(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 69/33 20060101AFI20241213BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20241213BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20241213BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20241213BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241213BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241213BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241213BHJP
C07C 41/03 20060101ALN20241213BHJP
C07C 43/13 20060101ALN20241213BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241213BHJP
【FI】
C07C69/33
C07C67/08
C11D1/68
A61K8/39
A61K8/86
A61Q1/00
A61Q19/00
C07C41/03
C07C43/13 D
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2024535419
(86)(22)【出願日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2024019098
【審査請求日】2024-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2023087300
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽二
(72)【発明者】
【氏名】景行 瞳
(72)【発明者】
【氏名】坂本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】岡内 駿之介
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-176113(JP,A)
【文献】特開2015-119648(JP,A)
【文献】特開2006-232714(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111233637(CN,A)
【文献】特開平09-249615(JP,A)
【文献】特開2010-260814(JP,A)
【文献】特開2001-139679(JP,A)
【文献】特開平11-222521(JP,A)
【文献】国際公開第2004/048304(WO,A1)
【文献】特開2004-331607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07B31/00-63/04
C07C1/00-409/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸の炭素数が4~25であり、
下記式(X)で表されるピーク強度比が0.20以上であり、
下記式(Y)で表されるピーク強度比が0.46以下であり、
グリセリンの平均重合度が4以上であり、
前記脂肪酸が飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸であり、
前記不飽和脂肪酸がオレイン酸である、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
式(X)=P2/P1
式(Y)=P3/P1
P1:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ジエステル体、ジエステル体脱水物、トリエステル体、及びトリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
P2:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体のピーク強度
P3:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
【請求項2】
前記脂肪酸の炭素数が15~25である、請求項1に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項3】
前記
飽和脂肪酸の炭素数が4~14である、請求項1に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項4】
前記脂肪酸の炭素数が16~18である、請求項2に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項5】
前記
飽和脂肪酸の炭素数が8~14である、請求項3に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項6】
グリセリンの平均重合度が4~20である、請求項2又は3に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項7】
前記脂肪酸が直鎖脂肪酸である、請求項2又は3に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項8】
前記脂肪酸がオレイン酸である、請求項2又は3に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項9】
前記
飽和脂肪酸が分岐鎖脂肪酸である、請求項2又は3に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項10】
グリシドールと脂肪酸との反応物である、請求項1に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項11】
前記式(Y)で表されるピーク強度比が0.1以上である、請求項1に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項12】
前記式(X)で表されるピーク強度比が0.9以下である、請求項1に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項13】
グリセリンの平均重合度が4~40である、請求項1に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項14】
グリセリンの平均重合度が4~20である、請求項1に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
【請求項15】
請求項1に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品を含む化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの重合度と鎖長の異なる脂肪酸との組み合わせにより種々の特性を発揮するものであり、界面活性剤として、食品添加物、洗浄剤組成物、及び化粧品(化粧料組成物)等の幅広い用途に用いられてきた。この様なポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法としては、ポリグリセリンと脂肪酸のエステル化反応、ポリグリセリンと脂肪酸エステルとのエステル交換反応、グリシドールと脂肪酸との付加重合反応等がある(特許文献1~6)。
【0003】
また、特許文献7には、ラウリン酸/グリシドール/リン酸を特定の比率で反応器に供給しながら反応させて得られるポリグリセリンモノラウリン酸エステル体が記載されている。さらにまた、特許文献8には、フラスコに鎖状ジグリセリンモノオレイン酸エステルを加え、グリシドールとリン酸を滴下しながら反応させて得られる、ポリグリセリンモノオレイン酸エステル組成物の発明が記載されている。
【0004】
しかしながら、これまでに知られているポリグリセリンモノ脂肪酸エステルは、モノエステル体以外の副産物(例えば、モノエステル体脱水物、ジエステル体、ジエステル体脱水物、トリエステル体、及びトリエステル体脱水物等)が多く含まれており、モノエステル体の純度が高いとはいえなかった。このため、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを界面活性剤として使用した場合に、表面張力を効率よく低下させることができない等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-109153号公報
【文献】特開平9-117258号公報
【文献】特開平9-216813号公報
【文献】特開平9-272893号公報
【文献】特開2006-111539号公報
【文献】国際公開第2004/048304号
【文献】特開2001-139679号公報
【文献】特開2017-071586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献7のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、脂肪酸、酸性触媒、及びグリシドールをともに連続的に供給・反応する方法で得られるため、後述の、本開示における式(X)及び式(Y)で表されるピーク強度比の範囲を充足するものではなかった。また、引用文献8のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、脂肪酸ではなくジグリセリンモノ脂肪酸エステルを原料とするものであるため、後述の、本開示における式(X)及び式(Y)で表されるピーク強度比の範囲を充足するものではなかった。
【0007】
従って、本開示の目的は、純度の高いポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品を提供することにある。本開示の他の目的は、高い純度のポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを得ることができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、高い純度を有するポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品を見いだした。本開示に係る発明は、これらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本開示は、脂肪酸の炭素数が4~25であり、
下記式(X)で表されるピーク強度比が0.20以上であり、
下記式(Y)で表されるピーク強度比が0.46以下である、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品について提供する。
式(X)=P2/P1
式(Y)=P3/P1
P1:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ジエステル体、ジエステル体脱水物、トリエステル体、及びトリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
P2:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体のピーク強度
P3:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
【0010】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、上記脂肪酸の炭素数が15~25であることが好ましい。
【0011】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、上記脂肪酸の炭素数が4~14であることも好ましい。
【0012】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、上記脂肪酸の炭素数が16~18であることが好ましい。
【0013】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、上記脂肪酸の炭素数が8~14であることが好ましい。
【0014】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、グリセリンの平均重合度が2~20であることが好ましい。
【0015】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、上記脂肪酸が直鎖脂肪酸であることが好ましい。
【0016】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、上記脂肪酸が不飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0017】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、上記脂肪酸が分岐鎖脂肪酸であることが好ましい。
【0018】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、グリシドールと脂肪酸との反応物であることが好ましい。
【0019】
本開示では、上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品を含む化粧料組成物についても提供する。
【0020】
本開示では、グリシドールと脂肪酸との付加重合反応工程を有する、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の製造方法についても提供する。
【0021】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の製造方法では、脂肪酸に対して、グリシドールを連続的又は間欠的に供給することにより付加重合反応を実施することが好ましい。
【0022】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の製造方法では、脂肪酸に対して、グリシドールを連続的又は間欠的に供給しつつ、酸性触媒を連続的又は間欠的に供給することにより付加重合反応を実施することが好ましい。
【0023】
上記酸性触媒は、リン酸類又は酸性リン酸エステル類であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は上記構成を有するとおり、高い純度でポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを含む。また、本開示の製造方法では、高い純度のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例1のポリグリセリンモノカプリン酸エステルにおける、HPLC分析のチャートである。
【
図2】実施例1のポリグリセリンモノカプリン酸エステルにおける、補正分子量とこれに対応するピーク強度のチャートである。中空の棒グラフがモノエステル体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品]
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、脂肪酸の炭素数が4~25であり、下記式(X)で表されるピーク強度比が0.20以上であり、下記式(Y)で表されるピーク強度比が0.46以下であることを特徴とする。
式(X)=P2/P1
式(Y)=P3/P1
P1:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ジエステル体、ジエステル体脱水物、トリエステル体、及びトリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
P2:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体のピーク強度
P3:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
【0027】
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、少なくともポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを含む。また、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル以外にも、ポリグリセリンジ脂肪酸エステル及びポリグリセリントリ脂肪酸エステル等のポリグリセリンポリ脂肪酸エステルを含んでいてもよい。また、上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の原料であるポリグリセリン等を含んでいてもよい。さらに、後述するこれらの脱水物を含んでいてもよい。
【0028】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルは、例えば、下記式(1)で示される。
RC(=O)-[C3H6O2]n-OH・・・(1)
【0029】
式(1)中、Rは炭素数が3~24の脂肪族炭化水素基を示す。上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、又はヒドロキシ基を有するアルキル基が挙げられる。上記脂肪族炭化水素基の炭素数は、後述の「脂肪酸の炭素数」から1を減じたものに相当する。nはグリセリンの平均重合度であり、例えば、2~20を示す。
【0030】
上記式(1)の括弧内のC3H6O2は、下記の式(2)、式(3)、及び式(4)からなる群より選択される少なくとも1つの構造を含む。
-O-CH2-CH(OH)-CH2-・・・(2)
-O-CH(CH2OH)-CH2-・・・(3)
-O-CH2-CH(CH2OH)-・・・(4)
【0031】
本明細書では、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを単に「モノエステル体」と称することがある。ポリグリセリンジ脂肪酸エステルは、ポリグリセリンが有する水酸基の二つが、脂肪酸が有するカルボキシ基とエステル結合を形成することにより結合したものである。この様なポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを単に「ジエステル体」と称することがある。ポリグリセリントリ脂肪酸エステルは、ポリグリセリンが有する水酸基の三つが、脂肪酸が有するカルボキシ基とエステル結合を形成することにより結合したものである。この様なポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを単に「トリエステル体」と称することがある。また、ポリグリセリンジ脂肪酸エステル及びポリグリセリントリ脂肪酸エステル以外のポリグリセリンポリ脂肪酸エステルについても上記と同様に「テトラエステル体」、「ペンタエステル体」、「ヘキサエステル体」等と称することがある。また、これらのポリグリセリンポリ脂肪酸エステルを「ポリエステル体」と称することがある。
【0032】
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品では、製造過程においてポリグリセリンの一部が脱水することがある。ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルにおいて、ポリグリセリンの一部が脱水したものをポリグリセリンモノ脂肪酸エステル脱水物、又はポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体脱水物と称することがあり、また、単にモノエステル体脱水物と称することがある。ポリグリセリンジ脂肪酸エステル及びポリグリセリントリ脂肪酸エステル等のポリグリセリンポリ脂肪酸エステルも同様に、ポリグリセリンジ脂肪酸エステル脱水物又はジエステル体脱水物や、ポリグリセリントリ脂肪酸エステル脱水物又はトリエステル体脱水物等のポリグリセリンポリ脂肪酸エステル脱水物又はポリエステル体脱水物と称することがある。これらの脱水物は環状構造を有することがある。
【0033】
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステルは、(1)脂肪酸にグリシドールを付加重合させる反応により得られたものであってもよく、(2)ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応により得られたものであってもよく、(3)ポリグリセリンと脂肪酸エステルとのエステル交換反応により得られたものであってもよい。上記(1)の反応により得られたポリグリセリンモノ脂肪酸エステルは、グリシドールと脂肪酸の反応物と言い換えることができる。上記(2)の反応により得られたポリグリセリンモノ脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸のエステル化体と言い換えることができる。上記(3)の反応により得られたポリグリセリンモノ脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸エステルとのエステル交換体と言い換えることができる。この中でも、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品中のモノエステル体の割合が高くなる点で、上記(1)のグリシドールと脂肪酸との反応物であることが好ましい。
【0034】
(飛行時間型質量分析計(TOF-MS))
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品における、飛行時間型質量分析計(TOF-MS)とその測定条件は特に限定されないが、例えば、以下の装置及び条件にて測定することができる。
・装置:Xevo G2‐XSQTof(Waters株式会社)
・注入方法:インフュージョンで注入(5μL/min)
・測定モード:Neg
・Conegas:50L/h
・Desolvation gas:1000L/h
・Source temp:120℃
・Desolvation temp:500℃
・Capillary:2.0kV
・Sampling cone:40
・Source offset:80
・サンプル濃度:25ppm(メタノール)
・MS範囲:50~3000
【0035】
本開示において、式(X)で表されるピーク強度比はP2/P1により算出される。また、式(Y)で表されるピーク強度比はP3/P1により算出される。
上記P1は、飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ジエステル体、ジエステル体脱水物、トリエステル体、及びトリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和である。
上記P2は、飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体のピーク強度である。
上記P3は、飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和である。
【0036】
上記P1~3にて用いられる各成分のピーク強度は、上記飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際に得られるピーク強度に由来する。
【0037】
上記飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した場合、ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、モノエステル体(すなわち、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル)の分子量に対応するピーク以外にも、不純物として、モノエステル体脱水物、ジエステル体、ジエステル体脱水物、トリエステル体、及びトリエステル体脱水物等の分子量に対応するピークを観測し得る。また、不純物として、上記以外のポリグリセリンポリ脂肪酸エステル及びその脱水物としての、テトラエステル体、テトラエステル体脱水物、ペンタエステル体、ペンタエステル体脱水物等の分子量に対応するピークを観測し得る。さらに、不純物として、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の原料や副産物としてのポリグリセリン、ポリグリセリン脱水物等の分子量に対応するピークを観測し得る。
【0038】
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル及び不純物は、上記飛行時間型質量分析計によりポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際に測定される分子量により特定することができる。
【0039】
以下に、上記式(X)、式(Y)、P1~3の算出方法の概要を説明する。なお、具体的な方法は実施例に記載する。
(a)飛行時間型質量分析計によりポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施し、P1~3に記載の各成分に由来する分子量とそのピーク強度を得るとともに、各分子量の数値の小数点以下を切り捨てて整数化し、対応するピーク強度の数値を足し合わせる。上述の分子量の整数化は、後述の(c)における補正分子量との対応を目的とするものである。
(b)P1~3に記載の各成分の理論分子量を算出する。
(c)(b)における理論分子量を、以下の(i)~(iv)を考慮して補正し、補正分子量を規定する。
(i)飛行時間型質量分析計により測定・検出された分子量は、イオン化により脱プロトン化された分子に由来するものであること、(ii)(i)について、分子量が大きいものについては、さらに強度のピークトップの分子量が1ずれることがあること、(iii)P1~3に記載の各成分において、分子量が一致するものがあることから、適切に取捨選択して算出する必要があること、(iv)ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化数とグリセリン重合度を考慮し、存在し得ない脱水度となる場合はこれを排除する必要があること。
(d)(c)にて算出したポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の各成分の補正分子量に、(a)で得られた強度を対応させ、これらをP1~3に記載した「モノエステル体」、「モノエステル体脱水物」、「ジエステル体」、「ジエステル体脱水物」、「トリエステル体」、「トリエステル体脱水物」、「ポリグリセリン」、及び「ポリグリセリン脱水物」のそれぞれのピーク強度となるように合算する。上記各成分のピーク強度は以下の様に算出した。
・モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体、及びポリグリセリンは、それぞれ、グリセリン重合度が1~20である場合のピーク強度を合算したものである。
・モノエステル体脱水物、ジエステル体脱水物、トリエステル体脱水物、及びポリグリセリン脱水物は、それぞれ、グリセリン重合度が1~20である場合と、脱水度が1~3(1~3分子の水分子が除去されたもの)である場合におけるピーク強度を合算したものである。
(e)(d)にて算出したポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の各成分のピーク強度を用いて、上記式(X)及び式(Y)を算出する。
【0040】
上記P1は、飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ジエステル体、ジエステル体脱水物、トリエステル体、及びトリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和である。
上記P2は、飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルのピーク強度である。したがって、式(X)=P2/P1で表されるピーク強度比は、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品に含まれるポリグリセリンモノ脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体)の含有量についての指標といえる。すなわち、式(X)の値が大きいことは、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品中のポリグリセリンモノ脂肪酸エステルの純度が高いことを意味する。
上記P3は、飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和である。したがって、式(Y)=P3/P1で表されるピーク強度比は、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品に含まれるポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物の含有量についての指標といえる。すなわち、式(Y)の値が小さいことは、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品中のポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物の含有量が少ないことを意味し、相対的にポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体の含有量が多い(純度が高い)ことを意味する。
【0041】
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は純度が高いため、界面活性剤として使用した場合に表面張力を効率よく低下させることができる。また、洗浄力や液晶(例えば、バイコンティニュアスキュービック液晶)の形成能が良好である。さらに、クレンジングオイルとして使用した場合に、メイク馴染み、メイク落ち、メイクを洗い流した後の肌のさっぱり感が良好である。これは、純度が高いことから、きれいなミセルが形成されることに起因する効果と考えられる。
【0042】
上記式(X)で表されるピーク強度比は0.20以上であれば特に限定されないが、より好ましくは0.21以上、より好ましくは0.23以上、より好ましくは0.24以上、より好ましくは0.25以上、より好ましくは0.26以上、より好ましくは0.28以上、より好ましくは0.3以上、より好ましくは0.31以上、より好ましくは0.33以上、より好ましくは0.35以上、より好ましくは0.37以上、より好ましくは0.40以上、より好ましくは0.44以上、より好ましくは0.48以上、より好ましくは0.52以上である。また、上記式(X)で表されるピーク強度比は特に限定されないが、例えば、1以下、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、より好ましくは0.75以下、より好ましくは0.7以下、より好ましくは0.65以下、より好ましくは0.6以下である。
【0043】
上記式(Y)で表されるピーク強度比は0.46以下であれば特に限定されないが、0.45以下であることが好ましく、より好ましくは0.44以下、より好ましくは0.42以下、より好ましくは0.39以下、より好ましくは0.37以下、より好ましくは0.35以下、より好ましくは0.33以下、より好ましくは0.32以下、より好ましくは0.30以下である。また、上記式(Y)で表されるピーク強度比は特に限定されないが、例えば、0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上である。
【0044】
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品において、グリセリンの平均重合度は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。上記グリセリンの平均重合度は、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、又は9以上であってもよい。また、上記グリセリンの平均重合度は、35以下、30以下、25以下、20以下、18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、8以下、6以下、又は4以下であってもよい。上記グリセリンの平均重合度はまた、3~20、又は4~10であってもよい。
【0045】
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品において、グリセリンの平均重合度の特定方法は特に限定されないが、例えば、上記(1)の反応により得られるポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品である場合は、脂肪酸1モルに対して付加重合させるグリシドールのモル数により特定することができる。例えば、グリセリンの平均重合度がnであることは、脂肪酸1モルに対してグリシドールnモルを付加重合させた場合、得られるポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品のグリセリンの平均重合度はnである。また、例えば、上記(2)及び(3)の反応により得られるポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品である場合は、使用するポリグリセリンにおけるグリセリンの平均重合度と同一である。例えば、グリセリンの平均重合度がmであるポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応により得られたポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、グリセリンの平均重合度がmである。
【0046】
グリセリンの平均重合度の他の特定方法としては、水酸基価を用いた方法が挙げられる。水酸基価は試料1gをアセチル化させたとき,水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数をいう(JIS K 0070-1992参照)。水酸基価からポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の有するポリグリセリン鎖における水酸基量を算出し、その平均重合度を決定することができる。
【0047】
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品において、水酸基価は特に限定されないが、317~754KOH/gであることが好ましい。上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の水酸基価は、317KOH/g以上、389KOH/g以上、413KOH/g以上、475KOH/g以上、483KOH/g以上、又は539KOH/g以上であってもよい。また、上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の水酸基価は、754KOH/g以下、751KOH/g以下、745KOH/g以下、741KOH/g以下、734KOH/g以下、725KOH/g以下、713KOH/g以下、698KOH/g以下、又は677KOH/g以下であってもよい。
【0048】
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品において、上記脂肪酸としては特に限定されないが、例えば、炭素数が4~25の脂肪酸が好ましい。上記脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。また、直鎖脂肪酸でも分岐鎖脂肪酸(側鎖をもつ脂肪酸)でもよい。さらに、炭素鎖に結合する水素の一部がヒドロキシ基で置換された置換脂肪酸でもよい。なお、ここでの脂肪酸とは、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルの構成成分としての脂肪酸を意味する。
【0049】
上記脂肪酸の炭素数は特に限定されないが、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、15以上、16以上、又は18以上であってもよい。また、上記脂肪酸の炭素数は特に限定されないが、22以下、20以下、18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、又は8以下であってもよい。上記脂肪酸の炭素数は、また、4~14又は15~25であってもよく、8~14又は16~18であってもよい。
【0050】
上記脂肪酸としては特に限定されないが、例えば、カプロン酸(C6、飽和脂肪酸)、カプリル酸(C8、飽和脂肪酸)、ペラルゴン酸(C9、飽和脂肪酸)、2-エチルヘキサン酸(C8、分岐鎖脂肪酸)、カプリン酸(C10、飽和脂肪酸)、ラウリン酸(C12、飽和脂肪酸)、イソトリデカン酸(C13、分岐鎖脂肪酸)、ミリスチン酸(C14、飽和脂肪酸)、ペンタデシル酸(C15、飽和脂肪酸)、パルミチン酸(C16、飽和脂肪酸)、パルミトレイン酸(C16、不飽和脂肪酸)、ステアリン酸(C18、飽和脂肪酸)、イソステアリン酸(C18、分岐鎖脂肪酸)、オレイン酸(C18、不飽和脂肪酸)、リノール酸(C18、不飽和脂肪酸)、リシノール酸(C18、不飽和脂肪酸)、ヒドロキシステアリン酸(C18、置換脂肪酸)、アラキジン酸(C20、飽和脂肪酸)、ベヘン酸(C22、飽和脂肪酸)、エルカ酸(C22、不飽和脂肪酸)、ネルボン酸(C24、不飽和脂肪酸)等が挙げられる。
【0051】
上記脂肪酸の炭素数が4~14(特に8~14)である場合、上記式(X)で表されるピーク強度比は0.20以上であれば特に限定されないが、より好ましくは0.23以上、より好ましくは0.25以上、より好ましくは0.30以上、より好ましくは0.33以上、より好ましくは0.35以上、より好ましくは0.40以上である。
【0052】
上記脂肪酸の炭素数が4~14(特に8~14)である場合、上記式(Y)で表されるピーク強度比は0.46以下であれば特に限定されないが、0.45以下であることが好ましく、より好ましくは0.42以下、より好ましくは0.39以下、より好ましくは0.37以下である。また、上記式(Y)で表されるピーク強度比は特に限定されないが、例えば、0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上である。
【0053】
上記脂肪酸の炭素数が4~14(特に8~14)である場合、グリセリンの平均重合度は特に限定されないが、2~40であることが好ましく、より好ましくは3~20であり、さらに好ましくは4~10であり、特に好ましくは6~10である。
【0054】
上記脂肪酸の炭素数が15~25(特に16~18)である場合、上記式(X)で表されるピーク強度比は0.20以上であれば特に限定されないが、より好ましくは0.23以上、より好ましくは0.24以上、より好ましくは0.25以上、より好ましくは0.28以上、より好ましくは0.30以上、より好ましくは0.31以上、より好ましくは0.33以上、より好ましくは0.35以上である。
【0055】
上記脂肪酸の炭素数が15~25(特に16~18)である場合、上記式(Y)で表されるピーク強度比は0.46以下であれば特に限定されないが、0.44以下であることが好ましく、より好ましくは0.37以下、より好ましくは0.32以下、より好ましくは0.30以下、より好ましくは0.28以下である。また、上記式(Y)で表されるピーク強度比は特に限定されないが、例えば、0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上である。
【0056】
上記脂肪酸の炭素数が15~25(特に16~18)である場合、グリセリンの平均重合度は特に限定されないが、2~40であることが好ましく、より好ましくは3~20であり、さらに好ましくは4~10である。
【0057】
上記脂肪酸の炭素数が15~25(特に16~18)の直鎖脂肪酸である場合、上記式(X)で表されるピーク強度比は0.20以上であれば特に限定されないが、より好ましくは0.24以上、より好ましくは0.28以上、より好ましくは0.30以上である。この場合、グリセリンの平均重合度は特に限定されないが、2~40であることが好ましく、より好ましくは3~20であり、さらに好ましくは4~10である。
【0058】
上記脂肪酸の炭素数が15~25(特に16~18)の直鎖脂肪酸である場合、グリセリンの平均重合度は特に限定されないが、2~40であることが好ましく、より好ましくは3~20であり、さらに好ましくは4~10である。
【0059】
上記脂肪酸の炭素数が15~25(特に16~18)の分岐鎖脂肪酸である場合、上記式(X)で表されるピーク強度比は0.20以上であれば特に限定されないが、0.25以上であることが好ましく、より好ましくは0.30以上、より好ましくは0.33以上である。この場合、グリセリンの平均重合度は特に限定されないが、2~40であることが好ましく、より好ましくは3~20であり、さらに好ましくは4~10である。
【0060】
上記脂肪酸の炭素数が15~25(特に16~18)の分岐鎖脂肪酸である場合、上記式(Y)で表されるピーク強度比は0.46以下であれば特に限定されないが、0.40以下であることが好ましく、より好ましくは0.37以下、より好ましくは0.35以下である。また、上記式(Y)で表されるピーク強度比は特に限定されないが、例えば、0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上である。
【0061】
上記脂肪酸の炭素数が15~25(特に16~18)の分岐鎖脂肪酸である場合、グリセリンの平均重合度は特に限定されないが、2~40であることが好ましく、より好ましくは3~20であり、さらに好ましくは4~10である。
【0062】
上記脂肪酸の炭素数が15~25(特に16~18)の不飽和脂肪酸である場合、上記式(X)で表されるピーク強度比は0.20以上であれば特に限定されないが、より好ましくは0.23以上、より好ましくは0.25以上、より好ましくは0.30以上、より好ましくは0.33以上である。この場合、グリセリンの平均重合度は特に限定されないが、2~40であることが好ましく、より好ましくは3~20であり、さらに好ましくは4~10である。
【0063】
上記脂肪酸の炭素数が15~25(特に16~18)の不飽和脂肪酸である場合、上記式(Y)で表されるピーク強度比は0.46以下であれば特に限定されないが、0.44以下であることが好ましく、より好ましくは0.32以下、より好ましくは0.30以下、より好ましくは0.28以下である。また、上記式(Y)で表されるピーク強度比は特に限定されないが、例えば、0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上である。
【0064】
上記脂肪酸の炭素数が15~25(特に16~18)の不飽和脂肪酸である場合、グリセリンの平均重合度は特に限定されないが、2~40であることが好ましく、より好ましくは3~20であり、さらに好ましくは4~10である。
【0065】
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品において、下記のHPLC(高速液体クロマトグラフ)分析における、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応するピークの面積率は特に限定されないが、例えば、50%以上であることが好ましく、より好ましく60%以上、さらに好ましく80%以上、特に好ましく90%以上である。
【0066】
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品において、下記のHPLC(高速液体クロマトグラフ)分析における、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物に対応するピークの面積率は、例えば、5%以上であることが好ましく、より好ましく10%以上、さらに好ましく20%以上である。また、ポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応するピークの面積率は、例えば、1%以上、5%以上、10%以上、又は20%以上であり、また、例えば、80%以下であることが好ましく、より好ましく70%以下、さらに好ましく60%以下である。
【0067】
(HPLC分析)
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品におけるHPLC分析方法は特に限定されないが、例えば、以下の装置及び条件を用いて測定することができる。
・装置:LC-2030C 3D(島津製作所製)
・カラム:Wakosil 5C18 Φ4.6mm×250mm(W)を2本、直列に接続
・検出器:RID-20A(島津製作所製)
・オーブン温度:40℃
・サンプル:10%メタノール溶液
・サンプル注入量:10μl
・移動相流速:0.75ml/min
【0068】
なお、上記の「ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応するピーク」とは、例えば、上記で示されるHPLC分析方法における、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間にピークトップが存在するピークをいう。よって上記ピークの面積率は、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間のピーク面積率の総和である。
上記の「ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物に対応するピーク」とは、例えば、上記で示されるHPLC分析方法における、HPLCチャートのリテンションタイム8.2~20.0分の間にピークトップが存在するピークをいう。よって上記ピークの面積率は、HPLCチャートのリテンションタイム8.2~20.0分の間のピーク面積率の総和である。
上記の「ポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応するピーク」とは、例えば、上記で示されるHPLC分析方法における、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~8.2分の間にピークトップが存在するピークをいう。よって上記ピークの面積率は、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~8.2分の間のピーク面積率の総和である。
【0069】
[ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の製造方法]
本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、(1)脂肪酸にグリシドールを付加重合させる反応、(2)ポリグリセリンと脂肪酸のエステル化反応、及び(3)ポリグリセリンと脂肪酸エステルとのエステル交換反応、のいずれの反応によって得られたものでもよい。この中でも、上記(1)の反応により得られたポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品が、モノエステル体の割合が高くなる点で好ましい。すなわち、本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、脂肪酸とグリシドールとの付加重合反応工程を有する製造方法により得られるものであることが好ましい。
【0070】
上記(1)の反応は、触媒の存在下又は非存在下で実施することができるが、モノエステル体の割合を向上させる観点からは、触媒(特に、酸性触媒)の存在下で実施することが好ましい。特に、得ようとするポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品のグリセリンの平均重合度が5を超える場合、上記(1)の反応は、触媒の存在下で実施することが好ましい。これは、得られるポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の、モノエステル体の割合が高くなる傾向が強く見られるためである。逆に、得ようとするポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品のグリセリンの平均重合度が5以下である場合、上記(1)の反応は、触媒の存在下で実施することが好ましいが、非存在下で実施しても、モノエステル体の割合に大きな差は見られない。
【0071】
上記酸性触媒は特に限定されないが、化粧品として一般的に使用されている有機酸を触媒として用いることが好ましく、例えば、アスコルビン酸;酢酸、ギ酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸等のカルボン酸;及びリン酸系酸性触媒が挙げられる。上記酸性触媒としては酸解離定数が大きい有機酸が好ましい。この中でも、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の純度の観点からは、リン酸系酸性触媒が好ましい。
【0072】
上記リン酸系酸性触媒としては、リン酸類又はリン酸のエステル類が挙げられ、例えば、リン酸、無水リン酸、ポリリン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等のリン酸類や、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル類等が挙げられる。この中でも、リン酸が好ましい。
【0073】
なお、上記触媒は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。触媒の配合量は脂肪酸100重量部に対して0.001~10重量部、好ましくは0.01~5重量部である。触媒の配合量が上記範囲内にあることにより、モノエステル体の割合が高くなる点で好ましい。
【0074】
上記(1)の反応によりポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品を製造する場合、その反応は、例えば、(1-1)脂肪酸に対して、グリシドールを連続的又は間欠的に供給しつつ、酸性触媒を連続的又は間欠的に供給することにより実施してもよいし、(1-2)脂肪酸及び酸性触媒の混合物に対して、グリシドールを連続的又は間欠的に供給することにより実施してもよい。また、触媒の非存在下で実施する態様として、(1-3)脂肪酸に対して、グリシドールを連続的又は間欠的に供給することにより実施してもよい。
【0075】
上記(1-1)について具体的に説明すると、反応容器中に脂肪酸を入れ、上記反応容器に対して、グリシドールを連続的又は間欠的に供給しながら、酸性触媒についても連続的又は間欠的に供給することにより付加重合反応を実施することを意味する。つまり、グリシドールと酸性触媒が少なくとも一定の時間、同時に脂肪酸に対して連続的又は間欠的に供給されることを意味する。なお、供給の方法としては、例えば、滴下が挙げられる。上記(1-2)について具体的に説明すると、反応容器中に脂肪酸及び酸性触媒を入れて必要により混合し、上記反応容器に対して、グリシドールを連続的又は間欠的に供給することにより付加重合反応を実施することを意味する。なお、供給の方法としては、例えば、滴下が挙げられる。上記(1-3)について具体的に説明すると、反応容器中に脂肪酸を入れ、上記反応容器に対して、グリシドールを連続的又は間欠的に供給することにより付加重合反応を実施することを意味する。つまり、グリシドールが少なくとも一定の時間、同時に脂肪酸に対して連続的又は間欠的に供給されることを意味する。
【0076】
上記(1)の反応において、反応系中(例えば、反応容器中)ではポリグリセリンモノ脂肪酸エステルだけでなく、ポリグリセリンの形成が進行することがあるが、グリシドールを連続的又は間欠的に滴下しながら加えることにより、系中のグリシドール濃度を低く抑えることができるため、ポリグリセリンの形成よりもポリグリセリンモノ脂肪酸エステルの形成が優位になる傾向がある。
【0077】
酸性触媒は、脂肪酸と混合した上でグリシドールとの付加反応を実施してもよいし、脂肪酸に対して、必要に応じてグリシドールと共に連続的又は間欠的に供給しながら反応を行ってもよいが、得られるポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の純度を高くする観点からは、脂肪酸に対して、グリシドールと共に酸性触媒を連続的又は間欠的に供給しながら反応を実施することが好ましい。すなわち、上記(1)の反応は、上記(1-1)に記載の操作により実施することが好ましい。これは、酸性触媒がポリグリセリンモノ脂肪酸エステルだけでなく、ポリグリセリンの形成を促進又は進行するものであるところ、脂肪酸に対して、酸性触媒をグリシドールと共に連続的又は間欠的に供給することにより、ポリグリセリンの形成よりもポリグリセリンモノ脂肪酸エステルの形成が特に優位になることによるものと考えられる。同様の考えから、脂肪酸に対して、グリシドールと共に供給する酸性触媒を一括で供給する場合、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルの形成よりもポリグリセリンの形成が優位になる傾向がある。したがって、この観点からも上記(1-1)に記載の操作により実施することが好ましいといえる。
【0078】
上記(1)の反応において、上記(1-1)~(1-3)に記載の操作後、必要に応じて反応物を熟成してもよい。上記(1)の反応における反応温度は特に限定されないが、50~180℃であることが好ましく、より好ましくは70~160℃、さらに好ましくは100~140℃、特に好ましくは110~135℃である。反応温度が上記範囲内にあることにより、グリシドールの分解等の副反応が生じにくい傾向がある。上記反応は窒素ガス雰囲気下で行うことが望ましく、必要に応じて加圧してもよい。
【0079】
上記(2)及び(3)の反応は、例えば、触媒(アルカリ触媒若しくは酸触媒)の存在下又は非存在下、常圧又は減圧下で実施可能である。ポリグリセリンと脂肪酸又はポリグリセリンと脂肪酸エステルの仕込み量は特に限定されず、適宜選択して用いることができる。反応温度は特に限定されないが、例えば、20~180℃であることが好ましく、より好ましくは30~160℃、さらに好ましくは40~140℃である。
【0080】
得られたポリグリセリンモノ脂肪酸エステルは、必要に応じて精製してもよい。精製方法は公知の方法を用いて実施することができ、特に限定されない。精製方法としては、例えば、活性炭や活性白土等による吸着処理;水蒸気、窒素等をキャリアガスとして用いた減圧下処理;酸やアルカリを用いた洗浄;及び分子蒸留等が挙げられる。また、液液分配や吸着剤、樹脂、分子篩、ルーズ逆浸透膜、ウルトラフィルトレーション膜等を用いて不純物を除去することもできる。
【0081】
[化粧料組成物]
本開示の化粧料組成物は、上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品を含むことを特徴とする。また、上記化粧料組成物は、本開示の発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、多価アルコール、糖類、多糖類、アミノ酸、各種界面活性剤(上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品を除く)、有機塩、無機塩、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤、殺菌剤、血流促進剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、色素、香料が挙げられる。
【0082】
上記化粧料組成物における、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の含有量は特に限定されないが、例えば、0.01~80重量%が好ましく、より好ましくは0.1~50重量%、さらに好ましくは0.1~30重量%、特に好ましくは0.5~20重量%である。ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の含有量が上記範囲内にあることにより、メイク馴染み、メイクと馴染ませた際の伸びやすさが十分である傾向がある。
【0083】
上記化粧料組成物における特に好ましい態様としては以下が挙げられる。
脂肪酸の炭素数が15~25(好ましくは16~18)、
下記式(X)で表されるピーク強度比が0.31以上(好ましくは0.33以上、より好ましくは0.35以上、さらに好ましくは0.4以上)、
下記式(Y)で表されるピーク強度比が0.46以下(好ましくは0.37以下、より好ましくは0.35以下)、及び
グリセリンの平均重合度が2~4(好ましくは4)である、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品(A)と、
脂肪酸の炭素数が15~25(好ましくは16~18)、
下記式(X)で表されるピーク強度比が0.23以上(好ましくは0.24以上、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.26以上)、
下記式(Y)で表されるピーク強度比が0.46以下(好ましくは0.44以下)、及び
グリセリンの平均重合度が5~12(好ましくは6~10、より好ましくは6又は10)であるポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品(B)とを含む化粧料組成物。
式(X)=P2/P1
式(Y)=P3/P1
P1:上記飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ジエステル体、ジエステル体脱水物、トリエステル体、及びトリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
P2:上記飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体のピーク強度
P3:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
【0084】
本開示の化粧料組成物が上記態様をとる場合、メイク馴染み、メイク落ち、メイクを洗い流した後の肌のさっぱり感が良好である傾向がある。この傾向は、比較的HLB値の低い上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品(A)と、比較的HLB値の高い上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品(B)とを組み合わせて、HLB値を9~13(特に11~12.5)とすることにより顕著になる。なお、この場合のHLB値は、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品(A)のHLB値と、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品(B)のHLB値との加重平均したものである。上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品(A)のHLB値は特に限定されないが、例えば、9~11であることが好ましく、より好ましくは9.5~10.8、さらに好ましくは10~10.6である。上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品(B)のHLB値は特に限定されないが、例えば、11~17であることが好ましく、より好ましくは11.2~15.5、さらに好ましくは11.5~15である。よって、本開示の化粧料組成物における、上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品(A)と、上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品(B)の配合量は、それぞれのHLB値を考慮して、組み合わせた後のHLB値が9~13(特に11~12.5)となるように調整することが好ましい。具体的な上記配合量としては、例えば、上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品(A)と、上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品(B)の重量比率が20~80:80~20となることが好ましく、より好ましくは30~70:70~30、さらに好ましくは40~60:60~40である。
【0085】
なお、HLB(Hydrophile-Lypophile Balance)値は、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル等の界面活性剤の水及び油への親和性を示す値であり、有機概念図より有機性値(Organic Value = OV)、無機性値(Inorganic Value = IV)を求め、次式から求めることができる。
HLB=IV/OV×10=IOB(Inorganic Organic Balance)×10
【0086】
本開示の化粧料組成物の具体的な製品又は形態は特に限定されず、例えば、化粧液、乳液、スキンクリーム、日焼け止めクリーム、クレンジングミルク、クレンジングローション、クレンジングオイル、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアセットローション、ヘアクリーム、ヘアオイル、ヘアリキッド、ヘアブリーチ、パーマネントウェーブ液、口紅、リップグロス、アイグロス、ネイルグロス、マスカラ、アイシャドウ等が挙げられる。
【0087】
また、本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の用途として、上記化粧料組成物以外にも、食品添加物、洗浄剤組成物、一般工業用途で使用することができる。
【0088】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本開示に係る各発明は、実施形態や以下の実施例によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0089】
以下に、実施例に基づいて本開示の実施形態をより詳細に説明する。
【0090】
(飛行時間型質量分析計(TOF-MS)を用いた質量分析)
実施例及び比較例において、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、以下の装置及び条件を用いて質量分析を行った。
・装置:Xevo G2‐XSQTof(Waters 株式会社)
・注入方法:インフュージョンで注入(5μL/min)
・測定モード:Neg
・Conegas:50L/h
・Desolvation gas:1000L/h
・Source temp:120℃
・Desolvation temp:500℃
・Capillary:2.0kV
・Sampling cone:40
・Source offset:80
・サンプル濃度:25ppm(メタノール)
・MS範囲:50~3000
【0091】
(HLB値の測定)
実施例及び比較例において、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品のHLB(Hydrophile-Lypophile Balance)値は、有機概念図より有機性値(Organic Value = OV)、無機性値(Inorganic Value = IV)を求め、次式から求めることができる。
HLB=IV/OV×10=IOB(Inorganic Organic Balance)×10
【0092】
(HPLC分析)
実施例及び比較例において、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品は、以下の装置及び条件を用いてHPLC分析を行った。
・装置:LC-2030C 3D(島津製作所製)
・カラム:Wakosil 5C18 Φ4.6mm×250mm(W)を2本、直列に接続
・検出器:RID-20A(島津製作所製)
・オーブン温度:40℃
・サンプル:10%メタノール溶液
・サンプル注入量:10μl
・移動相流速:0.75ml/min
【0093】
(実施例1)
窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4ツ口フラスコにカプリン酸0.81mol(139.7g)を加え、120℃に加熱した。次いで、反応温度を120℃に保ちながらグリシドール4.86mol(360.4g)を10時間かけて滴下し、グリシドールの滴下中に42.5%リン酸0.004mol(0.4g)を滴下した。次いで、120℃に保ちながら3時間熟成した。次いで、130℃に昇温し系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後、反応物を取り出し、グリセリンの平均重合度が6であるポリグリセリンモノカプリン酸エステルを約500g得た。
【0094】
得られたポリグリセリンモノカプリン酸エステルについて、HPLC分析を行ったところ、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は93.0%であった。また、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム8.2~20分の間に存在するピークの面積率は47.9%であった。また、ポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~8.2分の間に存在するピークの面積率は45.1%であった。
図1にHPLC分析のチャートを示した。図中、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物に対応するピークは「PGLエステル等」と、ポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応するピークは「PGL等」と記載した。
【0095】
また、得られたポリグリセリンモノカプリン酸エステルについて、上記の飛行時間型質量分析計(TOF-MS)を用いた質量分析を行った。さらに、下記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.325であった。また、下記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.287であった。
【0096】
式(X)=P2/P1
式(Y)=P3/P1
P1:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ジエステル体、ジエステル体脱水物、トリエステル体、及びトリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
P2:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体のピーク強度
P3:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
【0097】
また、得られたポリグリセリンモノカプリン酸エステルにおけるHLB値は15.4であった。
【0098】
[ピーク強度比の算出方法]
以下、ピーク強度比の算出方法について、(a)~(e)に分けて詳述する。
(a)飛行時間型質量分析計を用いた測定により、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品に含まれる各成分に由来する分子量とそのピーク強度を得た。各分子量の数値の小数点以下を切り捨てて整数化し、対応するピーク強度の数値を足し合わせて、上記整数化された分子量のピーク強度とした。例えば、分子量が「50.0012」の際のピーク強度が31、分子量が「50.0041」の場合のピーク強度が5、分子量が「50.0241」の場合のピーク強度が15という測定値が得られた場合、分子量50以上51未満のピーク強度の和(31+5+15+・・・・)が、上記整数化された分子量「50」のピーク強度となる。なお、分子量の範囲は50~2999までとした。この分子量の範囲は、本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品における、脂肪酸の炭素数とグリセリンの重合度を考慮して定めたものである。すなわち、上記製品に含まれ得るポリグリセリン脂肪酸エステルであって、上記分子量の範囲を外れるものはほとんど無いとの考えから定めたものである。
【0099】
以下に、実施例1における(a)について説明する。
飛行時間型質量分析計を用いた測定により、実施例1で得られたポリグリセリンモノカプリン酸エステルに含まれる各成分に由来する分子量とそのピーク強度を得た。各分子量の数値の小数点以下を切り捨てて整数化し、対応するピーク強度の数値を足し合わせたものが表1~6である。
【0100】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0101】
(b)ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ジエステル体、ジエステル体脱水物、トリエステル体、及びトリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物の理論分子量を算出する。なお、モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体、及びポリグリセリンは、グリセリン重合度が1~20である場合の理論分子量である。また、モノエステル体脱水物、ジエステル体脱水物、トリエステル体脱水物、及びポリグリセリン脱水物は、グリセリン重合度が1~20である場合の理論分子量と、脱水度が1~3(1~3分子の水分子が除去されたもの)である場合の理論分子量である。
【0102】
以下に、実施例1における(b)について説明する。
実施例1において、ポリグリセリンモノカプリン酸エステルのモノエステル体の理論分子量を表7の「モノエステル体」の項に記載する。モノエステル体脱水物の理論分子量を、表7の「モノエステル体脱水物(脱水度=1)」、「モノエステル体脱水物(脱水度=2)」、及び「モノエステル体脱水物(脱水度=3)」の項に記載する。また、その他の構成成分であるジエステル体等も同様である。
【0103】
【0104】
(c)(a)で得られた飛行時間型質量分析計に由来する各分子量に対応させるために、(b)における理論分子量を下記の方法により補正して「補正分子量」とした。
・補正方法
飛行時間型質量分析計により、その分子量が測定・検出された成分は、イオン化により脱プロトン化された分子[M-H]-である。したがって、基本的に(b)の理論分子量を切り捨てて整数化した分子量から1を減じることで、(a)で得られた各分子量に対応する。しかし、分子量が大きくなると、分子量計算や測定分子量の整数化での誤差等から、強度のピークトップの分子量が1ずれることがある。よって、(b)における理論分子量が700以上のものに関しては、(b)の理論分子量を切り捨てて整数化した分子量(M1)、M1から1を減じたもの(M2)、M1から2を減じたもの(M3)の3点に対応するピーク強度を比較し、その中で最もピーク強度が大きい分子量を「補正分子量」とした。また、(b)における理論分子量が700未満のものに関しては、(b)の理論分子量を切り捨てて整数化した分子量から1を減じたものを「補正分子量」とした。
【0105】
・補正後の調整
上記方法により得られた補正分子量は、ポリグリセリン鎖の脱水度、ポリグリセリン鎖の重合度、ポリグリセリン鎖の脂肪酸への結合数(エステル化数)によっては、異なる構造であっても分子量が同一となることがある。分子設計上、ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、エステル化数の多いもの、脱水度の高いもの、の含有量は少なくなるため、補正分子量が同値となるものは、以下の基準において、最も順位の高い分子以外はピーク強度に算入しないこととした。
【0106】
・優先順位の考え方
1.エステル化数:少ない>多い
2.脱水度:少ない>多い
3.上記1及び2の基準において、比較対象の優劣が異なる場合、1>2の順で優劣を判断する。例えば、特定の成分(A)及び(B)の比較において、1.エステル化数は成分(B)が少なく、2.グリセリンの脱水度は成分(A)が少ないという場合、上記基準において1>2であるため、1.エステル化数が少ない成分(B)が優先される。
【0107】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化数とグリセリン重合度を考慮し、存在し得ない脱水度となる場合はピーク強度に算入しない。例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステルから1つの水分子が除去される(脱水度を1とする)ためには、当該ポリグリセリン脂肪酸エステルには水酸基が2以上である必要がある。したがって、水酸基が1しかないポリグリセリン脂肪酸エステルは、脱水度が1~3となるものは存在しない。
【0108】
以下に、実施例1における(c)について説明する。
表7で算出されたポリグリセリンモノカプリン酸エステルの各成分について、(b)における理論分子量が700未満のものに関しては、理論分子量を切り捨てて整数化した分子量から1を減じたものを「補正分子量」とした。例えば、モノエステル体(グリセリン重合度=4)は、理論分子量が468.58であるところ、補正分子量は467となる。
【0109】
(b)における理論分子量が700以上のものに関しては、(b)の理論分子量を切り捨てて整数化した分子量(M1)、M1から1を減じたもの(M2)、M1から2を減じたもの(M3)の3点に対応するピーク強度を比較し、その中で一番強度が大きい分子量を「補正分子量」とした。例えば、ポリグリセリン(グリセリン重合度=11、脱水度=3)の理論分子量は778.83であり、分子量(M1)は778、分子量(M2)は777、分子量(M3)は776となる。そして、分子量(M1)に対応するピーク強度は6780、分子量(M2)に対応するピーク強度は8510、分子量(M3)に対応するピーク強度は6740である(表2を参照)。よって、ピーク強度の最も大きい8510、すなわち777=分子量(M2)が「補正分子量」となる。
【0110】
また、例えば、トリエステル体(グリセリン重合度=4)の理論分子量は777.8であり、分子量(M1)は777、分子量(M2)は776、分子量(M3)は775となる。そして、分子量(M1)に対応するピーク強度は8510、分子量(M2)に対応するピーク強度は6740、分子量(M3)に対応するピーク強度は7840である(表2を参照)。よって、ピーク強度の最も大きい8510、すなわち777=分子量(M1)が「補正分子量」となり得る。しかし、上記のポリグリセリン(グリセリン重合度=11、脱水度=3)と補正分子量が同値になるため、上記「優先順位の考え方」に沿って、ポリグリセリン(グリセリン重合度=11、脱水度=3)が補正分子量「777」となり、トリエステル体(グリセリン重合度=4)はピーク強度に算入されないこととなる。
【0111】
また、モノエステル体(グリセリン重合度=1)は水酸基を2つ有すところ、脱水度が1の場合は存在するためピーク強度に算入されるが、脱水度が2及び3である場合は存在しないため、ピーク強度に算入されない。ジエステル体(グリセリン重合度=1)は水酸基を1つしか有しないため、脱水度が1~3である場合が存在せず、ピーク強度に算入されない。以上を考慮して、各成分の補正分子量を表8にまとめる。「-」はピーク強度に算入されない成分である。
【0112】
【0113】
(d)(c)にて算出したポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の各成分の補正分子量に、(a)で得られた強度を対応させ、これらをP1~3にて規定された「モノエステル体」、「モノエステル体脱水物」、「ジエステル体」、「ジエステル体脱水物」、「トリエステル体」、「トリエステル体脱水物」、「ポリグリセリン」、及び「ポリグリセリン脱水物」のピーク強度となるように合算する。
【0114】
以下に、実施例1における(d)について説明する。
(b)にて算出したポリグリセリンモノカプリン酸エステルの各成分の補正分子量に、(a)で得られた強度を対応させたものが表9である。表9をふまえて、P1にて規定された「モノエステル体」、「モノエステル体脱水物」、「ジエステル体」、「ジエステル体脱水物」、「トリエステル体」、「トリエステル体脱水物」、「ポリグリセリン」、及び「ポリグリセリン脱水物」のピーク強度を説明する。
【0115】
図2は、実施例1のポリグリセリンモノカプリン酸エステルにおける、補正分子量とこれに対応するピーク強度割合(%)のチャートである。中空の棒グラフがモノエステル体を示す。
【0116】
【0117】
「モノエステル体」のピーク強度は、表9のモノエステル体におけるグリセリンの重合度が1~20である場合の総和であって、1324420である。
「ジエステル体」のピーク強度は、表9のジエステル体におけるグリセリンの重合度が1~20である場合の総和であって、244000である。
「トリエステル体」のピーク強度は、表9のトリエステル体におけるグリセリンの重合度が1~20である場合の総和であって、122900である。
「ポリグリセリン」のピーク強度は、表9のポリグリセリンにおけるグリセリンの重合度が1~20である場合の総和であって、320400である。
【0118】
「モノエステル体脱水物」のピーク強度は、表9のモノエステル体脱水物におけるグリセリンの重合度が1~20であって、且つ脱水度1~3である場合の総和であって、555300(=207830+188370+159100)である。
「ジエステル体脱水物」のピーク強度は、表9のジエステル体脱水物におけるグリセリンの重合度が1~20であって、且つ脱水度1~3である場合の総和であって、533110(=201130+169410+162570)である。
「トリエステル体脱水物」のピーク強度は、表9のトリエステル体脱水物におけるグリセリンの重合度が1~20であって、且つ脱水度1~3である場合の総和であって、128630(=42650+43130+42850)である。
「ポリグリセリン脱水物」のピーク強度は、表9のポリグリセリン脱水物におけるグリセリンの重合度が1~20であって、且つ脱水度1~3である場合の総和であって、848470(=445710+258400+144360)である。
【0119】
(e)(d)にて算出したポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の各成分のピーク強度を用いて、上記式(X)及び式(Y)を算出する。
【0120】
以下に、実施例1における(e)について説明する。
式(X)=P2/P1=1324420/4077230=0.325
式(Y)=P3/P1=(320400+848470)/4077230=0.287
【0121】
(実施例2)
窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4ツ口フラスコにカプリン酸0.55mol(94.3g)を加え、120℃に加熱した。次いで、反応温度を120℃に保ちながらグリシドール5.48mol(405.67g)を10時間かけて滴下し、グリシドールの滴下中に42.5%リン酸0.004mol(0.4g)を滴下した。次いで、120℃に保ちながら3時間熟成した。次いで、130℃に昇温し系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後、反応物を取り出し、グリセリンの平均重合度が10であるポリグリセリンモノカプリン酸エステルを約500g得た。
【0122】
得られたポリグリセリンモノカプリン酸エステルについて、HPLC分析を行ったところ、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は93.8%であった。
【0123】
さらに、得られたポリグリセリンモノカプリン酸エステルについて、実施例1と同様に質量分析を行い、上記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.353であった。上記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.322であった。
【0124】
また、得られたポリグリセリンモノカプリン酸エステルにおけるHLB値は16.8であった。
【0125】
(実施例3)
窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4ツ口フラスコにラウリン酸0.53mol(106.4g)を入れて120℃に加熱した。次いで、反応温度を120℃に保ちながらグリシドール5.31mol(393.6g)を10時間かけて滴下した。グリシドールの滴下中に42.5%リン酸0.004mol(0.4g)を滴下した。次いで、120℃に保ちながら3時間熟成した。次いで、130℃に昇温し系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後、反応物を取り出し、グリセリンの平均重合度が10であるポリグリセリンモノラウリン酸エステルを約500g得た。
【0126】
得られたポリグリセリンモノラウリン酸エステルについて、HPLC分析を行ったところ、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は98.9%であった。
【0127】
さらに、得られたポリグリセリンモノラウリン酸エステルについて、実施例1と同様に質量分析を行い、上記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.429であった。上記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.348であった。
【0128】
また、得られたポリグリセリンモノラウリン酸エステルにおけるHLB値は16.0であった。
【0129】
(実施例4)
窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4ツ口フラスコにミリスチン酸0.74mol(169.7g)を加え、120℃に加熱した。次いで、反応温度を120℃に保ちながらグリシドール4.46mol(330.3g)を10時間かけて滴下し、グリシドールの滴下中に42.5%リン酸0.004mol(0.4g)を滴下した。次いで、120℃に保ちながら3時間熟成した。次いで、130℃に昇温し系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後、反応物を取り出し、グリセリンの平均重合度が6であるポリグリセリンモノミリスチン酸エステルを約500g得た。
【0130】
得られたポリグリセリンモノミリスチン酸エステルについて、HPLC分析を行ったところ、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は96.2%であった。
【0131】
さらに、得られたポリグリセリンモノミリスチン酸エステルについて、実施例1と同様に質量分析を行い、上記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.446であった。上記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.267であった。
【0132】
また、得られたポリグリセリンモノミリスチン酸エステルにおけるHLB値は13.4であった。
【0133】
(実施例5)
窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4ツ口フラスコにミリスチン酸0.52mol(117.8g)を加え、120℃に加熱した。次いで、反応温度を120℃に保ちながらグリシドール5.16mol(382.18g)を10時間かけて滴下し、グリシドールの滴下中に42.5%リン酸0.004mol(0.4g)を滴下した。次いで、120℃に保ちながら3時間熟成した。次いで、130℃に昇温し系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後、反応物を取り出し、グリセリンの平均重合度が10であるポリグリセリンモノミリスチン酸エステルを約500g得た。
【0134】
得られたポリグリセリンモノミリスチン酸エステルについて、HPLC分析を行ったところ、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は97.4%であった。
【0135】
さらに、得られたポリグリセリンモノミリスチン酸エステルについて、実施例1と同様に質量分析を行い、上記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.391であった。上記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.314であった。
【0136】
また、得られたポリグリセリンモノミリスチン酸エステルにおけるHLB値は15.2であった。
【0137】
(実施例6)
窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4ツ口フラスコにステアリン酸0.69mol(195.1g)を加え、120℃に加熱した。次いで、反応温度を120℃に保ちながらグリシドール4.12mol(304.9g)を10時間かけて滴下し、グリシドールの滴下中に42.5%リン酸0.004mol(0.4g)を滴下した。次いで、120℃に保ちながら3時間熟成した。次いで、130℃に昇温し系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後、反応物を取り出し、グリセリンの平均重合度が6であるポリグリセリンモノステアリン酸エステルを約500g得た。
【0138】
得られたポリグリセリンモノステアリン酸エステルは、測定溶媒(10%メタノール溶液)に溶解できずHPLC分析を実施することができなかった。しかし、その製造方法や他の実施例におけるポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の傾向を考慮すると、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は、少なくとも80%以上であると推察される。
【0139】
さらに、得られたポリグリセリンモノステアリン酸エステルについて、実施例1と同様に質量分析を行い、上記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.256であった。上記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.457であった。
【0140】
また、得られたポリグリセリンモノステアリン酸エステルにおけるHLB値は11.9であった。
【0141】
(実施例7)
窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4ツ口フラスコにステアリン酸0.49mol(138.7g)を加え、120℃に加熱した。次いで、反応温度を120℃に保ちながらグリシドール4.88mol(361.3g)を10時間かけて滴下し、グリシドールの滴下中に42.5%リン酸0.004mol(0.4g)を滴下した。次いで、120℃に保ちながら3時間熟成した。次いで、130℃に昇温し系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後、反応物を取り出し、グリセリンの平均重合度が10であるポリグリセリンモノステアリン酸エステルを約500g得た。
【0142】
得られたポリグリセリンモノステアリン酸エステルは、測定溶媒(10%メタノール溶液)に溶解できずHPLC分析を実施することができなかった。しかし、その製造方法や他の実施例におけるポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の傾向を考慮すると、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は、少なくとも80%以上であると推察される。
【0143】
さらに、得られたポリグリセリンモノステアリン酸エステルについて、実施例1と同様に質量分析を行い、上記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.410であった。上記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.414であった。
【0144】
また、得られたポリグリセリンモノステアリン酸エステルにおけるHLB値は14.0であった。
【0145】
(実施例8)
窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4ツ口フラスコにオレイン酸0.86mol(244.0g)を入れて120℃に加熱した。次いで、反応温度を120℃に保ちながらグリシドール3.46mol(256.0g)を20時間かけて滴下した。次いで、120℃に保ちながら3時間熟成した。次いで、130℃に昇温し系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後、反応物を取り出し、グリセリンの平均重合度が4であるポリグリセリンモノオレイン酸エステルを約500g得た。
【0146】
得られたポリグリセリンモノオレイン酸エステルについて、HPLC分析を行ったところ、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は95.5%であった。
【0147】
さらに、得られたポリグリセリンモノオレイン酸エステルについて、実施例1と同様に質量分析を行い、上記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.502であった。上記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.316であった。
【0148】
また、得られたポリグリセリンモノオレイン酸エステルにおけるHLB値は10.4であった。
【0149】
(実施例9)
窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4ツ口フラスコにオレイン酸0.69mol(194.3g)を入れて120℃に加熱した。次いで、反応温度を120℃に保ちながらグリシドール4.13mol(305.7g)を10時間かけて滴下し、グリシドールの滴下中に42.5%リン酸0.004mol(0.4g)を滴下した。次いで、120℃に保ちながら3時間熟成した。次いで、130℃に昇温し系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後、反応物を取り出し、グリセリンの平均重合度が6であるポリグリセリンモノオレイン酸エステルを約500g得た。
【0150】
得られたポリグリセリンモノオレイン酸エステルについて、HPLC分析を行ったところ、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は95.8%であった。
【0151】
さらに、得られたポリグリセリンモノオレイン酸エステルについて、実施例1と同様に質量分析を行い、上記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.558であった。上記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.382であった。
【0152】
また、得られたポリグリセリンモノオレイン酸エステルにおけるHLB値は12.0であった。
【0153】
(実施例10)
窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4ツ口フラスコにオレイン酸0.49mol(138.0g)を加え、120℃に加熱した。次いで、反応温度を120℃に保ちながらグリシドール4.89mol(362.0g)を10時間かけて滴下し、グリシドールの滴下中に42.5%リン酸0.004mol(0.4g)を滴下した。次いで、120℃に保ちながら3時間熟成した。次いで、130℃に昇温し系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後、反応物を取り出し、グリセリンの平均重合度が10であるポリグリセリンモノオレイン酸エステルを約500g得た。
【0154】
得られたポリグリセリンモノオレイン酸エステルについて、HPLC分析を行ったところ、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は98.6%であった。
【0155】
さらに、得られたポリグリセリンモノオレイン酸エステルについて、実施例1と同様に質量分析を行い、上記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.274であった。上記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.435であった。
【0156】
また、得られたポリグリセリンモノオレイン酸エステルにおけるHLB値は14.0であった。
【0157】
(実施例11)
窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4ツ口フラスコにイソステアリン酸0.86mol(244.9g)を加え、120℃に加熱した。次いで、反応温度を120℃に保ちながらグリシドール3.44mol(255.1g)を20時間かけて滴下した。次いで、120℃に保ちながら3時間熟成した。次いで、130℃に昇温し系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後、反応物を取り出し、グリセリンの平均重合度が4であるポリグリセリンモノイソステアリン酸エステルを約500g得た。
【0158】
得られたポリグリセリンモノイソステアリン酸エステルについて、HPLC分析を行ったところ、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は97.6%であった。
【0159】
さらに、得られたポリグリセリンモノイソステアリン酸エステルについて、実施例1と同様に質量分析を行い、上記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.507であった。上記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.307であった。
【0160】
また、得られたポリグリセリンモノイソステアリン酸エステルにおけるHLB値は10.5であった。
【0161】
(比較例1)
SYグリスター MO-7S(グリセリンの平均重合度が10であるポリグリセリンモノオレイン酸エステル、阪本薬品工業株式会社製)について、HPLC分析を行ったところ、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は95.5%であった。また、実施例1と同様に質量分析を行い、上記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.167であった。また、上記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.447であった。
【0162】
また、SYグリスター MO-7SにおけるHLB値は14.0であった。
【0163】
(比較例2)
窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4ツ口フラスコにラウリン酸0.5mol(100.1g)と42.5%リン酸0.118gを加え、140℃に加熱した。次いで、反応温度を140℃に保ちながらグリシドール5.0mol(370.40)を5時間かけて滴下し、系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後、反応物を取り出し、グリセリンの平均重合度が10であるポリグリセリンモノラウリン酸エステルを約470g得た。
【0164】
得られたポリグリセリンモノラウリン酸エステルについて、HPLC分析を行ったところ、モノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応する、HPLCチャートのリテンションタイム6.0~20.0分の間に存在するピークの面積率は98.4%であった。
【0165】
さらに、得られたポリグリセリンモノラウリン酸エステルについて、実施例1と同様に質量分析を行い、上記式(X)に沿ってピーク強度比(P2/P1)を算出したところ、0.410であった。また、上記式(Y)に沿ってピーク強度比(P3/P1)を算出したところ、0.496であった。
【0166】
また、ポリグリセリンモノラウリン酸エステルにおけるHLB値は16.0であった。
【0167】
[評価]
実施例8で得られたグリセリンの平均重合度が4であるポリグリセリンモノオレイン酸エステル、実施例9で得られたグリセリンの平均重合度が6であるポリグリセリンモノオレイン酸エステル、及び油剤としてモレスコホワイトP-70(流動パラフィン、株式会社MORESCO製)を、10:10:80(重量比率)の割合で含むサンプル1(化粧料組成物)を調製した。サンプル1におけるHLB値は11.2であった。
【0168】
実施例8で得られたグリセリンの平均重合度が4であるポリグリセリンモノオレイン酸エステル、実施例10で得られたグリセリンの平均重合度が10であるポリグリセリンモノオレイン酸エステル、及び油剤としてモレスコホワイトP-70(流動パラフィン、株式会社MORESCO製)を、10:10:80(重量比率)の割合で含むサンプル2(化粧料組成物)を調製した。サンプル2におけるHLB値は12.2であった。
【0169】
実施例8で得られたグリセリンの平均重合度が4であるポリグリセリンモノオレイン酸エステル、SYグリスター MO-7S(グリセリンの平均重合度が10であるポリグリセリンモノオレイン酸エステル、阪本薬品工業株式会社製)、及び油剤としてモレスコホワイトP-70(流動パラフィン、株式会社MORESCO製)を、10:10:80(重量比率)の割合で含むサンプル3(化粧料組成物)を調製した。サンプル3におけるHLB値は12.2であった。
【0170】
被験者の腕に口紅(商品名:リップスティックY、ちふれホールディングス株式会社製)を塗り、その上からサンプル1~3をそれぞれ馴染ませ、その後に水で洗い流した。サンプル1~3の評価を以下の通りに行った。
[メイク落ち]
〇:口紅がきれいに落ちる
×:口紅が落ちない
[洗浄後の肌の質感]
〇:さっぱりしている
×:べたついている
【0171】
評価の結果、サンプル1及び2は[メイク落ち]及び[洗浄後の肌の質感]はともに「〇」であった。一方、サンプル3の[メイク落ち]及び[洗浄後の肌の質感]はともに「×」であった。これらの評価から、本開示のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品を化粧料組成物に配合させることで、[メイク落ち]や[洗浄後の肌の質感]といった化粧料に求められる効果を奏することがわかった。
【0172】
以上のまとめとして、本開示の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1]
脂肪酸の炭素数が4~25であり、
下記式(X)で表されるピーク強度比が0.20以上であり、
下記式(Y)で表されるピーク強度比が0.46以下である、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
式(X)=P2/P1
式(Y)=P3/P1
P1:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ジエステル体、ジエステル体脱水物、トリエステル体、及びトリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
P2:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体のピーク強度
P3:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
[2]
前記脂肪酸の炭素数が、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、15以上、16以上、若しくは18以上;及び/又は22以下、20以下、18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、若しくは8以下である[1]に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[3]
前記脂肪酸の炭素数が、4~14、15~25、8~14、又は16~18である[1]又は[2]に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[4]
前記式(X)で表されるピーク強度比が、0.21以上、0.23以上、0.24以上、0.25以上、0.26以上、0.28以上、0.3以上、0.31以上、0.33以上、0.35以上、0.37以上、0.40以上、0.44以上、0.48以上、若しくは0.52以上;及び/又は、1以下、0.9以下、0.8以下、0.75以下、0.7以下、0.65以下、若しくは0.6以下である、[1]~[3]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[5]
前記式(Y)で表されるピーク強度比が、0.45以下、0.44以下、0.42以下、0.39以下、0.37以下、0.35以下、0.33以下、0.32以下、若しくは0.30以下;及び/又は、0.01以上、0.05以上、若しくは0.10以上である、[1]~[4]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[6]
グリセリンの平均重合度が、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、若しくは9以上;及び/又は35以下、30以下、25以下、20以下、18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、8以下、6以下、若しくは4以下である、[1]~[5]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[7]
グリセリンの平均重合度が、2~40、3~20、又は4~10である、[1]~[6]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[8]
前記脂肪酸が直鎖脂肪酸又は分岐鎖脂肪酸である、[1]~[7]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[9]
前記脂肪酸が飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸である、[1]~[8]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[10]
前記脂肪酸が、カプロン酸(C6、飽和脂肪酸)、カプリル酸(C8、飽和脂肪酸)、ペラルゴン酸(C9、飽和脂肪酸)、2-エチルヘキサン酸(C8、分岐鎖脂肪酸)、カプリン酸(C10、飽和脂肪酸)、ラウリン酸(C12、飽和脂肪酸)、イソトリデカン酸(C13、分岐鎖脂肪酸)、ミリスチン酸(C14、飽和脂肪酸)、ペンタデシル酸(C15、飽和脂肪酸)、パルミチン酸(C16、飽和脂肪酸)、パルミトレイン酸(C16、不飽和脂肪酸)、ステアリン酸(C18、飽和脂肪酸)、イソステアリン酸(C18、分岐鎖脂肪酸)、オレイン酸(C18、不飽和脂肪酸)、リノール酸(C18、不飽和脂肪酸)、リシノール酸(C18、不飽和脂肪酸)、ヒドロキシステアリン酸(C18、置換脂肪酸)、アラキジン酸(C20、飽和脂肪酸)、ベヘン酸(C22、飽和脂肪酸)、エルカ酸(C22、不飽和脂肪酸)、及びネルボン酸(C24、不飽和脂肪酸)からなる群より選択される少なくとも一つである、[1]~[9]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[11]
HPLC(高速液体クロマトグラフ)分析における、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応するピークの面積率が、50%以上、60%以上、80%以上、又は90%以上である、[1]~[10]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[12]
HPLC(高速液体クロマトグラフ)分析における、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ポリエステル体、及びポリエステル体脱水物に対応するピークの面積率が、5%以上、10%以上、又は20%以上である、[1]~[11]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[13]
HPLC(高速液体クロマトグラフ)分析における、ポリグリセリン、及びポリグリセリン脱水物に対応するピークの面積率が、80%以下、70%以下、又は60%以下である、[1]~[12]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[14]
グリシドールと脂肪酸との反応物、ポリグリセリンと脂肪酸のエステル化体、又はポリグリセリンと脂肪酸エステルとのエステル交換体である、[1]~[13]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
[15]
[1]~[14]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品を含む化粧料組成物。
[16]
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の含有量が、0.01~80重量%、0.1~50重量%、0.1~30重量%、又は0.5~20重量%である、[15]に記載の化粧料組成物。
[17]
含まれるポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品のHLB値が9~13又は11~12.5である、[15]又は[16]に記載の化粧料組成物。
[18]
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品を製造する方法であって、
グリシドールと脂肪酸との付加重合反応工程を有する、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の製造方法。
[19]
酸性触媒の存在下で付加重合反応を実施する、[18]に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の製造方法。
[20]
前記酸性触媒が、アスコルビン酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、及びリン酸系酸性触媒からなる群より選択される少なくとも一つである、[18]又は[19]に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の製造方法。
[21]
前記リン酸系酸性触媒が、リン酸類又は酸性リン酸エステル類である、[20]に記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の製造方法。
[22]
脂肪酸に対して、グリシドールを連続的又は間欠的に供給することにより付加重合反応を実施する、[18]~[21]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の製造方法。
[23]
脂肪酸に対して、グリシドールを連続的又は間欠的に供給しつつ、酸性触媒を連続的又は間欠的に供給することにより付加重合反応を実施する、[18]~[21]のいずれか一つに記載のポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の製造方法。
【要約】
純度の高いポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品を提供する。また、高い純度のポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを得ることができる製造方法を提供する。
脂肪酸の炭素数が4~25であり、
下記式(X)で表されるピーク強度比が0.20以上であり、
下記式(Y)で表されるピーク強度比が0.46以下である、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品。
式(X)=P2/P1
式(Y)=P3/P1
P1:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体、モノエステル体脱水物、ジエステル体、ジエステル体脱水物、トリエステル体、及びトリエステル体脱水物、並びにポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和
P2:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体のピーク強度
P3:飛行時間型質量分析計を用いてポリグリセリンモノ脂肪酸エステル製品の質量分析を実施した際の、ポリグリセリン及びポリグリセリン脱水物のピーク強度の総和