IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特許7603894情報処理装置、プログラム及び情報処理方法
<>
  • 特許-情報処理装置、プログラム及び情報処理方法 図1
  • 特許-情報処理装置、プログラム及び情報処理方法 図2
  • 特許-情報処理装置、プログラム及び情報処理方法 図3
  • 特許-情報処理装置、プログラム及び情報処理方法 図4
  • 特許-情報処理装置、プログラム及び情報処理方法 図5
  • 特許-情報処理装置、プログラム及び情報処理方法 図6
  • 特許-情報処理装置、プログラム及び情報処理方法 図7
  • 特許-情報処理装置、プログラム及び情報処理方法 図8
  • 特許-情報処理装置、プログラム及び情報処理方法 図9
  • 特許-情報処理装置、プログラム及び情報処理方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20241213BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
A61B5/02 310Z
A61B5/00 G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024550316
(86)(22)【出願日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2024008538
【審査請求日】2024-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】奥本 皓士郎
(72)【発明者】
【氏名】峯 慎吾
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-547637(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106473750(CN,A)
【文献】特開2023-115687(JP,A)
【文献】特開2009-195556(JP,A)
【文献】深山 幸穂 ほか著,Excelで学ぶ ディジタル信号処理の基礎,第1版,株式会社コロナ社,2013年10月18日,第22-28頁,ISBN:978-4-339-00855-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波形を示す時系列信号を取得する信号取得部と、
前記時系列信号から一波形を特定する特定部と、
周波数スペクトルの二乗和平方根により算出される、前記一波形のパワーを示すパラメータであるパワーパラメータ、前記一波形の周期を示すパラメータである周期パラメータ及び前記周波数スペクトルを二乗和平方根で正規化したスペクトルである波形形状パラメータを算出する算出部と、を備えること
を特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記一波形の周期又は前記一波形の基本波周波数を算出して、周波数解析処理を行うことで、前記パワーパラメータ、前記周期パラメータ及び前記波形形状パラメータを算出すること
を特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記周波数解析処理は、複素フーリエ級数展開を含むこと
を特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記複素フーリエ級数展開により周波数スペクトルを算出し、前記周波数スペクトル二乗和平方根を前記パワーパラメータとし、前記基本波周波数を前記周期パラメータとすること
を特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記時系列信号は、人から検出された脈波を示す信号であり、
前記パワーパラメータを例題として使用して、前記一波形が取得された際の前記人の感情を正解として学習することで、前記人の感情を推論するための学習モデルを生成する学習部をさらに備えること
を特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記時系列信号は、人から検出された脈波を示す信号であり、
学習対象者から検出された脈波を示す信号から特定された一波形である学習用一波形のパワーを示すパラメータである学習用パワーパラメータを例題として使用し、前記学習用一波形が取得された際の前記学習対象者の感情を正解として学習することにより生成された学習モデルに、前記パワーパラメータを入力することで、前記人の感情を推論する推論部をさらに備えること
を特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
第1の時間における前記時系列信号に対応する前記パワーパラメータを例題として使用して、前記第1の時間よりも後の時間である第2の時間の時系列信号を正解として学習することで、将来の時系列信号を推論するための学習モデルを生成する学習部をさらに備えること
を特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
第1の時間における複数の波形を示す時系列信号から特定された一波形のパワーを示す学習用パワーパラメータを例題として使用し、前記第1の時間よりも後の時間である第2の時間における波形を示す時系列信号を正解として学習することで生成された学習モデルに、前記パワーパラメータを入力することで、将来における時系列信号を推論する推論部をさらに備えること
を特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記パワーパラメータ、前記周期パラメータ及び前記波形形状パラメータの少なくとも一つにフィルタ処理を施す信号フィルタ部と、
前記フィルタ処理後の前記パワーパラメータ、前記周期パラメータ及び前記波形形状パラメータを時系列信号に変換する逆変換部と、をさらに備えること
を特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
コンピュータを、
複数の波形を示す時系列信号を取得する信号取得部、
前記時系列信号から一波形を特定する特定部、及び、
周波数スペクトルの二乗和平方根により算出される、前記一波形のパワーを示すパラメータであるパワーパラメータ、前記一波形の周期を示すパラメータである周期パラメータ及び前記周波数スペクトルを二乗和平方根で正規化したスペクトルである波形形状パラメータを算出する算出部、として機能させること
を特徴とするプログラム。
【請求項11】
複数の波形を示す時系列信号を取得し、
前記時系列信号から一波形を特定し、
周波数スペクトルの二乗和平方根により算出される、前記一波形のパワーを示すパラメータであるパワーパラメータ、前記一波形の周期を示すパラメータである周期パラメータ及び前記周波数スペクトルを二乗和平方根で正規化したスペクトルである波形形状パラメータを算出すること
を特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、プログラム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、脈波等のように、一つ一つの波形は異なるが繰り返し上下に変動する成分をもつ信号を解析する技術が開発されている。
【0003】
特許文献1に記載の脈波解析装置は、脈波の極小値及び極大値を検出して、波形値を1拍相当の単位に分割し、波形値を拍単位で複数回に亙って高速再生し、脈波のスペクトルを求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-148126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脈波は、心収縮力、大動脈弁閉鎖、体血管抵抗等血行力学のバイオメカニクスからなる影響を受けている。脈波信号において、脈波周期、脈波パワー及び脈波形状には、不整脈又は心房細動等の脈の正常又は異常が表れるだけでなく、自律神経機能の結果として感情状態が表れることが知られている。例えば、脈波パワーを解析することで自律神経機能を評価することができる。
【0006】
しかしながら、従来の技術は、脈波信号処理による脈波のスペクトルを算出しているが、脈波パワーの抽出及び利用について、開示も示唆もされていない。このため、従来の技術は、血行力学のバイオメカニクスによる一波形内の変動成分を考慮できておらず、正確な解析ができないという課題があった。
【0007】
そこで、本開示の一又は複数の態様は、時系列信号から、一波毎にパワーのパラメータを算出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る情報処理装置は、複数の波形を示す時系列信号を取得する信号取得部と、前記時系列信号から一波形を特定する特定部と、周波数スペクトルの二乗和平方根により算出される、前記一波形のパワーを示すパラメータであるパワーパラメータ、前記一波形の周期を示すパラメータである周期パラメータ及び前記周波数スペクトルを二乗和平方根で正規化したスペクトルである波形形状パラメータを算出する算出部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、複数の波形を示す時系列信号を取得する信号取得部、前記時系列信号から一波形を特定する特定部、及び、周波数スペクトルの二乗和平方根により算出される、前記一波形のパワーを示すパラメータであるパワーパラメータ、前記一波形の周期を示すパラメータである周期パラメータ及び前記周波数スペクトルを二乗和平方根で正規化したスペクトルである波形形状パラメータを算出する算出部、として機能させることを特徴とする。
【0010】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、複数の波形を示す時系列信号を取得し、前記時系列信号から一波形を特定し、周波数スペクトルの二乗和平方根により算出される、前記一波形のパワーを示すパラメータであるパワーパラメータ、前記一波形の周期を示すパラメータである周期パラメータ及び前記周波数スペクトルを二乗和平方根で正規化したスペクトルである波形形状パラメータを算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一又は複数の態様によれば、時系列信号から、一波毎にパワーのパラメータを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る信号処理装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図2】時系列信号で示される波形の一例を示す概略図である。
図3】コンピュータの構成を概略的に示すブロック図である。
図4】周波数解析処理を示すフローチャートである。
図5】波形形状とパワーの分解を模式的に示す図である。
図6】実施の形態2及び3に係る感情判定システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図7】実施の形態2における学習装置200の構成を概略的に示すブロック図である。
図8】実施の形態2及び3における推論装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図9】実施の形態3における学習装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図10】実施の形態4に係る信号再構成装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る情報処理装置である信号処理装置100の構成を概略的に示すブロック図である。
信号処理装置100は、検出部110と、接続I/F(InterFace)部120と、制御部130と、パラメータ記憶部140とを備える。
なお、図1では、検出部110及び接続I/F部120の両方が備えられているが、信号処理装置100は、少なくともこれらの何れか一方を備えていればよい。
【0014】
検出部110は、対象に関する物理量を検出して、その物理量に対応して、脈波等のように、繰り返し上下に変動する成分をもつ信号である時系列信号を制御部130に与える。
【0015】
接続I/F部120は、外部記憶装置(図示せず)を接続することができ、その外部記憶装置との間でデータの受け渡しを行うことのできる機能部である。外部記憶装置は、光学ディスク又はフラッシュメモリ記憶装置等である。ここでは、外部記憶装置には、上記の時系列信号が記憶されているものとする。そして、接続I/F部120は、外部記憶装置に記憶されている時系列信号を読み出して、その時系列信号を制御部130に与える。
【0016】
制御部130は、信号処理装置100での処理を制御する。
制御部130は、信号取得部131と、信号成形部132と、周波数解析部133と、パラメータ格納部134とを備える。
【0017】
信号取得部131は、検出部110から、又は、接続I/F部120を介して外部記憶装置から、時系列信号を取得する。取得された時系列信号は、信号成形部132に与えられる。時系列信号は、複数の波形を示す信号である。
【0018】
信号成形部132は、信号取得部131からの時系列信号から、一波形を特定し、その一波形に対応する信号である一波形信号を逐次生成する特定部である。生成された一波形信号は、周波数解析部133に与えられる。
【0019】
例えば、図2に示されているように、信号成形部132は、時系列信号で示される波形の立ち上がり時のゼロクロッシング位置P3を捉えることで、逐次一波形を捉えればよい。
なお、一波形を捉える位置は、立ち上がり時のゼロクロッシング位置P3以外にも、波形のピークP1、ボトムP2又は立ち下がり時のゼロクロッシング位置P4であってもよい。また、その他の手法で一波形が定義され、抽出されてもよい。
【0020】
また、時系列信号に、周期性とは別に長期的変動成分が含まれることで、ゼロクロッシング位置P3等の特徴点が捉えられない場合は、信号成形部132は、多項式フィッティングによる差分算出又は移動平均による差分算出により、長期変動成分を取り除いて処理を行ってもよい。
【0021】
周波数解析部133は、信号成形部132からの一波形信号に対して周波数解析を行うことで、その一波形信号で示される一波形に対して、周期、パワー及び波形形状の3要素へのパラメータ化を行う算出部である。これにより、周波数解析部133は、その一波形に対応した周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータを取得する。取得された周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータは、パラメータ格納部134に与えられる。
【0022】
例えば、周波数解析部133は、一波形の周期又は一波形の基本波の周波数を算出して、周波数解析処理を行うことで、パワーパラメータを算出する。その周波数解析処理は、複素フーリエ級数展開を含む。具体的には、周波数解析部133は、複素フーリエ級数展開により周波数スペクトルを算出し、その周波数スペクトルを二乗和平方根で正規化して算出した二乗和平方根を、パワーパラメータとすることができる。
【0023】
パラメータ格納部134は、周波数解析部133からの周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータを、パラメータ記憶部140に格納する。
パラメータ記憶部140は、周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータを記憶する。
【0024】
以上に記載された信号処理装置100は、図3に示されているようなコンピュータ10に対応するスマートウォッチ等の携帯端末又はPC(Personal Computer)等で実現することができる。
【0025】
コンピュータ10は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又は不揮発メモリ等のストレージ11と、不揮発性のメモリ12と、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ13と、センサ14と、接続I/F15とを備える。
なお、コンピュータ10は、ネットワークとの間で通信を行うNIC(Network interface Card)等の通信I/F16を備えていてもよい。
【0026】
例えば、パラメータ記憶部140は、ストレージ11又はメモリ12により実現することができる。
制御部130は、プロセッサ13がストレージ11に記憶されているプログラムをメモリ12にロードして、そのプログラムを実行することで、実現することができる。
【0027】
検出部110は、センサ14により実現することができる。
接続I/F部120は、USB(Universal Serial Bus)等に対応した接続I/F15により実現することができる。
なお、上記のように、センサ14及び接続I/F15は、少なくとも何れか一方が備えられていればよい。
また、図示してはいないが、コンピュータ10は、用途に応じて処理結果を表示する表示インターフェースを備えていてもよい。これにより、信号処理装置100は、処理結果を表示する表示部(図示せず)を備えることができる。
【0028】
プログラムは、図示しないリーダ/ライタを介して、図示しない記録媒体から、あるいは、図示しない通信I/Fを介してネットワークから、ストレージ11にダウンロードされ、それから、メモリ12にロードされてプロセッサ13により実行されてもよい。また、リーダ/ライタを介して記録媒体から、あるいは、通信I/Fを介してネットワークから、メモリ12に直接ロードされ、プロセッサ13により実行されてもよい。
言い換えると、プログラムは、記録媒体等のコンピュータプログラムプロダクトにより提供されてもよい。
【0029】
図4は、周波数解析部133での周波数解析処理を示すフローチャートである。
まず、周波数解析部133は、信号成形部132から一波形信号の入力を受けて(S10)、一波形信号で示される一波形を抽出する。
【0030】
次に、周波数解析部133は、ステップS10で抽出された一波形から波形長を算出する(S11)。
そして、周波数解析部133は、算出された波形長から周期パラメータを取得する(S12)。例えば、周波数解析部133は、ステップS11で算出された波形長の逆数をとることで、基本波周波数を算出し、その基本周波数を周期パラメータとすればよい。なお、波形長そのものを周期パラメータとすることもできる。
【0031】
次に、周波数解析部133は、ステップS10で抽出された一波形に対して、複素フーリエ級数展開に基づく周波数変換を施す(S13)。
そして、周波数解析部133は、実フーリエスペクトルを算出する(S14)。
また、周波数解析部133は、虚フーリエスペクトルを算出する(S15)。
例えば、複素フーリエ級数展開において、周波数解析部133は、基本波周波数から、基本波周波数のn(nは、2以上の整数)倍の周波数までを対象として、合計n個の周波数成分まで算出する。
【0032】
次に、周波数解析部133は、ステップS14で算出された実フーリエスペクトルと、ステップS15で算出された虚フーリエスペクトルとの各周波数成分の二乗和平方根から、周波数スペクトルを算出する(S16)。
また、周波数解析部133は、ステップS14で算出された実フーリエスペクトルと、ステップS15で算出された虚フーリエスペクトルとの各周波数成分の逆正接から、位相スペクトルを算出する(S17)。
例えば、5倍の周波数まで算出を行えば、5つの周波数成分からなる周波数スペクトル及び位相スペクトルが得られる。
【0033】
ここで、周波数解析部133は、ステップS17において、位相スペクトルを、各周波数スペクトルにおける初期位相の値として、-π~πの範囲で求める。但し、-πとπは同一の意味をなす一方で、数値として最も離れた位置にあり、特徴量としての利用を制限する可能性が考えられるため、周波数解析部133は、位相の余弦をとり、実位相スペクトルを算出し、位相の正弦をとり、虚位相スペクトルを算出することが望ましい。
【0034】
次に、周波数解析部133は、ステップS16で得られた周波数スペクトルを周波数方向に二乗和平方根で正規化する(S18)。
これにより、周波数解析部133は、正規化周波数スペクトルを算出する(S19)。
また、周波数解析部133は、ステップS18での処理と同様に二乗和平方根を算出する(S20)。
【0035】
そして、周波数解析部133は、ステップS19で算出された正規化周波数スペクトル及びステップS17で算出された位相スペクトルを、波形形状パラメータとして取得する(S21)。なお、ステップS17において実位相スペクトル及び虚位相スペクトルが算出されている場合には、これらが波形形状パラメータとして取得されることが望ましい。
【0036】
また、周波数解析部133は、ステップS20で算出された二乗和平方根を、パワーパラメータとして取得する(S22)。
【0037】
ここで、図5は、波形形状とパワーの分解を模式的に示す図である。
【0038】
以上の処理により、周波数解析部133は、周期、波形形状及びパワーへのパラメータ化を実現する。
これにより、周波数解析部133は、波形のもつパワーを基本波から高調波までのスペクトルの二乗和平方根により算出することで、波形の振幅値、言い換えると、ピーク値をパワーとするよりも、基本波から高調波までのスペクトルを考慮した、適切な形でのパワーの算出を実現することができる。また、周波数解析部133は、波形形状においても、信号全体の強弱と切り離した形での算出を実現することができる。
【0039】
以上のように、実施の形態1では、周波数解析部133が時系列信号を一波形毎に処理して、パラメータ格納部113が処理結果を連続的に記憶するので、時系列信号の周期、波形形状及びパワーのパラメータの経時変化を獲得することができる。
【0040】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2に係る情報処理システムとしての感情判定システム1の構成を概略的に示すブロック図である。
感情判定システム1は、情報処理装置としての学習装置200と、情報処理装置としての推論装置300とを備える。
ここでは、学習装置200及び推論装置300は、インターネット等のネットワーク20を介してデータの送受信が可能となっている。
【0041】
学習装置200は、学習モデルの学習を行うフェーズである学習フェーズでの処理を行う。
推論装置300は、学習装置200から学習済みの学習モデルを取得して、時系列信号である脈波信号から感情の判定を学習済みの学習モデルを用いて検知するフェーズである推論フェーズでの処理を行う。脈波信号は、人から検出された脈波を示す信号である。
【0042】
図7は、実施の形態2における学習装置200の構成を概略的に示すブロック図である。
学習装置200は、制御部230と、パラメータ記憶部140と、通信I/F部250と、学習モデル記憶部260とを備える。
【0043】
実施の形態2における学習装置200のパラメータ記憶部140は、実施の形態1に係る信号処理装置100のパラメータ記憶部140と同様である。
【0044】
通信I/F部250は、ネットワーク20を介した通信を行う。
【0045】
制御部230は、学習装置200での処理を制御する。
制御部230は、信号取得部131と、信号成形部132と、周波数解析部133と、パラメータ格納部134と、データ取得部235と、学習部236とを備える。
【0046】
実施の形態2における制御部230の信号取得部131、信号成形部132、周波数解析部133及びパラメータ格納部134は、実施の形態1における制御部130の信号取得部131、信号成形部132、周波数解析部133及びパラメータ格納部134と同様である。
但し、信号取得部131は、後述するように、データ取得部235から時系列信号を取得する。
【0047】
データ取得部235は、時系列信号としての脈波信号と、脈波信号が取得された対象の感情を示すラベルとを含む教師データを取得する。ここで、ラベルは、脈波信号における予め定められた周期毎に、その周期における対象の感情を示しているものとする。なお、ここでは、脈波信号が取得される対象は人であるものとし、その人を学習対象者ともいう。
【0048】
データ取得部235は、例えば、通信I/F部250を介して、図示しない他の装置から教師データを取得してもよく、図示しない記憶部から教師データを読み出すことで、その教師データを取得してもよい。取得された教師データに含まれている脈波信号は、信号取得部131に与えられ、ラベルは、学習部236に与えられる。
【0049】
学習部236は、パラメータ記憶部140に記憶されている予め定められた周期毎の周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータと、その周期に対応するラベルとを用いることで、脈波信号から、その脈波信号が取得された対象の感情を推論するための学習モデルを学習する。ここで、学習に使用されるパワーパラメータ、周期パラメータ及び波形形状パラメータを、それぞれ学習用パワーパラメータ、学習用周期パラメータ及び学習用波形形状パラメータともいう。
【0050】
例えば、学習部236は、少なくともパワーパラメータを例題として使用して、そのパワーパラメータに対応する一波形が取得された際の人の感情を正解として学習することで、その人の感情を推論するための学習モデルを生成する。なお、学習に使用される時系列信号から特定される一波形を学習用一波形ともいう。
【0051】
なお、学習部236が使用する機械学習手法としては、ニューラルネットワーク又はサポートベクターマシンを好例に選択できるが、その他の機械学習手法が用いられてもよい。学習に使用されるパラメータは、周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータの少なくとも一つのパラメータが使用されればよい。ここでは、パワーパラメータは少なくとも使用されるものとする。
【0052】
学習モデル記憶部260は、学習部236により学習された学習モデルを記憶する。
通信I/F部250は、学習モデル記憶部260に記憶されている学習モデルを、推論装置300に送信する。
【0053】
以上に記載された学習装置200も、図3に示されているようなコンピュータ10で実現することができる。
例えば、パラメータ記憶部140及び学習モデル記憶部260は、ストレージ11又はメモリ12により実現することができる。
制御部230は、プロセッサ13がストレージ11に記憶されているプログラムをメモリ12にロードして、そのプログラムを実行することで、実現することができる。
通信I/F部250は、通信I/F16により実現することができる。
【0054】
図8は、実施の形態2における推論装置300の構成を概略的に示すブロック図である。
推論装置300は、検出部110と、接続I/F部120と、制御部330と、パラメータ記憶部140と、通信I/F部350と、学習モデル記憶部360とを備える。
【0055】
実施の形態2における推論装置300の検出部110、接続I/F部120及びパラメータ記憶部140は、実施の形態1における信号処理装置100の検出部110、接続I/F部120及びパラメータ記憶部140と同様である。
【0056】
通信I/F部350は、ネットワーク20を介した通信を行う。
例えば、通信I/F部350は、ネットワーク20を介して、学習装置200からの学習モデルを受信する。
学習モデル記憶部360は、通信I/F部350で受信された学習モデルを記憶する。
【0057】
制御部330は、推論装置300での処理を制御する。
制御部330は、信号取得部131と、信号成形部132と、周波数解析部133と、パラメータ格納部134と、推論部337とを備える。
実施の形態2における制御部330の信号取得部131、信号成形部132、周波数解析部133及びパラメータ格納部134は、実施の形態1における制御部130の信号取得部131、信号成形部132、周波数解析部133及びパラメータ格納部134と同様である。
【0058】
推論部337は、パラメータ記憶部140に記憶されている予め定められた周期毎の周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータを、学習モデル記憶部360に記憶されている学習モデルに入力することで、そのパラメータに対応する感情を推論する。
なお、推論部337が使用するパラメータは、学習装置200が学習に使用したパラメータであればよい。
【0059】
以上に記載された推論装置300も、図3に示されているようなコンピュータ10で実現することができる。
例えば、パラメータ記憶部140及び学習モデル記憶部360は、ストレージ11又はメモリ12により実現することができる。
制御部330は、プロセッサ13がストレージ11に記憶されているプログラムをメモリ12にロードして、そのプログラムを実行することで、実現することができる。
通信I/F部350は、通信I/F16により実現することができる。
【0060】
例えば、快及び不快、又は、覚醒及び非覚醒といった感情状態がラベル付けされた脈波信号のデータセットを用いて、快及び不快の分類、又は、覚醒及び非覚醒を分類する際に、実施の形態2に係る感情判定システム1が適用されてもよい。
【0061】
人の内的状態である感情が、一波形内の変化を表す脈波形状(波形形状)に表れることが知られており、複数脈拍分の脈波形状(波形形状)のパラメータのみを用いて、それぞれCNN(Convolutional Neural Network)による学習を行うようにしてもよい。これにより、脈波形状からパワーを分離することで信号全体の強弱に関する成分を切り離し、血管のバイオメカニクスからなる脈波形状の成分を時間周波数領域で適切に学習させることができ、適切な分類が可能となる。
【0062】
実施の形態3.
以上に記載した実施の形態2は、パラメータを基に機械学習により識別を行うものであるが、回帰を行うことで波形予測を行ってもよい。
図6に示されているように、実施の形態3に係る情報処理システムとしての信号予測システム2は、情報処理装置としての学習装置400と、情報処理装置としての推論装置500とを備える。
ここでは、学習装置400及び推論装置500は、インターネット等のネットワーク20を介してデータの送受信が可能となっている。
【0063】
学習装置400は、学習モデルの学習を行うフェーズである学習フェーズでの処理を行う。
推論装置500は、学習装置400から学習済みの学習モデルを取得して、時系列信号から将来の時系列信号を学習済みの学習モデルを用いて予測するフェーズである推論フェーズでの処理を行う。
【0064】
図9は、実施の形態3における学習装置400の構成を概略的に示すブロック図である。
学習装置400は、検出部110と、接続I/F部120と、制御部430と、パラメータ記憶部440と、通信I/F部250と、学習モデル記憶部260とを備える。
【0065】
実施の形態4における学習装置400の検出部110及び接続I/F部120は、実施の形態1における信号処理装置100の検出部110及び接続I/F部120と同様である。
また、実施の形態4における学習装置400の通信I/F部250及び学習モデル記憶部260は、実施の形態2における学習装置200の通信I/F部250及び学習モデル記憶部260と同様である。
【0066】
制御部430は、学習装置400での処理を制御する。
制御部430は、信号取得部131と、信号成形部132と、周波数解析部133と、パラメータ格納部434と、学習部436とを備える。
【0067】
実施の形態4における制御部430の信号取得部131、信号成形部132及び周波数解析部133は、実施の形態1における制御部130の信号取得部131、信号成形部132及び周波数解析部133と同様である。
但し、信号取得部131は、取得された時系列信号をパラメータ格納部434にも与える。
【0068】
パラメータ格納部434は、周波数解析部133からの周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータと、時系列信号をとパラメータ記憶部440に格納する。
【0069】
パラメータ記憶部440は、周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータと、時系列信号とを記憶する。
【0070】
学習部436は、パラメータ記憶部140に記憶されている予め定められた周期毎の周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータを用いることで、将来における時系列信号を予測するための学習モデルを学習する。
【0071】
例えば、学習部436は、第1の時間における時系列信号に対応する少なくともパワーパラメータを例題として使用して、その第1の時間よりも後の時間である第2の時間の時系列信号を正解として学習することで、将来の時系列信号を推論するための学習モデルを生成する。なお、学習に使用されるパワーパラメータ、周期パラメータ及び波形形状パラメータを、それぞれ学習用パワーパラメータ、学習用周期パラメータ及び学習用波形形状パラメータともいう。
【0072】
なお、学習部436が使用する機械学習手法としては、ニューラルネットワークを好例に選択できるが、その他の機械学習手法が用いられてもよい。学習に使用されるパラメータは、周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータの少なくとも一つのパラメータが使用されればよい。ここでは、パワーパラメータは少なくとも使用されるものとする。
【0073】
以上のようにして学習された学習モデルは、学習モデル記憶部260に記憶され、通信I/F部250により、推論装置500に送信される。
【0074】
以上に記載された学習装置400も、図3に示されているようなコンピュータ10で実現することができる。
例えば、パラメータ記憶部440及び学習モデル記憶部260は、ストレージ11又はメモリ12により実現することができる。
制御部430は、プロセッサ13がストレージ11に記憶されているプログラムをメモリ12にロードして、そのプログラムを実行することで、実現することができる。
通信I/F部250は、通信I/F16により実現することができる。
【0075】
図8に示されているように、実施の形態3における推論装置500は、検出部110と、接続I/F部120と、制御部530と、パラメータ記憶部140と、通信I/F部350と、学習モデル記憶部360とを備える。
【0076】
実施の形態3における推論装置500の検出部110、接続I/F部120及びパラメータ記憶部140は、実施の形態1における信号処理装置100の検出部110、接続I/F部120及びパラメータ記憶部140と同様である。
実施の形態3における推論装置500の通信I/F部350及び学習モデル記憶部360は、実施の形態2における推論装置300の通信I/F部350及び学習モデル記憶部360と同様である。
【0077】
制御部530は、推論装置500での処理を制御する。
制御部530は、信号取得部131と、信号成形部132と、周波数解析部133と、パラメータ格納部134と、推論部537とを備える。
実施の形態3における制御部530の信号取得部131、信号成形部132、周波数解析部133及びパラメータ格納部134は、実施の形態1における制御部130の信号取得部131、信号成形部132、周波数解析部133及びパラメータ格納部134と同様である。
【0078】
推論部537は、パラメータ記憶部140に記憶されている予め定められた周期毎の周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータを、学習モデル記憶部360に記憶されている学習モデルに入力することで、そのパラメータから将来における時系列信号を推論する。
なお、推論部537が使用するパラメータは、学習装置400が学習に使用したパラメータであればよい。
【0079】
以上に記載された推論装置500も、図3に示されているようなコンピュータ10で実現することができる。
例えば、パラメータ記憶部140及び学習モデル記憶部360は、ストレージ11又はメモリ12により実現することができる。
制御部530は、プロセッサ13がストレージ11に記憶されているプログラムをメモリ12にロードして、そのプログラムを実行することで、実現することができる。
通信I/F部350は、通信I/F16により実現することができる。
【0080】
例えば、東京の日別平均気温の変化を記憶した約10年間分のデータから、将来の東京の日別平均気温の変化を予測する際に、実施の形態3に記載された信号処理が適用されてもよい。このとき、波形形状は、東京の四季の移り変わりの変化の仕方を表し、パワーは、一年間を通した寒暖差の強弱の程度の変化を表し、周期は、四季の移り変わりの周期を表す。ここで、周期は、一年間の周期で変化しないため、周期パラメータについては、学習に不要である。そのため、波形形状及びパワーの2つのパラメータを用いて、それぞれLSTM(Long Short Term Memory)による学習を行うことで、従来のパラメータ化及び学習手法に比べて、適切に推論を行うことができる。
この場合、例えば、10年分のパラメータから、その次の一年の時系列信号を予測するように学習モデルが学習されればよい。
【0081】
実施の形態4.
図10は、実施の形態4に係る情報処理装置である信号再構成装置600の構成を概略的に示すブロック図である。
信号再構成装置600は、検出部110と、接続I/F部120と、制御部630と、パラメータ記憶部140とを備える。
なお、図10では、検出部110及び接続I/F部120の両方が備えられているが、信号再構成装置600は、少なくともこれらの何れか一方を備えていればよい。
【0082】
実施の形態4に係る信号再構成装置600の検出部110、接続I/F部120及びパラメータ記憶部140は、実施の形態1に係る信号処理装置100の検出部110、接続I/F部120及びパラメータ記憶部140と同様である。
【0083】
制御部630は、信号再構成装置600での処理を制御する。
制御部630は、信号取得部131と、信号成形部132と、周波数解析部133と、パラメータ格納部134と、信号フィルタ部638と、逆変換部639とを備える。
【0084】
実施の形態6における制御部630の信号取得部131、信号成形部132、周波数解析部133及びパラメータ格納部134は、実施の形態1における制御部130の信号取得部131、信号成形部132、周波数解析部133及びパラメータ格納部134と同様である。
【0085】
信号フィルタ部638は、パワーパラメータ、周期パラメータ及び波形形状パラメータの少なくとも一つにフィルタ処理を施す。
例えば、信号フィルタ部638は、パラメータ記憶部140に記憶されている周期パラメータ、パワーパラメータ及び波形形状パラメータの内、不要な成分を削除又は定数に置き換える処理を実行する。
【0086】
具体的には、時系列信号の周期的変動をなくす場合は、信号フィルタ部638は、周期パラメータを定数に置き換える。
また、時系列信号の経時的な強弱の変化をなくす場合は、信号フィルタ部638は、パワーパラメータを定数に置き換える。
さらに、時系列信号の高調波成分をなくし、単純なサイン波で表現する場合は、信号フィルタ部638は、波形形状パラメータの高調波成分を0に置き換える。
以上のようにしてフィルタ加工されたパラメータは、逆変換部639に与えられる。
【0087】
逆変換部639は、信号フィルタ部638によるフィルタ処理後のパワーパラメータ、周期パラメータ及び波形形状パラメータを時系列信号に変換する。
例えば、逆変換部639は、信号フィルタ部638でフィルタ加工されたパラメータを用いて、一波形毎に逆複素フーリエ級数展開を施すことで、再構成信号を算出する。
【0088】
例えば、脈波ドップラーセンサにより取得された時系列信号としての脈波信号においては、信号提供者との距離が脈波信号の振幅に影響を及ぼし、一波一波の波形の強弱の情報がノイズとみなされるときがある。このとき、脈拍周期及び脈波形状のパラメータを用いて、脈波パワーを一波形毎に変化しない定数に置き換えて逆変換することで、経時的な信号の強弱の成分を除した再構成信号を出力することができる。
【0089】
以上に記載された信号再構成装置600も、図3に示されているようなコンピュータ10で実現することができる。
例えば、制御部630は、プロセッサ13がストレージ11に記憶されているプログラムをメモリ12にロードして、そのプログラムを実行することで、実現することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 感情判定システム、 2 信号予測システム、 100 信号処理装置、 200,400 学習装置、 300,500 推論装置、 600 信号再構成装置、 110 検出部、 120 接続I/F部、 130,230,330,430,530,630 制御部、 131 信号取得部、 132 信号成形部、 133 周波数解析部、 134,434 パラメータ格納部、 235 データ取得部、 236,436 学習部、 337,537 推論部、 638 信号フィルタ部、 639 逆変換部、 140,440 パラメータ記憶部、 250,350 通信I/F部、 260,360 学習モデル記憶部。
【要約】
信号処理装置(100)は、複数の波形を示す時系列信号を取得する信号取得部(131)と、その時系列信号から一波形を特定する信号成形部(132)と、その一波形のパワーを示すパラメータであるパワーパラメータを算出する周波数解析部(133)とを備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10