(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-12
(45)【発行日】2024-12-20
(54)【発明の名称】受信機、通信システム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 72/0453 20230101AFI20241213BHJP
H04W 4/70 20180101ALI20241213BHJP
H04W 4/80 20180101ALI20241213BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20241213BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20241213BHJP
【FI】
H04W72/0453
H04W4/70
H04W4/80
H04W4/38
H04W84/10
(21)【出願番号】P 2024560800
(86)(22)【出願日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2024022504
【審査請求日】2024-10-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】折戸 孝一
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-80852(JP,A)
【文献】特表2020-526129(JP,A)
【文献】特開2021-132280(JP,A)
【文献】特開2009-169888(JP,A)
【文献】特開2017-28653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K7/00-7/14
G08C13/00-25/04
H03J9/00-9/06
H04B1/06
1/16-1/24
1/38-1/58
7/24-7/26
H04Q9/00-9/16
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信機からそれぞれ無線通信により送信されるパケットを受信する受信機であって、
前記パケットを構成する部分データを伝送する部分電波を、前記部分データと連続することで前記パケットを構成する他の部分データを伝送する他の部分電波とは時間間隔をあけて、前記複数の送信機のうちのいずれかから受信する受信手段と、
各前記送信機と、該送信機から受信する電波の周波数表現と、の対応関係を記憶する記憶手段と、
前記受信手段によって受信された前記部分電波の周波数表現から、前記対応関係に基づいて該部分電波を送信した前記送信機を特定する特定手段と、
各前記送信機が順次電波を送信するときに、受信した電波の周波数表現を前記記憶手段に登録する登録手段と、
前記複数の送信機のうちの第1送信機から受信した電波の周波数表現が、第2送信機から受信した電波の周波数表現と等しいときに、前記第1送信機に対して、送信する電波の周波数の変更を指示する指示手段と、
を備え
、
前記登録手段は、前記指示手段によって周波数の変更が指示された後に前記第1送信機から受信した電波の周波数表現を前記記憶手段に登録する、
受信機。
【請求項2】
前記記憶手段は、各前記送信機と、該送信機から送信される電波に含まれる複数の周波数成分の周波数及び強度と、の対応関係を記憶し、
前記特定手段は、前記部分電波に含まれる複数の周波数成分の周波数及び強度から、前記対応関係に基づいて該部分電波を送信した前記送信機を特定する、
請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
前記受信手段によって複数回受信された前記部分電波であって、同一の前記送信機から送信されたことが前記特定手段によって連続して特定された前記部分電波によって伝送される前記部分データから、前記パケットを復元する復元手段、
をさらに備える請求項
1に記載の受信機。
【請求項4】
前記復元手段によって復元された前記パケットにより示される情報に時刻を付与して出力する時刻付与手段、をさらに備え、
前記パケットは、センサによる計測の結果を前記情報として示し、
前記時刻付与手段は、前記パケットにより示される値、該値に対して予め定められた演算を施した演算結果、又は、前記パケットを構成するいずれかの前記部分データを受信した受信時刻を、前記計測の結果に前記時刻として付与する、
請求項
3に記載の受信機。
【請求項5】
複数の送信機からそれぞれ無線通信により送信されるパケットを受信する受信機であって、
前記パケットを構成する部分データを伝送する部分電波を、前記部分データと連続することで前記パケットを構成する他の部分データを伝送する他の部分電波とは時間間隔をあけて、前記複数の送信機のうちのいずれかから受信する受信手段と、
各前記送信機と、該送信機から受信する電波の周波数表現と、の対応関係を記憶する記憶手段と、
前記受信手段によって受信された前記部分電波の周波数表現から、前記対応関係に基づいて該部分電波を送信した前記送信機を特定する特定手段と、
を備え、
前記特定手段は、前記対応関係及び前記部分電波を受信したタイミングに基づいて、該部分電波を送信した前記送信機を特定する、
受信機。
【請求項6】
前記特定手段は、前記受信手段によって受信された前記部分電波の周波数表現が、前記記憶手段に記憶されているいずれの周波数表現とも異なる場合、又は、前記記憶手段に記憶されている2以上の周波数表現に該当する場合に、各前記送信機から過去に前記部分電波を受信した周期に基づいて、該部分電波を送信した前記送信機を特定する、
請求項
5に記載の受信機。
【請求項7】
前記時間間隔は、前記パケットを構成する1ビットのデータを伝送するための時間長より長い、
請求項1
又は5に記載の受信機。
【請求項8】
前記部分データのサイズは、1ビットである、
請求項1
又は5に記載の受信機。
【請求項9】
無線通信によりパケットを送信する複数の送信機と前記パケットを受信する受信機とを備える通信システムであって、
前記受信機は、
前記パケットを構成する部分データを伝送する部分電波を、前記部分データと連続することで前記パケットを構成する他の部分データを伝送する他の部分電波とは時間間隔をあけて、前記複数の送信機のうちのいずれかから受信する受信手段と、
各前記送信機と、該送信機から受信する電波の周波数表現と、の対応関係を記憶する記憶手段と、
前記受信手段によって受信された前記部分電波の周波数表現から、前記対応関係に基づいて該部分電波を送信した前記送信機を特定する特定手段と、を有し、
前記送信機はそれぞれ、前記部分電波を、前記他の部分電波とは時間間隔をあけて送信し、
前記複数の送信機が送信する電波に含まれる周波数成分は、互いに等しい、
通信システム。
【請求項10】
無線通信によりパケットを送信する複数の送信機と
前記パケットを受信する受信機とを備える通信システム
であって、
前記受信機は、
前記パケットを構成する部分データを伝送する部分電波を、前記部分データと連続することで前記パケットを構成する他の部分データを伝送する他の部分電波とは時間間隔をあけて、前記複数の送信機のうちのいずれかから受信する受信手段と、
各前記送信機と、該送信機から受信する電波の周波数表現と、の対応関係を記憶する記憶手段と、
前記受信手段によって受信された前記部分電波の周波数表現から、前記対応関係に基づいて該部分電波を送信した前記送信機を特定する特定手段と、
各前記送信機が順次電波を送信するときに、受信した電波の周波数表現を前記記憶手段に登録する登録手段と、
前記複数の送信機のうちの第1送信機から受信した電波の周波数表現が、第2送信機から受信した電波の周波数表現と等しいときに、前記第1送信機に対して、送信する電波の周波数の変更を指示する指示手段と、
を備え、
前記受信機の前記登録手段は、前記指示手段によって周波数の変更が指示された後に前記第1送信機から受信した電波の周波数表現を前記記憶手段に登録し、
前記送信機はそれぞれ、前記部分電波を、前記他の部分電波とは時間間隔をあけて送信し、送信する周波数の変更が指示された場合に、該指示に従って周波数を変更した前記部分電波を送信する、
通信システム。
【請求項11】
無線通信によりパケットを伝送する通信方法であって、
複数の送信機がそれぞれ、前記パケットを構成する部分データを伝送する部分電波を、前記部分データと連続することで前記パケットを構成する他の部分データを伝送する他の部分電波とは時間間隔をあけて送信し、
受信機
の受信手段が、前記部分電波を受信し、
前記受信機
の特定手段が、
前記受信手段によって受信
された前記部分電波の周波数表現から、予め定められた各前記送信機と該送信機から受信する電波の周波数表現との対応関係に基づいて該部分電波を送信した前記送信機を特定
し、
前記受信機の登録手段が、各前記送信機が順次電波を送信するときに、受信した電波の周波数表現を、前記対応関係を記憶する記憶手段に登録し、
前記受信機の指示手段が、前記複数の送信機のうちの第1送信機から受信した電波の周波数表現が、第2送信機から受信した電波の周波数表現と等しいときに、前記第1送信機に対して、送信する電波の周波数の変更を指示し、
前記登録手段が、前記指示手段によって周波数の変更が指示された後に前記第1送信機から受信した電波の周波数表現を前記記憶手段に登録する、
ことを含む通信方法。
【請求項12】
無線通信によりパケットを伝送する通信方法であって、
複数の送信機がそれぞれ、前記パケットを構成する部分データを伝送する部分電波を、前記部分データと連続することで前記パケットを構成する他の部分データを伝送する他の部分電波とは時間間隔をあけて送信し、
受信機が、前記部分電波を受信し、
前記受信機が、受信した前記部分電波の周波数表現、及び、予め定められた各前記送信機と該送信機から受信する電波の周波数表現との対応関係、並びに、前記部分電波を受信したタイミングに基づいて該部分電波を送信した前記送信機を特定する、
ことを含む、
通信方法。
【請求項13】
無線通信によりパケットを伝送する通信方法であって、
複数の送信機がそれぞれ、前記パケットを構成する部分データを伝送する部分電波を、前記部分データと連続することで前記パケットを構成する他の部分データを伝送する他の部分電波とは時間間隔をあけて送信し、
受信機が、前記部分電波を受信し、
前記受信機が、受信した前記部分電波の周波数表現から、予め定められた各前記送信機と該送信機から受信する電波の周波数表現との対応関係に基づいて該部分電波を送信した前記送信機を特定する、
ことを含み、
前記複数の送信機が送信する電波に含まれる周波数成分は、互いに等しい、
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受信機、通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FA(Factory Automation)の現場において、複数のセンサを設置することにより、実施している工程、稼働している設備、環境、その他の状態を監視することがある。センサによるセンシング結果を無線通信により送信すれば、通信線の配線作業をすることなくセンシング結果を収集することができる。また、このような無線通信には通常、電力が必要であるため、センサを有する送信機は、電源線が接続され、又はバッテリで駆動されることが多い。これに対して、近年注目されているエナジーハーベストにより生成した電力で送信機が動作すれば、電源線の配線、並びに、経年劣化するバッテリの管理及び交換のような煩雑な作業を省略することができる。
【0003】
エナジーハーベストにより無線通信をする場合には、送信されるパケットの軽量化が求められる。ここで、子局に固有の周波数により子局を識別する技術を利用して、送信機から送信された電波を識別すれば、パケットに送信元ID(Identifier)を挿入する必要がなくなり、パケットサイズを小さくすることが可能になる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エナジーハーベストにより無線通信をする場合には、パケットの送信に必要な電力をキャパシタに蓄積するまでにある程度の時間がかかってしまう。例えば、小電力の無線通信の規格として代表的なBluetooth(登録商標)においては、最小のパケットのサイズが8ビットであり、パケット単位で送信及び受信がなされる。このため、送信機は、少なくとも8ビットのデータを送信するための電力を蓄積してから送信を開始しなければならない。また、パケットサイズが大きい場合には特に、パケットを送信するまでにかかる時間が長くなる。
【0006】
パケットの送信開始までに時間がかかる場合には、受信機において、パケットを受信するまでは送信機の稼働状態が不明であり、送信機の通信不能に対する処置が遅れるおそれがある。また、受信機側において、パケットにより伝送すべき情報の一部だけを用いる処理が可能なケースもあるが、そのような処理の実行も、すべての情報の受信を待たなければならない。したがって、エナジーハーベストにより無線通信をする際の利便性を向上させる余地がある。
【0007】
本開示は、上述の事情の下になされたもので、エナジーハーベストにより無線通信をする際の利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の受信機は、複数の送信機からそれぞれ無線通信により送信されるパケットを受信する受信機であって、パケットを構成する部分データを伝送する部分電波を、部分データと連続することでパケットを構成する他の部分データを伝送する他の部分電波とは時間間隔をあけて、複数の送信機のうちのいずれかから受信する受信手段と、各送信機と、該送信機から受信する電波の周波数表現と、の対応関係を記憶する記憶手段と、受信手段によって受信された部分電波の周波数表現から、対応関係に基づいて該部分電波を送信した送信機を特定する特定手段と、各送信機が順次電波を送信するときに、受信した電波の周波数表現を記憶手段に登録する登録手段と、複数の送信機のうちの第1送信機から受信した電波の周波数表現が、第2送信機から受信した電波の周波数表現と等しいときに、第1送信機に対して、送信する電波の周波数の変更を指示する指示手段と、を備え、登録手段は、指示手段によって周波数の変更が指示された後に第1送信機から受信した電波の周波数表現を記憶手段に登録する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、エナジーハーベストにより無線通信をする際の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る通信システムの構成を示す図
【
図2】実施の形態1に係る電波の送信について説明するための図
【
図3】実施の形態1に係る受信機の機能的な構成を示す図
【
図4】実施の形態1に係る登録フェーズについて説明するための図
【
図5】実施の形態1に係る運用フェーズについて説明するための図
【
図6】実施の形態1に係る時刻の付与について説明するための図
【
図7】実施の形態1に係る通信処理を示すフローチャート
【
図8】実施の形態1に係る登録処理を示すフローチャート
【
図9】実施の形態2に係る電波の受信タイミングの第1の例を示す図
【
図10】実施の形態2に係る通信処理を示すフローチャート
【
図11】実施の形態に係る電波の受信タイミングの第2の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態に係る通信システムについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
実施の形態1.
本実施の形態に係る通信システム1000は、工場及びプラントに代表される施設において、複数のセンサによるセンシング結果をエナジーハーベストで得た電力により無線通信で送信し、当該センシング結果を収集するシステムである。センシング結果を示すパケットは、パケット単位ではなく、当該パケットを構成する部分データに分割して送信される。詳細には、1ビットのサイズの部分データを送信するための電力が蓄積される度に、当該部分データが送信される。
【0013】
通信システム1000は、
図1に示されるように、電波を送信する複数の送信機10と、これら複数の送信機10から電波を受信する受信機20と、受信機20によって受信された情報を表示する表示器30と、を有する。
【0014】
送信機10は、例えば、1センチメートル四方の正方形で1ミリメートルの厚みを有する平板状のタグである。送信機10は、エナジーハーベストにより発電して、生成した電力を蓄積する発電部11と、送信機10の環境の状態を計測するセンサ12と、センサ12による計測の結果を記憶するセンサデータ記憶部13と、送信機10の構成要素を制御する制御部14と、受信機20へ送信すべきデータを一時的に記憶するメモリ15と、データを伝送する電波をアンテナ17に送信させる通信部16と、を有する。
【0015】
発電部11は、送信機10の環境中の光、熱、振動又は電磁波から発電する発電素子と、発電素子によって生成された電力を蓄積するキャパシタと、を有する。発電素子は、太陽光又は照明光により発電してもよい。また、発熱する装置に送信機10が装着されて、発電素子は、当該装置が発する熱により発電してもよい。振動する機械に送信機10が装着されて、発電素子は、当該機械の振動により発電してもよい。発電素子は、送信機10の設置環境において伝搬する音波による振動で発電してもよい。また、発電素子は、送信機10の設置環境において伝搬する電磁波から発電してもよい。発電素子による発電効率は、例えば、100マイクロワット、1ミリワット又は10ミリワットである。発電部11によって生成された電力は、送信機10の各構成要素に提供される。詳細には、発電部11によって発電されて蓄積された電力は、
図2上部のグラフに示されるように、予め定められた閾値を超える度に、部分データを送信するために消費される。発電部11は、環境中の光、熱、振動又は電磁波から発電する発電手段の一例に相当する。
【0016】
センサ12は、送信機10の環境の物理状態を計測する。例えば、センサ12は、圧力、流速、温度、照度、湿度、加速度、電流、電圧、磁気、又は流体中の特定の成分の濃度を計測してもよいし、他の状態を計測してもよい。センサ12は、計測結果を制御部14に出力する。なお、
図1では、センサ12が発電部11から電力の提供を受けることが示されているが、センサ12は、電力を消費することなく動作してもよい。
【0017】
センサデータ記憶部13は、例えばFeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)を含む。センサデータ記憶部13は、センサ12による計測の結果を制御部14から取得して記憶し、記憶している計測結果を、制御部14の要求に応答して制御部14に提供する。センサデータ記憶部13は、複数の計測結果を蓄積してもよいし、最新の計測結果のみを記憶してもよい。
【0018】
制御部14は、処理回路としてのプロセッサを含む。制御部14は、センサ12から取得した計測結果をセンサデータ記憶部13に格納する。また、制御部14は、受信機20へ送信すべき計測結果を含むパケットを生成し、生成したパケットをメモリ15に格納する。そして、制御部14は、発電部11において蓄積されている電力量が、パケットを構成する部分データの送信に必要な閾値を超えると、当該部分データを通信部16に送信させる。パケットは、
図2の最上部に示されるように、ビット値の系列であって、部分データは、1ビットのデータである。
【0019】
メモリ15は、例えばFeRAMを含む。メモリ15は、センサデータ記憶部13と同一の記憶素子であってもよいし、異なる記憶素子であってもよい。メモリ15は、FIFO(First Input First Output)メモリである。メモリ15には、制御部14によってパケットを構成するビット値が先頭から順に格納され、通信部16によって1ビットずつ読み出される。
【0020】
通信部16は、平板状のアンテナ17と一体的に構成される処理回路である。通信部16は、制御部14から指示されたタイミングで、メモリ15から1ビットの部分データを読み出して、当該部分データにより搬送波を変調することにより、当該部分データを伝送する電波をアンテナ17から送信する。この電波の周波数帯は、例えば、900MHz帯又は2.4GHz帯である。発電部11による発電効率が、電波を連続して定常的に発するために消費する電力よりも低いため、通信部16は、間欠的に電波を送信する。詳細には、通信部16が1つの部分データを送信するための電波の送信と、その前後の部分データに対応する電波の送信との間には、
図2に示されるように時間間隔が生じる。
【0021】
この時間間隔の長さは、発電部11による発電効率、設計された電波強度、及び、制御部14による演算処理によって定まる。ただし、時間間隔の長さは、少なくとも1ビットのデータを伝送する電波の送信時間より長い。このため、当該電波を受信する装置が、1つのパケットに相当するビット値の系列が連続する電波によって伝送されたものとして受信処理を実行する場合には、1ビット以上のデータが欠損したものとして扱われることとなる。
【0022】
送信機10から送信された電波は、
図2に示されるように、受信機20によって時間間隔をおいて受信される。ただし、通信システム1000が構築された環境における電波の回折、送信機10及び受信機20の少なくとも一方の移動、並びに、他の移動体による反射を含む環境要因により、受信機20によって受信される電波は、送信機10によって送信される電波から変動したものとなる。このような周波数特性の変動に基づいて、受信機20では、電波を送信した送信機10が、後述するように特定される。
【0023】
図1に戻り、受信機20は、通信専用の装置、又は、産業用PC(Personal Computer)であってもよいし、他の装置であってもよい。送信機10がエナジーハーベストで得た電力で動作するのに対して、受信機20は、外部から供給される電力で動作してもよいし、バッテリの電力で動作してもよい。受信機20は、複数の送信機10からそれぞれ無線通信により送信されるパケットを受信する受信機の一例に相当する。
【0024】
受信機20は、アンテナ21により送信機10から電波を受信する通信部22と、受信機20の構成要素を制御する制御部23と、情報を記憶する記憶部24と、外部の表示器30と通信するためのI/F(Interface)部25と、を有する。
【0025】
通信部22は、アンテナ21と一体的に構成される処理回路である。通信部22は、アンテナ21によって受信された電波の波形を制御部23に出力する。
【0026】
制御部23は、処理回路としてのプロセッサを含む。制御部23は、通信部22によって受信された電波の波形に対する演算処理を実行して、演算結果を記憶部24に格納する。また、制御部23は、記憶部24に格納したデータに対する演算処理を実行して、演算結果を示す情報をI/F部25に出力する。
【0027】
記憶部24は、RAMに代表される揮発性メモリ、及び、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)に代表される不揮発性メモリの少なくとも一方を含む。記憶部24は、制御部23から提供された情報を記憶し、制御部23からの要求に応答して、記憶している情報を制御部23に提供する。
【0028】
I/F部25は、ネットワークNWを介して通信するためのネットワークインタフェース回路を含む。I/F部25は、制御部23から出力された情報を、ネットワークNWを介して表示器30に送信する。
【0029】
表示器30は、産業用PCに代表されるユーザインタフェース端末である。表示器30は、ネットワークNWを介して受信機20から情報を受信し、受信した情報を表示器30のユーザに対して提示する。
【0030】
図3には、受信機20の機能的な構成が示されている。
図3に示されるように、受信機20は、その機能として、各送信機10から各ビット値が送信されたときに受信する電波の周波数表現を登録する登録部41と、送信機10に対して用いる周波数の変更を指示する指示部42と、送信機10から電波を受信する通信部43と、電波を送信した送信機10及び当該電波によって伝送されるビット値を特定する特定部44と、各種情報を記憶する記憶部45と、特定されたビット値からパケットを復元する復元部46と、時刻付与部47と、を有する。
【0031】
登録部41は、主として制御部23により実現される。登録部41は、通信システム1000の環境に起因して、各送信機10から互いに異なる伝送特性を経て伝送された電波の受信時における周波数表現を、記憶部45の対応関係テーブル451に登録する。詳細には、
図4に示されるように、登録フェーズにおいて、送信機10の一例である第1送信機及び第2送信機が、登録パケットを伝送する電波を順に送信し、通信部43が電波を受信する。登録パケットは、送信機10を識別するための送信元IDを含み、ゼロ及び1であるビット値をそれぞれ少なくとも1つ以上有する予め定められた初期化データを含む。この初期化データは、送信機10及び受信機20に共通であり、登録部41にとって既知の情報である。登録部41は、受信した電波の波形から、初期化データを構成する各ビット値に対応する波形を切り出して、1ビット毎の周波数表現を高速フーリエ変換により得る。そして、登録部41は、送信機10毎に、各ビット値を伝送する電波の受信時における周波数表現を対応関係テーブル451に登録する。対応関係テーブル451は、運用フェーズにおいて、1ビットに相当する電波を受信したときに、当該電波の送信元である送信機10と当該電波により伝送されるビット値を特定するために利用される。
【0032】
対応関係テーブル451に登録される周波数表現は、電波を構成する複数の周波数成分の周波数及び強度である。各送信機10が互いに異なるピーク周波数の電波を送信し、受信機20に至るまでの伝送特性によってもなお各送信機10を識別することができる場合には、ピーク周波数を判別することで送信機10を特定してもよい。ただし、送信機10の数が多くなると、各送信機10に対して互いに異なるピーク周波数を割り当てて、割り当てた周波数の電波が送信されるように設定する作業が繁雑になる。このため、2以上の送信機10から送信される電波の周波数が同等であっても、伝送特定により異なるものとなった受信時の周波数スペクトルにより示される情報のうち、ピーク周波数以外の特徴を利用して送信機10を特定することが好ましい。
【0033】
なお、複数の周波数成分の周波数及び強度が、対応関係テーブル451に登録される周波数表現として扱われる例を中心に説明するが、周波数表現はこれに限定されない。例えば、位相を含む周波数表現が対応関係テーブル451に登録されてもよいし、強度の分布の包絡線が登録されてもよい。
【0034】
また、
図4に示されるような登録フェーズにおける送信機10の動作は、作業者が各送信機10を操作して登録パケットを送信させることで実現されてもよいし、受信機20から無線通信を介した開始指示を受信することで開始してもよい。開始指示により送信機10の動作が開始する場合には、各送信機10は、当該送信機10自体があらかじめ記憶する固有のシリアル番号に基づくタイミングで登録パケットを送信してもよい。登録部41は、各送信機10が順次電波を送信するときに、受信した電波の周波数表現を記憶手段に登録する登録手段の一例に相当する。
【0035】
図3に戻り、指示部42は、主として制御部23によって実現される。指示部42は、登録部41によって対応関係テーブル451に登録されるべき周波数表現が、2つの送信機10で同等となっている場合に、これら2つの送信機10のうちの少なくとも一方に対して、送信すべき電波の周波数の変更を無線通信により指示する。ここで、周波数表現が同等であることは、いずれの送信機10が送信元であるかを判別することができないこと、或いは誤った判別の確率が予め定められた閾値より高いこと、又は、周波数表現が類似する度合いを示す類似度が予め定められた閾値より高いことを意味する。
【0036】
指示部42は、周波数を単に変更することを指示してもよいし、変更後の周波数を指定してもよい。変更後の周波数は、対応関係テーブル451に既に登録されている周波数表現とは異なる新たな周波数表現を受信することが期待される周波数であることが望ましい。例えば、指示部42は、対応関係テーブル451に既に登録されているいずれの周波数表現にも含まれない周波数、又は、いずれの周波数表現においてもピークとは異なる周波数を、変更後の周波数として指定してもよい。指示部42は、複数の送信機のうちの第1送信機から受信した電波の周波数表現が、第2送信機から受信した電波の周波数表現と等しいときに、第1送信機に対して、送信する電波の周波数の変更を指示する指示手段の一例に相当する。また、登録部41は、指示手段によって周波数の変更が指示された後に第1送信機から受信した電波の周波数表現を記憶手段に登録する登録手段の一例に相当する。
【0037】
通信部43は、主としてアンテナ21及び通信部22によって実現される。通信部43は、登録フェーズにおいては、受信した電波の波形を登録部41に出力し、指示部42からの周波数の変更指示を各送信機10へ送信する。また、通信部43は、運用フェーズにおいては、1ビットの部分データに相当する電波を間欠的に受信して、受信した電波の波形を特定部44に出力する。通信部43は、パケットを構成する部分データを伝送する部分電波を、部分データと連続することで当該部分データとともにパケットを構成する他の部分データを伝送する他の部分電波とは時間間隔をあけて、複数の送信機のうちのいずれかから受信する受信手段の一例に相当する。
【0038】
特定部44は、主として制御部23によって実現される。特定部44は、
図5に示されるように、各送信機10から1ビットに対応する電波の波形を周波数表現に変換する。また、特定部44は、変換して得た周波数表現を、対応関係テーブル451に登録されている周波数表現と照合することにより、当該電波を送信した送信機10と当該電波により伝送されるビット値とを特定する。そして、特定部44は、特定した送信機10及びビット値を示す情報を記憶部45に書き込む。特定部44は、受信手段によって受信された部分電波の周波数表現から、対応関係に基づいて当該部分電波を送信した送信機を特定する特定手段の一例に相当する。
【0039】
記憶部45は、主として記憶部24によって実現される。記憶部45は、各送信機10と、当該送信機から受信する電波の周波数表現と、の対応関係を記憶する記憶手段の一例に相当する。
【0040】
復元部46は、主として制御部23によって実現される。復元部46は、特定部44によって特定されて記憶部45に蓄積された送信元の送信機10及びビット値を参照して、同一の送信機10から時間間隔をおいて連続して送信されたビット値から、
図5の最下部に示されるように、当該ビット値の系列であるパケットを復元する。そして、復元部46は、復元したパケットにより示されるセンサ12の計測結果を時刻付与部47に出力する。復元部46は、受信手段によって複数回受信された部分電波であって、同一の送信機から送信されたことが特定手段によって連続して特定された部分電波によって伝送される部分データから、パケットを復元する復元手段の一例に相当する。
【0041】
時刻付与部47は、主として制御部23及びI/F部25の協働により実現される。時刻付与部47は、復元部46によって復元されたパケットに含まれる、センサ12による計測の結果を示す計測結果データに対して、
図6に示されるように当該計測に対応する時刻を付与する。そして、時刻付与部47は、時刻が付与された計測結果を表示器30に通知することにより、計測結果の時系列データを表示器30に送信する。時刻付与部47は、復元手段によって復元されたパケットにより示される情報に時刻を付与して出力する時刻付与手段の一例に相当する。
【0042】
時刻付与部47によって付与される時刻は、パケットに含まれる値であってもよい。例えば、送信機10が、計測したタイミングを示すタイムスタンプの値を計測結果とともにパケットに挿入している場合には、当該値が、時刻付与部47によって時刻として付与されてもよい。また、付与される時刻は、パケットに含まれる値に対して予め定められた演算処理を施した結果であってもよい。例えば、上述のようなタイムスタンプがUNIX(登録商標)時刻を示す場合において、時刻付与部47は、当該UNIX(登録商標)時刻を、日付及び時刻を示す値に変換してから計測結果に付与してもよい。また、時刻付与部47は、パケットを構成する最初のビット値が通信部43によって受信された時刻を、計測結果に付与してもよい。計測結果に付与される受信時刻は、パケットを構成するビット値のうちのあらかじめ定められたいずれかのビット値が受信された時刻でもよい。
【0043】
表示器30は、計測結果の推移を表示器30のユーザに対して、
図6の下部に示されるように表示する。
図6の例では、時刻T1が付与された計測結果から、時刻T2が付与された計測結果までの推移がグラフ形式で表示されている。
【0044】
続いて、通信システム1000において実行される通信処理について、
図7~8を用いて説明する。この通信処理は、通信システム1000において実行される通信方法の一例に相当する。
【0045】
通信処理では、受信機20が、登録処理を実行する(ステップS1)。登録処理では、
図8に示されるように、受信機20の通信部43が、いずれか1つの送信機10から電波を受信する(ステップS11)。この電波は、登録パケットを伝送する。次に、登録部41が、ステップS11で受信された電波を1ビットの部分データに相当する時間幅の区分に切り分けた上で、各区分の電波を周波数表現に変換する(ステップS12)。
【0046】
登録部41は、ステップS12で得た周波数表現が、ステップS11で受信した電波を送信した送信機10とは異なる他の送信機10について既に対応関係テーブル451に登録されているいずれかの周波数表現に等しいか否かを判定する(ステップS13)。周波数表現が等しいと判定された場合(ステップS13;Yes)、指示部42が、ステップS11で受信した電波を送信した送信機10に対して周波数の変更を指示して、当該送信機10から周波数が変更された電波を通信部43が再度受信する(ステップS14)。その後、ステップS12以降の処理が繰り返される。これにより、送信機10について、送信元として他の送信機10との判別が可能な周波数表現が、対応関係テーブル451に登録される。
【0047】
ステップS13にて周波数が等しくないと判定された場合(ステップS13;No)、登録部41が、ステップS11で受信した電波を送信した送信機10及びステップS12で切り分けた電波に対応する1ビットの部分データの値に対応付けて、当該切り分けた電波の周波数表現を対応関係テーブル451に登録する(ステップS15)。具体的には、登録部41は、登録パケットに含まれる送信元ID、及び、登録パケットのうちの初期化データを構成するビット値に対応付けて、当該ビット値に相当する電波が有する複数の周波数成分の周波数及び強度を、対応関係テーブル451に登録する。
【0048】
次に、登録部41は、すべての送信機10について登録が終了したか否かを判定する(ステップS16)。登録部41は、受信機20のユーザによってあらかじめ指定された個数の送信機10について周波数表現が登録されたときに、ステップS16の判定を肯定してもよい。また、登録部41は、いずれかの送信機10からの電波を受信しない時間の長さが予め定められた閾値を超えるときにステップS16の判定を肯定してもよい。
【0049】
すべての送信機10についての登録が終了していないと判定された場合(ステップS16;No)、ステップS11以降の処理が繰り返される。これにより、周波数表現が未だ登録されていない送信機10について、その電波の周波数表現が登録される。一方、すべての送信機10について登録が終了したと判定された場合(ステップS16;Yes)、受信機20による処理は、
図8の登録処理から、
図7の通信処理に戻る。これにより、登録フェーズが終了し、運用フェーズが開始する。
【0050】
図7に示されるステップS1の登録処理に続いて、受信機20の通信部43は、いずれかの送信機10から送信された1ビットの部分データに相当する電波を受信する(ステップS2)。次に、特定部44が、ステップS2で受信された電波を周波数表現に変換する(ステップS3)。そして、特定部44は、変換により得た周波数表現を、対応関係テーブル451に登録されている周波数表現と照合することで、電波を送信した送信機10と当該電波により伝送される部分データを特定する(ステップS4)。特定した送信機10及び部分データは、互いに対応付けられて記憶部45に格納される。
【0051】
次に、復元部46が、同一の送信機10から受信して蓄積した部分データでパケットの復元が可能か否かを判定する(ステップS5)。例えば、パケットが固定長である場合には、当該固定長のパケットに相当する部分データが、繰り返し実行されたステップS4により蓄積されているか否かが判定される。また、パケットが可変長である場合には、蓄積された部分データを結合してパケットの復元を試行することで、パケットの復元が可能か否かを判定してもよい。
【0052】
パケットの復元が可能でないと判定された場合(ステップS5;No)、ステップS2以降の処理が繰り返される。これにより、各送信機10から間欠的に送信される部分データが引き続き受信される。
【0053】
パケットの復元が可能であると判定された場合(ステップS5;Yes)、復元部46がパケットを復元し(ステップS6)、時刻付与部47が、復元されたパケットにより示される計測結果に時刻を付与して表示器30に出力する(ステップS7)。そして、表示器30は、計測結果の時系列データを
図6に示されるようにグラフを表示する(ステップS8)。その後、ステップS2以降の処理が繰り返される。これにより、エナジーハーベストによる無線通信で、センシング結果を収集して活用することが容易になる。
【0054】
以上、説明したように、通信部43は、部分データを伝送する電波を、当該部分データと連続することでパケットを構成する他の部分データを伝送する他の電波とは時間間隔をあけて、いずれかの送信機10から受信し、特定部44は、電波の周波数表現から対応関係テーブル451に基づいて当該電波を送信した送信機10を特定する。このため、パケット全体を一度に送信するための送信機10における電力の蓄積を待たずに、送信機10から送信される部分データを受信することができる。これにより、エナジーハーベストにより無線通信をする際の利便性を向上させることができる。
【0055】
また、特定部44は、部分データを伝送する電波に含まれる複数の周波数成分の周波数及び強度から、対応関係テーブル451に基づいて、当該電波を送信した送信機10を特定する。これらの周波数成分の周波数及び強度は、送信機10から受信機20への電波の伝送特性によって異なるものとなる。したがって、各送信装置に固有のピーク周波数を設定することにより送信装置を識別する場合に対して、ピーク周波数を設定する作業を簡略化することができる。また、ピーク周波数による識別よりも、複数の周波数成分による送信機10の特定は、外乱に対して頑健であることが期待される。
【0056】
また、指示部42は、2つの送信機10から受信した電波の周波数表現が等しいときに、少なくとも一方の送信機10に対して、送信する周波数の変更を指示する。送信機が周波数を変更すれば、これら2つの送信機10から受信される電波の周波数表現は異なるものとなる。したがって、電波の送信元である送信機10を確実に判別することができる。
【0057】
また、復元部46は、同一の送信機10から連続して受信した部分データからパケットを復元する。これにより、部分データを扱うための専用の処理を設計する作業は生じない。
【0058】
また、時刻付与部47は、パケットにより示される計測結果に時刻を付与する。これにより、時間的に分散して得た複数の部分データにより伝送される計測結果に、適当な時刻を付与することができる。また、エナジーハーベストにより動作する送信機10は、時刻を取得することが困難な場合が多く、そのような場合であっても、計測結果に適当な時刻を付与することができる。ひいては、センシング結果のモニタリングを効率的に実施することができる。
【0059】
実施の形態2.
続いて、実施の形態2について、上述の実施の形態1との相違点を中心に説明する。なお、上記実施の形態1と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いる。上記実施の形態1では、登録フェーズで対応関係テーブル451に登録した周波数表現と同等の周波数表現を有する電波が運用フェーズにおいても受信されることが想定されていた。しかしながら、通信システム1000の環境が登録フェーズから変化した場合には、運用フェーズにおいて受信される電波の周波数表現も変化し得る。このため、周波数表現に基づく送信機10の特定が困難になる。以下では、周波数表現とは異なる情報をさらに用いて、電波を送信した送信機10を特定する例について説明する。
【0060】
図9には、1ビットの部分データを伝送する電波を6回受信する例が示されている。ここで、1回目、3回目及び5回目に受信した電波については、送信元が「ID:01」で示される第1送信機であることが特定され、2回目及び4回目に受信した電波については、送信元が「ID:02」で示される第2送信機であることが特定されている。
【0061】
しかしながら、6回目に受信した電波については、その周波数表現から送信機10を特定することができず、送信元が不明であることが示されている。詳細には、6回目に受信した電波の周波数表現が、対応関係テーブル451に登録されているいずれの周波数表現とも等しくない場合、及び、対応関係テーブル451に登録されている2以上の周波数表現に等しい場合に、送信元の送信機10が不明となる。
【0062】
ここで、
図2で示されたように、エナジーハーベストによる発電量は通常、定常的である。このため、
図9に示されるように、各送信機10から電波が送信されるタイミングは、周期的になる。詳細には、第1送信機からの電波の送信周期は、周期PR1であって、第2送信機からの電波の送信周期は、周期PR2であることが示されている。したがって、6回目の電波の受信タイミングまでに、各送信機10から最後に電波を受信したタイミングから経過した時間長を、各送信機10の電波の送信周期と比較することで、6回目の電波の送信元を特定することが可能になる。
【0063】
図9の例では、6回目の受信タイミングは、4回目に受信した第2送信機からの電波から、周期PR2と等しい長さの時間が経過したタイミングであるため、送信元が第2送信機であることが特定される。第2送信機であることが特定されれば、この電波により伝送される1ビットの部分データについては、対応関係テーブル451において第2送信機と対応付けられた周波数表現から推定すればよい。
【0064】
図10には、本実施の形態に係る通信処理の流れが示されている。
図10に示されるように、この通信処理では、実施の形態1と同様のステップS1~S4が実行される。次に、特定部44は、ステップS4で送信機10及びビット値を特定することができたか否かを判定する(ステップS21)。特定することができた場合(ステップS21;Yes)、ステップS5以降の処理が実行される。
【0065】
一方、特定することができない場合(ステップS21;No)、特定部44は、電波を受信したタイミングに基づいて送信機を特定し、対応関係テーブル451を参照して部分データの値を特定する(ステップS22)。具体的には、特定部44は、各送信機10から過去に電波を受信した周期的なタイミングから、各送信機10についての次回の受信タイミングを予測し、送信元を特定することができなかった電波の受信タイミングに最も近いことが予測された受信タイミングの送信機10を、送信元として特定する。その後、ステップS5以降の処理が実行される。
【0066】
以上、説明したように、特定部44は、対応関係テーブル451及び電波を受信したタイミングに基づいて、電波を送信した送信機10を特定する。詳細には、特定部44は、受信された電波の周波数表現が、対応関係テーブル451に登録されているいずれの周波数表現とも異なる場合、又は、登録されている2以上の周波数表現に該当する場合に、各送信機10から過去に電波を受信した周期に基づいて、当該電波を送信した送信機を特定する。これにより、電波の波形の周波数表現だけでは送信元を特定することができない場合であっても、送信元を特定することができる。
【0067】
なお、周波数表現の比較だけでは送信元を特定することができない場合に限って、電波の受信タイミングに基づいて送信元を特定する例について説明したが、これには限定されない。特定部44は、当初から周波数表現及び受信タイミングの双方により送信元を特定してもよい。
【0068】
また、送信機10による電波の送信タイミングが周期的である例を説明したが、これには限定されない。例えば、
図11において三角形のマークで示されるように、周期的とはいえないが規則性を有するタイミングで電波が送信されてもよい。
図11の例では、3つのタイミングを含むグループが周期的に現れているため、将来の受信タイミングを予測することが可能である。このように、受信タイミングが規則的であれば、タイミングに基づく送信元の特定が可能である。
【0069】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態によって限定されるものではない。
【0070】
例えば、センサ12による計測結果を収集して時系列の形式で表示する例について説明した。しかしながら、パケットによって伝送される情報は、センサ12による計測結果に限定されず、他の情報であってもよい。また、パケットによって伝送される情報を受信機20が受信した後にこの情報に対して施される処理は、グラフ表示に限定されず、他の処理であってもよい。
【0071】
また、受信機20が記憶部45、復元部46及び時刻付与部47を有する例について説明したが、これには限定されない。特定部44は、電波の送信元及び電波により伝送される部分データの値を特定した結果を、記憶部45に代えて、受信機20の外部記憶装置に格納し、さらに外部の装置が、復元部46及び時刻付与部47と同等の機能を発揮してもよい。
【0072】
また、部分データのサイズが1ビットである例について説明したが、部分データのサイズは、2ビット以上であってもよい。ただし、部分データのサイズが2ビット以上である場合にも、電波の周波数表現から送信元が判別されるため、部分データが送信元IDを含む必要はない。同様に、複数の部分データから構成されるパケットについても、送信元IDを含む必要はない。
【0073】
また、すべての送信機10が固有の周波数特性を有する電波を送信する必要はない。2以上の送信機10が同等の周波数特性を有する電波を送信する場合であっても、伝送路の特性により、受信時における電波の周波数表現が互いに異なるものとなるため、これら2以上の送信機10のそれぞれを送信元として特定することができる。
【0074】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。つまり、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示は、低消費電力の無線通信に適している。
【符号の説明】
【0076】
10 送信機、11 発電部、12 センサ、13 センサデータ記憶部、14,23 制御部、15 メモリ、16,22,43 通信部、17,21 アンテナ、20 受信機、24,45 記憶部、25 I/F部、30 表示器、41 登録部、42 指示部、44 特定部、46 復元部、47 時刻付与部、451 対応関係テーブル、1000 通信システム、PR1,PR2 周期、NW ネットワーク。
【要約】
受信機(20)は、複数の送信機からそれぞれ無線通信により送信されるパケットを受信する。受信機(20)は、パケットを構成する部分データを伝送する電波を、当該部分データと連続することで当該パケットを構成する他の部分データを伝送する他の電波とは時間間隔をあけて、複数の送信機のうちのいずれかから受信する通信部(43)と、各送信機と、当該送信機から受信する電波の周波数表現と、の対応関係を記憶する記憶部(45)と、通信部(43)によって受信された電波の周波数表現から、対応関係に基づいて当該電波を送信した送信機を特定する特定部(44)と、を備える。受信機(20)は、無線通信によるモニタリングに寄与する。