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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/10 20060101AFI20241216BHJP
【FI】
A47K13/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021000797
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2022106079
(43)【公開日】2022-07-19
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】木稲 洋介
(72)【発明者】
【氏名】秦 寛樹
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-042921(JP,A)
【文献】特開2018-122032(JP,A)
【文献】特開2020-075003(JP,A)
【文献】特開平05-293057(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111000481(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0313343(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に取り付けられる支持部と、
前記支持部に対して回動可能に支持され、嵌合部を有する回動部材と、
前記回動部材を回動させるモータと、前記嵌合部に対して隙間を設けて嵌合し、前記モータの出力を前記回動部材に伝達する出力部と、を有する電動開閉機構と、
前記モータの駆動を制御する制御手段と、
前記回動部材が回動しているときに、前記回動部材に対して回動方向とは逆方向に力が加わるように前記出力部と前記嵌合部とが接触したことを検出する接触検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記回動部材を開動作させるとき、前記回動部材が所定角度になったときに前記モータを制御して前記出力部の開方向への回動を抑制させ、
前記制御手段は、前記出力部の開方向への回動の抑制後、前記回動部材に対して閉方向に力が加わるように前記出力部と前記嵌合部とが接触したことを前記接触検出手段が検出した後に、前記モータを制御して前記出力部を開方向へ回動させ
前記接触検出手段は、前記モータのトルクを検出するモータトルク検出手段を備え、前記モータトルク検出手段によって検出した前記モータのトルクに基づいて検出を行うことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記接触検出手段は、前記回動部材の角速度を検出する角速度検出手段を備え、前記角速度検出手段は、前記出力部もしくは前記嵌合部の回転軸上に設けられることを特徴とする請求項に記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記接触検出手段は、前記モータの電流値を検出する電流値検出手段を備え、前記電流値検出手段によって検出した前記モータの電流値に基づいて検出を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記接触検出手段は、前記出力部から前記回動部材の嵌合部に加わる荷重を検出する荷重検出手段を備え、前記荷重検出手段の検出結果に基づいて検出を行うことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記所定角度は、70°~100°であることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載のトイレ装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記回動部材を開動作させるとき、前記回動部材が前記所定角度になったときに前記モータを制御して前記出力部を閉方向に回動させることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばモータ等を利用して便座又は便蓋を電動で開閉するトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータ等の駆動源を利用して便座又は便蓋を電動で開閉する電動開閉装置を備えた便座装置が実現されている(特許文献1、2)。
【0003】
また、便座又は便蓋の開動作時の開端の揺れや衝突音を緩和し品位を向上するために開端での速度を抑制する制御がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-24362号公報
【文献】特許第4293987号公報
【文献】特開2018-42921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
便座又は便蓋の開動作制御として、開端の揺れや衝突音を緩和し品位を向上させるために開端での速度を小さくする必要がある。しかし、便座又は便蓋の負荷トルクの正負が逆転するタイミングでは、電動開閉装置の出力部と便座又は便蓋の嵌合部との隙間によるがたつきの分だけ制御不能の領域となるため、速度を抑制できなくなる。そのため、品位の観点から嵌合部の隙間は少ないことが求められる。
【0006】
反対に、便座又は便蓋の組立性、着脱による清掃性を高めるためには、電動開閉装置の出力部と便座又は便蓋の嵌合部に隙間を設けることは不可欠である。そこで、嵌合部の隙間に対して、滑らかに速度を抑制できる制御が必要となる。
【0007】
しかし、経年劣化によって嵌合部の隙間が増大するなど隙間の量にもばらつきがあるため、想定と実際の隙間の量に差異があると、座ふたを減速できずに勢いよく開く場合や、反対に、減速させすぎて閉側に戻り、全開できなくなる場合がある。
【0008】
本発明の目的は、出力部と便座又は便蓋の嵌合部に隙間がある場合であっても、隙間の量に関わらず、便座又は便蓋の滑らかな開動作を実現できるトイレ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、便器に取り付けられる支持部と、前記支持部に対して回動可能に支持され、嵌合部を有する回動部材と、前記回動部材を回動させるモータと、前記嵌合部に対して隙間を設けて嵌合し、前記モータの出力を前記回動部材に伝達する出力部と、を有する電動開閉機構と、前記モータの駆動を制御する制御手段と、前記回動部材が回動しているときに、前記回動部材に対して回動方向とは逆方向に力が加わるように前記出力部と前記嵌合部とが接触したことを検出する接触検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記回動部材を開動作させるとき、前記回動部材が所定角度になったときに前記モータを制御して前記出力部の開方向への回動を制限させ、前記制御手段は、さらに、前記回動部材に対して閉方向に力が加わるように前記出力部と前記嵌合部とが接触したことを前記接触検出手段が検出した後に、前記モータを制御して前記出力部を開方向へ開動作させることを特徴とする。
【0010】
これにより、出力部と便座又は便蓋の嵌合部に隙間がある場合であっても、隙間の量に関わらず、便座又は便蓋の滑らかな開動作を実現できる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記接触検出手段は、前記モータのトルクを検出するモータトルク検出手段を備え、前記モータトルク検出手段によって検出した前記モータのトルクに基づいて検出を行う。
【0012】
これにより、モータトルク検出手段によって検出したモータのトルクに基づいて接触検出を行なうことで、出力部と便座又は便蓋の嵌合部に隙間がある場合であっても、隙間の量に関わらず、便座又は便蓋の滑らかな開動作を実現できる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記接触検出手段は、前記回動部材の角速度を検出する角速度検出手段を備え、前記角速度検出手段は、前記出力部もしくは前記嵌合部の回転軸上に設けられる。
【0014】
これにより、接触位置により近い位置でトルクを測定することで、外乱の影響や誤検出の可能性を減らした接触判定が可能となる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記接触検出手段は、前記モータの電流値を検出する電流値検出手段を備え、前記電流値検出手段によって検出した前記モータの電流値に基づいて検出を行う。
【0016】
これにより、モータの駆動を制御する制御手段とは別の制御基板に電流値検出手段を設置することで、電動開閉装置の部品点数を増やさずに接触判定することが可能となる。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記接触検出手段は、前記出力部から前記回動部材の嵌合部に加わる荷重を検出する荷重検出手段を備え、前記荷重検出手段の検出結果に基づいて検出を行う。
【0018】
これにより、接触位置の荷重を直接測定することで、外乱の影響や誤検出の可能性を減らした接触判定が可能となる。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記所定角度は、70°~100°である。
【0020】
これにより、回動部材の鉛直方向下方への力が小さくなる70°~100°の回動角度で開方向への回動を制限することで、便座又は便蓋の滑らかな開動作を実現できる。
【0021】
本発明において、好ましくは、前記制御手段は、前記回動部材を開動作させるとき、前記回動部材が前記所定開角度になったときに前記モータを制御して前記出力部を閉方向に回動させる。
【0022】
これにより、出力部の回転方向を逆転することで、出力部と嵌合部の隙間を素早く詰めることができるため、便座又は便蓋の負荷トルクの正負が逆転するタイミングにおいて速度変化が少ない動作が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
上記構成によれば、本発明により、出力部と便座又は便蓋の嵌合部に隙間がある場合であっても、隙間の量に関わらず、便座又は便蓋の滑らかな開動作を実現できるトイレ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るトイレ装置の便蓋が開いた状態を示す斜視図
図2】本発明の実施形態に係るトイレ装置の便蓋が閉じた状態を示す斜視図
図3】本発明の実施形態に係る便座と便蓋を取り外した状態を部分的に示す斜視図
図4】本発明の実施形態に係る出力部と嵌合部の軸受とが隙間をもって嵌合される様子を示す図
図5】本発明の実施形態に係る便蓋用電動開閉装置及び便座用電動開閉装置のブロック図
図6】従来のトイレ装置においてがたつきが発生する仕組みを説明する図
図7】従来のトイレ装置において開動作時の出力部に発生するトルクを説明する図
図8】従来のトイレ装置において便蓋の跳ね返りが発生する仕組を説明する図
図9】従来のトイレ装置において便蓋の跳ね返りが発生するときのトルクを説明する図
図10】本発明の実施形態に係る便蓋の開駆動時の滑らかな動作をしたときの出力部と軸受との相対位置を示す図
図11】本発明の実施形態に係る便蓋の開動作時において回転速度を減少させた際に出力部に発生するトルクを説明する図
図12】本発明の実施形態に係る便蓋の開動作時において回転方向を反転させた際に出力部に発生するトルクを説明する図
図13】本発明の実施形態に係る接触判定のフローチャートの図
図14】本発明の実施形態に係るモータのトルク検出手段の図
図15】本発明の実施形態に係る角速度検出回路によるトルク検出手段の図
図16】本発明の実施形態に係る角速度センサの設置例を説明した図
図17】本発明の実施形態に係る電流値検出回路によるトルク検出手段の図
図18】モータの電流値から発生トルクを算出する方法を説明する図
図19】本発明の実施形態に係る荷重検出回路による接触検出手段の図
図20】本発明の実施形態に係る荷重検出センサの設置例を説明した図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るトイレ装置を模式的に示した斜視図である。より詳細に図1はトイレ装置の便蓋300が所定の開限界角度まで開かれ便座200が閉じられた状態を示し、図2は便蓋300及び便座200ともに閉じられた状態を示す。
【0026】
図1のトイレ装置は、便器400の後方に設けられた本体部100(支持部)を有する。本体部100に対して便座200及び便蓋300の回動部材がそれぞれ開閉可能に軸支されている。なお図示しないが、本体部100には便座200及び便蓋300の開限界角度を規制するストッパが形成されている。便座200及び便蓋300は、電動により開かれる際は、便座200及び便蓋300の基端部の所定部位がそれぞれストッパに当接するまで(開限界角度に達するまで)開かれる。
【0027】
図3は、図1の状態のトイレ装置において便座200及び便蓋300を本体部100から取り外した状態を部分的に示すとともに、本体部100内の本発明に係る概略構成を示す。図3に示すように、便蓋300の内側(便器側)において、基端部の両側の壁には、本体部100と係合する軸受310、320(嵌合部)が形成されている。便座200も同様にして、その内側において、基端部の両側の壁に、本体部100と係合する軸受210、220(嵌合部)がそれぞれ形成されている。
【0028】
本体部100内には、便座200及び便蓋300を電動で開閉するための電動開閉装置(制御手段700、便座用電動開閉機構500、便蓋用電動開閉機構600)、トイレ装置の全体制御を行うメイン制御部800等の各種装置及び回路が本体部100内に設置される。
【0029】
便蓋用電動開閉機構600は、便蓋300を回動(開閉)駆動するための出力部620と、出力部620を駆動する駆動部等(図5参照)を含む。出力部620は、便蓋300の一方の軸受320に嵌合する形状を有する。この際、図4に示すように、出力部620は軸受320に対し、出力部620の回転方向(図中矢印参照)に一定の隙間を有するように軸受320と嵌合する。
【0030】
一方、出力部630は便蓋300における他方の軸受310に嵌合する形状を有し、便蓋300を軸支する。なお、出力部630はねじりコイルばねを有し回転を付勢する装置を備えていても、ダンパ部を有し回転を制動する緩衝装置を備えていても構わない。
【0031】
出力部630と、便蓋用電動開閉機構600の出力部620はそれぞれ便蓋300の回動中心に一致する。なお、軸受310、320の嵌合部の形状はそれぞれ同一であっても異なっていても構わない。また、出力部620、630の形状は同一であっても異なっていても構わない。
【0032】
便座用電動開閉機構500は、便座200を回動(開閉)駆動するための出力部520と、出力部220を駆動する駆動部等(図5参照)を含む。出力部620は、便蓋300の一方の軸受320に嵌合する形状を有する。この際、図4に示すように、出力部520は軸受220に対し、出力部520の回転方向(図中矢印参照)に一定の隙間を有するように軸受220と嵌合する。
【0033】
一方、出力部530は便座200における他方の軸受210に嵌合する形状を有し、便座200を軸支する。なお、出力部530はねじりコイルばねを有し回転を付勢する装置を備えていても、ダンパ部を有し回転を制動する緩衝装置を備えていても構わない。
【0034】
出力部530と、便座用電動開閉機構500の出力部520はそれぞれ便座200の回動中心に一致する。なお、軸受210、220の嵌合部の形状はそれぞれ同一であっても異なっていても構わない。また、出力部520、530の形状は同一であっても異なっていても構わない。
【0035】
図5は、本体部100内の便蓋用電動開閉装置及び便座用電動開閉装置の構成を詳細に示すブロック図である。
【0036】
便蓋用電動開閉装置は、出力部620をモータ駆動により回転させる便蓋用電動開閉機構600と、便蓋用電動開閉機構600の開閉動作を制御する電動開閉制御手段700とを備える。電動開閉制御手段700は、便蓋用電動開閉機構600内のモータ611の便蓋モータ用ドライバ730と、ドライバ730を介してモータ611を駆動するとともに便蓋開閉に関わる信号の受信と制御を行う電動開閉制御部710(CPU)とを備える。
【0037】
便蓋用電動開閉機構600は、駆動力を生成するモータ611と、モータ611の回転出力を減速させて駆動力を出力部620に伝達する減速歯車機構(伝達機構)612と、出力部620の回転角度を検出する回転検出回路613と、出力部620とを有する。便蓋用電動開閉機構600は、出力部620に対し便蓋300の開方向に付勢力を作用させるアシストバネ(弾性体)614をさらに備えてもよい。
【0038】
モータ611は例えばPWM(Pulse Width Modulation)方式のDCモータであり、この場合、電動開閉制御部710はPWM制御信号(印加電圧に対するDuty比)をドライバ730に与え、ドライバ730はPWM制御信号に応じたPWM電圧をDCモータに与えることによりDCモータを駆動する。本発明の駆動部は、例えばモータ611と減速歯車機構612とを含み、さらにドライバ730を含んでもよい。
【0039】
また便蓋用電動開閉機構600は、減速歯車機構612の歯車に付加された磁石(磁性体)と、回転検出回路613とを有する。回転検出回路613は、磁石の次回の変化を検出してパルス信号を出力するホールICを含み、ホールICの出力に基づき歯車の回転(すなわちモータ611の回転)の有無を検出する。回転検出回路613は、回転の有無に加え、ホールICの出力に基づきモータ611の回転方向を検出する機能を備えていてもよい。また磁石と回転検出回路613は出力部620に付加し、出力部620の回転角度や回転方向を検出する機能を備えていてもよい。
【0040】
便蓋用電動開閉装置は、トイレ装置全体の制御を行うメイン制御部800に接続され、メイン制御部800から便蓋開閉に関わる各種の指示信号(制御信号)を受けて、受けた制御信号に応じた動作を行う。
【0041】
メイン制御部800は、リモコン810や他機能820として人体検知センサと通信可能に構成される。メイン制御部800は、人体検知センサを介して人体の存在を検知すると便蓋300の開駆動を指示する制御信号を制御部710に送る。またリモコン810から便蓋300の開駆動の指示又は閉駆動の指示を受けると、該当指示に応じた制御信号を制御部710に送る。
【0042】
電動開閉制御部710は、メイン制御部800から便蓋300の閉駆動の制御信号を受けると、ドライバ730を介して便蓋300の閉方向にモータ611を駆動する。すなわち便蓋300の閉方向に出力部620が回転するようにモータ611を駆動する。モータ611の回転出力は減速歯車機構612により減速されて出力部620に伝達される。そして制御部710は、便蓋300が閉じたことを確認するとモータ611の駆動を停止させる。便蓋300が閉じたことは、例えば回転検出回路613の出力に基づき、出力部620が便蓋300の閉状態に対応する所定の角度に達したことにより検出できる。または回転検出回路613の出力に基づき、歯車612の回転(モータ611の回転)の停止を検出することにより便蓋300が閉じたことを検出できる。すなわち回転検出回路613が備えるホールICのパルス出力が停止したころをもって歯車の回転(モータ611の回転)の停止を検出できる。なお、人為的な行為等により便蓋300が止められた場合もホールICのパルス出力が停止するがこの場合も、制御部710は、モータ611の駆動を停止する。
【0043】
一方、制御部710は、メイン制御部800から便蓋300の開動作の制御信号を受けたときは、便蓋300が開く方向に、モータ611を駆動する。すなわち便蓋300の開方向に出力部620が回転するようにモータ611を駆動する。そして制御部710は、便蓋300が開限界角度まで開いたことは、回転検出回路613の出力に基づき、所定の開限界角度に出力部620の角度が達したことにより検出できる。あるいは、回転検出回路613の出力に基づき、歯車612の回転(モータ611の回転)の停止を検出することにより、所定の開限界角度に達したことを検出できる。すなわち回転検出回路613が備えるホールICのパルス出力が停止したことをもって便蓋300がストッパに当接したと判断できる。なお、人為的な行為等により便蓋300が止められた場合もホールICのパルス出力が停止するがこの場合も、制御部710は、モータ611の駆動を停止する。
【0044】
一方、便座用電動開閉装置は、便座の出力部520をモータ駆動により回転させる便座用電動開閉機構500と、便座用電動開閉機構500内のモータ511の便蓋モータ用ドライバ720と、ドライバ720を介してモータ511を駆動するとともに便座開閉に関わる制御を行う制御部710(CPU)とを備える。
【0045】
便座用電動開閉機構500は、モータ511と、モータ511の回転出力を減速させる減速歯車機構512と、便座の出力部520の回転角度を検出する回転検出回路513と、出力部520とを有する。便座用電動開閉機構500は、出力部520に開方向の付勢力を作用させるアシストバネをさらに備えてもよい。
【0046】
また便蓋用電動開閉機構500は、減速歯車機構512の歯車に付与された磁石と、回転検出回路513とを有する。回転検出回路513は、磁石の磁界の変化を検出するホールICを含み、ホールICの出力に基づき歯車の回転(すなわちモータ511の回転)有無を検出する。
便座用電動開閉装置の各要素の動作は、駆動の対象が便座である点を除き、便蓋用電動開閉装置の同一名称の要素と基本的に同様であるため、それらの説明を省略する。
【0047】
ここで、従来のトイレ装置において便蓋300又は便座200の開駆動時に発生する隙間によるがたつきについて説明する。ここでは便蓋300を例に説明するが、便座200の場合も同様である。
【0048】
図6(A)は、便蓋300(あるいは便蓋用電動開閉機構600の出力部620)の回動角度に対する便蓋300の負荷トルク(自重トルク)のグラフFを示し、図6(B)は便蓋300の開駆動時に発生する嵌合部のがたつきの仕組みを説明する図である。
【0049】
図6(A)の縦軸は便蓋300の自重トルクを示し、横軸は便蓋300の回転角度を表す。縦軸において自重トルクが0より大きいことは便蓋300の自重トルクが便蓋300の閉方向に作用し、0より小さいことは便蓋300の自重トルクが便蓋300の開方向に作用することを意味する。角度0°は便蓋300が完全に閉じた状態に対応し、全開角度は便蓋が開限界角度まで開いた状態に対応する。
【0050】
従来のトイレ装置では、図6(B)のように便蓋300の閉状態から、反転ポイントP10(例えば便蓋300の重心が回転中心軸の鉛直上方に位置することとなる、便蓋300の自重トルクが0となる角度)までは便蓋300の自重トルクは便蓋300の閉方向に作用する。しかしながら、当該反転ポイントP10を超えると、便蓋300の自重トルクは、便蓋300の閉方向から開方向に反転する。このとき、出力部620と軸受320の隙間の大きさに応じて、便蓋300が自重により開方向に急激に動き(反転動作)、出力部620と軸受320との相対位置の関係が逆転する(図6(B)の破線枠内を参照)。つまり、出力部620と軸受320との隙間が、反転ポイントP10までは閉方向側に形成されていたが、反転ポイントP10より後は、開方向側に形成される。これががたつきとして、反転動作後の回転速度の増加と便蓋300の全開角度でのふらつきを発生させて品位を損なう動作となる。
【0051】
図7は、従来における便蓋300の開駆動時に便蓋用電動開閉機構600の出力部620が便蓋300の軸受320に伝えるトルクを表し、便蓋300に加えるトルクを縦軸、開駆動中の時間を横軸で表す。図7(a)では便蓋300の負荷トルクが大きいため開方向に大きなトルクを伝えている。図7(b)では、上記がたつき時に速度が増加することを見越して、便蓋300に伝えるトルクを下げて速度を落としている。図7(c)では反転動作のため便蓋300の速度があがり、出力部620からは微小なトルクが伝わっていることを表す。図7(d)では、便蓋300がストッパに当たり全開した後、トルクは停動トルクまで上昇し、便蓋300を開限界角度で押さえつけている様子を表す。ここでいう停動トルクとは、電動開閉機構600の出力部620回転速度が0になったときに出力するトルクを表す。(例えば、図14においてDuty比50%の制御出力に対する停動トルクはP20となる。)この図8の開動作の状態において、トルクは開方向に伝わり続けるため、開端手前の反転ポイントP10以降で加速し、便蓋300は開限界角度においてふらつきを発生する。
【0052】
次に、従来における反転動作時に便蓋用電動開閉機構600の駆動トルクを抑制し、出力部620を軸受320の開方向と反対側に接触させること(逆当て)によって、便蓋300を減速させた場合について説明する。図8は、反転時に出力部620の接触方向を軸受320の閉側に当てて便蓋300を減速させた場合の、出力部620と便蓋300の軸受320の関係を表す。図8(b)において、自重トルクの反転ポイントの手前から徐々に減速させる。図8(c)において、反転動作後の便蓋300の速度の増加を抑制するために出力部620は逆当てを行う。その際、逆当てによって便蓋300の閉方向に加わるトルクが過大であると、図8(d)のように、便蓋300が閉方向に戻る動作が発生する(跳ね返り)。
【0053】
図9では、図8の便蓋300の跳ね返りが発生する場合における、開動作中のトルク値の時間変化を表す。図9(c)において逆当たり時に過大なトルクが閉方向に加わり、便蓋300は閉側へ跳ね返る。跳ね返った結果、出力部620は軸受320の開方向に再度接触し、便蓋300を開方向へ駆動させる。また最悪の場合、開方向へ駆動するトルクが不足し、回転検出手段613が出力部620の回転を検出できない場合、制御部710はモータ611の駆動を停止する可能性がある。減速させるための逆当て時のトルクが適切でなく、跳ね返りが発生すると、滑らかな便蓋300の軌道でなくなり大きく品位が損なわれてしまう。しかし、がたつきがあるため減速させるトルクの程度を調整することは困難である。
【0054】
そこで本発明では、図10(c)の瞬間に逆当てされたかの接触判定を行い、接触の程度に応じて図10(d)の開駆動再開のタイミングを調整し、前述の便蓋300の跳ね返りを解決し、滑らかな便蓋300の開閉動作を実現する。
【0055】
図11は、本発明における便蓋300の開駆動時における出力部620の発生トルクを表す。図11(b)は、負荷の反転ポイントP10の手前から駆動トルクを抑制し、速度を抑制する様子を表す。反転ポイントP10までに便蓋300が止まらないために、駆動トルクを開方向に発生させ続ける。反転ポイントP10を迎えると、出力部620は便蓋の軸受320の閉側に接触するため、図11(c)のように、出力部620は便蓋300に対して閉側のトルクを発生させる。後述する接触判定の方法を利用して、接触の大きさに合わせて発生させるトルクを図12(d)のように、便蓋300を減速しかつ跳ね返りが発生しないトルクに調整する。
【0056】
また、反転ポイントP10で出力部620の駆動トルクを抑制させる際は、図12(b)のように出力部620を逆回転させても良い。逆回転させることで、出力部620が軸受320の閉側に当たるまでの時間を図11の形態よりも短くすることができるため、反転ポイントP10後の便蓋300の加速を速く抑制することができる。接触判定後は図11と同様である。
【0057】
このトイレ装置は、図13に示す工程を順次実行して開動作を行う。
【0058】
まず、電動開閉制御手段700は、メイン制御部800から開動作開始の信号を受信すると、モータ611の開駆動を始める。そして、電動開閉制御部710は、回転検出回路613によって算出された便蓋300の角度が、予め設定しておいた設定角度、例えば便蓋の開き角度70°~100°における任意の設定値を超えたかを判断する。設定角度を超えた場合はモータ611の駆動を抑制する。ここでの抑制とは、モータ611の駆動トルクを下げて減速しても、閉方向に駆動して逆回転してもよい。次に、モータ611の駆動を抑制したあとは接触判定フローを開始する。便蓋用電動開閉機構600または便蓋300に設置されたセンサ類から、便蓋の軸受320における発生トルクを算出する。そして、その発生トルクが予め設定しておいた設定トルクを超えたかどうか判断する。超えた場合は接触判定フローを終了し、モータ駆動を開方向に増加させ、便蓋300を開限界角度まで開く。
【0059】
図14図20は、発生トルクの算出方法を説明した図である。
【0060】
図14は、予め設定された便蓋用電動開閉機構600のTN特性を元に発生トルクを算出する方法を表す。図14に示したTN特性とは、便蓋用電動開閉機構600の駆動トルクと回転数の関係を表したものである。ここで、動作中のTN特性はPWM制御のDuty比に合わせて、設定されたDuty比100%のTN特性から並行移動した特性を示すものとする。また、電動開閉制御部710は回転検出回路613から検出された回転情報をもとに回転数(回転速度)を算出する手段を有し、回転検出回路613は、例えばホールICで、ホールICからの出力されるパルス1波形の角度をパルス1波形の時間で除することで平均的な回転数(回転速度)を算出してもよい。
【0061】
発生トルクは、出力したDuty比から得られるTN特性において、算出された回転数(回転速度)に対応するトルクとして算出することができる。例えば、図14のように、Duty比50%で駆動している便蓋用電動開閉機構600において、回転検出回路613から検出された回転数がN1であった場合、その際の便蓋用電動開閉機構600の発生トルクはT1となる。
【0062】
このような手法によって、回転検知回路613を利用した接触判定が可能となる。
【0063】
図15は、角速度検出回路640による発生トルクの算出方法を表す。図15で示す角速度検出回路640は、便蓋300もしくは便蓋用電動開閉機構600に配置され、電動開閉制御手段700と接続される。
【0064】
図16は、角速度検出回路640の配置例を示す。角速度検出回路640は、例えばジャイロセンサを、出力部620もしくは便蓋300の回転軸上(図16の長鎖線)に配置し、回転軸の回転方向(図16の矢印)に対して角速度を検出可能な方向に設置する。
【0065】
電動開閉制御部710は、角速度検出回路640から検出された角速度θdの変化量を、変化までの時間で除することで、角加速度θddを算出することができる。そして、予め設定された便蓋300の慣性力Iと、算出された角加速度θddから、発生トルクτはτ=I×θddとして算出することができる。
【0066】
図14の形態においては、出力部620と回転検出回路613の間に減速歯車機構612があり、歯車のバックラッシが存在する場合、便蓋300と出力部620が接触したタイミングから発生トルクの算出までに遅れが発生することとなる。一方、図15の形態では、接触位置に近い場所で接触判定を行うことができるため、逆当たりに対して素早い駆動制御が可能となる。
【0067】
図17図18では、電流値検出回路740による発生トルクの算出方法を表す。図17では、電動開閉制御手段700に、モータ611の電流値検出回路740を設置し、電動開閉制御部710で電流値を検出可能な様子を表す。図18では、便蓋用電動開閉機構600のTI特性を元に発生トルクを算出する方法を表す。ここでTI特性とは、便蓋用電動開閉機構600の駆動トルクとモータ611に流れる電流値との関係を表したものである。電動開閉制御部710は、駆動中の電流値を元に、あらかじめ設定された便蓋用電動開閉機構600のTI特性から、発生トルクを算出し、接触判定を行う。
【0068】
図15のTN特性を元に発生トルクを算出する手段では、回転速度の算出精度が回転検出回路613の機械構成に大きく影響される。つまり、回転検出回路613がホールICであれば、パルス波形が出力されるまでは回転速度を検出できない。一方、図17図18の手段では、電流値による発生トルクをセンサのサンプリング周期に応じて出力することができるため、都度モータ611での発生トルクを算出することができる。また、図17の形態において、電動開閉制御手段700に電流値検出回路740を設置することで、便蓋用電動開閉機構600内部に電流値検出回路740を設置する必要がなくなり、便蓋用電動開閉機構600の小型化を図ることができる。
【0069】
図19図20では、荷重検出回路650による発生トルクの算出構成を表す。図19では、荷重検出回路650を便蓋用電動開閉機構600の出力部620、もしくは、便蓋300の軸受320に設置した構成を表す。荷重検出回路650は、電動開閉制御手段70に接続され、電動開閉制御部710は検出された荷重値を元に発生トルクを算出する。
【0070】
図20(a)では、便蓋用電動開閉機構600の出力部620にひずみゲージ等の荷重センサを設置した例を示す。また。図20(b)では、同様の荷重センサを便蓋300の軸受に設置した例を示す。荷重センサは、回転軸のモーメントが測定できる円周方向の荷重を測定できるように配置する。制御部では、荷重値と予め設定された回転軸中心と荷重センサまでの距離からトルクを算出し、発生トルクの大きさから接触判定を行う。なお、単純な接触判定を行う分には、必ずしも、トルク値の換算は必要とせず、荷重値の大小で判断しても良い。
【0071】
図14図17図18のようなモータ611や便蓋用電動開閉機構600の歯車に接続された検出回路から接触判定を行う場合、便蓋用電動開閉機構600のバックラッシがあるため、接触から接触判定までの時間に遅れが生じる。一方、図19図20の手段では、接触位置に一番近い位置で接触の発生を検出することができるため、出力部620の逆当たりに対して、迅速な制御が行うことができ、便蓋300の跳ね返りを抑制し滑らかな開動作が可能となる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものでなく、実施段階では本発明の技術的思想の範疇を逸脱しない限り、構成要素を適宜変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、上記実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除することも可能である。
【符号の説明】
【0073】
100 本体部
200 便座
210、220、310、320 軸受
300 便蓋
400 便器
500 便座用電動開閉機構
511、611 モータ
512、612 減速歯車機構
513、613 回転検出回路
514、614 付勢ばね
520、530、620、630 出力部
600 便蓋用電動開閉機構
640 角速度検出回路
650 荷重検出回路
700 電動開閉制御手段
710 電動開閉制御部
720 便座モータ用ドライバ
730 便蓋モータ用ドライバ
740 電流値検出回路
800 メイン制御部
810 リモコン
820 他機能
P10 反転ポイント
P20、P30 停動トルク
図1
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