機室17の内部への雨水の侵入が抑制される。その結果、雨水の鉄道車両2の車室内部への侵入が抑制される。
【0022】
また、室内機室17の内部には、2台の膨張弁25a,25bが配置されている。膨張弁25a,25bも後述する冷凍回路の構成要素であって、冷凍回路内を循環する冷媒を断熱膨張させる装置である。
【0023】
(圧縮機室)
圧縮機室18には、2台の圧縮機26a,26bが配置されている。圧縮機26a,26bは、後述する冷凍回路を構成する要素であって、冷凍回路内を循環する冷媒を断熱圧縮する装置である。
【0024】
(冷凍回路)
室外機用熱交換器20aと室内機用熱交換器24aと膨張弁25aと圧縮機26aは図示しない冷媒配管を介して接続されて、第1の冷凍回路を構成する。室外機用熱交換器20bと室内機用熱交換器24bと膨張弁25bと圧縮機26bも図示しない冷媒配管を介して接続されて、第2の冷凍回路を構成する。つまり、空気調和装置1は2組の冷凍回路を備えている。また、室内機用熱交換器24a,24bは鉄道車両2の車室内の空気が担持する熱を冷媒に吸収させて、鉄道車両2の車室内の空気を冷却する吸熱器として機能する。室外機用熱交換器20a,20bは冷媒が担持する熱を鉄道車両2の車外に放出する放熱器として機能する。このように、本実施の形態において、空気調和装置1は鉄道車両2の車室内の空気を冷却する冷房機として機能する。なお、第1および第2の冷凍回路に冷媒が流れる方向を変更する四方弁を備えて、空気調和装置1が冷暖房兼用機として機能するようにしても良い。
【0025】
(室内機室における空気の流れ)
図7は、空気調和装置1の室内機室17を図6においてVII-VII線で示す平面で切断して示す断面図である。鉄道車両2の車室から図示しない通風口を通ってダクト5の第1領域5a,5bに流入したリターンエアRAは、図7に示すように、リターンエア導入口9a,9bを通って、室内機室17に流入する。
【0026】
前述したように、フレッシュエアFAは、側面空気導入口8a,8b(図7において図示なし)を経由して、筐体4とカバー3の間の隙間3aに流入する。隙間3aに流入したフレッシュエアFAは、筐体側空気導入口11a,11bを通って、室内機室17に流入する。
【0027】
室内機室17に流入したリターンエアRAとフレッシュエアFAは、そこで互いに混合される。混合された空気は、室内機用送風機23a,23bによって吸引されて、室内機用熱交換器24a,24bに送気されて、そこで冷却されて、冷却エアCAが生成される。冷却エアCAは、空気送出口10を経由してダクト5の第2領域5cに送出される。第2領域5cに送出された冷却エアCAは、図示しない通風口を通って鉄道車両2の車室に流れる。
【0028】
このように、室内機室17においては、リターンエア導入口9a,9bを経由して流入するリターンエアRAと、筐体側空気導入口11a,11bを経由して流入するフレッシュエアFAが混合されて、冷却されて、冷却エアCAが生成される。冷却エアCAは、空気送出口10とダクト5の第2領域5cを経由して、鉄道車両2の車室に送出される。その結果、鉄道車両2の車室の冷房と換気がなされる。
【0029】
なお、リターンエア導入口9a,9bを、フィルタ、グリル、金網、パンチングメタル、あるいは、その他の圧力損失を生じさせる要素でカバーしても良い。リターンエア導入口9a,9bに圧力損失を生じさせる要素を備えることによって、筐体側空気導入口11a,11bにおいて生じる圧力損失が相対的に小さくなるので、筐体側空気導入口11a,11bを経由して室内機室17に流入するフレッシュエアFAが増加する。その結果、換気量が大きくなる。
【0030】
図8図9は、筐体側空気導入口11a,11bの構成を示す説明図である。図8図9に示すように、筐体側空気導入口11a,11bはフィルタ11cとダンパ11dを備えている。フィルタ11cはフレッシュエアFAに含まれる塵埃を濾し取る防塵フィルタである。筐体側空気導入口11a,11bにフィルタ11cを備えるので、鉄道車両2の車室への塵埃の侵入が抑制される。なお、フィルタ11cは防塵機能を備えていれば十分であり、その素材と機械的構成は限定されない。
【0031】
ダンパ11dは、図示しない電動機で駆動されて、筐体側空気導入口11a,11bの開度を任意に調整する装置である。図8においてダンパ11dは全閉状態にあり、図9においてダンパ11dは全開状態にある。また、ダンパ11dの開度は、全閉状態と全開状態の間で任意に選択できる。このように、空気調和装置1は、筐体側空気導入口11a,11bにダンパ11dを備えるので、室内機室17に流入するフレッシュエアFAの流量を、必要に応じて調整することができる。
【0032】
また、筐体側空気導入口11a,11bにおいては、フィルタ11cをダンパ11dの外側に配置したので、筐体4の外側から手を入れて、フィルタ11cを交換することが容易である。
【0033】
(電気装置室における空気の流れ)
図10は、空気調和装置1の電気装置室16を図6においてX-X線で示す平面で切断して示す断面図である。図10に示すように、インバータ装置21はヒートシンク27の上に搭載されて、ヒートシンク27と伝熱的に接触している。そして、ヒートシンク27の一部は、ダクト5の第2領域5cの内部に突出している。そのため、インバータ装置21で発生する熱はヒートシンク27に伝熱され、ヒートシンク27からダクト5の第2領域5c内の冷却エアCA(図10において図示なし)に向けて放熱される。つまり、インバータ装置21はダクト5の第2領域5c内を流れる冷却エアCAによって冷却される。
【0034】
また、前述したように、電気装置室16の底板には、冷却空気導入口12a,12bが配置されている。そのため、図10に示すように、ダクト5の第1領域5a,5b内のリターンエアRAが、冷却空気導入口12a,12bを通って、電気装置室16に流入する。そして、電気装置室16に流入したリターンエアRAは、案内板22a,22bに案内されてインバータ装置21に向かって流れて、インバータ装置21を冷却する。インバータ装置21を冷却したリターンエアRAは、通気口13a,13bと隙間3aを通って、鉄道車両2の車外に排出される。
【0035】
なお、インバータ装置21の冷却には、風量が大きいことよりも風速が速いことが求められる。そこで、本実施の形態においては、案内板22a,22bを備えることによって、インバータ装置21に当たるリターンエアRAの流速を高めている。また、インバータ装置21は、局所的に発熱するので、発熱が生じる部位に冷却空気を集中することが求められる。そこで、本実施の形態においては、案内板22a,22bを備えることによって、リターンエアRAをインバータ装置21の発熱が生じる部位に導いている。
【0036】
(分流部材)
図11は、空気調和装置1を図6においてXI-XI線で示す平面で切断して示す断面図である。図11に示すように、ダクト5の第2領域5cは、分流部材28を備えている。分流部材28は、図11において右方向に向かって下降する傾斜面と左方向に向かって下降する傾斜面とを備えている。そのため、室内機用送風機23a,23bから吐出されて垂直下方に向かう冷却エアCAの流れが一方の傾斜面に衝突すると、冷却エアCAはダクト5の第2領域5cにおいて図の右方向に向かって流れる。冷却エアCAの流れが他方の傾斜面に衝突すると、冷却エアCAはダクト5の第2領域5cにおいて図の左方向に向かって流れる。このように、分流部材28によれば、ダクト5の第2領域5cに流入する冷却エアCAの流れを、図において右方向に向かう流れと左方向に向かう流れに分流することができる。つまり、冷却エアCAの流れを、鉄道車両2(図11において図示なし)の前端に向かう流れと後端に向かう流れに分流することができる。そのため、冷却エアCAが鉄道車両2の前後端に届きやすくなる。
【0037】
(変形例)
図12は、変形例に係る空気調和装置1の構成を図6に倣って示す平面図である。図12に示すように、変形例に係る空気調和装置1は、カバー3の前後端に端面空気導入口29を備えるとともに、電気装置室16と室内機室17を区画する隔壁14に、連通口30を備えることを特徴している。
【0038】
端面空気導入口29は、本開示に係るカバー側空気導入口の別例である。つまり、変形例に係る空気調和装置1は、側面空気導入口8a,8bに加えて、端面空気導入口29をカバー側空気導入口として備えることを特徴としている。側面空気導入口8a,8bに加えて、端面空気導入口29をカバー側空気導入口として備えることによって、隙間3aに流入するフレッシュエアFAの流量が増加する。そのため、空気調和装置1の換気能力が向上する。なお、側面空気導入口8a,8bを廃止して、端面空気導入口29だけをカバー側空気導入口として備えるようにしても良い。
【0039】
なお、上記において、空気調和装置1に側面空気導入口8a,8bと端面空気導入口29と連通口30を備える例を示したが、空気調和装置1は、側面空気導入口8a,8bと端面空気導入口29を備えて、連通口30を備えないものであっても良い。また、空気調和装置1は、側面空気導入口8a,8bと連通口30を備えて、端面空気導入口29を備えないものであっても良い。
【0040】
図13は、図12に記載の空気調和装置1の電気装置室16を図12においてXIII-XIII線で示す平面で切断して示す断面図である。前述したように、変形例に係る空気調和装置1は、電気装置室16と室内機室17を区画する隔壁14に連通口30を備えているので、電気装置室16内の空気は連通口30(図13において図示なし)を通って室内機室17(図13において図示なし)に流れて、室内機用送風機23a,23b(図13において図示なし)によって吸引される。その結果、電気装置室16が外気に対して負圧になるので、リターンエアRAが、ダクト5の第1領域5a,5b内から冷却空気導入口12a,12bを通って、電気装置室16に流入する。また、フレッシュエアFAが、鉄道車両2の車外から隙間3aと通気口13a,13bを通って、電気装置室16内に流入する。このように、リターンエアRAに加えて、フレッシュエアFAが電気装置室16内に流入するので、インバータ装置21が、より効果的に冷却される。
【0041】
(送風機)
最後に、図6あるいは図12に記載の空気調和装置1が備える室内機用送風機23a,23bの構成について説明する。室内機用送風機23a,23bは遠心型の送風機である。遠心型の送風機が備える羽根車は、回転軸に直交する平面で切断した断面において、回転方向に傾いた、つまり前向きに傾いた翼形を有するブレードを備えるシロッコファンと、回転軸に直交する平面で切断した断面において、回転方向の逆方向に傾いた、つまり後向きに傾いた翼形を有するブレードを備えるターボファンとに大別される。一般にシロッコファンは大きな風量が必要とされる場合に有利であるとされている。ターボファンは高圧力が必要とされる場合に有利であるとされている。
【0042】
図14は、室内機用送風機23a,23bが備える羽根車31の外形を示す斜視図である。図14に示すように、羽根車31は、円盤状の主板31aと環状のシュラウド31bと多数のブレード31cを備えている。ブレード31cは羽根車31の回転中心31dに対して放射状に配置されていて、主板31aとシュラウド31bの間に挟持されている。羽根車31が回転すると、シュラウド31bの中心から空気が吸引されて、羽根車31の内部に流入する。羽根車31の内部に流入した空気は、ブレード31cとブレード31cの間の隙間を通って、羽根車31の回転中心31dから遠ざかる方向に、つまり遠心方向に吐出される。
【0043】
図15は、図14に記載の羽根車31が備えるブレード31cを羽根車31(図15において図示なし)の回転軸に直交する平面で切断して示す断面図である。図15に示すように、ブレード31cの断面形は内側、つまり羽根車31の回転中心31dに近い部位において、羽根車31の回転方向に対して後向きに傾斜している。つまり該部位において、ブレード31cは、回転中心31dから離れるに従って、羽根車31の回転方向の反対方向に傾いている。このように、羽根車31は、回転中心31dに近い部位において、ターボファンの特徴を有している。ブレード31cは、回転中心31dに近い部位において、ターボファン形状を備えている。
【0044】
一方、羽根車31の外側、つまり羽根車31の回転中心31dから遠い部位において、ブレード31cの断面形は、羽根車31の回転方向に対して前向きに傾斜している。つまり該部位において、ブレード31cは、回転中心31dから離れるに従って、羽根車31の回転方向に傾いている。このように、羽根車31は、回転中心31dから遠い部位において、シロッコファンの特徴を有している。ブレード31cは、回転中心31dから遠い部位において、シロッコファン形状を備えている。
【0045】
このように、羽根車31は、内周側においてはターボファンの特徴を備えるとともに、外周側においてはシロッコファンの特徴を備えている。そのため、羽根車31の内周側においては、ターボファンと同様の高い効率が得られる。羽根車31の外周側においては、シロッコファンと同様の大きな風量が得られる。そのため、羽根車31を備えることによって、室内機用送風機23a,23bを小型軽量化することが可能になる。ひいては、空気調和装置1を小型軽量化することが可能になる。
【0046】
以上、説明したように、本実施の形態においては、筐体側空気導入口11a,11bが端面空気導入口29と側面空気導入口8a,8bとから離隔して配置されている。そのため、端面空気導入口29と側面空気導入口8a,8bから雨水が流入しても、その雨水が筐体側空気導入口11a,11bに到達することは難しい。その結果、筐体側空気導入口11a,11bからの雨水の侵入が抑制されるので、降水時であっても、筐体側空気導入口11a,11bを経由して、必要な量の外気を導入して、鉄道車両2の車室の換気を十分に行うことができる。その結果、鉄道車両2の車室の衛生環境が改善される。
【0047】
また、室内機室17を通過した空気が流れるダクト5の第2領域5c内にインバータ装置21に伝熱的に接続されるヒートシンク27を配置したので、インバータ装置21の冷却性能が向上する。また、電気装置室16に冷却空気導入口12a,12bを設けて、鉄道車両2の車室内の空気を電気装置室16に導入するようにしたので、インバータ装置21の冷却性能が、さらに向上する。
【0048】
なお、インバータ装置21は電気品であるので、結露による損傷が問題になるが、本実施の形態においては、比較的に温度が高いリターンエアRAを電気装置室16に導入するようにしたので、インバータ装置21における結露の発生が抑制される。また、ヒートシンク27には、温度が低い冷却エアCAが接触するので、結露が生じやすいが、ヒートシンク27は電気品ではないので、結露が生じても大きな問題は生じない。
【0049】
また、室内機用送風機23a,23bが備える羽根車31が、内周側においてはターボファンの特徴を備えるとともに、外周側においてはシロッコファンの特徴を備えているので、羽根車31および室内機用送風機23a,23bを小型軽量化することが容易である。
【0050】
また、羽根車31は上記の特徴を備えるので、従来のシロッコファンに比べて、寸法を小さくすることできる。また、シロッコファンと同等の風量を維持したまま、静圧を高くすることができる。そのため、本実施の形態によれば、換気量を増やして、車内環境の衛生水準を高く保つことができる。
【0051】
また、羽根車31によれば、第2領域5cを流れる冷却エアCAを高静圧化できるので、冷却エアCAがヒートシンク27に当たって生じる圧力損失による流量低下を小さくすることができる。
【0052】
なお、本開示の技術的範囲は、上記の実施の形態によっては、限定されない。本開示は特許請求の範囲に示された技術的思想の限りにおいて、自由に、変形、変更あるいは改良して実施することができる。
【0053】
上記において、空気調和装置1が2組の冷凍回路を備える例を示したが、本開示に係る空気調和装置は2組の冷凍回路を備えるものには限定されない。本開示に係る空気調和装置は、冷凍回路を1組だけ備えるものであっても良い。
【0054】
インバータ装置21と冷却空気導入口12a,12bの間に配置される誘導部材の具体例として案内板22a,22bを示したが、誘導部材は板状の部材には限定されない。誘導部材は冷却空気導入口12a,12bから導入された空気を物理的にインバータ装置21に導く部材であれば十分であり、その形状あるいは構成は限定されない。誘導部材は、管材であっても良いし、箱型の部材であっても良い。
【0055】
ダクト5の第2領域5cに配置される分流部材28は、ダクト5の第2領域5cに流入する冷却エアCAの流れを、鉄道車両2の前端に向かう流れと鉄道車両2の後端に向かう流れに分流する機能を備えていれば十分であり、分流部材28の形状と機械的構成は限定されない。特に、分流部材28が備える斜面の勾配は、図示されたものには限定されない。分流部材28が備える斜面の勾配は任意に選択できる。分流部材28が備える斜面は均一な勾配を備えるものには限定されない。つまり、分流部材28が備える斜面は図11に現れる断面形において、直線で表せるものには限定されない。分流部材28が備える斜面は勾配が連続して変化するものであっても良い。つまり、分流部材28が備える斜面は図11に現れる断面形において、曲線で表せるものであっても良い。
【0056】
また、側面空気導入口8a,8b及び端面空気導入口29にグリルを備えて、雨水の侵入を側面空気導入口8a,8b及び端面空気導入口29で防ぐようにしても良い。
【0057】
また、上記において、筐体側空気導入口11a,11bにダンパ11dを備える例を示したが、筐体側空気導入口11a,11bにおいて、ダンパ11dは必須の構成要素ではない。筐体側空気導入口11a,11bはダンパ11dを備えないのであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示は、空気調和装置として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 空気調和装置、2 鉄道車両、3 カバー、3a 隙間、4 筐体、5 ダクト、5a,5b 第1領域、5c 第2領域、6 吸気グリル、7a,7b 排気グリル、8a,8b 側面空気導入口,9a,9b リターンエア導入口、10 空気送出口、11a,11b 筐体側空気導入口、11c フィルタ、11d ダンパ、12a,12b 冷却空気導入口、13a,13b 通気口、14 隔壁、15 室外機室、16 電気装置室、17 室内機室、18 圧縮機室、19 室外機用送風機、20a,20b 室外機用熱交換器、21 インバータ装置、22a,22b 案内板、23a,23b 室内機用送風機、24a,24b 室内機用熱交換器、25a,25b 膨張弁、26a,26b 圧縮機、27 ヒートシンク、28 分流部材、29 端面空気導入口、 30 連通口、31 羽根車、31a 主板,31b シュラウド,31c ブレード、31d 回転中心、RA リターンエア、FA フレッシュエア、CA 冷却エア


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15