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特許7603900加工プログラム管理装置、板材加工システム、加工プログラム管理方法、および加工プログラム管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】加工プログラム管理装置、板材加工システム、加工プログラム管理方法、および加工プログラム管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4155 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
G05B19/4155 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024553685
(86)(22)【出願日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2024019536
【審査請求日】2024-09-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】阿部 代樹
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/047998(WO,A1)
【文献】特表2023-510498(JP,A)
【文献】特開平11-170147(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102063084(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B19/18-19/416
G05B19/42-19/46
B23Q15/00-15/28
B23Q17/00-23/00
B23Q 1/00- 1/76
B23Q 9/00- 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板材の各々の加工制御において実行される加工プログラムを読み込み、複数の前記板材の加工順に複数の前記加工プログラムを送り出すスケジューリングを実行するスケジューリング部と、
加工後の前記板材の曲がり量を前記加工プログラムに基づいて予測し、前記曲がり量の予測値を組み入れた計算によって、加工後の前記板材が積載されたときにおける積載物全体の高さである積載高さを予測する積載高さ予測部と、
複数の前記加工プログラムのうちいずれの前記加工プログラムが実行されたときに前記積載高さが積載可能な高さの上限に到達するかを、前記積載高さの予測結果に基づいて特定する特定部と、を備える
ことを特徴とする加工プログラム管理装置。
【請求項2】
前記積載高さ予測部は、加工前の前記板材のうち加工品に使用される部分の割合である歩留まり率に基づいて前記曲がり量の前記予測値を計算する
ことを特徴とする請求項1に記載の加工プログラム管理装置。
【請求項3】
前記積載高さ予測部は、前記歩留まり率に基づいて求まる前記曲がり量の値を、前記板材の厚みと前記板材の材質との少なくとも一方に対応付けられている調整係数を用いて調整することによって、前記曲がり量の前記予測値を計算する
ことを特徴とする請求項2に記載の加工プログラム管理装置。
【請求項4】
前記積載高さ予測部は、加工前の前記板材の外形の縦横比に基づいて前記曲がり量の予測値を計算する
ことを特徴とする請求項1に記載の加工プログラム管理装置。
【請求項5】
前記積載高さ予測部は、前記縦横比に基づいて求まる前記曲がり量の値を、前記板材の厚みと前記板材の材質との少なくとも一方に対応付けられている調整係数を用いて調整することによって、前記曲がり量の前記予測値を計算する
ことを特徴とする請求項4に記載の加工プログラム管理装置。
【請求項6】
予測された前記積載高さと実際の前記積載高さとの誤差に基づいて前記調整係数を補正する調整係数補正部を備える
ことを特徴とする請求項3または5に記載の加工プログラム管理装置。
【請求項7】
加工後の前記板材が積載されたときにおける積載物全体の重量である積載重量を予測する積載重量予測部を備え、
前記特定部は、複数の前記加工プログラムのうちいずれの前記加工プログラムが実行されたときに前記積載重量が積載可能な重量の上限に到達するかを、前記積載重量の予測結果に基づいて特定する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1つに記載の加工プログラム管理装置。
【請求項8】
加工プログラムに従って板材の加工を制御する数値制御装置を有し、前記板材を加工する板材加工機と、
前記加工プログラムを前記数値制御装置へ送り出すプログラム管理装置と、
前記板材加工機による加工後の前記板材が積載される積載装置と、を備え、
前記プログラム管理装置は、
複数の前記板材の各々の加工制御において実行される前記加工プログラムを読み込み、複数の前記板材の加工順に複数の前記加工プログラムを前記数値制御装置へ送り出すスケジューリングを実行するスケジューリング部と、
加工後の前記板材の曲がり量を前記加工プログラムに基づいて予測した結果を組み入れた計算によって、加工後の前記板材が前記積載装置において積載されたときにおける積載物全体の高さである積載高さを予測する積載高さ予測部と、
複数の前記加工プログラムのうちいずれの前記加工プログラムが実行された後に前記積載高さが積載可能な高さの上限に到達するかを、前記積載高さの予測結果に基づいて特定する特定部と、を備える
ことを特徴とする板材加工システム。
【請求項9】
複数の板材の各々の加工制御において実行される加工プログラムを読み込むステップと、
加工後の前記板材の曲がり量を前記加工プログラムに基づいて予測し、前記曲がり量の予測値を組み入れた計算によって、加工後の前記板材が積載されたときにおける積載物全体の高さである積載高さを予測するステップと、
複数の前記加工プログラムのうちいずれの前記加工プログラムが実行された後に前記積載高さが積載可能な高さの上限に到達するかを、前記積載高さの予測結果に基づいて特定するステップと、を含む
ことを特徴とする加工プログラム管理方法。
【請求項10】
複数の板材の各々の加工制御において実行される加工プログラムを読み込むステップと、
加工後の前記板材の曲がり量を前記加工プログラムに基づいて予測し、前記曲がり量の予測値を組み入れた計算によって、加工後の前記板材が積載されたときにおける積載物全体の高さである積載高さを予測するステップと、
複数の前記加工プログラムのうちいずれの前記加工プログラムが実行された後に前記積載高さが積載可能な高さの上限に到達するかを、前記積載高さの予測結果に基づいて特定するステップと、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする加工プログラム管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の加工プログラムを加工順に送り出すスケジューリングを実行する加工プログラム管理装置、板材加工システム、加工プログラム管理方法、および加工プログラム管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
板材を加工するシステムでは、加工後の板材を積載場所に積載し、積載場所が満載状態となったときに、積載された加工後の板材をまとめて移送する場合がある。例えば、積載場所に置かれた積載パレットに加工後の板材が積載される場合、積載パレットが満載状態となるときを予測することにより、積載場所に次に置かれる空の積載パレットを予め準備することが可能となる。この場合、満載状態となった積載パレットと空の積載パレットとを円滑に交換することが可能となり、加工の停滞を低減できる。
【0003】
特許文献1には、加工前の板材の寸法を示す情報を加工プログラムから取得し、板材の寸法に基づいて積載高さを求めることによって、積載パレットが満載状態となるか否かを予測するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-170147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加工後の板材には、加工前の状態から曲がりが発生する場合がある。このため、加工前の板材の寸法に基づいて積載高さが計算されると、積載される板材に曲がりが生じていることで、満載状態となるときを予測した結果が実際とは大きく異なることとなる場合がある。このように、特許文献1に開示されている従来の技術によると、加工後の板材が満載となるときを正確に予測することが困難となる場合がある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、加工後の板材が満載となるときを正確に予測可能とする加工プログラム管理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る加工プログラム管理装置は、複数の板材の各々の加工制御において実行される加工プログラムを読み込み、複数の板材の加工順に複数の加工プログラムを送り出すスケジューリングを実行するスケジューリング部と、加工後の板材の曲がり量を加工プログラムに基づいて予測し、曲がり量の予測値を組み入れた計算によって、加工後の板材が積載されたときにおける積載物全体の高さである積載高さを予測する積載高さ予測部と、複数の加工プログラムのうちいずれの加工プログラムが実行されたときに積載高さが積載可能な高さの上限に到達するかを、積載高さの予測結果に基づいて特定する特定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る加工プログラム管理装置は、加工後の板材が満載となるときを正確に予測できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る板材加工システムの構成例を示す図
図2】実施の形態1に係る板材加工システムにおける加工後の板材の積載について説明するための図
図3】実施の形態1に係る加工プログラム管理装置の構成例を示す図
図4】実施の形態1に係る加工プログラム管理装置の積載高さ予測部による曲がり量の予測について説明するための第1の図
図5】実施の形態1に係る加工プログラム管理装置の積載高さ予測部による曲がり量の予測について説明するための第2の図
図6】実施の形態1において加工プログラムを特定する際における加工プログラム管理装置の動作手順の例を示すフローチャート
図7】実施の形態1において加工プログラムを特定する際における加工プログラム管理装置の動作手順の例を示すフローチャート
図8】実施の形態1に係る加工プログラム管理装置の積載高さ予測部による積載高さの予測において使用される第1の調整係数および第2の調整係数の例を示す図
図9】実施の形態1に係る加工プログラム管理装置の積載高さ予測部による積載高さの予測に使用される情報の例を示す図
図10】実施の形態1に係る加工プログラム管理装置の積載高さ予測部によって計算された積載高さの予測値の例を示す図
図11】実施の形態1において調整係数を補正する際における板材加工システムの動作手順の例を示すフローチャート
図12】実施の形態1に係る加工プログラム管理装置の調整係数補正部によって積載高さの予測値を再計算する際に使用される第1の調整係数および第2の調整係数の例を示す図
図13】実施の形態1に係る加工プログラム管理装置の調整係数補正部によって再計算された積載高さの予測値の例を示す図
図14】実施の形態1に係る加工プログラム管理装置の調整係数補正部により補正後の調整係数を決定する例について説明するための図
図15】実施の形態1に係る制御回路の構成例を示す図
図16】実施の形態1に係るハードウェア回路の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態に係る加工プログラム管理装置、板材加工システム、加工プログラム管理方法、および加工プログラム管理プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る板材加工システム1の構成例を示す図である。板材加工システム1は、平板状の素材である板材を加工するシステムである。板材加工システム1は、加工プログラム管理装置2と、板材加工機3と、供給装置6と、仕分装置7と、フォーク装置8と、積載装置9とを備える。
【0012】
板材加工機3は、板材を加工する加工機である。板材加工機3は、数値制御(Numerical Control:NC)装置4と、加工部5とを備える。NC装置4は、加工部5を制御するコンピュータである。加工部5は、NC装置4からの指令に従って板材を加工する。図1に示す例では、加工部5は、加工品となる部分を板材から切り取る加工を行う。ここでは、加工品とは、加工によって板材から切り取られた一片とする。1枚の板材からは、1つの加工品が切り取られる場合と、2以上の加工品が切り取られる場合とがあるものとする。なお、加工部5が行う加工は、ここで例示するものに限られない。図1において、白抜き矢印は、板材または加工品の移送を表す。図1において、線矢印は、情報の伝達を表す。
【0013】
加工プログラム管理装置2は、NC装置4へ加工プログラムを送り出す。加工プログラムは、複数の板材の各々の加工制御において実行される。加工プログラム管理装置2は、複数の板材の加工順に複数の加工プログラムを送り出すスケジューリングを実行することによって、複数の加工プログラムを管理する。NC装置4は、加工プログラム管理装置2から送り出される加工プログラムを受信し、受信された加工プログラムに従って板材の加工を制御する。NC装置4は、加工される複数の板材の各々に対応する加工プログラムを順次実施する。NC装置4は、1枚の板材に対して1つの加工プログラムを実行する。板材の材質および板材の厚さがいずれも同一であって、かつ加工品の形状も同一であるときの加工が繰り返される場合、NC装置4において1つの加工プログラムを繰り返し実行することとしても良い。
【0014】
供給装置6は、加工部5へ板材を供給する。図1に示す金属板11は、板材の一例とする。金属板11は、加工パレット12に載せられて、加工部5へ供給される。加工部5での加工が終わると、加工品が加工部5から搬出される。加工後、すなわち加工品が切り取られた後の板材は、加工品とともに加工部5から搬出される。図1に示す例では、加工品である金属片13A,13Bと加工品が切り取られた後の金属板14とが、加工パレット12に載せられて加工部5から搬出される。
【0015】
仕分装置7は、加工品と、加工品が切り取られた後の板材との仕分けを行う。図1に示す例では、仕分装置7は、加工パレット12から金属片13A,13Bを取り出すことによって、金属片13A,13Bと金属板14との仕分けを行う。仕分装置7による仕分けによって、加工パレット12には金属板14が残される。
【0016】
フォーク装置8は、2つのフォーク8A,8Bを動作させることによって、加工品が取り出された後の加工パレット12から金属板14をすくい取る。フォーク装置8は、積載装置9へ金属板14を移送する。積載装置9には、板材加工機3による加工後の板材である金属板14が積載される。積載装置9は、積載装置9において複数の金属板14が満載状態となったときに、満載であることを示す警告を発する。
【0017】
図2は、実施の形態1に係る板材加工システム1における加工後の板材の積載について説明するための図である。図2において、白抜き矢印の左側は、積載装置9において金属板14を積載させるときの様子を示している。図2において、白抜き矢印の右側は、積載された複数の金属板14を、移送のために積載装置9から取り出すときの様子を示している。例として、積載装置9には積載パレットが設置される。複数の金属板14は、積載パレットに積載され、積載パレットとともに移送される。図2では、積載パレットの図示を省略する。
【0018】
積載装置9は、高さセンサ15を備える。高さセンサ15は、積載高さの上限の位置に設置されている。高さセンサ15は、積載高さが高さセンサ15の位置に到達したか否かを検出する。積載高さは、積載装置9において積載された複数の金属板14である積載物全体の高さである。積載装置9は、積載高さが高さセンサ15の位置に到達した場合に、満載であることを示す警告を発する。警告により金属板14の積載が中断されることによって、満載状態を超えて金属板14が積載されることによる不具合、例えば、積載パレットから金属板14が落下すること、または積載物が崩れることなどが防がれる。さらには、金属板14の落下による装置等の破損、または、落下した金属板14が積載パレットの移送を妨げることによるエラーなどが防がれる。
【0019】
図2に示すように、金属板14は、フォーク装置8のフォーク8A,8Bの各々に金属板14が載せられた状態で移送される。フォーク装置8は、積載装置9の上方においてフォーク8Aとフォーク8Bとを互いに離れる方向へ動作させる。フォーク8Aとフォーク8Bとがある程度離れると、金属板14は、金属板14の重さによってフォーク8A,8Bから滑り落ちる。これにより、金属板14は積載装置9へ落下する。複数の金属板14の各々は、このようにして、積載装置9において積載される。フォーク8A,8Bから金属板14が滑り落ちるときに金属板14が下方へ撓むことによって、図2に示すように金属板14に曲がりが生じる場合がある。
【0020】
図1に示す加工プログラム管理装置2は、加工後の板材が満載となるタイミングを予測する。加工プログラム管理装置2は、加工後の板材が満載となる場合において最後に積載される板材を特定し、当該最後に積載される板材を加工する際に実行される加工プログラムを特定する。以下、かかる加工プログラムを、加工後の板材が満載となるときの加工プログラムと称する。加工プログラム管理装置2は、加工後の板材が満載となるときの加工プログラムを特定し、特定された加工プログラムを示す情報を出力する。板材加工システム1では、加工プログラム管理装置2によって出力される当該情報に基づいて、例えば、満載状態となった積載パレットの移送に使用される機器の手配、または、空の積載パレットの準備などが適宜行われる。なお、特定された加工プログラムを示す情報の出力先は特に限定されないものとする。
【0021】
積載装置9において積載される板材は、例えば、加工によって残された端材である。この他、積載装置9において積載される板材は、加工の過程における板材であっても良い。すなわち、積載装置9において積載される板材は、積載の後においてさらなる加工が行われる板材であっても良い。実施の形態1において、加工後とは、加工部5での加工が行われた後であることを指すものとする。実施の形態1において、加工後の板材には、加工の対象としての役目を終えた端材のみならず、さらなる加工の対象とされる板材も含まれる。
【0022】
次に、加工プログラム管理装置2の構成について説明する。図3は、実施の形態1に係る加工プログラム管理装置2の構成例を示す図である。加工プログラム管理装置2は、スケジューリング部21と、積載高さ予測部22と、第1の調整部23と、第2の調整部24と、第1の調整係数保持部25と、第2の調整係数保持部26と、データ保持部27と、調整係数補正部28と、積載重量予測部29と、特定部30とを備える。
【0023】
加工プログラム管理装置2は、CAM(Computer Aided Manufacturing)装置、またはCAD(Computer-Aided Design)/CAMシステムといった、板材加工システム1の外部の装置またはシステムによって作成された加工プログラムを取得する。加工プログラム管理装置2は、複数の加工プログラムを取得する。複数の加工プログラムの各々は、加工の対象である板材の材質、加工の対象である板材の厚さ、および加工品の形状のうちの少なくとも1つが互いに異なる。
【0024】
スケジューリング部21は、複数の板材の各々の加工制御において実行される加工プログラムを読み込む。また、スケジューリング部21は、複数の加工プログラムを複数の板材の加工順に送り出すスケジューリングを実行する。スケジューリング部21は、複数の加工プログラムを加工順にNC装置4へ送り出す。
【0025】
積載高さ予測部22は、スケジューリング部21から加工プログラムを取得する。積載高さ予測部22は、加工後の板材の曲がり量を加工プログラムに基づいて予測する。積載高さ予測部22は、加工後の板材について、板材の厚さと曲がり量との和を求め、積載された各板材の当該和を合計することによって、積載高さを予測する。このように、積載高さ予測部22は、加工後の板材の曲がり量を加工プログラムに基づいて予測し、曲がり量の予測値を組み入れた計算によって、加工後の板材が積載装置9において積載されたときにおける積載物全体の高さである積載高さを予測する。積載高さ予測部22は、予測された積載高さを示す情報を特定部30へ出力する。
【0026】
積載高さ予測部22は、加工前の板材のうち加工品に使用される部分の割合である歩留まり率に基づいて曲がり量の予測値を計算する。また、積載高さ予測部22は、加工前の板材の外形の縦横比に基づいて曲がり量の予測値を計算する。
【0027】
ここで、積載高さ予測部22によって曲がり量を予測する方法について説明する。積載高さ予測部22は、歩留まり率と縦横比との少なくとも一方に基づいて曲がり量を予測可能である。
【0028】
図4は、実施の形態1に係る加工プログラム管理装置2の積載高さ予測部22による曲がり量の予測について説明するための第1の図である。図4には、加工後の金属板14の例である2つの金属板14A,14Bを示す。歩留まり率とは、加工品の面積の、加工前の板材の面積に対する比とする。
【0029】
例として、加工後の金属板14Aの面積は、加工前の金属板11の面積の80%に相当するものとする。この場合、加工前の金属板11のうちの20%の部分が加工品に使用されており、歩留まり率は20%である。また、加工後の金属板14Bの面積は、加工前の金属板11の面積の30%に相当するものとする。この場合、加工前の金属板11のうちの70%が加工品に使用されており、歩留まり率は70%である。歩留まり率が高いほど加工後の板材の面積が小さいことから、加工後の板材は、歩留まり率が高いほど、外力を受けたときに曲がり易い。すなわち、歩留まり率が高いほど、加工後の板材の曲がり量は大きくなる。図4に示す例では、金属板14Aよりも金属板14Bのほうが、歩留まり率が高い。金属板14Aと金属板14Bとが、材質が互いに同じ、厚さが互いに同じ、かつ、外形の縦横比が互いに同じであるとすると、金属板14Aよりも金属板14Bのほうが、曲がり量が大きくなる。
【0030】
このように、加工後の板材の曲がり量は歩留まり率によって変わることから、積載高さ予測部22は、歩留まり率を組み入れた計算によって曲がり量の予測値を計算する。すなわち、積載高さ予測部22は、歩留まり率に基づいて曲がり量の予測値を計算する。
【0031】
図5は、実施の形態1に係る加工プログラム管理装置2の積載高さ予測部22による曲がり量の予測について説明するための第2の図である。図5には、加工前の金属板11の例である2つの金属板11A,11Bを示す。縦横比とは、板材の縦方向長さの、板材の横方向長さに対する比とする。金属板11A,11Bの縦方向長さをL、金属板11A,11Bの横方向長さをdとする。
【0032】
ここでは、フォーク装置8の2つのフォーク8A,8Bが加工後の金属板11A,11Bである金属板14をすくい取る際において、2つのフォーク8A,8Bが互いに向かい合う方向を、縦方向とする。フォーク8Aには、金属板14のうち縦方向における一方の端部が載せられる。フォーク8Bには、金属板14のうち縦方向における他方の端部が載せられる。図5では、参考として、金属板11A,11Bが加工後においてフォーク8A,8Bによりすくい取られる際におけるフォーク8A,8Bを示している。図5において、各フォーク8A,8Bの横に示す両矢印は、各フォーク8A,8Bが動作する方向を表している。2つのフォーク8A,8Bが互いに向かい合う方向は、各フォーク8A,8Bが動作する方向と同じである。横方向とは、縦方向と、金属板11A,11Bの厚さ方向とに垂直な方向である。
【0033】
例として、金属板11Aの縦方向長さは1500mmであって、金属板11Aの横方向長さは750mmであるものとする。この場合、金属板11Aの外形の縦横比は、1500mm/750mm=2.0である。また、金属板11Bの縦方向長さは1500mmであって、金属板11Bの横方向長さは1500mmであるものとする。この場合、金属板11Bの外形の縦横比は、1500mm/1500mm=1.0である。
【0034】
金属板14は、縦横比が大きいほど、金属板14がフォーク8A,8Bから滑り落ちるときに受ける外力によって曲がり易い。すなわち、縦横比が大きいほど、加工後の板材の曲がり量は大きくなる。図5に示す例では、金属板11Bよりも金属板11Aのほうが、縦横比が大きい。金属板11Aと金属板11Bとが、材質が互いに同じ、厚さが互いに同じ、かつ、歩留まり率が互いに同じであるとすると、金属板11Bよりも金属板11Aのほうが、曲がり量が大きくなる。
【0035】
このように、加工後の板材の曲がり量は板材の縦横比によって変わることから、積載高さ予測部22は、加工前の板材の縦横比を組み入れた計算によって曲がり量の予測値を計算する。すなわち、積載高さ予測部22は、縦横比に基づいて曲がり量の予測値を計算する。
【0036】
積載高さ予測部22は、歩留まり率に基づいて曲がり量を予測する場合に、歩留まり率を示す情報を加工プログラムから取得する。歩留まり率および曲がり量の関係があらかじめ求められており、積載高さ予測部22には、当該関係を示す情報が格納されている。歩留まり率および曲がり量の関係を示す情報は、例えば、歩留まり率を表すいくつかの値と、歩留まり率を表す各値に対応する曲がり量の値との対応を表すテーブルである。この他、歩留まり率および曲がり量の関係を示す情報は、歩留まり率から曲がり量を計算するための計算式を示す情報であっても良い。積載高さ予測部22は、加工プログラムに含まれる歩留まり率を示す情報と、歩留まり率および曲がり量の関係とに基づいて、曲がり量の予測値を求める。
【0037】
積載高さ予測部22は、縦横比に基づいて曲がり量を予測する場合に、加工プログラムに含まれる情報から縦横比を計算する。縦横比および曲がり量の関係があらかじめ求められており、積載高さ予測部22には、当該関係を示す情報が格納されている。縦横比および曲がり量の関係を示す情報は、例えば、縦横比を表すいくつかの値と、縦横比を表す各値に対応する曲がり量の値との対応を表すテーブルである。この他、縦横比および曲がり量の関係を示す情報は、縦横比から曲がり量を計算するための計算式を示す情報であっても良い。積載高さ予測部22は、加工プログラムに含まれる情報から計算された縦横比と、縦横比および曲がり量の関係とに基づいて、曲がり量の予測値を求める。
【0038】
積載高さ予測部22は、曲がり量の予測値の計算に歩留まり率を組み入れるか否かを切り替えることができる。また、積載高さ予測部22は、曲がり量の予測値の計算に縦横比を組み入れるか否かを切り替えることができる。これにより、積載高さ予測部22は、歩留まり率と縦横比との少なくとも一方に基づいて曲がり量を予測できる。積載高さ予測部22は、歩留まり率と縦横比とを組み入れた計算と、歩留まり率のみを組み入れた計算と、縦横比のみを組み入れた計算とのうちの1つを選択して、曲がり量を予測することができる。
【0039】
積載高さ予測部22は、歩留まり率と縦横比との少なくとも一方に基づいて曲がり量を予測し、加工前の板材の厚さと予測された曲がり量とに基づいて積載高さを計算する。積載高さ予測部22は、加工後の板材の曲がり量を加味して積載高さを予測することにより、積載高さを正確に予測することが可能となる。なお、積載高さ予測部22は、加工後の板材の曲がり量が無いものとみなし、加工前の板材の厚さのみに基づいて積載高さを予測することとしても良い。
【0040】
積載高さ予測部22は、歩留まり率と、歩留まり率および曲がり量の関係とによって求まる曲がり量の値を、調整係数を用いて調整することとしても良い。以下、歩留まり率に基づいて求まる曲がり量の値を調整するための調整係数を、第1の調整係数と称する。第1の調整係数は、板材の厚みと板材の材質との少なくとも一方に対応付けられている。積載高さ予測部22は、歩留まり率に基づいて求まる曲がり量の値を、第1の調整係数を用いて調整することによって、曲がり量の予測値を計算しても良い。以下、第1の調整係数は、板材の厚みと板材の材質との双方に対応付けられているものとする。
【0041】
第1の調整係数保持部25は、複数の第1の調整係数を保持する。第1の調整係数保持部25に保持されている各第1の調整係数には、板材の厚みを示す情報と、板材の材質を示す情報とが対応付けられている。
【0042】
第1の調整部23は、積載高さ予測部22によってスケジューリング部21から取得された加工プログラムから、板材の厚みを示す情報と板材の材質を示す情報とを読み出す。第1の調整部23は、読み出された情報と同じ情報に対応付けられている第1の調整係数を第1の調整係数保持部25から読み出す。第1の調整部23は、読み出された第1の調整係数を積載高さ予測部22へ渡す。積載高さ予測部22は、第1の調整部23から得た第1の調整係数を用いて、曲がり量の値を調整する。板材が厚いほど板材は曲がりにくく、板材が薄いほど板材は曲がり易い。また、板材の比重が大きいほど板材は曲がりにくく、板材の比重が小さいほど板材は曲がり易い。積載高さ予測部22は、板材の厚みと板材の材質とに応じた第1の調整係数を用いて曲がり量の値を調整することで、曲がり量の正確な予測値を得ることができる。
【0043】
積載高さ予測部22は、縦横比と、縦横比および曲がり量の関係とによって求まる曲がり量の値を、調整係数を用いて調整することとしても良い。以下、縦横比に基づいて求まる曲がり量の値を調整するための調整係数を、第2の調整係数と称する。第2の調整係数は、板材の厚みと板材の材質との少なくとも一方に対応付けられている。積載高さ予測部22は、縦横比に基づいて求まる曲がり量の値を、第2の調整係数を用いて調整することによって、曲がり量の予測値を計算しても良い。以下、第2の調整係数は、板材の厚みと板材の材質との双方に対応付けられているものとする。
【0044】
第2の調整係数保持部26は、複数の第2の調整係数を保持する。第2の調整係数保持部26に保持されている各第2の調整係数には、板材の厚みを示す情報と、板材の材質を示す情報とが対応付けられている。
【0045】
第2の調整部24は、積載高さ予測部22によってスケジューリング部21から取得された加工プログラムから、板材の厚みを示す情報と板材の材質を示す情報とを読み出す。第2の調整部24は、読み出された情報と同じ情報に対応付けられている第2の調整係数を第2の調整係数保持部26から読み出す。第2の調整部24は、読み出された第2の調整係数を積載高さ予測部22へ渡す。積載高さ予測部22は、第2の調整部24から得た第2の調整係数を用いて、曲がり量の値を調整する。積載高さ予測部22は、板材の厚みと板材の材質とに応じた第2の調整係数を用いて曲がり量の値を調整することで、曲がり量の正確な予測値を得ることができる。
【0046】
積載高さ予測部22は、歩留まり率に基づいて曲がり量を予測する場合において、第1の調整係数を用いた調整を行うか否かを切り替えることができる。すなわち、積載高さ予測部22は、歩留まり率に基づいて求まる曲がり量の値を、第1の調整係数を用いて調整するか否かを切り替えることができる。
【0047】
積載高さ予測部22は、縦横比に基づいて曲がり量を予測する場合において、第2の調整係数を用いた調整を行うか否かを切り替えることができる。すなわち、積載高さ予測部22は、縦横比に基づいて求まる曲がり量の値を、第2の調整係数を用いて調整するか否かを切り替えることができる。
【0048】
積載重量予測部29は、スケジューリング部21から加工プログラムを取得する。積載重量予測部29は、加工後の板材が積載されたときにおける積載物全体の重量である積載重量を予測する。積載重量予測部29は、加工後の板材の重量を加工プログラムに基づいて予測し、積載された各板材の重量を合計することによって、積載重量を予測する。積載重量予測部29は、予測された積載重量を示す情報を特定部30へ出力する。
【0049】
特定部30には、積載高さ予測部22によって予測された積載高さを示す情報が入力される。特定部30は、複数の加工プログラムのうちいずれの加工プログラムが実行されたときに積載高さが積載可能な高さの上限に到達するかを、積載高さの予測結果に基づいて特定する。または、特定部30には、積載重量予測部29によって予測された積載重量を示す情報が入力される。特定部30は、複数の加工プログラムのうちいずれの加工プログラムが実行されたときに積載重量が積載可能な重量の上限に到達するかを、積載重量の予測結果に基づいて特定する。
【0050】
加工プログラム管理装置2は、積載高さ予測部22による積載高さの予測と積載重量予測部29による積載重量の予測とのどちらを行うかを切り替えることができる。加工プログラム管理装置2は、加工後の板材が満載となるときの加工プログラムを、積載高さを予測することによって特定するか、または、積載重量を予測することによって特定する。
【0051】
加工後の板材が満載となるときの加工プログラムを、積載高さの予測によって特定する場合、特定部30は、積載高さが上限に到達するときの加工プログラムを、予測された積載高さに基づいて特定する。満載状態となるときの加工プログラムを、積載重量の予測によって特定する場合、特定部30は、積載重量が上限に到達するときの加工プログラムを、予測された積載重量に基づいて特定する。
【0052】
データ保持部27は、積載高さ予測部22による計算に使用されたデータと、積載高さ予測部22による計算によって得られたデータとを保持する。以下、データ保持部27によって保持されるデータを、実績データと称する。実績データの詳細については、後述する。
【0053】
調整係数補正部28は、予測された積載高さと実際の積載高さとの誤差に基づいて調整係数を補正する。調整係数補正部28は、第1の調整係数と第2の調整係数との少なくとも一方を補正する。ここでは、調整係数補正部28は、第1の調整係数と第2の調整係数との双方を補正するものとする。
【0054】
調整係数補正部28は、実績データをデータ保持部27から読み出す。調整係数補正部28は、積載高さの予測結果に基づいて特定された加工プログラムを示す情報を特定部30から取得する。また、特定部30は、実際に積載高さが上限に到達したときに、実際に積載高さが上限に到達したときの加工プログラムを特定する。調整係数補正部28は、実際に積載高さが上限に到達したときの加工プログラムを示す情報を特定部30から取得する。調整係数補正部28によって調整係数を補正する方法については、後述する。調整係数補正部28は、補正された第1の調整係数を第1の調整係数保持部25に保存する。調整係数補正部28は、補正された第2の調整係数を第2の調整係数保持部26に保存する。
【0055】
次に、加工後の板材が満載となるときの加工プログラムを特定する際における加工プログラム管理装置2の動作手順について説明する。図6および図7は、実施の形態1において加工プログラムを特定する際における加工プログラム管理装置2の動作手順の例を示すフローチャートである。以下、加工前の板材を素材と称する。また、加工後の板材は、端材であるものとする。
【0056】
図6に示すステップS1において、スケジューリング部21は、複数の板材の各々の加工制御において実行される加工プログラムを読み込む。スケジューリング部21は、複数の加工プログラムを順次読み込む。
【0057】
ステップS2において、スケジューリング部21は、積載高さの予測によって加工プログラムを特定するか否かを判断する。スケジューリング部21は、積載パレットが満載状態となるときの加工プログラムの特定を、積載高さの予測と積載重量の予測とのうち積載高さの予測によって行うことが選択されている場合に、積載高さの予測によって加工プログラムを特定すると判断する。
【0058】
積載高さの予測によって加工プログラムを特定する場合(ステップS2,Yes)、加工プログラム管理装置2は、ステップS3へ手順を進める。一方、積載高さの予測による加工プログラムの特定を行わない場合(ステップS2,No)、加工プログラム管理装置2は、図7に示すステップS16へ手順を進める。
【0059】
スケジューリング部21は、積載高さの予測によって加工プログラムを特定すると判断した場合、積載高さの予測を積載高さ予測部22に指示する。ステップS3において、積載高さ予測部22は、素材情報と加工情報とを加工プログラムから取得する。積載高さ予測部22は、加工順に実行される一連の加工プログラムのうち曲がり量の予測の対象とする加工プログラムを選択する。積載高さの予測により加工プログラムを特定する処理を開始してから最初に加工プログラムを選択する場合、積載高さ予測部22は、一連の加工プログラムのうち最初に実行される加工プログラムを選択する。
【0060】
積載高さ予測部22は、選択された加工プログラムをスケジューリング部21から取得し、取得された加工プログラムから素材情報と加工情報とを取得する。素材情報とは、加工プログラムに含まれる情報のうち素材についての情報とする。積載高さ予測部22は、素材情報として、素材の長さ、素材の幅、素材の厚さ、素材の材質、および素材の比重の各々を示す情報を取得する。素材の長さとは、素材の縦方向長さとする。素材の幅とは、素材の横方向長さとする。加工情報とは、加工についての情報とする。積載高さ予測部22は、加工情報として、歩留まり率を示す情報を取得する。
【0061】
ステップS4において、積載高さ予測部22は、歩留まり率に基づいて端材の曲がり量を予測するか否かを判断する。積載高さ予測部22は、曲がり量の予測として歩留まり率に基づいた予測を行うことが選択されている場合に、歩留まり率に基づいて端材の曲がり量を予測すると判断する。歩留まり率に基づいて端材の曲がり量を予測する場合(ステップS4,Yes)、加工プログラム管理装置2は、ステップS5へ手順を進める。一方、歩留まり率に基づいた端材の曲がり量の予測を行わない場合(ステップS4,No)、加工プログラム管理装置2は、ステップS7へ手順を進める。
【0062】
ステップS5において、積載高さ予測部22は、第1の調整係数を用いた調整を行うか否かを判断する。積載高さ予測部22は、歩留まり率に基づいて求まる曲がり量の値を、第1の調整係数を用いて調整することが選択されている場合、第1の調整係数を用いた調整を行うと判断する。第1の調整係数を用いた調整を行う場合(ステップS5,Yes)、加工プログラム管理装置2は、ステップS6へ手順を進める。この場合、積載高さ予測部22は、第1の調整係数の読み出しを第1の調整部23に要求する。一方、第1の調整係数を用いた調整を行わない場合(ステップS5,No)、加工プログラム管理装置2は、ステップS7へ手順を進める。
【0063】
ステップS6において、第1の調整部23は、積載高さ予測部22による要求に応じて、第1の調整係数を読み出す。第1の調整部23は、積載高さ予測部22において取得された素材情報のうち、素材の厚さを示す情報と素材の材質を示す情報とを取得する。第1の調整部23は、第1の調整係数保持部25に保持されている複数の第1の調整係数の中から、読み出された情報と同じ情報に対応付けられている第1の調整係数を検索する。第1の調整部23は、読み出された情報と同じ情報に対応付けられている第1の調整係数を第1の調整係数保持部25から読み出す。第1の調整部23は、読み出された第1の調整係数を積載高さ予測部22へ渡す。
【0064】
ステップS7において、積載高さ予測部22は、素材の縦横比に基づいて端材の曲がり量を予測するか否かを判断する。積載高さ予測部22は、曲がり量の予測として縦横比に基づいた予測を行うことが選択されている場合に、素材の縦横比に基づいて端材の曲がり量を予測すると判断する。素材の縦横比に基づいて端材の曲がり量を予測する場合(ステップS7,Yes)、加工プログラム管理装置2は、ステップS8へ手順を進める。一方、素材の縦横比に基づいた端材の曲がり量の予測を行わない場合(ステップS7,No)、加工プログラム管理装置2は、ステップS11へ手順を進める。
【0065】
ステップS8において、積載高さ予測部22は、素材の縦横比を計算する。積載高さ予測部22は、積載高さ予測部22において取得された素材情報に示される素材の長さと素材の幅とに基づいて、素材の縦横比を計算する。
【0066】
ステップS9において、積載高さ予測部22は、第2の調整係数を用いた調整を行うか否かを判断する。積載高さ予測部22は、縦横比に基づいて求まる曲がり量の値を、第2の調整係数を用いて調整することが選択されている場合、第2の調整係数を用いた調整を行うと判断する。第2の調整係数を用いた調整を行う場合(ステップS9,Yes)、加工プログラム管理装置2は、ステップS10へ手順を進める。この場合、積載高さ予測部22は、第2の調整係数の読み出しを第2の調整部24に要求する。一方、第2の調整係数を用いた調整を行わない場合(ステップS9,No)、加工プログラム管理装置2は、ステップS11へ手順を進める。
【0067】
ステップS10において、第2の調整部24は、積載高さ予測部22による要求に応じて、第2の調整係数を読み出す。第2の調整部24は、積載高さ予測部22において取得された素材情報のうち、素材の厚さを示す情報と素材の材質を示す情報とを取得する。第2の調整部24は、第2の調整係数保持部26に保持されている複数の第2の調整係数の中から、読み出された情報と同じ情報に対応付けられている第2の調整係数を検索する。第2の調整部24は、読み出された情報と同じ情報に対応付けられている第2の調整係数を第2の調整係数保持部26から読み出す。第2の調整部24は、読み出された第2の調整係数を積載高さ予測部22へ渡す。
【0068】
ステップS11において、積載高さ予測部22は、端材の曲がり量の予測値を計算する。積載高さ予測部22は、歩留まり率に基づいて曲がり量を予測する場合、加工情報に示される歩留まり率と、歩留まり率および曲がり量の関係を示す情報とに基づいて、歩留まり率に基づいた曲がり量の予測値を求める。ここでは、歩留まり率および曲がり量の関係を示す情報は、歩留まり率および曲がり量係数の関係を示す情報であるものとする。曲がり量係数とは、曲がり量を求めるための係数とする。素材の厚さと曲がり量係数との積が、曲がり量の予測値である。積載高さ予測部22は、歩留まり率と、歩留まり率および曲がり量係数の関係を示す情報とに基づいて、曲がり量係数を求める。積載高さ予測部22は、素材の厚さの値に、求めた曲がり量係数を掛けることで、歩留まり率に基づいた曲がり量の予測値を求める。
【0069】
積載高さ予測部22は、縦横比に基づいて曲がり量を予測する場合、ステップS8において計算された縦横比と、縦横比および曲がり量の関係を示す情報とに基づいて、縦横比に基づいた曲がり量の予測値を求める。ここでは、縦横比および曲がり量の関係を示す情報は、縦横比および曲がり量係数の関係を示す情報であるものとする。積載高さ予測部22は、縦横比と、縦横比および曲がり量係数の関係を示す情報とに基づいて、曲がり量係数を求める。積載高さ予測部22は、素材の厚さの値に、求めた曲がり量係数を掛けることで、縦横比に基づいた曲がり量の予測値を求める。
【0070】
積載高さ予測部22は、例えば、次の式(1)により、端材1枚当たりの高さの予測値であるPhを計算する。Phは、素材の厚さと端材の曲がり量の予測値との和を示す式(1)により表される。
h=T×{1+(byr×C1)+(bar×C2)} ・・・(1)
【0071】
なお、式(1)において、Tは素材の厚さ、byrは歩留まり率に基づいた曲がり量を求めるための曲がり量係数、barは縦横比に基づいた曲がり量を求めるための曲がり量係数、C1は第1の変数、およびC2は第2の変数を表す。
【0072】
第1の変数は、歩留まり率に基づいた曲がり量の調整に関する変数とする。ステップS5において、第1の調整係数を用いた調整を行うと判断された場合、積載高さ予測部22は、ステップS6において読み出された第1の調整係数を第1の変数に代入する。ステップS5において、第1の調整係数を用いた調整を行わないと判断された場合、積載高さ予測部22は、あらかじめ設定された値である1.0を第1の変数に代入する。ステップS4において、歩留まり率に基づいた予測を行わないと判断された場合、積載高さ予測部22は、あらかじめ設定された値であるゼロを第1の変数に代入する。ステップS4において、歩留まり率に基づいた予測を行わないと判断された場合、積載高さ予測部22は、式(1)における、歩留まり率に基づいた曲がり量を求めるための曲がり量係数をゼロに置き換える。
【0073】
第2の変数は、素材の縦横比に基づいた曲がり量の調整に関する変数とする。ステップS9において、第2の調整係数を用いた調整を行うと判断された場合、積載高さ予測部22は、ステップS10において読み出された第2の調整係数を第2の変数に代入する。ステップS9において、第2の調整係数を用いた調整を行わないと判断された場合、積載高さ予測部22は、あらかじめ設定された値である1.0を第2の変数に代入する。ステップS7において、素材の縦横比に基づいた予測を行わないと判断された場合、積載高さ予測部22は、あらかじめ設定された値であるゼロを第2の変数に代入する。ステップS7において、素材の縦横比に基づいた予測を行わないと判断された場合、積載高さ予測部22は、式(1)における、縦横比に基づいた曲がり量を求めるための曲がり量係数をゼロに置き換える。なお、端材1枚当たりの高さの予測値を計算する方法は、上記の方法に限られず任意であるものとする。
【0074】
ステップS12において、積載高さ予測部22は、加工順に実行される一連の加工プログラムについての積載高さの予測値に、ステップS11により計算された曲がり量の予測値を加算する。具体的には、積載高さ予測部22は、端材1枚当たりの高さの予測値を、すなわち素材の厚さと端材の曲がり量の予測値との和を、積載高さの予測値に加算する。ここで曲がり量の予測値が加算される積載高さの予測値とは、積載高さの予測により加工プログラムを特定する処理を開始してから現在までにおいて得られている積載高さの予測値である。ステップS11により計算された曲がり量の予測値が、一連の加工プログラムのうち最初に実行される加工プログラムについての予測値である場合、積載高さ予測部22は、積載高さの初期値であるゼロに、ステップS11により計算された曲がり量の予測値を加算する。
【0075】
積載高さ予測部22は、ステップS12により曲がり量の予測値が加算された積載高さの予測値を特定部30へ出力する。ステップS13において、特定部30は、特定部30へ入力された積載高さの予測値が、積載高さの上限に到達したか否かを判断する。
【0076】
積載高さの予測値が積載高さの上限に到達した場合(ステップS13,Yes)、ステップS14において、特定部30は、積載高さの予測値が積載高さの上限に到達するときの加工プログラムを特定し、特定された加工プログラムを示す情報を出力する。これにより、加工プログラム管理装置2は、図6および図7に示す手順による動作を終了する。
【0077】
一方、積載高さの予測値が積載高さの上限に到達していない場合(ステップS13,No)、特定部30は、積載高さの予測値が積載高さの上限に到達していないことを示す情報を積載高さ予測部22へ出力する。ステップS15において、積載高さ予測部22は、全ての加工プログラムについて積載高さの予測が完了したか否かを判断する。積載高さ予測部22は、加工順に実行される一連の加工プログラムの全てについての積載高さの予測が完了したか否かを判断する。
【0078】
全ての加工プログラムについての積載高さの予測が完了していない場合(ステップS15,No)、加工プログラム管理装置2は、手順をステップS3へ戻す。加工プログラム管理装置2は、積載高さの予測値が積載高さの上限に到達するまで、または、一連の加工プログラムの全てについての積載高さの予測が完了するまで、ステップS3からステップS13およびステップS15を繰り返す。加工プログラム管理装置2により加工プログラムごとに積載高さを予測する動作は、加工プログラムの実行順に行われる。全ての加工プログラムについての積載高さの予測が完了した場合(ステップS15,Yes)、加工プログラム管理装置2は、図6および図7に示す手順による動作を終了する。
【0079】
ステップS16において、スケジューリング部21は、積載重量の予測によって加工プログラムを特定するか否かを判断する。スケジューリング部21は、積載パレットが満載状態となるときの加工プログラムの特定を、積載高さの予測と積載重量の予測とのうち積載重量の予測によって行うことが選択されている場合に、積載重量の予測によって加工プログラムを特定すると判断する。
【0080】
積載重量の予測によって加工プログラムを特定する場合(ステップS16,Yes)、加工プログラム管理装置2は、ステップS17へ手順を進める。一方、積載重量の予測による加工プログラムの特定を行わない場合(ステップS16,No)、加工プログラム管理装置2は、図6および図7に示す手順による動作を終了する。
【0081】
スケジューリング部21は、積載重量の予測によって加工プログラムを特定すると判断した場合、積載重量の予測を積載重量予測部29に指示する。ステップS17において、積載重量予測部29は、素材情報と加工情報とを加工プログラムから取得する。積載重量予測部29は、加工順に実行される一連の加工プログラムのうち重量の予測の対象とする加工プログラムを選択する。積載重量の予測により加工プログラムを特定する処理を開始してから最初に加工プログラムを選択する場合、積載重量予測部29は、一連の加工プログラムのうち最初に実行される加工プログラムを選択する。
【0082】
ステップS18において、積載重量予測部29は、端材の重量の予測値を計算する。積載重量予測部29は、例えば、次の式(2)により、端材の重量の予測値であるPWを計算する。
W=W-(W×yr) ・・・(2)
【0083】
なお、式(2)において、Wは素材の重量、yrは歩留まり率を表す。積載重量予測部29は、例えば、次の式(3)により、素材の重量であるWを計算する。
W=L×d×T×g ・・・(3)
【0084】
なお、式(3)において、Lは素材の長さ、dは素材の幅、Tは素材の厚さ、gは素材の比重を表す。
【0085】
ステップS19において、積載重量予測部29は、積載重量の予測値に端材の重量の予測値を加算する。ここで端材の重量が加算される積載重量の予測値とは、積載重量の予測により加工プログラムを特定する処理を開始してから現在までにおいて得られている積載重量の予測値である。ステップS18により計算された端材の重量の予測値が、一連の加工プログラムのうち最初に実行される加工プログラムについての予測値である場合、積載重量予測部29は、積載重量の初期値であるゼロに、ステップS18により計算された端材の重量の予測値を加算する。
【0086】
積載重量予測部29は、ステップS19により端材の重量の予測値が加算された積載重量の予測値を特定部30へ出力する。ステップS20において、特定部30は、特定部30へ入力された積載重量の予測値が、積載重量の上限に到達したか否かを判断する。
【0087】
積載重量の予測値が積載重量の上限に到達した場合(ステップS20,Yes)、ステップS14において、特定部30は、積載重量の予測値が積載重量の上限に到達するときの加工プログラムを特定し、特定された加工プログラムを示す情報を出力する。これにより、加工プログラム管理装置2は、図6および図7に示す手順による動作を終了する。
【0088】
一方、積載重量の予測値が積載重量の上限に到達していない場合(ステップS20,No)、特定部30は、積載重量の予測値が積載重量の上限に到達していないことを示す情報を積載重量予測部29へ出力する。ステップS21において、積載重量予測部29は、全ての加工プログラムについて積載重量の予測が完了したか否かを判断する。積載重量予測部29は、加工順に実行される一連の加工プログラムの全てについての積載重量の予測が完了したか否かを判断する。
【0089】
全ての加工プログラムについての積載重量の予測が完了していない場合(ステップS21,No)、加工プログラム管理装置2は、手順をステップS17へ戻す。加工プログラム管理装置2は、積載重量の予測値が積載重量の上限に到達するまで、または、一連の加工プログラムの全てについての積載重量の予測が完了するまで、ステップS17からステップS21を繰り返す。加工プログラム管理装置2により加工プログラムごとに積載重量を予測する動作は、加工プログラムの実行順に行われる。全ての加工プログラムについての積載重量の予測が完了した場合(ステップS21,Yes)、加工プログラム管理装置2は、図6および図7に示す手順による動作を終了する。
【0090】
次に、積載高さの予測において使用される第1の調整係数および第2の調整係数の例について説明する。図8は、実施の形態1に係る加工プログラム管理装置2の積載高さ予測部22による積載高さの予測において使用される第1の調整係数および第2の調整係数の例を示す図である。
【0091】
図8には、素材の材質と素材の厚さとに対応付けられている第1の調整係数の例と、素材の材質と素材の厚さとに対応付けられている第2の調整係数の例とを示す。図8によると、例えば、材質がSPCC(Steel Plate Cold Commercial)であって、かつ厚さが5mmである素材について設定されている第1の調整係数は「0.8」である。また、同素材について設定されている第2の調整係数は「0.4」である。図8によると、例えば、材質がアルミニウム(Aluminum:AL)であって、かつ厚さが3mmである素材について設定されている第1の調整係数は「1.3」である。また、同素材について設定されている第2の調整係数は「0.7」である。
【0092】
なお、上記では、積載高さ予測部22は、歩留まり率を組み入れた計算により曲がり量を予測する場合に、歩留まり率に基づいて求まる曲がり量の値を、第1の調整係数を用いて調整することとした。積載高さ予測部22は、曲がり量の値を、第1の調整係数を用いて調整しないこととしても良い。加工プログラム管理装置2は、第1の調整係数保持部25が省略されても良い。
【0093】
上記では、積載高さ予測部22は、歩留まり率に基づいて求まる曲がり量の値を、第1の調整係数を用いて調整する場合に、素材の厚さと素材の材質とに対応する第1の調整係数を取得することとした。積載高さ予測部22は、素材の厚さと素材の材質とのうち素材の厚さのみに対応する第1の調整係数を取得することとしても良く、または、素材の厚さと素材の材質とのうち素材の材質のみに対応する第1の調整係数を取得することとしても良い。第1の調整係数保持部25に保持される第1の調整係数は、素材の厚みと素材の材質との少なくとも一方に対応付けられていれば良い。第1の調整部23は、素材の厚みを示す情報を取得し、取得された情報に示される厚みと同じ厚みに対応付けられている第1の調整係数を第1の調整係数保持部25から取得し、取得された第1の調整係数を積載高さ予測部22へ渡しても良い。または、第1の調整部23は、素材の材質を示す情報を取得し、取得された情報に示される材質と同じ材質に対応付けられている第1の調整係数を第1の調整係数保持部25から取得し、取得された第1の調整係数を積載高さ予測部22へ渡しても良い。
【0094】
上記では、積載高さ予測部22は、縦横比を組み入れた計算により曲がり量を予測する場合に、縦横比に基づいて求まる曲がり量の値を、第2の調整係数を用いて調整することとした。積載高さ予測部22は、曲がり量の値を、第2の調整係数を用いて調整しないこととしても良い。加工プログラム管理装置2は、第2の調整係数保持部26が省略されても良い。
【0095】
上記では、積載高さ予測部22は、縦横比に基づいて求まる曲がり量の値を、第2の調整係数を用いて調整する場合に、素材の厚さと素材の材質とに対応する第2の調整係数を取得することとした。積載高さ予測部22は、素材の厚さと素材の材質とのうち素材の厚さのみに対応する第2の調整係数を取得することとしても良く、または、素材の厚さと素材の材質とのうち素材の材質のみに対応する第2の調整係数を取得することとしても良い。第2の調整係数保持部26に保持される第2の調整係数は、素材の厚みと素材の材質との少なくとも一方に対応付けられていれば良い。第2の調整部24は、素材の厚みを示す情報を取得し、取得された情報に示される厚みと同じ厚みに対応付けられている第2の調整係数を第2の調整係数保持部26から取得し、取得された第2の調整係数を積載高さ予測部22へ渡しても良い。または、第2の調整部24は、素材の材質を示す情報を取得し、取得された情報に示される材質と同じ材質に対応付けられている第2の調整係数を第2の調整係数保持部26から取得し、取得された第2の調整係数を積載高さ予測部22へ渡しても良い。
【0096】
上記では、積載高さ予測部22は、曲がり量の予測値の計算に歩留まり率を組み入れるか否かを切り替えることができることとした。また、上記では、積載高さ予測部22は、曲がり量の予測値の計算に縦横比を組み入れるか否かを切り替えることができることとした。積載高さ予測部22は、曲がり量の予測値の計算に、歩留まり率と縦横比との少なくとも一方を組み入れ可能であれば良い。すなわち、積載高さ予測部22は、歩留まり率を組み入れた計算による曲がり量の予測を行わないものであっても良く、または、縦横比を組み入れた計算による曲がり量の予測を行わないものであっても良い。加工プログラム管理装置2は、第1の調整部23が省略されても良く、または、第2の調整部24が省略されても良い。
【0097】
例として、縦横比が小さい板材のみが加工される場合、積載高さ予測部22は、曲がり量の予測値の計算に、歩留まり率を組み入れ、かつ縦横比を組み入れないこととしても良い。この場合、積載高さ予測部22は、歩留まり率および縦横比の双方を計算に組み入れる場合に比べて計算時間を短縮することができる。積載高さ予測部22は、縦横比を計算に組み入れなくても曲がり量を高い精度で予測することができることから、計算時間を短縮でき、かつ積載高さを正確に予測することができる。
【0098】
または、歩留まり率が低い板材のみが加工される場合、積載高さ予測部22は、曲がり量の予測値の計算に、縦横比を組み入れ、かつ歩留まり率を組み入れないこととしても良い。この場合、積載高さ予測部22は、歩留まり率および縦横比の双方を計算に組み入れる場合に比べて計算時間を短縮することができる。積載高さ予測部22は、歩留まり率を計算に組み入れなくても曲がり量を高い精度で予測することができることから、計算時間を短縮でき、かつ積載高さを正確に予測することができる。
【0099】
次に、積載高さ予測部22によって計算された積載高さの予測値の例について説明する。ここでは、積載高さの予測に使用される情報の例と、当該情報を基に計算された積載高さの予測値の例とについて説明する。
【0100】
図9は、実施の形態1に係る加工プログラム管理装置2の積載高さ予測部22による積載高さの予測に使用される情報の例を示す図である。図9には、プログラム番号が「1」から「5」である5つの加工プログラムについて、各加工プログラムに含まれている素材情報と加工情報との例を示す。5つの加工プログラムは、プログラム番号の昇順に実行されるものとする。
【0101】
図9によると、例えば、プログラム番号「1」の加工プログラムには、素材情報として、材質「SPCC」、厚さ「5mm」、長さ「750mm」、幅「1500mm」、および比重「6.8g/cm3」の各情報が含まれている。プログラム番号「1」の加工プログラムには、加工情報として、歩留まり率「0.8」の情報が含まれている。図9によると、プログラム番号「4」の加工プログラムには、素材情報として、材質「AL」、厚さ「3mm」、長さ「750mm」、幅「1500mm」、および比重「2.7g/cm3」の各情報が含まれている。プログラム番号「4」の加工プログラムには、加工情報として、歩留まり率「0.8」の情報が含まれている。
【0102】
図10は、実施の形態1に係る加工プログラム管理装置2の積載高さ予測部22によって計算された積載高さの予測値の例を示す図である。図10には、プログラム番号が「1」から「5」である5つの加工プログラムについて、各加工プログラムの実行による加工後の端材が積載された場合における積載高さの予測値の例を示す。
【0103】
図10において、「積載高さ(mm)」の列のうち「歩留まり率および縦横比」の列に記載されている値は、歩留まり率および縦横比の双方を組み入れた計算によって得られた予測値である。「積載高さ(mm)」の列のうち「歩留まり率」の列に記載されている値は、歩留まり率および縦横比のうち歩留まり率のみを組み入れた計算によって得られた予測値である。「積載高さ(mm)」の列のうち「縦横比」の列に記載されている値は、歩留まり率および縦横比のうち縦横比のみを組み入れた計算によって得られた予測値である。「積載高さ(mm)」の列のうち「厚さ」の列に記載されている値は、歩留まり率と縦横比とがいずれも計算に組み入れられない場合における予測値である。歩留まり率と縦横比とがいずれも計算に組み入れられない場合における積載高さの予測値とは、図9に示す素材の厚さを合計したものである。
【0104】
図10には、参考として、5つの加工プログラムについて計算された縦横比の値を示す。縦横比の値は、図9に示す長さおよび幅の各情報に基づいて計算される。また、図10には、5つの加工プログラムについて積載重量予測部29によって計算された重量の値の例を示す。重量の値は、図9に示す厚さ、長さ、幅、および比重の各情報に基づいて計算される。
【0105】
図10によると、例えば、プログラム番号「5」の加工プログラムについて計算される縦横比および重量の各値は、「1.0」および「12.2kg」である。プログラム番号「5」の加工プログラムについて、歩留まり率と縦横比とがいずれも計算に組み入れられない場合における積載高さの予測値は、「26.0mm」である。プログラム番号「5」の加工プログラムについて、歩留まり率および縦横比のうち歩留まり率のみを計算に組み入れた場合における積載高さの予測値は、「40.4mm」である。プログラム番号「5」の加工プログラムについて、歩留まり率および縦横比のうち縦横比のみを計算に組み入れた場合における積載高さの予測値は、「40.3mm」である。プログラム番号「5」の加工プログラムについて、歩留まり率および縦横比の双方を計算に組み入れた場合における積載高さの予測値は、「54.7mm」である。このように、歩留まり率および縦横比の各々を計算に組み入れるか否かによって、積載高さの予測値は異なってくる。
【0106】
ここで、積載高さの上限が30.0mmであるとする。歩留まり率と縦横比とがいずれも計算に組み入れられない場合、プログラム番号「5」の加工プログラムが実行されたときにおける積載高さの予測値は、「26.0mm」である。すなわち、プログラム番号「5」の加工プログラムが実行されたときにおける積載高さの予測値は、積載高さの上限よりも小さい。このように、歩留まり率と縦横比とがいずれも計算に組み入れられない場合、プログラム番号「5」の加工プログラムが実行されたときに、積載高さは上限に到達しないと予測される。
【0107】
歩留まり率および縦横比のうち歩留まり率のみが計算に組み入れられる場合、プログラム番号「4」の加工プログラムが実行されたときにおける積載高さの予測値は、「32.1mm」である。すなわち、プログラム番号「4」の加工プログラムが実行されたときに、積載高さの予測値は上限よりも大きくなる。このように、歩留まり率および縦横比のうち歩留まり率のみが計算に組み入れられる場合、プログラム番号「4」の加工プログラムが実行されたときに、積載高さは上限に到達すると予測される。
【0108】
歩留まり率および縦横比のうち縦横比のみが計算に組み入れられる場合、プログラム番号「4」の加工プログラムが実行されたときにおける積載高さの予測値は、「32.8mm」である。すなわち、プログラム番号「4」の加工プログラムが実行されたときに、積載高さの予測値は上限よりも大きくなる。このように、歩留まり率および縦横比のうち縦横比のみが計算に組み入れられる場合、プログラム番号「4」の加工プログラムが実行されたときに、積載高さは上限に到達すると予測される。
【0109】
歩留まり率および縦横比の双方が計算に組み入れられる場合、プログラム番号「3」のプログラム番号の加工プログラムが実行されたときにおける積載高さの予測値は、「33.6mm」である。すなわち、プログラム番号「3」の加工プログラムが実行されたときに、積載高さの予測値は上限よりも大きくなる。このように、歩留まり率および縦横比の双方が計算に組み入れられる場合、プログラム番号「3」の加工プログラムが実行されたときに、積載高さは上限に到達すると予測される。
【0110】
このように、歩留まり率および縦横比の各々を計算に組み入れるか否かによって、複数の加工プログラムのうちいずれの加工プログラムが実行されたときに積載高さが上限に到達するかを予測した結果は異なってくる。加工プログラム管理装置2は、積載高さの予測値の計算に歩留まり率または縦横比を組み入れることによって、歩留まり率と縦横比とがいずれも計算に組み入れられない場合と比べて、積載高さが上限に到達するときの加工プログラムを正確に予測することができる。加工プログラム管理装置2は、積載高さの予測値の計算に歩留まり率と縦横比との双方を組み入れることによって、積載高さが上限に到達するときの加工プログラムをさらに正確に予測することができる。
【0111】
なお、上記では、加工プログラム管理装置2は、積載高さの予測により、端材が満載となるときの加工プログラムを特定する動作と、積載重量の予測により、端材が満載となるときの加工プログラムを特定する動作との一方を選択可能であるものとした。加工プログラム管理装置2は、少なくとも、積載高さの予測により、端材が満載となるときの加工プログラムを特定するものであれば良い。すなわち、加工プログラム管理装置2は、積載重量の予測により、端材が満載となるときの加工プログラムを特定する動作を行わないものであっても良い。加工プログラム管理装置2は、積載重量予測部29が省略されても良い。
【0112】
次に、データ保持部27によって保持される実績データについて説明する。データ保持部27は、積載高さ予測部22による計算に使用されたデータと、積載高さ予測部22による計算によって得られたデータとを保持する。積載高さ予測部22による計算に使用されたデータには、素材情報である、素材の長さ、素材の幅、素材の厚さ、および素材の材質の各情報と、加工情報である、歩留まり率の情報とが含まれる。積載高さ予測部22による計算によって得られたデータには、縦横比、第1の調整係数、第2の調整係数、曲がり量、および積載高さの予測値の各情報が含まれる。
【0113】
次に、調整係数補正部28によって調整係数を補正する方法について説明する。調整係数補正部28は、予測された積載高さと実際の積載高さとの誤差に基づいて調整係数を補正する。ここでは、調整係数とは、第1の調整係数と第2の調整係数との各々であるものとする。
【0114】
図11は、実施の形態1において調整係数を補正する際における板材加工システム1の動作手順の例を示すフローチャートである。
【0115】
ステップS30において、加工プログラム管理装置2は、積載高さ予測部22による積載高さの予測によって、端材が満載となるときの加工プログラムを特定する。加工プログラム管理装置2は、上記のステップS3からステップS15により、加工プログラムを特定する。
【0116】
ステップS31において、NC装置4は、加工プログラムを実行する。板材加工機3は、NC装置4が加工プログラムを実行することにより、加工部5による板材の加工を行う。加工後の端材は、積載装置9において積載される。高さセンサ15は、積載高さが高さセンサ15の位置、すなわち積載高さの上限に到達したか否かを検出する。
【0117】
ステップS32において、積載装置9は、積載高さが上限に到達したか否かを判断する。積載高さが上限に到達した場合(ステップS32,Yes)、板材加工システム1は、ステップS33へ手順を進める。一方、積載高さが上限に到達していない場合(ステップS32,No)、板材加工システム1は、ステップS31へ手順を戻す。板材加工システム1は、NC装置4により次の加工プログラムを実行する。
【0118】
積載装置9は、積載高さが上限に到達したときに、積載高さが上限に到達したことを示す情報を加工プログラム管理装置2へ出力する。ステップS33において、特定部30は、端材が満載となったときの加工プログラムを特定する。特定部30は、端材が満載となったときの加工プログラムを示す情報を調整係数補正部28へ送る。また、調整係数補正部28は、ステップS30において積載高さの予測値に基づいて特定された加工プログラムを示す情報を特定部30から取得する。
【0119】
ステップS34において、調整係数補正部28は、ステップS33において特定された加工プログラムである、端材が満載となったときの加工プログラムが、ステップS30において積載高さの予測値に基づいて特定された加工プログラムと同じであるか否かを判断する。端材が満載となったときの加工プログラムが、積載高さの予測値に基づいて特定された加工プログラムと同じである場合(ステップS34,Yes)、板材加工システム1は、図11に示す手順による動作を終了する。この場合、板材加工システム1は、調整係数補正部28による調整係数の補正を行わない。一方、端材が満載となったときの加工プログラムが、積載高さの予測値に基づいて特定された加工プログラムとは異なる場合(ステップS34,No)、板材加工システム1は、ステップS35へ手順を進める。
【0120】
ステップS35において、調整係数補正部28は、端材が満載となったときの加工プログラムについての積載高さの予測値をデータ保持部27から読み出す。
【0121】
ステップS36において、調整係数補正部28は、積載高さの上限の値である上限値と、ステップS35において読み出された積載高さの予測値との誤差を求める。調整係数補正部28は、積載高さの上限値からステップS35において読み出された予測値を差し引く計算によって、当該誤差を求める。
【0122】
ステップS37において、調整係数補正部28は、ステップS35において読み出された予測値である、積載高さの予測値の計算に用いられた調整係数をデータ保持部27から読み出す。調整係数補正部28は、加工順に実行される一連の加工プログラムの各々について、積載高さの予測値の計算に用いられた調整係数を読み出す。
【0123】
ステップS38において、調整係数補正部28は、ステップS37において読み出された各調整係数の補正に使用する補正係数を求める。調整係数補正部28は、ステップS36において求められた誤差がプラスの値である場合、次の式(4)により、補正係数を求める。調整係数補正部28は、ステップS36において求められた誤差がマイナスの値である場合、次の式(5)により、補正係数を求める。
K=CO×N ・・・(4)
K=-CO×N ・・・(5)
【0124】
なお、式(4)および式(5)において、Kは補正係数、COは補正単位、Nは補正度数を表す。補正単位は、あらかじめ定義された最小の補正量であって、例えば0.1といった値である。補正度数は、補正の度合いを表す整数である。補正度数の初期値は1とする。
【0125】
ステップS39において、調整係数補正部28は、ステップS38において求めた補正係数を用いて調整係数を補正する。調整係数補正部28は、各調整係数に、ステップS38において求めた補正係数を加算することによって、各調整係数を補正する。なお、後述するように、補正後の補正係数は、ステップS39以降の手順により決定される。ステップS39における各調整係数の補正は、仮の補正と位置付けられる。以下、ステップS39による補正後の各調整係数を、仮の調整係数と称する。
【0126】
ステップS40において、調整係数補正部28は、仮の調整係数を用いて積載高さの予測値を再計算する。調整係数補正部28は、積載高さの予測値の計算に用いられた調整係数を仮の調整係数に置き換えて、積載高さの予測値に基づいて特定された加工プログラムについての積載高さの予測値を計算し直す。
【0127】
ステップS41において、調整係数補正部28は、ステップS40において再計算された予測値と積載高さの上限値との差分は許容範囲内であるか否かを判断する。許容範囲としては、例えば、「-1.0mmから+1.0mmまで」といった範囲があらかじめ設定される。
【0128】
再計算された予測値と積載高さの上限値との差分が許容範囲内ではない場合(ステップS41,No)、ステップS42において、調整係数補正部28は、補正度数を上げる。調整係数補正部28は、ステップS39において仮の調整係数を求める際に使用された補正係数の補正度数に1を加算することによって、補正度数を上げる。そして、板材加工システム1は、ステップS38へ手順を戻す。板材加工システム1は、再計算された予測値と積載高さの上限値との差分が許容範囲内となるまで、ステップS38からステップS42を繰り返す。一方、再計算された予測値と積載高さの上限値との差分が許容範囲内である場合(ステップS41,Yes)、板材加工システム1は、ステップS43へ手順を進める。
【0129】
ステップS43において、調整係数補正部28は、過去に使用された調整係数の値をデータ保持部27から読み出す。ここでは、積載高さの予測値に基づいて特定された加工プログラムに示される素材の厚さおよび素材の材質に対応付けられた調整係数として過去に使用された値が読み出される。
【0130】
ステップS44において、調整係数補正部28は、ステップS40における再計算に使用された調整係数と、ステップS43において読み出された調整係数との平均を求めることによって、補正後の調整係数を決定する。調整係数補正部28は、決定された補正後の調整係数をデータ保持部27に保存する。以上により、板材加工システム1は、図11に示す手順による動作を終了する。
【0131】
次に、調整係数補正部28による調整係数の補正の例について説明する。ここでは、図10において、「積載高さ(mm)」の列のうち「歩留まり率および縦横比」の列に記載されるように、歩留まり率および縦横比の双方を組み入れた計算によって積載高さの予測値が計算されたものとする。当該予測値が計算された際には、図8に示す第1の調整係数および第2の調整係数が使用されたものとする。積載高さの予測には、図9に示す情報が使用されたものとする。
【0132】
図10に示す例では、歩留まり率および縦横比の双方が計算に組み入れられる場合、プログラム番号「3」の加工プログラムが実行されたときに、積載高さは上限に到達すると予測される。ここでは、かかる予測に対して、実際には、プログラム番号「2」の加工プログラムが実行されたときに、積載高さの実測値が、積載高さの上限である30.0mmを超えたものとする。
【0133】
調整係数補正部28は、端材が満載となったときの加工プログラムのプログラム番号「2」を特定部30から取得する。また、調整係数補正部28は、積載高さの予測値に基づいて特定された加工プログラムのプログラム番号「3」を特定部30から取得する。調整係数補正部28は、端材が満載となったときの加工プログラムが、積載高さの予測値に基づいて特定された加工プログラムとは異なると判断する。
【0134】
調整係数補正部28は、プログラム番号「2」の加工プログラムについての積載高さの予測値である「21.6mm」をデータ保持部27から読み出す。調整係数補正部28は、積載高さの上限値である30.0mmと、読み出された予測値である「21.6mm」との誤差を計算する。誤差は、30.0mm-21.6mm=8.4mmと求まる。
【0135】
ここで説明する例において、積載高さが上限を超えるまでに実行された加工プログラムは、プログラム番号「1」の加工プログラム、およびプログラム番号「2」の加工プログラムである。かかる各加工プログラムは、図9に示すように、材質「SPCC」および厚さ「5mm」の素材についての加工プログラムである。調整係数補正部28は、材質「SPCC」および厚さ「5mm」に対応付けられている第1の調整係数および第2の調整係数をデータ保持部27から読み出す。図8において、材質「SPCC」および厚さ「5mm」に対応付けられている第1の調整係数および第2の調整係数は、それぞれ「0.8」および「0.4」である。調整係数補正部28は、第1の調整係数である「0.8」、および第2の調整係数である「0.4」をデータ保持部27から読み出す。
【0136】
ここで、調整係数の補正における補正単位は0.1とする。また、再計算された予測値と積載高さの上限値との差分の許容範囲は「-1.0mmから+1.0mmまで」とする。計算された誤差である「8.4mm」はプラスの値であることから、調整係数補正部28は、上記式(4)により補正係数を求める。調整係数を補正するための処理が開始されてから最初に補正係数を求める際における補正度数には、初期値である「1」が設定される。この場合において求まる補正係数は、「0.1」である。よって、調整係数補正部28は、第1の調整係数である「0.8」、および第2の調整係数である「0.4」の各々に「0.1」を加算することによって、仮の第1の調整係数と仮の第2の調整係数とを求める。
【0137】
調整係数補正部28は、仮の第1の調整係数と仮の第2の調整係数とを用いて、プログラム番号「2」の加工プログラムについての積載高さの予測値を再計算する。調整係数補正部28は、再計算された予測値と積載高さの上限値との差分が「-1.0mmから+1.0mmまで」の範囲内であるか否かを判断する。差分が「-1.0mmから+1.0mmまで」の範囲内ではない場合、調整係数補正部28は、補正度数に1を加算して、仮の第1の調整係数と仮の第2の調整係数とを再計算する。また、調整係数補正部28は、積載高さの予測値の再計算をやり直す。
【0138】
図12は、実施の形態1に係る加工プログラム管理装置2の調整係数補正部28によって積載高さの予測値を再計算する際に使用される第1の調整係数および第2の調整係数の例を示す図である。図12において、材質「SPCC」および厚さ「5mm」に対応付けられている第1の調整係数「1.2」および第2の調整係数「0.8」は、それぞれ、仮の第1の調整係数および仮の第2の調整係数とする。仮の第1の調整係数「1.2」および仮の第2の調整係数「0.8」は、補正度数が「4」であるときに求まる仮の調整係数である。図12において、かかる仮の第1の調整係数以外の3つの第1の調整係数と、かかる仮の第2の調整係数以外の3つの第2の調整係数とは、図8に示す場合と同じである。
【0139】
図13は、実施の形態1に係る加工プログラム管理装置2の調整係数補正部28によって再計算された積載高さの予測値の例を示す図である。ここでは、プログラム番号「1」および「2」の各加工プログラムについて、図12に示す仮の第1の調整係数「1.2」および仮の第2の調整係数「0.8」を用いて再計算された積載高さの予測値の例を示す。この場合において、プログラム番号「2」の加工プログラムについての積載高さの予測値が「30.4mm」となる。このとき、再計算された予測値と積載高さの上限値との差分が「-1.0mmから+1.0mmまで」の範囲内となる。
【0140】
続いて、調整係数補正部28は、調整係数として過去に使用された値をデータ保持部27から読み出す。ここでは、調整係数補正部28は、プログラム番号「2」の加工プログラムに示される、材質「SPCC」および厚さ「5mm」に対応付けられている調整係数として過去に使用された値を読み出す。調整係数補正部28は、再計算に使用された調整係数と、過去に使用された調整係数との平均を求めることによって、補正後の調整係数を決定する。
【0141】
図14は、実施の形態1に係る加工プログラム管理装置2の調整係数補正部28により補正後の調整係数を決定する例について説明するための図である。図14には、材質「SPCC」および厚さ「5mm」に対応付けられている調整係数の例を示す。ここでは、材質「SPCC」および厚さ「5mm」に対応付けられている調整係数の補正が過去に1度行われたものとする。
【0142】
図14に示す「仮の調整係数」の行は、再計算された予測値と積載高さの上限値との差分が許容範囲内となったときの、仮の第1の調整係数の値と仮の第2の調整係数の値とを示す。図14に示す「現在の調整係数」の行は、現在使用されている第1の調整係数の値と第2の調整係数の値とを示す。現在使用されている第1の調整係数の値とは、第1の調整係数保持部25に保持されている第1の調整係数の値である。現在使用されている第2の調整係数の値とは、第2の調整係数保持部26に保持されている第2の調整係数の値である。
【0143】
図14に示す「前期の調整係数」の行は、「現在の調整係数」へ補正される前に使用されていた第1の調整係数の値と、「現在の調整係数」へ補正される前に使用されていた第2の調整係数の値とを示す。すなわち、過去に、調整係数補正部28により、「前期の調整係数」である第1の調整係数および第2の調整係数の各値が、「現在の調整係数」である第1の調整係数および第2の調整係数の各値へ補正されたことを示す。
【0144】
図14に示す「補正後の調整係数」の行は、「仮の調整係数」、「現在の調整係数」、および「前期の調整係数」の各値に基づいて調整係数補正部28により決定された、補正後の第1の調整係数および第2の調整係数の各値を示す。
【0145】
調整係数補正部28は、「前期の調整係数」である第1の調整係数および第2の調整係数の各値をデータ保持部27から読み出す。調整係数補正部28は、「仮の調整係数」である第1の調整係数の値「1.2」と、「現在の調整係数」である第1の調整係数の値「0.8」と、「前期の調整係数」である第1の調整係数の値「0.7」との平均を計算する。「補正後の調整係数」である第1の調整係数の値「0.9」は、かかる平均を求めた結果である。調整係数補正部28は、「仮の調整係数」である第2の調整係数の値「0.8」と、「現在の調整係数」である第2の調整係数の値「0.4」と、「前期の調整係数」である第2の調整係数の値「0.3」との平均を計算する。「補正後の調整係数」である第2の調整係数の値「0.5」は、かかる平均を求めた結果である。
【0146】
なお、調整係数を補正する方法は上記の方法に限られないものとする。上記では、調整係数に補正係数を加算することによって、仮の調整係数を求めることとしたが、例えば、調整係数に補正係数を乗算することによって、仮の調整係数を求めることとしても良い。
【0147】
加工プログラム管理装置2は、積載高さが上限に到達するときの加工プログラムの予測が実際とは異なっている場合に、調整係数を補正することによって調整係数を徐々に最適化させ、誤差を低減させることができる。加工プログラム管理装置2は、端材が満載となるときの加工プログラムを高い精度で予測することが可能となる。
【0148】
次に、加工プログラム管理装置2を実現するハードウェアについて説明する。加工プログラム管理装置2は、処理回路の使用により実現される。処理回路は、プロセッサがソフトウェアを実行する回路であっても良く、専用の回路であっても良い。
【0149】
処理回路がソフトウェアにより実現される場合、処理回路は、例えば、図15に示す制御回路である。図15は、実施の形態1に係る制御回路40の構成例を示す図である。制御回路40は、入力部41、プロセッサ42、メモリ43、および出力部44を備える。入力部41は、制御回路40の外部からのデータを受信してプロセッサ42に与えるインターフェース回路である。出力部44は、プロセッサ42またはメモリ43からのデータを制御回路40の外部へ送るインターフェース回路である。
【0150】
処理回路が、図15に示す制御回路40である場合、加工プログラム管理装置2の処理部である、スケジューリング部21、積載高さ予測部22、第1の調整部23、第2の調整部24、調整係数補正部28、積載重量予測部29、および特定部30は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ43に格納される。処理回路は、メモリ43に記憶されたプログラムをプロセッサ42が読み出して実行することにより、加工プログラム管理装置2の処理部を実現する。すなわち、処理回路は、加工プログラム管理装置2の処理が結果的に実行されることになるプログラムである加工プログラム管理プログラムを格納するためのメモリ43を備える。加工プログラム管理プログラムは、加工プログラム管理装置2の手順および方法をコンピュータに実行させるプログラムであるものともいえる。また、第1の調整係数保持部25、第2の調整係数保持部26、およびデータ保持部27は、メモリ43の使用により実現される。メモリ43は、プロセッサ42が各種処理を実行する際の一時メモリにも使用される。
【0151】
プロセッサ42は、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ42は、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、またはDSP(Digital Signal Processor)でも良い。メモリ43は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクまたはDVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。
【0152】
処理回路が専用の回路である場合、加工プログラム管理装置2は、例えば、図16に示すハードウェア回路により実現される。図16は、実施の形態1に係るハードウェア回路45の構成例を示す図である。
【0153】
加工プログラム管理装置2の処理部である、スケジューリング部21、積載高さ予測部22、第1の調整部23、第2の調整部24、調整係数補正部28、積載重量予測部29、および特定部30は、専用の回路である処理回路46により実現される。処理回路46は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせた回路である。加工プログラム管理装置2の処理部を機能別に処理回路46で実現しても良いし、各機能をまとめて処理回路46で実現しても良い。なお、加工プログラム管理装置2の処理部は、図15に示す制御回路40と図16に示す処理回路46とが組み合わされて実現されても良い。
【0154】
実施の形態1に係る加工プログラム管理プログラムは、CD(Compact Disc)-ROM、DVD-ROMなどの記録媒体に格納されて提供されても良い。実施の形態1に係る加工プログラム管理プログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータに格納され、インターネットなどのネットワークを経由してダウンロードさせることにより提供されても良い。実施の形態1に係る加工プログラム管理プログラムは、インターネットなどのネットワークを経由して提供または配布されても良い。
【0155】
板材加工システム1の各構成要素は、物理的に図示のとおりに構成されていることを要しない。各構成要素の分散および統合の具体的形態は図示のものに限られない。各構成要素は、任意の単位で機能的または物理的に分散して構成されても良く、統合して構成されても良い。例として、加工プログラム管理装置2の機能は、NC装置4により実現されても良い。すなわち、加工プログラム管理装置2の各構成要素がNC装置4に備えられることによって、加工プログラム管理装置2がNC装置4に統合されても良い。
【0156】
実施の形態1によると、加工プログラム管理装置2は、複数の板材の各々の加工制御において実行される加工プログラムを読み込み、複数の板材の加工順に複数の加工プログラムを送り出すスケジューリングを実行するスケジューリング部21と、加工後の板材の曲がり量を加工プログラムに基づいて予測し、曲がり量の予測値を組み入れた計算によって、加工後の板材が積載されたときにおける積載物全体の高さである積載高さを予測する積載高さ予測部22と、複数の加工プログラムのうちいずれの加工プログラムが実行されたときに積載高さが積載可能な高さの上限に到達するかを、積載高さの予測結果に基づいて特定する特定部30と、を備える。加工プログラム管理装置2は、加工後の板材の曲がり量を予測して、積載高さを予測する計算に曲がり量の予測値が組み入れられることによって、積載高さが上限に到達するときの加工プログラムを正確に予測することができる。これにより、加工プログラム管理装置2は、加工後の板材が満載となるときを正確に予測することができる。
【0157】
板材加工システム1は、加工後の板材が満載となるときを正確に予測できることで、加工後の板材が満載となったときに必要となる作業である板材の取出し作業等の準備を適切なタイミングで行うことができる。板材加工システム1は、加工後の板材が満載となったときに必要となる作業を円滑に行うことができる。板材加工システム1は、板材の取出し作業等のために、板材の加工から加工後の板材の積載までの動作を停止させる時間を短縮可能とし、加工の停滞を低減できる。
【0158】
また、積載高さ予測部22は、加工前の板材のうち加工品に使用される部分の割合である歩留まり率に基づいて曲がり量の予測値を計算する。加工後の板材の曲がり量は歩留まり率によって変わることから、積載高さ予測部22は、歩留まり率に基づいて曲がり量の予測値を計算することで、積載高さを正確に予測することができる。
【0159】
また、積載高さ予測部22は、歩留まり率に基づいて求まる曲がり量の値を、板材の厚みと板材の材質との少なくとも一方に対応付けられている調整係数を用いて調整することによって、曲がり量の予測値を計算する。積載高さ予測部22は、板材の厚みと板材の材質とに応じた調整係数を用いて曲がり量の値を調整することで、曲がり量の正確な予測値を得ることができる。
【0160】
また、積載高さ予測部22は、加工前の板材の外形の縦横比に基づいて曲がり量の予測値を計算する。加工後の板材の曲がり量は縦横比によって変わることから、積載高さ予測部22は、縦横比に基づいて曲がり量の予測値を計算することで、積載高さを正確に予測することができる。
【0161】
また、積載高さ予測部22は、縦横比に基づいて求まる曲がり量の値を、板材の厚みと板材の材質との少なくとも一方に対応付けられている調整係数を用いて調整することによって、曲がり量の予測値を計算する。積載高さ予測部22は、板材の厚みと板材の材質とに応じた調整係数を用いて曲がり量の値を調整することで、曲がり量の正確な予測値を得ることができる。
【0162】
また、加工プログラム管理装置2は、予測された積載高さと実際の積載高さとの誤差に基づいて調整係数を補正する調整係数補正部28を備える。加工プログラム管理装置2は、積載高さが上限に到達するときの加工プログラムの予測が実際とは異なっている場合に、調整係数を補正することによって、誤差を低減させることができる。加工プログラム管理装置2は、加工後の板材が満載となるときを高い精度で予測することが可能となる。
【0163】
また、加工プログラム管理装置2は、加工後の板材が積載されたときにおける積載物全体の重量である積載重量を予測する積載重量予測部29を備える。特定部30は、複数の加工プログラムのうちいずれの加工プログラムが実行されたときに積載重量が積載可能な重量の上限に到達するかを、積載重量の予測結果に基づいて特定する。加工プログラム管理装置2は、加工後の板材が満載となるときの加工プログラムを、積載高さの予測と積載重量の予測との一方により特定することができる。加工プログラム管理装置2は、積載高さが上限に到達するよりも前に積載重量が上限に到達する可能性が高いといった事情がある場合に、加工後の板材が満載となるときの加工プログラムを積載重量の予測により特定することができる。この場合、加工プログラム管理装置2は、積載高さを予測する計算を省略できることで計算時間を短縮可能とし、かつ、加工後の板材が満載となるときの加工プログラムを特定することができる。
【0164】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。実施の形態の構成は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。
【符号の説明】
【0165】
1 板材加工システム、2 加工プログラム管理装置、3 板材加工機、4 NC装置、5 加工部、6 供給装置、7 仕分装置、8 フォーク装置、8A,8B フォーク、9 積載装置、11,11A,11B,14,14A,14B 金属板、12 加工パレット、13A,13B 金属片、15 高さセンサ、21 スケジューリング部、22 積載高さ予測部、23 第1の調整部、24 第2の調整部、25 第1の調整係数保持部、26 第2の調整係数保持部、27 データ保持部、28 調整係数補正部、29 積載重量予測部、30 特定部、40 制御回路、41 入力部、42 プロセッサ、43 メモリ、44 出力部、45 ハードウェア回路、46 処理回路。
【要約】
加工プログラム管理装置(2)は、複数の板材の各々の加工制御において実行される加工プログラムを読み込み、複数の板材の加工順に複数の加工プログラムを送り出すスケジューリングを実行するスケジューリング部(21)と、加工後の板材の曲がり量を加工プログラムに基づいて予測し、曲がり量の予測値を組み入れた計算によって、加工後の板材が積載されたときにおける積載物全体の高さである積載高さを予測する積載高さ予測部(22)と、複数の加工プログラムのうちいずれの加工プログラムが実行されたときに積載高さが積載可能な高さの上限に到達するかを、積載高さの予測結果に基づいて特定する特定部(30)と、を備える。
図1
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