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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】騒音と振動を下げる回転鋸
(51)【国際特許分類】
   B23D 61/02 20060101AFI20241216BHJP
   B27B 33/08 20060101ALI20241216BHJP
   B27B 5/18 20060101ALI20241216BHJP
   B27B 9/02 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B23D61/02 Z
B27B33/08 Z
B27B5/18
B27B9/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021138424
(22)【出願日】2021-07-19
(62)【分割の表示】P 2018058994の分割
【原出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2021183377
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】518104083
【氏名又は名称】有限会社ヨシダ
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓生
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-155582(JP,A)
【文献】特開2000-120777(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00141042(EP,A1)
【文献】特開2005-205701(JP,A)
【文献】特開2002-178301(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1528549(CN,A)
【文献】特開2004-314218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 61/02
B27B 33/08
B27B 5/18
B27B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状体と、前記円板状体の外周に有する刃部と、円板状体の表裏面を貫通し前記円板状体の厚み方向に対して傾斜面を有するスリットが、複数設けられている回転鋸において、前記の各スリットは、単独で連続してなる蛇行路を有し、蛇行により対向して配置される複数の対向する蛇行路は、蛇行により対向して配置される第1の蛇行路の傾斜面と、第1の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第2の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのス リット開口部が位置する方向に近付くように傾斜し、前記第2の蛇行路の傾斜面と、第2の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第3の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向から離れるように傾斜し、前記第3の蛇行路の傾斜面と、第3の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第4の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向に近付くように傾斜し、前記第4の蛇行路の傾斜面と、第4の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第5の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向から離れるように傾斜し、前記各スリットの前記第1の蛇行路の傾斜面と前記第2の蛇行路の傾斜面と前記第3の蛇行路の傾斜面と前記第4の蛇行路の傾斜面と前記第5の蛇行路の傾斜面において、前記円板状体の前記一主面側のスリット開口部から当該円板状体の前記一主面に対して垂直方向に見た時、前記他方主面側のスリット開口部が確認出来ない構成とし、湾曲部を挟んで隣接して対向する各蛇行路を含む断面図において、前記一主面側のスリット開口部の幅と前記他方主面側のスリット開口部の幅が等しく、前記スリット内で向かい合う前記傾斜面同志が平行であり、前記第1の蛇行路と繋がる第1の他方主面側スリット開口部の中心部と隣接する第2の他方主面側スリット開口部の中心部との距離、前記第2の他方主面側スリット開口部に前記第2の蛇行路を介して繋がる第2の一主面側スリット開口部の中心部と隣接する第3の一主面側スリット開口部の中心部との距離、前記第3の一主面側スリット開口部に前記第3の蛇行路を介して繋がる第3の他方主面側スリット開口部の中心部と隣接する第4の他方主面側スリット開口部の中心部との距離、及び、前記第4の他方主面側スリット開口部に前記第4の蛇行路を介して繋がる第4の一主面側スリット開口部の中心部と隣接する第5の一主面側スリット開口部の中心部との距離がこの順に小さくなることを特徴とする回転鋸。
【請求項2】
ベース部と、前記ベース部に対して支持されている丸鋸本体とよりなり、前記丸鋸本体は電動機と、前記電動機により回転駆動される回転鋸とより構成される電動工具において、前記回転鋸は、円板状体と、前記円板状体の外周に有する刃部と、前記円板状体の表裏面を貫通し、前記円板状体の厚み方向に対して傾斜面を有する複数のスリットとを備え、前記の各スリットは、単独で連続してなる蛇行路を有し、蛇行により対向して配置される複数の対向する蛇行路は、蛇行により対向して配置される第1の蛇行路の傾斜面と、第1の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第2の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向に近付くように傾斜し、前記第2の蛇行路の傾斜面と、第2の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第3の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向から離れるように傾斜し、前記第3の蛇行路の傾斜面と、第3の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第4の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向に近付くように傾斜し、前記第4の蛇行 路の傾斜面と、第4の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第5の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向から離れるように傾斜し、前記各スリットの前記第1の蛇行路の傾斜面と前記第2の蛇行路の傾斜面と前記第3の蛇行路の傾斜面と前記第4の蛇行路の傾斜面と前記第5の蛇行路の傾斜面において、前記円板状体の前記一主面側のスリット開口部から当該円板状体の前記一主面に対して垂直方向に見た時、前記他方主面側のスリット開口部が確認出来ない構成とし、湾曲部を挟んで隣接して対向する各蛇行路を含む断面図において、前記一主面側のスリット開口部の幅と前記他方主面側のスリット開口部の幅が等しく、前記スリット内で向かい合う前記傾斜面同志が平行であり、前記第1の蛇行路と繋がる第1の他方主面側スリット開口部の中心部と隣接する第2の他方主面側スリット開口部の中心部との距離、前記第2の他方主面側スリット開口部に前記第2の蛇行路を介して繋がる第2の一主面側スリット開口部の中心部と隣接する第3の一主面側スリット開口部の中心部との距離、前記第3の一主面側スリット開口部に前記第3の蛇行路を介して繋がる第3の他方主面側スリット開口部の中心部と隣接する第4の他方主面側スリット開口部の中心部との距離、及び、前記第4の他方主面側スリット開口部に前記第4の蛇行路を介して繋がる第4の一主面側スリット開口部の中心部と隣接する第5の一主面側スリット開口部の中心部との距離がこの順に小さくなることを特徴とする回転鋸を備えた電動工具。
【請求項3】
加工材を載置するテーブルと、前記テーブルの隙間から突出する回転鋸と、前記回転鋸を回転させる電動機とを備え、前記テーブルと前記回転鋸との相対的な移動により前記加工材を切断する回転鋸を備えた工作機械において、前記回転鋸は、円板状体と、前記円板状体の外周に有する刃部と、前記円板状体の表裏面を貫通し、前記円板状体の厚み方向に対して傾斜面を有する複数のスリットとを備え、前記の各スリットは、単独で連続してなる蛇行路を有し、蛇行により対向して配置される複数の対向する蛇行路は、蛇行により対向して配置される第1の蛇行路の傾斜面と、第1の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第2の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向に近付くように傾斜し、前記第2の蛇行路の傾斜面と、第2の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第3の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向から離れるように傾斜し、前記第3の蛇行路の傾斜面と、第3の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第4の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向に近付くように傾斜し、前記第4の蛇行路の傾斜面と、第4の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第5の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向から離れるように傾斜し、前記各スリットの前記第1の蛇行路の傾斜面と前記第2の蛇行路の傾斜面と前記第3の蛇行路の傾斜面と前記第4の蛇行路の傾斜面と前記第5の蛇行路の傾斜面において、前記円板状体の前記一主面側のスリット開口部から当該円板状体の前記一主面に対して垂直方向に見た時、前記他方主面側のスリット開口部が確認出来ない構成とし、湾曲部を挟んで隣接して対向する各蛇行路を含む断面図において、前記一主面側のスリット開口部の幅と前記他方主面側のスリット開口部の幅が等しく、前記スリット内で向かい合う前記傾斜面同志が平行であり、前記第1の蛇行路と繋がる第1の他方主面側スリット開口部の中心部と隣接する第2の他方主面側スリット開口部の中心部との距離、前記第2の他方主面側スリット開口部に前記第2の蛇行路を介して繋がる第2の一主面側スリット開口部の中心部と隣接する第3の一主面側スリット開口部の中心部との距離、前記第3の一主面側スリット開口部に前記第3の蛇行路を介して繋がる第3の他方主面側スリット開口部の中心部と隣接する第4の他方主面側スリット開口部の中心部との距離、及び、前記第4の他方主面側スリット開口部に前記第4の蛇行路を介して繋がる第4の一主面側スリット開口部の中心部と隣接する第5の一主面側スリット開口部の中心部との距離がこの順に小さくなることを特徴とする回転鋸を備えた工作機械。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木材、金属、石材等の削材を切断する回転鋸に関し、特に、切断加工時に発生する騒音を低下させることができる回転鋸、この回転鋸を用いた電動工具および回転鋸を備えた工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転鋸は、円板状の基板(台板)と、基板外周縁に形成された複数の刃から構成されている。この回転鋸を用いて木材、金属、石材等の被加工材を切断加工すると騒音が発生し、その騒音が近隣に与える影響が大きく、騒音低下、騒音改善などが要求されている。
【0003】
回転鋸の騒音原因は、回転する鋸刃と被削材との、摩擦によって、鋸刃及び被削材が振動することにある。この振動により発生する騒音を抑制することは困難である。
特に、鋸刃と被削材の摩擦抵抗の変動によって発生する振動は回転鋸の固有振動数と一致すれば振動が大きくなり、それによって騒音も大きくなる。このような回転鋸の騒音を低減するために様々な提案が従来よりなされている。
【0004】
例えば、特開2000-120777に制振機能を有する丸鋸が開示されている。
この丸鋸は丸鋸台金の外周全周にわたって複数の刃体が設けられており、この各刃体には超硬合金の鋸刃がろう付けされている。この丸鋸の特徴は、丸鋸の中間域に幅1mm~0.1mmのスリットを形成し、該スリットに粒子を充填して制振効果を得ることを特徴としている。
【0005】
具体的な構成としては、丸鋸台金の中間域に両端が開口しないスリットが設けられており、このスリット内に具体的には磁化された粒子が充填されたものである。
このような構成によれば、スリット内に粒子を充填させたので粒子がスリット側面と擦れ合ったり、または粒子相互が擦れ合うことにより振動エネルギーを減少し振動が抑制される。またスリットの幅寸法を1mm~0.1mmとなしたので、粒子が完全に入り込み、また脱落し難くなり、充分なる制振効果を得られるとしている。
【0006】
しかしながら、丸鋸合金にスリットを設け、このスリットに粘弾性材を充填した後に、基板表面に低摩擦材料を形成しようとすると、低摩擦材料の形成の際の加熱により充填材が溶融するという問題が生じた。またスリットを設けた後に、先に低摩擦材料を形成し、その後粘弾性材を充填すると、充填したものが抜け落ちてしまうという問題があることが判明した。即ちスリット内に形成される低摩擦材のために粘弾材が強固にスリット内に固着されずに抜け落ちてしまうという現象である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-120777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は上記のような問題を解決した回転鋸を提供することにあり、加工時に発生する回転円板の騒音の一層の低減を図るために、回転鋸の本体そのものに工夫を施したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する第1の発明は、円板状体と、前記円板状体の外周に有する刃部と、円板状体の表裏面を貫通し、前記円板状体の厚み方向に対して傾斜面を有する複数のスリットとを備え、前記の各スリットは、単独で連続してなる蛇行路を有し、蛇行により対向して配置される複数の対向する蛇行路は、蛇行により対向して配置される第1の蛇行路の傾斜面と、第1の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第2の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向に近付くように傾斜し、前記第2の蛇行路の傾斜面と、第2の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第3の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向から離れるように傾斜し、前記第3の蛇行路の傾斜面と、第3の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第4の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向に近付くように傾斜し、前記第4の蛇行路の傾斜面と、第4の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第5の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向から離れるように傾斜し、前記各スリットの前記第1の蛇行路の傾斜面と前記第2の蛇行路の傾斜面と前記第3の蛇行路の傾斜面と前記第4の蛇行路の傾斜面と前記第5の蛇行路の傾斜面において、前記円板状体の前記一主面側のスリット開口部から当該円板状体の前記一主面に対して垂直方向に見た時、前記他方主面側のスリット開口部が確認出来ない構成とし、湾曲部を挟んで隣接して対向する各蛇行路を含む断面図において、前記一主面側のスリット開口部の幅と前記他方主面側のスリット開口部の幅が等しく、前記スリット内で向かい合う前記傾斜面同志が平行であり、前記第1の蛇行路と繋がる第1の他方主面側スリット開口部の中心部と隣接する第2の他方主面側スリット開口部の中心部との距離、前記第2の他方主面側スリット開口部に前記第2の蛇行路を介して繋がる第2の一主面側スリット開口部の中心部と隣接する第3の一主面側スリット開口部の中心部との距離、前記第3の一主面側スリット開口部に前記第3の蛇行路を介して繋がる第3の他方主面側スリット開口部の中心部と隣接する第4の他方主面側スリット開口部の中心部との距離、及び、前記第4の他方主面側スリット開口部に前記第4の蛇行路を介して繋がる第4の一主面側 スリット開口部の中心部と隣接する第5の一主面側スリット開口部の中心部との距離がこの順に小さくなることを特徴とする回転鋸である。
【0010】
また、上記の目的を達成する第2の発明は、ベース部と、前記ベースに対して支持されている丸鋸本体とよりなり、前記丸鋸本体は電動機と、前記電動機により回転駆動される回転鋸とより構成される電動工具において、前記回転鋸は、円板状体と、前記円板状体の外周に有する刃部と、円板状体の表裏面を貫通し、前記円板状体の厚み方向に対して傾斜面を有する複数のスリットとを備え、前記の各スリットは、単独で連続してなる蛇行路を有し、蛇行により対向して配置される複数の対向する蛇行路は、蛇行により対向して配置される第1の蛇行路の傾斜面と、第1の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第2の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向に近付くように傾斜し、前記第2の蛇行路の傾斜面と、第2の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第3の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向から離れるように傾斜し、前記第3の蛇行路の傾斜面と、第3の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第4の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向に近付くように傾斜し、前記第4の蛇行路の傾斜面と、第4の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第5の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向から離れるように傾斜し、前記各スリットの前記第1の蛇行路の傾斜面と前記第2の蛇行路の傾斜面と前記第3の蛇行路の傾斜面と前記第4の蛇行路の傾斜面と前記第5の蛇行路の傾斜面において、前記円板状体の前記一主面側のスリット開口部から当該円板状体の前記一主面に対して垂直方向に見た時、前記他方主面側のスリット開口部が確認出来ない構成とし、湾曲部を挟んで隣接して対向する各蛇行路を含む断面図において、前記一主面側のスリット開口部の幅と前記他方主面側のスリット開口部の幅が等しく、前記スリット内で向かい合う前記傾斜面同志が平行であり、前記第1の蛇行路と繋がる第1の他方主面側スリット開口部の中心部と隣接する第2の他方主面側スリット開口部の中心部との距離、前記第2の他方主面側スリット開口部に前記第2の蛇行路を介して繋がる第2の一主面側スリット開口部の中心部と隣接する第3の一主面側スリット開口部の中心部との距離、前記第3の一主面側スリット開口部に前記第3の蛇行路を介して繋がる第3の他方主面側スリット開口部の中心部と隣接する第4の他方主面側スリット開口部の中心部との距離、及び、前記第4の他方主面側スリット開口部に前記第4の蛇行路を介して繋がる第4の一主面側スリット開口部の中心部と隣接する第5の一主面側スリット開口部の中心部との距離がこの順に小さくなることを特徴とする回転鋸を備えた電動工具である。
【0011】
さらに、上記の目的を達成する第3の発明は、 加工材を載置するテーブルと、前記テーブルの隙間から突出する回転鋸と、前記回転鋸を回転させる電動機と、前記テーブルと前記回転鋸との相対的な移動により前記加工材を切断する工作機械において、前記回転鋸は、円板状体と、前記円板状体の外周に有する刃部と、円板状体の表裏面を貫通し、前記円板状体の厚み方向に対して傾斜面を有する複数のスリットとを備え、前記の各スリットは、単独で連続してなる蛇行路を有し、蛇行により対向して配置される複数の対向する蛇行路は、蛇行により対向して配置される第1の蛇行路の傾斜面と、第1の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第2の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向に近付くように傾斜し、前記第2の蛇行路の傾斜面と、第2の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第3の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向から離れるように傾斜し、前記第3の蛇行路の傾斜面と、第3の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第4の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向に近付くように傾斜し、前記第4の蛇行路の傾斜面と、第4の湾曲部を挟んで、隣接して対向する第5の蛇行路の傾斜面とが、前記円板状体の一主面側から他方主面側に向けて前記一主面側の互いのスリット開口部が位置する方向から離れるように傾斜し、前記各スリットの前記第1の蛇行路の傾斜面と前記第2の蛇行路の傾斜面と前記第3の蛇行路の傾斜面と前記第4の蛇行路の傾斜面と前記第5の蛇行路の傾斜面において、前記円板状体の前記一主面側のスリット開口部から当該円板状体の前記一主面に対して垂直方向に見た時、前記他方主面側のスリット開口部が確認出来ない構成とし、湾曲部を挟んで隣接して対向する各蛇行路を含む断面図において、前記一主面側のスリット開口部の幅と前記他方主面側のスリット開口部の幅が等しく、前記スリット内で向かい合う前記傾斜面同志が平行であり、前記第1の蛇行路と繋がる第1の他方主面側スリット開口部の中心部と隣接する第2の他方主面側スリット開口部の中心部との距離、前記第2の他方主面側スリット開口部に前記第2の蛇行路を介して繋がる第2の一主面側スリット開口部の中心部と隣接する第3の一主面側スリット開口部の中心部との距離、前記第3の一主面側スリット開口部に前記第3の蛇行路を介して繋がる第3の他方主面側スリット開口部の中心部と隣接する第4の他方主面側スリット開口部の中心部との距離、及び、前記第4の他方主面側スリット開口部に前記第4の蛇行路を介して繋がる第4の一主面側スリット開口部の中心部と隣接する第5の一主面側スリット開口部の中心部との距離がこの順に小さくなることを特徴とする回転鋸を備えた工作機械である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、切断抵抗、振動抵抗の低減が可能となるので、回転鋸と被切断材との間で発生する騒音が小さくなり、騒音低減効果を可能にするという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明に係る回転鋸の一実施形態を示す概略構成図である。
図2】この発明に係る回転鋸のスリットを含む円板状体の一例を示す一部断面図である。
図3】この発明に係る回転鋸のスリットを含む円板状体の他の例を示す一部断面図である。
図4】この発明に係る回転鋸にスリットを形成する状態を示す概略図である。
図5】この発明に係る回転鋸を用いた電動工具を示す概略斜視図である。
図6】この発明に係る回転鋸を備えた工作機械の一実施形態を示す斜視図である。
図7】この発明に係る回転鋸を備えた工作機械の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の最良の実施形態について、図1を参照して説明する。
図1において、回転鋸本体10は、ステンレス等よりなる円板状体11と、その円板状体11の外周に沿って一定の間隔で形成されている多数の刃部12とから構成されている。円板状体11の中心には取付け穴13が形成されている。
【0015】
円板状体11にはその外周から内方に向けてスリット14が蛇行状に設けられている。これらのスリット14は円板状体11の中心から半径方向に伝播する振動と、円板状体11の円周方向に沿って伝播する振動の両方を抑制できるような位置に複数個形成されている。
【0016】
円板状体11において、この円板状体11の中心と刃部12の中間領域に設けられ、
円板状体11の表裏面を貫通するスリット15が設けられている。 図2はこの発明に係る回転鋸の一例であり、図1の円板状体11のA-A線の断面図を示しており、スリット15を含む円板状体11の一部断面図である。
この図2において、スリット15は蛇行路を有しており、この蛇行路により互いに対向した各スリット15が配置形成されている。この図2に示すスリット15は円板状体11の厚み方向に対して傾斜面を有している。具体的には、スリット15は円板状体11の表面側11aから裏面側11bに向かって互いに平行である。
【0017】
このスリット15は、図2から明らかなように、円板状体11の一主面側のスリット開口部OP1側から円板状体11の主面に対して垂直方向に見たとき、他方主面のスリット開口部OP2が確認できない構成になっている。
【0018】
このような構成によれば、上記した構成により、回転鋸本体10と被削材との摩擦により生ずる円板状体11の振動を減衰させることができ、円板状体11の円周方向に沿って伝播する振動及び半径方向に伝播する振動を減衰させ、騒音を低減することが可能になる。
また、振動が減衰することで、切断や切削にかかわる刃先が、振れ幅がより少ない状態で同一の軌道を通過することになる。したがって、切り代の幅も増大するということがなく、切断位置のバラツキが少なくなり、鋸刃の交換サイクルを延ばすことが可能となる。
なお、図2においては、各スリットはその穴の中心と隣接するスリットの穴の中心との距離は、図2に示すように、d4>d3>d2>d1とし、それぞれの対向するスリット同士の間隔が異なるように設けられている。
なお、この構成では、粘弾性樹脂を充填せずに騒音低減を可能としているが、スリット15には粘弾性樹脂を充填してもよい。スリット15は斜め方向に形成されているから、円板状体11の主面に対して直角に入るスリットよりも樹脂の充填量が増加し、より制振効果が発揮される。この粘弾性樹脂としてはポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が用いられる。
【0019】
図3はこの発明に係る回転鋸の他の例であり、図1の円板状体11のA-A線の断面図を示しており、スリット15を含む円板状体11の一部断面図である。 図3において、スリット15は蛇行路を有しており、この蛇行路により互いに対向して配置している各スリット15が形成されている。この図3に示すスリット15は円板状体11の厚み方向に対して傾斜面を有している。具体的には、各スリット15は円板状体11の表面側11aから裏面側11bに向かって互いに非平行である。
【0020】
このスリット15は、図3から明らかなように、円板状体11の一主面側のスリット開口部OP1側から円板状体11の主面に対して垂直方向に見たとき、他方主面のスリット開口部OP2が確認できない構成になっている。ここで、各スリットはその穴の中心と隣接するスリットの穴の中心との距離は、図3に示すように、d4>d3>d2>d1とし、それぞれの対向するスリット同士の間隔が異なるように設けられている。
【0021】
上記した構成により、図2に示した円板状体の一例と同様に、回転鋸本体10と被削材との摩擦により生ずる円板状体11の振動を減衰させることができ、円板状体11の円周方向に沿って伝播する振動及び半径方向に伝播する振動を減衰させ、騒音を低減することが可能になる。
なお、この構成では、粘弾性樹脂を充填せずに騒音低減を可能としているが、スリット15には粘弾性樹脂を充填してもよい。この粘弾性樹脂としてはポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が用いられる。
また、図示していないが、スリット15を図2に示すスリット15と図3に示すスリット15を組み合わせた構成としても良い。
【0022】
次にこの発明に係る回転鋸の製作について、図4を参照して説明する。
まず円板状体11を準備する。円板状体11としては、例えば次のようなものが用いられる。
つまり、合金工具鋼、炭素工具鋼等の鋼板材により円板状体が構成されており、その外周部の鋸刃状の刃先を円周方向に等ピッチで形成し、各刃先は超硬合金で構成されたものが用いられる。
【0023】
次に、レーザー装置REにより円板状体11にレーザー光Lにより複数のスリット15が形成される。スリット15は連続的な曲線と直線とを組み合わせた形状、つまり蛇行路を有し、この蛇行路によって互いに対向して配置している。各スリット15は、円板状体11の厚み方向に対して傾斜面を有するとともに互いに対向するスリット15の傾斜面は互いに平行または非平行であり、幅が0.2mm~0.5mm程度に形成される。またスリット15の長さは、円板状体11の強度を勘案して適宜選定される。
【0024】
スリット15の形状は蛇行状とするが、図示したU字型の蛇行状のほかに、例えばZ字型の蛇行状であってもよい。なお、円板状体11の振動が半径方向及び円周方向に伝播することを考慮すると、スリットの少なくとも一部は円板状体11の中心から円周縁部の方向に向けて延在させ、一部は円周方向に沿って延在させても良い。 この円板状体11は、焼入れ、焼戻しの熱処理が行われ、平面研削加工が行われる。さらに各刃先に超硬合金を接合する工程が実施される。
【0025】
次に、この回転鋸を用いた電動工具の一実施形態について説明する。図5はこの発明に係る電動工具の斜視図を示す。なお、図1図3で示されている各構成については、同じ符号を付している。
【0026】
図5において、電動工具20は、この電動工具20を切断すべき被削材の上面に載せるベース部21と、このベース21に回動可能なように回動可能なように取り付けられている回転鋸本体10とから構成されている。より詳細には、回転鋸本体10はモーター24の回転軸(図示せず)に回動自在に支持されている。このモーター24は支持部22に回転鋸本体10の上部を覆うカバーケース23を介して回動可能に取り付けられている。
なお、25はハンドルであり、カバーケース23、モーター24と一体となっており、支持部22を支点に回転鋸本体10を傾斜させることができる。
回動円板状体11の刃部12の下部には安全カバー26が配置されており、ハンドル25の操作と同期して回動する。また、ベース部21には平行ガイド27が水平方向に移動可能なようにセッティングされている。
【0027】
なお、回転鋸本体10側には図示していないギヤケースが設けられ、このギヤケース内にはモーター24の回転を減速させるための歯車が内蔵されている。モーター24の回転は歯車を介して円板状体11に伝達され、円板状体11の回転により被削材を切断することができる。
【0028】
次に、回転鋸を備えた工作機械に関するものである。この工作機械について以下に実施形態を説明する。
図6は工作機械の一実施形態を示す斜視図であり、図7は工作機械の他の実施形態を示す斜視図である。
【0029】
まず、図6に示す工作機械の一実施形態について説明する。
この図6において、工作機械100は枠体101と、テーブル102とからなり、枠体101は床などの設置面に立設され、この枠体101には、枠状になっているが、被加工材(図示せず)を載置するテーブル102を備えている。
【0030】
このテーブル102には矢印Y1で示すように走行軌道103を上下双方向に移動する電動鋸ユニット104が備え付けられている。この電動鋸ユニット104は電動機105とこの電動機105により回転する回転鋸106を備えている。この回転鋸106は図1に示した回転鋸10が用いられている。
【0031】
また、このテーブル102には図6に示すように被加工材をX1方向に移動させる移動ユニット106がセットされている。より詳細には、この移動ユニット106は、被加工材をX1方向に移動させる移動用駆動部107と、この被加工材を押える押圧固定バー108と、レール109を備えている。この工作機械100によっても、回転鋸107は先に説明したように図1に示した回転鋸10を用いており、振動が減るとともに騒音も低減させることができる。
【0032】
次に、図7に示す工作機械の他の実施形態について説明する。
この図7において、工作機械200は、テーブル201上に矢印Y2で示すように双方向に移動する電動鋸ユニット202が備え付けられている。この電動鋸ユニット202は図示されていない電動機とこの電動機により回転する回転鋸203を備えている。この回転鋸203には図1に示した回転鋸10が用いられている。
【0033】
また、このテーブル201には図7に示すように被加工材WをX2方向に移動させる移動ユニット204がセットされている。より詳細には、この移動ユニット204は、被加工材をX2方向に移動させる移動用駆動部205と、移動量を測定するエンコーダ206と、位置決め装置207とを備えている。なお、テーブル201には回転鋸203の刃先が移動可能になるように溝208が設けられている。この工作機械200により、回転鋸203は先に説明したように図1に示した回転鋸10を用いることから、振動が減るとともに騒音も低減させることができる。
【0034】
以上、この発明の各実施形態について説明したが、この発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。この発明の基本的な概念を変更することなく図示されたもの以外に変更することは容易であり、この発明はこれらの予想される変形例もその範囲に含むものである。
【符号の説明】
【0035】
10 回転鋸本体
11 円板状体
12 刃部
13 取付け穴
14 スリット
15 スリット
20 電動工具
21 ベース部
22 支持部
23 カバーケース
24 モーター
25 ハンドル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7