(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】車載端末、基地局、無線通信システム、制御回路、記憶媒体および中継局選択方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20241213BHJP
H04B 7/26 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
G08G1/09 F
H04B7/26
(21)【出願番号】P 2024558451
(86)(22)【出願日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2023003403
【審査請求日】2024-10-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】落合 麻里
(72)【発明者】
【氏名】梅田 周作
(72)【発明者】
【氏名】秋山 祐治
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-131361(JP,A)
【文献】特開2009-152700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され複数パスによって複数の基地局と無線通信を行う車載端末であって、
前記車両の周辺に存在して車車間通信が可能な周辺車両との通信を制御する車車間通信制御部と、
前記車車間通信で取得された、前記周辺車両の位置情報、および前記車車間通信の通信状態の情報を含む周辺車両情報を管理する周辺車両情報管理部と、
直接通信で接続する前記基地局である第1の基地局に対して、直接通信で接続できなかった前記基地局である第2の基地局の情報を提供し、前記第2の基地局に接続している前記周辺車両の情報である接続端末情報の提供を依頼する制御を行う基地局通信制御部と、
前記第1の基地局から取得した前記接続端末情報を保持し、前記周辺車両情報および前記接続端末情報に基づいて、前記第2の基地局との間接通信を中継する前記周辺車両である中継局を選択する中継管理部と、
前記第1の基地局および前記第2の基地局との接続を管理し、前記第2の基地局と直接通信で接続できなかったときに前記中継管理部に対して前記第2の基地局との間接通信を指示する冗長系管理部と、
を備えることを特徴とする車載端末。
【請求項2】
前記周辺車両には、前記車両が走行する道路の路側に設置された路側装置が含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車載端末。
【請求項3】
前記接続端末情報には、前記第2の基地局に接続している前記周辺車両の位置情報が含まれ、
前記中継管理部は、前記接続端末情報に基づいて前記第2の基地局の通信エリアを算出し、さらに前記第2の基地局の通信エリアを用いて前記中継局を選択する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の車載端末。
【請求項4】
前記中継管理部は、前記周辺車両が前記第2の基地局の通信エリアの外部に出るまでの時間である中継可能時間を推定し、さらに前記中継可能時間を用いて前記中継局を選択する、
ことを特徴とする請求項3に記載の車載端末。
【請求項5】
前記冗長系管理部は、前記車両が前記第2の基地局の通信エリアに到達した場合、前記基地局通信制御部を制御して、前記第2の基地局との直接通信を試みる、
ことを特徴とする請求項
3に記載の車載端末。
【請求項6】
前記中継管理部は、前記第1の基地局から取得した前記中継局の候補となる前記周辺車両の情報である中継局候補情報を保持し、さらに前記中継局候補情報を用いて前記中継局を選択する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の車載端末。
【請求項7】
前記周辺車両情報管理部は、前記車車間通信で取得された、前記周辺車両の位置情報、前記車車間通信の通信状態の情報、および前記周辺車両が接続している前記第2の基地局の情報を含む前記周辺車両情報を管理し、
前記中継管理部は、前記周辺車両情報に基づいて、直接接続で接続できなかった前記第2の基地局との間接接続を中継する前記中継局を選択する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の車載端末。
【請求項8】
車載端末を搭載した車両が複数パスによって複数の基地局と無線通信を行う無線通信システムにおける前記基地局であって、
前記無線通信を行っている前記車両の識別情報を取得して接続端末情報として保持する接続端末情報取得部と、
前記車両との無線通信および他の基地局との通信を制御し、前記他の基地局から要求があった場合、前記接続端末情報を前記他の基地局に提供する制御を行う通信制御部と、
前記無線通信を行っている前記車両の位置情報を取得して保持する端末位置情報取得部と、
前記車両である第1の車両の位置情報を含む前記接続端末情報に基づいて、無線通信によって前記他の基地局に直接接続する第2の車両が前記基地局との間接通信の際に使用する中継局の候補となる前記第1の車両を選択する中継局候補選択部
と、
を備え
前記通信制御部は、前記他の基地局から要求があった場合、
前記車両の位置情報を前記接続端末情報に含めて前記接続端末情報を前記他の基地局に提供する制御を行い、前記中継局の候補の情報を前記他の基地局に提供する制御を行う、
ことを特徴とす
る基地局。
【請求項9】
請求項1または2に記載の車載端末と、
前記車載端末を搭載した車両が複数パスによって複数の基地局と無線通信を行う無線通信システムにおける前記基地局であって、前記無線通信を行っている前記車両の識別情報を取得して接続端末情報として保持する接続端末情報取得部と、前記車両との無線通信および他の基地局との通信を制御し、前記他の基地局から要求があった場合、前記接続端末情報を前記他の基地局に提供する制御を行う通信制御部と、を備える前記基地局と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
車両に搭載され複数パスによって複数の基地局と無線通信を行う車載端末を制御するための制御回路であって、
前記車両の周辺に存在して車車間通信が可能な周辺車両との通信を制御、
前記車車間通信で取得された、前記周辺車両の位置情報、および前記車車間通信の通信状態の情報を含む周辺車両情報を管理、
直接通信で接続する前記基地局である第1の基地局に対して、直接通信で接続できなかった前記基地局である第2の基地局の情報を提供し、前記第2の基地局に接続している前記周辺車両の情報である接続端末情報の提供を依頼する制御、
前記第1の基地局から取得した前記接続端末情報を保持し、前記周辺車両情報および前記接続端末情報に基づいて、前記第2の基地局との間接通信を中継する前記周辺車両である中継局を選択、
前記第1の基地局および前記第2の基地局との接続を管理し、前記第2の基地局と直接通信で接続できなかったときに前記第2の基地局との間接通信を指示、
を前記車載端末に実施させることを特徴とする制御回路。
【請求項11】
車両に搭載され複数パスによって複数の基地局と無線通信を行う車載端末を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記プログラムは、
前記車両の周辺に存在して車車間通信が可能な周辺車両との通信を制御、
前記車車間通信で取得された、前記周辺車両の位置情報、および前記車車間通信の通信状態の情報を含む周辺車両情報を管理、
直接通信で接続する前記基地局である第1の基地局に対して、直接通信で接続できなかった前記基地局である第2の基地局の情報を提供し、前記第2の基地局に接続している前記周辺車両の情報である接続端末情報の提供を依頼する制御、
前記第1の基地局から取得した前記接続端末情報を保持し、前記周辺車両情報および前記接続端末情報に基づいて、前記第2の基地局との間接通信を中継する前記周辺車両である中継局を選択、
前記第1の基地局および前記第2の基地局との接続を管理し、前記第2の基地局と直接通信で接続できなかったときに前記第2の基地局との間接通信を指示、
を前記車載端末に実施させることを特徴とする記憶媒体。
【請求項12】
車両に搭載され複数パスによって複数の基地局と無線通信を行う車載端末の中継局選択方法であって、
車車間通信制御部が、前記車両の周辺に存在して車車間通信が可能な周辺車両との通信を制御する第1のステップと、
周辺車両情報管理部が、前記車車間通信で取得された、前記周辺車両の位置情報、および前記車車間通信の通信状態の情報を含む周辺車両情報を管理する第2のステップと、
基地局通信制御部が、直接通信で接続する前記基地局である第1の基地局に対して、直接通信で接続できなかった前記基地局である第2の基地局の情報を提供し、前記第2の基地局に接続している前記周辺車両の情報である接続端末情報の提供を依頼する制御を行う第3のステップと、
中継管理部が、前記第1の基地局から取得した前記接続端末情報を保持し、前記周辺車両情報および前記接続端末情報に基づいて、前記第2の基地局との間接通信を中継する前記周辺車両である中継局を選択する第4のステップと、
冗長系管理部が、前記第1の基地局および前記第2の基地局との接続を管理し、前記第2の基地局と直接通信で接続できなかったときに前記中継管理部に対して前記第2の基地局との間接通信を指示する第5のステップと、
を含むことを特徴とする中継局選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される車載端末、基地局、無線通信システム、制御回路、記憶媒体および中継局選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セルラー網を使った通信は、様々な用途に使用されている。例えば、国際標準化団体である3GPP(登録商標)(3rd Generation Partnership Project)では、セルラー網での通信の信頼度の向上のため、複数パス送信が検討されている。複数パス送信は、複数のパスで同じ情報を伝達することによって、通信の信頼度を向上させることを目的としている。複数のパスについては、基地局と端末との間のダイレクトセッションが基本であるが、ダイレクトセッションが同時に確保できない場合に、1つのダイレクトセッションと、サイドリンク通信を使用した1つのインダイレクトセッションとを用いて、複数のセッションを確保する手法が検討されている。
【0003】
遠隔操作、遠隔監視などの対象となる車両において複数パスによって通信の信頼度の向上を図る場合、インダイレクトセッションの中継局の選択方法が重要である。車車間通信などにおいて移動する端末からの通信の中継についてはこれまでに多くの研究が行われ、中継局の選択方法についても多くの研究が行われている。例えば、特許文献1には、車車間通信における中継器の選択方法として、車車間通信で得られる周辺の車両の位置情報および位置情報の取得時間から車両の進行方向、走行速度などを求め、これらの情報を使って中継器を選択する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によれば、車両に搭載される通信元の車載通信機は、周辺の車両の位置情報などから、通信先の車載通信機への通信を中継できる可能性の高い車載通信機を中継器として選択している。そのため、通信元の車載通信機によって選択された車載通信機が、実際には通信先の車載通信機との間で通信を行うことができず、通信元の車載通信機と通信先の車載通信機との間の通信を中継できない場合がある、という問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、基地局との通信を中継可能な他の車載端末を選択する精度を向上可能な車載端末を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示は、車両に搭載され複数パスによって複数の基地局と無線通信を行う車載端末である。車載端末は、車両の周辺に存在して車車間通信が可能な周辺車両との通信を制御する車車間通信制御部と、車車間通信で取得された、周辺車両の位置情報、および車車間通信の通信状態の情報を含む周辺車両情報を管理する周辺車両情報管理部と、直接通信で接続する基地局である第1の基地局に対して、直接通信で接続できなかった基地局である第2の基地局の情報を提供し、第2の基地局に接続している周辺車両の情報である接続端末情報の提供を依頼する制御を行う基地局通信制御部と、第1の基地局から取得した接続端末情報を保持し、周辺車両情報および接続端末情報に基づいて、第2の基地局との間接通信を中継する周辺車両である中継局を選択する中継管理部と、第1の基地局および第2の基地局との接続を管理し、第2の基地局と直接通信で接続できなかったときに中継管理部に対して第2の基地局との間接通信を指示する冗長系管理部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る車載端末は、基地局との通信を中継可能な他の車載端末を選択する精度を向上可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る無線通信システムの構成例を示す図
【
図2】実施の形態1に係る車載端末の構成例を示すブロック図
【
図3】実施の形態1に係る車載端末の周辺車両情報管理部が管理する周辺車両情報の例を示す図
【
図4】実施の形態1に係る車載端末を搭載する車両が基地局30を介して基地局31の接続端末情報を取得する動作を示すシーケンス図
【
図5】実施の形態1に係る基地局の構成例を示すブロック図
【
図6】実施の形態1に係る車載端末を実現する処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成例を示す図
【
図7】実施の形態1に係る車載端末を実現する処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図
【
図8】実施の形態2に係る車載端末の構成例を示すブロック図
【
図9】実施の形態2に係る基地局の構成例を示すブロック図
【
図10】実施の形態2に係る無線通信システムにおいて車両に搭載される車載端末が中継局を選択する動作の例を示す図
【
図11】実施の形態3に係る基地局の構成例を示すブロック図
【
図12】実施の形態3に係る車載端末を搭載する車両が基地局30bを介して基地局31bの接続端末情報および中継局候補情報を取得する動作を示すシーケンス図
【
図13】実施の形態4に係る車載端末の周辺車両情報管理部が管理する周辺車両情報の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態に係る車載端末、基地局、無線通信システム、制御回路、記憶媒体および中継局選択方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る無線通信システム1の構成例を示す図である。無線通信システム1は、車両10と、車両10の周辺に存在する周辺車両20~22と、基地局30,31と、路側装置70~72と、を備える。
図1に示す無線通信システム1は、車両10が、基地局30,31との間で複数パスによる無線通信を行う場合を想定している。車両10は、基地局30,31と無線通信ができていてダイレクトセッションが複数確保できている場合はインダイレクトセッションが不要であるが、ダイレクトセッションが複数確保できていない場合はインダイレクトセッションを用いる。車両10は、
図1に示すように、基地局30との間はダイレクトセッションが確立できているが、基地局31との間はダイレクトセッションが確立できていない状況である。そのため、車両10は、基地局31との間のインダイレクトセッションを確立するため、周辺車両20~22から、車両10と基地局31との間の通信を中継する中継局を選択する。これにより、車両10は、1つのダイレクトセッションおよび1つのインダイレクトセッションによって、冗長回線を確保して高信頼通信を行うことができる。
【0012】
以降の説明において、周辺車両20~22を区別しない場合は単に周辺車両と称し、基地局30,31を区別しない場合は単に基地局と称し、路側装置70~72を区別しない場合は単に路側装置と称することがある。また、以降の説明において、ダイレクトセッションのことを直接接続と称し、インダイレクトセッションのことを間接接続と称することがある。無線通信システム1は、
図1の例では、3つの周辺車両、2つの基地局、および3つの路側装置を備えているが、4つ以上の周辺車両、3つ以上の基地局、および4つ以上の路側装置を備えていてもよい。
図1では、無線通信システム1の例として、車両10の進行方向に対して前方に存在する周辺車両20~22のみを示しているが、車両10は、基地局31とのインダイレクトセッションでの中継局として、車両10の進行方向に対して後方に存在する図示しない周辺車両を選択することも可能である。また、車両10は、基地局31とのインダイレクトセッションでの中継局として、車両10が走行する道路沿いに設置された路側装置を選択することも可能である。以降の実施の形態についても同様とする。
【0013】
実施の形態1において、車両10および周辺車両20~22は、車載端末11を備える。
図1の例では、車両10および周辺車両20~22が同一種類の車載端末11を備えているが、後述するような動作が可能であれば、車両10および周辺車両20~22に搭載される車載端末11は、車両10および周辺車両20~22の製造会社、車種などによって構成、機能などが一部異なっていてもよい。以降では、
図1に示すように、車両10および周辺車両20~22が同一種類の車載端末11を備える場合について説明する。
【0014】
車載端末11の構成および動作について説明する。
図2は、実施の形態1に係る車載端末11の構成例を示すブロック図である。車載端末11は、V2X(Vehicle to Everything)通信部40と、V2X通信制御部41と、周辺車両情報管理部42と、V2N(Vehicle to Network)通信部43と、V2N通信制御部44と、冗長系管理部45と、中継管理部46と、を備える。中継管理部46は、中継局候補選択部47と、中継制御部48と、接続端末情報保持部49と、を備える。なお、
図2の例では、インダイレクトセッションを確立するための処理に直接関わらないBSM(Basic Safety Message)の通信などのV2X通信の一般的な通信に関わる構成、V2N通信の一般的な通信に関わる構成などについては記載を省略している。以降では、車両10に搭載され、複数パスによって複数の基地局と無線通信を行う車載端末11の動作について説明する。
【0015】
車両10に搭載された車載端末11は、周辺車両20~22に搭載された車載端末11との間で、V2X通信部40およびV2X通信制御部41によって、BSMなどのやり取りをV2X通信、すなわち車車間通信で行う。このように、実際には、車両10に搭載された車載端末11が、周辺車両20~22に搭載された車載端末11とV2X通信を行うが、記載を簡潔にするため、以降では、車両10が周辺車両20~22とV2X通信を行う、車載端末11が周辺車両20~22とV2X通信を行う、などのように記載することがある。
【0016】
V2X通信部40は、車両10の周辺に存在してV2X通信が可能な周辺車両20~22とV2X通信を行う車車間通信部である。
【0017】
V2X通信制御部41は、車両10の周辺に存在してV2X通信が可能な周辺車両20~22との通信を制御する車車間通信制御部である。
【0018】
周辺車両情報管理部42は、V2X通信部40およびV2X通信制御部41によるV2X通信で取得された、周辺車両などの位置情報、およびV2X通信の通信状態の情報を含む周辺車両情報を管理する。すなわち、周辺車両情報管理部42において周辺車両情報として管理される周辺車両には、周辺車両20~22の他、前述のように路側装置70~72などが含まれる。
【0019】
図3は、実施の形態1に係る車載端末11の周辺車両情報管理部42が管理する周辺車両情報の例を示す図である。周辺車両情報管理部42は、
図3に示すようなテーブル形式で周辺車両情報を管理する。
図3において、車両ID(IDentifier)は周辺車両を識別するための識別情報である。位置情報は、周辺車両の現在の位置を示す情報である。時刻は、該当する周辺車両から周辺車両情報を取得したときの時刻を示す情報である。受信RSSI(Received Signal Strength Indicator)は、該当する車両IDの周辺車両とのV2X通信の通信状況を示す通信品質の情報であり、ここでは一例として受信信号強度を示している。1周期前は、該当する車両IDの周辺車両とのV2X通信において前回の通信状況を示す通信品質の情報である。2周期前は、該当する車両IDの周辺車両とのV2X通信において前々回の通信状況を示す通信品質の情報である。通信品質の情報については、受信RSSIに限定されず、誤り率、SNR(Signal to Noise Ratio)などを用いてもよい。
【0020】
なお、
図3に示す周辺車両情報は一例であって、周辺車両情報管理部42は、V2X通信で得られる情報であれば、周辺車両の車種、走行速度などの情報も周辺車両情報として管理してもよい。また、周辺車両情報管理部42は、通信状況が良く、直近の規定された期間のV2X通信の通信品質が安定している周辺車両ほど、テーブルの上位になるように管理を行ってもよい。例えば、周辺車両情報管理部42は、過去3回の受信RSSIが最も高く安定している周辺車両が上位になるように管理する。ここで、安定しているとは、例えば、受信RSSIの変動が最も少なく、規定された閾値よりも上回っていることである。また、周辺車両情報管理部42は、直近の位置情報の推移から、車両10と同じ道路を走行していると予測される周辺車両、車両10との相対速度の近い周辺車両などを求め、これらの要素を加味して周辺車両情報を管理してもよい。
【0021】
車両10に搭載された車載端末11は、V2X通信と並行して、基地局との間で、V2N通信部43およびV2N通信制御部44によって、無線通信を行う。車両10に搭載された車載端末11と基地局との無線通信は、複数のセッションを確立することで、高信頼通信を必要とする遠隔操縦、遠隔監視などのアプリケーションの通信に利用される。また、車両10に搭載された車載端末11と基地局との無線通信は、例えば、基地局による車両10の位置情報、経路情報などの収集、渋滞情報、周辺情報などの提供など、セルラー網を使ったサービスの通信に利用される。このように、実際には、車両10に搭載された車載端末11が基地局と無線通信を行うが、記載を簡潔にするため、以降では、車両10が基地局と無線通信を行う、などのように記載することがある。
【0022】
V2N通信部43は、基地局、
図1の例では、ダイレクトセッションを確立している基地局30と無線通信を行う基地局通信部である。
【0023】
V2N通信制御部44は、基地局、
図1の例では、ダイレクトセッションを確立している基地局30との無線通信を制御する基地局通信制御部である。また、V2N通信制御部44は、冗長系管理部45の制御によって、ダイレクトセッションで接続する基地局30に対して、ダイレクトセッションで接続できなかった基地局31の情報を提供し、基地局31に接続している周辺車両の情報である接続端末情報の提供を依頼する制御を行う。以降の説明において、基地局30を第1の基地局と称し、基地局31を第2の基地局と称することがある。
【0024】
冗長系管理部45は、基地局との複数のセッションを管理する。冗長系管理部45は、常時複数のセッションが確立できていることを管理し、ダイレクトセッションが確立できなかった場合、インダイレクトセッションへの切り替え、再度ダイレクトセッションによる確立を試みる、といった制御を行う。例えば、冗長系管理部45は、
図1に示すように、基地局31との間でダイレクトセッションが確立できなかった場合、インダイレクトセッションに切り替えることを中継管理部46に指示する。このとき、冗長系管理部45は、V2N通信制御部44およびV2N通信部43を介して、基地局30に対して、基地局31との間でダイレクトセッションが確立できなかったこと、すなわち基地局31との接続失敗を通知し、基地局31に接続している周辺車両の情報である接続端末情報を要求する。なお、基地局30が車両10から基地局31との接続失敗を通知されると基地局31に対して接続端末情報を要求することになっている場合、冗長系管理部45は、基地局30に対して、基地局31との接続失敗のみを通知すればよい。基地局31に接続している周辺車両の情報である接続端末情報とは、基地局31に接続している周辺車両、路側装置などの識別情報であり、基地局31に接続している周辺車両、路側装置などの位置情報を含んでいてもよい。識別情報は、例えば、車両IDであるが、周辺車両、路側装置などを識別可能な情報であれば他の情報を用いてもよい。このように、冗長系管理部45は、基地局30および基地局31との接続を管理し、基地局31とダイレクトセッションで接続できなかったときに中継管理部46に対して基地局31とのインダイレクトセッションを指示する。
【0025】
接続端末情報保持部49は、冗長系管理部45から中継管理部46に対してインダイレクトセッションへの切り替えが指示されると、基地局31に接続している周辺車両の情報である接続端末情報を、基地局30からV2N通信部43およびV2N通信制御部44を介して取得して保持する。
【0026】
中継局候補選択部47は、周辺車両情報管理部42から周辺車両情報を取得し、接続端末情報保持部49から接続端末情報を取得し、周辺車両情報および接続端末情報に基づいて、基地局31とのインダイレクトセッションに使用する中継局の候補を選択する。中継局候補選択部47は、中継局の候補を選択する場合、例えば、
図3に示す周辺車両情報から上位の周辺車両を選択し、選択した周辺車両が接続端末情報保持部49から取得した接続端末情報にも含まれている場合、選択した周辺車両を中継局の候補とする。中継局候補選択部47は、中継制御部48に対して、選択した中継局の候補を指示する。
【0027】
中継制御部48は、中継局候補選択部47で選択された中継局の候補である周辺車両に対して中継依頼の通信を開始するように、V2X通信制御部41に指示する。
【0028】
V2X通信制御部41は、V2X通信部40を介して、中継制御部48から指示された中継局の候補の周辺車両に対して中継依頼を行い、中継依頼が成立した場合は中継依頼を行った周辺車両を中継局として基地局31とのインダイレクトセッションを確立し、基地局31との無線通信を開始する。V2X通信制御部41は、中継依頼が不成立の場合は中継制御部48に対して中継依頼が不成立であったことを通知する。中継制御部48は、中継局候補選択部47に対して中継依頼が不成立であったことを通知する。中継局候補選択部47は、周辺車両情報および接続端末情報に基づいて、基地局31とのインダイレクトセッションに使用する次の中継局の候補を選択する。車載端末11は、基地局31とのインダイレクトセッションが確立するまで、上記の動作を繰り返し行う。このように、車載端末11において、中継管理部46は、基地局30から取得した基地局31に接続している周辺車両の情報である接続端末情報を保持し、周辺車両情報および接続端末情報に基づいて、基地局31とのインダイレクトセッションを中継する周辺車両である中継局を選択する。
【0029】
図4は、実施の形態1に係る車載端末11を搭載する車両10が基地局30を介して基地局31の接続端末情報を取得する動作を示すシーケンス図である。車両10は、基地局31とのダイレクトセッションに失敗すると(ステップS100)、基地局30に対して基地局31との接続失敗を通知する(ステップS101)。ここでは、前述のように、基地局30が車両10から基地局31との接続失敗を通知されると基地局31に対して接続端末情報を要求することを想定し、車両10は、基地局30に対して、基地局31との接続失敗のみを通知する。基地局30は、車両10から基地局31との接続失敗が通知されると、基地局31に対して、基地局31に接続している周辺車両の情報である接続端末情報を要求する(ステップS102)。基地局31は、基地局30に対して、接続している周辺車両の情報である接続端末情報を提供する(ステップS103)。基地局30は、基地局31から基地局31に接続している周辺車両の情報である接続端末情報が提供されると、車両10に対して、基地局31に接続している周辺車両の情報である接続端末情報を提供する(ステップS104)。車両10は、基地局30から基地局31に接続している周辺車両の情報である接続端末情報を取得すると、周辺車両情報および接続端末情報に基づいて、基地局31とのインダイレクトセッションに使用する中継局の候補を選択し(ステップS105)、選択した中継局に対して基地局31へのインダイレクトセッションでの中継を依頼する(ステップS106)。
【0030】
つぎに、基地局30,31の構成および動作について説明する。基地局30,31は、車載端末11を搭載した車両10が複数パスによって複数の基地局30,31と無線通信を行う無線通信システム1における基地局である。なお、基地局30,31は同様の構成であるとして、ここでは基地局31を例にして説明する。
図5は、実施の形態1に係る基地局31の構成例を示すブロック図である。基地局31は、通信部60と、通信制御部61と、接続端末情報取得部62と、を備える。
【0031】
通信部60は、周辺車両20~22との無線通信を行う。また、通信部60は、他の基地局である基地局30との通信を行う。基地局31と基地局30との間の通信については、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。なお、ここでは通信部60が周辺車両20~22との無線通信および基地局30との通信を行っているが、基地局31が2つの通信部を備え、一方の通信部が周辺車両20~22との無線通信を行い、他方の通信部が基地局30との通信を行うようにしてもよい。
【0032】
通信制御部61は、周辺車両20~22との無線通信および他の基地局である基地局30との通信を制御し、他の基地局である基地局30から要求があった場合、接続端末情報を他の基地局である基地局30に提供する制御を行う。
【0033】
接続端末情報取得部62は、無線通信を行っている周辺車両20~22の識別情報を取得して接続端末情報として保持する。
【0034】
すなわち、基地局31の場合、接続端末情報取得部62は、基地局31に接続している周辺車両20~22の情報である接続端末情報を保持し、通信制御部61は、基地局30から要求があった場合、接続端末情報を基地局30に提供する制御を行う。また、基地局30の場合、接続端末情報取得部62は、基地局30に接続している車両10の情報である接続端末情報を保持し、通信制御部61は、基地局31から要求があった場合、接続端末情報を基地局31に提供する制御を行う。
【0035】
例えば、無線通信システム1を3GPP仕様で実現する場合、車載端末11の周辺車両情報管理部42は、PC5を経由した車車間通信、路車間通信などによって周辺の3GPP仕様の車両すなわち車載端末11のパラメータを周辺車両情報として収集する。基地局の接続端末情報取得部62は、外部アプリケーションサーバ(AF:Application Function)に設置され、接続端末情報を管理する。基地局は、車載端末11からの他の基地局へのインダイレクトセッション確立の要求をダイレクトセッションで受け付け、車載端末11からの要求をトリガにしてインダイレクトセッションのプロセスを開始することもできる。ここから、車載端末11は、モニターする代わりに、これまでのPC5インタフェースでの通信結果を使用し、接続している基地局から、所望の基地局に接続している車載端末11のリストである接続端末情報を取得する。接続端末情報は、例えば、中継局番号で各車載端末11を表現する。車載端末11は、周辺車両情報管理部42で管理している周辺車両情報および接続している基地局から取得した接続端末情報を用いて、中継局を選択する。
【0036】
つづいて、車載端末11のハードウェア構成について説明する。車載端末11において、V2X通信部40およびV2N通信部43は通信機である。V2X通信制御部41、周辺車両情報管理部42、V2N通信制御部44、冗長系管理部45、および中継管理部46は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。処理回路は制御回路とも呼ばれる。
【0037】
図6は、実施の形態1に係る車載端末11を実現する処理回路をプロセッサ91およびメモリ92で実現する場合の処理回路90の構成例を示す図である。
図6に示す処理回路90は制御回路であり、プロセッサ91およびメモリ92を備える。処理回路90がプロセッサ91およびメモリ92で構成される場合、処理回路90の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路90では、メモリ92に記憶されたプログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路90は、車載端末11の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を備える。このプログラムは、処理回路90により実現される各機能を車載端末11に実行させるためのプログラムであるともいえる。このプログラムは、プログラムが記憶された記憶媒体により提供されてもよいし、通信媒体など他の手段により提供されてもよい。
【0038】
上記プログラムは、V2X通信制御部41が、車両10の周辺に存在して車車間通信が可能な周辺車両20~22との通信を制御する第1のステップと、周辺車両情報管理部42が、V2X通信で取得された、周辺車両20~22の位置情報、およびV2X通信の通信状態の情報を含む周辺車両情報を管理する第2のステップと、V2N通信制御部44が、直接通信で接続する基地局30である第1の基地局に対して、直接通信で接続できなかった基地局31である第2の基地局の情報を提供し、第2の基地局に接続している周辺車両の情報である接続端末情報の提供を依頼する制御を行う第3のステップと、中継管理部46が、第1の基地局から取得した接続端末情報を保持し、周辺車両情報および接続端末情報に基づいて、第2の基地局との間接通信を中継する周辺車両である中継局を選択する第4のステップと、冗長系管理部45が、第1の基地局および第2の基地局との接続を管理し、第2の基地局と直接通信で接続できなかったときに中継管理部46に対して第2の基地局との間接通信を指示する第5のステップと、を車載端末11に実行させるプログラムであるとも言える。
【0039】
ここで、プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などである。また、メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0040】
図7は、実施の形態1に係る車載端末11を実現する処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路93の例を示す図である。
図7に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路については、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0041】
車載端末11のハードウェア構成について説明したが、基地局のハードウェア構成も同様である。基地局において、通信部60は通信機である。通信制御部61および接続端末情報取得部62は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態によれば、車両10に搭載される車載端末11は、インダイレクトセッションを確立する際に使用する中継局を選択する場合、ダイレクトセッションが確立している基地局を介して、接続したい基地局に接続している周辺車両の情報である接続端末情報を取得し、接続端末情報を用いて中継局を選択することとした。これにより、車載端末11は、基地局との通信を中継可能な他の車載端末すなわち周辺車両を選択する精度を向上させることができる。車載端末11は、中継局の候補を探すためのV2X通信が不要になることから、インダイレクトセッションを確立するまでの時間を短縮することができる。
【0043】
なお、実施の形態1では、複数パス通信を行う車両10が、基地局31との間のインダイレクトセッションを確立する場合について説明したが、周辺車両20~22も同様に複数パス通信を行うことが可能である。例えば、
図1に示す周辺車両21は、基地局31との間ではダイレクトセッションが確立しているので、車両10を中継局として基地局30との間でインダイレクトセッションを確立することで、複数パス通信を行うことができる。この場合、周辺車両21は、基地局31との間で、前述の車両10と基地局30との間で行われた動作と同様の動作を行うことになる。
【0044】
実施の形態2.
実施の形態1では、車載端末11は、V2X通信の結果である周辺車両情報、およびダイレクトセッションで接続している基地局経由で得られるインダイレクトセッションの対象の基地局に接続している周辺車両の情報である接続端末情報を用いて、中継局を選択していた。実施の形態2では、車載端末が、さらに、ダイレクトセッションで接続している基地局経由で得られるインダイレクトセッションの対象の基地局に接続している周辺車両の位置情報を用いて、より通信が安定するように中継局を選択する方法について説明する。
【0045】
図8は、実施の形態2に係る車載端末11aの構成例を示すブロック図である。車載端末11aは、
図2に示す実施の形態1の車載端末11に対して、中継管理部46を中継管理部46aに置き換えたものである。中継管理部46aは、
図2に示す実施の形態1の中継管理部46に対して、通信エリア算出部50を追加したものである。実施の形態2では、車載端末11aが後述する基地局30aから取得する接続端末情報には、実施の形態1で説明した情報に加えて、後述する基地局31aに接続している周辺車両の位置情報が含まれる。
【0046】
接続端末情報保持部49は、基地局31aに接続している周辺車両の情報であって周辺車両の位置情報を含む接続端末情報を、基地局30aからV2N通信部43およびV2N通信制御部44を介して取得して保持する。
【0047】
通信エリア算出部50は、接続端末情報保持部49から接続端末情報を取得し、接続端末情報に含まれる基地局31aに接続している周辺車両の位置情報から、基地局31aの通信エリアを推定する。
【0048】
中継局候補選択部47は、周辺車両情報管理部42から周辺車両情報を取得し、通信エリア算出部50から接続端末情報および通信エリア算出部50で算出された通信エリアを取得し、周辺車両情報、接続端末情報、および通信エリアに基づいて、基地局31aとのインダイレクトセッションに使用する中継局の候補を選択する。
【0049】
なお、中継制御部48の動作は、実施の形態1のときの動作と同様である。このように、実施の形態2では、中継管理部46aは、接続端末情報に基づいて基地局31aの通信エリアを算出し、さらに基地局31aの通信エリアを用いて中継局を選択する。
【0050】
つぎに、基地局30a,31aの構成および動作について説明する。なお、基地局30a,31aは同様の構成であるとして、ここでは基地局31aを例にして説明する。
図9は、実施の形態2に係る基地局31aの構成例を示すブロック図である。基地局31aは、
図5に示す実施の形態1の基地局31に対して、端末位置情報取得部63を追加したものである。
【0051】
端末位置情報取得部63は、基地局31aが無線通信を行っている周辺車両の位置情報を取得して保持する。
【0052】
通信制御部61は、他の基地局である基地局30aから要求があった場合、周辺車両の位置情報を接続端末情報に含めて接続端末情報を他の基地局である基地局30aに提供する制御を行う。
【0053】
図10は、実施の形態2に係る無線通信システム1aにおいて車両10に搭載される車載端末11aが中継局を選択する動作の例を示す図である。
図10では、車両10が周辺車両20~26とV2Xで通信ができており、基地局31aに周辺車両21~25が接続されている場合を想定している。車両10に搭載される車載端末11aの通信エリア算出部50は、基地局30aを介して取得した基地局31aに接続される周辺車両21~25の位置情報に基づいて、基地局31aのおおよその通信エリア80を算出する。通信エリア算出部50で算出された基地局31aの通信エリア80は、
図10に示す点線の内側の範囲とする。
【0054】
車両10に搭載される車載端末11aの中継局候補選択部47は、例えば、周辺車両25を中継局として選択すると、すぐに周辺車両25が通信エリア80の外部に出て、周辺車両25が基地局31aから図示しない別の基地局へハンドオーバーする可能性がある。周辺車両25は、基地局31aから別の基地局へハンドオーバーしてしまうと、車両10と基地局31aとのインダイレクトセッションを中継できなくなる。そのため、中継局候補選択部47は、車両10が通信エリア80に入るまで基地局31aの通信エリア80にいることが予想され、かつ、V2X通信の状況が良好な周辺車両、例えば、周辺車両22を中継局として選択する。
【0055】
中継局候補選択部47は、このように中継局を選択することによって、中継局となる周辺車両が短時間で基地局31aの通信エリア80から出てしまい、再度中継局となる周辺車両を探さなくてはならない事態を回避することができる。
【0056】
また、中継局候補選択部47は、基地局31aに接続されている周辺車両21~25の位置情報を把握していることから、周辺車両21~25の位置情報の推移から、周辺車両21~25の進行方向、周辺車両21~25の走行速度、周辺車両21~25が車両10と同じ道路を走行しているか否か、などを推定することができる。そのため、中継局候補選択部47は、推定した周辺車両21~25の進行方向、周辺車両21~25の走行速度、周辺車両21~25が車両10と同じ道路を走行しているか否かの情報などを加味して、中継局を選択してもよい。例えば、中継局候補選択部47は、周辺車両が基地局31aの通信エリア80の外部に出るまでの時間である中継可能時間を推定し、さらに中継可能時間を用いて中継局を選択することができる。
【0057】
なお、通信エリア算出部50で算出される基地局31aの通信エリア80については、中継局候補選択部47が中継局の選択に利用可能なだけではなく、車両10が基地局31aの通信エリア80内に入ったか否かの判定にも利用可能である。一般的には、車両10は、図示しないGPS(Global Positioning System)などを利用して自車両の位置を計測している。そのため、車載端末11aの冗長系管理部45は、車両10が基地局31aの通信エリア80に到達した場合、V2N通信制御部44を制御して、基地局31aとのダイレクトセッションを試みることができる。
【0058】
つづいて、車載端末11aのハードウェア構成について説明する。車載端末11aにおいて、中継管理部46aは、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。基地局のハードウェア構成も同様である。基地局において、端末位置情報取得部63は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態によれば、車両10に搭載される車載端末11aは、インダイレクトセッションを確立する際に使用する中継局を選択する場合、ダイレクトセッションが確立している基地局を介して、接続したい基地局に接続している周辺車両の位置情報を含む接続端末情報を取得し、位置情報を含む接続端末情報を用いて中継局を選択することとした。これにより、車載端末11aは、実施の形態1で説明した効果に加えて、さらに、接続した中継局となる周辺車両がすぐにハンドオーバーする事態を回避し、安定した通信ができるなど、より効率的で適切な中継局を選択し、安定したインダイレクトセッションを確立することができる。
【0060】
なお、実施の形態2では、一例として、端末位置情報取得部63で得られた周辺車両の位置情報を接続端末情報取得部62で得られた接続端末情報に含める場合について説明したが、これに限定されない。基地局は、端末位置情報取得部63で得られた周辺車両の位置情報と接続端末情報取得部62で得られた接続端末情報とを別々に扱って、別々の情報として他の基地局に提供するようにしてもよい。
【0061】
実施の形態3.
実施の形態1および実施の形態2では、中継局の選択を車載端末が行っていた。実施の形態3では、中継局選択の一部の機能を基地局で実施する場合について説明する。実施の形態3については、実施の形態1および実施の形態2に適用可能であるが、以降では、実施の形態2に適用する場合を例にして説明する。
【0062】
実施の形態3において、車載端末11aの構成は、
図8に示す実施の形態2のときの車載端末11aの構成と同様とする。実施の形態3では、図示は省略するが、車両10との間でダイレクトセッションが確立している基地局を基地局30bとし、車両10との間でダイレクトセッションが確立しておらず、車両10がインダイレクトセッションを試みる対象の基地局を基地局31bとする。
【0063】
基地局30b,31bの構成および動作について説明する。なお、基地局30b,31bは同様の構成であるとして、ここでは基地局31bを例にして説明する。
図11は、実施の形態3に係る基地局31bの構成例を示すブロック図である。基地局31bは、
図9に示す実施の形態2の基地局31aに対して、中継局候補選択部64を追加したものである。
【0064】
中継局候補選択部64は、周辺車両21~25の位置情報を含む接続端末情報に基づいて、無線通信によって他の基地局である基地局30bに直接接続する車両10が基地局31bとの間接通信の際に使用する中継局の候補となる車両を選択する。中継局候補選択部64は、接続端末情報取得部62および端末位置情報取得部63から取得した情報を併せることで位置情報を含む接続端末情報を得ることができる。中継局候補選択部64は、位置情報を含む接続端末情報から、周辺車両21~25が通信エリア80のどこにいるかを把握できる。通信エリア80の端に近い位置にいる周辺車両はすぐにハンドオーバーする可能性があり、基地局31bからの通信距離も長く良好な通信品質を期待できないことから、中継局候補選択部64は、例えば、通信エリア80の中心位置に近い周辺車両を中継局の候補として選択する。
【0065】
中継局候補選択部64は、選択する中継局の候補について、1つではなく複数の中継局の候補を選択してもよい。この場合、中継局候補選択部64は、複数の中継局の位置などに基づいて優先順位を付け、優先順位の高い中継局の候補が上位になるようなリスト形式で中継局の候補の情報を保持する。なお、中継局候補選択部64は、基地局31bに接続されている周辺車両21~25の位置情報を把握していることから、周辺車両21~25の位置情報の推移から、周辺車両21~25の進行方向、走行経路、走行速度などを推定し、推定したこれらの情報を加味して、中継局の候補を選択してもよい。また、中継局候補選択部64は、周辺車両21~25が走行する道路の事故、混雑、通行止めなどの道路情報を用いて、中継局の候補を選択してもよい。
【0066】
通信制御部61は、他の基地局である基地局30bから要求があった場合、中継局候補選択部64で選択された中継局の候補の情報である中継局候補情報を他の基地局である基地局30bに提供する制御を行う。
【0067】
基地局30bは、基地局31bに中継局候補情報を要求し、基地局31bから取得した中継局候補情報を車両10に提供する。
【0068】
車両10の車載端末11aでは、基地局30bから提供された中継局候補情報をV2N通信部43が受信し、V2N通信制御部44を介して、接続端末情報保持部49が、位置情報を含む接続端末情報と同様に、中継局候補情報を保持する。通信エリア算出部50は、接続端末情報保持部49から中継局候補情報を取得して中継局候補選択部47に出力する。中継局候補選択部47は、周辺車両情報、位置情報を含む接続端末情報、通信エリア80、および中継局候補情報を用いて、中継局候補情報で示される中継局の候補の中から中継局を選択する。このように、実施の形態3では、中継管理部46aは、基地局30bから取得した中継局の候補となる周辺車両の情報である中継局候補情報を保持し、さらに中継局候補情報を用いて中継局を選択する。なお、中継局候補情報の取得方法について、車両10の車載端末11aの冗長系管理部45から基地局30bに対して要求してもよいし、接続端末情報の場合と同様、基地局30bが車両10から基地局31bとの接続失敗を通知されると基地局31bに対して中継局候補情報を要求することになっている場合、車両10の車載端末11aの冗長系管理部45は、基地局30bに対して、基地局31bとの接続失敗のみを通知すればよい。
【0069】
図12は、実施の形態3に係る車載端末11aを搭載する車両10が基地局30bを介して基地局31bの接続端末情報および中継局候補情報を取得する動作を示すシーケンス図である。車両10は、基地局31bとのダイレクトセッションに失敗すると(ステップS200)、基地局30bに対して基地局31bとの接続失敗を通知する(ステップS201)。ここでは、前述のように、基地局30bが車両10から基地局31bとの接続失敗を通知されると基地局31bに対して接続端末情報および中継局候補情報を要求することを想定し、車両10は、基地局30bに対して、基地局31bとの接続失敗のみを通知する。基地局30bは、車両10から基地局31bとの接続失敗が通知されると、基地局31bに対して、基地局31bに接続している周辺車両の情報である接続端末情報を要求し(ステップS202a)、基地局31bで選択された中継局の候補の情報である中継局候補情報を要求する(ステップS202b)。基地局31bは、基地局30bに対して、接続している周辺車両の情報である接続端末情報を提供し(ステップS203a)、中継局の候補の情報である中継局候補情報を提供する(ステップS203b)。基地局30bは、基地局31bから基地局31bに接続している周辺車両の情報である接続端末情報および中継局の候補の情報である中継局候補情報が提供されると、車両10に対して、基地局31bに接続している周辺車両の情報である接続端末情報を提供し(ステップS204a)、中継局の候補の情報である中継局候補情報を提供する(ステップS204b)。車両10は、基地局30bから基地局31bに接続している周辺車両の情報である接続端末情報および中継局の候補の情報である中継局候補情報を取得すると、周辺車両情報、接続端末情報、および中継局候補情報に基づいて、基地局31bとのインダイレクトセッションに使用する中継局の候補を選択し(ステップS205)、選択した中継局に対して基地局31bへのインダイレクトセッションでの中継を依頼する(ステップS206)。
【0070】
なお、車両10の車載端末11aは、ステップS201において基地局30bに対して基地局31bとの接続失敗を通知する場合、車両10の位置情報、進行方向、走行速度、経路情報、道路情報などの情報を通知してもよい。この場合、基地局30bは、基地局31bに対して、ステップS202aまたはステップS202bにおいて、車両10の位置情報、進行方向、走行速度、経路情報、道路情報などの情報も通知する。これにより、基地局31bは、車両10の位置情報、進行方向、走行速度、経路情報、道路情報などを加味して中継局の候補を選択することができる。例えば、基地局31bの中継局候補選択部64は、車両10とV2X通信が出来そうな距離の範囲の周辺車両に限定し、その中から、すぐにハンドオーバーする可能性が低い周辺車両、車両10と相対速度が近い周辺車両、しばらく同じ道路を走行することが予想される周辺車両などを中継局の候補の高順位にリストアップする。
【0071】
つづいて、基地局のハードウェア構成について説明する。基地局において、中継局候補選択部64は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態によれば、車両10に搭載される車載端末11aは、インダイレクトセッションを確立する際に使用する中継局を選択する場合、ダイレクトセッションが確立している基地局を介して、接続したい基地局に接続している周辺車両の位置情報を含む接続端末情報、および中継局候補情報を取得し、位置情報を含む接続端末情報および中継局候補情報を用いて中継局を選択することとした。これにより、車載端末11aは、実施の形態1または実施の形態2で説明した効果に加えて、さらに、中継局を選択する際の処理負荷を低減することができる。
【0073】
実施の形態4.
実施の形態1から実施の形態3では、車両10の車載端末11または車載端末11aは、インダイレクトセッションの対象の基地局に接続している周辺車両の情報を、ダイレクトセッションで接続している基地局経由で取得していた。実施の形態4では、車両10の車載端末11または車載端末11aが、基地局から情報の提供を受けずに中継局を選択する場合について説明する。実施の形態4については、車載端末11および車載端末11aに適用可能であるが、以降では、実施の形態1の車載端末11を例にして説明する。
【0074】
車両10において、車載端末11の冗長系管理部45は、基地局31へのダイレクトセッションに失敗すると、その旨を中継局候補選択部47に通知する。中継局候補選択部47は、周辺車両情報管理部42で管理されている周辺車両情報に基づいて、車両10とV2X通信をしている周辺車両20~22を把握する。中継局候補選択部47は、中継制御部48、V2X通信制御部41、およびV2X通信部40を介して、V2X通信で接続している周辺車両20~22に対して、接続している基地局の情報を要求する。
【0075】
周辺車両20~22は、自車両が接続している基地局の情報をV2X通信で送信する。なお、周辺車両20~22は、自車両が接続している基地局の情報について、基地局リストのように単独の情報として送信してもよいし、車両10の周辺車両情報管理部42が周辺車両20~22の情報を周辺車両情報として管理する際のV2X通信のときに、自車両の位置情報などとともに送信してもよい。
【0076】
図13は、実施の形態4に係る車載端末11の周辺車両情報管理部42が管理する周辺車両情報の例を示す図である。
図13に示す周辺車両情報は、車両10の車載端末11の周辺車両情報管理部42が、周辺車両20~22に接続している基地局の情報を周辺車両情報として管理する場合の例を示している。
図13に示す周辺車両情報は、
図3に示す実施の形態1の周辺車両情報に対して、接続基地局の情報を追加したものである。各周辺車両に接続している基地局である接続基地局については、1つに限定されず、2つ以上であってもよい。なお、周辺車両情報管理部42は、周辺車両20~22に接続している基地局の情報を、周辺車両20~22から送信された基地局リストの形式で管理してもよい。
【0077】
中継局候補選択部47は、周辺車両情報管理部42で管理されている
図13に示す周辺車両情報または基地局リストに基づいて、車両10が接続している基地局30以外の基地局、例えば、基地局31に接続している周辺車両を、中継局として選択する。
【0078】
なお、実施の形態4を実施の形態2または実施の形態3に適用した場合、車両10に搭載される車載端末11aにおいて、通信エリア算出部50は、周辺車両情報管理部42で管理されている
図13に示す周辺車両情報または基地局リストに基づいて、各周辺車両の位置情報から、
図13に示す周辺車両情報または基地局リストに挙がっている基地局のおおよその通信エリアを算出することができる。この場合、中継局候補選択部47は、さらに、通信エリア算出部50で算出された通信エリアを用いて、車両10の位置情報などから中継局として最適と思われる基地局を選択し、中継局を選ぶことができる。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態において、車載端末11または車載端末11aの周辺車両情報管理部42は、V2X通信で取得された、周辺車両20~22の位置情報、V2X通信の通信状態の情報、および周辺車両20~22が接続している基地局の情報を含む周辺車両情報を管理し、中継管理部46または中継管理部46aは、周辺車両情報に基づいて、ダイレクトセッションで接続できなかった基地局とのインダイレクトセッションを中継する周辺車両である中継局を選択することとした。これにより、車載端末11または車載端末11aは、基地局を介した情報収集が不要になることから、基地局とのダイレクトセッションが確立できていない場合にも、中継局を選択する際に候補となる中継局の情報を得ることができる。
【0080】
例えば、車載端末11は、ダイレクトセッションが1つでも確立できている場合は実施の形態1の動作を行い、1つのダイレクトセッションも確立できていない状況では実施の形態4の動作を行うようにしてもよい。同様に、車載端末11aは、ダイレクトセッションが1つでも確立できている場合は実施の形態2または実施の形態3の動作を行い、1つのダイレクトセッションも確立できていない状況では実施の形態4の動作を行うようにしてもよい。
【0081】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0082】
1,1a 無線通信システム、10 車両、11,11a 車載端末、20~26 周辺車両、30,31,30a,31a,30b,31b 基地局、40 V2X通信部、41 V2X通信制御部、42 周辺車両情報管理部、43 V2N通信部、44 V2N通信制御部、45 冗長系管理部、46,46a 中継管理部、47,64 中継局候補選択部、48 中継制御部、49 接続端末情報保持部、50 通信エリア算出部、60 通信部、61 通信制御部、62 接続端末情報取得部、63 端末位置情報取得部、70~72 路側装置、80 通信エリア、90,93 処理回路、91 プロセッサ、92 メモリ。
【要約】
車載端末(11)は、車車間通信が可能な周辺車両との通信を制御するV2X通信制御部(41)と、車車間通信で取得された、周辺車両の位置情報、および車車間通信の通信状態の情報を含む周辺車両情報を管理する周辺車両情報管理部(42)と、直接通信で接続する第1の基地局に対して、直接通信で接続できなかった第2の基地局の情報を提供し、第2の基地局に接続している周辺車両の情報である接続端末情報の提供を依頼する制御を行うV2N通信制御部(44)と、周辺車両情報および接続端末情報に基づいて、第2の基地局との間接通信を中継する周辺車両である中継局を選択する中継管理部(46)と、第1の基地局および第2の基地局との接続を管理し、第2の基地局と直接通信で接続できなかったときに中継管理部に対して第2の基地局との間接通信を指示する冗長系管理部(45)と、を備える。